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妊娠悪阻は有害妊娠転帰と関連

 妊娠悪阻(hyperemesis gravidarum;HG)は母子双方の合併症リスクを高める可能性があることが、新たな研究で示された。HGは、早産や在胎週数に比べて小さい児(SGA児)などの有害妊娠転帰や貧血のリスク増加と関連し、このリスク増加は、妊娠第2トリメスター(妊娠13週以上27週未満)にHGにより入院した女性で高かったという。米スタンフォード大学医学部疫学・公衆衛生分野のRebecca Gardner氏らによるこの研究結果は、「American Journal of Epidemiology」に6月16日掲載された。 Gardner氏は同大学のニュースリリースで、「本研究で、HGは早産、貧血、SGA児、妊娠高血圧腎症、常位胎盤早期剥離のリスク上昇と関連していることが示された。HGによる入院は、その妊娠で種々の重篤な合併症が生じるリスクが高いことを示す重要なサインである」と述べている。 HGは、妊婦の70~80%に見られる一般的なつわりとは異なる。Gardner氏はニュースリリースで、「HGは単なるひどいつわりではなく、脱水や著しい体重減少を引き起こすほど重症の状態だ」と説明している。研究グループによると、HGの妊婦は、十分な栄養を摂取できず著しい栄養不足に陥ることで胎盤の発達や機能に異常が生じ、特定の有害妊娠転帰のリスクを高めるとする仮説が立てられているという。 今回の研究では、2007年から2011年の間に米カリフォルニア州で出生した約250万件の単胎出生を対象に解析が行われた。このうち2.2%(5万3,681件)では、母親がHGのために救急外来を受診または入院していた。 交絡因子を調整して解析した結果、HGはさまざまな有害妊娠転帰のリスク増加と関連していた。調整相対リスクは、妊娠高血圧腎症で1.18(95%信頼区間1.13~1.23)、妊娠高血圧で1.15(同1.09~1.22)、早産で1.25(同1.22~1.29)、SGA児で1.19(同1.16~1.22)、常位胎盤早期剥離で1.14(同1.05~1.25)、貧血で1.37(同1.33~1.40)であった。さらに、このような有害妊娠転帰のリスク増加は、妊娠第2トリメスターにHGで初めて入院した女性で高いことも示された。 Gardner氏は、「これまでの研究から、HGの妊婦では栄養摂取量が不足していることが分かっている。この状態は胎盤の発育に悪影響を与え、それが妊娠高血圧腎症やSGA児など、今回調べた一部の転帰のリスク上昇につながると考えられる」と述べている。 研究グループは、今回の結果は2018年に策定された、妊娠中の悪心・嘔吐に対してより早期かつ積極的な治療を推奨する診療ガイドラインを支持するものだとの見方を示している。Gardner氏は、「今回のデータは、医師にとっては、HGで入院した妊婦では特定の合併症についてより慎重な経過観察が必要となる可能性を示すものだ」と述べている。さらに同氏は、「HGの妊婦でも、多くの場合、母子ともに良好な転帰が得られることを知ってほしい。それでも、HGを軽視してはならない。より頻回な経過観察や制吐薬の必要性を医師に相談し、自分自身のために積極的に声を上げることが大切だ。HGは我慢して乗り切るものではない」と呼びかけている。

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デュシェンヌ型筋ジストロフィー〔DMD:Duchenne muscular dystrophy〕

1 疾患概要■ 定義デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy:DMD)は、機能的ジストロフィンの欠損により、進行性の筋力低下および筋萎縮を来すX染色体潜性遺伝疾患である。小児期に発症する筋ジストロフィーの中で最も頻度が高く、重症型に位置付けられる。■ 疫学男児出生約3,500~5,000人に1人の割合で発症する。人種による発症頻度の明らかな差はない。女性保因者も骨格筋症状や心筋症を呈することがあり、定期的な評価が推奨される。■ 病因X染色体短腕(Xp21.2)に位置し、筋細胞膜直下に存在する細胞骨格タンパク質であるジストロフィン遺伝子(DMD遺伝子)の変異(欠失、重複、微小変異など)が原因である。ジストロフィンは細胞骨格と細胞外基質を連結し、筋収縮時の機械的ストレスから細胞膜を保護する役割を担う。機能的ジストロフィンが欠損することで筋細胞膜の安定性が失われ、筋線維の壊死と再生が繰り返され、最終的に筋組織が脂肪組織や結合組織に置換される。■ 症状乳幼児期から運動発達の遅れ(定頸や歩行開始の遅延など)として認識されることが多い。幼児期には転びやすい、走れない、階段昇降が困難といった症状が顕在化する。床から立ち上がる際に、自身の膝や大腿に手をついて立ち上がる登攀性起立(ガワーズ徴候)や、腓腹筋の仮性肥大が高頻度に見られる。また、認知機能や発達特性(知的障害、注意欠如・多動症、自閉スペクトラム症など)を合併することがある。筋力低下は体幹および近位筋から始まり、次第に遠位筋へと進行する。従来は10歳前後で歩行を喪失することが多かったが、現在ではステロイド療法などにより歩行可能期間は延長している。歩行喪失後は車椅子の使用が必要となる。病状の進行に伴い、脊柱変形(側弯症)、呼吸筋力低下による呼吸機能障害、および拡張型心筋症に類似した心筋障害を合併する。嚥下機能障害や消化管の蠕動運動低下も生じうる。さらに、長期経過では骨粗鬆症や骨折、肥満なども重要な合併症となる。■ 分類ジストロフィン遺伝子変異に起因する疾患群は「ジストロフィノパチー」と総称される。DMDはジストロフィンがほぼ完全に欠損する重症型である。その一方で、遺伝子変異があるものの、異常なジストロフィンタンパク質が一部産生され、臨床症状がより軽度で歩行機能が長期に維持されるタイプを「ベッカー型筋ジストロフィー」(BMD)と分類する。■ 予後かつては20歳前後で呼吸不全や心不全により死亡することが多かった。しかし、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)などの呼吸管理の進歩、心筋保護薬の早期導入、ステロイド治療の普及、さらに多職種による集学的ケアの確立により、歩行可能期間および生命予後は大きく改善しており、40~50代以上まで生存する患者も増えている。2 診断 (検査、鑑別診断を含む)初めに診断のフローチャートを示す(図)。図 デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の診断フローチャート画像を拡大する血液検査では、筋崩壊を反映してクレアチンキナーゼ(CK)値が著明に上昇する(数千~数万IU/L)。とくに発症初期や無症状の乳幼児期においても異常高値を示すため、スクリーニングとしてきわめて有用である。偶発的な肝酵素(AST、ALT)の上昇を契機に発見されることも多く、肝疾患との鑑別においてCK値の確認が必須である。確定診断には遺伝子検査が行われる。まず、MLPA法などによりDMD遺伝子の欠失・重複変異を検索する。これで変異が同定されない場合は、次世代シークエンサー(NGS)などを用いて点変異や微小欠失・挿入などの塩基配列解析を行う。遺伝子診断で確定できない特殊例では筋生検を考慮する。鑑別診断としては、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、肢帯型筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症(SMA)、先天性ミオパチー、多発性筋炎などが挙げられる。診断確定後は遺伝カウンセリングを行い、保因者診断や家族への遺伝学的情報提供についても検討する。3 治療現在、疾患を完全に治癒させる根治療法は確立していないが、病状の進行遅延を目的とした薬物療法と、合併症に対する対症療法・集学的ケアが行われる。薬物療法の基本はステロイド薬(プレドニゾロンなど)の投与である。これにより筋力低下の進行を遅らせ、歩行可能期間の延長、呼吸・心機能の低下抑制、側弯の進行防止などの効果が得られる。また、近年、特定の遺伝子変異を対象としたエクソンスキップ療法が実用化されている。これはアンチセンス核酸を用いてmRNAの成熟過程で特定のエクソンを読み飛ばし、機能は不完全ながらも一部機能するジストロフィンタンパク質を産生させる治療である。国内ではエクソン53スキッピング薬であるビルトラルセン(商品名:ビルテプソ点滴静注)が承認されている。対症療法として、関節可動域(ROM)維持、装具療法、立位保持、呼吸リハビリテーションを継続的に実施することが重要である。呼吸機能障害に対しては、早期からの呼吸機能評価とNPPVの導入、機械的咳介助が行われる。心筋障害に対しては、ACE阻害薬の早期からの投与が推奨されている。病状の進行や変化に応じて、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(エプレレノンなど)の併用などが検討される。4 今後の展望(治験中、研究中の診断法や治療薬剤など)今後の有望な治療法の1つが遺伝子治療である。アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて、全身投与により骨格筋および心筋へのマイクロジストロフィン遺伝子の導入を図る治療法(デランジストロゲン モキセパルボベク、商品名:エレビジス点滴静注)は、国内でも2026年2月に承認された。本来のジストロフィン遺伝子は巨大でありAAVベクターに全長を搭載できないため、マイクロジストロフィンは筋細胞膜の安定化に不可欠な最重要機能ドメイン(領域)のみを残し、全長の約3分の1に小型化した人工遺伝子である。導入後の長期的な有効性評価に加え、安全性課題として急性肝障害、血小板減少、心筋障害、および重篤な免疫性筋炎への注意とモニタリングが今後の重要な課題となっている。また、筋肉の成長を阻害するミオスタチンを標的とした抗体薬や、炎症・線維化を抑える新たな低分子化合物などの臨床試験が進行しており、病態や進行段階に応じた治療の選択肢がさらに広がることが期待される。5 主たる診療科(紹介すべき診療科)小児神経科、脳神経内科、小児科、リハビリテーション科、整形外科、循環器内科、呼吸器内科、臨床遺伝科など※本疾患は進行に伴い全身性の合併症や認知・発達特性を伴うため、スクリーニングで疑われた段階、あるいは確定診断後は、神経筋疾患を専門とする医療機関において、リハビリテーション、循環器、呼吸器、整形外科、栄養、心理、遺伝カウンセリングなど多職種連携による集学的治療が可能な体制へ紹介することが望ましい。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考となるサイト(公的助成情報、患者会情報、主要な研究グループ、その他参考となるサイト)診療、研究に関する情報NMDポータルサイト(神経筋疾患ポータルサイト):デュシェンヌ型筋ジストロフィー(国内の神経筋疾患に関する情報を集約した総合サイト。最新の診療ガイドラインやケア、研究動向に関するリソースが網羅的に提供されている)難病情報センター 筋ジストロフィー(指定難病113)(医療費助成の対象疾患であり、公的制度の概要や申請手続きに関する基礎情報が得られる)Remudy(神経筋疾患患者登録システム)(国立精神・神経医療研究センター[NCNP]が運営する患者レジストリ。疫学データと市販後調査を区別して収集・管理しており、適切な情報提供や臨床試験の強力な基盤として機能している)MDクリニカルステーション(筋ジストロフィーの臨床研究班による、医療従事者および患者・家族向けの診療ガイドラインやケアマニュアル等の情報提供サイト)患者会情報一般社団法人 日本筋ジストロフィー協会(JMDA)(患者や家族への支援、情報提供、交流活動を行う代表的な患者会組織) 1) 日本神経学会ほか監修. デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン2014. 南江堂:2014. 2) Komaki H, et al. Ann Clin Transl Neurol. 2020;7:2393-2408. 3) Mendell JR, et al. N Engl J Med. 2023;388:2368-2371. 4) Nakamura H, et al. Orphanet J Rare Dis. 2013;8:60. 5) 難病情報センター. 筋ジストロフィー(指定難病113). 公開履歴初回2026年7月24日

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関西医科大学 呼吸器腫瘍内科学講座【大学医局紹介~がん診療編】

倉田 宝保 氏(主任教授)池田 慧 氏(准教授)吉田 清里 氏(病院助教)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴関西医科大学呼吸器腫瘍内科学講座は、肺がんを中心とする胸部腫瘍に対する診療・研究を行う、呼吸器腫瘍内科学を冠した大学講座として全国で初めて設立された講座です。私たちは「優れた呼吸器内科医であり、かつ優れた腫瘍内科医であること」を人材育成の基本理念とし、肺がん薬物療法のみならず、呼吸器感染症や間質性肺疾患など呼吸器内科全般、内科学全般の診療能力を兼ね備えた医師の育成を目指しています。当講座の特徴は、日常診療から生まれた課題を研究へ発展させ、その成果を患者さんへ還元する「臨床重視」の姿勢にあります。若手医師も早期から診療・研究に主体的に参加し、多施設共同臨床研究や治験などに携わる機会が豊富にあります。また、関連病院への出向においては、1人ひとりのキャリアプランを尊重し、できる限り本人の希望に沿った施設で経験を積めるよう配慮しています。大学病院での高度ながん診療から地域医療まで幅広く経験できる環境も当講座の強みです。今後は、地域のがん診療を支える中核講座として、診療・研究・教育をさらに発展させるとともに、患者さんに寄り添いながら新しい医療を創造できる人材を育成していきます。呼吸器内科医として、そして腫瘍内科医として成長したい若手医師の皆さんを心より歓迎します。力を入れている治療/研究テーマ当科は西日本随一の症例数を誇り、日々の診療から多様な経験を積むことが可能です。各種ガイドラインや臨床研究グループへ委員を多数輩出しており、豊富な企業治験から当科主導の医師主導臨床研究まで、日本の最先端の肺がん診療をじかに体感できる刺激的な環境が整っています。また、指導医層の充実も大きな魅力です。日本の肺がん領域における若手リーダーの1人である山中 雄太講師、国立がん研究センターから帰任し臨床とアカデミックな研究を牽引する竹安 優貴助教、がんリハビリの第一人者としてフレイル外来を立ち上げた勝島 詩恵診療講師など、それぞれ独自の特色や得意分野を持つエキスパートが揃っています。医局の雰囲気、魅力私自身、1年前に赴任してまいりましたが、手前味噌ながら医局員は皆人柄がよく、非常によい雰囲気だと実感しています。学ぶ意欲を持つ若い先生を大切にし、時に優しく、時に厳しく育むための最高の土壌がここにはあります。最先端の環境と温かい仲間に囲まれ、共に高め合える方をお待ちしています。同医局を選んだ理由私が当医局を選んだ理由は、医局全体の雰囲気がよく相談しやすい環境が整っていると感じたからです。上級医の先生方も気軽に相談に乗ってくださり、日々安心して診療に取り組むことができています。また、女性医師も多く活躍しており、子育てをしながら働く先生もいらっしゃるため、私自身も育児と仕事を両立しながら安心してキャリアを続けられる環境であることも大きな魅力です。現在学んでいること現在は肺がん診療を中心に研修を行っており、診断から薬物療法、治療効果や有害事象の評価まで専門的な知識と経験を積んでいます。一方で、呼吸器疾患に限らず、併存疾患を含めた内科的な全身管理についても幅広く学ぶことができる点が大きな特徴だと感じています。また、積極的な治療だけでなく、患者さん1人ひとりの価値観や生活背景に寄り添った緩和医療についても学ぶ機会が多く、日々多くのことを吸収しています。専門性と総合的な診療能力の両方を高められる環境で、充実した研修を送っています。関西医科大学 呼吸器腫瘍内科学講座住所〒573-1010 大阪府枚方市新町2丁目5番1号問い合わせ先koshunai@kmu.ac.jp医局ホームページ関西医科大学 呼吸器腫瘍内科学講座専門医取得実績のある学会日本内科学会日本呼吸器学会日本臨床腫瘍学会日本呼吸器内視鏡学会研修プログラムの特徴(1)個々人のキャリアプランに合わせた柔軟なプログラム画一的な研修ではなく、1人ひとりの目標や希望を尊重し、個別のキャリアプランに合わせた柔軟な研修プランを提供して個人の成長をサポートします。(2)経験豊富なスタッフによる手厚い指導体制それぞれの得意分野を持つエキスパートが揃っており、複雑な症例や研究に関しても、先輩医師からじかに丁寧なアドバイスを受けられる体制が整っています。(3)互いに助け合い、高め合える良好な医局環境医局員同士の仲がよく、風通しのよい雰囲気が特徴です。気軽に相談し互いにサポートし合う環境が、日々の質の高い診療や優れた研究成果に直結しています。詳細はこちら

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PCI実施の急性冠症候群患者、LDL-C40未満でMACEリスク最小化/CVIT

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行した急性冠症候群(ACS)患者において、PCI後早期におけるLDL-C 40mg/dL未満の達成は、長期的な主要心血管イベント(MACE)リスクの最小化に直結し、慢性冠症候群(CCS)患者と比較してもはるかに大きな臨床的恩恵をもたらすことが明らかになった。本結果は片岡 有氏(国立循環器病研究センター 循環器内科)が2026年7月16~18日に開催された第34回日本心血管インターベンション治療学会のLate Breaking Clinical Trials 1にて発表し、JACC Asia誌オンライン版2026年7月17日号に同時掲載された。一律の管理目標から「臨床病態に応じた個別化」へ 現行の欧州心臓病学会(ESC)などの『脂質異常症管理のためのガイドライン』では、心血管イベントの二次予防、とくにACSを含む超高リスク患者に対してLDL-C 55mg/dL未満、さらに一部の極高リスク患者には40mg/dL未満の達成を推奨している。しかし日本の実臨床では、ACSと安定期病態であるCCSに一律のLDL-C管理基準値が適用されており、両病態での脂質低下療法の恩恵の差異や、40mg/dL未満達成への真の臨床的意義について、直接比較した多施設データは十分に示されていない。また、J-PCIレジストリデータ(2024年)によると、日本国内で年間約9万5,000例のACS患者がPCI治療を受けている。 そこで同氏らは、国内3施設(国立循環器病研究センター、柏厚生総合病院、近森病院)でPCIを受け、3年間フォローアップされた冠動脈疾患(CAD)患者2,560例(CCS:878例、ACS:1,682例)を対象に大規模多施設レトロスペクティブ解析を実施し、LDL-C値層別化によりACS、CCSでの心血管系の転帰の違い、LDL-C 40mg/dL未満への低下効果について検証した。本研究におけるLDL-C達成は、PCI後2ヵ月(8週間)時点で測定された値とし、主要評価項目はMACE(心臓死、非致死性心筋梗塞[MI]、非責任病変における冠血行再建術)*とした。*再狭窄やステント血栓症に伴う標的病変再血行再建術(TLR)は評価項目から除外 主な結果は以下のとおり。・PCI後2ヵ月時点でのLDL-C達成中央値は、CCS群で61.0mg/dL、ACS群で60.5mg/dLであった。・LDL-C 55mg/dL未満の達成率は、CCS群で32.5%、ACS群で29.4%と両群間に有意差はなかった。・CCSのLDL-C 70mg/dL以上の患者群を基準として多変量調整ハザード比(aHR)を算出・比較したところ、ACSでLDL-C 70mg/dL以上にとどまった群では、aHR2.31(95%信頼区間[CI]:1.61~3.31、p<0.001)と、心血管イベントリスクが大幅に上昇していた。・LDL-C 55mg/dL未満を達成したACS患者では、aHR0.29(95%CI:0.17~0.51、p<0.001)とMACEリスクが極めて低いレベルに抑えられた。これに対し、CCS患者のaHRは0.67(p=0.088)であった。・カプランマイヤー曲線による推定でも、ACS患者での55mg/dL未満達成群と非達成群の乖離は、CCS患者と比較して顕著であった。・LDL-C 40mg/dL未満を達成した超厳格管理群(CCS:10.9%、ACS:9.2%)の追加解析を実施したところ、ACS患者のaHRは0.20(95%CI:0.06~0.72、p=0.039)で、40~54mg/dL群(aHR:0.88、p=0.009)と比較してもリスクが大幅に減少していた。・連続的なLDL-C値とMACEリスクの関連を評価するスプライン曲線解析において、CCS患者では全体的な関連性が認められたものの非線形性は有意ではなかった(Non-linearity p=0.211、Overall association p=0.040)。・ACS患者では非常に強い非線形性を示し(Non-linearity p<0.001、Overall association p<0.001)、LDL-Cの低下がMACEリスク低下に極めて高感度に反映されることが示唆された。 本結果の限界として、観察研究の枠組みであること、日本人のみを対象としたデータ、脂質評価タイミングといった点が挙げられるが、PCI後のACS患者で、病態の安定化と新規イベント予防のためにPCI後2ヵ月(8週間)という極めて早期の段階でLDL-C値を70mg/dL未満→55mg/dL未満→40mg/dL未満と段階的かつ強力にコントロールすることの重要性が示された。 なお、上述のようにACS患者でPCI治療を受けている10万例弱に対して本解析結果を適用した場合、日本人ACS患者の約70%(年間約6万6,500例に相当)がPCI後にLDL-C 55mg/dL以上の高リスク水準に留まっていると推計される。これらを踏まえて、同氏は「ACSというハイリスク症例に対しては、躊躇することなく早期から強力なLDL-C管理(Strike Early)である“LDL-C 40mg/dL未満”という超厳格な目標達成を目指すことが重要である」と締めくくった。

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ガイドラインで変わり始めたうつ病治療/塩野義

 2025年12月に『うつ病診療ガイドライン2025』が公表された1)。ゼロベースで全面的に改訂された本ガイドラインでは、エビデンスに基づく治療に加え、患者と医療者が治療方針を共に決める「SDM:Shared Decision Making(共有意思決定)」や、症状を定量的に評価しながら治療を進める「MBC:Measurement-Based Care(測定に基づく診療)」が重視された。 塩野義製薬は2026年7月1日に「新ガイドライン導入で変わり始めたうつ病治療 患者と医師が“一緒に考える”診療の最前線を解説」と題したプレスセミナーを開催した。加藤 正樹氏(関西医科大学 精神神経科学講座)が登壇し、うつ病診療の課題、『うつ病診療ガイドライン2025』の概要、新たに期待される薬剤について解説した。うつ病診療の課題―早期改善への期待と治療継続の難しさ 多くの抗うつ薬が開発されてきたにもかかわらず、薬物治療に対する医師の満足度は低いことが指摘されている。患者を対象とした調査では、治療に対する要望として「症状を早く改善してほしい」が最も多く、「自分の病気について詳しく知りたい」「有効な薬があるなら早く服用したい」「症状のつらさを医師に聞いてほしい、理解してほしい」といった回答が続いた。 この背景には、従来の抗うつ薬の効果が現れるまでには、一定の時間を要するということがある。既存の抗うつ薬のほとんどがモノアミン仮説に基づいて開発されたものであり、セロトニンやノルアドレナリンなどのモノアミン神経伝達を調節する。これらの薬剤では、シナプス間隙のモノアミン神経伝達には比較的早期から変化が生じる一方、臨床的な抗うつ効果を実感するまでには一定の時間を要する。患者によっては、効果を実感する前に有害事象が発現し、治療を中止してしまうこともある。 治療中止の背景には、薬剤の有害事象や効果不十分だけでなく、用量不足、治療期間不足、患者の希望と治療内容の不一致、医師と患者のコミュニケーション不足など、医療者側の要因もある。患者側でも、改善を実感できないことによる治療意欲の低下や、症状が軽減した段階で「治った」と判断して服薬を中止することがある。  このような背景から、コミュニケーションや薬物治療の質の向上を目指して『うつ病診療ガイドライン2025』が作成された。「診療の地図」として作成された新ガイドライン 本ガイドラインは、「今どこに立ち、次に何を考えるべきか」を整理する診療の地図として設計され、ゼロベースで全面的に改訂された。改訂を貫く3つの考え方として、「Patient-Centered Care」「SDM」「MBC」がある。 Patient-Centered Careの観点では、本ガイドラインの作成に当事者・家族も参加し、治療方針の検討に、当事者・家族の声が組み込まれた。 SDMは、医師が一方的に治療方針を決めるのでも、患者に判断を委ねるのでもなく、医師が信頼できる情報と各治療のメリット・デメリットを提示したうえで、患者の希望、過去の治療歴、副作用歴などを踏まえて治療を決定するものである。うつ病治療では、ある選択肢がすべての患者に明確に優れているとは限らない。効果だけでなく、副作用、服薬方法、生活上の制約などに対する患者の価値観も異なるため、患者が治療方針の決定に参加することが重要となる。 SDMの実践に欠かせないのがMBCである。これは、PHQ-9やQIDSなどの定量的な評価尺度で症状や治療反応を評価し、数値を基に治療を調整することで、漫然とした治療継続を防ぐものだ。患者自身が質問票に回答することで、直近の睡眠、食欲、集中力、希死念慮などを定期的に振り返ることができる。診察時に伝え忘れやすい症状を補足できるほか、医師も変化を把握しやすくなり、重要な症状の聞き漏らしを防ぐことにつながる。また、評価結果を患者にフィードバックすれば、薬剤を増量・変更する理由も共有しやすくなる。MBCを導入した群と導入しなかった群を比較した無作為化試験のメタ解析では、MBC導入群の寛解率が約10%高かったことも報告されている2)。「今後期待される治療」として掲載されたズラノロン 本ガイドラインでは、各臨床疑問に対する推奨とは別に、うつ病診療に役立つ情報を「トピックス」として掲載している。その中の1つが「今後期待される治療」である。 ガイドライン作成のためにシステマティックレビューを開始した時点で、本邦で使用できなかった薬剤は、臨床疑問に対する正式な推奨の対象には含まれない。このため、従来の抗うつ薬とは異なる作用機序を持つ治療薬などが、将来の治療選択肢としてトピックス内で紹介された。 そのなかで、本邦で使用可能となった薬剤がズラノロンである。ズラノロンは、GABAA受容体に作用し、GABAのシグナル伝達を促進することで抗うつ作用を発揮する新規作用機序の薬剤で、2026年3月に発売された。 ズラノロンの特徴の1つは、連日服用を長期間継続する従来の抗うつ薬とは異なり、一定期間の投与を基本とする点にある。具体的には、14日間の投与後に最低6週間の休薬期間を設ける。これは「2週間服用すればうつ病の治療が終了する」という意味ではない。投与終了後も効果の持続が期待される一方、十分な改善が得られない患者や、時間の経過とともに症状が再び悪化する患者も想定される。そのため、投与終了後も症状や社会生活上の機能を継続して評価し、必要に応じて他の薬物療法や精神療法、再投与などを検討する必要がある。 最後に、これからの新しいうつ病診療について、加藤氏は「うつ病治療は、医師にすべてを任せるものから、患者が自身の希望を伝え、医療者と共に治療を選択するものへと変わりつつある。最初の治療で薬剤が合わない場合でも、それは次の治療選択肢を検討する段階に進んだことを意味するため、焦る必要はない。治療は段階的に続けることが重要である」とまとめ、講演を締めくくった。

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高齢者DLBCL診療における治療強度の考え方【高齢者がん治療 虎の巻】第11回

講師紹介<今回のPoint>高齢者DLBCLでは暦年齢のみで判断せず、G8などのスクリーニングと高齢者機能評価(GA)でfit/unfit/frailを評価し、治療強度を検討する。層別化に応じて、fitには治癒を目指す標準治療、unfitにはR-miniCHOPなどの減量レジメンを検討する。frailでは治療目標を再確認し、低強度治療または緩和的治療を含めて個別に判断する。Pola-R-CHP療法は初発DLBCLの標準治療の一つであるが、80歳を超える患者では臨床試験のエビデンスが限られる。心機能、併存症、本人の希望を確認し、減量投与を含めて慎重に検討する。<症例>82歳、男性。2ヵ月前から頸部リンパ節腫大と食欲低下、体重減少を認め、近医から紹介された。頸部リンパ節生検の結果、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)と診断され、免疫染色の結果、Non-GCB型(Hans分類)に分類された。PET-CTを撮影したところ、腹腔内リンパ節にも病変を認め、臨床病期はLugano分類でStage III、LDH高値、ECOG Performance Status(PS)1で、国際予後指標(International Prognostic Index:IPI)はhigh-intermediate riskだった。併存症は高血圧症、持続性心房細動、慢性心不全、2型糖尿病で、抗凝固薬、利尿薬、経口血糖降下薬を内服していた。退職後は自宅近くの畑仕事を日課としており、発症前のADLは自立、買い物や通院も自力で可能だった。最近は倦怠感のため畑に出る頻度が減っているが、身の回りのことは自立している。G8は11点、Charlson Comorbidity Index(CCI)は慢性心不全1点、糖尿病1点の計2点であった。本人は「また畑に出られるようになりたい。治る可能性があるなら、できる治療は受けたい」と話している。一方、家族は「年齢も心臓も心配なので、強い治療は避けたほうが良いのではないか」と不安を示している。高齢者DLBCLの治療方針悪性リンパ腫は高齢者に好発する代表的な造血器腫瘍であり、本邦では年間約3万6,000人が新たに診断され、その多くを70代から80代の患者が占めます1)。組織型としてはDLBCLが最も多く、高齢DLBCL患者を診療する機会は年々増加しています。DLBCLは高齢者であっても、薬物療法によって治癒が目指せる疾患ですが、若年者に比べて予後が不良であることが多く、その背景には生物学的要因や臨床的要因が複雑に絡み合っていると考えられています。『造血器腫瘍診療ガイドライン第3.1版(2024年版)』には、高齢者DLBCLに対する標準治療として、80歳未満に対しては若年者と同様の治療法が、80歳以上の高齢者に対しては、用量あるいはコース数を減らしたR-CHOP療法が妥当な治療選択肢の一つであると記載されています2)。高齢者機能評価(GA)に基づく治療強度の決定高齢者DLBCLでは、暦年齢のみで治療強度を決定するのではなく、患者個々の予備能を評価したうえで治療方針を定めることが重要です。『高齢者のがん薬物療法ガイドライン 改訂第2版』でも、初発高齢者DLBCLの治療方針の判断にGAを行うことが弱く推奨されています3)。GAは、身体機能(ADL・IADL)、併存症、認知機能、栄養状態、社会的サポートなどを多面的に評価する手法であり、これにより患者をfit(標準治療に忍容性がある)、unfit(標準治療は困難だが減量治療は可能)、frail(緩和的対応が中心)に層別化します。簡便なスクリーニングには本症例でも用いられているG8などが、より包括的な評価には総合的なGAが活用されます。fitと判断される患者には、若年者と同様に治癒を目指した標準治療が推奨されます。一方、unfitやfrailと判断される患者では、毒性を軽減しつつ一定の有効性を確保する目的で減量レジメンが選択され、なかでもR-miniCHOP療法が代表的な選択肢です。Peyradeらによる第II相試験では、80歳以上のDLBCL患者に対し、標準量の約半量に減量したR-miniCHOP療法が、忍容性良好でありながら治癒も期待できることが示され、高齢者に対する標準的選択肢の一つとして位置付けられています4)。Pola-R-CHP療法という新たな選択肢近年、初発DLBCLに対する治療は大きく変化しました。第III相POLARIX試験では、R-CHOP療法のビンクリスチンを抗体薬物複合体であるポラツズマブ ベドチン(商品名:ポライビー)に置き換えたPola-R-CHP療法が、従来のR-CHOP療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に改善し、本邦でも初発DLBCLに対する標準治療の一つとして位置付けられるようになりました5)。サブグループ解析では、60歳以上の高齢者やIPI高リスク群、Non-GCB(ABC)型などでPola-R-CHP療法の相対的な有用性が示唆されています。本症例のような高齢・Non-GCB型のDLBCLは、Pola-R-CHP療法の効果が期待される集団と考えられます。ただし、POLARIX試験の対象は18〜80歳であり、80歳を超える高齢者は含まれていません。したがって、本症例のような80歳を超える患者にどこまで適応を広げてよいかは、現時点で明確なエビデンスがありません。近年は80歳以上を含む実臨床でのデータ(リアルワールドデータ)が少しずつ報告されつつあり6)、ポラツズマブ ベドチンに併用するCHPを適切に減量することで、80歳以上でもPola-R-CHP療法を安全に実施しうる可能性が示されています。一方で、心機能低下例などアントラサイクリンの使用が難しい症例も少なくなく、適応は個々の予備能と併存症を踏まえて慎重に判断する必要があります。本症例への治療方針本症例を改めて整理すると、82歳と高齢であり、PS 1、ADLは自立していますが、G8 11点、CCI 2点で、機能的にはおおむねunfitに近い状態と評価できます。本人は治癒を目指した治療を希望していますが、持続性心房細動や慢性心不全といった心疾患を有し、ドキソルビシンによる心毒性のリスクには十分な注意が必要です。また、組織型はNon-GCB型であり、Pola-R-CHP療法の上乗せ効果が期待しやすい点は、治療選択の後押しとなります。以上を踏まえると、治療開始前に心エコーなどで心機能を評価し、ドキソルビシンの使用が許容される場合には、CHPを適切に減量したPola-R-CHP療法も選択肢となります。ただし、80歳を超える患者はPOLARIX試験の対象外であることから、現時点では実臨床データに基づく慎重な判断が必要です。もし心機能低下が明らかな場合には、ドキソルビシンを含まないレジメンも検討する必要があります。いずれの場合も、本人・家族の意向と予備能を共有しながら、治療強度を個別に最適化していく姿勢が重要です。G-POWER研究:日本の高齢DLBCLに合ったGAを目指して高齢DLBCLに対するGAの活用は国際的に進んでいますが、海外のデータをそのまま日本の実臨床に当てはめることには限界があります。生活環境、家族支援、医療アクセス、入院・外来治療の体制、介護保険を含む社会制度は国によって異なるためです。現在、国内において70歳以上の高齢DLBCL患者を対象に、GAの意義を明らかにする多施設前向き観察研究(G-POWER研究)が進められています7)。本研究では、G8、ADL、IADL、認知機能、うつ状態、併存症、Clinical Frailty Scaleなどを評価し、初回治療の内容、有害事象、治療完遂、予後との関連を検討します。日本の高齢DLBCL患者において、どのGA項目が治療選択や有害事象予測に本当に役立つのかを明らかにすることは、今後の実臨床に直結する課題です。GAを「評価して終わり」にせず、治療を支える具体的な介入につなげるためにも、本邦独自のエビデンス構築が期待されます。 1) がん情報サービス:全国がん登録 2) 日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン第3.1版 2024年版. 金原出版. 2024. 3) 日本臨床腫瘍学会・日本癌治療学会編. 高齢者のがん薬物療法ガイドライン 改訂第2版. 南江堂. 2026. 4) Peyrade F, et al. Lancet Oncol. 2011;12:460-468. 5) Tilly H, et al. N Engl J Med. 2022;386:351-363. 6) Yamada T, et al. Ann Hematol. 2025;104:5191-5200. 7) UMIN-CTR:臨床登録試験情報(G-POWER研究)

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ベンゾジアゼピンやZ薬を安全に減量するためのポイント

 英国・North East London NHS Foundation TrustのMark Horowitz氏らは、ベンゾジアゼピン(BZD)やZ薬を安全に減量するための薬理学的原則についての最新レビューを報告した。Psychological Medicine誌2026年6月18日号掲載の報告。 主な内容は以下のとおり。・多くのガイドラインにおいて、BZDおよびZ薬の減薬は、長期服用患者の大半に対して推奨されている。・嗜癖とは異なる身体的依存が生じている場合、とくに長期服用後では離脱症状が重度かつ遷延する可能性があるため、中止は困難であり、失敗リスクが高まる。・不快感を最小限に抑えつつ、患者が許容できる方法でどのように減量すべきかについては、明確な指針が不足している。・現在のガイドラインもさまざまであり、直線的な減量(例:1~4週間ごとに1mgずつ減量)を推奨するものもあれば、比例的な減量(例:直近の用量の5~10%を毎月減量し、低用量になるにつれて減量幅も小さくする)を推奨するものもある。・BZDの用量とGABA-A受容体における活性との関係は双曲線である。すなわち、低用量域では急激に上昇し、高用量域では平坦化する。・その結果、直線的な減量を行うと、受容体占有率の変化が徐々に大きくなり、離脱症状の増悪が予測される。一方、双曲線的または比例的な減量を行えば、薬理作用は直線的に減少する。・数日または数週間かけて減量するよりも、数ヵ月や数年かけてゆっくり減量するほうが、成功する可能性が高いと考えられる。・実際は、離脱症状の重症度に応じて減量速度を調整すべきである。・最終段階でBZDおよびZ薬を中止する際の「一段階の減量」が、薬理作用の観点からそれまで許容できていた減量幅よりも大きくならないように注意する必要がある。そのため、一部の患者では最終的な用量をきわめて少量(例:ジアゼパム換算量0.2mg以下)にするなどの調整が必要となる。・低用量域で微量な減量を行う際には、液剤や調剤による製剤が有用になる場合もある。・直線的な減量と双曲線的な減量を比較するランダム化比較試験が行われているが、その結果を待つ間も、ガイドラインにおいては双曲線的な減量法が推奨されるべきである。

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第325回  「地域医療構想策定ガイドライン」やっと公表(前編) 国の人口減少と高齢患者急増に対する強い危機感あらわ、「再編・集約化」の取り組みに最重点

今年春にも公表される予定も、延びに延びて7月にやっと公表こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。ワールドカップ、終わってしまいましたね。日本でのテレビ観戦は、寝不足との戦いでなかなかハードでしたが、無料で観ることができるのですから贅沢は言えません。商業主義的過ぎるとの批判や、トランプ大統領のFIFAへの異例の介入騒動などもありましたが、サッカー素人の私でもいろいろな意味で楽しめた大会でした。日本経済新聞を購読している方はご存知だとは思いますが、大会期間中、同紙はほぼサッカー専門紙の趣で、下手なスポーツ新聞より詳しいワールドカップの記事を載せていました。同紙は経済紙にもかかわらず、武智 幸徳記者、阿刀田 寛記者という2人の著名なサッカー記者がいます。彼らの記事(戦評)はもはや文芸評論(あるいは文学)の域に達しており、感心しながらも逆に笑ってしまう記事も多々ありました。武智記者は7月11日付の同紙記事で、アルゼンチン対エジプト戦でのエジプトの得点がVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)で取り消された件について触れ、「VARという制度が導入されてから、ピッチ上のプレーは区切りをつけた一つひとつの固まりとして分類されるようになった。文章に例えるなら、段落が変わるごとに付箋をつけて文頭と文末を示すようなものである。(中略)文頭に得点をした側の反則があれば文末の得点が取り消されるのはやむを得ない」と独自の解釈を披露。一方の阿刀田記者は、アルゼンチン対イングランド戦を評した7月17日付の同紙記事で、この試合をマラドーナの神話が生まれた1986年の試合と比較、「今回の試合はそれともひと味違う。何しろ彼らは、メッシの美技という美酒に酔っただけではなく、先制した後のイングランドの弱腰を末代まで笑う権利を手にしたのだから」と、文学的過ぎる戦評を書いていました。7月21日付の決勝を報じた記事でも、「牙が折れてもスペインにかみついて歯形を残したアルゼンチンの散りざまは、まことにアルゼンチンらしかった」と最後までアルゼンチン礼賛のトーンは不変でした。ちなみに阿刀田記者は作家・阿刀田 高氏の息子さんです。さて、今回は7月3日に厚生労働省がようやく公表した「地域医療構想策定ガイドライン」について書いてみたいと思います。今年春にも公表される予定でしたが、延びに延びて7月になってしまいました。厚労省は遅れの原因について説明していません。一説には、医政局の担当課が中東情勢に伴う医療資材不足の対応に追われたことが一因と言われています。仮にそれが本当だとしたら、厚労省、人手不足過ぎるのでは、と心配になります。2028年度中に策定、2035年度を目途に一定の成果を確保2025年12月に成立した改正医療法で定められた「新たな地域医療構想」をどう策定するかについては、2026年3月まで開かれた地域医療構想及び医療計画等に関する検討会で議論が続けられてきました。公表された「地域医療構想策定ガイドライン」は、この検討会の「とりまとめ」を基に、基本的な考え方や具体的な策定の手順を厚労省が整理したものです。このガイドラインを基に、各都道府県は2027年度上半期頃までに、地域医療構想調整会議において課題の整理や構想区域の点検・見直しなどを行います。そして2028年度までに、各都道府県において急性期拠点機能を担う医療機関の具体的な医療機関名の決定も含めて「地域医療構想」として策定し、「2040年を見据えた医療提供体制について、2035年度を目途に、一定の成果を確保する」としています。つまり、2029年3月までに新たな地域医療構想を策定し、地域の医療機関の役割分担、棲み分けの方向性を決定、2035年度までに構想を一定程度進め、2040年頃に必要とされる医療提供体制にできるだけ近づけておく、という流れになります。地域医療構想の見直し8つのポイント新たな地域医療構想の概要については、本連載の「第294回 改正医療法やっと成立、医療機関の集約化、統合・再編、病床削減さらに加速へ 『地域医療構想の見直し』 8つのポイント」でも解説しました。そこでも書いた8つのポイントをおさらいしておきましょう。1)病床の機能分化だけでなく、外来・在宅、介護との連携、人材確保等の計画も2)医療法の規定で「地域医療構想」が「医療計画」よりも上位の概念に3)基準病床数は「新たな地域医療構想」における将来(2040年)の病床必要量の範囲内に4)病床機能の区分、「回復期」は「包括期」に名称変更5)新たに「医療機関機能報告」の制度が創設6)人口規模が小さ過ぎる構想区域は合併、大き過ぎる構想区域は分割7)精神医療も地域医療構想で位置付け8)病床数の削減を支援する事業を都道府県が実施できるように人口減少と高齢患者急増に対する国、厚労省の非常に強い危機感以上の8ポイントを念頭にガイドラインを読んでみたのですが、一読して伝わってくるのは、人口減少と高齢患者急増に対する国、厚労省の強い危機感です。ガイドラインは冒頭の「I.地域医療構想の考え方」の「1.2040年に向けた医療提供体制について」中で、「背景」について、我が国においては、今後、人口構造や疾病構造の変化に伴い、医療の需要が量的、質的に大きく変化することが見込まれている。特に、団塊の世代が後期高齢者となる2025年以降、2040年に向けて、高齢者人口の増加に伴い、高齢者救急や在宅医療の需要が増加する一方、急性期医療の需要が多くの地域で減少することが見込まれる。また、生産年齢人口の減少に伴い、医療機関における医師や看護職員等の担い手の確保がますます困難となることが想定される。このため、地域において必要な医療提供体制を将来にわたり確保していく観点から、2040年頃の医療需要を見据えつつ、医療機関の役割分担や連携のあり方を整理し、地域全体として適切な医療提供体制を構築することを目的として、地域医療構想を推進する必要がある。──と記しています。各地で人口減少が急激に進む中、地域の急性期拠点機能を集約化などによって維持するとともに、急性期拠点機能から“落ちこぼれていく”医療機関を生き長らえさせ、需要が急増する高齢者救急や在宅医療に対応できる医療機関に再編していくことが、地域医療構想の主眼であることがわかります。急性期医療については広域での集約化をそのため、ガイドラインの複数の項目において、「再編・集約化」を強く意識した文言があるのが大きな特徴です。「I.地域医療構想の考え方」の「3.医療機関機能の確保について」の中では、「医療機関の連携・再編・集約化」について、「大都市型の地域においては、医療需要の総量としては大きく減少はしないが、手術等の集学的な医療は相対的に減少し、高齢者救急等の包括期の医療需要や慢性期の需要が相対的に増加していく」ため「それぞれの地域ごとに当該状況に応じた医療機関の連携・再編・集約化の取組が求められる」としています。加えて、「急性期医療については、構想区域ごとに、緊急性の高い疾患や頻度の高い疾患等に対応できる体制の確保が必要となる。がん手術やその他の高度な外科手術については、症例数が多い医療機関ほど、医療の質が高いことが一般的に知られており、こうした高度な手術等については、地域の医療資源に応じて、構想区域よりも広域な単位で集約して実施することを検討する必要がある」と、広域での機能の集約化の検討も要請しています。また、「救急車の受入や手術の実施を行う医療機関の集約化や役割分担、夜間に緊急手術を行う医療機関の集約化等も取組として検討が必要である」と急性期拠点機能や急性期病床の集約化以外の連携・再編・集約化の必要性についても言及しています。市町村には自治体病院の経営は二の次にダウンサイジング、再編・集約化求めるさらに、「I.地域医療構想の考え方」の「2.地域医療構想について」の中の「関係者に期待される役割等」でも再編・集約化の必要性を強調しています。関係者の中で、とくに市町村等に求められる役割について、「病院開設者としては、人口の少ない地域における自治体立病院は、当該地域での唯一の基幹的な医療機関として地域を支えている医療機関でもある一方で、都市部においては、他の医療機関と機能が競合している医療機関もあるなど、地域における役割は様々」とした上で、「自治体立病院の開設者としての観点だけではなく、他の医療機関と同様に、病床数の適正化(ダウンサイズ)や提供する医療内容の見直し等を行い、地域全体の医療提供体制の構築・維持や連携・再編・集約化の取組への協力が求められる」と、自治体病院の経営を優先させるのではなく、周辺医療機関との棲み分けの中でダウンサイジング、再編・集約化に取り組むよう要請しています。同様に公立・公的病院等に対しても、「県立病院や公的病院等、その設置主体である都道府県、日本赤十字社、済生会、厚生連、国立病院機構、労働者健康安全機構等においても、病床数の適正化(ダウンサイズ)や提供する医療内容の見直し等を行い、地域全体の医療提供体制の構築・維持や連携・再編・集約化の取組への協力が求められる」とダウンサイジング、再編・集約化の検討を迫っています。こうした流れを受けて、公立病院を管轄する総務省の公立病院改革は、経営改善というよりも、ダウンサイジング、再編・集約化に軸足を移していくでしょう。その結果、人口減少地域では閉院する医療機関もこれまで以上に増えていくと予想されます。高齢者救急・地域急性期機能と急性期拠点機能については併存できず新たに創設される「医療機関機能報告」は新たな地域医療構想の最大の“肝”と言えますが、「とりまとめ」までの議論では言われていなかった新たなルールが盛り込まれました。以前は、医療機関は複数の機能を報告することもできるとされていましたが、「高齢者救急・地域急性期機能と急性期拠点機能については、医療資源を多く要する医療や高齢者救急の役割分担を明確化するためのものであり、両機能を一つの医療機関が報告することはしない」と明示されたのです。このルールは、地域包括医療病棟や地域包括ケア病棟入院料を持つ急性期病院には、少なからぬ影響が出ると考えられます。(この項続く)

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慢性便秘の高齢者、見直すべき処方は?【高齢者処方のデザイン】第4回

以下の症例に対する前医の処方箋には「替えるべきポイント」が3つ隠れている。あなたは見抜けるか?【症例】患者78歳・女性高血圧、胃食道逆流症(GERD)、過活動膀胱、アレルギー性鼻炎で通院中。慢性便秘に対し酸化マグネシウムが長期処方され、近年は1日3g(1g×3回)まで増量されている。直近の血液検査でeGFR 35と中等度の腎機能低下を認め、血清マグネシウムは3.2mg/dL(基準上限超)であった。最近、全身の倦怠感と食欲低下を訴えて来院した。便通については「酸化マグネシウムを飲んでもすっきり出ない」とのことで、頓用のはずのセンノシドを自己判断で連用しており、服用のたびに強い腹痛・差し込むような便意を自覚している。診察上、明らかな腹部膨満や腸閉塞所見はなく、浮腫も乏しい。バイタルは安定しているが、深部腱反射はやや減弱している。【Before:前医の処方箋】A)ロサルタン 25mg 1日1回 朝食後B)ランソプラゾール 15mg 1日1回 朝食後C)ソリフェナシン 5mg 1日1回 朝食後D)ジフェンヒドラミン 50mg 1日1回 就寝前(鼻炎・かゆみに対して)E)酸化マグネシウム 1g 1日3回 毎食後F)センノシド 12mg 便秘時頓用(実際には連日服用)A)ロサルタン 25mg 1日1回 朝食後B)ランソプラゾール 15mg 1日1回 朝食後C)ソリフェナシン 5mg 1日1回 朝食後D)ジフェンヒドラミン 50mg 1日1回 就寝前(鼻炎・かゆみに対して)E)酸化マグネシウム 1g 1日3回 毎食後F)センノシド 12mg 便秘時頓用(実際には連日服用) 1) Mori H, et al. Nutrients. 2021;13(2):421. 2) Wagg A, et al. Curr Med Res Opin. 2016;32(4):621-638. 3) Saad R, et al. Expert Rev Gastroenterol Hepatol. 2008;2:497-508. 4) 日本消化管学会編. 便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症. 南江堂; 2023. 5) 2023 American Geriatrics Society Beers Criteria Update Expert Panel. J Am Geriatr Soc. 2023 Jul;71:2052-2081. 講師紹介

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早朝の収縮期血圧、新築マンションへの引越しで◯mmHg低下

 高断熱・高気密および省エネ・創エネ性能を備えた新築マンション「ZEH-M(Net Zero Energy House Mansion)」への転居前後での冬季の家庭血圧について、同一被験者で前後比較を行った結果、高血圧治療中の患者や血圧高値者において、早朝収縮期血圧が最大で約7mmHg有意に低下した。本結果は大阪大学の中神 啓徳氏らの研究グループの研究によって明らかになり、Hypertension Research誌2026年7月13日号に掲載、第26回日本抗加齢医学会総会で報告された(2026年6月26〜28日開催)。 日本の多くの家屋は冬季の室温が低く、WHOが健康維持のために勧告している最低室温18℃を満たさない住宅が約9割に上る。早朝に血圧が急上昇するモーニングサージは、とくに冬季において脳卒中や心筋梗塞などの心血管イベントを引き起こす強力なトリガーとして知られており、室温を高く保つことがリスク低減に重要であると考えられている。 そこで同氏らは、近年の新築マンションにおいてZEH-Mの普及による室内環境の改善が急速に進んでいることに着目し、ZEH-Mへの転居が居住者の室内温熱環境および家庭血圧に及ぼす影響を明らかにすることを目的として検証を行った。研究の詳細とその結果 本研究は、全国のZEH-M仕様の新築マンション(大京および穴吹工務店が供給・分譲)を契約した人を対象に実験モニターを募集。対象は、治療中の重大な疾患がない健康な複数人世帯とした。同一被験者において、転居前(一般的な旧居:2024年2〜3月)と転居後(新築ZEH-M:2025年2月)に、洗面所の室温測定および上腕式血圧計を用いた家庭血圧・脈拍の測定(1日4回:起床後30分以内2回、就寝前2回)を3週間実施した。このうち、14日以上の血圧測定データがそろった起床後データ179例分、就寝前データ178例分を最終解析対象とした。 主な結果は以下のとおり。・被験者の平均年齢は42.5±11.4歳、このうち高血圧(降圧薬内服中)は16例(9%)、血圧高値(早朝収縮期血圧125mmHg以上)は32例(18%)であった。・179例の早朝収縮期血圧の解析では、転居前後に有意な変化は認められなかった(転居前113.9mmHg vs. 転居後114.4mmHg、p=0.403)。・高血圧(降圧薬内服)群では、早朝の収縮期血圧が転居前から転居後に約7mmHgの有意な低下を認め(130.3±13.0mmHg vs.122.9±11.9mmHg、p=0.018)、血圧高値(早朝収縮期血圧125mmHg以上)の群でも約5mmHgの有意な低下を認めた(135.9±9.9mmHg vs.131.3±14.4mmHg、p=0.020)。・年齢別解析において、60歳以上のサブグループ(18例)では早朝収縮期血圧が有意に低下した(125.7±17.4mmHg vs.119.5±14.7mmHg、p=0.032)。ただし、BMI 25以上の肥満者(30例)では、血圧が高いにもかかわらず転居前後で血圧に有意な変化はみられなかった。・高血圧群や血圧高値群において、早朝拡張期血圧(高血圧群で-5.4mmHg、p=0.003)および就寝前の収縮期血圧(高血圧群で-7.3mmHg、p=0.017)も転居後に有意な低下を認めた。・転居後の実測洗面室温は、日中・夜間ともに多くの家庭で15℃以上を保っており、夜間でも室温が下がりにくい良好な温熱環境が確認された。・アンケートによる主観的な寝室の温熱環境評価(寒さの感覚)も、高血圧群を中心に大幅に改善した一方で、肥満者では室温変化に対する主観的な影響が少ない傾向が示唆された。居住空間の変化、7mmHgの降圧を実現 中神氏は、循環器内科の立場から冬季の血圧変動の危険性に触れ、「モーニングサージの時間帯、とくに冬の朝は危険だと昔から言われている。血圧にはさまざまな急性リスク因子があるが、それらが重積して血圧が跳ね上がったときに心血管イベントが発生する。だからこそ、室温を適温に保つことは非常に重要な要素になる」と説明。また、転居後の洗面室温のデータを示しながら、ZEH-M仕様のマンションでは、夜間であってもそれほど室温が下がることがなかったことに触れ、アンケート結果からも主観的な寒さが大幅に改善している点を強調した。 一方で、対象者全体の解析で有意差が出なかった点については、「新築マンション購入者を対象としたため、平均年齢が42.5歳と若く全体の平均血圧も低かった。本研究で(全体での)差が出なかった要因の1つはここにある」と分析。BMI 25以上の肥満者で血圧や主観的温感の変化がみられなかったことに対しては、「肥満傾向の人は寒さへの耐性があるのではないか」と言及した。 最後に、高血圧群で認められた約7mmHgという降圧効果の大きさについて、「高血圧ガイドラインの生活習慣修正において、体重を1kg減らすと血圧が約1mmHg下がると言われている。今回のように室温によって収縮期血圧を7mmHg下げようと思うと、7kgも減量しなければならない計算になる。そのように考えると、住環境の室温を高く保つことによる今回の降圧効果は、非常に大きなインパクトを与える結果だ」と締めくくった。

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患者説明に使う資料や情報源は?~がん専門医500人に聞く

 情報過多の現代、医療情報も多種多様なレベルのものが世の中にあふれている。数十年前と比べ医師と患者の立場がフラットになりつつある昨今、患者自身の学習意欲もあいまって、診療時間中のコミュニケーションに費やす時間は増加傾向にある。診療の効率化が求められる中でも、医師にとっては患者に対し、患者自身の疾患に関する正しい知識を端的に提供したいというニーズは根強いのではないだろうか。 患者の視点に立った情報発信については、若尾 文彦氏(国立がん研究センターがん対策情報センター本部)率いる研究班*や「がん情報の均てん化を目指す会」**をはじめとする多くの団体が検証を重ねている。後者の団体が2024年11月5日に公表したディスカッション・ペーパー『がん情報の均てん化に向けて~がん患者がオンライン上でがん情報を入手・活用する際の課題と提言~』では、がん患者がオンライン上で情報を入手・活用する際の課題が示された。とくに注目すべきは、患者が情報を入手・精査する際の相談先として、8割が「主治医」を挙げていた点である。*「厚生労働科学研究費補助金 がん対策推進総合研究事業 _科学的根拠に基づくがん情報の提供及び均てん化に向けた 体制整備に資する研究」**がん患者が適切なタイミングで適切な情報にアクセスすることで、治療や周辺情報に関する知識を高め、適切に治療を受け、がんと共生できる環境を目指すことを目的に2024年4月に発足 そこでCareNet.comでは、患者から相談を受ける医師側が、日常診療でどのような情報源を案内しているかを明らかにするため、日常診療でがん患者の診察を行っている200床以上の施設に勤務する会員医師501人(呼吸器科、消化器科、外科、乳腺外科、血液内科、泌尿器科、腫瘍科)に対し、「医師のがん患者への情報提供方法」に関するアンケートを実施。患者への情報提供資料やその情報源、および活用理由について調査した。告知時の相談内容と使用媒体 まず、回答者の「勤務先施設の区分」(Q1)について、「地域がん診療連携拠点病院」所属の医師が最も多く、「都道府県がん診療連携拠点病院」「いずれも該当しない」と続いた。また、年代別では30~50代が多く、30~40代では「都道府県がん診療連携拠点病院」、その他の年代では「地域がん診療連携拠点病院」に所属する医師の割合が高かった。 「患者や家族への告知時、またはその後の診察で受けることが多い質問・相談」(Q2)については、「病気に関する情報」「病期と治療の選択肢」「予後・余命」が上位を占め、次いで「副作用や対処法」「検査・診断方法」となった。これらは施設区分による大きな差異はみられなかった。なお、前述のディスカッション・ペーパーにおいても、患者側が「十分な情報があった」と回答した項目とほぼ一致しており、患者自身の検索行動だけでなく、医師からの情報提供が一定の影響を与えている可能性が示唆される。 これらの相談に対し「利用する媒体やツール」(Q3)を尋ねたところ、「製薬企業が作成している患者向け資料説明」「自施設で作成している患者向け説明資料」「各学会発行のガイドライン(患者向け含む)」の利用率が高かった。一方で、回答者の約1/3が「手書きの図やメモ」を用いた説明を行っていると回答し、Web媒体系資料の活用頻度は総じて低い傾向にあった。診療科別では、血液内科において製薬企業作成資料の利用が突出しているほか、外科ではガイドラインの利用率が高いという特徴がみられた。 なお、Q3で「患者向けWeb媒体の資料」と回答した医師が利用するサイト(Q4)については、国立がん研究センターの「がん情報サービス」が最多であり、厚生労働省のホームページ、がん関連学会のサイトがそれに続いた。患者の情報収集への意識、医師による「相談支援センター」の活用実態 「病態や治療内容を調べる方法について患者から尋ねられた経験」(Q5)については、全体の60%が「ある」と回答しており、患者側から能動的に調べ方を問うケースは、やはり一定数存在することが伺える。 一方、無料・匿名で利用できる「がん相談支援センターの認知と活用」(Q6)については、ギャップが生じる結果となった。半数以上の医師が存在を認知しているものの、実際に自ら活用を促したことがある医師は2割弱にとどまった。この傾向は診療科や年代によってばらつきがみられ、とくに若年発症が多くサバイバー層も厚い血液内科において、医師からの利用勧奨が少ない結果となっている。これについては、医師による直接の勧奨ではなく、院内の医療連携を通じて看護師やメディカルソーシャルワーカーらが役割を担っている背景も推測される。また年代別では、20〜30代の若手医師の間で認知が浸透している一方、40代以降ではやや認知度が下がる傾向が確認された。 今回の調査では、このほかに自由記入として「患者への説明時に不安を感じること」「説明時に困っていること」「説明時に意識していること」についても回答を得ている。臨床現場におけるコミュニケーションの標準化やリソースの最適化に向け、示唆に富む具体的な声が集まったため、詳細はぜひアンケート結果のデータを参照されたい。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。がん患者への情報提供方法

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第304回 総合診療は「ブルーオーシャン」か?~「ほかに選択肢がなかったから」ではなく、キャリア戦略としての総合診療を考える~

先日、高校の同級生で、開業医や病院の経営コンサルタントを長年やっている公認会計士と久しぶりに飲みました。そのとき、彼がポロっと漏らした言葉が妙にリアルでした。「最近さ、勤務医の先生から『新しく開業したいから手伝って』って頼まれても、正直『はい、喜んで!』とは引き受けづらいんだよね。これからの医療情勢を考えると、経営が軌道に乗るまで相当大変だからね」この言葉、今の医療界の空気を実によく表していると思いませんか?過日、「病院の急性期ベッド数、全国で40年に4割減 厚生労働省が必要数を試算」(日経新聞)の報道にもあったように、勤務医にとって高齢者救急の患者数が増えているのに「病床削減」という内容に驚きを持たれた方も多いと思います。そんな中、2025年12月に成立した改正医療法による外来医師過多区域での新規開業の要件追加(いわゆる開業規制の開始)が盛り込まれるなど、開業を巡る状況もだんだん厳しくなっており、若い先生方は頭を悩ませているのではないでしょうか。かといって、一時期勝ち組のように話題になっていた自由診療(美容クリニックなど)への転身もその実態の裏側が徐々に明らかになっており、全員が成功するわけではないという現実が見えてきました。従来型のキャリアパスだけでは、どこも黄色信号が灯りつつあるのが現状です。そんな中、国がいま「イチ押し」しているのが「総合診療」です。かつて総合診療(総診)といえば、「なんでも薄く広く診る先生」「専門が決まらなかった人の行き先」などと、誤解されることもありました。しかし今、時代は大きく変わっています。医師の偏在、高齢者救急患者の増大、在宅医療へのシフト、そして相次ぐ病院再編による専門医の充足…。気が付けば総診は、「これから最も社会的ニーズが高まる基本領域」として、国の医療政策の根幹に据えられ始めています。厚労省が都道府県に6月末に発出した最新の「医師確保計画策定ガイドライン」でも、その本気度が伝わってきます。これまでのように医師不足なら「各診療科の医師数を増やせば解決」というフェーズはとうに終わり、これからは医師不足に対しては経済的インセンティブや勤務環境の改善、リカレント教育を総動員した集中的な対策が始まろうとしています。では、なぜ今、総診が「ブルーオーシャン」になりえるのか。臨床現場目線でひも解いてみましょう。私たちが向き合う「患者像」の地殻変動最大の理由はシンプルです。目の前にやってくる患者さんの姿が変わったからです。これからの地域医療では、「単一疾患をその専門医だけが診ていればOK」という患者さんは減っていきます。代わりに増えるのが、高齢で、複数の持病があり、認知症やフレイルを抱え、社会的・経済的な背景も複雑…という、いわゆる「マルモ(Multiple morbidity:多疾患併存)」の患者さんです。厚労省のデータでも2020年から2040年にかけて、85歳以上の救急搬送は75%増、在宅医療の需要は62%増という凄まじい予測が出ています。その一方で、多くの診療科で予定手術の件数は大幅に減少に転じる見込みです。つまり、医療のニーズそのものが「高度急性期・臓器別」から、「高齢者救急・在宅・慢性期・地域包括ケア」へと、完全に重心を移しつつあります。これは何も「地方」や「へき地医療」に限った話ではありません。大都市でも、救急外来や施設、在宅でこうした複雑な患者さんは溢れています。急性期病院の高齢患者さんを担当する医師は、救急部門、一般急性期病床、地域包括ケア病床、診療所、どこに身を置くとしても、「総合診療的な視点とスキル」がなければ現場が回らない時代が来ています。その証拠に、去年(2025年)の日本内科学会雑誌12月号は「内科医が『かかりつけ医』になるとき-変化する医療と内科医の責任」として総合診療医による特集号で、ネットでも非常に反響がありました。従来の各臓器別の専門診療では、かかりつけ医を求める患者のニーズに合致しくなっていることが明らかになっています。国の政策も「総診推し」へ本腰先日公開の政府行政事業レビューによると2025年度目標であった全都道府県での「大学医学部附属病院に総合診療医センター設置」について、その実績は12にとどまり、計画未達であることが明らかになりました。「なんだ、全然進んでないじゃないか」と思うかもしれません。しかし、裏を返せば、「国がこれから目標達成に向けて強化に動く領域」だということです。有識者からも「インセンティブの強化や待遇改善を幅広く検討せよ」と強い提言が出ています。2018年度に始まった総合診療専門医制度ですが、2025年4月時点での総数は937人。これからの爆発的な高齢者救急や在宅ニーズを考えると、ハッキリ言って圧倒的に専門医が足りていません。だからこそ、今、総診を選ぶ若手医師には、国の制度整備、教育の拠点、地域からの求人、あらゆる行政支援が集中する「先行者利益」があると言えます。医学生・若手医師にとっての「リアルなキャリア戦略」「地域医療に貢献する」という高潔な理念も素敵ですが、もっと現実的な「キャリアの強み」として総診を捉えてみましょう。メリットは大きく3つあります。(1)とにかく「出口(働く場所)」が広い病院であれば「総合内科、救急、地域包括医療・ケア病棟」、開業すれば在宅医療、診療所、へき地、さらには行政や医学教育まで、キャリアの選択肢がとにかく多彩です。ライフステージに合わせたシフトがしやすいのも魅力です。(2)強烈な「政策の追い風」がある厚労省が指定する「重点医師偏在対策支援区域」では、診療所の承継・開業支援だけでなく、「土日の代替医師の確保支援」まで検討されています。「総診で地域に出ると休みが取れない」という常識を、国が予算をつけて変えようとしています。(3)セカンドキャリアとしての親和性ガイドラインでは、中堅・シニアの臓器別専門医が総診的スキルを学ぶための「リカレント教育(学び直し)」も始まっています。「若手だけの道」ではなく、内科、外科、小児科、救急などを極めた先生が、将来的に在宅や老年医療へスイッチするための強力な武器になります。ただし、甘い話ばかりではない(便利屋リスクへの警戒)ここまで良い面を挙げましたが、リアルな課題もあります。大学のセンター設置が進まないのは、指導医不足や「結局、総診って何をしてくれるの?」というキャリアパスの見えにくさがあるからです。現場の理解が追いついていない病院では、残念ながら「人手不足を埋めるための便利屋」として使われてしまうリスクが依然としてあります。だからこそ、若手の先生方に伝えたいのは、「総診は素晴らしいから直感で選べ」ではなく、「だからこそ、教育体制と指導医の質をシビアに見極めて選んでほしい」ということです。救急、内科、小児科、診断推論、さらには病院運営や地域連携まで体系的に学べる「きちんとした支援体制」があるプログラムを選ぶこと。ただの人手不足の穴埋めにしかならない環境とは、ここで大きな差がつきます。医学生・若手医師へのメッセージ総診は、もはや「専門がない医師の行き先」ではありません。これからの日本医療の最大の主戦場である「複雑な患者を丸ごと診て、医療と介護と生活をつなぐ」という、極めて高度な専門性が必要な診療科となります。臓器別専門医として1つの領域をディープに極める道も、当然リスペクトされるべき素晴らしいキャリアです。ただ、これからの医療現場で「引く手あまた」になるのは、専門臓器の知識に加えて、「患者全体を診る力」「地域で支えるシステムを知る力」を掛け合わせられる医師です。最初から総診を志すのも良し、他科を経てから総診のマインドを取り入れるのも良しというキャリアもあるかと思います。「需要は最大、政策の追い風もあり、そして、ライバルはまだ少ない」「総合診療は、これからの時代を生き抜く医師にとって、極めて合理的な『ブルーオーシャン(成長領域)』である」と断言していいと私は思っています。 参考 1) 医師確保計画策定ガイドライン~第8次(後期)~(厚労省) 2) 政府の行政事業レビュー(内閣府) 3) 病院の急性期ベッド数、全国で40年に4割減 厚労省が必要数を試算(日経新聞) 4) 【2026年度開始】医師の開業規制とは? 知っておきたい規制地域や対策(ドクタービジョン)

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診療科別2026年上半期注目論文5選(糖尿病・代謝・内分泌内科編)

Orforglipron for maintenance of body weight reduction: the double-blind, randomized phase 3b ATTAIN-MAINTAIN trialArrone LJ, et al. Nat Med. 2026 May 13. [Epub ahead of print]<ATTAIN-MAINTAIN>:orforglipronは、チルゼパチド・セマグルチドによる減量維持に有用SURMOUNT-5研究(糖尿病のない肥満症者対象)でチルゼパチド・セマグルチドにより5%以上減量した人を対象に、注射薬から経口GLP-1受容体作動薬orforglipronへ切り替えたところ、52週後の減量維持率はプラセボ群より有意に高く、体重リバウンド予防への有用性が示されました。一方で消化器系副作用の多さが今後の課題です。Tirzepatide for the Treatment of Obstructive Sleep Apnea and ObesityMalhotra A, et al. N Engl J Med 2024;391:1193-205.<SURMOUNT-OSA>:チルゼパチドは閉塞性睡眠時無呼吸を改善する肥満(BMI≧27)を伴う中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸患者において、52週間のチルゼパチド投与により体重が最大約20%減少しAHIが最大約29回/時間減少しました。2026年5月にチルゼパチドが本邦でも閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療薬としても承認されました。本論文は2024年発行ですが、保険適用に伴い改めて取り上げました。処方条件については最適使用推進ガイドラインを確認しましょう。Finerenone in Type 1 Diabetes and Chronic Kidney DiseaseHeerspink HJL, et al. N Engl J Med 2026;394:947-57.<FINE-ONE>:フィネレノンは1型糖尿病の腎症進展抑制に有用1型糖尿病で微量~顕性アルブミン尿期の腎症を合併している患者において、フィネレノンは6ヵ月間で尿中アルブミン/クレアチニン比を顕著に減少させました。ただし、短期間の介入であること、代用エンドポイントを指標としていることから長期的な臨床効果や安全性(とくに高カリウム血症のリスク)の評価は今後の課題です。Intensive LDL Cholesterol Targeting in Atherosclerotic Cardiovascular DiseaseLee YJ, et al. N Engl J Med 2026;394:1365-75.<Ez-PAVE>:心血管疾患合併者では、LDL-Cの超厳格管理により心血管リスクが低減する心血管疾患を有する韓国人では、LDL-Cの目標値を55mg/dL未満に設定すると、70mg/dL未満を目標とした場合よりもイベントリスクがさらに低下しました。ただし、非盲検試験であるため効果が過大評価されている可能性がある点と、低リスク者における有効性は未確立である点に注意が必要です。Histological efficacy of anti-diabetic agents in MASH and the mediating role of weight loss: A network meta-analysisBanerjee M, et al. Diabetes Obes Metab. 2026;28:287-295.<ネットワークメタアナリシス>:SGLT2阻害薬とインクレチン関連薬はMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)を改善するSGLT2阻害薬およびインクレチン関連薬は生検で確定診断されたMASHにおいて線維化を改善することが示されました。その効果には体重減少が大きく寄与していることが示唆されましたが、それ以外の直接的な作用の可能性も想定されています。2026年6月にセマグルチドが日本初のMASH治療薬として承認されました。処方条件については最適使用推進ガイドラインを確認しましょう。

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テストステロン処方前、ガイドラインに沿った診断は12%

 テストステロン製剤を処方された男性の多くが、事前に必要な検査を受けていない可能性があることが、新たな研究で示された。テストステロン製剤の処方前に、ガイドラインに沿った診断検査を受けていたのは12%にとどまっていたという。米ミシガン大学アナーバー校内科学分野のMaria Papaleontiou氏らによるこの研究結果は、米国内分泌学会年次学術集会(ENDO 2026、6月13~16日、米シカゴ)で発表された。 Papaleontiou氏はニュースリリースで、「本研究結果は、患者ケアを改善し、不適切なテストステロン製剤の処方を削減できる機会があることを示している。長期的には、これらの知見が診療の質改善の取り組みや臨床意思決定支援ツールの開発につながり、ガイドラインに沿った一貫性のあるテストステロン製剤処方の促進に寄与する可能性がある」と述べている。 研究チームは、2020~2025年にミシガン大学医療センターで性腺機能低下症と診断され、テストステロンを処方された男性200人(平均年齢52.5歳)をランダムに抽出し、診療記録を分析した。男性での性腺機能低下症は、精巣の機能低下に伴い十分な量のテストステロンを産生できなくなる状態をいう。 対象者に多く認められた併存疾患は、肥満(63%)、高血圧(52%)、うつ病(40%)、糖尿病(28%)、関節炎(28%)であった。テストステロン製剤を処方された患者のうち、午前5~10時の検査で2回、低テストステロン値(総テストステロン値300ng/dL未満、遊離テストステロン70pg/mL未満、または生物学的利用可能テストステロン値の低値)が確認され、LH(黄体形成ホルモン)および/またはFSH(卵胞刺激ホルモン)の測定が行われ、テストステロン療法の禁忌がないことが確認されていた患者は12%にとどまっていた。 また、初回のテストステロン製剤処方前の1年以内に前立腺特異抗原(PSA)検査を受けていた患者は62%、全血球計算(CBC)を受けていた患者は77%であった。さらに、テストステロン製剤処方前の併存疾患として、閉塞性睡眠時無呼吸症候群が55%、前立腺がんが4%に認められ、1.5%ではPSA値が4ng/mLを超えていた。テストステロン製剤を処方した医師の内訳は、プライマリケア医が45%、泌尿器科医が35.5%、内分泌科医が18%、その他の診療科医が1.5%であった。処方されたテストステロン製剤では、クリームやジェルなどの外用剤(68.5%)が最も多かった。 Papaleontiou氏らは、「テストステロン製剤の処方をガイドラインに沿ったものに改善することで、臨床的にテストステロン療法を必要としない可能性がある患者における回避可能なリスクを防ぐことができる」との見方を示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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英語学習の目的を明確にする【タイパ時代のAI英語革命】第16回

これまでの連載では、ChatGPTをはじめとする生成AIをどのように英語学習に活用できるかを解説してきました。ただし、英語学習で最も大切なのは「毎日計画を立て、その計画に沿ってコツコツと継続すること」です。働きながら学習を続けるのは大変ですが、この長期的な計画作りにもChatGPTを役立てることができます。本章では、ChatGPTをどのように英語学習の継続に活かせるのかを解説します。英語学習を成功させるためには、次の4つのステップが重要です。1)学習の意義・目的を明確にする2)長期的な目標を立てる3)目的に沿った手段を考える4)短期的な目標を日常に落とし込むなかでも最も大切なのは、1)の学習の「意義・目的」を明確にすることです。「英語を話せるようになりたい」という漠然とした気持ちだけでは、長期的な継続は難しくなります。自分はなぜ英語を学びたいのか、その根源を掘り下げることでモチベーションを維持することができます。学習動機のアイデアを出してもらうとはいえ、「なぜ自分が英語を学びたいのか」が、そもそもはっきりしないという人も多いでしょう。そこで役立つのが生成AIのアイデア出しの力です。ChatGPTを使えば、自分でも気付いていない学習動機を整理し、より具体的で持続可能な学習計画へつなげることができます。プロンプト例私は循環器内科の若手医師です。私が英語学習をする目的について考えたいです。私の立場として英語学習をする意義を5つ提案してください。回答例:1. 最新エビデンスへのアクセス循環器領域のガイドラインや臨床試験(例:AHA/ACC、ESCの発表)は、ほとんどが英語で公開されます。英語を理解できれば一次情報に直接触れることができ、診療にすぐ活かせます。2. 国際学会・研修への参加AHA、ACC、ESCといった国際学会では英語での発表・討論が中心です。英語力があることで自ら質問・発表でき、世界のエキスパートとネットワークを築く機会が広がります。3. 論文執筆・研究発表循環器内科は研究が盛んな分野であり、国際誌への投稿や多施設共同研究に関わる機会も多いです。英語で論文を書けることはキャリア形成に直結します。4. 臨床現場での国際対応循環器領域では救急(ACS、心不全、PEなど)で外国人患者を診る機会もあります。英語ができれば病歴聴取や説明をスムーズに行え、迅速な治療につながります。5. キャリアの選択肢拡大将来、海外留学や国際共同研究、外資系病院・国際医療機関での勤務を考える場合、英語力は必須です。国内にとどまる場合でも「英語を使える循環器専門医」という強みは教育・指導者としても評価されます。このようにアイデアを引き出すことで、「英語を話せるようになった自分がどんな未来を実現したいのか」をイメージしやすくなります。次のステップは、そのアイデアを基にさらに深掘りすることです。皆さんも「誰かと話しているうちに、自分の考えが整理されてきた」という経験をしたことがあるのではないでしょうか。対話を通じて自分の思いを言葉にすることで、内に秘めた動機を明確にできます。ChatGPTはその対話相手として最適です。まるで「コーチングのプロ」のように、質問を投げ掛けてもらうことで、英語学習の意義や目的をよりはっきりと見いだすことができます。以下がプロンプトの例です。プロンプト例#役割あなたは目標達成コーチングのプロです。#命令文対話を通して、私が英語学習をする目的を明確にしてください。#制約条件私は循環器内科の若手医師です。英語学習をキャリアの選択肢拡大に役立てたいと思っています。1回のメッセージにつき質問は1つにしてください。対話を通してまとまった内容は適宜要約してください。回答例:では始めましょう。まず最初にお聞きしますね。あなたが「キャリアの選択肢を広げる」ために英語を学ぶとして、どのような場面を具体的に思い描いていますか? たとえば海外留学、国際学会発表、英文論文執筆、国際的な医療機関での勤務など、どのような未来のイメージが一番近いでしょうか。このようなプロンプトを入力すると、ChatGPTがこちら側に質問をしてくるようになります。この後、10往復ほどやりとりをしたところ、以下のようにまとめてくれました。回答例:まとめ英語学習の大目標:海外留学を通じて成長し、日本の医療に貢献する重点場面:同僚医師とのディスカッション最大の課題:医療英語の専門用語と速い会話スピード最優先で克服したいこと:速い会話スピードへの対応具体的に強化したいスキル:スピーキング(自分の返答を素早く出す力)これで「英語学習の目的」がかなり具体化されましたね。このようなステップを経て、「英語を話せるようになりたい」という漠然とした目標が、詳細に言語化されました。この英語学習の目的に沿って、次のステップではさらに具体的な長期目標を考えていきます。

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薬物治療抵抗性統合失調症に有効な治療は?~ネットワークメタ解析

 抗精神病薬は、統合失調症に対して必ずしも万能な効果を示すわけではないにもかかわらず、抗精神病薬治療抵抗性患者に対する最適な治療戦略は依然として明らかになっていない。ガイドラインでは、薬物療法、心理療法、非侵襲的脳刺激(NIBS)などいくつかの治療法が推奨されているが、どれが最も効果的かは不明であった。ドイツ・ミュンヘン工科大学の古川 由己氏らは、抗精神病薬治療抵抗性統合失調症患者に対する現在のエビデンスをシステマティックにレビューし、ネットワークメタ解析を実施した。EClinicalMedicine誌2026年5月22日号の報告。 Cochrane Schizophrenia Groupレジストリ(2025年1月13日まで)およびPubMed(2026年1月8日まで)を検索し、1回以上の適切な抗精神病薬4週間投与後も症状が持続する抗精神病薬治療抵抗性統合失調症患者を対象としたランダム化比較試験(RCT)を抽出した。評価者は、盲検化したうえで実施した。主要アウトカムは、標準化平均差(SMD)と95%信頼区間(CI)を用いたランダム効果ネットワークメタ解析により分析した、全般症状の変化とした。 主な結果は以下のとおり。・59件のRCT(参加者:5,409例、平均年齢:39.8歳、男性:3,416例、女性:1,441例)が対象となり、そのうち5,013例を主要解析対象に含めた。・抗精神病薬併用療法(18件、575例、SMD:-0.25、95%CI:-0.46~-0.04、CINeMA:非常に低い)および電気けいれん療法(5件、97例、SMD:-0.51、95%CI:-0.96~-0.06、CINeMA:非常に低い)は、同じ抗精神病薬を継続するよりも効果的である可能性が示唆された。・精神疾患に対する認知行動療法(CBTp)は、同じ抗精神病薬を継続するよりも効果があるという弱いエビデンスが示された(5件、340例、SMD:-0.23、95%CI:-0.58~0.11、CINeMA:非常に低い)。・その他の戦略(キサノメリン・トロスピウム併用療法、用量漸増、経頭蓋磁気刺激療法、クロザピンまたは他の抗精神病薬への切り替え)については、結論が得られなかった。・併用療法では、有害事象の増加がみられた(オッズ比:1.93、95%CI:1.26~3.00)。・クロザピンおよび非クロザピンによる治療抵抗性患者の間で、サブグループ間の差は認められなかった。 著者らは「抗精神病薬治療抵抗性統合失調症患者に対する治療選択肢に関して、結果は非常に不確実であった。これらの疑問を明らかにするためには、さらなる直接比較試験が必要とされる。また、用量漸増やクロザピンへの切り替えを支持するエビデンスは認められなかった。抗精神病薬併用療法と電気けいれん療法の併用療法の有効性を示唆するエビデンスは非常に弱く、検討の余地はあるものの、十分な注意が必要である」と結論付けている。

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敗血症患者に対する30mL/kg以上の初期輸液、30日死亡率低下と関連

 大規模コホート研究で、市中発症敗血症患者に対する初期輸液療法として、来院6時間以内に30mL/kg以上の輸液を実施した場合、30日死亡率の低下と関連することが示された。とくに低灌流例だけでなく、中等度乳酸上昇例でも死亡率低下が認められ、従来は輸液過剰が懸念され十分な輸液が控えられてきた重度心・腎疾患併存例でも有害性を示す結果は得られず、むしろ輸液量の増加に伴い死亡率が低下する可能性が示唆された。Intermountain Medical Center(米国・ユタ州)のElizabeth S. Munroe氏らによる本研究はJAMA Network Open誌2026年6月12日号に掲載された。 敗血症誘発性低灌流では、「Surviving Sepsis Campaign(SSC)」ガイドラインで最初の3時間以内に30mL/kg以上の晶質液投与が推奨されている。一方、心不全や末期腎不全など体液過剰リスクの高い患者では十分な輸液がためらわれることが少なくない。また、乳酸値18~36mg/dLの中等度上昇例についても、積極的な輸液の有用性は十分に確立されていなかった。 本研究では、米国ミシガン州67施設の敗血症レジストリを用い、市中発症敗血症で入院した成人(退院日は2021年12月~2025年1月)4万3,321例を解析した。このうち入院3時間以内に低血圧または乳酸18mg/dL以上を認め、輸液適応がある2万5,481例を対象とした。 対象患者は、1)低灌流・重度併存疾患なし、2)低灌流・重度併存疾患あり、3)中等度乳酸上昇・重度併存疾患なし、4)中等度乳酸上昇・重度併存疾患ありの4群に分類された。主要評価項目は30日死亡率であり、入院6時間以内の総輸液量が30mL/kg以上か未満かで比較した。解析では患者背景を調整した逆確率重み付け法と多変量解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・低灌流・重度併存疾患なし群では、30mL/kg以上の輸液を受けた群の調整後30日死亡率は26.0%で、30mL/kg未満群の30.4%より4.4%ポイント低かった。中等度乳酸上昇・重度併存疾患なし群でも12.0%対13.9%と1.8%ポイントの有意な死亡率低下が認められた。・一方、低灌流・重度併存疾患あり群および中等度乳酸上昇・重度併存疾患あり群では、30mL/kg以上群で死亡率は低い傾向を示したものの、有意差には至らなかった。ただし、輸液量を連続変数として解析したスプラインモデルでは、低灌流・重度併存疾患あり群において輸液量の増加に伴って死亡率が低下する傾向が確認され、積極的輸液による明らかな不利益は示されなかった。中等度乳酸上昇・重度併存疾患あり群では明確な関連は認められなかった。・実体重、理想体重、補正体重を用いる3種類の体重換算方法でも結果は一貫しており、どの計算法でも30mL/kg以上の初期輸液は良好な転帰と関連していた。 著者らは、「敗血症初期輸液30mL/kgは従来考えられていたより幅広い患者集団で有益である可能性がある」と考察している。とくに中等度乳酸上昇例や重度心・腎疾患併存例では、輸液不足が予後悪化につながる可能性があり、輸液制限を一律に適応すべきではないと指摘する。一方、本研究は観察研究であり、残余交絡の可能性は否定できず、極端な心機能低下例などへの適応については今後の前向き試験による検証が必要としている。今回の結果は、敗血症初期蘇生における30mL/kg輸液というSSC推奨を支持するとともに、これまで慎重投与とされてきた患者群にも適応を再考する根拠となる可能性がある。

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HFrEFへの経口グレリン受容体作動薬AC01、安全性と忍容性を確認/Lancet

 AC01は、新規の経口カルシウム感受性強心薬で、グレリン受容体作動薬でもある。本薬は、心筋トロポニンIのリン酸化を低下させるとともに、Ca2+感受性を高めることで心筋の収縮性の向上をもたらすとされる。スウェーデン・カロリンスカ大学病院のLars H. Lund氏らは「GOAL-HF1試験」で、左室駆出率(LVEF)の低下した心不全(HFrEF)患者の治療において、AC01の28日間の投与は安全で良好な忍容性を示し、重篤な有害事象や明らかな心電図上の異常所見は認められなかったと報告した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2026年6月24日号に掲載された。欧州4ヵ国の無作為化プラセボ対照第Ib/IIa相試験 GOAL-HF1試験は、欧州4ヵ国(オランダ、英国、スウェーデン、イタリア)の14施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第Ib/IIa相試験である(AnaCardioの助成を受けた)。 2023年2月~2025年8月に、年齢18~80歳、6ヵ月以上持続する慢性HFrEF(NYHA心機能分類IIまたはIII)と診断され、駆出率≦40%、安静時平均心拍数55~90拍/分で、ガイドラインに基づく最大耐用量の薬物療法を受け、1次予防として経静脈植込み型除細動器(過度の徐脈から保護するためのバックアップペーシング機能付き)を装着している患者を登録した。 被験者58例(年齢中央値66.0歳[四分位範囲[IQR]:60.3~72.0]、女性5例[9%])を、第Ib相試験(32例)と第IIa相試験(26例)に無作為に割り付けた。 また、第Ib相試験では、AC01の4つの用量コホート(0.1、0.3、1.0、3.0mg)に6例ずつ、プラセボ群に2例ずつを無作為に割り付けた。AC01を1日2回、7日間、経口投与した。第IIa相試験では、AC01の1.0mg群に9例、3.0mg群(1、2日目は1.0mg、3日目以降は3.0mg)に8例、プラセボ群に9例を無作為に割り付け、1日2回、28日間、経口投与した。 主要アウトカムは、安全性および忍容性であった。AC01関連の重篤な有害事象の発現はない ベースラインにおいてNYHA心機能分類IIが44例(76%)、IIIが14例(24%)であり、全体の平均駆出率は31.4%(SD 6.3)、NT-proBNP濃度中央値は557pg/mL(IQR:291~882)であった。 AC01関連有害事象は、第Ib相試験で12件、第IIa相試験で18件認められた。AC01関連の重篤な有害事象はみられなかった。第Ib相試験において、プラセボ群の1例に、治療関連の重篤な有害事象が1件(高感度心筋トロポニンI濃度の上昇)発生した。 AC01を投与された41例のうち33例(80%)、プラセボを投与された17例のうち12例(71%)で、軽度または中等度の試験薬投与中に発現した有害事象が報告された。試験からの早期の脱落や死亡に至った有害事象は認められなかった。 最も頻度の高い試験薬投与中に発現した有害事象は、低血圧、非持続性心室性頻拍、呼吸困難、高血糖、めまい、頭痛であった。明らかな心電図異常の徴候はない 心電図データには、頻拍、新規発症の頻脈性不整脈、心筋虚血、あるいは形態学的異常や伝導異常の明らかな徴候は認められなかった。また、症候性低血圧の報告はなく、高感度心筋トロポニンIやNT-proBNPに対するAC01の明らかな影響もみられなかった。試験期間中の死亡例はなかった。 著者は、「これらの知見は、HFrEF患者における用量選定、長期的な安全性、臨床的有効性を評価するための、より大規模で十分な検出力を持つ試験において、AC01のさらなる評価を行うことを支持するものである」としている。

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糖尿病患者の感染症リスクに警鐘

 糖尿病患者における感染症のリスクが過小評価されているとする論文が、「Diabetes」に6月6日掲載された。英ロンドン大学シティ・セント・ジョージ校のJulia Critchley氏らの研究の結果であり、1型糖尿病と2型糖尿病、さらに糖尿病予備群においても感染症のリスク上昇が認められるという。 糖尿病は体のさまざまな部位にダメージを与え、特に心臓や腎臓、目(網膜)などへの影響が大きいことがよく知られている。しかし研究者らは、「糖尿病による重大な健康リスクの一つである感染症が、そのリスクの大きさに見合うほど注目されていない」としている。 新たな研究から、感染症も糖尿病患者の重大な健康リスクであることが明らかになった。Critchley氏は、「感染症は一般的かつ深刻な健康リスクであるが、適切な予防措置によってその多くを予防できる。それにもかかわらず、臨床ガイドラインではほとんど取り上げられていない。糖尿病患者は世界中で急激に増加している。感染症対策を糖尿病治療の中心に位置づけなければ大きな損失につながる。後回しにしてはならない」と語っている。 Critchley氏らは英国内の医療記録を用いて、糖尿病または糖尿病予備群の人80万人以上(1型糖尿病3万3,829人、2型糖尿病52万7,151人、糖尿病予備群27万3,216人)の感染症リスクを、年齢、性別、民族性の一致する100万人超の糖代謝異常のない人と比較した。その結果、糖代謝異常を有する人では、糖代謝異常のない人と比べて、感染症のリスクが大幅に高いことが明らかになった。・1型糖尿病患者では、かかりつけ医による治療を受ける感染症のリスクが1.81倍、感染症で入院するリスクは3.37倍。・2型糖尿病患者では、かかりつけ医による治療を受ける感染症のリスクが1.51倍、感染症で入院するリスクは1.91倍。・糖尿病予備群の人では、かかりつけ医による治療を受ける感染症のリスクが1.35倍、感染症で入院するリスクは1.33倍。 このほか、2型糖尿病患者の死因として、感染症は心臓病とがんに続き3番目に多いことも判明した。また、肺炎を含む下気道感染症は、1型および2型糖尿病患者における入院の原因として、最も一般的な感染症だった。2型糖尿病患者の感染症関連死では、肺炎を含む下気道感染症や敗血症の影響の大きさが浮き彫りになった。特に敗血症は死亡診断書で基礎死因として記載されにくく、実態が過小評価されている可能性が示された。 さらに、血糖コントロールの指標であるHbA1cの平均値の高さや変動が感染リスクの増加と関連していることが示された。1型糖尿病患者の場合、HbA1cが高いほど感染症のリスクが高く、2型糖尿病患者の場合、HbA1cの変動が入院を要する重篤な感染症のリスクと関連していた。 Critchley氏は、「各国のガイドラインにおいて、糖尿病患者における感染症リスクの増大がより重視されるべきだ。ガイドラインを世界規模で刷新することで医療従事者の意識を高め、それが糖尿病患者の感染症の早期発見と迅速な介入を促し、予防可能な入院や死亡を減らすことにつながるだろう」と述べている。

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第303回 働き方改革後も勤務医の7人に1人が残業上限超、対策検討へ/厚労省

<先週の動き> 1.働き方改革後も勤務医の7人に1人が残業上限超、対策検討へ/厚労省 2.高齢者医療費『原則3割』の明記見送り応能負担の見直しを検討/自民・維新 3.医療機関のDX対応、ダッシュボードで進捗公開/デジタル庁 4.地域医療を支える国立系病院、2025年度も経常赤字決算/国立大学病院・国立病院機構 5.医療データのAI活用へ規制緩和 改正個人情報保護法が成立/国会 6.コンタクト患者の「一生再診」は違法、支払基金に勝訴/東京地裁 1.働き方改革後も勤務医の7人に1人が残業上限超、対策検討へ/厚労省病院勤務医の長時間労働がなお深刻であることが明らかとなった。厚生労働省の調査によると、2025年に全国の病院で働く常勤医約1万3,000人のうち、週60時間以上勤務し、時間外労働が通常の上限である年960時間を超えるとみられる医師は15%に上った。2022年の約21%からは減少したものの、医師の働き方改革開始後も、約7人に1人が上限を超えている計算になる。診療科別では外科25.1%、救急科23.7%、産婦人科22.8%、脳神経外科18.7%と、手術、救急、分娩など時間外対応の多い診療科で高率だった。2024年4月に始まった時間外労働規制では、勤務医の上限は原則年960時間とされた一方で、救急医療など地域医療確保のため必要と認められた医師には年1,860時間までの特例が認められている。厚労省はこの特例を2035年度末までに廃止する方針で、2026年7月13日に「令和8年度医師の働き方改革の推進等に関する検討会」を設置し、ICT活用や業務効率化、支援策の拡充などを議論する。上限規制導入から3年を迎える2027年度を前に、改革の実効性が改めて問われている。その一方で、日本医療労働組合連合会と全国医師ユニオンは、救急医療を担う病院の宿日直許可の取り消しや、労働基準監督署による指導強化を上野 賢一郎厚生労働大臣に要請した。具体的には宿日直許可を理由に、夜間・休日の救急対応や入院患者の急変対応を労働時間に算入していない病院があると指摘し、実態として高い負荷を伴う当直を一律に労働時間外と扱うことを問題視している。年1,860時間特例の解消計画、交代制勤務の導入、必要医師数の検討、勤務間インターバルの厳格な運用も求めた。病院側には、単なる自己研鑽扱いや宿日直許可による帳簿上の圧縮ではなく、実労働時間を正確に把握する姿勢が求められる。今後は、タスクシフト、複数主治医制、勤務交代制、ICTによる記録・連絡業務の効率化を進めるとともに、救急・周産期・外科系診療を維持するための医師確保と財政支援を一体で講じる必要がある。 参考 1) 第1回 令和8年度医師の働き方改革の推進等に関する検討会(厚労省) 2) 病院医師の残業、年960時間超が15%…上限規制を超えて依然続く長時間労働(読売新聞) 3) 救急担う病院の宿日直許可「取り消しを」医労連など要請(CB news) 2.高齢者医療費『原則3割』の明記見送り応能負担の見直しを検討/自民・維新自民党と日本維新の会は、社会保障改革の骨子をまとめ、70歳以上の医療費窓口負担について「年齢によらない公平な応能負担の実現に向けて見直す」と明記した。維新は現役世代の保険料負担を軽減するため、高齢者も含めて「原則3割」とする表現を求めたが、自民党内の反発が強く、骨子への明記は見送られた。現行制度では、70~74歳は原則2割、75歳以上は原則1割で、いずれも現役並み所得者は3割負担となっている。政府は、7月中に閣議決定を目指す「骨太の方針」に、現役世代の社会保険料率の上昇を止め、将来的に引き下げる方針を盛り込む見通しである。その具体策として、高齢者医療の自己負担増、介護保険の2割負担対象者の拡大、OTC類似薬への追加負担などが検討される。年末までに改革工程表を作成し、2026年度中に制度設計を具体化する方針だ。あわせて、個人と企業が負担する社会保険料の国民所得に対する割合である「社会保障負担率」について、目標設定の検討も盛り込まれる。その一方で、窓口負担の引き上げのみで現役世代の保険料を大幅に下げることは難しい。民間シンクタンクによる試算では、74歳までを3割、75~79歳を2割とした場合でも、自己負担増は約5,000億円、被用者保険の保険料率低下は労使合計で約0.2%、社会保障負担率の低下は約0.1%にとどまる。受診抑制や治療中断、低所得高齢者の負担増を招き、結果として救急受診や重症化を増やす懸念もある。医療機関にとっては、患者負担増による未受診・服薬中断への対応に加え、保険料抑制が診療報酬や医療提供体制の削減圧力につながる可能性が重要な論点となる。ただ、現時点で「高齢者は原則3割負担」が決定したわけではない。今後の骨太の方針、改革工程表、所得区分、低所得者への配慮、医療アクセスへの影響を注視する必要がある。 参考 1) 高齢者医療費「原則3割」明記せず 自民・維新の社会保障改革骨子まとまる(テレビ朝日) 2) 現役世代の保険料「引き下げ」明記へ 骨太方針、医療介護の負担増も(朝日新聞) 3) 社会保障費の「上限」提起 骨太原案が示す論点(CB news) 3.医療機関のDX対応、ダッシュボードで進捗公開/デジタル庁デジタル庁と厚生労働省は2026年7月7日、医療DX施策の進捗を可視化する「医療DXに関するダッシュボード」を公開した。2023年6月に決定された「医療DXの推進に関する工程表」に基づき、国民や医療関係者が各施策の導入状況、利用実績、効果を一元的に確認できるようにすることが目的である。ダッシュボードは「保険資格確認」「診察」「処方・調剤」「健康管理」の4領域で構成される。保険資格確認では、マイナ保険証の利用率やオンライン資格確認の状況を掲載。処方・調剤では、電子処方箋および電子処方箋管理サービスの全国的な導入率や利用状況を示し、別の詳細画面では地域別、施設別のデータも確認できる。健康管理では、マイナポータルを通じた医療情報の閲覧件数や、PHRサービスに医療保険情報を連携するAPI事業者数などを公開する。自治体と医療機関等を結ぶ情報連携基盤「Public MedicalHub」(PMH)については、医療費助成と母子保健の分野で、導入自治体数や利用実績のある医療機関数などの掲載を開始した。自治体検診、予防接種、介護情報基盤については、今後追加される予定である。その一方で、「診察」領域の中核となる電子カルテの導入状況や電子カルテ情報共有サービスの進捗は、現時点では未掲載である。医療機関にとっては、自施設のマイナ保険証利用率や電子処方箋への対応状況を全国・地域水準と比較し、医療DX推進体制整備加算への対応やシステム投資を検討する際の基礎資料となる。今後は、単なる導入率に加え、実際の利用率、業務負担の軽減、情報共有の迅速化、医療安全への効果まで、どこまで可視化されるかが注目される。 参考 1) 医療DXに関するダッシュボード(デジタル庁) 2) 医療DXダッシュボード公開、デジタル庁と厚労省 電子カルテの導入状況は今後掲載(CB news) 4.地域医療を支える国立系病院、2025年度も経常赤字決算/国立大学病院・国立病院機構国立大学病院と国立病院機構の2025年度決算は、いずれも経常赤字となり、公的医療機関の厳しい経営状況が改めて示された。全国44の国立大学病院の経常損益は総額244億円の赤字で、2024年度の286億円からは改善したものの、31病院が赤字を計上した。医療資材や光熱費の高騰、人件費上昇が経営を圧迫している。国立大学病院長会議は当初、赤字総額が400億円を超え、過去最大となる可能性を見込んでいたが、政府の2025年度補正予算による医療機関支援などにより、赤字幅は想定より縮小した。ただし、補助金を除けば経営環境そのものが大きく改善したとは言いにくい。その一方で、全国140病院などを運営する国立病院機構も、経常損益が75億円の赤字となり、2期連続の経常赤字となった。赤字額は前年度の375億円から大幅に縮小した。入院・外来を合わせた診療収益が409億円、3.8%増加し、コストの伸びを上回ったほか、補助金などの収益が2.6倍の340億円に増えたことが寄与した。国立大学病院は高度医療、教育、研究を担い、国立病院機構は救急、災害、周産期、へき地、新興感染症、精神科など、他の医療機関では担いにくい政策医療を提供している。今回の決算は、診療実績を増やしても物価・賃金上昇を診療報酬だけでは吸収できず、公的支援がなければ安定経営が難しい構造を示している。 参考 1) 国立病院機構、2期連続で経常赤字 25年度損失75億円 マイナス幅は縮小(CB news) 2) 国立大病院、244億円の赤字 2025年度決算、経営厳しく(東京新聞) 5.医療データのAI活用へ規制緩和、改正個人情報保護法が成立/国会AI開発や統計作成を目的とする個人データの利活用を拡大する改正個人情報保護法が、2026年7月10日に与党や国民民主党、日本維新の会などの賛成多数で成立した。また、立憲民主党や公明党などは反対した。改正法は、通常は必要とされる本人同意を、AI学習や統計作成に限って不要とする特例を設ける。病院、薬局、ヘルスケア事業者などが保有するデータも対象となり、病歴、犯罪歴、人種、信条などの機微に触れる「要配慮個人情報」も含まれる。公布後、2028年夏までに施行する見通しとなっており、具体的な対象、目的外利用の防止策、安全管理措置などは今後、個人情報保護委員会の規則やガイドラインで示される。医療分野では、生活習慣と疾患の関連解析、創薬、診断支援AIの精度向上などへの活用が期待される。その一方で、提供元が氏名などを削除せずにデータを渡すことも制度上可能とされ、海外事業者や個人事業主が提供先となる場合も想定される。このため、患者本人が知らないまま情報が外部提供され、漏えい、目的外利用、再識別、プロファイリングなどにつながる懸念がある。AIや統計として処理されれば個人に結び付く機微な情報はサービス上残りにくいと政府は説明するが、複数データの照合による再特定リスクを完全に排除できるかはなお不透明である。改正法では、提供元を欺いてデータを取得し、利益を得た場合、特例で取得したデータを別目的に利用した場合などに、課徴金を科す仕組みを導入する。ただし、対象は被害者が1,000人以上の悪質事案などに限られ、団体訴訟制度も盛り込まれなかった。本人同意を軸とした事前規制を緩める一方で、違反後の事後規制を強める制度設計といえる。医療機関には、法的に同意が不要となる場合でも、京大病院の黒田 知宏教授が「怖くてデータを提供したいとは思わない」と懸念を示したように、現場からは利活用の停滞を危惧する声が出ている。とくに診療情報は信頼関係の基盤であり、形式的な適法性だけでなく、倫理審査や院内ガバナンスを含めた透明な運用が不可欠となる。 参考 1) 個人情報、AI開発へ規制緩和 改正法成立、データ活用促進(時事通信) 2) AI開発への個人情報提供、同意不要に 改正法成立も企業手探り(日経新聞) 3) 改正個人情報保護法が成立 病歴や信条も…本人の同意なく提供可能に(朝日新聞) 6.コンタクト患者の「一生再診」は違法、支払基金に勝訴/東京地裁東京地裁は2026年7月2日、過去にコンタクトレンズ(CL)の処方歴がある患者が、数年後に別の診療目的で来院した際の初診料請求を「再診」扱いとして減額した社会保険診療報酬支払基金(以下「支払基金」と略す)の査定を違法と判断した。これにより、こひなた眼科(東京都文京区)の藤巻 拓郎院長への未払い分2,569円の全額支払いを命じる判決を言い渡した。発端となったのは、2018年11月にCL処方を受けた患者が、4年2ヵ月後の2023年1月に視力低下を訴え、眼鏡作製などのため再来院した事例である。眼科側は「初診料」(288点)を算定したが、支払基金はこれを「再診料」(74点)と見なし、屈折検査や角膜曲率半径計測の点数も重複として一律に除外し、減額査定した。東京地裁は、2回目の受診がCL処方目的ではなく、前回受診から4年以上が経過していることから「診療継続中とは評価できない」と指摘。医学的な初診に当たり、初診料を算定できると認定した。藤巻院長らの会見によると、支払基金は厚労相の告示・通知にある「当該検査料を算定した場合は初診料を算定せず再診料等を算定する」との限定文言を無視し、過去に1度でもCLを扱えば、その後も一律に再診とする運用を、東京や大阪など一部地域で10年以上にわたり続けていたという。原告側は、こうした運用は告示・通知を歪曲したものだと主張している。また、原告側は、支払基金が訴訟中に従来の解釈が成り立たないと認めながら、減点理由書に理由を記載しなくなり、裁判では「屈折異常が継続している」と別の理由を提示して、不払いを正当化しようとしたと批判している。本判決は個別事例に対する地裁判断であるが、初診料算定の可否は過去のCL処方歴だけで一律に決めるのではなく、受診間隔、今回の受診目的、傷病の同一性、診療の継続性を個別に判断すべきことを示した点で、実務上重要な判決といえる。 参考 1) 眼科医の初診料請求認める 再診も「該当」、東京地裁(ケアマネジメント・オンライン) 2) 「医者を馬鹿にしている」眼科医が“2569円の支払い”求めた裁判で勝訴…コンタクト作った患者は“一生、再診扱い”との査定を東京地裁が違法認定(弁護士JPニュース) 3) 「過去にコンタクトレンズ」訴訟(原告ホームページ)

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