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5月19日 IBDを理解する日【今日は何の日?】

【5月19日 IBDを理解する日】〔由来〕「世界IBDデー」に准じ、クローン病や潰瘍性大腸疾患などの「炎症性腸疾患」(IBD)への理解促進のため、IBDネットワークとアッヴィの共同で2013年に制定。関連コンテンツ第82回「IBD診療ブラッシュアップ」【診療よろず相談TV】アトピー性皮膚炎の成人・小児はIBD高リスク活動期クローン病の導入・維持療法、ミリキズマブが有効/Lancet中等症~重症の潰瘍性大腸炎、グセルクマブは有効かつ安全/Lancet中等症~重症の潰瘍性大腸炎、抗TL1A抗体tulisokibartが有望/NEJM

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アトピー性皮膚炎への新規外用薬、既存薬と比較~メタ解析

 アトピー性皮膚炎に対する治療薬として、2020年1月にデルゴシチニブ、2021年9月にジファミラストが新たに承認された。長崎大学の室田 浩之氏らは、これらの薬剤と既存の標準的な外用薬について、臨床的有効性および安全性を評価するためシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施し、結果をDermatology and Therapy誌2025年5月号で報告した。 Medline、Embase、Cochrane、ならびに医中誌から対象となる文献を選定し、有効性の評価項目として、Eczema Area and Severity Index(EASI)スコアおよびInvestigator Global Assessment(IGA)スコアを使用した。安全性の評価項目には、重篤な有害事象、ざ瘡、および皮膚感染症が含まれた。 固定効果モデルを用いたベイジアン多重処理ネットワークメタ解析が実施され、アトピー性皮膚炎に対する各種外用薬(プラセボを含む)の転帰を比較するために、オッズ比(OR)および95%信用区間(CrI)が用いられた。 主な結果は以下のとおり。・アトピー性皮膚炎の成人患者(重症度は異なる)を対象とした、11件の無作為化比較試験がネットワークメタ解析に組み入れられた。・システマティックレビューの結果、ジファミラスト0.3%および1%、タクロリムス0.1%においてEASIスコアの改善が認められた。また、ジファミラスト1%、デルゴシチニブ3%、およびタクロリムス0.1%でIGAスコアの改善が認められた。・ネットワークメタ解析の結果、4週時点において、ジファミラスト1%(1日2回投与、BID)はプラセボと比較して、IGAスコアおよびベースラインからのEASIスコア変化率のいずれにおいても有意な改善を示した。一方で、ほかの治療薬との比較においては、点推定値は数値的にはジファミラスト1%に有利であったものの、統計学的な有意差は認められなかった。・ジファミラスト1%(BID)は、デルゴシチニブ0.3%(BID)と比較して、ざ瘡の発生率が有意に低かった。・重篤な有害事象、ざ瘡、および皮膚感染症の発生率において、プラセボやほかの治療薬との間で統計学的に有意な差は認められなかった。

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触覚フィードバックで軽度アトピー性皮膚炎患者における夜間掻痒が軽減

 軽度のアトピー性皮膚炎に対する触覚フィードバックは、患者の夜間掻痒を軽減させる非薬理学的介入として使用できる可能性があるという研究結果が、「JAMA Dermatology」に2月5日掲載された。 米ミシガン大学アナーバー校のAlbert F. Yang氏らは、単アーム2段階コホート試験を実施し、クローズドループ・触覚フィードバックを備えた人工知能(AI)対応ウェアラブルセンサーについて、軽症アトピー性皮膚炎の夜間掻痒症状に対する検出精度および軽減効果を検討した。試験には、中等度~重度の掻痒行動を自己申告した軽症アトピー性皮膚炎患者が対象者として登録された。手に装着したウェアラブルセンサーから送られる触覚フィードバックは、AIアルゴリズムによって夜間掻痒症状が検出されたときに発せられる。対象者は、まず検出機能のみ作動させたセンサーを7日間装着し、その後触覚フィードバックも作動させた状態でセンサーを7日間装着した。 対象者10人について、合計104回、831時間の夜間睡眠がモニタリングされた。追跡期間中に試験から脱落した対象者はいなかった。解析の結果、第2週目に触覚フィードバックを作動させると、1夜当たりの掻痒イベント平均回数が28%有意に減少し(45.6回対32.8回)、睡眠1時間当たりの掻痒平均時間に50%の有意差が認められた(15.8秒対7.9秒)。総睡眠時間の減少はなかった。 著者らは、「この技術は、全身治療の適応でない、あるいはステロイド外用薬の使用を希望しないが掻痒行動が多いと訴える軽症AD患者において、掻痒行動を減少させるための単独、あるいはより現実的には補助的な治療機器として役立つ可能性がある」と述べている。 なお複数の著者が、本研究の一部助成を行い、特許を出願中であるマルホ社と、1人の著者がアッヴィ社との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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第261回 なぜ鳥居薬品を?塩野義製薬の買収戦略とは

製薬業界は世界的に見ると、再編が著しい業界である。いわゆる老舗の製薬企業同士の合併・買収という意味では、2020年の米国・アッヴィによるアイルランド・アラガンの買収が近年では最新の動きと言えるだろうが、欧米のメガファーマによるバイオベンチャー買収は日常茶飯事の出来事と言ってよい。これに対し日本の製薬企業でも、上位企業によるメガファーマ同様のバイオベンチャー買収が一昔前と比べて盛んになったことは事実だ。ただ、新薬開発能力のある製薬企業は売上高で4兆円超の武田薬品を筆頭に下は500億円規模まで約30社がひしめく、世界的に見ても稀なほど“過密”な業界でもある。このためアナリストなどからは、1990年代から判で押したように「国内再編が必至」と言われてきた。その中で国内の製薬企業同士の合併や経営統合などが盛んだったのが2005~07年にかけてである。藤沢薬品工業と山之内製薬によるアステラス製薬、第一製薬と三共による第一三共、大日本製薬と住友製薬による大日本住友製薬(現・住友ファーマ)、田辺製薬と三菱ウェルファーマによる田辺三菱製薬はいずれもこの時期に誕生している。上場製薬企業あるいは上場企業の製薬部門の合併で言うと、もっとも直近は2008年の協和発酵キリン(現・協和キリン)だろう。あれから15年間、国内製薬企業は“沈黙”を続けてきたが、それが突如破られた。ゴールデンウイーク明けのつい先日、5月7日に塩野義製薬が「日本たばこ産業(JT)の医薬事業を約1,600億円で買収する」と発表したのだ。JTと鳥居薬品の歴史JTの医薬事業というのはやや複雑な構造をしているが、それを解説する前にJTの沿革について簡単に触れておきたい。JTはかつてタバコ・塩・樟脳(しょうのう)※の専売事業を行っていた旧大蔵省外局の専売局が外郭団体・日本専売公社として分離独立し、それが1985年に民営化されて誕生した。すでに1962年に樟脳の専売制度は廃止され、民営化時点ではタバコと塩の専売事業を引き継いだが、塩の製造販売は1997年に自由化され、すでにJTの手を離れている。※クスノキの根や枝を蒸留して作られ、香料や医薬品、防虫剤、セルロイドなどの原料となる。ただ、民営化直後からたばこ事業の将来性には一定のネガティブな見通しは持っていたのだろう。民営化直後から事業開発本部を設置し、1990年7月までに同本部を改組し、医薬、食品などの事業部を新設。1993年9月には医薬事業の研究体制の充実・強化を目的に医薬総合研究所を設置した。ただ、衆目一致するように医薬、いわゆる製薬事業は自前での研究開発から製品化までのリードタイムは最短で10数年とかなり気の長い事業である。そうしたことも影響してか、1998年に同社は国内中堅製薬企業の鳥居薬品の発行済株式の過半数を、株式公開買付(TOB)により取得し、連結子会社化した。子会社化された鳥居薬品は国内製薬業界では中堅でやや影が薄いと感じる人も少なくないだろうが、1872年創業の老舗である。たぶん私と同世代の医療者は同社の名前から連想するのは膵炎治療薬のナファモスタット(商品名:フサンほか)や痛風・高尿酸血症治療薬のベンズブロマロン(商品名:ユリノームほか)だろうか? 近年では品薄で供給制限が続いているスギ花粉症の減感作療法薬であるシダキュアが有名である。JTによる買収後は、研究開発機能がJT側、製造・販売が鳥居薬品という形で集約化されていた。余談だが、私が専門誌の新人記者だった頃、当時の上司は“鳥居薬品は研究開発力が高く、将来の製薬企業再編のキーになる”ことを予言していた…。塩野義の買収計画さて、今回の塩野義によるJT医薬事業の買収は以下のようなスキームだ。現在、鳥居薬品の株式の54.78%はJTが保有し、残る45.22%が株式市場で売買されている。まず、塩野義はこの45.22%を2025年5月8日~6月18日までの期間、1株6,350円、総額約807億円でTOBする。これが終了した後に鳥居薬品のJT持ち株分を鳥居薬品自身が約700億円で取得し、9月までの完全子会社化を目指す。この後さらに2025年12月までにJT医薬事業は会社分割して54億円で塩野義、JTの米国・子会社のAkros Pharmaを36億円で塩野義の米国・子会社Shionogi Incがそれぞれ買収する。JTの医薬事業は塩野義に吸収されるが、米Akros Pharma社はShionogi Incの完全子会社となる。なぜJTを?今回の買収は、昨年、塩野義からJTに対しオファーがあったことから始まったという。会見後に塩野義製薬代表取締役社長の手代木 功氏にこの点を尋ねたところ、「ここ数年、低分子創薬領域でのメディシナルケミスト(創薬化学者)の確保を念頭に薬学部だけでなく、農学部など幅広い領域への浸透を図り、米国・カリフォルニア州サンディエゴに細菌感染症治療薬の研究開発拠点の開設も目指していた。しかし、昨年買収したキューペックス社でも人材確保が思うように進まなかった」とのこと。そうした中でメディシナルケミストの層が厚いJTグループに注目したのがきっかけだったと話した。また、手代木氏はJT・鳥居の研究開発拠点が横浜市と大阪府高槻市にあり、とくに後者は塩野義の研究開発拠点である大阪府豊中市に近いことも大きな利点だったと語った。実際、会見の中でも手代木氏は「(研究拠点の近さも)大きなリストラなく進められる。研究所勤務者は異動、転勤などに不慣れだが、ここも非常にフィットすると考えた」と強調した。この辺は、研究開発畑出身の手代木氏らしい考えでもある。一方のJT側は「近年、新薬創出のハードルが上昇しているうえに、グローバルメガファーマを中心に国際的な開発競争が激化している。当社グループの事業運営では、医薬事業の中長期的な成長が不透明な状況だった」(JT代表取締役副社長・嶋吉 耕史氏)、「JTプラス鳥居という体制でこのまま事業を継続するよりも、より早く、より大きく、より確実に事業を成長させることができるのではないかと考えられた」(鳥居薬品代表取締役社長・近藤 紳雅氏)と語った。このJTと鳥居薬品側の説明は、ある意味、当然とも言える。現在のメガファーマの年間研究開発費は上位で軽く1兆円を超え、日本トップで世界第14位の武田薬品ですら7,000億円。しかし、JT・鳥居薬品のそれはわずか30億円強である。ちなみに塩野義の年間研究開発費は1,000億円超である。もっともメガファーマとの研究開発費規模の違いは、メガファーマの多くが高分子の抗体医薬品に軸足を置いているのに対し、塩野義や鳥居は低分子化合物が中心であるという事情も考慮しなければならない。とはいえ、JT・鳥居に関しては成長のドライバーとなる新薬を生み出す源泉の規模がここまで異なると、もはや「小さくともキラリと光る」ですらおぼつかないと言っても過言ではないのが実状だろう。今後の成長戦略さて今後は買収をした塩野義側がこれを土台にどう成長していくか? という点に焦点が移る。同社は2023~30年度の中期経営計画「STS2030 Revision」で2030年度の売上高8,000億円を目標に掲げている。現在地は2024年3月期決算での4,351億円である。単純計算すると、今回の買収でここに約1,000億円が上乗せされるが、新薬創出の不確実さを踏まえれば、2030年の目標はかなりハードルが高いと言わざるを得ない。しかも、同社は感染症領域が主軸であるため、どうしても製品群が対象とする感染症そのものの流行に業績が左右される。こうしたこともあってか前述の中期経営計画では「新製品/新規事業拡大」を強調し、既存の感染症領域のみならずアンメッド創薬などポートフォリオ拡大を掲げてきた。今回、JT・鳥居を買収することでアレルゲン領域・皮膚疾患領域へとウイングを広げることは可能になった。国内製薬業界では従来から塩野義の営業力への評価は高いだけに、今回の買収で今後のJT・鳥居の製品群の売上高伸長が予想される。とくに鳥居側には現在需要に供給が追い付かずに出荷制限となっている前述のシダキュアがあり、皮膚領域では2020年に発売されたばかりだが業績が好調なアトピー性皮膚炎治療薬のJAK阻害薬の外用剤・デルゴシチニブ(商品名:コレクチム軟膏)もある。塩野義と言えば、アトピー性皮膚炎治療薬ではある種の定番とも言われるステロイド外用薬のベタメタゾン吉草酸エステル(商品名:リンデロンVクリームほか)を有している企業でもある。実際、手代木氏も会見で「皮膚領域は今でこそそこまで強くないものの、かつてはステロイド外用薬の企業として一世を風靡し、現状でもそれなりの取り扱いはあり、このあたりの営業のフィットも非常に良い」と述べた。とはいえ、現状の両社業績をベースにJT・鳥居の製品群に対する塩野義の営業力強化を折り込んでも今後2~3年先までは売上高6,000億円規模ぐらいが限界ではないだろうか? その意味では同社が8,000億円という目標に到達するには、今後上市される新製品の売上高をかなりポジティブに予想しても、もう一段の再編は必要になるかもしれない。一方、何度も手代木氏が強調した研究開発力の強化では、塩野義の100人プラスアルファというメディシナルケミスト数にJTグループの約80人が組み込まれ、「全盛期の数にもう一度戻れる」(手代木氏)ことを明らかにするとともに、自社の研究開発リソースでは強化が及ばなかった免疫領域・腎領域にも手が届くようになるとも語った。同時に手代木氏が会見の中で語ったのは買収に至るデューディリジェンスでわかったJTのAI創薬と探索研究のレベルの高さである。「AI創薬のプラットフォームは正直に言って当社よりはるかに上で、日本の中でも相当進化している。当社の人間が見させていただいてすぐにでも一緒にやりたいと言ったほど。また、JTはフェーズ2ぐらいでのメガカンパニーへのライセンス・アウトを念頭にどうやったらそれが可能か意識をした前臨床・初期臨床試験を進めている。この点では多分当社より上を行く」以前の本連載でも私自身は日本の製薬業界は低分子創薬の世界ですらもはや後進国になりつつあると指摘したが、今回、手代木氏は“新生”塩野義製薬について「“グローバルでNo.1の低分子創薬力”を有する製薬企業となる」と大きなビジョンを掲げた。今回の件が国内製薬企業の再編へのきっかけと低分子創薬の復権につながるのか? 慎重に見守っていきたいと思う。参考1)JT

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アトピー性皮膚炎へのレブリキズマブ、5月1日から在宅自己注射が可能に/リリー

 日本イーライリリーは、アトピー性皮膚炎治療薬の抗ヒトIL-13モノクローナル抗体製剤レブリキズマブ(商品名:イブグリース皮下注250mgオートインジェクター/同シリンジ)について、厚生労働省の告示を受け、2025年5月1日より在宅自己注射の対象薬剤となったことを発表した。 レブリキズマブは2024年5月に発売され、既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎に使用される皮下投与製剤。これまで、初回以降2週間隔(4週以降は患者の状態に応じて4週間隔も可能)で通院のうえ院内での皮下投与が必要であった。在宅自己注射の対象薬剤となったことに伴い、医師が妥当と判断した患者については、十分な説明およびトレーニングを受けたうえで在宅での自己注射が可能となる。

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日本と海外の診療ガイドライン比較を効率化するプロンプト【誰でも使えるChatGPT】第3回

皆さん、こんにちは。近畿大学皮膚科の大塚です。前回は、ChatGPTを「病態把握と鑑別診断」のブレーンストーミング・パートナーとして活用するプロンプトをご紹介しました。患者さんの症状から考えられる疾患をリストアップさせ、見落としを防ぐ一助とする使い方でしたが、診断プロセスを検討する際のお役に立てたでしょうか。さて、シリーズ第3回となる今回は、診断後の「治療方針決定」に関わる場面での活用法です。とくに「日本と海外の診療ガイドラインの違い」を、効率的に把握するためのプロンプトをご紹介します。ご存じのとおり、多くの疾患には国内外で作成された診療ガイドラインが存在します。日本のガイドラインは、国内の保険制度や医療実態、日本人におけるエビデンスに基づいて最適化されていますが、一方で、海外のガイドライン、とくに欧米のものは、新薬の承認状況や治療アルゴリズムの考え方に違いが見られることがあります。最新の国際的な治療動向を把握し、自らの診療の参考にしたり、患者さんへの説明に役立てたりするためには、これらのガイドラインを比較検討することが非常に有益です。しかし、複数の言語で書かれた長大なガイドラインを読み込み、比較点を抽出するのは、多忙な日常診療の中ではなかなか骨の折れる作業ですよね。そこで役立つのが、今回のプロンプトです。関連サイトChatGPT(疾患名)における日本と海外(例:米国、欧州など)の診療ガイドラインを比較し、とくに治療法の推奨に関する主な相違点を解説してください。ここで(疾患名)には、比較したい具体的な疾患名、たとえば「アトピー性皮膚炎」や「尋常性乾癬」などを入力します。必要であれば、比較対象にしたい海外の地域(米国皮膚科学会[AAD]、欧州皮膚科学性病学会[EADV]など)を指定すると、より的確な情報が得られやすくなります。アトピー性皮膚炎における日本皮膚科学会の診療ガイドラインと、欧州皮膚科フォーラム(European Dermatology Forum)のガイドライン(またはAADガイドライン)を比較し、とくに中等症~重症例に対する全身療法の推奨(生物学的製剤やJAK阻害薬の位置付けなど)に関する主な相違点を簡潔に解説してください。ChatGPTからの回答例以下に、日本皮膚科学会(JDA)診療ガイドライン(2021年改訂)と、欧州皮膚科フォーラム(EDF 2022)および米国皮膚科学会(AAD 2023)の中等症~重症アトピー性皮膚炎に対する全身療法の位置付けを比較し、主な相違点を簡潔にまとめます。◆比較の焦点:中等症〜重症アトピー性皮膚炎の全身療法(生物学的製剤・JAK阻害薬)画像を拡大する◆解説・まとめ日本(JDA)は依然としてシクロスポリンを中心にした従来の免疫抑制薬を重視しつつ、デュピルマブやJAK阻害薬は新たな選択肢として位置付ける慎重な姿勢が見られます。欧州(EDF)はdupilumabを最も標準的な治療と認識しており、JAK阻害薬は代替的選択肢にとどまります。米国(AAD)はdupilumabとJAK阻害薬の両方を初回治療の選択肢としており、より柔軟な治療戦略を示しています。ご要望があれば、それぞれのガイドラインの具体的な記述や推奨グレードもご紹介いたします。その際は、お知らせください。このように、ChatGPTに尋ねることで、膨大なガイドラインの中から比較すべきポイントや主な違いを短時間でリストアップさせることが可能です。これにより、「どこに注目して原文を読み込むべきか」という当たりをつけることができます。ただし、今回も重要な注意点があります。1.情報の鮮度と正確性ChatGPTが参照しているガイドラインのバージョンが最新であるとは限りません。必ず、回答で示されたガイドライン名や発行年を確認し、必要であれば最新版の原文を参照してください。2.最終判断は医師自身でAIが示す比較・解説はあくまで「要約」や「たたき台」です。治療方針の最終決定は、必ず一次情報であるガイドライン本文や関連論文を確認し、個々の患者さんの状況に合わせて医師自身が行う必要があります。3.解釈のニュアンスガイドラインの推奨度(強く推奨、条件付き推奨など)の微妙なニュアンスは、AIの要約だけではつかみきれない場合があります。重要な判断に関わる場合は、原文での確認が不可欠です。このプロンプトは、国際的な標準治療や最新の考え方を効率的にキャッチアップし、日々の診療に深みを持たせるための「情報収集アシスタント」として活用できるでしょう。次回は、患者さんへの説明資料作成をサポートするプロンプトなど、また別の角度からの活用法をご紹介できればと考えています。どうぞお楽しみに。

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円形脱毛症の予後に慢性炎症性疾患の併存が影響

 慢性炎症性疾患(CID)の併存が円形脱毛症(AA)の予後に影響を与えるとするリサーチレターが、「Allergy」に1月8日掲載された。 ボン大学(ドイツ)のAnnika Friedrich氏らは、CIDの併存とAAの予後に関する臨床的特徴との関連性について検討するために、主に中央ヨーロッパ系のAA患者2,657人から取得した自己申告データを使用し、包括的な分析を実施した。全体として、AAコホートの患者のうち53.7%が1つ以上のなんらかのCID併存を報告しており、そのうち44.5%がアトピー性CID、17.4%が非アトピー性CIDであった。 解析の結果、アトピー性皮膚炎(AD)、気管支喘息、慢性甲状腺炎(橋本病)のいずれかを併発している患者では、併存CIDを有さない患者と比較して、AAの早期発症、重症化、長期化の報告率が有意に高いことが分かった。鼻炎または白斑を併発している患者では、AAの長期化リスクが有意に上昇した。気管支喘息を併発している患者では、ADまたは鼻炎を併発している患者と比べて、AAの早期発症、重症化、長期化リスクがより高かった。CIDの併存は、AAの発症年齢や重症度よりも、有病期間との関連が顕著であった。早期発症、重症、長期化したAA患者の方が、遅発性、軽症、長期化しないAA患者より、アトピー性併存疾患の報告数が有意に多かった。アトピー性併存疾患が1つ増えるごとに、早期発症、重症化、長期化するオッズがそれぞれ1.179、1.130、1.202上昇した。AAの平均発症年齢は、AD、気管支喘息、鼻炎の全てを有する患者の方が、AAのみを有する患者と比べてほぼ10年早かった。 著者らは、「われわれの研究結果は、異なる併存疾患の組み合わせが、予後の異なるAAのサブタイプを示唆している可能性を示した」と述べている。

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レブリキズマブ、日本人アトピー患者におけるリアルワールドでの有効性・安全性

 既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎患者に対する治療薬として、2024年5月に発売された抗ヒトIL-13モノクローナル抗体製剤レブリキズマブについて、日本の実臨床における良好な有効性と安全性が示された。日本医科大学千葉北総病院の萩野 哲平氏らによるDermatitis誌オンライン版2月20日号への報告より。 本研究は2施設の共同研究であり、中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者126例が対象。患者はレブリキズマブに外用コルチコステロイド薬を併用する16週間の治療を受けた。治療期間中に、以下の各指標が評価された:Eczema Area and Severity Index(EASI)/Investigator's Global Assessment(IGA)/Peak Pruritus Numerical Rating Scale(PP-NRS)/睡眠障害NRS/Atopic Dermatitis Control Tool(ADCT)/Dermatology Life Quality Index(DLQI)/Patient Oriented Eczema Measure(POEM)/IgE抗体/Thymus and Activation-Regulated Chemokine(TARC)/乳酸脱水素酵素(LDH)/末梢血好酸球数(TEC) 主な結果は以下のとおり。・レブリキズマブは4週時点ですべての臨床指標を改善し、その効果は16週まで維持された。・16週時点のEASI-50、75、90、100、IGA 0/1の達成率はそれぞれ83.1%、57.1%、27.3%、11.7%、33.3%であった。・16週時点のPP-NRS、睡眠障害NRS、DLQIの≧4ポイントの改善、ADCT<7ポイント、POEM≦7ポイントの達成率は、それぞれ75.9%、68.8%、65.9%、76.9%、80.4%であった。・検査指標については、治療期間中にIgE、TARC、LDHは減少したが、TECは増加した。・新たな安全性上の懸念は認められなかった。

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アトピー、乾癬、円形脱毛症、白斑の日本人患者で多い併存疾患

 アトピー性皮膚炎、乾癬、円形脱毛症、白斑の日本人患者において、アレルギー性またはアトピー性疾患(アレルギー性鼻炎、結膜炎、喘息を含む)、皮膚疾患、感染症が最も頻繁にみられる併存疾患であり、とくにアトピー性皮膚炎および乾癬患者では、静脈血栓塞栓症、リンパ腫、帯状疱疹、結核の発生率が高いことが明らかになった。福岡大学の今福 信一氏らは、日本のJMDCレセプトデータを用いた後ろ向きコホート研究を実施、日本人皮膚疾患患者における併存疾患の有病率および発生率を評価した。The Journal of Dermatology誌オンライン版2025年2月7日号への報告より。 本研究では、2013年6月~2020年12月にJMDC請求データベースから収集されたデータが使用された。アトピー性皮膚炎、乾癬、円形脱毛症、または白斑と診断された患者は、年齢、性別、およびインデックス月(診断または治療の最初の記録があった月)によって、それらの疾患の診断による請求記録がない個人と1:1でマッチングされた。 主な結果は以下のとおり。・データには、アトピー性皮膚炎69万1,338例、乾癬5万1,988例、円形脱毛症4万3,692 例、白斑8,912例が含まれ、それぞれに対応するマッチング対照群が設定された。・それぞれの皮膚疾患患者において有病率の高かった併存疾患とマッチング対照群での有病率は、以下のとおりであった。アトピー性皮膚炎:アレルギー性鼻炎(47%vs.37%)、結膜炎(33%vs.23%)、喘息(27%vs.20%)、ウイルス感染症(22%vs.15%)、ざ瘡(11%vs.3%)乾癬:アレルギー性鼻炎(35%vs.28%)、結膜炎(21%vs.17%)、真菌感染症(17%vs.5%)、高血圧(16%vs.13%)、ウイルス感染症(16%vs.7%)円形脱毛症:アレルギー性鼻炎(40%vs.31%)、結膜炎(26%vs.19%)、ウイルス感染症(17%vs.8%)、喘息(14%vs.11%)、アトピー性皮膚炎(12%vs.3%)白斑:アレルギー性鼻炎(45%vs.36%)、結膜炎(30%vs.23%)、ウイルス感染症(21%vs.12%)、喘息(19%vs.16%)、アトピー性皮膚炎(16%vs.4%)・アトピー性皮膚炎コホートにおける併存疾患の発生率(10万人年当たり)は、マッチング対照群と比較して以下のとおりであった:静脈血栓塞栓症:51.4(95%信頼区間[CI]:48.3~54.7)vs.31.7(29.2~34.2)リンパ腫:13.8(12.2~15.6)vs.5.7(4.7~6.8)皮膚T細胞性リンパ腫:1.6(1.1~2.2)vs.0.1(0.0~0.4)帯状疱疹:740.9(728.8~753.1)vs.397.6(388.9~406.6)結核:8.4(7.1~9.7)vs.5.8(4.8~6.9)・乾癬コホートでのマッチング対照群との比較においても、同様の傾向が認められた。円形脱毛症および白斑のコホートでは、対照群と95%CIがほぼ重なっていた。

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乳幼児健診でよくある疑問・相談への対応

限られた時間で判断・助言をするために「小児科」65巻12号(2024年11月臨時増刊号)乳幼児健診の場で保護者から向けられる素朴な、しかし切実な質問に、つい曖昧に答えてしまうことはないでしょうか。限られた時間の中で、見逃してはいけない徴候であれば確実にすくい上げることはもちろん、そうでなくとも医学的な根拠があり、かつ保護者が安心できる答えをその場で伝える――そのために知っておくべき44テーマについて、各領域の専門家にその考え方・答え方を解説いただきました。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する乳幼児健診でよくある疑問・相談への対応定価8,800円(税込)判型B5判頁数240頁発行2024年12月編集「小児科」編集委員会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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自己主導型のCBTはアトピー性皮膚炎の症状軽減に有効

 アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis;AD)は、強いかゆみや皮疹、乾燥肌を特徴とする炎症性皮膚疾患である。AD患者では、皮膚をかく行為が不安や抑うつなどのメンタルヘルス問題と関連していることが示唆されている。こうした中、オンラインで患者自身が行う認知行動療法(cognitive behavioral therapy;CBT)が、医師主導で行うCBTと同程度にADの症状を軽減する可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のDorian Kern氏らによるこの研究結果は、「JAMA Dermatology」に12月18日掲載された。 Kern氏は同研究所のニュースリリースの中で、「オンラインで患者自身が行うCBT(自己主導型CBT)は、医療リソースの消費を抑えながら患者の症状を軽減し、生活の質(QOL)を向上させる効果的な選択肢であることが明らかになった」と述べている。 CBTは、心身の問題に対する考え方や行動のパターンを変えることでストレスを軽減し、QOLを向上させる心理療法の一種であり、ADの症状改善にも有効とされている。過去の研究では、医師主導型CBTがADの症状軽減に有効であることが示されている。 今回の試験では、非劣性試験のデザインに基づき、自己主導型CBTの有効性と、従来の医師主導型CBTの有効性が比較された。対象とされた168人のAD患者(女性84.5%、平均年齢39歳)は、12週間にわたり自己主導型CBTを行う群(86人)と医師主導型CBTを受ける群(82人)にランダムに割り付けられた。自己主導型CBT群は、オンラインプログラムを利用して、マインドフルネスやかゆみへの適切な対処法(保湿剤やローションの使用など)を学び、自分で湿疹関連の治療を行った。主要評価項目は、自己報告によるPatient-Oriented Eczema Measure(POEM)スコアのベースラインから介入後およびその12週後の変化量とし、自己主導型CBT群と医師主導型CBT群のスコアの差が3点以内であれば、効果は同等と見なした。POEMは7つの質問で過去1週間の症状の強さを評価するツールである。 最終的に151人(90.0%)の対象者が介入後の評価を受けた。介入後のPOEMスコアの変化量は、自己主導型CBT群で4.60点、医師主導型CBT群で4.20点であった。両群間の変化量の平均差は0.36点であり、自己主導型CBTと医師主導型CBTの効果は統計学的に同程度であることが示された。深刻な有害事象は報告されなかった。医師主導型のCBTでは、治療ガイダンスに平均36.0分、評価に平均14.0分かかっていたのに対し、自己主導型のCBTでは評価に平均15.8分かかっていた。 こうした結果を受けて研究グループは、「自己主導型CBTは、特にトークセラピーに興味がない人にとって、利用しやすい効果的な湿疹管理法となる可能性がある」と述べている。Kern氏は「これは、AD患者だけでなく、皮膚科や慢性疾患の他の分野にとっても重要な進歩だ」と述べている。

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妊娠中のビタミンD摂取は子どもの骨を強くする

 妊娠中のビタミンDの摂取は、子どもの骨と筋肉の発達に良い影響をもたらすようだ。英サウサンプトン大学MRC Lifecourse Epidemiology CentreのRebecca Moon氏らによる研究で、妊娠中にビタミンDのサプリメントを摂取した女性の子どもは、摂取していなかった女性の子どもに比べて、6〜7歳時の骨密度(BMD)と除脂肪体重が高い傾向にあることが明らかにされた。この研究結果は、「The American Journal of Clinical Nutrition」11月号に掲載された。Moon氏は、「小児期に得られたこのような骨の健康への良い影響は、一生続く可能性がある」と話している。 ビタミンDは、人間の皮膚が日光(紫外線)を浴びると生成されるため「太陽のビタミン」とも呼ばれ、骨の発達と健康に重要な役割を果たすことが知られている。具体的には、ビタミンDは、丈夫な骨、歯、筋肉の健康に必要なミネラルであるカルシウムとリン酸のレベルを調節する働きを持つ。 今回の研究では、妊娠14週未満で単胎妊娠中の英国の妊婦(体内でのビタミンDの過不足の指標である血液中の25-ヒドロキシビタミンD濃度が25~100nmol/L)を対象に、妊娠中のビタミンD摂取と子どもの骨の健康との関連がランダム化比較試験により検討された。対象とされた妊婦は、妊娠14~17週目から出産までの期間、1日1,000IUのコレカルシフェロール(ビタミンDの一種であるビタミンD3)を摂取する群(介入群)とプラセボを摂取する群(対照群)にランダムに割り付けられた。これらの妊婦から生まれた子どもは、4歳および6~7歳のときに追跡調査を受けた。 6〜7歳時の追跡調査を受けた454人のうち447人は、DXA法(二重エネルギーX線吸収法)により頭部を除く全身、および腰椎の骨の検査を受け、骨面積、骨塩量(BMC)、BMD、および骨塩見かけ密度(BMAD)が評価された。解析の結果、介入群の子どもではプラセボ群の子どもと比較して、6〜7歳時の頭部を除く全身のBMCが0.15標準偏差(SD)(95%信頼区間0.04~0.26)、BMDが0.18SD(同0.06~0.31)、BMADが0.18SD(同0.04~0.32)、除脂肪体重が0.09SD(同0.00~0.17)高いことが明らかになった。 こうした結果を受けてMoon氏は、「妊婦に対するビタミンD摂取による早期介入は、子どもの骨を強化し、将来の骨粗鬆症や骨折のリスク低下につながることから、重要な公衆衛生戦略となる」と述べている。 では、妊娠中のビタミンD摂取が、どのようにして子どもの骨の健康に良い影響を与えるのだろうか。Moon氏らはサウサンプトン大学のニュースリリースで、2018年に同氏らが行った研究では、子宮内の余分なビタミンDが、「ビタミンD代謝経路に関わる胎児の遺伝子の活動を変化させる」ことが示唆されたと述べている。さらに、2022年に同氏らが発表した研究では、妊娠中のビタミンD摂取により帝王切開と子どものアトピー性皮膚炎のリスクが低下する可能性が示されるなど、妊娠中のビタミンD摂取にはその他のベネフィットがあることも示唆されているという。

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酒さ〔Rosacea〕・鼻瘤〔Rhinophyma〕

1 疾患概要■ 定義酒さは20歳代以降に好発し、顔面中央部の前額・眉間部、鼻部、頬部(中央寄り)、頤部に、紅斑・潮紅や毛細血管拡張による赤ら顔を来す疾患である。■ 疫学白人(コーカソイド)では5~10%程度までとする報告が欧米の地域からなされている。アジア人(モンゴロイド)では数~20%程度までの報告がある。日本人の酒さの罹患率の正確なデータはないが、自覚していない軽症例を含めると0.5~1%程度の罹患率が見込まれる。■ 病因酒さに一元的な病因は存在しない。酒さの病理組織学的病変の主体は、脂腺性毛包周囲の真皮内にあり、脂腺性毛包を取り囲む炎症と毛細血管拡張を来す。コーカソイドを祖先に持つ集団でのゲノムワイド関連解析(GWAS)調査では酒さ発症に遺伝的背景の示唆がある1)。後天的要因として、環境因子からの自然免疫機構・抗菌ペプチドの過活性化2,3)や肥満細胞の関与する皮膚炎症の遷延化4)、末梢神経応答などの関与する知覚過敏や血管拡張反応などが病態形成に関与することが示されている。■ 症状・分類酒さの皮疹は眉間部、鼻部・鼻周囲、頬部、頤部の顔面中央部に主として分布する。まれに頸部や前胸部、上背部の脂腺性毛包の分布部に皮疹が拡大することもある。酒さは主たる症候・個疹性状に基づいて、紅斑血管拡張型酒さ、丘疹膿疱型酒さ、瘤腫型酒さ・鼻瘤、眼型酒さの4病型・サブタイプに分類される。1)紅斑血管拡張型酒さ脂腺性毛包周囲の紅斑と毛細血管の拡張を主症候とし、酒さの中で最も頻度が高い病型である。寒暖差などの気温変化、紫外線を含む日光曝露、運動や香辛料の効いた食餌などの顔面血流が変化する状況で、火照りや顔の熱感などの自覚症状が悪化する。2)丘疹膿疱型酒さ尋常性ざ瘡と類似の丘疹や膿疱が頬部、眉間部、頤部などに出現する。背景に紅斑血管拡張型酒さにみられる紅斑や毛細血管拡張を併存することも多い。尋常性ざ瘡と異なり、丘疹膿疱型酒さには面皰は存在しないが、酒さと尋常性ざ瘡が合併する患者もあり得る。尋常性ざ瘡との鑑別には面皰の有無に加えて、寒暖差による火照り感や熱感などの外界変化による自覚症状の変動を確認するとよい。3)瘤腫型酒さ・鼻瘤皮下の炎症に伴って肉芽腫形成や線維化を来す病型である。とくに、鼻部に病変を来すことが多く、「鼻瘤」という症候名・病名でも知られている。頬部の丘疹膿疱型酒さを合併することがまれではない。紅斑毛細血管拡張型酒さや丘疹膿疱型酒さは女性患者の受診者が多いが、瘤腫型酒さ・鼻瘤では男女比は1対1である5)。4)眼型酒さ眼瞼縁のマイボーム腺周囲炎症・機能不全を主たる病態とし、初期症状は、眼瞼縁睫毛部周囲の紅斑と毛細血管拡張、そして眼瞼結膜の充血や血管拡張である。自覚症状として眼球や眼瞼の刺激感や流涙を訴えることが多い。眼型酒さのほとんどは、他の酒さ病型に併存しており、酒さの眼合併症という捉え方もされる。■ 予後生命予後は良い。紅斑血管拡張型酒さの毛孔周囲炎症と毛細血管拡張の改善には数年を要する。丘疹膿疱型酒さの丘疹・膿疱症状は、3~6ヵ月程度の治療で改善が期待できる。瘤腫型酒さ・鼻瘤は鼻形態の変形程度に併せて、抗炎症療法から手術療法までが選択されるが、症候の安定には数年を要する。眼型酒さの炎症症状(結膜炎や結膜充血)は3~6ヵ月程度の治療で改善が期待できる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)酒さの診断のための特定の検査方法はなく、皮疹性状や分布、臨床経過から総合的に酒さを診断する。酒さ患者にはアトピー素因やアレルギー素因を有する患者が20~40%ほど含まれており、特異的IgE検査(VIEW39など)を行い、増悪因子の回避に努める5)。アレルギー性接触皮膚炎の併存が疑われる場合にはパッチテスト(貼布試験)を考慮する。酒さ病変部では、毛包虫が増えていることがあり、毛包虫の確認には皮膚擦過試料の検鏡検査を行う。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)酒さの治療では、主たる症候を見極めて治療計画を立てる。一般的には、抗炎症作用を有する治療薬で酒さの脂腺性毛孔周囲の紅斑、丘疹、膿疱の治療を3~6ヵ月程度行う。炎症性皮疹のコントロールの後に、器質的変化による毛細血管拡張や、瘤腫や鼻瘤にみられる線維化と形態変形に対する治療を計画する。酒さ症候は、生活環境や併存症によっても症状の増悪が起こる5,6)。酒さの再燃や増悪の予防には、患者毎の増悪因子や環境要因に沿った生活指導と肌質に合わせたスキンケアが重要である。■ 丘疹膿疱型酒さに対する抗炎症外用薬・内服薬1)メトロニダゾール外用薬欧米では、メトロニダゾール外用薬(商品名:ロゼックスゲル)が酒さの抗炎症薬として1980年代から使用されている7,8)。わが国でも2022年に国際的酒さ標準治療薬の1つであるメトロニダゾール外用薬0.75%が酒さに対して保険適用が拡大された9)。メトロニダゾール外用薬は、その炎症反応抑制効果から丘疹膿疱型酒さにみられる炎症性皮疹の丘疹と膿疱の抑制効果、脂腺性毛包周囲の炎症による紅斑に対して改善効果が期待できる。2)イオウ・カンフルローションイオウ・カンフルローションは、わが国では1970年代から発売されざ瘡と酒さに対して保険適用がある。ただ、イオウ・カンフルローションの保険適用は、わが国での酒さ患者を対象とした臨床試験に基づいた承認経過の記録が見当たらず、現代のガイドライン評価基準に則した本邦での良質なエビデンスはない。イオウ・カンフルローションは、エタノールを含んでおり、皮脂と角層内水分の少ない乾燥肌の患者に用いると、乾燥感や肌荒れ感が強くなる場合がある。イオウ・カンフルローション懸濁液は、淡黄色で塗布により肌色調が黄色調となることがある。肌色調が気になる患者には、上澄み液だけを用いるなどの工夫をする。3)テトラサイクリン系抗菌薬ドキシサイクリンは、丘疹膿疱型酒さの炎症性皮疹(丘疹、膿疱)に有効である。酒さ専用内服薬としてドキシサイクリンの低用量徐放性内服薬が欧米では承認されている。ミノサイクリンは、ドキシサイクリン低用量徐放性内服薬と同等の効果が示されているが、間質性肺炎や皮膚色素沈着などの副作用から、長期服用時に留意が必要である10)。■ 紅斑毛細血管拡張型酒さに対する治療紅斑毛細血管拡張型酒さの主たる症候は、毛細血管の拡張に伴う紅斑や一過性潮紅である。治療には拡張した毛細血管を縮小させる治療を行う。パルス色素レーザー(pulsed dye laser:PDL)[595nm]、Nd:YAGレーザー[1,064nm]、Intense pulsed light (IPL)が、酒さの毛細血管拡張と紅斑を有意に減少させることが報告されている。これらのレーザー・光線治療は酒さに対しては保険適用外である。4 今後の展望2022年にメトロニダゾールが酒さに対して保険適用となり、わが国でも酒さ標準治療薬が入手できるようになった。酒さの診断名登録が増えており、医療関係者と患者ともに酒さ・赤ら顔に対する認知度の増加傾向が感じられる。しかしながら、潮紅や毛細血管拡張を主体とする紅斑毛細血管拡張型酒さに対する保険適用の治療方法は十分ではなく、今後の治験や臨床試験が期待される。5 主たる診療科皮膚科顔面の丘疹・膿疱を主たる皮疹形態とする疾患の多くは皮膚表面の表皮の疾患ではなく、真皮における炎症、肉芽腫性疾患、感染症、腫瘍性疾患である可能性が高い。皮膚炎症性疾患に頻用されるステロイド外用薬は、これらの疾患に効果がないばかりか、悪化させることがしばしば経験される。酒さは、ステロイドで悪化する代表的な皮膚疾患であり、安易なステロイド使用が患者と医療者の双方にとって望ましくない経過につながる。顔面に赤ら顔や丘疹や膿疱をみかける症例は、ステロイドなどの使用の前に鑑別疾患を十分に考慮する必要があるし、判断に迷う場合には外用薬を処方する前に速やかに皮膚科専門医にコンサルタントすることをお勧めする。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報酒さナビ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)National Rosacea Society(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)American Acne and Rosacea Society(医療従事者向けのまとまった情報、米国の本症の診療サイト)1)Aponte JL, et al. Hum Mol Genet. 2018;27:2762-2772.2)Yamasaki K, et al. Nat Med. 2007;13:975-980.3)Yamasaki K, et al. J Invest Dermatol. 2011;131:688-697.4)Muto Y, et al. J Invest Dermatol. 2014;134:2728-2736.5)Wada-Irimada M, et al. J Dermatol. 2022;49:519-524.6)Yamasaki K, et al. J Dermatol. 2022;49:1221-1227.7)Nielsen PG. Br J Dermatol. 1983;109:63-66.8)Nielsen PG. Br J Dermatol. 1983;108:327-332.9)Miyachi Y, et al. J Dermatol. 2022;49:330-340.10)van der Linden MMD, et al. Br J Dermatol. 2017;176:1465-1474.公開履歴初回2024年11月14日

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11月12日 皮膚の日【今日は何の日?】

【11月12日 皮膚の日】〔由来〕日本臨床皮膚科医会が、11月12日(いい・ひふ)の語呂合わせから1989年に制定。日本皮膚科学会と協力し、皮膚についての正しい知識の普及や皮膚科専門医療に対する理解を深めるための啓発活動を実施している。毎年この日の前後の時期に一般の方々を対象に、講演会や皮膚検診、相談会行事を全国的に展開している。関連コンテンツ事例008 蕁麻疹にダイアコート軟膏の処方で査定【斬らレセプト シーズン4】軟膏じゃなかった【Dr.デルぽんの診察室観察日記】かゆみが続く慢性掻痒【患者説明用スライド】妊娠中の魚油摂取、出生児のアトピー性皮膚炎リスクは低減する?アトピー性皮膚炎へのデュピルマブ、5年有効性・安全性は?蕁麻疹の診断後1年、がん罹患リスク49%増

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ウパダシチニブ、ADの頭頸部病変における新たな有効性解析結果/アッヴィ

 2024年10月15日、アッヴィはウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)の第III相試験であるMeasure Up 1試験とMeasure Up 2試験について、アトピー性皮膚炎(AD)の頭頸部病変における重症度別の有効性を示す新たな解析結果を発表した1)。 AD患者において、頭部、頸部、顔面、手など、特定の部位に現れるADの症状は、症状の発生頻度や患者の生活の質に重大な影響を及ぼしうることが示されている2,3)。また、リアルワールド観察研究である、UP-TAINED試験で70%、AD-VISE試験で74.5%以上のAD患者においてベースライン時に頭頸部病変が認められており4,5)、この領域に対する有効な治療法の必要性が高まっている。 同解析では、中等症~重症のAD患者をベースラインにおける頭頸部領域の重症度に基づいて層別化し、16週間にわたりウパダシチニブ(15mgまたは30mg)の有効性をプラセボと比較し評価した1)。 具体的には、AD患者の各サブグループを対象に、複数の最適かつ厳格な治療目標(頭頸部領域におけるほぼ完全な皮膚症状の改善[頭頸部のEASIスコアが1未満]、ほぼ完全な皮膚症状の改善[EASI 90]、かゆみがない/ほとんどない状態[WP-NRS 0/1]および生活への影響はない状態[DLQI 0/1])について、ウパダシチニブの投与による達成を評価した1)。また、患者の層別化については、頭頸部病変がない/軽度、中等度または重度であることを層別因子とした1)。 発表された主な結果は以下のとおり。・さまざまな程度の頭頸部病変を有する中等症~重症のAD患者において、16週時に頭頸部領域におけるほぼ完全な皮膚症状の改善※が達成された割合は、ウパダシチニブ(15mgまたは30mg)投与の患者のほうが、プラセボ投与の患者よりも高いことが示された。※高い治療目標:頭頸部領域におけるほぼ完全な皮膚症状の改善(頭頸部のEASIスコアが1未満)、生活への影響はない状態(DLQI 0/1)および最小疾患活動性(ほぼ完全な皮膚症状の改善[EASI 90]とかゆみがない/ほとんどない状態[WP-NRS 0/1])を同時に達成すること。 また同解析結果は、オランダ・アムステルダムで開催される第33回欧州皮膚科・性病科学会議(EADV)において発表された。

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妊娠中の魚油摂取、出生児のアトピー性皮膚炎リスクは低減する?

 妊娠中のオメガ3長鎖多価不飽和脂肪酸(n-3 LCPUFA、魚油)サプリメント摂取と出生児のアトピー性皮膚炎リスクとの関連は、母体が有するシクロオキシゲナーゼ-1(COX1)遺伝子型によって異なることが示された。デンマーク・コペンハーゲン大学のLiang Chen氏らが実施した無作為化比較試験「Danish Copenhagen Prospective Studies on Asthma in Childhood 2010」の事前に規定された2次解析において、TT遺伝子型を有する母親がn-3 LCPUFAサプリメントを摂取した場合、出生児はアトピー性皮膚炎のリスクが有意に低いことが示された。著者は、「TT遺伝子型を有する妊婦にのみサプリメントを摂取させるという個別化された予防戦略の参考になるだろう」と述べている。エイコサノイドは、アトピー性皮膚炎の病態生理に関与しているが、出生前のn-3 LCPUFAサプリメント摂取や母体のCOX1遺伝子型の影響を受けるかどうかは明らかになっていなかった。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年8月28日号掲載の報告。 「Danish Copenhagen Prospective Studies on Asthma in Childhood 2010」の事前に規定された2次解析では、出生コホートの母子ペアを対象とし、出生児が10歳になるまで前向きに追跡した。妊娠中のn-3 LCPUFAサプリメント摂取と小児アトピー性皮膚炎の関連について、全体および母親のCOX1遺伝子型別に検討した。本試験では、母親と出生児のCOX1遺伝子型を確認し、出生児が1歳になった時点で尿中エイコサノイドを測定した。本試験は2019年1月~2021年12月の期間に実施し、データ解析は2023年1~9月に行った。 合計736例の妊娠24週の妊婦を、1日2.4gのn-3 LCPUFA(魚油)サプリメントを摂取する群(介入群)またはプラセボ(オリーブオイル)を摂取する群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付け、出産1週後まで摂取を継続させた。 主要アウトカムは、全体および母親のCOX1遺伝子型別にみた10歳時までの小児アトピー性皮膚炎リスクであった。 主な結果は以下のとおり。・10歳時のフォローアップを完了した出生児は635例(91%、女子363例[57%])であり、母親と共に、介入群321組(51%)、対照群314組(49%)が解析に含まれた。・妊娠中のn-3 LCPUFAサプリメントの摂取は、出生児の1歳時点における尿中トロンボキサンA2代謝物量と有意な負の関連があった(β:-0.46、95%信頼区間[CI]:-0.80~-0.13、p=0.006)。また、尿中トロンボキサンA2代謝物量はCOX1 rs1330344遺伝子型との有意な正の関連も認められた(Cアレル当たりのβ:0.47、95%CI:0.20~0.73、p=0.001)。・10歳時点までの小児アトピー性皮膚炎発症とn-3 LCPUFAサプリメント摂取(ハザード比[HR]:1.00、95%CI:0.76~1.33、p=0.97)、母親のCOX1遺伝子型(同:0.94、0.74~1.19、p=0.60)との間には、いずれも関連が認められなかったが、n-3 LCPUFAサプリメント摂取と母親のCOX1遺伝子型には有意な交互作用がみられた(交互作用のp<0.001)。・TT遺伝子型を有する母親の出生児のアトピー性皮膚炎のリスクは、対照群よりも介入群で有意に低かった(390組[61%]のHR:0.70、95%CI:0.50~0.98、p=0.04)。一方で、CT遺伝子型を有する母親の出生児において、介入群のアトピー性皮膚炎のリスク低下はみられず(209組[33%]のHR:1.29、95%CI:0.79~2.10、p=0.31)、CC遺伝子型を有する母親の出生児では有意なリスク上昇が認められた(37組[6%]のHR:5.77、95%CI:1.63~20.47、p=0.007)。・アトピー性皮膚炎発症について、n-3 LCPUFAサプリメント摂取と出生児のCOX1遺伝子型には、有意な交互作用がみられた(交互作用のp=0.002)。

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アトピー性皮膚炎へのデュピルマブ、5年有効性・安全性は?

 デュピルマブで治療を受けたアトピー性皮膚炎患者を最長5年追跡調査したコホート研究において、デュピルマブの臨床的有効性は維持された。一方で3分の2の患者は3週ごとまたは4週ごとの投与量に漸減し、23.8%の患者が治療を中止した。治療中止の主な理由は有害事象、無効であった。これまで日常診療でのアドピー性皮膚炎に対するデュピルマブの、長期の有効性と安全性に関するデータは限られていた。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのCeleste M. Boesjes氏らが、JAMA Dermatology誌オンライン版2024年8月7日号で報告した。 研究グループは、日常診療で最長5年間治療を受けたアトピー性皮膚炎の小児、成人および高齢者における、デュピルマブ治療の臨床的有効性と治療中止の理由を評価する前向き多施設コホート研究を行った。 BioDayレジストリ(オランダの大学病院4施設とその他10施設で登録)を用いて、2017年10月~2022年12月にデュピルマブによる治療を受けたすべての年齢のアトピー性皮膚炎患者を特定し、研究対象とした。 臨床的有効性は、小児(18歳未満)、成人(18~64歳)、高齢者(65歳以上)で層別化を行い、Eczema Area and Severity Index(EASI)、Investigator Global Assessment(IGA)、そう痒Numeric Rating Scale(NRS)で評価した。さらに、TARC値、好酸球数などを評価。デュピルマブを中止した患者について、中止の理由を評価した。 主な結果は以下のとおり。・計1,286例のアトピー性皮膚炎患者(年齢中央値38歳[四分位範囲[IQR]:26~54]、男性726例[56.6%])がデュピルマブによる治療を受けた(小児130例、成人1,025例、高齢者131例)。・追跡期間中央値は87.5ヵ月(IQR:32.0~157.0)。・ほとんどの患者が最長5年の治療期間にわたりアトピー性皮膚炎のコントロールを維持しており、EASIが7以下の患者は78.6~92.3%、そう痒NRSが4以下の患者は72.2~88.2%であった。・全患者の最大70.5%の投与間隔が延長し、ほとんどが300mgの3週ごとまたは4週ごと投与となっていた。・治療開始5年後、EASIスコア平均値は2.7(95%信頼区間[CI]:1.2~4.2)、そう痒NRS平均値は3.5(2.7~4.3)であった。・EASI、IGAについて、観察期間を通じて年齢群間に統計学的有意差がみられたが、その差(52週時点でEASIは0.3~1.6、IGAは0.12~0.26)は非常に小さかった。そう痒NRSについては、統計学的有意差はみられなかった。・TARC中央値は、1,751pg/mL(95%CI:1,614~1,900)から治療開始6ヵ月で390pg/mL(368~413)へ大幅に低下し、低値を維持した。・好酸球数中央値は16週まで一時的に上昇したが、その後は経時的に統計学的有意な低下がみられた。・合計306例(23.8%)がデュピルマブを中止し、中止までの期間中央値は54.0週(IQR:29.0~110.0)であった。多く報告された中止の理由は、有害事象98例(7.6%)、無効85例(6.6%)であった。41例(3.2%)がデュピルマブ投与を再開し、これらの患者の大半で奏効が認められた。

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最近増加している好酸球性食道炎に生物学的製剤は有効か?(解説:上村直実氏)

 好酸球性消化管疾患は、食道・胃・十二指腸・小腸・大腸の消化管のいずれかに好酸球が浸潤して炎症を引き起こすアレルギー性疾患の総称であるが、確定診断が難しいことから比較的まれな疾患で厚生労働省の指定難病として告示されている。胸焼け、腹痛、下痢といったさまざまな消化器症状を引き起こすが、一般的には好酸球性食道炎と胃から大腸までのいずれかもしくは複数の部位に炎症の主座を有する好酸球性胃腸炎に大別されているが、最近の診療現場では好酸球性食道炎が増加している。つかえ感や胸焼けを慢性的に自覚する患者に対して行われる上部消化管内視鏡検査で、本疾患に特徴的な内視鏡所見である縦走溝や輪状溝および白苔を認めた際に行う生検組織を用いた組織学的検査により確定診断されるケースが多いが、健康診断や人間ドックなどで受けた内視鏡検査の際に偶然発見される無症状の症例も増加している。本疾患が気管支喘息などのアレルギー性疾患の合併率が高いことも、留意しておくべきである。 わが国における好酸球性食道炎に対する治療は、保険適用になっていないプロトンポンプ阻害薬やステロイド吸入薬の内服が使用される場合が多いが、それでも症状が改善しない場合は、全身性ステロイドの内服や原因として疑われる食材を除去する食事療法が行われている。以上の一般的治療でも症状が難治性の場合、海外では生物学的製剤の開発が進みつつある。難治性のアトピー性皮膚炎や気管支喘息および鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の治療薬であるインターロイキンIL-4/IL-13のシグナル伝達を阻害する完全ヒト型モノクローナル抗体であるデュピルマブが、好酸球性食道炎に対しても承認されている。すなわち、2022年12月22日号のNEJM誌に掲載された国際共同試験の結果において、12歳以上の好酸球性食道炎患者を対象としたデュピルマブ週1回皮下投与は、組織学的寛解率を改善すると共に嚥下障害症状を軽減することが明らかとなり、さらに11歳以下の小児を対象とした第III相無作為化試験において組織学的所見の改善を認めた結果が、2024年6月27日号のNEJM誌に掲載されると同時に米国などで承認されている。 今回、好酸球を減少させる抗IL-5受容体αモノクローナル抗体であるベンラリズマブの有用性と安全性を検証した第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「MESSINA試験」の結果も、2024年6月27日号のNEJM誌で報告された。試験の結果、好酸球性食道炎に対し、ベンラリズマブはプラセボと比較して組織学的寛解率が有意に高かったものの、嚥下障害の症状に関しては有意な改善は認められなかった。以前の報告から、ベンラリズマブは血液、骨髄、肺、胃、食道組織における好酸球のほぼ完全な減少をもたらす薬剤であり、好酸球性食道炎の治療薬としても期待されたが、浸潤好酸球の減少が症状の改善につながらなかった結果から、今後、好酸球浸潤と症状発現の機序が残された課題と思われる。 現在、国内においてPPIや生物学的製剤も含めて好酸球性食道炎に対して保険適用となっている薬剤は皆無であるが、今後、増加傾向のあるアレルギー疾患である好酸球性食道炎の新たな知見に注目しておく必要があると思われた。

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デュピルマブ、11歳以下の好酸球性食道炎に有効/NEJM

 小児(1~11歳)の好酸球性食道炎患者において、デュピルマブはプラセボと比較して有意に高率な組織学的寛解をもたらし、デュピルマブの高曝露レジメンがプラセボと比較して、重要な副次エンドポイントの測定値の改善に結びついたことが示された。米国・マウントサイナイ・アイカーン医科大学Mirna Chehade氏らが第III相無作為化試験の結果を報告した。デュピルマブはIL-4/IL-13経路を阻害するヒトモノクローナル抗体であり、成人および思春期の好酸球性食道炎を含む、2型炎症で特徴付けられる5つの異なるアトピー性疾患で有効性が示されていた。NEJM誌2024年6月27日号掲載の報告。16週時点の組織学的寛解を主要エンドポイントに第III相試験 第III相試験はパートA~パートCの3段階で行われ、本論ではパートAとパートBの結果が報告された。試験は米国26施設とカナダ1施設で行われた。 パートAは16週の無作為化二重盲検プラセボ対照フェーズで、1~11歳のプロトンポンプ阻害薬(PPI)に不応の活動期好酸球性食道炎患者を、デュピルマブの高曝露レジメンまたは低曝露レジメン、および各レジメンの適合プラセボ群(2群)に、2対2対1対1の割合で割り付け投与した。パートBは36週の実薬投与フェーズで、パートAを完了した適格患者をパートBに組み入れ、パートAで割り付けられたレジメンに従いデュピルマブの投与を継続、パートAでプラセボに割り付けられた患者には、無作為化時の適合レジメンに従いデュピルマブを投与した。デュピルマブの各曝露レベルでは、4段階に設定した用量のいずれかをベースラインの体重に応じて投与した。盲検化を確実とするため、全患者にデュピルマブまたはプラセボを2週ごとに投与した。 主要エンドポイントは、16週時点の組織学的寛解(食道上皮内好酸球数の最大値が高倍率視野当たり6個以下)とした。重要な副次エンドポイントは(1)食道上皮内好酸球数の最大値が高倍率視野当たり15個未満、(2)食道上皮内好酸球数最大値のベースラインからの変化率、(3)eosinophilic esophagitis histology scoring system(EoE-HSS)のグレードスコアのベースラインからの絶対変化、(4)同ステージスコアの絶対変化、(5)2型炎症遺伝子シグネチャーのnormalized enrichment score(NES)のベースラインからの相対的変化、(6)eosinophilic esophagitis diagnostic panel(EDP)遺伝子シグネチャーのNESのベースラインからの相対的変化、(7)Eosinophilic Esophagitis Reference Score(EREFS)総スコアのベースラインからの絶対変化、(8)Pediatric Eosinophilic Esophagitis Sign/Symptom Questionnaire-Caregiver(PESQ-C)で1つ以上の好酸球性食道炎の症状を認める日数割合のベースラインからの変化の8つで、階層的に検定した。組織学的寛解率は高曝露レジメン群68%、低曝露レジメン群58%、プラセボ群3% パートAで無作為化された患者は102例であった(デュピルマブ高曝露レジメン群37例、同低曝露レジメン群31例、プラセボ群34例)。このうち、パートBでは37例(100%)が高曝露レジメンを、29例(94%)が低曝露レジメンを継続。プラセボ群はパートBでは、18例(53%)が高曝露レジメンを、14例(41%)が低曝露レジメンの投与を受けた。 パートAで、組織学的寛解は高曝露レジメン群25/37例(68%)、低曝露レジメン群18/31例(58%)、プラセボ群1/34例(3%)で認められた。高曝露レジメン群とプラセボ群の群間差は65%ポイント(95%信頼区間[CI]:48~81、p<0.001)、低曝露レジメン群とプラセボ群の群間差は55%ポイント(37~73、p<0.001)であった。 高曝露レジメン群はプラセボ群と比較して、組織学的測定値(食道上皮内好酸球数の最大値、EoE-HSSグレードおよびステージスコア)、内視鏡的測定値(EREFS総スコア)およびトランスクリプトーム測定値(2型炎症およびEDP遺伝子シグネチャー)が有意に改善した。 また、すべての患者におけるベースラインから52週まで(パートB終了時)の組織学的測定値、内視鏡的測定値、トランスクリプトーム測定値の改善は、パートAでのデュピルマブの投与を受けた患者のベースラインから16週までの改善と、おおむね同程度であった。 パートAでは、デュピルマブ投与(いずれかの用量)を受けた患者がプラセボ投与を受けた患者よりも、新型コロナウイルス感染症、注射部位疼痛、頭痛の発現が、少なくとも10%ポイント以上多かった。重篤な有害事象は、パートAではデュピルマブ投与を受けた患者3例、パートBでは全体で6例に発現した。

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