サイト内検索|page:92

検索結果 合計:5062件 表示位置:1821 - 1840

1822.

降圧薬のイベント防止効果は1次および2次予防や心血管疾患既往の有無で異なるか?(解説:江口和男氏)-1405

 血圧は下げれば下げるほど将来の脳心血管発症リスクが減少する。わが国およびその他の国際的な高血圧ガイドラインでは、降圧薬による降圧治療の適応は、生活習慣修正により十分な降圧効果が得られない場合や、血圧レベルが高くない場合でもリスク表により高リスクと判断される場合である。一般的に降圧薬開始の基準となるのは、外来血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上の場合であり、それ以下の血圧の場合、降圧薬治療開始の適応とはならない。高血圧のリスク表(JSH2019ガイドライン表3-2)については、糖尿病や尿蛋白の有無、心血管疾患の既往のありなしで血圧目標が異なり、日常診療で応用するにはやや複雑である。たとえば、心血管疾患既往があれば、高値血圧(130~139/80~89mmHg)の範囲であっても、リスク第三層「高リスク」に分類される。しかし、心血管疾患既往の有無やベースラインの血圧レベルで、どの程度イベント抑制効果が異なるかということについて結論が出ていなかった。 本メタ解析では48のRCTに登録された34万4,716例という膨大な数の対象者を個別解析した。ランダム化前の血圧は、心血管疾患既往者(15万7,728例)では146/84mmHg、心血管疾患既往なし(18万6,988例)では157/89mmHgであった。ベースラインのSBP<130mmHgの者は、心血管疾患既往者では3万1,239例(19.8%)、心血管疾患既往なしでは1万4,928例(8.0%)であった。中央値4.15年の観察期間で12.3%が少なくとも1回の心血管イベントを発症し、心血管疾患既往なしでは、MACEの発症率は対照群で31.9/1,000人・年、治療群で25.9人・年であった。心血管疾患既往者においては、MACEの発症率は対照群で39.7/1,000人・年、治療群で36.0人・年であった。SBP 5mmHg低下当たりのMACE発症のハザード比は、心血管疾患既往なしで0.91(95%CI:0.89~0.94)、心血管疾患既往者で0.89(95%CI:0.86~0.92)と、ともに有意であった。層別解析では心血管疾患既往の有無やベースライン血圧カテゴリー別で明らかな差は認められなかった。 本メタ解析ではSBP 5mmHg当たりの低下はMACEを約10%減少させたが、それは心血管疾患既往の有無や正常もしくは正常高値の血圧値であっても同様であった。では、本メタ解析の対象者のリスク層別化はいかがであろうか? 一般に高リスクとされる集団からイベントが発症しやすいが、実臨床では必ずしも高リスクに分類された人のみから心血管イベントが発症するとは限らず、低リスクと考えられていた人からもイベントが発症することがある。したがって、リスクの高い人だけを治療するのではなく、低リスクであっても降圧治療により下げておくメリットがある。本メタ解析の結果はTROPHY試験(Julius S, et al. N Engl J Med. 2006;354:1685-97.)―すなわち、正常高値血圧の血圧レベルでも、2年間のARB治療によって66.3%が高血圧への進展を免れうる―に通ずるところがあり、興味深い。 本メタ解析の著者らの主張としては、降圧薬治療により一定の降圧効果が得られれば、MACEの1次および2次予防効果が得られ、それは現在降圧薬治療の適応とはならない低い血圧値であっても有効であるというものである。JSH2019によれば、「正常高値血圧および高値血圧レベル、かつ低・中等リスクであれば3ヵ月間の生活習慣の是正/非薬物療法を行い、高値血圧レベルでは高リスク者であってもおおむね1ヵ月は生活習慣の是正を行い、改善が見られなければさらなる非薬物療法の強化に加え、降圧薬療法の開始を検討する」とされている。しかし、そこまで待ってよいのであろうか? 低リスクだと本当に何も起こさないのであろうか? 本メタ解析の結果を考慮すると、血圧レベルに関係なく、心血管疾患既往の有無にかかわらず、まず降圧薬による治療を開始し、同時に生活習慣の修正を試みながら可能であれば徐々に薬を減量、中止していくというアプローチのほうがいいのではないだろうか?(実際にそのようにしている臨床医も多いと思われる)

1823.

オリゴ転移乳がん、サブタイプ別の予後良好因子(OLIGO-BC1サブセット解析)/ASCO2021

 日本、中国、韓国によるオリゴ転移乳がんに関する後ろ向きコホート研究(OLIGO-BC1)のサブセット解析として、乳がんサブタイプ別に各予後因子における全生存期間(OS)を検討した結果を、中国・Guangdong Provincial People's HospitalのKun Wang氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。どのサブタイプにおいても、局所療法と全身療法の併用およびECOG PS0が予後良好で、luminalおよび HER2タイプでは、診断時Stage I、オリゴ転移が1個のみ、長い無病生存期間も生存ベネフィットと関連していた。オリゴ転移乳がんの予後良好な因子を評価 本研究は、日本癌治療学会(JSCO)、中国臨床腫瘍学会(CSCO)、韓国臨床腫瘍学会(KSMO)によるFederation of Asian Clinical Oncology(FACO)が実施した国際的後ろ向きコホート研究で、ASCO2020では、局所および全身療法がオリゴ転移乳がん患者のOSを延長したこと、多変量解析からは、ある種の全身療法、若年、ECOG PS0、診断時Stage I、非トリプルネガティブタイプ、少ない転移個数、局所再発、長い無病生存期間においてOSが延長することを報告している。・対象:2005年1月~2012年12月に診断された、ABCガイドラインで定義されたオリゴ転移乳がん(転移病変が少なく[5個以下、同一臓器に限らない]、サイズが小さい、腫瘍量の少ない転移疾患)で、全身療法(化学療法、内分泌療法、抗HER2療法など)と局所療法(外科的切除、放射線療法、焼灼療法、経カテーテル動脈(化学)焼灼療法など)の併用、もしくは全身療法のみで治療された患者・評価項目:OS オリゴ転移乳がんをサブタイプ別に各予後因子におけるOSを検討した主な結果は以下のとおり。・オリゴ転移乳がん患者1,200例におけるオリゴ転移数は、578例(48%)で1個、289例(24%)で2個、154例(13%)で3個、102例(9%)で4個、77例(6%)で5個だった。・骨転移は301例(25%)、内臓転移は387例(32%)、局所再発は25例(2%)、多発性転移は404例(34%)で報告された。・luminalタイプは 526例(44%)、luminal-HER2タイプは189例(16%)、HER2タイプは154例(13%)、トリプルネガティブタイプは166例(14%)、その他は164例(13%)で報告された。・どのサブタイプにおいても、局所療法と全身療法の併用、 ECOG PS0で生存ベネフィットが認められた。・luminalおよび HER2タイプでは、診断時Stage I、オリゴ転移数1個、長い無病生存期間も生存ベネフィットと関連していたが、トリプルネガティブタイプではこれら3因子による生存ベネフィットはなかった。・局所治療では、外科的切除と放射線療法の併用で生存ベネフィットがみられた。・リンパ節・肺・肝臓・骨転移において、転移数1個は2個以上に比べて5年OSが良好だった。 Wang氏は、「オリゴ転移乳がんは偶然にみつかるが、いくつかの症例は集学的治療で生存しうるようだ。予後良好な因子を評価し、局所療法を検討することは価値がある」と結論している。

1824.

「薬剤師の資質向上」の先にある薬学部の定員抑制とカリキュラム改革?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第70回

薬剤師に求められる役割や需要・供給が議論されているのをご存じでしょうか。厚生労働省の「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」という会合で、2020年7月に第1回が開催され、2021年6月に早くも第9回と第10回が開催されました。ストレートな名前のとおり、この検討会は、かかりつけ薬剤師・薬局や改正薬機法によって薬剤師に求められる役割が変化している中で、今後の薬剤師の養成や資質向上などの課題を議論することを目的としています。第9回の検討会では、薬局および医療機関で働く薬剤師を対象として、薬剤師業務の実態や働き方、先進的な取り組みについて調査した「薬剤師の需給動向把握事業における調査結果」に基づいて、取りまとめの論点整理が行われました。この調査結果で気になったものを一部抜粋して以下に示します。【調査結果(抜粋、一部改変)】薬局の常勤職員の人数は2人以下が62.4%であった。勤務形態が常勤である薬局薬剤師は73.1%、病院薬剤師は92.7%であった。薬局の処方箋1枚の受付から薬剤交付・記録までの処理時間は12分41秒であった(計数調剤で測定)。薬局における一般用医薬品の取り扱いは、50品目未満の薬局が50.6%であり、一般用医薬品を取り扱っていない薬局が10.9%であった。薬局において、2020年9月の退院時カンファレンス、地域ケア会議、サービス担当者会議への参加実績はすべて10%以下であった。薬局で電子薬歴システムを導入している割合は75.7%、電子版お薬手帳を導入している割合は57.5%であった。病院で電子カルテを導入している割合は55.9%、電子版お薬手帳を導入している割合は2.9%であった。意外と高い!低い!など、さまざまな感想を抱かれるかと思いますが、皆さんの薬局の実態と比較していかがでしょうか。私個人としては、病院の常勤率の高さと電子カルテ・電子版お薬手帳の導入率の低さが意外だなと思いました。電子処方箋に対応したお薬手帳の利用方法変更にも言及本調査の結果やこれまでの議論の論点を整理した「議論のまとめ(案)」というものが作成され、厚生労働省や文部科学省での対応・検討が必要なもの、本検討会で引き続き議論が必要なものが示されました。【薬局、病院(抜粋、一部改変】対人業務の充実と対物業務の効率化のためには、薬剤師しかできない業務に取り組むべきであり、薬剤師でもできる業務は機械の導入や薬剤師以外の者による対応にタスクシフトを行うべき。要指導医薬品や一般用医薬品の提供も前提に、処方箋に依存しない業務に取り組むべき。電子処方箋により処方薬の情報がリアルタイムで把握可能になると、服用薬を一元的・継続的に把握するため、お薬手帳の利用方法を変えていく必要がある。薬剤師の従事先には地域偏在があり、偏在を解消するための薬剤師確保の取り組みが必要である。とくに病院薬剤師の確保は課題。【薬学教育、国家試験(抜粋、一部改変)】今後の人口減少による影響や今回の需要推計を踏まえると、将来的に薬剤師が過剰になると予想される状況下では、入学定員数の抑制が必要か否かも含めて検討すべき。今後、薬学教育モデル・コアカリキュラムの見直しを文科省で検討する際には、「今後の薬剤師が目指す姿」を踏まえたカリキュラムとすべき。実務実習以外でも、多職種の学部との連携を含め、臨床現場の実態が学習できるようなカリキュラムとすべき。国家試験は、学術の進歩や医療の変化、薬剤師業務の変化に対応した出題とすべきであり、定期的に合格基準・出題基準の見直し要否の検討を医道審議会で行うべき。この検討会は「薬剤師の養成および資質向上」という耳当たりの良い言葉ですが、薬剤師にとっては厳しい変化の足音にも聞こえます。まとめ案に何度も出てくる「ICTの活用」「対物業務の効率化」「タスクシフト」「地域偏在」「医療現場と連携した薬学教育」などがキーワードになり、今後の方向性の取りまとめが行われるのではないかと想像します。今年度中に薬剤師の在り方のまとめを作成する予定とのことですので、今後もチェックしていきたいと思います。

1825.

筋層浸潤性膀胱がんに対するGC+ニボルマブの有用性評価/ASCO2021

 筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)を対象に、シスプラチン+ゲムシタビン+ニボルマブ併用投与の有用性評価と、膀胱温存が可能な症例の予測に関する報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、米国・Icahn School of Medicine at Mount SainaiのMatthew D. Galsky氏よりなされた。 本試験(HCRN GU16-257)は米国で行われた多施設共同第II相試験である。MIBCでは、プラチナベースの術前化学療法により30~40%の症例が病理学的完全奏効(pCR)を得られることと、そのpCR症例は予後良好であることが知られているが、そのpCRが明らかになるのは膀胱摘除後である。また過去のレトロスペクティブ研究によると、その10年生存率は膀胱全摘65%、部分切除73%、切除なし75%と大きな差はなく、部分切除例では53%、切除なし例では61%が、膀胱温存したままで10年生存を得ていたという報告がある。・対象:シスプラチン(CDDP)の投与適格のcT2-4a/N0/M0のMIBC・介入:CDDP+ゲムシタビン+ニボルマブ 4サイクル(GC+Nivo)臨床的完全奏効(cCR)症例はニボルマブの追加投与(4ヵ月)、その後局所再発をきたした時点で膀胱摘除術実施。Non-cCR症例は膀胱摘除術を実施・評価項目[主要評価項目]cCRの割合、治療ベネフィット予測因子としてのcCRの可能性評価(2年間の無転移生存、または膀胱摘除時にpCRが確認された場合を治療ベネフィットとした)[その他評価項目]初診時のTURBT検体におけるDNA損傷修復関連遺伝子(ERCC2、FANCC、ATM、RB1)変異およびTMBとcCRの相関性 主な結果は以下のとおり。・2018年8月~2020年11月に76例が登録された。年齢中央値69歳、男性79%、臨床病期はcT2が57%、cT3が32%、cT4が12%であった。・4サイクルの薬物治療を完遂できたのは64例で、48%(31例)がcCRを達成した。・cCR達成31例中30例が膀胱温存。残りの1例とNon-cCR症例(33例)が膀胱摘除術を受けた。・cCR獲得後の膀胱温存症例では8例に局所再発が認められ、6例に膀胱摘除術が施行された。その際、50%は病理学的ステージがpT1N0以下であった。・Non-cCR症例で膀胱摘除術を受けた症例の36%がpT1N0以下で、32%がpN+であった。・有害事象プロファイルは、他のGC+Nivo試験での報告と同様であった。・TMB高値(≧10mut/Mb)と、ERCC2変異でcCRまたはpCRとの相関が認められた(いずれもp=0.02)。  最後に発表者は、MIBCに対するGC+Nivo療法は、cCRを達成できるレジメンであり、このcCRが膀胱を温存したままでの長期の無再発生存につながる可能性がある、と述べた。

1826.

事例028 介護職員等喀痰吸引等指示料の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説1日複数回の喀痰吸引を必要とする在宅患者に介護施設の職員が対応するため、定期的に「介護職員等喀痰吸引等指示書」(以下「指示書」)を発行していました。3月に介護施設の職員からの状況報告を受けて、前回発行の指示書の内容変更を必要としたため、患者家族の了解を得て指示書を交付し、「C007-2 介護職員等喀痰吸引等指示料」(以下「指示料」)を算定したところ、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)にて査定となりました。査定原因を調べるために点数表を確認すると、指示料の告示部分に「有効期間が6ヵ月以内の指示書を交付した場合に3月に1回算定する」とあります。算定担当者に話を聞くと、この告示をみて、前回算定月から翌々月であっても6月間に2回の算定が可能であると勘違いしており、次回は7月に指示料算定可能とメモを残して算定していました。ところが、診療録も見直したところ、前々回の指示料の算定月は昨年10月でした。算定月を含み3ヵ月経過後の今年1月に算定があるので、算定月を含み3ヵ月を経過した4月でないと算定ができないことがわかります。したがって、前段の勘違いもさることながら、3月の指示料の算定は告示の要件を満たさないとしてD事由が適用されたものと推定されます。定期的に指示書を交付している在宅患者を複数抱えているために、レセプト作成システム内における指示料の履歴管理を前々回まで参照して算定することを徹底し、レセプトチェックシステムで前回算定日から2ヵ月空いていないと警告が表示されるように登録し、今後の査定対策としました。

1827.

第62回 ワクチンオタクがコロナの余剰ワクチン打ってきた!~接種に辿り着くまで~

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の高齢者向け接種が始まって2ヵ月が経過した。接種業務については、周知のとおり各自治体にかなり裁量権があることや自治体ごとに人口構成や地理的条件も異なるため、ここに来てかなり自治体間の「格差」が生じている。以前の本連載の第52回でも触れたように、私は「ワクチンマニア」「ワクチンオタク」を自認している。当然ながら早く接種したくてうずうずしている。ちなみに私の居住地は東京都練馬区。いわゆる個別医療機関でのワクチンの小分け配送による接種体制を最初に確立した「練馬モデル」の地域である。練馬区では最近、2バイアル当たりの残り分で接種1回分を確保する運用の「リザーブワン」モデルも始めている。もっとも接種を受ける側からすると、現時点で区報に記載された個別接種医療機関のうち、かかりつけ患者以外に対応するのは少数であること、64歳以下の接種券配布はまだ行われていないこと、区が主導するキャンセル待ちシステムがないなど、もう少しウイングを広げて欲しいと考える点はある。さて、先ほど「早く接種したくてうずうずしている」と書いたが、より正確には「早く接種したくてうずうずしていた」が正しい。実はキャンセルにより発生した余剰ワクチンで1回目の接種を終えたからだ。これまた本連載の第59回で触れたように、河野大臣が記者会見で余剰ワクチンは接種券の有無や年齢、居住地に関係なく接種して良いと語り、そのことが通知となってからはひたすら余剰ワクチンのキャンセル待ちができる医療機関を探し始めた。最初に申し込みをしたのは、NHKでもキャンセル待ちシステムが紹介されたあるクリニックグループ、そして今月上旬に20年来の友人が無事接種にこぎつけた別のクリニックグループ、その他個別のクリニックなど、いずれもネットを通して申し込んだ。また、顔見知りの医師で、自院で接種を行っている人にも声をかけた。もっとも顔見知りの医師はほぼ一様に「いや、本当にキャンセルでの余剰ワクチンを接種したとしても、村上さんが相手だとコネだと批判されそうだなあ」との反応。まあ、この反応は予想の範疇だったので「どんなに代わりを探しても誰も見つからない場合に…」とだけ伝えておいた。そのうえで余剰ワクチン発生時にはいつでも接種できるよう、厚生労働省のホームページからダウンロードした予診票のうち事前に記入可能なところは記入し、過去のワクチン接種歴が記載されているイエローカード、お薬手帳とともにジャケットの内ポケットに入れて常に携帯していた。ちなみに記入済みのもう一枚の予診票とイエローカード、お薬手帳のコピーはいつも持ち歩くデイバッグの中に。これらすべてのスキャンデータをPDF化し、PCとスマホにも保管していた。一報があれば、これらを先にメールなどで送り、駆けつけることで対面時の問診を最小限するためだ。それからというものほぼ毎日のように「ワクチン and キャンセル待ち」でGoogle検索をかけていたが、ある時、自治体が公的にキャンセル待ちシステムを用意していなくても、個別接種医療機関のホームページでキャンセル待ちを募集しているケースがそこそこにあることに気づいた。そこで区内の個別接種医療機関のホームページ巡りをしたところ、あるクリニックの「ワクチン無駄ゼロバンク」なるキャンセル待ちシステムが目にとまった。LINE、電話、窓口を通じ、予め登録した人がキャンセル待ちをできるというもの。登録時は▽名前、年齢、性別▽そのクリニックの診察券番号(持っている人のみ)▽電話番号▽住所▽アレルギーの有無(ある場合は詳細)▽既往歴▽内服薬(薬剤名も詳細に)、の情報が必要になる。区内在住者ならば接種券がなくとも後日持参することで対応するという。早速、LINEを通じて申し込んだ。その際、わざわざ「お薬手帳、過去のワクチン接種歴がわかるイエローカード、当日の状況以外は記載済みの新型コロナワクチン予診票は常に携帯」とメッセージを送り、イエローカードの写真データも送付した。「やりすぎ」と言われるかもしれないが、こちらはいつでも応じる覚悟ありという姿勢を示しておきたかったのだ。その日のうちにクリニックからは登録完了の返信が来た。そして翌日、「週明けに接種枠を拡大することになったため、予約枠の空き状況によっては無駄ゼロバンクの登録者に接種の案内をするので、都合の悪い日時を教えて欲しい」とLINEメッセージが来た。これはよく聞いていたケースだ。行政などからの要望に応じて接種枠を増やした直後、大規模会場や職域での新たな接種などのスタートと重なり、個別接種医療機関の予約枠がガラガラになってしまい、ワクチンも余ってしまう問題だ。あとは完全に医療機関の裁量でも良いと思うのだが、自治体によってはその場合でも「接種券のある人のみ」や「自治体の住民のみ」との縛りを設けていることが多く、私自身一部の医師からの不満も耳にしていた。この辺は厚生労働省からの通知があったとしても、後々の現場の事務作業が煩雑になることを警戒した自治体の判断らしい。とりあえずNG日だけを伝えると、折り返しクリニックから6月26日に1回目、7月17日に2回目、いずれも午前10時という日程が提示されて了承した。それでもなお「その前に余剰が発生した際にはすぐにご連絡ください」と念を押した。日程確定の翌日、国立国際医療研究センター主催のオンラインプレスセミナーを視聴中、あと数分で終わりという段階で電話が鳴った。すでにこのクリニックの電話番号はスマートフォンの電話帳に登録済みだったので着信した瞬間に分かった。受けると同時にこちらから「村上です。ワクチンに余剰が出たんですね?」と尋ねた。クリニック側「その通りです。今から来れますか?」私     「はい、20分で」クリニック側「確か記入済みの予診票をお持ちでしたよね」私     「はい」クリニック側「助かります。ではお待ちしております」すぐさま事務所から飛び出してクリニックに向かって駆け出した。20分という時間予想はあくまで徒歩だったが、一刻も早く着きたかった。接種できるようになったから走って行ってくるとFacebookに投稿すると「ダッシュして息上がってゼハゼハ言って、体温も上がってサーモで引っかかるに10ルーブル」とコメントが入り、はっとして歩き始めた。クリニックに到着すると、すでに院内は高齢者で一杯。窓口でキャンセルワクチンの件で連絡が来た旨を伝え、予診票を示すと、すぐに体温計を渡された。36.3℃で問題なし。そしてカタカナで名前が書かれたシールを貼りつけたリストバンドを渡され、装着するよう指示された。体温計を戻して2分ほど待つと、診察室に案内された。中には医師と看護師の2人。挨拶をして念のために持ってきましたと、イエローカードとお薬手帳を見せると、看護師が「ああ、このグリーンカード(いえ、イエローカードです!)の人、みんなの中で話題になってたんですよ」と素っ頓狂な声をあげる。医師は「ほー」と言いながらイエローカードを手に取って眺めている。「海外にも行かれたりするんですか?」と聞かれたので、「ええ、まあ」と。そしてあっさり「じゃあ打ちますか?」となった。接種シーンを撮影しても良いか尋ねたところOK。ということで看護師さんにスマホを渡して接種シーンを撮影してもらった。「はい、終了です」と言われた時には「え、もう終わり?」という感じだった。一応、マニアとして10種類のワクチン筋注を経験しているが、その中で最も針刺し感がなかったからだ。一応、アトピー性皮膚炎持ちのアレルギー体質ということもあり、アナフィラキシー確認の待機時間は自ら30分を希望し、了承された。待合室に戻ると、リストバンドの名前シールがはがされ、受付にある大きな砂時計に貼り付けられる。15分計測の砂時計らしい。ほかの待機者分も含め複数の砂時計が置かれている。スマホで撮影してもらった写真を拡大し、間違いなく針が刺されていたことを確認。その後は持ってきた本を読みながら過ごし、15分後に看護師さんから「村上さんはもう1周ね」と声を掛けられ、再度砂時計がひっくり返された。最終的に何事もなく、そのまま帰宅の途に就いた。さて、それからちょうど丸2日になる。翌日は注射部位反応の軽い圧痛はあったが、倦怠感、発熱はなし。本日もやはり倦怠感、発熱はなし、昨日の圧痛すらなし。あっけなく1回目の接種が終了した。ちなみにこの2日間、キャンセル待ちを入れたほかの医療機関のキャンセル取り消しにてんやわんやとなった。

1828.

「退職金引当金」でわかる、医療機関の経営状態ホントのところ【今さら聞けない!医療者のための決算書の読み方】最終回

<登場人物>病院で同期だったコンサルタントの田中に定期的に相談を始めた宮路は最近、実家の病院の経営会議に出るようになり、新たな疑問が出てきたようだ。宮路:減価償却の話、ありがとう! よく理解できた気がするよ。何かほかにも財務諸表を理解するうえで気を付けるべきポイントってあるかな?田中それはよかったよ。そうだね、宮路先生の実家の病院には、職員の退職金制度ってあるのかな?宮路はっきりとはわからないけれど…、聞いたことはあるな。田中そうか、それじゃあ退職金を例に「引当金」について見ていこう。宮路ひ、ひきあてきん…? 初めて聞くワードだ…。安田そうですね。普段あまり耳にすることがない用語ですね。でもこのポイントをマスターすれば、グッとレベルアップできますよ。では、「引当金」について説明しますね。公認会計士・安田の解説引当金は、会計の中でもとっつきにくいテーマの1つです。簡単に言えば「将来の支出に備えて、あらかじめ費用を計上して資金をためておく」という会計の技法です。引当金の中にもいくつかの種類があって、一番有名なのは「貸倒引当金」です。ほかにも返品調整引当金賞与引当金退職給付引当金特別修繕引当金製品保証等引当金などがあります。法人税法上では損金として計上することが認められない引当金でも、「財務会計上は期間損益計算を適正に行う」という財務会計の目的を満たすため、計上する必要があります。法人税法上損金になるかならないかに関係なく、引当金を計上しないと誤った経営判断をする恐れがあるためです。「財務会計上の費用として計上すること」と「法人税法上の損金(経費)として認められること」は、別問題なんです。負債である各種引当金を積み上げないと、財務諸表上の「見栄え」はよくなります。そういった「見栄え(だけ)がよい」財務諸表を基に医療機器を購入する、スタッフを雇うなどの投資の判断を行うことにはリスクが伴います。働く人の視点で考えると、自分の勤める病院、転職しようと思っている病院において退職給付引当金を計上されているかは「隠れ負債」の有無の判断の目安になりますし、退職給付引当金を計上しているほうが財務健全な経営をしていると言えます。シンプルに言えば、「自分が退職する際に退職金が支払われない」というリスクが少ない、とも言えますね。宮路なるほど、確かにそうですね…!安田だからといってやみくもに引当金を計上するのではなく、引当金を計上するには要件が必要なんです。その要件は次の4つです。1)将来の特定の費用または損失であること2)その費用または損失が当期以前の事象に起因して発生するものであること3)発生する可能性が高いこと4)金額を合理的に見積もれることこの4つすべて満たす必要があり、恣意的な計上はできないんです。田中:ではここから「退職給付引当金」が財務諸表にどういった影響を与えるかを見ていきましょう。コンサルタント・田中の解説画像を拡大する20年勤務したスタッフに、一括で2,000万円の退職金を支払うケースを例に考えてみましょう。まずはキャッシュフロー計算書を見てみます。キャッシュフロー計算書は実際の現金の流れを表しているので、退職金支払い時(勤続20年目)に退職金として2,000万円を計上する処理になりますね。次は損益計算書です。これは組織ごとの退職金のルールによりますが、人件費の項目として「退職引当金繰入額」が「1年当たりに積み上がる退職金の金額」として計上されます。ポイント制退職金(1年ごとに○ポイントが加算され、退職時にたまっているポイント×▲円の退職金が支給される方式)を例にとると、その1年間にたまるポイント、言い換えればその時点でスタッフがもらう権利のある金額が積み上がります。もちろん、これは実際に支払っているわけではありませんが、毎年相当額を計上するわけです。この例ではスタッフ1人分で見ているのでそこまで大きな額ではありませんが、病院全体で見れば退職金支給対象のスタッフ全員分が反映されるので、かなりの金額になるでしょう。最後に貸借対照表を見てみましょう。病院から見ると、退職給付引当金は将来的に支払わなければならない「負債」に当たるので、損益計算書に計上した額が毎年「固定負債」に積み上がり、退職金支払い時(勤続20年目)に退職金総額が負債からなくなります。田中:前回(第5回「『減価償却費』が、それぞれの財務諸表へ与える影響を知ろう」)で説明した減価償却とは逆のパターンだね。損益計算書上は毎年積み上がる退職金額が費用として発生しているけれどキャッシュは減らず、実際は退職年度に総額のキャッシュが減ることになるんだ。宮路:そうか、これも財務諸表上の表れ方がそれぞれ異なるんだね。田中:そう。減価償却でもそうだったけれど、損益計算書上と実際の現金の流れは異なるので、しっかりと把握して経営していかないとね。宮路:わかったよ。今までいろいろありがとう! 各財務諸表の性質と役割をしっかり理解して経営会議で意見するようにするよ!

1829.

「リモート医事(iisy)」で医療事務作業を改善/ソラスト

 医療事務受託サービスを展開する株式会社ソラストは、医療従事者の業務負担の軽減や患者の待ち時間短縮など、これからの時代に即した医療DX(Digital Transformation)パッケージ「リモート医事(iisy)」に関するメディア発表会をオンラインで行った。 今回発表された「リモート医事」は、医療機関の医療事務作業を“リモートセンター”からリアルタイムにサポートするサービスであり、医療事務だけでなく、「診療サポート」「経営支援」「ITサポート」を包括的にDX化して支援する。iisyのリモート医事サービスで現場の負担を軽減する はじめに同社の代表取締役社長の藤河 芳一氏が、会社概要の説明とともに「リモート医事」について、これから日本が直面する労働人口減少社会でのDX化が医療機関の直面する課題であり、これらに対応するために開発を行ったと経緯を説明。「今回の製品“iisy”は最初のステップであり、将来的には『医療・介護のデータビジネス』へステップアップしていきたい」と今後の展望を述べた。 続いて、「リモート医事サービス」について大島 健太郎氏(同社スマートホスピタル開発部長)が概要を説明した。 医療事務の仕事は、受付からはじまり料金計算、会計、レセプト請求処理、カルテ管理など多岐にわたる。リモート医事サービスは、これらの業務をオンラインで集約化して、スタッフの生産性の向上をはかることができるという。 iisyのリモート医事サービスは主に診療所や中小病院を対象とし、リモート医事センターのスタッフがオンラインで「予約、問い合わせ対応、受付処理、料金計算、レセプト事務」を行うもので、患者あたりの従量制の料金が予定されている。また、セキュリティではISMS/ISO27001認証取得と関係する省庁の2つのガイドラインに準拠した環境でのサービスが提供される。 リモート医事のメリットとして、医療事務では「専門性の向上」「デジタルへの移行」、医師・看護師では「本来業務への集中」「労務管理の軽減」、患者では「接遇が厚くなる」「院内滞在時間の短縮」などがあげられる。サービスの提供開始は、本年6月から提供され、本格的な展開は10月を予定している。すでに実証試験を行ったクリニックでの結果は良好だったという。 大島氏は最後に「本年は100医療機関の導入を目指す」と抱負を語った。なお、iisyのリモート医事サービスの展開では、協働先としてソフトバンク、名古屋大学医学部附属病院、日本医師会なども名を連ねている。

1830.

D-ダイマー高値COVID-19入院患者、治療的 vs.予防的抗凝固療法/Lancet

 D-ダイマー値上昇の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者に対し、リバーロキサバンやエノキサパリンなどによる治療的抗凝固療法は、予防的抗凝固療法に比べ臨床アウトカムを改善せず、一方で出血リスクを増大したことが示された。米国・デューク大学のRenato D. Lopes氏らが、600例超を対象に行った多施設共同非盲検(評価者盲検)無作為化比較試験「ACTION試験」の結果で、著者は「経口抗凝固療法適応のエビデンスがない場合は、リバーロキサバンおよびその他の直接経口抗凝固薬の治療的投与は避けなくてはならない」と警鐘を鳴らした。COVID-19は、有害転帰につながる血栓形成促進との関連が示されているが、これまで治療的抗凝固療法がCOVID-19入院患者の転帰を改善するかどうかは不明だった。Lancet誌2021年6月12日号掲載の報告。治療的抗凝固療法としてリバーロキサバンを30日間投与 研究グループはブラジル31ヵ所の医療機関で、COVID-19で入院した18歳以上の患者を対象に試験を行った。被験者はD-ダイマー値上昇が認められ、無作為化時点でCOVID-19の症状継続期間が最長で14日だった。 被験者を治療的抗凝固療法群と予防的抗凝固療法群に割り付け、治療群には、臨床的安定な患者に対してはリバーロキサバン(1日20mgまたは15mg)を投与し、臨床的不安定な患者にはエノキサパリン皮下投与(1mg/kgを1日2回)または未分画ヘパリン皮下投与(目標抗Xa濃度:0.3~0.7IU/mL)を行った後にリバーロキサバンを30日間投与した。 予防群に対しては、入院標準治療のエノキサパリンまたは未分画ヘパリンを投与した。 有効性の主要アウトカムは、死亡までの期間、入院期間または30日目までの酸素補充を要した期間の階層的解析結果で、勝利比メソッド(比率1超は治療的抗凝固療法のアウトカムがより良好)を用いてITT集団で評価した。 安全性の主要アウトカムは、30日間の大出血、または臨床的に関連する非大出血だった。治療的抗凝固療法で出血リスクは3.64倍に 2020年6月24日~2021年2月26日にかけて、3,331例をスクリーニングし、うち615例を無作為化した(治療的抗凝固療法群311例、予防的抗凝固療法群304例)。臨床的安定な患者は576例(94%)で、不安定な患者は39例(6%)だった。治療群の患者1例が同意の取り下げでフォローアップが完遂できず、主要解析に含まれなかった。 有効性の主要アウトカムは両群で差が認められなかった(勝利比:0.86、95%信頼区間[CI]:0.59~1.22、p=0.40)。この傾向は、臨床的安定な患者と不安定な患者それぞれで、一貫していた。 安全性の主要アウトカムについては、大出血または臨床的に関連する非大出血の発生率は、予防群2%(7例)に対し、治療群8%(26例)だった(相対リスク:3.64、95%CI:1.61~8.27、p=0.0010)。試験薬のアレルギー反応は、治療群2例(1%)、予防群3例(1%)で報告された。

1831.

長期使用中の外用ステロイドの塗布部位を確認して中止提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第38回

 外用ステロイドは皮膚の炎症性病変において汎用性が高い薬ですが、その使いやすさゆえに治療期限なく使用されるケースも散見されます。今回は、使用意図が明確でないまま、漫然と介護士や看護師から処方依頼が続いていた症例を紹介します。患者情報80歳、女性(施設入居)基礎疾患混合型認知症介護度要介護4服薬管理施設職員が管理障害自立度C認知症自立度IIIa処方内容1.ドネペジル錠5mg 1錠 分1 朝食後2.フロセミド錠10mg 1錠 分1 朝食後3.酸化マグネシウム原末1g 分2 朝夕食後4.ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏 50g Rp5と混合 1日2回 体に塗布5.ヘパリン類似物質油性クリーム 50g Rp4と混合 1日2回 体に塗布本症例のポイントこの患者さんは、背部と腹部の皮膚炎のため、ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏とヘパリン類似物質油性クリームの混合軟膏を使用していました。訪問時に薬歴を確認したところ、処方が1年以上継続しており、ステロイドのランクダウンや塗布部位の変更もなく長期的に使用していることに疑問を持ちました。そこで患者さんの病状を確認すると、発赤や隆起した皮膚の様子もなく、治療内容と現状がマッチしていない印象を受けました。施設の介護スタッフに状況を確認すると、時折背中や腹部をかいている様子があるため、現行の軟膏の塗布を継続しているとのことでした。また、軟膏が少なくなったら医師の訪問診療前に連絡して処方を依頼しており、医師はその依頼どおりに処方していることも判明しました。処方提案と経過訪問診療に同行し、医師に患者さんの軟膏塗布部位を直接診察してもらうことにしました。その際に、長期的に外用ステロイドを使用しているものの皮膚の状態は安定しており、むしろ長期使用に伴う細菌・真菌感染の誘発やざ瘡・毛細血管の拡張、皮膚萎縮などの副作用の懸念があることを伝えました。また、病状が安定しているのであれば、ステロイドを中止あるいはランクダウンしてから中止し、皮膚の保湿のみでコントロールできないか相談しました。医師より、病状は安定しているため、もはやステロイド適応ではなく、皮膚乾燥部位の保湿剤の塗布と保湿ケアを介護士に指示すると回答を頂きました。外用ステロイドを中止して保湿剤のみのコントロールに変更しても皮膚炎の再燃はなく経過しています。薬物治療の効果や副作用判定をする際は施設の介護士や看護師から情報を収集することも重要ですが、実際に自分の目で患者さんの症状を確認したことで、医師への処方提案に深みが増した症例でした。

1832.

1日1,600人にコロナワクチン接種、その秘訣とは?/高砂市医師会インタビュー

 全国的に集団接種が実施されているが、多くは被接種者が各ブースを周る形式である。だが、兵庫県高砂市では、接種~経過観察までの被接種者の移動をなくし、接種者が巡回する接種者移動型を採用した。なぜ、同市はこの『接種者移動型』システムを思いつき、ワクチンの供給開始(同市へのワクチン供給は4月中旬)とともに集団接種を始めることが出来たのかー。それには、早期より行政からの相談があり、同市医師会主導のもとでシステム構築したことに秘訣があったようだ。今回、医師会長の増田 章吾氏(増田内科医院)に実際の動線や関係者の内訳、そしてどのようにアイデアをまとめたのかインタビューした。日頃の行政との連携が実を結んだ 高砂市は兵庫県南部播磨平野の東部に位置し、東に加古川が流れ、南に瀬戸内播磨灘を臨む。総人口は8万9,452人。そのうち65歳以上が2万6,266人と人口の3割を高齢者が占める“超高齢社会”のため、優先被接種者が多い自治体である。 そこで、同医師会がワクチン接種の協議を始めたのは昨年末のこと。まずは医師会の理事会メンバー内で話し合い、年明けには医師会内でワクチン検討委員会を発足。内科、小児科などワクチン対応の知識に長けた医師らを軸に、集団接種会場の設営に向けた動きが始まった。増田氏は「医師会の会員数は現在114名。そのうち約95%の会員がこの集団接種に貢献してくれている」と説明。実際にこの接種会場では医師4~6名体制が敷かれており多くの医師会メンバーの協力が必要不可欠であったが、参加できない医師はなんらかの理由を抱えているため参加の強要はしていないという。この参加率について、「これはコロナ禍のワクチン接種を災害と同等に捉えるように周知した結果」だと話した。 兵庫県といえば26年前の阪神淡路大震災の被災地であり、日頃の災害に対する意識の高さが影響しているのかもしれない。今回の初動の早さについて同氏は「実は、災害対策については足踏み状態が続いている。しかし、今回の件は日頃からの行政との連携が取れていたからこそ。そして、理事会など小規模な会議を頻繁に開催していたこと、それぞれが意思を持って協力し合い物事を進めたことが今回の設営のスピードに大きく影響した」と強調した。集団接種で対応に慣れたら個別接種へ 接種会場では、監督責任のある医師、ミキシング・接種者の看護師、ミキシング・予診確認者の保健師、そしてミキシング・相談対応者の薬剤師らが各役割を担うが、多くの者は平日に通常業務を行っているため、現在も集団接種は土日のみ実施している。また、個別接種を先行せず集団接種を優先した理由として、「初めてのワクチンに医師1人で対応するのはリスクや負担が大き過ぎる。集団接種で経験を重ねれば個別接種でも対応がイメージできる」と説明した。さらに、「予約の混乱を避けるために年齢を区切って対応しており、現時点で80歳以上への1回目の接種を終了した。現在は75~79歳、65~74歳の接種を順次進めている」と話した。発案~準備期間はおよそ3ヵ月、各人が努力惜しまず 話し合いが進み、実際に準備に着手したのは2月頃。会場設営に関しては医師会では進めることができないため、「もちろん行政主導でお願いした。ただし、デモンストレーションを行った際には協力してくれた市民、市職員、医療者らもその場で問題点を数十項目ほど挙げるなど、改善するための意見は遠慮なく発言した。日頃から協力関係であったからこそ、準備でもお互いの主導権を尊重しながら進められた」と振り返った。 また、接種会場には医師だけではなく看護師や薬剤師の協力も欠かせない。一般的には医師会と行政がバラバラに依頼状を送ることも多いが、今回は連名で看護師や薬剤師会宛に協力依頼をかけたことで「必要な人員の確保も滞りなく済ませることができた」とも話した。<高砂市の設営状況・対応医療者数>◆実施方法:接種者移動型(接種~経過観察まで被接種者は着席し、接種者が移動する方式)◆1日あたりの接種人数:約800~1,600名・実施日:土日のみ(通常業務を行う医師が輪番制で行うため)・実施場所:総合体育館・最大収容人数:144名(72名×2エリア)・医師:4~6名・保健師:8名(6名:予診票確認・相談、2名:ミキシングなど) ・看護師:12名(6名:接種者[1群に各1名×6群]、4名:6群の見回り[2名×2エリア]、2名:ミキシングなど)・薬剤師:2名(ミキシング、相談)・事務職:12名(1群に各2名配備、接種看護師と共に2エリアを受け持つ)・救急救命士:3名(緊急配備)・救急車:1台(緊急配備、高砂市民病院へ搬送)◆その他、市民病院で1日あたりの接種人数:約600~1,200名 6月初めより各医療機関での個別接種も開始意外と重要、パーテーションは顔が見える高さに 接種時の工夫点については、「会場を設営した当初、個人保護などの観点でパーテーションは顔も隠れるほど高いものを使用していた。ところが、実際に使用してみると、被接種者の様子がまったくわからず、何かが起こっていても察知することが難しいことが判明した。そこで、行政を通じて業者に顔が見えるくらいの高さのパーテーションの準備をお願いし、現在はそれを使用している。われわれの設営会場では12人の被接種者を1群として、それを3~4名体制のもとで接種・見回りを行っているが、パーテーションの設えを変更したことで、被接種者の状態把握が容易になった」と語った。ワクチン接種で苦戦した点、実際の救急搬送例は意外にも… 80歳以上の高齢者の場合、約2割は会場で車椅子を利用したが、独歩可能な方が入り口や出口で転倒してしまった例があった。「アナフィラキシーなど万が一のために救急隊と救急車を常に配備しているが、それで出動した例は現時点ではない。しかし、転倒により頭部に擦り傷を負い、救急隊が対応を行った例が2件あった」と話した。 最後に、問題になっている余剰ワクチンについて伺うと、「ワクチンが廃棄されないようワクチン接種に協力いただいている保健師、看護師、薬剤師など、被接種者に接する機会の多い医療者を優先に対応を進めている」と語った。 今回の取材を通じて、医師会館と市の保健センターが隣接している土地柄、ワクチン接種での相談は直ぐに対応でき、行政と連携が図れるだけではなく、双方が協力関係を築く意識を持ち合わせている点が高砂市の強みであることもわかった。―――――――――――――――――――増田 章吾(ますた しょうご)氏兵庫県高砂市医師会会長・増田内科医院院長昭和58年神戸大学卒。同年神戸大学医学部附属病院第二内科入局し、兵庫県立成人病センター、加古川市民病院に勤務。平成8年に増田内科医院を開業。平成14年高砂市医師会理事、平成26年同市医師会副会長を経て平成28年より現職。―――――――――――――――――――

1833.

早めに動かないと売れ残る!「ヤバい診療所」のパターン2つ【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第19回

第19回 早めに動かないと売れ残る!「ヤバい診療所」のパターン2つ漫画・イラスト:かたぎりもとこ高齢の開業医にとって、医業承継はいわゆる「終活」を連想させる取り組みでもあり、なかなか前向きに取り組めない方も多いかもしれません。しかし、だからこそ、きちんと早期に準備をしたうえで、有利な条件で承継できるタイミングを選ぶことが重要なのです。とくに下記のようなケースは、患者数を維持できているフェーズでの承継が望ましいでしょう。(1)土地建物を自己所有、かつ土地が広く建物が大きい(2)少子高齢化・過疎化が全国平均よりも早く進むエリアに位置する(1)土地建物を自己所有、かつ土地が広く建物が大きい患者数が多く、売り上げが立つからこそ、広い診療所を維持・運営することが見合うわけです。しかし、承継案件でよくあるのが、以前は有床診療所だったのが、医師の高齢化と共に規模を縮小し、現在は無床(外来のみ)で、3階建ての建物のうち1階部分しか使っていない、といったケースです。買い手が建物全部を活用する開業プランを持っていればよいですが、最初からそうした大掛かりな開業プランを持つ方はまれです。無床診療所を開業しようと考える医師から見れば、活用できていないスペースが大きいほど余計な固定費がかかることになり、案件自体がマイナスイメージとなって承継が成立する確率が大きく下がってしまうのです。(2)少子高齢化・過疎化が全国平均よりも早く進むエリアに位置する将来的に患者数が増えることが見込めないエリアでは承継成立の確率が下がる、ということは理解しやすいでしょう。診療所経営における「集患対策」の手法は限られます。一般企業であれば広告を打つなどさまざまなマーケティング手法が使えますが、診療所経営では規制が多く、診療報酬制度のために価格競争にも限界があります。よって「どのエリアで開業するか」という点が最も重要になるのです。こうした前提に立つと、患者数が他エリアよりも早く減少する可能性があり、かつ、すでに患者が少ない診療所を承継するのは買い手にとって非合理な判断になるのです。上記のような不利な条件で開業されている方は、自分の体力・気力を見ながら承継を検討し始めるのではなく、早くから準備を進め、経営権を先に譲渡したうえで譲渡後も非常勤として勤務する、といった手段を取ることで、医業承継成立の確率を上げつつ、体力や希望に沿った働き方ができるでしょう。

1834.

第38回 変動係数とは?【統計のそこが知りたい!】

第38回 変動係数とは?「変動係数」はバラツキを表す指標の1つです。通常、私たちが使うバラツキを表す指標は「標準偏差」「分散」がほとんどです。「データをみるうえで変動係数がないと困る」という場面が少ないからかもしれません。しかし、変動係数はとても便利な統計の道具の1つです。変動係数を知るといろいろなことがわかります。今回は、変動係数について解説します。■変動係数(Coefficient of variation)標準偏差を平均で割った値を「変動係数」といいます。変動係数は単位のない数値で、相対的なバラツキを表しています。男性と女性の身長などの平均値が異なる集団、身長(cm)と体重(kg)などのデータ単位の異なる集団のバラツキを比較する場合に用いられます。■変動係数の計算式ある健診センターで、デジタル身長体重計を新しく導入することにしました。実際に検診で使用する前に何人かの職員で身長と体重を測定してみたところ、下表のデータが得られました。身長と体重それぞれの変動係数を求めてみましょう。身長、体重をそれぞれ前述の計算式にあてはめて計算します。身長の変動係数:96÷160=0.6体重の変動係数:55÷50=1.1となります。標準偏差の値が大きいからバラツキも大きいと勘違いしないようにすることが大事です。身長(cm)と体重(kg)のように単位が異なる標準偏差を、そのまま数値の大小でバラツキの大きい小さいを判断することはできません。■変動係数に関する留意点上記の例でもわかるように「変動係数には単位がありません!」。これは重要な特徴です。単位が異なるデータはもちろんですが、単位が同じだとしても平均値が異なるデータの標準偏差では、比較すると意味がありません。そのようなときが変動係数の出番です。単位がなければ、どのようなスケール、どのような単位であっても比較可能になります。「変動係数がいくつ以上あればバラツキが大きい」という統計学的基準はありませんが、1以上は「大きい」、0.5以上1未満は「やや大きい」といえます。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問3 標準偏差と標準誤差の違いは何か?質問6 比較する群が3つ以上ある場合の母平均の差の検定方法は?(その1)質問6(続き) 比較する群が3つ以上ある場合の母平均の差の検定方法は?(その2)

1835.

BRCA変異陽性HER2-早期乳がんへの術前talazoparib、単剤でpCR45.8%(NEOTALA)/ASCO2021

 生殖細胞系列のBRCA遺伝子(gBRCA)変異を有するHER2陰性早期乳がんに対する術前のtalazoparib単剤投与が、良好なpCR率を示した。米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJennifer Keating Litton氏が、第II相NEOTALA試験の早期解析結果を発表した。 本試験は、非無作為化、単群の多施設共同非盲検試験。gBRCA変異を有するHER2陰性早期乳がんに対する術前補助療法としてのtalazoparibの有効性と安全性の評価を目的に実施された。・対象:gBRCA変異を有するHER2陰性早期進行乳がん患者 61例・試験群:talazoparib(1mg/日、中等度腎機能障害がある場合0.75mg/日)を24週経口投与・評価コホート:[評価対象集団]治療開始時に処方されたtalazoparibについて80%以上の投与を受け、乳房手術と病理学的完全奏効(pCR)評価を受けた患者およびpCR評価前に進行した患者[安全性およびITT解析集団]1回以上のtalazoparib投与を受けた全患者・評価項目:[主要評価項目]独立中央委員会(ICR)評価による評価対象集団におけるpCR。本試験における有効性は事後確率としてのpCR>45%とされた。[副次評価項目]ICR評価によるITT集団におけるpCR、両集団における残存腫瘍量(RCB)、治験担当医評価(INV)による両集団におけるpCR、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間(OS)、安全性など※評価は術後に行われ、治験担当医選択による術後抗がん剤治療は可能とされた。 主な結果は以下のとおり。・talazoparibによる治療を受けた61例のうち、48例が評価対象集団の条件を満たした。・ITT集団のベースライン特性は、平均年齢44.6歳、閉経前/後が59.0%/41.0%、BRCA1/BRCA2変異陽性が78.7%/21.3%、TNBCが100%、StageI/II/IIIが32.8%/44.3%/22.9%。また、扁平上皮がん1例を除き、他はすべて腺がんであった。・ITT集団における平均治療期間は23.3週間で、90.2%の患者がtalazoparibによる治療を20週以上受けていた。平均相対的治療強度(RDI)は84.5%であった。・ICR評価によるpCRは、評価対象集団で45.8%/ITT集団で49.2%。・INV評価によるpCRは、評価対象集団で45.8%/ITT集団で47.5%。・ICR評価によるRCBは、0:評価対象集団45.8%/ITT集団49.2%、I:0%/1.6%、II:31.3%/27.9%、III:0%/0%、その他:22.9%/21.3%。・治療中に発生した有害事象は、患者の95.1%で報告された(Grade1:36.1%、Grade2:14.8%、Grade3:42.6%、Grade4:1.6%)。・多くみられたのは疲労(Grade1:55.7%、Grade2:19.7%、Grade3:1.6%)、吐き気(Grade1:50.8%、Grade2:11.5%、Grade3:1.6%)、脱毛症(Grade1:54.1%、Grade2:3.3%)、貧血(Grade1:6.6%、Grade2:1.6%、Grade3:39.3%)。死亡例は報告されていない。 Litton氏は、術前talazoparib単剤療法は有効であり、アントラサイクリン+タキサンベースの併用化学療法で観察された値に匹敵するpCR率を示し、一般的に忍容性は良好で、新たな安全性シグナルは確認されていないと結論づけている。

1836.

アルツハイマー病に対する抗Aβ抗体の有効性と有害事象リスク~第III相RCTのメタ解析

 米国国立衛生研究所(NIH)のKonstantinos I. Avgerinos氏らは、アルツハイマー病におけるAβに対するモノクローナル抗体の認知、機能、アミロイドPET、その他のバイオマーカーへの影響およびアミロイド関連画像異常やその他の有害事象のリスクについて、調査を行った。Ageing Research Reviews誌オンライン版2021年4月5日号の報告。 PubMed、Web of Science、ClinicalTrials.govおよび灰色文献より第III相のRCTを検索し、ランダム効果メタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・17件の研究(1万2,585例)をメタ解析に含めた。・抗体によるアルツハイマー病評価尺度の認知アウトカム(ADAS-Cog、SMD:-0.06、95%CI:-0.10~-0.02、I2=0%)およびミニメンタルステート検査(MMSE、SMD:0.05、95%CI:0.01~0.09、I2=0%)の統計学的に有意な改善が認められた(エフェクトサイズ:小)。一方、臨床的認知症重症度判定尺度の認知、機能測定では改善は認められなかった(CDR-SOB、SMD:-0.03、95%CI:-0.07~0.01、I2=18%)。・抗体によりアミロイドPET SUVR(SMD:-1.02、95%CI:-1.70~-0.34、I2=95%)およびCSF p181-tau(SMD:-0.87、95%CI:-1.32~-0.43、I2=89%)の減少が認められた(エフェクトサイズ:大)。・抗体によりアミロイド関連画像異常リスク(RR:4.30、95%CI:2.39~7.77、I2=86%)の増加が認められた(エフェクトサイズ:大)。・アミロイドPET SUVRの減少に対する抗体の影響は、ADAS-Cogの改善に対する抗体の影響と相関が認められた(r=+0.68、p=0.02)。・サブグループ解析による薬剤別の影響は、以下のとおりであった。 【aducanumab】 ●ADAS-Cog、CDR-SOB、ADCS-ADLの改善(エフェクトサイズ:小) ●アミロイドPET SUVR、CSF p181-tauの減少(エフェクトサイズ:大) 【solanezumab】 ●ADAS-Cog、MMSEの改善(エフェクトサイズ:小) ●CSF Aβ1-40レベルの増加(エフェクトサイズ:中) 【bapineuzumab】 ●臨床アウトカムの改善なし ●CSF p181-tauの減少(エフェクトサイズ:小) 【gantenerumab】 ●臨床アウトカムの改善なし ●CSF p181-tauの減少(エフェクトサイズ:大) 【crenezumab】 ●臨床アウトカムの改善なし・solanezumabを除くすべての薬剤において、アミロイド関連画像異常リスクの増加が認められた。 著者らは「全体として、抗Aβモノクローナル抗体には、臨床アウトカムの改善(エフェクトサイズ::小)、バイオマーカーの改善(エフェクトサイズ:大)、アミロイド関連画像異常リスクの増加(エフェクトサイズ:大)が認められた。薬剤別では、aducanumabが最も有望であり、次いでsolanezumabが挙げられる」とし、「本結果は、アルツハイマー病治療薬としての抗Aβモノクローナル抗体の継続的な開発を支持するものである」としている。

1837.

HR-/HER2+乳がん術前治療、トラスツズマブ+ペルツズマブ±PTXの予後(ADAPT)/ASCO2021

 ホルモン受容体陰性HER2陽性(HR-/HER2+)の乳がん患者に対する、トラスツズマブ+ペルツズマブ±パクリタキセルによる術前療法の予後に関する有望な結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、ドイツ・West German Study Group(WSG)のNadia Harbeck氏から報告された。 このADAPT試験はWSGにより実施されたオープンラベルの第II相無作為化比較試験である。この試験のpCR率の結果は2017年に公表されており、今回はその生存に関する報告である。また、本試験と同じデザインでのHR-/HER2+集団に対するpCR率の良好な結果は2020年のESMOで公表されている。・対象:遠隔転移のないHR-/HER2+乳がん134例(5:2の割合で2群に割り付け)・試験群A:トラスツズマブ(初回8mg/kg、その後3週ごとに6mg/kg)+ペルツズマブ(初回840mg、その後3週ごとに420mg)(TP群:92例)・試験群B:トラスツズマブ+ペルツズマブ+パクリタキセル(80mg/m2を1回/週)(TPPtx群:42例)・評価項目:[主要評価項目]pCR率(乳房内の浸潤がんとリンパ節転移がない例[ypT0/is ypN0]におけるpCR率と、非浸潤がんも含めて完全に残存腫瘍のない例[ypT0 ypN0]におけるpCR率)[副次評価項目]無浸潤疾患生存期間(iDFS)、遠隔無再発生存期間(DDFS)、全生存期間(OS)、安全性、バイオマーカー検索など 3週間目にKi67値がベースライン比30%以上低下、もしくは浸潤がん細胞数が500個以下への減少が認められた症例などを早期奏効例とした。 主な結果は以下のとおり。・患者背景は、50歳未満が33~41%(年齢中央値:52~54歳)、N0が54~62%、核異形度3が88.0%、HER2-IHC3+が86~91%、ベースラインのKi67値は50%であった。・既報のpCR率は、ypT0/is ypN0でTP群34.4%、TPPtx群90.5%であった。また、ypT0 ypN0ではTP群24.4%、TPPtx群78.6%であった。・iDFS率は、5年時点でTP群87%、TPPtx群98%、ハザード比[HR] 0.32(95%信頼区間[CI]:0.07~1.47)、p=0.144であった。・OS率は、5年時点でTP群94%、TPPtx群98%(死亡は1名のみ)、HR 0.41(95%CI:0.05~3.55)、p=0.422であった。・pCRが得られた症例(69例)と得られなかった症例(63例)でiDFSを比較した場合、pCR例は5年時iDFS率が98%、non-pCR例では82%、HRは0.14(95%CI:0.03~0.64)、p=0.011であった。・TP群において、pCRが得られなかったIHC1+/2+およびFISH陽性例や、Basalタイプ、または早期奏効を得られなかった症例を、non-sensitive症例(31例)として、その他の症例とiDFSを比較した場合、5年時のiDFS率はnon-sensitive79%、その他93%、HRは1.99、p=0.255であった。 演者のHarbeck氏は「化学療法の有無によらず、両群とも優れたpCR率と生存率を示した。また、抗体2剤のみによる術前治療は早期奏効が得られた場合に有望であり、今後はさらにIHC3+症例やBasalタイプ以外、RNAなどで選別した症例でも検討する必要がある」と述べた。

1839.

050)新型コロナワクチン2回目接種後の3日間【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第50回 新型コロナワクチン2回目接種後の3日間ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆先月の連載で1回目接種の様子を漫画にしましたが、今回は2回目のお話。皆さまの周囲でも、2回目接種を終えた方がどんどん増えているのではないかと思われます。私の周囲では2回目接種の後に発熱した人が多く、中には1週間くらい倦怠感が続いた、という人もいました。私の場合どうだったかというと、1回目よりも接種部位疼痛が強く出た以外は、とりわけ大きな症状もなく、発熱の心配は杞憂に終わりました(笑)。若い女性スタッフほど熱を出しているような印象で、翌日に熱が出て動けなくなった、という話も聞いていたので、いつ発熱してもいいよう枕元に解熱剤や水筒を用意していたのですが、微熱すら出ず。常時平熱のまま、接種後の3日間を乗り切りました。勤務先の医局は、高齢男性の医師がほとんどを占めるのですが、1回目接種の時は筋肉痛の話などで盛り上がっていた医局も、2回目接種ともなると副反応の話題は一切出ないほど。熱が出たり寝込んだりという話は耳にしませんでした。「やはり若い方に反応が出やすいという話は本当なのだな」と、ひとり納得したのでした(笑)。接種から2週間がたち、新型コロナへの抗体も獲得できているはず。早く一般の方々への接種が進むとよいなと願っています。それでは、また~!

1840.

てんかん症候群(第6版)―乳幼児・小児・青年期のてんかん学

てんかん学の“ブルーガイド”が7年振りの改訂7年振りの改訂!てんかん学の“ブルーガイド”として世界的に普及している“Epileptic Syndromes in Infancy, Childhood and Adolescence”(6th edition)の日本語翻訳版。国際抗てんかん連盟(ILAE)の新しい分類図式(2017年)を取り入れ、症候群アプローチの最新情報を盛り込む。豊富な動画(109本)を日本語訳の解説と共に視聴できるVIDEO付録付き。今回も静岡てんかん・神経医療センターのスタッフが総力をあげて翻訳。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    てんかん症候群(第6版)―乳幼児・小児・青年期のてんかん学定価3万1,900円(税込)判型B5変型判頁数720頁発行2021年5月監訳井上有史(国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター 名誉院長)

検索結果 合計:5062件 表示位置:1821 - 1840