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P3-12-01.Impact of treatment on quality of life (QOL) and menstrual history (MH) in the NSABP B-36

NSABP B-36におけるQOLと月経歴への治療の影響: リンパ節転移陰性乳がんにおけるFECとACを比較する第III相試験からNSABP B-36でFEC-100とACに生存率の差がないことが口演で示されたが、ポスターセッションにて毒性や無月経、QOLの違いについての評価が掲示されていた。QOL評価は、FACT-B、治療に特徴的な症状のチェックリスト、SF-36の中のvitality scaleによって行った。評価時期はベースライン、4サイクル目、6、12、18、24、30、36ヵ月目の来院時である。サンプルサイズは、QOLについては1332例、生理周期については916例であった。FACT-B Trial Outcome Index(TOI)、Symptom severity checklist summary score(SCLSUM)、vitality score(VIT)について、ベースラインのスコア、術式、ホルモン受容体で調整し、2群の比較を行った。化学療法後の無月経の定義は18ヵ月の評価のうち12ヵ月以内に出血がないことであり、手術とホルモン受容体の有無で調整した。結論として、18ヵ月後の無月経の頻度はFEC-100で高く(67.0%>58.8%)、ホルモン受容体陽性(内分泌療法の使用)と関連し、NSABP B-30の結果を担保するものであった。FEC-100は6ヵ月の時点でACよりもQOLが不良だったが、その後12ヵ月以降は差がなかった。症状はいずれも化学療法によって増加し、36ヵ月の時点でもベースラインまでの回復はみられなかった。QOL、vitality、症状は12ヵ月の時点で2群間に差はなかったが、化学療法後に子供を希望する若年者にはACのほうが好ましい、と結んでいる。QOL評価をみるときに注意する問題はSOFT試験のQOL評価(S3-09)でも述べたが、レスポンスシフト、最小重要差、評価項目と評価法の適切さについて常に意識しながらデータを解釈する必要がある、ということを付け加えておきたい。【注】AC:ドキソルビシン+シクロホスファミドFEC:フルオロウラシル+エピルビシン+シクロホスファミド

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S3-02. NSABP B-36 A randomized phase III trial comparing six cycles of 5-fluorouracil (5-FU), epirubicin, and cyclophosphamide (FEC) to four cycles of adriamycin and cyclophosphamide (AC) in patients with node-negative breast cancer(Geyer Jr CE, USA)

NSABP B-36:リンパ節転移陰性乳がんにおいて6サイクルのFECと4サイクルのACを比較する無作為化第III相試験投与量はAC(60/600)x4、FEC(500/100/500) x6である(図1)。もともとはCOX2阻害剤であるセレコキシブの効果もみるための2x2要因試験であった。しかし、心毒性の問題からセレコキシブの投与は中止となり、2群として試験は継続された。主要評価項目はリンパ節転移陰性乳がんにおいてFEC-100がACよりDFSの延長において優れているかを評価するものである。副次的評価項目はOSの延長、毒性の比較、QOLの違いをみることである。統計学的仮説は、5年のDFSがACとFEC-100とで84.7%から89.2%に改善することをみるのに0.75のハザード比を検出することである。そのために80%の検出力で385のイベントが必要とされた。DFSの違いはタイプ1エラーレベル両側α=0.05で検定する層別化log rankテストで、ハザード比と信頼区間はCoxハザードモデルで評価した。【図1】図1を拡大する2014年1月31日の時点で、400のDFSイベントが報告されため、試験を終了し、予定された分析を行った。中央観察期間は82.8ヵ月(7年)であった。年齢は50歳未満が約40%、ホルモン受容体陰性が約35%、腫瘍径2cm未満が50.0%、グレード3が43~44%であった。人種は白人が約85%であった。乳房部分切除術は68%で施行され、トラスツズマブは10~11%で投与された。グレード3~4の毒性発現率は倦怠感、好中球減少性発熱、感染、口腔粘膜炎、血小板減少、血栓塞栓のイベントはいずれもFEC-100で高かった。化学療法中の死亡はACで2例(腸炎、その他の死)、FEC-100で5例(好中球減少性発熱、血栓塞栓症、心内膜炎、その他の突然死、その他の死)に認められた。DFS、OSともにまったく差を認めなかった(図2a,b)。本試験でのACのDFSは82.3%と仮説通りであり、FEC-100でも82.1%と数値上もまったく変化をもたらさなかったことから、リンパ節転移陰性陽性にかかわらず、この結果は十分われわれに意義をもたらすものである。遠隔再発もACで66例(4.8%)、FEC-100で63例(4.7%)と同等であった。サブセット解析ではERの状況で傾向に差があるが、薬剤の性質が類似していることから、この違いを意味のあるものと捉えることはできない(図3)。【図2a】図2aを拡大する【図2b】図2bを拡大する【図3】図3を拡大するつまりA(ドキソルビシン)をE(エピルビシン)にしても、投与量を増やしても、サイクル数を増やしても治療効果は上がらないということである。さて、ここで過去の報告を簡単に整理してみよう。多くのデータからAと同等の効果を及ぼすにはEは1.2から1.5程度(おそらく1.5)の増量が必要である。すなわちA60とE90がほぼ同等と推測される。一方、うっ血性心不全5%の発生頻度は、Aでは累積投与量400(Cancer. 2003; 97: 2869-2879.)、Eでは920(J Clin Oncol. 1998; 16:3502-3508.)となっているが、評価基準も対象も異なっており、安全性に関してもEがAより優っているとは安易に判断しないほうがよい。ドキソルビシンの投与量による効果の違いCALGB8541: N+において、CAFの投与量は300/30/300、400/40/400よりも600/60/600が治療効果が高い(J Natl Cancer Inst. 1998; 90: 1205-1211.)。CALGB9344: N+において、ACの投与量を60/600、75/600、90/600と上げても治療効果は変わらない(J Clin Oncol. 2003; 21: 976-983.)。Eも同様に限界を超えるとは通常考えにくいことから、E90程度が至適投与量と考えたほうがよいだろう。過去には主にCMFとの比較において、アントラサイクリンの投与量による効果が検証されているが、注意しなければならないのは、治療効果はconventional CMF>iv CMFなので、あくまでconventional CMFと比較したデータをみなければならない(conventional CMFは、classical CMF、oral CMFとも呼ばれている)。ドキソルビシンのサイクル数による効果の違いCALGB40101:N0から3ケ(N0が94%を占める)において、AC4サイクルと6サイクルで4年のRFSは変わらない(J Clin Oncol. 2012; 30: 4071-34076.)。本試験では単独のパクリタキセル(80mg/m2 毎週投与または175mg/m2 2週毎投与)でも4サイクルと6サイクルで比較しており、やはり全く差はなかった。ドキソルビシンとCMFの比較NSABP B-15: N+において、3年でAC (60/600) x4 =conventional CMF(J Clin Oncol. 1990; 8: 1483-1496.)。SWOG 8897: ハイリスクのN0において、CAF(60) x6 = conventional CMF.(J Clin Oncol. 2005; 23: 8313-8321.)。エピルビシンとCMFの比較(エピルビシンの投与量比較を含む)FASG05: N+において、10年で FEC (500/50/500) x6 < FEC (500/100/500) x6 (J Clin Oncol. 2005; 23: 2686-2693.)。N+において、4年でEC (60/500) x8 < EC (100/830) x8 = conventional CMF (J Clin Oncol. 2001; 19: 3103-3110.)。ICCG: N+ において、4.5年で FEC (600/50/600) x6 = conventional CMF (J Clin Oncol. 1996; 14: 35-45.)。NCIC.CTG MA.5: N+において、10年でCE(60x2)F = conventional CMF(J Clin Oncol. 2005; 23: 5166-5170.)。※ HER2過剰発現別にみると、HER2陰性では差がないが、陽性では有意差あり(OSにおける多変量解析)(Clin Cancer Res. 2012; 18: 2402-2412.)。Dose denseItaly: N0〜N+において、FEC(600/60/600) x6 2 weeks = 3 weeks(J Natl Cancer Inst. 2005; 97: 1724-1733.)。※ HER2過剰発現別にみると、HER2陰性で差ないが、陽性では有意差あり(OSにおける多変量解析)(Br J Cancer. 2005; 93: 7-14.)。またコントロール群がそもそも標準ではなく、何ら参考にならない試験もある。例…GEICAM: N0〜N+において、3-week FAC(500/50/500)x6 > 3-week CMF(600/60/600) x6 (Ann Oncol. 2003; 14: 833-842.)。このようにみてくると、乳がん術後補助療法においてエピルビシンがドキソルビシンに優っているとする根拠はそもそも乏しかったことがわかる。エピルビシンのコストはドキソルビシンよりも高いため、私たちはこのことを十分踏まえながら薬剤選択を行う必要があるだろう。【注】AC:ドキソルビシン+シクロホスファミドFEC:フルオロウラシル+エピルビシン+シクロホスファミドCMF:シクロホスファミド+メトトレキサート+フルオロウラシル

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エンテカビル、R-CHOP後のHBV関連肝炎を0%に/JAMA

 びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)で、R-CHOP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン)療法を受ける患者に対し、エンテカビル(商品名:バラクルード)の投与は同療法後のB型肝炎ウイルス(HBV)関連肝炎の予防効果が高いことが判明した。発生率は0%に抑制できたという。中国・中山大学がんセンターのHe Huang氏らが、第III相無作為化非盲検試験の結果、報告した。JAMA誌2014年12月17日号掲載の報告より。エンテカビルvs. ラミブジンをR-CHOP療法終了後6ヵ月後まで投与 試験は2008年2月~2012年12月にかけて、中国10ヵ所の医療機関を通じて、R-CHOP療法が予定されている未治療のDLBCL患者121例について行われた。 研究グループ被験者を無作為に2群に分け、エンテカビル(0.5mg)またはラミブジン(商品名:ゼフィックス、100mg)を、1日1回、R-CHOP療法1週間前から同療法終了後6ヵ月後まで投与し、HBV再活性の予防効果を比較した。 主要有効性エンドポイントは、HBV関連肝炎の罹患率だった。副次エンドポイントは、HBV再活性化率、肝炎発生によるR-CHOP療法の中断、治療関連の有害事象発生などだった。HBV再活性化率もラミブジン群30%に対しエンテカビル群6.6% 追跡期間最終日は2013年5月25日、同中央値は40.7ヵ月だった。 結果、HBV関連肝炎の発生率は、ラミブジン群で60例中8例(13.3%)だったのに対し、エンテカビル群では61例中0例(0%)と有意に低率だった(群間差:13.3%、95%信頼区間:4.7~21.9%、p=0.003)。 また、HBV再活性もラミブジン群が30.0%だったのに対し、エンテカビル群は6.6%と大幅に低率だった(p=0.001)。化学療法中断となった割合もそれぞれ18.3%、1.6%とエンテカビル群で有意に低率だった(p=0.002)。 一方、治療関連有害事象の発生率はラミブジン群30.0%、エンテカビル群24.6%で、両群差は有意ではなかった(p=0.50)。エンテカビル群の主な同事象の報告は、悪心9.8%、めまい6.6%、頭痛4.9%、疲労感3.3%だった。

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リツキシマブ維持療法、ANCA関連血管炎に有効/NEJM

 抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎の治療において、リツキシマブ(商品名:リツキサン)はアザチオプリン(同:アザニン、イムラン)に比べ良好な寛解維持をもたらすことが、フランス・コシャン病院のL. Guillevin氏らが行ったMAINRITSAN試験で示された。主なANCA関連血管炎として、多発血管炎性肉芽腫症(以前はウェゲナー肉芽腫症と呼ばれた)、顕微鏡的多発血管炎、腎限局型ANCA関連血管炎があり、患者の多くはシクロホスファミドとグルココルチコイドの併用療法により寛解に至るが、アザチオプリンやメトトレキサートによる維持療法を行った場合でも、依然として再燃率が高い。リツキシマブ維持療法の有効性は示唆されているが、いまだ十分な検討は行われていない。NEJM誌2014年11月6日号掲載の報告。リツキシマブとアザチオプリンの2つの、維持療法レジメンを無作為化試験で評価比較 MAINRITSAN試験は、ANCA関連血管炎患者に対するリツキシマブによる維持療法の有用性を評価する非盲検無作為化試験。対象は、年齢18~75歳の多発血管炎性肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎、腎限局型ANCA関連血管炎の新規診断または再燃例で、シクロホスファミドのパルス療法とグルココルチコイドの併用により完全寛解が得られた患者であった。 被験者は、リツキシマブ500mgを0、14日、6、12、18ヵ月に投与する群またはアザチオプリンの連日投与を22ヵ月(1~12ヵ月:2mg/kg/日、13~18ヵ月:1.5mg/kg/日、19~22ヵ月:1mg/kg/日)行う群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、28ヵ月時の重症再燃率とした。重症再燃は、疾患活動性の再発または増悪[バーミンガム血管炎活動性スコア(BVAS、0~63点、点数が高いほど疾患活動性が高い)0超]、および1つ以上の主要臓器への転移、疾患関連の致死的イベントあるいはその両方と定義された。リツキシマブによる維持療法に明確な臨床ベネフィット重症再燃率:29 vs. 5%、軽症再燃率:16 vs. 11% 2008年10月~2010年6月までに、115例(多発血管炎性肉芽腫症:87例、顕微鏡的多発血管炎:23例、腎限局型ANCA関連血管炎:5例)が登録され、アザチオプリン群に58例、リツキシマブ群には57例が割り付けられた。全体の平均年齢は55歳、女性が43%で、新規診断後の寛解例が80%、再燃後の寛解例が20%であった。 28ヵ月時の重症再燃率は、アザチオプリン群が29%(17例)、リツキシマブ群は5%(3例)であり、有意な差が認められた(再燃のハザード比[HR]:6.61、95%信頼区間[CI]:1.56~27.96、p=0.002)。 軽症再燃(BVASスコア0超;重症ではないが軽度の治療強化を要する再燃)率は、アザチオプリン群が16%(9例)、リツキシマブ群は11%(6例)であり、両群間に差はみられなかった(p=0.43)。一方、軽症/重症再燃のHRは3.53(95%CI:1.49~8.40、p=0.01)であり、リツキシマブ群が有意に良好であった。 重篤な有害事象が両群とも25例に発現し、アザチオプリン群が44件、リツキシマブ群は45件であった(p=0.92)。重症感染症が、それぞれ8例、11例に認められ、がんが2例(膵、基底細胞)、1例(前立腺)に発生した。また、重篤な血液学的イベントがそれぞれ9例、1例にみられた。アザチオプリン群の2例が死亡した(敗血症1例、膵がん1例)。 著者は、「リツキシマブによる維持療法の明確な臨床ベネフィットが確認された」と結論し、「この知見は、抗ミエロペルオキシダーゼANCA陽性血管炎患者においてリツキシマブの有用性を評価する試験を行う論拠となる」と指摘している。

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白血病等へのCD19-CAR改変T細胞療法、有望/Lancet

 再発性・難治性の急性リンパ性白血病、または非ホジキンリンパ腫の患者に対する、CD19をターゲットとするキメラ抗原受容体(CD19-CAR)改変T細胞を投与する治療法について、その実行可能性は90%、最大耐量は1×106個/kgであり、有害事象はすべて可逆的であることが明らかにされた。米国立がん研究所(NCI)のDaniel W Lee氏らが、21例の患者について行った第I相臨床試験の結果で、Lancet誌オンライン版2014年10月13日号で発表した。1~30歳の患者21例について試験 研究グループは、2012年7月2日~2014年6月20日にかけて、1~30歳の、再発性または難治性の急性リンパ性白血病、または非ホジキンリンパ腫の患者21例について試験を行った。全被験者に対し、フルダラビン(商品名:フルダラ)とシクロホスファミド(同:エンドキサン)の投与後、CD19-CAR改変T細胞を投与した。 CD19-CAR改変T細胞は、自己由来T細胞を用いて11日間の工程で作成。1×106個/kg、3×106個/kg、またはそれらでは十分な細胞発現が認められない場合は、すべてのCD19-CAR改良T細胞を投与し、最大耐量を見極めた。 用量増加フェイズの後、最大耐量を投与し追跡を続けた。最大耐量は、1×106個/kg 被験者21例のうち、2例は当初予定した用量のCD19-CAR改変T細胞が得られなかったが、19例が予定用量のCD19-CAR改変T細胞を投与でき、実行可能性は90%であった。 全被験者について、その治療反応性を評価した。最大耐量は、1×106個/kgだった。 最も重篤な有害事象は、グレード4のサイトカイン放出症候群で、3例(14%、95%信頼区間:3.0~36.3%)で発症した。毒性事象についてはすべてが完全に可逆的だった。 最も多くみられたグレード3の非血液学的毒性は、発熱(43%、21例中9例)、低カリウム血症(43%、同9例)、発熱と好中球減少症(38%、同8例)、サイトカイン放出症候群(14%、同3例)だった。

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ASCOの妊孕性温存ガイドライン改訂

 妊孕性温存は、がんサバイバーのQOLにとって重要であり、がん治療に影響を及ぼす。この重要性を鑑み、2006年にASCOは委員会を招集しガイドラインを発行。その後の妊孕性温存の進歩に伴い、2013年に改訂が加えられた。2014年8月、横浜市で開催された日本癌治療学会学術集会にて、米国・ニューヨーク医科大学のKutluk H Oktay氏は「ASCO Guidelines for Fertility Preservation:2013 Updates」と題し、ASCOガイドラインの概要を紹介した。 妊孕性保護については、ほとんどの患者は紹介すらされておらず、実際に妊孕性保護の対策を受けている患者はほんの一握りしかいないという。この問題の原因の主たるものは、患者と臨床医のコミュニケーション不足にある。ASCO妊孕性保護委員会は、がん専門医が関与して、治療が不妊や早期閉経の問題を起こすことを早期に患者に知らせ、がんのタイプや年齢、治療法による個々人のリスクを議論しなければならないと強調している。 Oktay氏は例として、抗がん剤の卵胞毒性について触れた。卵胞は原始卵胞期から胞状卵胞期へと成長し排卵されるが、抗がん剤がどの段階に障害を与えるかは、その種類によって異なる。代謝拮抗剤は胞状卵胞期にのみ影響を与える。このグループの薬剤ではダメージで月経が停止しても、卵巣内で次の卵胞は成長しているため、新しい排卵が起こり月経も再開する。一方、アルキル化剤やトポイソメラーゼ阻害薬などは、原始卵胞期にも障害を与える。つまり、予備の卵にまでダメージを与えてしまい、卵胞形成に対する障害は非常に大きい。どちらのグループも無月経をもたらすが、ダメージは異なるのである。そのため、抗がん剤は卵巣毒性の程度で4段階に分類されている。 また、化学療法施行患者の卵巣における卵の予備量を非施行者と比較した試験では、化学療法施行により卵の予備数が約10歳分減少することが明らかになっている。乳がん患者で出産を望む場合などでは、たとえ治療開始時には若年でも妊孕性保護を考慮しなければならないこともある。 ASCO妊孕性保護委員会は、不妊の危険性がある場合、生殖年齢のすべての患者には妊孕性保護の紹介をすべきであり、たとえ明確な意見を持っていなくても、できるだけ早期に触れるべきである、としている。 成人男性に対する精子凍結保存、成人女性に対する胚凍結保存および卵母細胞凍結保存や保存的婦人科手術、小児に対する精液、卵母細胞低温保存などを確立された妊孕性保存方法として推奨している。さらに、BRCA変異陽性がん患者についても触れている。BRCA変異陽性患者は原始卵胞が少なく、卵胞刺激による採取卵も少ないこと、また閉経が早く40歳未満の早期閉経が数倍みられることが明らかとなっている。そのため、変異陰性者以上に化学療法後の妊孕性低下が大きいと考えられる。

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トラスツズマブ・アントラサイクリン併用は乳がん患者の心機能に影響を及ぼすか 

 HER2陽性乳がんにおけるトラスツズマブとアントラサイクリンレジメン併用の有効性は明らかになっている。一方、トラスツズマブ、アントラサイクリンは双方とも心毒性を有するが、その併用による心毒性を抑える方法については依然明らかになっていない。姫路赤十字病院乳腺外科の渡辺 直樹氏は、トラスツズマブとアントラサイクリン併用による心臓への忍容性について検討した。Breast Care (Basel)誌 2014年2月9日号の掲載報告。 2010年から2013年までの期間に、weeklyパクリタキセル→3週毎FEC(エピルビシン75mg/m2、フルオロウラシル、シクロホスファミド)+weeklyトラスツズマブを投与したHER2陽性乳がん(H+群)41例と、weeklyパクリタキセル→FEC100(トラスツズマブなし)を投与したHER2陰性(H-群)57例の2群で左室駆出率(LVEF)を比較した。LVEFは心エコー検査を用い、治療開始時、weeklyパクリタキセル施行後、FEC施行後に評価した。 主な結果は以下のとおり。・LVEFはH+群で、63.2%から60.9%へ減少(p=0.030)、H-群では63.9%から61.9%へ(p=0.009)減少した。・2群間のLVEF減少率は有意差を示さなかった(0.968 vs 0.978:NS, p=0.6457)。・重篤な心毒性またはうっ血心不全はどちらの群の中にもみられなかった。 3週毎エピルビシン75mg/m2とトラスツズマブの併用は、術後補助療法において心臓の忍容性低下を示さなかった。

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乳がん術後リンパ節転移への放射線療法、効果が明確に/Lancet

 乳房切除術および腋窩郭清後の放射線療法の効果について、1~3個のリンパ節転移があり全身治療が行われた場合でも、再発率、乳がん死亡率を低下することが明らかにされた。英国・オックスフォード大学のEarly Breast Cancer Trialists 共同研究グループ(EBCTCG)が22試験、8,135例の患者データをメタ解析し報告した。先行研究のメタ解析で、乳がん切除後の放射線療法は、リンパ節転移が認められる全女性について、再発および乳がん死亡の両リスクを低下することが示されていた。しかし、転移が1~3個と少ない患者におけるベネフィットは不明であり、本検討は、それらの患者の放射線治療の効果について評価することが目的であった。Lancet誌オンライン版2014年3月19日号掲載の報告より。22試験8,135例のデータをメタ解析 メタ解析には、1964~1986年に行われた無作為化試験22試験に参加した8,135例の患者個人データが含まれた。乳房切除術および腋窩郭清後に胸壁と局所リンパ節に放射線療法を受けたか、もしくは同術後に放射線療法を受けていなかった者が対象である。 再発は10年間死亡は20年間または2009年1月1日時点まで追跡し、参加試験、個々の追跡年、試験開始時年齢、リンパ節の病理所見で層別解析した。 対象患者のうち3,786例がレベルII以上の腋窩郭清を行い、リンパ節転移がゼロ、1~3個または4個以上を有する集団に分けて分析した。1~3個の転移でも局所再発、全再発、乳がん死亡を有意に抑制 結果、腋窩郭清を受けリンパ節転移がなかった700例については、放射線療法は局所再発(両者の有意水準[2p]>0.1)、全再発(放射線療法群vs. 非療法群のリスク比[RR]:1.06、95%信頼区間[CI]:0.76~1.48、2p>0.1)、乳がん死亡(同:1.18、0.89~1.55、2p>0.1)に統計学的に有意な影響を及ぼさなかった。 腋窩解剖郭清を受けリンパ節転移が1~3個であった1,314例では、放射線療法は局所再発(2p<0.00001)、全再発(RR:0.68、95%CI:0.57~0.82、2p=0.00006)、乳がん死亡(同:0.80、0.67~0.95、2p=0.01)を抑制した。これら1,314例のうち1,133例が全身治療(シクロホスファミド、メトトレキサート、フルオロウラシルまたはタモキシフェン)を試験中に受けており、これらの症例でも局所再発(2p<0.00001)、全再発(RR:0.67、95%CI:0.55~0.82、2p=0.00009)、乳がん死亡(同:0.78、0.64~0.94、2p=0.01)を抑制した。 腋窩郭清を受けリンパ節転移が4個以上だった1,772例でも、放射線療法は局所再発(2p<0.00001)、全再発(RR:0.79、95%CI:0.69~0.90、2p=0.0003)、乳がん死亡(同:0.87、0.77~0.99、2p=0.04)の抑制がみられた。

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第55回米国血液学会(ASH 2013)トレンドビュー 血液腫瘍治療の最新知見

第55回米国血液学会(American Society of Hematology 2013)が2013年12月7~10日、米国ルイジアナ州ニューオリンズにて開催された。同学会の内容から血液腫瘍治療の最新のトレンドを、がん研究会有明病院 血液腫瘍科部長/がん化学療法センター臨床部部長の畠 清彦氏に聞いた。iPS細胞研究と次世代シーケンス導入今回のASHでは、まずiPS細胞の基礎研究の広がりが印象的であった。iPS細胞の臨床応用にはまだ時間を要するが、血液系の分化・増殖という方向への展開が明確にみられた。また、次世代シーケンスの導入の活発化も最近の特徴であろう。治療の前後や治療抵抗性時における遺伝子の発現状況の比較や、急性骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成症候群(MDS)などにおける遺伝子異常の解析が盛んに進められている。この流れはしばらく続くと予測される。急性骨髄性白血病(AML)AMLについては、有望な新規薬剤のエビデンスの報告はほとんどなかった。印象的だったのは、米国で2010年に販売中止となったゲムツズマブオゾガマイシンの自主研究が着実に進められており、投与スケジュールの変更や減量、他剤との併用により、予想以上に良好な成績が得られていることであった。販売が継続している日本でも、使用機会は減少しているが、工夫の余地は残されていると考えられる。急性リンパ性白血病(ALL)ALLに関しては、フィラデルフィア染色体(Ph)陽性例(ABL-positive)に対するニロチニブと多剤併用化学療法(hyper-CVAD:シクロホスファミド+ビンクリスチン+ドキソルビシン+デキサメタゾン)の第II相試験で良好な成績が報告された。一方、Ph陰性例では有望な新薬は見当たらないが、B細胞性ALLに対するCD19抗体などの検討が進められている。慢性骨髄性白血病(CML)BCR-ABL遺伝子T315I変異陽性CMLの治療において、第3世代ABLキナーゼ阻害薬であるポナチニブの有効性が確認されている。米国では2012年に承認され、日本では現在申請中であるが、2次または3次治療薬として承認される見通しである。ただし、現在、T315I変異の検査が可能な施設は限られており、全国的な検査体制の構築が課題となる。慢性リンパ球性白血病(CLL)CLL領域では、プレナリー・セッションでオビヌツズマブ(GA101)+クロラムブシル(GClb)とリツキシマブ+クロラムブシル(RCbl)のhead-to-headの第III相試験(CLL11試験)の結果が報告された。GA101は糖鎖改変型タイプⅡ抗CD20モノクローナル抗体であり、B細胞上のCD20に選択的に結合し、リツキシマブに比べ抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性が強く、直接的な細胞死の誘導能も高いとされる。結果は、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値が、GClb群で26.7ヵ月と、RCbl群の15.2ヵ月よりも1年近く延長し(p<0.0001)、全生存期間(OS)中央値も良好な傾向がみられた(p=0.0849)。また、経口投与が可能なBurtonチロシンキナーゼ(BTK)阻害薬であるイブルチニブとリツキシマブ+ベンダムスチン(RB)との併用に関する第Ib相試験では、良好な安全性プロフィールが確認されるとともに、奏効率が90%を超え、推定1年PFSも90%に達しており、注目を集めた。現在、イブルチニブ+RBとプラセボ+RBを比較する無作為化第III相試験が進行中である。ONO-4059は、CLLの第I相試験で有望な結果が示されており、これから第II相試験が開始される。そのほか、イデラリシブ、BAY806946、IPI-145などのPI3キナーゼ阻害薬の開発が、今後、どのように展開するかに関心が集まっている。リンパ腫前述のCLLへの有効性が確認された薬剤の多くがリンパ腫にも効果がある可能性が示唆されている。活性化B細胞(ABC)型のびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)に対するR-CHOPへのイブルチニブの上乗せ効果を評価する第III相試験が開始されている。また、イブルチニブは単剤で再発マントル細胞リンパ腫にも有効なことが示されている。前述の経口BTK阻害薬であるONO-4059は、CLLだけでなく、リンパ腫に対する有用性も示唆されている。また、リンパ腫に対するGA101の検討も進められている。ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬では、RAD001やパノビノスタットの検討が進められている。DLBCLについては、胚細胞B細胞(GCB)型に有効な薬剤の開発が課題である。T細胞性リンパ腫では、CD30抗体薬であるブレンツキシマブベドチンの有効性が第II相試験で示され、日本でもまもなく承認が得られる予定である。また、ブレンツキシマブベドチンは未分化大細胞型リンパ腫やホジキンリンパ腫の治療として、多剤併用化学療法への上乗せ効果の検討が進められている。一方、BCL-2拮抗薬であるABT-199(GDC-0199)は、CLLのほか小リンパ球性リンパ腫(SLL)に有効な可能性が第I相試験で示された。骨髄異形成症候群(MDS)MDSの治療では、オーロラキナーゼ阻害薬の進歩がみられたが、その有用性を見極めるにはもう少し時間を要する状況である。多発性骨髄腫多発性骨髄腫の領域では、第2世代プロテアソーム阻害薬であるカーフィルゾミブを中心とする臨床試験が数多く行われている。カーフィルゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(CRd)療法や、カーフィルゾミブ+ポマリドマイド+デキサメサゾン(CPd)療法の第II相試験で良好な成績が報告されていた。また、ダラツムマブなどいくつかの抗CD38抗体薬の開発が進められており、第I相試験で有望な成績が報告されている。さらに、経口プロテアソーム阻害薬であるMLN9708(クエン酸イクサゾミブ)とレナリドミド+デキサメタゾン(Rd)の併用療法は第I/II相試験で良好な成績が示され、現在、MLN9708+RdとRdを比較する第III相試験が進行中である。本試験は開始されたばかりであり、結果を得るには時間を要するが、有望視されている試験の1つである。最後に全体としては、BTK阻害薬のように、対象患者は限られるが有害事象が少ない薬剤を長期的に投与すると、QOLを良好に維持しつつ、徐々にCR例が増加するという状況がみられる。CML治療におけるイマチニブやダサチニブ、ニロチニブに相当する薬剤が、CLLやリンパ腫、マントル細胞リンパ腫の治療においても確立されつつあるという印象である。ただし、単剤で十分か、他剤との併用が必要となるかは、今後の検討課題である。

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成人バーキットリンパ腫、低強度EPOCH-Rベース療法が非常に有効/NEJM

 成人のバーキットリンパ腫の未治療患者に対して、低強度のEPOCH-Rベース治療が非常に有効であることが報告された。米国国立がん研究所(NCI)のKieron Dunleavy氏らが行った非対照前向き試験の結果、明らかになった。バーキットリンパ腫は、小児および成人にみられるアグレッシブなB細胞リンパ腫で、大部分は集中的な抗がん剤療法で治療が可能となっている。ただし現在の治療法は、成人および免疫不全を有する患者では、小児に対するよりも有効性が低い一方、重篤な副作用があった。NEJM誌2013年11月14日号掲載の報告より。連続患者30例を対象に標準レジメンと低強度レジメンについて検討 研究グループは、未治療のバーキットリンパ腫患者について、エトポシド/ドキソルビシン/シクロホスファミド/ビンクリスチン/プレドニゾン+リツキシマブ(EPOCH-R)の低強度療法について、2つのレジメンについて検討した。 1つは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)陰性患者を対象に標準的な用量調整併用レジメン(DA-EPOCH-R群)で、もう1つは、HIV陽性患者を対象に低用量で短期間、リツキシマブを2倍量とした併用レジメン(SC-EPOCH-RR群)だった。 連続患者30例(DA-EPOCH-R群19例、SC-EPOCH-RR群11例)が治療を受けた。患者は年齢中央値33歳(範囲:15~88歳)、40歳以上は40%だった。また、疾患リスクは73%が中等度、10%が高度だった。主要中毒事象発生は標準レジメン群22%、低強度レジメン群10% フォローアップ中央値は、DA-EPOCH-R群が86ヵ月、SC-EPOCH-RR群が73ヵ月だった。同時点での無増悪率は、DA-EPOCH-R群95%、SC-EPOCH-RR群100%で、全生存率はそれぞれ100%、90%だった。バーキットリンパ腫での死亡例はなかった。 主要中毒事象は、発熱と好中球減少症で、発生はDA-EPOCH-R群22%、SC-EPOCH-RR群10%でみられた。SC-EPOCH-RR群で腫瘍崩壊症候群が1例の患者でみられたが、治療関連死はみられなかった。 ドキソルビシン/エトポシド、またシクロホスファミドの累積投与量中央値は、標準レジメンのDA-EPOCH-R群よりも低強度強化レジメンのSC-EPOCH-RR群のほうが、それぞれ47%、57%低かった。 著者は、「今回の非対照前向き試験において、散発性あるいは免疫不全関連バーキットリンパ腫では、低強度のEPOCH-Rベース療法が非常に効果的であった」と結論している。

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自家幹細胞移植、中悪性度非ホジキンリンパ腫の地固め療法として有効/NEJM

 自家幹細胞移植は、高中リスクおよび高リスクのびまん性中悪性度(aggressive)非ホジキンリンパ腫(NHL)の地固め療法として有効であることが、米国・ロヨラ大学医療センターのPatrick J Stiff氏らが行ったSWOG9704試験で示された。NHL治療は、「リツキシマブ時代」と呼ばれる状況下で、さらなる予後改善に向けさまざまな治療アプローチの探索が進められている。国際予後指標(IPI)により、診断時に持続的寛解の可能性が50%未満の患者の同定が可能となり、自家幹細胞移植の早期治療への導入が図られているが、高リスク例に対する地固め療法としての有効性は、その可能性が指摘されながらも長期にわたり確立されていなかった。NEJM誌2013年10月31日号掲載の報告。導入療法奏効例での有用性を無作為化試験で評価 SWOG9704試験は、米国のSWOG、ECOG、CALGBおよびカナダNCIC-CTGに所属する40施設が参加した無作為化試験。対象は、年齢15~65歳、生検でNHLが確認され、IPIで年齢調整リスクが高中または高と判定されたびまん性aggressive NHL患者であった。 1999年8月15日~2007年12月15日までに397例が登録され、導入療法としてシクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾン(prednisone)(CHOP)療法またはリツキシマブ+CHOP(R-CHOP)療法が5コース施行された。このうち奏効が得られた患者が、地固め療法としてさらに3コースの導入療法レジメンを施行する群(対照群)または1コースの導入療法レジメン施行後に自家幹細胞移植を行う群(移植群)に無作為に割り付けられた。 有効性に関する主要エンドポイントは、2年無増悪生存率(PFS)および全生存率(OS)であった。高リスク群では、OSも有意に改善 適格基準を満たした370例のうち、導入療法が奏効した253例が無作為割り付けの対象となった(移植群125例、対照群128例)。370例の患者背景は、年齢中央値51(18.3~65.9)歳、男性59%で、B細胞リンパ腫が89%、T細胞リンパ腫は11%であった。 追跡期間中に病態が進行または死亡した患者は、移植群が46/125例、対照群は68/128例で、推定2年PFSはそれぞれ69%、55%であった。リスクスコアで調整したCox回帰モデルによる多変量解析では、ハザード比(HR)は1.72(95%信頼区間[CI]:1.18~2.51、p=0.005)であり、移植群が有意に良好だった。 死亡例数は移植群が37例、対照群は47例で、2年OSはそれぞれ74%、71%であり、両群に差は認めなかった(HR:1.26、95%CI:0.82~1.94、p=0.30)。 探索的解析では、高中リスク例と高リスク例で治療効果が異なることが示された。すなわち、高中リスク群の2年PFSは、移植群が66%、対照群は63%と同等であった(p=0.32)が、高リスク群ではそれぞれ75%、41%であり、有意差が認められた(p=0.001)。2年OSも、高中リスク群では移植群が70%、対照群は75%と差は認めなかった(p=0.48)のに対し、高リスク群では移植群が82%と、対照群の64%に比べ有意に良好だった(p=0.01)。 予測されたように、移植群では対照群に比べGrade 3/4の有害事象が多くみられた。治療関連死は移植群が6例(5%)(肺障害3例、出血と腎不全1例、感染症1例、多臓器不全1例)、対照群は3例(2%)(心血管障害1例、感染症1例、原因不明1例)に認められた。 著者は、「自家幹細胞移植の早期導入により、導入療法で奏効が得られた高中および高リスク患者のPFSが改善された」とまとめ、「対照群の再発例62例(48%)のうち29例(47%)にサルベージ療法として化学療法や移植が行われており、これがOSに有意差がなかった理由と考えられる」と指摘している。

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B細胞除去療法はANCA関連血管炎のスタンダードな治療となるか?(コメンテーター:杉原 毅彦 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(140)より-

主要臓器障害を伴うAntineutrophil cytoplasmic antibody(ANCA)関連血管炎の治療はステロイド療法とシクロホスファミド(CY)により寛解導入を行い、再発率を減らすためにアザチオプリン(AZA)やメトトレキサートなどの免疫抑制剤で維持療法することが主流であるが、B細胞を標的とする生物学的製剤のリツキシマブとステロイドによる6ヵ月後の寛解導入率はステロイド+CYと同等であること、再発例ではリツキシマブのほうが有効であることが、2010年にランダム化比較試験(RCT)により検討された。本邦でも公知申請が認められ、CY無効例や再発例に対して実臨床で使用することが可能となっている。 今回は2010年に報告されたRCTの、18ヵ月の長期成績と再発に関連する因子が報告された。両群とも寛解を達成するとステロイドは6ヵ月後までに中止され、CY群はAZAで維持療法が継続され、リツキシマブ群はステロイド中止後も追加の免疫抑制療法を施行されず、18ヵ月後の寛解維持率がリツキシマブ 39%, CY-AZA 33%と両群に差を認めなかった。 再発に関連する因子を統計学的に解析すると、MPO-ANCAよりPR-3 ANCA陽性例、顕微鏡的多発血管炎より多発血管炎性肉芽腫症(旧名ウェゲナー肉芽種症)、初発例より再発例で再発しやすい。リツキシマブ投与群の再発例の88%は末梢血B細胞の再増加が認められ、再増加から再発までの期間は平均80日(1~286日)、ANCAの抗体価の増加は再発を予測しないが、ANCAの抗体価陰性かつ末梢血でB細胞が同定できない患者では再発がまれであることが示された。 今後、リツキシマブによる寛解導入後の再発を減らすための維持療法について検討が必要である。

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重症ANCA関連血管炎、リツキシマブは長期に有効/NEJM

 抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎の重症(臓器障害)例の寛解導入と維持の長期(18ヵ月間)有効性について、リツキシマブ(商品名:リツキサン)の1コース(週に1回を4週間)単独投与の治療が、継続的に免疫抑制薬を投与する従来の免疫療法と、同程度の効果があることが明らかにされた。米国・メイヨークリニック財団のUlrich Specks氏らが、多施設共同無作為化二重盲検ダブルダミー非劣性試験「RAVE」を行い報告した。ANCA患者は大部分が最終的に再発するため、導入療法の選択においては、寛解までの期間、再発の重症度、治療の累積による毒性が重要な因子となる。RAVE試験では、6ヵ月時点の寛解達成がリツキシマブ治療群において優れていたことが報告されていた。NEJM誌2013年8月1日号掲載の報告より。6ヵ月までに完全寛解し18ヵ月時点でも寛解維持がされているかを比較検討 重症ANCA患者に対する治療として比較検討されたのは、リツキシマブ(375mg/m2体表面積を週1回)を4週間投与しその後はプラセボを投与する治療(リツキシマブ1コース治療)と、シクロホスファミド(商品名:エンドキサン)3~6ヵ月間投与+アザチオプリン12~15ヵ月間投与する治療(従来の免疫療法)であった。 主要評価指標は、6ヵ月までに完全寛解し、18ヵ月時点でも寛解が維持されていることとした。 被験者は、2004年12月~2008年6月の間に登録された197例の重症ANCA患者で、リツキシマブ治療群に99例、従来免疫療法群に98例が無作為に割り付けられた。リツキシマブ治療群は非劣性基準をクリア 6ヵ月までの完全寛解達成は、以前に報告したように、従来免疫療法群53%に対し、リツキシマブ治療群は64%だった。 12ヵ月、18ヵ月時点で完全寛解を維持していたのは、それぞれリツキシマブ治療群では48%、39%であったのに対し、従来免疫療法群は39%、33%で、リツキシマブ治療群は事前規定の非劣性基準を満たした(非劣性マージン20%でp<0.001)。 完全寛解の持続期間または再発の頻度および重症度を含むいかなる有効性基準にも、有意な群間差はみられなかった。 ベースラインで再燃例だった101例の患者においては、6ヵ月時点(p=0.01)、12ヵ月時点(p=0.009)ではリツキシマブ治療群が従来免疫療法群より優れていた。しかし、18ヵ月時点(p=0.06)では優越性が認められず、同時点においてリツキシマブ治療群のほとんどの患者においてB細胞の再構築が認められた。 有害事象については、全患者について登録から試験終了時まで収集されたが、有意な群間差は認められなかった。

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慢性リンパ性白血病に対して国内初の分子標的薬

 白血病の1つである慢性リンパ性白血病(CLL)は、わが国の患者数が約2,000人と推計されている希少疾病である。治療はフルダラビンやシクロホスファミドを用いた化学療法が第一選択であるが、これらに効果がない場合や再発した場合の新たな治療選択肢として、分子標的薬であるアーゼラ(一般名:オファツムマブ)が今年5月24日に発売された(適応は「再発または難治性のCD20陽性のCLL」)。  7月9日に東京都内で開催された記者発表会では、CLL治療の現状と課題についてがん研有明病院血液腫瘍科 部長 畠 清彦氏が、また、アーゼラの試験成績について東海大学医学部内科学系血液・腫瘍内科 准教授・診療科長 小川 吉明氏が講演した(主催:グラクソ・スミスクライン株式会社)。■白血病は分子標的治療薬で治療成績が飛躍的に向上しつつある 畠氏はまず、白血病は死に至るイメージが強いが、近年、移植療法の進歩や分子標的治療薬の登場により、治療成績が飛躍的に向上しつつあることを紹介した。白血病は、骨髄性とリンパ性、慢性と急性により4つのタイプに分けられる。患者数の割合は、急性骨髄性白血病(AML)が約6割と最も多く、慢性骨髄性白血病(CML)と急性リンパ性白血病(ALL)が約2割ずつ、CLLは約3%と少ない。また、日本人におけるCLL罹患率は10万人に約0.5人と、欧米の約4.4人に比べてきわめて少ないことから、わが国では他のタイプの白血病に比べて、新たな治療法の研究・開発が遅れていた。実際、AML、CML、ALLではすでに分子標的治療薬が使用されているが、CLLではアーゼラが日本で初の分子標的治療薬となる。■CLLの治療と課題 CLLの初期は自覚症状がなく、健康診断でみつかる場合が多い。症状の進行に伴ってリンパ節腫脹、易疲労感、盗汗、発熱、体重減少、易感染性、貧血、血小板減少などが認められる。症状のない低リスク(Rai病期分類0やBinet病期分類A)の場合は経過観察を行い、貧血/血小板減少の進行・増悪、脾腫、リンパ節腫脹、リンパ球増加、自己免疫性貧血・血小板減少症、全身症状が発現した場合に治療を開始する。 日本における薬物治療の第一選択は、フルダラビン単剤療法、フルダラビンを中心とした多剤併用療法、シクロホスファミドと他の薬剤の併用療法であるが、今回、再発または難治性のCD20陽性のCLLに対してアーゼラが承認された。 日本におけるCLL治療の課題として、畠氏は、CLLは薬物療法では治癒が難しく再発することの多い難治性の血液腫瘍であること、CLLに適応を有する薬剤が少なく治療選択肢が限られていること、再発または難治性のCLLに対する標準的な治療法が確立していないことを挙げ、「標準治療の確立のため、ガイドラインの作成が急がれる」と結んだ。■再発・難治性のCLLの新たな治療選択肢として期待 続いて、アーゼラの作用機序と臨床成績について小川氏が紹介した。 アーゼラは、CLLの腫瘍性B細胞の表面に発現しているCD20抗原を標的とした、完全ヒト型のモノクローナル抗体である。CD20は大ループと小ループの2つのループから成るが、アーゼラは両ループに結合することにより補体依存性細胞傷害作用を示す(in vitro)。 日韓共同で実施された第I/II相試験では、過去に1レジメン以上のCLL治療を受けた経験のある、再発または難治性のCLL患者10例(日本人9例、韓国人1例)に対して、アーゼラを単剤で投与(点滴静注、全12回)したところ、10例中7例に奏効を認めた(部分寛解7例、安定3例)。また、10例中8例は病勢進行が認められなかった。主な副作用は、血球減少症、インフュージョンリアクションであった。インフュージョンリアクションについては、多くは1回目と2回目の投与時に認められたが、5~7回目にも発現していることに注意が必要、と小川氏は指摘した。 最後に小川氏は、「再発・難治性のCLL患者さんに対して、アーゼラ単独療法で高い効果が期待できる。有効な治療選択肢がなく、無治療や現状維持を目指していたCLL患者さんに対しても積極的に治療が検討できる新たな治療選択肢となる」と期待を示した。

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全年齢対象の非ホジキンリンパ腫に対するR-CHOP療法、強化療法vs.標準療法/Lancet

 びまん性大細胞型B細胞性非ホジキンリンパ腫に対するR-CHOP療法の全年齢を対象とした強化療法(毎2週投与)について、標準療法(毎3週投与)と比べて有意な改善を示さなかったことが報告された。英国・ロイヤルマーズデンNHS財団トラストのDavid Cunningham氏らが第3相無作為化試験の結果、報告した。これまでに、2004年に60歳以上を対象とした試験でCHOP強化療法(毎2週×6サイクルvs. 毎3週×6サイクル)の全生存の改善が示されていた。ただし、その後日本で行われた強化療法(毎2週×8サイクル)を検証した小規模試験では改善が示されず、またCHOP+エトポシド療法の検討においても全年齢の全生存改善は示されなかった。Lancet誌オンライン版2013年4月22日号掲載より。毎14日投与と毎21日投与を比較 本検討は、新たにびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と診断された未治療の患者における、リツキシマブとシクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾロン(R-CHOP)療法の全年齢層におけるベネフィットを検討することを目的とした。 対象は、英国内119施設でステージIA~IVと診断された18歳以上の患者とし、R-CHOP毎14日×6サイクル+リツキシマブ毎14日×2サイクルを受ける群(R-CHOP-14)と、R-CHOP毎21日×8サイクルを受ける群(R-CHOP-21)に1対1の割合で無作為に割り付け(マスキングなし)検討した。 主要評価項目は、全生存期間(OS)とした。 R-CHOP-14群は、シクロホスファミド750mg/m2、ドキソルビシン50mg/m2、ビンクリスチン2mg、リツキシマブ375mg/m2を1日に、経口プレドニゾロン100mg/m2を1~5日に、これを毎14日×6サイクルし、続いてリツキシマブ375mg/m2/日の毎14日×2サイクルを投与した。 R-CHOP-21群は、シクロホスファミド750mg/m2、ドキソルビシン50mg/m2、ビンクリスチン1.4mg(最大2mg)、リツキシマブ375mg/m2を1日に、経口プレドニゾロン40mg/m2を1~5日に、これを毎21日×8サイクル投与した。2年OS達成、R-CHOP-14群82.7%、R-CHOP-21群80.8%で有意差はない 1,080例が、R-CHOP-21群(540例)、R-CHOP-14群(540例)に割り付けられた。 追跡期間中央値46ヵ月(IQR:35~57)において、2年OS達成は、R-CHOP-14群82.7%(95%信頼区間[CI]:79.5~85.9)、R-CHOP-21群80.8%(同:77.5~84.2)で有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.90、95%CI:0.70~1.15、p=0.3763)。2年無増悪生存にも有意差は認められなかった(75.4%vs. 74.8%、HR:0.94、95%CI:0.76~1.17、p=0.5907)。 また両群ともに、国際予後指標高値、予後不良の分子的特性、発生細胞を予測するベネフィットは示されなかった。 グレード3または4の好中球減少症の発現が、R-CHOP-21群で高く(60%vs. 31%)、同群では予定されていなかった遺伝子組換え型顆粒球コロニー刺激因子の投与が行われた。一方、R-CHOP-14群ではグレード3または4の血小板減少症の発現頻度が高かった(9%vs. 5%)。その他に発熱性好中球減少症(11%vs. 5%)、感染(23%vs. 18%)のグレード3または4の有害事象の発現頻度が高かった。 非血液学的有害事象の頻度は、両群で同程度であった。 これらの結果を踏まえて著者は「R-CHOP-14はR-CHOP-21よりも有効ではなく、R-CHOP-21が依然として標準的なファーストライン療法である」と結論している。

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DA-EPOCH-R療法、原発性縦隔B細胞性リンパ腫に高い効果/NEJM

 DA-EPOCH-R(用量調整エトポシド/ビンクリスチン/シクロホスファミド/ドキソルビシン/プレドニゾン+リツキシマブ)療法は、原発性縦隔B細胞性リンパ腫の治療として、放射線療法を行わなくとも高い治癒率をもたらすことが、米国国立がん研究所(NCI)のKieron Dunleavy氏らの検討で示された。原発性縦隔B細胞性リンパ腫はびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)のサブタイプで、結節硬化型ホジキン病と密接な関連を持ち、若年者に多く、巨大な縦隔腫瘤を形成する。標準治療は確立されておらず、免疫化学療法だけでは不十分なため縦隔への放射線照射による地固め療法がルーチン化しているが、遅発性の重篤な有害事象が懸念されるという。NEJM誌オンライン版2013年4月11日号掲載の報告。前向き単群第II相試験を、その他の後ろ向き解析と比較 研究グループは、原発性縦隔B細胞性リンパ腫の治癒率を改善し、放射線療法を不要にする治療戦略の開発を目的に、G-CSF(フィルグラスチム)併用下DA-EPOCH-R療法のプロスペクティブな単群第II相試験を実施した。 未治療の原発性縦隔B細胞性リンパ腫に対し、フィルグラスチム投与下にDA-EPOCH-R療法を6コースまたは8コース施行した。4コースおよび6コース目の終了時に病変の評価を行った。4~6コース目に20%以上の減量を要した場合は8コースまで治療を継続し、この間の減量が20%以下の場合は6コースで治療を終了することとした。 比較のために、スタンフォード大学医療センターの2007~2012年の診療記録の中から、放射線療法は施行されずにDA-EPOCH-R療法を受けた未治療の原発性縦隔B細胞性リンパ腫患者のデータを抽出し、レトロスペクティブな解析を行った。放射線療法なしでEFS 93%、OS 97%を達成、リツキシマブ追加の効果も確認 NCIの前向き第II相試験には、1999年11月~2012年8月までに51例(年齢中央値30歳、腫瘍径5~18cm、女性59%)が登録された。65%がbulky腫瘍(≧10cm)で、78%に乳酸脱水素酵素(LDH)上昇を認め、29%はStage IVであった。90%が6コースで治療を終了した。 スタンフォードの後ろ向き試験には16例[年齢中央値33歳(p=0.04)、腫瘍径7~18cm、女性56%]が登録された。bulky腫瘍(56%)、LDH上昇(69%)、Stage IV(44%)の頻度はNCI第II相試験と同等であったが、節外病変が有意に少なかった(53 vs 19%、p=0.02)。 NCI前向きコホートでは、フォローアップ期間中央値63ヵ月の時点で無イベント生存率(EFS)が93%、全生存率(OS)は97%であった。スタンフォード後ろ向きコホートでは、フォローアップ期間中央値37ヵ月におけるEFSは100%、OSも100%で、放射線治療を受けた患者はいなかった。 遅発性の合併症や心毒性は観察されなかった。フォローアップ10ヵ月から14年までの間に、2例(4%)を除く全例がDA-EPOCH-R療法により完全寛解に到達した。非完全寛解の2例は放射線療法を受けフォローアップ期間中は無病状態が維持された(1例は後に急性骨髄性白血病で死亡)。 なお、リツキシマブを併用しないDA-EPOCH療法の第II相試験(18例)では、フォローアップ期間中央値16年におけるEFSが67%、OSは78%であり、リツキシマブの追加によってEFS(p=0.007)、OS(p=0.01)が有意に改善することも確認された。 著者は、「DA-EPOCH-R療法は、原発性縦隔B細胞性リンパ腫の治療において、放射線療法を必要とせずに高い治癒率をもたらす」と結論付けている。また、確定的なエビデンスを得るために、小児を対象とするDA-EPOCH-R療法の国際的な臨床試験がすでに開始されているという。

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p53 and breast cancer subtypes and new insights into response to chemotherapy (Philippe Bertheau, France)

p53と乳がんのサブタイプ、そして化学療法への反応に関する考察p53の変異は乳がんの20~30%に認められるが、いまだ乳がん治療のためのバイオマーカーとしては使われていない。ヒトのがんにおける2万以上のp53変異を調べた研究では、73%がミスセンス変異であり、次いでフレームシフト変異9%、ナンセンス変異7%、サイレント変異5%、スプライス変異2%と続く。Dumayら(2013年)は乳がんのサブタイプ別に検討し、luminal A 17%,luminal B 41%,HER2+ 50%,molecular apocrine 69%,basal-like 88%であった。変異は非短縮型と短縮型があって、短縮型は新たな機能を持ちうるが、蛋白の発現は非常に低かった。Ellisら(2013年)の研究では、luminalの腫瘍において、MDM2の変異または増幅によるp53の不活化はluminal Bの原因であるようである。Changら(2011年)とHerschkowitzら(2012年)の研究から、basal-likeとclaudin-low typeにおいて、p53はmiR-200の上方調節を通してEMT(Epithelial-Mesenchymal transition,上皮間葉移行)とstem cellの性質を調節している。Martinsら(2012年)は、55例のBRCA1グループを調べ、 p53の変異が、luminalでは最初の最も重要なイベントであり、basal-likeではPTENの消失の後に起こっていた。従来は、p53のwild typeではDNA損傷があるとアポトーシスが起こるため治療効果が高く、p53変異があるとアポトーシスを起こさないため、治療への反応が悪いと考えられてきた。しかしER陽性乳がんでは、しばしばp53 wild typeであるが、p53変異が高頻度であるER陰性乳がんと比べて化学療法への反応性が不良である。p53と化学療法への反応を考えるとき、乳がんのサブタイプ、治療の目的、化学療法のレジメン、そしてp53評価の方法を考慮する必要がある。進行性または炎症性乳がんにおけるdose-dense ACの効果とp53の状況をみたとき、p53 wild typeではpCRが0であったのに対し、p53変異があったものでは15/28でpCRがみられた。予後もp53変異のあったもので良好であったが、タキサンベースでは予後に差がなかった。アルキル化剤の量はER陰性p53変異乳がんにおいては極めて重要である(pCR率:E 7/57,FAC 1/17,dose-dense EC 15/21)。アントラサイクリンを投与したとき、p53 wild typeでは細胞周期の停止が起こり、シクロホスファミドに抵抗性のため、一時的な停止が起こるだけで、また増大する。反対にp53変異ではアントラサイクリンで細胞周期の停止もアポトーシスも起こらないが、シクロホスファミドによりmitotic catastrophe(細胞分裂の異常により染色体分離ができず大きな細胞となる)が起こりpCRとなる。しかし、それを免れると腫瘍の急速増大をきたす。Baileyら(2012年)は、エストロゲン受容体がp53依存性のアポトーシスを防いでいることを見出した。Bonnefoiら(2011年)は、p53の状況を調べた2,000名の患者のうち、p53変異のある方の中でT-ETとFECの術前化学療法の効果を比較したところ、生存率にまったく差はみられなかった。しかしこの結果は症例選択が適切でない可能性があり、TNBCやluminal Bの進行乳がんにおいてdose-dense ACのレジメンで臨床試験を行うべきである。レポート一覧

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(74)〕 進行性腎機能障害を呈する特発性膜性腎症の治療にはステロイド+アルキル化剤が有用

特発性膜性腎症は、その経過中に自然寛解する例が20~30%あるため、これが薬物療法の評価を一部左右する可能性がある。また、腎機能がすでに低下している症例に関しては、臨床試験の確実なエビデンスが得られていない。  本研究は進行性の腎機能障害が確認されている例が対象であるため、自然寛解の影響を考慮する必要がなく、また、すでに腎機能障害のある症例の治療効果を検証するという意味で、意義が大きい。  わが国では、厚労省の班研究の結果から、まずステロイド治療を行い、ステロイド治療抵抗性であればシクロスポリン(CyA)、ミゾリビン(MZR)、シクロホスファミド(CPA)のいずれかの併用を考慮するとの診療指針が提示されている。しかし欧米では、1990年頃のカナダ・イギリスにおける複数の研究で、膜性腎症に対するステロイド単独療法の効果は否定され、現在は本研究の治療群のようにステロイドとアルキル化剤のクロラムブシル併用、CyAによる治療が臨床試験のエビデンスとして報告されているため、これらが治療の主体である。  本研究ではCyA群の効果は否定されたが、これは著者らも述べているようにCyAには高血圧や腎機能障害の合併症があるため、腎機能障害例では効果が出にくいと推測される。  わが国ではアルキル化剤としてはクロラムブシルの代わりにCPAを用い、ステロイドと併用したPonticelliの変法が用いられることが多い。まだ、大規模なRCTの結果は報告されていないが、他の治療法に比較して優っている印象がある。

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消化管神経内分泌腫瘍〔GI-NET : gastrointestinal neuroendocrine tumor〕

1 疾患概要■ 概念・定義消化管神経内分泌腫瘍は原腸系組織に存在する神経内分泌細胞由来の腫瘍群(neuroendocrine tumor: NET)である。消化管NETは、悪性度が低いものから高いものまで多彩であるにもかかわらず、これまで消化管カルチノイドの呼称でひとまとめに扱われてきたが、2010年以降、生物学的悪性度を指標としたWHO分類に従って扱われるようになってきている。本稿では、WHO分類に従ったデータは乏しいため、以下、消化管カルチノイド腫瘍として報告されてきた知見を示す。■ 疫学わが国における消化管カルチノイド腫瘍の発生頻度は、直腸(39%)、胃(27%)、十二指腸(15%)の順である。欧米では、小腸、虫垂での発生頻度が高い。■ 病因消化管粘膜の腺底部に存在する内分泌細胞が腫瘍化し、粘膜下層を主座としながら腫瘤を形成するため、粘膜下腫瘍様の形態を呈する。■ 症状(1)無症状で発見されることが多い。(2)腫瘍増大による腹痛、腸閉塞、下血で発見されることもある。(3)生理活性物質(セロトニン、ヒスタミンなど)を産生する腫瘍の肝転移例では、カルチノイド症候群と呼ばれる皮膚紅潮、喘息様発作、下痢、右弁膜傷害の症状がみられることがある。■ 分類1)WHO分類腫瘍細胞の核分裂像や細胞増殖マーカー(Ki-67)の発現指数に基づいて表1のようにNET grade 1、NET grade 2、Neuroendocrine carcinoma(NEC)に分類される。2)TNM分類腫瘍の深達度(T因子)、リンパ節転移の有無(N因子)、遠隔転移の有無(M因子)を評価し、腫瘍の進行度(病期)をI~IVの4段階に分類するもの。3)Rindi分類胃NETは他の消化管NETと比べ悪性度の低いものが多く、疾患背景や高ガストリン血症の有無でType I~IIIと低分化型内分泌細胞がんの4グループに分けるRindi分類が有用である(表2)。画像を拡大する画像を拡大する■ 予後1)胃NETType I、Type IIの胃NETは、高ガストリン血症を伴わないType III胃NETに比べ転移率が低く(I:4.9%、II:30%、III:62.5%)、5年生存率(I:正常生命期待値、II:87%、III:79%)は、明らかに良好である。Type IVの胃NETは、WHO分類のNECに相当し、予後が悪い。2)その他の消化管NET胃以外の消化管NETでは、予後予測因子が明らかでない。腫瘍径が1cmを超えた場合、転移率が20%以上とする報告が多い。米国の報告では、5年生存率が局所限局で79.7%、近傍進展で50.6%、遠隔転移を有する症例で21.8%である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)1)血液検査カルチノイド症候群を疑う場合は、血中セロトニン、尿中5-ヒドロキシインドール酢酸の測定を行う。機能性NETの場合は、疑うホルモンの血清値の測定を行う。2)画像診断内視鏡検査では、黄白色調の表面平滑な粘膜下腫瘍として観察されることが多い。確定診断は生検による組織診断で行う。転移の有無は、腹部超音波、CT、MRIなどの検査で行う。内視鏡的切除を行う場合には、超音波内視鏡検査による腫瘍の深達度が有用である。3)病理特徴的な細胞像(好酸性微細顆粒状の細胞質、円形~卵円形の均一な小型核、細胞分裂はまれ)と胞巣形態を呈する。銀染色やクロモグラニン免疫染色が有用である。NETのグレード分類には細胞増殖マーカーKi67の免疫染色が行われる。4)その他欧米では血中クロモグラニンA値を腫瘍マーカーとして用い、ソマトスタチン受容体シンチグラフィーを病変の検出に用いられているが、日本では未承認である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)外科的または内視鏡的切除(1)胃NET高ガストリン血症を伴うtype I、IIの腫瘍は2cm未満の場合、まず内視鏡治療を試み、病理組織学的に細胞異型が強い腫瘍の残存や脈管浸潤を認める場合には、外科的切除を追加する。腫瘍が2cm以上あるいは個数が6個以上、あるいは腫瘍が固有筋層に浸潤している場合は、リンパ節郭清を含む外科的切除を行う。Type III、IVの腫瘍は胃がんに準じた外科切除を行う。(2)その他の消化管NET筋層浸潤を伴わない1cm以下の腫瘍では、内視鏡的切除か筋層を含む局所切除を行う。筋層浸潤を伴わない1~2cmの腫瘍では、広範な局所切除または所属リンパ節郭清を含む腸管の部分切除を行う。筋層浸潤を伴う腫瘍または2cm以上の腫瘍では、広範なリンパ節転移を含む根治的切除術を行う。2)化学療法5-FU、ドキソルビシン、ストレプトゾトシン、インターフェロン、シクロホスファミドが投与されるが有効性は低い。肝転移巣に対して肝動脈塞栓術が有効な場合がある。NECは、小細胞がんに準じてシスプラチン+エトポシド、シスプラチン+イリノテカンが投与される(わが国ではすべて未承認)。3)カルチノイド症候群に対する治療ソマトスタチン誘導体であるオクトレオチド(商品名:サンドスタチン)は、NETからのセロトニンやヒスタミンの放出を抑制し、カルチノイド症候群でみられる症状(前述)を改善する。4 今後の展望消化管NETの解釈は、さまざまな分類によって取り扱われ混乱していたが、2010年に新しい WHO分類が提唱され、今後徐々にその分類に沿った治療成績や予後が明らかになり、データが整理されていくと思われる。治療の原則は、腫瘍の根治的切除と再発予防であるが、欧米で検討されているソマトスタチンアナログなど抗腫瘍効果が期待される新薬もNETの集約的治療に加わってくるかもしれない。5 主たる診療科消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療に関する情報サイトNET Links(一般向け、医療従事者むけのサイト)患者会情報しまうま倶楽部(患者・患者の家族の会)

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