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1型糖尿病患者の低血糖回避にリアルタイムCGM(Dexcom G5)は有用である(解説:住谷哲氏)-832

 インスリン治療を必須とする1型糖尿病患者において低血糖は避けては通れない。健常人の場合、低血糖は動悸や異常な空腹感などの交感神経刺激症状の出現によって自覚されるが、多くの1型糖尿病患者はこの自覚が障害された状態(impaired awareness of hypoglycemia[IAH]:適切な訳語がないのでこのままで使用する)を合併している。低血糖無自覚症(hypoglycemia unawareness)とこれまで呼ばれてきたが、無自覚の程度まで至る患者は少なく、軽度の障害の場合が多いので最近はIAHが用いられることが多い。前向きコホート研究の結果、IAHを合併した患者は合併しない患者に比較して、重症低血糖の頻度が約6倍に増加することが明らかにされている1)。 本研究はMDI:multiple daily insulin injections(強化インスリン療法に相当する)を実施中で、IAHまたは過去1年以内の重症低血糖の既往のいずれかがある1型糖尿病患者を対象として、リアルタイムCGM(rtCGM)が低血糖イベント(CGMにおいて54mg/dL未満が20分以上持続する状態と定義)の頻度を減少させるか否かを検討した。結果は通常のSMBGに比較してrtCGMの使用により、低血糖イベントの頻度が72%減少することが明らかとなった(ハザード比:0.28、95%信頼区間[CI]:0.20~0.39、p<0.0001)。 本研究で用いられたrtCGMはDexcom G5 Mobile System(本邦未認可)である。1週間ごとにセンサーを交換し、最低でも1日2回のSMBGによる較正が必要である。さらにalert and alarm機能を備えている点が、現在使用が増加しているFreeStyle Libreと異なっている。FreeStyle LibreはSMBGによる較正が不要であり、服の上からスキャンするだけで血糖値(正しくは間質液グルコース濃度)がわかり、血糖推移のトレンドも表示されるので、低血糖のリスクを減少させることが期待される。実際、FreeStyle Libreの使用により、1型糖尿病患者において低血糖の頻度の減少がIMPACT試験で明らかにされた2)。しかしIMPACT試験ではIAHの患者は最初から除外されており、IAHを合併した1型糖尿病患者において、同様の結果が得られるかは不明である。IAHまたは重症低血糖の既往を有する1型糖尿病患者において、本研究で用いられたrtCGMであるDexcom G5とFreeStyle Libreを直接比較したパイロット試験の結果が報告されているが3)、低血糖の持続時間はDexcom G5を用いたrtCGMで有意に減少していた。その理由としてはalert and alarm機能の有無による違いが考えられた。 本研究の結果からIAHの合併または重症低血糖の既往を有する、MDI実施中の1型糖尿病患者において、rtCGM(Dexcom G5)が低血糖イベントを減少させることが明らかとなった。今後はIAHの合併または重症低血糖の既往の有無によって患者を層別化することで、Dexcom G5またはFreeStyle Libreのいずれが適切か判断することが必要となるかも知れない。

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低脂肪食でも低炭水化物食でも減量効果は変わらない(解説:吉岡成人 氏)-830

 体重を減らすために有効なのは、低脂肪食なのか、低炭水化物食なのか…、多くの臨床研究が行われ、いまだ意見の一致が得られていない。 今回紹介する臨床研究では、肥満者における遺伝子多型と減量の関連に注目し、PPARG、ADRB2、FABP2の遺伝子多型を組み合わせて、脂質制限に対する感受性が高いと想定される低脂肪遺伝子型、炭水化物に対する感受性が高い低炭水化物遺伝子型、どちらに対しての感受性も高くない遺伝子型をもつ3群に分類したうえで、食事の組成と減量の効果を検討し、さらに、75gOGTTにおける30分後のインスリン分泌能と食事の組成、減量効果の関連の有無にも検討を加えた臨床試験である。青壮年の非糖尿者が対象 対象者は609人、BMIは28~40(平均33)m/kg2、18~50(平均40)歳、女性が57%を占めていた。対象者を無作為に低脂肪食群、低炭水化物食群に分類し、前者では調理や味付けに使用する油、脂肪の多い肉、全脂肪乳製品(低脂質ではない牛乳やヨーグルトなどの乳製品)、ナッツなどを制限し、後者ではシリアル、穀類、米、イモ類などの炭水化物の多い野菜、豆類を制限し、それぞれを1日20g程度まで抑えたうえで、定期的に1年間に22回の食事介入を行いつつ脂質や炭水化物の摂取量を漸増させて、2群間での脂肪摂取と炭水化物摂取の差が最大となるようにデザインして実施された。主要エンドポイントは12ヵ月間における体重の減少であり、食事組成と減量の程度、遺伝子多型、インスリン分泌能の関連について検討している。低脂肪食でも低炭水化物食でも体重の減少は同様であった 12ヵ月間における炭水化物、脂質、たんぱく質の摂取比率は、低脂肪食群でそれぞれ、48%、29%、21%、低炭水化物食群では30%、45%、23%であり、体重は低脂肪食群で5.3㎏、低炭水化物食群で6.0㎏とそれぞれ減少し、群間では差がなかった。遺伝子多型やインスリン分泌能と、食事の内容、体重減少の程度とも有意な関連はなかったと報告されている。脂質プロフィールに関しては、低脂肪食群でLDL-コレステロールが減少、低炭水化物食群ではHDL-コレステロールが上昇し、トリグリセライドが減少した。群間におけるLDL-コレステロール、HDL-コレステロール、トリグリセライドの差はそれぞれ5%、5%、15%であった。 総エネルギー摂取量は各群ともに平均で2,200kcalから1,700kcalまで減少させることができており、低脂肪食であっても低炭水化物食であっても、食品の組成や遺伝因子、インスリン分泌能に関係なく減量が可能であるというこの試験の結果は、痩せることに最も重要なのは、エネルギーの総摂取量を減らすことであるというきわめてシンプルなことを科学的に示している。

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侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第55回

第55回:重篤な患者とのコミュニケーションで役立つ3つの「W」キーワード肺がんメラノーマ動画書き起こしはこちらダートマス大学 腫瘍内科の白井敬祐です。今回お話ししたいと思うのは、前に少し触れた、“Serious Illness Conversation”ガイドラインです。重篤な病気になったときに、どういう話をすれば良いのか、ということを『Compication』とか『Checklist』とか『Being Mortal』という本で有名な、ハーバード大学の外科医であるAtul Gawande氏が主催する財団の1つの取り組みなのですが、重篤な病気になった時(心不全だったり、心筋梗塞だったり、COPDの末期だったり、必ずしもがんである必要はないんですけれども)、どのようにしたら、もっと良い準備をしてもらえるかといいうことで、オペ室で外科医あるいは看護師さんがチェックリストを使うのと同じように、そういった会話にもガイドラインがあれば、医療者側も患者さんも家族もストレスを減らしながら、かつ大事な要点を網羅しながら、話ができるんじゃないか、ということで進められているプロジェクトです。腫瘍内科は、Stage 4、根治が望めない患者さんに話をすることも多いので、そういう話を上手く持っていこうということです。それをいかにフェローに教えるか、インストラクターのためのワークショップが、先月ありました。病院から離れたところで、1日こもって、ポケベルは残念ながら鳴るんですけれども、そういうところに離れて、みっちりとワークショップをしたので、そのことについてお話しをしたいと思います。リーダーは2人の緩和医療ドクターです。夫婦2人とも“緩和医療 命”みたいな感じの仲の良い夫婦なんですけれども、その2人がコーチになって、肺がん専門の医者2人、消化器の専門の医者1人、頭頸部がんの専門家1人の計4人が選ばれて、本当のムースのはく製が飾ってあるような、山小屋に閉じ込められて、1日話をしました。たとえば「もし上手くいかなかったらどういうふうにしたいですか」とか「(バケットストとアメリカではよく言うんですけども)あなたの残された夢は何かありますか」「家族に言いたいことあれば、どんなことですか」とか。医療者側が、その話をするはタイミングが難しいんですね。治療が上手くいっていると、その話には触れにくいし、治療が上手くいってないと、逆にその話がメインになってしまって、準備をするというところまで行かないことも多いです。そういったタイミングを探さなくても、こういうマニュアルや、このリストに沿って話をしましょうと(いうことです)。面白いところは、このリストは、患者さんに見せても良いということになっています。たとえば、患者さんや家族の強みであったり、心配されてることとか、そういうトピックを選びながら「今日はこの話をしましょう」と話すことで、お互いにある程度心の準備ができるので、比較的ストレスが減るのではないかと(いうことです)。もしストレスが減れば、100%にはならないにしても、現在言われてよりは多くの人が、そういった会話に入れるのではないか、という趣旨で始められた企画です。ここで覚えてもらいたいのは、2つの“W、W、W”(です)。(まず)患者さんに話すとき、上手くいかなかった時の“Wish、Worry、Wonder”です。“I wish”ステートメントは、上手くいって欲しかったんだけど、残念がら上手くいかない、そうしたら「I worried、私はあなたのことを心配しています」、「あなたのことを考えてますよ」というメッセージを出して、「I wonder」と進めるんですね。たとえば、患者さんが、もっとアグレッシブなことを望んでおられるときに、医療者から見て、むしろ症状の緩和のほうに力を入れたほうが良いと思ったときには、「I wonder」から始めて、話を進める。“Wish、Worry、Wonder”というステートメントは、迷ったときに非常に便利だと思います。このガイドのミソは、詰まった時に助け船になってくれる(ことです)。患者さんもその逆にそのリスト見ながら、「今、こういうところに会話はあるんだな」と確認できるというメリットがあります。もう一つの“W、W、W”。これはSerious Illness Conversation”ガイドを、フェローや学生に教える時に(使います)。患者さんの気持ちに、ちょっと寄り添えていなかったり…あるいは僕たちがよく説明する時に言うんですけれども…インスリンの量も血糖値が変わると変わりますよね、それと同じように、われわれのコミュニケーションの仕方も、患者さんの反応の仕方によって調節する必要があると。ともすると、「いや、ここはこうしたほうが良かった」「僕ならこうするよ」っていうアドバイスから入りがちなんですけど、どんなフィードバックでも“W、W、W”で始めなさいということを徹底されました。今日も外来で研修を受けた同僚に「How was your WWW? 」とか冗談を言っているのですけれども、それは何かというと“What went well? ”です。「どうしたら良かったのか」とか「もっと上手くできなかったか」とネガティブなことを聞くのではなく、「どこが上手くいったと思う? 」と問いかけることで、教えられる側も改善点がないか考えるきっかけになる。上手くいったというところから始めることで、上手くいかなかったところにも気が付いてもらいやすい(ということです)。“What went well? ”ステートメント、よろしければ明日からの、研究医やスタッフとの会話に冗談で使ってみても良いかも知れません。 (ところで、)ダートマス大学はビジネススクールが有名で、Ron Adnerという教授がいるんですけれども、彼は(日本語訳にもなっている)『Wide Lens』という本を出しています。会社というのは良い製品ができると「これは絶対に市場に受け入れられるはずだ」と、そこばかりを追求して、結局上手くいかないことがあると(言っています)。それはなぜかというと、商品は良くて、それを手にする消費者が喜んでも、流通や小売店など、すべての場所でメリットがないと上手くいかないと(いうことです)。視野を広く持たないと、死角ができて失敗する。Wide Lensを持つことで、できるかぎり失敗を減らせるのではないか、ということを書いたビジネス書なのです。なぜスチーブ・ジョブス(のiPod)は成功して、ほかのMP3プレーヤーが失敗したのかとか、(医療カルテは米国ではEpicという会社が独占しているのですが)GoogleやIBMやOracleオラクルといった大会社も電子カルテにか関わっていたのに上手くいかず、なぜ小さなEpicがのし上がったのか、ということも解説しているので、興味があったら読んでみてください。(前出の)Atul Gawandeが、その『Wide Lens』を読んで共感したようで(広く見ることで、死が運命付けられたような病気にかかったときに、そういう会話を上手くできるということですね)、Ron Adnerにコンタクトを取ってきて、今度話をするみたいです。ちょっとその話を教えてもらいたいと思います。なぜRon Adnerなのかというと、娘が高校の水泳部に入っていて、車で送り迎えをするのですが、その時の待ち友達の1人が、Ron Adnerです。Atul Gawande著 ComplicationAtul Gawande著 The Checklist Manifesto: How To Get Things RightAtul Gawande著 Being MortalThe Conversation ProjectRon Adner著 The Wide Lens

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スタチンによる糖尿病発症の危険因子~日本のPMSデータ

 スタチン使用と糖尿病や高血糖症リスクの増加との関連について、慶應義塾大学薬学部の橋口 正行氏らが、日本の市販後調査(PMS)データベースを使用したコホート内ケースコントロール研究で検討した。その結果、脂肪肝および高尿酸血症を併存している患者で、スタチン使用により糖尿病や高血糖症の発症が増加する可能性が示唆された。Clinical Pharmacology in Drug Development誌オンライン版2018年2月20日号に掲載。 データベースには、スタチンを使用している2万6,849例と他の脂質降下薬を使用している5,308例の高脂血症患者が含まれていた。本研究には、1種類以上のスタチンを使用し、スタチンの明確な投薬歴があり、糖尿病ではない患者が参加した。ケースは、スタチン使用中に糖尿病もしくは高血糖症が発症した患者で、各ケースに対して20例のコントロールを無作為に選択しマッチさせた。スタチン使用中の糖尿病および高血糖症のリスク上昇に関連する因子として、性別、年齢、BMI、スタチン使用期間、併存疾患、併用薬、臨床検査値などを検討した。スタチンに関連する糖尿病もしくは高血糖症は、基準範囲を超える異常な血糖値上昇により同定した。 主な結果は以下のとおり。・1万9,868例が試験対象基準を満たし、そのうち24例がケース(スタチン使用中に糖尿病もしくは高血糖症を発症)群の患者であった。・糖尿病もしくは高血糖症の発症について、脂肪肝(調整オッズ比:16.10)および高尿酸血症(調整オッズ比:28.96)の2つの併存疾患因子が抽出された。・非アルコール性脂肪肝は、糖尿病、肥満、インスリン抵抗性と関連し、高尿酸血症は生活習慣と関連していた。

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リアルタイムCGMはハイリスク1型DM患者に有益/Lancet

 インスリン頻回注射(MDI)治療を受けており、低血糖症による意識障害または重症低血糖症を呈したことがある1型糖尿病患者において、リアルタイム持続血糖モニタリング(rtCGM)システムは低血糖症のイベント件数を減らすことが、多施設共同無作為化試験で示された。ドイツ・Science-Consulting in Diabetes GmbHのLutz Heinemann氏らが報告した。これまで、MDI治療を受けるハイリスクの1型糖尿病患者において、低血糖症の回避にrtCGMが有効であるのかは不明であった。Lancet誌オンライン版2018年2月15日号掲載の報告。無作為化試験で自己血糖モニタリングの場合と比較 rtCGMシステムの使用が、低血糖症の発生や重症度を抑制するかどうかを確認するため、ドイツ国内の糖尿病診療施設12ヵ所で、6ヵ月間の非盲検並行群比較による無作為化対照試験を行った。1型糖尿病で、前年に低血糖症による意識障害または重症低血糖症歴がある患者を適格とした。 全患者は、盲検下でrtCGMシステムを28日間装着・使用し(ベースライン)、その後、ブロック無作為化法を用い、試験地を層別化変数として1対1の割合で、非盲検rtCGM(Dexcom G5モバイルシステム)群または対照(連続自己血糖モニタリング:連続SMBG)群に無作為に割り付けられ、26週間の介入を受けた。対照群はフォローアップ期間中(22~26週)、盲検下でrtCGMシステムを使用した。 主要アウトカムは、フォローアップ期間中に発生した、ベースライン補正後の低血糖症イベント(グルコース値3.0mmol/L以下が20分以上と定義)の回数とした。 全データセットには、ベースラインとフォローアップの期間中にrtCGMシステムを使用した被験者が包含された。低血糖症の発生率比、rtCGM群は72%減少 2016年3月4日~2017年1月12日に、149例が無作為化を受け(対照群74例、rtCGM群75例)、141例がフォローアップ期間を完遂した(対照群66例、rtCGM群75例)。 低血糖症イベント回数(/28日間)は、rtCGM群では10.8回(SD 10.0)から3.5回(4.7)と、減少が認められた。一方、対照群では減少と呼べる回数減は認められなかった(14.4回[12.4]から13.7回[11.6])。 低血糖症イベントは、rtCGM群では有意に72%減少したことが認められた(発生率比:0.28[95%信頼区間[CI]:0.20~0.39]、p<0.0001)。 重篤有害事象は18件報告された。うち7件は対照群での報告(重症低血糖症2件、腎移植1件、心筋梗塞1件、大腸ポリープ2件、痙攣1件)で、10件はrtCGM群(重症低血糖症4件、糖尿病性足潰瘍2件、スズメバチ刺傷後のアレルギー反応1件、骨折2件、腎腫瘍切除1件)、1件は無作為化前の報告であった。試験デバイスに関連した報告例はなかった。

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低脂肪vs.低炭水化物ダイエット、体重減効果は?/JAMA

 健康的低脂肪(HLF)ダイエットと健康的低炭水化物(HLC)ダイエットについて、12ヵ月後の体重減効果は同等であることが、米国・スタンフォード大学のChristopher D.Gardner氏らが、609例を対象に行った無作為化比較試験で示された。また遺伝子型やダイエット開始前のインスリン分泌能は、いずれの食事療法の体重減効果とも関連がみられなかったという。結果を踏まえて著者は、「疾病の素因と仮定される遺伝子型およびインスリン分泌能は、HLFとHLCのどちらが至適な食事療法かを識別するのには役立たないようだ」とまとめている。JAMA誌2018年2月20日号掲載の報告。非糖尿病18~50歳を対象に無作為化試験、1年後の体重減を比較 研究グループは、2013年1月29日~2015年4月14日にかけて、BMI値28~40、非糖尿病の18~50歳、609例を対象に、無作為化試験「DIETFITS」(The Diet Intervention Examining The Factors Interacting with Treatment Success)を開始し、2016年5月16日まで追跡した。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはHLFダイエットを、もう一方にはHLCダイエットをそれぞれ12ヵ月間行った。具体的には健康教育者が、ダイエットに特異的な少人数セッション(12ヵ月間で22回)を通じて、行動変容を促す介入を行った。 試験では、3つの代表的な一塩基多型(SNP)反応パターンまたはインスリン分泌能(糖負荷後30分の血中インスリン濃度:INS-30)と、体重減との関連についても検証した。体重減は同程度、遺伝子型やインスリン分泌能との関連は認められず 被験者609例の平均年齢は40歳(SD 7)、女性は57%、平均BMI値は33(SD 3)、低脂肪遺伝子型は244例(40%)、低炭水化物遺伝子型は180例(30%)、INS-30平均値は93μIU/mLだった。試験完遂者は481例(79%)だった。 12ヵ月間の多量栄養素の平均分布値は、炭水化物はHLF群48%、HLC群30%、脂肪はそれぞれ29%、45%、蛋白質は21%、23%だった。 12ヵ月時点の体重変化の平均値は、HLF群-5.3kg、HLC群-6.0kgだった(群間差平均:0.7kg、95%信頼区間[CI]:-0.2~1.6kg)。 12ヵ月の体重減について、ダイエットの種類と遺伝子型に相互関連はみられず(p=0.20)、ダイエットの種類とインスリン分泌能(INS-30)にも相互関連は認められなかった(p=0.47)。 なお、18件の有害事象が認められたが、発生の割合は両群で同程度だった。

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人工知能と糖尿病診療の未来予想図(解説:住谷哲氏)-805

 Googleの子会社であるGoogle DeepMindが開発した人工知能(Artificial Intelligence:AI)AlphaGoが、世界最強の囲碁棋士とされる柯潔を3局全勝で破ったのは昨年(2017年)である。AlphaGoはその前年に、かつての世界王者であったイ・セドルを4勝1敗で破っている。これがいかに衝撃的であったかは、『Nature』にAlphaGoの開発論文が掲載されたことからもよくわかる1)。このAlphaGoの基礎となった技術が、本論文でも用いられた深層学習(ディープラーニング:deep learning)である。深層学習とは、ヒトが自然に行うタスクをコンピュータに学習させる機械学習の手法の1つであり、AIの急速な発展を支える基礎技術である。深層学習はヒトのニューロンをモデルとした数理モデルであり、階層型ニューラルネットワークとも呼ばれる。階層型ニューラルネットワークのなかで、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)は、とくに画像認識に優れたシステムであり、前述のAlphaGoも本論文で用いられたディープラーニングシステム(DLS)も畳み込みニューラルネットワークを基礎に構成されている。 糖尿病性網膜症がDLSを用いて診断できることは、すでに報告されている2)。しかし、この報告で診断対象となったのは、白人における糖尿病性網膜症のみであった。ヒトの網膜は皮膚の色と同様に、色素沈着の程度が民族(ethnicity)によって異なっており、さらに糖尿病性網膜症と緑内障、加齢関連黄斑変性症の合併も少なくないことから、多民族において、糖尿病性網膜症、緑内障、加齢関連黄斑変性症の同時診断がDLSで可能かは不明であった。本論文は多民族のデータが得られるシンガポールで、この臨床的疑問に解決を与えた。 その結果は、糖尿病性網膜症、緑内障、加齢関連黄斑変性症のすべてにおいて、DLSによる診断の感度および特異度はほぼ90%以上であり、十分に使用に耐えるものと考えられた。今後は実際にDLSによる介入が、糖尿病性網膜症の予後を改善するか否かが検証されるだろう。 DLSの画像認識精度は、おそらくヒトの能力を現時点で超えていると思われる。本論文では糖尿病性網膜症の診断であったが、すでにダーモスコピー(dermoscopy)によるメラノーマの診断もDLSを用いて実用可能であることが示唆されている3)。従って近未来において、医療における画像診断、顕微鏡を用いた病理診断の大部分がDLSに置き換わる可能性は十分ある。その時には、われわれ医師はAIに取って代わられるのだろうか? 聴診器、レントゲン、超音波、CT、MRI、遺伝子診断など、これまで多くの技術革新が医療を変えてきた。しかし、われわれ一人ひとりの医師が個々の患者に対して行っている医療の本質は、ヒポクラテスの時代からそれほど変わっていない。DLSは技術革新の1つに過ぎず、筆者は楽天的に考えている。

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睡眠時間長いと糖尿病リスク高、日系人で強い関連

 米国・ハワイ大学がんセンターのGertraud Maskarinec氏らが、日系アメリカ人を含む約15万人の多民族コホートにおいて2型糖尿病発症と睡眠時間の関連を調査したところ、睡眠時間が長い(9時間以上)と2型糖尿病リスクが12%高く、これは、炎症・脂質プロファイルの悪化・アディポネクチンの低下が介在する可能性が示唆された。Sleep health誌2018年2月号に掲載。 本研究は、ハワイおよびカリフォルニアにおける多民族コホートでの前向き研究で、1993~96年に参加者を募集した。参加者は、白人、アフリカ系アメリカ人、日系アメリカ人、ハワイ先住民、ラテン系の15万1,691人で、9,695人はバイオマーカーが測定された。睡眠持続時間はコホート参加時に自己申告され、糖尿病の状況は3種類のアンケートで入手、3種類の管理データで確認した。バイオマーカーは、参加後9.6±2.1年間、標準測定法により測定した。時変アウトカムとしての糖尿病リスクをCox回帰により推定した。 主な結果は以下のとおり。・7.9±3.5年の追跡期間中、8,487例が糖尿病の新規発症と診断された。・7~8時間の睡眠時間と比較して、9時間以上では高い発症率(ハザード比:1.12、95%CI:1.04〜2.11)と有意に関連した。6時間以下では発症率が4%高かったが有意ではなかった(95%CI:0.99~1.09)。他の民族より日系アメリカ人において、また併存疾患のない参加者において関連が強かった。・睡眠時間は、CRPおよびトリグリライドと正相関し、HDLコレステロールおよびアディポネクチンと逆相関したが、レプチンレベルおよびインスリン抵抗性指数とは関連しなかった。

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肥満とオランザピンの急性代謝系副作用との関連

 オランザピンは、統合失調症や様々な適応外疾患の管理に用いられる第2世代抗精神病薬である。オランザピンの急性代謝反応は、肥満に関連する多くの副作用を引き起こす。統合失調症患者は肥満率が高いが、元々ある肥満関連代謝障害がオランザピンの急性副作用を増大させるかどうかは不明である。カナダ・ゲルフ大学のLogan K. Townsend氏らは、非肥満マウスと高脂肪食(HFD)肥満マウスにおけるオランザピンの反応を比較した。Psychoneuroendocrinology誌オンライン版2017年12月8日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・4週間のHFD(脂肪分60%kcal)により、肥満、高血糖、インスリン抵抗性マウスとなった。・HFD誘発肥満マウスにおいて、オランザピン誘発性高血糖および全身性インスリン抵抗性が悪化した。・オランザピンは、骨格筋および肝臓におけるインスリンシグナル伝達を強く阻害し、これは肥満により悪化するようであった。・オランザピン誘発性高血糖の深刻化は、肥満マウスにおいてピルビン酸負荷が有意に高い血中グルコース濃度をもたらすことによる、肝臓グルコース産生の増加にも起因すると考えられ、グルコース生成酵素の肝臓含有の増加に関連していた。・オランザピンは、肥満マウスの酸素消費を急速に増加させ、RER(安静時エネルギー要求量)を抑制した。・オランザピン単剤治療は、肥満にかかわらず、身体活動を最長で24時間減少させた。 著者らは「統合失調症患者では肥満が非常に多いことを考慮すると、これらのデータから、オランザピンの急性副作用の重症度を過小評価している可能性があることが示唆された」としている。■関連記事オランザピンの代謝異常、原因が明らかに:京都大学オランザピン誘発性体重増加を事前に予測するには:新潟大学オランザピン誘発性体重増加のメカニズム

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1型糖尿病発症予防は見果てぬ夢か?(解説:住谷哲氏)-790

 1922年に初めてインスリンが臨床応用されるまで、1型糖尿病は不治の病であった。その後、1型糖尿病のnatural historyが明らかとなり、現在では1型糖尿病発症に至る3つのstageが提唱されている1)。1型糖尿病発症の高リスクグループの同定が可能となったことで、1型糖尿病発症予防の試験がこれまでにいくつか実施されてきた。大規模試験としては、インスリン投与による1型糖尿病発症予防を検討したDiabetes Prevention Trial-Type 1 Diabetes(DPT-1)2,3)と、ニコチンアミドの有効性を検討したEuropean Nicotinamide Diabetes Intervention Trial(ENDIT)4)があるが、残念ながら両試験において結果はnegativeであった。 DPT-1は独立した2つの試験から構成されている。これまでの研究から、膵島関連自己抗体と静脈内ブドウ糖負荷試験(IVGTT)でのインスリン初期分泌能を組み合わせることで、1型糖尿病患者の近親者における、将来5年間の1型糖尿病発症リスクをほぼ正確に予測することが可能となっている。本試験では、まず膵島細胞自己抗体(ICA)でスクリーニングを行い、ICA陽性患者に対してインスリン自己抗体(IAA)、抗グルタミン酸脱炭酸酵素抗体(GAD-Ab)、抗インスリノーマ関連抗原-2抗体(IA-2-Ab)、さらにIVGTTの結果を総合して各患者の発症リスクを計算した。5年間の発症リスクが>50%の群に対してヒトウルトラレンテインスリンの皮下投与を、26~50%の群に対しては経口ヒトインスリン(7.5mg/日)を投与して、約4年間にわたり1型糖尿病の発症頻度をプラセボと比較した。その結果はすでに述べたように、両試験において1型糖尿病の発症は予防できなかった。しかし経口ヒトインスリン投与試験のサブ解析では、IAA>=80nU/mL患者においては、プラセボ群と比較して相対リスク減少(ハザード比[HR]:0.566、p=0.015)を示唆する結果であった。そこでDPT-1を引き継いだ本試験では、DPT-1とは異なりICAではなくIAAでスクリーニングを行い、その他の膵島関連自己抗体とIVGTTの結果を用いて各患者のリスクを計算し、リスクごとに患者を4群(Primary Stratum、Secondary Stratum 1、Secondary Stratum 2、Secondary Stratum 3)に分けて経口ヒトインスリンの効果を検討した。 その結果は、主要評価項目であるPrimary Stratum(これがDPT-1でのIAA>=80nU/mL患者に相当する)での1型糖尿病発症は、経口インスリン投与により有意な減少を認めなかった(HR=0.87、p=0.21)。一方、Secondary Stratum 1ではプラセボと比較して有意に発症が減少していた(HR=0.45、p=0.006)。しかしこれは多重検定について未調整であり、あくまで仮説生成(hypothesis generating)と見なすべきだろう。 動物実験の結果や、ヒトにおける少数のパイロット試験の結果のみに基づいて臨床判断を決定することは、患者に害を与える可能性がある。さらにこれまでの大規模臨床試験において、サブ解析や副次評価項目で有効性が示唆された場合でも、それを主要評価項目に設定し直して確認することで有効性が否定されたことも少なくない。1型糖尿病発症予防の研究の歴史も、まさにこのことを証明している。したがって、今回の研究で有効性が示唆された患者群を対象として、同様のRCTを実施することが次のステップとなる。残念ながら現時点では1型糖尿病発症予防は見果てぬ夢といえるだろう。

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学歴はアルツハイマー病リスクと関連/BMJ

 従来の観察研究では、教育歴はアルツハイマー病のリスクと関連することが示されている。スウェーデン・カロリンスカ研究所のSusanna C Larsson氏らは、今回、修正可能なリスク因子の代替指標として遺伝学的変量を用いたメンデル無作為化試験を行い、学歴が高いとアルツハイマー病のリスクが低いことを明らかにした。研究の成果はBMJ誌2017年12月6日号に掲載された。アルツハイマー病との関連が示唆される修正可能なリスク因子のデータは、主に観察研究によるものであるため、交絡への脆弱性や逆因果バイアスの可能性があり、より頑健なエビデンスが求められている。アルツハイマー病とリスク因子の関連を検証する無作為化試験 研究グループは、社会経済的、生活習慣/食事、循環代謝、炎症に関する修正可能なリスク因子と、アルツハイマー病の関連を検証するメンデル無作為化試験を行った(欧州連合のホライズン2020などの助成による)。 解析には、4つのゲノムワイド関連研究のデータセット(ADGC、CHARGE、EADI、GERAD)から収集した欧州人家系のアルツハイマー病患者1万7,008例と対照3万7,154例からなるデータと24の修正可能なリスク因子が含まれた。Bonferroni法による閾値p=0.002を「有意差あり」とし、p<0.05の場合は「関連の可能性を示唆するエビデンス」と判定した。学歴が高いとアルツハイマー病のリスクが低減 学歴(終了した教育の期間、大学卒業)はアルツハイマー病と有意に関連することが、遺伝学的に予測された。教育年数のオッズ比(OR)は0.89(95%信頼区間[CI]:0.84~0.93、p=2.4×10-6)、大学卒業(college/university)のORは0.74(95%CI:0.63~0.86、p=8.0×10-5)であり、それぞれアルツハイマー病のリスクが11%、26%低減した。 知性(intelligence)が1標準偏差(SD)高い場合のORは0.73(95%CI:0.57~0.93、p=0.01)であり、知性が高いとアルツハイマー病のリスクが低い可能性を示唆するエビデンスが得られた。 また、喫煙量(1日喫煙本数10本増のOR:0.69、95%CI:0.49~0.99、p=0.04)および25-ヒドロキシビタミンD濃度(血中濃度20%高のOR:0.92、95%CI:0.85~0.98、p=0.01)はアルツハイマー病のリスクが低い可能性が示唆され、コーヒー飲用(1日1杯増のOR:1.26、95%CI:1.05~1.51、p=0.01)はアルツハイマー病のリスクが高い可能性が示唆されるエビデンスが得られた。 アルコール摂取、血清葉酸、血清ビタミンB12、ホモシステイン、循環代謝因子(血糖、インスリン、血圧、脂質など)、C反応性蛋白には、アルツハイマー病との関連は認められなかった。 著者は、「これらのメンデル無作為化による解析結果は、高い学歴はアルツハイマー病のリスクが低いことと関連するとの従来のエビデンスを支持するものである。喫煙とコーヒーは従来の解析とは逆の結果であった」とし、「これらの関連の基盤となる経路を理解するために、さらなる検討を要する」と指摘している。

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2型糖尿病、集中的食事療法による減量で46%が寛解/Lancet

 減量により12ヵ月で、試験に参加した2型糖尿病患者の約半数が糖尿病治療薬から離脱し、非糖尿病状態すなわち寛解(remission)に達したことが、英国・グラスゴー大学のMichael EJ Lean氏らが行ったプライマリケアでの集中的な体重管理の効果を検証した非盲検クラスター無作為化試験「DiRECT試験」の1年目の結果で示された。2型糖尿病は生涯にわたり治療を要する慢性疾患とされる。これまでの研究で、罹患期間が短い2型糖尿病患者は10~15kgの減量により血糖値が正常化することが示されていたが、食事療法による糖尿病の持続的な寛解を評価したものはなかった。結果を踏まえて著者は、「2型糖尿病の寛解は、プラリマリケアのプラクティカルな目標である」とまとめている。Lancet誌オンライン版2017年12月5日号掲載の報告。1日約850kcalの調整食を3~5ヵ月摂取する体重管理プログラムと標準ケアを比較 DiRECT(Diabetes Remission Clinical Trial)試験は、スコットランドとタインサイド地域(北東イングランド)のプライマリケア49施設で実施された。対象は、過去6年以内に2型糖尿病と診断され、BMIが27~45で、インスリン治療歴のない20~65歳の患者であった。 施設を、地域と施設規模で層別化し、体重管理プログラム実施群(介入群)とガイドラインに沿った最善のケアを行う群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。体重管理プログラムは、糖尿病治療薬および降圧薬の中止、食事全置換(825~853kcal/日の調整食を3~5ヵ月)、段階的な食物再導入(2~8週)、長期減量維持の構造化された支援により構成された。 主要アウトカムは2つで、ベースラインから12ヵ月までにおける15kg以上の減量と、糖尿病の寛解(すべての糖尿病治療薬を中止して2ヵ月以降のHbA1cが6.5%未満と定義)であった。 2014年7月25日~2016年8月5日に、49施設(介入群23施設、対照群26施設)にて306例(それぞれ157例および149例)が登録され、このうち同意撤回や脱落を除く各群149例をintention-to-treat集団とした。介入群の15kg以上減量達成率は24%、そのうち86%が寛解 12ヵ月時点で、15kg以上の減量を達成したのは、介入群で36例(24%)、対照群はなし(p<0.0001)、糖尿病の寛解達成は介入群68例(46%)、対照群6例(4%)であった(オッズ比:19.7、95%信頼区間[CI]:7.8~49.8、p<0.0001)。寛解達成は減量の程度によって異なり、体重が増加した76例では寛解達成者はおらず、0~5kg減量を維持している89例では6例(7%)、5~10kg減量した56例中19例(34%)、10~15kg減量した28例中16例(57%)、15kg以上減量を達成した36例中31例(86%)が寛解を達成した。 平均(±SD)体重は、介入群で10±8.0kg、対照群で1.0±3.7kg減少した(補正後差:-8.8kg、95%CI:-10.3~-7.3、p<0.0001)。EQ-5Dで測定したQOLスコアは、介入群で7.2±21.3点改善したのに対し、対照群では2.9±15.5点悪化した(補正後差:6.4点、95%CI:2.5~10.3、p=0.0012)。 重篤な有害事象は、介入群で157例中7例(4%)に9件、対照群で149例中2例(1%)に2件が報告された。介入群のうち2件(胆石疝痛と腹痛)は同一患者で生じており、介入に関連したものと考えられた。試験の中止に至る重篤な有害事象は認められなかった。 なお、著者は研究の限界として、人種や民族の特徴として白人が多い地域であったこと、プライマリケアに限定しており、体組成の詳細は評価されていないことなどを挙げている。

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眼瞼炎は初期メタボリックシンドロームのサイン

 眼瞼炎は、メタボリックシンドローム(MetS)と有意に関連していることを、台湾・Show Chwan Memorial HospitalのChia-Yi Lee氏らが、台湾のLongitudinal Health Insurance Database(LHID)を用いて後ろ向きに症例対照研究を行い明らかにした。著者は、「眼瞼炎は初期のMetSであることを示すサインとして役立つ可能性がある。今後は、重症度の観点から眼瞼炎とMetSとの関連を調査すべきであろう」とまとめている。British Journal of Ophthalmology誌オンライン版2017年11月16日号掲載の報告。 研究グループは、台湾のLHIDを用い、2009~13年のデータを解析した。適格基準は、国際疾病分類(ICD)第9版の診断コードに従い、眼瞼炎と診断された患者で、法的盲、眼球除去、眼腫瘍の既往、眼瞼炎の診断と同時に抗菌薬治療が開始された患者は除外した。 眼瞼炎患者群と年齢、性別および疾患をマッチさせた非眼瞼炎患者(対照)群について、眼瞼炎とMetSとの関連について、多重Cox回帰モデルを用いた多変量解析にて評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、眼瞼炎患者群1万93例、対照群4万372例であった。・条件付きロジスティック回帰分析の結果、脂質異常症および冠動脈疾患の累積確率が高いことが示された。・補正後、眼瞼炎患者群は対照群に比べ、新規MetSの発症率が高かった。・サブグループ解析で、脂質異常症と冠動脈疾患は、眼瞼炎の先行発症と有意な相関が認められた。高血圧症、糖尿病、インスリン抵抗性と、眼瞼炎との間には相関は認められなかった。

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経口semaglutideがもたらした血糖降下薬のパラダイムシフト(解説:住谷哲氏)-780

 GLP-1は数十個のアミノ酸からなるペプチドホルモンであり、インスリンをはじめとする他のペプチドホルモンと同様に経口投与では消化管で分解されてほとんど吸収されない。これまで経口インスリンの開発が進められてきたが残念ながら現時点では実用化に至っていない。本論文は経口GLP-1受容体作動薬である経口semaglutideが注射薬とほぼ同等の血糖降下作用および体重減少作用を有することを明らかにした点で、糖尿病治療におけるbreakthroughと考えてよい。 どのようにしてペプチドホルモンであるsemaglutideが吸収可能となったのだろうか?DDS(drug-delivery system)は薬剤開発の重要な1分野であるが、筆者の知らない間に急速な進歩をとげているようである。本論文のIntroductionに記載があるが、吸収促進剤であるsodium N-[8 (2-hydroxylbenzoyl) amino] caprylate (SNAC)とsemaglutideの混合物が胃に到達すると、SNACが胃粘膜局所のpHを上昇させることで胃液によるsemaglutideの加水分解を阻害し、かつsemaglutideの溶解度を上昇させる。その後、semaglutideは輸送蛋白を介さず、胃粘膜細胞間隙を通して吸収されるらしい1)。つまりsemaglutideは小腸ではなく胃粘膜から吸収されるようだ。この方法の優れた点は、注射ではなく経口投与であるのに加えて、薬剤が門脈を通して肝臓に達する点にある。インスリンもそうであるが、GLP-1は本来腸管から門脈を通して肝臓に達するのが生理的経路であり、経口semaglutideはそれを実現したといえるだろう。 26週の観察期間において経口semaglutideは注射薬と同等のHbA1c低下作用および体重減少作用を示した。SGLT2阻害薬が体重減少作用を有する経口血糖降下薬として処方数が増加している。しかしSGLT2阻害薬の体重減少作用は食事療法が守れないと期待どおりの効果が得られないことが明らかになりつつある。それに比べてGLP-1受容体作動薬であるsemaglutideには食欲抑制作用があるため、より確実な体重減少作用が実臨床において期待される。 注射または経口と投与経路は異なるが同じsemaglutideであり、SUSTAIN-6 2)で示されたsemaglutideの心血管イベント抑制作用はおそらく経口semaglutideでも再現されるだろう。しかし、これは今後米国において認可のために実施されると思われるCVOTの結果を待つ必要がある。いずれにせよ注射薬から経口薬へのパラダイムシフトが経口semaglutideによってもたらされたのは間違いない。

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経口インスリンによる1型糖尿病の予防は可能か/JAMA

 経口インスリン製剤は、1型糖尿病患者の近親者における1型糖尿病の発症を予防しないことが、米国・フロリダ大学のJeffrey P Krischer氏らType 1 Diabetes TrialNet Oral Insulin Study Groupの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2017年11月21日号に掲載された。Diabetes Prevention Trial-Type 1(DPT-1)試験では、経口インスリン製剤はプラセボに比べ糖尿病の発症を抑制しなかったが、インスリン自己抗体に関する事後解析ではベネフィットが得られるサブグループの存在が示唆されている。DPT-1試験の後継となる本試験では、経口インスリン製剤の糖尿病発症の遅延効果のさらなる探索が進められてきた。自己抗体陽性近親者を対象にプラセボと比較 本試験は、1型糖尿病患者の自己抗体陽性近親者において、経口インスリン製剤による1型糖尿病発症の遅延効果を評価する国際的なプラセボ対照無作為化試験である(Type 1 Diabetes TrialNet Oral Insulin Study Groupなどの助成による)。 対象は、1型糖尿病患者の3~45歳の第1度近親者(きょうだい、父母、子供)または3~20歳の第2・3度近親者(めい、おい、おば、おじ、いとこ)で、糖尿病を有しておらず、インスリン自己抗体が陽性の集団であった。被験者は、遺伝子組み換えヒトインスリン結晶(7.5mg)を1日1回経口投与する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、第1群における糖尿病発症までの期間とした。第1群(389例)は、インスリン自己抗体(IAA)陽性で、膵島細胞自己抗体(ICA)陽性またはグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)とインスリノーマ関連抗原-2(IA-2)の双方が陽性であり、静脈内ブドウ糖負荷試験で初回インスリン分泌が閾値を超える集団とした。 第2群は、第2-1群(55例、IAA陽性、ICA陽性またはGADとIA-2の双方が陽性で、初回インスリン分泌が閾値未満)、第2-2群(114例、IAA陽性、ICA陽性またはGADかIA-2のいずれかが陽性、初回インスリン分泌が閾値以上)、第2-3試験群(3例、IAA陽性、ICA陽性またはGADかIA-2のいずれかが陽性、初回インスリン分泌が閾値未満)の3群に分けられた。第1群の年間糖尿病発症率:8.8% vs.10.2% 2007年3月2日~2015年12月21日の期間に、9ヵ国87施設で患者登録が行われた。560例(登録時年齢中央値:8.2歳、IQR:5.7~12.1歳、男児:170例[60%]、非ヒスパニック系白人:90.7%、きょうだいが1型糖尿病:57.6%)が無作為割り付けの対象となった。このうち550例が試験を完遂し、第1群の389例(登録時年齢中央値:8.4歳、男児:245例[63%])の完遂例は382例(96%)だった。 フォローアップ期間中央値2.7年(IQR:1.5~4.6)時の第1群における糖尿病診断率は、経口インスリン投与群が28.5%(58/203例)、プラセボ群は33%(62/186例)であった。年間糖尿病発症率はそれぞれ8.8%、10.2%と、両群間に有意な差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0~1.2、p=0.21)。 第2-1群(55例)の糖尿病診断率は経口インスリン投与群が48.1%、プラセボ群は70.3%であり、年間糖尿病発症率はそれぞれ18.1%、34.1%(HR:0.45、95%CI:0~0.82、p=0.006)と有意な差がみられ、発症までの期間中央値は55.3ヵ月、24.3ヵ月であり、経口インスリン投与群で31.0ヵ月の発症遅延が認められた。 第2-2群と第2-3群を合わせた集団(116例)のHRは1.03(95%CI:0~2.11、p=0.53)、登録全患者(560例)のHRは0.83(95%CI:0~1.07、p=0.11)であり、いずれも有意な差はなかった。 最も頻度の高い有害事象は感染症で、254例(経口インスリン投与群:134例、プラセボ群:120例)に認められた。試験関連有害事象は両群間に差はなかった。 著者は、「これらの知見は、糖尿病の予防における経口インスリンの使用を支持しない」としている。

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糖尿病医と循環器医の連携を考える

 2017年11月17日、都内にて「糖尿病患者さんの合併症予防・進展リスク低減に向けた糖尿病・循環器領域の連携の重要性と現状」と題するセミナー(主催:サノフィ株式会社)が開かれた。 演者のローレンス・A・レイター氏(セント・マイケルズ病院 内分泌学・代謝学/トロント大学 医学・栄養学 教授)は、循環器医のもとに運ばれてくる患者に糖尿病が隠れている可能性に触れ、糖尿病・循環器領域の連携の必要性や脂質管理の重要性について語った。 以下、セミナーの内容を記載する。急性心筋梗塞患者の約3割に、未診断の糖尿病 糖尿病の死因第1位は心血管疾患だが、糖尿病と気付かれずに心血管イベントを発症する患者さんも、実は多いのかもしれない。ある研究では、急性心筋梗塞を発症した糖尿病既往のない患者200例を、あらためて検査したところ、27%が糖尿病、39%は耐糖能異常を有していたことが明らかとなっている。循環器医のもとに運ばれてくる患者の中には、かくれ糖尿病が存在しているのかもしれない。かくれ糖尿病を見つけ出すのは難しいが、少なくともすでに糖尿病と診断されている患者さんは積極的に治療する必要があるだろう。糖尿病治療は、多元的アプローチが主流 その際の代表的な治療ターゲットはHbA1c値だが、ACCORD試験などをきっかけに、従来の血糖値を下げるだけの治療は見直されてきた。現在は、血糖値だけではなく、血圧、肥満、運動、脂質、禁煙などの複合的管理が主流だ。 米国糖尿病協会(ADA)も、「生活習慣の改善」「血糖コントロール」「血圧」「抗血小板療法」「脂質異常症の管理」などの多元的アプローチを推奨しており、すでに高い有用性が認められている。糖尿病患者の脂質管理は、世界的に厳格な方向へ このうち、「脂質異常症の管理」について、日本と海外との違いをみていく。日本における糖尿病患者のLDL-C管理目標値は、1次予防で120mg/dL未満、2次予防で100mg/dL未満だが、海外ではどうか。2017年、米国臨床内分泌学会(AACE)は新しいカテゴリーとして「Extreme risk群」を設け、糖尿病患者の2次予防においては、55mg/dL未満という目標値を掲げた。レイター氏の祖国であるカナダでも、糖尿病の罹病期間が長い患者は77mg/dL未満が目標値だ。糖尿病患者の脂質管理は、世界的に、より厳格な方向へシフトしている。 しかし、スタチン単独で目標値に到達できない糖尿病患者が多いのも事実だ。この点で、いまPCSK9阻害薬の有用性が注目されている。糖尿病患者におけるPCSK9阻害薬の有用性 糖尿病患者を対象にしたODYSSEY DM INSULIN試験において、PCSK9阻害薬であるアリロクマブ(商品名:プラルエント)の有用性が示されている。試験対象は、心血管イベントリスクが高く、スタチン最大用量で治療されている脂質異常症患者でインスリン治療中でもある糖尿病患者517例。主要アウトカムの「2型糖尿病患者のLDL-C変化率」は、アリロクマブ群がプラセボ群に比べて、49%の低下を示した(p<0.0001)。インスリン併用による新規の有害事象も報告されていない。この試験は、PCSK9阻害薬の糖尿病患者における有用性が示された点で意義深いといえる。診療科を越えた包括的治療が求められる 糖尿病患者の脂質管理が心血管イベント抑制につながることは、過去の大規模臨床試験からも明らかである。この点でPCSK9阻害薬は、イベント抑制を考慮した治療手段として有用だろう。さらに最近では、新規血糖降下薬による心血管イベント抑制効果が、複数報告されてきている。今後いっそう糖尿病、循環器といった、診療科を越えた包括的治療が求められる。 演者のレイター氏は、「糖尿病患者の心血管イベントリスク抑制のためにどのような治療選択が望ましいか、日本でも診療科を越えたさらなる議論が必要となるだろう」と述べ、講演を終えた。

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日本人の飲酒量とインスリン分泌不全/抵抗性の発症率が相関

 日本人において、飲酒量がインスリン分泌不全およびインスリン抵抗性の発症率と相関することが、佐久研究における帝京大学の辰巳友佳子氏らの検討により示された。Diabetes research and clinical practiceオンライン版2017年10月27日号に掲載。 本研究は5年間のコホート研究で、佐久中央病院で2008年4月~2009年3月に75gOGTTを含む健康診断を受けた、2型糖尿病またはインスリン分泌不全またはインスリン抵抗性ではない30~74歳の日本人2,100人が参加した。参加者を週当たりの飲酒量によって、非飲酒者(0g)、軽度飲酒者(男性:1~139g、女性:1~69g)、中程度飲酒者(男性:140~274g、女性:70~139g)、多量飲酒者(男性:275g以上、女性:140g以上)に分けた。2014年3月末までのフォローアップ健康診断時にOGTTにより見つかったインスリン分泌不全(insulinogenic index:51.7以下)およびインスリン抵抗性(HOMA-IR:2.5以下)の発症率について、非飲酒者に対する軽度~多量飲酒者でのハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を多変量調整Cox比例ハザードモデルで推計した。 *アルコール量20gの目安:ビール(5%)500mL、ワイン(14%)180mL 主な結果は以下のとおり。・インスリン分泌不全は708例、インスリン抵抗性は191例であった。・インスリン分泌不全のHR(95%CI)は、軽度、中程度、多量飲酒者の順に、1.16(0.96~1.40)、1.35(1.07~1.70)、1.64(1.24~2.16)であった(傾向のp<0.001のP)。・インスリン抵抗性のHR(95%CI)は、順に1.22(0.84~1.76)、1.42(0.91~2.22)、1.59(0.96~2.65)であった(傾向のp=0.044)。

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すべての1型糖尿病妊婦にはReal-Time CGMを実施すべきか?(解説:住谷哲氏)-763

 妊娠糖尿病および糖尿病合併妊娠では厳格な血糖管理が要求される。とくに1型糖尿病合併妊娠では血糖コントロールに難渋することが多い。現在は各食前、食後、眠前、1日計7回の自己血糖測定(SMBG)と、頻回インスリン投与(Multiple daily injection:MDI)またはインスリンポンプによる強化インスリン療法が主流である。これまで持続血糖モニタリング(CGM)の有用性は示唆されてきたが、糖尿病合併妊婦におけるCGMのSMBGに対する優越性を検討した最新のメタ解析ではCGMの優越性は証明されていない1)。 Real-Time CGM(RT-CGM)により患者は間質液グルコース濃度(厳密には血糖値ではないがほぼ血糖値と考えてよい)をreal-timeで知ることができる。またその推移パターンから、起こりうる低血糖および高血糖に対するアラームが装備されているのも利点となっている。さらにRT-CGMとインスリンポンプを組み合わせたSAP(sensor-augmented pump)では、低血糖のリスクがきわめて高くなると自動的に基礎インスリン投与を中断するLow Glucose Suspend(LGS)の機能を備えている機種(MiniMed Paradigm Veo:本試験では用いられているが日本ではまだ使用できない)もあり、低血糖の軽減につながっている。 本試験はMDIまたはインスリンポンプ使用中の1型糖尿病妊婦におけるRT-CGMの使用が、妊娠中の血糖コントロール、妊婦および新生児の臨床的アウトカムに及ぼす影響を検討したものである。その結果は、主要評価項目であるCGM群とSMBG群とのHbA1cの差は0.19%(p=0.0207)でCGM群において低値であった。また新生児臨床アウトカムに最も関連すると考えられる高血糖期間も有意に短縮していた(27% vs.32%、p=0.0279)。さらに新生児臨床アウトカムではLGA(large for gestational age)、24時間超NICU滞在患者および新生児低血糖はほぼ半減しており、NNTはそれぞれ6人、6人、8人であった。これらの結果は、MDI群とインスリンポンプ群で差はなかった。 NNTが1桁であることから、本研究で明らかにされた1型糖尿病妊婦に対するRT-CGMの使用は有効な介入であると考えてよい。しかし結果のgeneralizabilityについては、費用も含めた十分な検討が必要だろう。また、本文中にも記載されているように、CGMが血糖コントロール指標などのsurrogate outcomeではなく、LGAのような臨床アウトカムを改善したことは重要な点である。CGMの有用性に関する報告は多数あるが、これまではすべて血糖コントロール指標などのsurrogate outcomeについてのみであり、臨床アウトカムの改善につながったのは本研究が初である。今後は他の領域におけるCGMの有用性が明らかにされることが期待される。

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美味しく楽しく血糖値に気を付ける!食事のコツ

 2017年10月29日、都内にて糖尿病患者向けのクッキングセミナーが開かれた(主催:Eatreat株式会社/共催:「10月8日は、糖をはかる日」/協力:アボット ジャパン株式会社)。参加者はインスリン使用中で日常的に血糖を測定している糖尿病患者。セミナーでは血糖値に配慮した食事法、血糖測定器やポーチを選ぶポイントが紹介された。 以下に、糖尿病患者の指導に役立ちそうな内容を抜粋し、記載する。 講師は、國枝 加誉氏 (一般社団法人 日本健康食育協会所属、管理栄養士、健康食育シニアマスター)と金子 あきこ氏(管理栄養士、節約美容料理研究家)。國枝氏は17歳で2型糖尿病を発症し、インスリン強化療法での治療を継続している。咀嚼を増やす「食ベ方の工夫」 「炭水化物量の把握」「脂質の有無」といった食事の栄養バランスを気遣うことは重要だが、「食べ方の工夫」も重要である。リズム良く食べ、咀嚼を増やすことで、味覚が研ぎ澄まされ減塩につながる。食事の際は、「噛む音がしているか?」「唾液がでているか?」「口に入れる量が多すぎないか?」「水などの液体で食べ物を流し込んでいないか?」を意識して食べると良い。 とくに食事中に水などの液体を飲まなければ物足りないと感じられる場合は、分泌される唾液量が不十分であり、咀嚼が足りていない可能性がある。食べ物を液体で流し込まず、噛む音が聞こえるくらい良く噛んで食べることが推奨される。実践しやすい、調理時の工夫 セミナーでは、実際に昼食として「鶏肉の塩麹焼き~スパイス添え~」「凍りこんにゃくの白和え」「切干大根のマスタードサラダ」などが提供された。レシピはこちら。 また、調理時の工夫として、塩麹を使用することで減塩につなげる、こんにゃくを凍らせることで食感を良くする、カリウムが多い切干大根を使用する、だしパックの出しがらを炒ることで塩分を使わないふりかけを作る、といった具体例が紹介された。自分にあった血糖測定器を選ぶ 昼食前後には実際に参加者の血糖値を測定。この際に、参加者のほとんどが病院で最初に提供された血糖測定器を、そのまま使用し続けていることが明らかになった。提供された血糖測定器を使用することに何ら問題はないが、現在は技術の発達により、安定した測定能、少ない痛み、血糖変動の予測能を特徴とした機器が登場してきている。 國枝氏は、例として自分自身が使用している「FreeStyleリブレ」(製品名:FreeStyleリブレ フラッシュグルコースモニタリングシステム)を紹介し、「夕食が遅れた時や就寝中の低血糖を確認しやすく、自分で低血糖を予防しやすいところを評価して使っている」と使用理由を述べた。さまざまな血糖測定器の中から、自分に合ったものを選んで使うことが重要といえる。有事に備え、ポーチは目立つ色に また、参加者への「普段、インスリン製剤を余分に持ち歩いているかどうか?」という質問に対しては、「東日本大震災以降、予備のインスリンを持ち歩くようになった」「カートリッジ型とペン型の両方を持ち歩き、置き忘れや不具合に備えている」 「普段から1週間分を持ち歩いている」などの意見が挙がった。不測の事態に備え、インスリン製剤を余分に持ち歩いている患者さんの存在が明らかとなった。 普段からの持ち歩きは、負担がかかるため必ずしも推奨しないが、有事の際の置き忘れなどを防ぐためにも、血糖測定器やインスリン製剤を入れるポーチは、蛍光の黄色のような、できるだけ目立つ色を選ぶことが望ましい。まとめ 今回は糖尿患者を対象としたセミナーであったが、食べ方のコツや血糖測定器やポーチの選び方など、患者指導のヒントが散りばめられたセミナーであった。

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SGLT2阻害薬と1型糖尿病治療(解説:住谷哲氏)-760

 1型糖尿病の病因はインスリン分泌不全であり、治療は生理的インスリン補充(physiological insulin replacement)である。これを達成するためにこれまでインスリンアナログの開発、頻回インスリン投与法(multiple daily injection:MDI)、インスリンポンプ、SAP(sensor-augmented pump)が臨床応用されてきた。さらにclosed-loop systemによる自動インスリン投与の臨床応用も目前に近づいてきている。しかし依然として1型糖尿病治療におけるunmet needsとして、低血糖、体重増加、血糖変動(glycemic instability)の問題を避けることはできない。さらに1型糖尿病治療においては厳格な血糖管理による細小血管障害の予防に注目しがちであるが、2型糖尿病と同様に動脈硬化性心血管病(ASCVD)の予防が予後を改善するために重要であることを忘れてはならない1)。 SGLT2阻害薬の血糖降下作用はインスリン非依存性であり、従って1型糖尿病患者においても有効であることが期待される。さらにEMPA-REG OUTCOME、CANVASの結果から、SGLT2阻害薬の投与はハイリスク2型糖尿病患者において総死亡を含めた予後を改善することが明らかになりつつある。本試験はこれらを前提として、SGLT1/2阻害薬であるsotagliflozinの1型糖尿病患者における有効性と安全性を検討したものである。 対象は年齢43歳、罹病期間20年、BMI 28kg/m2、HbA1c 8.2%の1型糖尿病患者であり、4割がインスリンポンプ使用中であった。主要評価項目は重症低血糖および糖尿病ケトアシドーシス(DKA)を伴わずにHbA1c<7.0%を達成した患者の割合とされた。24週後、主要評価項目の達成率はsotagliflozin群28.6%、プラセボ群15.2%であり、sotagliflozin群で有意に高かった(p<0.001)。一方、DKAはsotagliflozin群で21例(3.0%)、プラセボ群で4例(0.6%)であった(有意差は記載されていない)。 SGLT2阻害薬であるダパグリフロジンを用いた試験(DEPICT-1試験)がほぼ同時に報告された2)。有効性についてはsotagliflozinを用いた本試験と同様であり。CGMのデータからダパグリフロジンがglycemic instabilityを改善することも明らかにされた。しかし安全性については、ダパグリフロジン投与によりDKAの増加は認められなかった。ダパグリフロジン投与によりDKAが増加しなかったのは、SGLT2阻害薬とSGLT1/2阻害薬との違いによるものか、試験デザインによるものか、対象患者の相違によるものかは明らかではない。さらに両試験ともに24週の短期間の観察であり、長期的な有効性および安全性については不明である。 日常臨床において、インスリンを増量しても体重が増加する一方で血糖コントロールが改善しない1型糖尿病患者は少なくない。この点で、血糖コントロールの改善と体重減少が同時に期待できるSGLT2阻害薬は魅力的である。しかし一方でDKAや性器感染症のリスクの増加は避けては通れない。今後の長期的な有効性および安全性のデータの集積を期待したい。■「SGLT2阻害薬」関連記事SGLT2阻害薬、CV/腎アウトカムへのベースライン特性の影響は/Lancet

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