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アナフィラキシーの治療の実際

アナフィラキシーの診断 詳細は別項に譲る。皮膚症状がない、あるいは軽い場合が最大20%ある。 治療(表1)発症初期には、進行の速さや最終的な重症度の予測が困難である。数分で死に至ることもあるので、過小評価は禁物。 ※筆者の私見適応からは、呼吸症状に吸入を先に行う場合があると読めるが、筆者は呼吸症状が軽症でもアナフィラキシーであればアドレナリン筋注が第1選択と考える。また、適応に「心停止」が含まれているが、心停止にはアドレナリン筋注は効果がないとの報告9)から、心停止の場合は静注と考える。表1を拡大する【姿勢】ベッド上安静とし、嘔吐を催さない範囲で頭位を下げ、下肢を挙上して血液還流を促進し、患者の保温に努める。アナフィラキシーショックは、distributive shockなので、下肢の挙上は効果あるはず1)。しかし、下肢拳上を有効とするエビデンスは今のところない。有害ではないので、薬剤投与の前に行ってもよい。【アドレナリン筋肉注射】気管支拡張、粘膜浮腫改善、昇圧作用などの効果があるが、cAMPを増やして肥満細胞から化学物質が出てくるのを抑える作用(脱顆粒抑制作用)が最も大事である。α1、β1、β2作用をもつアドレナリンが速効性かつ理論的第1選択薬である2)。緊急度・重症度に応じて筋注、静注を行う。血流の大きい臀部か大腿外側が薦められる3)。最高血中濃度は、皮下注で34±14分、筋注で8±2分と報告されており、皮下注では遅い4)。16~35%で2回目の投与が必要となる。1mLツベルクリンシリンジを使うと針が短く皮下注になる。1)アドレナリン1回0.3~0.5mg筋注、5~30分間隔 [厚生労働省平成20年(2008)5)]2)アドレナリン1回0.3~0.5mg筋注、5~15分間隔 [UpToDate6)]3)アドレナリン1回0.01mg/kg筋注 [日本アレルギー学会20141)]4)アドレナリン1回0.2~0.5mgを皮下注あるいは筋注 [日本化学療法学会20047)]5)アドレナリン(1mg)を生理食塩水で10倍希釈(0.1mg/mL)、1回0.25mg、5~15分間隔で静注 [日本化学療法学会20047)]6)アドレナリン持続静脈投与5~15µg/分 [AHA心肺蘇生ガイドライン20109)]わが国では、まだガイドラインによってはアドレナリン投与が第1選択薬になっていないものもあり(図1、図2)、今後の改訂が望まれる。 ※必ずしもアドレナリンが第1選択になっていない。 図1を拡大する ※皮膚症状+腹部症状のみでは、アドレナリンが第1選択になっていない。図2を拡大する【酸素】気道開通を評価する。酸素投与を行い、必要な場合は気管挿管を施行し人工呼吸を行う。酸素はリザーバー付マスクで10L/分で開始する。アナフィラキシーショックでは原因物質の使用中止を忘れない。【輸液】hypovolemic shockに対して、生理食塩水か、リンゲル液を開始する。1~2Lの急速輸液が必要である。維持輸液(ソリタ-T3®)は血管に残らないので適さない。【抗ヒスタミン薬、H1ブロッカー】経静脈、筋注で投与するが即効性は望めない。H1受容体に対しヒスタミンと競合的に拮抗する。皮膚の蕁麻疹には効果が大きいが、気管支喘息や消化器症状には効果は少ない。第1世代H1ブロッカーのジフェンヒドラミン(ベナスミン®、レスタミン®)クロルフェニラミンマレイン酸塩(ポララミン®)5mgを静注し、必要に応じて6時間おきに繰り返す。1)マレイン酸クロルフェニラミン(ポララミン®)2.5~5mg静注 [日本化学療法学会20047)]2)ジフェンヒドラミン(ベナスミン®、レスタミン®)25~50mg緩徐静注 [AHA心肺蘇生ガイドライン20109)] 保険適用外3)ジフェンヒドラミン(ベナスミン®、レスタミン®)25~50mg静注 [UpToDate6)]4)経口では第2世代のセチリジン(ジルテック®)10mgが第1世代より鎮静作用が小さく推奨されている [UpToDate6)] 経口の場合、効果発現まで40~60分【H2ブロッカー】心収縮力増強や抗不整脈作用がある。蕁麻疹に対するH1ブロッカーに相乗効果が期待できるがエビデンスはなし。本邦のガイドラインには記載がない。保険適用外に注意。1)シメチジン(タガメット®)300mg経口、静注、筋注 [AHA心肺蘇生ガイドライン9)] シメチジンの急速静注は低血圧を引き起こす [UpToDate6)]2)ラニチジン(ザンタック®)50mgを5%と糖液20mLに溶解して5分以上かけて静注 [UpToDate6)]【βアドレナリン作動薬吸入】気管支攣縮が主症状なら、喘息に用いる吸入薬を使ってもよい。改善が乏しい時は繰り返しての吸入ではなくアドレナリン筋注を優先する。気管支拡張薬は声門浮腫や血圧低下には効果なし。1)サルブタモール吸入0.3mL [日本アレルギー学会20141)、UpToDate6)]【ステロイド】速効性はないとされてきたが、ステロイドのnon-genomic effectには即時作用がある可能性がある。重症例ではアドレナリン投与後に、速やかに投与することが勧められる。ステロイドにはケミカルメディエーター合成・遊離抑制などの作用により症状遷延化と遅発性反応を抑制することができると考えられてきた。残念ながら最近の研究では、遅発性反応抑制効果は認められていない10)。しかしながら、遅発性反応抑制効果が完全に否定されているわけではない。投与量の漸減は不要で1~2日で止めていい。ただし、ステロイド自体が、アナフィラキシーの誘因になることもある(表2)。とくに急速静注はアスピリン喘息の激烈な発作を生じやすい。アスピリン喘息のリスクファクターは、成人発症の気管支喘息、女性(男性:女性=2:3~4)、副鼻腔炎や鼻茸の合併、入院や受診を繰り返す重症喘息、臭覚低下。1)メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム(ソル・メドロール®)1~2mg/kg/日 [UpToDate6)]2)ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム(ソル・コーテフ®)100~200mg、1日4回、点滴静注 [日本化学療法学会20047)]3)ベタメタゾン(リンデロン®)2~4mg、1日1~4回、点滴静注11) 表2を拡大する【グルカゴン】βブロッカーの過量投与や、低血糖緊急時に使われてきた。グルカゴンは交感神経を介さずにcAMPを増やしてアナフィラキシーに対抗する力を持つ。βブロッカーを内服している患者では、アドレナリンの効果が期待できないことがある。まずアドレナリンを使用して、無効の時にグルカゴン1~2mgを併用で静注する12)。β受容体を介さない作用を期待する。グルカゴン単独投与では、低血圧が進行することがあるので注意。アドレナリンと輸液投与を併用する。急速静注で嘔吐するので体位を側臥位にして気道を保つ。保険適用なし。1)グルカゴン1~5mg、5分以上かけて静注 [UpToDate6)]【強力ミノファーゲンC】蕁麻疹単独には保険適用があるがアナフィラキシーには効果なし。観察 いったん症状が改善した後で、1~8時間後に、再燃する遅発性反応患者が4.5~23%存在する。24時間経過するまで観察することが望ましい。治療は急いでも退室は急ぐべきではない13)。 気管挿管 上記の治療の間に、嗄声、舌浮腫、後咽頭腫脹が出現してくる患者では、よく準備して待機的に挿管する。呼吸機能が悪化した場合は、覚醒下あるいは軽い鎮静下で挿管する。気道異物窒息とは違い準備する時間は取れる。 筋弛緩剤の使用は危険である。気管挿管が失敗したときに患者は無呼吸となり、喉頭浮腫と顔面浮腫のためバッグバルブマスク換気さえ不能になる。 気管挿管のタイミングが遅れると、患者は低酸素血症の結果、興奮状態となり酸素マスク投与に非協力的となる。 無声、強度の喉頭浮腫、著明な口唇浮腫、顔面と頸部の腫脹が生じると気管挿管の難易度は高い。喉頭展開し、喉頭を突っつくと出血と浮腫が増強する。輪状甲状靭帯穿刺と輪状甲状靭帯切開を含む、高度な気道確保戦略が必要となる9)。さらに、頸部腫脹で輪状軟骨の解剖学的位置がわからなくなり、喉頭も皮膚から深くなり、充血で出血しやすくなるので輪状甲状靭帯切開も簡単ではない。 絶望的な状況では、筆者は次の気道テクニックのいずれかで切り抜ける。米国麻酔学会の困難気道管理ガイドライン2013でも、ほぼ同様に書かれている(図3)14)。 1)ラリンゲアルマスク2)まず14G針による輪状甲状靭帯穿刺、それから輪状甲状靭帯切開3)ビデオ喉頭鏡による気管挿管 図3を拡大する心肺蘇生アナフィラキシーの心停止に対する合理的な処置についてのデータはない。推奨策は非致死的な症例の経験に基づいたものである。気管挿管、輪状甲状靭帯切開あるいは上記気道テクニックで気道閉塞を改善する。アナフィラキシーによる心停止の一番の原因は窒息だからだ。急速輸液を開始する。一般的には2~4Lのリンゲル液を投与すべきである。大量アドレナリン静注をためらうことなく、すべての心停止に用いる。たとえば1~3mg投与の3分後に3~5mg、その後4~10mg/分。ただしエビデンスはない。バソプレシン投与で蘇生成功例がある。心肺バイパス術で救命成功例が報告されている9)。妊婦対応妊婦へのデキサメタゾン(デカドロン®)投与は胎盤移行性が高いので控える。口蓋裂の報告がある15)。結語アナフィラキシーを早期に認識する。治療はアドレナリンを筋注することが第一歩。急速輸液と酸素投与を開始する。嗄声があれば、呼吸不全になる前に準備して気管挿管を考える。 1) 日本アレルギー学会監修.Anaphylaxis対策特別委員会編.アナフィラキシーガイドライン. 日本アレルギー学会;2014. 2) Pumphrey RS. Clin Exp Allergy. 2000; 30: 1144-1150. 3) Hughes G ,et al. BMJ.1999; 319: 1-2. 4) Sampson HA, et al. J Allergy Clin Immunol. 2006; 117: 391-397. 5) 厚生労働省.重篤副作用疾患別対応マニュアルアナフィラキシー.平成20年3月.厚生労働省(参照2015.2.9) 6) F Estelle R Simons, MD, FRCPC, et al. Anaphylaxis: Rapid recognition and treatment. In:Uptodate. Bruce S Bochner, MD(Ed). UpToDate, Waltham, MA.(Accessed on February 9, 2015) 7) 日本化学療法学会臨床試験委員会皮内反応検討特別部会.抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン(2004年版).日本化学療法学会(参照2015.2.9) 8) 日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会.第9章治療.In:食物アレルギー診療ガイドライン2012.日本小児アレルギー学会(参照2015.2.9) 9) アメリカ心臓協会.第12章 第2節 アナフィラキシーに関連した心停止.In:心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン2010(American Heart Association Guidelines for CPR & ECC). AHA; 2010. S849-S851. 10) Choo KJ, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012; 4: CD007596. 11) 陶山恭博ほか. レジデントノート. 2011; 13: 1536-1542. 12) Thomas M, et al. Emerg Med J. 2005; 22: 272-273. 13) Rohacek M, et al. Allergy 2014; 69: 791-797. 14) 駒沢伸康ほか.日臨麻会誌.2013; 33: 846-871. 15) Park-Wyllie L, et al. Teratology. 2000; 62: 385-392.

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アナフィラキシーにおける皮膚症状と診断

はじめに アナフィラキシーは、狭義にはIgEを介する、複数の臓器における即時型アレルギー反応で、広義には、造影剤や非ステロイド系抗炎症剤(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs; NSAIDs)などによる、さらには明らかな誘因なく症状が出現する特発性のものを含む1-3)。皮膚症状に関する限り、誘因による表現型の違いは知られていない。 その症状は、マスト細胞が多く分布する皮膚、粘膜、気道、消化管に多く現れ、末梢血の血漿成分の漏出による循環動態の悪化と神経症状を伴うことが多い。なかでも皮膚症状はアナフィラキシーの80~90%で出現2,4)し(表1)、呼吸困難感、血圧低下など、他の生命に関わる症状に伴って出現した場合の診断的価値は高い。 表1を拡大する アナフィラキシーにおける皮膚症状アナフィラキシーによる皮膚症状は、臨床的にI型アレルギーにより生じる皮膚症状と同様である。すなわち、皮膚、粘膜に分布するマスト細胞の急速な脱顆粒により、ヒスタミンをはじめとするメディエーターが組織内に放出され、血管に作用して微小血管の拡張(紅斑)、血漿成分の漏出(膨疹)、知覚神経の刺激による瘙痒を生じる。この反応は、蕁麻疹と大きく重複するが、蕁麻疹のスペクトラムは広く、アナフィラキシーですべての蕁麻疹の臨床像が起こるわけではない。一方、もともと慢性に反復する患者がアナフィラキシーを生じた場合は、両者の皮疹を区別することは困難であり、臨床像により両者を区別することはできない。しかし、傾向として両者の違いはあり、その特性を認識しておくことは有用である。1)皮疹の範囲皮膚症状をアナフィラキシーの診断の根拠とするには、体表の広い範囲に皮疹が出現していることが大切である。果物や野菜を摂取して起こる口腔アレルギー症候群では、軽症例では口腔ならびに顔面皮膚、粘膜の発赤、腫脹などにとどまり、接触蕁麻疹でも軽度であれば皮疹は接触部位に限局した発赤ないし膨疹となる。WAO(World Allergy Organization) 3)および日本アレルギー学会のアナフィラキシーガイドライン2)では、アナフィラキシーの3項目を挙げ、そのうちのいずれかに該当する場合をアナフィラキシーと診断する。皮膚症状は、その3項目のうちの2項目に含まれ、具体的には「全身の発疹、瘙痒または紅潮」と定義されている。なお、アナフィラキシーでも皮疹がない、あるいは限局性の蕁麻疹が出現する可能性はあるが、日本アレルギー学会のガイドライン2)では、部分的な紅斑、蕁麻疹、膨疹はグレード1(軽症)に位置付けられている。2)膨疹と紅斑蕁麻疹では、初期は膨疹の周囲に広範囲の紅斑を伴うことが多く、浮腫の強い膨疹は白色になることもある。しかし、症状を繰り返すうちに紅斑の範囲は狭まり、慢性蕁麻疹の紅斑は膨疹の範囲に限局することが多い(図1)。私見ではあるが、アナフィラキシーにおける皮膚症状は紅斑が主体で、膨疹はないか、あっても散在する程度のことが多い(図2)。バンコマイシンを急速に点滴または静注することで生じるバンコマイシン症候群(またはレッドマン症候群)は、血中バンコマイシン濃度が上昇するために好塩基球からヒスタミンが遊離され、顔面、頸部に紅斑を生じる現象であるが、この場合も顔面、頸部のびまん性紅斑が主体で膨疹はその主役ではない。 図1を拡大する 図2を拡大する 図2(続き)を拡大する 一方、特発性の蕁麻疹でも体表の広い範囲に膨疹が出現することはあるが、その場合は比較的境界が明瞭で、多くの無疹部を確認できることが多い(図3)。浮腫が眼瞼、口唇に生じると、病変が深部に及び、血管性浮腫となることもある。 図3を拡大する 3)除外すべき皮膚症状アナフィラキシーに伴う皮膚症状の特徴は、個々の皮疹の形よりもむしろその経過にある。また、病態の中心は血管の拡張と浮腫にあって器質的変化を伴わないため、圧迫により消退しないことも診断の根拠にできる(図4)。なお、表在性の膨疹、紅斑を伴わない血管性浮腫は、遺伝性血管性浮腫またはアンジオテンシン変換酵素阻害薬内服中に生じる発作の可能性を考える必要がある。その場合は抗ヒスタミン薬、アドレナリンは無効で、前者には速やかなC1インヒビター(C1-INH)製剤の静注が必要である5)。 図4を拡大する おわりにアナフィラキシー様症状には、パニック発作、迷走神経発作など、アナフィラキシーとは取るべき対応がまったく異なる疾患を鑑別する必要がある。そのために、皮膚症状は重要な診断の助けになり、正確な観察を心がけたい。 1) The Centre for Clinical Practice at NICE. Anaphylaxis. NICE clinical guideline 134. NICE.(Accessed on February 9, 2015.) 2) 日本アレルギー学会監修.Anaphylaxis対策特別委員会編.アナフィラキシーガイドライン.日本アレルギー学会;2014. 3) アナフィラキシーの評価および管理に関する世界アレルギー機構ガイドライン. Estelle F, et al. 海老澤元宏ほか翻訳. アレルギー.2013; 62: 1464-1500. 4) Joint Task Force on Practice Parameters; American Academy of Allergy, Asthma and Immunology; American College of Allergy, Asthma and Immunology; Joint Council of Allergy, Asthma and Immunology. J Allergy Clin Immunol 115: S483-S523, 2005. 5) 秀 道広ほか.日皮会誌.2011; 121: 1339-1388.

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食物アレルギーの子を持つ「親」のQOLは?

 食物アレルギー児において、アドレナリンの処方やアナフィラキシー既往があるほど親のQOLは低くなることが、Claire E Ward氏らの調査により報告された。これまでアドレナリンの処方とQOLの関連性については明らかになっていなかった。Annals of allergy, asthma & immunology誌オンライン版2015年2月5日の掲載報告。 本調査は、ウェブサイト、e-mail、2つの全米食物アレルギー支援団体のソーシャルメディアネットワークを介して、アメリカ全土の食物アレルギーの子を持つ親を対象に実施された。全50問で、回答は匿名化された。QOLはthe Food Allergy Quality of Life-Parental Burden questionnaireによって評価された。アドレナリンの投与がQOLに及ぼす影響は、線形回帰分析で評価された。 主な結果は以下のとおり。・調査には3,541人の親が回答し、そのうち35.6%がアドレナリンを処方されていると報告した。・QOLアンケートの結果から、アドレナリンを処方されている子の親は、アドレナリンを処方されていない子の親よりもスコアが高い(=QOLが低い)ことが示された(3.07 vs. 2.84、p<0.001)。・アナフィラキシーの既往あり(3.01 vs.2.75、p<0.001)、複数品目の食物アレルギー(3.16 vs.2.67、p<0.001)、複数品目のアレルギーかつアドレナリン使用(3.24 vs.2.57、p<0.001)についても同様であった。・線形回帰分析の結果、アドレナリン使用、アナフィラキシーの既往、複数品目の食物アレルギーのある子の親は、QOLが有意に低いことが示された。複数品目の食物アレルギーについては、卵や牛乳、小麦、大豆、魚介類のアレルギーを持つ子の親のほうが、ピーナッツやナッツアレルギーを持つ子の親よりもQOLが有意に低かった。・親の大学教育とアレルギーの子の年齢が高いほど、QOLが高かった。・アドレナリン使用およびアナフィラキシーの既往と、QOLスコアには関連が見られた。 著者らは、アレルギー反応が親のQOLへ及ぼす影響を理解するためには、さらなる研究が必要であるとまとめた。

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アナフィラキシー総論 シンプル解説

1.疾患または病態の定義、概念 アナフィラキシーは、食物、薬物、蜂毒、ラテックスなどの原因物質により誘発される即時型アレルギー反応の一型であり、その症状は複数の臓器症状が短時間のうちに全身性に現れ、生命に危機を与えるものを指す。またアナフィラキシーのうち、血圧低下やそれに伴う意識レベルの変容を伴う場合を、アナフィラキシーショックという。 2.病態生理 アナフィラキシーは、典型的には原因物質が感作マスト細胞や好塩基球上のIgEを架橋することにより、系統的なメディエーターの放出および分泌により引き起こされる。メディエーターはヒスタミンやロイコトリエン、トロンボキサン、プロスタグランジン、PAFなどであり、これらは平滑筋攣縮、粘液分泌、血管拡張、血管透過性亢進などの作用を示す。 3.診断基準国際的には複数の診断基準があるが、わが国で採用されている診断基準を以下に示す。3つのクライテリアがあり、そのうちいずれかに該当すればアナフィラキシーと診断する。 1)患者が数分から数時間の経過において、「皮膚・粘膜のどちらか、または両症状」と「呼吸器症状か血圧低下または末梢循環不全」の合併がある。 2)患者が抗原に曝露されて数分から数時間に以下の症状が2つもしくはそれ以上出現した場合。(1)皮膚・粘膜のどちらか、または両症状、(2)呼吸器症状、(3)血圧低下または末梢循環不全、(4)消化器症状。 3)患者が既知の抗原に曝露されて数分から数時間の間の血圧低下。4.臨床症状アナフィラキシー症状は、その定義にもあるように全身的に現れる。このため、あらゆる症状が発現しうるといっても過言ではない。しかし症状出現頻度には大きな違いがある。1)皮膚症状最も現れやすい症状である(図)。皮膚症状は掻痒を伴う蕁麻疹が典型的であるが、掻痒は軽度もしくは伴わずに紅斑のみが広がっていくこともよく経験する。 図を拡大する 2)粘膜症状皮膚症状に次いで頻度が多い。主に口唇腫脹や、眼瞼腫脹、眼球粘膜症状、また口腔咽頭粘膜症状(イガイガ感、違和感など)がよく認められる。皮膚・粘膜症状は程度が強いと、外観的な重篤感をうかがわせるが、生命維持には関与しないので、重症度は高く捉える必要はない。3)喉頭症状(上気道)喉頭は容易には視認できないので、初期は患者の主観症状に依存する。しかし、進行すると窒息から致死の転帰をたどる可能性がある。患者は胸部圧迫感や胸部・喉頭絞扼感、喉頭違和感、嚥下困難感などの主観的症状、嗄声、無声など客観的症状、さまざま訴える。しかし、小児にはこれら主観症状の表出が不得手であり、検者は常に患児の喉頭症状に注意を払うべきである。4)呼吸器症状(下気道)喉頭症状も上気道、つまり呼吸器症状に本来は包含されるが、注意点が異なるので、便宜的に分けて表記した。下気道症状として散発的な咳嗽が、じきに連続性となり咳き込む。喘鳴などraleを伴うようになると呼吸困難症状も現れてくる。5)消化器症状腹痛、嘔吐が多く、時に下痢を認める。腹痛は主観的な症状であるので、重篤度を推し量るには難しい。まれであるが、腹痛の中に膵炎を発症している症例もあり、注意を要する。6)循環器症状血圧低下を代償するために、頻脈、顔面蒼白、四肢冷感、活動性の低下が初期に認められる(プレショック)。さらに低血圧に陥ると、意識レベルの悪化が進行し、持続すると多臓器不全に至る(ショック)。循環器症状は生命維持に直結するので、迅速で適切な対応が求められる。症状は抗原に曝露されてから速やかに出現する。食物・薬物で5分以内が25.8%、30分以内が56.1%、蜂毒では5分以内が41.4%にも及ぶ。ただし、なかには抗原曝露から1~2時間後に症状が誘発される場合もある。その進行はきわめて急速である。蜂毒によるアナフィラキシーの場合は秒単位、食物アレルギーや薬物では分単位で症状悪化を認めるため、急激な変化に即応できるような意識と体制が求められる。また初期症状がいったん収まった後、しばらくして再燃する二相性反応も知られる。その頻度は報告によりさまざまであるが、アナフィラキシー反応の6%で、初期反応の後1.3~28.4時間後に再燃したとする報告がある。初期症状におけるアドレナリン投与の遅れが二相性反応を誘発する指摘もある。5.治療1)アドレナリンアドレナリンがアナフィラキシー治療の第1選択薬であることはきわめて重要な知識である。アドレナリンは、アナフィラキシーによって生じている病態を改善させる最も効果的な薬剤である。アドレナリンの効果発現は早いが、代謝も早く(10~15分)、必要に応じて反復投与する。投与量は0.01mg/kg、投与経路は筋肉注射であり、添付文書には記載されているものの皮下注射は推奨されない。吸入による循環器系に対する効果は否定的であり、挿管時の経気道的投与とは一線を画して理解するべきである。アドレナリン投与の遅れが、致死と関連があるとする報告は枚挙にいとまがない。しかし日常診療においてアドレナリンは使い慣れない薬剤であり、治療指数(治療効果を示す量と致死量との比較)が狭く、また劇薬指定であることが影響して、その投与時期が遅れることがきわめて多い。致死の可能性がある症状、すなわちショックおよびプレショック、そして呼吸器(上下気道)症状に対して、迅速積極的に投与されるべきである。わが国では、アドレナリン自己注射薬(エピペン)が平成18年に小児にも適応となり、平成20年には学校・幼稚園、平成23年には保育所における注射が認められるようになった。医師は指導的な立場で、病院外でのアドレナリンの適正使用に貢献することが求められている。アドレナリンを米国だけはエピネフリンと公称するが、その歴史の事実は、高峰 譲吉氏が1900年に発見し、結晶化に成功した物質であり、そのときの命名がアドレナリンである。2)抗ヒスタミン薬(H1受容体拮抗薬)アドレナリン以外の薬剤のアナフィラキシー治療における位置づけは実は低い。それにもかかわらず漫然と使用されている臨床現場があるのも事実である。抗ヒスタミン薬の蕁麻疹や掻痒に対する効果は明らかであるが、紅斑にすらその効果は限定的である。ましてショックはもちろん、呼吸器、消化器症状に対する効果は期待できない。さらに注射薬はその鎮静効果から、かえって患者の意識レベルの評価を困難にする。このため、安易な投与はむしろ避け、投与対象を慎重に考え、使用後は継続的なモニタリングを行い急変に備える。3)ステロイド薬抗ヒスタミン薬と同様、アナフィラキシーの急性期の治療に対するステロイド薬の効果に関するエビデンスはきわめて乏しい。それにもかかわらず、経験的に多用されている特殊な薬剤である。二相性反応に対する効果を期待されて投与されることが多いが、そのエビデンスも乏しい。漫然と投与して、モニタリングもせずに経過を追うことがあってはならない。4)その他呼吸器症状にはβ2刺激薬吸入が効果的なことが多い。また十分な酸素投与および輸液管理は基本であり。ショック体位を早期から取らせ、不用意な体位変換も避けるべきである。6.臨床検査 アナフィラキシーにおける臨床検査所見の価値はきわめて限定的である。なぜなら検査結果が出た時点では、アナフィラキシー症状の趨勢は決しているからである。 事後的にアナフィラキシー症状を確認する目的としては、マスト細胞や好塩基球由来のメディエーター(血漿ヒスタミンや血清トリプターゼ、PAFなど)の上昇はアナフィラキシーの存在を支持する。特異的IgE値や皮膚テスト(プリックテスト)の結果は、アナフィラキシーのリスクと一定の相関性があるが、強くはない。 7.小児期のアナフィラキシー 小児期のアナフィラキシーの主な原因は食物である。一般的にソバや落花生のアナフィラキシーリスクが高いと考えられるが、鶏卵、牛乳、小麦のリスクが低いわけではなく、同様の管理が必要である。 症状は、小児に限って発症しやすいものはない。しかし、成人と異なり、症状の表出が十分にできないため、気道症状やショック症状の初期症状、たとえば喉頭違和感や閉塞感、立ちくらみ、元気がなくなるなどの症状を、見落とさないよう気を付ける必要がある。疫学調査で、小児期のショック発生率が成人に比べて少ないのは、こうした症状が見落とされているためと考えられる。小児のアナフィラキシーが、成人に比べて軽症であると安易に考えないほうが良い。 アナフィラキシーの治療は成人と変わらない。アドレナリンが第1選択薬であり、投与量は0.01mg/kgで0.5mgを上限とする。 自己判断ができない小児期のアナフィラキシー管理は、保護者や日々の管理者が代行することになる。このためリスクの認識と発症時の対応方法を、彼らに十分に習熟させることが求められる。

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アナフィラキシー 症例クイズ(1)

3回目のセフェム系抗菌薬静注後に熱感を訴えた糖尿病の女性症例161歳・女性経過3日前に家族でスキーに行ったが途中で疲れてしまい、本人は山小屋で家族が滑り終わるのを待ってホテルに戻った。翌日の夜から微熱があり、当日は38.5℃の発熱と頭痛があるため受診。既往歴高血圧、糖尿病服用薬剤イミダプリル(商品名:タナトリル)5mg、グリメピリド(同:アマリール)1mg

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【GET!ザ・トレンド】食物アレルギー

定義・病態1)2)食物アレルギーは「原因食物を摂取した後に、免疫学的機序を介して生体に不利益な症状(皮膚、粘膜、消化器、呼吸器、アナフィラキシーなど)が惹起される現象」を指し、食中毒や自然毒、免疫機序を介さない食物不耐症(仮性アレルゲンに伴う不耐症や乳糖不耐症など)は食物アレルギーと分けて区別する。疫学乳幼児期で5~10%、学童期で2~5%と考えられている。発症はそのほとんどが0~1歳であり、病型は即時型がほとんどである。主要原因食物は鶏卵、牛乳、小麦であり、全体の2/3を占める。また、これらの原因食物はほとんどが乳幼児期発症であり、そのうち3歳までにおよそ50%、6歳までに80~90%が耐性を獲得(食べられるようになること)する。原因食物は年齢ごとに異なり、学童期以降になると、甲殻類、果物類、小麦、ソバ、落花生、木の実などの発症が多い。表1を拡大する臨床病型1)新生児乳児消化管アレルギー7)早期新生児期に消化器症状(嘔吐、下痢、血便)を主に発症してくる。ほとんどは牛乳が抗原であるが、まれであるが大豆や米が原因のこともある。表2を拡大する2)食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎乳児期に顔面から前胸部にはじまり2ヵ月以上の慢性の経過を辿る。乳児の慢性湿疹のすべてが本疾患ではない。環境抗原が原因の古典的アトピー性皮膚炎であったり、乳児湿疹のコントロール不良例であったりするので慎重な鑑別が必要である。3)即時型8)誘発症状は蕁麻疹に代表される皮膚症状が90%程度の症例に認められる。以下、呼吸器、粘膜、消化器、全身症状の順に多い。アナフィラキシー症状も少なくなく、ショックの頻度は、7~10%と考えられている(図1)。図1を拡大する4)口腔アレルギー症候群果物や野菜に頻度が多く、症状は口腔喉頭症状のみであり、具体的には口腔内違和感(舌が腫れた感じ、口蓋のひりひり感など)、口唇周囲の症状が中心である。食品抗原と一部花粉やラテックス抗原との間に交叉性があり、合併しやすい傾向がある。5)食物依存性運動誘発アナフィラキシー9)原因食物(小麦、甲殻類、木の実類など)を摂取して、およそ4時間以内に運動を行ったときに誘発される。再現性は必ずしも高くない。診断されても、運動する前に原因食物を食べなければ良く、また食べたらおよそ4時間は運動をしなければ、除去の必要はない。診断1)2)診断のためのフローチャートを、乳児期に発症の多い、「食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎」と全年齢層に幅広く分布する「即時型」の2通り示す(図2-1、2-2)。いずれにしても十分な問診の情報を元に、他覚的検査を補助診断材料として用い、最終的には食物経口負荷試験の結果を基本に診断を進める。図2-1を拡大する図2-2を拡大する1)特異的IgE抗体検査(ImmunoCAP®、Skin Prick Test)特異的IgE抗体価の結果のみで、食物アレルギーの診断を行うことはできない。しかし、経口食物負荷試験実施は敷居が高く、検査結果で除去指導が行われている臨床の実態があるのも事実であり、食物アレルギー診療の1つの問題点である。主に行われる検査手法はImmunoCAP®法(Thermo Scientific社)であり、同結果を用いて負荷試験を実施したときの95%以上の陽性的中率となる抗体価の報告がある。とくにわが国からはprobability curveの報告があり(図3)、因子(年齢、原因食物)を考慮しながら本指標を利用することで、食物負荷試験の陽性リスクの確率的な高低を知ることができる10)。Skin Prick Test(皮膚プリックテスト)も同様に感度、特異度とも高いが、陽性的中率が低く、臨床的有用性は特異的IgE抗体検査に劣る11)。一般的には食べられる(耐性獲得)状況になっても、陽性になる傾向があり、耐性獲得の判断には向かない。図3を拡大する2)食物経口負荷試験食物アレルギーの診断は食物負荷試験がgold standardである。経口食物負荷試験は9歳未満の患児に対して、2006年に入院負荷試験、2008年に外来負荷試験に対して診療報酬が認められるようになった。実施には、小児科を標榜している保険医療機関、小児食物アレルギーの診断および治療の経験を10年以上有する小児科を担当する常勤医師が1名以上、急変時などの緊急事態に対応するための体制その他当該検査を行うための体制が整備されている必要がある。食物負荷試験を行うにあたって施行方法、適応、症状出現時の対応、検査結果の見方、その後の経過の追い方を詳しく理解する必要がある。その詳細は、「食物アレルギー経口負荷試験ガイドライン2009(日本小児アレルギー学会刊行)」に詳しい12)。食物アレルギーの治療1)必要最小限の除去と栄養指導食物アレルギーの診療の基本は“正しい診断に基づく必要最小限の除去”と“栄養指導”であり、積極的に治癒を誘導する治療方法や薬物は現状ではない。医師は定期的に特異的IgE値をチェックしながら、時期がきたら経口食物負荷試験を実施し耐性獲得の有無を確認するだけである。食物アレルギー児は、必要最小限ではあるが除去食をしながら耐性の獲得を待つことになる。除去食は、成長発達著しい乳幼児期に栄養学的リスクを取らせることになるため、医師は常に栄養評価を念頭に置き、管理栄養士とともに栄養指導を行いながら経過を追う必要がある。食物アレルギーの栄養指導には、厚生労働科学研究(研究分担者 今井孝成)で作成された「食物アレルギーの栄養指導の手引き2011」が参考になる13)。食物アレルギー研究会のホームページ(www.foodallergy.jp)などで無償ダウンロードできる。2)薬物療法クロモグリク酸ナトリウムは、食物アレルギーに伴う皮膚症状に保険適応があるのであって、耐性を誘導したり、内服することで原因食物が食べられるようになったりするような効果は持たない。第2世代以降のヒスタミン薬やロイコトリエン受容体拮抗薬なども、継続投与することで耐性を誘導するものではない。3)経口免疫療法(減感作療法)14)その効果は一目置くに値するが、治療中のアナフィラキシー症状(時にはショック症状)の誘発リスクがあるため、保護者および患児に対して十分なインフォームドコンセントを得て、かつ食物アレルギーおよびアナフィラキシー症状に十分な経験がある医師の監督下で慎重に行われる必要がある。安易に食物アレルギー患者に本法を導入することは、厳に慎むべきである。減感作のメカニズムは不明な点が多く、今後の研究の進展が期待される。アナフィラキシー15)アナフィラキシー症状は、アレルギー反応が原因で複数の臓器症状が急速に全身性にあらわれる状況を指す。小児における原因は食物が多いが、薬物や昆虫なども原因となる。アナフィラキシーショックは、アナフィラキシー症状のうち血圧低下、それに起因する意識障害などを伴う最重症の状態を指し、生命の危機的状況にある。症状の進行が速く、秒~分単位で進展していく。このため発症早期の発見と対処が重要である。アナフィラキシーの治療は、ショックおよびプレショック状態の場合には、できるだけ迅速にアドレナリン0.01mg/kg(最大0.3mg)を筋肉注射するべきである。アナフィラキシーショックに陥った場合には、発症30分以内のアドレナリン投与が予後を左右する。アドレナリンには自己注射薬(エピペン®)があり、0.3mgと0.15mgの2剤形がある。2009年には救急救命士は、自己注射薬の処方を受けている患者がアナフィラキシーに陥り、アドレナリンを注射すべき状況にあるとき、メディカルコントロールが無くても患者に自己注射薬を注射することが認められている。参考文献1)日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会.食物アレルギー診療ガイドライン2012.協和企画;2011.2)「食物アレルギーの診療の手引き2011」検討委員会編.厚生労働科学研究班による食物アレルギーの診療の手引き2011.3)今井孝成. アレルギー.2004;53:689-695.4)海老澤元宏ほか. アレルギー.2004;53:844.5)長谷川実穂ほか. 日小児アレルギー会誌.2007;21:560.6)今井孝成、板橋家頭夫. 日小児会誌.2005;109:1117-1122.7)Miyazawa T, et al. Pediatr Int. 2009; 51: 544-547.8)今井 孝成.アレルギー.2004;53:689-695.9)相原雄幸. 日小児アレルギー会誌.2004;18:59-67.10)Komata T, et al. J Allergy Clin Immunol. 2007; 119: 1272-1274.11)緒方 美佳ほか.アレルギー.2010;59: 839-846.12)宇理須厚雄ほか監修.日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会 経口負荷試験標準化WG.食物アレルギー経口負荷試験ガイドライン2009.協和企画;2009.13)厚生労働科学研究班(研究分担者:今井孝成).食物アレルギーの栄養指導の手引き2011.14)海老澤 元宏ほか.日小児アレルギー会誌.2012;26:158-166.15)今井 孝成ほか.アレルギー.2008;57:722-727.

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ラテックスフルーツ症候群だったレストラン店主【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第24回

ラテックスフルーツ症候群だったレストラン店主私はトマトアレルギーです。……というのはウソで、トマトが嫌いです。トマトだけでなく、ピーマンも嫌いです。なに子供みたいなことを言ってるんだとお思いの方もいらっしゃると思いますが、ダメなものはダメなんです。息子が大きくなったときにどう説明しようか悩んでいます。アレルギーだとウソをつくのはよくないでしょうし。うーむ。Tavidia S, et al.Latex, potato and tomato allergy in restaurateur.Contact Dermatitis. 2002 ;47:109.主人公は39歳の女性レストラン店主。彼女はフィッシュ・アンド・チップスとピザのレストランを経営していました。もともと金属アレルギーを持っているらしく、またアレルギー体質ということもあって手指には慢性的な皮膚炎を患っていました。ニッケルやコバルトなどのパッチテストが陽性で、主治医からは金属には極力触れないよう指導を受けていたそうです。しかし、それでも慢性的な皮膚炎はよくなりませんでした。そのため、彼女はゴム手袋をつけてレストラン業務を行っていたようです。ある日トマトを口にしたところ、口腔内にえもいわれぬ掻痒感と顔面の発赤腫脹がみられました。論文には詳しい記載はなかったのですが、レストランを経営している身でありながらこれまでトマトを口にしたことがなかったのか疑問が残ります。とにもかくにも、相談を受けた主治医はトマトアレルギーを疑いました。そして、RASTでトマトアレルギーであることが判明しました。また、トマトだけでなくジャガイモ、ラテックスアレルギーがあることが明らかになりました。日々の業務でゴム手袋をつけるだけでなく、トマトやジャガイモなんて味見もすることもあるでしょう。主治医は、金属だけでなく、トマト、ジャガイモ、ラテックスを避けるよう指導しました。その後、彼女の皮膚炎は軽快したそうです。レストラン経営がどうなったのかは不明ですが……。アレルギー疾患に詳しい方はピンときたと思いますが、この症例はラテックスフルーツ症候群です。キウイ、バナナ、アボカドなどの特定の食物に含まれるタンパクと交差性を持つことがあり、ラテックスアレルゲンに感作されることで、これら食材によって蕁麻疹やアナフィラキシーショックを起こすことが報告されています。慢性的に皮膚症状を呈する例もあるそうです。というわけで、レストランで使用していた手袋だけでなく、トマト、ジャガイモまでがアレルゲンとわかった不幸なレストラン店主の症例報告でした。

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抗菌薬静脈内投与後のアナフィラキシーショックによる死亡

消化器最終判決平成16年9月7日 最高裁判所 判決概要S状結腸がんの開腹術後に縫合不全を来たした57歳男性。抗菌薬投与を中心とした保存的治療を行っていた。術後17日、ドレーン内溶液の培養結果から、抗菌薬を一部変更してミノサイクリン(商品名:ミノマイシン)を静脈内投与したが、その直後にアナフィラキシーショックを発症して心肺停止状態となる。著しい喉頭浮腫のため気道確保は難航し、何とか気管内挿管に成功して救急蘇生を行ったが、発症から3時間半後に死亡した。詳細な経過患者情報平成2年7月19日 注腸造影検査などによりS状結腸がんと診断された57歳男性。初診時の問診票には、「異常体質過敏症、ショックなどの有無」欄の「抗菌薬剤(ペニシリン、ストマイなど)」の箇所に丸印を付けて提出した経過平成2(1990)年8月2日開腹手術目的で総合病院に入院。看護師に対し、風邪薬で蕁麻疹が出た経験があり、青魚、生魚で蕁麻疹が出ると申告。担当医師の問診でも、薬物アレルギーがあり、風邪薬で蕁麻疹が出たことがあると申告したが、担当医師は抗菌薬ではない市販の消炎鎮痛薬であろうと解釈し、具体的な薬品名など、薬物アレルギーの具体的内容、その詳細は把握しなかった。8月8日右半結腸切除術施行。手術後の感染予防目的として、セフォチアム(同:パンスポリン)およびセフチゾキシム(同:エポセリン)を投与(いずれも皮内反応は陰性)。8月16日(術後8日)腹部のドレーンから便汁様の排液が認められ、縫合不全と診断。保存的治療を行う。8月21日(術後13日)ドレーンからの分泌物を細菌培養検査に提出。8月23日(術後15日)38℃前後の発熱。8月25日(術後17日)解熱傾向がみられないため、抗菌薬をピペラシリン(同:ペントシリン)とセフメノキシム(同:ベストコール)に変更(いずれも皮内反応は陰性)。10:00ペントシリン® 2g、ベストコール® 1gを点滴静注。とくに異常は認められなかった。13:00細菌培養検査の結果が判明し、4種類の菌が確認された。ベストコール®は2種の菌に、ペントシリン®は3種の菌に感受性が認められたが、4種の菌すべてに感受性があるのはミノマイシン®であったため、ベストコール®をミノマイシン®に変更し、同日夜の投与分からペントシリン®とミノマイシン®の2剤併用で様子をみることにした。22:00看護師によりペントシリン® 2g、ミノマイシン® 100mgの点滴静注が開始された(主治医から看護師に対し、投与方法、投与後の経過観察などについて特別な指示なし)。ところが、点滴静注を開始して数分後に苦しくなってうめき声を上げ、付き添い中の妻がナースコール。22:10看護師が訪室。抗菌薬の点滴開始直後から気分が悪く体がピリピリした感じがするという言葉を聞き、各薬剤の投与を中止してドクターコール。22:15「オエッ」というような声を何回か発した後、心肺停止状態となる。数分後に医師が到着し、ただちにアンビューバッグによる人工呼吸、心臓マッサージを開始。22:30気管内挿管を試みたが、喉頭浮腫が強く挿管不能のため、喉頭穿刺を行う。22:40気管内挿管に成功するが心肺停止状態。アドレナリン(同:ボスミン)投与をはじめとした救急蘇生を続けるが、心肺は再開せず。8月26日(術後18日)01:28死亡確認。死因はいずれかの薬剤によるアナフィラキシーショックと考えられた。当事者の主張患者側(原告)の主張今回使用した抗菌薬には、アナフィラキシーショックなど重篤な副作用を生じる可能性があるのだから、もともと薬剤アレルギーの既往がある本件に抗菌薬を静脈内投与する場合、異常事態に備えて速やかに対応できるよう十分な監視体制を講じる注意義務があった。ところが、医師は看護師に特別な監視指示を与えることなく、漫然と抗菌薬投与を命じたため、アナフィラキシーショックの発見が遅れた。しかも、重篤な副作用に備えて救命措置を準備しておく注意義務があったにもかかわらず、気道確保や強心剤投与が遅れたため救命できなかった。病院側(被告)の主張本件で使用した抗菌薬は、従前から投与していた薬剤を一部変更しただけに過ぎず、薬物アレルギーの既往症があることは承知していたが、それまでに使用した抗菌薬では副作用はなかった。そのため、新たに投与した(皮内反応は不要とされている)ミノマイシン®投与後にアナフィラキシーショックを生じることは予見不可能であるし、そのような重篤な副作用を想定して医師または看護師が付き添ってまで経過観察をする義務はない。そして、容態急変後は速やかに当直医師が対応しており、救急蘇生に過誤があったということはできない。裁判所の判断高等裁判所の判断医師、看護師に過失なし(1億2,000万円の請求を棄却)。最高裁判所の判断(平成16年9月7日)原審(高等裁判所)の判断は以下の理由で是認できない。薬剤が静注により投与された場合に起きるアナフィラキシーショックは、ほとんどの場合、静脈内投与後5分以内に発症するものとされており、その病変の進行が急速であることから、アナフィラキシーショック症状を引き起こす可能性のある薬剤を投与する場合には、投与後の経過観察を十分に行い、その初期症状をいち早く察知することが肝要であり、発症した場合には、薬剤の投与をただちに中止するとともに、できるだけ早期に救急治療を行うことが重要である。とくに、アレルギー性疾患を有する患者の場合には、薬剤の投与によるアナフィラキシーショックの発症率が高いことから、格別の注意を払うことが必要とされている。本件では入院時の問診で薬物アレルギーの申告を受けていたのだから、アナフィラキシーショックを引き起こす可能性のある抗菌薬を投与するに際しては、重篤な副作用の発症する可能性を予見し、その発症に備えてあらかじめ看護師に対し、投与後の経過観察を指示・連絡をする注意義務があった。担当看護師は抗菌薬を開始後すぐに病室から退出してしまい、その結果、心臓マッサージが開始されたのが発症から10分以上経過したあとで、気管内挿管が試みられたのが発症から20分以上、ボスミン®投与は発症後40分が経過したあとであり、救急措置が大幅に遅れた。これでは投与後5分以内に発症するというアナフィラキシーショックへの対応は明らかに不適切である。以上のように、担当医師や看護師が注意義務を怠った過失があるから、判決の結論に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるため、死亡との因果関係をさらに審理をつくさせるため、本件を高等裁判所に差し戻すこととする。考察またまた医師にとっては驚くべき裁判官の考え方が示されました。しかも、最高裁判所の担当判事4名が全員一致した判断というのですから、医師と法律専門家との考え方には、どうしようもなく深い溝があると思います。本症例は、S状結腸がんの開腹手術後8日目に縫合不全を来たし(これはやむを得ない合併症と考えられます)、術後17日でそれまで投与していた抗菌薬を変更、その後に報告された細菌培養の結果から、より効果の期待できるミノマイシン®を点滴投与したところ、その直後にアナフィラキシーショックを発症しました。ショック発現までの時間経過を振り返ると、22:00ミノマイシン®開始。数分後に苦しくなりうめき声を上げたので家族がナースコール。22:10看護師が訪室、各薬剤の投与を中止してドクターコール。22:15心肺停止状態。数分後に医師が到着し、救急蘇生開始。22:30喉頭浮腫が強く挿管不能のため、喉頭穿刺を行う。22:40気管内挿管に成功するが心肺停止状態。となっています。今回の病院は約350床程度の規模で、上記の対応をみる限り、病院内の急変に対する体制としてはけっして不十分ではないと思います。最高裁判所の判事は、アナフィラキシーショックは5分以内の発見が大事である、という文献をもとに、もし看護師がミノマイシン®開始後ずっと付き添っていれば、もっと早く救急措置ができたであろう、という根拠で医師の過失と断じました。ところが当時の状況は、大腸がんの開腹手術後17日が経過し、すでに集中治療室から一般病室へ転室していると思われ、何とか縫合不全を保存的治療で治そうとしている状況でした。しかも、薬剤アレルギーの既往症が申告されていたとはいえ、それまでに使用したパンスポリン®、セフチゾキシム®、ベストコール®、ペントシリン®では何ら副作用の問題はなかったのですから、抗菌薬の一部変さらに際して看護師に特別な指示を出すべき積極的な理由はなかったと思います。ましてや、ミノマイシン®は皮内反応が不要とされている抗菌薬なので、裁判官のいうようにアナフィラキシーショックを予見して、22:00からのミノマイシン®開始に際して看護師をつきっきりで貼り付けておくことなど、けっして現実的ではないように思います。もし、看護師がベッドサイドでずっと付き添っていたとして、救命措置をどれくらい早く開始することができたでしょうか。側に付き添っていた家族が異変に気づいたのは、ミノマイシン®静脈注射開始後数分でしたから、おそらく22:05頃にドクターコールを行い、22:10くらいには院内の当直医が病室へ到着することができたと思われます(おそらく5~10分程度の短縮でしょう)。その時点から救急蘇生が開始されることになりますが、果たして22:15の心肺停止を5分間の措置で防ぎ得たでしょうか。しかもアナフィラキシーショックに関連した喉頭浮腫が急激に進行し、気道を確保することすらできず、やむなく喉頭穿刺まで行っていますので、けっして茫然自失として事態をやり過ごしたとか、注意義務を果たさなかったというような診療行為ではないと思います。つまり、本件のような激烈なアナフィラキシーショックの場合、医師が神業のような処置を行っても救命できないケースが存在するのは厳然とした事実です。にもかかわらず、医師や看護師がつきっきりでみていなかったのが悪い、救急措置をもう少し早くすれば助かったかもしれないなどという考え方は、病気のリスクを紙面でしか知り得ない裁判官の偏った考え方といえるのではないでしょうか。このように、医師にとっては防ぎようのないと思われる病態をも、医療ミスとして結果責任を問う声が非常に大きくなっていると思います。極論すると、個々の医療行為に対してすべてのリスクを説明し、それでもなお治療を受けると患者が同意しない限り、医師は結果責任を免れることはできません。すなわち本件でも、患者およびその家族へ、術後の縫合不全や感染症にはミノマイシン®が必要であることを十分に説明し、アレルギーがある患者ではミノマイシン®によってショックを起こして死亡することもありうるけれども、それでも注射してよいか、という同意を求めなければならない、ということですが、そのような説明をすることはきわめて不自然でしょう。本件は「医師や看護師の過失はない」と考えた高等裁判所へ差し戻されていますが、ぜひとも良識のある判断を期待したいと思います。一方、抗菌薬の取り扱いに関して、2004年10月に日本化学療法学会から「抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン」が発表されました。それによると、これまで慣習化していた抗菌薬投与前の皮内反応は、アナフィラキシー発現の予知として有用性に乏しいと結論付けています。具体的には、アレルギー歴のない不特定多数の症例には皮内反応の有用性はないとする一方で、病歴からアレルギーが疑われる患者に抗菌薬を投与せざるを得ない場合には、あらかじめ皮内反応を行った方がよいということになります。そして、抗菌薬静脈内投与に際して重要な基本的事項として、以下の3点が強調されました。事前に既往症について十分な問診を行い、抗菌薬などによるアレルギー歴は必ず確認すること投与に際しては必ずショックなどに対する救急処置のとれる準備をしておくこと投与開始から投与終了後まで、患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行うこと。とくに、投与開始直後は注意深く観察することこのうち、本件のようなケースには第三項が重要となります。これまでは、抗菌薬静脈内注射後にはまれに重篤な副作用が現れることがあるので経過観察は大事ですよ、という一般的な認識はあっても、具体的にどのようにするのか、といった対策まで講じている施設は少ないのではないでしょうか。しかも、抗菌薬投与の患者全員に対し、「投与開始から投与終了後まで十分な観察を行う」ことは、実際の医療現場では事実上不可能ではないかと思われます。ところが、このようなガイドラインが発表されると、不幸にも抗菌薬によるアナフィラキシーショックを発症して死亡し紛争へ至った場合、この基本三原則に基づいて医師の過失を判断する可能性がきわめて高くなります。当時は急患で忙しかった、看護要員が足りずいかんともし難い、などというような個別の事情は、一切通用しなくなると思います。またガイドラインの記述は、「抗菌薬投与開始直後は注意深く観察すること」という漠然とした内容であり、ではどのようにしたらよいのか、バイタルサインをモニターするべきなのか、開始直後とは何分までなのか、といった対策までは提示されていません。ところが、このガイドラインのもとになった「日本化学療法学会臨床試験委員会・皮内反応検討特別部会の報告書(日本化学療法学会雑誌 Vol.51:497-506, 2003)」によると、「きわめて低頻度であるがアナフィラキシーショックが発現するので、事前に抗菌薬によるショックを含むアレルギー歴の問診を必ず行い、静脈内投与開始後20~30分における患者の観察とショック発現に対する対処の備えをしておくことが必要である」とされました。すなわち、ここではっきりと「20~30分」という具体的な基準が示されてしまいましたので、今後はこれがスタンダードとされる可能性が高いと思います。したがって、抗菌薬の初回静脈内投与では、全例において、点滴開始後少なくとも20分程度は誰かが付き添う、モニターをつけておく、などといった注意を払う必要があることになります。これを杓子定規に医療現場に当てはめると、かなりな混乱を招くことは十分に予測されますが、世の中の流れがこのようになっている以上、けっして見過ごすわけにはいかないと思います。今回の症例を参考にして、ぜひとも先生方の施設における方針を再確認して頂ければと思います。日本化学療法学会「抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン(2004年版)」日本化学療法学会「抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策について(2004年版概要)」日本化学療法学会臨床試験委員会・皮内反応検討特別部会報告書(日本化学療法学会雑誌 Vol.51:497-506, 2003)」消化器

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米国住民の7.6%が食物アレルギー

 米国・マウントサイナイ医科大学のScott H. Sicherer氏らは、アレルギー性皮膚疾患とアナフィラキシーに関する最新の研究進捗状況を、2013年に発表された報告を基に概観した。食物アレルギーの研究から、米国住民の7.6%がその影響を受けていることが明らかになったこと、またアトピー性皮膚炎については、表皮細胞の分化における遺伝子や免疫メディエーターの欠損が重症度と関連していることが明らかになるなどの成果がみられたことを報告している。Journal of Allergy and Clinical Immunology誌2014年2月号(オンライン版2013年12月27日号)の掲載報告。 Sicherer氏らは本レビューにおいて、アナフィラキシー(食物、薬物、昆虫に対する過敏反応)およびアレルギー性皮膚疾患研究の進捗状況を明らかにすることを目的とした。2013年に雑誌に発表された論文をレビューした。 主な内容は以下のとおり。・食物アレルギーに関する研究によって以下の7点が示唆された。(1)米国住民の7.6%が食物アレルギーをもっている。(2)“ヘルシー”な朝食は食物アレルギーを予防する可能性がある。(3)皮膚は重要な感作ルートの可能性がある。(4)アレルゲン成分テストは、診断に役立つ可能性がある。(5)牛乳アレルギーは、早めの検査により予測できる可能性がある。(6)経口あるいは舌下免疫療法は、有望であるが注意も必要である。(7)プレ臨床研究により免疫療法と減感作の有望な代替法が示唆された。・好酸球性食道炎の研究において、成人における結合組織疾患との関連および食事管理が治療に影響を与えることが示唆された。・アナフィラキシー重症度マーカーが明らかになり、潜在的な診断および治療ターゲットが判明する可能性が示唆された。・薬物、昆虫アレルギーの血清検査における洞察が、診断の改善に結びつく可能性が示唆された。・アトピー性皮膚炎の重症度に、表皮細胞の遺伝子および免疫メディエーターの欠損が関与していることが示唆された。

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ピーナッツアレルギーに経口免疫療法(OIT)は有効/Lancet

 ピーナッツアレルギーを有する小児の脱感作に経口免疫療法(OIT)が有効であることが、英国・ケンブリッジ大学病院NHS財団トラストのKatherine Anagnostou氏らによる第II相無作為化比較対照試験「STOP II」の結果、示された。QOL改善、良好な安全性プロファイルが示され、免疫学的臨床検査値にも有意な変化が認められたという。結果を踏まえて著者は、「OITを非専門医の下では行ってはならないが、7~16歳児でのピーナッツOITは有効で忍容性も良好である」と結論している。ピーナッツOITの有効性に関する検討は先行して行われた第I相の小規模試験において示唆されていた。Lancet誌オンライン版2014年1月30日号掲載の報告。7~16歳を対象に2~800mg/日摂取させ、6ヵ月時点で除去療法群と脱感作を評価 STOP IIは、ピーナッツアレルギーを有する小児の脱感作に対するOITの有効性を確定することを目的に、対照(現在標準治療のピーナッツ除去療法)とOIT(ピーナッツプロテイン2、5、12.5、25、50、100、200、400、800mg/日を摂取)の有効性を比較した無作為化対照クロスオーバー試験で、NIHR/Wellcome Trust Cambridge Clinical Research Facilityで被験者を募り行われた。各群への割り付けは盲検化しなかった。 適格とされたのは、ピーナッツ摂取直後に過敏反応を有し、プリックテストでピーナッツが陽性、二重盲検プラセボ対照食物負荷試験(DBPCFC)で陽性である7~16歳の若年者だった。主要慢性疾患(湿疹、鼻炎、喘息など)を有する者、保護者がピーナッツアレルギー疑い/診断の場合、また試験手技に消極的/実行不能の場合は除外した。 主要アウトカムは脱感作で、6ヵ月時点のピーナッツプロテイン1,400mgによるDBPCFCが陰性である場合と定義した。なお対照群に割り付けられた被験者は、第2フェーズにおいてOITを受け、その後にDBPCFCを受けた。また検討では、免疫学的パラメータおよび疾患特異的QOLスコアについても測定し、intention to treatにて分析した。6ヵ月の脱感作率、OIT群62%、除去療法群は0 第1フェーズ試験後に主要アウトカムの脱感作が記録されたのは、OIT群62%(24/39例、95%信頼区間[CI]:45~78%)に対し、対照群は0(0/46例、同:0~9)であった(p<0.001)。 OIT群のうち84%(95%CI:70~93%)が、26週間、800mg(ピーナッツ5個分に相当)/日の連日摂取に忍容性を示した。OIT後のピーナッツ摂取閾値増大の中央値は1,345mg(範囲:45~1400、p<0.001)、25.5倍(範囲1.82~280、p<0.001)であった。 第2フェーズ試験後に、DBPCFCで1,400mg(ピーナッツ10個分に相当)に忍容性を示したのは54%、800mg/日の連日摂取に忍容性を示したのは91%(95%CI:79~98%)であった。 また、QOLスコアはOIT後有意な改善を示した(変化の中央値:-1.61、p<0.001)。副作用は大半の患者で軽度であった。最もよくみられたのは胃腸症状で(悪心31例、嘔吐31例、下痢1例)、次いで摂取後の口のかゆみが6.3%(76例)、摂取後の喘鳴が0.41%(21例)であった。摂取後のアドレナリン注射例は0.01%(1例)だった。

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