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てんかん薬のプラセボ効果、東アジアと欧米で地域差

 北里大学薬学部の橘 洋介氏らは、抗てんかん薬の臨床試験でみられるプラセボ効果に関与する因子について検討を行った。その結果、東アジアと欧米諸国ではプラセボ効果に差がみられること、長い罹病期間と複雑部分発作の存在がプラセボ効果の減弱に関連していることを報告した。結果を踏まえて著者は、「プラセボ効果の地域差の理由は明らかでないが、将来的に部分てんかんに対する抗てんかん薬の臨床試験をデザインするにあたり、プラセボ効果に関与する患者特性を慎重に考慮する必要がある」と指摘している。Clinical Drug Investigation誌2013年5月号の掲載報告。 抗てんかん薬の臨床試験においてプラセボ効果が認められることが知られており、これに関する検討が行われている。最近のメタアナリシスでは、東アジアの試験で予想外の高いプラセボ効果が示された。多国間試験が広く実施されるようになってきている中、将来の臨床試験のために地域や国によるプラセボ効果の相違を理解しておくことは重要である。本メタ解析では、難治性部分てんかん成人患者に対する併用療法の臨床試験において、プラセボ効果に関与する因子を東アジア人と欧米人で比較検討することを目的に実施した。東アジアと欧米諸国で実施され、公表されている臨床試験論文を基にデータベースを作成し、プラセボ効果の程度と潜在的影響因子との関連について、ロジスティック回帰分析を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・5種類の抗てんかん薬(ガバペンチン、トピラマート、レベチラセタム、プレガバリン[本疾患には国内未承認]、ゾニサミド)に関連する33件の臨床試験よりデータベースを作成した。・プラセボ効果は、罹病期間、ベースライン時の複雑部分発作を有する患者の割合、2種類の抗てんかん薬が投与されている患者の割合、ベースライン時の発作頻度といった患者特性、および臨床試験の報告年と関連していた。・長い罹病期間とベースライン時の複雑部分発作は、プラセボ効果の減弱に関連していた。・ロジスティック回帰分析により、東アジアで実施された試験のプラセボ効果のほうが、欧米諸国で実施された試験と比較して統計学的に高かった。関連医療ニュース ・疼痛治療「プラセボでも一定の効果が」臨床試験に課題も ・抗てんかん薬の長期服用者、80%が骨ミネラル障害 ・てんかんと寄生虫感染との関連説を確認

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リハビリテーション中の転倒事故で死亡したケース

リハビリテーション科最終判決平成14年6月28日 東京地方裁判所 平成12年(ワ)第3569号 損害賠償請求事件概要脳梗塞によるてんかん発作を起こして入院し、リハビリテーションを行っていた63歳男性。場所についての見当識障害がみられたが、食事は自力摂取し、病院スタッフとのコミュニケーションは良好であった。ところが椅子坐位姿勢の訓練中、看護師が目を離したすきに立ち上がろうとして後方へ転倒して急性硬膜下血腫を受傷。緊急開頭血腫除去手術が行われたが、3日後に死亡した。詳細な経過患者情報既往症として糖尿病(インスリン療法中)、糖尿病性網膜症による高度の視力障害、陳旧性脳梗塞などのある63歳男性経過1997年1月から某大学病院に通院開始。1998年9月14日自らが購入したドイツ製の脳梗塞治療薬を服用した後、顔面蒼白、嘔吐、痙攣、左半身麻痺などが出現。9月15日00:13救急車で大学病院に搬送。意識レベルはジャパンコーマスケール(JCS)で300。血圧232/120mmHg、脈拍120、顔面、下腿の浮腫著明。鎮静処置後に気管内挿管し、頭部CTスキャンでは右後頭葉の陳旧性脳梗塞、年齢に比べ高度な脳萎縮を認めた。02:00その後徐々に意識レベルは上昇し(JCS:3)抜管したが、拘禁症候群のためと思われる「夜間せん妄」、「ごきぶりがいる」などの幻覚症状、意味不明の言動、暴言、意識混濁状態、覚醒不良などがあり、活動性の上昇がなかなかみられなかった。9月19日ベッド上ギャッジ・アップ開始。9月20日椅子坐位姿勢によるリハビリテーション開始。場所についての見当識障害がみられたものの、意識レベルはJCS 1~2。「あいさつはしっかりとね、しますよ。今日は天気いいね」という会話あり。看護記録によれば、21:00頃覚醒す。その後不明言動きかれ、失見当識あり夜間時に覚醒、朝方に入眠する。意味不明なことをいう時もある朝方入眠したのは、低血糖のためか?BSコントロールつかず要注意ES自力摂取可も手元おぼつかないかんじあり。呂律回らないような、もぐもぐした口調。イスに移る時めまいあるも、ほぼ自力で移動可ES時、自力摂取せず、食べていてもそしゃくをやめてしまう。ボオーッとしてしまう。左側に倒れてしまうため、途中でベッドへ戻す時々ボーッとするのは、てんかんか?「ここはどこだっけ」会話成立するも失見当識ありES取りこぼし多く、ほとんど介助にて摂取す9月21日09:00全身清拭後しばらくベッド上ギャッジ・アップ。10:30ベッド上姿勢保持のリハビリテーション開始。場所についての見当識障害あり「俺は息子がいるんだ。でもね、ずっと会っていないんだ」「家のトイレ新しいんだよ。新しいトイレになってから1週間だから、早くそれを使いたいなあ。まだ駄目なの?仕方ないねえ。今家じゃないの?そう。病院なの。じゃあ仕方ないねえ」11:00担当医師の回診、前日よりも姿勢保持の時間を延ばし、食事も椅子坐位姿勢でとるよう指示。ベッドから下ろしてリハビリ用の椅子(パラマウント社製:鉄パイプ製の脚、肘置きのついた折り畳み式、背もたれの高さは比較的低い)に座らせた。その前に長テーブルを置いて挟むように固定し、テーブルの脚には左右各5kgの砂嚢をおいた。12:00看護師は「食事を取ってくるので動かないでね」との声かけに頷いたことを確認し、数メートル先の配膳車から食事を取ってきた。準備された食事は自力でほぼ全部摂取。食事終了後、看護師は患者に動かないよう声をかけ、数メートル先の配膳車に下膳。12:30食後の服薬および歯磨き。このときも看護師は「歯磨きの用意をしてくるから動かないでね」、「薬のお水を持ってくるから動かないでね」と声をかけ、患者の顔や表情を観察して、頷いたり、「大丈夫」などと答えたりするのを確認したうえでその場を離れた。13:00椅子坐位での姿勢保持リハビリが約2時間経過。「その姿勢で辛くないですか」との問いに患者は「大丈夫」と答えた。13:10午後の検査予定をナース・ステーションで確認するため、「動かないようにしてね」と声をかけ、廊下を隔て斜め向かい、数メートル先のナース・ステーションへ向かった。その直後、背後でガタンという音がし、患者は床に仰向けで後ろ側に転倒。ただちに看護師が駆けつけると、頭をさすりながらはっきりした口調で「頭打っちゃった」と返答。ところが意識レベルは徐々に低下、頭部CTスキャンで急性硬膜下血腫と診断し、緊急開頭血腫除去術を施行。9月24日20:53死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張1.予見可能性坐位保持リハビリテーションはまだ2日目であり、長時間のリハビリテーションは患者にとって負担になることが予見できた。さらに場所についての見当識障害があるため、リハビリテーション中に椅子から立ち上がるなどの危険行動を起こして転倒する可能性は予見できた2.結果回避義務違反病院側は下記のうちのいずれかの措置をとれば転倒を回避できた(1)リハビリテーション中は看護師が終始付き添う(2)看護師が付添いを中断する際、リハビリテーションを中断する(3)長時間の坐位保持のリハビリテーションを回避する(4)車椅子や背丈の高い背もたれ付きの椅子を利用する、あるいは壁に近接して椅子を置くなど、椅子の後方に転倒しないための措置をとる(5)リハビリテーション中に立ち上がれないように、身体を椅子にベルトなどで固定する病院側(被告)の主張事故当時、患者は担当看護師と十分なコミュニケーションがとれており、「動かないようにしてね」という声かけにも頷いて看護師のいうことを十分理解し、その指示に従った行動を取ることができた。そして、少なくとも、担当看護師がナース・ステーションに午後の検査予定を確認しにいき戻ってくるまでの間、椅子坐位姿勢を保持するのに十分な状態であった。当時みられた見当識障害は場所についてのみであり、この見当識障害と立ち上がる動作をすることとは関係はない。したがって本件事故は予測不可能なものであり、病院側には過失はない。裁判所の判断1. 予見可能性事故当時、少なくとも看護師に挟まれた状態では自分で立っていることが可能であったため、自ら立ち上がり、または立ち上がろうとする運動機能を有していたことが認められる。そして、看護師の指示に対して頷くなどの行動をとったとしても、場所的見当識障害などが原因で指示の内容を理解せず、あるいはいったん理解しても失念して、立ち上がろうとするなどの行動をとること、その際に体のバランスを失って転倒するような事故が生じる可能性があることは、担当医師は予見可能であった。2. 結果回避義務違反転倒による受傷の可能性を予見し得たのであるから、担当医師ないし看護師は、テーブルを設置して前方への転倒を防ぐ方策だけではなく、椅子の後ろに壁を近接させたり、付添いを中断する時は椅子から立ち上がれないように身体を固定したり、転倒を防止するために常時看護師が付き添うなどの通常取り得る措置によって、転倒防止を図ることが可能であった(現に5kgの砂嚢2個を脚に乗せたテーブルを設置して前方への転倒防止策を講じていながら後方への転倒防止策は欠如していた)ので、医療行為を行う上で過失、債務不履行があった。2,949万の請求に対し、1,590万円の支払命令考察病院内の転倒事故はすべて医療過誤?今回の患者は、インスリンを使用するほどの糖尿病に加えて、糖尿病性網膜症による視力障害も高度であり、以前から脳梗塞を起こしていた比較的重症のケースです。そして、医師の許可なく服用したドイツ製の治療薬によって、顔面蒼白、嘔吐、左半身麻痺、てんかん発作を発症し、大学病院に緊急入院となりました。幸いにも発作はすぐに沈静化し、担当医師や看護師は何とか早く日常生活動作が自立するように、離床に向けた積極的なリハビリテーションを行ないました。このような中で起きたリハビリ用椅子からの転倒事故です。その直前の状況は、「ここはどこだっけ」といった場所に関する見当識障害はあったものの、担当医師や看護師とはスムーズに会話し、食事も自力で全量摂取していました。はたして、このような患者を担当した場合に、四六時中看護師が付き添って看視するのが一般的でしょうか。ましてや、看護師が離れる時は患者が転倒しないように椅子に縛り付けるのでしょうか?もし今回の転倒前にもしばしば立ち上がろうとしたり、病院スタッフの指示をきちんと守ることができず事故が心配される患者の場合には、上記のような配慮をするのが当然だと思います。しかし、今回の患者は、とてもそのような危険が迫っていたとはいえなかったと思います。ところが、判決では「場所に関する見当識障害」があったことを重要視し、この患者の転倒事故は予見可能である、そして、予見可能であるのなら転倒防止のための方策を講じなければならない、という単純な考え方により、100%担当医師の責任と判断しました。実際に転倒現場に立ち会わなかった医師の責任が問われているのですから、きわめて厳しい判決であると思いますし、このような考え方が標準とされるならば、軽度の認知症の患者はすべて椅子やベッドに縛り付けなければならない、などという極論にまで発展してしまうと思います。最近では、高齢者ケアにかかわるすべてのスタッフに「身体拘束ゼロ作戦」という厚生労働省の指導が行われていて、身体拘束は、「事故防止の対策を尽くしたうえでなお必要となるような場合、すなわち切迫性、非代替性、一時性の三つの要件を満たし、「緊急やむを得ない場合」のみに許容される」としています。確かに、身体拘束を減らすことは、患者の身体的弊害(関節拘縮や褥瘡など)、精神的弊害(認知障害や譫妄)、社会的弊害をなくすことにつながります。ところが実際の医療現場で、このような比較的軽症の患者に対し一時的にせよ(看護師が目を離す数秒~数十秒)身体拘束をしなかったことを問題視されると、それでなくても多忙な日常業務に大きな支障を来たすようになると思います。ただ法的な問題としては、「利用者のアセスメントに始まるケアのマネジメント過程において、身体拘束以外の事故発生防止のための対策を尽くしたか否かが重要」と判断されます。つまり、入院患者の「転倒」に対してどの程度の配慮を行っていたのか、という点が問われることになります。その意味では、患者側が提起した、(1)リハビリテーション中は看護師が終始付き添う(2)看護師が付添いを中断する際、リハビリテーションを中断する(3)長時間の坐位保持のリハビリテーションを回避する(4)車椅子や背丈の高い背もたれ付きの椅子を利用する、あるいは壁に近接して椅子を置くなど、椅子の後方に転倒しないための措置をとる(5)リハビリテーション中に立ち上がれないように、身体を椅子にベルトなどで固定するという主張も(若干の行き過ぎの感は否めませんが)抗弁しがたい内容になると思います。事故後の対応そのような考え方をしてもなお、このケースは不可抗力という側面が強いのではないかという印象を持ちます。今回事故が起きたのは大学病院であり、それなりに看護計画もしっかりしていたと思いますし、これが一般病院であればなおさら目の行き届かないケースがあり、事故発生のリスクはかなり高いと思います。そして、今回のケースが院内転倒事故に対する標準的な裁判所の判断になりますので、今後転倒事故で医事紛争にまで発展すると、ほとんどのケースで病院側の過失が認められることになるでしょう。とはいうものの、同様の転倒事故で裁判にまでいたらずに解決できるケースもあり、やはり事故前の対策づくりと同様に、事故後の対応がきわめて重要な意味をもちます。まずは入院時に患者および家族を教育し理解を得ることが肝心であり、転倒が少しでも心配されるケースにはあらかじめ家族にその旨を告知し、病院側でも転倒の可能性を念頭に置いた対応を行うことが望まれます。と同時に、高齢者を多く扱う施設では賠責保険を担当する損害保険会社との連携も重要でしょう。たとえば、小さな子供を扱う保育園や幼稚園では、子供同士がぶつかったり転倒したりなどといった事故が頻繁に発生します。その多くがかすり傷程度で済むと思いますが、中には重度の傷害を負って病院に入院となるケースもあります。そのような場合、保護者から必ずといって良いほど園の管理責任を問うクレームがきますが、保母さんにそこまで完璧な対応を求めるのは困難ではないかと思います。そこで施設によっては、治療費や慰謝料を「傷害保険」でまかなう契約を保険会社と交わして事故に備えるとともに、場合によってはその保険料を家族と折半するなどのやり方もあると思います。このような方法をそのまま病院に応用できるかどうかは難しい面もありますが、結局のところ最終的な解決は「金銭」に委ねられるわけですから、「医療過誤」ではなく不慮の傷害事故として解決する方が、無用なトラブルを避ける意味でも重要ではないかと思います。リハビリテーション科

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てんかん薬によりADHD児の行動が改善:山梨大学

 抗てんかん薬治療による脳波(EEG)改善と、注意欠陥多動性障害(ADHD)児における行動改善が高い関連を示す可能性が、山梨大学小児科助教の金村 英秋氏らによる検討の結果、報告された。ADHD児46例を対象とした検討で、34.8%にEEGの突発性異常(PA)が認められたが、そのうち62.5%がバルプロ酸ナトリウム治療後にEEGの改善を示し、前頭部PAの頻度とADHD評価スケール改善との間に高い関連性があったという。Epilepsy & Behavior誌オンライン版2013年4月17日号の掲載報告。 研究グループは、ADHDとPAの両方を有する小児における神経心理学的障害と突発性EEG異常、バルプロ酸ナトリウムによる治療との関連を調べることを目的とした。神経心理学的障害は、機能の全体的評価(GAF)とADHD評価スケール(ADHD-RS)を用いて行われた。PAについてはスパイク発生頻度を測定してスコア化された。被験者は、ADHDを有するが明らかなてんかんはみられなかった小児で、2003年4月1日~2008年3月31日の間に集められた46例を対象とした。 主な結果は以下のとおり。・小児の被験者46例のうち、16例でPAが認められた。そのうち3例はEEGのフォローアップが不可能となり除外された。・前頭部PAを有した8例のうち5例で、またローランド領域でPAを有した5例のうち3例で、バルプロ酸ナトリウム治療後にEEGが改善した。・両方の評価で改善を示した患者のうち、83.3%が前頭部PAを有していた患者であった一方、ローランド領域PAを有していた患者では16.7%のみであった。・前頭部PAを有していた患者はローランド領域PAを有していた患者と比べて、PA頻度とADHD-RSの改善に有意に高い関連がみられた。・ADHD患児に関する本検討において、抗てんかん薬治療によるEEG改善は、ADHD-RSおよびGAFスコアによって示される行動改善と高い関連がみられた。・しかし、本検討は住民ベースの研究ではなく、ADHDにPAを検出し治療することの相対的重要度については未検討のままである。関連医療ニュース ・自閉症、広汎性発達障害の興奮性に非定型抗精神病薬使用は有用か? ・ADHDに対するメチルフェニデートの評価は? ・双極性障害とADHDは密接に関連

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妊娠中のバルプロ酸使用、子どもの自閉症リスクが増大/JAMA

 妊娠中の母親が抗てんかん薬バルプロ酸(商品名:デパケンほか)を使用すると、子どもの自閉症スペクトラム障害および小児自閉症のリスクが上昇することが、デンマークAarhus大学病院のJakob Christensen氏らの検討で明らかとなった。妊娠中の抗てんかん薬の使用により子どもの先天性奇形や認知発達遅滞のリスクが上昇することが示されているが、他の重篤な神経心理学的異常のリスクについてはほとんど知られていないという。バルプロ酸は妊娠可能なてんかん女性にとって唯一の治療選択肢となる場合がある一方で、出生前の胎児が曝露すると自閉症のリスクが増大する可能性が指摘されていた。JAMA誌2013年4月24日号掲載の報告。出生前バルプロ酸曝露と自閉症リスクの関連をコホート試験で評価 研究グループは、出生前のバルプロ酸曝露が子どもの自閉症リスクに及ぼす影響を評価する地域住民ベースのコホート試験を実施した。 デンマークの住民登録システムのデータを用いて、1996年1月1日~2006年12月31日までにデンマークで生産児として出生したすべての新生児を調査した。母親の妊娠中にバルプロ酸に曝露した子どもおよび自閉症スペクトラム障害[小児自閉症(自閉性障害)、アスペルガー症候群、非定型自閉症、その他または特定不能の広汎性発達障害]と診断された子どもを同定した。 データはCox回帰モデルを用いて交絡因子(妊娠時の両親の年齢、両親の精神医学的病歴、妊娠期間、出生時体重、性別、先天性奇形、経産回数)の調整を行った。子どものフォローアップは出生から自閉症スペクトラム障害の診断、死亡、国外への転出、2010年12月31日のいずれかまで行った。自閉症スペクトラム障害のリスクが約3倍、小児自閉症は約5倍に 調査期間中に65万5,615例の生産児が確認され、2,067例の小児自閉症を含む5,437例の自閉症スペクトラム障害の子どもが同定された。フォローアップ終了時の子どもの平均年齢は8.84(4~14)歳だった。 14年のフォローアップが行われ、推定絶対リスクは自閉症スペクトラム障害が1.53%(95%信頼区間[CI]:1.47~1.58)、小児自閉症は0.48%(95%CI:0.46~0.51)であった。 バルプロ酸曝露小児508例における推定絶対リスクは自閉症スペクトラム障害が4.42%(95%CI:2.59~7.46)(調整ハザード比[HR]:2.9、95%CI:1.7~4.9)、小児自閉症は2.50%(95%CI:1.30~4.81)(調整HR:5.2、95%CI:2.7~10.0)であった。 てんかん女性から生まれた子ども6,584例のうち、バルプロ酸非曝露群(6,152例)の推定絶対リスクは自閉症スペクトラム障害が2.44%(95%CI:1.88~3.16)、小児自閉症は1.02%(95%CI:0.70~1.49)であったのに対し、バルプロ酸曝露群(432例)ではそれぞれ4.15%(95%CI:2.20~7.81)(調整HR:1.7、95%CI:0.9~3.2)、2.95%(95%CI:1.42~6.11)(調整HR:2.9、95%CI:1.4~6.0)と、有意な関連が認められた。 著者は、「妊娠中の母親のバルプロ酸の使用により、子どもの自閉症スペクトラム障害、小児自閉症のリスクが有意に上昇し、母親のてんかんで調整後もリスクの有意な上昇が維持されていた」とまとめ、「てんかんのコントロールにバルプロ酸を要する妊娠可能女性では、治療のベネフィットとリスクのバランスを十分に考慮する必要がある」と指摘している。

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てんかんと寄生虫感染との関連説を確認

 システマティックレビューとメタ解析の結果、線虫オンコセルカ(回旋糸状虫)の寄生虫感染によるオンコセルカ症と、てんかんとの関連説を支持する知見が得られたことを、ウガンダ・Basic Health Services Kabarole & Bundibugyo DistrictsのChristoph Kaiser氏らが発表した。未治療者における小結節の触診とミクロフィラリア数で定義する感染の強度が、てんかんの病因に関与していることが確認されたという。PLoS neglected tropical diseases誌3月号(オンライン版3月28日号)の掲載報告。 研究グループは、オンコセルカ症とてんかんとの関連について入手可能なすべてのケースコントロール試験を対象にシステマティックレビューとメタ解析を行うことを目的とした。感染に関して年齢および居住地域の感染レベルが重要な規定因子となることを踏まえて、追加解析を行い、これら交絡因子の調整を満たした試験に限定した。文献の検索は2012年5月までにアップされたものについて、African Neurology Database、Institute of Neuroepidemiology and Tropical Neurology、Limogesの医学データベース、および参考文献リスト、商用検索エンジンにて行った。てんかんを有する患者(PWE)と有さない患者(PWOE)におけるオンコセルカ症の感染状態を調べており、ランダムエフェクトモデルを用いたプールオッズ比(ORp)、標準化平均差(SMD)が算出可能なデータを提示している試験報告を適格とした。 主な結果は以下のとおり。・解析には、オンコセルカ症の診断について定量的皮膚生検データを提示していた11試験を特定し組み込んだ。・総サンプル(PWE患者876例、PWOE患者4,712例)の複合解析の結果、ORpは2.49(95%CI:1.61~3.86、p<0.001)であった。・年齢、居住者、性について調整していた試験に限定した解析(PWE患者367例、PWOE患者624例)においては、ORpは1.29(95%CI:0.93~1.79、p=0.139)であった。・オンコセルカ症の診断で小結節を評価していたのは4試験で(PWE患者225例、PWOE患者189例)、ORpは1.74(95%CI:0.94~3.20、p<0.076)であった。限定解析に組み込まれたのは2試験で(PWE患者106例、PWOE患者106例)、ORpは2.81(95%CI:1.57~5.00、p<0.001)であった。・ミクロフィラリア未治療の患者についてミクロフィラリア数を調べていたのは1試験であり、PWOE患者よりもPWE患者のほうが有意に数量が高値であった。関連医療ニュース ・てんかん患者、脳内ネットワークの一端が明らかに ・抗てんかん薬の長期服用者、80%が骨ミネラル障害 ・検証!抗てんかん薬の免疫グロブリン濃度に及ぼす影響

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セロトニンが重要な役割を果たす!うつ病合併側頭葉てんかん

 アイルランド国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)のAshley Martinez氏らは、うつ病を合併した側頭葉てんかんにおける5-HTトランスポーターと5-HT1A受容体の機能について検討を行った。その結果、これらの患者ではセロトニン再取り込みが低下し、シナプス5-HTのアベイラビリティが増加している状況が推察され、5-HTTと5-HT1A受容体が相補的に機能している可能性が示唆されたという。著者は、「セロトニン作動性神経の機能変化は、うつ病を併発している側頭葉てんかんにおいて重要な役割を果たしていると考えられる」と結論している。Neurology誌オンライン版2013年3月20日号の掲載報告。 本研究では、うつ病を合併した側頭葉てんかんにおける5-HTトランスポーターと5-HT1A受容体の機能を検討することを目的とした。うつ病を合併した側頭葉てんかん患者13例を対象に、5-HTT(5-HTトランスポーター)測定用のリガンド[11C]DASB および5-HT1A受容体測定用のリガンド[18F]FCWAYを用いたPET検査、MRI検査および精神状態の評価を行った。また、健常者を対象に、[11C]DASBによるPET検査を16例、[18F]FCWAYによるPET検査を19例、[11C]DASBと[18F]FCWAYの両方を用いたPET検査を6例に施行した。参照組織モデルを用いて、[11C]DASB結合能を推定。[18F]FCWAYの分布容積は、血漿遊離分画で補正した。画像データは同一の脳形態にそろえ、解剖学的標準化を行った。主要アウトカムは、領域の非対称性(asymmetry index)とした。非対称性が認められる場合は、同側焦点への結合能(トランスポーターの活性を反映)が相対的に低下していることを意味した。 主な結果は、以下のとおり。・患者と健常者の間で、領域における[11C]DASB 平均結合能および非対称性に違いはみられなかった。・患者は健常者に比べ、海馬、扁桃核、紡錘状回における[18F]FCWAYの非対称性が有意に大きかった。・反復測定による領域のバリアンス解析により、「うつ病」の存在が[11C]DASBの非対称性に対し有意な影響を及ぼしていることがわかった。すなわち、「うつ病」がある場合、島皮質における[11C]DASBの非対称性は有意に大きく、紡錘状回においては非対称性が大きくなる傾向がみられた。・患者では、島皮質における[18F]FCWAYならびに[11C]DASBの非対称性に有意な関連が認められた。・側頭葉てんかんとうつ病を併発している患者では、側頭葉てんかんのみを有する患者に比べ、島皮質および紡錘状回における[11C]DASBの非対称性が大きく、トランスポーター活性が相対的に低下していることが示された。これは、セロトニン再取り込みが低下し、シナプス5-HTのアベイラビリティが増加していることを示唆すると考えられた。関連医療ニュース統合失調症の発症に、大きく関与する遺伝子変異を特定ベンゾジアゼピン系薬物による認知障害、α1GABAA受容体活性が関与の可能性グルタミン酸トランスポーター遺伝子と統合失調症・双極性障害の関係

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てんかん薬の長期服用者、80%が骨ミネラル障害

 難治性てんかんで抗てんかん薬を長期服用する患者における、骨粗鬆症など骨ミネラル障害の有病率が報告された。オランダ・マーストリヒト大学医療センターのK. Beerhorst氏らが同患者を対象に行った断面調査の結果、80%が低骨塩量(BMD)症状を有していたという。またそのうち半数超が50歳未満であった。著者は「本研究は、慢性てんかん患者における骨ミネラル障害の問題が大きいことを実証している」と結論している。Acta Neurologica Scandinavica誌オンライン版2013年3月6日号の掲載報告。 抗てんかん薬の長期服用と、低BMD、骨折、骨代謝異常との関連は知られているが、研究グループは、同薬を服用する難治性てんかん患者における骨ミネラル障害の有病率を明らかにすることを目的に断面調査を行った。被験者は、重度てんかん医療センターの1病棟から集めた成人患者205例であった。骨ミネラル障害は、脊椎と大腿骨部の二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)スキャンによるスクリーニング(骨塩量と脊椎骨折の評価など)とラボ検査により解析した。被験者の人口統計学的情報やてんかん症状および医療情報などを記録し、DXA-Tスコアに基づき、骨ミネラル障害(骨減少症、骨粗鬆症)の割合を算出した。DXA-Tスコアと、てんかん尺度との相関性についても調べた。 主な結果は以下のとおり。・被験者205例のうち10例が途中脱落し、195例について解析した。・被験者のうち80%(156/195例)に低BMDが認められた。骨減少症を有していたのは48.2%、骨粗鬆症は31.8%に認められた。・低BMD患者のうち、51.9%(81/195例)は18~50歳であった。・大腿骨頚部のTスコアは、てんかん発作の総期間、薬物負荷の累積、骨折の病歴と有意な関連性がみられた。・線形回帰分析の結果、薬物負荷の累積だけが大腿骨頸部Tスコアの低値を有意に予測した(p=0.001)。関連医療ニュース ・てんかん患者の50%以上が不眠症を合併! ・統合失調症患者は“骨折”しやすいって本当? ・「頻発する腰痛」と「頭痛」の関係

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ブプロピオンで統合失調症患者の禁煙達成!?

 統合失調症患者では一般集団と比べて喫煙率が高く、喫煙関連の疾患の罹病率や死亡率が高い。一方で、喫煙率を低下させるために、どのような介入が効果的であるかは不明なままである。英国・Nottinghamshire Healthcare NHS TrustのDaniel T. Tsoi氏らによるシステマティックレビューの結果、ブプロピオンが精神状態への影響を及ぼすことなく禁煙達成率を高められることが示された。また、バレニクリンも禁煙達成率の改善が期待できるが、精神状態への有害な影響が除外できず、また、禁煙したら報酬を与えるといった強化随伴性(contingent reinforcement:CR)の介入は、短期的効果が期待できそうであった。その他にはエビデンスが確かな効果的な介入は見いだせなかったと報告している。Cochrane database of systematic reviewsオンライン版2013年2月28日掲載の報告。 MEDLINE、EMBASE、PsycINFO(いずれもサービス開始から2012年10月まで)とCochrane Tobacco Addiction Group Specialized Register(2012年11月)にて、禁煙または減煙に関する無作為化試験を検索した。統合失調症または統合失調感情障害を呈する成人患者について、あらゆる薬物・非薬物治療とプラセボまたはその他の治療を比較した試験を適格とし、2人の独立レビュワーが試験の適格性と質を評価してデータ抽出を行った。解析の評価項目は、禁煙達成(禁煙)、総喫煙量の減少(減煙)、あらゆる精神状態の変化とした。禁煙、減煙については、治療終了時と介入終了後6ヵ月時点のデータを抽出した。また同定義については最も厳格なものを用い、入手したデータは生化学的検証を行った。有害事象についてはあらゆる報告に注意を払い、また必要に応じてランダムエフェクトモデルも用いられた。 主な結果は以下のとおり。・レビューには、34試験(禁煙試験16件、減煙試験9件、再喫煙予防試験1件、喫煙についてのアウトカムが報告されていた他の目的での試験8件)が組み込まれた。・ブプロピオンとプラセボを比較した試験(7件)のメタ解析の結果、ブプロピオン治療後の禁煙率がプラセボより有意に高かった。 治療終了時の評価(7試験・340例) リスク比(RR):3.03、95%CI:1.69~5.42 6ヵ月後の評価(5試験・214例) RR:2.78、95%CI:1.02~7.58・また両群間に、陽性・陰性症状また抑うつ症状について有意差はみられなかった。・ブプロピオン群において、てんかん発作のような重大な副作用の報告はなかった。・バレニクリンもプラセボと比較して、治療後の喫煙率が有意に高かった。 治療終了時の評価(2試験・137例) RR:4.74、95%CI:1.34~16.71 6ヵ月後の評価(1試験のみで128例、CIもエビデンスに乏しい) RR:5.06、95%CI:0.67~38.24・精神症状に関してバレニクリン群とプラセボ群には、有意な差はみられなかったが、バレニクリン群の2人で希死念慮と自殺関連行動がみられた。・金銭(money)の強化随伴性(CR)を検討していた試験(2件)の解析の結果、禁煙率の上昇と喫煙量の低下の可能性があったが、これが長期に持続するかどうかは不明であった。・統合失調症患者に対する、その他の薬物治療(ニコチン補充療法など)や、禁煙・減煙支援のための心理社会的な介入の試験はほとんどなく、有用性についてのエビデンスは得られなかった。■「ブプロピオン」関連記事禁煙補助薬として抗うつ薬は有用なのか

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摂食障害、成人期と思春期でセロトニン作動系の特徴が異なる!

 摂食障害の発症にセロトニン作動系が関与していることは、確立した知見である。ただし、これまでの血小板セロトニン・トランスポーターに関する研究で示されている結論は、平均年齢20歳以上の患者を対象とした検討結果に基づくものであった。スウェーデン・ウメオ大学のJeanette Sigurdh氏らは、思春期の摂食障害患者におけるセロトニン作動系の関わりについて検討した。その結果、成人患者で得られている知見とは異なり、思春期の患者では同年代の健常対照と比べ血小板セロトニン・トランスポーター密度が高く、5-HT2A受容体密度が低いことを報告した。International Journal of Neuroscience誌オンライン版2013年2月19日号の掲載報告。 本研究での目的は、成人の摂食障害患者における従来の知見が、摂食障害を発症してまもない思春期の患者にも当てはまるかどうかを検討することである。摂食障害を認める思春期女性15例(神経性無食欲症11例、神経性無食欲症の基準を満たさないものの、明らかに拒食症の摂食行動を示す患者4例)ならびに健常対照32例を対象とし、血小板セロトニン・トランスポーターに結合する[3H]パロキセチンおよび5-HT2A受容体に結合する[3H]リゼルグ酸ジエチルアミド([3H]LSD)について検討を行った。主な結果は以下のとおり。・摂食障害患者におけるセロトニン・トランスポーター密度は、同年齢の健常対照に比べて有意に高かった([3H]パロキセチン結合タンパク:775±165 vs. 614±111 fmol/mg、p=0.003)。・摂食障害患者における5-HT2A受容体密度は、同年齢の健常対照に比べて有意に低かった([3H]LSD結合タンパク:215±59 vs. 314±151 fmol/mg、p=0.005)。・これら血小板セロトニン・トランスポーター密度の増加、5-HT2A受容体密度の低下は、成人患者で示されている結果とは異なるものであった。・結果が異なった要因として、本研究の被験者(低年齢で罹病期間が短い)における、ストレスに関連する精神的および生物学的要因の多様性が考えられる。・既知の知見とは異なるものであったが、本結果は摂食障害におけるセロトニン作動性要因に関わる情報の厚みを増し、本疾患におけるセロトニン作動系の制御に患者特性および経過に関連する因子が影響を及ぼす可能性を示唆するものである。関連医療ニュース ・EPA/DHAはADHD様行動を改善する可能性あり? ・摂食てんかんの特徴が明らかに ・双極性障害とADHDは密接に関連

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てんかん患者、脳内ネットワークの一端が明らかに

 てんかん症状を呈する脳内ネットワークの特性の一端が明らかにされた。チェコ共和国・Central European Institute of TechnologyのIvan Rektor氏らが、てんかん患者と健常者の脳内を機能的MRIにて比較検証した結果で、てんかん患者では脳中央部にある被殻と表面部にある皮質との機能的結合(FC)が阻害されていることが明らかになったという。Rektor氏は「このことが大脳基底核(BG)機能の変質に反映している可能性がある」と示唆した。Brain Topography誌オンライン版2013年2月12日号の掲載報告。 てんかんは、安静時においても被殻と皮質の間の結合性に影響を及ぼす可能性が指摘されていた。被殻は、大脳基底核安静時ネットワーク(BG-RSN)の一部であり、健常被験者ではデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)と逆相関の関連がみられる。研究グループは、DMNに関与する皮質領野である被殻、およびBG-RSNに関与する皮質領野の主要な体運動性皮質における、脳の機能的結合を調べることを目的とした。てんかんを有する患者と健常対照者の入手データを用いて比較した。 主な解析手順、結果は以下のとおり。・てんかん患者24例(外側頭葉てんかん14例、側頭葉てんかん10例)と健常対照者10例について、機能的MRI(fMRI)を行った。・1.5 T Siemens Symphonyスキャナーを用いて安静時fMRIデータを入手し、独立的成因分析のためにGroup ICA of fMRI Toolbox(GIFT)プログラムを用いて解析した。被殻と主要な体運動性皮質との機能的結合について、BG-RSN内の被殻の結合性を評価した。・また第2レベル解析では、SPMソフトウエアを使用しグループ間の差異を評価した。・てんかん患者では健常対照者と比較して、DMNでの被殻と脳領域との逆相関性が有意に低かった。・相関性は、健常対照者では陰性方向へと結びつくものであったが、外側頭葉・側頭葉てんかん患者では陽性方向への結びつきがみられた。・てんかん患者の大脳基底核の機能的結合の阻害は、健常対照者と比較して、左右の被殻と左右の体運動性皮質との結合性、すなわちBG-RSNに関与している部位との結合性が有意に減少していることによって例証された。関連医療ニュース ・側頭葉てんかんでの海馬内メカニズムの一端が明らかに ・摂食てんかんの特徴が明らかに ・妊娠可能年齢のてんかん女性にはレベチラセタム単独療法がより安全?

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結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫の治療に新たな選択肢

 結節性硬化症は、遺伝子(TSC1、TSC2)の異常により、全身に良性の腫瘍が形成され、それに伴い、さまざまな症状が引き起こされる遺伝性の希少疾患である。胎児期から成人まで、年齢に応じて特徴的な腫瘍がさまざまな部位に発生するため、それぞれの腫瘍に対してすべて1つの科で診療することはできず、小児から成人に至る過程で発生する腎血管筋脂肪腫などを見逃す可能性がある。その現状と課題について、ノバルティス ファーマ メディアフォーラム(2013年2月26日開催)にて、大阪大学泌尿器科 教授 野々村 祝夫氏が講演した。その内容をレポートする。■結節性硬化症は症状の個人差が大きい 結節性硬化症は、脳(上衣下巨細胞性星細胞腫、脳室上衣下結節、大脳皮質結節、てんかん発作、発達遅延、自閉症など)、眼(網膜過誤腫)、心臓(心横紋筋腫)、肺(肺リンパ脈管筋腫症など)、腎臓(腎血管筋脂肪腫、腎嚢胞など)、皮膚(白斑、顔面血管線維腫など)など、全身性に腫瘍が形成され、さまざまな症状が現れる疾患である。潜在患者数は、日本では1~2万人とされる。問題となる症状の発症時期は年齢期ごとに異なり、心臓や脳の腫瘍は10歳未満、腎臓の腫瘍は10~40歳、肺の腫瘍は20歳以上に注意する必要がある。また、症状の個人差が大きく、多くの症状が現れる場合もあれば、生涯を通じて症状が現れない場合もある。 これまで対症療法しかなかったこれらの腫瘍のうち、腎血管筋脂肪腫と上衣下巨細胞性星細胞腫に対して、2012年11月、mTOR阻害薬であるエベロリムス(商品名:アフィニトール)が承認された。■結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫の治療 腎血管筋脂肪腫は浸潤・転移をしない良性腫瘍であるが、次第に大きくなること、出血などのさまざまな症状が出現すること、腎機能が低下することが問題となる。腫瘍径が4cmを超えると出血や側腹部痛などの臨床症状が呈することが多く、また、破裂した腫瘍は4cmをすべて超えていたという報告がある。 腎血管筋脂肪腫のマネージメントの基本方針は、腎機能を温存しつつ出血のリスクを減らすことであり、出血した場合は速やかに止血する必要がある。 治療は、腫瘍径が4cm以上であれば症状が出る前に予防的に、4cm未満なら症状が出てから行う。この治療介入の必要性を判断するために、野々村氏は、定期的なモニタリングの重要性を指摘した。治療には、血管内治療である塞栓術と手術(腎摘、腎部分切除)が施行されている。塞栓術は効果的でよく施行されるようになってきたが、壊死に伴う発熱や痛みなどの合併症や、再発(約30%)の問題がある。■薬物治療が治療選択肢の1つに このような状況のなか、昨年、初めて薬物治療としてエベロリムスが承認され、新たな選択肢が加わった。結節性硬化症においては、TSC1またはTSC2遺伝子の変異によりmTORの活性を制御するTSCタンパクが抑制され、mTORが過剰に活性化することにより腫瘍の形成や症状が発生する。エベロリムスはmTOR活性を阻害することにより、腫瘍の増大や症状を抑制する。 結節性硬化症あるいは孤発性リンパ脈管筋腫症における腎血管筋脂肪腫患者に対するエベロリムスの効果をプラセボと比較したEXIST-2試験では、エベロリムス群(79例、うち日本人7例)の奏効率が41.8%(95%信頼区間:30.8~53.4)と、プラセボ群(39例、うち日本人3例)の0%(95%信頼区間:0.0~9.0)に対して、有意(p<0.0001)に高い結果が得られた。 有害事象は、口内炎、ざ瘡、高コレステロール血症などがエベロリムスに特徴的であり、これまでの忍容性プロファイルと一致していた。また、野々村氏は、22歳女性の症例で腫瘍の縮小とともに自閉症の症状も改善したことを紹介し、結節性硬化症の他の症状にも効果が期待できることを示した。■どのように組み合わせて治療するかが課題 結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫の今後の治療戦略として、野々村氏はまず、4cm以上の腫瘍では症状がなくても、動脈瘤などからの出血リスクが高い場合には、エベロリムスあるいは塞栓術による積極的治療を実施することを提唱し、どちらを先に行うかはこれから解決すべき課題であると述べた。また、4cm以下の腫瘍でも症状があれば、エベロリムスあるいは塞栓術による何らかの治療が必要であり、手術は、塞栓術あるいはエベロリムスが無効な場合に考慮するとした。 一方、エベロリムスが治療の選択肢に加わったとはいえ、課題として、長期投与のデータが乏しいこと、高価(約70万円/月)であること、投与方法に関する工夫の必要性などを挙げ、今後、実際の臨床の場で情報を出して行く必要があると述べた。 最後に野々村氏は、結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫の治療に薬物療法という選択肢が増えたが、今後、これをどのように組み合わせて治療していくか、課題として投げかけられていると述べ、講演を締めくくった。関連ページ ケアネット 希少疾病ライブラリ(毎週木曜日更新)

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てんかん患者の50%以上が不眠症を合併!

 てんかん患者では睡眠障害が頻繁にみられるものの、不眠症とてんかんとの関係はほとんど明らかとなっていない。ボストン大学のMartina Vendrame氏らは、てんかん患者における睡眠状態に関して調査した。Journal of clinical sleep medicine誌オンライン版2013年2月1日号の報告。 対象はてんかん患者152例(平均年齢:46歳)。目的は(1)てんかん患者における不眠症の有病率や程度を分析する(2)臨床的特徴と不眠症との相関を調査する(3)質の低い睡眠がQOLに及ぼす影響を検討する。調査項目は不眠重症度評定尺度、ピッツバーグ睡眠質問票、ベック抑うつ質問票、てんかん患者用QOL質問票(QOLIE-31)によるQOL評価とした。除外対象は閉塞性睡眠時無呼吸症候群など他の睡眠障害を有する患者。年齢、てんかんの罹病期間、抗てんかん薬の数、併存疾患、抑うつスコアで調整し、回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・てんかん患者の半数以上(55%)は不眠症であった。また、70%以上の患者は睡眠の質が低下していた。・不眠症や睡眠の質の低下は、抗てんかん薬の数や抑うつスコアと有意な相関が認められた。・不眠症や睡眠の質の低下は、QOL低下の有意な予測因子であった(共変量にて調整)。・これらの結果から、てんかん患者では、不眠症や睡眠の質の低下を有しており、QOLに悪影響を与えることが示唆された。・さらなる研究により、てんかん患者における睡眠の改善が発作のコントロールやQOL向上につながるかを検討する必要がある。関連医療ニュース ・検証!統合失調症患者の睡眠状態とは ・不眠症の人おすすめのリラクゼーション法とは ・睡眠薬、長期使用でも効果は持続

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摂食てんかんが食事中に起こる種々のメカニズムが明らかに

 摂食てんかん(Eating Epilepsy)は、食事摂取によりてんかん発作が誘発される反射性てんかんの一つであるが、その病態はまだ十分に認識されていない。今回、この摂食てんかんについて、大半が最初の誘発刺激から長い期間を経て発症し、治療抵抗性の経過をたどるという特徴があることが、トルコ・イスタンブール大学のUlgen Kokes氏らにより明らかにされた。Clinical EEG and Neuroscience誌オンライン版2013年2月6日号の掲載報告。摂食てんかんは食事中に種々のメカニズムを介して起こる 本研究では、摂食てんかんの特徴を明らかとするため、てんかん患者8,996例のカルテファイルをレトロスペクティブに調べた。その結果、摂食てんかん患者は6例のみ(0.067%)で認められた。男性が4例、女性が2例であり、年齢は20~63歳であった。 摂食てんかん患者6例に認められた所見は以下のとおり。・6例には焦点発作がみられ、大半が食事により誘発された認知不全または経験的前兆があり、自発性の発作であった。・全例で、初期にてんかん発作の誘発刺激(頭部/分娩時外傷または脳炎)があった。・4例は食事の途中または食事直後にてんかん発作が起こり、2例は食事開始時にてんかん発作が起きた。このことから、2つの異なる摂食てんかんメカニズムの存在が示唆された。・MRI所見は2例で正常であったが、その他の症例では異常がみられた。・脳波所見において、5例で左側頭領域の広い範囲で頻繁なスパイク(棘波)が認められ、1例は右側頭領域で同所見がみられた。また、左側頭に由来する発作が3例で記録された。・2例において、脳波所見とPET検査所見が一致していた。・1例を除き、治療抵抗性の経過をたどった。 ・以上より著者は、摂食てんかんの特徴を以下のようにまとめた。  ・頻度が少なく、きわめてまれである。  ・初期の誘発刺激から長い期間を経た後に起こる。  ・大半が認知不全または経験的前兆を伴い、通常、発作は左側頭領域に由来する。  ・多くが治療抵抗性の経過をたどる  ・食事中に種々のメカニズムを介して起こる。関連医療ニュース ・妊娠可能年齢のてんかん女性にはレベチラセタム単独療法がより安全? ・検証!抗てんかん薬の免疫グロブリン濃度に及ぼす影響 ・うつ病患者の食事療法、ポイントは「トリプトファン摂取」

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話せばわかる?通報する?“モンスターペイシェント”

“困った患者さん”を通り越して“モンスターペイシェント”なんて言葉さえ見られる昨今。法外な要求、目を剥くような行動、ついには暴力の果てに負傷、うつ状態に追い込まれる医師・スタッフも…。皆さんどうやって対処していますか?モンスター化させないコツは?医師1,000人から聞いた“モンスターペイシェント事情“、必見です!コメントはこちら今すぐできる対策はこちら結果概要7割近くの医師が“モンスターペイシェント”の対応経験あり、うち1割は『月に1度以上』全体で7割近くの医師がそうした患者・家族に対応した経験があり、勤務施設別では診療所の57.4%に比較して一般病院では70.7%という結果となった。頻度を尋ねたところ、うち7割強が『半年に1度』以下であったが、一方で『月に1度』以上との回答が1割、中には『週に2~3度以上』という医師も。治療費不払い、脅迫、暴力…「犯罪では?」「病院内では不当に軽く扱われることがある」内容として『スタッフの対応へのクレーム』が60.5%、『自分を優先した診察ほか待ち時間に関する要求・暴言』が47.1%、次いで『不要/過剰な投薬の要求』が37.6%と続く。『治療費の不払い』も3割に上り、「無銭飲食と同様に罪に問うべきだ」といったコメントも寄せられた。暴力を受けた経験があるとの回答は16.2%、脅迫に関しては27.6%に上った。また「個室での診察中に監禁された」といった声も。全体の16.2%が『警察OBを雇用』、担当者を定めない施設では医師個人に負担がそうした患者への最終的な対応として、3人に1人が『以後の診察を拒否した』と回答。次いで『転院させた』『担当医を交代した』と続く。警察への連絡に関しては『出動を要請した』16.4%、『相談した』11.5%となった。一方『特に対応をとったことがない』との回答は22.5%。「キャリアの浅い頃は、怖さのあまりに従ってしまったことがあった」といった声も。その他、施設内で通常取られている対策としては『担当者を決めている』が最も多く約3割に上った。次いで『対応マニュアル』『事例の共有』と続く。『警察OBを雇用している』の回答は16.2%であり、その存在は非常に有効との声が多かった。担当者を定めず医師・スタッフ個人の対応に任せている施設においては「対応に疲れ果てうつ病になった」「退職した」といった経験談が寄せられ、個人ではなく施設としての対応が必要だとのコメントも複数見られた。設問詳細医療従事者や医療機関に対して、自己中心的で理不尽な要求、果ては暴言・暴力を繰り返す患者や、その保護者・家族等を指し、「モンスターペイシェント」といった言葉が使われることがあります。そこで先生にお尋ねします。Q1.患者・家族から暴言・暴力、その他“通常の域を超えている、診察に著しく影響を及ぼすレベル”の行動・要求・クレームを受けたことがありますか。あるない(Q1で「ある」と回答した方のみ)Q2.その内容について当てはまるものを全てお答え下さい。(複数回答可)診察をしないで投薬のみ要求する不要な投薬・過剰な投薬を要求する自分を優先した診察ほか、待ち時間に関する要求・暴言を吐く「空いている」などの理由で、時間外・夜間診療を繰り返すスタッフの対応が気に食わない、とクレームをつける治療法・薬剤を指定するなど、自分の見立てを強硬に主張する事実と異なることを吹聴して回る検査・診察・食事・内服等を拒否する治療費・入院費を払わない入院を強要する退院を拒否する土下座ほか度を越した謝罪を要求する「訴える」「刺す」「暴力団関係者を連れてくる」「マスコミに流す」などと脅迫するご自身・スタッフに暴力を振るうその他(Q1で「ある」と回答した方のみ)Q3.上記のような患者・家族への対応に関しご経験があるものをお答え下さい。(複数回答可)他の医師と担当を交代した転院させた以後の診察を拒否した弁護士・司法書士等に相談した警察に相談した警察に通報した、出動を要請した患者の対応に参って体調を崩した退職したその他特に対応をとったことがない(Q1で「ある」と回答した方のみ)Q4.上記のような患者・家族に遭遇する頻度について最も近いものをお答え下さい。週に2~3度以上週に1度半月に1度月に1度2~3ヶ月に1度半年に1度1年に1度それ以下Q5.院内で設けられている対応策について当てはまるものをお答え下さい。(複数回答可)対応マニュアルがある対策システムがある防犯・対策セミナーを実施している院内で事例を共有している対応担当者を決めている担当部署を設置している警察OBを雇用している弁護士・司法書士に相談する体制をとっている「警察官立寄所」のステッカー・看板を掲げているICレコーダー・カメラ等を設置しているその他    (               )特に対応策をとっていないQ6.コメントをお願いします(具体的なエピソードや解決方法、対策ノウハウ、院内の体制などなんでも結構です)2013年2月12日(火)~13日(水)実施有効回答数1,000件調査対象CareNet.com会員コメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「混雑時に自分だけ早く診ろ、と要求して来るケースが多い。」(40代,呼吸器科,一般病院)「女性医師というだけで高飛車な態度をとる患者さんがおられます。自分で対応しようとしても困難な場合もあり、その時は患者さんが興奮して手がつかなくなる前に他の職員に助けを求めます。」(40代,その他,大学病院)「一般なら暴行罪や脅迫罪なのに、病院内だと不当に軽く扱われることがある。」(40代,内科,一般病院)「警察OB,弁護士の関与は有効だと思います。患者の度を超えたクレームは警察OBの立ち合いで、殆ど問題化しません(患者の言いがかりの場合)。」(50代,外科,大学病院)「モンスターペイシェントの対応に心身ともに疲れはて、うつ病になってしまい半年間入院しました。」(40代,内科,一般病院)「今後医師は、モンスターペイシェントに対する対応を必須講座として受講すべきだと思う。」(70代以上,内科,一般病院)「セクハラの要素もあるが、循環器内科であるにもかかわらず局所を出して『腫れているので触ってくれ』となんども強要する。毎週土曜日に遠方からやってくる。事務長に泌尿器科に行くよう指示してもらったが、今度は看護師に座薬、浣腸を強要するので、こわもての男性薬局長にきてもらい浣腸してもらったら、二度と来なくなった。」(40代,循環器科,診療所・クリニック)「厄介なのは身内が次々と来て同じ説明を求める家族です。 最後は長男を代表者と決めて1回だけにしました。」(50代,循環器科,診療所・クリニック)「医療安全対策室で対応してもらうようになっています。」(70代以上,外科,一般病院)「本当にモンスターだらけで、善意が消えていくのが分かります」(30代,内科,一般病院)「特に自分が被害をこうむったことはないが、対象事例が起こった場合は全館放送で起こったことを知らせ、対処することとなっている。」(40代,整形外科,一般病院)「まず十分に言いたい事を相手がもう疲れたというまで黙って傾聴する。時々『そうですか…』と言いつつメモしたりし、『今までのことは一応録音してますが一緒に聞き直して間違いないか確認していきましょうか』と伝えると大体お帰りになられる。」(40代,内科,診療所・クリニック)「とにかくすぐ医師会の顧問弁護士に相談して、初期対応のアドバイスをもらう。」(50代,内科,診療所・クリニック)「モンスターペイシェントに対してほとんどの病院は弱腰である。もっと毅然とした対応をすべきである。治療費不払いなどは無銭飲食と変わらないので即警察に通報すべきだ。」(40代,整形外科,一般病院)「30年医師をしているが、自分にはモンスターペイシェントの経験はない。丁寧に対応すれば問題となるような事態は起きないと思う。」(50代,内科,診療所・クリニック)「モンスターなどという曖昧な表現ではなく、 暴行、脅迫、業務妨害、食い逃げならぬ不払い、 詐欺等々、積極的に警察と連携し、刑事及び民事で罪に問うべきであり、 医療機関間で情報共有し、診療不可として出入り禁止にすべき」(40代,内科,一般病院)「精神科の病院とクリニックなので,モンスターなのか精神障害かの区別は難しい」(60代,精神・神経科,一般病院)「危険が予測される場合には、眼鏡やポケットの中身などを外すようにしています。」(30代,精神・神経科,一般病院)「小児科なのでモンスターペアレントが多いです」(40代,小児科,一般病院)「俺の言うとおりの薬だけを出せと強要する。血圧を測ろうとすると断固拒否する。」(60代,内科,診療所・クリニック)「公立病院に勤務しておりますが、モンスターペイシェントを警察に届けた例を見たことがありません。どの程度で届出をしたほうがいいのか。その際の罪の重さはどの程度なのか。」(50代,内科,一般病院)「変な権利意識が強くなってきて、増えているような印象 病院をホテルとかのサービス業と勘違いしている人も増えている」(40代,循環器科,一般病院)「逃げ場のない個室で診察しているときに、監禁されたことあり。 逃げられるドアのある部屋で診察するようにしている」(40代,内科,診療所・クリニック)「脅迫を受けましたが謝ることはしませんでした」(50代,内科,診療所・クリニック)「マニュアルは最低必要.300床以上では専門部署の設置が望ましい」(60代,外科,大学病院)「対策ガイドラインが策定されると、判断基準が定まり、対応がしやすくなる。 厚生労働省など公式な機関からの公示を期待したい。」(30代,内科,診療所・クリニック)「ターゲットにされている医師・看護師などをできるだけ担当から外し、事務系のもので対処するようにしている。場合により、警察OBの方に前面に出ていただくようにしている。記録を取らしていただくように宣告する・・・などです。」(60代,外科,一般病院)「クレームを言わせないような暖かな雰囲気のクリニックにしています。幸い今のところありません。」(50代,代謝・内分泌科,診療所・クリニック)「いくら患者さん御本人と良好にコミュニケーションを取れていても、事態を把握していない第三者のクレームが入ることもあり、閉口しました。」(50代,内科,一般病院)「患者の自分本位な要求に応じなかったら、激昂して殴られたことがある。精神科の診療であるし(情動障害を主とする適応障害)軽いかすり傷を負った程度なので不問にした。度量が大きいと映ったのか、以後関係改善し特別扱いを求めなくなったが、後日他科の医師にも暴力を振るってしまい診療科間の問題にまで発展した。初回から暴行事件として刑事告訴すべきだったと反省している。」(40代,精神・神経科,診療所・クリニック)「正直、モンスターペイシェントに対する院内での明確な対応マニュアルはない。他院では警察OBを雇用するなど、毅然とした対応を行っているところも多いと聞くが、当院ではひたすら事務の人が謝るなど、こちらが下手に出て患者と対話をしている。個人的には、明らかなモンスターに対しては謝る必要はなく病院を出て行ってもらうなど、強い態度を示してほしいと考えている。」(30代,代謝・内分泌科,一般病院)「受付の対応時の言葉の前後を組み合わせて、勝手に自分の中で解釈し、こちらが言ってもいないようなことを言ったとのクレーム。夜間に自宅側のインターホンを執拗に鳴らし、出ないとなるとポストに苦情の手紙を投函。何日までに自宅まで謝罪に来いとの期限付きで一方的に求めてきた。」(40代,内科,診療所・クリニック)「中絶手術に付き添ってきた男性が『なんでこんなに高い料金なんだ』と怒鳴りつけてきて火災報知器を鳴らし、消防署への対応、火災報知器の修繕は自前で対応した。男性は右翼関係者だったらしく、破門されていて荒れていた状態だと分かり、まもなく自殺した連絡が入り、それで事案が終了した。」(50代,産婦人科,診療所・クリニック)「義務を果たさず、権利ばかりを主張する世の中になってしまった為と、諦めています。個人の対応には限度がありますので、とにかく、病院全体で対応することに尽きます。 」(60代,内科,一般病院)「『診療でなく話だけだ」と言って保険証提示を拒否し、順番も無視して割り込んで、症状を言って、診断名の可能性だけ聞くと無料で帰っていくことを繰り返す人がいました。保険証の提示をしつこく求めると『俺は話だけで来たので診察を受けにきたのではない!』と言い張りました。『それも診察です!』と強く言ってからは来院していません。」(40代,内科,診療所・クリニック)「これまではラッキーなことにモンスターと言うほどの患者には当たっていませんが、それでも対応に苦慮する様な方はいらっしゃいますね。」(50代,外科,一般病院)「医師になって25年間で初めてのものすごいモンスター患者さんに遭遇したが、土下座して謝れなどの脅しに屈しなかったら、矛先が保健所など違う相手に向いた。有名なクレーマー患者だったと後で知ったが、前医への悪口が尋常ではなかったので、前医に問い合わせをしてから診療に応じればよかったかなと思う。」(50代,内科,診療所・クリニック)「理不尽な要求をする患者の診察は、ICレコーダーで録音している」(30代,内科,診療所・クリニック)「患者や家族の理不尽な要求に腹立たしい思いを何度もしているが、よりよい病院にしていくための改善や対策のヒントが隠れている場合もある。大変ではあるが、理不尽な要求をするようになったその背景を探ることで勉強になることもあった。」(60代,精神・神経科,一般病院)「生活保護の患者が、『薬が足りない』『無くした』と再三取りにくる。自費でというと『殺す気か』と怒鳴り散らす。 」(30代,内科,一般病院)「会計踏み倒しなど、日常にある。」(40代,内科,診療所・クリニック)「地域医師会と所轄署とで定期的に講習会を開いている」(50代,泌尿器科,診療所・クリニック)「自己負担分の踏み倒しが多々ある。更に市町村の福祉医療制度を悪用し、病院に掛かって自己負担分を稼ごうとする輩もいる。自己負担分を払わないので福祉医療の請求書を出さなかったら、後日『自己負担金の還付が無い』と文句の電話が来て唖然とした。 大学生の踏み倒しも増えている。この場合は実家に連絡すると大体片付く。どうしても払わず、実家の祖母に振り込ませたこともある。」(50代,内科,診療所・クリニック)「特に医療関係者の家族が、クレームをつけて『保健所や医師会に訴える』などと脅してくる。」(40代,整形外科,一般病院)「けいれん重積を治療後、てんかんの診断名が気に入らない。点滴を入れたせいで、指の動きに問題が出たとクレーム。頭痛を治せと暴れる。ソセゴンを打てと脅す。ぜんそく発作が夜出た場合、点滴後、(タクシーではなく)バスで帰れるように、真夜中すぎまで待って救急車を呼ぶ。順番が遅い、とスタッフを怒鳴る。MRIで異常がないとわかった後、支払いをせず逃走。救急で入院した患者の具合を早く良くしろと家族に詰め寄られるなどなど、書ききれないほどのエピソードがあり、疲れて退職しました。もう、二度と救急対応はやりたくありません。」(50代,神経内科,診療所・クリニック)「酔っ払いが最悪です。処置をしようとすると『痛い』だのと騒ぎ暴れたり物を投げる。帰りのタクシー代がないから救急車を呼べと騒ぐ。『今は金がない』と帰って医療費を払わない。酔っ払いを診ない病院が増えてこっちに回ってくることが多くなったが、断れるものなら断りたい。」(40代,脳神経外科,一般病院)「ブラックリストがあり、時間外受診の問い合わせがあった際には、必ずそれに目を通すようにしています。」(30代,精神・神経科,一般病院)「投薬強要には毅然と拒否するように心がけていますが、キャリアの浅いときは、怖くて従ってしまったこともありました。薬物中毒疑いの暴力団風の患者が夜間の救急外来に現れ殴られそうになったことがありますが、警察に連絡したら逃げていき事なきを得ました。診察費、入院費を払わない患者家族にも何回か遭遇しましたが、事務方と相談し対処、退院させたり、大変な思いをしたこともあります。」(50代,内科,一般病院)「クレームが発生する主な原因は、医療機関側にもあると思われます。 当院では自己防衛のため、定期的に接遇の院内勉強会を実施しています。これだけでクレームは防げる訳ではありませんが、最小限に止める事は出来ると思います。事実、当院は開業7年目ですが、殆ど大きなトラブルは経験しておりません。 上記のことから、患者応対のスキルアップが一番のクレーム対策になると考えます。」(40代,内科,診療所・クリニック)「窓口金を一切払わない。順番待ちが長い、自分の方が先に来ていたなど大声で騒ぐ。 受診後、看護師の態度が悪いと電話でクレームをうける。」(50代,循環器科,診療所・クリニック)「見つければすぐにつまみだし、暴れれば警察を呼び、顧問弁護士を通して法的に厳正に対処する。また院内の男性スタッフに柔道や極真空手の有段者がいるので、暴れる者への対応を躊躇しないことにしています。」(40代,皮膚科,診療所・クリニック)「最近暴力マニュアルを作成し、院内にて異常が起った場合コードブルーにて院内スタッフを直ちに招集するシステムを構築した。」(40代,循環器科,一般病院)「受付デスクにセコムの非常ボタンを設置している。」(50代,外科,診療所・クリニック)「問題のある患者が発生した場合には、担当部署(医療安全室)に連絡し、警察OBの方にお越し頂いて対応しています。その他問題発生時には医療安全室に相談する体制となっています。」(50代,内科,大学病院)「精神科専門で30年も臨床をやっていれば、この手のエピソードに遭遇しない訳がありません。重篤な精神疾患に罹患している患者自身よりも、むしろ家族がモンスターであることの方が対応に苦慮します。」(50代,精神・神経科,一般病院)「警察OB雇用の話はありますが、大病院以外は費用が高すぎるとの理由で、非採用。」(60代,整形外科,一般病院)「入院費を踏み倒した患者家族には、何度も説明を求められ職員の疲弊とトータルの時間喪失は非常に大きかった。この患者はブラックリストに載せておいたので夜間救急要請時は受けることなく更なるトラブルを回避できた。」(50代,外科,一般病院)「年に一度程度なので、運が悪かったとあきらめが半分。違法なことに関しては毅然とした対応を心がけている。」(40代,眼科,診療所・クリニック)今すぐできる対策をCheck!一般医療機関における暴言・暴力の予防と対策医療従事者に向けられる理不尽な暴言・暴力。その場しのぎの場当たり的な対応、していませんか?一貫した取り組みをしていかないと、スタッフの心身を損ねてしまうだけでなく一般の患者さんも逃げてしまいます。土下座など過度な謝罪を要求する母親、暴言がエスカレートする男性患者…暴言・暴力の実例を通して、予防・対策のあり方や進め方についてわかりやすく解説。

375.

妊娠可能年齢のてんかん女性にはレベチラセタム単独療法がより安全?

 アイルランド・Royal Victoria HospitalのEllen Mawhinney氏らが、被験者670例を対象とした調査研究を行い、妊娠中のレベチラセタム単独療法は、重大先天奇形(MCM)に対するリスクは低いことを報告した。先行研究でも低リスクが示されていたが、小規模試験での報告であった。Neurology誌2013年1月22日号(オンライン版2013年1月9日号)の掲載報告。 調査は、英国とアイルランドで被験者が登録された前向き観察レジストリ追跡研究「UK and Ireland Epilepsy and Pregnancy Registers」のデータを解析して行われた。同研究は、妊娠中に服用したすべての抗てんかん薬の安全性について相対的な評価を行うことを目的としたものであった。研究グループは、2000年10月~2011年8月に、レベチラセタムを妊娠第1期に服用した被験者について検証した。 主な結果は以下のとおり。・アウトカムデータが入手できたのは671例であった。304例はレベチラセタム単独療法を、367例はその他1種類以上の抗てんかん薬との併用療法を受けていた。・MCMは、単独療法群では2例の報告であった(0.70%、95%CI:0.19~2.51)。・一方、併用療法群では19例が報告された(6.47%、95%CI:4.31~9.60)。・併用療法群のMCM発生は、抗てんかん薬の組み合わせによって異なった。+ラモトリギン(1.77%、95%CI:0.49~6.22)が、+バルプロ酸(6.90%、95%CI:1.91~21.96)や、+カルバマゼピン(9.38%、95%CI:4.37~18.98)よりも低率であった。・以上の結果から、MCMのリスクは、レベチラセタムを併用療法で用いた場合に高まることが示唆された。・特定の組み合わせのリスクについてはさらなる検証が必要である。・MCMに関してレベチラセタムの単独療法は、てんかんを持つ妊娠可能年齢の女性にとって、バルプロ酸よりも安全な選択肢とみなすことができる。関連医療ニュース ・検証!抗てんかん薬の免疫グロブリン濃度に及ぼす影響 ・レベチラセタムは末梢性の鎮痛・抗浮腫作用を示す ・妊娠中のSSRI服用と死産、新生児・0歳時死亡には有意な関連みられず

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SMSを活用した教育介入で、てんかん患者の健康関連QOLが改善

 てんかん患者における健康関連QOL(HRQoL)の改善は、さまざまな治療プログラムおよび行動介入において着目すべき課題となっている。マレーシア・Sultan Zainal Abidin大学のPei Lin Lua氏らは、SMS(Short Message Service)を活用した教育プログラムのてんかん患者のHRQoLに及ぼす影響の検討、ならびに良好なHRQoLの予測因子を明らかにすることを試みた。Quality of Life Research誌オンライン版2013年1月18日号の掲載報告。 マレーシア半島東海岸にある3つの公立病院のてんかん外来患者を適格症例とし、印刷物による教育資材のみが提供された群(対照群)と、印刷物に加えてモバイルてんかん教育システム(Mobile Epilepsy Educational System:MEES)によりSMSを受信した群(介入群)に無作為化した。HRQoLはThe Malay Quality of Life in Epilepsy Inventory-30(QOLIE-30のマレー語版)を用いて評価した。統計解析ソフトSPSS 16を使用し、記述統計、ペアt検定、共分散分析および多重ロジスティック回帰分析などによりデータを解析した。 主な結果は以下のとおり。・登録されたのは、てんかん患者144例であった。・患者背景は、年齢が30.5±11.8歳、未婚者が60.4%、教育レベルはマレーシア教育検定〔Sijil Pelajaran Malaysia:SPM、ケンブリッジシステムのOレベル(中等課程)〕以下が76.4%、罹病期間5年を超える例が51.1%であった。・想定される交絡因子調整後、介入群は対照群と比べて「発作への不安」「全般的QOL」「情緒的健康」「社会的役割」「総スコア」をはじめ、HRQoLプロファイルの改善が認められた(p<0.05)。・共変量調整後、SMSを追加したてんかん教育プログラムは、てんかん患者における良好なHRQoLの有意な予測因子であることが示された。・著者は、「SMSによる継続的な情報提供は、てんかん患者のHRQoLに好影響を及ぼすようである」と結論するとともに、「本研究は将来的なイノベーションの礎となるものであり、てんかん患者・家族がウェルフェアおよびHRQoLを確保するための努力を後押しするものである」と成果を強調した。関連医療ニュース ・てんかん患者のうつ病有病率は高い ・側頭葉てんかんでの海馬内メカニズムの一端が明らかに ・抗てんかん薬、神経膠腫術後患者の言語記憶を改善

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うつ病患者の食事療法、ポイントは「トリプトファン摂取」

 うつ病では悲哀感、希望喪失、易刺激性、身体機能障害などの特徴がみられ、数週間にわたり重症の症状を呈する。また、気分変調症は軽度の抑うつ気分が漫然と続いた状態である。うつ病の治療には、精神療法、薬物療法、光線療法などがあるが、これまでの臨床的および経験的エビデンスから、適切な食事が抑うつ症状を軽減しうることが示唆されている。オランダ領アンティル・Saint James School of MedicineのFaisal Shabbir氏らは、食事が抑うつに及ぼす影響について考察した。神経伝達物質であるセロトニンの低下はうつ病の一因であるが、セロトニンの前駆体であるトリプトファンを多く含む食事の摂取が抑うつ症状の軽減に有用であることを示唆した。Neurochemistry international誌オンライン版2013年1月7日号の報告。トリプトファンの含有量が少ない食事を摂取しているとうつに陥る可能性 トリプトファンを多く含む食事が抑うつ症状の軽減に有用であることを示唆した主な知見は以下のとおり。・脳内で合成される神経伝達物質のセロトニン(5-HT)は、気分緩和、満足感、睡眠の調節などに重要な役割を果たしている。5-HTを多く含む果物や野菜があるが、血液脳関門の存在により5-HTは中枢神経系に容易に到達できない。しかしながら、5-HTの前駆体であるトリプトファンは容易に血液脳関門を通過できる。・トリプトファンは、ビタミンB6誘導体であるピリドキサールリン酸存在下で、トリプトファンハイドロキシダーゼおよび5-HTPデカルボキシラーゼにより5-HTに変換される。・タンパク質の多い食品であっても、必須アミノ酸は体内でつくることができないため、トリプトファンの含有量が少ない食事を摂取しているとうつに陥る可能性がある。・たとえば月経前後の女性、心的外傷後ストレス障害、慢性疼痛、がん、てんかん、パーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症、薬物依存など、うつに陥りやすい状況にある患者ではトリプトファンを多く含む食事の摂取が重要である。・中枢神経におけるトリプトファンのバイオアベイラビリティは炭水化物の欲求に関連するが、炭水化物を多く含む食事はインスリン反応の引き金となりトリプトファンのバイオアベイラビリティを高める。・セロトニン再取り込み阻害薬は(SSRI)は、抑うつ症状を呈する肥満患者に処方されるが、これらの患者ではセロトニン濃度が厳格に調節されず、モノアミンオキシダーゼ阻害薬と併用した際には生命を脅かす有害事象が発現する可能性がある。しかし、トリプトファンを多く含む適切な食事を摂取することでセロトニン合成が調節されうる。・以上より、さまざまな神経変性疾患で観察される抑うつ症状に対し、セロトニン神経伝達を助ける上でトリプトファンを多く含む食事とビタミンB6は臨床的に重要と言える。ただし、うつに対するセロトニン神経伝達を修飾する薬理学的介入は、従来と変わらず臨床的に重要な事項である。また、うつの病態にはその他にもいくつかの分子メカニズムが関わっている可能性がある。関連医療ニュース ・うつ病予防に「脂肪酸」摂取が有効? ・うつ病補助療法に有効なのは?「EPA vs DHA」 ・認知症の進行予防に有効か?「ビタミンE」

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新型インフルエンザワクチン、てんかん発作のリスクを増大しない/BMJ

 パンデミックA/H1N1インフルエンザ、いわゆる新型インフルエンザのワクチンについて、てんかん発作のリスクを増大するエビデンスはみられなかったことが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のLisen Arnheim-Dahlstrom氏らによる検証の結果、報告された。同ワクチンについては先行研究で、ギラン・バレー症候群など神経学的イベントのリスク増大およびナルコレプシーのリスク増大の可能性が報告されていた。また、百日咳ワクチンの接種後のてんかん発作が報告されており、研究グループは、新型インフルエンザワクチンのてんかん発作リスクの増大について調査した。BMJ誌2013年1月5日号(オンライン版2012年12月18日号)掲載より。てんかんあり・なし含む接種者37万人超について調査 研究グループは自己対照ケースシリーズ研究にて、新型インフルエンザの単価AS03アジュバンドワクチン(商品名:パンデムリックス〔国内未承認〕)のてんかん発作リスクを評価した。 評価の対象は、スウェーデンの3つの州(人口約75万人)で2009年10月~2010年5月にワクチン接種を受けた、てんかんの有無を問わない37万3,398人(0~106歳、年齢中央値41.2歳)だった。 それらのうち、接種前90日間および接種後90日間に、入院患者あるいは外来患者としててんかん発作を診断された人を調べた。エンドポイントは、てんかん発作を主病として入院または外来治療を受けたこととした。 評価は、ワクチン接種後のてんかん発作の発生率とワクチン接種前後の2つの期間におけるてんかん発作の発生とを比較して算出した推定エフェクト相対発生率にて行った。てんかん既往者のリスクも、増大はみられず 試験期間中にてんかん発作を認めた人は859人だった。 1~7日のリスク期間中(1日目がワクチン接種日)において、てんかん既往者の発作のリスク増大は認められなかった(相対発生率:1.01、95%信頼区間:0.74~1.39)。 また、非既往者の発作リスクの有意な低下は認められなかった(同:0.67、0.27~1.65)。 8~30日のリスク期間においては、非既往の人の発作リスクの有意な増大はみられず(同:1.11、0.73~1.70)、既往者のリスクは増大しなかった(同:1.00、0.83~1.21)。

379.

検証!抗てんかん薬の免疫グロブリン濃度に及ぼす影響

 抗てんかん薬は免疫グロブリンに影響を与えると言われている。ノルウェー・オスロ大学病院のS. Svalheim氏らは、レベチラセタム、カルバマゼピン、ラモトリギンなどの抗てんかん薬がてんかん患者の免疫グロブリン濃度に及ぼす影響を検討した。Acta neurologica Scandinavica誌2013年1月号の掲載報告。 被験者は、てんかん患者211例および対照80例(18~45歳の男女)であった。てんかん患者は抗てんかん薬単独による治療を最低6ヵ月施行されていた。治療薬の内訳はレベチラセタムが47例、カルバマゼピンが90例、ラモトリギンが74例であった。免疫グロブリンG (IgG)、IgG サブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、免疫グロブリンA(IgA)および免疫グロブリンM(IgM)の総濃度を測定し、患者群と対照群で比較した。なお、患者背景として喫煙、飲酒習慣、身体活動性の記録とともに、BMIを算出した。 主な結果は以下のとおり。・ラモトリギンの治療を受けている男女、カルバマゼピンの治療を受けている男性において、IgG濃度およびIgG1濃度は有意に低値であった。・ラモトリギンの治療を受けている女性において、IgG2濃度およびIgG4濃度はより低値であった。・ラモトリギンの治療を受けている男性において、IgA濃度およびIgM濃度はより低値であった。・レベチラセタムの治療を受けている患者では、対照群との間で免疫グロブリン濃度に差はみられなかった。・以上の結果から、ラモトリギンおよびカルバマゼピンはてんかん患者の免疫グロブリン濃度を低下させることが示された。・本検討における対象患者が健康若年成人でなかったことを考えると、たとえば免疫不全症例などの特定の患者集団においては、抗てんかん薬が免疫グロブリン濃度に影響を及ぼしうることを特に認識しておく必要がある。そして、ラモトリギンやカルバマゼピンを服用中で感染症を繰り返しているような患者については、免疫グロブリン濃度を測定し、薬剤の変更を考慮すべきである。関連医療ニュース ・神経ステロイド減量が双極性障害患者の気分安定化につながる? ・側頭葉てんかんでの海馬内メカニズムの一端が明らかに ・レベチラセタムは末梢性の鎮痛・抗浮腫作用を示す

380.

てんかん薬、神経膠腫術後患者の言語記憶を改善

 抗てんかん薬投与を受ける悪性度の高い神経膠腫(high-grade glioma、HGG)の患者について、認知機能の低下などさまざまな有害事象が報告されている。しかし従来薬、新薬ともに抗てんかん薬の認知機能への影響について、これまで大部分が不明であった。オランダ・VU University Medical CenterのMarjolein de Groot氏らは、HGG術後患者に対する抗てんかん薬の認知機能への影響を調べた。その結果、バルプロ酸、レベチラセタムともに認知機能を障害することはなく、むしろ言語記憶に関する薬効がみられさえしたことを報告した。Neuro Oncology誌オンライン版2012年12月11日号の掲載報告。 評価は、抗てんかん薬について従来薬を受ける群、新薬を受ける群、非投与群の異なる3コホートのHGG患者を選択し行われた。3群の患者はいずれも、術後治療の開始前6週以内に手術を受け評価対象に包含された。認知機能の評価は、包括的な神経心理学的評価によって、6つの認知機能の領域(注意、実行機能、言語記憶、ワーキングメモリ、精神運動機能、情報処理速度)を対象に行われた。 主な結果は以下のとおり。・包含基準を満たしたのは、117例の患者であった。・35例が新しい抗てんかん薬(全例がレベチラセタム)の単独療法を、38例が従来薬(バルプロ酸またはフェニトイン)の単独療法を受けた。44例は非投与であった。・レベチラセタム群および従来薬群の患者は、非投与群と同程度の評価となった。・レベチラセタム群の患者は言語記憶テストで、非投与群と比べて、より良好な認知機能を示した。・事後解析において、従来薬群では、バルプロ酸服用群のほうがフェニトイン服用群よりも、認知機能が良好であることが明らかになった。・レベチラセタムもバルプロ酸も、HGG患者における付加的な認知障害との関連はみられなかった。両抗てんかん薬は、HGG患者の言語記憶に関する薬効を有するようである。関連医療ニュース ・側頭葉てんかんでの海馬内メカニズムの一端が明らかに ・レベチラセタムは末梢性の鎮痛・抗浮腫作用を示す ・てんかん発作時の脳炎がPET画像診断活用で明らかに

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