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2年生の勉強の取り組み方を教えて【医学生お悩み相談ラヂオ】第16回

動画解説医学部2年生の男性から、今の時期の勉強の取り組み方について、アドバイスを求める声が届きました。部活とバイトでいっぱいいっぱいで勉強まで手が回らないとのこと。民谷先生は、2年生時点だけでなく、各学年の勉強法について指南します。

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ESMO2023 レポート 乳がん

レポーター紹介はじめにESMO Congress2023が10月20日から24日の間、スペイン・マドリードで開催されました。155の国から3万3,000人以上の参加者があり、2,600演題を超える研究成果が発表されました。今年は、非常に重要なPhase3試験の結果が数多く報告され、今後の診療に影響を与える興味深い結果も多く報告されました。今回は乳がん領域で、非常に話題となったいくつかの演題をピックアップして今後の展望を考えてみたいと思います。周術期乳がん演題1)ホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)乳がん今年は、術前化学療法を行うようなHR+/HER2-乳がんに対して、周術期に免疫チェックポイント阻害薬を使用するランダム化比較第III相試験が2つ報告されました(CheckMate 7FL試験とKEYNOTE-756試験)。いずれも、主要評価項目である病理学的完全奏効割合(pCR[ypT0/is ypN0])については、免疫チェックポイント阻害薬併用によって向上することが示されました。CheckMate 7FL試験(NCT04109066、LBA20)本試験では、新規発症のER陽性(ER+)/HER2-乳がん(病期T1c~2、N1~2個またはT3~4、N0~2個、Grade2[かつER 1~10%]またはGrade3[かつER≧1%])と診断された早期乳がん患者521例が組み入れられました。患者は抗PD-1抗体のニボルマブ群またはプラセボ群に無作為に割り付けられました。術前化学療法相では、患者はニボルマブまたはプラセボとパクリタキセルの併用投与を受け、次いでニボルマブまたはプラセボとAC療法の併用投与を受けました。ニボルマブ360mgを3週ごとに、または240mgを2週ごとに投与されました。手術後、両群の患者は、治験責任医師が選択した内分泌療法を受けました。ニボルマブ投与群では、術後治療としてニボルマブ480mgを4週ごとに7サイクル投与されています。全体として、ニボルマブ群では89%、プラセボ群では91%の患者が手術を受けました。結果として、pCR率はニボルマブ群で24.5%、プラセボ群で13.8%(オッズ比[OR]:2.05、95%信頼区間[CI]:1.29~3.27、p=0.0021)であり、統計学的に有意な改善を示しました。とくに、SP142のPD-L1陽性(IC≧1)患者のpCR率はニボルマブ群で44.3%、プラセボ群で20.2%(OR:3.11、95%CI:1.58~6.11)であり、24.1%の差を認めました。KEYNOTE-756試験(NCT03725059、LBA21)本試験では、新規発症のER+/HER2-乳がん(病期T1c~2かつN1~2個、またはT3~4かつN0~2個、Grade3、中央判定)と診断された早期乳がん患者1,278例が組み入れられ、抗PD-1抗体のペムブロリズマブ群またはプラセボ群に無作為に割り付けられました。術前化学療法相では、患者はペムブロリズマブまたはプラセボとパクリタキセルの併用投与を受け、次いでペムブロリズマブまたはプラセボとAC療法またはEC療法の併用投与を受けました。手術後、患者はペムブロリズマブ200mgまたはプラセボを3週間ごとに6ヵ月間投与され、内分泌療法を最長10年間受け、適応があれば放射線療法を受けました。本試験の2つの主要評価項目は、ITT集団における最終手術時pCR(ypT0/TisおよびypN0)割合、およびITT集団における治験責任医師評価による無イベント生存期間(EFS)でした。主要評価項目のpCR割合は、ペムブロリズマブ群24.3%、プラセボ群15.6%であり、統計学的に有意な改善を示しました(推定差:8.5%[95%CI:4.2~12.8]、p=0.00005)。とくに、75%程度を占める22C3のPD-L1陽性(CPS≧1)患者において、pCR割合の差は9.8%(95%CI:4.4~15.2)であり、PD-L1陰性(CPS2)トリプルネガティブ乳がん NeoTRIP試験(NCT002620280、LBA19)NeoTRIP試験は、TNBC患者を、nab-パクリタキセルとカルボプラチンを8サイクル投与する群(化学療法群)とnab-パクリタキセルとカルボプラチンにアテゾリズマブを追加投与する群(アテゾリズマブ群)に無作為に割り付けた試験です。主要評価項目はEFS、副次評価項目はpCR割合で、以前にpCR割合のみが報告されていました。ITT解析において、アテゾリズマブ投与後のpCR割合(48.6%)は、アテゾリズマブ非投与(44.4%;OR:1.18、95%CI:0.74~1.89、p=0.48)と比較して統計学的有意な改善を認めませんでした。多変量解析では、PD-L1発現の有無がpCR率に最も影響する因子でした(OR:2.08)4)。今回発表のあった、追跡期間中央値54ヵ月後のEFS率は、アテゾリズマブ非投与の化学療法単独群74.9%に対してアテゾリズマブ+化学療法群70.6%でした(HR: 1.076、95%CI:0.670~1.731)。このため、主要評価項目のEFSも統計学的有意差を示せなかったという結果でした。アテゾリズマブを使用した術前抗がん剤として、IMpassion 031試験はpCRの改善は認めましたが、DFSやOSは検討できない症例数で、ESMO BC2023における報告では、明らかな有意差を示していませんでした。一方で、KEYNOTE-522の結果は、前述の通りペムブロリズマブ追加でpCRも改善して、EFSも改善していましたので、真逆の結果でした。NeoTRIP試験のKEYNOTE-522試験と異なる点は、術後療法では免疫チェックポイント阻害薬を使用しないこと、術前抗がん剤治療として免疫チェックポイント阻害薬の併用ではアントラサイクリン系薬剤は使用しないこと、異なる免疫チェックポイント阻害薬を使用していることがありましたが、どのくらいこういった要素が影響するかは定かではありません。転移・再発乳がん演題1)HR+/HER2-乳がん TROPION-Breast01試験(NCT05104866、LBA11)本試験では、手術不能または転移を有するHR+/HER2-(IHC 0、IHC 1+またはIHC 2+、ISH陰性)乳がん患者732例が組み入れられました。ECOG PS 0~1、内分泌療法で進行を認め内分泌療法が適さない患者であり、全身化学療法を1~2ライン受けた患者が対象となっています。患者は、datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)(6mg/kgを1日目に投与、3週おき)を投与する群、または医師が選択した化学療法(エリブリン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビン)を投与する群に1:1で無作為に割り付けられました。主要評価項目は、RECISTv1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)でした。本試験の結果、BICRによるPFS中央値はDato-DXd群6.9ヵ月、医師選択化学療法群4.9ヵ月、HR0.63(95% CI:0.52~0.76、p<0.0001)と、有意にDato-DXd群のPFSが良好でした。奏効割合はDato-DXd群36.4%、医師選択化学療法群22.9%でした。OSについては、イベントが不十分な状況でしたが、Dato-DXd群で良好な傾向が認められ、HR0.84(95% CI:0.62~1.14)でした。治療関連有害事象(TRAE)はDato-DXd群で94%、医師選択化学療法群で86%に発生したのですが、Grade 3以上のTRAE割合は、Dato-DXd群で21%対医師選択化学療法群で45%と、Dato-DXd群で低い頻度でした。また、薬剤関連の間質性肺疾患はDato-DXd群で3%、ただしほとんどがGrade 1か2でした。画像を拡大するこれまでにHR+/HER2-(低発現)乳がんに対するランダム化比較第III相試験で、有効性を検証した抗体薬物複合体(ADC:antibody drug conjugate)は3つ目ということになります。HER2低発現に対するT-DXdはすでに保険適用となっていますが、Destiny Breast 04試験の結果、2次治療以降の症例でPFS、OSが医師選択化学療法よりも良好であることが示されています。ESMOではOSのupdate結果が報告され、HR陽性群のT-DXd群の成績は、OS中央値が23.9ヵ月で、HR0.69(95%CI:0.55~0.87)と、これまでの報告の有効性が維持されていました。また、TROP2に対するADCとして、sacituzumab govitecan(SG)があり、こちらもTROPiCS-02試験の結果、PFS、OSが医師選択化学療法よりも良好であることが示されています。SGは2023年10月時点で、まだ日本では承認されていませんが、将来的に承認されることが期待されている薬剤です。実臨床ではまだDato-DXdは使用できませんが、仮にこれら3剤が使用可能な場合のHR陽性HER2陰性乳がんのADCシークエンスはどうなるでしょうか。いずれにせよ、臨床試験で組み入れられた症例はTROPION-Breast01とDestiny Breast04試験は1~2ラインの抗がん剤治療歴がある患者、TROPiCS-02試験は全身化学療法を2~4ライン受けた患者が対象でした。このため、2次治療以降のADCシークエンスが検討されます。HER2低発現であればOS改善効果が証明されている現状では、T-DXdが2次治療では優先されると思います。さらに、3次治療となればSGのほうはOS改善効果が証明されているので、同じTROP2のADCではSGの方が優先されると思います。一方で、HER2 0の症例では、現時点ではT-DXdは使用されませんので、2次治療での有効性はDato-DXdが優先され、3次治療でSGが検討されるのかと考えます。今後、現在進行中のDESTINY-Breast06試験の結果により、1次治療や、HER2 0の症例でのT-DXdの有効性が報告されることが期待されます。さらに、ADCのシークエンスが本当に臨床試験通り有効か? という点は非常に議論されているところですので、今後のリアルワールドデータや、臨床研究の結果が待たれます。2)トリプルネガティブ乳がん BEGONIA試験(NCT03742102、379MO)BEGONIA試験は、進行転移トリプルネガティブ乳がん患者として化学療法歴がない患者を対象とした、デュルバルマブとその他の薬剤との併用療法の有効性を複数のコホートで検討するPhaseIb/II試験です。いくつもの試験治療群がありますが、Dato-DXdと抗PD-L1療法であるデュルバルマブの併用療法を検討したアーム7の有効性と安全性については、昨年2022年のサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)において、7.2ヵ月のフォローアップ中央値の結果として報告されていました。PD-L1発現が低い症例が53例(86.9%) (Tumor Area Positivity1)von Minckwitz G, et al. J Clin Oncol. 2012;30:1796-804.2)Masuda J, et al. J Immunother Cancer. 2023;11:e007126.3)Jerusalem G, et al. Breast. 2023;72:103580.4)Gianni L, et al. Ann Oncol. 2022;33:534-543.5)Modi S, et al. N Engl J Med. 2022;387:9-20.6)Rugo HS, et al. J Clin Oncol. 2022;40:3365-3376.7)Rugo HS, et al. Lancet. 2023;402:1423-1433.

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知っておきたい 眼科処置・手術の合併症対策と予防

眼科医として知っておきたい合併症47項目をピックアップ「眼科」65巻10号(2023年10月臨時増刊号)どこから読んでもすぐ診療に役立つ、気軽な眼科の専門誌です。本年の臨時増刊号は「知っておきたい 眼科処置・手術の合併症対策と予防」と題し、眼科医であれば施術や診療のために是非とも押さえておきたい、多種多様な処置・手術とそれに伴う合併症を47項目ピックアップし、それぞれへの予防と対策をエキスパートの先生に解説していただきました。患者さんとのコミュニケーションの向上やより良い医療の提供へとつながる1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    知っておきたい 眼科処置・手術の合併症対策と予防定価9,350円(税込)判型B5判頁数252頁発行2023年10月編集後藤 浩/飯田 知弘/雑賀 司珠也/門之園 一明/石川 均/根岸 一乃/福地 健郎電子版でご購入の場合はこちら

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リポ蛋白(A)濃度の上昇は冠動脈心疾患再発の予測因子

 冠動脈心疾患(CHD)の既往のある高齢者におけるリポ蛋白(a)(Lpa)濃度の上昇は、CHD再発の予測因子であるという研究結果が、「Current Medical Research and Opinion」に6月12日掲載された論文で明らかにされた。 Lpaは、LDLの一部で、線溶因子であるプラスミノーゲンと相同性があるため、プラスミノーゲンと競合してその働きを阻害することによって動脈硬化を促進すると考えられている。LpaはCHDと死亡率の原因因子としてLDLと同等である可能性が示唆されている。Lpa濃度の上昇は、動脈硬化性心血管疾患および大動脈疾患の発症に関与することが明らかにされているが、CHD再発のリスク因子であるかどうかは明らかにされていない。そこで、ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)のLeon A. Simons氏および St. Vincent’s Hospital(オーストラリア)のJudith Simons氏は、オーストラリアのダボで1930年以前に生まれた高齢者を対象に、Lpa濃度の上昇とCHD再発との関連を調べる縦断的研究を実施した。 CHDの既往がある607例(平均年齢71歳、男性54%)を16年間追跡した。ベースライン時(1988~1989年)に脂質やその他のCHDリスク因子の検査を実施した。Cox比例ハザードモデルを用いて、Lpa濃度がCHDイベント再発の独立した寄与因子であるかどうかを評価した。 16年間の追跡期間中にCHDを再発した参加者は399例であった。CHD再発例のLpa濃度の中央値は130mg/L(四分位範囲60~315)、非再発例では105mg/L(同45~250)で、再発例の方が有意に高かった(Mann-WhitneyのU検定のP<0.07)。Lpa濃度が300mg/L以上の参加者の割合は、CHD再発例で26%、非再発例で19%と再発例の方が高く、Lpaが500mg/L以上の参加者の割合も、再発例で18%、非再発例で8%と再発例の方が高かった。 Lpa濃度の第1五分位(50mg/L未満)を基準とした場合、第5五分位(355mg/L以上)におけるCHD再発のハザード比(HR)は1.53〔95%信頼区間(CI)1.11~2.11、P=0.01〕であったことから、Lpa濃度の第5五分位はCHD再発の有意な予測因子であることが示された。その他のリスク因子(Lpa濃度の第5五分位を除く五分位数、年齢、性別など)は、CHD再発の有意な予測因子ではなかった。 Lpa濃度500mg/L未満を基準とした場合、500mg/L以上はCHD再発の有意な予測因子であった(HR 1.59、95%CI 1.16~2.17、P=0.004)。Lpa濃度300mg/L未満を基準とした場合、300mg/L以上はCHD再発の有意な予測因子であった(HR 1.37、95%CI 1.09~1.73、P=0.007)。 著者は、「本研究の結果は、Lpa濃度高値を改善することを目的として開発中の新規治療法が、CHD再発の予防に有効である可能性を示唆している。しかし、この治療法の潜在的な臨床効果はまだ確認できていない」と述べている。 なお、ノバルティスファーマは、本研究の解析を支援するために教育助成金を提供した。一名の著者は、脂質降下薬の製造会社との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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風邪にも長期間続く後遺症がある?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急性期以後もさまざまな症状が持続している状態を指す「long COVID」という言葉は、今やすっかり認識されている。しかし、このような長引く健康への影響を引き起こす呼吸器系ウイルスは、新型コロナウイルスだけではないようだ。英ロンドン大学クイーン・メアリー校のGiulia Vivaldi氏らの研究で、風邪やインフルエンザなどのCOVID-19以外の急性呼吸器感染症(acute respiratory infection;ARI)でも、急性期後にさまざまな症状が4週間以上も続く、いわゆる「long cold」が生じ得ることが明らかになった。詳細は、「eClinicalMedicine」に10月6日掲載された。 この研究では、英国の成人でのARIに関する集団ベースの前向き研究(COVIDENCE UK)のデータを用いて、COVID-19への罹患歴がある人、COVID-19以外のARIへの罹患歴がある人、ARIへの罹患歴がない人(対照)を対象に、長期にわたり持続する症状の比較を行い、COVID-19とそれ以外のARIそれぞれで一定数見られる症状の特定を試みた。COVID-19以外のARIは、肺炎、インフルエンザ、気管支炎、扁桃炎、咽頭炎、中耳炎、風邪、新型コロナウイルス以外のウイルスを原因とする上・下気道感染症、新型コロナウイルス検査で陰性だった人の自己報告による症状から判断されたARIとされた。 対象は、2021年の1月21日から2月15日の間に実施された追跡調査に回答した、新型コロナワクチン未接種者1万171人(平均年齢62.8歳、女性68.8%)。このうち、1,311人(12.9%、COVID-19群)は4週間以上前にCOVID-19に罹患した経験を、472人(4.6%、ARI群)はCOVID-19以外のARIに罹患した経験を持っていた。COVID-19の症状は、咳、睡眠障害、記憶障害、集中力の低下、筋肉や関節の痛み、味覚障害/嗅覚障害、下痢、腹痛、声の異常、脱毛、心拍数の異常な増加、軽度の頭痛やめまい、異常な発汗、息切れ(呼吸困難)、不安や抑うつ、倦怠感の16種類とし、これらの症状の有病率や重症度(評価尺度で評価可能な呼吸困難、不安や抑うつ、倦怠感のみ)を評価した。また健康関連の生活の質(HRQoL)についての評価も行った。 その結果、COVID-19群では対照群に比べて、全ての症状の有病率や重症度が高く、HRQoLが低かったが、ARI群でも、筋肉や関節の痛み、味覚障害/嗅覚障害、脱毛を除くその他の症状の有病率や重症度が対照群よりも高く、HRQoLが低いことが明らかになった。研究グループは、「この結果は、認識されてはいないものの、COVID-19以外のARIでも『long cold』とでもいうべき後遺症が生じていることを示唆するものだ」との見方を示している。COVID-19群とARI群を比べると、前者では特に、味覚障害/嗅覚障害と軽度の頭痛やめまいが生じる傾向が強く、オッズ比は同順で19.74(95%信頼区間10.53〜37.00)、1.74(同1.18〜2.56)であった。 論文の上席著者である、ロンドン大学クイーン・メアリー校のAdrian Martineau氏は、「この結果は、新型コロナウイルス検査の結果が陰性だったにもかかわらず、呼吸器感染症への罹患後に症状が長引いて苦しんでいる人々の経験と一致するのではないかと思う」と話す。同氏は、COVID-19以外の呼吸器感染症への罹患後に症状が持続する病態についての認識や、その病態を言い表す共通の用語さえないことを指摘し、「long COVIDに関する研究を続ける必要はあるが、それとともに、他のARIが及ぼす持続的な影響について調査・検討することも重要だ。それにより、一部の人で症状が長引く理由を探ることが可能となり、最終的にはそうした患者に対する最適な治療やケアの特定に役立つ」と述べている。

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制吐薬適正使用ガイドライン 2023年10月改訂 第3版

8年ぶりの改訂、Mindsに準拠した最新指針がん薬物療法により発現する悪心・嘔吐を適切に評価し抑制することは、がん患者のQOL改善と治療完遂のための重要な課題です。8年ぶりの全面改訂となる今版は、Minds2017に準拠し作成しました。各章の総論・Questionを充実させ、非薬物療法による制吐療法、患者サポート、医療経済などについても新たにQuestionや解説を追加し、制吐療法における、患者と医療従事者の意思決定支援に必要な情報提供を目指しました。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    制吐薬適正使用ガイドライン 2023年10月改訂 第3版定価3,080円(税込)判型B5判頁数208頁(図数:44枚)発行2023年10月編集日本癌治療学会電子版でご購入の場合はこちら

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バート・ホッグ・デュベ症候群〔BHDS:Birt-Hogg-Dube syndrome〕

※なお、タイトル、本文中の“Dube”の“e”にはアクサン・テギュが付くが正しい表記となる。(web上では、一部の異体字などは正確に示すことができないためご理解ください)1 疾患概要■ 疾患概念・定義バート・ホッグ・デュベ症候群(Birt-Hogg-Dube syndrome:BHDS)は17番染色体にあるFLCN遺伝子(以下「FLCN」)の生殖細胞系列遺伝子変異によって生じるまれな常染色体顕性(優性)遺伝性疾患である(OMIM#135150)。臨床症状は、皮膚、肺、腎臓に年齢依存性に病変が発症する。皮膚病変は、顔面から上半身にかけて、皮膚良性腫瘍である線維毛包腫(fibrofolliculoma)あるいは毛盤腫(trichodiscoma)が多発する。肺には多発肺嚢胞を生じ自然気胸を繰り返す。腎臓では、腎嚢胞や特徴的な組織型の腎腫瘍を両側に多発性に生じる。■ BHDSの疾患概念の歴史1977年にカナダ人の皮膚科医のBirt、病理医のHogg、内科医のDubeらは、25歳以降から頭頸部~胸背部にかけて数mm大の皮疹が出現する1家系を発見し、4世代70人の詳細な検討を行った。皮疹は、病理組織学的に線維毛包腫(fibrofolliculoma)を主体に毛盤腫(trichodiscoma)や軟性線維腫(acrochordon)からなり、常染色体顕性(優性)遺伝形式であった。甲状腺髄様がんの家系内多発も認めたが皮疹と分離して遺伝しており、皮疹は別個の遺伝性皮膚疾患と考えられた。一方、Birtらの報告より2年前の1975年に、ドイツ人皮膚科医のHornsteinとKnickenbergは、顔面・頸部・体幹の毛包周囲線維腫(perifollicular fibromas)を生じた同胞2人を発見した。うち1人は大腸ポリープと大腸がんを合併しており、また、父親にも同様の皮疹および多発肺嚢胞と両側腎嚢胞を認めたことから腫瘍発生を伴う遺伝性疾患であると報告した。現在では両論文に報告された皮膚腫瘍は同一と認識されており、HornsteinとKnickenberg は皮膚以外の内臓腫瘍のリスクを含めた疾患概念を提唱したが、Birtらは言及していなかった。そのため、現在広く用いられている疾患名は誤解であり、Hornstein-Birt-Hogg-Dube syndromeと呼称すべきであるとの意見がある。■ 疫学まれな常染色体顕性(優性)疾患で、罹患頻度に性差はないと考えられている。代表的な臨床症状すべてを呈することはまれであり(不完全浸透)、未診断症例も数多く存在する可能性が指摘されている。そのため人口当たりの有病率ははっきりとはわかっていない。自施設では、2006年頃から、気胸や肺嚢胞を契機にBHDSが疑われFLCN検査で診断確定した家系は500家系近くとなり、比較的よく遭遇する可能性のある遺伝性疾患と感じている。■ 病因と病態2002年にBHDS患者において17p11.2.領域にあるFLCNの生殖細胞系列遺伝子変異が同定された。FLCN遺伝子は14個のexonから構成され、579アミノ酸からなる64kDaのタンパク質であるフォリクリン(folliculin)をコードする。日本人を中心とした298家系のBHDSコホート研究では71種類の病的バリアントが同定され、重複(46.3%)、欠失(28.9%)、置換(7.0%)、挿入(0.7%)、欠失挿入(0.3%)、large genomic deletion (4.4%)、スプライシング異常(12.4%)であった1)。全体の80%の患者の遺伝子バリアントは、exon7・9・11・12・13に集中していた。特定の遺伝子型が臨床症状に影響するかについて、明らかな相関関係は認められていない。フォリクリンの機能は十分解明されたわけではないが、細胞周囲環境からのエネルギーや増殖シグナルを伝えるAkt-mTOR経路で機能している。腎腫瘍においては生殖細胞系列FLCN変異(first hit)に加え、もう一方の野生型FLCNに機能喪失型のsecond-hitが起こり、フォリクリンの機能が完全に失われることが腎腫瘍の形成に関与している (Knudsonの2-hit理論)。しかし、良性皮膚腫瘍である線維毛包腫や肺病変においてはsecond-hitの報告例はなく、ハプロ不全(haploinsufficiency)の状態が病変形成に関わると推測されている。一方、細胞接着を介したWnt/βカテニン経路、一次線毛の形成や機能、ミトコンドリア代謝、など多彩な細胞機能に関与することが報告されている。■ 臨床症状1)皮膚病変顔面(鼻翼・頬部)、頸部、耳、体幹上部を中心に、皮膚色と同じ~やや白色で痛みや発赤を伴わない数ミリ大のドーム状小丘疹が25歳以降に出現する(図1A)。病理所見は、毛包周囲を取り囲む良性腫瘍である線維毛包腫(fibrofolliculoma)を認める(図1B)。皮膚病変の有病率は検討したコホートにより異なり、欧米人では有病率70~80%、アジア人では18~49%低いとの指摘もある。日本人BHDS患者31人についてダーモスコピーを用いて観察し、必要に応じて皮膚生検を行った研究では、83.9%の症例で皮疹を診断できたと報告している2)。また、皮膚病変の平均発症年齢は42.5歳であり、欧米人より発症年齢が遅く、若年者では皮疹が未発症である可能性に留意する必要があると報告している2)。図1 Birt-Hogg-Dube症候群(BHDS)の皮膚病変画像を拡大するABHDSの皮膚所見。鼻部にドーム状の丘疹を多数認める。B線維毛包腫(fibrofolliculoma)の病理組織像。毛包漏斗部が拡張し、毛包上皮が索状・網状に増殖し(矢印)、それを取り囲むように膠原線維が増生している。2)腎病変BHDSの患者は、FLCN変異バリアントを持たない血縁者と比較して腎腫瘍を発症するリスクが約7倍高く、40歳以降に好発することが報告されている3)。BHDS患者の12~34%が、48~52歳でさまざまな組織型の腎がんを発症するとされる。組織型としてはHybrid oncocytic/chromophobe tumor(HOCT)または嫌色素性腎がんが多く(図2)、まれに淡明細胞型腎がんや乳頭状腎がんなどもみられ、両側多発性にさまざまな組織型が出現する。腫瘍は緩徐発育型が多いとされるが、悪性度が高く遠隔転移を伴う症例の報告もある。図2 Birt-Hogg-Dube症候群(BHDS)の腎病変画像を拡大するA腹部造影CT。右腎に2個の腎腫瘍を認める(矢印部)。B嫌色素性腎細胞がんの組織像(細胞質が染色されにくく、核周囲にハローを認める特徴に注目)3)肺病変両肺に肺嚢胞が多発し、気胸を繰り返すことが特徴である(図3)。BHDS患者はFLCN変異バリアントを持たない血縁者と比較して50倍の気胸リスクを有することが報告された3)。肺嚢胞はBHDS患者の85%前後に認められ、気胸は25%前後に認めるとされるが、BHDSの皮膚、肺、腎臓のどの病変に注目して集積したコホート研究なのかにより異なる。肺嚢胞は自然経過で数が増え、嚢胞も大きくなることが報告されている4)。嚢胞の数が増えると気胸の発症リスクが上がることが指摘されている。嚢胞数が少ない頃は、一般的に呼吸機能は正常範囲内であるが、嚢胞数が増えるにつれ閉塞性換気障害が出現する。図3  Birt-Hogg-Dube症候群(BHDS)の肺病変画像を拡大するA、B:胸部CT画像下葉、縦隔側優位や葉間部に接して、薄くスムースな壁を有する不整形の嚢胞が多数存在する。血管を取り囲む嚢胞を認める。C、D:胸腔鏡所見肺底部や縦隔面に、広基性で内部が透けてみえるような薄壁嚢胞が突出している。炎症所見はほとんどなく、大きな嚢胞では嚢胞表面に血管を含む索状の結合組織が豊富に認められる。E、F:病理組織像(HE染色とEVG染色)嚢胞は小葉間間質に接して形成されるため、腔内に静脈の突出がみられる。小葉間隔壁に接していない嚢胞壁は肺胞組織からなり、嚢胞には炎症細胞の浸潤や線維化はみられない。4)その他の臨床像大腸ポリープおよび大腸がんとの関連を示唆する報告が複数あったが、オランダの399人のBHDS患者と健常血縁者を比較したコホート研究では、ポリープの数および大腸がんの発生に有意差はみられなかった。その他、耳下腺腫瘍、甲状腺腫瘍、メラノーマ、副腎腫瘍、血液腫瘍、などを合併した症例報告があるが、関連性は明らかではない。■ 予後生命予後に最も影響するのは腎腫瘍であるが、治療後の予後についてのデータは乏しい。BHDSに特徴的なオンコサイトーマや嫌色素性腫瘍の増殖は比較的遅く、遠隔転移もしにくいが、aggressiveな経過を示す組織型の腎腫瘍の合併もある。一方、皮膚病変は美容上の問題、肺病変は気胸で入院加療を繰り返すと経済的あるいは就業上の問題などで生活の質に影響が大きい。BHDSは、「特定の疾病に罹患しやすい体質」であり、診断後は定期的な健診による健康管理に務めることが重要である。適切な健診間隔についてエビデンスはないが、各病変の好発年齢を参照し、必要な検査を受けるよう指導する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)European BHD consortiumによる診断基準(表1)5)と、米国NIH(NCI)のSchmidtらの診断基準(表2)6)が発表されている。前者では皮疹の診断価値に重きが置かれている。一方、後者では診断確定には生殖細胞系列のFLCN変異の同定が必須、という立場である。国内ではFLCN検査は保険適用外のままである。そのため、BHDSを疑って皮膚生検を行ったが病理組織診断で線維毛包腫あるいは毛盤腫の診断が得られなければ、診断確定するすべがなくなる。FLCNの遺伝子検査を希望する場合には、非保険で公益財団法人かずさDNA研究所に検査の依頼をすることが可能である。また、遺伝性疾患であることから検査に際しては遺伝カウンセリング提供体制を構築することも重要である。画像を拡大する画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)皮膚病変線維毛包腫や毛盤腫は生命および機能予後に影響しないため基本的には経過観察されることが多いが、整容上の観点から切除されることがある。線維毛包腫に対するラパマイシン外用剤のPhaseIII試験が行われたが、プラセボと比較して有意な整容上の改善を認めなかった。2)腎病変異時・同時を含めて多発することから定期的な画像所見でフォローを行う。治療介入の目安として“3cmルール”があり、3cmに達する頃には腎機能温存のために腫瘍核出術(nephron-sparing surgery)が推奨されている6)。発見時にすでに3cmを超えていた場合には腎腫瘍のステージに応じた標準的治療を選択する。3)肺病変筆者らのグループは、気胸の既往歴がある314人のBHDS患者の解析を行った1)。初回の気胸発症年齢は中央値32歳(14~78歳)で、男性の方が女性よりも初回気胸年齢が若かった。25歳未満の発症は24.2%で認めた。特徴的と考えられたのが両側同時気胸を初発時と再発時合わせて11.8%の患者が経験していた。気胸が起こりやすい年齢分布としては、男女合わせて30代にピークがきているが、女性の方が男性と比較をして中年以降も気胸発症が続く傾向を認めた。気胸発症時の対応は、“British Thoracic Society”誌の発表している“pleural disease guideline 2010”に示される治療アルゴリズムなどを参考に治療の個別化が求められる。気胸の程度、肺機能障害の程度により慎重な外来経過観察、あるいは外来管理可能な簡易型ドレナージキットを用いた治療を行う。胸腔ドレーン挿入後にエアリークが停止しない場合には、外科治療が考慮される。標準的外科治療は胸腔鏡手術(video-assisted thoracoscopic surgery:VATS)であるが、エアリーク部の処置のみならず気胸再発を予防することを目的として、全肺胸膜カバリング術(total pleural covering:TPC)が専門施設では実施され、良好な再発防止効果が報告されている7)。TPCでは壁側胸膜との癒着を生じにくい吸収性素材である再生酸化セルロース(ORC)を使用し、葉間も含めた臓側胸膜全体を胸腔鏡下にORCで被覆し、フィブリン糊を滴下して手術を終了する。日常生活の注意点として気圧変化による気胸発症のリスクが挙げられる。研究対象としたコホートの大きさや対象者により違いがありうるが、フライトに関連した気胸のリスクは、患者当たり7.4%、1フライト当たり0.27%とする報告もある。肺嚢胞のある患者ではスキューバダイビングは禁忌である。4 今後の展望現時点でBHDSの病変に対して有効な薬剤は存在しないが、BHDS関連の腎腫瘍に対して散発性腎がんで適用のあるエベロリムスの有効性を検証する臨床試験がアメリカを中心に行われているなど薬剤開発が期待される。未診断例も数多くあることから、呼吸器内科医、皮膚科医、泌尿器科医を中心に疾患を認識し、レジストリ制度の構築により生涯にわたっての疾患表現型を追跡する必要があると考える。5 主たる診療科呼吸器内科、呼吸器外科、皮膚科、泌尿器科。肺病変は皮膚・腎臓病変より若年で発生するため気胸を契機にBHDSの診断に至る可能性が高い。呼吸器内科・外科では気胸や多発肺嚢胞を契機に的確に診断し、その後の健康管理を指導するうえで役割が大きい。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報気胸・肺のう胞スタディグループ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)バート・ホッグ・デュベ症候群情報ネット(BHD-net)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報BHD Foundation(患者団体とMyrovlytis Trustにより設立された英国の団体)1)Namba Y et al. PLoS One. 2023;18:e0289175.2)Iwabuchi C, et al. J Dermatol Sci. 2018;89:77-84.3)Zbar B, et al. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2002;11:393-400.4)Hoppe BPC, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2022;205:1474-1475.5)Menko FH, et al. Lancet Oncol. 2009;10:1199-1206.6)Schmidt LS, et al. Nat Rev Urol. 2015;12:558-569.7)Mizobuchi T, et al. Orphanet J Rare Dis. 2018;13:78.公開履歴初回2023年10月31日

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医者になってよかったですか?【医学生お悩み相談ラヂオ】第15回

動画解説第15回は、医学部6年生の男性からのお悩み。試験勉強が辛くモチベーションを上げるためにも医師になってからの将来像をイメージしたいとのこと。多くの試練を乗り越えて医師になったえど先生が伝える、医師の姿とは。

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KRAS G12C変異陽性NSCLCに対するadagrasib+ペムブロリズマブの有用性(KRYSTAL-7)/ESMO2023

 adagrasibは、半減期が長く(23時間)、用量依存的な薬物動態を示し、中枢神経系への移行性を有するKRAS G12C阻害薬である。また、肝臓やその他の臓器部位に対するoff-target作用も少ないと考えられている。KRAS G12C変異を有する進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、adagrasibとペムブロリズマブの併用療法を検討したKRYSTAL-7試験が実施され、PD-L1高発現(TPS 50%以上)の患者において有望な結果が示された。本結果は、米国・シカゴ大学メディカルセンターのMarina Garassino氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。試験デザイン:海外第II相試験対象:未治療のKRAS G12C変異を有する進行・転移NSCLC患者148例試験群:adagrasib(400mg、1日2回)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)評価項目:[主要評価項目]治験担当医師評価に基づく奏効率(ORR)[副次評価項目]奏効期間(DOR)、治験担当医師評価に基づく無増悪生存期間(PFS)、安全性など本発表では、PD-L1高発現(TPS 50%以上)の患者51例における有効性と治療を受けた全患者148例の安全性のデータが報告された。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は67歳、女性が48%であり、追跡期間中央値は8.7ヵ月であった(PD-L1高発現の患者の追跡期間中央値は10.1ヵ月)。・PD-L1高発現の患者におけるORRは63%(CR:1例、PR:31例)、病勢コントロール率は84%であった。・奏効までの期間中央値は1.4ヵ月、DOR中央値は未到達(95%信頼区間[CI]:12.6~推定不能)であった。・PFS中央値は未到達(95%CI:8.2~推定不能)であり、1年PFS率は60.8%であった。・全患者における主な治療関連有害事象(40例以上に発現)は、悪心(34.5%)、下痢(29.7%)であった。・全Gradeの免疫関連有害事象(irAE)は18%、Grade3以上のirAEは5%に認められた。・Grade5の治療関連有害事象が2例(1%)に認められ、内訳は肺臓炎、肺炎であった。・adagrasibとペムブロリズマブの両剤の中止に至った治療関連有害事象は4%に認められた(adagrasibのみ中止:6%、ペムブロリズマブのみ中止:11%)。・ALT/AST上昇やその他の肝関連の治療関連有害事象により両剤の中止に至った患者はいなかった。 本結果について、Garassino氏は「adagrasibとペムブロリズマブの併用療法は、PD-L1高発現のNSCLC患者における有望な有効性、管理可能な安全性プロファイルを示した。PD-L1高発現の患者におけるORRは63%であり、ペムブロリズマブ単剤によって得られると予測されるORR(39~45%)よりも良好であった。これらの結果は、未治療のKRAS G12C変異を有するPD-L1 TPS 50%以上の進行・転移NSCLC患者を対象として、adagrasibとペムブロリズマブの併用療法とペムブロリズマブ単剤療法を比較する第III相試験の開始を支持するものである」とまとめた。

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実臨床における喘息コントロールに生物学的製剤は有効か?/AZ

 アストラゼネカ(AZ)は2023年10月20日付のプレスリリースにて、日本における重症喘息の前向き観察研究であるPROSPECT studyの1年時解析から、実臨床における生物学的製剤の喘息コントロール改善効果が示されたことを発表した。本研究結果を踏まえて「本邦の実臨床でコントロール不良の重症喘息患者に対して適切に生物学的製剤を開始することで、疾病負荷を軽減できることが示された」としている。 重症喘息は頻回な増悪を繰り返し、著しい呼吸機能の低下、生活の質の低下を余儀なくされる。さらに、社会経済的な負担も大きく、その医療費は非重症喘息と比べて高いことが報告されている。複数のガイドラインで、コントロール不良の重症喘息患者に対して生物学的製剤の使用が推奨されているが、日本の実臨床における生物学的製剤の使用実態とその有用性はこれまで示されていなかった。 PROSPECT studyは、高用量吸入ステロイド剤とその他の長期管理薬を使用してもコントロール不良の成人(20歳以上)重症喘息患者を対象とする、国内34施設にて実施された追跡調査期間2年間の前向き観察試験である。主要評価項目は、試験登録12週間以内に生物学的製剤を開始した群(127例)と開始しなかった群(162例)における2年後の気管支拡張薬吸入後のFEV1※1(Forced Expiratory Volume in one second)のベースラインからの変化量の差と設定された。 今回のリリースでは、1年時解析の結果が発表された。 生物学的製剤開始群と非開始群における気管支拡張薬投与後の変化は以下のとおりであった(いずれもベースラインのリスク因子で調整)。・FEV1のベースラインからの変化量の差は130mL、p=0.007・喘息増悪発生率比は0.46、p=0.012・ACQ-5スコア※2のベースラインからの変化量の差は-0.67、p<0.001 本研究のScientific Advisory Committee委員長である、日本喘息学会理事長であり近畿大学病院病院長の東田 有智氏は、コントロール不良の重症喘息患者における疾病負荷と、適切な生物学的製剤の使用が推奨されながらも限定的である導入実態を振り返り、「この結果が、コントロール不良の重症喘息患者への生物学的製剤導入の治療機会の均てん化の促進に寄与することを願う」とコメントしている。※1 FEV1:1秒量(努力肺活量の1秒量)※2 ACQ-5スコア:5種類の症状(「夜間覚醒」「起床時の症状」「日常生活の制限」「息切れ」「喘鳴」)に関する質問から構成される喘息コントロール状態を評価する指標

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抗精神病薬の減量/中止と維持療法との比較~RADAR試験

 統合失調症や再発性精神疾患の患者には、抗精神病薬の継続投与が推奨されているが、副作用の負担が大きく、長期アウトカムに関するエビデンスは不十分である。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのJoanna Moncrieff氏らは、抗精神病薬の段階的な減量プロセスの有益性と有害性を維持療法と比較し評価するため、本検討を行った。その結果、2年間のフォローアップ調査では、抗精神病薬の段階的な減量プロセスは、社会機能に影響を及ぼさないことが明らかとなった。The Lancet Psychiatry誌2023年11月号の報告。 「PADAR試験」は、イングランドのNational Health Service Trustの19施設で実施された並行群間無作為化オープンラベル試験である。抗精神病薬の減量により、社会的機能が改善し短期的には再発リスクが増加する、と仮説を立て検証を行った。対象は、再発性非感情性精神病性障害と診断され、抗精神病薬を投与された18歳以上の患者。除外基準には、過去1ヵ月間でメンタルヘルスの不調または入院を経験した患者、自身または他者に重大なリスクをもたらすと治療臨床医が判断した患者、英国の精神保健法に基づき抗精神病薬の投与が義務付けられている患者を含めた。 対象患者は、独立したインターネットベースのシステムを通じて、治療臨床医の管理の下で段階的かつフレキシブルに抗精神病薬を減らす減量群、または維持群に1対1の割合でランダムに割り付けられた。試験参加者と治療臨床医はどちらの群に割り当てられたかを認識していたが、評価者はマスキングされた。フォローアップ期間は2年、主要アウトカムは社会機能評価尺度で評価した社会機能とした。主な副次的アウトカムは、要入院と定義された重度の再発とした。分析にはITT分析を用い、グループの独自性は考慮しなかった。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングを行った4,157例中253例がランダムに割り付けられた。・内訳は、男性168例(66%)、女性82例(32%)、トランスジェンダー3例(1%)であり、平均年齢は46±12歳(範囲:22~79歳)、白人171例(67%)、黒人52例(21%)、アジア人16例(6%)、その他12例(5%)であった。・試験期間中の任意の時点における減量率の中央値は67%であり、24ヵ月時点で33%であった。・24ヵ月時点で、減量群126例中90例、維持群127例中94例を評価したところ、社会機能評価尺度に差は認められなかった(β=0.19、95%信頼区間[CI]:-1.94~2.33、p=0.86)。・重度の有害事象は、減量群では49例で93件(主にメンタルヘルスの再発による入院)、維持群では29例で64件が認められた。

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PSMA標的治療薬ルテチウム-177、タキサン未治療の転移を有する去勢抵抗性前立腺がんでrPFS改善(PSMAfore)/ESMO2023

 タキサン未治療でアンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)治療歴のある、前立腺特異的膜抗原(PSMA)陽性の転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者において、ルテチウム-177[177Lu]Lu-PSMA-617は別のARPIによる治療と比較して画像上の無増悪生存期間(rPFS)を改善し、良好な安全性プロファイルを示した。米国・メイヨー・クリニックのOliver Sartor氏が第III相PSMAfore試験の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。同試験については1次解析において主要評価項目(rPFS)の達成が報告されており(ハザード比[HR]:0.41、95%信頼区間[CI]:0.29~0.56、p<0.0001)、今回は2次解析結果となる。・対象:[68Ga]Ga-PSMA-11 PET/CTによるPSMA陽性、1種類の第2世代ARPIによる治療後に進行したタキサン未治療のmCRPC患者(ECOG PS 0~1) ・試験群:[177Lu]Lu-PSMA-617(7.4GBq±10%)を6週ごと6サイクル 234例・対照群:別のARPI(アビラテロンもしくはエンザルタミド) 234例※盲検下独立中央判定(BICR)評価によるX線所見の進行が認められた場合は試験群へのクロスオーバーが可能・評価項目:[主要評価項目]BICRによるrPFS[主要副次評価項目]RPSFTクロスオーバー調整解析による全生存期間(OS)[副次評価項目]PSA50、症候性骨関連事象(SSE)までの時間、健康関連QOL(HRQOL)、安全性など[探索的評価項目]奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)など 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の患者特性は、年齢中央値が試験群71歳vs.対照群72歳、ARPI治療歴はアビラテロンが50.9% vs.55.6%、PSA中央値18.4μg/L vs.14.9μg/Lで、その他の項目も両群でバランスがとれていた。・対照群においてX線所見の進行により治療中止となった146例中123例(84.2%)が試験群にクロスオーバーされた。・主要評価項目のBICRによるrPFS中央値は、試験群12.02ヵ月(95%CI:9.30~14.42)vs.対照群5.59ヵ月(95%CI:4.17~5.95)となり(HR:0.43、95%CI:0.33~0.54)、1次解析に引き続き達成された。・主要副次評価項目のRPSFT解析によるOS中央値は、試験群19.25ヵ月(95%CI:16.95~NE)vs.対照群19.55ヵ月(95%CI:14.95~NE)だった(HR:0.80、95%CI:0.48~1.33)。・ITT解析によるOS中央値は、試験群19.25ヵ月(95%CI:16.95~NE)vs.対照群19.71ヵ月(95%CI:17.81~NE)だった(HR:1.16、95%CI:0.83~1.64)。OSのデータ解析は引き続き行われる予定。・ORRは試験群50.7% vs.対照群14.9%、完全奏効は21.1% vs.2.7%。DOR中央値は13.63ヵ月(95%CI:11.56~NE)vs.対照群10.05ヵ月(95%CI:4.63~NE)だった。・PSA値について、ベースラインから50%以上の低下がみられたのは、試験群57.6% vs.対照群20.4%だった。・SSEまでの時間のHRは0.35(95%CI:0.22~0.57)、FACT-P QOL調査スコアのHRは0.59(95%CI:0.47~0.72)、BPI-SF疼痛強度スケールによる評価結果のHRは0.69(95%CI:0.56~0.85)だった。・Grade3以上の治療下で発現した有害事象(TEAE)は試験群33.9% vs.対照群43.1%で、多くみられたのは貧血(6.2% vs.6.0%)、口内乾燥(1.3% vs.0%)などだった。 Sartor氏は、クロスオーバー調整解析によるOSは[177Lu]Lu-PSMA-617群で良好な傾向がみられたもののITT解析によるOSではみられなかったことについて、84.2%という高いクロスオーバー率が関係している可能性があるとした。

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CAD患者へのスタチン、種類による長期アウトカムの差は?/BMJ

 冠動脈疾患(CAD)成人患者においてロスバスタチンvs.アトルバスタチンは、3年時点の全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中または冠動脈血行再建術の複合に関して有効性は同等であった。ロスバスタチンはアトルバスタチンと比較し、LDLコレステロール(LDL-C)値の低下に対して有効性が高かったが、糖尿病治療薬を必要とする糖尿病の新規発症および白内障手術のリスクが上昇した。韓国・延世大学校医科大学のYong-Joon Lee氏らが、韓国の病院12施設で実施した多施設共同無作為化非盲検試験「Low-Density Lipoprotein Cholesterol-Targeting Statin Therapy Versus Intensity-Based Statin Therapy in Patients With Coronary Artery Disease trial:LODESTAR試験」の2次解析結果を報告した。LDL-Cの低下作用はスタチンの種類によって異なり、冠動脈疾患患者におけるロスバスタチンとアトルバスタチンの長期的な有効性および安全性を直接比較した無作為化試験はほとんどなかった。BMJ誌2023年10月18日号掲載の報告。CAD患者4,400例をロスバスタチン群とアトルバスタチン群に無作為化 研究グループは2016年9月~2019年11月に、冠動脈疾患を有する19歳以上の患者4,400例を、2×2要因デザイン法を用いて、ロスバスタチン群(2,204例)またはアトルバスタチン群(2,196例)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、3年時点の全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中・冠動脈血行再建術の複合で、副次アウトカムは安全性(糖尿病の新規発症、心不全による入院、深部静脈血栓症または肺塞栓症、末梢動脈疾患に対する血管内血行再建術、大動脈インターベンションまたは手術、末期腎不全、不耐容による試験薬の中止、白内障手術、および臨床検査値異常の複合)とした。3年時点の複合アウトカム、両群で同等 4,400例中4,341例(98.7%)が試験を完遂した。3年時点の試験薬の1日投与量(平均±SD)は、ロスバスタチン群17.1±5.2mg、アトルバスタチン群36.0±12.8mgであった(p<0.001)。 主要アウトカムの複合イベントは、ロスバスタチン群で189例(8.7%)、アトルバスタチン群で178例(8.2%)に確認され、ハザード比(HR)は1.06(95%信頼区間[CI]:0.86~1.30、p=0.58)であった。 投与期間中のLDLコレステロール値(平均±SD)は、ロスバスタチン群1.8±0.5mmol/L、アトルバスタチン群1.9±0.5mmol/Lであった(p<0.001)。 ロスバスタチン群はアトルバスタチン群と比較し、糖尿病治療薬の導入を要する糖尿病の新規発症率(7.2% vs.5.3%、HR:1.39[95%CI:1.03~1.87]、p=0.03)、ならびに白内障手術発生率(2.5% vs.1.5%、1.66[1.07~2.58]、p=0.02)が有意に高かった。その他の安全性エンドポイントは、両群で差は確認されなかった。

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死亡リスクを低下させる睡眠のとり方、睡眠時間よりも〇〇!?

 睡眠は健康と密接な関係があることが知られているが、研究の多くは睡眠時間に焦点が当てられており、睡眠の規則性と死亡リスクの関係は明らかになっていない。そこで、オーストラリア・Monash UniversityのDaniel P. Windred氏らの研究グループは、英国のUKバイオバンクの6万人超のデータを用いて、睡眠時間および睡眠の規則性と死亡リスクとの関連を検討した。その結果、睡眠時間と睡眠の規則性はいずれも全死亡リスクの予測因子であることが示されたが、睡眠の規則性のほうがより強い予測因子であった。Sleep誌オンライン版2023年9月21日号に掲載の報告。 本研究では、UKバイオバンクに登録された40~69歳のうち、手首に加速度センサーを7日間装着し、データが取得できた6万977人が対象となった。睡眠時間と睡眠の規則性は加速度センサーのデータを基に推定した。対象を睡眠時間と睡眠の規則性でそれぞれ五分位に分類し、第1五分位群(0~20パーセンタイル)に対する第2~5五分位群(20~40、40~60、60~80、80~100パーセンタイル)の全死亡、原因別死亡(がん、心代謝性疾患、その他)のリスクを検討した。Cox比例ハザードモデルを用い、最小限の調整をしたモデル(年齢、性別、民族で調整)と完全調整モデル(最小限の調整をしたモデルに身体活動レベルなどの10因子を追加して調整)の2つのモデルで解析した。 主な結果は以下のとおり。・本研究の対象となった6万977人の平均年齢は62.8歳、平均睡眠時間は6.77時間、平均追跡期間は6.30年であった。・追跡期間中の死亡数は1,859人であった(1,000人年当たり4.3人)。・睡眠の規則性の第2~5五分位群は、最小限の調整をしたモデルおよび完全調整モデルのすべての群で全死亡リスクが有意に低下した(20~48%低下)。・同様に、がん死亡リスク(16~39%低下)、心代謝性疾患による死亡リスク(22~57%低下)もすべての群で有意に低下し、その他の原因による死亡リスクも完全調整モデルの第2五分位群を除くすべての群で有意に低下した。・睡眠時間の第2~5五分位群も、同様にすべての群で全死亡リスクが有意に低下したが(18~31%低下)、がん死亡リスクとの関連はいずれの群でも認められなかった。・赤池情報量基準(AIC)に基づくモデル比較において、睡眠の規則性は睡眠時間よりも全死亡リスクの強い予測因子であった。 本研究結果について、著者らは「死亡リスクの予測において、睡眠時間が重要な役割を果たしていることが確認されたが、睡眠の規則性は睡眠時間よりも強い予測因子であることが明らかになった。睡眠の規則性を向上させるためには、睡眠時間を増やすことよりも、毎日の睡眠時間をそろえることのほうが現実的かもしれない」とまとめた。

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胃がん1次治療、周術期ペムブロリズマブはEFS延長せず(KEYNOTE-585)/ESMO2023

 切除可能な局所進行胃・胃食道接合部(G/GEJ)がん患者における免疫チェックポイント阻害薬の開発が進められているが、今年の米国臨床腫瘍学会(ASCO 2023)において術後療法にニボルマブの上乗せを検証したATTRACTION-5試験では上乗せ効果は示されなかった。同じくG/GEJがん患者を対象として、術前術後の化学療法にペムブロリズマブの上乗せ効果を検証した無作為化二重盲検第III相KEYNOTE-585試験においても、無イベント生存期間(EFS)に有意な延長はみられなかったことがすでに報告されている。本試験の詳細について、国立がん研究センター東病院の設楽 紘平氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。・対象:未治療の局所進行、切除可能G/GEJがん、PS0~1・試験群(メインコホート):術前にペムブロリズマブ200mg+化学療法(シスプラチン+カペシタビンまたはシスプラチン+5-FU)を3サイクル、術後にペムブロリズマブ+化学療法を3サイクル実施、さらにペムブロリズマブ単剤を最大11サイクル投与(ペムブロ群)・対照群:術前・術後にプラセボ+化学療法、さらにプラセボ単剤投与(プラセボ群)・評価項目:[主要評価項目]病理学的完全奏効率(pCR率)、EFS、全生存期間(OS)[副次評価項目]安全性 主な結果は以下のとおり。・804例が登録され、ペムブロ群とプラセボ群に1対1で割り付けられた。追跡期間中央値は47.7ヵ月だった。アジア人47%、欧米人26%、その他27%だった。・pCR率はペムブロ群で12.9%(95%信頼区間[CI]:9.8~16.6)、プラセボ群で2.0%(95%CI:0.9~3.9)だった。・EFSはペムブロ群で改善したが(中央値44.4ヵ月vs.25.3ヵ月、HR:0.81、95%CI:0.67~0.99、p=0.0198)、わずかな差であったものの、事前に規定された有意差を示すには至らなかった。・OS中央値はペムブロ群で60.7ヵ月、プラセボ群で58.0ヵ月で、有意差はなかった。・Grade3以上の薬物関連有害事象はペムブロ群で64%、プラセボ群で63%で発生した。 設楽氏は「未治療の局所進行切除可能G/GEJがん患者において、周術期のペムブロ+化学療法は残念ながらEFSに有意な改善はみられなかったが、pCR率は大幅に改善した。周術期における免疫チェックポイント阻害薬の有効性を確かめるためには、さらなる研究が必要だ」とした。 続いて発表された、本試験同様に胃がん周術期の免疫チェックポイント阻害薬投与を検討するMATTERHORN試験(術前化学療法にデュルバルマブ上乗せ)がポジティブな結果となったことを踏まえ、発表後のディスカッションでは、差異が出た要因や適切な化学療法の種類、恩恵を受ける患者の特性などについて、盛んな議論が交わされた。

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ER+乳がんの術前化療にペムブロリズマブ追加、pCRを有意に改善(KEYNOTE-756)/ESMO2023

 高リスクのER陽性(+)/HER2陰性(-)早期乳がん患者を対象とした第III相KEYNOTE-756試験の結果、術前化学療法にペムブロリズマブを上乗せすることで、病理学的完全奏効(pCR)率が有意に改善したことを、ポルトガル・Champalimaud Clinical Centre/Champalimaud FoundationのFatima Cardoso氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。・対象:T1c~2 cN1~2またはT3~4 cN0~2、ER+/HER2–、Grade3、未治療の浸潤性乳管がん患者 1,278例・試験群(ペムブロリズマブ群):ペムブロリズマブ+パクリタキセル→ペムブロリズマブ+AC療法またはEC療法→手術→ペムブロリズマブ+内分泌療法 635例・対照群(プラセボ群):プラセボ+パクリタキセル→プラセボ+AC療法またはEC療法→手術→プラセボ+内分泌療法 643例・評価項目:[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)、無イベント生存期間(EFS)[副次評価項目]pCR(ypT0 ypN0およびypT0/Tis)、全生存期間、安全性など・層別化因子:東ヨーロッパ:PD-L1発現状況、中国:なし、その他の国/地域:PD-L1発現状況、リンパ節転移、AC/EC療法の投与スケジュール、ER陽性率 今回がKEYNOTE-756試験結果の初報告で、主要評価項目の1つであるpCRの結果が報告された。EFSについては引き続き評価が行われる予定。 主な結果は以下のとおり。・pCRの最終解析(データカットオフ:2023年5月25日)における追跡期間中央値は33.2ヵ月(範囲:9.7~51.8)であった。・ペムブロリズマブ群およびプラセボ群の年齢中央値は49歳(範囲:24~82)/49歳(19~78)、PD-L1 CPS≧1%が75.9%/76.0%、T3/4が36.7%/35.8%、リンパ節転移陽性が89.8%/90.5%、ER≧10%が94.6%/93.3%で、両群でバランスがとれていた。・主要評価項目のpCR(ypT0/Tis ypN0)は、ペムブロリズマブ群24.3%、プラセボ群15.6%であり、統計学的に有意な改善を示した(推定差8.5%[95%信頼区間[CI]:4.2~12.8]、p=0.00005)。・副次評価項目のpCRは、ypT0 ypN0がペムブロリズマブ群21.3%、プラセボ群12.8%(推定差8.3%[95%CI:4.2~12.4])、ypT0/Tisはペムブロリズマブ群29.4%、プラセボ群18.2%(推定差11.0%[95%CI:6.5~15.7])であった。・事前に規定したサブグループのpCRもペムブロリズマブ群のほうが良好であった。とくにER陽性率が10%以上の場合の推定差は8.0%であったが、10%未満の場合は25.6%であった。・Grade3以上の治療関連有害事象発生率は、ペムブロリズマブ群52.5%、プラセボ群46.4%で、安全性プロファイルは既報と一致していた。Grade3以上の免疫関連有害事象はペムブロリズマブ群7.1%、プラセボ群1.2%であった。ペムブロリズマブ群では急性心筋梗塞による死亡が1例(0.2%)認められた。 これらの結果より、Cardoso氏は「PD-L1発現状況にかかわらず、術前化学療法にペムブロリズマブを追加することで、pCR(ypT0/Tis ypN0)は8.5%改善し、ypT0 ypN0およびypT0/Tisでも同様であった。安全性プロファイルはこれまでのものと同様で、新たな有害事象は報告されなかった」としたうえで、「今回の結果は、もう1つの主要評価項目であるEFSの評価を行うに値する結果である。現時点ではまだ不十分であるが、引き続き評価が必要である」とまとめた。

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切除可能ALK陽性NSCLC、術後アレクチニブがDFS改善(ALINA)/ESMO2023

 切除可能なStageIB~IIIAのALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する標準治療は、プラチナ製剤を用いた化学療法である。そこで、進行期のALK融合遺伝子陽性NSCLC患者に対する有効性が認められているアレクチニブを術後補助療法として用いた場合の有効性・安全性を検討するALINA試験が実施され、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのBenjamin Solomon氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で中間解析の結果を発表した。アレクチニブはプラチナ製剤を用いた化学療法と比較して無病生存期間(DFS)が有意に改善したことが示された。試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験対象:抗がん剤による全身療法歴のないECOG PS 0/1の切除可能なStageIB(4cm以上)~IIIAのALK融合遺伝子陽性NSCLC患者(UICC/AJCC第7版に基づく)試験群:アレクチニブ600mg(1日2回)を2年間または再発まで(アレクチニブ群:130例)対照群:シスプラチン+ペメトレキセドまたはビノレルビンまたはゲムシタビン(シスプラチン不耐の場合はカルボプラチンに変更可能)を3週ごと4サイクルまたは再発まで(化学療法群:127例)評価項目:[主要評価項目]DFS(StageII~IIIA集団→ITT集団[StageIB~IIIA]の順に階層的に検証)[その他の評価項目]中枢神経系再発に対するDFS(CNS DFS)、全生存期間(OS)、安全性など解析計画:今回の解析におけるStageII~IIIA集団の有意水準はα=0.0118、ITT集団の有意水準はα=0.0077とした。データカットオフ日:2023年6月26日 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は27.8ヵ月であった。・StageII~IIIA集団におけるDFS中央値は化学療法群44.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:27.8~推定不能)であったのに対し、アレクチニブ群は未到達であり、アレクチニブ群が有意に改善した(ハザード比[HR]:0.24、95%CI:0.13~0.45、p<0.0001)。・StageII~IIIA集団における2年DFS率は化学療法群63.0%、アレクチニブ群93.8%、3年DFS率はそれぞれ53.3%、88.3%であった。・ITT集団においても、アレクチニブ群は化学療法群と比較してDFSが改善した(HR:0.24、95%CI:0.13~0.43、p<0.0001)。・DFSのサブグループ解析において、いずれのサブグループにおいてもアレクチニブ群が良好な傾向にあった。・ITT集団において、アレクチニブ群は化学療法群と比較してCNS DFSが改善した(HR:0.22、95%CI:0.08~0.58)。・再発はアレクチニブ群15例、化学療法群49例に認められ、そのうち遠隔転移はアレクチニブ群33.3%(5/15例)、化学療法群55.1%(27/49例)であった。脳転移はアレクチニブ群4例、化学療法群14例に認められた。・OSのデータは未成熟であった(死亡は6例)。・Grade3以上の有害事象は化学療法群31%(37/120例)、アレクチニブ群30%(38/128例)に認められ、Grade5の有害事象は認められなかった。重篤な治療関連有害事象はそれぞれ7%(8/120例)、2%(2/128例)、治療中止に至った有害事象はそれぞれ13%(15/120例)、5%(7/128例)に認められた。 本結果について、Solomon氏は「本試験は、切除可能なStageIB~IIIAのALK融合遺伝子陽性NSCLC患者におけるALK阻害薬の有効性を第III相試験で初めて示した試験であり、アレクチニブは術後補助療法における新たな治療選択肢となる」とまとめた。

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革新的新薬の創出へ、アカデミア・ベンチャーと製薬企業の連携強化

 一般社団法人アカデミア発バイオ・ヘルスケアベンチャー協会が設立記念シンポジウムを10月18日に開催した。本協会は前身の大学発バイオベンチャー協会の趣旨を引継ぎ、バイオベンチャーやスタートアップの振興と産官学連携の推進を目的に今年5月22日に設立された。本協会の理事長である森下 竜一氏(大阪大学寄付講座 教授)によると、医療イノベーション推進のためには業界をワンボイスで進めて行く必要があり、そのためにさまざまな意見を取り込みながらアカデミア発のベンチャー振興の政策提言を令和6年半ばを目途に取りまとめていく予定だという。アカデミア・ベンチャーと製薬企業の連携は革新的新薬開発の必須条件 近年、日本の新薬開発は世界に後れを取っている。これまでは製薬企業が創薬のすべてを担ってきたが、医薬品開発の複雑性・専門性が高まることで自前主義が成り立たなくなり、世界的にも水平分業が進んでいる。そこで、特定領域に特化した技術を有するアカデミアや医療ベンチャーとともにエコシステムを構築し、協業によるイノベーション創出が求められるようになった。官公庁を代表し、浅沼 一成氏(厚生労働省医政局長)が『医療イノベーション推進のための課題とバイオ・ヘルスケアベンチャー支援策』と題し、現状の医薬品開発の動向や創薬開発の問題点などを取り上げ、国内製薬企業と医療系ベンチャーとの結びつきの重要性と将来展開について説明した。 浅沼氏は国内の創薬にかかる課題として「現状、国内創薬スタートアップは未成熟で、スタートアップが開発した新薬は承認・上市には至っておらず、臨床ステージに入っている新薬候補物質の導出も少ない」と指摘。一方で、大型契約を成立させているスタートアップがあるものの外資系製薬企業との契約に偏っていることから、「“スタートアップの買収が起こらない→メガファーマが育たない→買収ができない”という負のスパイラルに陥っているのではないか」と製薬企業側の課題を示した。また、「日本政府は医薬品産業が向かうべきビジョンや戦略を打ち出してきたが、諸外国と比較すると中長期的な戦略を示せていない」と、企業側だけの問題ではないことも明らかにし、政府側に求められる対応として、「新規モダリティの創出支援(一丸となった総合的な戦略を作成ほか)や創薬エコシステムの構築のように、中長期的な戦略を策定し、実効性のある取り組みを進めるべき」と方向性を示した。 来年度の政府の取り組みは『スタートアップ育成5ヵ年計画』などに基づき、アカデミア・ベンチャーと製薬企業のお見合いのようなビジネスマッチング・オープンイノベーションの促進を図り、ドラッグラグ・ロスの解消に向けて海外リソースの呼び込みを含め、ベンチャーが開発する革新的医薬品の導入促進を行うなど、医療系スタートアップ・エコシステム形成を図っていく。 なお、本協会の設立趣旨ならびに活動内容は以下のとおり。【設立趣旨】1.アカデミア発バイオ・ヘルスケアベンチャーの推進を図り、その研究活動・事業を通じて福祉への貢献、経済・産業の活性化を図ることを主たる目的とする2.会員相互の親睦を深め、情報交換や交流の場を提供し、会員の研究開発力の向上や人間関係の形成を促進すること3.社会的な課題に対する啓発活動や研究、政策提言などを通じて、社会的な意義や価値を追求すること【活動内容】1.アカデミア発バイオ・ヘルスケアベンチャー個々の企業が抱える悩みや問題点の解決に向けた関連行政機関等への提言2.アカデミア発バイオ・ヘルスケアベンチャーの発展に必要とされる制度および事業の研究・情報提供・情報交換および交流活動3.研究会、講演会、セミナーその他の会合の開催4.図書の作成および刊行その他研究成果の発表5.国内外の関係機関および研究機関との連携および協力

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「人生をエンジョイ」する人は認知症発症リスクが低い~JPHC研究

 人生をエンジョイすることは、自身の環境と楽しく関わる能力と関連しており、これは認知症リスクとも関連しているといわれている。順天堂大学の田島 朋知氏らは、日本の地域住民における人生のエンジョイレベルと認知症発症との関連を調査した。The Journals of Gerontology. Series B, Psychological Sciences and Social Sciences誌オンライン版2023年9月18日号の報告。 対象は、Japan Public Health Center-based(JPHC)研究に参加した5年間のフォローアップ調査時点で45~74歳の日本人3万8,660例。心理的状態およびその他の交絡因子の特定には、自己記入式アンケートを用いた。認知症発症は、2006~16年の日本の介護保険(LTCI)制度に基づき評価した。Cox比例ハザードモデルを用いた、ハザード比[HR]および95%信頼区間[CI]を算出した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中央値9.4年の間に認知症を発症した患者は4,462例であった。・人生のエンジョイレベルは、認知症リスクとの反比例が認められた。・多変量HRは、エンジョイレベルが低い人と比較し、中程度の人で0.75(95%CI:0.67~0.84、p<0.001)、高い人で0.68(同:0.59~0.78、p<0.001)であった。・人生のエンジョイレベルの増加と認知症リスク低下との関連性は、低~中程度の精神的ストレスを抱えている人で最も強かった。・精神的ストレスレベルが高い人では、脳卒中後の身体障害性認知症において関連性が明らかであったが、脳卒中歴のない身体障害性認知症では認められなかった。 結果を踏まえ、著者らは「人生のエンジョイレベルが高い人は、とくに低~中程度の精神的ストレスを抱える人において、認知症発症リスクが低いことが示唆された。認知症リスクを軽減するためにも、精神的ストレスをマネジメントし、人生をエンジョイすることが重要である」としている。

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