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甲状腺ホルモン不応症〔RTH:Syndrome of Resistance to Thyroid Hormone〕

1 疾患概要■ 定義甲状腺ホルモン不応症は、甲状腺ホルモンに対する標的臓器の反応性が減弱している家族性症候群として、1967年にRefetoffらによって初めて報告された。そのため、かつては「レフェトフ症候群」という名称が一般的であった。本疾患における甲状腺ホルモンに対する反応性の低下は、甲状腺ホルモン受容体を介した作用の低下が主な原因である。甲状腺ホルモン受容体はα型とβ型の二つがあるが、本疾患は先天性・家族性のβ型甲状腺ホルモン受容体異常症である。■ 疫学わが国と米国で別個に行われたスクリーニング調査の結果、いずれの調査でも、甲状腺ホルモン不応症の発症頻度は約40,000人に1人と推定された。もし、この数字をそのまま日本の総人口に当てはめると、わが国には約3,000人の症例が存在することになる。しかし、わが国でこれまでに報告されているのは100例程度で、現状では大部分の症例がきちんと診断されていないという可能性もある。■ 病因本疾患は常染色体顕性(優性)遺伝形式の先天性・家族性疾患であり、50%の確率で遺伝する。甲状腺ホルモン不応症家系の約85%にβ型受容体遺伝子変異が認められる。残りの約15%の家系も同様の遺伝形式となり、その病因は明らかではないが、遺伝子変異を伴う家系と変異が認められない家系との臨床症状は区別がつかないことから、何らかの原因でβ型受容体の機能が障害され発症するものと考えられている。β型甲状腺ホルモン受容体は視床下部・下垂体におけるネガティブフィードバック機構を制御しており、甲状腺ホルモンが多くなると、甲状腺刺激ホルモン(TSH)およびTSH放出ホルモン(TRH)の産生を抑制して、甲状腺ホルモンが過剰になるのを防いでいる。そのため、本疾患では、フィードバック機構が障害され、甲状腺ホルモン高値にもかかわらずTSH値が抑制されない「不適切TSH分泌症候群」(syndrome of inappropriate secretion of TSH:SITSH)となる。■ 症状前述のSITSHにより高値となった甲状腺ホルモンに対する反応性の程度によって、甲状腺機能亢進症症状から低下症の症状まで症例によって多様である。各臓器では変異のないα型およびβ型甲状腺ホルモン受容体がさまざまな程度で発現しており、その作用を変異β型受容体がさまざまな程度で阻害するため、ホルモンに対する反応性は各臓器および個体で異なる。このことが症状の多様性の大きな理由の一つと考えられる。甲状腺ホルモンに対する反応性の減弱が過剰な甲状腺ホルモンにより代償された状態となるため、結果としてほとんど自覚症状がない症例や軽度の頻脈のみを呈する症例が多い。ただし、甲状腺機能亢進症症状が強く注意欠如・多動症や著しい頻脈を示す症例や、先天性甲状腺機能低下症の症状である知能発達遅延や低身長、難聴などを伴う症例も存在する。一方、甲状腺腫大は、TSHによる刺激が原因で生じる所見であり、比較的頻度が高い。■ 分類かつては、甲状腺機能亢進症症状が強い症例を下垂体型、その他の症例を全身型と分類していたが、現在ではあまり用いられていない。■ 予後一般的に生命予後は健常人と変わらないとされているが、そのエビデンスは確立されていない。女性症例が変異を持たない児を妊娠した場合、母体から移行してくる過剰な甲状腺ホルモンによって児が甲状腺中毒症になり、流産や低出生体重児となることがある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)血清遊離サイロキシン(T4)が高値でTSHが基準値下限以上であればSITSHと判断され、甲状腺ホルモン不応症診断の出発点となる。これまでに、研究班によって診断のためのアルゴリズムが策定されており、後述する日本甲状腺学会臨床重要課題ウェブサイト上で、診断基準ならびに重症度分類第2次案の一部として公開されている。1回の血液検査でSITSHの所見が得られた場合も、単に「見かけ上のSITSH」を呈していることが多い。たとえば、TSHの変動はT4の変動に遅れるため、破壊性甲状腺炎やバセドウ病など甲状腺中毒症の初期に、TSHの抑制がT4の上昇に一時的に追いついていない場合がある。また、患者(被検者)が抗T4抗体や抗マウス抗体を持っていた場合にT4測定系やTSH測定系に干渉するアーチファクト、T4製剤(商品名:チラーヂンS)補充療法に伴うT4高値、アミオダロンなどヨウ素を含有する薬剤の影響などでも見かけ上のSITSHを呈することがある。「真の」あるいは「確からしい」SITSHであることを示すために、再検査を1ヵ月後以降に、さらに3ヵ月後に行い、これら再検査の際、可能なら検査方法を変えて測定することが推奨される。真のSITSHを来す疾患は、甲状腺ホルモン不応症とTSH産生下垂体腺腫であり、これらの鑑別が重要である。TSH産生下垂体腺腫症例では、画像検査で明らかな下垂体腫瘍(マクロアデノーマ)を認めることが多い。画像検査でマクロアデノーマを認めない症例では鑑別が困難である。確定診断にはβ型甲状腺ホルモン受容体遺伝子検査が有用である。ただし、甲状腺ホルモン不応症家系の15%は遺伝子変異を持たず、病因も不明である。現在、β型甲状腺ホルモン受容体遺伝子検査は保険収載となっており、倫理面に配慮して施行する。指定難病および小児慢性特定疾病となっており、診断された場合は医療費助成の申請を検討する。指定難病制度では重症度分類中等度以上が助成の対象となる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)SITSHに対して、抗甲状腺薬や放射性ヨウ素内用療法、甲状腺摘出術などのバセドウ病に対する治療を行うと、TSH分泌が促進されて甲状腺腫増大(摘出術の場合を除く)や下垂体のTSH産生細胞の過形成をまねく可能性があり、推奨できない。多くの症例では、甲状腺ホルモンに対する標的臓器の反応性の低下がホルモン高値になることで代償されており、治療を必要としない。頻脈を呈する症例では、β遮断薬による対症療法が有効であることが多い。先天性甲状腺機能低下症の症状を示す症例では、血清甲状腺ホルモンは高値だが、甲状腺ホルモン製剤の投与により症状が緩和される。4 今後の展望診断基準ならびに重症度分類について、日本甲状腺学会臨床重要課題のウェブサイト上では第2次案が公開されているが、厚生労働省および難病情報センターでは改訂前の第1次案が使用されており、現在第2次案に変更する手続きを行なっている。また、現在診療ガイドラインを策定中である。エビデンスに乏しい中での策定であるが、公開されれば今後の診療に寄与することが期待される。これらはいずれも2021年10月時点の情報であり、遠くないうちに実現することが予想される。一方、α型甲状腺ホルモン受容体遺伝子異常症も存在し、β型受容体異常症とは表現型が異なることが知られている。2012年に初めて報告された疾患であり、関連疾患として今後の研究の発展が期待される。5 主たる診療科内分泌内科、小児科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本甲状腺学会臨床重要課題 甲状腺ホルモン不応症診断基準(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 甲状腺ホルモン不応症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センター 甲状腺ホルモン不応症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Thyroid Disease Manager(医療従事者向けのまとまった情報)公開履歴初回2021年11月25日

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第85回 診療報酬改定シリーズ本格化、「躊躇なくマイナス改定すべき」と財務省、「躊躇なくプラス改定だ」と日医・中川会長(後編)

財務省が放った「もう一つのジャブ」こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、八ヶ岳山麓の大学の先輩の別荘を訪ね、晩秋の山を楽しむ予定でした。しかし、とある事故で左手小指の第二関節を脱臼、結果として剥離骨折もしてしまったため泣く泣く八ヶ岳を諦め、『Sports Graphic Number』の最新号(MLBアメリカンリーグのMVPに選ばれた大谷 翔平選手の特集号です)を読みながら、静かに日本シリーズを観戦していました。左手小指は、第二関節から外側にぐにゃりとほぼ直角に曲がったのをとりあえず自分で元に戻し、昨年四十肩を患った時に通っていた近所の整形外科の医院を訪ねました。ある意味、私のかかりつけ医なのですが、相変わらず説明はわずかで、X線を確認した後、「とりあえず固定して様子をみます。完治まで8週間!」の一言で終わり。もう少し丁寧な説明はないのかと、包帯ぐるぐる巻の左手を見ながら思いました。さて、前回は、財務省主計局が11月8日の財政制度等審議会・財政制度分科会で医療関係者に向けて放った「躊躇なく『マイナス改定』をすべき」という、強烈なジャブについて書きました。実はこの日、財務省主計局は、財政制度分科会でもう一つのジャブを放っていました。日本医師会が最も嫌がる「かかりつけ医の制度化の必要性」について再度言及したのです。コロナ禍、「フリーアクセスは、肝心な時に十分に機能しなかった」財務省はかかりつけ医に関して、2014年度診療報酬改定での地域包括診療料・地域包括診療加算の創設以降、診療報酬上の評価が先行して実体が伴っておらず、「算定要件が相次いで緩和され、かかりつけ医機能の強化という政策目的と診療報酬上の評価がますますかけ離れることになった」と現行の問題点を指摘しました。さらにコロナ禍の中、「外来医療・在宅医療へのアクセスの機会は限られていたことが指摘されており、世界有数の外来受診回数の多さをもって我が国医療保険制度の金看板とされてきたフリーアクセスは、肝心な時に十分に機能しなかった可能性が高い」と強く批判、「受診回数や医療行為の数で評価されがちであった『量重視』のフリーアクセスを、『必要な時に必要な医療に アクセスできる』という『質重視』のものに切り替えていく必要がある」と断言しました。診療報酬は「制度化されたかかりつけ医」に対して支払うべきさらに、かかりつけ医については「制度的対応が不可欠であり、これを欠いたままの診療報酬上の評価は実効性を伴わない」とした上で、具体的な方策として、「かかりつけ医機能の要件を法制上明確化したうえで、これらの機能を担う医療機関を『かかりつけ医』として認定するなどの制度を設けること、こうした『かかりつけ医』に対して利用希望の者による事前登録・医療情報登録を促す仕組みを導入していくことを段階を踏んで検討していくべきである」と提言しています。また、現在検討中の外来機能報告の制度がかかりつけ医の「機能を担う医療機関を明確化する制度となるよう制度の拡充を図ること」としました。かかりつけ医への診療報酬上の評価については、「制度化されたかかりつけ医」に対して行うべきとし、「受診回数や医療行為の回数による出来高払いより包括払いがなじむ」と提案、現状の同診療料・診療加算の機能評価加算について 「ゼロベースでの見直しは必須。 その他の診療報酬上の評価も、 算定要件等の安易な緩和は厳に慎むべき」と釘を刺しました。報道等によれば、分科会の委員からは 「かかりつけ医を制度化すべき」「評価できる要件を定め包括払いへ転換をすることが重要」などの意見が出たとのことです。「フリーアクセスを担保するためにも制度化は認められない」と日医「現行のかかりつけ医の仕組みではダメだ」「コロナでも機能しなかった」とここまで批判されているにも関わらず、日本医師会は相変わらず「かかりつけ医」制度化に反対の姿勢を崩していません。なぜ、そこまで頑なに反対を続けるのか。その歴史的背景については、「第58回 コロナ禍、日医会長政治資金パーティ出席で再び開かれる?“家庭医構想”というパンドラの匣(前編)」でも書いた1980年代の家庭医構想にあります。この時は、英国のNHSの家庭医(GP)制度がモデルとして紹介されました。GPは患者登録制で報酬体系も人頭払い主体であったため、「フリーアクセス」「自由開業」「出来高払い」を金科玉条のごとく堅持することで存在意義を保ってきた日本医師会の逆鱗に触れ、家庭医構想は消滅しました。日本医師会の制度化への警戒感は相当なものです。日本医師会会長の中川 俊男氏は11月17日の記者会見で、財政制度等審議会・財政制度分科会における財務省主計局の主張について、「医療の現場感覚と大きくずれている点もあり、容認できない指摘が多々ある。所管である財政の問題を越えて、細かく医療分野の各論に踏み込んでくるのは省としての守備範囲を超えており、 また現場の感覚と大きくずれている点もある」と語ったとのことです。その上で、とくに「医療法人の事業報告書の電子開示」「かかりつけ医機能」「リフィル処方、多剤・重複投薬、医薬品の保険給付などの調剤関連」「薬価改定における調整幅」の4項目を挙げ、「全て反論していたら朝までかかっても反論しきれない」と厳しく批判したとのことです。この中の「かかりつけ機能」については、担当の松本 吉郎常任理事が「かかりつけ医は、患者が自ら選ぶのが基本。原則としてフリーアクセスを担保する、あるいはそれを制限しないことは、患者目線からも非常に大事」と、改めてかかりつけ医の制度化に対し反対を主張したそうです。この問題、相変わらず財務省とは議論がまったく噛み合っておらず、平行線のままです。本体プラスの改定率にして、かかりつけ医制度化を一部飲ませる手も次期診療報酬に向けた議論は厚生労働省の中央社会保険医療協議会で進んでおり、「外来機能の分化・強化、連携を進めるためには、かかりつけ医の明確化が必要だ」との意見が、とくに支払側委員からは出ています。「明確化」が「制度化」にまで踏み込んで議論されるかどうかは不明ですが、かかりつけ医をどう再定義するかは、今回の改定の大きなポイントの一つであることは確かです。一方、財源を決める改定率については、政治マターとして、医療機関の経営状況や世の中の情勢等をにらみつつ、政府がその数字を決定することになります。日本医師会などの医療関係団体は、先の衆院総選挙で与党が安定多数の議席確保に寄与しており、その結果も踏まえ、前回書いたように本体プラス改定を強く要求しているわけです。岸田 文雄首相が、診療報酬(本体)の改定率をどの水準で収めるかは、年末に向けての医療関係者の最大の関心事と言えるでしょう。「第80回 『首相≒財務省』vs.『厚労省≒日本医師会』の対立構造下で進む岸田政権の医療政策」でも書いたように、岸田首相は「医療政策を財務省主導で進めたい」と考えている節があります。そうした思いと、衆院選での医療関係団体の功績をどう天秤にかけるか。首相はなかなか難しい判断を迫られそうです。日本医師会会長の最大の仕事は「プラス改定を勝ち取ること」に他なりません。そのため、医療の質を1%上げることより、医師の収入を1%上げることが優先されることもあります。もし、首相がかかりつけ医の制度化含め、医療提供体制の改革を真剣に行おうとするならば、ある程度プラスの改定率にして中川会長の面目を保ちつつ、かかりつけ医の制度化を一部飲ませる、というシナリオが一つの落とし所として考えられます。果たして議論はどう進んでいくのでしょうか。こちらも日本シリーズ同様、熱い戦いとなることは間違いありません。

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第87回 イベルメクチンの本領発揮~寄生虫感染症を一掃

米国Merck & Co(メルク社)は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への駆虫薬イベルメクチン(商品名:StromectolやMectizan)の効果の裏付けはないとの見解を示していますが1)、同剤のこの上なく貴重で価値ある本来の役割への支援は惜しまず、その甲斐もあってアフリカのナイジェリアが寄生虫感染症の流行解消の成功を手にしつつあります。米国FDAはメルク社と同様にCOVID-19へのイベルメクチンの効果は示されていないと判断2)していますが、遡ることおよそ四半世紀前の1998年にヒトの寄生虫感染症2つ・オンコセルカ症と糞線虫症の治療に同剤を使うことを承認しています。河川盲目症としてよく知られるオンコセルカ症は河川で繁殖する吸血性の昆虫・ブユに刺されることで移る寄生虫によって引き起こされます。人の体内でその寄生虫はたいてい眼を害し、その結果失明を引き起こします。河川盲目症はアフリカで広く認められ、ブラジル、ベネズエラ、イエメンでも感染流行地が点在します。河川盲目症の撲滅の取り組みの中心をなすのはイベルメクチンの集団投与です。集団投与では河川盲目症の蔓延地域の対象者全員にイベルメクチンを年に1回か2回繰り返し服用してもらいます。熱帯風土病の撲滅を使命とする米国熱帯医学会(ASTMH) の年次総会での発表によると、地域のボランティアによる25年に及ぶイベルメクチン(Mectizan)配布、メルク社から寄付される同剤の流通を請け負う組織・Mectizan Donation Program(MDP)、その他協力者の貢献などが功を奏し、ナイジェリアの2つの州プラトーとナサラワでは河川盲目症の伝播がどうやら断ち切れています3)。メルク社からのイベルメクチン寄付はこれからも継続します。その寄付を糧とし、ナイジェリアでのそれら2つの州での成功事例が同国の他の地域、ひいてはアフリカ全域での河川盲目症撲滅の取り組みを推進することを研究者は期待しています。その期待通り少なくともナイジェリアでの河川盲目症は今後も減り続けていくようです。同国のデルタ州では伝播の解消の前段階である小康(interrupted)に至っています。その状態に至るとイベルメクチン治療が停止され、しばらく様子を見たうえで伝播解消が宣言されます。他に同国の4つの州がまもなく小康状態に達する見込みです。参考1)Merck Statement on Ivermectin use During the COVID-19 Pandemic / Merck 2)Why You Should Not Use Ivermectin to Treat or Prevent COVID-19 / FDA3)New evidence that mass treatment with Ivermectin has halted spread of river blindness in two Nigerian states / Eurekalert

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「後輩に譲りたい」、その先輩心で売価7割減!【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第30回

第30回 「後輩に譲りたい」、その先輩心で売価7割減!漫画・イラスト:かたぎりもとこ弊社にお問い合わせいただく医業承継の売り手の方のうち、実に3割の方が持つ、ある「思い」があります。それは…、「できれば、同門の医師に譲渡したい」「本当は知人に譲りたいと思って、自分でも後継者を探している」というものです。当然、売り手が希望する方へ引き継ぐことが理想なのですが、「後輩への譲渡」にはデメリットもあるため、その点もしっかり考慮しておく必要があります。そのデメリットとは、ずばり「譲渡額が相場よりも安くなってしまう」ことです。なぜ安くなってしまうのか、それには下記のような理由があります。(1)買い手候補が知り合いだと、売り手に遠慮が働き、お金の交渉がしづらくなる(2)売り手と買い手の双方が譲渡額の相場や算定方法を知らないため、売り手が「買い手の懐事情」という観点だけで譲渡額の設定をしてしまう(買い手が融資を受けない場合は、高額の支払いは難しい)(3)売り手と買い手が譲渡額のすり合わせなしで協議を始めてしまい、後からお金の話をしづらくなる弊社への相談では「知人で譲り受けてくれそうな医師がいたが、結局破談になってしまったので後継者探しをしてほしい」というケースも多くあり、こうした方の大半が、弊社の算定した売却価格の3~5割程度で知人に譲ろうとしていました。「知人とお金の交渉はしにくい」のは誰しも覚えがあることでしょうが、思い入れのある診療所の譲渡となると、そこをつい忘れてしまうことも多いようです。自分で後継者探しをするデメリットとして、「譲渡額が相場よりも安くなりがち」ということは、知っておきましょう。

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長崎大学の働き方改革、最初の一歩は「整理整頓」【今日から始める「医師の働き方改革」】第5回

第5回 長崎大学の働き方改革、最初の一歩は「整理整頓」「働き方改革といっても、日々忙しい中で何から手を付けたらよいのか…」。そんなご相談をよく頂きます。今回は、誰でもすぐ始められる「整理整頓」をご紹介します。「整理整頓が働き方改革に関係あるの?」と思われるかもしれませんが、一般的なビジネスパーソンが探し物に要する時間は年間80時間1)とされています。病院は書類や画像に加えて備品や模型などが多く、日によって勤務する人も異なるため、オフィスよりもさらに整理整頓が必要になります。その点に注目して整理整頓を進めたのが、長崎大学病院の外傷センターです。外傷センターは2019年から長崎大学・長崎大学病院の働き方改革プロジェクト「ワークスタイルイノベーション」に参加し、さまざまな取り組みを展開しています。外傷センターを取りまとめる宮本 俊之氏に話を伺いました。―整理整頓に取り組んだきっかけは?2011年の外傷センター立ち上げ時から、医局には個人机を置かず、中心に大きな共用机を置いた広いオープンスペースにしています。フラットな組織づくりにはそのほうがよいと思ったのです。ただ、男性医師が多いこともあってか、部室のように多くの物が散らかり、私一人がせっせと片付けていました。それが、ワーク・ライフバランス社のコンサルティングを受けた時に「探し物が多い職場は生産性が低い」「探し物がなくなればこれだけの時間を節約できる」と聞いて、みんなの目が覚めました。「雑然とした医局をきれいにしよう!」という機運が生まれたのです。散らかす人は「どこに何があるかわかっている」と言いますが、実際はそうでないことも多く、ましてや共有スペースではルールを守らないとすぐに物が行方不明になります。私一人の声掛けには限界があったので、今回の機会は渡りに船でした。捨てる機会を失っていた資料や備品も、外部の方の目で「これはいつ使いますか?」と聞いてくださり、整理整頓はどんどん進みました。整理整頓後は「帰るときに共有スペースに物を残さない」ことをルールにしました。新しい先生が来た時「どうしてこんなにきれいなんですか!?」と驚いてくれるのがうれしいです。きれいな状態が普通になると、散らかっている状態が落ち着かなくなります。整理整頓は誰かがやってくれるものではなく、一人ひとりが毎日取り組むもの、という意識がメンバーに定着したと思います。以前の医局現在の医局。個人机は置かず、コミュニケーションをとりやすいフラットなつくり―宮本先生も、医局で過ごされることが多いとか。准教授室もあるのですが、ほとんどの時間はメンバーと医局にいますね。個人のスペースは極力つくらないようにし、風通しをよくして、コミュニケーションをとる場に特化しています。集中したいときには医局の壁側にある机を使います。みんなに背を向けることになりますが、集中したいことが一目瞭然なので周りも配慮しますし、ノイズキャンセリングのヘッドホンを付ける先生もいます。同じ場所でコミュニケーションと集中作業が共存できています。私はもともと「こうあるべき」という固定観念をつくらないようにしています。「働き方改革」もそうですが、「こうあるべき」と考えはじめると、それが強いバイアスとなって自分の考えをゆがめます。状況は常に変わるので、それに柔軟に合わせられるよう、客観的なものの見方を心掛けています。長年医学の勉強はしてきましたが、マネジメントを学ぶ機会は少なく、管理職になってからマネジメントの本を30冊以上読みました。すると、共通のキーワードがあるのです。とくに感銘を受けたのは「イノベーションは新たな人が新たなアイデアを持ってくることから生まれる」という内容です。外傷センター立ち上げ時の医師は3人で、当時の記憶がないくらいに忙しく、私自身も「こんな働き方では続けていくのは難しい」と感じていました。若い先生に生き生きと働いてもらえる職場にしたい、そのためには環境改善だと考え、今回の働き方改革プロジェクトに参加しました。専門のコンサルタントが質問してくれたり、自分の考えを改めて言葉にしたりする機会を得て、ベテランから若手までたくさんの意見が出ました。プロジェクトから得た学びを、今も継続できていると思います。 「医局は物を置く場所で、個人机を確保する」といった常識を打ち破った外傷センター。一斉に整理整頓を行った結果、一人ひとりが責任を持って職場をつくるという意識に変わりました。整理整頓のやり方をまとめてみましょう。手順1:整理整頓する範囲を決めます。広い場合はいくつかに分割して進めます。手順2:チームをつくります。物の要不要が判断できるメンバーを集めます。手順3:日時を決めます。30分~1時間のまとまった時間が取れればベストですが、難しい場合は本棚1つなど、範囲を狭めて15分程度から始めます。広い範囲を少しずつやるより、狭い範囲を1つずつ終わらせるほうが達成感を味わえます。手順4:当日は対象範囲の写真を撮ることから始めます。物の要不要を判断し、判断できない物は「要判断ボックス」に入れ、判断できる人を探します。終わったら再度写真を撮ります。本当に必要な物だけを残し、処分できる物を積極的に探します。明確な利用シーンが浮かばない物は思い切って処分を検討しましょう。「この3ヵ月間で使ったか?」「ほかの物で代替できないか?」と考えるのもよいでしょう。写真を撮る理由は、前後の変化が次のモチベーションになるためです。スッキリした状態は、その時は新鮮に映るものの、だんだんと当たり前になります。そんな時、整頓前の写真を見れば「戻りたくない」と踏みとどまることができます。「よい医療を提供する」という本質的なことに充てる時間を増やすため、ぜひ整理整頓から始めてみてください。1)コクヨ「書類を探す時間は“1年で約80時間”」/PR TIMES

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事例038 コロナ特例「B001-2-5 院内トリアージ実施料」の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説事例は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を疑い対応した患者が、再度来院されたため、それぞれの診療に「B001-2-5 院内トリアージ実施料」(以下、「同実施料」)を診療報酬上臨時的取扱に則り算定したところ、1回分がB事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)を理由に査定となりました。COVID-19を疑い「新型コロナウイルス感染症(COVIT-19 )診療の手引き」に沿った基本的な感染対策を実施して診療を行う場合は、「診療報酬取扱いの特例として同実施料を準用して算定できる」とあります。報酬を準用する場合には、準用先の報酬にかかる「注」なども適用されます。本来の同実施料は、施設基準を届出ている医療機関の夜間、休日または深夜において初診料を算定できる外来患者に算定ができます。COVID-19(疑いを含む)に対応する場合のみ届出を不要としています。また、必要な感染予防策を講じたうえで対面にて外来や往診を行った場合においても算定できると2020年4月に通知されています。その他の要件は明記が無いために、必要な感染予防策を講じた診療の都度に算定できるものと考えていました。事例では、病名をよく確認すると初診時の疑い病名は「中止」されていますが、急性上気道炎は継続されています。コメントをみると、再診のときに強くCOVID-19を疑った理由が不明瞭です。そのために、再診時は通常診療であり、同実施料は過剰と判断されたようです。医師にはこの理由を説明し、レセプト担当者には、複数回の同実施料の算定があった場合は、疑った要点と対応を医師にコメントいただくように伝え、査定防止対策としました。

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英語で「予防接種を受けましたか」は?【1分★医療英語】第3回

第3回 英語で「予防接種を受けましたか」は?Did you receive a measles shot as a child?(子供のころに麻疹の予防接種を受けましたか?)Yes, I did. And I think all my vaccines are fully up-to-date.(はい、受けました。必要なワクチンはすべて受けていると思います)《例文1》I’ll get vaccinated against the flu tomorrow.(明日、インフルエンザのワクチンを受けます)《例文2》The patient has just received the second COVID shot/jab.(その患者は2回目のコロナワクチンを接種したばかりだ)《解説》予防接種を受ける行為やプログラムのことを“vaccination”と表現します。日本でもよく聞く“vaccine”のほうは、予防接種時に投与する薬剤そのものを指します。また、簡易的な表現として米国では“shot”、英国では“jab”という表現もよく使われます。注射全般を指す“injection”も文脈次第でワクチンを意味することがあり、「予防」という意味の“protection”もワクチンを指すことがあります。また、抗体検査をしてワクチンの効果を確認したり、必要なワクチン接種を追加接種したりすることを“To update one’s vaccine status”ということがあります。“Which of my vaccines need to be updated?”(受け直したほうがいい予防接種はありますか?)などのように使います。講師紹介

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乳癌患者の妊娠・出産と生殖医療に関する診療ガイドライン2021年版

子どもを得たい…そのとき医療者はどう向き合うか乳癌患者の妊娠が再発や予後に与える影響、生殖補助医療による妊娠率や出産率への影響、さらには経済的負担やQOLなども加味し、複数のアウトカムの益と害を評価することで、患者の多様な価値観を反映できるよう臨床課題が検証された。妊娠・出産を希望する乳癌患者と医療者の協働意思決定支援に役立つガイドラインである。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    乳癌患者の妊娠・出産と生殖医療に関する診療ガイドライン 2021年版定価3,520円(税込)判型B5判頁数228頁・カラー図数:9枚発行2021年10月編集日本がん・生殖医療学会

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055)皮膚科医が臨床写真を撮る意義【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第55回 皮膚科医が臨床写真を撮る意義ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆皮膚科外来では、患者さんの病変部を写真に撮ることがよくあります。これらの臨床写真は、カルテの記録として残したり、医師・スタッフ間で情報を共有したり、症例報告や研究、論文発表に使われたりしています。1回にたった2~3枚の写真とはいえ、カメラを用意してポジションを決めて…と準備に意外と時間がかかることや、撮った写真の保存作業にも一定の労力が必要なこともあり、すべての症例を撮る訳にはいきません。実際には症例やタイミングを選んで撮影することになりますが、この臨床写真が治療の上でとても役に立つのです。普段、患者さんだけでなく私たち医療者も、それぞれの主観で捉えた患部の状態を記憶に保持しているため、現在の状態と比較する際にその記憶をよりどころとしています。ただ、この主観というのが厄介で、自分の先入観で事実がゆがめられてしまっていたり、実は変化があるのに見過ごしていたりすることがままあります。そんな時に臨床写真を見返すと、事実を客観的に確認することができます。それは、医療者が経過の評価を客観的に行えるだけにとどまらず、治療効果を患者さんと共有するのにも大いに役立ちます。とくに「頑張っているのに全然治らない」などとネガティブになりがちなタイプの患者さんに、前より良くなっていることを伝えるのに有効な方法だと感じます。日々診療に追われる中で、ついついカルテへの記入のみで満足してしまいがちですが、時々初心に帰って写真として記録を残しておくのも大切なことだなと、あらためて思いました。それでは、また〜!

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第84回 診療報酬改定シリーズ本格化、「躊躇なくマイナス改定すべき」と財務省、 「躊躇なくプラス改定だ」と日医・中川会長(前編)

政府、新型コロナ第6波に向けた対策決定こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。日本のプロ野球も、今週末からいよいよ日本シリーズです。クライマックスシリーズは、東京ヤクルトスワローズ、オリックスバッファローズ共に大胆かつ手堅い戦い方で、どちらにもリーグ覇者の強さを感じました。気になったのは、ヤクルトと戦った読売ジャイアンツです。メディアの多くは打線の弱さを指摘していましたが、私は野手の守備の杜撰さが目に留まりました。練習をちゃんとしているのかな、と疑うようなプレーがいくつかあり、「これが今の巨人なのか?」と正直驚いた次第です。ベンチには原 辰徳監督以下、かつてのスター選手がコーチとして居並んでいたのですが、ヤクルトと比べるとなんとなく時代遅れの感も。金にあかせて強い選手を外から持ってくるだけでは、本当に強いチームをつくることは難しいのかもしれません。さて、政府は11月12日、新型コロナ感染症の第6波に向けた対策の全体像を決定しました。全体像は、1)医療提供体制の強化、2)ワクチン接種の促進、3)治療薬の確保、4)日常生活の回復の4本柱で構成。医療提供体制については、第5波で最大で2万8,000人の入院が必要になったことから、第6波ではさらに3割増えた場合を想定し、3万7,000人分の病床を用意することとしました。“器”は十分だが、スタッフは集められるか?医療提供体制としては、「第81回 国立病院機構とJCHOに法律に基づく病床確保要求、民間への『要求』法制化の“前哨戦”か?」で書いた、国立病院機構や地域医療機能推進機構(JCHO)は約2,700人の患者受け入れ増を確保したとのことです。また、重症化リスクのある患者向けの臨時の医療施設や入院待機施設は今夏と比べ4倍弱の3,400人を受け入れられる体制を築く、としています。軽症者の宿泊療養施設も今夏より3割増しの6万1,000室を準備。さらに、全国3万2,000ヵ所の医療機関などと連携してオンライン診療や訪問看護を実施する体制も整える、としています。確保しているにもかかわらず、コロナ病床に患者を受け入れない、いわゆる「幽霊病床」対策としては、病院ごとの病床稼働状況を12月から毎月公表し、ピーク時の使用率を8割以上に高める、としています。第5波の反省を踏まえ、今回の全体像では、重症病床から臨時の医療施設、宿泊療養施設、訪問看護まで、満遍なく医療提供体制を整えたと言えるでしょう。ただ、気になるのは、本当に第6波が到来した時に、病床をはじめとするそれぞれの“器”に、十分な医療スタッフを配置できるかどうかです。「幽霊病床」が生じた一因としては、重症者対応などで人手不足が生じたことも指摘されています。今回、国立病院機構やJCHOなど公立・公的病院に病床の確保要求が行われましたが、民間病院に対しても病床や医療スタッフの供出を、要請ではなく要求できる法的な仕組みの整備はまだです。この点についても、流行が沈静化している今のうちになんらかの手を打っておいたほうがいいと思いますが、いかがでしょうか。診療報酬改定率巡り、財務省が強烈なジャブさて、現場の医療機関が今後のコロナ対応を模索する中、来年の診療報改定に向けての議論も本格化しています。今回は、11月に入りこちらも恒例のバトルがスタートした、来年の診療報酬改定を巡る動きを追ってみました。財務省主計局は11月8日の財政制度等審議会・財政制度分科会で、来年度の診療報酬改定について、「まずは改定前の診療報酬(本体)の伸びがどのような水準かということを出発点として改定の議論を行うことが適当であり、そこが高止まりしているのであれば、躊躇なく『マイナス改定』をすべきである。そうしたプロセス抜きに、診療報酬(本体)の改定率を論う意義は乏しい」と断言、日本医師会をはじめとする医療関係団体に強烈なジャブをかましました1)。さらに、「診療報酬(本体)改定率について医療費の適正化とは程遠い対応を繰り返してきたと言わざるを得ず、診療報酬(本体)の『マイナス改定』を続けることなくして医療費の適正化は到底図れない」とも言い切りました。診療報酬改定を翌年に控えたこの時期、財務省がマイナス改定を主張するのは恒例行事とも言えますが、今年はその真剣度が違う気がします。今回の改定は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって医療提供体制の脆弱さや地域医療構想の進捗遅れが顕になった中で行われます。さらに国の財政もコロナの余波で大幅に悪化したことを考えると、改定率がどうなるか(本体プラスとなるか)は予断を許さない状況です。「医療提供体制の改革なくして診療報酬改定なし」を再度強調振り返れば、財務省主計局は今年4月15日にも、財政制度等審議会・財政制度分科会(分科会長=榊原 定征・前経団連会長)において2022年度診療報酬改定に向けての方針を説明しており、「医療提供体制の改革なくして診療報酬改定なし」との方向性を示しました(「第56回 コロナで“焼け太り”病院続出? 厚労省通知、財務省資料から見えてくるもの」参照)。そして今回、医療提供体制についても改めて言及、「新型コロナ禍では、病院数・病床数の多さに比して医療従事者が少なく、医療資源が散在し、手薄な人的配置により『低密度医療』となっている。医療機関相互の役割分担や連携が不足している」と指摘、「国民が必要な時に必要な医療にアクセスできる医療提供体制に改革していくためには、医療機関の再編・統合を含む地域医療構想の実現、医療従事者の働き方改革、医師偏在対策の三位一体での推進が重要」として、「こうした改革の進捗がないまま、あるいは改革の進行を視野に入れることなく、診療報酬改定を行う意義は乏しく、財政資源の散財となりかねない」と、再度「医療提供体制改革なくして診療報酬改定なし」のスローガンを強調しています。国民医療推進協議会はプラス改定を強く要望財政制度分科会が開かれた翌日、すぐさま医療関係団体が財務省の主張に反論しました。日本医師会など医療関連41団体で構成する国民医療推進協議会は11月9日、次期改定において財源の確保を求める決議文を採択しました。決議文の内容は、「新型コロナウイルス感染症禍において、今後も緊張感を持った徹底的な感染防止対策が必要である。国民の生命と健康を守るため、新型コロナウイルス感染症対策における有事の医療提供体制と、新型コロナウイルス感染症対策以外の平時の医療提供体制は、車の両輪として何としても維持しなくてはならない。よって、適切な財源を確保するよう、本協議会の総意として、強く要望する」とシンプルなもので、新型コロナ対策における有事とそれ以外の平時の医療提供体制を車の両輪として維持するために、次期診療報酬本体のプラス改定財源の確保を求める内容です。同協議会終了後の記者会見で、中川 俊男会長(日本医師会会長)は、「新型コロナウイルス感染症禍において、地域の医療提供体制は依然として厳しい状況にさらされている。マイナス改定は到底あり得えず、当然プラス改定にすべきであると考えている」と述べ、財務省の「躊躇なく」の言葉を自身も用い、「躊躇なくプラス改定だ」と強く語ったとのことです。診療報酬改定シリーズはまさに本格化の様相です。次回は、今後の動きを少し予想してみたいと思います(この項続く)。参考1)財政制度分科会(令和3年11月8日開催)資料一覧

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新しい作用機序で心血管イベントを抑制するHFrEF治療薬「ベリキューボ錠2.5mg/5mg/10mg」【下平博士のDIノート】第86回

新しい作用機序で心血管イベントを抑制するHFrEF治療薬「ベリキューボ錠2.5mg/5mg/10mg」今回は、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬「ベルイシグアト(商品名:ベリキューボ錠2.5mg/5mg/10mg、製造販売元:バイエル薬品)」を紹介します。本剤は、標準治療を受けている左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者に対して、新しい作用機序で心血管イベントリスクを低減させることが期待されています。<効能・効果>本剤は、慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)の適応で、2021年6月23日に承認され、9月15日に発売されました。なお、左室駆出率の保たれた慢性心不全(HFpEF)における本剤の有効性および安全性は確立していません。<用法・用量>通常、成人にはベルイシグアトとして、1回2.5mgを1日1回食後経口投与から開始し、2週間間隔で1回投与量を5mgおよび10mgに段階的に増量します。なお、血圧など患者の状態に応じて適宜減量します。<安全性>国際共同第III相試験(VICTORIA、試験16493)において、副作用は本剤投与群2,519例中367例(14.6%)で報告されました。主な副作用は、低血圧172例(6.8%)、浮動性めまい37例(1.5%)、悪心19例(0.8%)、起立性低血圧、消化不良各14例(0.6%)、疲労11例(0.4%)、頭痛10例(0.4%)などでした。なお、重大な副作用として、低血圧(7.4%)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は心臓や血管の機能を調節し、慢性心不全が悪くなるのを抑えます。2.血管を拡張させる作用によって、めまい・ふらつきが現れることがあります。高い所での作業、自動車の運転や機械の操作には注意してください。3.(女性に対して)本剤を服用中および服用終了後一定期間は確実な方法で避妊してください。妊娠を希望する場合は医師に伝え、今後の方針について相談してください。<Shimo's eyes>本剤は、慢性心不全の適応で承認された初の可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬です。既存のsGC刺激薬としてはリオシグアト(商品名:アデムパス)が肺動脈性肺高血圧症などの適応で承認されています。慢性心不全の病態では、内皮細胞機能不全による一酸化窒素(NO)産生の低下やsGCの機能不全により、cGMPシグナルの低下が引き起こり、その結果として心筋および血管の機能不全の一因、さらには心不全の悪化に寄与していると考えられます。本剤は、NO受容体であるsGCを直接刺激する作用と、内因性NOに対するsGCの感受性を高める作用の2つの機序により、心血管系の重要なシグナル伝達経路であるNO-sGC-cGMP経路を活性化して、慢性心不全の進行を抑制します。日本人を含む国際共同第III相試験(VICTORIA、試験16493)では、慢性心不全の標準的な治療を受けているHFrEF患者に対して本剤またはプラセボが投与されました。前治療として、β遮断薬、ACE阻害薬またはARB、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の3剤併用療法を受けていた患者が59.7%を占めていました。その結果、本剤群では、心血管死または心不全による初回入院の複合エンドポイント発現の相対リスクが10%減少しました(ハザード比[HR]:0.90、95%信頼区間[CI]:0.82~0.98)。本剤と既存のsGC刺激薬であるリオシグアトは、降圧作用を増強する恐れがあるため併用禁忌であり、シルデナフィルを含むPDE5阻害薬、一硝酸イソソルビドなどの硝酸剤およびNO供与剤も同様の理由から併用注意となっています。なお、本剤投与前の収縮期血圧が100mmHg未満の患者では過度の血圧低下が起こる恐れがあるため血圧の確認も必要です。近年、HFrEFに対する新しい治療薬として、HCNチャネル阻害薬のイバブラジン(商品名:コララン)、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)のサクビトリルバルサルタン(同:エンレスト)、SGLT2阻害薬のダパグリフロジン(同:フォシーガ)などが使用できるようになりました。本剤は既存の治療薬とは異なる作用機序であり、標準治療が効果不十分な患者であっても心血管イベントリスクが低減する可能性があります。参考1)PMDA 添付文書 ベリキューボ錠2.5mg/5mg/10mg

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英語で「随時報告します」は?【1分★医療英語】第2回

第2回 英語で「随時報告します」は?I want to know when my surgery will be...(手術がいつか知りたいのですが…)Not decided yet, but I will keep you posted.(まだ決められませんが、随時報告します)《例文1》患者So, did you find anything on my CT scan?(CTで何がわかりましたか?)医師Well, the official report is still pending, but I will keep you posted.(まだ正式な報告書を待っているところですが、随時報告しますね)《例文2》患者Do I need surgery now? (手術が今必要ですか?)医師I understand your concern. We are still discussing your best treatment plan, but I promise we will keep you updated.(心配なのはわかります。最善の治療法をまだ検討中ですが、随時報告いたします)《解説》“I will keep you posted/updated.”は、米国の臨床現場では非常によく使われる表現です。患者やご家族からの質問は絶え間なくありますが、その場ですべてに回答できるわけではありません。正式な検査結果がまだ出ていなかったり、他科の医師と治療方針の協議中だったり、あるいは外来スケジュールの調整が必要だったりします。そのような場合に使える表現として、この“I will keep you posted/updated.”があります。絶え間なく変化する状況の中で物事を決定する医療現場にあって、「新たなことがわかり次第、お知らせします」というこの表現は有用性が高いのです。“post”には「手紙を投函する」や、最近では「SNSに動画や写真を投稿する」といった意味がありますが、「情報を知らせる」という意味もあります。“update”は日本語ではカタカナで使われているとおり「アップデートする」という意味です。したがって、“keep someone posted/updated”で「~に随時情報を知らせる」という意味になります。この表現は非常に便利で、同僚や上司から「随時連絡ください」という意味合いで“Please keep me posted/updated!”と言われることもあります。似たようなニュアンスを持つ言い回しとしては、“I will let you know when I know more.”もありますが、やはりより簡潔な今回紹介した表現のほうが頻繁に使われます。ぜひ使ってみてください。講師紹介

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第86回 COVID-19後遺症、感染と関連したのは無嗅覚のみ?

フランスのおよそ3万人(26,823人)の試験の結果、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染したと自己申告した人は調べた20近いさまざまな症状のほぼすべてのいずれかを長く(8週間以上)経験していましたが、抗体検査や医師の診断等で裏が取れたSARS-CoV-2感染と関連した症状は嗅覚消失の1つのみでした1,2)。調べた症状は睡眠障害、関節痛、背痛、胃腸異常(胃痛、下痢、便秘)、筋肉痛、疲労、注意困難、皮膚の異常、感覚症状(ヒリヒリしたり焼けるような感じ等)、聴覚障害、頭痛、呼吸困難、動悸、めまい、胸痛、咳、無嗅覚、その他の18項目で、SARS-CoV-2感染の自認は聴覚障害と睡眠障害を除く他全部と関連しました。対照的に、感染したことを裏付ける抗体検査陽性はただ1つ無嗅覚(嗅覚消失)とのみ関連しました。抗体検査陽性の人数は1,091人で、そのうち4割ほどの453人が感染を自認していました。医師や臨床検査(laboratory test)による判断でSARS-CoV-2感染が確認されていることも抗体検査陽性と同様に無嗅覚とのみ唯一関連しました。それらの結果によると新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後に長く続く症状は感染そのものより感染したという念に駆られること(belief in having experienced COVID-19)とより関連するようです。SARS-CoV-2自体のせいではなさそうなCOVID-19後の長患いが生じる仕組みを今後の研究で調べる必要があります。大学の運動部学生のCOVID-19後遺症は稀感染したという思い込みに起因するものを含めて理由はどうあれCOVID-19後の患者の多くが後遺症を被ります。たとえばスイスのジュネーブの外来患者を調べた試験ではCOVID-19診断から30~45日時点の少なくとも約3人に1人(32%)に長引く症状が認められています3)。しかし、常に体を鍛えている若者にCOVID-19後遺症が付け入る余地はどうやらほとんどないらしく、米国の大学の運動部の学生3千人超を調べたところSARS-CoV-2感染後の後遺症はほとんど認められませんでした4)。発症から3週間を超えて症状が続いた学生の割合は1.2%(44/3,529人)、12週間を超えて症状が続いていた割合は僅か0.06%(2/3,529人)でした。部活に復帰してからの胸痛、息切れ、疲労、動悸等の労作性症状の割合も低く4%(137/3,393人)でした。ただし、部活に復帰してから胸痛があって心臓MRI検査を受けた学生のうち21%(5/24人)におそらくまたは確実な心臓の支障が見つかりました。運動部の大学生のCOVID-19後遺症は少ないと分かって一安心ですが、感染後に部活に復帰した選手の体調は気をつけて見守って把握し5)、もし労作性の胸痛があれば心臓MRI検査を検討するべきでしょう。参考1)Long COVID symptoms may have causes other than SARS-CoV-2 / University of Minnesota2)Matta J, et al. JAMA Intern Med.2021 Nov 8. [Epub ahead of print]3)Nehme M, et al.Ann Intern Med2021 May;174:723-725.4)Petek BJ, et al.Br J Sports Med. 2021 Nov 1:bjsports-2021-104644. 5)Lingering COVID symptoms in young, competitive athletes rare, large study finds / Eurekalert

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小児アレルギーのトリセツ

「小児トリセツシリーズ」始動!アレルギー診療をマスターせよ小児におけるアレルギー疾患は増加の一途をたどっている。今やアレルギー診療は小児医療にとってコモンスキルといえる。しかし、アレルギー診療は外来のなかで話を聞き、診察と鑑別を繰り返し、対応を考えるということを短時間に行わなければならない非常にタフな分野である。専門性の高い食物アレルギーや気管支喘息の長期管理などは専門医にお任せ、という医師も多いだろう。しかし「誰でも、アレルギーは診れる」。本書は専門医ではないけれど、患者に相談されたときに的確に専門医レベルの対応ができるようになるためのマニュアルである。臨床で知りたいことがすぐわかる!「小児感染症のトリセツREMAKE」に続く、第一線・気鋭の単独著者による小児トリセツシリーズがついに始動。「トリセツ」で小児科医療はもっと面白くなる。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    小児アレルギーのトリセツ定価3,960円(税込)判型B6変判頁数240頁発行2021年10月監修笠井 正志編集岡藤 郁夫著者田中 裕也電子版でご購入の場合はこちら

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がん治療におけるアピアランスケアガイドライン 2021年版

がん治療に伴う外見変化への治療的・整容的対応、5年ぶりの改訂がん治療(手術・薬物療法・放射線療法)により皮膚障害や脱毛、爪の変形・変色などの外見(=アピアランス)の変化を生じた患者に医療者がより良いアピアランス支援を実践できるよう、医学・看護学・薬学・香粧品学・心理学の専門家が集結し、現在のエビデンスをもとに治療面と日常整容面のアプローチを分かりやすく解説。誤った情報に惑わされないために、がん診療に携わる医療者必読の1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    がん治療におけるアピアランスケアガイドライン 2021年版定価2,860円(税込)判型B5判頁数204頁・図数:28枚・カラー図数:6枚発行2021年10月編集日本がんサポーティブケア学会

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第83回 医師臨床研修マッチング結果公表、東大マッチ者数105人、フルマッチでも自大学出身者15.2%の意味

病院のチーム編成の基礎、医師臨床研修マッチングこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。さて、MLBのワールドシリーズはアトランタ・ブレーブスの26年振りの優勝で幕を閉じました。ブレーブスの優勝を牽引したのは、エディ・ロザリオ外野手、ホルヘ・ソレア外野手、ジョク・ピダーソン外野手ら、トレード期限である今年7月30日に新規加入した野手たちであったのはなかなか興味深いところです。7月初めの前半終了時点で負け越し(44勝45敗)だったチームが、ワールドシリーズで優勝したのは史上2チーム目だそうです。米国メディアでは、チーム構成の権限を持ちこれらの選手の獲得を行ったアレックス・アンソポロス GM(ゼネラル・マネージャー)の仕事ぶりを称える記事が数多く上がりました。一方、日本では、北海道日本ハムファイターズの新庄 剛志監督の就任会見インタビューが大きな話題となりました。見た目の派手さとは裏腹に、采配などに関する手堅い発言は、ひょっとしたら、と期待を抱かせるものでした。稲葉 篤紀GMとどのような新チームをつくるのか、楽しみです。ということで今回は、病院のチーム編成の基礎(プロ野球ならドラフトでしょうか)とも言える、医師臨床研修マッチングについて書いてみたいと思います。研修先内定8958人、内定率91.7%厚生労働省は10月28日、2021年度の医師臨床研修マッチングの結果を公表しました。医学生などの2022年度の臨床研修先を決める今回のマッチングで、研修先が内定した人数は8,958人(20年度比89人増)でした。マッチングの募集定員は1万904人(同103人減)、希望順位登録者数は9,768人(同142人増)でした。希望順位を登録した研修希望者のうち、臨床研修を受ける病院が内定した人の割合(内定率)は91.7%(20年度92.1%)でした。医師臨床研修マッチングは、2004年度に医師の臨床研修が義務化されたことにあわせて導入されました。臨床研修を受けようとする者と臨床研修を行う病院の研修プログラムを、お互いの希望を踏まえて、一定のアルゴリズムに従って、コンピュータにより組み合わせを決定するシステムです。 臨床研修を行う病院等の団体で構成される医師臨床研修マッチング協議会により行われています。臨床研修病院にマッチした医学生は63.3%で大学病院の倍厚労省のサイト、同協議会のサイトに「2021年マッチ結果発表資料」が掲載されています。それらのデータを基に独自集計した分析記事が、いくつかの医療専門媒体に掲載されました。「日経メディカル」は、大学病院希望者数と臨床研修病院(市中病院)希望者数の割合を出しています。それによれば、臨床研修病院にマッチした医学生は63.3%、大学病院の36.7%の倍となりました。大学病院と臨床研修病院の内定者数の差は2009年から拡大しているとのことです。多様で魅力的な研修内容や、待遇改善を打ち出す市中の臨床研修病院の人気は、今後も衰えないと見られます。大学病院本院81校中、定員充足率100%は14校発表資料には、「大学病院(施設別)における自大学出身者の比率」のデータがあり、大学病院別の定員充足率や、マッチ者に対する自大学出身者数の割合を見ることができます。大学病院本院81校中、定員充足率100%(フルマッチ)となったのは、東京大学(マッチ者数105人)、東京医科歯科大学(94人)、京都大学(76人)、京都府立医科大学(63人)、大阪医科薬科大学(55人)、奈良県立医科大学(54人)、関西医科大学(46人)、東海大学(46人)、聖マリアンナ医科大学(45人)、川崎医科大学(39人)、昭和大学(36人)、東京慈恵医科大学(35人)、藤田医科大学(32人)、産業医科大学(11人)の計14校でした。関西医大は7年連続、昭和大は5年連続でフルマッチを達成しています。なお、今回フルマッチを達成した中で、奈良県立医大、聖マリアンナ医大は昨年は30位以下(32位、36位)で、大躍進と言えます。逆に、定員充足率の低い大学病院本院を見ていくと、下位から弘前大学(マッチ者数4人、8.9%)、熊本大学(6人、14.0%)、岩手医科大学(7人、17.5%)、信州大学(12人、26.7%)、福島県立医科大学(12人、27.3%)となっています。地方の国立大学医学部が多いです。マッチ者の自大学出身割合が高い地方国立大医学部大学病院本院では、東京大学のマッチ者数105人、東京医科歯科大学94人、京都大学76人が際立っていますが、これを自大学出身者数の割合で比較すると、また違った風景が見えてきます。マッチ者の9割以上を自大学の出身者が占めた大学は17校あり、中でも高知大学(21人)、鳥取大学(15人)、島根大学(7人)、弘前大学(4人)はマッチ者の全員が同大の卒業生でした。こちらも地方の国立大学医学部にこの傾向が強いようです。ちなみに昨年、マッチ者全員が自大学出身者だったのは、旭川医大、山梨大学、金沢医科大学、香川大学、岩手医科大学でした。金沢医大、岩手医大以外はやはり地方国立大医学部です。地方の大学医学部は、うかうかしていると初期研修医を十分に集められない、というのが現状のようです。自大学出身者に残ってもらうため、研修内容の充実やアピールに毎年腐心している姿が浮かび上がってきます。”ブランド”大学医学部の自大学出身者率は低い傾向一方、自大学出身者 30%未満だったのは、東京慈恵会医科大学(14.3%)、東京大学(15.2%)、横浜市立大学(17.8%)、慶應義塾大学(22.0%)、順天堂大学(24.4%)、名古屋市立大学(25.0%)、神戸大学(25.9%)、北海道大学(29.4%)の8大学でした。自大学出身者の割合が低いのは、関東の”ブランド”大学医学部によく見られる傾向です。これらの大学では、初期研修では出身大学には進まず、市中の有名病院で腕を磨き、後期研修で出身大学の医局に戻ってくるケースが多いようです。慶應大学の場合は8割近くが戻ってくる、という話を聞いたこともあります。東大のようにいわゆる「ジッツ」(関連病院)が圧倒的に多い大学は、OBが多いジッツの有名病院で研修を受けるのがトレンドのようです。数年前に東大医学部を卒業した友人の息子も、研修先には東京の国立国際医療研究センター(今年の定員は32人で充足率100%)を選んでいました。自大学出身者が少なくても、定員充足率が100%近くにできるのは、”ブランド”大学医学部の強みと言えます。大都会という立地に加え、東大や慶應というブランドで、研修医を呼び込んでいるわけです。研修医としても、「研修先は東大でした」と後々周囲に言えるわけです。特に医師ではない一般人への効果は結構大きいと言えます(「東大王」というクイズ番組もあるほどですから)。「学歴ロンダリグ」とまでは言えませんが、自分の経歴に相応の箔を付けておきたい研修医は少なからずいることでしょう。一方、大学側としても、自大学出身者に加え、他大学からやってきた初期研修医も自分たちの”手駒”として将来使える可能性も出てくるわけで、双方にメリットがあることだと言えます。もちろん、医師臨床研修マッチングは、大学医学部だけではなく、市中病院にとっても貴重な若手戦力を確保する重要な機会です。各病院で、初期・後期の臨床研修を担当する責任者は、病院の将来のチーム編成の要の機能を果たしているわけで、そうした意味では、プロ野球チームのGMに近い存在と言えるかもしれません。

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経済的に困窮してしまう医師、3つの特徴【医師のためのお金の話】第50回

ドクターあるあるの1つに「月末の給料日が待ち遠しい」があります。給料日が待ち遠しい人は世の中にごまんといますが、医師は高給取りのイメージが強いので、そんなことを言おうものなら総スカンを食らってしまいそうですね…。でも、実際のところ、身近にたくさんいますよね、給料日が待ち遠しいドクター…。医師同士の飲み会なら気軽にカミングアウトできそうですが、一般の理解を得られないために公になることはあまりありません。私自身も大勢の「月末の給料日が待ち遠しい」ドクターを見てきましたが、彼・彼女らにはいくつかの共通点があることに気付きました。では、経済的に困窮してしまう医師の特徴を考えてみましょう。1)公的基幹病院に勤務している医師としてステータスが高いのは、何といっても大学病院や大規模な公的基幹病院の上層部になることでしょう。世の中への貢献度はピカイチで申し分ないのですが、残念ながらこうした立場にいる多くの医師は経済的に恵まれているとは言い難い状況にあります。主任教授を除くと経済的な見返りに乏しく、社会への貢献度と報酬のミスマッチが甚だしい状況です。この状況はコロナ禍でさらに加速してしまいました。場末病院に勤務する私の立場からは本当に申し訳ない思いです。公的基幹病院に勤務する医師は絶対的な報酬額が少ないので、浪費することに精神的充足を求めないほうがよいでしょう。医師としての価値や世の中への貢献度が最高レベルであることを誇りとして、満足感を得るのが得策です。2)独身歴が長い最近でこそ、FIRE(Financial Independence, Retire Early:経済的自立と早期リタイア)を志向して若いうちから節約に励む独身医師が増加していますが、医療業界における独身歴の長いドクターの多数派は、いわゆる「自由人」です結婚で縛られることを嫌い、人生を謳歌するスタイルを堅持する彼・彼女らは金遣いが荒いことが特徴です。アリとキリギリスでいうところの典型的なキリギリスなので、将来に備えて貯蓄する、という概念が希薄です。はたから見ている分にはうらやましい限りですが、40歳を越えたあたりから老後の生活に対する不安が出てきます。幸いにも医師は高給なので、将来に不安を感じたときが吉日です。少しずつ生活習慣を改め、将来のことを考えてみましょう。3)おとこ気がある外科系でよく見掛けるタイプで、先に挙げた独身歴の長いドクターとかぶることも多いです。人間味があってとても魅力的な人が多いことが特徴で、私もこのタイプのドクターは大好きです。実質的に、彼・彼女らが後進に医療技術を伝承してきたと言ってもよいかもしれません。しかし各方面への面倒見がいいので支出が多くなってしまいます。おまけに価値観が経済的成功ではないので、どうしても金銭感覚が甘くなりがちです。幸いにもコロナ禍でこれまでのような濃密な付き合いの機会が少なくなりました。おとこ気を発揮するのは職場だけで十分です。これを機に少し経済的な側面を見直してもよいかもしれません。収入と支出のバランスが重要ここまで経済的に困窮してしまう医師の特徴を考えてきましたが、書いていて少し切なくなりました。世の中への貢献度が高かったり、人間的魅力のある医師が多かったりすることに気付いたからです。しかし、彼・彼女らのような医師すべてが経済的に困窮してしまうわけではありません。困窮するのは収入に対して支出が大きいことが原因だと理解できれば、給料日が待ち遠しい事態は避けられるはずです。自分が3つのタイプの医師に該当している自覚がある人は、収入と支出のバランスが適切かを確認してみてください。

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パーキンソン病のオフ現象を考え外来診療に同行【うまくいく!処方提案プラクティス】第42回

 今回は、パーキンソン病患者の外来診療に同行し、医師に直接処方提案をした事例を紹介します。医師や患者とその場でコミュニケーションを取ることで、経過や考えを擦り合わせてスムーズに意思決定をすることができました。薬剤師が外来診療に同行することはあまり一般的ではなく、ハードルも高い処方提案ではありますが、今後の薬剤師の処方提案スタイルとしては有用だと考えてしばしば行っています。患者情報70歳、男性(独居)基礎疾患パーキンソン病、レビー小体型認知症、脊柱管狭窄症、高血圧症介護度要介護1服薬管理服薬カレンダー(2週間セット)に訪問看護師がセット介護状況月〜金 食事・ごみ出し・買い物で訪問介護が60分介入火・金 訪問看護・リハビリ処方内容 下記内服薬は一包化指示1.アムロジピンOD錠5mg 1錠 分1 朝食後2.オルメサルタンOD錠20mg 1錠 分1 朝食後3.レボドパ・カルビドパ水和物錠 4.5錠 分3 朝昼夕食後4.ゾニサミドOD錠25mg 1錠 分1 朝食後5.ロピニロール塩酸塩貼付薬16mg 1枚 朝貼付6.リバスチグミン貼付薬9mg 1枚 朝貼付7.リマプロスト アルファデクス錠5μg 6錠 分3 朝昼夕食後8.デュロキセチン塩酸塩カプセル20mg 1カプセル 分1 朝食後本症例のポイント患者は独居ですが、服薬カレンダーを用いて管理を行い、アドヒアランスは良好でした。しかし、日中の眠気が間欠的に出現したり、すくみ足の症状から転倒を繰り返したりして困っていることを来局時に聞き取りました。患者本人の感覚としては、ロピニロール貼付薬を8mgから16mgに増量してから眠気の症状がひどくなった気がするため、薬の量を医師に相談するつもりとのことでした。さらに情報の聞き取りを進めてみると、眠気は決まって早朝、昼食後、15〜17時、20時ごろと規則性があることが判明しました。訪問看護・介護スタッフに普段の様子を聞き取ると、「規則的な眠気もあるが、本人が動かずに静止していることもあり、すくみ足の症状も同時間にひどくなっている。会話も聞き取りにくい」ということが確認できました。患者は薬の影響ではないかと思っているようですが、私は上記の状況経過からウェアリングオフ現象ではないかと考えました。ウェアリングオフ現象は、パーキンソン病の進行に伴ってL-ドパの効果が短くなる現象で、突然パーキンソン症状が現れるため日常生活に大きな影響をおよぼします。オフ現象がある場合は医師と上手に意思疎通ができないことを考慮し、また薬剤師の見解を伝えて直接処方提案をしたかったため、本人了承の下で外来診療に同行することにしました。処方提案と経過患者さんへの問診が終わったところで、患者および訪問看護・介護スタッフからの眠気やすくみ足の症状は薬剤が影響しているのではないかという不安を伝えるとともに、状況・経過などからウェアリングオフ現象の可能性を医師に伝えました。医師より、「今回の診察と状況経過から、薬剤性というよりもウェアリングオフ現象の可能性が高いため、ラサギリンを開始して様子を見よう」という回答がありました。しかし、患者はデュロキセチンを服用しており、デュロキセチンとラサギリンは併用禁忌であることから(参考:第39回「同効薬切り替え時の“痛恨ミス”で禁忌処方カスケードが生じてしまった事例」)、診療ガイドライン1)の推奨度BのCOMT阻害薬を代替薬として追加してはどうかと提案しました。その結果、オピカポン錠25mgを追加することになり、受診翌日より服用開始となりました。その後、患者さんは、服用開始7日目くらいで日中の眠気や話しにくさ、すくみ足が改善し、転倒することもなくなったと訪問看護・介護スタッフより聞き取ることができました。薬剤師が外来に同行して現行の課題や代替案を提案することで、より良い治療に一歩近づくことができたと実感したエピソードとなりました。1)「パーキンソン病診療ガイドライン」作成委員会編. 日本神経学会監修. パーキンソン病診療ガイドライン2018. 医学書院;2018.

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