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国産手術ロボットhinotoriによる大腸がん手術、94例の初期成績を報告

 ロボット支援手術の普及が進む中、日本初の国産手術支援ロボット「hinotori」の大腸外科領域における臨床データが報告された。今回、京都大学医学部附属病院でhinotoriによるロボット支援大腸手術を受けた大腸がん患者94例を解析した結果、開腹移行例やClavien-Dindo分類Grade III以上の重篤な術後合併症は認められなかった。著者らは、hinotoriを用いた大腸がん手術は安全かつ実施可能であることが示されたとしている。報告は京都大学医学部附属病院消化管外科の山本健人氏、板谷喜朗氏らによるもので、4月25日付の「Journal of the Anus, Rectum and Colon」に掲載された。 ロボット支援手術は近年、世界的に普及が進んでおり、大腸外科領域でも腹腔鏡手術と比べて良好な短期・長期成績を示す報告が蓄積されている。日本でもロボット支援直腸がん手術が2018年、結腸がん手術が2022年にそれぞれ保険収載されたが、これまでのエビデンスの多くは「da Vinci Surgical System(DVSS)」によるものだった。hinotori Surgical System(hinotori)は、川崎重工業とシスメックスの合弁会社メディカロイドが開発した日本初の国産手術支援ロボットで、名称は手塚治虫氏の『火の鳥』に由来する。同システムは2020年に泌尿器科領域で臨床導入され、その後は消化器外科や婦人科領域にも導入が広がっている。こうした背景から著者らは、hinotoriを用いたロボット支援大腸手術の臨床成績を検証した。 著者らは、2023年8月~2025年11月に京都大学医学部附属病院でhinotoriを用いたロボット支援大腸手術を受けた連続症例を対象に、単施設後ろ向き観察研究を実施した。術者はいずれも、日本内視鏡外科学会技術認定医で、既存のロボット支援手術システム(DVSS)による大腸手術を40例超経験していた。解析は、患者背景、手術関連因子、短期成績について、結腸がん群と直腸がん群に分けて実施した。 解析対象は94例で、このうち結腸がんが53例、直腸がんが41例だった。結腸がん群の手術時間中央値は255分だった。術後合併症はClavien-Dindo分類Grade IIのイレウスを1例(1.9%)に認めたが、絶食で改善し、Grade III以上の重篤な合併症は認められなかった。 一方、直腸がん群の手術時間中央値は327分だった。41例のうち、側方リンパ節郭清や他臓器合併切除、再発病変切除を伴う高難度手術(beyond-TME)を7例に実施した。術後合併症はGrade IIの排尿障害を1例(2.4%)に認め、経口抗菌薬で改善したが、Grade III以上の重篤な合併症は認められなかった。 いずれの群でも開腹移行例や術後30日以内の再手術例はなく、術後在院日数中央値は結腸がん群で10日、直腸がん群で12日だった。 著者らは、大腸外科領域におけるロボット支援手術の有効性は既に示されている一方、hinotoriに関する臨床データは限られていると指摘した。その上で、本研究では開腹移行例やGrade III以上の重篤な合併症を認めず、既報と概ね同等の短期成績が得られたとして、hinotoriを用いた大腸手術の安全性と実施可能性が示されたと考察した。一方、手術時間は既報よりやや長かったが、高難度症例を含んでいたことや、hinotoriを初めて使用する術者が多かったことが影響した可能性があるとしている。 また、現在はDVSSが手術支援ロボット市場で大きなシェアを占めているものの、hinotoriのような新規プラットフォームの登場は健全な競争につながるとの見方を示した。

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「下半身切断術」が行われた1例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第308回

「下半身切断術」が行われた1例ご存じでしょうか。hemicorporectomy(下半身切断術)という術式が存在することを。腰椎を離断し、脊髄を切り、骨盤と両下肢をまるごと外科的に取り去る。文字にするだけで戦慄が走るこの術式、世界での報告例はわずか79例です。今回その伝説の術式の報告が、トルコから届きました。読み始めた瞬間に「えっ、これ本当にやったの?」と声が出てしまう1例です。Saglam F, et al. Hemicorporectomy: a case report on a last-resort surgical procedure. World J Surg Oncol. 2026;24:105.主人公は67歳男性、診断は脱分化型仙骨脊索腫。2年前に「お尻が痛い、尿便失禁する」と他院を受診し、S1から発生した巨大腫瘍を指摘されたものの、初回生検が非診断的だったところで本人が音信不通になります。2年後、今度はイレウスで他院に緊急搬送。開腹したら骨盤いっぱいに腫瘤がぎっしり詰まっていて手も足も出ず…という状況でした。膀胱・下行結腸・直腸への直接浸潤、両側内腸骨動静脈への浸潤、両側仙腸関節の破壊、臀部への浸潤、後腹膜進展はL4まで到達。多職種カンファレンスの結論は、こうです──「もう、下半身ごと取るしかない」。そして11時間の手術。途中で循環血液量減少性ショックと神経原性ショックが1回ずつ起こりますが、さまざまな診療科が協力して無事終了。出血520mLというのが、もはやどこを基準に多寡を語ればよいのかわからなくなります。驚くのは術後の経過です。創部感染で2回のデブリードマンと肺水腫を乗り越え、術後3ヵ月で退院。ベッド上で座位がとれ、車椅子で移動できるレベルまで戻りました。泌尿器科・形成外科・心臓血管外科・麻酔科・集中治療・精神科・リハビリ・感染症科──この症例の背後には、数えきれないほどの専門家の手が重なっています。「最後の砦」と呼ばれる術式が成立すること自体が、現代医療の総力の結晶なのだと感じさせられる1例でした。…しかしその後は残念な経過でした。断端陰性だったにもかかわらず、術後6ヵ月で両側肺転移が出現し、9ヵ月後に永眠されているのです。日本で行われることはないでしょうが、こんな術式があったのですね…。

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お腹の張りも奥が深いのです【非専門医のための緩和ケアTips】第111回

お腹の張りも奥が深いのです「お腹の張り」を訴える患者さん、内科診療をしている方であればしばしば遭遇するでしょう。皆さんはこうしたケースにどのように対応していますか? ちょっと曖昧な訴えにも感じられ、ついつい便秘と決めがちではないでしょうか。今回の質問肝臓がんでお腹の張りを訴える患者さんがいます。毎日というわけではないですが排便はあるようで、腹水が原因かと思っています。ただ、そこまで緊満しているわけではなく、対応を悩んでいます。これは腹水が溜まっている患者さんなどでよく遭遇する状況かと思います。患者さんの訴えも曖昧で、詳しく聞いてみても「とにかくお腹が張ってつらいんです」といった訴えが続くこともよくあります。緩和ケアは高齢患者も多く、詳細な情報収集が難しいのはよくあることなので、診察や検査といった客観的な情報と総合して、アプローチを考えるのが基本です。こういった時、我々の思考プロセスとしてまず考えたいのは、「緊急性の高い疾患がないか」という点です。とくに消化管穿孔、絞扼性イレウスといったところは見逃したくないですね。私の経験上では、普段から腹痛を訴えることの多い患者さんだったものの、痛みがいつもより強いようであることに違和感を覚え、検査をしました。その結果、腫瘍破裂による、腹腔内出血でした。血液は腹膜への刺激となるため、腹痛の原因となります。その典型的な例が子宮外妊娠ですが、がん患者にも同じような機序の痛みが起こりえます。「いつもの腹痛」と片付けていれば、対応が遅れるところでした。さて、上記のような緊急性の高い疾患がないことが確認できた後は、便秘や腹水貯留といった頻度の高い病態や症状であるの可能性を念頭に置いて、排便コントロールと腹水に対する介入を複数試すことになるでしょう。腹水であれば減塩、輸液量の調整、利尿薬を追加し、それでもコントロールが難しい場合は腹腔穿刺をして排液を試みます。それでも改善が乏しければ、NSAIDsやステロイドなどで腹膜の炎症を軽減しつつ、オピオイドの使用も検討します。その経過中に便秘が生じないように、緩下薬なども調整します。いずれにしても、患者さんの主観的な症状を否定せず、可能性のある病態に対し、安全な範囲で介入しながら様子を見る、という地道な診療が続きます。看護師にも観察してもらい、ケアで工夫できることを発見してもらったり、良い変化があれば小さいことでも患者と医師に共有してもらったりすることも重要です。なかなかすっきりしない症状ではありますが、私自身はこのような対応をすることが多いです。皆さんの工夫もぜひ教えてください。今回のTips今回のTips腹部の張りは鑑別に立ち返り、試行錯誤しながら対応しましょう。

5.

絞扼性イレウスの見落とし?【医療訴訟の争点】第15回

症例絞扼性イレウスは、緊急の開腹手術が第1選択となり、機を逃すと致死的な結果を招くにもかかわらず、鑑別が容易でないことも珍しくない。本稿では、診療過程における絞扼性イレウスの見落としが争点となった東京地裁令和3年11月29日判決を紹介する。<登場人物>患者男児(8歳)原告患者の両親被告大学病院事案の概要は以下の通りである。平成28年2月20日(土)患児は、夜から嘔吐を繰り返す。2月21日(日)午前10時8分休日診療所を受診。受診時、嘔気と嘔吐を訴え、体温は38.3度、下痢なし、咽頭・胸部異常なし、インフルエンザ検査は陰性。同診療所で診察した医師は、急性胃腸炎と診断し、第二次救急医療機関であるA医療センターを紹介した。正午頃A医療センターを受診受診時、患児は、心拍数210回/分、体温38度、腸音通常で、腹部はやや硬く全体的に圧痛が認められた。A医療センターの医師は、PSVT(発作性上室頻拍)を認めて処置を行ったが、A医療センターでの薬物治療および原因検索は困難であるとして、PSVTの治療をお願いする旨の申し送りをし、第三次救急医療機関である被告病院に転送した。午後5時頃被告病院に到着。到着時、茶褐色の嘔吐。午後5時28分頃12誘導心電図検査を実施。このときの心拍数は200回/分午後5時35分頃茶褐色の嘔吐をした。診察した医師は、超音波検査および診察を行い、劇症型心筋炎の可能性は低いと判断。午後5時56分頃PSVT治療のため、午後5時56分頃にアデホス0.1mL、同日午後5時58分頃にアデホス0.2mL、同日午後6時2分頃にアデホス0.4mL、同日午後6時31分頃にアデホス0.5mL、同日午後6時44分頃にワソラン0.5アンプルの静注を行った。午後6時15分頃不穏な言動をするなどして意識障害様の症状がみられる。午後6時52分頃茶褐色の嘔吐。午後8時30分頃頭部および胸腹部の単純CT検査(本件CT検査)を実施。胃および小腸の著明な拡張ならびに腹水貯留が認められており、「イレウス疑い・腹水貯留」と診断午後9時1分頃PEA(無脈性電気活動、心停止)状態午後10時25分心臓マッサージ開始午後11時24分死亡死亡後本件患者の死因につき、絞扼性イレウスも考えられることを原告らに対し説明実際の裁判結果原告側は、繰り返す嘔吐、腹痛といった所見から、絞扼性イレウスを疑うべきであった、腹部単純X線や超音波検査を行えば異常が把握でき、緊急手術により救命できた可能性が高い旨を主張した。これに対し、被告病院は、搬送時から頻拍・低血圧が続き、心筋炎や循環動態不全が強く疑われる状況であった、嘔吐も循環器疾患や感染症に伴う可能性があり、腹部疾患に直ちに結びつく特異的所見ではない旨を主張した。具体的には、以下のタイミングで、腹部検査(単純レントゲン検査、単純CT検査、造影CT検査および超音波検査など)を行う義務があったかが争われ、裁判所は以下のとおり判断した。(1)「傷病名胃腸炎、受診前日より腹痛・嘔吐を認める」旨が記載された診療情報提供書が送付され、被告病院に到着し、嘔吐があった時(2月21日午後5時10分)の検査義務について裁判所は、以下の点を指摘し、「まず行うべき処置は、PSVTを含む循環器疾患に対する処置であり、本件患児が被告病院に到着した平成28年2月21日午後5時10分頃の時点において、被告病院の医師が絞扼性イレウスを含む腹部疾患を疑って、直ちに本件腹部検査を行うべきであったとはいえない」とした。前医(A医療センター)は、傷病名をPSVT、急性胃腸炎とし、上室性頻拍に対する迷走神経刺激手技などの治療を行っていること前医(A医療センター)での上記治療が行われるも、頻脈が持続し、A医療センターでの薬物治療と原因検索は困難であるとして、被告病院に紹介していることA医療センターの医師は、被告病院の医師に電話でPSVTの治療をお願いする旨の申し送りをしていること循環器疾患の中でも、心筋炎は、発熱、腹痛、嘔吐の前駆症状を伴うことが多く、また、細菌やウイルスなどによる感染起因のものが多く何らかの感染症に罹患している可能性もあること。循環器疾患が強く疑われていたことを踏まえると、急性胃腸炎との傷病名や腹痛・嘔吐などの経過報告の記載は循環器疾患に付随する情報提供と考えることが合理的であること(2)再度の茶褐色の嘔吐があり、心エコーおよび診察にて劇症型心筋炎の可能性が低いと判断された時(2月21日午後5時40分)の検査義務について裁判所は、以下の点を指摘し、「循環器疾患の原因として感染症が疑われることや循環動態の悪化が継続したことによる嘔吐も考えられ、嘔吐は消化器以外に原因があることが少なくないことを踏まえれば、本件患児の場合、嘔吐が認められたからといって、腹部疾患を疑って本件腹部検査をすべきであったとはいえない」とした。劇症型心筋炎の可能性は低いと判断されたものの、本件患児の心拍数は、2月21日午後5時28分頃の12誘導心電図検査の段階で200回/分と、非常に高値であったこと12誘導心電図では、PSVTと矛盾しない所見が得られている上、初診時に認めた発熱、低血圧などの所見は、PSVTや心筋炎の所見と矛盾なく、循環器疾患の疑いはなお強い状態であったこと被告病院医師の初診時、本件患児の腹部は平坦で軟であり圧痛はなく、腹部超音波検査時にも腹部の張りや筋性防御を認めなかった上、明確な腹痛の主訴もなかったこと(3)アデホスを3回投与したが頻脈が治らない一方、嘔吐を繰り返している時(2月21日午後6時2分)の検査義務について裁判所は、以下の点を指摘し、「本件腹部検査をすべきであったということはできない」とした。アデホスは、短時間作用性のため繰り返し使用できる一方で、再発の可能性も高く、頻拍の再発があったからといって、循環器疾患を否定できるものではないこと2月21日午後5時39分頃の血液検査によれば、心筋炎症マーカーが高値となっており、急性心筋炎が強く疑われる状態であったこと(4)アデホスを4回投与した上、ワソランを投与したが頻脈が治らない一方、さらに嘔吐した時(2月21日午後6時52分)の検査義務について裁判所は、以下の点を指摘し、「被告病院の医師をして、絞扼性イレウスを含む緊急性のある腹部疾患を疑って本件腹部検査をすべきであったとはいえない」とした。本件患児は急性心筋炎が強く疑われる状態であり、被告病院の医師は、種々の細菌検査、複数回の12誘導心電図検査、アデホスとワソランの投与などを行っていること急性心筋炎は感染起因が多いこと、急性心筋炎には繰り返しの心電図検査が肝要であること、アデホスとワソランはPSVTの薬物治療として有用であることから、被告病院で行われた検査や治療はいずれも適切であったことアデホスとワソランの薬物治療が奏功しなくても、急性心筋炎といった緊急性のある循環器疾患は否定できないものであること発熱、意識障害を伴う嘔吐は中枢神経疾患の鑑別に重要であることから、感染を原因としてウイルス性脳炎などの可能性を疑ったことにも不適切な点はないこと午後6時52分頃まで、本件患児の病状が絞扼性イレウスの所見と矛盾しない症状を呈していたことは認められるものの、非特異的所見であること絞扼性イレウスをとくに示唆する腹部膨満や激しい腹痛は午後6時52分の時点においても認められず、他方で急性心筋炎、感染症、脳炎などを疑う症状もあったこと。とくに急性心筋炎は本件患児の臨床症状や検査結果からその存在を積極的に疑うべき状態に変わりはなかったこと注意ポイント解説本判決は、小児の消化器症状を循環器疾患とどう峻別すべきかが焦点となった事例である。繰り返す嘔吐は腹部疾患を疑わせるものであるが、必ずしも特異的ではなく、心筋炎などでも同様の症状を呈し得るものであること、診療情報の流れや臨床所見から循環器疾患がより強く疑われたことから、裁判所は、腹部検査を直ちに行うべき注意義務を否定した。また、本件では、死亡の数時間前の午後8時30分頃に撮影されたCTにて、胃および小腸の著明な拡張ならびに腹水貯留が認められており、「イレウス疑い・腹水貯留」と診断されているものの、解剖やCTによる死後画像造影が行われておらず、死因としては、急性心筋炎、脳症、絞扼性イレウスなどが考えられ、絞扼性イレウスであったと特定することができないこともまた、上記の判断に影響した部分があると思われる。このため、仮に、前医から腹部疾患を強く疑われる旨の診療情報が提供されていたり、非特異的な所見にとどまらず、腹部膨満や激しい腹痛などの絞扼性イレウスを示唆する所見が確認されていたりする場合には、異なる判断となった可能性がある点に留意する必要がある。なお、上記のとおり、本件患児の死因は、急性心筋炎、脳症、絞扼性イレウスなどの複数が考えられ、特定ができない中、「イレウスが死因かもしれない」旨の説明を受けることで、見落としへの不信を募らせたために訴訟に至っていると思われる。このため、顛末報告の説明は必要であるが、限られた情報の中で、誤解や不信感を抱かれないよう、丁寧に説明をする必要があることが改めて確認される事案でもある。医療者の視点本判決は、小児の非特異的な症状から重篤な疾患を鑑別する、臨床現場の難しさを反映したものと考えられます。裁判所は、頻拍や低血圧といった循環器系の異常を重視し、そちらの検査・治療を優先すべきであったと判断しました。これは、生命維持に直結する循環・呼吸の安定化を最優先するという救急医療の原則に合致しており、臨床医の判断プロセスと非常に近いものです。一方で、実臨床では、一つの疾患に絞って診断を進めるわけではありません。循環器疾患の治療を行いながらも、「嘔吐が続く」という情報から消化器疾患の可能性を常に念頭に置き、状態の変化を注意深く観察します。訴訟では特定の時点での「検査義務」が問われますが、現場では治療と並行して、どのタイミングで次の検査に踏み切るかという、より動的で連続的な判断が求められます。とくに、本件のように循環動態が不安定な患児をCT室へ移動させることには大きなリスクが伴います。そのため、まずはベッドサイドでできる治療や検査を優先するという判断は、実臨床ではやむを得ない、むしろ標準的な対応と言えるでしょう。この症例は、非特異的な症状であっても、絞扼性イレウスを示唆する腹部膨満や圧痛といった特異的な所見を見逃さないために、繰り返し身体所見をとることの重要性を改めて教えてくれる事例です。

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セマグルチドやペムブロリズマブなど、重大な副作用追加/厚労省

 厚生労働省は7月30日、セマグルチドやペムブロリズマブなどに対して、添付文書の改訂指示を発出。該当医薬品の添付文書の副作用の項に、重大な副作用が追記されることとなった。 該当医薬品と改訂内容は以下のとおり。GLP-1受容体作動薬:セマグルチド(商品名:ウゴービ、オゼンピック、リベルサス)GIP/GLP-1受容体作動薬:チルゼパチド(同:マンジャロ、ゼップバウンド)インスリン/GLP-1受容体作動薬配合薬:インスリン グラルギン/リキシセナチド(同:ソリクア配合注ソロスター) イレウス関連症例を評価した結果、重大な副作用の項に「イレウス」(腸閉塞を含むイレウスを起こすおそれがある。高度の便秘、腹部膨満、持続する腹痛、嘔吐等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと)を追記。また、合併症・既往歴等のある患者の項に「腹部手術の既往又はイレウスの既往のある患者」を追記した。抗PD-1抗体:ペムブロリズマブ(同:キイトルーダ) 血管炎関連症例を評価した結果、重大な副作用の項に「血管炎」(大型血管炎、中型血管炎、小型血管炎[ANCA関連血管炎、IgA血管炎を含む]があらわれることがある)を追記した。抗PD-L1抗体:アベルマブ(同:バベンチオ) 硬化性胆管炎関連症例を評価した結果、重大な副作用の項の「肝不全、肝機能障害、肝炎」に「硬化性胆管炎」を追記した。また、重要な基本的注意の項の「肝不全、肝機能障害、肝炎」に関する記載に「硬化性胆管炎」に関する注意を追記した。チロシンキナーゼ阻害薬:アファチニブマレイン酸塩(同:ジオトリフ)抗エストロゲン薬:フルベストラント(同:フェソロデックス) 各製剤においてアナフィラキシー関連症例を評価した結果、重大な副作用の項に「アナフィラキシー」を追記した。キナーゼ阻害薬:スニチニブリンゴ酸塩(同:スーテント) 高アンモニア血症関連症例を評価、専門委員の意見も聴取した結果、肝機能異常を伴わずに発現する高アンモニア血症の症例が認められ、本剤との因果関係が否定できない症例が集積したことから、重大な副作用の項に「高アンモニア血症」を追記した。

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「急性腹症診療ガイドライン2025」、ポイント学習動画など新たな試みも

 2025年3月「急性腹症診療ガイドライン2025 第2版」が刊行された。2015年の初版から10年ぶりの改訂となる。Minds作成マニュアル(以下、マニュアル)に則って作成され、初版の全CQに対して再度のシステマティックレビューを行い、BQ81個、FRQ6個、CQ14個の構成となっている。8学会の合同制作で広範な疾患、検査を網羅する。診療のポイントをシナリオで確認できる動画を作成、システマティックレビューの検索式や結果をWeb上で公開するなど、新たな試みも行われた。改訂出版委員会の主要委員である札幌医科大学・三原 弘氏に、改訂版のポイントや特徴を聞いた。 ガイドライン自体の評価はMindsなどが行っているが、私たちはさらにマニュアルに従ってガイドラインが実臨床や社会に与えた影響を評価しようと考えた。具体的には、初版刊行の前後、2014年と2022年に日本腹部救急医学会と日本プライマリ・ケア連合学会の会員を対象にアンケート調査を行った。ガイドラインの認知度と実臨床の変化を調べ、改訂につなげることが目的だ。 そこでわかった課題は2つ。1つめは、初版では急性腹症の初回のスクリーニング検査として超音波検査(エコー)を推奨していたにもかかわらず、発刊後にはエコーの実施率が下がり、CT検査の実施率が上がっていた。コロナ禍の影響が大きいだろうが、初版における超音波の推奨を十分伝え切れていなかった可能性がある。2つめは、初版の認知度が6割だったことだ。学会員であり、かつアンケートに回答してくれるような熱心な医師であっても4割はガイドラインの存在自体を知らない、という結果は衝撃だった。一方、ガイドラインを認知している医師は診療内容が確実に変わっており、「知ってもらう」ことの重要性を痛感した。 この結果を受け、2版は「最初の画像検査はエコーが第1選択と強調」、「とにかく知ってもらう」ことの2点に注力した。 そして、「急性腹症の検査」の章では、「$アプローチ」と「6アプローチ」という具体的な走査法の図を掲載し、「急性腹症の教育プログラム」の章に最近一般的になっているPOCUS(ベッドサイドで行う超音波検査)について、「各部位50例程度の経験を積むことを提案する」という具体的な数値目標を記載し、エコー動画を含めたシナリオ学習動画を新規に作成・公開した。これはパブリックコメントなどに寄せられた「エコーが重要なのはわかったが、どう当てればいいのか、どのくらい練習すればいいのかわからない」という声に応えたものだ。 さらに、初版で記載した「2 step methods」(バイタルサインを確認するステップ1、その異常の有無で医療面接・身体所見などから病態を評価する対応を変えるステップ2を順番に行う診療アルゴリズム)がわかりにくいという声を受け、上記のシナリオで内容を理解する動画を5本作成した。若手医師を中心に、書籍ではなく動画で学ぶことが一般化しており、そのニーズに応えたものだ。1本10分程度の動画で、症例提示や検査画像から診療の流れとポイントを確認し、視聴前後にチェックテストを行うことで理解度を確認することができる。動画はYouTubeに上げ、版権もガイドライン改訂出版委員会が所持しつつもクリエイティブ・コモンズとして公開しているので、医学部の授業や研修病院のセミナーでそのまま、または一部改変して使っていただくことも可能だ。 さらに、本編に入り切らなかった補足的コンテンツや、改訂に際して行ったシステマティックレビューの結果もWeb上で公開している。これまで、システマティックレビューの検索式や結果は事務局等のパソコン上に静かに保管している、などのケースが多かった。ガイドラインとその改訂作業を、オープンかつ公的で参考となるものとし、そして永続的な活動としていくために、さまざまなトライアルをした1冊だ。ぜひ多くの方に手に取っていただきたい。【新版に収録されたBQ・CQ/一部抜粋】BQ2 腸閉塞症とイレウスはどう定義されるか?腸管の閉塞症状を呈する病態において、「腸管の機械的閉塞を伴う病態を腸閉塞症」と「腸管の機械的閉塞を伴わない、腸蠕動または腸運動の欠如に起因する病態をイレウス」とを明確に分けて定義する。BQ3 急性虫垂炎はどう分類されるか?急性虫垂炎は、組織学的にカタル性、蜂窩織炎、壊疽性と分類され、臨床的に単純性、複雑性、汎発性腹膜炎を伴う虫垂炎に分けられるが、これらを術前に正確に分類することは困難である。BQ44 急性腹症の画像診断で最初に行う(形態学的)検査(または画像診断法)は何か?非侵襲性、簡便性、機器の普及度などからも超音波検査(US)がスクリーニング目的での画像診断法では第1選択であり、特に妊婦や小児においては勧められる。BQ78 急性腹症の腹痛にはどのような鎮痛薬を使用するか?原因にかかわらず診断前の早期の鎮痛剤使用を推奨する。痛みの強さによらずアセトアミノフェン1,000mg静脈投与が推奨される。痛みの強さにより麻薬性鎮痛薬の静脈投与を追加する。またブチルスコポラミンのような鎮痙剤は腹痛の第1選択薬というよりは疝痛に対して補助療法として使用される。急性腹症ではモルヒネ、フェンタニルのようなオピオイドやペンタゾシン、ブブレノルフィンのような拮抗性鎮痛薬を使用することもできる。NSAIDsは胆道疾患の疝痛に対しオピオイド類と同等の効果があり第1選択薬となりうる。尿管結石の疝痛にはNSAIDsを用いる。NSAIDsが使用できない場合にオピオイド類の使用を勧める。CQ8 急性腹症のどのような場合に造影CT検査を追加するか?臓器虚血の有無、血管性病変、急性膵炎の重症度判定、急性胆管炎・胆嚢炎、複雑性虫垂炎などでは単純CTだけでは詳細な評価が困難なことがあり、造影CT検査が推奨される。CQ14 臨床医に対する急性腹症の超音波訓練は有用か?臨床医自らが患者の傍らで関心部分に焦点を絞って実施する point-of-care ultrasonography(POCUS)の診断精度は、各部位50例程度の経験を積むことで超音波検査の専門家と同等になることが報告されており、急性腹症を診療する医師は50例程度の超音波訓練を行うことを提案する。

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非常につらい倦怠感【漢方カンファレンス】第7回

非常につらい倦怠感以下の症例で考えられる処方をお答えください。(経過の項の「???」にあてはまる漢方薬を考えてみましょう)【今回の症例】70代男性主訴食欲不振既往51歳:胆嚢摘出、70歳:大腸がん手術病歴X年6月、転落による頭部外傷、四肢骨折などの多発外傷で入院加療中で。入院1ヵ月後、腹痛が出現し癒着性腸閉塞と診断された。保存的加療(イレウス管挿入・大建中湯[だいけんちゅうとう]エキスなど)を行ったが再発を繰り返した。入院2ヵ月後に癒着剥離術を施行。術後経過は良好であったが、食欲不振が続き、長期入院のためADLが低下した。入院2ヵ月半後、漢方治療目的に当科に紹介となった。現症身長160cm、体重37.8kg(BMI 14.8kg/m2、入院時と比べて-6kg)。体温35.4℃、血圧105/82mmHg、脈拍66回/分 整、呼吸数16回/分。身体所見では、下肢浮腫が軽度ある以外に特記すべき異常はないが、診察時は車椅子でぐったりした様子でベッドへ移動ができなかった。経過初診時「???」湯(煎じ薬)毎食間を処方。(解答は本ページ下部をチェック!)3日後きつさは軽くなり、ご飯が食べられるようになった。7日後食事は摂れている。活気が出て、よく話すようになった。2週間後リハビリが進みADLが拡大傾向である。漢方治療を終了した。問診・診察漢方医は以下に示す漢方診療のポイントに基づいて、今回の症例を以下のように考えます。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?(冷えがあるか、温まると症状は改善するか、倦怠感は強いか、など)(2)虚実はどうか(症状の程度、脈・腹の力)(3)気血水の異常を考える(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む【問診】<冷えの確認>寒がりですか? 暑がりですか?体の冷えを自覚しますか?寒がりです。体全体が冷えます。<温冷刺激に対する反応を確認>入浴では長くお湯に浸かるのが好きですか?冷房は好きですか?お風呂は熱いのが好きで長風呂です。冷房は嫌いです。飲み物は温かい飲み物と冷たい飲み物のどちらを好みますか?のどは渇きませんか?1日どれくらい飲み物を摂っていますか?温かい湯茶を飲んでいます。のどはそんなに渇かず、1日1L未満です。<ほかの随伴症状を確認>倦怠感はありますか?体全体がだるい感じです。すぐに疲れてしまい、今でも横になりたいです。食べたいという気持ちもリハビリする気力もありません。他に困っている症状はありますか?胸やけ、胃もたれがあります。尿は1日に何回でますか?便秘・下痢はありませんか?便の臭いは強いですか?尿は5~6回くらいです。便は3日に1回で、下痢をします。便の臭いは強くありません。【診察】問診をしても返答が乏しく反応も鈍かった。車椅子で坐位を保つこともつらそうな様子。顔色はやや紅潮。四肢を触診すると冷感が強く、脈診では沈で反発力が非常に弱い脈(脈:沈、極めて弱)であった。また、舌は乾燥した舌苔がわずかで、腹診では腹力は軟弱であった。カンファレンス問診では、寒がり、冷えの自覚がある、温かい飲み物を好む、倦怠感があります。触診でも四肢に強い冷えがあり、「寒」が目立つことから明らかに「陰証」です。さらに脈が沈んで弱く、腹力も軟弱なので、闘病反応が乏しい「虚証」と考えます。今回はあまり「陰陽」・「虚実」の判断は迷わなさそうだね。長期の入院で、体力低下により冷えが生じて、闘病反応が乏しい感じだね。「陰証・虚証」と考えてよさそうだ。少陰病は、冷えが全身に及び、体力が衰えて元気がないのが特徴ですね(第2回参照)。今回の症例は少陰病でしょうか。少陰病は体力が枯渇してきて負け戦の様相を呈する病態だね。少陰病からさらに進行して、極端に体力量が少なくなった状態を「厥陰病(本ページ下部の「今回のポイント」の項参照)」というよ。今回の症例では、車椅子に座っているのもつらい様子、さらに四肢に強い冷えがあり、脈が沈で非常に弱かったことから厥陰病と診断しました。今回の症例は、車椅子に座っているのもきついような、非常につらい倦怠感が特徴だけど、漢方で非常につらがっている症状を何とよぶか覚えているかい?うーん…。ここは重要なポイントですよ! 漢方ではひどくつらがる状態を「煩躁(はんそう)」とよびました。インフルエンザの症例で、強い悪寒があって汗がなく、関節痛がある麻黄湯(まおうとう)を用いるような場合でも、身の置き場もないほどつらがる「煩躁」があれば、大青竜湯(だいせいりゅうとう)(エキス剤では麻黄湯+越婢加朮湯[えっぴかじゅつとう]で代用)が適応になるのでした(第4回参照)。すっかり忘れていました。冬の季節はインフルエンザを診る機会が増えてくるので必ず復習しておきます。太陽病で煩躁があるときは大青竜湯が適応だったね。今回は陰証で煩躁を呈する場合に用いる漢方薬が適応になるよ。慢性疾患で煩躁している場合は、強い冷えを伴うことが多いんだ。それじゃあ本症例をまとめよう。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?寒がり、四肢の冷え、非常につらい倦怠感、下痢の性状(便臭が軽度)、温かい飲み物を好む、脈:沈→陰証(2)虚実はどうか脈:極めて弱、腹力:やや軟弱→虚証(3)気血水の異常を考える倦怠感→気虚下痢→水毒(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む強い冷え、非常につらい倦怠感(煩躁)、脈が沈弱解答・解説【解答】本症例は、厥陰病で煩躁している場合に用いる茯苓四逆湯(ぶくりょうしぎゃくとう)(エキス剤では真武湯[しんぶとう]+人参湯[にんじんとう]で代用)を用いて治療しました。【解説】茯苓四逆湯は附子(ぶし)・乾姜(かんきょう)・甘草(かんぞう)で構成される四逆湯に茯苓(ぶくりょう)と人参(にんじん)が入ったものです。茯苓・人参・甘草に白朮(びゃくじゅつ)が加わると四君子湯(しくんしとう)になり、生体の根元的エネルギーである気を補う基本の漢方薬です。よって茯苓四逆湯は、四逆湯の体を温めて回復させる作用に加えて、弱った元気を補う作用をもった漢方薬になります。茯苓四逆湯は、陰証で煩躁を認める場合に用いる漢方薬です。エキス製剤では真武湯と人参湯を併用して代用することができます。気を補う作用のある漢方薬を補気剤とよびます。全身倦怠感や食欲不振に対する漢方薬と言えば、六君子湯や補中益気湯がよく知られており、補気剤の仲間です。ただし、六君子湯や補中益気湯の適応は冷えは目立ちません。気虚に冷えを伴う場合は陰証の漢方薬が適応になります。食欲不振があって心窩部に冷感を認める場合には人参湯が適応になります。冷えの程度が強く、非常につらい倦怠感がある場合は茯苓四逆湯を用います。冷えの有無や程度に応じて上手く使い分けができるようになるとよいですね(表)。今回のポイント「厥陰病」の解説厥陰病は寒が主体の病態である陰証の最後のステージです。強い冷えがあり、体力が極端に少なくなり強い脱力感、倦怠感を伴います。そのため「極度の虚寒」ともいわれます。胃腸(裏)の働きも低下していて、食欲不振があります。また下痢がみられる場合は、水様性で、臭いがなく、食べ物が消化されずに形が残ったまま出てくることもあります(完穀下痢[かんこくげり]とよぶ)。生体も土壇場なので、最後のひと踏ん張りということで、強い冷えがあるにもかかわらず、逆に熱っぽかったり、顔が赤かったりすることがあります。ロウソクが消える間際にパッと輝く「灯滅せんとして光を増す」ようなイメージです。これを漢方では「陰極まって陽」、つまり、寒が非常に強くなって、逆に熱症状を呈している状態と考えます。脈は沈んで、反発力が非常に弱い軟弱無力な脈が特徴で、「しまりがなく、細い茹でうどんが水にふやけたような緊張感のない脈」といわれます。厥陰病は急性感染症の場合、ショック状態に陥るような危篤状態です。慢性疾患では、冷えと倦怠感がどちらも強度で極度に疲弊した状態を厥陰病と考えます。厥陰病の治療は、体力を補いながら強力に温める治療を行います。代表的な温める生薬である附子(トリカブトの根を加熱処理して弱毒化したもの)と乾姜(しょうがを蒸して乾燥させたもの)、さらに甘草の3つの生薬から構成される四逆湯(しぎゃくとう)を基本とした漢方薬を用いて治療します。

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カリウム吸着薬の必要性を検討して薬剤性便秘を解消【うまくいく!処方提案プラクティス】第60回

 今回は、治療評価がなされずに長期服用していたカリウム吸着薬の副作用と思われる便秘に着目し、中止することで解消した症例を紹介します。患者さんや施設スタッフの負担となっていることを聴取し、服薬契機や治療評価の時期などに注目してみると、現在の治療の必要性を考えやすくなります。薬剤師の視点で考えたことを整理して、医師と意見共有してみましょう。患者情報88歳、男性(施設入居)基礎疾患認知症、脳梗塞、糖尿病、胸部大動脈瘤、大腸がん術後介護度要介護4服薬管理施設職員が管理処方内容1.アスピリン・ランソプラゾール配合錠 1錠 分1 朝食後2.ビソプロロール錠0.625mg 2錠 分1 朝食後3.ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリー20% 25g 分1 朝食後4.トラゾドン錠25mg 1錠 分1 朝食後5.シタグリプチンリン錠50mg 1錠 分1 朝食後6.酪酸菌配合錠 3錠 分3 毎食後7.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 毎食後8.ピコスルファートNa内用液0.75% 10mL 便秘時5〜15滴で調整本症例のポイントこの患者さんは、施設入居から間もなく硬便(ブリストル便形状スケール[BSFS]1〜2)と便秘症状が強くなり、酸化マグネシウムと頓用のピコスルファートを開始して2週間が経過しました。BSFS 2および排便頻度が2〜3日のため、ピコスルファート15滴で調整を続けていましたが、便秘解消がいまひとつで不穏症状も出現していました。介護スタッフから、服薬錠数が増えると介護抵抗なども強くなるので何かよい手立てはないか、と相談がありました。現状の服用薬剤から何か減らすことで工夫はできないかという点から、薬剤性便秘の可能性を探りました。そこで着目したのが、ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリーでした。ポリスチレンスルホン酸Caは、腸内のカリウムイオンと本剤のカルシウムイオンを交換することで、カリウムを体外に排泄する薬剤(陽イオン交換樹脂)1)ですが、便秘の副作用が多く、重大な副作用として腸管穿孔の報告2)もあります。導入の経緯を診療情報提供書にさかのぼって調査すると、カリウム値が5.6mEq/Lと高カリウム血症を発症した際に、ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリー50g 分2 朝夕食後の処方が開始となっていました。その3週間後の採血で3.5mEq/Lに低下したことから現在の量に減量となっていました。大腸がん術後でイレウスのリスクもあることと、認知症があることから便秘増悪でせん妄リスクもあることから排便コントロールは重要です。カリウム値をモニタリングしながらポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリーを中止することで、服薬数も減らすことができ、排便コントロールも少なからずポジティブな効果になるのではないだろうかと考えました。医師への相談と経過医師に電話で、下剤調整後の現況を情報共有し、ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリーによる弊害の可能性について相談しました。医師も、用量は少ないものの副作用報告として多いことを認識しており、中止しようと返答がありました。また、カリウム値については次回の診療で採血をしてフォローすることとなりました。指示を受けた翌日からポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリーが中止となりました。患者さんは、中止して2日後には排便があり(BSFS 3、中等量)、その後も安定して0〜1日の排便(BSFS 2〜3、中等量)で安定して経過しています。さらに、その後のカリウム値の検査結果も4.0mEq/Lと基準値内で推移していました。便秘増悪には環境変化などさまざま要因がありますが、薬剤性のアプローチは薬剤師にとって大事なアクションの1つだと実感した事例です。1)ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリー20% インタビューフォーム2)「消化器内視鏡」編集委員会編. 大腸疾患アトラスupdate. 東京医学社;2020. p232.

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がん治療中のその輸液、本当に必要ですか?/日本臨床腫瘍学会

 がん患者、とくに終末期の患者において最適な輸液量はどの程度なのか? 第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で企画されたシンポジウム「その治療、やり過ぎじゃないですか?」の中で、猪狩 智生氏(東北大学大学院医学系研究科緩和医療学分野)が、終末期がん患者における輸液の適切な用い方について、ガイドラインでの推奨や近年のエビデンスを交え講演した。「輸液の減量」をがん治療中の腹痛や悪心の治療オプションに 猪狩氏はまず実際の症例として、70代の膵頭部がん(StageIV)患者の事例を紹介した:1次治療(GEM+nab-PTX)後にSDとなったものの、8ヵ月後に腹痛、悪心で緊急入院し、がん性腹膜炎、麻痺性イレウスと診断。中心静脈確保、絶食補液管理(1日2,000mL)となり、腹痛に対しオピオイドを開始したものの症状コントロール困難となった。 このようなケースで治療オプションとなるのは、オピオイドの増量や制吐薬、ステロイド、オクトレオチドの使用などだが、同氏は「輸液の減量も症状緩和のための手段の1つとして加えてほしい」と話した。輸液量で予後は変わるか?また大量の輸液で増悪する可能性のある症状とは 近年報告されているエビデンスとしては、終末期のがん患者において輸液1日1,000mL群(63例)と100mL群(66例)を比較した結果、全生存期間について群間の有意差はなかったという多施設共同無作為化比較試験の報告がある1)。一方で腹膜転移のあるがん患者226例を対象に実施された前向き観察研究では、輸液1日1,000mL群と200mL群の比較において、1,000mL群で浮腫、腹水、胸水の増悪が認められやすかったと報告されている2)。「終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン 2013年版」3)では、終末期がん患者に対する大量輸液で増悪する可能性のある病態・症状としては以下が挙げられている:・浮腫→疼痛、倦怠感・胸水、腹水の増加→腹痛、腹部膨満感、呼吸苦、咳嗽・気道分泌の増加→呼吸苦、咳嗽、喘鳴・せん妄→身の置き所のなさ、疼痛の閾値低下・消化管分泌物の増加→嘔吐、悪心、腹痛 これらの知見から猪狩氏は、終末期がん患者に対する多量の輸液は、全生存期間の延長効果も乏しく、むしろ各種症状を増悪させる可能性があることを指摘した。症状緩和に適した輸液量と減量を検討するタイミング では、実際に症状緩和に適した輸液量とはどのくらいなのか? 日本、韓国、台湾の2,638例を対象に実施された前向き観察研究では、Good Death Scale(GDS)という評価尺度(症状緩和や死の受容といった観点から患者が穏やかな死を迎えられたかの医療者評価)を用いた評価の結果、1日250~499mLの輸液を投与された患者で有意にGDSが高かった4)。 実臨床で輸液の減量を検討するタイミングについて猪狩氏は、Palliative Performance Scale(PPS)20%以下(ADLがベッド上で全介助、食事の経口摂取は少量、意識レベルもややdrowsy)が1つの目安となるのではないかと提案。「PPS20%以下のタイミングがいま投与している輸液量がこのままでいいのかを振り返る1つのポイント。輸液を完全にやめる必要はないが、患者さんの苦痛症状や家族の希望に応じて、減量を選択肢の1つに加えていただきたい」と話して講演を締めくくった。

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わが国初の原発性手掌多汗症治療薬「アポハイドローション20%」【下平博士のDIノート】第123回

わが国初の原発性手掌多汗症治療薬「アポハイドローション20%」今回は、原発性手掌多汗症治療薬「オキシブチニン塩酸塩ローション(商品名:アポハイドローション20%、製造販売元:久光)」を紹介します。本剤はわが国初の原発性手掌多汗症の適応を有する治療薬であり、いわゆる「手汗」を抑制することで、QOLの向上や労働生産性の改善が期待されています。<効能・効果>原発性手掌多汗症の適応で、2023年3月27日に製造販売承認を取得し、6月1日より発売されています。本剤は抗コリン作用を有するため、閉塞隅角緑内障の患者、前立腺肥大など排尿障害のある患者、重篤な心疾患のある患者、腸閉塞または麻痺性イレウスのある患者、重症筋無力症の患者は禁忌となっています。<用法・用量>1日1回、就寝前に適量を両手掌全体に塗布します。1回の塗布量は、両手掌に対しポンプ5押し分が目安です。本剤は可燃性であるため、保存および使用の際には火気を避けます。<安全性>第III相比較試験において、下記の副作用が認められました。1~5%未満適用部位皮膚炎、適用部位そう痒感、適用部位湿疹、皮脂欠乏症、口渇0.1~1%未満適用部位紅斑、皮膚剥脱、口角口唇炎、尿中ブドウ糖陽性なお、重大な副作用として、血小板減少、麻痺性イレウス、尿閉(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、手のひらの皮膚から吸収され、エクリン汗腺の受容体をブロックすることで、発汗を抑えます。2.1日1回、就寝前にポンプ5押し分を目安として、両手の手のひら全体に塗布してください。3.起床後、手を洗うまでの間は、眼や塗布部位以外に触れないようにしてください。もし塗布時に眼に入った場合は、刺激や散瞳作用があるため、直ちに水で洗い流してください。4.眼の調節障害やめまい、眠気が現れることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作を行う際には注意してください。5.消化管運動が低下する恐れがあるので、消化器症状が現れた場合は使用を中止し、医療機関を受診してください。6.妊婦または妊娠している可能性のある人は医師に相談してください。<Shimo's eyes>本剤は、わが国初の原発性手掌多汗症に適応を有する薬剤です。原発性局所多汗症は、頭部・顔面、手掌、足底、腋窩に温熱や精神的負荷の有無に関わらず、日常生活に支障を来すほどの大量の発汗が生じる状態で、そのうち手掌部に発現するものが原発性手掌多汗症です。国内における原発性手掌多汗症の有病率は5.33%で、学習効率や労働生産性の低下、精神的苦痛、対人関係への悪影響など、患者のQOLが低下することがあります。「原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023年改訂版」において、原発性手掌多汗症に対する第1選択の治療法は、20%~50%塩化アルミニウム外用療法および水道水イオントフォレーシス療法とされています。しかし、塩化アルミニウム外用薬は保険適用外であり、イオントフォレーシスは患者自身による機器購入または機器を有する医療機関への通院が必要です。本剤の有効成分であるオキシブチニン塩酸塩は、エクリン汗腺に発現するムスカリンM3受容体に対して抗コリン作用を有することにより、抑汗作用を示します。本剤の代謝物であるN-デスエチルオキシブチニン(N-Desethyloxybutynin:DEO)も臨床効果に関与することが示唆されています。なお、オキシブチニン塩酸塩は、頻尿治療薬のポラキスやネオキシテープと同じ成分です。12歳以上の原発性手掌多汗症患者284例を対象にした国内第III相比較試験において、投与4週後に発汗量が50%以上改善した患者の割合は、プラセボ群と比較して本剤群で有意に高いことが認められました。本剤塗布から手を洗うまでの行動制限を可能な限り少なくするため、日中の塗布を避け、1日1回就寝前に塗布します。万一、塗布時に眼に入った場合は、散瞳作用および眼刺激性があることから、直ちに水で洗い流します。また、発汗を抑制するため、気温や湿度が高い場所や運動時などでも汗が出ず、体温が上がる恐れがあるため、熱中症対策も指導しましょう。なお、なお、1回の塗布量のポンプ5押し分は約0.5mLに相当し、最初の空打ち分を差し引くと、1本で約7日分に相当します。手掌多汗症の患者のQOL低下はアトピー性皮膚炎やざ瘡よりも大きいという報告もあります。保険適用の治療選択肢が増えることは朗報です。関連サイトHamm H, et al. Dermatology. 2006;212:343-353.

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局所進行大腸がんにおける、術前化学療法の有用性は?(NeoCol)/ASCO2023

 局所進行大腸がん初回治療の標準治療は切除と術後補助化学療法だが、ほかのがん種で広がる術前化学療法は有効なのか。この点について検討したランダム化比較第III相NeoCol試験の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、デンマーク・Danish Colorectal Cancer Center SouthのLars Henrik Jensen氏が発表した。・対象:浸潤が5mm以上と評価されたT3あるいはT4、PS0~2、18歳以上の大腸がん患者・試験群(術前化学療法群):3サイクルのCAPOX、または4サイクルのFOLFOX後に手術、術後の状態に応じて術後補助化学療法・対照群(標準治療群):先行手術、術後の状態に応じて8サイクルの術後補助化学療法・評価項目:[主要評価項目]無病生存期間(DFS)[副次評価項目]術後補助化学療法を受ける割合、全生存期間(OS)、有害事象、QOL 主な結果は以下のとおり。・2013年10月~2021年11月に3ヵ国の9施設において術前化学療法群126例と標準治療群122例が登録された。45%が女性、年齢中央値66歳、PS0が90%、ベースラインのStageはT3が73%だった。・術前術後を合わせた化学療法サイクル数中央値は、標準治療群5.9に対し、術前化学療法群は4.8だった。・術後補助化学療法を必要とした患者は、標準治療群のほうが多かった(73% vs.59%、p=0.03)。・2年時点のDFSは両群で同等であり(p=0.94)、OSも同等だった(p=0.95)。・術後合併症はイレウス(標準治療群:8% vs.術前化学療法群:4%)、吻合部漏出(同:8% vs.2%)の発生率が高かった。・Grade3以上の有害事象は下痢(標準治療群:14% vs.術前化学療法群:13%)、末梢神経障害(同:11% vs.7%)の頻度が高かったが、両群で大きな差はみられなかった。 Jensen氏は「術前化学療法は標準治療と比較して、DFSおよびOSに優位性は示されなかった。しかし、術前化学療法は、化学療法サイクル数、術後合併症、および病期の進行の点で標準療法よりも好ましい結果をもたらしていた」とした。

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気管挿管時の誤嚥回避に、レミフェンタニルは有効か/JAMA

 手術室での迅速導入気管挿管時に、誤嚥のリスクがある成人患者において、即効性オピオイドであるレミフェンタニルは神経筋遮断薬と比較して、重度合併症を伴わない初回挿管の成功に関して非劣性を達成できず、むしろ統計学的に有意に劣ることが、フランス・ナント大学のNicolas Grillot氏らの検討で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年1月3日号に掲載された。フランス15施設の無作為化非劣性試験 本研究は、フランスの15施設が参加した非盲検無作為化非劣性試験であり、2019年10月~2021年4月の期間に、患者の登録が行われた(フランス保健省の助成を受けた)。 対象は、年齢18~80歳、手術室での全身麻酔時に経口気管挿管を要し、肺誤嚥のリスク因子(術前空腹期間が6時間未満、腸閉塞、麻酔前12時間以内の嘔吐、術前12時間以内の外傷、重度の症候性の胃食道逆流など)を1つ以上有する患者であった。 被験者は、催眠薬投与直後にレミフェンタニル(3~4μg/kg)または神経筋遮断薬(サクシニルコリン[スキサメトニウム]またはロクロニウム1mg/kg)の静脈内投与を受ける群に無作為に割り付けられた。両群とも投与終了から30~60秒後に気管挿管が開始された。 主要アウトカムは、重度合併症を伴わない初回挿管の成功であった。合併症は、消化物の肺への誤嚥、酸素飽和度の低下、血行動態の重度の不安定化、持続性不整脈、心停止、重度のアナフィラキシー反応と定義された。事前に規定された非劣性マージンは7.0%。非劣性の可能性は残る 1,150例(平均年齢50.7歳[SD 17.4]、女性573例[50%])が無作為化の対象となり、1,130例(98.3%)が試験を完遂した。両群に575例ずつが割り付けられた。腸管閉塞・イレウス・嘔吐が613例(54.1%)にみられ、気管挿管の理由として最も多かったのは消化管の手技であった。 as-randomized集団(無作為化の対象となったすべての患者)では、重度合併症を伴わない初回挿管の成功の割合は、レミフェンタニル群が66.1%(374/575例)、神経筋遮断薬群は71.6%(408/575例)であり(補正後群間差:-6.1%、95%信頼区間[CI]:-11.6~-0.5、非劣性のp=0.37)、レミフェンタニル群の劣性が示された。 per-protocol集団(割り付けられた薬剤の投与を受けた全適格例)では、レミフェンタニル群の66.2%(374/565例)、神経筋遮断薬群の71.3%(403/565例)で、重度合併症を伴わない初回挿管の成功が達成された(補正後群間差:-5.7%、両側95%CI:-11.3~-0.1、非劣性のp=0.32)。 試験薬投与から挿管成功までの平均時間は、レミフェンタニル群が2.5分(SD 1.0)、神経筋遮断薬群も2.5分(SD 1.2)であった(補正後平均群間差:0.0分、95%CI:-0.1~0.2)。術後7日の時点での肺炎の発生率は、それぞれ0.5%および0.4%だった(0.1%、-0.5~0.7)。 重度の有害事象は、レミフェンタニル群が2.1%、神経筋遮断薬群は0.5%で発現した(補正後群間差:1.8%、95%CI:0.4~3.2)。また、血行動態不安定が、それぞれ3.3%(19/575例)および0.5%(3/575例)で認められた(2.8%、1.2~4.4)。 著者は、「レミフェンタニルの効果は神経筋遮断薬よりも統計学的に有意に劣っていたが、効果推定値の信頼区間が広いため、非劣性の可能性が残されており、両群の差の臨床的妥当性について結論するには限界がある」と指摘している。

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第139回 情報過多でも希少疾病の患者が孤立する理由

私のような仕事をしている者のもとにはさまざまな企業・組織からプレスリリースや記者会見などの案内が届く。一昔前はこうしたリリースなどはメディア各社が所属する記者クラブに一括して届き、それを基に各社の記者が会見などに出席することが一般的な流れだった。このため以前の本連載で私のようなフリーは、この点でかなり不利であると書いた。それでも世の連絡手段が電話中心からインターネットを介したメール中心になったことでかなり改善はしている。そのためほぼ毎日のように、どこからかはメールでリリースが届く。そうした中、医療関係のニュースリリースで最近一番増えているのは、製薬企業が主催する疾患啓発のプレス向けセミナーである。もちろん主催する製薬企業側は啓発対象疾患の治療薬を有し、セミナーの中心は対象疾患のキーオピニオンリーダー(KOL)とされる医師の講演である。ただし、一昔前と比べ、実際のセミナー内容には変化が認められる。まず、2018年に厚生労働省が策定した「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」の影響で、セミナー内で直接的に主催製薬企業の製品名が出てくることはかなり少なくなった。中にはKOLの医師が治療の実際について解説する際も、主催企業の製品も含め一般名すら言及されることなく、「A薬」「B薬」などと伏字にされていることもある。また、かつてはこうしたセミナーが取り扱う疾患は高血圧症や糖尿病などいわゆるコモンディジーズが多かったが、現在は製薬企業の新薬開発トレンドを反映し、がん、神経疾患、希少疾患などのケースが多い。とくに国内での患者数が数百人という希少疾患のプレスセミナーは激増と言ってもいい。しかも、この手のケースでは専門医に加え、実際の患者さんがセミナーに登壇することもある。正直、私のように医療をテーマとして取材する記者も数多くの希少疾患すべてに関して詳細な知識があるわけでもなく、こうした機会にはなるべく出席しようと思って、足しげく通っている。先日も製薬企業が主催したある希少疾患のセミナーに出席した。その希少疾患とは「短腸症候群」である。短腸症候群とは先天的あるいは後天的な事情で小腸が通常より短くなっている状態のこと。具体的な原因には小腸軸捻転症や壊死性腸炎、クローン病などで小腸を切除したなどが挙げられる。私もこの主催企業の開発品一覧でこの疾患名を見たことはあったが、具体的にどのようなものであるかはほとんど知識がなかった。KOL医師の説明によると「実は明確な学術的定義はない」という点がまず驚きだった。ただ、海外などでは小腸の75%以上を切除していることなどを要件とし、日本国内では障害者手帳交付基準の小腸障害として、小腸の長さが成人で1.5m未満、小児で75cm未満という基準もあるという。小腸が短いため、食事による生命維持や成長に不可欠な栄養吸収が不十分になり、頻回な下痢、脱水、体重減少などに悩まされる。経腸栄養剤や中心静脈栄養で不足分の栄養を補うことが治療の中心となる。外科的な腸管延長手術や一部の内科的な治療があるものの、現時点では限界がある。再生医療も検討され始めたばかりだ。そして静脈管理が長期化すると腸管不全関連肝障害やカテーテル関連血流感染症などで命を落とすこともある。セミナーでは患者会「一般社団法人 短腸症候群の会」の代表理事である高橋 正志氏が発言した。高橋氏は中学1年生以降に絞扼性イレウスを繰り返して4回目の入院で小腸壊死が発覚し、小腸切除手術を受け、短腸症候群となった。現在は経腸栄養療法や下痢、低マグネシウム血症の対症療法を受け続けている。就労を目指したものの、非正規で週1~2回のアルバイトをして生活を続けているという。2010年からブログを通じて短腸症候群の情報発信や情報収集を始め、2014年に現在の患者会を立ち上げた。患者会立ち上げのきっかけについて高橋氏は次のように語った。「とにかく情報がなかったというのが一番の理由。自身が住んでいたのは半ば医療過疎のような地域で医師も短腸症候群という名前しか知らなかった状態。これからどうなっていくのか、どんな治療をすれば良くなっていくのか全然わからず、とにかく情報が欲しかった。今から30年前のことでインターネットもそれほど発達しておらず、調べる方法もなかった。そうした中で自分なりに調べてきたが、その後体調が悪化し、学業もあきらめざるを得ず、社会参加のきっかけとも考えてブログを開始した」高橋氏が語ったことは希少疾患では現在でよくありがちなことだろう。もっとも近年はインターネットの発展とともに希少疾患の情報も入手しやすくはなっている。実は今回のセミナーに当たって、予習的に私はGoogle検索をかけていた。そこで1ページ目に出てきた検索結果は、上から順に製薬会社A社(今回のセミナーの主催会社)の一般生活者・患者向け疾患啓発ホームページ、MSD(旧メルク)マニュアル、A社の短腸症候群治療薬ホームページ、栄養療法食品会社B社ホームページ、国立研究開発法人 国立成育医療研究センター・小児慢性特定疾病情報センターホームページ、A社の医療従事者向けホームページである。希少疾患の情報が得やすくなったとは言われているが、この検索結果に「これしかないの?」とやや驚いた。私が過去に検索を試みた希少疾患の中でも極めつけに情報が少ない印象だったからだ。より細かいことを言えば、検索結果1ページ目でほぼ中立的と言えるのはMSDマニュアルと小児慢性特定疾病情報センターのみである。もっとも私はA社やB社のページが偏っているというつもりもない。たとえば、筆頭に出たA社の患者向けホームページは図や平易な表現を使用し、検索結果一覧に出てきたホームページの中では最も患者が読みやすいと言っても過言ではない。だが、ここでの問題は逆にA社やB社のように短腸症候群の患者向けの製品を有する企業がない希少疾患の場合、患者が自分の疾患について知る手段はさらに限定されるということ。そして中立的と言える2つのホームページは専門用語が数多く登場し、お世辞にも患者にわかりやすいとは言えない。結局、治療手段が少なければ少ないほど、情報面からも患者は追い込まれてしまうことになる。高橋氏は患者会を結成した結果、「ほかの患者もかなり孤立しているというか、周りに同じ患者がいないということでかなり悩み、苦労していることがわかった」とも話した。私はセミナーの質疑応答の際に高橋氏に短腸症候群になった当初(90年代前半)はどのようにして情報収集していたのかを尋ねてみた。すると次のような答えが返ってきた。「担当の先生があまり詳しくなかったので、できたこととしては図書館で資料検索して、(自分が在住する)県内の図書館同士の連携貸し出しで、少しでも専門書と思われるものを取り寄せて読んでみるということをしていた。中には『この本なら大丈夫かな』と思って取り寄せたら、先生の単なるエッセーだったということもあった」一方、現在はどうか?「今はインターネットで先生方が利用するような情報を入手できるようになったので、語学の問題が何とかなれば海外の論文まで見ることができるようになったので、その辺はかつてとはまるっきり違う。ただし、インターネットの情報は玉石混交が甚だしいので、その辺を見極める目をきちんと養っておかないと簡単に迷ってしまうのではないかと思う」この変化をどう捉えるかどうかは人によって異なるかもしれない。私個人は少なくとも日常生活ですらさまざまな困難を抱える患者が語学などの努力をしなければ、自分の疾患やその治療の最新情報を得られないというのは必ずしも喜ばしいとばかりは言えないのではないかと考えてしまう。今回のセミナーでは高橋氏を含む3人の短腸症候群の患者さんが登場したが、一様にメディアが短腸症候群の問題を報じることへの期待が高いこともひしひしと感じた。これは今回の短腸症候群のように治療選択肢が限られ、そうした治療を欠かさず続けてもなお、一般人にとってごく当たり前の日常と思われがちな就学・就労、結婚などが思うに任せないことが多い疾患ではなおのことだ。彼らがこうした日常生活を送るためには社会の受容が大きな意味を持つため、情報拡散力のあるメディアへの期待が高いことはよくわかる。しかし、メディア界に身を置くものにとっては、インターネット中心に移行しつつある現在特有の限界も感じている。紙メディア中心の時代と違って今はページビュー(PV)という形で読者の反応がリアルタイムでわかり、それゆえにメディアはPVが取れる、今風で言うバズるテーマに偏りがちな傾向は年々強くなっている。ネットメディアではまさにこのPVが編集者や執筆者の評価に直結してしまう。その結果、かつて以上に希少疾患のように患者数、周囲で身近に感じる関係者が少ないテーマは置き去りにされがちな危険性がある。実際、医療をテーマに一般向けにも執筆する自分が編集者と企画相談をする際、企画採用のカギを握るのは患者数であることも少なくないからだ。その意味で一般にあまり馴染みのない疾患を少しでも取り上げる機会は、実を言うとそうした疾患に著名人が罹患した時やその結果として亡くなった時である。実例を挙げれば、先日亡くなったプロレスラー・アントニオ猪木氏の死因は、国内患者数が2,000人に満たない希少疾患の全身性アミロイドーシスだったが、その際は各メディアがこの疾患のことを取り上げた。もっともそうしたメディアの“手法”には「死の商人」的な批判も存在する。あれやこれやと考えれば考えるほどメディア側も打つ手が限られてくる。かと言って、公的情報の充実を求める声を上げるだけではかなり無責任になる。理想を言えば、ある意味採算を度外視できる公的サイトと、われわれ一般向けの伝え手とがコラボレーションできれば最も望ましい姿なのだが、公的機関と民間が手を携えるというのは思っているより高い壁がある。その意味では希少疾患の患者がメディアに期待したいのと同じくらい、この領域の一般向け報道ではメディア側も誰かの助けが欲しいと思う瞬間は少なくない。希少疾患の報道という重い宿題をどう解決していくべきなのか?実はここ最近、ひたすら悩み続けている。

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「ブスコパン」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第80回

第80回 「ブスコパン」の名称の由来は?販売名ブスコパン®錠10mg※ブスコパン注20mgは錠剤のインタビューフォームと異なるため、今回は情報を割愛しています。ご了承ください。一般名(和名[命名法])ブチルスコポラミン臭化物 (JAN)効能又は効果下記疾患における痙攣並びに運動機能亢進胃・十二指腸潰瘍、食道痙攣、幽門痙攣、胃炎、腸炎、腸疝痛、痙攣性便秘、機能性下痢、胆のう・胆管炎、胆石症、胆道ジスキネジー、胆のう切除後の後遺症、尿路結石症、膀胱炎、月経困難症用法及び用量通常成人には1回1~2錠 (ブチルスコポラミン臭化物として10~20mg) を1日3~5回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由(原則禁忌を含む)【禁忌(次の患者には投与しないこと)】(1)出血性大腸炎の患者[腸管出血性大腸菌(O157等)や赤痢菌等の重篤な細菌性下痢患者では、症状の悪化、治療期間の延長をきたすおそれがある。](2)閉塞隅角緑内障の患者[抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある。](3)前立腺肥大による排尿障害のある患者[更に尿を出にくくすることがある。] (4)重篤な心疾患のある患者[心拍数を増加させ、症状を悪化させるおそれがある。](5)麻痺性イレウスの患者[消化管運動を抑制し、症状を悪化させるおそれがある。](6)本剤に対し過敏症の既往歴のある患者※本内容は2021年12月1日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2019年7月(改訂第6版)医薬品インタビューフォーム「ブスコパン®錠10mg」2)サノフィe-MR:製品情報

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4週に1回の投与で片頭痛発作を予防する「アイモビーグ皮下注70mgペン」【下平博士のDIノート】第85回

4週に1回の投与で片頭痛発作を予防する「アイモビーグ皮下注70mgペン」今回は、ヒト抗CGRP受容体モノクローナル抗体製剤「エレヌマブ(遺伝子組換え)(商品名:アイモビーグ皮下注70mgペン、製造販売元:アムジェン)」を紹介します。本剤は、4週間に1回の投与で、片頭痛発作の発症を抑制することが期待されています。<効能・効果>本剤は、片頭痛発作の発症抑制の適応で、2021年6月23日に承認され、8月12日に発売されました。片頭痛発作の前兆の有無にかかわらず月に複数回以上発現している、または慢性片頭痛であることを確認したうえで本剤の適用を考慮します。なお、非薬物療法、片頭痛発作の急性期治療などを適切に行っても日常生活に支障を来している患者にのみ投与できます。<用法・用量>通常、成人にはエレヌマブ(遺伝子組換え)として70mgを4週間に1回皮下投与します。なお、本剤投与開始後3ヵ月が経過しても症状の改善が認められない場合や、頭痛発作発現の消失・軽減などにより日常生活に支障を来さなくなった場合は、本剤の投与中止を考慮します。<安全性>片頭痛患者を対象とした国内第III相試験において、副作用はプラセボ群で3.1%(4/131例)、本剤投与群で8.5%(11/130例)が認められました。主な副作用は、便秘、注射部位反応(紅斑、そう痒感、疼痛、腫脹など)、傾眠などでした。なお、重大な副作用として、発疹、血管浮腫およびアナフィラキシーを含む重篤な過敏症反応と重篤な合併症(腸閉塞、糞塊、腹部膨満およびイレウスなど)を伴う便秘が海外で報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、片頭痛に関与するとされる神経ペプチドの受容体をブロックすることで、片頭痛発作の発現を予防します。2.発熱、発疹、まぶたや口唇周囲の腫れ、呼吸困難など、アナフィラキシーが疑われる症状が現れた場合は、すぐに報告・受診してください。注射後1週間以上経過してから発現することもあります。3.注射した部位に、赤み、かゆみ、痛み、腫れなどの症状が現れることがあります。これらの症状が長引く場合は、ご相談ください。4.お薬のせいで眠くなることがあります。車の運転や機械の操作、高所での作業などを行う場合はご注意ください。5.本剤の使用中に、血圧が上昇したり高血圧が悪化したりすることがあります。自宅で血圧計を用いるなど、血圧の変動に注意してください。6.まれに重い便秘症状が現れることがあります。とくに初回投与後は便通の変化に注意し、便秘症状が続く場合には早めにご連絡ください。<Shimo's eyes>片頭痛が起きる成因として、三叉神経から放出された神経ペプチドであるCGRPがCGRP受容体に結合することで、血管が過度に拡張して炎症が波及して片頭痛発作が起こるという説が有力です。予防にはロメリジン、バルプロ酸、プロプラノロール、アミトリプチリン、ベラパミルなどが用いられています。効果を得られない患者も少なくありませんでしたが、抗体医薬品が登場したことにより、片頭痛の治療選択肢が広がりました。本剤は、世界で初めて承認されたカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)関連の抗体医薬品であり、わが国では2021年4月にガルカネズマブ(商品名:エムガルティ)、同年8月にフレマネズマブ(同:アジョビ)が発売されました。この2剤はCGRPに結合して活性を阻害しますが、本剤はCGRPの受容体に直接作用し、CGRPの結合を防いでシグナル伝達を阻害します。CGRP関連薬剤は4週間に1度(フレマネズマブは4週間に1度あるいは12週間に1度)の皮下投与で予防効果を発揮します。なお、すでに発現している片頭痛発作を緩解する薬剤ではないため、本剤投与中に発作が発現した場合には、必要に応じてトリプタンなどの急性期治療薬を使用します。本剤の注射針カバーは天然ゴム(ラテックス)を含み、アレルギー反応を起こす恐れがあるため、投与に際してはアレルギー歴の確認が必要です。デバイスはオートインジェクターであり、外箱を冷蔵庫から取り出し、30分以上待って室温に戻してから使用します。現状は自己注射が認められておらず、原則として外来受診時の投与となります。主な副作用として、便秘、注射部位反応、傾眠などが報告されています。便秘の既往歴を有する患者および消化管運動低下を伴う薬剤を併用している患者では発現リスクが高くなる恐れがあるので注意が必要です。参考1)PMDA 添付文書 アイモビーグ皮下注70mgペン

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便秘からがんを疑うアラームサインを読み取る【Dr.山中の攻める!問診3step】第6回

第6回 便秘からがんを疑うアラームサインを読み取る―Key Point―大腸がんを疑うアラームサインに注意しよう薬剤が便秘の原因となっていることは多い下剤を処方する際、「酸化マグネシウム」は腎機能低下時に高マグネシウム血症を起こすので要注意!症例:76歳男性主訴)排便困難現病歴)12日前から便が突然出なくなった。4日前に近医で浣腸をしてもらったが排便なし。酸化マグネシウムと大腸刺激性下剤の処方を受けたが、やはり排便がないため当院を受診した。嘔吐はあるが腹痛はない。既往歴)老人性難聴薬剤歴)定期内服薬なし生活歴)たばこ:10本/日 x 55年間、酒:1合/日身体所見)意識清明、体温36.7℃、血圧120/50mmHg、心拍数92/分、SpO2:95%[室内気]直腸診を施行したところ、肛門から8cm、12時方向にカリフラワー様の約4×4cmの腫瘤を触知し易出血性であった。結局、直腸癌と診断され人工肛門増設のため緊急手術となった。大腸イレウスは珍しいが、穿孔すれば腹膜炎となるので緊急処置が必要となることも念頭に入れておくべき。◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!大腸がんを疑うアラームサイン1) ―大腸がんの可能性はないのか鉄欠乏性貧血体重減少便潜血陽性血便便の狭小化高齢者の急性便秘大腸がんの家族歴50歳以上で大腸内視鏡検査を受けたことがない【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】二次性の便秘を考える薬剤は二次性便秘の最大の原因である。薬剤歴の正確な聴取が大切である便秘を起こす薬剤2)3)はこちら降圧薬(カルシウム拮抗薬、利尿薬)、麻薬抗コリン薬(ブチルスコポラミン、抗うつ薬、抗精神病薬、抗パーキンソン病薬)抗ヒスタミン薬、NSAIDs、鉄剤高齢者の鉄欠乏性貧血は消化管の悪性腫瘍をまず考える便の狭小化+腹痛+液状便はS状結腸から直腸にかけての高度狭窄が示唆される症状である。大腸内視鏡の前処置で腸閉塞や腸管穿孔をきたす可能性があるため、腹部レントゲン検査と腹部CT検査を検査前にオーダーする甲状腺機能低下症、自律神経障害を起こす糖尿病やパーキンソン症候群、低カリウム血症、高カルシウム血症、うつ病、妊娠は便秘の原因となる【STEP3】治療1)を検討しよう毎日排便がないのは異常であるというイメージが TVコマーシャルなどによって作られているが、週に3回または1日3回の排便は正常である週3回以上排便があれば、病的ではないことを伝える。水分と食物繊維を十分にとる。朝食後15分間はトイレに座り、力まずに排便するよう指導する。改善がなければ、ポリエチレングリコール(商品名:モビコール)または酸化マグネシウムを処方する。酸化マグネシウムは腎機能低下時に高マグネシウム血症(嘔気・嘔吐、血圧低下、徐脈、筋力低下、意識障害)を起こす。効果が不十分ならルビプロストン(商品名:アミティーザ)を少量から検討する。大腸刺激性薬剤(センノシド、ピコスルファート)は習慣性や依存性が強いので頓用で用いる<参考文献・資料>1)山中 克郎企画. 総合診療 ヤブ化を防ぐ!総合診療基本のき. 医学書院.2019. p.1089-1091.(中野弘康 便秘)2)John P, et al. MKSAP18 Gastroenterology and Hepatology. 2018 .p.35-38.3)日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会編. 慢性便秘症診療ガイドライン. 2017.

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全身性ALアミロイドーシスにダラキューロ承認/ヤンセンファーマ

 2021年8月、ヤンセンファーマは抗CD38抗体「ダラキューロ配合皮下注(一般名:ダラツムマブ(遺伝子組換え)・ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)、以下ダラキューロ」について、全身性ALアミロイドーシス治療における承認を取得したことを発表した。今回の承認は、未治療患者を対象に、ボルテゾミブ+シクロホスファミド+デキサメタゾン(CBD)療法に対するダラキューロの上乗せ効果を評価した第III相試験ANDROMEDAの結果に基づいたもの。同社は9月2日にメディアセミナーを実施し、日本赤十字社医療センター骨髄腫アミロイドーシスセンターの鈴木 憲史氏と石田 禎夫氏が、病態の特徴や新薬による治療の展望について講演を行った。 最初に鈴木氏が全身性ALアミロイドーシスの疾患の病態について講演を行った。ALアミロイドーシスは血中にアミロイドと呼ばれる異常タンパク質が発現し、全身のさまざまな臓器に沈着して機能障害を起こす病気の総称で、死因は心臓死が多くを占める。日本では年間530人ほど、人口100万人あたり4.2人が罹患し、国内の総患者数は3,000人程度とされる指定難病である。 鈴木氏は「進行すると予後は悪く、透析が必要となる患者も多い。早期診断、早期治療が非常に重要だが、多くの医師は一生に一人の患者を診るかどうかで見逃されがち。確定診断までに診察した医師の数が5名以上の患者が30%いるなど、診断が遅れて悪化するケースが多い」と説明した。 さらに新規罹患者数について「指定難病の登録数は530人ほどだが、診断されずにいる人や診断されないまま亡くなる人もいると思われ、実際は年間800人ほどではないか」とした。「初診の主訴はむくみや舌肥大であることが多く、整形外科、循環器内科、消化器内科、腎臓内科、そして一般内科医にこの疾患を知ってもらい、早期発見につなげたい」とし、下記のような原因不明の症状がある患者には、血清フリーライトチェーンの検査を行って欲しい、と述べた。【診断時の主な臨床症状】心臓/うっ血性心不全、不整脈腎臓/尿蛋白、ネフローゼ症候群肝臓/肝肥大、肝不全消化管/難治性下痢、下血消化管穿孔イレウス神経/低血圧、神経障害その他/舌肥大、眼周囲の内出血【診断確定には】・骨髄で単クローン形式細胞の証明、腹壁脂肪組織と骨髄生検でのアミロイド検出、血清フリーライトチェーン(FLC)のκ/λ比で確定 続いて石田氏が、「従来の全身性ALアミロイドーシスの治療はメルファラン+デキサメタゾンまたは自家末梢血幹細胞移植で、移植不適の患者にできることは限られていた。ANDROMEDA試験の結果では、心アミロイドーシスや高齢者など予後不良が予測される群でも高い有効性が報告されており、さらに自家末梢血幹細胞移植における完全奏効(CR)+部分奏効(VGPR)率は70%前後なのに対し、ダラキューロ上乗せ群は79%と同等以上で、今後は日本を含めた世界のALアミロイドーシスの移植不適患者に対する標準療法はCBD+ダラキューロになり、移植適応患者にも導入療法として検討されるだろう」とまとめた。

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総合内科専門医試験オールスターレクチャー 消化器(消化管)

第1回 ピロリ菌感染症関連第2回 消化管悪性腫瘍第3回 消化管出血 腹部緊急疾患第4回 消化管機能性疾患第5回 感染症 炎症性腸疾患第6回 遺伝性疾患 好酸球性胃腸症 内分泌 総合内科専門医試験対策レクチャーの決定版登場!総合内科専門医試験の受験者が一番苦労するのは、自分の専門外の最新トピックス。そこでこのシリーズでは、CareNeTV等で評価の高い内科各領域のトップクラスの専門医11名を招聘。各科専門医の視点で“出そうなトピック”を抽出し、1講義約20分で丁寧に解説します。キャッチアップが大変な近年のガイドラインの改訂や新規薬剤をしっかりカバー。Up to date問題対策も万全です。消化器の消化管については、公立豊岡病院の宮垣亜紀先生がレクチャー。消化管は内視鏡画像の診断がポイント。豊富な症例画像を使って、頻出の内視鏡検査問題を徹底的にトレーニングします。※「アップデート2022追加収録」はCareNeTVにてご視聴ください。第1回 ピロリ菌感染症関連消化管は、内視鏡画像診断がポイント。非専門医にとっては普段見慣れない内視鏡画像ですが、試験に出題される疾患はある程度絞られているので、それを押さえれば攻略できます。第1回は、胃十二指腸潰瘍や胃がんのリスクとなるヘリコバクター・ピロリ菌。ピロリ菌に起因する疾患は、胃がんや潰瘍だけではありません。ピロリ菌感染関連疾患は、内視鏡で胃炎を証明し、ピロリ菌を証明するための各種検査も覚えておくことが重要です。第2回 消化管悪性腫瘍消化管悪性腫瘍には、胃がん、大腸がん、食道がん、消化管間質腫瘍GISTがありますが、共通して問われやすいのは、リスクファクター、内視鏡所見の診断、疾患に関する知識です。胃がんは内視鏡所見から深達度と組織型を診断し、内視鏡的粘膜下層剥離術の適応を判断。近年のトピックスとして、バレット食道がんの報告が増えています。粘膜下腫瘍の形態をとるGISTは、どの消化管でも起こりえます。超音波内視鏡やCTで診断します。第3回 消化管出血 腹部緊急疾患消化管出血と、試験に出題されやすい腹部緊急疾患について、身体所見、検査、治療を整理します。上部消化管出血の中でも緊急性が高いのは静脈瘤出血。静脈瘤結紮術で治療します。下部消化管出血で最もコモンな疾患は虚血性腸炎と大腸憩室出血。X線・CTで特徴的な画像所見を示すS状結腸軸捻転。腸閉塞とイレウスは概念を混同しないように注意。生の海産物を摂取した後の激烈な腹痛はアニサキス症を疑います。第4回 消化管機能性疾患機能性疾患の中でもよく出題される食道アカラシア。見た目ではっきりわかる腫瘍があるわけではないので、内視鏡検査では見つかりにくく、食道造影やマノメトリーという検査が有用です。新たな治療法として、経口内視鏡的括約筋切開術POEMが注目されています。機能性ディスペプシアと過敏性腸症候群は器質的疾患の除外が重要。胃食道逆流症にはびらん性と非びらん性があり、同じ薬剤でも効果に差があります。第5回 感染症 炎症性腸疾患多岐にわたる腸管感染症から、感染性腸炎、アメーバ性大腸炎、抗菌薬起因性腸炎について解説します。感染性腸炎は、抗菌薬が必要な状況の見極めがポイント。内視鏡的所見が特徴的なアメーバ性大腸炎。潰瘍の周囲にタコいぼ様びらんが見られます。日常臨床でもよくある潰瘍性大腸炎は、重症度に応じて薬剤か手術を選択。非連続性の全層性の肉芽腫性炎症が起きるクローン病は、狭窄を考慮しながら適した画像検査を選択します。第6回 遺伝性疾患 好酸球性胃腸症 内分泌好酸球性消化管疾患は、原因がまだ明らかになっていないアレルギー疾患です。遺伝性疾患では、大腸にポリープが多発する家族性腺腫性ポリポーシスは、放置するとがん化するため、大腸全摘が必要です。Peutz-Jeghers症候群は過誤腫性ポリープで、こちらはほとんどがん化しません。毛細血管拡張の画像所見が特徴的なオスラー病も覚えておきましょう。消化管内分泌のトピックスとして、神経内分泌腫瘍のガストリノーマについて確認します。

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