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閉経後ホルモン補充療法の血管への影響、開始時期で異なる?/NEJM

 閉経後早期(6年以内)に開始した経口エストラジオール療法は、頸動脈内膜中膜肥厚(CIMT)で評価される無症候性アテローム性動脈硬化の進行抑制と関連していることが明らかにされた。ただし、閉経後早期あるいは閉経後10年以上経過して開始した場合のいずれにおいても、心臓CTで評価されるアテローム性動脈硬化に有意な影響は認められなかった。米国・南カリフォルニア大学のHoward N. Hodis氏らが、健康な閉経後女性を対象としたELITE(Early versus Late Intervention Trial with Estradiol)試験の結果、報告した。これまで多くの研究で、閉経後まもなく開始したエストロゲンを含むホルモン療法の心血管疾患に対するベネフィットが示唆されている。しかし、閉経後ホルモン療法の心血管系への影響は治療開始時期で異なるという仮説(タイミング仮説)について、これまで検証されていなかった。NEJM誌オンライン版2016年3月31日号掲載の報告。閉経後6年未満か10年以上に分け、CIMTの増加を評価 ELITE試験は、単独施設で行われた無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験である。対象は健康な閉経後女性643例で、閉経後6年未満(閉経後早期)と閉経後10年以上(閉経後後期)に層別し、エストラジオール群とプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 エストラジオール群では、17β-エストラジオール1mg/日を経口投与するとともに、子宮を有する女性にはプロゲステロン45mg膣ゲルを、1サイクル30日として10日間1日1回連日投与した。プラセボ群では、プラセボ経口投与ならびに、子宮を有する女性にはプラセボ膣ゲル投与を行った。 主要評価項目は、6ヵ月ごとに測定したCIMTの変化率で、副次評価項目は、治療終了時の冠動脈造影CTによる冠動脈アテローム性硬化の評価などであった。早期開始のエストラジオール群、同プラセボ群に比しCIMTの増加が有意に少ない 中央値5年後において、CIMT増加に対するエストラジオールの効果は、プロゲステロンの有無にかかわらず、閉経後早期開始群と閉経後後期開始群で異なった(交互作用のp=0.007)。 閉経後早期開始群のCIMT増加は、平均値でプラセボ群0.0078mm/年に対し、エストラジオール群は0.0044mm/年であった(p=0.008)。一方、閉経後後期開始群の増加は、両群間で有意差はみられなかった(それぞれ0.0088mm/年、0.0100mm/年、p=0.29)。 なお、冠動脈造影CTで評価した冠動脈石灰化、狭窄およびプラークは、閉経後早期開始群より閉経後後期開始群でスコアが有意に高かったが、エストラジオール群とプラセボ群とで有意差は認められなかった。 著者は研究の限界として、症例数や追跡調査期間が冠動脈評価項目の治療群間差を検出するのに不十分であったこと、ベースライン時の冠動脈画像を利用できず新たな冠動脈病変へのホルモン療法の影響は評価できなかったことなどを挙げている。

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治療抵抗性統合失調症へ進展する重要な要因とは:千葉県精神科医療C

 統合失調症における予後不良には、さまざまな要因が関連することが知られているが、それらの相互作用は不明である。ドパミン過感受性精神病(DSP)は、長期的な薬物療法に関連した臨床概念であり、治療抵抗性統合失調症(TRS)へ進展する重要な要因の1つといわれている。千葉県精神科医療センターの山中 浩嗣氏らは、TRS進行へのDSPの影響を検討した。Schizophrenia research誌オンライン版2016年1月13日号の報告。 レトロスペクティブ調査と直接インタビューにより、患者265例をTRS群と非TRS群のいずれかに分類した。DSPエピソードの有無を含む予後に関連する主要な要因を抽出し、それぞれの要因を両群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・未治療期間を除く全パラメータは、非TRS群と比較しTRS群で有意に悪化した。・とくに、TRS群は非TRS群よりもDSPエピソードの割合が有意に高かった。・回帰分析により、DSPはTRSの進展に重要な役割を果たすことが裏付けられた。・さらに、欠損症候群はTRSの診断サブカテゴリーであることが示唆された。 結果を踏まえ、著者らは「予後不良の重要な予測因子が確認され、これはTRSの進展に何らかの形で影響を及ぼすことが示唆された。薬物治療中のDSPエピソードの発生は、治療不応性を促進することが示唆された」としている。関連医療ニュース 難治例へのクロザピン vs 多剤併用 治療抵抗性統合失調症女性、エストラジオールで症状改善 統合失調症治療、ドパミン調節の概念が変わる

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非浸潤性乳管がんでもアロマターゼ阻害薬は術後の選択肢に/Lancet

 非浸潤性乳管がん(DCIS)の閉経後女性における術後の再発予防では、アナストロゾールとタモキシフェンの効果に明確な差はなく、アナストロゾールは治療選択肢となりうることが、オーストラリア・ニューカッスル大学のJohn F Forbes氏らが行ったIBIS-II DCIS試験で示された。マンモグラフィ検診導入後の数十年間で、DCISの診断率は実質的に上昇しており、検診で検出される乳がんの約5分の1を占めるという。浸潤性乳がんの術後の再発予防では、第3世代アロマターゼ阻害薬はタモキシフェンよりも有効性が高いとされるが、DCISにおけるアナストロゾールの優越性は確証されていなかった。Lancet誌オンライン版2015年12月11日号掲載の報告。2剤の再発予防効果をプラセボ対照試験で比較 IBIS-II DCIS試験は、閉経後DCIS女性に対する術後の再発予防におけるアナストロゾールとタモキシフェンの有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験(英国がん研究所などの助成による)。 対象は、年齢40~70歳、エストロゲンもしくはプロゲステロン受容体が陽性で、割り付け前の6ヵ月以内にDCISと診断され、乳房温存術を施行された閉経後女性であった。1mm以内の微小浸潤がんは許容された。 被験者は、アナストロゾール(1mg/日)+プラセボ、またはタモキシフェン(20mg/日)+プラセボを5年間経口投与する群に無作為に割り付けられた。放射線照射は各施設の基準に従って施行することとした。 主要評価項目は、DCISの再発、対側乳房の新規病変などを含むすべての再発とした。治療割り付け情報は統計解析者だけに知らされ、データを解析に含めることへの同意を取り消した患者を除く、全割り付け対象患者を解析の対象とする修正ITT解析が行われた。 2003年3月3日~12年2月8日に、14ヵ国236施設に2,980例が登録され、アナストロゾール群に1,449例、タモキシフェン群には1,489例が割り付けられた。NSABP B-35試験と一致する結果 年齢はアナストロゾール群が60.4歳、タモキシフェン群は60.3歳、BMIは両群とも26.7、初潮年齢は両群とも13.0歳、第1子出産年齢は両群とも24.0歳であった(いずれも中央値)。喫煙者はそれぞれ34%、33%で、ホルモン補充療法は47%、44%、子宮摘出術は21%、22%が受けており、放射線照射は両群とも71%に施行された。腫瘍径は両群とも13mmだった。 フォローアップ期間中央値は7.2年(四分位範囲:5.6~8.9)であり、この間に144例(アナストロゾール群:67例[5%]、タモキシフェン群:77例[5%])が再発した。 年間再発率は、アナストロゾール群が0.64%、タモキシフェン群は0.72%であった(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.64~1.23、p=0.49)。アナストロゾール群はタモキシフェン群に対し非劣性であった(95%CIの上限値<1.25)が、優越性は認めなかった(p=0.49)。 Kaplan-Meier法による解析では、5年再発率はアナストロゾール群が2.5%、タモキシフェン群は3.0%、フォローアップ期間終了から10年後の再発率はそれぞれ6.6%、7.3%であった。 カットオフ日までに69例が死亡した(アナストロゾール群:33例、タモキシフェン群:36例)。死亡率に差はなく(HR:0.93、95%CI:0.58~1.50、p=0.78)、特定の死因の差も認めなかった。乳がん死は4例のみで、それぞれ1例、3例であった。 有害事象の発現率は、アナストロゾール群が91%(1,323例)、タモキシフェン群は93%(1,379例)であり、両群で類似していたが、副作用プロファイルには以下のような違いがみられた。 アナストロゾール群では、骨折(9 vs.7%、p=0.027)、筋骨格系イベント(64 vs.54%、p<0.0001)、脂質異常症(3 vs.1%、p<0.0001)、脳卒中(脳血管障害:1 vs.<1%、p=0.025、一過性脳虚血発作:1 vs.<1%、p=0.05)の頻度が高かった。 タモキシフェン群では、筋痙攣(2 vs.7%、p<0.0001)、婦人科がん(子宮内膜がん:1 vs.11例、p=0.0044、子宮がん:0 vs.5例、p=0.027)、婦人科症状/血管運動症状(ホットフラッシュ、膣乾燥など、61 vs.69%、p<0.0001)、深部静脈血栓(肺塞栓症は除外、<1 vs.1%、p=0.0011)が多くみられた。 著者は、「これらの結果は、類似の試験であるNSABP B-35試験と一致する。アナストロゾールはホルモン受容体陽性閉経後DCIS女性の治療選択肢であり、タモキシフェンが禁忌の場合は適切な治療法と考えられる」としている。

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非浸潤性乳管がん、術後ホルモン療法の5年QOL評価/Lancet

 閉経後の非浸潤性乳管がん(DCIS)の術後の再発予防において、タモキシフェン(商品名:ノルバデックスほか)とアナストロゾール(同:アリミデックスほか)のQOL(身体機能、心の健康)に差はないが、薬剤関連症状には違いがみられることが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のPatricia A Ganz氏らが実施したNSABP B-35試験で示された。2002年に本試験が立案された時点のDCISの標準治療はタモキシフェンの5年投与であったが、同年、ATAC試験により、浸潤性乳がんの術後補助療法ではアナストロゾールがタモキシフェンに比べ無病生存期間を延長し、毒性も良好であることが明らかにされた。NSABP B-35試験では、最近、60歳未満の患者においてアナストロゾール5年投与による無乳がん期間の、わずかだが有意な改善効果が確認されている(非浸潤性乳管がん、アナストロゾールの再発予防効果を確認/Lancet)。Lancet誌オンライン版2015年12月10日号掲載の報告。約1,200例で5年投与期間中のQOLを評価 NSABP B-35試験は、閉経後DCISの再発予防(局所、領域、遠隔部位、対側乳房)におけるタモキシフェンとアナストロゾールの効果を比較する二重盲検無作為化第III相試験(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。 対象は、乳房温存術+全乳房照射療法を受けたエストロゲンもしくはプロゲステロン受容体陽性の閉経後DCIS女性であった。 被験者は、タモキシフェン(20mg/日)またはアナストロゾール(1mg/日)を5年間投与する群に無作為に割り付けられた。また、ベースラインおよびその後は6ヵ月ごとに5年間、QOLに関する質問票に回答した。 主要評価項目は、SF-12の身体機能と心の健康のスコアおよび血管運動症状(Breast Cancer Prevention Trial[BCPT]の症状スケール)とした。副次評価項目は、膣症状および性交機能であった。 2003年1月6日~2006年6月15日に北米の333施設に3,104例が登録され、このうち1,193例(タモキシフェン群:601例、アナストロゾール群:592例)でQOL評価が行われた。5年時まで質問票への回答を完遂したのは、それぞれ393例、380例だった。60歳以上が54%、52%含まれた。タモキシフェンで相対的に血管運動症状が不良、膣症状は良好 身体機能の平均重症度スコアは、タモキシフェン群が46.72点、アナストロゾール群は45.85点であり、有意な差は認めなかった(p=0.20)。心の健康はそれぞれ52.38点、51.48点であり、やはり有意差はみられなかった(p=0.38)。 SF-36の活力スケールのエネルギー/疲労(58.34 vs.57.54点、p=0.86)および疫学研究用うつ病尺度(CES-D)によるうつ状態(6.19 vs.6.39点、p=0.46)にも有意な差はなかった。 血管運動症状(1.33 vs.1.17点、p=0.011)、排尿制御困難(0.96 vs.0.80点、p=0.0002)、婦人科症状(0.29 vs.0.18点、p=0.0001)は、タモキシフェン群で有意に重症度が高かった。 一方、筋骨格系の疼痛(1.50 vs.1.72点、p=0.0006)および膣症状(0.76 vs.0.86点、p=0.035)は、アナストロゾール群で有意に重症度が高かった。 認知機能(0.89 vs.0.92点、p=0.72)、体重問題(1.15 vs.1.17点、p=0.48)、性交機能(43.65 vs.45.29点、p=0.56)は、両群間に有意な差はなかった。 60歳未満の患者は60歳以上に比べ、血管運動症状の重症度スコア(1.45 vs.0.65点、p=0.0006)、膣症状(0.98 vs.0.65点、p<0.0001)、体重問題(1.32 vs.1.02点、p<0.0001)、婦人科症状(0.26 vs. 0.22点、p=0.014)が不良であった。 著者は、「60歳以上の女性では両薬剤の効果は同等であり、薬剤の選択は重篤な有害事象(血栓塞栓症、子宮がん、骨量減少)や薬剤関連症状のリスクのほか、患者の好みを考慮して決めるべきである。一方、60歳未満では、効果がより良好なアナストロゾールを選ぶべきと考えられるが、血管運動症状や膣症状、婦人科症状などの副作用が耐容不能な場合はタモキシフェンに変更するのがよいだろう」と指摘している。

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非定型抗精神病薬による体重増加・脂質異常のメカニズム解明か

 先行研究で、小胞体の4つのタンパク質複合体(ステロール調節配列結合タンパク[SREBP]、SREBP-cleavage-activating protein[SCAP]、インスリン誘導遺伝子[INSIG]、プロゲステロン受容体膜成分-1[PGRMC1])が、非定型抗精神病薬による脂質異常の重要な調節因子であることが示唆されている。今回、中国・中南大学湘雅二医院のHua-Lin Cai氏らは、ラットの肝臓を用い、定型および非定型抗精神病薬ならびにグルココルチコイド受容体拮抗薬mifepristoneの、PGRMC1/INSIG/SCAP/SREBP経路に対する作用および脂質への影響を調べた。その結果、非定型抗精神病薬による脂質異常は、体重増加が出現する前の初期段階で生じる可能性があることが示唆されたという。結果を踏まえ、著者らは「非定型抗精神病薬による脂質異常は、PGRMC1経路を増強するmifepristoneの追加投与により改善できる可能性があることを示すもので、PGRMC1/INSIG-2シグナル伝達が非定型抗精神病薬による体重増加治療のターゲットになりうる」と報告している。Translational Psychiatry誌2015年10月20日号の掲載報告。 研究グループは、ラットに各種薬剤を投与し、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)と、ウエスタンブロット解析を用いて肝臓のPGRMC1/INSIG/SCAP/SREBP経路への作用を調べるとともに、血清中のトリアシルグリセロール、総コレステロール、遊離脂肪酸および各種ホルモン(プロゲステロン、コルチコステロン、インスリン)も同時に測定した。 主な結果は以下のとおり。・クロザピン、リスペリドンを投与したラットでは、PGRMC1/INSIG-2の阻害およびSCAP/SREBP発現の活性化を介した脂質生成およびコレステロール生成の増加を認めた。・これらの代謝異常は、アリピプラゾール、ハロペリドールを投与したラットでは認められなかった。・mifepristoneの併用投与は、PGRMC1/INSIG-2発現の上方制御とそれに続くSCAP/SREBPの下方制御を介して、非定型抗精神病薬により誘発された脂質異常を改善する効果を示した。関連医療ニュース 抗精神病薬誘発性の体重増加に関連するオレキシン受容体 どのような精神疾患患者でメタボリスクが高いのか 抗精神病薬、日本人の脂質異常症リスク比較:PMDA  担当者へのご意見箱はこちら

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アロマターゼ阻害薬術後療法での乳がん死抑制効果~TAMとの比較/Lancet

 閉経後早期乳がんの術後ホルモン療法において、アロマターゼ阻害薬(アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール)はタモキシフェン(TAM)に比べ、再発や乳がん死の抑制効果が高いことが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)の検討で明らかとなった。閉経後早期乳がんの治療では、アロマターゼ阻害薬の5年投与またはTAM 2~3年投与後のアロマターゼ阻害薬2~3年投与は、TAM 5年投与よりも再発率が低いことが示されているが、乳がん死への影響などはいまだに不明だという。Lancet誌2015年7月23日掲載の報告。アロマターゼ阻害薬とタモキシフェンの5つの組み合わせの比較試験のメタ解析 研究グループは、閉経後のエストロゲン受容体(ER)陽性早期乳がんの治療において、アロマターゼ阻害薬とTAMを比較した無作為化試験(2005年までに開始された試験)の個々の患者データを用いたメタ解析を行った(Cancer Research UKなどの助成による)。 解析の対象は、次の5つの組み合わせを比較した無作為化試験であった。(1)アロマターゼ阻害薬5年投与とTAM 5年投与、(2)アロマターゼ阻害薬5年投与とTAM 2~3年投与後にアロマターゼ阻害薬に切り換えて5年まで投与、(3)TAM 2~3年投与後にアロマターゼ阻害薬に切り換えて5年まで投与とTAM 5年投与、(4)アロマターゼ阻害薬5年投与とアロマターゼ阻害薬2年投与後にTAMに切り換えて5年まで投与、(5)アロマターゼ阻害薬2年投与後にTAMに切り換えて5年まで投与とTAM 5年投与。 主要評価項目は、乳がんの再発(遠位、局所、対側乳房)、乳がん死、無再発死亡、全死因死亡とした。intention-to-treat解析を行い、有効性の評価にはlog-rank検定を用いた。初回イベント発生の率比(RR)およびその95%信頼区間(CI)を算出した。 9試験に参加した閉経後ER陽性早期乳がん患者3万1,920例について解析を行った。アロマターゼ阻害薬 5年投与、非施行に比べ10年乳がん死を約40%抑制 アロマターゼ阻害薬5年投与とTAM 5年投与の比較では、乳がん再発率は治療開始から1年まで(RR:0.64、95%CI:0·52~0.78)および2~4年(同:0.80、0.68~0.93)はアロマターゼ阻害薬が有意に良好であったが、5年以降は有意な差はなくなった。また、10年乳がん死亡率は、アロマターゼ阻害薬がTAMよりも有意に低かった(12.1 vs.14.2%、RR:0.85、95%CI:0.75~0.96、2p=0.009)。 アロマターゼ阻害薬5年投与とTAM 2~3年投与後にアロマターゼ阻害薬に切り換えて5年まで投与の比較では、乳がん再発率は治療開始から1年まではアロマターゼ阻害薬で有意に良好であった(RR:0.74、95%CI:0.62~0.89)が、2~4年および5年以降は有意な差はなくなった。全体としては、アロマターゼ阻害薬5年投与は、TAMからアロマターゼ阻害薬への切り換えよりも乳がん再発率が低かった(同:0.90、0.81~0.99、2p=0.045)が、乳がん死には有意な差はなかった(同:0.89、0.78~1.03、2p=0.11)。 TAM 2~3年投与後にアロマターゼ阻害薬に切り換えて5年まで投与とTAM 5年投与の比較では、乳がん再発率は、2~4年はアロマターゼ阻害薬への切り換えが有意に良好であった(同:0.56、0.46~0.67)が、その後この差は消失した。10年乳がん死亡率は、アロマターゼ阻害薬への切り換えがTAM 5年投与よりも低かった(8.7 vs.10.1%、2p=0.015)。 これら3つのタイプの比較を統合すると、乳がん再発率は異なる薬剤による治療期間中はアロマターゼ阻害薬が良好で(RR:0.70、95%CI:0.64~0.77)、その後この差は有意ではなくなった(同:0.93、0.86~1.01、2p=0.08)。 また、乳がん死は、異なる薬剤での治療期間(同:0.79、0.67~0.92)、その後の期間(同:0.89、0.81~0.99)、および全期間を通じて(同:0.86、0.80~0.94、2p=0.0005)、アロマターゼ阻害薬の抑制効果が優れていた。全死因死亡についてもアロマターゼ阻害薬の効果が高かった(同:0.88、0.82~0.94、2p=0.0003)。 年齢、BMI、Stage、Grade、プロゲステロン受容体の状態、HER2の状態で補正しても、これらのRRはほとんど変化しなかった。 著者は、「アロマターゼ阻害薬は、異なる薬剤による治療が行われている期間は、TAMに比べ乳がんの再発を約30%抑制したが、それ以降は有意な差はなかった。アロマターゼ阻害薬5年投与は、10年乳がん死亡率をTAM 5年投与よりも約15%低下させ、ホルモン療法を施行しない場合に比べると約40%抑制した」としている。

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乳がん患者は禁煙の重要性を知らされるべき

 乳がん患者における能動喫煙と死亡リスクとの関連について、これまでの報告は一貫していない。宮城県立がんセンターの角川 陽一郎氏らは、女性の乳がん患者において、能動喫煙および受動喫煙と全死因死亡および乳がん特異的死亡リスクとの関連を、閉経状況およびエストロゲン受容体/プロゲステロン受容体(ER / PR)の状態別に検討した。その結果、長期間の能動喫煙は、閉経前の、おそらくホルモン受容体陽性乳がん患者における、全死因死亡および乳がん特異的死亡リスクの増加と関連することが示唆された。著者らは、「乳がん患者は禁煙の重要性を知らされるべき」としている。Cancer science誌オンライン版2015年6月6日号に掲載。 本研究では、1997~2007年に国内の1つの病院に入院した848例の患者を調査した。能動・受動喫煙の状況は自己管理質問票を用いて評価し、2010年12月31日まで観察した。ハザード比(HR)はCox比例ハザードモデルを用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は6.7年で、その間に全死因死亡170例、乳がん特異的死亡132例が観察された。・閉経前患者において、現喫煙者の全死因死亡と乳がん特異的死亡のリスクが高かったが、有意ではなかった。・閉経前患者において、21.5年超の喫煙が、全死因死亡(HR 3.09、95%CI:1.17~8.20)および乳がん特異的死亡(HR 3.35、95%CI:1.22~9.23、傾向のp=0.035)と正の相関を示した。・ER+もしくはPR+の閉経前患者では、喫煙期間の長さが全死因死亡および乳がん特異的死亡リスク増加と関連するという示唆もあった。・受動喫煙については、有意なリスクは示されなかった。

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統合失調症女性のホルモンと認知機能との関連は

 これまで、統合失調症の女性患者において、ホルモン療法やオキシトシン投与により認知機能が強化されることが示唆されていた。米国・イリノイ大学のLeah H. Rubin氏らは、女性の統合失調症患者の認知機能に、月経周期中のホルモン変化がどのような影響を及ぼすかを調べた。検討の結果、まず、認知機能の性差は統合失調症においても認められること、オキシトシン値は月経周期において変化することはなく、女性においてのみ「女性ドミナント」タスクの強化と関連していることを明らかにした。Schizophrenia Research誌オンライン版2015年5月16日号の掲載報告。女性の統合失調症、ホルモン変化は認知パフォーマンスと関連せず 検討に当たり研究グループは、女性患者は、月経周期の卵胞期初期(卵胞ホルモン[エストラジオール]と黄体ホルモン[プロゲステロン]が低値)のほうが中間期(卵胞ホルモン黄体ホルモンが高値)よりも、「女性ドミナント」タスク(ことばの記憶/流暢さ)のパフォーマンスが悪化し、「男性ドミナント」タスク(視覚空間)のパフォーマンスは良好になると仮定した。また、卵胞ホルモンには影響を受けるが、黄体ホルモンは影響しないとも仮定した。 女性54例(23例が統合失調症)の認知機能を比較し、また血液検体の提供を受けて性差ステロイドアッセイを行い、卵胞期初期(2~4日目)と中間期(20~22日)のオキシトシン値を比較した。また、認知機能テストの予想性差パターンを調べるため男性も検討対象とした。 女性の統合失調症患者の認知機能にホルモン変化がどのような影響を及ぼすかを調べた主な結果は以下のとおり。・予想された性差は、「女性ドミナント」と「男性ドミナント」において観察された(p<0.001)。しかし、その差の大きさは、患者と対照で有意な差はみられなかった(p=0.44)。・「女性ドミナント」または「男性ドミナント」タスクにおける認知パフォーマンスの月経周期における変化は、患者、対照ともにみられなかった。・卵胞ホルモン黄体ホルモンは、認知パフォーマンスと関連していなかった。・オキシトシン値は、月経周期において変化しなかった。しかし、女性の統合失調症患者においてのみ、「女性ドミナント」のタスクパフォーマンスとポジティブな関連がみられた(p<0.05)。 結果を踏まえ、著者らは「統合失調症ではエストロゲンよりもオキシトシン値が、認知機能ドメインのベネフィットを強化すると考えられる」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症患者の社会的認知機能改善に期待「オキシトシン」 日本人女性の統合失調症発症に関連する遺伝子が明らかに 治療抵抗性統合失調症女性、エストラジオールで症状改善  担当者へのご意見箱はこちら

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外傷性脳損傷後の早期プロゲステロン投与は有用か/NEJM

 急性外傷性脳損傷のアウトカム改善に、プロゲステロン投与はプラセボと比較して、ベネフィットが認められないことが示された。米国・エモリー大学のDavid W. Wright氏らが、第III相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。これまでに、外傷性脳損傷へのプロゲステロン投与については、複数の実験モデル検討や2件の単施設臨床試験で、神経学的アウトカムを改善することが示されていた。本検討では、大規模な多施設での検討により、プロゲステロンの早期投与の有効性を、重度、中等度~重度、中等度の急性外傷性脳損傷について調べることが目的であった。NEJM誌オンライン版2014年12月10日号掲載の報告より。重度、中等度~重度、中等度のTBI患者882例を無作為化 試験は、2010年4月5日~2013年10月30日に、米国内49の外傷センターで行われた。被験者は、重度/中等度~重度/中等度(グラスゴー・コーマ・スケール[GCS]:4~12、全体スコアは3~15で低スコアほど低意識レベルを示す)の急性外傷性脳損傷(TBI)患者で、プロゲステロン投与群とプラセボ群に無作為に割り付けられた。外傷後4時間以内に試験治療を開始し、総計96時間の管理投与を行った。 主要アウトカムは、受傷後6ヵ月時点のExtended GCI(GCS-E)で評価した機能回復。副次アウトカムは、死亡率、障害評価尺度(Disability Rating Scale)スコアなどだった。 試験の主要目的は、プロゲステロン群の有効性で、アウトカムの改善を示した患者の割合がプラセボ群よりも絶対値で10%増大した場合と定義した。アウトカム改善は、当初の外傷重症度により定義した。例えば、中等度の患者(GSCスコア9~12)が6ヵ月時点でGSCスコア7超であった場合、アウトカムの改善とみなすなどとした。 検討では、有効性の評価のためには総計1,140例の被験者を無作為化する必要があると推算していた。しかし882例を無作為化した時点で、主要アウトカムに関してプロゲステロンの無益性が明らかになったとして試験は終了となった。プロゲステロン群で静脈炎の頻度が有意に増大 882例の試験群(プロゲステロン群442例、プラセボ群440例)のベースライン特性はバランスが取れたものだった。年齢中央値35歳、男性73.7%、黒人15.2%、外傷重症度スコアの平均値は24.4(スコア範囲:0~75、高値ほど重症度が高い)であり、外傷理由で最も多かったのは自動車事故だった。 分析の結果、プロゲステロン群でアウトカム改善を認めたのは51.0%であった。一方プラセボ群は55.5%で、プロゲステロンの相対的ベネフィットは0.95(95%信頼区間[CI]:0.85~1.06)であった。有意差はなかった(p=0.35)。 死亡率は、試験群全体では6ヵ月時点で17.2%であり、中等度外傷群13.0%から重度外傷群27.6%の範囲にわたっていた。投与管理群別では、プロゲステロン群18.8%(83/442例)、プラセボ群15.7%(69/440例)で、ハザード比(HR)1.19(95%CI:0.86~1.63)で有意差は認められなかった。 プロゲステロンの安全性プロファイルは許容できるものであったが、静脈炎または血栓性静脈炎の発生が、プロゲステロン群(17.2%、76/442例)がプラセボ群(5.7%、25/440例)よりも有意に高頻度であった(相対リスク:3.03、95%CI:1.96~4.66)。そのほか事前規定の安全性アウトカムについては、両群で有意差はみられなかった。

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重度外傷性脳損傷後のプロゲステロン、第III相では無効/NEJM

 重度外傷性脳損傷後のプロゲステロン投与は、アウトカム改善効果は認められないことが示された。米国・ホフストラ大学医学部のBrett E. Skolnick氏らが、約1,200例の患者について行った無作為化第III相試験の結果、報告した。これまで、外傷性脳損傷に対するプロゲステロン投与については、動物実験や2つの無作為化第II相試験で、一貫した良好な結果が得られていた。NEJM誌オンライン版2014年12月10日号掲載の報告より。外傷後8時間以内から120時間、プロゲステロンを投与 研究グループは、16~70歳、グラスゴー・コーマ・スケール(GCS)が8以下で1つ以上の瞳孔反射を認める重度外傷性脳損傷(TBI)患者1,195例を対象に、無作為化プラセボ対照試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、外傷を受けてから8時間以内に開始し120時間にわたり、一方にはプロゲステロンを、もう一方にはプラセボをそれぞれ投与した。 主要評価項目は、外傷6ヵ月後のグラスゴー・アウトカム・スケール(GOS)スコアだった。両群のGOSスコア、アウトカム良好な人の割合、死亡率ともに同等 比例オッズ分析で共変数を補正後、プロゲステロン群とプラセボ群のアウトカムは同等だった(プロゲステロン群のプラセボ群に対するオッズ比:0.96、95%信頼区間:0.77~1.18)。 また、GOSスコアで、good recovery(GR:正常生活に復帰)またはmoderate disability(MD:日常生活は自立)だった人の割合も、両群で同等だった(プロゲステロン群50.4%、プラセボ群50.5%)。 一方で死亡率についても、両群で同等だった。 両群間の安全性に関する差は認められなかった。

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SYNAPSE試験:重症の外傷性脳損傷(TBI)に対してプロゲステロンは無効(解説:中川原 譲二 氏)-296

 プロゲステロンについては、これまでに外傷性脳損傷(Traumatic brain injury: TBI)の動物モデルにおける確かな効果と、2件の第II相無作為化比較試験(SYNAPSE TrialとPROTECT III Trial)における臨床的有効性が見いだされていた。SYNAPSE Trial の研究者たちは、大規模で前向きの第III相無作為化比較試験 を実施し、プロゲステロンの有効性と安全性を検討したが、残念ながらプロゲステロンが無効であったことをNEJM誌の12月10日号に報告した。1,195例を無作為化割り付けし、GCSで判定 このTrialは、多国家での偽薬比較試験として行われ、16歳~70歳までの重症TBI例(Glasgow coma scale [GCS]スコア:8点以下[3~15点のスケールで、低い点数は意識レベルの低下を示す]で、少なくとも一側の瞳孔反応がある症例)1,195例が、プロゲステロン群と偽薬群に割り付けられた。投薬は、受傷後8時間以内に開始され、120時間継続された。1次有効エンドポイントは、受傷6ヵ月後のGlasgow Outcome Scale[GOS]スコアで判定された。有効性、安全性ともに有意差なし 共変量調整を行った均整オッズ分析では、偽薬に比較してプロゲステロンの治療効果は認められなかった(オッズ比 0.96、95%CI:0.77~1.18)。GOSでの転帰良好患者(good recoveryとmoderate disability)の比率は、プロゲステロン群で50.4%、偽薬群で50.5%であった。死亡率も両群で同等であった。また、両群間に明らかな安全性の違いは認められなかった。前臨床試験や初期の臨床試験の結果と対照的なデータ 本試験の1次および2次有効性解析は、重症TBI患者におけるプロゲステロンの臨床的有用性を示さなかった。これらのデータは、前臨床試験での確かな結果や第III相試験の実施を勢いづけた初期の臨床試験での結果とは対照的なデータとなった。著者らは、「本試験の否定的結果は、TBIにおける薬剤開発と臨床試験の手順の再考を促すだろう」と述べている。

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イソフラボンは潰瘍性大腸炎のリスクか~日本人での検討

 先行研究により、エストロゲンが潰瘍性大腸炎の発症に関与することが示唆されている。イソフラボンは17β-エストラジオールと構造が似ていることから、食事におけるイソフラボン摂取が潰瘍性大腸炎発症に影響する可能性がある。そこで、潰瘍性大腸炎について多施設共同・症例対照研究を行っているThe Japanese Case-Control Study Group for Ulcerative Colitisは、前病段階におけるイソフラボン摂取と潰瘍性大腸炎リスクについて検討を行った。その結果、日常の食事におけるイソフラボンの摂取が、とくに女性における潰瘍性大腸炎リスク上昇と関連することが示唆された。この結果を受けて、著者らは「本知見を確認するため、プロスペクティブなコホート研究の実施が望ましい」と指摘している。PloS one誌2014年10月14日号の掲載報告。 126例の新規発症潰瘍性大腸炎患者と年齢や性別で適合した対照170例を対象とした、病院ベース症例対照研究。自記式食事歴法質問票を用いて、食事因子の情報を収集した。病気の症状による食習慣の潜在的な変化を考慮して、被験者募集前1ヵ月間および1年前における食習慣をそれぞれ調査した。 主な結果は以下のとおり。・募集前1ヵ月間の食習慣における、イソフラボン摂取量の最高三分位群において潰瘍性大腸炎リスクが高かった(最低三分位に対するオッズ比[OR] 2.79、95%CI:1.39~5.59、傾向のp=0.004)。・募集前1年時点の、ほとんどの潰瘍性大腸炎患者でまだ初期症状のない時期においても、食事評価との有意な関連が認められた(最低三分位に対する最高三分位のOR 2.06、95%CI:1.05~4.04、傾向のp=0.04)。・この関連性は、女性においてより顕著に認められた(1年前のイソフラボン摂取量における最低三分位に対する最高三分位のOR 4.76、95%CI:1.30~17.5、傾向のp=0.02)が、男性では不明瞭であった(同1.21、0.49~3.01、傾向のp=0.63)。

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トリプルネガティブ乳がんでのCOX-2発現

 エストロゲン受容体(ER)とプロゲステロン受容体(PR)、HER2がすべて陰性のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)とシクロオキシゲナーゼ(COX)-2過剰発現は、ともに原発性乳がんにおける予後不良マーカーとして知られている。 米国MDアンダーソンがんセンターのKailash Mosalpuria氏らは、TNBC患者の原発腫瘍でCOX-2蛋白が過剰発現しているとの仮説を立て検証した結果、非転移性TNBCと原発腫瘍のCOX-2蛋白過剰発現との関連を認めた。今回の知見は、切除可能なTNBC患者におけるCOX-2標的治療について、さらなる研究を支持するものである。Molecular and clinical oncology誌2014年9月号(オンライン版2014年6月23日号)に掲載。 著者らは、2005年2月~2007年10月に治療されたステージI~III乳がん患者125例の原発腫瘍サンプルにおけるCOX-2発現レベルを、前向きに検討した。臨床病理学的要因に関する情報は前向きのデータベースから取得した。ベースラインの腫瘍特性と患者属性におけるTNBCと非TNBCとの比較は、カイ2乗およびFisherの正確確率検定を用いて行った。 主な結果は以下のとおり。・患者のうち、ER陽性が60.8%、PR陽性が51.2%、HER2/neu増幅が14.4%、TNBC が28.0%であった。・COX-2過剰発現が33.0%に認められた。・TNBCは、COX-2過剰発現(p=0.009)、PR発現(p=0.048)、高グレード(p=0.001)と関連していた。・年齢、閉経状態、BMI、リンパ節転移状況、術前化学療法の調整後、TNBCはCOX-2過剰発現の独立予測因子であった(p=0.01)。

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抗精神病薬服用が骨密度低下を引き起こすのか:千葉大学

 これまでに、統合失調症患者において長期の抗精神病薬服用により骨粗鬆症/骨減少症の高リスクが引き起こされる可能性を示唆するエビデンスが蓄積されてきた。しかし、抗精神病薬服用がどの程度、骨密度(BMD)低下を引き起こすのかについては明らかになっていなかった。千葉大学の沖田 恭治氏らは、統合失調症患者における第二世代抗精神病薬と骨代謝との関連について検討した。その結果、統合失調症患者のBMD低下について複雑な原因を示唆する知見が得られたことを報告した。Schizophrenia Research誌オンライン版2014年5月30日号掲載の報告。 研究グループは、精神疾患患者を対象として、骨状態の進行を正確に予測できる骨代謝マーカーを用いて試験を行った。被験者(統合失調症患者167例、健常対照60例)のプロラクチン、エストラジオール、テストステロン、骨吸収マーカー(TRACP-5b)を測定し評価した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者は健常対照と比較して、プロラクチン値が有意に高値であり、TRACP-5b値は有意に低値であった。・さらに、すべての男性被験者群および男性患者において、プロラクチンとエストラジオールおよびテストステロンとの間に、負の関連性が認められた。・TRACP-5bは、女性患者ではプロラクチンと正の関連性が、すべての女性被験者群ではエストラジオールと負の関連性が認められた。・骨吸収率は、健常対照と比べて患者のほうでかなり低かったことが示され、統合失調症患者におけるBMD低下の原因は複雑であることが示唆された。・本研究によりキーとなる因子間でいくつかの意味がある関連が確認された。すなわち高プロラクチン血症が性ホルモンの抑制を誘発し、高骨代謝に結びついている可能性が示された。・これらの結果を踏まえて著者は、「骨吸収マーカーであるTRACP-5b測定が、BMD低下の病理を明らかにするのに役立つ可能性があることが示唆された」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症患者は“骨折”しやすいって本当? 抗てんかん薬の長期服用者、80%が骨ミネラル障害 抗精神病薬誘発性持続勃起症への対処は  担当者へのご意見箱はこちら

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母斑数は乳がんの独立予測因子?

 母斑はホルモンに関連することが示唆されている。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMingfeng Zhang氏らは、母斑は血漿ホルモン値の表現型マーカーとなり、乳がんリスクを予測するのではないかと仮説を立て検証研究を行った。その結果、母斑数は血漿ホルモン値を反映し、既知の因子とは独立した乳がんリスクの予測因子となりうることを報告した。PLOS Medicine 誌2014年6月10日号の掲載報告。 検討は、「看護師健康調査」に参加し24年間(1986~2010年)追跡を受けた7万4,523例を対象に行われた。 乳がんを診断された被験者を特定し、母斑数を調べ、既知の乳がんリスク因子で補正したモデルを用いて、母斑数別に乳がんの相対リスクを推算した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中、侵襲性乳がんを診断された被験者は、総計5,483例であった。・母斑がなかった被験者と比較して、その数が多くなるほど、乳がんリスクは増大することが明らかになった。・多変量補正ハザード比は、母斑数1~5個で1.04(95%信頼区間[CI]:0.98~1.10)、6~14個で1.15(同:1.00~1.31)、15個以上で1.35(同:1.04~1.74)であった(連続傾向p=0.003)。・追跡期間24年間における乳がん発生の絶対リスクは、母斑なしの8.48%から、母斑数増大に伴い増大がみられた。すなわち、母斑数1~5個で8.82%(95%CI:8.31~9.33%)、6~14個で9.75%(同:8.48~11.11%)、15個以上で11.4%(同:8.82~14.76%)であった。・また、母斑数と乳がんリスク増大との関連性は、エストロゲン受容体(ER)陽性腫瘍例においてのみ認められた。母斑数5個についての多変量ハザード比は、ER+/プロゲステロン受容体(PR)陽性腫瘍では1.09(95%CI:1.02~1.16)、ER+/PR-腫瘍では1.08(同:0.94~1.24)、ER-/PR-腫瘍では0.99(同:0.86~1.15)であった。・また、閉経後でホルモン補充療法を受けていなかった被験者(611例)のサブグループにおいて、血漿ホルモン値を母斑数別に調べた結果、閉経後では6個以上の母斑があると、母斑がない被験者と比べて、遊離エストラジオール値が45.5%高く、遊離テストステロン値は47.7%高かった。・362例の乳がん被験者と適合対照611例のサブグループ解析において、母斑5個ごとの多変量補正後オッズ比は1.25(95%CI:0.89~1.74)から、血漿ホルモン値補正後は1.16(同:0.83~1.64)に低下した。・なお本研究は、母斑数が自己申告であること、試験が白人女性に限られており限定的で、試験結果がすべての集団に適用できるとは限らない。

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治療抵抗性統合失調症に対する漢方薬「抑肝散」の有用性:島根大学

 統合失調症患者のうち抗精神病薬が無効の治療抵抗性患者は20~25%を占めると推定されている。漢方薬の抑肝散は、D2および5-HT1Aの部分的作用、5-HT2Aとグルタミン酸の拮抗作用を有しており、最近行われた試験において、認知症やその他の神経精神症状と関連した行動および精神症状の治療において、安全かつ有用であることが示されていた。今回、島根大学の宮岡 剛氏らによる多施設共同二重盲検プラセボ対照の無作為化試験の結果、治療抵抗性統合失調症に対する漢方薬「抑肝散」の有用性が実証された。結果を踏まえて著者は、「抑肝散は、治療抵抗性統合失調症の補助的治療戦略となりうることが示された。とくに、興奮や敵愾心の症状改善に有用と思われる」とまとめている。Psychopharmacology誌オンライン版2014年6月13日号の掲載報告。治療抵抗性統合失調症に漢方薬の抑肝散の有効性と安全性 研究グループは、漢方薬である抑肝散の治療抵抗性統合失調症患者に対する有効性と安全性を評価した。試験は2010年5月~2012年8月に行われ、日本国内34の精神科病院から抗精神病薬治療を受けている入院患者120例が試験に参加した。追跡期間は4週間で、精神病理について陽性・陰性症状尺度(PANSS)を用いて、5つの症状(興奮/敵愾心、抑うつ/不安、認知、陽性症状、陰性症状)について評価した。そのほか、Clinical Global Impression-Severity(CGI-S)、Global Assessment Functioning(GAF)、Drug-Induced Extrapyramidal Symptoms Scale(DIEPSS)を用いた評価も行った。主要有効性アウトカムは、PANSS評価の5つの症状スコアの変化で、副次アウトカムは、CGI-Sスコアの変化であった。 抑肝散の治療抵抗性統合失調症患者に対する有効性と安全性の主な結果は以下のとおり。・治療抵抗性統合失調症患者において、抑肝散は、PANSS評価の5つすべての症状スコアの低下においてプラセボに対する優越性を示した。・抑肝散群とプラセボ群の差は、総合スコア、抑うつ/不安、認知、陽性症状、陰性症状については、統計的に有意ではなかった。・しかし、興奮/敵愾心については、抑肝散群において有意な改善がみられた(p<0.05)。・抑肝散の副作用については、ほとんど認められなかった。関連医療ニュース 高齢の遅発統合失調症患者に対する漢方薬の効果は 治療抵抗性統合失調症女性、エストラジオールで症状改善 治療抵抗性統合失調症へのクロザピン投与「3つのポイント」

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妊娠中のプロゲステロン低値 女児のアレルギー性気道疾患リスクを高める

 妊娠中のプロゲステロンの値が低いと、生まれた女児のアレルギー性気道疾患のリスクが高くなる可能性があることが、ドイツのハンブルク大学エッペンドルフメディカルセンターのIsabel R.V.Hartwig氏により報告された。Journal of Molecular Medicine誌オンライン版2014年6月3日号の掲載報告。 介入研究のみならず観察研究においても、母親が出産前にアレルギー抗原に曝露すると、生まれてくる子供のアレルギー性気道疾患のリスクが高くなることが報告されている。しかしながら、このリスクに関係しているバイオマーカーについての知見はあまり明らかになっていない。 そこで、妊婦を対象に、内因的・外因的要因(心理社会的、内分泌的、生活スタイルのパラメータを含め)と出生児におけるその後のアレルギー性気道疾患のリスクとの関係を調べた。さらに、その要因を特定するため、アレルギー性気道反応のマウスモデルにより、機能的なテストも実施した。 本研究は409人の妊婦(妊娠4~12週)を対象としたプロスペクティブ・コホート研究である。妊娠中の曝露環境と生まれた子供の3~5歳時点におけるアレルギー性気道疾患との関係を多重ロジスティック回帰分析により検討した。 また、出産前にストレスを与えたBALB/cの母マウスから生まれた成体マウスに対し、オボアルブミンの感作により喘息を誘発させた。出産前のストレスを与えることに加え、一部の妊娠している母マウスには、ジヒドロジドロゲステロンから産生するプロゲステロンにより治療を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・ヒトにおいては、妊娠初期にプロゲステロンの値が高かった場合、生まれた女児のアレルギー性気道疾患(喘息または鼻炎)のリスクが低かったが(調整後オッズ比:0.92、95%CI:0.84~1.00)、男児の場合には、その傾向は認められなかった(調整後オッズ比:1.02、95%CI:0.94~1.10)。・マウスにおいては、ストレスを与えた母マウスに出産前、ジヒドロジドロゲステロンを補充すると、生まれた子供のうち雌のみにストレス誘発による気道過敏性の減弱が認められた。

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統合失調症の症状、インターロイキン-2の関与が明らかに

 統合失調症の患者における認知能力の衰退と陰性症状に、インターロイキン2(IL-2)が関与している可能性が、ブラジル・サンパウロ連邦大学のElson Asevedo氏らによる検討の結果、示唆された。これまで、統合失調症においてIL-2が関与している可能性が示唆されていたが、どのような症状と関連しているかを調べる検討は行われていなかった。Physiology & Behavior誌2014年4月号の掲載報告。 研究グループは、統合失調症患者において、末梢IL-2値と症状および認知のパフォーマンスとの関連について調べ、末梢IL-2値について、統合失調症患者と健常対照者との比較も行った。パフォーマンスについては、DSM-IV基準で統合失調症と診断され治療を受けている外来患者と、健常対照者を対象に、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、統合失調症に関するカルガリーうつ病評価尺度(CDSS)、臨床全般印象尺度(CGI)、全般機能評価尺度(GAF)にて評価して調べた。被験者の採血は、全員午前9~10時に、EDTA管を用いた静脈穿刺にて行われた。IL-2の血漿中濃度は、Cytometric Bead Array(CBA)法によって確定し、コンピュータによる神経心理学的検査で、言語学習能、ことばの流暢さ、作業記憶、変化に対する柔軟性(set shifting)、実行機能、抑制と知能を評価した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者29例と、健常対照者26例について検討が行われた。・統合失調症患者は、健常対照者よりIL-2値が低値であった(p<0.001)。・統合失調症患者群におけるIL-2値は、ディジットスパンテスト(rho=0.416、p=0.025)、知能評価(rho=0.464、p=0.011)のスコアとの間に明らかな相関を認めた。・また、IL-2値とPANSS陰性サブスケールの総スコアとの逆相関の関連性を認めた(rho=-0.447、p=0.015)。関連医療ニュース 双極性障害の認知障害にインターロイキン-1が関与 治療抵抗性統合失調症女性、エストラジオールで症状改善 統合失調症では自己免疫疾患リスクが1.53倍

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治療抵抗性統合失調症女性、エストラジオールで症状改善

 多くの統合失調症女性は、現時点での最適な治療を受けているにもかかわらず症状が持続する。これについて先行研究では、エストロゲン療法の追加が効果的である可能性が示唆されていた。オーストラリア・モナシュ大学のJ Kulkarni氏らは、治療抵抗性の統合失調症女性に対するエストロゲン療法追加の有用性を検討する初の大規模臨床試験を行った。その結果、エストラジオール経皮投与は、プラセボと比較し陽性・陰性症状スコア(PANSS)をはじめとする症状スコアを有意に低下させ、とくに陽性症状に対して高い効果を示すことを報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2014年4月15日号の掲載報告。  本試験は、治療抵抗性の統合失調症女性を対象とした初めての大規模無作為化比較試験であり、8週間にわたる3群の二重盲検無作為化対照試験で、2006~2011年に実施された。対象は、18~45歳(平均35歳)で、統合失調症または統合失調症様の障害を有しPANSS スコア60超、抗精神病薬を4週間以上服用しているが症状を認める女性183例であった。平均罹病期間は10年以上であった。エストラジオール200 μgおよび100 μgの経皮投与、またはプラセボパッチを投与した。主要アウトカムはPANSSスコアとし、試験を完了した180例についてベースライン時、7、14、28および56日目に評価した。認識力はベースライン時と56日目に神経心理検査RBANS(Repeatable Battery of Neuropsychological Status)を用いて評価した。データは潜在曲線モデルを用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・エストラジオール100μg群、200 μg群とも、PANSS陽性スコア、全般スコアおよび総合症状スコアが、プラセボに比べて有意に低下した(p<0.01)。・その効果は、エストラジオール100μg群に比べ200 μg群のほうが大きかった。・エストラジオール200μg群では、PANSSのサブスケール陽性症状において最大の効果が認められた(エフェクトサイズ:0.44、p<0.01)。・以上のように本研究により、治療抵抗性の統合失調症女性、とくに陽性症状を呈する例において、エストラジオールは有効であり、臨床的意義のある追加治療であることが示された。関連医療ニュース 統合失調症女性の妊娠・出産、気をつけるべきポイントは 日本人女性の統合失調症発症に関連する遺伝子が明らかに 妊娠可能年齢のてんかん女性にはレベチラセタム単独療法がより安全

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リンパ脈管筋腫症〔LAM : lymphangioleiomyomatosis〕

1 疾患概要■ 概念・定義リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis: LAM)は、ほぼ女性に限って発症する性差の著しい疾患である。主として妊娠可能年齢の女性に発症するまれな疾患で、腫瘍抑制遺伝子(TSC遺伝子)の異常により腫瘍化した平滑筋様細胞(LAM細胞)が肺や体軸中心リンパ系(骨盤腔、後腹膜腔および縦隔にわたる)で増殖し、慢性に進行する腫瘍性疾患である。肺では、多発性の嚢胞形成を認める。自然気胸を反復することが多く、女性自然気胸の重要な基礎疾患である。肺病変が進行すると拡散障害と閉塞性換気障害が出現し、労作性の息切れ、血痰、咳嗽などを認める。肺病変の進行の速さは症例ごとに多様であり、比較的急速に進行して呼吸不全に至る症例もあれば、年余にわたり肺機能が保たれる症例もある。肺外では、体軸リンパ流路に沿ってリンパ脈管筋腫(lymphangioleiomyoma)を認めることがある。リンパ脈管筋腫はCT画像では、嚢腫様あるいはリンパ節腫大様に描出され、LAM細胞の増殖により拡張したリンパ管あるいはリンパ節と考えられている。腎臓には、血管筋脂肪腫(angiomyolipoma: AML)を合併する場合もある。常染色体優性遺伝性疾患である結節性硬化症(TSC)を背景として発症する例(TSC-LAM)、TSCとは関連なく発症する例(孤発性LAM)の2つのタイプがある。■ 病名や疾患概念の変遷本疾患は1940年前後から記載され始め、Frack ら(1968年)により初めてpulmonary lymphangiomyomatosis という言葉が用いられ、Corrin ら(1975年)により 28 例の臨床病理学的特徴がまとめられた。Pulmonary lymphangioleiomyomatosis という言葉は、Carrington ら(1977年)が、本疾患の生理学的、病理学的、画像の各所見の関連性を詳細に検討した際に使用された。現在では、主にlymphangioleiomyomatosisが用いられている。日本においては、山中、斎木(1970年)が 2 例の剖検例と 1 例の開胸肺生検例を検討し、びまん性過誤腫性肺脈管筋腫症として報告したのが最初である。一方、症例の集積に伴い、LAMは肺のみに限局した疾患ではなく全身性疾患として認識されるようになり、「肺」を病名から除いて「リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis)」という病名で呼ばれるようになった。すなわち、肺外病変としての後腹膜腔や骨盤腔のリンパ脈管筋腫が主体で、肺病変が軽微である症例の存在も認識されるようになったためである。■ 疫学まれな疾患であるため、有病率や罹患率などの正確な疫学データは得られていない。疫学調査の結果から、日本でのLAMの有病率は100万人当たり約1.9~4.5人と推測されている。米国などからの報告でも人口100万人当たり2~5人と推測されている。■ 病因腫瘍抑制遺伝子である TSC 遺伝子の変異が LAM 細胞に検出される。LAMは、Knudson の 2-hit 説が当てはまる腫瘍抑制遺伝子症候群のひとつである。TSC 遺伝子には TSC1 遺伝子と TSC2 遺伝子の2種類があり、TSCはどちらか一方の遺伝子の胚細胞遺伝子変異による遺伝性疾患である。TSC-LAM 症例はTSC1あるいはTSC2遺伝子のどちらの異常でも発生しうるが、sporadic LAM 症例ではTSC2遺伝子異常により発生する。TSC 遺伝子異常により形質転換した LAM 細胞は、病理形態学的にはがんといえる程の悪性度は示さないが、転移してリンパ節や肺にびまん性、不連続性の病変を形成する。 LAM病変に認められる豊富なリンパ管や乳び液中に検出されるLAM細胞クラスターは、LAMの病態進展におけるリンパ行性転移の重要性を示唆する所見である。片肺移植後のドナー肺に LAM が再発した症例では、レシピエントに残存する体内病変からドナー肺に LAM 細胞が転移して、再発したことを示唆する遺伝学的解析結果が報告されている。最近の研究では、必ずしもすべてのLAM細胞がTSC遺伝子変異を有するわけではなく、変異遺伝子のallelic frequencyは約20%前後と報告されている。TSC1、TSC2遺伝子は、それぞれハマルチン(約130kDa)、ツベリン(約180kDa)というタンパク質をコードし、両者は細胞質内で複合体を形成して機能する。ハマルチン/ツベリン複合体は、細胞内シグナル伝達に関与するさまざまなタンパク質からリン酸化を受けることにより、mTORの活性化を制御している。LAMでは、ハマルチン/ツベリン複合体が機能を失い、恒常的にmTORが活性化された状態となるため、LAM細胞の増殖を来す。そのため、mTOR阻害薬のシロリムス(国内未承認)は、LAM細胞増殖を抑制し病状の進行抑制に寄与すると考えられる。■ 症状以下のカッコ内の数値は、呼吸不全に関する調査研究班による平成18年度の全国調査集計において報告された、LAM診断時の頻度である。1)胸郭内病変に由来する症状労作性の息切れ(48%)や自然気胸(51%)で発症する例が最も多い。そのほかに、血痰(8%)、咳嗽(27%)、喀痰(15%)などがある。肺内でのLAM細胞の増殖により生じる肺実質破壊(嚢胞性変化)、気道炎症、などによると考えられる。労作性の息切れは、病態の進行とともに頻度が高くなる。進行例では、血痰、咳嗽・喀痰などの頻度も増加する。気胸は、診断後の経過中を含め患者の約7割に合併するとされる。LAMは、女性気胸の重要な原因疾患である。2)胸郭外病変に由来する症状腹痛・腹部違和感、腹部膨満感、背部痛、血尿など胸郭外病変に由来する症状(16%)がある。腎AML(41%)、後腹膜腔や骨盤腔のリンパ脈管筋腫(26%)、腹水、などによると考えられる。3)リンパ系機能障害による症状乳び胸水(8%)、乳び腹水(8%)、乳び喀痰、乳び尿、膣や腸管からの乳び漏などがある。約3%の症例では、診断時あるいは経過中に下肢のリンパ浮腫を認める。4)無症状人間ドックなどの健診を契機に、偶然発見される場合もある。自覚症状はないが、腹部超音波検査や婦人科健診において腎腫瘍、後腹膜腫瘤、腹水などを指摘され、これを契機としてLAMと診断される例がある。■ 経過と予後LAMは、慢性にゆっくりと進行する腫瘍性疾患であるが、進行の早さには個人差が大きく、その予後は多様である(図1)。わが国での全国調査によると、初発症状や所見の出現時からの予測生存率は、5年後が91%、10年後が76%、15年後が68%であった。予後は診断の契機となった初発症状・所見によって異なり、息切れを契機に診断された症例は、気胸を契機に診断された症例より診断時の呼吸機能が有意に悪く、また、予後が不良であった。画像を拡大する図1では、Aは重症例、Bは中等症例、Cは軽症例、Dは最軽症例と呼ぶ。Aは息切れ発症のLAMを想起すればよい。AにGnRH療法を行っても、A’では肺機能や生存期間の改善に寄与していない。A’’では、肺機能の低下スピードはやや軽減し、そのため生存期間は伸びている。C、Dは気胸発症例、あるいは偶然の機会に胸部CTで多発性肺嚢胞を指摘されたような症例を想起すればよい。これらの症例では、特別な治療を考える必要はないであろう。Bは中間の症例である。B’は、GnRH療法により肺機能の低下速度が緩徐となり、生命予後は延長することが明らかである。この図から読み取れる点は、治療的介入が肺機能の低下速度を緩徐にできるならば、ゆっくりと進行する慢性疾患では比較的長期間の生命予後の延長をもたらすことができる点である。後述するように、シロリムスによる分子標的療法は、肺機能の低下速度を軽減するのではなく、安定化ないしは治療前よりやや改善することが示されており、LAMの自然史を大きく変える治療として期待されるゆえんである。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断にあたっては、特徴的な臨床像と胸部CT所見からLAMを疑い、図2のような手順に沿って診断する。画像を拡大する■ 画像診断診断には高分解能CT(HRCT)が推奨され、境界明瞭な数 mm~1 cm大の薄壁を有する嚢胞が、両肺野にびまん性に、比較的均等に散在しているのが特徴である(図3A)。通常の撮影条件では、肺気腫と鑑別が難しい場合がある(図3B)。診断にあたっては、HRCTで特徴的な所見を確認し、かつ慢性閉塞性肺疾患(COPD)やBirt-Hogg-Dubè(BHD)症候群など他の嚢胞性肺疾患を除外することが重要である。また、腎血管筋脂肪腫、後腹膜腔や骨盤腔のリンパ節腫脹、TSCに合致する骨硬化病変、腹水などの有無について、腹部~骨盤部のCT検査やMRI検査で確認することも診断にあたって有用である(図3C、3D)。可能であれば、経気管支肺生検あるいは胸腔鏡下肺生検により病理診断を得ることが推奨される。画像を拡大する■ 病理診断LAMの病理組織学的特徴は、LAM細胞の増殖とリンパ管新生である(図4)。画像を拡大するLAM細胞はやや未熟で肥大した紡錘形の平滑筋細胞様の形態を示し、免疫染色ではα-smooth muscle actinやHMB45陽性である。女性ホルモンレセプター(エストロゲンレセプターやプロゲステロンレセプター)を発現する。LAM細胞は、集簇して結節性に増殖し、肺では嚢胞壁、胸膜、細気管支・血管周囲、体軸リンパ流路などで不連続性に増殖している。ヘモジデリンを貪食したマクロファージが高頻度に認められ、LAMの肺実質では不顕性に肺胞出血を繰り返していると想像される。乳び胸水や腹水合併例では胸腹水中のLAM細胞クラスター(図5)を証明することで診断可能である。画像を拡大する■ 肺機能検査肺機能検査では、拡散能障害と閉塞性換気障害を認め、経年的に低下する。換気障害よりも拡散障害を早期から認める点が特徴である。MILES試験の偽薬群では、FEV1は-144 ± 24 mL/年の低下率であった。一方、閉経前と閉経後の症例では、平均-204 vs.-36 mL/年(p<0.003)と有意に閉経後症例の低下率が低かった。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)LAMに対する根治的治療法、すなわちLAM細胞を完全に排除し、破壊された肺を元に戻す治療法はない。MILES試験によりLAMの分子標的薬として確立されたmTOR阻害薬のシロリムスは、肺機能を安定化、乳び胸水・腹水・リンパ浮腫などのLAMに合併するリンパ系機能障害の病態の改善、合併する腎血管筋脂肪腫の縮小などの効果が報告されている。そして、その作用はLAM細胞に対して、殺細胞的ではなく静細胞的であると考えられている。すなわち、シロリムス内服を中止すると効果は消失し、元の病態が再来する。したがって、長期に内服することが必要であるが、免疫抑制薬でもあるシロリムスをLAM患者が長期内服した際の安全性についてのエビデンスはない。このような背景から、現時点では、LAMという疾患の自然史(図1)に照らして目の前の患者の状態を評価し、治療介入の利益と損益を熟考して治療方針を立てるべきである。以下に、LAMとその合併病態に対する治療を概説する。■ LAMに対する薬物療法1)シロリムス(国内未承認)肺機能が進行性に低下する場合(目安としてはFEV1<70 %pred)や内科的に管理困難な乳び胸水や腹水の合併例では、シロリムスの投与を考慮する。治験では血中トラフ値5 ~ 15 ng/mLを維持するように投与量が調節され、おおよそ2ないし3 mg/日(分1、朝食後)が必要となった。しかし、シロリムス1 mg/日の低用量(血中トラフ値<5 ng/mL)でも、十分な治療効果が得られたとの報告がある。シロリムスはCYP3A4で代謝されるため、肝障害やCYP3A4活性に影響を与える薬剤との相互作用に注意する。2)GnRH療法(偽閉経療法)女性ホルモンはLAM細胞の増殖に関与するため、gonadotropin-releasing hormone(GnRH)誘導体を投与して偽閉経状態にすることが、従来は経験的に行われてきた。リュープロレリン(商品名: リュープリン)1.88 mg 皮下注/4週ごと(保険適用外)、ゴセレリン(同: ゾラデックス)1.8 mg 皮下注/4週ごと(保険適用外)、ブセレリン(同: スプレキュア)1.8 mg皮下注/4週ごと(保険適用外)などの皮下注薬剤は月1回の投与で利便性が高く、かつ、女性ホルモンを確実に低下させ偽閉経状態をもたらすことができ、点鼻製剤より有用である。シロリムスが何らかの理由により投与できない場合、あるいは乳び漏の管理に難渋するなどの場合にはGnRH療法を考慮する。投与に際しては、更年期症状や骨粗鬆症が生じうるため、これらの治療関連病態を念頭におく必要がある。■ LAMの病態あるいは併存疾患の治療1)気管支拡張療法閉塞性換気障害があり労作性に息切れを認める症例では、COPDと同様に、抗コリン薬チオトロピウム(同: スピリーバ レスピマット)あるいはβ2刺激薬インダカテロール(同: オンブレス)などの長時間作用性気管支拡張薬の吸入を処方する(保険適用外)。2)気胸気胸を繰り返すことが多いため、気胸病態に対する治療とともに再発防止策を積極的に検討する。酸化セルロースメッシュ(同: サージセル)とフィブリン糊による胸腔鏡下全肺胸膜被覆術(カバリング術)は癒着を起こさず、再発防止が可能である。技術的に実施困難な施設では、気胸手術時の胸膜焼灼・剥離術、内科的癒着術[自己血、OK432(同: ピシバニール)ほか]などが行われる。3)乳び漏(乳び胸水や腹水など)に代表されるリンパ系機能障害乳び胸水、乳び腹水、乳び心嚢液、乳び喀痰、乳び尿、膣や腸管からの乳び漏、後腹膜腔や骨盤腔のリンパ脈管筋腫、下肢のリンパ浮腫、肺内のリンパ浮腫像などはLAMにみられる特徴的なリンパ系の機能障害である。LAM細胞の増殖に伴うリンパ管の閉塞・破綻が原因と考えられているが、LAM細胞増殖に伴うリンパ管新生がその背景要因である。脂肪制限食は、腸管からの脂肪吸収に伴うリンパ液の産生を減少させ、結果として乳び漏出を減少させる。下半身の活動量が増加するとリンパ流も増加するため、活動量を制限して安静にすることはリンパ漏を減少させる。リンパ浮腫は後腹膜腔や骨盤腔のリンパ脈管筋腫を合併する症例にみられ、複合的理学療法(弾性ストッキング、リンパマッサージなど)が治療として有用である。これらの食事指導、生活指導、理学療法では乳び漏やリンパ浮腫の管理が困難な場合には、シロリムス投与を考慮する。何らかの理由でシロリムスを投与できない場合には、GnRH療法、胸膜癒着術(乳び胸水例に対して)、Denver® shunt(乳び腹水例に対して)などを適宜、考慮する。乳び漏を穿刺・排液し続けることは、栄養障害、リンパ球喪失に伴う二次性免疫不全状態を招来するので慎むべきである。4)腎血管筋脂肪腫AMLからの出血リスクを予測する因子は、腫瘤径よりもAMLに合併する動脈瘤の大きさのほうが感度・特異度ともに優れている。動脈瘤径≧5 mmでは出血のリスクが高まるため動脈瘤に対する塞栓術を考慮する。腫瘍径≧4 cmもひとつの目安であるが、4 cm以上であっても動脈瘤の目立たない例もあり、このような症例では腫瘍径≧4 cmであっても経過観察可能である。一般に、巨大なAMLを有していても腎機能は良好に保たれるため、安易な腎臓摘出術は慎むべきである。5)慢性呼吸不全在宅酸素療法、COPDに準じた呼吸リハビリテーションを行う。常時酸素吸入が必要な呼吸不全例、あるいはFEV1<30 %predでは肺移植を検討する。6)妊娠・出産妊娠・出産に伴う生理的負荷に耐えうる心肺機能を有することが前提となるが、妊娠・出産は必ずしも禁忌ではない。しかし、妊娠中の症状の増悪や病態の進行、気胸や乳び胸水を合併する可能性などのリスクを説明し、患者ごとの対応が必要である。妊娠・出産に際しては、気流制限が重症であるほどリスクが高い。4 今後の展望シロリムスは、二重盲検比較試験によりLAMに対して有効性が確認された薬剤であり、今後のLAMの自然史を大きく変える治療法として期待される。一方、長期投与による安全性は未確認であり、治療中は効果と有害事象のバランスを慎重に観察する必要がある。シロリムスは、LAM細胞に対して殺細胞的ではないため、シロリムスに他の薬剤を併用し、治療効果を高める基礎研究や臨床研究が考案されている。5 主たる診療科主たる診療科は呼吸器内科となる。また、連携すべき診療科は次のとおりである。産婦人科(妊娠・出産、合併あるいは併存する女性生殖器疾患)放射線科あるいは泌尿器科(腎血管筋脂肪腫の塞栓術)脳神経内科・皮膚科(結節性硬化症に関連したLAM)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター LAM(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)呼吸不全に関する調査研究班(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)気胸・肺のう胞スタディグループ(医療従事者向けのまとまった情報)The LAM foundation(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった英文情報)患者会情報J-LAMの会(リンパ脈管筋腫症患者と支援者の会)※おもに若年女性に発症するため、仕事、結婚、妊娠・出産、育児などの諸問題に対して、患者のみならず家族を含めた心のケアやきめ細かな対応が望まれる。LAM患者と支援者によるJ-LAMの会は、医療者との連携、疾患についての情報提供や患者同士の交流促進の場として利用されている。1)Hayashida M, et al. Respirology. 2007; 12: 523-530.2)林田美江ほか. 日呼吸会誌. 2008; 46: 428-431.3)Johnson SR, et al. Eur Respir J. 2010; 35: 14-26.4)林田美江ほか. 日呼吸会誌. 2011; 49: 67-74.5)McCormack FX, et al. N Engl J Med. 2011; 364: 1595-1606.

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