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脳卒中後の治療で最善の血栓溶解薬とは?

 脳梗塞患者に対する血栓溶解薬のテネクテプラーゼ(TNK)の適応外使用は、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)のアルテプラーゼ(以下、TPA)による治療よりもわずかに効果的である可能性があるとするシステマティックレビューとメタアナリシスの結果が発表された。TNKによる治療の方が、TPAによる治療よりも、脳梗塞の発症から3カ月後に患者が修正版ランキンスケール(modified Rankin Scale;mRS)で症状がない(0点)か、症状があっても明らかな障害はない(1点)に分類される可能性の高いことが示されたという。アテネ国立カポディストリィアコ大学(ギリシャ)神経学分野教授のGeorgios Tsivgoulis氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に10月16日掲載された。 TNKは、脳梗塞の治療薬としてヨーロッパでは承認されているが、米国では未承認。現時点での欧州脳卒中機構(ESO)の緊急推奨では、非劣性を示したメタアナリシスの結果に基づき、発症から4.5時間未満の脳梗塞に対する治療では、TPAの代わりにTNK0.25mg/kgを使用しても良いとしている。これらのガイドラインの発表以降、さらに4件のランダム化比較試験(RCT)が実施され、追加の知見が得られている。 今回の研究では、現時点で入手可能な11件のRCTの結果を用いてシステマティックレビューとメタアナリシスを実施し、発症後4.5時間以内の脳梗塞の治療におけるTNK0.25mg/kgの有効性と安全性をTPAとの比較で検討した。これらのRCTには、TNKにより治療を受けた患者3,788人と、TPAによる治療を受けた患者3,757人が含まれていた。主要評価項目は、脳梗塞から3カ月後の「優れた機能的アウトカム」(mRSスコアが0〜1点)、副次評価項目は、脳梗塞から3カ月後の「良好な機能的アウトカム」(mRSスコアが0〜2点;2点=軽度の障害)、障害の軽減(mRSスコアが1点以上減少)、症候性頭蓋内出血、および死亡であった。 その結果、TNKによる治療を受けた群では、TPAによる治療を受けた群と比べて「優れた機能的アウトカム」を達成する可能性が5%高く(リスク比〔RR〕1.05、95%信頼区間〔CI〕1.01〜1.10、P=0.012)、障害が軽減している可能性も高い(共通オッズ比1.10、95%CI 1.01〜1.19、P=0.034)ことが示された。しかし、「良好な機能的アウトカム」を達成する可能性については、両群間で同等であった(RR 1.03、95%CI 0.99〜1.07、P=0.142)。また、症候性頭蓋内出血(同1.12、0.83〜1.53、P=0.456)、および死亡(同0.97、0.82〜1.15、P=0.727)のリスクについても有意差は認められなかった。 Tsivgoulis氏は、「われわれのメタアナリシスからは、TNKとTPAの両薬剤の安全性は同等で、脳卒中後の良好な回復の可能性を高めるが、TNKは、優れた回復をもたらす効果と障害軽減効果においては、TPAよりも優れている可能性の高いことが明らかになった」と述べている。その上で、「この結果は、脳梗塞患者の治療には、TPAよりもTNKを使用するべきだという主張を裏付ける結果だ」と話している。

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心臓以外の大手術前のレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬使用継続は少なくとも予後や合併症に悪影響は与えない(解説:浦信行氏)

 生体の血圧維持には主に交感神経系やRAS系の関与が大きな役割を担う。大手術では麻酔による影響で交感神経系が抑制されるが、その状況でRASを抑制すると血圧維持に支障を来たして重症低血圧を引き起こし、生命予後悪化や臓器障害の原因になりかねない。一方ではRAS阻害薬は降圧作用に加えて心血管系や腎臓を中心とした臓器保護作用を有し、継続したほうが良いとの考えもある。 これまでの各国のガイドラインでも、継続を推奨するものと中止を推奨するものが相半ばし、明確な結論は出ていなかった。最近の比較的大規模の臨床試験でも継続群の合併症が有意に多く、また術中低血圧発症も有意に多かったとの報告を見る一方で、術中低血圧発症は有意に多かったが合併症に差がなかったとの報告も見られる。また、合併症も術中低血圧も有意に多かったが、この両者に有意な関連はなかったとの報告もあり、一定の結論が得られていない。 今回の試験は、継続群と中止群の2群に対して1:1のランダムに割り付けをし、術後28日目までのイベントを比較したところ、持続群で低血圧発症頻度と持続が有意に大きかったがイベント発症に差がなかった。これで一定の結論が得られたと考えるが、わが国の現状では、ほとんどすべてのRAS阻害薬の添付文書には手術前24時間は投与しないことが望ましいと記載され、高血圧治療ガイドライン2019では「RAS阻害薬投与中では周術期の体液量減少に伴い、過度な血圧低下や腎機能障害の発症が懸念される」との記載で、あくまでも術前中止のスタンスである。ちなみに麻酔科医の意見を聞くと、術中低血圧の際の昇圧薬による対応に難渋することは、最近ではほぼなく対応可能であるため、大勢は中止をしていないとのことであった。

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患者数が5年で5倍!心不全診療で取りこぼせない疾患とは/日本心臓病学会

 心アミロイドーシスは、もはや希少疾患ではないのかもしれない―。9月27~29日、仙台で開催された第72回日本心臓病学会学術集会のシンポジウム「心臓アミロイドーシス診療Up to date」において、本疾患の歴史や病理診断、病態~治療に関する現況や最新情報が報告され、これまでの心アミロイドーシスに対する意識を払拭すべき現状が浮き彫りとなった。心不全診療、心アミロイドーシスの除外診断は落とせない 心アミロイドーシスは全身性アミロイドーシスの一症状で、心臓の間質にアミロイド蛋白が沈着し、形態的・機能的異常をきたす進行性かつ予後不良の疾患である。アントニオ猪木氏が闘った病としても世間を賑わしたが、他方で医学界においても見過ごすことができない疾患として、今、注目を浴びている。というのは、心アミロイドーシスが心不全のなかでも治療方法が確立していないHFpEFの原因疾患の1つであること、診断方法や治療薬の進歩により診断件数が直近5年で約5倍にまで急増していることなどに端を発する。 ほんの10年前までは診断に心内膜心筋生検を要し、遺伝性では肝移植を治療法とするなどの高いハードルがあったが、『2020年版 心アミロイドーシス診療ガイドライン』の発刊により、心臓99mTcピロリン酸シンチグラフィ(骨シンチグラフィ)を用いた非侵襲的な病型診断ができるようになり、さらには2019年に入りタファミジス(商品名:ビンダケルCap80mg、ビンマックCap61mg[2022年承認])にATTRアミロイドーシス(遺伝性[ATTRv]および野生型[ATTRwt])が適応追加されたことで状況が一変。現在、国内のATTRアミロイドーシスを基礎とした心不全患者は「5万人に上る」と田原 宣広氏(久留米大学心臓・血管内科循環器病センター 教授)は説明した。診断時に留意する点 心アミロイドーシスは免疫グロブリン性のAL(amyloid light chain)とトランスサイレチン(transthyretin:TTR)を前駆蛋白とするアミロイドが全身諸臓器に沈着するATTR(ATTRvとATTRwt)で98%以上を占め、原因不明の心不全や心肥大、大動脈弁狭窄症、そして強い伝導障害のある患者をみた際に鑑別したい疾患である。 病理医の立場から解説した内木 宏延氏(福井大学分子病理学 教授)は、確定診断を下す際の注意点として、骨シンチグラフィの普及により診断精度が向上したものの、日本では病理診断が必須であることを言及しており、「生検が必要な場合には、アミロイドが蓄積している皮下脂肪深部の細胞を採ることが大切で、その目安は親指の第一関節くらいの深さ」と説明した。 続いて診断時のポイントを解説した久保 亨氏(高知大学医学部老年病・循環器内科 病院准教授)は「心臓外症状に注目してほしい」と強調。病型を推察する際の目安として以下の所見を踏まえて診断を進めていくとともに、「AL、ATTRそれぞれを想定した心臓外症状としてみることが重要」と説明した。<とくにチェックすべき徴候・身体所見>・手根管症候群(とくに両側)・脊柱管狭窄・末梢神経障害・巨舌・自律神経障害・shoulder pain sign・蛋白尿などの腎障害・下血などの消化器症状 このほかに心電図検査や心エコーにてapical sparing(心基部の長軸方向ストレインが低下し、相対的に心尖部では保たれている所見)が認められ、心アミロイドーシス疑いが強まった時点でALかATTRかを判断するが、ALは骨シンチグラフィで偽陽性を示す場合があるため、「予後不良で準緊急対応が必要とされるALの除外は早急に行わなければならない。そこで、われわれはM蛋白の評価と骨シンチグラフィを同時に実施している」とし、「Definite診断(組織生検でのTTR同定が必要[タファミジス使用には必要])が付いていなくても、Probable診断(M蛋白の除外+骨シンチグラフィ陽性)の段階で申請可能であり、2024年度から書式が病型ごとに分かれたため、ATTRのprobable診断が得られれば、組織所見を待たずに遺伝学的検査を実施するほうがスピーディに進められる」と特定疾患申請方法についても説明した。治療薬の現状と将来展望 トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)の治療には、心不全治療とアミロイド沈着に対し疾患修飾薬による治療が必要となる。心不全治療について、南澤 匡俊氏(信州大学循環器内科)は「SGLT2阻害薬によりイベント抑制のみならずeGFRやNT-proBNPの増悪抑制効果1)が得られる」と述べ、心機能予防については「DELIVER試験のように左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)への心保護効果に対する薬物療法の検証が活発になってきている。心アミロイドーシスで心機能低下がない場合でも将来を見据えた予防的治療を行い、心保護を行うことが推奨される」と説明した。 疾患修飾薬については、アミロイドの原因となる血中TTRの90%以上が肝臓で産生されるため、治療標的として(1)siRNA製剤による肝臓でのTTR産生抑制、(2)TTR四量体の安定化、(3)アミロイド沈着に対する除去が挙げられる。現在、ATTRv神経症には(1)と(2)が、ATTR-CMには(2)が保険収載されており、(3)は治験段階である。遠藤 仁氏(慶應義塾大学医学部循環器内科)はATTR-CMの治療介入のタイミングについて「NYHAIII症例へはなるべく早期に安定化薬であるタファミジスを処方したほうがイベント改善効果は得られる。一方、心不全がないATTR-CMであっても早晩に心不全を発症するため、タファミジス投与により予後の改善が期待できる」と説明、さらに高齢ATTR-CM(>80歳)についてのタファミジスの有効性を示した2)。このほか、新たなTTR量体安定化薬acoramidisやsiRNA製剤ブトリシランについての有効性・安全性を紹介し、「ATTR-CMの治療薬として、TTR安定化薬やsiRNA製剤が広く使われていくだろう」と述べ、肝細胞の遺伝子編集、アミロイド線維を除去する抗体医薬NI006などの将来的な治療についても触れた。他科からのコンサルト需要が増加傾向に 近年、整形外科医から心アミロイドーシスを疑う手根管症候群患者の病理診断の依頼件数が増えており、「その数は心筋検査に匹敵するくらい」と内木氏は驚いていた。このように他科にも心アミロイドーシスを疑う視点が浸透しつつある今、循環器医への心アミロイドーシス診療に対するコンサルトが今後ますます増えていくと予想される。

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重症の新型コロナ感染者の心臓リスクは心疾患既往者のリスクと同程度

 重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、心筋梗塞や脳卒中、全死亡などの主要心血管イベント(MACE)リスクを高め、その程度はCOVID-19に罹患していないが心疾患の既往歴がある人のリスクとほぼ同程度であることが、米クリーブランドクリニック・ラーナー研究所心血管代謝学部長のStanley Hazen氏らによる新たな研究から明らかになった。この研究ではまた、重症度にかかわらず、COVID-19罹患は、その後3年間のMACEリスクを2倍に高めることも示されたという。この研究結果は、「Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology」に10月9日掲載された。 Hazen氏は、「この研究結果から、COVID-19は上気道感染症である一方で、さまざまな健康リスクを伴う疾患であり、心血管疾患の予防に関する計画や目標を策定する際には、COVID-19の既往歴を考慮すべきことを強く示したものだ」と述べている。 COVID-19パンデミックの初期には、新型コロナウイルスへの感染が血栓や心臓の問題のリスクを高めることが示されていた。しかし、このような高リスク状態がいつまで続くのか、どのような要因が影響するのかについては十分に解明されていないとHazen氏らは言う。 そこでHazen氏らは、2020年の2月1日から12月31日までの間に英国でCOVID-19の診断を受けた患者1万5人のデータを分析し、心血管の健康状態をCOVID-19に罹患していない21万7,730人と比較した。 その結果、COVID-19への罹患者では、重症度とは無関係に、1,003日の追跡期間にわたってMACEリスクが2倍以上に上昇することが明らかになった(ハザード比2.09、95%信頼区間1.94〜2.25、P<0.0005)。このようなリスク上昇は、COVID-19罹患により入院を要した人で顕著だった(同3.85、3.51〜4.24、P<0.0005)。また、心血管疾患の既往歴がないCOVID-19罹患者でのMACEリスクは、心血管疾患の既往はあるがCOVID-19罹患歴がない人よりも20%以上高かったことから(同1.21、1.08〜1.37、P<0.005)、COVID-19による入院が冠動脈疾患(CAD)と同等のリスク(CAD risk equivalent)をもたらすことが確認された。 さらにHazen氏らは、そのリスクの程度が血液型によって異なることも突き止めた。血液型がA型、B型、AB型の人では、O型の人と比べてCOVID-19による入院を経験した後の血栓イベント(心筋梗塞と脳卒中)のリスクが有意に高いことが示されたのだ。このことは、新型コロナウイルスへの感染後の心疾患リスクには、その人の遺伝的特徴が影響している可能性を示唆していると、Hazen氏らは指摘している。 論文の上席著者で、米南カリフォルニア大学ケック医学校ポピュレーションヘルス・公衆衛生科学および生化学・分子医学教授のHooman Allayee氏は、「われわれは、この結果を説明できる要因が他にあるかどうかを確認しようとしているところだが、実際に、特定の血液型では、生物学的な何らかのメカニズムが作用しているようだ」と話している。また同氏は、「われわれの観察の結果と、世界の人口の60%はO型以外の血液型である事実を踏まえると、われわれの研究は、個々の患者の遺伝的特徴を考慮した、より積極的な心血管リスク低減策を検討すべきかどうかという重要な問題を提起するものだ」と同大学のニュースリリースの中で付け加えている。 Allayee氏は、医師は新型コロナウイルスへの感染を全般的な心臓のリスクの一部としてとらえる必要があると主張する。同氏は、「現時点で疑問として残るのは、本研究結果と今後の研究結果により、心疾患の既往がない人に対する心臓の予防医療に関するガイドラインが、COVID-19の心臓への影響を考慮したものに変更されるのかということだ」と話している。

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2型DM男性へのメトホルミン、子の先天奇形と関連なし/BMJ

 父親の精子形成期におけるメトホルミンの使用は、子の臓器特異的奇形を含む先天奇形とは関連しないことが、ノルウェーおよび台湾の一般住民を対象とした全国規模のコホート研究において示された。国立台湾大学のLin-Chieh Meng氏らが報告した。先行研究では、父親のメトホルミン使用と子の先天奇形のリスクとの関連が示されていた。著者は、「今回の研究の結果、メトホルミンは子供をもうける予定のある2型糖尿病男性において、血糖管理のための最初の経口薬として適切であると考えられる」とまとめている。BMJ誌2024年10月16日号掲載の報告。ノルウェー62万例、台湾256万例の子供と父親のデータを解析 研究グループは、ノルウェーの出生登録、処方箋データベース、患者登録および医療費償還払いデータベース、ならびに台湾の出生証明書申請データベース、国民健康保険データベースおよび母子保健データベースを用いた。ノルウェーのコホートでは2010~21年まで、台湾のコホートでは2004~18年までに単胎妊娠で出生した子供のうち、精子形成期(妊娠の3ヵ月前)の父親のデータがある子供それぞれ61万9,389例および256万3,812例を特定した。 主要アウトカムは、先天奇形、副次アウトカムは臓器特異的奇形で、欧州先天奇形サーベイランス(EUROCAT)のガイドラインに従って分類し、父親のメトホルミン使用と子の先天奇形リスクとの関連について解析した。 相対リスクは、補正前解析、父親が2型糖尿病と診断されている集団に限定した解析、ならびに糖尿病の重症度やその他の交絡因子を補正するため父親が2型糖尿病の集団に限定し、傾向スコアオーバーラップ重み付け法を用いた解析により推定した。また、遺伝的因子とライフスタイル因子を考慮するために、兄弟姉妹のマッチング比較を行った。さらに、ノルウェーと台湾のデータの相対リスク推定値を、ランダム効果メタ解析を用いて統合した。父親が2型糖尿病の交絡因子補正後解析では、メトホルミン服用と先天奇形に関連なし ノルウェーのコホートでは、61万9,389例のうち2,075例(0.3%)、台湾のコホートでは256万3,812例のうち1万5,276例(0.6%)の子供の父親が、精子形成期にメトホルミンを使用していた。 先天奇形は、ノルウェーのコホートでは、父親が精子形成期にメトホルミンを使用していなかった子供で2万4,041例(3.9%)、使用していた子供で104例(5.0%)に認められ、台湾のコホートではそれぞれ7万9,278例(3.1%)および512例(3.4%)であった。 補正前解析では、父親のメトホルミン使用は先天奇形のリスク増加と関連していた(補正前相対リスクはノルウェーで1.29[95%信頼区間[CI]:1.07~1.55]、台湾で1.08[0.99~1.17])。 しかし、この関連は交絡因子の補正に従い減弱した。2型糖尿病の父親に限定した解析での相対リスクは、ノルウェーで1.20(95%CI:0.94~1.53)、台湾で0.93(0.80~1.07)、2型糖尿病の父親限定の傾向スコアオーバーラップ重み付け法による解析ではそれぞれ0.98(0.72~1.33)、0.87(0.74~1.02)で、プール推定値は0.89(0.77~1.03)であった。 臓器特異的奇形は、父親のメトホルミン使用と関連していなかった。これらの所見は、兄弟姉妹をマッチさせた比較や感度分析においても一貫していた。

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Jmedmook94 今日の診療に活かせる 喘息・COPDポイント解説

今日から目の前の患者さんに活かせる!プライマリ・ケア医やジェネラリストの先生方が“今日の診療”において一歩ステップアップすることを目的とした、キュート先生こと田中 希宇人先生の著書がついに完成!喘息、COPDそれぞれについては国内外のガイドラインや治療の手引きなど数々の指針がありますが、何を参考にすれば? という若い先生の声も聞かれます。本書は、「今日から目の前の患者さんに活かせる」というコンセプトのもと、喘息とCOPDのポイントを1冊にまとめました。病態から診察、治療についてのキュート先生のわかりやすい解説に加え、長尾 大志先生、倉原 優先生、中島 啓先生など日本を代表する呼吸器内科の専門家が実臨床でのコツを伝授。キュート先生の質問に各先生が答えるQ&Aも必読です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するJmedmook94 今日の診療に活かせる 喘息・COPDポイント解説定価4,180円(税込)判型B5判頁数176頁発行2024年10月編著田中希宇人(日本鋼管病院呼吸器内科診療部長)ご購入はこちらご購入はこちら電子版でご購入の場合はこちら電子版でご購入の場合はこちら

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第236回 麻酔薬を巡る2つのトピック(後編) プロポフォール使用の配信番組で麻酔科学会声明、芸人への検査は麻酔不要の「経鼻内視鏡」の不可解

石破首相の知見は要職を降りてから「アップデートされていない」こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。自民党、衆院選で大敗しちゃいましたね。テレビに映る石破 茂首相の虚ろな目を見て、せっかくチャンスをもらったのに、総裁選前に自信満々で話していた自身の主張を次々反古にするなど、迷走するリーダーの姿を国民に見せてしまったことも大きな敗因ではないかと感じました。石破首相が誕生した直後、10月5日付の日本経済新聞の経済コラム「大機小機」は「イシバノミクスはあるか」というタイトルで、今後の経済施策について予想するとともに、石破首相の欠点を鋭く突いていました。同記事は、石破首相が主導する経済政策「イシバノミクス」はないと断言、その理由を「党内非主流派に長く身を置」き、「首相の知見が要職を降りてから『アップデートされていない』ためだ、と霞が関の官僚はみている」と書いています。自ら得意と公言する安保政策(アジア版NATO構想など)ですら非現実的なのに、専門ではない経済・金融政策で新しい施策を打ち出せるわけがない、というわけです。実際、石破首相は、社会保障政策についても深く語ることはなく、やはり「アップデートされていない」感(言い換えれば勉強不足)を強く感じます。今回の総選挙で、紙の健康保険証存続を公約に挙げる立憲民主党が大躍進したことで、社会保障政策の最重要課題の一つである医療DX推進にも暗雲が垂れこめそうです。石破首相(あるいは新首相?)にはその点はぜひアップデートし、自らの頭の中身をDXしていただきたいと思います。配信されたバラエティ番組を麻酔科学会が強く非難さて今回も前回に引き続き、麻酔薬のトピックを取り上げます。日本麻酔科学会が「アナペイン注 7.5mg/mL」の製造所追加の承認取得をホームページで会員に伝えた同じ10月16日、同学会は別件で興味深い理事長声明を出しました。「静脈麻酔薬プロポフォールの不適切使用について」1)と題されたその声明は、「10月14日配信開始の番組において、内視鏡クリニックを舞台にプロポフォールが使用され、何らかの外科的処置を必要としない人物を意図的に朦朧状態にするという内容が含まれていることを知り、深い憂慮を抱いております」と、配信されたバラエティ番組で芸能人に対して安易にプロポフォールが使われたことを強く非難しました。このトピックについては、ケアネットの「ニュース批評」、「現場から木曜日」でも倉原 優氏が「第119回 『エンタメ番組でプロポフォール静注』を観た感想」でプロポフォールの内視鏡時の使用の問題点について言及、「日本麻酔科学会が書いているように『麻酔薬をいたずらに使用する行為は、極めて不適切』の一言に尽きます」と書かれていますが、私も実際に配信番組を観て“あること”に気付いたので、若干の補足コメントをしてみたいと思います。「地上波では放送できない企画」をテーマに芸人らが過激な企画に出演まず、経緯を簡単におさらいしておきます。麻酔科学会が問題視したのは、Amazonプライム・ビデオで10月14日から配信が始まった「KILLAH KUTS(キラーカッツ)」という番組の中の1エピソード、「EPISODE2 麻酔ダイイングメッセージ」です。同番組は、「水曜日のダウンタウン」の演出担当として知られる藤井 健太郎氏が手掛け、「地上波では放送できない企画」をテーマに、芸人らが過激な企画に挑むのが売りだそうです。このエピソードでは、「死ぬ瞬間の薄れゆく意識を、麻酔を使えば再現できる」として、みなみかわ、お見送り芸人しんいち、ラランド、モグライダーといった人気芸人らが、被害者役と刑事役に分かれ、病院を訪れた被害者役が院内で事件に巻き込まれ、殺されてしまう、という設定のコントを演じます。被害者役が殺されると、その瞬間、医師が麻酔薬の投与を開始。意識が薄れるなか、被害者役はメモに犯人の情報を残し(いわゆるダイイングメッセージですね)、後から来た刑事役がそれを読んで推理するという設定です。番組を観てみると、被害者役の芸人たち(どちらかというとボケ役が担当)は麻酔薬の投与直後からメモを書き始めるのですが、ほとんどの芸人が犯人の情報を正確に記述することができず、ほどなくして眠りに落ちていました。「麻酔を行う」必然的な理由、エクスキューズを一応は用意制作側も、何らかの非難が起こること(あるいは炎上すること)を想定していたのでしょう。健常人に「麻酔を行う」必然的な理由、エクスキューズを一応は用意していました。番組冒頭でまず、「当番組における麻酔の投与は胃カメラ検査を目的とし、医師による監修のもと安全性に配慮した上で通常の検査で行われる方法と同様に実施しております」というテロップが流れます。さらに番組内では「今回使用するのは、人間ドッグなどで用いられ、注入開始からおよそ1分ほどで意識を失う麻酔。ちなみに、ダイイングメッセージのくだりを終えた後は、実際に胃カメラ検査を実施。あくまで今回のロケは、検査のついでにロケを行わせていただきました」というナレーションも入っています。さらに司会の伊集院 光には番組内で、「あくまで胃カメラ検査をするついでに、麻酔がかかるならこういうこともやってみよう(ということ)。麻酔を悪ふざけとか遊びに使うなんてありえない」とも言わせています。学会は「厳格なガイドラインに従って静脈麻酔薬を適切に管理し、いかなる場合にも不適切な使用を避けるよう強く要請」10月17日付「Smart FLASH」の報道によれば、このエピソードは当初は7日から配信予定でしたが、6日にはAmazonプライム・ビデオの公式Xにて「諸事情により配信日が延期となりました」と発表、ようやく14日に配信されたとのことです。しかし、冒頭で書いたように日本麻酔科学会は配信からわずか2日後の10月16日、理事長名で「静脈麻酔薬プロポフォールの不適切使用について」と題する声明を出しました。麻酔科学会は、マイケル・ジャクソンの死亡事故も例に挙げながら、「プロポフォールをはじめとする静脈麻酔薬は、本来、手術や検査時の鎮静を目的に、医師の厳重な管理のもとで使用されるものです。特に、これらの薬剤は呼吸抑制のリスクを伴うため、必ず人工呼吸管理が可能な環境で使用される必要があります。(中略)適切な医療管理が行われない場合、生命に危険を及ぼす可能性があります。したがって、このような麻酔薬をいたずらに使用する行為は、極めて不適切であり、日本麻酔科学会として断じて容認できるものではありません」と強く非難、「麻酔科医ならびに関連する医療従事者には、厳格なガイドラインに従って静脈麻酔薬を適切に管理し、いかなる場合にも不適切な使用を避けるよう強く要請いたします」としています。内視鏡検査時のプロポフォール使用については安全性に疑問も配信番組では「麻酔薬」と言っているのみで「プロポフォール」という単語は出てこないので、番組内の麻酔薬がプロポフォールであると麻酔科学会がどう確定したかは不明です。ひょっとしたら、協力した埼玉市の医療機関(実名で出てきます)に問い合わせたのかもしれません。プロポフォールは、手術時の全身麻酔や術後管理時の鎮静効果が高いことなどメリットも多く、使いやすい麻酔薬との評価がある一方で、ベンゾジアゼピン系薬剤よりも舌が落ち込んだり、血圧が低下したりするような作用が強く、管理は比較的難しいとされています。また、ICUの小児への使用に関連して、2014年に東京女子医大で重大な事故も起こっています(「第30回 東京女子医大麻酔科医6人書類送検、特定機能病院の再承認にも影響か」参照)。そうしたことも、麻酔科学会が配信番組をあえて非難した理由の一つかもしれません。実際、倉原氏が指摘しているように、内視鏡検査時のプロポフォール使用はなかなか難しい問題もあるようです。日本麻酔科学会の「内視鏡治療における鎮静に関するガイドライン」ではその使用が認められている一方で、「プロポフォールによる鎮静が内視鏡室で非麻酔科医によって安全に行えるかどうかは、日本の医療現場や教育体制、現行の医療制度では明言できない」と記載されているとのことです。倉原氏は、「欧米と比較して非麻酔科医によるプロポフォール使用の教育システムが整っていないという指摘があります」と書かれています。使われていた内視鏡は経鼻内視鏡、プロポフォールによる静脈麻酔は必要だったのか?もう1点、この配信番組を観て驚いたのは、使われていた内視鏡が経鼻内視鏡だった点です。最初の“被害者”であるモグライダーのともしげに麻酔がかけられた後、経鼻内視鏡が挿入される場面があります(ほかの“被害者”ではその場面はなし)。咽頭反射が起こらないため通常の内視鏡検査よりも格段にラクな検査です。多くの医療機関で麻酔薬なしか、リドカインによる鼻腔麻酔などで行われている経鼻内視鏡の検査を行うのであれば、そもそもプロポフォールによる静脈麻酔は必要がなかったはずです。番組で伊集院 光は「麻酔を悪ふざけとか遊びに使うなんてありえない」と語っていますが、内視鏡検査が「経鼻」であったことだけでも、「悪ふざけとか遊び」であったと言えるのではないでしょうか。プロポフォールを打たれた芸人たちは、厳重な安全管理の下で麻酔をされたとは言え、不要、あるいは過剰とも言える医療を施されたわけで、その意味では本当の“被害者”だったわけです。それにしても、一番の問題は、この番組がコントとして全然面白くなかったことです。テレビ局のコンプライアンスが厳しくなり、地上波のバラエティ番組では作りたいものが作れない、と芸人がボヤいたりしています。「KILLAH KUTS」も「地上波では放送できない企画」がテーマだそうです。しかし、「コンプライアンスを守らない=過激=面白い」とはなりません。番組視聴のためにわざわざ入会したAmazonプライムの会費を返して欲しいとすら思った一件でした。参考1)静脈麻酔薬プロポフォールの不適切使用について/日本麻酔科学会

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第215回 新型コロナ5類移行後も死者3万人超、インフルエンザの15倍、高齢者に脅威/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナ5類移行後も死者3万人超、インフルエンザの15倍、高齢者に脅威/厚労省2.医師臨床研修マッチング、大学病院離れが加速、地方志向強まる/厚労省3.心臓移植、余命1カ月の患者を最優先へ 待機期間中の死亡減目指す/厚労省4.第50回総選挙、医師資格保持者17人が議席獲得5.がん予防の細胞療法で重症感染症 都内クリニックに停止命令/厚労省6.根拠不明の薬でがん患者死亡 遺族が自由診療のクリニックを提訴/大阪1.新型コロナ5類移行後も死者3万人超、インフルエンザの15倍、高齢者に脅威/厚労省新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が5類感染症に移行して以降も、死者数は依然として高い水準にあることが判明した。厚生労働省の人口動態統計によると、2023年5月~2024年4月までの1年間で、COVID-19による死者は計3万2,576人に上り、季節性インフルエンザの約15倍に達した。死亡者の大部分は65歳以上の高齢者で、全体の約97%を占めていた。男女別では男性が1万8,168人、女性が1万4,408人と、男性の方が多い傾向がみられた。専門家は、COVID-19が次々と変異を繰り返して高い感染力を持つ一方で、病原性はあまり低下していないことが、高齢者を中心に多くの死亡者が出ている原因だと指摘している。COVID-19の5類移行に伴い、行動制限などは解除されたが、感染拡大防止に向けた個々人の意識が重要となる。東北大学の押谷 仁教授(感染症疫学)は、「大勢が亡くなっている事実を認識し、高齢化社会の日本で被害を減らすために何ができるのかを一人一人が考えないといけない」と訴えている。押谷教授は、社会経済活動を維持しながら死亡者数を減らすためには、「高齢者へのワクチン接種や高齢者施設における検査などの費用を国が負担すべきだ」と指摘している。参考1)コロナ死者年間3万2千人 5類移行後、インフル15倍 高齢者ら今も脅威 冬の流行、専門家懸念(東京新聞)2)新型コロナ死者、年間3万2,576人 5類移行後、インフルの15倍(毎日新聞)3)コロナ死者年間3万2,000人超 5類移行後、インフルの15倍 高齢者らには今も脅威(産経新聞)2.医師臨床研修マッチング、大学病院離れが加速、地方志向強まる/厚労省2024年度の医師臨床研修マッチングの結果が10月24日に発表され、地方での研修を希望する医師が増加傾向にある一方、第1希望の研修プログラムへのマッチ率が前年度より低下したことが明らかになった。厚生労働省によると、マッチングに参加した医学生は1万136人で、うち9,868人が希望順位表を登録した。研修先がマッチングしたのは9,062人で、マッチ率は91.8%。研修先は、市中病院が64.7%、大学病院が35.3%と、市中病院での研修を希望する医師が大多数だった。また、地方病院での研修希望も増加傾向にあり、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、福岡県の6都府県を除く41道県でのマッチ率は60.1%で、前年度より1.1ポイント増加した。その一方で、第1希望の研修プログラムにマッチした人の割合は62.5%で、前年度より1.8ポイント減少した。第3希望までにマッチした人は88.7%で、こちらも前年度より1.0ポイント減少した。マッチングの結果、大学病院本院で定員充足率が100%となったのは19大学であり、とくに関西医科大学は10年連続、昭和大学は9年連続でフルマッチを達成していた。そのほか、自大学出身者のマッチ割合が高い大学も多く、金沢医科大学、旭川医科大学など9校では、マッチ者の全員が自大学出身者だった。参考1)令和6年度の医師臨床研修マッチング結果をお知らせします(厚労省)2)2025年4月からの医師臨床研修、都市部6都府県「以外」での研修が60.1%、大学病院「以外」での研修が64.7%に増加-厚労省(Gem Med)3)医師臨床研修マッチング、63%が第1希望に内定 前年度比1.8ポイント減 厚労省(CB news)4)市中病院にマッチした医学生は64.7% マッチング最終結果、フルマッチは19校(日経メディカル)3.心臓移植、余命1カ月の患者を最優先へ 待機期間中の死亡減目指す/厚労省心臓移植を希望する患者の待機期間が長期化する中、厚生労働省は10月23日、余命1ヵ月以内と予測される60歳未満の患者を最優先に対象とする新たな方針を決定した。従来の心臓移植の優先順位は、血液型や体重、人工心臓の装着の有無などを基準とし、条件が同じ場合は待機期間が長い患者が優先されていた。しかし、医療技術の進展により、約7割の患者が同じ優先枠で待機できるようになり、より切迫した緊急性が考慮されない状況だった。このため、病状が悪化しても待機順位が上がらず、移植を受けられないまま死亡するケースも少なくなかった。新たな方針では、余命1ヵ月以内と予測される60歳未満の患者を最優先枠に設定し、待機期間中の死亡を減らすことを目指す。対象となる患者は、日本循環器学会に設置される専門部会が審査を行う予定。また、厚労省では、心臓移植以外の臓器移植についても、優先順位の見直しを進める方針。一方、臓器提供者側の対応については、あっせん機関である日本臓器移植ネットワークの業務を分割し、ドナー家族への対応などを新組織や医療機関の院内コーディネーターに委嘱する体制見直し案も提示された。参考1)心臓移植「余命1ヵ月最優先」 厚労省、待機中の死亡減目指す(毎日新聞)2)緊急性の高い患者に心臓移植を 厚労省、優先順位の基準見直しへ(朝日新聞)3)心臓移植 緊急度の高い患者に優先枠 厚労省の専門委が承認(NHK)4)心臓移植断念、5年で34人 待機長期化、緩和医療を選択 切迫患者を最優先の動き(産経新聞)4.第50回総選挙、医師資格保持者17人が議席獲得第50回衆議院議員総選挙で、医師資格を持つ候補者36人が立候補し、そのうち17人が当選を果たした。自民からは6人が当選し、維新は5人、立民から4人、公明と国民民主からは各1人ずつが議席を獲得した。残る19人は惜しくも落選となり、選挙戦を制することはできなかった。注目の当選者には、立憲民主党の阿部 知子氏(神奈川12区)がおり、医師資格保持者の中で最多の9回目の当選となった。また、日本維新の会から立候補した梅村 聡氏(大阪5区)は、参議院議員から鞍替え出馬での立候補で、衆議院への転身が実現した。無所属で立候補した三ツ林 裕巳氏(埼玉13区)は、自民党からの公認が得られず落選という結果になった。今回の選挙では、前回の第49回衆院総選挙の当選者は12人に比べて、医師資格保持者が17名と増加したことが特徴的で、医療や福祉政策への関心の高まりが反映されているとみられる。【医師資格を持つ今回の当選者】国光 文乃:自民 比例当選/新谷 正義:自民 比例当選/今枝 宗一郎:自民 愛知14区/松本 尚:自民 千葉13区/安藤 高夫:自民 比例当選/仁木 博文:自民 徳島1区/岡本 充功:立民 愛知9区/中島 克仁:立民 山梨1区/阿部 知子:立民 神奈川12区/米山 隆一:立民 新潟4区/沼崎 満子:公明 比例当選/梅村 聡:維新 大阪5区/伊東 信久:維新 大阪19区/猪口 幸子:維新 比例当選/阿部 圭史:維新 比例当選/阿部 弘樹:維新 比例当選/福田 徹:国民 愛知16区(敬称略)5.がん予防の細胞療法で重症感染症、都内クリニックに停止命令/厚労省東京都内のクリニックで再生医療を受けた患者2人が重大な感染症を発症し、厚生労働省が当該医療機関に医療提供一時停止の緊急命令を出した事態を受け、一般社団法人再生医療安全推進機構は10月27日、厚労省に再生医療政策の見直しを求める陳情書を提出した。10月25日、厚労省は、医療法人輝鳳会が運営する「THE KCLINIC」(東京都中央区)で、がん予防を目的とした自由診療の細胞療法を受けた患者2人が、重大な感染症で入院したと発表した。2人は「NK細胞」と呼ばれる細胞の加工物の投与を受けており、その細胞加工物から感染症の原因とみられる微生物が確認された。厚労省は、再生医療安全性確保法に基づき、同クリニックと、NK細胞の培養を行った「池袋クリニック培養センター」(東京都豊島区)に対し、同様の再生医療の提供などを一時的に停止させる緊急命令を出した。同機構は、この事件を受け、自由診療下における再生医療ビジネスの増加と、医療機関内での細胞培養加工の安全性に対する懸念を表明。厚労省に対し、再生医療政策の抜本的な見直しを求める陳情書を提出した。陳情書では、臨床現場のニーズを反映した政策立案、審査ガイドラインの策定、法規制の更新、監視体制の強化などを求めている。とくに、医療機関内で行う細胞培養加工施設の運用基準の明確化、細胞外小胞を用いた治療など、法規制の枠外にある再生医療に対する規制強化を訴えている。同機構は、今回の陳情を機に、再生医療の安全性確保と健全な発展に向けた議論が深まることに期待を寄せている。参考1)再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく緊急命令について(厚労省)2)再生医療政策の抜本的見直しを求める陳情書を厚生労働省に提出(PR TIMES)3)再生医療後に重大な感染症で2人が入院 厚労省、医院に医療提供一時停止の緊急命令(産経新聞)4)再生医療で重大な感染症 医療提供一時停止の緊急命令 厚労省(NHK)6.根拠不明の薬でがん患者死亡 遺族が自由診療のクリニックを提訴/大阪大阪市内のクリニックで「がん細胞が死ぬ」と勧められた自由診療の薬を投与された後、容体が悪化し死亡した男性の遺族が、クリニックの院長を相手取り、損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。訴状によると、男性は2021年4月、前立腺または精嚢がんと診断され、一般病院で抗がん剤治療を受けながら、並行してクリニックで自由診療を受けていた。クリニックの院長は、公的医療保険が適用されない自由診療の薬を「アメリカ製の治療薬で、日本製よりパワーがある」と勧め、男性は「ガスダーミンE」という薬の点滴を受けることにした。しかし、点滴投与後、男性の容体は悪化。その後、院長から「『ガスダーミンE』ではなく『ガスダーミンRNA』を投与していた」と告げられたが、明確な説明はなく、男性は2022年4月、がん性腹膜炎で死亡した。遺族は、院長が十分な説明をせず正体不明の薬を投与し、病状を悪化させたとして、935万円の損害賠償を求めている。治療の同意書はみつかっておらず、遺族は「ずさんな対応」と訴えている。一方、院長は「納得の上で同意を得ていたが、同意書は作成していなかった。使った薬はガスダーミンEで間違いなかった」と反論している。専門家は、自由診療は科学的根拠が不十分な場合が多く、高額な費用がかかるにもかかわらず、効果が保証されない点に注意が必要だと指摘している。参考1)がん自由診療2日後に容体悪化、半年後に死亡…「副作用説明なかった」遺族が医師を提訴へ(読売新聞)2)「『がん細胞が死ぬ』と勧められた自由診療の薬で容体悪化」死亡した男性の遺族がクリニック院長を提訴(読売テレビ)3)提訴:「がん細胞死ぬ」点滴後死亡 自由診療クリニック 遺族が提訴へ(毎日新聞)

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インフルエンザウイルス曝露後抗ウイルス薬の有効性(解説:寺田教彦氏)

 インフルエンザウイルス曝露者に対する抗ウイルス薬の有効性を評価したシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果が、2024年8月24日号のLancet誌に報告された。本研究では、MEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature、Global Health、Epistemonikos、ClinicalTrials.govを用いて、11,845本の論文と関連レビューから18件の研究を確認し、このうち33件の研究をシステマティックレビューに含めている。概要は「季節性インフル曝露後予防投与、ノイラミニダーゼ阻害薬以外の効果は?/Lancet」のとおりでザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、バロキサビルは、重症化リスクの高い被験者において、季節性インフルエンザ曝露後、速やか(48時間以内)に投与することで症候性インフルエンザの発症を大幅に軽減する可能性が示唆され、重症化リスクの低い人では、症候性インフルエンザの発症を大幅に軽減しない可能性が示唆された。 過去には、2017年のインフルエンザウイルス曝露者に対する予防投与のシステマティックレビューで、オセルタミビルまたはザナミビルの曝露後予防投与により有症状のインフルエンザ発生を減少させる効果が報告されていたが(Doll MK, et al. J Antimicrob Chemother. 2017;72:2990-3007)、エビデンスの質や確実性は評価されていなかった。当時は、これらのエビデンスを参考に、WHOやIDSAのガイドライン(Uyeki TM, et al. Clin Infect Dis. 2019;68:e1-e47.)では、インフルエンザウイルス曝露後に、合併症のリスクが非常に高い患者に対して、抗ウイルス薬の予防投与が推奨された。本邦の現場でも、インフルエンザウイルス曝露後の予防投与は保険適用外だが、病院や医療施設内で曝露者が発生したときなどに、重症化や合併症リスクを参考に、個々の患者ごとに適応を検討していた。 本研究の結果から、2024年9月17日にWHOのガイドラインが更新されており、抗インフルエンザ薬(バロキサビル、ラニナミビル、オセルタミビル、ザナミビル)の曝露後予防投与は、ワクチン接種の代わりにはならないが、きわめてリスクの高い患者(85歳以上の患者、または複数のリスク要因をもつ若年者)には曝露後48時間以内の投薬が推奨されている。 さて、われわれのプラクティスについて考えてみる。本研究では、曝露後予防投与で入院や死亡率の低下を確認することはできていないが、曝露後予防投与はインフルエンザ重症化リスクの高い患者群では発症抑制(確実性は中程度)の効果が期待でき、重症化リスクの低い人では、季節性インフルエンザに曝露後、速やかに投与しても症候性インフルエンザの発症を大幅に軽減しない可能性が示唆された(確実性は中程度)。インフルエンザ重症化リスクの高い患者群では、インフルエンザに罹患することで重症化やADL低下につながることが予測され、適切な患者を選定して曝露後予防投与を行うことはメリットがあるだろう。 そのため、インフルエンザウイルス曝露後予防は、これまでどおりインフルエンザの重症化や合併症リスクを個々の症例で検討することが良いと考える。 曝露後予防投与時の抗ウイルス薬では、オセルタミビルやザナミビルに加えて、本研究では、ラニナミビルやバロキサビルも有効性を確認することができた。ラニナミビルやバロキサビルは、オセルタミビルやザナミビルに対して、単回投与が可能という強みをもつため、抗ウイルス薬の複数回投与が困難な環境ならば使用を考慮してもよいのかもしれない。しかし、オセルタミビルのように、過去の使用実績が豊富で安価な薬剤を選択できる場合は、これまでどおりこれらの薬剤を選択してよいと考える。

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慢性疾患患者のインフルワクチン接種率、電子メールで改善/JAMA

 デンマークにおける全国規模登録ベースの無作為化臨床試験において、慢性疾患を有する青年~中年患者のインフルエンザワクチン接種率は、電子メールを用いたナッジにより有意に上昇することが示された。デンマーク・コペンハーゲン大学のNiklas Dyrby Johansen氏らが、「Nationwide Utilization of Danish Government Electronic Letter System for Increasing Influenza Vaccine Uptake Among Adults With Chronic Disease trial:NUDGE-FLU-CHRONIC試験」の結果を報告した。世界的にガイドラインで強く推奨されているにもかかわらず、慢性疾患を有する若年~中年患者のインフルエンザワクチン接種率は依然として十分とは言えない状況(suboptimal)で、接種率向上のための効果的で柔軟性のある戦略が求められている。本試験の結果を受けて著者は、「費用対効果の高い電子メール戦略は、簡便で柔軟性があり、公衆衛生に大きな影響を与える可能性があることが示された」と述べている。JAMA誌オンライン版10月11日号掲載の報告。デンマークの約30万例を対象に、電子メールの有無でインフルワクチン接種率を比較 研究グループは、2023年9月24日~2024年5月31日に、18~64歳のデンマーク国民で、デンマーク政府によるワクチン接種プログラムのインフルエンザワクチン無料接種対象者(インフルエンザに感染した場合の有害アウトカムのリスク上昇が知られている慢性疾患を有する)を登録し、通常ケア(対照)群または6つの異なる積極的介入群に、2.45対1対1対1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 積極的介入群には、ワクチン接種の決断を促すための情報(標準レター:無料であること、慢性疾患患者が接種する場合のリスクの簡単な説明、接種スケジュール、COVID-19ワクチンとの同時接種に関する説明を記述)を電子メールで送付することを基本とし、そのほかに標準レターの10日後の再送信、心血管疾患患者へのベネフィットを強調したレター(CV gain-framing letter)、呼吸器疾患gain-framing letter、積極的な選択/実行を促すレター、損失を強調したレターの送付という6つの異なる介入で構成された。対照群は電子メールなしとした。 すべてのデータは行政の保健登録から取得した。主要アウトカムは2024年1月1日以前のインフルエンザワクチン接種であった。 主要解析は、主要アウトカムについて事前に7種の比較(全介入統合群vs.対照群、および各介入群vs.対照群)を行うことが規定され、各比較について接種率の絶対差および粗相対リスクを算出し、検定は全体でα=0.05(各比較でα=0.0071)として評価が行われた。 計29万9,881例(女性53.2%[15万9,454例]、年齢中央値52.0[四分位範囲:39.8~59.0]歳)が、無作為化された。いずれかの電子メールを受け取った人のほうが接種率は高率 インフルエンザワクチン接種率は、対照群27.9%、全介入統合群(6つのうちいずれかの電子メールを受信した参加者)39.6%であり、全介入併合群で高率だった(群間差:11.7%ポイント、99.29%信頼区間[CI]:11.2~12.2ポイント、p<0.001)。 介入(各個人宛の電子メール)はインフルエンザワクチンの接種率を有意に上昇し、最も効果が大きかったのは、初回メール送信から10日後に標準レターメールを再送した群(41.8% vs.27.9%、群間差:13.9%ポイント[99.29%CI:13.1~14.7]、p<0.001)と、CV gain-framing letterをメールした群(39.8% vs.27.9%、11.9%ポイント[11.1~12.7]、p<0.001)であった。 サブグループ解析においても、6つすべての介入群のほうがワクチン接種率を向上することが示された。

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第119回 「エンタメ番組でプロポフォール静注」を観た感想

番組でプロポフォールを使用「この演出家がこんな番組を!」という広告がチラホラ目に入っていたので、少し心配していましたが、案の定、炎上してしまいました。有名番組の演出を手がけていた人が制作したAmazonプライム・ビデオの番組が、プロポフォールを静脈注射するという企画を配信したのです。第1回は「スポーツスタンガン」がテーマで、芸人たちがフェンス付きのリング内でスタンガンを押し付け合い、通電したら負けというもの。私が子供の頃には、電気ショック系のお笑い番組がたくさんありましたが、これはその流れを汲んでいるのか、昭和世代には比較的受け入れられるのかもしれません。一定数、批判は来るでしょうが。そして、第2回が問題の「麻酔ダイイングメッセージ」。芸人が「病院で何者かに殺される」という設定で、実際にプロポフォールを静注して意識を失う前に、手書きのダイイングメッセージを残せるかどうかを試すというものです。めちゃくちゃ攻めてます。「当番組における麻酔の投与は胃カメラ検査を目的とした医師による監修のもと安全性に配慮した上で、通常の検査で行われる方法と同様に実施しております」というテロップもあり、一応検査目的での使用という体裁を取っています。しかし、実際のところは、検診ではなくお笑い目的で使っていることになります。私自身、許容範囲は広いほうですが、これは各所から批判が殺到するのではないか…と心配になる内容でした。予想通り、日本麻酔科学会が公式にコメントを発表したことで、SNS上で炎上。後で詳しく触れますが、炎上はある意味で予定どおりだったのかもしれません。日本麻酔科学会. 理事長声明「静脈麻酔薬プロポフォールの不適切使用について」(2024年10月16日)何が問題か?マイケル・ジャクソンの死因になっただけでなく、大学病院でも死亡が取り沙汰されたこともあり、プロポフォールの適切な管理に対する医学界の認識は高いはずです。とはいえ、内視鏡検査ではプロポフォールはたしかに使用されています(ちなみに当院の内視鏡検査はミダゾラム、フェンタニルが主です)。検診で行っている麻酔に、企画を乗っけた形になるので、違法性はありません。プロポフォールの内視鏡時の使用については、日本麻酔科学会の「内視鏡治療における鎮静に関するガイドライン」1)でも認められており、「適切なモニタリング下で使用すれば偶発症は増加せず、回復・離床時間が短く、長時間の手技中断も少なく、医師・看護師・患者の満足度が高い」とされています。さらに、「ASA-PS分類IまたはIIの患者に限り、気道確保等の訓練を受けた医師によるプロポフォール使用は可能」とされています。ただし、ガイドライン本文では、「プロポフォールによる鎮静が内視鏡室で非麻酔科医によって安全に行えるかどうかは、日本の医療現場や教育体制、現行の医療制度では明言できない」とも記載されており、欧米と比較して非麻酔科医によるプロポフォール使用の教育システムが整っていないという指摘があります。これにより、ダイジェストと本文の温度感に若干の違いを感じる部分もあります。ちなみに、プロポフォールは内視鏡検査時の使用について保険適用はありません。このあたりにも、若干の齟齬があります。ですから、おそらくエンタメでプロポフォールを使った時点で、どのような企画であっても炎上していたでしょう。だからこそ、伊集院 光さんが「地上波で放送できなかった」と番組でも発しています。日本麻酔科学会が書いているように「麻酔薬をいたずらに使用する行為は、極めて不適切」の一言に尽きます。何をもって「いたずらに」とするかは、何とも言えないところですが、「エンタメ目的で医薬品を使用する」のは個人的に賛成できません。この企画では検診が建前で、エンタメ目的ではないというスタンスですが、SNS上では議論が平行線のままです。想定範囲の炎上だったためか、その後配信は中止されることもなく、現在でもAmazonプライムで視聴できます。そして、その後も定期的に新しい企画が更新され続けています。制作側としては「地上波で批判が予想される企画は通らない」というジレンマを抱えていたのかもしれません。しかし、ここまで過激にしないと視聴者が付かないという現象は、テレビがエンタメとしての役割を終えつつあることや、スマホ世代の取り込みに苦戦している現状を映し出しているのかもしれません。参考文献・参考サイト1)日本消化器内視鏡学会内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン委員会. 内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン(第2版). 日本消化器内視鏡学会雑誌. 2020;62:1635-1681.

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GLP-1受容体作動薬が消化管の内視鏡検査に影響か

 上部消化管内視鏡検査(以下、胃カメラ)や大腸内視鏡検査では、患者の胃の中に食べ物が残っていたり腸の中に便が残っていたりすると、医師が首尾よく検査を進められなくなる可能性がある。新たな研究で、患者がオゼンピックやウゴービといった人気の新規肥満症治療薬(GLP-1受容体作動薬)を使用している場合、このような事態に陥る可能性の高くなることが明らかになった。米シダーズ・サイナイ病院の内分泌学者で消化器研究者のRuchi Mathur氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に10月1日掲載された。 GLP-1受容体作動薬には胃残留物の排出を遅延させる作用があり、便秘を引き起こすこともある。このため、この薬の使用者では、全身麻酔を必要とする処置を受ける際に食べ物を「誤嚥」するリスクが増加する可能性のあることが指摘されている。Mathur氏らは、GLP-1受容体作動薬使用者では消化管に残留物が見られることがあり、それが内視鏡検査で鮮明な画像を得る上で障害になる可能性があると考えた。 そこでMathur氏らは、2023年1月1日から6月28日の間に胃カメラか大腸内視鏡検査、またはその両方を受けた過体重または肥満の患者209人のデータを後ろ向きに解析した。209人中70人がGLP-1受容体作動薬使用者(GLP-1群、平均年齢62.7歳、女性36人)、残りの139人は非使用者(対照群、平均年齢62.7歳、女性36人)であった。胃カメラのみを受けたのはGLP-1群23人、対照群46人、大腸内視鏡検査のみを受けたのはGLP-1群23人、対照群45人、両方の検査を受けたのはGLP-1群24人、対照群48人だった。 胃カメラのみを受けた対象者のうち胃残留物が認められた者の割合は、GLP-1群で17.4%(4人)であった。これに対し、対照群と、胃カメラと大腸内視鏡検査の両方を受けた患者で、胃残留物が認められた対象者はいなかった。 また、大腸内視鏡検査または胃カメラと大腸内視鏡検査の両方を受けた患者のうち、「腸管の準備が不十分」(便が残存しているなど腸管洗浄が不十分な状態)であった者の割合は、GLP-1群で21.3%(10/47人)に上ったのに対し、対照群では6.5%(6/93人)であった。 ただし、研究グループは良い知らせとして、GLP-1受容体作動薬使用の有無に関係なく、対象患者において誤嚥、呼吸困難、誤嚥性肺炎は発生しなかったことを挙げている。 それでも研究グループは、「胃や腸に食物や便が残留するリスクの上昇は憂慮すべきことだ」と注意を促す。なぜなら、そのような状態での内視鏡検査は、「病変の見逃しや患者の不満、処置のキャンセル、医療資源の浪費といった重大なリスク」をもたらすからだという。 研究グループは、「本研究結果は、内視鏡検査前のGLP-1受容体作動薬の使用に関するガイドラインの更新が必要かどうかを判断するために、さらなる研究が必要であることを示唆するものだ」との見方を示している。

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嚥下障害診療ガイドライン 2024年版[Web動画付] 第4版

6年ぶり大改訂で解説もCQも大幅アップデートの最新版登場!アルゴリズム、総論・CQなど、全編にわたって大改訂されました。総論には嚥下圧検査の解説が追加され、臨床実践のブラッシュアップが期待できます。CQは全13項目設定され、呼吸筋訓練、神経筋電気刺激療法、栄養管理などの近年の臨床課題にも対応しています。また、特設サイトで嚥下内視鏡検査・造影検査の動画を視聴でき、より実践に近い形で学ぶことができます。総合的かつ実践的なガイドラインとして進化し続けています。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する嚥下障害診療ガイドライン 2024年版[Web動画付] 第4版定価3,960円(税込)判型B5判頁数108頁発行2024年9月編集日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会ご購入はこちらご購入はこちら

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インフルワクチンの日本人の心不全に対する影響~PARALLEL-HF試験サブ解析/日本心不全学会

 呼吸器感染症に代表されるインフルエンザ感染は、心筋へウイルスが移行する直接作用、炎症惹起性サイトカイン放出による全身反応などによって心血管障害を及ぼす。また、プラークの不安定化、炎症による心拍数の不安定化への影響なども報告されているが、海外研究であるPARADIGM-HF試験1)が検証したところによると、インフルエンザワクチン接種が心不全患者の死亡リスク低下と関連する可能性を示唆している。 そこで筒井 裕之氏(国際医療福祉大学大学院 副大学院長)らはPARADIGM-HF試験に準じて行われた国内でのPARALLEL-HF試験2)の後付けサブ解析として『国内心不全患者のインフルエンザワクチン接種と心血管イベントの関連性』について検証、10月4~6日に開催された第28回日本心不全学会学術集会のLate breaking sessionで報告した。なお、本研究はCirculation reports誌2024年9月10日号に掲載3)された。 本研究は、日本国内の左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)に対するサクビトリルバルサルタンの臨床試験であるPARALLEL-HF試験に登録された患者について、インフルエンザワクチンの接種率ならびに心血管イベントとの関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者223例のうち97例(43%)がインフルエンザワクチン接種を受けていた。・ワクチン接種群を非接種群と比較した場合の特徴として、高齢、BMI・収縮期血圧・eGFR低値があった。また、NYHA、LVEF、NT-proBNP、薬物治療について有意差はみられなかった。・ワクチン接種群の全死亡(調整ハザード比[HR])は0.83(95%信頼区間[CI]:0.41~1.68)、心肺またはインフルエンザに関連した入院/死亡は調整HRが0.80(95%CI:0.52~1.22)と低い傾向がみられた。・研究限界として、解析対象者が少数、ワクチン接種と予後との関連を解析している、ワクチンの詳細情報(種類、接種回数など)不十分などがあった。 日米欧の各診療ガイドラインでは“肺炎は心不全の増悪因子の1つ”と記されており、「日本国内では感染予防のため(クラスI、エビデンスレベルA)、米国では死亡率低下のためにreasonableである(クラスIIa、エビデンスレベルB)、欧州では心不全死亡低下のために[肺炎球菌ワクチンなども含めて]should be considered(クラスIIa、エビデンスレベルB)と推奨が記されている。接種目的は各国で異なるが欧米諸国の接種率は高い」と説明した。日本における心不全患者のインフルエンザワクチン接種率は国内の全体接種率が55.7%であることを見ても、低い傾向にあることが本研究より明らかになった。これを踏まえ、同氏は「本結果は海外のPARADIGM-HF試験のサブ解析と同様の結果を示した。現在、国内のHFrEF患者のインフルエンザワクチン接種率は不十分であるが、ワクチン接種による臨床的利益が期待できることが示された」と述べ、「ワクチン接種を推奨する医療の役割分担が不明瞭(かかりつけ医/一般内科/循環器専門医、クリニック/病院などの連携の必要性)、副反応による懸念、広報が不十分などの解決が喫緊の課題」と締めくくった。

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1次予防のICD装着患者に抗頻拍ペーシングは有効/JAMA

 近年、植込み型除細動器(ICD)の新たなプログラミング・ガイドラインが策定され、ICDの新技術の開発が進んでいるため、1次予防のICD装着患者における心室頻拍(VT)を停止させる方法としての抗頻拍ペーシング(ATP)の再評価が求められている。米国・ロチェスター大学のClaudio Schuger氏らAPPRAISE ATP Investigatorsは「APPRAISE ATP試験」において、1次予防として最新の不整脈検出プログラムを使用したICDを装着した患者では、電気ショックによる治療のみを行う方法と比較してショック作動の前にATPを1回行うアプローチは、全原因による初回ショック作動までの時間の相対リスクを有意に減少させ、適切なショック作動や不適切なショック作動が発生するまでの時間を改善することを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年10月3日号に掲載された。VT停止におけるATPの役割を評価する国際的な無作為化試験 APPRAISE ATP試験は、1次予防のICD装着患者において、最新のプログラムを用いてfast VTを停止させる際のATPの役割の評価を目的とする二重盲検無作為化臨床試験であり、2016年9月~2021年4月に北米、欧州、アジアの8ヵ国(日本を含む)の134施設で参加者を登録した(Boston Scientific Corporationの助成を受けた)。 対象は、年齢21歳以上、左室駆出率が35%以下であるため1次予防としてのICDが適応となる患者であった。被験者を、ATP+ショックを受ける群またはショックのみを受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、全原因によるショックが最初に作動するまでの時間とした。副次エンドポイントは、適切なショック(VTまたはVF[心室細動]に対して行われたショック)が最初に作動するまでの時間、不適切なショック(VT、VF以外のリズムに対して行われたショック)が最初に作動するまでの時間、全死因死亡、全原因によるショックが最初に作動するまでの時間と全死因死亡の複合であった。 本試験は、相対的マージンを35%とした同等性デザインで行われ、中間解析および同等性が証明されなかった場合の最終解析で優越性を評価した。ATP+ショック群の優越性を確認 2,595例(平均年齢63.9歳、女性22.4%)を登録し、1,302例をATP+ショック群に、1,293例をショック単独群に割り付けた。追跡期間中央値は、ATP+ショック群が38ヵ月、ショック単独群は41ヵ月だった。全体で644例が試験を完了せずに脱落した。 全原因によるショック作動は、ATP+ショック群で129例、ショック単独群で178例に発生し、Kaplan-Meier法による60ヵ月時の累積発生率の推定値は、それぞれ14.6%および19.4%であった。主要エンドポイントのハザード比(HR)は0.72(95.9%信頼区間[CI]:0.57~0.92)であり、同等性は確認されなかった。優越性解析では、ATP+ショック群のショック単独群に対する優越性が示された(p=0.005)。総ショック負荷には有意差がない 適切なショック(HR:0.73、95%CI:0.56~0.95)および不適切なショック(0.65、0.44~0.97)が最初に作動するまでの時間は、いずれもショック単独群に比べATP+ショック群でリスクが低かった。また、全死因死亡(1.15、0.94~1.41)および全原因によるショックが最初に作動するまでの時間と全死因死亡の複合(0.92、0.78~1.07)は、両群間に差を認めなかった。 ITT解析では、追跡期間中の100人年当たりの総ショック負荷は、ATP+ショック群が12.3、ショック単独群は14.9であり、両群間に統計学的な有意差はなかった(p=0.70)。 著者は、「ショック作動前に1回のATPを追加することにより、追跡期間中のショック負荷は改善しないものの、全原因によるICDのショック作動までの時間が有意に延長したため、1次予防のICD装着患者における第1選択の治療法として有効と考えられる」「これらのデータは、ATPは全原因によるショック作動の年間1%の絶対的減少をもたらすことを示しており、1次予防コホートにおいてICD器機を選択するための共同意思決定の際に考慮すべきである」としている。

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第214回 美容医療のトラブル増加、専門医資格の有無など報告義務化へ/厚労省

<先週の動き>1.美容医療のトラブル増加、専門医資格の有無など報告義務化へ/厚労省2.かかりつけ医機能報告制度、2026年夏から公表開始へ/厚労省3.新たな地域医療構想、急性期病院の集約化と外来医療の確保が課題に/厚労省4.2022年度、国民医療費46兆円超と過去最大、高齢化とコロナで増加/厚労省5.救急搬送で選定療養費徴収へ 軽症者増加で救急医療ひっ迫/茨城県6.新学長に山中 寿氏 不透明資金問題で理事ら総辞職/東京女子医大1.美容医療のトラブル増加、専門医資格の有無など報告義務化へ/厚労省美容医療に関するトラブルが増加していることを受け、厚生労働省は10月18日に「美容医療の適切な実施に関する検討会」を開き、医療機関に対し、安全管理状況の定期報告を義務付ける案を提示した。厚労省案では、美容医療などを行っている病院やクリニックに対し、安全管理状況を年1回、自治体に報告することを義務付ける事項などを検討した。国民生活センターなどへの美容医療に関する相談件数は、2023年度に5,507件と5年間で3倍以上に増加している。おもな相談内容は、皮膚障害などの健康被害や料金に関するものが多く、中には、カウンセラーや受付スタッフが施術を行っていたというケースも報告されている。このほか、医療機関に対して行った実態調査の結果、施術技術に関する研修や、施術後の管理についてのルールがないと回答した医療機関が多く、とくに麻酔下施術を行う医師に対する麻酔・全身管理に関する研修がないと回答した医療機関は60%を超えていた。こうした現状を受け、厚労省は報告の義務化を打ち出した。具体的には、専門医資格の有無や、副作用などの問題が起きた場合の相談窓口などを報告し、自治体がその内容を公表するとしている。また、検討会では、医療機関が遵守すべき法令や、医療事故発生時の対応などをまとめたガイドライン策定の必要性も議論された。さらに、保健所による立ち入り検査の法的根拠を明確化し、指導を強化する方針も示された。厚労省は、年内にも新たな対策をまとめる方針。参考1)第3回美容医療の適切な実施に関する検討会(厚労省)2)美容医療、安全管理体制報告・公表を検討 都道府県に年1回、厚労省案(CB news)3)美容医療 “受付スタッフが施術”のケースも 厚労省の被害調査(NHK)4)美容医療、安全管理状況の報告義務を議論 厚労省検討会、健康被害やトラブル増加(産経新聞)2.かかりつけ医機能報告制度、2026年夏から公表開始へ/厚労省厚生労働省は10月18日、自治体向け説明会を開催し、2025年4月から始まる「かかりつけ医機能報告制度」の詳細を明らかにした。この制度は、慢性疾患を持つ高齢者など地域住民が、身近な医療機関で継続的な医療を受けられる体制を強化することを目的としている。対象となるのは、特定機能病院と歯科医療機関を除くすべての医療機関。医療機関は「日常的な診療を総合的・継続的に行う機能」の有無や、時間外診療、入院・退院支援、在宅医療、介護との連携といった機能の提供状況を、毎年都道府県に報告する必要がある。初回の報告は2026年1~3月に行われ、都道府県は報告内容を確認した上で、2026年夏頃から順次公表する予定としている。報告された情報は、地域の関係者による協議の場で活用され、地域のかかりつけ医機能確保に向けた具体的な方策が検討される。そのため協議には、地域の実情に精通したキーパーソンを参加させることが重要となる。厚労省は、この制度を通じて、地域医療の充実と住民の健康増進に繋がることに期待を寄せている。参考1)かかりつけ医機能報告制度に係る第1回自治体向け説明会 資料(厚労省)2)「かかりつけ医機能」報告結果、26年夏ごろから公表 都道府県が順次(CB news)3.新たな地域医療構想、急性期病院の集約化と外来医療の確保が課題に/厚労省厚生労働省は、2040年頃を見据えた新たな地域医療構想の策定に向けて検討会で議論を進めている。10月17日に「新たな地域医療構想等に関する検討会」を開き、医療機関の機能分化と外来医療の確保について討論した。2040年までに高齢化の進展によって、医療需要は増加する一方、医療従事者の確保は困難になることが予想されている。とくに、救急医療や手術など高度な医療を提供する急性期病院においては、質の高い医療を提供し続けるために、一定の症例数を確保することが重要となる。検討会では、急性期病院の機能を明確化し、医療の質やマンパワー確保の観点から、都道府県への報告に当たり、一定の基準を設けることが提案された。具体的には、救急搬送の受け入れ件数や高度手術の実施件数などを基準とする案が示された。しかし、急性期病院の集約化は、一部病院の急性期からの撤退を意味し、病院経営や地域住民の医療アクセスへの影響も懸念されている。この課題を解決しつつ、地域の実情に応じた集約化を進めることが求められる。さらに2040年には、診療所医師の高齢化や医師不足により、診療所のない市区町村が342ヵ所に増加する可能性が指摘されている。地域住民が身近な場所で医療を受けられるよう、外来医療の確保も重要な課題となっている。また、検討会では、かかりつけ医機能を持つ医療機関と、紹介受診重点医療機関との連携強化、地域医療の確保、医療資源の有効活用などが議論された。具体的には、オンライン診療を含む遠隔医療の活用、医師派遣、巡回診療、診療所と病院の連携などが提案された。厚労省は、これらの議論を踏まえ、年内に新たな地域医療構想の大枠をまとめる予定。参考1)第10回 新たな地域医療構想等に関する検討会(厚労省)2)新たな地域医療構想、病院機能を【急性期病院】と報告できる病院を医療内容や病院数等で絞り込み、集約化促す-新地域医療構想検討会(Gem Med)3)265市区町村で診療所なくなる可能性、40年までに 医師が75歳で引退なら、厚労省集計(CB news)4.2022年度、国民医療費46兆円超と過去最大に/厚労省2022年度の国民医療費は、過去最大の46兆6,967億円に達したことが明らかになった。高齢化の進展に加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、前年度比3.7%増と大幅な伸びとなった。厚生労働省が10月11日に発表した「国民医療費の概況」によると、1人当たり医療費は37万3,700円。65歳以上は1人当たり77万5千円と、医療費全体の6割以上を占めていた。医療費の財源は、国民や企業が負担する保険料が約半分、公費が約4割、患者の自己負担が約1割。高齢化による医療費増加や団塊の世代の後期高齢者入りにより、75歳以上の医療費が増加傾向にあった。また、1人当たり医療費は、最高額の高知県と最低額の埼玉県で1.44倍の格差があり、依然として地域間での偏りがみられている。高齢者の医療費の伸びは、65歳未満と比べて低い水準に抑えられており、後発医薬品の使用促進などの効果と考えられる。一方、がん医療費は、65歳未満、65歳以上ともに、シェアは減少していたが、コロナの影響で検診などが控えられた可能性があるため、今後の高齢化の進行とともに新しい技術導入などで増加も予想されている。今後の課題としては、高齢化の進展に伴う医療費増加への対応、地域格差の解消、医療費の適正化などが挙げられている。参考1)「令和4(2022)年度 国民医療費」を公表します-46兆6,967億円、人口一人当たり37万3,700円-(厚労省)2)22年度の医療費、46兆円超 過去最大、コロナも影響(共同通信)5.救急搬送で選定療養費徴収へ 軽症者増加で救急医療ひっ迫/茨城県茨城県は、救急搬送件数の増加と軽症者の利用による救急医療現場のひっ迫を受け、2024年12月2日から救急搬送における選定療養費の徴収を開始すると発表した。救急車で搬送された患者のうち、救急要請時の緊急性が低いと判断された場合の搬送が対象となる。具体的には、軽度の切り傷や擦り傷、微熱のみ、風邪の症状のみなどが該当する可能性があるが、意識障害や痙攣、大量出血を伴う怪我などは、これまで通り緊急性が高いと判断される。選定療養費は、紹介状を持たずに大病院を受診する際に患者側が負担する。今回の制度見直しにより、救急搬送であっても、緊急性が低いと判断された場合には、この選定療養費が徴収されることになる。対象となる病院は、県内22病院で、金額は病院によって異なる。県は、この制度導入により、軽症者の安易な救急車利用を抑制し、重症患者の搬送を優先することで、救急医療体制の確保を目指す。なお、緊急性の判断に迷う場合は、「茨城県救急電話相談」(#7119または#8000)に相談するよう呼びかけている。参考1)救急搬送における選定療養費の徴収について(茨城県)2)茨城県、12月に救急搬送時の選定療養費徴収を開始、独自の工夫でデメリット解消を目指す(日経メディカル)3)救急搬送時の「選定療養費」県が大規模病院ごとの徴収額公表(NHK)6.新学長に山中 寿氏 不透明資金問題で理事ら総辞職/東京女子医大東京女子医科大学は、同窓会組織を巡る不透明な資金の動きがあった問題で、ガバナンス機能不全の責任を取り、理事会の全理事と監事が辞任したと発表した。新たに選任された学長は、国際医療福祉大学の山中 寿教授(70)で、就任日は10月23日。山中氏は、1983~2018年まで女子医大に在籍しており、臨床と研究両面で高い実績を上げていた。選考委員会は、山中氏を「学長にふさわしい」と判断し、全会一致で選出した。女子医大では、同窓会組織の一般社団法人「至誠会」を巡る不透明な資金の動きが発覚し、当時の理事長だった岩本 絹子氏が今年8月に解任されており、今回の理事・監事の総辞職と新学長の選任は、この問題を受けた組織改革の一環とみられている。参考1)新生東京女子医科大学のための学長候補者の選考報告について(東京女子医大)2)東京女子医大の全理事・幹事11人が寄付金問題で引責辞任、新学長に国際医療福祉大の山中寿教授(読売新聞)3)東京女子医大、理事ら辞任 新学長選任、不透明資金で(東京新聞)

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がん患者における気持ちのつらさガイドライン 2024年版

がん患者の精神心理的苦痛の緩和に関する、本邦初の指針現在のがん医療では、がんの診断や治療の過程で患者に生じる精神心理的苦痛の緩和も重要な課題とされている。本ガイドラインでは、そのような「気持ちのつらさ」の緩和に関する9件の臨床疑問を設定し、推奨と解説を提示した。総論の章ではがん患者における気持ちのつらさの定義や疫学、評価法、薬物療法・非薬物療法などに関する知見を包括的に解説した。明日からの臨床に役立つことを目指した、充実した内容の1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するがん患者における気持ちのつらさガイドライン 2024年版定価3,850円(税込)判型B5判頁数356頁発行2024年9月編集日本サイコオンコロジー学会/日本がんサポーティブケア学会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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潰瘍性大腸炎に対する抗TL1Aモノクローナル抗体tulisokibartの第II相試験(解説:上村直実氏)

 潰瘍性大腸炎(UC)の治療は、軽症例には従来の治療法すなわち5-ASA製剤、ステロイド、アザチオプリン、6-MP等免疫抑制薬が使用されるが、寛解が困難である症例やステロイド依存症例の中等度から重度UCの治療には、生物学的製剤や低分子化合物を用いた治療が主流になっている。厚生労働省の難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班の治療指針によると、インフリキシマブやアダリムマブなどの抗TNF阻害薬、インターロイキン(IL)阻害薬のウステキヌマブやミリキズマブ、インテグリン拮抗薬であるベドリズマブ、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のトファシチニブやフィルゴチニブなどの使用が推奨されている。しかし、UC症例の中には新たな薬剤でも十分な効果が得られない患者や副作用により治療が中断される患者が少なくなく、さらなるアプローチが必要となっている。 今回、ステロイド依存性または免疫抑制薬やTNF阻害薬などの生物学的製剤や低分子化合物による治療によっても寛解しない活動期UC患者を対象として、炎症性腸疾患の発症に対する関与が示唆されているヒト腫瘍壊死因子様サイトカイン1A(TL1A)に対するモノクローナル抗体であるtulisokibartの寛解導入に対する有効性と安全性を評価することを目的とした国際共同試験の結果が2024年9月のNEJM誌に掲載された。試験の結果、tulisokibartはプラセボと比べて安全性には差がなく、治療開始12週目の臨床的寛解および内視鏡的改善効果が有意に高率であったことが示されている。なかでも、プラセボの臨床的寛解率が1%であるのに対して実薬で26%と高率であった点は、対象症例が治療抵抗性の高い集団であったことを意味している。 一般の診療現場では、市販されている薬剤に抵抗性を示す患者を対象として本試験のようにプラセボ対応のRCTによる新規薬剤の臨床的寛解効果、内視鏡的粘膜改善効果、組織学的粘膜改善および粘膜治癒の有効性を検証する研究結果が重要であり、さらに、簡便に使用可能な高感度CRPや糞便中カルプロテクチンなど、炎症のバイオマーカーによる評価の結果は一般臨床現場のUC診療にとって大きな助けになると思われる。 なお、本試験は第II相試験であるが、症状の改善効果が非常に早い時期に確認されており、今後、より多くの症例を対象として、より長期の寛解導入および寛解維持効果を検証する第III相試験の結果からTL1A阻害薬が臨床の現場で使用可能となることが期待される研究結果と思われた。 最後に、クローン病や潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患に対する新規薬剤が次々と上市されていることから、ガイドラインの改訂方法も考慮すべきであると同時に感染症などの有害事象にも注意が必要であることを忘れてはならない。

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切除可能な胃がんに対する術前化学放射線療法の有用性は?(解説:上村直実氏)

 日本における胃がん治療は、遠隔臓器やリンパ節への転移がなく、がんの深達度が粘膜層までの場合は内視鏡治療が適応であり、がんが粘膜下層以深に達しているときは通常、外科治療が選択され、手術後の病理組織学的検査の結果で必要に応じて薬物療法が追加されるのが一般的である。なお、術前検査で遠隔臓器への転移がある場合などの切除不能がんには化学療法などの治療法が検討される(日本胃癌学会編『胃癌治療ガイドライン 2021年7月改訂 第6版』)。 一方、欧米諸国における胃がん診療は、わが国と大きく異なっている。医療保険制度の違いから内視鏡検査の適応がまったく異なることから内視鏡的切除が可能な早期胃がんの発見は稀であり、胃がんといえば進行がんが大半を占めている。周術期化学療法や放射線療法に対する考え方も大きく異なっており、わが国のガイドラインでは推奨されていない切除可能な胃がんに対する術前化学療法が、欧米諸国では標準治療となっている。さらに術前・術後の放射線療法に関しては日本では話題にも上がらない治療方針であるが、北米では食道がんと同様に術後化学放射線療法が胃がんの標準治療となっている。さらに今回は、手術可能な食道胃接合部腺がんを含む胃がんに対する術前化学放射線療法の有用性を検討した欧米10ヵ国の国際共同試験の結果が2024年9月のNEJM誌で報告された。 試験の結果、周術期化学療法に術前化学放射線療法を追加した場合、術後の病理組織学的検査による病理学的完全奏効率は有意に高率であったにもかかわらず、全生存期間および無増悪生存期間は改善せず、切除可能な食道胃接合部がんを含む胃がんの術前・術後の管理における放射線療法の役割は否定的であると考察されている。 日本の消化器内科医や外科医にとっては、放射線治療による直接的な局所効果による術後の病理組織学的改善率が高い結果は当然と思われる。筆者らが「現時点では、切除可能な胃・食道胃接合部がんの術前・術後の管理における放射線療法の役割はほとんどないが、今後、事後解析で術前化学放射線療法が有効な患者サブグループを特定できれば、将来の臨床試験のデザインに役立つと考えられる」とコメントしている点を考慮すると、この日本と欧米の胃がん診療に対する考え方の違いを理解し熟知しておくことは、国際会議の場において海外の研究者と討論する際に重要と思われる。

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