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レブリキズマブ、日本人アトピー患者におけるリアルワールドでの有効性・安全性

 既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎患者に対する治療薬として、2024年5月に発売された抗ヒトIL-13モノクローナル抗体製剤レブリキズマブについて、日本の実臨床における良好な有効性と安全性が示された。日本医科大学千葉北総病院の萩野 哲平氏らによるDermatitis誌オンライン版2月20日号への報告より。 本研究は2施設の共同研究であり、中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者126例が対象。患者はレブリキズマブに外用コルチコステロイド薬を併用する16週間の治療を受けた。治療期間中に、以下の各指標が評価された:Eczema Area and Severity Index(EASI)/Investigator's Global Assessment(IGA)/Peak Pruritus Numerical Rating Scale(PP-NRS)/睡眠障害NRS/Atopic Dermatitis Control Tool(ADCT)/Dermatology Life Quality Index(DLQI)/Patient Oriented Eczema Measure(POEM)/IgE抗体/Thymus and Activation-Regulated Chemokine(TARC)/乳酸脱水素酵素(LDH)/末梢血好酸球数(TEC) 主な結果は以下のとおり。・レブリキズマブは4週時点ですべての臨床指標を改善し、その効果は16週まで維持された。・16週時点のEASI-50、75、90、100、IGA 0/1の達成率はそれぞれ83.1%、57.1%、27.3%、11.7%、33.3%であった。・16週時点のPP-NRS、睡眠障害NRS、DLQIの≧4ポイントの改善、ADCT<7ポイント、POEM≦7ポイントの達成率は、それぞれ75.9%、68.8%、65.9%、76.9%、80.4%であった。・検査指標については、治療期間中にIgE、TARC、LDHは減少したが、TECは増加した。・新たな安全性上の懸念は認められなかった。

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アトピー、乾癬、円形脱毛症、白斑の日本人患者で多い併存疾患

 アトピー性皮膚炎、乾癬、円形脱毛症、白斑の日本人患者において、アレルギー性またはアトピー性疾患(アレルギー性鼻炎、結膜炎、喘息を含む)、皮膚疾患、感染症が最も頻繁にみられる併存疾患であり、とくにアトピー性皮膚炎および乾癬患者では、静脈血栓塞栓症、リンパ腫、帯状疱疹、結核の発生率が高いことが明らかになった。福岡大学の今福 信一氏らは、日本のJMDCレセプトデータを用いた後ろ向きコホート研究を実施、日本人皮膚疾患患者における併存疾患の有病率および発生率を評価した。The Journal of Dermatology誌オンライン版2025年2月7日号への報告より。 本研究では、2013年6月~2020年12月にJMDC請求データベースから収集されたデータが使用された。アトピー性皮膚炎、乾癬、円形脱毛症、または白斑と診断された患者は、年齢、性別、およびインデックス月(診断または治療の最初の記録があった月)によって、それらの疾患の診断による請求記録がない個人と1:1でマッチングされた。 主な結果は以下のとおり。・データには、アトピー性皮膚炎69万1,338例、乾癬5万1,988例、円形脱毛症4万3,692 例、白斑8,912例が含まれ、それぞれに対応するマッチング対照群が設定された。・それぞれの皮膚疾患患者において有病率の高かった併存疾患とマッチング対照群での有病率は、以下のとおりであった。アトピー性皮膚炎:アレルギー性鼻炎(47%vs.37%)、結膜炎(33%vs.23%)、喘息(27%vs.20%)、ウイルス感染症(22%vs.15%)、ざ瘡(11%vs.3%)乾癬:アレルギー性鼻炎(35%vs.28%)、結膜炎(21%vs.17%)、真菌感染症(17%vs.5%)、高血圧(16%vs.13%)、ウイルス感染症(16%vs.7%)円形脱毛症:アレルギー性鼻炎(40%vs.31%)、結膜炎(26%vs.19%)、ウイルス感染症(17%vs.8%)、喘息(14%vs.11%)、アトピー性皮膚炎(12%vs.3%)白斑:アレルギー性鼻炎(45%vs.36%)、結膜炎(30%vs.23%)、ウイルス感染症(21%vs.12%)、喘息(19%vs.16%)、アトピー性皮膚炎(16%vs.4%)・アトピー性皮膚炎コホートにおける併存疾患の発生率(10万人年当たり)は、マッチング対照群と比較して以下のとおりであった:静脈血栓塞栓症:51.4(95%信頼区間[CI]:48.3~54.7)vs.31.7(29.2~34.2)リンパ腫:13.8(12.2~15.6)vs.5.7(4.7~6.8)皮膚T細胞性リンパ腫:1.6(1.1~2.2)vs.0.1(0.0~0.4)帯状疱疹:740.9(728.8~753.1)vs.397.6(388.9~406.6)結核:8.4(7.1~9.7)vs.5.8(4.8~6.9)・乾癬コホートでのマッチング対照群との比較においても、同様の傾向が認められた。円形脱毛症および白斑のコホートでは、対照群と95%CIがほぼ重なっていた。

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乳幼児健診でよくある疑問・相談への対応

限られた時間で判断・助言をするために「小児科」65巻12号(2024年11月臨時増刊号)乳幼児健診の場で保護者から向けられる素朴な、しかし切実な質問に、つい曖昧に答えてしまうことはないでしょうか。限られた時間の中で、見逃してはいけない徴候であれば確実にすくい上げることはもちろん、そうでなくとも医学的な根拠があり、かつ保護者が安心できる答えをその場で伝える――そのために知っておくべき44テーマについて、各領域の専門家にその考え方・答え方を解説いただきました。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する乳幼児健診でよくある疑問・相談への対応定価8,800円(税込)判型B5判頁数240頁発行2024年12月編集「小児科」編集委員会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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自己主導型のCBTはアトピー性皮膚炎の症状軽減に有効

 アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis;AD)は、強いかゆみや皮疹、乾燥肌を特徴とする炎症性皮膚疾患である。AD患者では、皮膚をかく行為が不安や抑うつなどのメンタルヘルス問題と関連していることが示唆されている。こうした中、オンラインで患者自身が行う認知行動療法(cognitive behavioral therapy;CBT)が、医師主導で行うCBTと同程度にADの症状を軽減する可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のDorian Kern氏らによるこの研究結果は、「JAMA Dermatology」に12月18日掲載された。 Kern氏は同研究所のニュースリリースの中で、「オンラインで患者自身が行うCBT(自己主導型CBT)は、医療リソースの消費を抑えながら患者の症状を軽減し、生活の質(QOL)を向上させる効果的な選択肢であることが明らかになった」と述べている。 CBTは、心身の問題に対する考え方や行動のパターンを変えることでストレスを軽減し、QOLを向上させる心理療法の一種であり、ADの症状改善にも有効とされている。過去の研究では、医師主導型CBTがADの症状軽減に有効であることが示されている。 今回の試験では、非劣性試験のデザインに基づき、自己主導型CBTの有効性と、従来の医師主導型CBTの有効性が比較された。対象とされた168人のAD患者(女性84.5%、平均年齢39歳)は、12週間にわたり自己主導型CBTを行う群(86人)と医師主導型CBTを受ける群(82人)にランダムに割り付けられた。自己主導型CBT群は、オンラインプログラムを利用して、マインドフルネスやかゆみへの適切な対処法(保湿剤やローションの使用など)を学び、自分で湿疹関連の治療を行った。主要評価項目は、自己報告によるPatient-Oriented Eczema Measure(POEM)スコアのベースラインから介入後およびその12週後の変化量とし、自己主導型CBT群と医師主導型CBT群のスコアの差が3点以内であれば、効果は同等と見なした。POEMは7つの質問で過去1週間の症状の強さを評価するツールである。 最終的に151人(90.0%)の対象者が介入後の評価を受けた。介入後のPOEMスコアの変化量は、自己主導型CBT群で4.60点、医師主導型CBT群で4.20点であった。両群間の変化量の平均差は0.36点であり、自己主導型CBTと医師主導型CBTの効果は統計学的に同程度であることが示された。深刻な有害事象は報告されなかった。医師主導型のCBTでは、治療ガイダンスに平均36.0分、評価に平均14.0分かかっていたのに対し、自己主導型のCBTでは評価に平均15.8分かかっていた。 こうした結果を受けて研究グループは、「自己主導型CBTは、特にトークセラピーに興味がない人にとって、利用しやすい効果的な湿疹管理法となる可能性がある」と述べている。Kern氏は「これは、AD患者だけでなく、皮膚科や慢性疾患の他の分野にとっても重要な進歩だ」と述べている。

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妊娠中のビタミンD摂取は子どもの骨を強くする

 妊娠中のビタミンDの摂取は、子どもの骨と筋肉の発達に良い影響をもたらすようだ。英サウサンプトン大学MRC Lifecourse Epidemiology CentreのRebecca Moon氏らによる研究で、妊娠中にビタミンDのサプリメントを摂取した女性の子どもは、摂取していなかった女性の子どもに比べて、6〜7歳時の骨密度(BMD)と除脂肪体重が高い傾向にあることが明らかにされた。この研究結果は、「The American Journal of Clinical Nutrition」11月号に掲載された。Moon氏は、「小児期に得られたこのような骨の健康への良い影響は、一生続く可能性がある」と話している。 ビタミンDは、人間の皮膚が日光(紫外線)を浴びると生成されるため「太陽のビタミン」とも呼ばれ、骨の発達と健康に重要な役割を果たすことが知られている。具体的には、ビタミンDは、丈夫な骨、歯、筋肉の健康に必要なミネラルであるカルシウムとリン酸のレベルを調節する働きを持つ。 今回の研究では、妊娠14週未満で単胎妊娠中の英国の妊婦(体内でのビタミンDの過不足の指標である血液中の25-ヒドロキシビタミンD濃度が25~100nmol/L)を対象に、妊娠中のビタミンD摂取と子どもの骨の健康との関連がランダム化比較試験により検討された。対象とされた妊婦は、妊娠14~17週目から出産までの期間、1日1,000IUのコレカルシフェロール(ビタミンDの一種であるビタミンD3)を摂取する群(介入群)とプラセボを摂取する群(対照群)にランダムに割り付けられた。これらの妊婦から生まれた子どもは、4歳および6~7歳のときに追跡調査を受けた。 6〜7歳時の追跡調査を受けた454人のうち447人は、DXA法(二重エネルギーX線吸収法)により頭部を除く全身、および腰椎の骨の検査を受け、骨面積、骨塩量(BMC)、BMD、および骨塩見かけ密度(BMAD)が評価された。解析の結果、介入群の子どもではプラセボ群の子どもと比較して、6〜7歳時の頭部を除く全身のBMCが0.15標準偏差(SD)(95%信頼区間0.04~0.26)、BMDが0.18SD(同0.06~0.31)、BMADが0.18SD(同0.04~0.32)、除脂肪体重が0.09SD(同0.00~0.17)高いことが明らかになった。 こうした結果を受けてMoon氏は、「妊婦に対するビタミンD摂取による早期介入は、子どもの骨を強化し、将来の骨粗鬆症や骨折のリスク低下につながることから、重要な公衆衛生戦略となる」と述べている。 では、妊娠中のビタミンD摂取が、どのようにして子どもの骨の健康に良い影響を与えるのだろうか。Moon氏らはサウサンプトン大学のニュースリリースで、2018年に同氏らが行った研究では、子宮内の余分なビタミンDが、「ビタミンD代謝経路に関わる胎児の遺伝子の活動を変化させる」ことが示唆されたと述べている。さらに、2022年に同氏らが発表した研究では、妊娠中のビタミンD摂取により帝王切開と子どものアトピー性皮膚炎のリスクが低下する可能性が示されるなど、妊娠中のビタミンD摂取にはその他のベネフィットがあることも示唆されているという。

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酒さ〔Rosacea〕・鼻瘤〔Rhinophyma〕

1 疾患概要■ 定義酒さは20歳代以降に好発し、顔面中央部の前額・眉間部、鼻部、頬部(中央寄り)、頤部に、紅斑・潮紅や毛細血管拡張による赤ら顔を来す疾患である。■ 疫学白人(コーカソイド)では5~10%程度までとする報告が欧米の地域からなされている。アジア人(モンゴロイド)では数~20%程度までの報告がある。日本人の酒さの罹患率の正確なデータはないが、自覚していない軽症例を含めると0.5~1%程度の罹患率が見込まれる。■ 病因酒さに一元的な病因は存在しない。酒さの病理組織学的病変の主体は、脂腺性毛包周囲の真皮内にあり、脂腺性毛包を取り囲む炎症と毛細血管拡張を来す。コーカソイドを祖先に持つ集団でのゲノムワイド関連解析(GWAS)調査では酒さ発症に遺伝的背景の示唆がある1)。後天的要因として、環境因子からの自然免疫機構・抗菌ペプチドの過活性化2,3)や肥満細胞の関与する皮膚炎症の遷延化4)、末梢神経応答などの関与する知覚過敏や血管拡張反応などが病態形成に関与することが示されている。■ 症状・分類酒さの皮疹は眉間部、鼻部・鼻周囲、頬部、頤部の顔面中央部に主として分布する。まれに頸部や前胸部、上背部の脂腺性毛包の分布部に皮疹が拡大することもある。酒さは主たる症候・個疹性状に基づいて、紅斑血管拡張型酒さ、丘疹膿疱型酒さ、瘤腫型酒さ・鼻瘤、眼型酒さの4病型・サブタイプに分類される。1)紅斑血管拡張型酒さ脂腺性毛包周囲の紅斑と毛細血管の拡張を主症候とし、酒さの中で最も頻度が高い病型である。寒暖差などの気温変化、紫外線を含む日光曝露、運動や香辛料の効いた食餌などの顔面血流が変化する状況で、火照りや顔の熱感などの自覚症状が悪化する。2)丘疹膿疱型酒さ尋常性ざ瘡と類似の丘疹や膿疱が頬部、眉間部、頤部などに出現する。背景に紅斑血管拡張型酒さにみられる紅斑や毛細血管拡張を併存することも多い。尋常性ざ瘡と異なり、丘疹膿疱型酒さには面皰は存在しないが、酒さと尋常性ざ瘡が合併する患者もあり得る。尋常性ざ瘡との鑑別には面皰の有無に加えて、寒暖差による火照り感や熱感などの外界変化による自覚症状の変動を確認するとよい。3)瘤腫型酒さ・鼻瘤皮下の炎症に伴って肉芽腫形成や線維化を来す病型である。とくに、鼻部に病変を来すことが多く、「鼻瘤」という症候名・病名でも知られている。頬部の丘疹膿疱型酒さを合併することがまれではない。紅斑毛細血管拡張型酒さや丘疹膿疱型酒さは女性患者の受診者が多いが、瘤腫型酒さ・鼻瘤では男女比は1対1である5)。4)眼型酒さ眼瞼縁のマイボーム腺周囲炎症・機能不全を主たる病態とし、初期症状は、眼瞼縁睫毛部周囲の紅斑と毛細血管拡張、そして眼瞼結膜の充血や血管拡張である。自覚症状として眼球や眼瞼の刺激感や流涙を訴えることが多い。眼型酒さのほとんどは、他の酒さ病型に併存しており、酒さの眼合併症という捉え方もされる。■ 予後生命予後は良い。紅斑血管拡張型酒さの毛孔周囲炎症と毛細血管拡張の改善には数年を要する。丘疹膿疱型酒さの丘疹・膿疱症状は、3~6ヵ月程度の治療で改善が期待できる。瘤腫型酒さ・鼻瘤は鼻形態の変形程度に併せて、抗炎症療法から手術療法までが選択されるが、症候の安定には数年を要する。眼型酒さの炎症症状(結膜炎や結膜充血)は3~6ヵ月程度の治療で改善が期待できる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)酒さの診断のための特定の検査方法はなく、皮疹性状や分布、臨床経過から総合的に酒さを診断する。酒さ患者にはアトピー素因やアレルギー素因を有する患者が20~40%ほど含まれており、特異的IgE検査(VIEW39など)を行い、増悪因子の回避に努める5)。アレルギー性接触皮膚炎の併存が疑われる場合にはパッチテスト(貼布試験)を考慮する。酒さ病変部では、毛包虫が増えていることがあり、毛包虫の確認には皮膚擦過試料の検鏡検査を行う。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)酒さの治療では、主たる症候を見極めて治療計画を立てる。一般的には、抗炎症作用を有する治療薬で酒さの脂腺性毛孔周囲の紅斑、丘疹、膿疱の治療を3~6ヵ月程度行う。炎症性皮疹のコントロールの後に、器質的変化による毛細血管拡張や、瘤腫や鼻瘤にみられる線維化と形態変形に対する治療を計画する。酒さ症候は、生活環境や併存症によっても症状の増悪が起こる5,6)。酒さの再燃や増悪の予防には、患者毎の増悪因子や環境要因に沿った生活指導と肌質に合わせたスキンケアが重要である。■ 丘疹膿疱型酒さに対する抗炎症外用薬・内服薬1)メトロニダゾール外用薬欧米では、メトロニダゾール外用薬(商品名:ロゼックスゲル)が酒さの抗炎症薬として1980年代から使用されている7,8)。わが国でも2022年に国際的酒さ標準治療薬の1つであるメトロニダゾール外用薬0.75%が酒さに対して保険適用が拡大された9)。メトロニダゾール外用薬は、その炎症反応抑制効果から丘疹膿疱型酒さにみられる炎症性皮疹の丘疹と膿疱の抑制効果、脂腺性毛包周囲の炎症による紅斑に対して改善効果が期待できる。2)イオウ・カンフルローションイオウ・カンフルローションは、わが国では1970年代から発売されざ瘡と酒さに対して保険適用がある。ただ、イオウ・カンフルローションの保険適用は、わが国での酒さ患者を対象とした臨床試験に基づいた承認経過の記録が見当たらず、現代のガイドライン評価基準に則した本邦での良質なエビデンスはない。イオウ・カンフルローションは、エタノールを含んでおり、皮脂と角層内水分の少ない乾燥肌の患者に用いると、乾燥感や肌荒れ感が強くなる場合がある。イオウ・カンフルローション懸濁液は、淡黄色で塗布により肌色調が黄色調となることがある。肌色調が気になる患者には、上澄み液だけを用いるなどの工夫をする。3)テトラサイクリン系抗菌薬ドキシサイクリンは、丘疹膿疱型酒さの炎症性皮疹(丘疹、膿疱)に有効である。酒さ専用内服薬としてドキシサイクリンの低用量徐放性内服薬が欧米では承認されている。ミノサイクリンは、ドキシサイクリン低用量徐放性内服薬と同等の効果が示されているが、間質性肺炎や皮膚色素沈着などの副作用から、長期服用時に留意が必要である10)。■ 紅斑毛細血管拡張型酒さに対する治療紅斑毛細血管拡張型酒さの主たる症候は、毛細血管の拡張に伴う紅斑や一過性潮紅である。治療には拡張した毛細血管を縮小させる治療を行う。パルス色素レーザー(pulsed dye laser:PDL)[595nm]、Nd:YAGレーザー[1,064nm]、Intense pulsed light (IPL)が、酒さの毛細血管拡張と紅斑を有意に減少させることが報告されている。これらのレーザー・光線治療は酒さに対しては保険適用外である。4 今後の展望2022年にメトロニダゾールが酒さに対して保険適用となり、わが国でも酒さ標準治療薬が入手できるようになった。酒さの診断名登録が増えており、医療関係者と患者ともに酒さ・赤ら顔に対する認知度の増加傾向が感じられる。しかしながら、潮紅や毛細血管拡張を主体とする紅斑毛細血管拡張型酒さに対する保険適用の治療方法は十分ではなく、今後の治験や臨床試験が期待される。5 主たる診療科皮膚科顔面の丘疹・膿疱を主たる皮疹形態とする疾患の多くは皮膚表面の表皮の疾患ではなく、真皮における炎症、肉芽腫性疾患、感染症、腫瘍性疾患である可能性が高い。皮膚炎症性疾患に頻用されるステロイド外用薬は、これらの疾患に効果がないばかりか、悪化させることがしばしば経験される。酒さは、ステロイドで悪化する代表的な皮膚疾患であり、安易なステロイド使用が患者と医療者の双方にとって望ましくない経過につながる。顔面に赤ら顔や丘疹や膿疱をみかける症例は、ステロイドなどの使用の前に鑑別疾患を十分に考慮する必要があるし、判断に迷う場合には外用薬を処方する前に速やかに皮膚科専門医にコンサルタントすることをお勧めする。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報酒さナビ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)National Rosacea Society(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)American Acne and Rosacea Society(医療従事者向けのまとまった情報、米国の本症の診療サイト)1)Aponte JL, et al. Hum Mol Genet. 2018;27:2762-2772.2)Yamasaki K, et al. Nat Med. 2007;13:975-980.3)Yamasaki K, et al. J Invest Dermatol. 2011;131:688-697.4)Muto Y, et al. J Invest Dermatol. 2014;134:2728-2736.5)Wada-Irimada M, et al. J Dermatol. 2022;49:519-524.6)Yamasaki K, et al. J Dermatol. 2022;49:1221-1227.7)Nielsen PG. Br J Dermatol. 1983;109:63-66.8)Nielsen PG. Br J Dermatol. 1983;108:327-332.9)Miyachi Y, et al. J Dermatol. 2022;49:330-340.10)van der Linden MMD, et al. Br J Dermatol. 2017;176:1465-1474.公開履歴初回2024年11月14日

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11月12日 皮膚の日【今日は何の日?】

【11月12日 皮膚の日】〔由来〕日本臨床皮膚科医会が、11月12日(いい・ひふ)の語呂合わせから1989年に制定。日本皮膚科学会と協力し、皮膚についての正しい知識の普及や皮膚科専門医療に対する理解を深めるための啓発活動を実施している。毎年この日の前後の時期に一般の方々を対象に、講演会や皮膚検診、相談会行事を全国的に展開している。関連コンテンツ事例008 蕁麻疹にダイアコート軟膏の処方で査定【斬らレセプト シーズン4】軟膏じゃなかった【Dr.デルぽんの診察室観察日記】かゆみが続く慢性掻痒【患者説明用スライド】妊娠中の魚油摂取、出生児のアトピー性皮膚炎リスクは低減する?アトピー性皮膚炎へのデュピルマブ、5年有効性・安全性は?蕁麻疹の診断後1年、がん罹患リスク49%増

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ウパダシチニブ、ADの頭頸部病変における新たな有効性解析結果/アッヴィ

 2024年10月15日、アッヴィはウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)の第III相試験であるMeasure Up 1試験とMeasure Up 2試験について、アトピー性皮膚炎(AD)の頭頸部病変における重症度別の有効性を示す新たな解析結果を発表した1)。 AD患者において、頭部、頸部、顔面、手など、特定の部位に現れるADの症状は、症状の発生頻度や患者の生活の質に重大な影響を及ぼしうることが示されている2,3)。また、リアルワールド観察研究である、UP-TAINED試験で70%、AD-VISE試験で74.5%以上のAD患者においてベースライン時に頭頸部病変が認められており4,5)、この領域に対する有効な治療法の必要性が高まっている。 同解析では、中等症~重症のAD患者をベースラインにおける頭頸部領域の重症度に基づいて層別化し、16週間にわたりウパダシチニブ(15mgまたは30mg)の有効性をプラセボと比較し評価した1)。 具体的には、AD患者の各サブグループを対象に、複数の最適かつ厳格な治療目標(頭頸部領域におけるほぼ完全な皮膚症状の改善[頭頸部のEASIスコアが1未満]、ほぼ完全な皮膚症状の改善[EASI 90]、かゆみがない/ほとんどない状態[WP-NRS 0/1]および生活への影響はない状態[DLQI 0/1])について、ウパダシチニブの投与による達成を評価した1)。また、患者の層別化については、頭頸部病変がない/軽度、中等度または重度であることを層別因子とした1)。 発表された主な結果は以下のとおり。・さまざまな程度の頭頸部病変を有する中等症~重症のAD患者において、16週時に頭頸部領域におけるほぼ完全な皮膚症状の改善※が達成された割合は、ウパダシチニブ(15mgまたは30mg)投与の患者のほうが、プラセボ投与の患者よりも高いことが示された。※高い治療目標:頭頸部領域におけるほぼ完全な皮膚症状の改善(頭頸部のEASIスコアが1未満)、生活への影響はない状態(DLQI 0/1)および最小疾患活動性(ほぼ完全な皮膚症状の改善[EASI 90]とかゆみがない/ほとんどない状態[WP-NRS 0/1])を同時に達成すること。 また同解析結果は、オランダ・アムステルダムで開催される第33回欧州皮膚科・性病科学会議(EADV)において発表された。

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妊娠中の魚油摂取、出生児のアトピー性皮膚炎リスクは低減する?

 妊娠中のオメガ3長鎖多価不飽和脂肪酸(n-3 LCPUFA、魚油)サプリメント摂取と出生児のアトピー性皮膚炎リスクとの関連は、母体が有するシクロオキシゲナーゼ-1(COX1)遺伝子型によって異なることが示された。デンマーク・コペンハーゲン大学のLiang Chen氏らが実施した無作為化比較試験「Danish Copenhagen Prospective Studies on Asthma in Childhood 2010」の事前に規定された2次解析において、TT遺伝子型を有する母親がn-3 LCPUFAサプリメントを摂取した場合、出生児はアトピー性皮膚炎のリスクが有意に低いことが示された。著者は、「TT遺伝子型を有する妊婦にのみサプリメントを摂取させるという個別化された予防戦略の参考になるだろう」と述べている。エイコサノイドは、アトピー性皮膚炎の病態生理に関与しているが、出生前のn-3 LCPUFAサプリメント摂取や母体のCOX1遺伝子型の影響を受けるかどうかは明らかになっていなかった。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年8月28日号掲載の報告。 「Danish Copenhagen Prospective Studies on Asthma in Childhood 2010」の事前に規定された2次解析では、出生コホートの母子ペアを対象とし、出生児が10歳になるまで前向きに追跡した。妊娠中のn-3 LCPUFAサプリメント摂取と小児アトピー性皮膚炎の関連について、全体および母親のCOX1遺伝子型別に検討した。本試験では、母親と出生児のCOX1遺伝子型を確認し、出生児が1歳になった時点で尿中エイコサノイドを測定した。本試験は2019年1月~2021年12月の期間に実施し、データ解析は2023年1~9月に行った。 合計736例の妊娠24週の妊婦を、1日2.4gのn-3 LCPUFA(魚油)サプリメントを摂取する群(介入群)またはプラセボ(オリーブオイル)を摂取する群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付け、出産1週後まで摂取を継続させた。 主要アウトカムは、全体および母親のCOX1遺伝子型別にみた10歳時までの小児アトピー性皮膚炎リスクであった。 主な結果は以下のとおり。・10歳時のフォローアップを完了した出生児は635例(91%、女子363例[57%])であり、母親と共に、介入群321組(51%)、対照群314組(49%)が解析に含まれた。・妊娠中のn-3 LCPUFAサプリメントの摂取は、出生児の1歳時点における尿中トロンボキサンA2代謝物量と有意な負の関連があった(β:-0.46、95%信頼区間[CI]:-0.80~-0.13、p=0.006)。また、尿中トロンボキサンA2代謝物量はCOX1 rs1330344遺伝子型との有意な正の関連も認められた(Cアレル当たりのβ:0.47、95%CI:0.20~0.73、p=0.001)。・10歳時点までの小児アトピー性皮膚炎発症とn-3 LCPUFAサプリメント摂取(ハザード比[HR]:1.00、95%CI:0.76~1.33、p=0.97)、母親のCOX1遺伝子型(同:0.94、0.74~1.19、p=0.60)との間には、いずれも関連が認められなかったが、n-3 LCPUFAサプリメント摂取と母親のCOX1遺伝子型には有意な交互作用がみられた(交互作用のp<0.001)。・TT遺伝子型を有する母親の出生児のアトピー性皮膚炎のリスクは、対照群よりも介入群で有意に低かった(390組[61%]のHR:0.70、95%CI:0.50~0.98、p=0.04)。一方で、CT遺伝子型を有する母親の出生児において、介入群のアトピー性皮膚炎のリスク低下はみられず(209組[33%]のHR:1.29、95%CI:0.79~2.10、p=0.31)、CC遺伝子型を有する母親の出生児では有意なリスク上昇が認められた(37組[6%]のHR:5.77、95%CI:1.63~20.47、p=0.007)。・アトピー性皮膚炎発症について、n-3 LCPUFAサプリメント摂取と出生児のCOX1遺伝子型には、有意な交互作用がみられた(交互作用のp=0.002)。

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アトピー性皮膚炎へのデュピルマブ、5年有効性・安全性は?

 デュピルマブで治療を受けたアトピー性皮膚炎患者を最長5年追跡調査したコホート研究において、デュピルマブの臨床的有効性は維持された。一方で3分の2の患者は3週ごとまたは4週ごとの投与量に漸減し、23.8%の患者が治療を中止した。治療中止の主な理由は有害事象、無効であった。これまで日常診療でのアドピー性皮膚炎に対するデュピルマブの、長期の有効性と安全性に関するデータは限られていた。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのCeleste M. Boesjes氏らが、JAMA Dermatology誌オンライン版2024年8月7日号で報告した。 研究グループは、日常診療で最長5年間治療を受けたアトピー性皮膚炎の小児、成人および高齢者における、デュピルマブ治療の臨床的有効性と治療中止の理由を評価する前向き多施設コホート研究を行った。 BioDayレジストリ(オランダの大学病院4施設とその他10施設で登録)を用いて、2017年10月~2022年12月にデュピルマブによる治療を受けたすべての年齢のアトピー性皮膚炎患者を特定し、研究対象とした。 臨床的有効性は、小児(18歳未満)、成人(18~64歳)、高齢者(65歳以上)で層別化を行い、Eczema Area and Severity Index(EASI)、Investigator Global Assessment(IGA)、そう痒Numeric Rating Scale(NRS)で評価した。さらに、TARC値、好酸球数などを評価。デュピルマブを中止した患者について、中止の理由を評価した。 主な結果は以下のとおり。・計1,286例のアトピー性皮膚炎患者(年齢中央値38歳[四分位範囲[IQR]:26~54]、男性726例[56.6%])がデュピルマブによる治療を受けた(小児130例、成人1,025例、高齢者131例)。・追跡期間中央値は87.5ヵ月(IQR:32.0~157.0)。・ほとんどの患者が最長5年の治療期間にわたりアトピー性皮膚炎のコントロールを維持しており、EASIが7以下の患者は78.6~92.3%、そう痒NRSが4以下の患者は72.2~88.2%であった。・全患者の最大70.5%の投与間隔が延長し、ほとんどが300mgの3週ごとまたは4週ごと投与となっていた。・治療開始5年後、EASIスコア平均値は2.7(95%信頼区間[CI]:1.2~4.2)、そう痒NRS平均値は3.5(2.7~4.3)であった。・EASI、IGAについて、観察期間を通じて年齢群間に統計学的有意差がみられたが、その差(52週時点でEASIは0.3~1.6、IGAは0.12~0.26)は非常に小さかった。そう痒NRSについては、統計学的有意差はみられなかった。・TARC中央値は、1,751pg/mL(95%CI:1,614~1,900)から治療開始6ヵ月で390pg/mL(368~413)へ大幅に低下し、低値を維持した。・好酸球数中央値は16週まで一時的に上昇したが、その後は経時的に統計学的有意な低下がみられた。・合計306例(23.8%)がデュピルマブを中止し、中止までの期間中央値は54.0週(IQR:29.0~110.0)であった。多く報告された中止の理由は、有害事象98例(7.6%)、無効85例(6.6%)であった。41例(3.2%)がデュピルマブ投与を再開し、これらの患者の大半で奏効が認められた。

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最近増加している好酸球性食道炎に生物学的製剤は有効か?(解説:上村直実氏)

 好酸球性消化管疾患は、食道・胃・十二指腸・小腸・大腸の消化管のいずれかに好酸球が浸潤して炎症を引き起こすアレルギー性疾患の総称であるが、確定診断が難しいことから比較的まれな疾患で厚生労働省の指定難病として告示されている。胸焼け、腹痛、下痢といったさまざまな消化器症状を引き起こすが、一般的には好酸球性食道炎と胃から大腸までのいずれかもしくは複数の部位に炎症の主座を有する好酸球性胃腸炎に大別されているが、最近の診療現場では好酸球性食道炎が増加している。つかえ感や胸焼けを慢性的に自覚する患者に対して行われる上部消化管内視鏡検査で、本疾患に特徴的な内視鏡所見である縦走溝や輪状溝および白苔を認めた際に行う生検組織を用いた組織学的検査により確定診断されるケースが多いが、健康診断や人間ドックなどで受けた内視鏡検査の際に偶然発見される無症状の症例も増加している。本疾患が気管支喘息などのアレルギー性疾患の合併率が高いことも、留意しておくべきである。 わが国における好酸球性食道炎に対する治療は、保険適用になっていないプロトンポンプ阻害薬やステロイド吸入薬の内服が使用される場合が多いが、それでも症状が改善しない場合は、全身性ステロイドの内服や原因として疑われる食材を除去する食事療法が行われている。以上の一般的治療でも症状が難治性の場合、海外では生物学的製剤の開発が進みつつある。難治性のアトピー性皮膚炎や気管支喘息および鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の治療薬であるインターロイキンIL-4/IL-13のシグナル伝達を阻害する完全ヒト型モノクローナル抗体であるデュピルマブが、好酸球性食道炎に対しても承認されている。すなわち、2022年12月22日号のNEJM誌に掲載された国際共同試験の結果において、12歳以上の好酸球性食道炎患者を対象としたデュピルマブ週1回皮下投与は、組織学的寛解率を改善すると共に嚥下障害症状を軽減することが明らかとなり、さらに11歳以下の小児を対象とした第III相無作為化試験において組織学的所見の改善を認めた結果が、2024年6月27日号のNEJM誌に掲載されると同時に米国などで承認されている。 今回、好酸球を減少させる抗IL-5受容体αモノクローナル抗体であるベンラリズマブの有用性と安全性を検証した第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「MESSINA試験」の結果も、2024年6月27日号のNEJM誌で報告された。試験の結果、好酸球性食道炎に対し、ベンラリズマブはプラセボと比較して組織学的寛解率が有意に高かったものの、嚥下障害の症状に関しては有意な改善は認められなかった。以前の報告から、ベンラリズマブは血液、骨髄、肺、胃、食道組織における好酸球のほぼ完全な減少をもたらす薬剤であり、好酸球性食道炎の治療薬としても期待されたが、浸潤好酸球の減少が症状の改善につながらなかった結果から、今後、好酸球浸潤と症状発現の機序が残された課題と思われる。 現在、国内においてPPIや生物学的製剤も含めて好酸球性食道炎に対して保険適用となっている薬剤は皆無であるが、今後、増加傾向のあるアレルギー疾患である好酸球性食道炎の新たな知見に注目しておく必要があると思われた。

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デュピルマブ、11歳以下の好酸球性食道炎に有効/NEJM

 小児(1~11歳)の好酸球性食道炎患者において、デュピルマブはプラセボと比較して有意に高率な組織学的寛解をもたらし、デュピルマブの高曝露レジメンがプラセボと比較して、重要な副次エンドポイントの測定値の改善に結びついたことが示された。米国・マウントサイナイ・アイカーン医科大学Mirna Chehade氏らが第III相無作為化試験の結果を報告した。デュピルマブはIL-4/IL-13経路を阻害するヒトモノクローナル抗体であり、成人および思春期の好酸球性食道炎を含む、2型炎症で特徴付けられる5つの異なるアトピー性疾患で有効性が示されていた。NEJM誌2024年6月27日号掲載の報告。16週時点の組織学的寛解を主要エンドポイントに第III相試験 第III相試験はパートA~パートCの3段階で行われ、本論ではパートAとパートBの結果が報告された。試験は米国26施設とカナダ1施設で行われた。 パートAは16週の無作為化二重盲検プラセボ対照フェーズで、1~11歳のプロトンポンプ阻害薬(PPI)に不応の活動期好酸球性食道炎患者を、デュピルマブの高曝露レジメンまたは低曝露レジメン、および各レジメンの適合プラセボ群(2群)に、2対2対1対1の割合で割り付け投与した。パートBは36週の実薬投与フェーズで、パートAを完了した適格患者をパートBに組み入れ、パートAで割り付けられたレジメンに従いデュピルマブの投与を継続、パートAでプラセボに割り付けられた患者には、無作為化時の適合レジメンに従いデュピルマブを投与した。デュピルマブの各曝露レベルでは、4段階に設定した用量のいずれかをベースラインの体重に応じて投与した。盲検化を確実とするため、全患者にデュピルマブまたはプラセボを2週ごとに投与した。 主要エンドポイントは、16週時点の組織学的寛解(食道上皮内好酸球数の最大値が高倍率視野当たり6個以下)とした。重要な副次エンドポイントは(1)食道上皮内好酸球数の最大値が高倍率視野当たり15個未満、(2)食道上皮内好酸球数最大値のベースラインからの変化率、(3)eosinophilic esophagitis histology scoring system(EoE-HSS)のグレードスコアのベースラインからの絶対変化、(4)同ステージスコアの絶対変化、(5)2型炎症遺伝子シグネチャーのnormalized enrichment score(NES)のベースラインからの相対的変化、(6)eosinophilic esophagitis diagnostic panel(EDP)遺伝子シグネチャーのNESのベースラインからの相対的変化、(7)Eosinophilic Esophagitis Reference Score(EREFS)総スコアのベースラインからの絶対変化、(8)Pediatric Eosinophilic Esophagitis Sign/Symptom Questionnaire-Caregiver(PESQ-C)で1つ以上の好酸球性食道炎の症状を認める日数割合のベースラインからの変化の8つで、階層的に検定した。組織学的寛解率は高曝露レジメン群68%、低曝露レジメン群58%、プラセボ群3% パートAで無作為化された患者は102例であった(デュピルマブ高曝露レジメン群37例、同低曝露レジメン群31例、プラセボ群34例)。このうち、パートBでは37例(100%)が高曝露レジメンを、29例(94%)が低曝露レジメンを継続。プラセボ群はパートBでは、18例(53%)が高曝露レジメンを、14例(41%)が低曝露レジメンの投与を受けた。 パートAで、組織学的寛解は高曝露レジメン群25/37例(68%)、低曝露レジメン群18/31例(58%)、プラセボ群1/34例(3%)で認められた。高曝露レジメン群とプラセボ群の群間差は65%ポイント(95%信頼区間[CI]:48~81、p<0.001)、低曝露レジメン群とプラセボ群の群間差は55%ポイント(37~73、p<0.001)であった。 高曝露レジメン群はプラセボ群と比較して、組織学的測定値(食道上皮内好酸球数の最大値、EoE-HSSグレードおよびステージスコア)、内視鏡的測定値(EREFS総スコア)およびトランスクリプトーム測定値(2型炎症およびEDP遺伝子シグネチャー)が有意に改善した。 また、すべての患者におけるベースラインから52週まで(パートB終了時)の組織学的測定値、内視鏡的測定値、トランスクリプトーム測定値の改善は、パートAでのデュピルマブの投与を受けた患者のベースラインから16週までの改善と、おおむね同程度であった。 パートAでは、デュピルマブ投与(いずれかの用量)を受けた患者がプラセボ投与を受けた患者よりも、新型コロナウイルス感染症、注射部位疼痛、頭痛の発現が、少なくとも10%ポイント以上多かった。重篤な有害事象は、パートAではデュピルマブ投与を受けた患者3例、パートBでは全体で6例に発現した。

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最新のアトピー性皮膚炎治療薬レブリキズマブ、有効性はデュピルマブと同等か

 カナダ・トロント大学のAaron M. Drucker氏らは、アトピー性皮膚炎を効能・効果として新たに承認されたレブリキズマブについて、リビングシステマティックレビューおよびメタ解析により、その他の免疫療法と有効性・安全性を比較した。その結果、成人のアトピー性皮膚炎の短期治療の有効性は、デュピルマブと同等であった。レブリキズマブは臨床試験でプラセボと比較されていたが、実薬対照比較はされていなかった。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年7月17日号掲載の報告。 研究グループは、Cochrane Central Register of Controlled Trials、MEDLINE、Embase、Latin American and Caribbean Health Science Informationデータベース、Global Resource of Eczema Trialsデータベースおよび試験レジストリを用いて、2023年11月3日までに登録された情報を検索した。中等症~重症のアトピー性皮膚炎に対する全身免疫療法を8週間以上評価した無作為化比較試験を適格とし、タイトル、アブストラクト、全文をスクリーニングした。データを抽出し、ランダム効果モデルを用いたベイジアンネットワークメタ解析を実施。薬剤間の差は、臨床的意義のある最小変化量を用いて評価した。エビデンスの確実性は、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)システムを用いて評価した。最新の解析は2023年12月13日~2024年2月20日に実施した。 有効性アウトカムは、Eczema Area and Severity Index(EASI)、Patient Oriented Eczema Measure(POEM)、Dermatology Life Quality Index(DLQI)、Peak Pruritus Numeric Rating Scales(PP-NRS)とし、平均群間差(MD)と95%信用区間(CrI)を求めて比較した。安全性アウトカムは、重篤な有害事象、有害事象による試験薬の中止とした。その他のアウトカムは、EASI-50、EASI-75、EASI-90達成率、Investigator Global Assessment(IGA)スコアに基づく奏効率(IGAスコアが2点以上低下し、1点以下を達成)などとし、これらの二値変数のアウトカムはオッズ比と95%CrIを求めて比較した。 主な結果は以下のとおり。・解析には、98の適格試験の対象患者2万4,707例が組み込まれた。・最長16週間の治療を受けた成人アトピー性皮膚炎患者において、レブリキズマブはデュピルマブと比較して、EASI(MD:-2.0、95%CrI:-4.5~0.3、エビデンスの確実性:中)、POEM(-1.1、-2.5~0.2、中)、DLQI(-0.2、-2.1~1.6、中)、PP-NRS(0.1、-0.4~0.6、高)のいずれも臨床的に意義のある差はみられなかった。・有効性に関する二値変数のアウトカムのオッズは、デュピルマブがレブリキズマブと比較して高い傾向にあった。・その他の承認済みの全身療法の相対的有効性は、今回のリビングシステマティックレビュー以前のアップデートで示されたものと同様であり、高用量ウパダシチニブおよびアブロシチニブが、数値的に最も高い相対的有効性を示した。・安全性アウトカムは、イベント発現率が低く、有用な比較が制限された。

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AhR活性化を介してアトピー性皮膚炎/尋常性乾癬の症状を改善する外用薬「ブイタマークリーム1%」【最新!DI情報】第20回

AhR活性化を介してアトピー性皮膚炎/尋常性乾癬の症状を改善する外用薬「ブイタマークリーム1%」今回は、アトピー性皮膚炎/尋常性乾癬治療薬「タピナロフクリーム(商品名:ブイタマークリーム1%、製造販売元:日本たばこ産業)を紹介します。本剤は、リガンド依存的な転写因子AhRの活性化を介して炎症性サイトカインを低下させ、抗酸化分子の発現を誘導して皮膚の炎症を抑制するとともに、皮膚バリア機能を改善させる新しい作用機序の薬剤です。<効能・効果>アトピー性皮膚炎および尋常性乾癬の適応で、2024年6月24日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>●アトピー性皮膚炎通常、成人および12歳以上の小児には、1日1回、適量を患部に塗布します。治療開始8週間以内に症状の改善が認められない場合は、使用を中止します。●尋常性乾癬通常、成人には、1日1回、適量を患部に塗布します。治療開始12週間以内に症状の改善が認められない場合は、使用を中止します。<安全性>主な副作用に、適用部位毛包炎(17.0%)、頭痛、接触皮膚炎、適用部位ざ瘡(5%以上)があります。その他、毛包炎、ざ瘡、乾癬、アトピー性皮膚炎、適用部位刺激感、適用部位そう痒感、適用部位変色、適用部位多毛症、適用部位湿疹(1~5%未満)があります。<患者さんへの指導例>1.アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬の症状緩和・進行抑制に効果がある非ステロイド性のクリーム薬です2.皮膚感染症を増悪させることがあるので、皮膚感染症があるときは必ず医師または薬剤師に申し出てください。3.この薬で症状の改善が認められないときは、使用を中止することがあります。4.アトピー性皮膚炎では、12歳未満の小児には使用できません。尋常性乾癬では、小児には使用できません。 <ここがポイント!>アトピー性皮膚炎は、増悪と軽快を繰り返す、強い痒みを伴う炎症性皮膚疾患です。治療の目標は、症状がないか、あっても軽微で日常生活に支障がない状態への導入およびその維持です。薬物療法にはステロイド外用薬を中心に、タクロリムス外用薬やデルゴシチニブ外用薬などが使用されます。ステロイドでは特有の副作用、その他の外用薬では対象患者や塗布に関する制限などがあり、使用には注意が必要です。慢性の皮膚疾患である尋常性乾癬は、遺伝的、環境的および免疫学的要因などの複数の要因で発症します。治療にはステロイド外用薬が用いられますが、局所の副作用発現などに注意が必要です。本剤は、非ステロイド性の低分子の芳香族炭化水素受容体調節薬(therapeutic AhR modulating agent:TAMA)で、既存薬と異なる作用機序を有するアトピー性皮膚炎および尋常性乾癬の治療薬です。リガンド依存性転写因子であるAhRの活性化を介して炎症性サイトカインの産生を抑制し、またNrf2経路を活性化させて抗酸化分子の遺伝子発現を誘導してアトピー性皮膚炎および尋常性乾癬における皮膚の炎症を抑えます。さらに、皮膚バリア機能関連タンパク質の発現を誘導して皮膚バリア機能を改善します。使用対象年齢は、アトピー性皮膚炎では成人および12歳以上の小児、尋常性乾癬では成人です。現在、小児のアトピー性皮膚炎に対する臨床試験を実施しており、今後の適応拡大が期待されます。アトピー性皮膚炎患者を対象とした国内第III相比較試験および継続投与試験(ZBB4-1試験)において、投与8週時のIGA反応率(IGAスコアが0[消失]または1[ほぼ消失]で、かつベースラインから2段階以上改善した患者の割合)は、本剤1%群が20.24%、基剤クリーム群が2.24%で、2群間の差は18.0%(95%信頼区間[CI]:10.0~25.9)であり、本剤1%の優越性が示されました。また、尋常性乾癬患者を対象とした国内第III相比較試験および継続投与試験(ZBA4-1試験)において、投与12週時のPGA反応率(PGAスコアが0[消失]または1[ほぼ消失]で、かつベースラインから2段階以上改善した被験者の割合)は、本剤1%群が20.06%、基剤クリーム群が2.50%で、2群間の差(本剤1%群-基剤クリーム群)は18.1%(95%CI:8.3~27.9)であり、本剤1%の優越性が示されました。

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中等症~重症アトピー性皮膚炎、ネモリズマブ追加で治療成功率が向上/Lancet

 そう痒を伴う中等症~重症のアトピー性皮膚炎を有する成人および青少年の治療において、基礎治療(局所コルチコステロイド[TCS]±局所カルシニューリン阻害薬[TCI])単独と比較して、基礎治療+ネモリズマブ(インターロイキン-31受容体サブユニットα拮抗薬)は、治療成功および皮膚症状改善の達成率の向上をもたらし、安全性プロファイルは両群でほぼ同様であることが、米国・ジョージ・ワシントン大学のJonathan I. Silverberg氏らが実施した2つの臨床試験(ARCADIA 1試験、ARCADIA 2試験)で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年8月3日号に掲載された。同じデザインの2つの無作為化プラセボ対照第III相試験 ARCADIA 1試験とARCADIA 2試験は、同じデザインの48週の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、ARCADIA 1試験は2019年8月~2021年9月に14ヵ国161施設で、ARCADIA 2試験は2019年8月~2022年11月に11ヵ国120施設で患者を登録した(Galdermaの助成を受けた)。 2つの試験とも、年齢12歳以上、そう痒を伴う中等症~重症のアトピー性皮膚炎(登録の2年以上前に診断)で、TCS±TCIによる治療で効果が不十分であった患者を対象とした。 被験者を、基礎治療(TCS±TCI)との併用で、ネモリズマブ30mg(ベースラインの負荷用量60mg)を4週に1回皮下投与する群、またはプラセボ群に、2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは2つで、16週目の時点でのInvestigator's Global Assessment(IGA)に基づく治療成功(IGAが0[皮膚病変消失]または1[同ほぼ消失]で、かつベースラインから2段階以上の改善)、およびEczema Area and Severity Index(EASI)のベースラインから75%以上の改善(EASI-75)とした。9つの主な副次エンドポイントもすべて有意に改善 2つの試験に合計1,728例を登録した。ネモリズマブ群に1,142例(ARCADIA 1試験620例[平均年齢33.5歳、女性48%]、ARCADIA 2試験522例[34.9歳、52%])、プラセボ群に586例(321例[33.3歳、45%]、265例[35.2歳、51%])を割り付けた。 両試験とも2つの主要エンドポイントを満たした。16週時のIGAに基づく治療成功の割合はプラセボ群に比べネモリズマブ群で有意に優れた(ARCADIA 1試験:36% vs.25%、補正後群間差:11.5%[97.5%信頼区間[CI]:4.7~18.3]、p=0.0003/ARCADIA 2試験:38% vs.26%、12.2%[4.6~19.8]、p=0.0006)。 また、EASI-75の達成割合も、プラセボ群に比しネモリズマブ群で有意に良好だった(ARCADIA 1試験:44% vs.29%、補正後群間差:14.9%[97.5%CI:7.8~22.0]、p<0.0001/ARCADIA 2試験:42% vs.30%、12.5%[4.6~20.3]、p=0.0006)。 9つの主な副次エンドポイント(そう痒[Peak Pruritus Numerical Rating Scale:PP-NRS]、睡眠[Sleep Disturbance Numerical Rating Scale:SD-NRS]など)はいずれも、ネモリズマブ群で有意な有益性を認めた。ネモリズマブ関連の可能性がある有害事象は1% 安全性プロファイルは両群でほぼ同様だった。少なくとも1件の試験治療下における有害事象を発現した患者は、ネモリズマブ群ではARCADIA 1試験で50%(306/616例)、ARCADIA 2試験で41%(215/519例)、プラセボ群ではそれぞれ45%(146/321例)および44%(117/263例)であった。このうち重篤な有害事象は、ネモリズマブ群ではARCADIA 1試験で1%(6例)、ARCADIA 2試験で3%(13例)、プラセボ群ではそれぞれ1%(4例)および1%(3例)であった。 ネモリズマブ関連の可能性がある治療関連有害事象は、ARCADIA 2試験で5例(1%)に10件報告された。 著者は、「アトピー性皮膚炎は多面的な病態生理を有する疾患で、臨床においてはさまざまな作用機序を有する薬剤を必要とするため、有効な治療法の探索を継続することは重要である」と述べた。

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4週間隔投与も可能なアトピー性皮膚炎抗体薬「イブグリース皮下注250mgオートインジェクター/同シリンジ」【最新!DI情報】第18回

4週間隔投与も可能なアトピー性皮膚炎抗体薬「イブグリース皮下注250mgオートインジェクター/同シリンジ」今回は、抗ヒトIL-13モノクローナル抗体製剤「レブリキズマブ(遺伝子組換え)注射液(商品名:イブグリース皮下注250mgオートインジェクター/同シリンジ、製造販売元:日本イーライリリー)」を紹介します。本剤は、状態に応じて4週間隔の投与も可能なアトピー性皮膚炎抗体薬であり、患者の利便性向上が期待されています。<効能・効果>既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎の適応で、2024年1月17日に製造販売承認を取得し、2024年5月31日より販売されています。原則として、本剤投与時はアトピー性皮膚炎の病変部位の状態に応じて抗炎症外用薬を併用し、保湿外用薬は継続使用します。<用法・用量>通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、レブリキズマブ(遺伝子組換え)として初回および2週後に1回500mg、4週以降は1回250mgを2週間隔で皮下投与します。なお、患者の状態に応じて、4週以降は1回250mgを4週間隔で皮下投与することができます。<安全性>重大な副作用として、重篤な過敏症(0.2%)があります。その他の副作用としてアレルギー性結膜炎、結膜炎(5%以上)、注射部位反応、好酸球増加症(1~5%未満)、角膜炎、春季カタル、帯状疱疹(0.1~1%未満)があります。本剤は、寄生虫感染に対する生体防御機能を減弱させる可能性があるため、本剤を投与する前に寄生虫感染の治療を行う必要があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、アトピー性皮膚炎の病態において重要な役割を担うIL-13の働きを抑えることで、症状を改善します。ステロイドなどの抗炎症外用薬による適切な治療を一定期間行っても十分な効果が得られない患者さんに使用されます。2.この薬を投与中も保湿外用薬を併用してください。3.この薬は、免疫系に作用することから、感染症(寄生虫感染を含む)を悪化させる可能性があります。4.この薬を投与中に「いつもと何か違う」と感じることがあれば、速やかに医師または薬剤師に相談してください。5.症状が良くなっても自分の判断でこの薬を中止せず、主治医とよく相談してください。<ここがポイント!>アトピー性皮膚炎(AD)は、多因子疾患であり、増悪と寛解を繰り返す慢性の炎症性皮膚疾患です。ADそのものを完治する治療法はありませんが、早期寛解導入と長期寛解維持が基本的な考え方です。薬物治療には外用療法が必須であり、主にステロイド外用薬やタクロリムス外用薬、デルゴシチニブ外用薬、ジファミラスト外用薬が用いられます。適切な外用治療で効果不十分な場合は、全身療法薬としてヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体(商品名:デュピルマブ)やヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体(同:ネモリズマブ)、JAK阻害薬(同:バリシチニブ、ウパダシチニブ、アブロシチニブ)が使用されます。本剤は、抗ヒトIL-13に結合するIgG4モノクローナル抗体で、既存治療で効果不十分なADに適応があります。原則として、本剤投与時には病変部位の状態に応じて抗炎症外用薬を併用し、保湿外用薬の使用を継続します。投与は2週間隔ですが、状態に応じて4週(3回目)以降は4週間隔に変更することができます。既存治療で効果不十分な日本人AD患者を対象としたステロイド外用薬併用国内第III相試験(KGAL試験)において、投与16週時のIGA(0/1)およびEASI-75達成率はそれぞれ、33.4%(プラセボ群との差:27.3[95%信頼区間:17.5~37.0]、p<0.001)および51.2%(プラセボ群との差:37.6[26.2~49.0]、p<0.001)であり、プラセボ群に対する本剤の優越性が確認されています。

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アトピー性皮膚炎の症状を改善するレブリキズマブ発売/リリー

 日本イーライリリーは、アトピー性皮膚炎の治療薬である抗ヒトIL-13モノクローナル抗体製剤レブリキズマブ(商品名:イブグリース)を2024年5月31日より販売を開始した(製造販売承認日は2024年1月18日、薬価収載日は2024年4月17日)。このレブリキズマブの販売に合わせて、都内で「アトピー性皮膚炎患者さんの抱えるアンメットニーズおよび新たな選択肢」をテーマにメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、皮膚科専門医によるアトピー性皮膚炎の現状と課題、患者さんの意識調査の結果、レブリキズマブの臨床試験について説明が行われた。アトピー性皮膚炎の患者さんは10人に1人の時代 「アトピー性皮膚炎患者さんのアンメットニーズについて」をテーマに中原 剛士氏(九州大学大学院 医学研究院 皮膚科学分野 教授)が、現在のアトピー性皮膚炎の診療状況や患者さんなどへのアンケート調査の結果を解説した。 日本アレルギー学会発行の『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021』の定義では、「アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す、そう痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」とされ、アトピー素因は(1)家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、あるいは複数の疾患)があること、または(2)IgE抗体を産生しやすい素因とされる。そして、最近の研究では免疫細胞が放出するサイトカインが痒みの情報伝達を担うことが解明され、サイトカインを抑止する治療薬の開発も行われている。 治療では、主流となるステロイドの外用薬のほか2008年に経口の免疫抑制剤、2018年には注射の生物学的製剤、2020年には経口・外用のJAK阻害薬、2022年には注射の生物学的製剤が承認され、今では全身療法の治療薬も開発され、発売されている。 疫学として10人に1人の患者さんが現在ではアトピー性皮膚炎と推定され、非常に身近な皮膚疾患となっている。症状の特徴として「強い痒みを伴う発疹」が1番の問題であり、この発疹が広がると患者さんは睡眠を妨げられる、皮膚をかくことで外見に赤みなどが目立つなどでQOLを著しく低下させる。これらの症状は、5歳くらいまでに患者さんの約80%に出現し、中でも乳児期の発症が多いとされている。 アトピー性皮膚炎の治療目標は、「症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持すること」であり、「このレベルに到達しない場合でも、症状が軽微ないし軽度で、日常生活に支障を来すような急な悪化が起こらない状態を維持すること」とされ、病状が安定した状態であれば、長期寛解を目指すこともできる。 そのためには、炎症に対する外用療法が行われるが、その際には「適切な強さの外用薬を、適切な量、適切な期間に外用する」の3つの要素が重要となる。治療では、大きく2つの時間の流れがある。最初に外用薬をしっかり速やかに使う「寛解導入」と皮膚の炎症を抑え、スキンケアと同時に皮膚の湿疹がない状態を維持する「寛解維持」に分かれるが、「コントロール不良」「使える治療薬の制限」「外用薬の塗布不足」などの事由で寛解維持が難しい患者さんも多く、課題となっている。アトピー性皮膚炎の患者さんの半数以上は現状の治療に満足していない 次に「アトピー性皮膚炎患者さんと一般生活者に対する意識調査」の結果について触れ、アトピー性皮膚炎患者が日常生活で困っていることや治療への満足度の結果などを報告した。この調査は、2024年1月にWEBにてアトピー性皮膚炎患者436人と一般生活者309人の合計745人に行われたもの。 主な調査結果は以下のとおり。・患者の平均発症年齢は8.3歳で9歳以下が67%だった。・患者さんが主に困っていることは、「塗り薬の塗布に時間がかかること」(33.5%)、「保湿に時間がかかる」(30.5%)、「塗り薬がべたつき不快」(29.4%)の順で多かった。・患者さんがアトピー性皮膚炎で諦めたことは、「素材を選ばす服を着用」(74%)、「プールや海に行く」(65%)、「ピアスなどのアクセサリーの着用」(65%)の順で多かった。・アトピー性皮膚炎の治療のための通院を多忙ゆえに先送りした患者さんは71%に上り、治療に使う時間がないほうがよいと考える患者さんは94.3%だった。・治療の満足度については、「(非常に・やや)満足している」と回答した患者さんは44%だった。・医師とのコミュニケーションの満足度では「(非常に・やや)満足している」と回答した患者さんは、生物学的製剤とJAK阻害薬を使用している患者さんで73%、生物学的製剤とJAK阻害薬を使用していない患者さんで54%と治療薬の違いにより回答割合が異なった。 最後に中原氏はアンケートの結果を踏まえ「アトピー性皮膚炎の患者さんは、きちんと通院し、医師と積極的に困りごとについてコミュニケーションをとることで、最適な治療の選択につなげてほしい」と語りレクチャーを終えた。4週間隔の投与で患者さんのQOLを改善する治療薬 「アトピー性皮膚炎治療の新たな選択肢イブグリースについて」をテーマに板倉 仁枝氏(日本イーライリリー 研究開発・メディカルアフェアーズ統括本部/医師)が、レブリキズマブの特徴と臨床試験の概要を説明した。 レブリキズマブは、アトピー性皮膚炎の中心的メディエーターであるIL-13に高親和性で結合するヒト化抗ヒトIL-13モノクローナル抗体。IL-13受容体複合体(IL-4Rα/IL-13Rα1)の形成を阻害することで、それを介したIL-13シグナル伝達を特異的に阻害し、アトピー性皮膚炎の病態形成を抑制する。通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児に対し、初回および2週後に500mg、4週以降は250mgを2週間隔で皮下投与するが、患者の状態に応じ4週以降は250mgを4週間隔で皮下投与することもできる。なお、薬価は、250mgオートインジェクター、250mgシリンジともに6万1,520円となっている。 レブリキズマブの第III相の臨床試験は大きく6つの試験で構成され、とくに“ADhere J(KGAL)試験”では、わが国のアトピー性皮膚炎患者の導入期・維持期で局所コルチコステロイド(TCS)との併用療法での効果が評価された。本試験では、30日のスクリーニング期間後に導入期としてレブリキズマブ250mg 2週間隔(Q2W)+TCS(n=123)、同250mg4週間隔(Q4W)+TCS(n=81)、プラセボQ2W+TCS(n=82)の3群に分け16週間観察した。その後、維持期としてレブリキズマブ250mgQ2W+TCS(n=32)、同250mgQ4W+TCS(n=33)、同250mgQ4W+TCS(n=38)、プラセボQ2W+TCS(n=11)に分け、52週間の効果を評価した。 その結果、16週時のベースラインからのDLQIスコア*4ポイント以上の改善達成率は、プラセボ+TCS群(n=63)が20.6%だったのに対し、レブリキズマブ250mgQ4W+TCS群(n=60)が53.3%、同250mgQ2W+TCS群(n=96)が68.8%と有意に改善していた。 また、16~68週時のDLQIスコア4ポイント以上の改善維持割合は、レブリキズマブ250mgQ4W/Q4W+TCS(n=18)で72.2%、同250mgQ2W/Q2W+TCS(n=18)で77.8%、同250mgQ2W/Q4W+TCS(n=18)で83.3%だった。 安全性について、導入および維持期を通じて重篤な有害事象は3.6%で報告され、主な有害事象としては上咽頭炎、結膜炎、頭痛、発熱などが認められた。 板倉氏は最後に「レブリキズマブは、導入期からの効果と長期に持続する効果を通してアトピー性皮膚炎の症状のみならず治療負担の軽減に貢献できる新たな治療選択肢となる」と展望を語った。*DLQIスコアとは、皮膚疾患が患者のQOL(Quality of Life)に与える影響について評価する指標。10項目の質問からなり、30点満点で評価し、5点以上の改善は、臨床的に意義がある改善とされている。アトピー性皮膚炎、乾癬、慢性蕁麻疹などで使用される。

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塩分の多量摂取はアトピー性皮膚炎のリスク?

 ナトリウムの多量摂取はアトピー性皮膚炎のリスクと関連しているのか。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のBrenda M. Chiang氏らは、これまでほとんど明らかにされていない食事とアトピー性皮膚炎との関連性について、一般住民を対象とした大規模コホート研究で、食事によるナトリウム摂取量の増加とアトピー性皮膚炎の関連性を調べた。その結果、ナトリウム摂取量が増加するとアトピー性皮膚炎の罹病リスクが上昇した。著者らは「食事によるナトリウム摂取量を制限することが、アトピー性皮膚炎に対する費用対効果が高く低リスクの介入となる可能性が示唆された」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年6月5日号掲載の報告。 研究グループは、尿中ナトリウム量をバイオマーカーとした食事による推定ナトリウム摂取量と、アトピー性皮膚炎の関連を横断研究で調べた。英国のUK Biobankに登録された成人(37~73歳)を対象として、2006年3月31日~2010年10月1日に採取された単一スポット尿サンプルを用いて24時間尿中ナトリウム排泄量を調査した。主要アウトカムは、電子医療記録の診断・処方コードに基づく、アトピー性皮膚炎または活動性アトピー性皮膚炎であった。年齢、性別、人種・民族、社会的格差(タウンゼント剥奪指標)、教育レベルで補正した多変量ロジスティック回帰モデルを用いて、関連性を検討した。データ解析は2022年2月23日~2024年3月20日に実施した。 主な結果は以下のとおり。・対象は21万5,832例(年齢[平均値±標準偏差]56.52±8.06歳、女性54.3%)であった。・推定24時間尿中ナトリウム排泄量(平均値±標準偏差)は3.01±0.82g/日であり、アトピー性皮膚炎の診断例は1万839例(5.0%)であった。・多変量ロジスティック回帰分析において、推定24時間尿中ナトリウム排泄量の1g増加は、アトピー性皮膚炎(補正後オッズ比[aOR]:1.11、95%信頼区間[CI]:1.07~1.14)、活動性アトピー性皮膚炎(同:1.16、1.05~1.28)、およびアトピー性皮膚炎重症度(同:1.11、1.07~1.15)と、いずれも正の関連を示した。・米国国民健康栄養調査の1万3,014例を対象とした検証コホートでは、食事思い出し法を用いて推算した食事によるナトリウム摂取量の1g/日増加は、アトピー性皮膚炎のリスク上昇と関連していた(aOR:1.22、95%CI:1.01~1.47)。

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第101回 桂ざこばさん逝去、喘息とCOPDのオーバーラップの治療は

エイコ呼吸器内科領域で「エイコ」と呼ばれる病態があります。人の名前ではなく、「ACO(asthma and COPD overlap)」のことを指します。桂ざこばさんが、この病態に罹患しておられ、先日逝去されたと報道されました。ACOの患者さんは、呼吸器内科以外では診療されていないかもしれませんが、調べると結構多い病態です。ACOは、喘息になりやすい2型炎症の素因に加えて、喫煙者に多いCOPDが加わることで、1秒量・1秒率がガクンと下がる病態です。典型的には「成人持ち越し喘息・アトピー素因がある喫煙者」という患者像になります。喘息であるにもかかわらず、胸部CTにおいて気腫肺を確認することでも疑うことが可能です。日本と海外の齟齬日本呼吸器学会では、ACOの日本語表記を「喘息とCOPDのオーバーラップ」として、2018年と2023年に診断と治療の手引きを刊行しています1)。しかしながら、単一疾患概念(single disease entity)として、実は議論の余地があります。喘息の国際ガイドラインGINA20242)では、「基本的に喘息は喘息として対応し、COPDはCOPDとして対応する」というsingle disease entityとしての確立には否定的です。同様に、COPDの国際ガイドラインGOLD20243)においても、「もはやACOという表記は行わない」と明記されています。ですので、国際的にもACOという病態は「喘息とCOPDの足し算」と認識されており、この病名自体はもしかして消えゆく運命にあるのかもしれません。とはいえ、軽視してよいかというとそういうわけではなく。あくまで学術的な定義は不要ということであって、2型糖尿病+肥満、高血圧症+慢性腎臓病などのように、合併した場合には警戒度を上げて対応すべきです。吸入薬はどれを選択するか?ACOの治療は、喘息の吸入薬とCOPDの吸入薬で同時に治療することが肝要になります。重症の場合は、吸入ステロイド(ICS)/吸入長時間作用性β2刺激薬(LABA)/吸入長時間作用性抗コリン薬(LAMA)合剤のトリプル吸入療法が適用され、それに満たない場合には喘息主体の場合ICS/LABA合剤、COPD主体の場合ICS+LAMAが選択されます。ただ、ICS/LAMAという合剤が存在しないため、COPD寄りのACOではICS+LAMAで両者を分けて処方することがガイドライン上想定されています。しかしながら、吸入薬とは服薬アドヒアランスが高いこと前提にある世界です。そのため、ICSとLAMAを別々に処方することは実臨床ではほぼなく、ICS/LABAで押すか、ICS/LABA/LAMAのトリプル吸入製剤を処方するかのどちらかになります。どちらの病名も適用して治療に当たるため、トリプル吸入製剤についてはどの製剤も保険適用上使用可能となります(表1)。画像を拡大する表1. トリプル吸入製剤参考文献・参考サイト1)喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き第2版作成委員会. 喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き第2版. 2023年.2)2024 GINA Main Report Global Strategy for Asthma Management and Prevention.3)Global Strategy for Prevention, Diagnosis and Management of COPD: 2024 Report.

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降圧薬による湿疹性皮膚炎リスクの上昇

 湿疹性皮膚炎(アトピー性皮膚炎)と診断される高齢者が増加しているが、多くの湿疹研究は小児および若年成人を対象としており、高齢者の湿疹の病態および治療法はよく知られていない。高齢者の湿疹の背景に薬物、とくに降圧薬が関与している可能性を示唆する研究結果が発表された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のMorgan Ye氏らによる本研究は、JAMA Dermatology誌オンライン版2024年5月22日号に掲載された。 本研究は縦断コホート研究であり、英国The Health Improvement Networkに参加するプライマリケア診療所における60歳以上の患者を対象とした。1994年1月1日~2015年1月1日のデータを対象とし、解析は2020年1月6日~2024年2月6日に行われた。主要アウトカムは湿疹性皮膚炎の新規診断で、最も一般的な5つの湿疹コードのうち1つの初診日によって判断した。 主な結果は以下のとおり。・156万1,358例の高齢者(平均年齢67[SD 9]歳、女性54%)が対象となった。45%が高血圧の診断を受けたことがあり、追跡期間中央値6年(IQR:3~11年)における湿疹性皮膚炎の全有病率は6.7%だった。・湿疹性皮膚炎の罹患率は、降圧薬投与群のほうが非投与群よりも高かった(12例vs.9例/1,000人年)。・Cox比例ハザードモデル調整後、いずれかの降圧薬を投与された参加者は、いずれかの湿疹性皮膚炎のリスクが29%増加した(ハザード比[HR]:1.29、95%信頼区間[CI]:1.26~1.31)。・降圧薬を個別に評価したところ、皮膚炎リスクへの影響が大きいのは利尿薬(HR:1.21、95%CI:1.19~1.24)とカルシウム拮抗薬(HR:1.16、95%CI:1.14~1.18)で、小さいのはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬(HR:1.02、95%CI:1.00~1.04)とβ遮断薬(HR:1.04、95%CI:1.02~1.06)であった。 研究者らは「このコホート研究により、降圧薬は湿疹性皮膚炎の増加と関連しており、その関連は利尿薬とカルシウム拮抗薬で大きく、ACE阻害薬とβ遮断薬で小さいことが明らかになった。この関連性の根底にある機序を理解するためにはさらなる研究が必要だが、これらのデータは、高齢患者の湿疹性皮膚炎の管理指針として臨床に役立つ可能性がある」としている。

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