サイト内検索|page:8

検索結果 合計:399件 表示位置:141 - 160

141.

授乳中の抗てんかん薬使用に関する母親への情報提供

 さまざまな抗てんかん薬の母乳中への移行、それによる乳児に対する影響についての情報は限られている。これらの問題が明らかとなっていないため、抗てんかん薬服用中の患者には母乳による育児を推奨することができない。スイス・ローザンヌ大学のM. Crettenand氏らは、授乳中の抗てんかん薬に関する利用可能なデータを包括的にレビューし、これらの情報を添付文書(SmPC)に記載されている内容と比較し、母乳育児中の女性にこれらの薬剤を使用するための推奨を提供するため、検討を行った。Der Nervenarzt誌オンライン版2018年2月27日号の報告。 23種類の抗てんかん薬の母乳育児データに関するシステマティックレビューを行った。授乳適合性スコアを作成し、検証を行った。システマティックレビューに基づく推定スコアは、添付文書に記載された推奨に基づく推定スコアとの比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・授乳中における15種類の抗てんかん薬の投与および安全性に関するデータを含む75報を特定した。・レビューおよび添付文書に基づくスコア値の比較では、一致率が非常に低かった(重み付けκ係数:0.08)。・授乳中の抗てんかん薬として、適していると考えられる薬剤は以下5種類。 フェノバルビタール、プリミドン、カルバマゼピン、バルプロ酸、レベチラセタム・母乳育児中に、乳児の副作用を慎重に観察することができれば、推奨可能である薬剤は以下10種類。 フェニトイン、エトスクシミド、クロナゼパム、オクスカルバゼピン、ビガバトリン、トピラマート、ガバペンチン、プレガバリン、ラモトリギン、ゾニサミド・母乳育児によるリスクを適切に評価するためのデータが不十分なため、原則として推奨されないが、ケースバイケースで注意深く評価する必要がある薬剤は以下8種類。 mesuximide、クロバザム、ルフィナミド、felbamate、ラコサミド、スルチアム、ペランパネル、retigabine 著者らは「実際には、母乳育児を希望する抗てんかん薬治療を受けている母親ごとにリスクとベネフィットを分析し、患者と話し合う際には、個別のリスク要因を適切に考慮する必要がある」としている。■関連記事授乳中の気分安定薬は中止すべきか「妊娠、抗てんかん薬」検索結果は患者に役立つか?授乳中の抗精神病薬使用、適切な安全性評価が必要

142.

小児てんかんに対するレベチラセタムとフェノバルビタールの有効性比較

 新規にてんかんを発症した小児の半数以上は、既知の脳波・臨床症候群に適合しない非症候性てんかんの脳波および臨床的特徴を有する。レベチラセタムおよびフェノバルビタールは、小児のてんかんに対し最も一般的に処方される薬剤ではあるが、これらの有効性の比較についてはよくわかっていない。米国・ワイルコーネル大学のZachary M. Grinspan氏らは、小児の非症候性てんかんに対するレベチラセタムとフェノバルビタールの有効性の比較を行った。JAMA pediatrics誌オンライン版2018年2月12日号の報告。 本研究は、2012年3月~2015年4月に実施されたプロスペクティブ多施設共同観察コホート研究である小児てんかん研究(Early Life Epilepsy Study)である。対象は、米国メディカルセンター17施設において、生後1ヵ月から1歳までに初めて無熱性発作を経験した非症候性てんかんの小児。初回発作から1年以内に初回単剤療法としてレベチラセタムまたはフェノバルビタールを使用した。2値アウトカムは、6ヵ月における単剤療法からの離脱とした(他の抗てんかん薬が処方されず、治療開始から3ヵ月以内に発作が認められないと定義)。アウトカムは、人口統計、てんかんの特徴、神経系の病歴、傾向スコア加重を用いた観察可能な選択バイアス、一般化された推定式を用いた中心内相関(within-center correlation)にて調整された。 主な結果は以下のとおり。・対象患者155例(女児:81例、男児:74例)の年齢中央値は4.7ヵ月(四分位範囲:3.0~7.1ヵ月)であった。・レベチラセタム治療患者(レベチラセタム群)117例、フェノバルビタール治療患者(フェノバルビタール群)38例であった。・レベチラセタム群の初回発作時の年齢中央値は、5.2ヵ月(四分位範囲:3.5~8.2ヵ月)であり、フェノバルビタール群の3.0ヵ月(四分位範囲:2.0~4.4ヵ月)より高かった(p<0.001)。・その他においては、両群に有意な差が認められなかった。・単剤療法からの離脱は、フェノバルビタール群(6例、15.8%)と比較し、レベチラセタム群(47例、40.2%)の方が多かった(p=0.01)。・レベチラセタム群のフェノバルビタール群に対する優位性は、共変量、観察可能な選択バイアス、中心内相関で調整した後も持続していた(オッズ比:4.2[95%CI:1.1~16]、NNT:3.5[95%CI:1.7~60])。 著者らは「レベチラセタムは、小児の非症候性てんかんに対する最初の単剤療法として、フェノバルビタールと比較し、優れた有効性を示す。100人の小児にフェノバルビタール治療の代わりにレベチラセタム治療を実施した場合、単独療法からの離脱は、この研究の推定値16例から44例に増加すると考えられる。これらの知見を確認するためには、無作為化臨床試験が必要である」としている。■関連記事抗てんかん薬レベチラセタム、日本人小児に対する推奨量の妥当性を検証小児外傷後てんかんの予防にレベチラセタムは有用難治性てんかんに対するレベチラセタムの評価:群馬大

143.

アイザックス症候群〔Isaacs syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義アイザックス症候群は、1961年にIsaacsが、後天性に全身の筋硬直と筋電図で持続する運動単位電位の自発放電を特徴とする2例を報告したのが最初である1)。その病態機序は末梢神経の過剰興奮であり、その病態は自己抗体による自己免疫性疾患である。症状が筋疾患であるミオトニア症候群に似ているが、病変部位が末梢神経であるため、後天性ニューロミオトニア(acquired neuromyotonia)とも呼ばれている2)。■ 疫学詳細な疫学の報告はない。海外では発症年齢の多くが40歳半ば、男女比は2:1で男性に多く、診断までに3~4年を要している2)。わが国での1次調査では、全国に100例前後の患者がいると思われる。■ 病因病態である末梢神経の過剰興奮を引き起こす病因は、末梢神経の電位依存性Kチャネル(VGKC)および、VGKCに関連する蛋白に対する自己抗体であることが明らかになっている1,3)。VGKCは、末梢神経の脱分極後に再分極を起こし、膜の興奮性を安定させるイオンチャネルであり、その障害で興奮性が増加して症状を引き起こす。末梢神経には血液神経関門があり、通常血中の自己抗体は軸索のVGKCにはアクセスできないが、末梢神経の神経根および最末梢の神経終末では血液神経関門が脆弱であり、このような部位が標的となっていると考えられる4,5)。以上のように、概念的にはランバート・イートン症候群などのように免疫介在性チャネロパチーの1つといえる。■ 症状臨床的には全身の末梢運動神経の過剰興奮により、広汎に有痛性筋けいれん・筋硬直と筋のぴくつき(fasciculation)や筋の波打つような不随意運動(myokymia)などを主徴とし、全例で認められる。また、ニューロミオトニア(繰り返す把握運動後の弛緩障害[grip myotonia]はあるが、叩打ミオトニア[percussion myotonia]がない)は、本症に比較的特異な症状で約1/3に認められる2,4)。筋けいれん、筋硬直は睡眠時も起こり、運動負荷、寒冷、虚血で増強する。持続性の筋けいれんは筋肥大を来すことがある。そのほか、発汗過多、下痢、皮膚色調の変化、原因不明の高体温などの自律神経症状を30~50%の症例で伴う4)。約半数の症例で異常感覚や複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome)に類似の疼痛などの感覚障害を伴うことがまれではなく、当初は筋けいれんに伴うものと考えられていたが、筋けいれんの発症前に感覚異常で発症する症例の報告もあり、現在は感覚異常とくに疼痛も重要な症状の1つと考えられている6)。そのほか、Hartら2)によると約1/4の症例で何らかの中枢神経症状を有している。末梢運動神経の症状である筋けいれん・筋硬直やニューロミオトニアと記銘力障害、不眠、睡眠障害、幻覚などの大脳辺縁系症状や多彩な自律神経症状を伴うMorvan症候群が知られていたが、この疾患でアイザックス症候群と共通の抗VGKC抗体がその原因であることが明らかになっている3)。■ 分類臨床的にニューロミオトニアを呈する疾患には、先天性と後天性があり、さらに後天性の原因にもさまざまなものがある7)。この中で自己抗体が関与する後天性かつ免疫介在性のニューロミオトニアには、全身性にみられるアイザックス症候群のほかに、主に下肢に限局するcramp-fasciculation syndrome、中枢神経症状を伴うMorvan症候群などがある。■ 予後自然寛解はまれであり、多くは症状が緩徐に進行し、全身の筋硬直、歩行困難などでADLが障害される。注意すべきは、本症は傍腫瘍性症候群の一面も持っており、胸腺腫や肺がんの合併が報告されている8)。しかし、これらの腫瘍の外科的切除による症状の改善は一定ではない。通常は後療法として、免疫療法や対症療法が必要な場合がある。一方、このような悪性腫瘍の合併が明らかではない場合も、4年後にがん病変が発見された症例の報告もあり、十分な経過観察が必要である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断は上記の特徴的な症状と、以下の検査所見でなされる。末梢神経の過剰興奮性の有無を診断するには、神経生理学的検査が必要である。針筋電図でmyokymic dischargesが特徴的であり、安静時や弱収縮時に同じ運動単位電位の反復発火(doublet、multiplet)としてみられる。発火頻度が高くなるとneuromyotonic dischargesがみられることもある1,4,7)。体幹などの深部筋では筋電図によるこれらの異常放電を捉えることは困難であるが、そのような場合には超音波検査で筋の不随意運動を観察して診断する。特異度の高い検査は血清中の抗VGKC関連抗体であり、臨床症状と本抗体が陽性であれば診断はほぼ確定する。当初VGKC自体に対する抗体そのものがアイザックス症候群の病因と考えられていたが、その陽性率は50%以下であった。その後の研究でVGKCはいくつかの分子と複合体を形成し、抗体が認識しているのはVGKC以外の分子が主であることが明らかとなった2)。これらの分子の中で最も頻度の高いものは、contactin-associated protein2(Caspr2)とleucine-rich glioma-inactivated protein1(Lgi1)である2,9)。Lgi1の発現は末梢では少ないので、アイザックス症候群ではCaspr2に対する抗体が主となる。しかし、これらの自己抗体の陽性率も必ずしも高くない。なお、抗VGKC抗体は低力価の場合は臨床症状との関連でその意味を考える必要がある。また、抗VGKC抗体は鹿児島大学神経病講座で測定しているが、Caspr2に対する抗体は、わが国ではルーチンに測定しているところはなく、診断には臨床症状と筋電図を用いることが多い。そのほかに自己免疫疾患としての側面から、重症筋無力症、胸腺腫、橋本病などさまざまな自己免疫疾患を合併する。とくに重症筋無力症との合併が多い。抗VGKC抗体以外の自己抗体として抗アセチルコリン受容体抗体(抗AChR抗体)、抗核抗体、抗GAD抗体の陽性率が高い。また、自己免疫疾患であるからには免疫療法で症状の改善をみることも重要であり、これらの点を考慮して次表のような診断基準が出されている。表 アイザックス症候群の診断基準A.主要症状・所見1.ニューロミオトニア(末梢神経由来のミオトニア現象で、臨床的には把握ミオトニアはあるが、叩打ミオトニアを認めないもの)、睡眠時も持続する四肢・躯幹の持続性筋けいれんまたは筋硬直(必須)2.myokymic discharges、neuromyotonic dischargesなど筋電図で末梢神経の過剰興奮を示す所見3.抗VGKC複合体抗体が陽性(72pM以上)4.ステロイド療法やそのほかの免疫療法、血漿交換などで症状の軽減が認められるB.支持症状・所見1.発汗過多2.四肢の痛み・異常感覚3.胸腺腫の存在4.皮膚色調の変化5.そのほかの自己抗体の存在(抗アセチルコリン受容体抗体、抗核抗体、抗甲状腺抗体)C.鑑別診断以下の疾患を鑑別するスティッフパーソン症候群や筋原性のミオトニア症候群、糖原病V型(McArdle病)などを筋電図で除外する<診断のカテゴリー>Definite:Aのうちすべてを満たし、Cの鑑別すべき疾患を除外したものProbable:Aのうち1に加えて、そのほか2項目以上を満たし、Cの鑑別すべき疾患を除外したものPossible:Aのうち1を満たし、Bのうち1項目以上<診断のポイント>自己免疫的機序で、末梢神経の過剰興奮による運動単位電位(MUP)の自動反復発火が起こり、持続性筋収縮に起因する筋けいれんや筋硬直が起こる。末梢神経起源なので叩打ミオトニアは生じないが、把握ミオトニア様にみえる手指の開排制限は起こりうる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)アイザックス症候群の治療の主体は、日常生活にさほど影響がないほどの軽症であれば、末梢神経の過剰興奮性を抑制する薬剤(カルバマゼピン[商品名:テグレトール]、フェニトイン[同:アレビアチン、ヒダントール]、ラモトリギン[同:ラミクタール]、バルプロ酸ナトリウム[同:デパケン]、ガバペンチン[同:ガバペン]など)による対症療法が原則である。この中でAhmedら7)はカルバマゼピンを第1選択としている。症状が強くなるに従い、1種類の薬剤でのコントロールが困難なことが多く、血中濃度や副作用に注意しつつ、数種類の抗てんかん薬を用いることが多い。さらに症状が重篤であり、これらの対症療法が無効な症例、激しい有痛性筋けいれんなどにより日常生活に重大な支障が起こる症例では、血漿浄化療法、免疫グロブリン療法、プレドニゾロン(同:プレドニゾロン、プレドニン)などの免疫療法が試みられる。とくに抗体強陽性例では、免疫吸着療法を含む血漿浄化療法が有効であるとの報告が多く、治療で臨床症状の改善とともに筋電図上の異常放電の減少や抗VGKC抗体の抗体価の低下がみられる7)。経験的には血漿浄化療法の効果は重症筋無力症ほど急速にはみられず、1~2週間程経って徐々に効果がみられることが多く、十分な経過観察が必要である。免疫グロブリン大量療法には有効・無効の両者の報告がある。また、プレドニゾロン単独での効果は明らかではないが、メチルプレドニゾロン(同:メドロール)によるパルス療法が有効な場合もある。しかし、いずれの免疫療法を行った場合も、抗てんかん薬などの併用が必要である。4 今後の展望まずは、簡便で高感度な抗VGKC抗体およびその関連分子(Caspr2)に対する抗体の測定法の確立である。また、VGKC、Caspr2以外のVGKC関連蛋白などの抗原検索も必要である。治療としては、より簡便で副作用の少ない免疫療法の開発が必要であるが、症例数が少ないために有効な治療法の評価ができにくいことが問題である。5 主たる診療科神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)が2015年1月1日に施行された。これにより指定難病が一気に拡大され、アイザックス症候群も同年7月に指定された。現在では、重症例は医療費補助の対象となっている。診療、研究に関する情報難病情報センター アイザックス症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)鹿児島大学神経病講座 抗VGKC複合体抗体の測定(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報りんごの会(アイザックス症候群患者とその家族の会)1)Arimura K, et al. Muscle Nerve.2002;11:S55-58.2)Hart IK, et al. Brain.2002;125:1887-1895.3)Irani SR, et al. Brain.2010;133:2734-2748.4)Arimura K, et al. Brain Nerve.2010;62:401-410.5)Arimura K, et al. Clin Neurophysiol.2005;116:1835-1839.6)Klein CJ, et al. JAMA Neurol.2013;70:229-234.7)Ahmed A, et al. Muscle Nerve.2015;52:5-12.8)Tan KM, et al. Neurology.2008;70:1883-1890.9)Watanabe O. Brain Nerve.2013;65:401-411.公開履歴初回2018年02月27日

144.

てんかん患者の傷害・事故リスクに関するコホート研究

 てんかんの診断を新規に受けた患者における、合併症関連の傷害・事故リスクについて、スウェーデン・カロリンスカ研究所のBenno Mahler氏らが検討を行った。Neurology誌オンライン版2018年1月31日号の報告。 対象はストックホルム北部のてんかん患者で、2001年9月~2008年8月に非誘発性発作を起こした2,130例。すべてのてんかん患者につき、集水域の人口から性別および包含年に一致した8個体をランダムに抽出し、対照群(16,992例)とした。傷害・事故の発生は、スウェーデン患者レジストリおよび死亡原因レジストリの2013年12月までのデータより収集した。また、これらのレジストリから、併存疾患(脳腫瘍、脳卒中、精神医学的疾患、糖尿病など)に関する情報も収集した。 主な結果は以下のとおり。・傷害・事故は、てんかん患者1,033例、対照群6,202例において認められた(HR:1.71、95%CI:1.60~1.83)。・てんかんの診断から最初の2年間におけるリスクが高かった。・性別および教育状況は、ハザード比に有意な影響を及ぼさなかった。・そのリスクは、小児では正常であったが、成人では増加した。・溺水、中毒、服薬による有害事象、重篤な外傷性脳損傷で、ハザード比が最も高かった。・併存疾患のない対照群と比較したハザード比は、併存疾患のないてんかん患者1.17(95%CI:1.07~1.28)、併存疾患のある対照群4.52(95%CI:4.18~4.88)、併存疾患のあるてんかん患者7.15(95%CI:6.49~7.87)であった。 著者らは「新規てんかん患者において、傷害・事故リスクに関するカウンセリングを行う際には、併存疾患の有無を考慮する必要がある。てんかん診断から最初の2年間のリスクが最も高いため、早期の情報提供が重要である」としている。■関連記事てんかんドライバーの事故率は本当に高いのか寛解後、抗てんかん薬はすぐに中止すべきかADHDの小児および青年における意図しない怪我のリスクとADHD薬の影響

145.

てんかん診断後の自動車運転再開に関する研究

 てんかん診断1年以内に自動車の運転を再開する頻度とその予測因子について、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のYing Xu氏らが検討を行った。Epilepsia誌オンライン版2018年1月16日号の報告。 本研究は、オーストラリア・シドニーにおけるすべての新規てんかん発症患者を対象とした、プロスペクティブ多施設共同コミュニティワイド研究SEISMIC(the Sydney Epilepsy Incidence Study to Measure Illness Consequences)として実施された。てんかんと診断されベースラインに登録された後、できるだけ早い段階で、人口学的特性、社会経済的状況、臨床的特徴、運転状態を収集した。12ヵ月のフォローアップ時における運転再開の予測因子は、多変量ロジスティック回帰を用いて検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・てんかん診断前に運転実績を報告していた成人(18歳以上)対象者は、181例(76%)であった。そのうち12ヵ月の運転状態に関する情報を提供した152例中、118例(78%)が運転を再開していた。・運転再開(C統計値:0.79)と関連が認められたのは、職場または教育の場で運転するため(OR:4.70、95%CI:1.87~11.86)、再発発作なし(OR:5.15、95%CI:2.07~12.82)、抗てんかん薬単独または抗てんかん薬治療なし(OR:4.54、95%CI:1.45~14.22)であった。・再発発作患者の半数以上が、フォローアップ期間中に運転を再開していた。 著者らは「てんかん診断後の自動車運転の早期再開は、仕事や社会的な要求および発作のコントロール状況と関連が認められたが、再発発作を有する多くの患者が運転を続けていた。てんかん患者に対し運転制限対策を実施し、別の交通手段を提供するための、さらなる努力が求められる」としている。■関連記事てんかんドライバーの事故率は本当に高いのか認知症ドライバーの運転停止を促すためには車両運転事故、とくに注意すべき薬剤は

146.

てんかんと献血に関する世界の方針

 てんかんは、発作を特徴とする神経障害である。てんかん患者は多くの場合、献血対象者から一時的または永久に除外される。ベルギー赤十字のA. Kellens氏らは、現在適用されている献血方針をより把握するために、世界の血液事業について調査を行った。Vox sanguinis誌オンライン版2018年1月4日号の報告。 世界各国の血液事業担当者46名を対象に、オンラインQuestbackツールを使用したWebベースのアンケートを行った。アンケートは、9つの質問で構成されていた。 主な結果は以下のとおり。・5大陸26ヵ国から27名の担当者が、この調査に参加した。・現在の献血方針は、「一時的な除外を永久に受け入れる」から「永久に除外」の範囲であった。・これらの異なる方針の合理性は、多様であった。・血液事業の大多数(59.3%)は、その方針として一時的な除外を適用しており、献血を行う際には、てんかん患者が投薬を受けていないまたは発作を起こしていないようにする必要があるが、その期間に関しては言及されていない。・献血中のてんかん患者の有害事象に関するデータは、収集できなかった。 著者らは「この調査結果より、世界中で適用されている献血方針には、大きな差異があることを示している。その理由の1つとして、科学的根拠の不足が考えられる。そのため、てんかん患者の献血に関するドナーとレシピエントの潜在的なリスクについて、さらに研究することが最も重要である。これが、エビデンスベースの方針決定の基礎となり、より安全で効果的な輸血プログラムにつながる」としている。■関連記事てんかん重積状態に対するアプローチはてんかん再発リスクと初回発作後消失期間医学の進歩はてんかん発症を予防できるようになったのか

147.

双極性障害患者における道路交通傷害リスクと薬物治療との関連

 双極性障害患者の道路交通傷害リスクを調査するため、台湾・長庚大学のVincent Chin-Hung Chen氏らは、台湾の全国規模の人口データセットを用いて、非双極性障害患者との比較検討を行った。さらに、双極性障害と道路交通傷害リスクとの関連に対する、リチウム、抗てんかん薬、抗うつ薬、第1世代抗精神病薬、第2世代抗精神病薬の処方で推定される緩和効果についても調査を行った。Journal of affective disorders誌2018年1月15日号の報告。 16年間の縦断コホート研究の一環として、双極性障害と診断された16歳以上の患者における道路交通傷害リスクについて、年齢、性別を一致させた非双極性障害10サンプルとの比較を行った。ICD-9-CMコード(E800~807、E810~817、E819~830、E840~848)に基づく公的医療保険データベースを用いて、道路交通傷害の発生率を比較した。年齢や薬剤使用などの時間的に変化する共変量の調整には、時間依存性Cox回帰モデルを用いた。年齢、性別、その他の併存疾患、薬剤使用の調整前後のハザード比を算出した。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害患者3,953例が、一般人口3万9,530例のコントロールと一致した。・双極性障害患者の道路交通傷害リスクの調整ハザード比は、コントロールと比較して、1.66倍(95%CI:1.40~1.97)の増加が認められた。・道路交通傷害リスクの低さは、女性、高齢者(80歳以上)、都市レベルの最も高い地域の居住者、抗うつ薬の使用との関連が認められた。 著者らは「本検討で、双極性障害は道路交通傷害リスクの増加と関連することが認められた。しかし、抗うつ薬の使用がリスクの緩和に役立つ可能性がある」としている。■関連記事自動車事故リスク、うつ病や抗うつ薬ではどうか車両運転事故、とくに注意すべき薬剤は睡眠薬使用は自動車事故を増加させているのか

148.

抗うつ薬の臨床試験におけるプラセボ効果に関する解析

 抗うつ薬の臨床試験におけるプラセボの反応率は増加し続けていることから、臨床試験の失敗数の増加を招いていると考えられてきた。最近報告された2件のシステマティックレビューで、この問題が調査されており、それぞれの報告で正反対の見解が示された。京都大学の古川 壽亮氏らは、これまでの結果を再検討する解析を行った。Evidence-based mental health誌オンライン版2018年1月12日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・2016年に発表された古川氏らの論文において、プラセボ反応率は1991年以来、安定しており、2000年までに見られたプラセボ反応率の増加は、試験デザインの特性の変化によるものであったとした。・対照的に、Khanらはプラセボ反応率が過去30年間で増加していると結論付けていた。・この2つのレビューは、使用したデータセット、プラセボ反応の定義、統計分析が異なっていた。これらの違いにより、対照的な結論に至ったかどうかについて調査を行った。・いずれのデータセットおよびプラセボ反応の定義において、研究デザインの特性に関連する交絡因子の分析で調査した場合、または1990年以降に発表された研究に限定した場合では、何年もの間、プラセボ反応率の増加は認められなかった。 著者らは「抗うつ薬の臨床試験におけるプラセボ反応は、過去25年間安定したままであり、その間、大多数の研究が類似のデザイン特性を共有するようになった」と結論付けている。■関連記事うつ病のプラセボ効果、そのメカニズムとは疼痛治療「プラセボでも一定の効果が」臨床試験に課題も抗てんかん薬のプラセボ効果、東アジアと欧米で地域差

149.

てんかん患者におけるMRIに共通する脳SPECT画像の解析

 SISCOMやSTATISCOMは、てんかんの局所発作のためのMRIを中心に、発作/発作間欠期SPECT(単一光子放射断層撮影)分析に効果的であると臨床的に証明されている。最近では、この分析のためにソフトウェアも利用可能となった。米国・メイヨー・クリニックのZaiyang Long氏らは、これら局所発作の分析方法について、その性能の調査と比較を行った。Journal of neuroimaging誌オンライン版2018年1月10日号の報告。 99mTc-ethyl cysteinate dimer SPECTスキャンを受けた378例の患者を対象に、レトロスペクティブレビューを行った。除外基準の適応後、28例が抽出された。これらのSPECTおよびMRI画像をSISCOM(zスコア:1.5および2)、STATISCOM、MIMneuroを用いて分析した結果、合計112の画像データセットが得られた。経験豊富な放射線科医2名が、カスタムツールを使用して盲検レビュープロセスに参加し、最大2つの過灌流および/または低灌流領域を指定することができた。JAFROC(Jackknife Free Response Receiver-Operating Characteristics)テストを用いてレビュー結果は分析され、各方法のJAFROC性能指数がまとめられた。また、カッパ係数テストを用いて、観察者間の合意を評価した。 主な結果は以下のとおり。・平均JAFROC性能指数は、STATISCOM 85.7%、MIMneuro 83.9%、SISCOM(zスコア2)66.1%、SISCOM(zスコア1.5)51.8%であった。・平均信頼度は、STATISCOM 2.5、MIMneuro 2.3、SISCOM(zスコア2)1.6、SISCOM(zスコア1.5)1.1であった。・カッパ係数は、STATISCOM 0.742、MIMneuro 0.816、SISCOM(zスコア2)0.517、SISCOM(zスコア1.5)0.441であった(すべてのp<0.001)。 著者らは「STATISCOMが、局所発作のための最も良い性能を示した。MIMneuroは、SISCOM(zスコア:1.5および2)よりも良い性能を示した」としている。■関連記事てんかん発作時の脳炎がPET画像診断活用で明らかにMRIで軽度認知障害からの進行を予測SPECT+統計解析でアルツハイマー病の診断精度改善:東北大

150.

治療抵抗性焦点性てんかんに対する第3世代抗てんかん薬補助療法の間接比較

 第3世代の新規抗てんかん薬として、eslicarbazepine、ラコサミド、ペランパネル、brivaracetamが、最近販売されている。中国・四川大学のZhu Li-Na氏らは、コントロール困難な焦点性てんかんにおける第3世代抗てんかん薬の有用性、忍容性を間接的に比較するためメタ解析を行った。Epilepsy research誌オンライン版2017年11月26日号の報告。 抗てんかん薬用量範囲にわたる治療効果を調査したすべての利用可能なプラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)を、Pubmed、Embase、Cochrane Online Library、Clinicaltrial.govのデータベースより検索を行った。続いて、Indirect Treatment Comparison ソフトウェアを用いて、新規抗てんかん薬間の有効性、忍容性の比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・19件のRCTより7,245例の患者が抽出された。・用量にかかわらず第3世代抗てんかん薬間で、50%治療反応率および発作の無い割合のリスク差に有意な差は認められなかった。・治療中に発現した有害事象リスクは、すべての用量において、brivaracetamと比較し、eslicarbazepineおよびペランパネルで有意に高かった。・有害事象による治療中止率は、brivaracetamと比較し、ラコサミドおよびペランパネルの高用量治療を行った患者において有意に高かった。eslicarbazepineまたはラコサミドによる治療は、すべての用量を組み合わせたbrivaracetamよりも高い中止率と関連が認められた。 著者らは「本分析では、コントロール困難な焦点性てんかんにおける第3世代抗てんかん薬の有用性に有意な差は認められなかった。brivaracetamは、最も優れた忍容性を有する可能性がある。他の第3世代抗てんかん薬は、とくに高用量で投与した際、許容しがたい有害事象を高リスクで伴う。これらの間接的な比較結果は、さらなる検証が必要であり、今後よく設計された試験において検証するべきである」としている。■関連記事てんかん重積状態に対する抗てんかん薬処方の変化難治性てんかん重積状態への有用な対処法てんかん重積状態に対するアプローチは

151.

5歳以降の熱性けいれんとその後のてんかんリスク

 熱性けいれん(FS:febrile seizure)は、乳幼児期に起こる発熱に伴う発作と定義されているが、ほぼすべての年齢において観察される。FS後の非誘発性のけいれん発作リスクは、明確に定義されている。しかし、5歳以降でのFSの発症または持続に関するデータは、限られている。トルコ・Izmir Katip Celebi UniversityのPinar Gencpinar氏らは、5歳以降でFSを発症した患者の評価を行った。Seizure誌オンライン版2017年11月6日号の報告。 2010~14年にFS患者すべてをプロスペクティブに登録した。患者背景、臨床的特徴、放射線画像、脳波(EEG)、精神運動発達テストの結果、患者の治療データを収集した。患者は、5歳以降で初めてFSを発症した患者と、5歳以降もFSが持続した患者の2群に分類した。データの分析には、フィッシャーの正確確率検定とピアソンのカイ二乗検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・64例が登録され、そのうち12例(18.8%)で無熱性けいれんが認められた。・9例(14%)は、フォローアップ期間中にてんかんと診断された。・その後のてんかん発症は、性別、平均年齢、病歴、てんかんの家族歴、非熱性けいれんの有無、発作タイプ、FSタイプ、発作の持続期間、発作症候学、ピークの発熱、脳波、MRI所見とは無関係であった。・その後の無熱性けいれんまたはてんかん発症に関して、群間に統計学的な差は認められなかった(p>0.5)。 著者らは「5歳以降のFS患者では、フォローアップが重要である。これらの発作は、一般的に良性であるが、再発しやすく、てんかん発症リスクを高める傾向がある。このような患者におけるリスク因子やてんかん発症率を明らかにするために、より大きなコホートを用いた研究が必要である」としている。■関連記事てんかんとADHD合併の小児および青年における薬物療法の課題小児攻撃性に対する抗精神病薬の効果~メタ解析ADHD発症しやすい家庭の傾向

152.

てんかんとADHD合併の小児および青年における薬物療法の課題

 てんかんの小児および青年における罹病率は、3.2~5.5/1,000である。また、てんかん患者の約1/3は、ADHD症状を合併している。てんかんとADHDとの関連は、よくわかっていないが、不注意、多動、行動障害などのADHD症状は、しばしば抗てんかん薬の有害作用であると考えられる。イタリア・University of L'AquilaのAlberto Verrotti氏らは、行動に対する抗てんかん薬の影響に関するデータを検索した。Clinical drug investigation誌オンライン版2017年10月25日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・ADHD症状の誘発が最も報告されている薬剤は、フェノバルビタールであった。次いで、トピラマート、バルプロ酸であった。・フェニトインは、中程度の影響が認められるようだが、レベチラセタムは、対照的なデータが存在した。・ラコサミドは、行動に対し有益な影響をもたらし、カルバマゼピンおよびラモトリギンは、注意および行動に対し良好な影響を発揮する。・ガバペンチンおよびビガバトリンは、認知機能に対し有害作用を有する。・オクスカルバゼピン、ルフィナミド、eslicarbazepineは、ADHD症状の悪化や誘発が認められないようであるが、ペランパネルは、敵対的/攻撃的行動を高率でもたらす(これは高用量で増加する可能性がある)。・エトスクシミド、ゾニサミド、tiagabine、プレガバリン、スチリペントール、retigabineの行動への影響に関するデータは、まだ限られている。・ADHD症状は、てんかん患者のQOLに著しい影響を及ぼすため、この神経精神医学的な障害に対する臨床的管理は優先事項として取り扱うべきである。・データはまだ少数で、限られているものの、メチルフェニデートは、ADHD症状とてんかんを合併している小児や青年において、多くの場合、発作リスクを有意に増加させることなく有効である。■関連記事てんかん重積状態に対する抗てんかん薬処方の変化ADHD発症しやすい家庭の傾向ADHD児への併用療法や抗精神病治療の傾向

153.

ADHDドライバー、トレーニングで危機感知能を改善できるか

 ADHDを有する若者のドライバーは、同世代の人よりも交通事故傷害リスクが高い。このリスク増加は、危機感知能が低いことと相関する。これまで、ADHDを有する若者のドライバーを対象に、コンピュータ技術を用いた危険感知訓練について調査した研究はほとんどなかった。オーストラリア・School of Allied HealthのC.R. Bruce氏らは、ドライブスマートトレーニングを受けたADHDを有する若者のドライバーの、危機感知能における群間および対象者内の変化の有無や重要性を確認し、訓練により改善した危機感知能の変化が、時間が経過しても維持されるかを調査した。Accident; analysis and prevention誌オンライン版2017年10月14日号の報告。 本研究は、実行可能性調査として実施されたオーストラリアの無作為化比較試験である。コントロール群として、遅延治療群が含まれた。ADHDと診断されたドライバー25例を対象に、即時介入群またはコントロール群に無作為化した。即時介入群は、ドライブスマートというコンピュータアプリケーションを用いて、トレーニングを行った。コントロール群は、ドキュメンタリービデオを視聴し(コントロール状態)、その後ドライブスマートトレーニングを実施した。対象者の危機感知能は、Hazard Perception Test(HPT)を用いて測定した。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインスコアを調整したのち、介入後のHPT変化スコアは、群間で有意な差が認められ、即時介入群が支持された。・効果の重要性は、大きかった。・コントロール群内の介入効果は有意ではなかった。・即時介入群における6週間のフォローアップにおいて、有意な維持効果が認められた。 著者らは「ADHDドライバーに対するドライブスマートトレーニングは、危機感知能を大幅に改善し、一定期間持続する。トレーニングに対する多様的なアプローチは、維持を容易にすることが示された。本研究より、本格的な試験が実施可能である」としている。■関連記事ADHD発症しやすい家庭の傾向認知症ドライバーの運転停止を促すためにはてんかんドライバーの事故率は本当に高いのか

154.

てんかん脳組織の病理組織学的所見/NEJM

 手術を要する薬剤抵抗性の焦点性てんかん患者の病理組織学的診断において、成人では海馬硬化症、小児では限局性皮質異形成の頻度が最も高く、次いで成人・小児とも腫瘍が多いことが、ドイツ・エアランゲン大学病院のIngmar Blumcke氏らの調査で明らかとなった。てんかん発作の基底をなす、構造的な脳病変の詳細な神経病理学的情報は、薬剤抵抗性焦点性てんかんの理解に有益とされる。欧州てんかん脳バンク(EEBB:European Epilepsy Brain Bank)は、てんかん手術で採取された標本の病理組織学的報告を標準化し、てんかんを誘発する脳病変を調査するために設立され、非特定化された臨床病理学的情報の最小限のデータを収集してデータベース化している。NEJM誌2017年10月26日号掲載の報告。欧州12ヵ国の25年間、約9,500例のデータを検討 研究グループは、EEBBデータベースから、欧州12ヵ国の36施設で1990~2014年の25年間に、薬剤抵抗性てんかん発作で手術を受けた患者の切除脳標本のデータを抽出し、解析を行った(欧州連合[EU]などの助成による)。 切除脳組織の病理組織学的な検討は、地方病院(41.0%)またはエアランゲンのGerman Neuropathology Reference Center for Epilepsy Surgery(59.0%)で行われ、診断が確定された。2回以上の切除を受けた患者では、最新の手術で得られた臨床データと診断名を使用した。 対象は9,523例(男性:4,944例、女性:4,579例)で、367例(3.8%)が2回以上の切除を受けた。手術時に6,900例(72.5%)が成人(18歳以上)で、2,623例(27.5%)は小児(18歳未満)であった。 小児期にてんかん発作を発症した患者の割合は全体の75.9%で、6歳未満での発症は36%だった。切除前の平均てんかん罹病期間は成人が20.1±12.3年、小児は5.3±4.1年であった。手術領域は側頭葉が71.9%で、切除部位は脳の左側が49.1%、右側が50.5%、残りは正中線上の部位だった。診断名の上位10件で86.7% 7つの主要疾患カテゴリー(海馬硬化症、腫瘍、皮質発達奇形、病変なし、グリア性瘢痕、血管奇形、脳炎)に分類される36の病理組織学的診断が確認された。上位10件の病理組織学的診断が、薬剤抵抗性てんかんの86.7%(8,256/9,523例)を占めた。術後転帰のデータが得られた7,168例の事後解析では、術後1年間にてんかん発作の発現がみられなかった患者の割合は60.7%(小児66.4%、成人58.6%)だった。 最も頻度の高い疾患カテゴリーは海馬硬化症で、全体の36.4%(3,463例)を占め、その88.7%(3,070例)が成人であった。平均発症年齢は11.3歳で、左海馬(10.7歳)が右海馬(11.9歳)に比べ、わずかではあるものの有意に若年であった(p<0.001)。平均罹病期間は22.5年、術後1年無発作率は61.4%だった。 次いで脳腫瘍の頻度が高く、23.6%(2,244例)に認められた。神経節膠腫が最も多く、全患者の10.4%に相当し、その82.5%は側頭葉に発現した。腫瘍の平均発症年齢は15.1歳、平均罹病期間は11.4年、術後1年無発作率は68.4%であった。 皮質発達奇形は19.8%(1,888例)に認められ、小児(39.3%)では最も頻度の高いカテゴリーであった。限局性皮質異形成が最も多く、その52.7%は小児だった。2回以上の手術が行われた患者では本疾患が32.2%と最も多く、次いで腫瘍が26.4%であった。平均発症年齢は6.2歳と最も若年で、平均罹病期間は12.2年、術後1年無発作率は57.6%であった。 特異的な病変が同定できない症例は7.7%(738例)と、4番目に多いカテゴリーであった。これには、新皮質、白質、海馬の唯一の病理組織学的異常として、非特異的な反応性神経膠症の所見が含まれた。平均発症年齢は13.0歳、平均罹病期間は15.4年、術後1年無発作率は50.2%であった。 血管奇形は6.1%(581例)にみられた。平均発症年齢は22.2歳と最も高齢で、平均罹病期間は12.3年、術後1年無発作率は64.8%であった。グリア性瘢痕は4.9%(464例)にみられ、平均発症年齢は10.6歳、平均罹病期間は14.8年であり、男性(61.0%)の頻度が高く、術後1年無発作率は46.9%と主要疾患カテゴリーの中で最も低かった。また、脳炎は1.5%(145例)にみられ、ほとんどがラスムッセン脳炎であり、平均発症年齢は10.1歳、平均罹病期間は7.8年、術後1年無発作率は50%だった。

155.

小児のてんかん、外科的治療は有益か/NEJM

 脳外科手術を受けた18歳以下の薬剤抵抗性てんかん患者は、薬物療法のみを受けた患者と比べて、12ヵ月時点のてんかん発作がない割合が有意に高く、行動やQOLに関するスコアも良好であった。神経障害の発生は、脳切除部位に関連した想定内のものであったという。全インド医科大学のRekha Dwivedi氏らが単施設無作為化試験を行い、NEJM誌2017年10月26日号で発表した。脳外科手術は、薬剤抵抗性てんかんを有する小児・思春期の発作を改善する可能性が示唆されていたが、無作為化試験による、さらなるデータが求められていた。18歳以下の薬剤抵抗性てんかん116例を対象に無作為化試験 試験は2010年11月~2015年3月に全インド医科大学にて行われた。対象は、薬剤抵抗性てんかんを有する18歳以下の小児・思春期の患者116例で、てんかんの原因に適した脳外科手術と適切な薬物療法を行う群(手術群:57例)と、薬物療法のみを行う群(薬物療法群:59例)とに無作為に割り付けて追跡を行った。手術群の患者は無作為化後1ヵ月以内に施術を受け、薬物療法群の患者は脳外科手術の待機リストに登録され、無作為化後1年以上の時点での施術が計画された。 主要アウトカムは、12ヵ月時点でのてんかん発作がない割合であった。副次アウトカムは、Hague Seizure Severityスケールスコア(範囲:13~54、高値ほど重症)、Binet-Kamat知能指数、Vineland Social Maturity Scaleによる社会性の指数(いずれも正常値範囲:85~110、高値ほど機能レベルが高い)、Child Behavior Checklistスコア(<60正常、60~63境界域、>63臨床的障害)、Pediatric Quality of Life Inventoryスコア(範囲:0~100、高値ほどQOLが良好)などであった。薬物療法単独群と比べて、12ヵ月時点のてんかん発作がない割合に有意な差 両群のベースライン特性に有意な差はなかった。手術群と薬物療法群を比較すると、平均年齢:9.0歳(SD 0.8~17.0)対10.0歳(2.0~17.0)、女子の割合:40%対32%、てんかん発作発症の年齢中央値:1.5歳(0.1~9.0)対3.0歳(0.1~10.0)、病歴期間:4.9年(0.4~16.3)対5.0年(0.5~16.0)などであった。 手術群の手技は、側頭葉切除14例、非側頭葉病変の切除12例、半球離断15例、脳梁離断10例、視床下部過誤腫の離断または切除6例であった。 12ヵ月時点で、てんかん発作がなかった患者は、手術群44例(77%)、薬物療法群4例(7%)であった(p<0.001)。 ベースライン~12ヵ月の各スコア・指数の変化の群間差は、Hague Seizure Severityスケールスコア(差:19.4、95%信頼区間[CI]:15.8~23.1、p<0.001)、Child Behavior Checklistスコア(13.1、10.7~15.6、p<0.001)、Pediatric Quality of Life Inventory(21.9、16.4~27.6、p<0.001)、Vineland Social Maturity Scale指数(4.7、0.4~9.1、p=0.03)は手術群で有意に良好であったが、Binet-Kamat知能指数については有意な差は示されなかった(2.5、-0.1~5.1、p=0.06)。 死亡例は両群ともなかった。重篤な有害事象は、薬物療法群では報告がなかったが、手術群で19例(33%)が報告された。そのうち15例(26%、半球離断例)は不全片麻痺であった。そのほか不全麻痺が2例(側頭葉切除または頭頂部限局性皮質異形成の切除例)、全身性の低血圧症1例(前頭葉切除例)、言語障害1例(前頭葉切除例)であった。

156.

スタージ・ウェーバー症候群〔SWS:Sturge-Weber syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義スタージ・ウェーバー症候群(Sturge-Weber syndrome:SWS)は、顔面におけるポートワイン母斑(2014年、国際的に共通認識となっているISSVA分類において、「ポートワイン母斑」は「毛細血管奇形」へと名称変更された)、頭蓋内の軟膜血管腫、眼の脈絡膜血管腫これを起因とした緑内障を3主徴とする疾患である。本症は、神経皮膚症候群の範疇とされている。■ 疫学23万人に1人の発症といわれる。遺伝性はない。ほとんどの症状が出生時から認められる。■病因顔面ポートワイン母斑(毛細血管奇形)と頭蓋内軟膜血管腫の病理組織標本の検討から、Gタンパク質のαサブユニットをコードするGNAQ遺伝子の異常が証明された。GNAQ遺伝子異常は、一塩基変異体(p.Arg183Glnをコードするc.548G→A)である。すなわち、GNAQ遺伝子の体細胞モザイク変異が原因と同定された。脳、皮膚、眼での特定の血管領域が障害される。脳では頭蓋内血流が障害され、脳機能低下や脳萎縮に陥り、精神運動や発達遅滞を発症する。皮膚では真皮毛細血管が障害され、皮膚に血管腫を思わせる赤い“ポートワイン”色の母斑(毛細血管奇形)を発症する。眼では脈絡膜血管が障害され、血流うっ滞から緑内障を発症する。■ 症状1)脳(頭蓋内)頭蓋内軟膜に血管奇形が生じ、うっ滞から軟膜血管虚血となり、局所の石灰化や壊死に至る。さまざまな障害となるので、臨床経過も多様である。痙攣、精神運動発達遅滞、運動片麻痺、片頭痛などが知られる。障害される脳の部位では、頭頂葉、後頭葉、前頭葉の頻度となっている。病変範囲が広いほど、てんかん発症年齢も早く難治化する。運動麻痺は、顔面皮疹と反対側の半身麻痺が多い。2)皮膚顔面ポートワイン母斑(毛細血管奇形)は、その名のとおりポートワインのような色をした“赤あざ”と呼ばれる斑点である。時に薄ピンク色から深紫色まで個人差がある。部位は、三叉神経第1枝、第2枝領域が多い。3)眼脈絡膜血管腫は、顔面ポートワイン母斑(毛細血管奇形)と同側である。そして緑内障を発症する。当然、視力・視野障害が発症してしまう。■ 分類定義で示した顔面ポートワイン母斑(毛細血管奇形)、頭蓋内の軟膜血管腫、眼の脈絡膜血管腫の3主徴が必ずしも、すべてでみられるわけではない。1型:顔面ポートワイン母斑(毛細血管奇形)と頭蓋内の軟膜血管腫の両方が認められるタイプ2型:顔面ポートワイン母斑(毛細血管奇形)は認められるが、頭蓋内の軟膜血管腫がないタイプ3型:頭蓋内の軟膜血管腫は認められるが、顔面ポートワイン母斑(毛細血管奇形)がないタイプに分類される。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)厚生労働省では、スタージ・ウェーバー症候群関連研究班が3つ存在することに着目し、その統一を図っている。以下に、改正された診断基準・重症度分類を表に示す。脳症状に関する検査には、脳MRIでガドリニウム増強において明瞭となる頭蓋内軟膜血管腫、罹患部位の脳萎縮、患側脈絡叢の腫大、白質内横断静脈の拡張がある。脳CTで頭蓋内石灰化、Single photon emission computed tomography(SPECT:単一光子放射断層撮影)で頭蓋内軟膜血管腫部位の低血流域、Positron emission tomography(FDG-PET:陽電子放出断層撮影)で頭蓋内軟膜血管腫部位の糖低代謝がある。また、脳波は患側の低電位徐波、発作時の律動性棘波または鋭波が知られている。表 スタージ・ウェーバー症候群の新規診断基準・重症度分類<診断基準>A 基本所見1頭蓋内軟膜血管腫2顔面ポートワイン斑(毛細血管奇形)3脈絡膜血管腫または緑内障B 症状1てんかん2精神運動発達遅滞3運動麻痺4視力・視野障害5片頭痛C 検査所見1 画像検査所見MRI:ガドリニウム増強において明瞭となる頭蓋内軟膜血管腫、罹患部位の脳萎縮、患側脈絡叢の腫大、白質内横断静脈の拡張CT:頭蓋内石灰化を認めるSPECT:頭蓋内軟膜血管腫部位の低血流域FDG-PET:頭蓋内軟膜血管腫部位の糖低代謝2 生理学的所見脳波:患側の低電位徐波、発作時の律動性棘波または鋭波D 鑑別診断その他の神経皮膚症候群E 遺伝学的検査GNAQ遺伝子の変異頭蓋内軟膜血管腫と顔面ポートワイン斑(毛細血管奇形)に関して<診断のカテゴリー>以下の場合に確定診断される。Aの1項目以上を満たし、かつBの2項目以上を有するもの<臨床所見(該当する項目の□にレ印を記入する)>てんかん発作型(複数選択可)□全般発作 □単純部分発作 □複雑部分発作 □二次性全般化発作 □てんかん重積状態頭蓋内軟膜血管腫の脳内局在□前頭葉 □側頭葉 □頭頂葉 □後頭葉 □その他 □両側てんかん外科治療□焦点切除術 □脳梁離断術 □多脳葉手術 □半球離断術 □迷走神経刺激療法顔面ポートワイン斑(毛細血管奇形)□顔面の5%以下 □顔面の5~30% □顔面の30%以上運動麻痺□なし □あり視力・視野障害□なし □あり片頭痛□なし □あり<重症度分類>●てんかんおよび精神運動発達遅滞精神保健福祉手帳診断書における「G40てんかん」の障害等級判定区分、障害者総合支援法における障害支援区分、精神症状・能力障害二軸評価を用いて、以下のいずれかに該当する患者を対象とする。「G40てんかん」の障害等級の能力評価区分「G40てんかん」の障害等級判定区分*「てんかん発作のタイプ」イ 意識障害はないが、随意運動が失われる発作ロ 意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作ハ 意識障害の有無を問わず、転倒する発作ニ 意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作●能力障害評価判定に当たっては、以下のことを考慮する。1)日常生活あるいは社会生活において必要な「支援」とは、助言、指導、介助などをいう。2)保護的な環境(たとえば入院・施設入所しているような状態)ではなく、たとえばアパートなどで単身生活を行った場合を想定して、その場合の生活能力の障害の状態を判定する。(1)精神障害や知的障害を認めないか、または、精神障害、知的障害を認めるが、日常生活および社会生活は普通にできる。適切な食事摂取、身辺の清潔保持、金銭管理や買い物、通院や服薬、適切な対人交流、身辺の安全保持や危機対応、社会的手続きや公共施設の利用、趣味や娯楽あるいは文化的・社会的活動への参加などが自発的にできる、あるいは適切にできる。精神障害を持たない人と同じように、日常生活および社会生活を送ることができる。(2)精神障害、知的障害を認め、日常生活または社会生活に一定の制限を受ける。(1)に記載のことが自発的あるいはおおむねできるが、一部支援を必要とする場合がある。たとえば、1人で外出できるが、過大なストレスがかかる状況が生じた場合に対処が困難である。デイケアや就労継続支援事業などに参加するもの、あるいは保護的配慮のある事業所で、雇用契約による一般就労をしている者も含まれる。日常的な家事をこなすことはできるが、状況や手順が変化したりすると困難が生じることがある。清潔保持は困難が少ない。対人交流は乏しくない。引きこもりがちではない。自発的な行動や、社会生活の中で発言が適切にできないことがある。行動のテンポはほぼ他の人に合わせることができる。普通のストレスでは症状の再燃や悪化が起きにくい。金銭管理はおおむねできる。社会生活の中で不適切な行動をとってしまうことは少ない。(3)精神障害、知的障害を認め、日常生活または社会生活に著しい制限を受けており、時に応じて支援を必要とする。(1)に記載のことがおおむねできるが、支援を必要とする場合が多い。たとえば、付き添われなくても自ら外出できるものの、ストレスがかかる状況が生じた場合に対処することが困難である。医療機関などに行くなどの習慣化された外出はできる。また、デイケアや就労継続支援事業などに参加することができる。食事をバランスよく用意するなどの家事をこなすために、助言などの支援を必要とする。清潔保持が自発的かつ適切にはできない。社会的な対人交流は乏しいが、引きこもりは顕著ではない。自発的な行動に困難がある。日常生活の中での発言が適切にできないことがある。行動のテンポが他の人と隔たってしまうことがある。ストレスが大きいと症状の再燃や悪化を来しやすい。金銭管理ができない場合がある。社会生活の中でその場に適さない行動をとってしまうことがある。(4)精神障害、知的障害を認め、日常生活または社会生活に著しい制限を受けており、常時支援を要する。(1)に記載のことは常時支援がなければできない。たとえば、親しい人との交流も乏しく引きこもりがちである、自発性が著しく乏しい。自発的な発言が少なく発言内容が不適切であったり、不明瞭であったりする。日常生活において行動のテンポが他の人のペースと大きく隔たってしまう。些細な出来事で、病状の再燃や悪化を来しやすい。金銭管理は困難である。日常生活の中でその場に適さない行動をとってしまいがちである。(5)精神障害、知的障害を認め、身の回りのことはほとんどできない。(1)に記載のことは支援があってもほとんどできない。入院・入所施設などの患者においては、院内・施設内などの生活に常時支援を必要とする。在宅患者においては、医療機関などへの外出も自発的にできず、付き添いが必要である。家庭生活においても、適切な食事を用意したり、後片付けなどの家事や身辺の清潔保持も自発的には行えず、常時支援を必要とする。●運動麻痺下記の“Modified Rankin Scale”を用いて、中等症以上に該当する患者を対象とする。軽症 :0~2中等症:3~4重症 :5Modified Rankin Scale0まったく症候がない。1症候があっても明らかな障害はない。日常の勤めや活動は行える。2軽度の障害:発症以前の活動がすべて行えるわけではないが、自分の身の回りのことは介助なしに行える。3中等度の障害:何らかの介助を必要とするが、歩行は介助なしに行える。4中等度から重度の障害:歩行や身体的要求には介助が必要である。5寝たきり、失禁状態、常に介護と見守りを必要とする。参考0自覚症状および他覚徴候がともにない状態である。1自覚症状および他覚徴候はあるが、発症以前から行っていた仕事や活動に制限はない状態である。2発症以前から行っていた仕事や活動に制限はあるが、日常生活は自立している状態である。3買い物や公共交通機関を利用した外出などには介助を必要とするが、通常歩行、食事、身だしなみの維持、トイレなどには介助を必要としない状態である。4通常歩行、食事、身だしなみの維持、トイレなどには介助を必要とするが、持続的な介護は必要としない状態である。5常に誰かの介助を必要とする状態である。●視力・視野障害下記の尺度を用いて、中等症以上に該当する患者を対象とする。軽症 :1中等症:2重症 :3~4判定に当たっては、矯正視力、視野ともに良好な眼の測定値を用いる。1矯正視力0.7以上かつ視野狭窄なし2矯正視力0.7以上、視野狭窄あり3矯正視力0.2~0.74矯正視力0.2未満3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■脳(頭蓋内)症状てんかん発作を抑制し、精神運動発達障害を未然に防ぐ必要がある。まず、抗てんかん薬による治療が行われ、約50%の症例で効果が認められる。しかし、残りの約50%は、抗てんかん薬でコントロール不良であり、外科的治療が考慮される。広範囲に病変がある症例、すなわち半球性および両側性の軟膜血管腫を持つ症例は、内科的治療でのてんかん発作とそれによる精神運動発達障害が回避できないので、早期の脳梁離断術、多脳葉切除(離断)術、迷走神経刺激療法などが考慮される。しかし、術後には運動麻痺、視野欠損、言語障害といった副作用が十分起こりうる。患児の脳可塑性に期待しなければならないことも多い。部分的な軟膜血管腫を持つ症例は、手術適応の判断が困難であるが、早期手術のほうが術後の発達改善効果は高いので、判断を先延ばしにしてはならない。1歳までが手術治療の適応を決める最初のポイントになる。■皮膚症状顔面ポートワイン母斑(毛細血管奇形)に伴う外見上の問題は、内面的な苦痛を生み出しQOLの著しい低下を招いている。1980年代からPDL(flashlamp pumped-pulsed dye laser)が使用されてきた。しかし、施術後の浮腫や色調の残存から、患者のニーズに十分応えられていない。1990年代後半、皮膚冷却を装備したパルス可変式のレーザー機器が開発され、深部の血管および血管径が大きい血管への治療が可能になった。■眼症状眼圧を下げるために点眼薬をまず使用する。効果が乏しいときは、隅角切開術や線維柱帯切開術が行われる。4 今後の展望皮膚と脳組織からGNAQ遺伝子の異常が証明されたので、血液検査のみでGNAQ遺伝子異常を検出可能か否かが、今後の検討課題となる。すなわち、血液で診断ができれば、早期発見・早期介入さらに出生前診断へと展望が開けてくる。この点を踏まえて厚生労働省関係3班を中心に多施設共同の臨床研究が開始された。また、脳(頭蓋内)症状に対する外科的治療をどう選択するか、顔面ポートワイン母斑(毛細血管奇形)に対するレーザー治療をいかに有効に施術していくのかなど、治療にはまだまだ難渋している。5 主たる診療科皮膚科、小児科、脳外科、形成外科6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療・研究に関する情報難病情報センター スタージ・ウェーバー症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)希少疾患患者情報登録システム(J-RARE)※現在、「J-RARE」という希少疾患患者情報登録システムが開設され、本症の登録に向けて準備が進んでいる(2017年10月現在未登録)。患者会情報スタージ・ウェーバー家族会(患者とその家族の会)1)Shirley MD, et al. New Engl J Med. 2013;368:1971-1979.公開履歴初回2017年10月10日

157.

てんかん患者の突然死、腹臥位がリスク因子か

 てんかん患者に起きる予期せぬ突然死(SUDEP:sudden unexpected death in epilepsy)と睡眠との関連について、米国・シカゴ大学のAhmer Ali氏らが検討を行った。Epilepsy & behavior誌オンライン版2017年9月13日号の報告。 各種データベースよりSUDEPに関連する文献を検索し、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。SUDEPは、患者がベッドで発見された場合、睡眠時と記録された場合、寝室のベッドサイドで発見された場合として評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・包括および除外基準を満たした67研究よりSUDEP症例1,025例が抽出され、そのうち880例において概日パターンが記録されていた。・SUDEP症例880例のうち、睡眠時の発生が69.3%、覚醒時の発生が30.7%であった。・SUDEPは、覚醒時と比較し、睡眠時と有意な関連が認められた(p<0.001)。・概日パターンと年齢が記録された272例のサブグループにおいて、40歳以下の患者は、40歳超の患者と比較し、睡眠時に死亡する可能性が高かった(OR:2.0、95%CI:1.0~3.8、p=0.05)。・死亡時の概日パターンと体位の両方が記録された114例のサブグループにおいて、睡眠時に死亡した患者の87.6%は腹臥位であり、覚醒時に死亡した患者の52.9%が腹臥位であった。・夜間発作の患者は、日中発作の患者よりも死亡率が6.3倍高かった(OR:6.3、95%CI:2.0~19.5、p=0.002)。 著者らは「SUDEPと睡眠は強く関連しており、睡眠はSUDEPの有意なリスク因子であることが示唆された。睡眠に関連するSUDEPリスクは未知であり、多因子性であると考えられるが、腹臥位が主要な要因である可能性がある」としている。■関連記事てんかん患者のアンメットニーズはてんかん重積状態に対する抗てんかん薬処方の変化せん妄ケアの重要性、死亡率への影響を検証

158.

てんかん患者のアンメットニーズは

 てんかん患者は、一般人よりも医療ニーズが満たされていないと感じていると考えられる。カナダ・Schulich School of Medicine and DentistryのMayuri Mahendran氏らは、てんかん患者における医療ニーズが満たされていないと感じる理由について、システマティックレビューにより評価した。Epilepsy & behavior誌オンライン版2017年8月23日号の報告。 Medline、Embase、PsycINFO、Cochrane、Web of Science databasesより検索を行った。「unmet healthcare needs」「treatment barriers」「access to care」に関連するキーワードを使用した。本研究には、すべての国、成人および小児、調査研究および定性的研究を含めた(2001年以前の非英語研究は除外した)。満たされていないニーズの理由を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・調査研究19件と定性的研究22件が抽出された。・調査研究3件と定性的研究5件の併存疾患患者は除外した。・てんかん患者における満たされていないニーズは、身体ケアよりも精神医療に関する研究が2倍多かった。・欧米および発展途上国のどちらにおいても、医療サービスの可能性の乏しさ、アクセスの問題、医療情報不足が、満たされないニーズとして抽出された。・米国に加え、ユニバーサルヘルスケアシステムを導入している国々において、医療サービスの欠如、待機時間の長さ、非協調的なケア、必要な医療情報の入手困難が抽出された。・また一方、米国の研究においては、一般的にケア費用に関する満たされないニーズが報告されていた。 著者らは「本レビューは、さまざまな国のてんかん患者における満たされないニーズの理由を明らかにしており、改善するための具体的な介入の必要性を示唆している。いくつかの研究において合併症を伴うてんかん患者を除外したため、満たされないニーズは過小評価されている可能性がある。満たされないニーズへの合併症の影響、介護者や家族の要因との相互作用を確認するためには、さらなる研究が必要である」としている。■関連記事てんかん重積状態に対する抗てんかん薬処方の変化てんかん患者の性的問題の現状世界のてんかん研究を解析、有病率に影響を与える要因は

159.

第1回 No Car, No Life【ドクター クルマ専科】

No Car, No Life皆さま、はじめまして、私は糖尿病・内分泌内科が専門の内科医で、千葉県の船橋市立医療センターという病院に勤務しております。私たち医師は、夜間や休日の緊急呼び出しもありますので他の職種の方よりもクルマに乗る機会が多いですし、また気分転換・ストレス発散としてドライブに行く方もおられるでしょう、したがって、クルマ好きの医師が多いと思います。このエッセイでは、私の愛車遍歴と現在の愛車をご紹介させていただきます。画像を拡大する私と愛車のポルシェ911ターボ私もクルマが大好きで、現在までに通算31台のクルマに乗ってきました。現在の愛車は、991型と呼ばれている最新のポルシェ911ターボ、ライトウェイト・オープンカーのアバルト124スパイダー、そして5人乗りのBMW 430iグランクーペの3台です。現在のラインアップ、つまりスポーツカー、オープンカー、実用的なスポーティセダン(またはSUV)という3台が、私としては理想的な組み合わせです。私の愛車遍歴初めての愛車は、大学生時代の1976年に手に入れた日産スカイライン2000GT(いわゆる「ケンメリ」)でした。その後は、マツダ・サバンナRX-7に乗り、1984年に結婚してからはホンダ・アコードに乗っていました。私の愛車遍歴の大きな転機は、1990年ごろでした。当時、買ったばかりの新車スカイラインGTS-4に乗っていた時、信号待ちで停車中、運転手がてんかん発作を起こしてしまったクルマにノーブレーキで追突されてしまいました。あとから警察官に伺った話では、推定速度は50〜60km/hくらいとのことでした。当時の日本車はガソリンタンクがトランクの下にある構造でしたので、追突された衝撃でガソリンが漏れて引火してしまい、クルマはあっという間に全焼してしまいました。ガソリンに引火すると、クルマはほんの数分で全焼してしまいます。幸い、私にほとんど怪我はありませんでしたが、もっと安全なクルマに乗り換えよう(国産車はやめよう)と思った瞬間でした。そして、より安全なドイツ車として、初めての外車がBMW 525iです。元々ドイツ車は好きでしたから、当時は無理して手に入れたとはいえ、うれしかったですね。その後は、メルセデス・ベンツE320に2世代乗り継ぎました。この2台で通算12年くらい乗りましたね。大人4人がゆったり乗れて、安心、まさに「安全で安心なメルセデス」ですね。このまま、4人家族でずっとメルセデスEクラスという人生なら、ごく普通のカーライフでしたが…。気付けば私も50歳になっていました。そんなある時、友人から「先生もずっとメルセデス・ベンツですね、上がりですかねぇ」と言われたのですね。メルセデスは、「上がりのクルマ」と言われていました。『冗談じゃない! このまま終わってたまるものか!』と、私の反骨精神がメラメラと目覚めたのです。2人の息子たちも成長しましたし、これまで仕事も頑張ってきたという思いもありました。私は中学生時代から、The WhoというRock Bandが大好きなのですが、50歳になったし、そろそろ「ロックなクルマ」を選んでもいいのではないかと思い立ち、2006年当時としてはセダンでは圧倒的なパワーを誇った5Lで500psというV10エンジンが搭載されたBMW M5に乗り替えたのです。「50歳、5L、500ps」と5が3つそろいました、これも何かの「ご縁」でしょうね(笑)。私のクルマ道楽は、このM5で一気に弾けました。M5はV10エンジンが奏でる音も最高でしたし、アクセルを踏み込めばものすごい加速! 同じドイツ車ですが、今まで乗ってきた通常のモデルでは味わえない世界を知ることができました。BMWでも、やはり「M」はまったく違いました。ページTOPへいよいよポルシェ911へそして、いよいよ長年の憧れだったポルシェ911に乗り替える決意を固めたのです。ポルシェ911への憧れは大学生のころからありました。当時は、六本木で通い詰めていたライブハウス(ピット・イン)がありました。今はアウディのディーラーになってしまいましたが、当時、そのライブハウスのすぐ近く、飯倉片町(港区六本木)の交差点にポルシェ(ミツワ自動車)のショールームがありました。この店の前を通るたびに「いつかは私もポルシェを手に入れたいな」と思ったものです。1970年代末ですからポルシェといえば、もちろん911だけですね。私は、空冷か水冷かという点にはこだわりはなかったのですが、ATのティプトロニックはどうも抵抗があったのですね。かといって、再びMTに戻るのも面倒だな、という意識がありました。そのころ、ちょうど良いタイミングでATが、DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション、ポルシェではPDKと呼びます)に置き換わりました。セールスマンの勧めもあり、最初に乗る911は、より安定している4WDがいいということでカレラ4を、そして、どうせならばよりパワーがあるカレラ4Sを手に入れることにしたのです。画像を拡大する愛車のBMW 430iグランクーペそのまま、ずっとポルシェ911に乗り続けてもよかったのですが、経済的にとても大変ですので、もう一度BMWの世界に戻りました。同じくやはり憧れの存在だったアルピナB5を手に入れ、その後はBMW M6クーペと乗り継ぎました。どちらも素晴らしいクルマでした、しかしやはり、911の存在が気になってしまうのです。ちょうど、997型から991型へモデルチェンジしたタイミングだったこともあり、BMW M6クーペからポルシェ911カレラSに乗り替えました。991後期モデルではカレラ系のエンジンにもターボが積まれました。911の伝統的なRR(リアエンジン・リアドライブ)で、かつ最後のNA(自然吸気)エンジンを搭載したカレラSを所有できてよかったと、今でも思っています。ページTOPへ911は最高です!2014年の春、年上のドクターと食事する機会があり、お互いクルマ好きということで会話も弾みました。その方が、「最近、911ターボ・カブリオレを手に入れました」とおっしゃったのですね。ここでまたもや私のロック魂に火がついてしまいました。「よし! 俺も、長年の憧れ911ターボに乗ろう!」そう思って、カレラSからターボに乗り替える決心をしました。カレラSからターボでは、とても価格差が大きく、経済的にはかなり大変でしたが…。911ターボはすべてオーダーメードになります。7ヵ月ほど待ちましたが、2015年4月に現在の911ターボが納車された時は、とてもうれしかったですね! 今は、すべてが最高です。学生時代から憧れていたポルシェ911、それもターボを手に入れることができたのですから…。911ターボは、日常の足としても申し分ないですし、いざアクセルを踏み込めば0-100km/h 3.2秒という異次元の加速が味わえます。それでいてロングツアラーとしての快適性も兼ね備えています。燃費は、街乗りで6km/L台、高速で10km/L以上というところでしょうか。まさに究極のオールラウンダーでしょう。私のように公道のみでしたら、911ターボが最高の911だと思います。通勤にも買い物にも普通に使えますし、大雨でも安心です。またリアシートがあり、荷物がかなり載せられる点も大きいですね。プロの映像作家に依頼して、私と911ターボのプロモーションビデオまで作成してしまいました。どうぞご笑覧ください。サーキットも走る方には、GT3やGT2というスーパーマシンもありますが、超ハイパワーでかつRR(リアエンジン・リアドライブ)ですからプロ級の腕がないとコントロールするのが難しいと思います。911はバリエーションもとても豊富ですから、さまざまなニーズに応えられますね。ボディタイプだけで、クーペ、カブリオレ、タルガと3種類もあります。駆動方式は、伝統的なRR(リアエンジン・リアドライブ)と4WDから選べます。エンジンはほとんどがターボ化されましたが、あえてGT3というスパルタンなモデルだけはNA(自然吸気)エンジンを残しています。これだけ種類が多いスポーツカーは、世界でも911だけです。1964年の初代911登場以来、すでに53年が経過しています、2017年夏には、通算100万台を突破しました。そして、全生産台数の70%が現在でも稼働しているという驚くべき数字が、ポルシェ社から発表されています。画像を拡大する愛車のアバルト124スパイダー実際、1973年型の911S(通称「ナナサンS」と呼ばれる名車です)を、最新の911カレラ4Sを新車で買えるくらいの高価な価格で購入して、大切に乗っている親しい友人もおります。7月の猛暑日に助手席に乗せてもらいましたが、2.4L空冷エンジン、5速マニュアルシフト、エアコンなし、という現在44歳の高齢なクルマですが、まさに「低速官能性」を感じました。わずか190psですが、車重が1,075kgしかありませんので、すごく軽快です。ちなみに、私の911ターボは1,600kgもありますし、ライトウェイト・オープンカーのアバルト124スパイダーでも1,150kgです。40km/hくらいで走行していてもとても楽しいクルマでした!「最新の911が、最良の911」とはよくいわれる言葉ですが、同時にまた「俺の911が、最高の911」でもあるのです。そして、このどちらも真実ですね。最新の991ターボと、かつてサーキット漫画で有名になった930ターボ(初代の911ターボ)という2台を所有している方もおられます。最新の水冷911と空冷911の2台を所有されている方は、911オーナーの中でも憧れの的です。フェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレンなど世の中にはスーパーカーもたくさんありますが、通勤でも買い物でも毎日気軽に乗れて、かつリアシートには荷物も積めるエブリディ・スポーツカーとしては、私は911が昔も今も世界最高のクルマだと思います。たゆまぬ努力と技術革新で、デビューから50年以上、常に世界のトップ、他車の目標であり続けていることは、本当に稀有で素晴らしいことだと思います。カイエンやマカンやパナメーラで初めてポルシェに乗られた方々には、ぜひ素晴らしい「911の世界」も知っていただきたいと思います。※今年8月、アバルトの公式サイトに私のアバルト124スパイダーのオーナー・インタビューが掲載されました。こちらは、気軽にオープン・エアを楽しめる爽快な車です。どうぞお読みください。 バックナンバー

160.

ADHD児への併用療法や抗精神病治療の傾向

 ADHDと新規に診断された小児の治療軌跡の特徴を明らかにするため、米国・フロリダ大学のAlmut G. Winterstein氏らが検討を行った。The Journal of clinical psychiatry誌オンライン版2017年7月5日号の報告。 1999~2006年の米国28州のメディケイド(公的医療保険制度)プログラムより、3~18歳の請求記録を用いた。向精神薬使用と精神疾患の診断が6ヵ月以上なく、新規にADHD(ICD-9-CM:314.00)と診断された小児が、コホート研究に登録された。向精神薬多剤併用(3種類以上の使用)、抗精神病薬、抗てんかん薬の使用を評価するため、5年間フォローアップを行った。混合効果ロジスティック回帰を用いて、社会人口統計学的要因で調整し、ADHD診断およびフォローアップ時の年齢を関数とし、各薬剤の使用アウトカム率をモデル化した。 主な結果は以下のとおり。・コホート対象患者1万6,626例中、診断1年後に1回以上各薬剤が投与されていた患者の割合は、神経刺激薬79.2%、抗うつ薬33.2%、αアゴニスト23.1%、向精神薬多剤併用25.3%であった。・1~5年目までに、抗精神病薬は7.1→14.7%、抗てんかん薬は4.0→7.9%、向精神薬多剤併用は8.5→13.4%に増加したが、この増加はADHD診断時の年齢が3~9歳の小児に限られていた。・3歳でADHDと診断された小児は、各アウトカムにおいて最も有意な増加を示した(各々、OR:1.80、[95%CI:1.36~2.38]、1.85[1.38~2.47]、2.14[1.45~3.16])。・また、向精神薬多剤併用療法が行われた9,680人年のうち39.1%は、ADHD以外の精神医学的診断を受けていなかった。 著者らは「向精神薬多剤併用や抗精神病薬、抗てんかん薬の使用は、フォローアップの年ごとに増加していた。これは、ADHD診断時の年齢によって強く影響され、未就学児では大きく増加したが、年齢が上がるとこの対応はみられなかった。それは、付随する精神障害を医師が診断することによって、部分的にのみ説明可能であった」としている。■関連記事自閉症とADHD症状併発患者に対する非定型抗精神病薬の比較ADHDに対するメチルフェニデートは有益なのか母親の体格がADHD、自閉症リスクと関連か

検索結果 合計:399件 表示位置:141 - 160