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第22回 痛み診療のコツ・治療編(2)光線療法(1)【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第22回 痛み診療のコツ・治療編(2)光線療法(1)前回は、知覚神経と交感神経を同時にブロックする代表的な応用範囲の広い硬膜外ブロックについてお話しました。今回は、理学療法の中でもとくに高齢患者さんに好まれている光線療法ついて述べたいと思います。高齢社会を反映して、帯状疱疹後神経痛や脊椎術後疼痛症候群など本来の疾病が治癒した後に、強い痛みだけが取り残されることも稀ではありません。いわゆる難治性慢性疼痛患者さんの数が、高齢者の人口の増加に比例して急激に増加しています。痛みを訴える患者さんにおいては、病態は類似していても、痛みの性質や程度は個々の患者さんによって実に多様です。そのために、疼痛緩和療法も神経ブロック療法、薬物療法、各種理学療法、インターベンショナル治療など患者さんに合った有効な治療法に苦慮する機会も少なくありません。とくに最近では、高齢者を含めて血液抗凝固薬を服用する患者さんが増加しており、神経ブロックを回避しなくてはならない状況も少なくありません。しかも、痛みで悩まされている患者さんにとっては、より痛みの少ない治療法を望む声も多く見られます。このような背景を考慮すると、疼痛を訴えられている患者さんにとって光線療法は非常に有用な治療法であり、痛みの緩和を得られる機会も想像以上に多くみられます。今回はこの光線療法について解説いたします。光線療法機器の分類(1)低出力半導体レーザーGa-Al-As半導体をレーザー光源とした低出力半導体レーザーには、ソフトレーザリーJQ310、マルチレーザー5 MLF-601、メディアレーザーソフトパルス10などが市販されています。(2)ハロゲンランプ治療器自然灯の一種、ハロゲンランプを光源として、フィルターによって近赤外線のみを出力する装置です。アルファビームALB-200H、スーパーライザーHA-2200LEシリーズ、スーパーライザーPXシリーズのほか、家庭用としても使用できるスーパーライザーminiシリーズなどが使用されています。また、最近では、スーパーライザーPXシリーズも市販され、さらに性能を上げています。(3)キセノンライト治療器ストロボライト光源のキセノン励起光を利用したキセノンライトは、可視光よりも近赤外光を多く発光するので、近赤外線光源として利用されています。ベータエクセルXe10は、パルスモードを有する上、低周波通電機能もあり、光線療法と低周波治療を同時に施行できる特徴があります。光線療法の鎮痛作用機序レーザーの生体への影響は熱作用、光作用が基本になっています。その作用により、以下の効果が期待されています。(1)血流改善作用レーザー光による血管への直接作用、交感神経反射の減弱化、軸索反射による血管拡張などが考えられています。(2)神経伝達抑制作用脊髄後根線維の自発放電発射増加の減少作用、C線維の脱分極の抑制作用などが報告されています。(3)抗炎症作用関節リウマチ患者さんの膝関節滑膜炎症所見が、レーザー照射によって軽減されることが報告されています。(4)創傷治癒作用創傷治癒の促進が実験的、臨床的に認められています。(5)下行性疼痛抑制系の賦活ナロキソンによりレーザー鎮痛効果が抑制されることから、内因性オピオイドや、下行性疼痛抑制系の関与が考えられています。(6)その他神経細胞膜の安定化作用、免疫機能の賦活、筋緊張の緩和などが認められており、鎮痛作用の補助になりそうです。レーザー治療の対象疾患レーザー治療の鎮痛作用機序から考えて、以下のような疾患に有効性が認められています。 帯状疱疹痛、帯状疱疹後神経痛、筋・筋膜性疼痛、頭痛、外傷性頸部疼痛症候群、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、腰痛症、術後疼痛症候群、非定形顔面痛、関節リウマチ、肩関節周囲炎、膝関節症などで、実に多岐にわたっています。初期の疼痛緩和療法を怠ると、一生痛みが持続することも稀ではありません。できるだけ早期に鎮痛対策をとることが、その後の痛みの遷延を和らげるという認識が大切です。光線療法が疼痛治療の一環として取り入れられ、多少なりとも痛みに苦しむ患者さんの疼痛緩和療法に役立てられれば幸いです。次回は、痛みとリハビリテーション療法について説明したいと思います。1)花岡一雄他. 日本医師会雑誌.2012:140;2352-23532)花岡一雄他監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S177-178

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「医師の入っている医療保険」は最適か?【医師のためのお金の話】第46回

こんにちは。自由気ままな整形外科医です。最近、家族がとある病気で入院して手術を受けました。幸い経過は良好なのですが、加入している医療保険がまったく使えないことに気付いてがくぜんとしました。加入している保険は、今回の治療に要した医療費をほとんどカバーできなかったのです。どうしてこのようなことが起こったのでしょうか? 十分な保険金が支払われなかった原因を調べてみると、どうやら加入している医療保険が時代遅れなものになっていたようです。入院期間短縮の影響が医療保険を直撃今回の家族の治療においては、ひと昔前の治療と比べて大きな差異がありました。それは入院期間の短縮化です。2013年に加入していたこの医療保険の条件は下記のようなものでした。生命共済契約時期:2013年月額保険料:4,000円入院(疾病):9,000円通院(疾病):0円手術:0円今回は4日間の入院で手術も含めた医療費の自己負担額は約20万円でした。差額ベッド代等が含まれており、高額療養費制度の適用にもなりません。医療保険では3万6,000円しか補填されず、残念ながら医療保険はあまり役に立ちませんでした。周知のように、昨今はどの疾患においても、入院期間を極力短くして外来での治療をメインにすることが主流となっています。このような医療体制の変化は、医療保険にも大きな影響を及ぼしています。かつての医療保険では、入院期間が保険金の算出基準に大きなウエイトを占めていました。つまり、入院期間が長ければ、より多くの保険金が支払われたのです。ところが、最近では入院期間が短縮化される傾向のため、入院期間で保険金が決まっていた従来の医療保険では、必要とされる医療費を賄えないのです。これでは何のために医療保険を掛けているのかわからないですね。保険商品も進化しているこのような医療体制の変化に合わせて、生命保険会社も新たな保険商品を開発しています。売れ筋は、日帰り入院であってもまとまった保険金を一時支給するタイプのようです。たとえば、私が見直しを検討している三井住友海上あいおい生命の「&LIFE 新医療保険A(エース)プレミア」の場合、仮に2013年当時の年齢で加入していたとすると、下記のような条件になります。月額保険料:7,872円入院(疾病):一律12万5,000円(6日目以降は5,000円/日)通院(抗ガン剤治療):10万円/月手術(入院):5万円ガン診断給付特約:100万円今回の入院であれば入院給付と手術給付で計17万5,000円が支払われることになり、医療費の9割が賄えた計算になります。2013年に加入した医療保険と比べると圧倒的に有利ですね。生命共済は一般的な生命保険会社よりも保険料が安価でそこに引かれたのですが、見直しを怠っていました。従来の医療保険は、日帰り入院手術では十分な保険金が支払われず、消費者の納得が得られません。入院期間短縮の流れに合わせて、保険会社も消費者のニーズに応える医療保険を開発しています。そして、この傾向はがん保険においてとくに顕著です。がんでも入院短期化の流れは同様ですし、高額の治療薬や長く続く外来診療など、治療に多額のお金が必要となるケースが多くなります。このような消費者のニーズに応じて、数十~数百万円の一時金を支給するがん保険が増えています。入院期間の短縮化という医療者にとって当然の事実が、医療保険の商品性にまで影響を与えているとは、医師でありながら考えが及んでいませんでした。ああ、もう少し目端が利けばよかったのになあ…。私に限らず、医師は自分や家族が入っている保険の内容について構っている人は少ない印象です。昔の保険はすべてお宝ではない予定利率の高かった時代の終身保険には、高い利率で運用できる「お宝保険」が多いというのは周知の事実です。このため、保険商品は昔に契約したもののほうが優れていると思っている人も多いかもしれません。しかし、医療保険に関しては、そうとは言い切れません。入院期間短縮化や治療方法の進化は、医療保険にも大きな影響を与えています。昔に加入した医療保険は見直したほうが良い場合が多いでしょう。キーワードは「一時金の大きさ」です。病は突然やってきますが、その際に必要なのは治療に向き合い、その間の生活を維持するためのまとまったお金です。もちろん一時金が大きい保険は保険料も高くなりますが、医師の仕事は自分の時間と引き換えに成り立っています。治療に専念すれば収入が減ったり途絶えたりするかもしれません。とくに傷病手当金のない国民健康保険に入っている開業医はリスクが高いでしょう。そのようなときに、大きな一時金を受け取れる医療保険が大きな助けになってくれることでしょう。

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研修認定薬剤師制度の電子化で“シール”廃止に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第71回

日本薬剤師研修センターの「研修認定薬剤師」を取得している方、もしくは取得を目指している方は多いのではないでしょうか。研修認定薬剤師の総数は、2021年6月30日時点で11万1,490名(新規認定者3万5,926名、更新認定者7万5,564名)です。薬剤師免許の取得者は約30万人ですので、この研修認定薬剤師制度は広く普及していることがわかります。今までは、認定を取得するには薬剤師研修手帳への記載およびシール貼付が必須でしたが、今年の9月から新しい仕組みがスタートします。「薬剤師研修・認定電子システム(略称:PECS)」というシステムで、これにより研修受講管理や認定申請などすべての手続きが電子化され、研修受講シールや薬剤師研修手帳は廃止となります。「あんなに大事だったシールと手帳が廃止!?」とびっくりされている方もいるのではないでしょうか。では何がどう変わるのか、具体的にどうしたらいいのかを紹介します。まず登録についてです。日本薬剤師研修センターのホームページの案内には、研修会の受講時ではなく、7月末までに登録を済ませてほしい記載されています。登録には薬剤師名簿登録番号と登録年月日が必要ですが、薬剤師免許証さえ手元にあれば、あとは住所やメールアドレスなどを入力するだけです。私も登録してきましたが、5分ほどで完了しました。このシステムが稼働すると、PECSに登録していない薬剤師は研修認定単位の交付を受けられなくなります。このコラムを読んでいる方でまだ登録を済ませていない方は、とにかく登録だけは済ませたほうがよいと思います。なお、現在薬剤師研修支援システムに登録している方も、改めてPECS登録が必要です。QRコードをかざして研修履歴をシステムに保存現行の運用では、研修会場でその実施機関から研修受講シールをもらうか、自身で研修受講シールを申請して郵送してもらい、そのシールを自分で手帳に貼って郵送するといった作業が必要でした。これ、結構手間がかかりましたよね。手帳やシールの紛失というリスクもありました。これからは個人のQRコードを読み取り機にかざすことで、研修履歴がシステム内に保存されます。ただし、インターネットを利用した研修の場合は、「研修実施機関の定める方法で受講する」とありますので、まったく別の運用になりそうです。登録しているプロバイダーがある方はそちらもきちんと確認しましょう。受講の申し込みやレポート提出、履歴管理、認定申請もシステム内で行うことができます。不正防止策徹底とともに研修の種類拡大これまで認定薬剤師制度は、「シール転売」など信頼を失墜させた事件もあったため、不正防止が重大な課題の1つでした。この電子化によりシールそのものが廃止となるため、転売を根絶することができます。また、受け付けだけ済ませてシールをもらったらすぐに退室して受講しないという不正を防ぐため、QRコードの提示も研修の前と後の2回行う必要があるという念の入れようです。そして、単なる電子化ではなく、研修の種類が増えるという変更もあります。現行の単位認定の対象になっている集合研修やグループ研修などに加え、新しいシステム稼働後は学会発表や学術雑誌に論文が掲載された場合なども単位認定の対象になります。管理の効率化だけでなく、信頼性向上、さらに生涯学習の幅を広げるとは、日本薬剤師研修センターもやるな!という感じです。ただし、これからは、後になってシールの発行をお願いするなどの融通は利かなくなると予想されますので、計画的に受講して、しっかりと自己管理しましょう。

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第68回 3回目接種に温度差

Pfizer/BioNTechの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンBNT162b2の2回接種が済んで2週間か4週後の人の血清は世界で優勢になりつつあるデルタ変異株(B.1.617.2株)を確かに阻止する1)ものの、最近発表されたイスラエルの状況2)でも示されているように接種が済んでから半年後の感染や発症の予防効果に陰りが認められます。そこで両社はBNT162b2の3回目接種の試験を実施しており、そのさしあたりのデータで非変異SARS-CoV-2やベータ変異株を阻止する抗体反応の上昇が確認されています。3回目接種後の抗体反応は2回接種後を5~10倍上回りました3)。BNT162b2の3回目接種はデルタ変異株への抗体反応も同様に引き上げるとPfizer/BioNTechは予想しており、米国FDAや欧州医薬品庁(EMA)などに3回目接種が間もなく認可申請されます4)。世界に先駆けてSARS-CoV-2ワクチン接種を始めたイスラエルは3回目接種の導入も早く、総人口930万人の6割超の約570万人が少なくとも1回目接種を済ませている同国はPfizer/BioNTechの申請を待つことなくすでに3回目接種の提供を開始しています5)。ただし、3回目接種の対象は2回目接種済みの全員ではなく免疫系が損なわれている成人に限られます。他の国と同様にデルタ変異株が優勢になりつつあるイスラエルでは一桁台だった1日の新たな感染数がここ1ヵ月で450人ほどに増えており、7月7日時点で46人が重症で入院しています6)。Reutersのニュース5)によるとそれら重症者の約半数はワクチン接種済みであり、ほとんどはリスク因子を有していました。限定的とはいえ3回目接種を早速開始したイスラエルとは対照的に米国は3回目接種をいまのところ不要と考えています。米国疾病予防管理センター(CDC)とFDAの先週8日の発表7)によると目当ての回数を接種済みの人は重症化や死亡を免れています。デルタやその他の変異株による重症化や死亡も例外ではなく防げており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院や死亡しているのは今やほぼすべてワクチン非接種の人です(第67回参照)。ワクチンがまだの人は自分や周りの人を守るために接種することをCDCやFDAは改めて要請しています。世界保健機関(WHO)も米国と同様に追加接種はいまだ検討中であっていまのところ支持していません8)。予防効果の維持に追加接種が必要かどうかは不明であり、その判断には更なる情報が必要と考えています。米国もWHOと同様に追加接種について引き続き検討し、いざ必要になったときのための準備をしておくとCDCやFDAは言っています。WHOや米国とは裏腹にPfizer/BioNTechの腹は決まっています。発症予防効果が時を経るにつれて落ちていくことや変異株がこれからも新たに発生し続けるであろうことなどを踏まえると 2回目接種が済んでから半年~1年以内に3回目接種をして高水準の予防効果を維持する必要があるだろうとしており3)、Pfizerは追加接種について米国時間の月曜日12日にFDAと話し合う約束を取り付けています9)。Pfizer/BioNTechは3回目接種の先も見据え、デルタ変異株のスパイクタンパク質を標的とするmRNAワクチンの開発も進めています。その臨床試験は来月8月に始まる予定であり、投与用のmRNAはすでに製造済みです3)。参考1)Liu J,et al.Nature. 2021 Jun 10. [Epub ahead of print]2)Decline in Vaccine Effectiveness Against Infection and Symptomatic Illness3)Pfizer and BioNTech Provide Update on Booster Program in Light of the Delta-Variant / Pfizer/BioNTech4)Pfizer, BioNTech to seek authorization for COVID booster shot as Delta variant spreads / Reuters5)Israel offers third shot of Pfizer COVID-19 vaccine to adults at risk / Reuters6)Clarification Regarding the Number of Critical Cases / gov.il7)Joint CDC and FDA Statement on Vaccine Boosters /CDC8)Question open on need for COVID booster shot, data awaited, WHO says / Reuters9)Pfizer, U.S. health officials to discuss COVID boosters on Monday -company / Reuters

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小児および青年期のうつ病に対する新規抗うつ薬~ネットワークメタ解析

 小児および青年期のうつ病は、教育や仕事の成果、対人関係、身体的健康、メンタルヘルス、ウェルビーイングなどに重大な影響を及ぼす。また、うつ病は自殺念慮、自殺企図、自殺との関連がある。中等度~重度のうつ病には抗うつ薬が使用されるが、現在さまざまな新規抗うつ薬が使用されている。ニュージーランド・オークランド大学のSarah E. Hetrick氏らは、抑うつ症状、機能、自殺に関連するアウトカム、有害事象の観点から、小児および青年期のうつ病に対する新規抗うつ薬の有効性および安全性を比較するため、ネットワークメタ解析を実施し、年齢、治療期間、ベースライン時の重症度、製薬業界からの資金提供が臨床医によるうつ病評価(CDRS-R)および自殺関連アウトカムに及ぼす影響を調査した。The Cochrane Database of Systematic Reviews誌2021年5月24日号の報告。 2020年3月までに公表された文献をCochrane Common Mental Disorders Specialised Register、Cochrane Library、Ovid Embase、MEDLINE、PsycINFOより検索した。うつ病と診断された6~18歳の男女を対象に、新規抗うつ薬の有効性を他剤またはプラセボと比較したランダム化比較試験を含めた。新規抗うつ薬には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、ノルエピネフリンドパミン再取り込み阻害薬、ノルエピネフリンドパミン阻害薬、四環系抗うつ薬を含めた。独立した2人のレビュアーが、タイトル、アブストラクト、フルテキストよりスクリーニングし、データ抽出およびバイアスリスク評価を行った。評価アウトカムは、うつ症状の重症度(臨床医による評価)、うつ症状の治療反応または寛解、うつ症状の重症度(自己評価)、機能、自殺関連アウトカム、全体的な有害事象とした。2値データはオッズ比(OR)、連続データは平均差(MD)として分析した。ランダム効果ネットワークメタ解析は、多変量メタ解析を用いて、頻度論的フレームワークで実行した。エビデンスの確実性は、CINeMA(Confidence in Network Meta-analysis)を用いて評価した。結果の解釈や説明を標準化するため、informative statementsを用いた。 主な結果は以下のとおり。・分析には、26件の研究を含めた。・2つの主要アウトカム(臨床医面談によるうつ病の臨床診断、自殺)のデータは十分ではなかったため、副次的アウトカムのみで結果は構成された。・ほとんどの抗うつ薬において、プラセボと比較し、CDRS-Rスケールにおけるうつ症状の「小さく、重要でない」軽減(範囲:17~113)が認められた。 【エビデンスの確実性:高】 ●パロキセチン(MD:-1.43、95%CI:-3.90~1.04) ●vilazodone(MD:-0.84、95%CI:-3.03~1.35) ●desvenlafaxine(MD:-0.07、95%CI:-3.51~3.36) 【エビデンスの確実性:中】 ●セルトラリン(MD:-3.51、95%CI:-6.99~-0.04) ●fluoxetine(MD:-2.84、95%CI:-4.12~-1.56) ●エスシタロプラム(MD:-2.62、95%CI:-5.29~0.04) 【エビデンスの確実性:低】 ●デュロキセチン(MD:-2.70、95%CI:-5.03~-0.37) ●ボルチオキセチン(MD:0.60、95%CI:-2.52~3.72) 【エビデンスの確実性:非常に低】 ●その他の抗うつ薬・うつ症状の軽減効果において、ほとんどの抗うつ薬の間に「小さく、重要でない」違いが認められた(エビデンスの確実性:中~高)。他のアウトカムにおいても同様であった。・ほとんどの研究において、自傷行為または自殺リスクは、研究の除外基準であった。・含まれているほとんどの研究において、自殺関連アウトカムの割合は低く、すべての比較で95%信頼区間は広くなっていた。・自殺関連アウトカムに対する効果については、プラセボと比較し、エビデンスの確実性は非常に低かった。 ●ミルタザピン(OR:0.50、95%CI:0.03~8.04) ●デュロキセチン(OR:1.15、95%CI:0.72~1.82) ●vilazodone(OR:1.01、95%CI:0.68~1.48)●desvenlafaxine(OR:0.94、95%CI:0.59~1.52)●citalopram(OR:1.72、95%CI:0.76~3.87)●ボルチオキセチン(OR:1.58、95%CI:0.29~8.60)・エスシタロプラム(OR:0.89、95%CI:0.43~1.84)は、プラセボと比較し、自殺関連アウトカムのORを「少なくともわずかに」低下させる可能性が示唆された(エビデンスの確実性:低)。・以下の薬剤は、プラセボと比較し、自殺関連アウトカムのORを「少なくともわずかに」増加させる可能性が示唆された。 ●fluoxetine(OR:1.27、95%CI:0.87~1.86) ●パロキセチン(OR:1.81、95%CI:0.85~3.86) ●セルトラリン(OR:3.03、95%CI:0.60~15.22) ●ベンラファキシン(OR:13.84、95%CI:1.79~106.90)・ベンラファキシンは、desvenlafaxine(OR:0.07、95%CI:0.01~0.56)およびエスシタロプラム(OR:0.06、95%CI:0.01~0.56)と比較し、自殺関連アウトカムのORを「少なくともわずかに」増加させる可能性が示唆された(エビデンスの確実性:中)。・抗うつ薬間のその他の比較においては、エビデンスの確実性は非常に低かった。・全体として、ランダム化比較試験の方法論的欠如により、新規抗うつ薬の有効性および安全性に関する調査結果を解釈することは困難であった。 著者らは「ほとんどの新規抗うつ薬は、プラセボと比較し、うつ症状を軽減する可能性が示唆された。また、抗うつ薬間でのわずかな違いも認められた。しかし、本結果は、抗うつ薬の平均的な効果を反映しているため、うつ病は不均一な状態であることを考慮すると、患者ごとに治療反応が大きく異なる可能性がある。したがって、ガイドラインやその他の推奨事項を作成する際、新規抗うつ薬の使用が、状況により一部の患者に正当化される可能性があるかを検討する必要がある」としている。 さらに「自殺リスクを有する可能性のある小児および青年は、試験から除外されるため、その効果については明らかにならなかった。小児および青年への抗うつ薬使用を検討する際には、患者およびその家族と相談する必要がある。そして、新規抗うつ薬間の効果や自殺関連アウトカムの違いを考えると、治療効果および自殺関連アウトカムを注意深くモニタリングすることが重要であろう。さらに、ガイドラインの推奨事項に従い、心理療法、とくに認知行動療法を考慮することが求められる」としている。

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2種のmRNAワクチン、ウイルス量や罹患期間への効果も/NEJM

 COVID-19に対して承認された2回接種のmRNAワクチン2種(BNT162b2[Pfizer-BioNTech]とmRNA-1273[Moderna])の、リアルワールドにおける生産年齢成人への接種の有効性を調べた結果が報告された。米国疾病予防管理センター(CDC)のMark G. Thompson氏らが、医療現場の第一線従事者3,975例への接種について調べた前向きコホート試験の結果で、2回接種後14日以上経過した場合の有効率は91%、1回接種後14日以上経過した場合でも81%と、いずれも高い有効性が示されたという。承認されたmRNAワクチン2種のリアルワールドにおける有効性に関する情報は限定的であったが、試験の結果を踏まえて著者は、「リアルワールドの生産年齢成人において、承認済みワクチンは、SARS-CoV-2感染の予防において非常に有効で、またワクチンを接種したにもかかわらず感染症を呈した同成人の、ウイルスRNA負荷、発熱症状リスクおよび罹患期間を軽減した」と述べている。NEJM誌オンライン版6月30日号掲載の報告。 医療従事者、消防士、エッセンシャルワーカーなどを対象に試験 研究グループは2020年12月14日~2021年4月10日にかけて、医療従事者、消防士・警察官などのファーストレスポンダー、およびその他のエッセンシャルワーカーや第一線従事者3,975例を対象に試験を行った。被験者は、毎週、中鼻甲介スワブの採取により、定量的・定性的リアルタイムPCR検査を受けた。 ワクチン有効率は、100%×(1-ワクチン接種者の非接種者に対するSARS-CoV-2感染に関するハザード比)で算出。ワクチン接種の傾向や試験の実施場所、職業、地域のウイルス流行性などで補正を行った。感染者のウイルスRNA量もワクチン1回接種者で40%減 SARS-CoV-2が検出されたのは204例(全被験者の5%)で、そのうち完全ワクチン接種者(2回目接種から14日以上経過)は5例、不完全ワクチン接種者(1回目接種から14日以上経過、2回目接種から14日未満)が11例、非ワクチン接種者は156例だった。なお、1回目接種から14日未満だった32例については除外した。 補正後ワクチン有効率は、完全ワクチン接種者で91%(95%信頼区間[CI]:76~97)、不完全ワクチン接種者でも81%(64~90)だった。 SARS-CoV-2感染者において、平均ウイルスRNA量は、完全・不完全ワクチン接種者で非ワクチン接種者に比べ、40%少なかった(95%CI:16~57)。また、発熱症状リスクも58%低く(相対リスク:0.42、95%CI:0.18~0.98)、罹患期間も短く、病状が悪く寝ていた期間は平均2.3日(95%CI:0.8~3.7)短かった。

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「売れなければ閉じればいい…」、閉院にいくらかかるかご存じですか?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第21回

第21回 「売れなければ閉じればいい…」、閉院にいくらかかるかご存じですか?漫画・イラスト:かたぎりもとこ診療所承継の相談を受けていると「まあ、売れなければ閉じますよ」とおっしゃる方がいます。ですが、実際のところ閉院というのは、そんなに簡単にできるものではありません。私たちも「閉院しようと思ったが、費用や労力がかかるので承継に切り替えたい」という逆の立場の方から相談を受けることがあります。閉院作業の何が大変なのでしょうか。まずは、今の患者さんを他院へ引き継ぐことです。通い慣れた患者さんを、それぞれの状況に見合った医療機関に紹介するのは手間暇のかかる仕事です。患者のレセプトは5年間保管する必要があり、その管理方法も決めなければなりません。テナントで開業していた場合、不動産の契約次第ですが、多くの場合は退去時に内装を原状復帰する必要があります。医療機器を廃棄するにも費用がかかりますし、とくにテナントをスケルトンに戻すのには300~600万円程度といった多額の費用を要するため、注意が必要です。医業承継と閉院で、かかる費用を比較してみましょう。<医業承継の場合>(1)譲渡金:2,000万円(仮)(2)医業承継の仲介手数料:▲520万円(3)テナントのスケルトン費用:▲0円(そのまま買い手が利用)(4)その他諸経費:▲50万円 ※テナント仲介契約費など 計:1,430万円<閉院する場合>(1)テナントのスケルトン費用:▲300万円(2)その他諸経費:▲100万円 ※医療機器廃棄費など 計:▲400万円上記のとおり、金銭的なメリットは医業承継が勝ることがわかります。閉院を検討する際にも医業承継などその他の方法と、労力、費用、得られる対価などを比較し、そのうえで判断することをお勧めします。

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第39回 四分位範囲と四分位偏差とは?【統計のそこが知りたい!】

第39回 四分位範囲と四分位偏差とは?今回は、四分位範囲と四分位偏差について解説します。データを小さいほうから並べたとき、最小値から4分の1にある点を第1四分位点、中央にある点を中央値、最大値から4分の1にある点を第3四分位点と言います。第3四分位点と第1四分位点との差を四分位範囲と言い、四分位範囲の半分の値を四分位偏差と言います。標準偏差と同じく集団のバラツキをみる指標です。四分位範囲や四分位偏差が大きければ、「データのバラツキが大きい」といえます。極端に大きな値または小さな値(外れ値)があるとき、標準偏差はその影響を受けますが、四分位範囲や四分位偏差はデータの中央50%で決まるので影響を受けにくいのです。■四分位偏差(Quartile deviation)の求め方下表のデータを利用して、データA、Bそれぞれの四分位偏差を求めてみましょう。四分位偏差を求めるには、まず四分位範囲(Interquartile range)を求めなければなりません。結果、データAの四分位偏差は1.00、データBの四分位偏差も1.00となり、データAにある極端に大きな値(外れ値)の“100”というデータの影響を受けていないことがわかります。■四分位範囲・四分位偏差に関する留意点上記の例をみると、標準偏差に大きな差がありますが、四分位偏差は同じになりました。これは四分位範囲・四分位偏差という指標が標準偏差よりも大きな値または小さな値(外れ値)の影響を受けにくいからです。繰り返しになりますが、四分位範囲・四分位偏差が大きければ、データのバラツキが大きいといえます。ただし、四分位範囲・四分位偏差によるデータのバラツキは中央値周りのものを表す値であり、分散・標準偏差によるデータのバラツキは平均値周りのバラツキを表す値です。単純にデータのバラツキといっても、両者では意味合いが違うということを覚えておきましょう。【豆知識】第1四分位点のことを「下ヒンジ」、第3四分位点のことを「上ヒンジ」ともいいます。なぜ「ヒンジ」かというと、ヒンジはそもそも蝶番のことで、箱ひげ図が蝶番のようにみえるからとも言われています。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション2 量的データは平均値と中央値を計算せよセクション3 データのバラツキを調べる標準偏差セクション5 標準誤差(SE)とは

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2種類のコロナワクチン、副反応疑いの報告状況/厚労省

 厚生労働省は、7月7日に今までに報告された新型コロナワクチンの副反応疑い報告など、ワクチン接種後の副反応(副作用)に関する情報をまとめたレポートを「新型コロナワクチンの副反応疑い報告について」として公開した。 レポートは、ワクチンの接種後に生じうる副反応を疑う事例について、医療機関などに報告を求め、収集したものを同省の審議会に報告し、専門家による評価を行ったもの。副反応疑いについて対象期間:令和3年2月17日~6月27日副反応の頻度:・ファイザー社ワクチン(商品名:コミナティ筋注)は0.04%(3,921万8,786回接種中1万5,991例)・武田/モデルナ社ワクチン(同:COVID−19ワクチンモデルナ筋注)は0.02%(95万9,165回接種中191例) いずれのワクチンも、これまで通り安全性において重大な懸念は認められないと評価された。なお、ワクチンにより接種対象者の年齢や接種会場などの属性が大きく異なるため、両ワクチンの単純な比較は困難であり、注意が必要。死亡例について対象期間:令和3年6月27日までの集計・ファイザー社ワクチンは453例・武田/モデルナ社ワクチンは1例 追加で7月2日までに両ワクチンを合わせて102例の報告 死亡例の報告に関しては、現時点において引き続きワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められない。アナフィラキシーについて・ファイザー社ワクチンは1,632件(100万回接種あたり42件)が報告され、うち289件(100万回接種あたり7件)が専門家によりアナフィラキシー(ブライトン分類1~3)と評価された。・武田/モデルナ社ワクチンは医療機関から14件(100万回接種あたり14.6件)が報告され、うち1件(100万回接種あたり1.0件)が専門家によりアナフィラキシー(同)と評価された。 アナフィラキシーの報告に関しても、現時点において引き続きワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められない。その他の懸念事項 接種後の心筋炎・心膜炎に関し、ワクチンの添付文書に本症について追記の改訂内容が報告された。心筋炎関連事象について検討が行われ、現時点においてワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められないとされた。ワクチンの不正確な情報に惑わされないための注意 同省では【ご注意ください】を掲示し、下記のようにワクチン接種におけるデマや流言への注意喚起も行っている(以下に一部抜粋)。・国内外で、注意深く調査が行われていますが、ワクチン接種が原因で、何らかの病気による死亡者が増えるという知見は得られていません。・海外の調査によれば、接種を受けた方に、流産は増えていません。・接種後の死亡と、接種を原因とする死亡はまったく意味が異なります。接種後の死亡にはワクチンとは無関係に発生するものを含むにもかかわらず、誤って、接種を原因とする死亡として、SNSやビラなどに記載されている例があります。

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ファイザー/モデルナワクチンに心筋炎・心膜炎の注意喚起/使用上の注意改訂

 新型コロナウイルスに対するmRNAワクチン(一般名:コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARSCoV-2))であるコミナティ筋注(ファイザー)とCOVID-19ワクチンモデルナ筋注(武田薬品工業)について、使用上の注意の「重要な基本的注意」の項に心筋炎および心膜炎に関する注意喚起を追記するよう、7月7日付けで改訂指示が発出された。 今回の改訂指示は、国内ではこれらのワクチンとの因果関係が否定できない心筋炎および心膜炎の副反応疑い報告はないものの、以下の状況を考慮し、専門委員の意見も踏まえ、改訂することが適切と判断されたことによる。・海外において、因果関係は不明であるが、これらのワクチンの接種後に心筋炎および心膜炎が報告されていること・海外において、心筋炎および心膜炎の注意喚起がなされていること・国内においても、因果関係は不明であるが、症例集積が認められること・心筋炎、心膜炎が疑われる症状が認められた場合には医師の診察を受ける旨をあらかじめ被接種者に指導することが、早期発見および重症化への対処の上で重要であると考えること・接種対象者の拡大に伴うAYA世代への接種数増加が予想されること なお、国内で集積された症例は、心筋炎関連はコミナティ筋注で12例(うち死亡2例)、COVID-19ワクチンモデルナ筋注で1 例(死亡例なし)、心膜炎関連はコミナティ筋注で3例(死亡例なし)、COVID-19ワクチンモデルナ筋注では報告されていない。いずれも、因果関係が否定できない症例は報告されていない。 両ワクチンの添付文書における改訂(新設)は以下のとおり。8. 重要な基本的注意本剤との因果関係は不明であるが、本剤接種後に、心筋炎、心膜炎が報告されている。被接種者又はその保護者に対しては、心筋炎、心膜炎が疑われる症状(胸痛、動悸、むくみ、呼吸困難、頻呼吸等)が認められた場合には、速やかに医師の診察を受けるよう事前に知らせること。15. その他の注意15.1 臨床使用に基づく情報海外において、因果関係は不明であるが、コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)接種後に心筋炎、心膜炎が報告されている。報告された症例の多くは若年男性であり、特に2回目接種後数日以内に発現している。また、大多数の症例で、入院による安静臥床により症状が改善している。

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051)てごわい手荒れがスッキリ治った理由【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第51回 てごわい手荒れがスッキリ治った理由ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆皮膚科外来でも相談が多い手荒れの悩み。「主婦湿疹」とも呼ばれる手湿疹は、手をよく使う人に多く、職業性のものでは医療従事者や美容師、飲食関係などでよく見られます。職場でも、他科の先生や看護師さんから相談されることの多いこの手湿疹。1人、難治性の手湿疹で私の外来に通う看護師さんがいました。手洗いや消毒機会の多い医療従事者の手湿疹、さらにベースでアトピー性皮膚炎を持っていたりすると、なかなか治療にてこずります。そんな彼女の顔を見なくなってしばらくだなぁと思っていたある日、久しぶりに彼女が外来を受診しました。診察室に入ってきた彼女は、軽やかな私服で、心なしか表情も晴れやか。手を見せてもらうと、あんなに手ごわかった湿疹が跡形もなくなり、ツヤツヤの健康な手に変貌していました。あまりにびっくりして、「何か変えましたか?」と聞いてみたところ、「仕事を辞めたので」という返事が。そう、一番の原因は仕事。彼女の晴れやかな表情の理由がわかり、思わず「それな~~!!」と心の中で叫びました(笑)。頑固な主婦湿疹も、手を労わり、休めてあげれば回復する。きっと、アラブの石油王と結婚して手を酷使しない生活に変われば治るのです。とはいえ、皮膚科医としてはそんなに都合がいいことばかり言っていられません。やはり、炊事の際に綿手袋+ゴム手袋をはめて手を保護したり、食器洗浄乾燥機をフル活用したり、仕事であれば保護クリームや保湿剤をうまく使って手を労わってあげるのが一番と思います。手ごわい手湿疹、手を労わることに手を尽くそう(手なだけに)。←うるさいそれでは、また~!

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iPadで勉強する【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第3回

先日発売されたiPad proの最新機種を購入しました。でかい方の12.9インチです。予約から3週間ほど待ちましたが、手元に届いたときはテンションが上がりましたね~。しかし、思ったより重量があって、気軽に持ち運べるような感じではなかったです。唯一の趣味である漫画読書に使うには、ちょっと大き過ぎるかな~と感じています。私は、漫画を読みながらご飯を食べるのがすごく好きなのですが…。iPadを食卓に置くと、まあまあ大きくて、それなりの圧迫感が出てしまいます。と言うわけで、このLサイズのiPadは趣味用ではなく、勉強用に使うことにしました。そのせいかどうかわかりませんが、すでにiPadにはうっすらと埃がかぶっています。便利なアプリで医学論文の読み込みに大活躍どうやって勉強に使うかは、(心の中で)ある程度決めてあります。この大画面を生かすには、画面を2分割して2つのアプリを並列に並べる、“split view”が便利だと思います。画像のように英語の論文を読む際に、左に論文、右に“DeepL”を開いて、論文をコピペ・翻訳しながらサクサク読む「英語論文を10倍早く読む方法」というのが、以前ネット上で話題になったことがありました。「いや、やっぱり英語でちゃんと読まないとダメでしょ…」とか最初は言って罪悪感があったりもしましたが、1度やってしまえばすっかり病み付きです。翻訳が怪しい日本語になっていても、大まかに書いていることがわかってから読むと、本当に10倍早く読めている気がします。安流のドイツ語の学習法英語と比べると圧倒的に教材が少ないドイツ語学習で、私は(趣味も兼ねて)ドイツ語で日本の漫画をよく読んでいました。元々日本語で読んで内容を知っている漫画をドイツのAmazonから紙の書籍で購入して、それを何度も読んでいます。1度日本語で読んだことがあるとは言っても、細かいセリフまで覚えているわけではありません。ですから、ドイツ語で読んでいるときは頻回に辞書を引かざるを得なくて、面倒臭くなってしまうことも少なからずありました。そこで、先ほどのsplit viewを用いて、裁断してPDFとして取り込んだ(いわゆる自炊です)ドイツ語の漫画と、電子書籍で購入した日本語の漫画を並べて読むと、それはもうサクサクと学習が進みます。1度読み終えてしまえば、2回目以降は数倍のスピードで読み返すことができます。漫画には実際の会話で使うフレーズが満載なので、即効性抜群の勉強法だと思っています。

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ASCO2021 レポート 老年腫瘍

レポーター紹介これまでは高齢がん患者を対象とした臨床試験が乏しいといわれてきたが、徐々に高齢者を対象とした第III相試験のデータが発表されつつある。ASCO2021では、高齢者進展型小細胞肺がんに対するカルボプラチン+エトポシド併用療法(CE療法)とカルボプラチン+イリノテカン併用療法(CI療法)のランダム化比較第II/III相試験(JCOG1201/TORG1528:#8571)、高齢者化学療法未施行IIIB/IV期扁平上皮肺がんに対するnab-パクリタキセル・カルボプラチン併用療法とドセタキセル単剤療法のランダム化第III相試験(#9031)、76歳以上の切除不能膵がんに対する非手術療法の前向き観察研究(#4123)など、高齢者を対象とした臨床研究の結果が複数、発表されている。これら治療開発に関する第III相試験の情報はさまざまな場所で得られると思われるため詳述はせず、ここでは老年腫瘍学に特徴的な研究を紹介する。高齢者の多様性を示すかのように、今回の発表内容も多様であった。高齢がん患者に対する高齢者総合的機能評価および介入に関するランダム化比較試験(THE 5C STUDY)高齢者総合的機能評価(Comprehensive Geriatric Assessment:CGA)は、患者が有する身体的・精神的・社会的な機能を多角的に評価し、脆弱な点が見つかれば、それに対するサポートを行う診療手法である。NCCNガイドライン1)をはじめ、高齢がん患者に対してCGAを実施することが推奨されている。これまで、がん領域では高齢者の機能の「評価」だけが注目されることが多かったが、最近では、「脆弱性に対するサポート」まで含めた診療の有用性を評価すべきという風潮になっている。昨年のASCOでは、「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」の有用性を評価するランダム化比較試験が4つ発表され、その有用性が検証されつつある。今回、世界的にも注目されていた第5のランダム化比較試験、THE 5C STUDY2)がシンポジウムで発表された。画像を拡大する主な適格規準は、70歳以上、がん薬物治療が予定されている患者(術前補助化学療法、術後補助化学療法は問わず、また分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬も対象)、PS:0~2など。標準診療群は「通常の診療」、試験診療群は「高齢者総合的機能評価および介入(CGAに加え、通常の腫瘍治療に加えて老年医学の訓練を受けたチームによるフォローアップ)を行う診療」である。primary endpointはEORTC QLQ-C30のGlobal health status(項目29および30)で評価した健康関連の生活の質(HR-QOL)であり、key secondary endpointは手段的日常生活動作(Instrumental Activities of Daily Living:IADL)。primary endpointについてはパターン混合モデルを使用した(0、3、6ヵ月目)。カナダの8つの病院から351例の参加者が登録され、治療開始翌日以降に介入が行われた(患者の要望に合わせた研究であるため)。HR-QOLスコアの変化は両群で差がなく(p=0.90)、またIADLも両群間で差はなかった(p=0.54)。筆者はlimitationとして、CGAを実施したタイミングが悪かったことを挙げている。本研究では、患者の利便性を考えて、「治療開始時」または「治療開始後」にCGAを実施していたが、一般的には、治療方針を決定する前にCGAを実施すれば、患者の脆弱性を考慮して適切な治療を選択できると考えられている。しかし、今回は治療開始時または治療開始後にCGAを実施された患者が多かったため、CGAの意義が乏しかった可能性があるという理屈である。その他、COVID-19により、十分な介入ができなかったこと、またHR-QOLが影響を受けた可能性があること、そもそも「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」の有用性を評価するためのアウトカムとしてEORTC QLQ-C30のGlobal health statusが適切でなかった可能性などをlimitationに挙げている。昨年のASCOで発表された研究では「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」の有用性が示されたが、残念ながら、本試験ではその有用性は検証できなかった。しかし、研究デザインに問題があること、またひと言で「高齢がん患者を包括的に評価&サポートする診療」といっても、その内容はさまざまであることなどから、本試験がnegative studyであるからといって、その有用性が否定されたわけではないだろう。個人的には、筆者がlimitationで挙げているとおり、治療開始「前」にCGAを実施できていれば、より適切な治療が選択され、その結果、介入もより効果的になって、本試験の結果も変わっていたのではないかと想像してしまう。高齢者総合的機能評価と局所進行頭頸部扁平上皮がんの治療方針単施設の後ろ向き研究ではあるが、THE 5C STUDYのlimitationと関係するため、ここで紹介する。要は、治療開始「前」に高齢がん患者を包括的に評価することで、適切な治療を選択できる可能性があるという発表である3)。局所進行頭頸部扁平上皮がん(LA-HNSCC)を伴う高齢者を対象として、2016~18年の間に通常の診療を受けた集団(通常診療コホート)と、2018~20年の間にCGAを実施された集団(CGAコホート)を比較し、実際に受けた治療(標準治療、毒性を弱めた治療、緩和目的の治療、ベストサポーティブケア)、治療完遂割合、奏効割合などを評価した。通常診療コホート96例、CGAコホート81例の計197例の患者が対象となった。CGAコホートでは、通常診療コホートと比較して、標準治療を受ける患者が多かったが(36% vs.21%、p=0.048)、治療完遂割合(84% vs.86%、p=0.805)や奏効割合(73.9% vs.66.7%、p=0.082)に有意な差は認めなかった。これまでは、CGAを実施することで過剰な治療を防ぐことができるという、いわば脆弱な患者を守る方向で議論されることが多いと感じていた。しかし、本研究では、CGAを実施することで標準的な治療を受けることができた患者が増え、またベストサポーティブケアを受ける患者が少なくなるということが示されたことで、CGAにより、過小な治療を受けていた患者が適切な治療を受けられることが示唆されたといえる。つまり、治療開始「前」に高齢がん患者を包括的に評価することは大事という話。Choosing Unwisely(賢くない選択):高齢者における骨髄異形成症候群の確定診断Choosing Wiselyとは科学的な裏付けのない診療を受けないように賢い選択をしましょうという国際的なキャンペーンだが、本研究ではChoosing Unwiselyとして、高齢者に対して骨髄異形成症候群(MDS)の正確な診断をすること、を挙げている4)。MDSに正確な診断(Complete Diagnostic Evaluation:CDE)をするためには、骨髄生検、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション、染色体分析が必要だが、この意義があるか否かを2011~14年のメディケアデータベースを用いて検討した。対象は、2011~14年の間に66歳以上でメディケアを受けている患者のうち、MDSの診断を受けており、1種類以上の骨髄細胞減少を有し、MDS診断前後16週間に輸血を受けていない集団(1万6,779例)。CDEが臨床的に正当化されない患者の要因の組み合わせを特定するために、機械学習の手法であるCART(Classification and Regression Tree)分析を行い、CDEの有無による生存率の比較を行うためにCox比例ハザード回帰分析を行った。結果、1種類の血球減少(例:貧血のみ)を有する集団のうち、66~79歳の57.7%(1,156例)、80歳以上の46.0%(860例)がCDEを受けていた。また、血球減少がない患者3,890例のうち、866例がCDEを受けていた。背景因子を調整後の解析では、CDEを受けたことによる生存率の向上は認められなかった(p=0.24)。筆者は、高齢者のMDSに対して不要なCDEを減らすことを提案している。COVID-19患者の全米データベースの「がんコホート」高齢者に限定した研究ではないが、知っておくべきデータだと思うので簡単に紹介する。米国国立衛生研究所(NIH)が運営している全米COVIDコホート共同研究(National COVID Cohort Collaborative:N3C)のデータベースのうち、がん患者のみのコホートが公表された5,6)。N3Cコホートから合計37万2,883例の成人がん患者が同定され、5万4,642例(14.7%)がCOVID-19陽性。入院中のCOVID-19陽性患者の平均在院日数は6日(SD 23.1日)で、COVID-19の初回入院中に死亡した患者は7.0%、侵襲的人工呼吸が必要な患者は4.5%、体外式膜型人工肺(ECMO)が必要な患者は0.1%であった。生存割合は、10日目で86.4%、30日目で63.6%であった。65歳以上の高齢者(HR:6.1、95%CI:4.3~8.7)、併存症スコア2以上(HR:1.15、95%CI:1.1~1.2)などが全死因死亡のリスク増加と関連していた。18~29歳を基準とした場合、30~49歳のHRは1.09(0.67~1.76)、50~64歳では1.13(0.72~1.77)に対して、65歳以上ではHR:6.1と異常に高いことから、これまで以上に、高齢がん患者ではCOVID-19に注意を払う必要があると感じた。もちろん、併存症スコアが上昇するにつれ死亡割合が上昇していることから、暦年齢は併存症スコアに関連している可能性があり、暦年齢だけの問題ではない可能性はある。参考1)NCCN GUIDELINES FOR SPECIFIC POPULATIONS: Older Adult Oncology2)Comprehensive geriatric assessment and management for Canadian elders with Cancer: The 5C study.3)Impact of comprehensive geriatric assesment (CGA) in the treatment decision and outcome of older patients with locally advanced head and neck squamous cell carcinoma (LA-HNSCC).4)Choosing unwisely: Low-value care in older adults with a diagnosis of myelodysplastic syndrome.5)Outcomes of COVID-19 in cancer patients: Report from the National COVID Cohort Collaborative (N3C).6)Sharafeldin N, et al. J Clin Oncol. 2021:Jun 4. [Epub ahead of print]

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切り傷の縫合処置(創部確認~局所麻酔~消毒)【漫画でわかる創傷治療のコツ】第3回

第3回 切り傷の縫合処置(創部確認~局所麻酔~消毒)《解説》前回は、擦過傷(擦り傷)についての基礎的な解説をしました。今回は、切創の縫合処置について、基本的なことを何回かに分けて説明していこうと思います。※咬傷などの術後感染が懸念される場合については、また別途解説予定です。けがから8時間以内の切り傷は一次縫合の適応受傷後8時間以内で汚染が少ないと考えられる切創であれば、縫合処置で一次治癒(切り傷がそのままくっついて、傷痕が少なく治る状態)を目指しましょう。その場で縫合を行うかの判断は、創の部位、汚染の有無、基礎疾患などを考慮し、リスクを患者さんにしっかり説明したうえで行います。どうしても迷って決断できない場合や、縫合の手技が難しいと考えた場合は、洗浄と軟膏処置のみ行い、できるだけ早めの形成外科受診を促してください。それでは、実際の処置の流れを説明します。(1)創部の確認まずは、創を簡単に確認しましょう。顔面は、眼瞼や耳介、鼻など特徴的な形態の部位が多く、また口唇の赤唇と白唇といった解剖学的に境界線を有する組織もあるため、ランドマークは先にマーキングしておきましょう。後ほどの処置で、局所麻酔薬による腫脹やエピネフリンによる血管収縮で境界がわからなくなってしまうことがあります。(2)洗浄:必要に応じて局所麻酔と組み合わせる前回取り上げた擦過傷と同様に、洗浄が大切です! 切創の場合、洗浄前に縫合処置の必要性が高そうだと判断できるならば、先に局所麻酔をしておくと、創部を観察しやすくなるのでおすすめです。とくに小児の場合は、表面麻酔をしてから局所浸潤麻酔をすると、麻酔時の痛みも軽減できます。洗浄の方法については、前回の記事も参考にしてください。(3)局所麻酔皮膚表面の外傷に対して主に使用するのは、表面麻酔、浸潤麻酔、伝達麻酔です(ほかに、脊髄くも膜下麻酔、硬膜外麻酔などがあります)。外来で最も一般的なのは局所浸潤麻酔で、薬剤を皮下や粘膜下に直接注射して浸潤させる方法です。表に、よく使用する局所麻酔薬をまとめました。pKaは作用発現の速さ、分配係数は効果の強さ、蛋白結合率は作用時間の長さと関連しています。たとえば、リドカインだと数分で麻酔が効いてきて、1〜1.5時間(エピネフリン添加であれば2時間)作用が持続しますよ!表:よく使用する局所麻酔薬と各指標なお、麻酔にはリスクが伴うことも念頭に置いておきましょう。薬剤の血中濃度が高くなり過ぎると、中枢神経や心筋のナトリウムチャネル遮断が起こり、中毒症状(めまい、舌のしびれ、耳鳴り、多弁、興奮状態、意識障害、痙攣、昏睡、呼吸停止、循環虚脱)が発現する恐れがあります。麻酔前に同意書を書いていただく際などに、再度リスクについての説明をしておきましょう。禁忌や慎重投与(陰茎、指鼻などの末端部位)でなければ、1%エピネフリン含有リドカインを使うことが多いです。エピネフリンは血管収縮の作用があり止血効果、麻酔薬作用時間の延長効果があります。しかし、動悸頻脈を引き起こすことがあるので注意しましょう。《麻酔時の痛みが出やすいタイミングと対処法》注射薬や洗浄時に皮膚が切れるとき⇒表面麻酔を併用し、30Gなどの細い注射針を使用しましょう。薬剤が浸潤するとき⇒最初は狭い範囲に注射を行い、薬剤をゆっくり注入(slow injection)して、薬が浸潤したところから徐々に広げていきましょう。pH調整(炭酸水素ナトリウム注射液を約10%混ぜるなど)も有効です。極量とは:これを超える量は局所麻酔薬中毒を誘発する危険性が高く、使用してはならない量。極量の半分を超える用量を目安に注意を要します。例)リドカイン1%の極量は5mg/kg(体重50kgの場合25mL) エピネフリン含有リドカイン1%の極量は7mg/kg(同上35mL)(4)その他の麻酔方法:ブロック麻酔指や顔でも、範囲が大きい場合はブロック麻酔を使うと便利です。《指ブロック麻酔》エピネフリンを添加していない麻酔薬を用いることが多いです。指の神経は、漫画にも示した図のように手背側では伸筋腱の両側面の皮下を走行しており、手掌側ではMP関節(指の付け根)の付近で二つに分かれて屈筋腱の両側を走行しています。そのため、指間部で背側2ヵ所、掌側2ヵ所に麻酔薬を注入します。《顔面のブロック麻酔》鼻などはかなり痛みが強い部位なので、顔の神経ブロックを併用すると薬剤の注入時も疼痛が軽減できます。眼窩上神経は三叉神経第1枝の抹消枝であり、眉毛部や前額部の痛みに適応、眼窩下神経は三叉神経第2枝領域であり、下眼瞼や上口唇、鼻腔領域の痛みに適応します。また、オトガイ神経ブロックは、下口唇や頤部の痛みに適応します。切創ではとくに、創部の除痛をしっかり行って洗浄しましょう。砂や小石などの異物はすべて取り除きます。この時に、損傷の深さはどのくらいなのか(たとえば、皮下組織までにとどまっているのか、筋層まで断裂しているのか、腱や神経、主要な血管の損傷がないかなど)を再確認しましょう。(5)消毒、ドレーピング縫合前準備の仕上げとして、縫合する範囲とその周囲を消毒しましょう。顔面にエタノールは、目や粘膜の刺激になるので絶対にやめてくださいね!外来なら、クロルヘキシジン0.05%やポビドンヨードなどが置いてあると思います。ポビドンヨードは術野に色が付いてしまうので、状況によって使い分けてくださいね。今回は、縫合前の準備についてまとめました。次回は、縫合に使用する道具の選択や使い方について解説していく予定です!参考1)波利井 清紀ほか監修. 形成外科治療手技全書I 形成外科の基本手技1. 克誠堂出版;2016.2)日本形成外科学会, 日本創傷外科学会, 日本頭蓋顎顔面外科学会編. 形成外科診療ガイドライン2 急性創傷/瘢痕ケロイド. 金原出版;2015.3)土肥 修司ほか編. イラストでわかる麻酔科必須テクニック. 羊土社;2019.4)菅又 章 編. PEPARS(ペパーズ)123 実践!よくわかる縫合の基本講座<増大号>. 全日本病院出版会;2017.5)岡崎 睦 編. PEPARS(ペパーズ)127 How to局所麻酔&伝達麻酔. 全日本病院出版会;2017.6)一般社団法人 日本創傷外科学会ホームページ

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ASCO2021 レポート 消化器がん(上部・下部消化管)

レポーター紹介食道がん本邦における進行・転移性食道扁平上皮がん1次治療の第1選択は、これまでフルオロウラシル+シスプラチン(FP療法)であった(『食道癌診療ガイドライン 2017年版』)。20年以上も標準治療が変わらなかったわけであるが、ESMO virtual congress 2020で進行・転移性食道がん(扁平上皮がんが7割強、腺がんが3割弱)のFP療法に対する抗PD-1抗体薬ペムブロリズマブ(PEM)の有効性を見たランダム化盲検第III相試験KEYNOTE-590がすでに報告されており、全体集団で全生存期間(OS)中央値が12.4ヵ月vs.9.8ヵ月(HR:0.73、p<0.0001)と有効性を検証した。2021年3月には米国で承認となっている(本邦でも2020年11月に一変申請済み)が、今回ニボルマブ(NIVO)についても第III相試験の結果が報告された。CheckMate 648CheckMate 648は、進行・転移性食道扁平上皮がんの1次治療において、通常の化学療法(FP療法)に対する、化学療法+NIVOの併用とイピリムマブ(IPI)+NIVOの有効性を見たランダム化第III相試験である。主要評価項目は腫瘍細胞のPD-L1≧1%の症例におけるOSと無増悪生存期間(PFS)であり、副次評価項目としてその他の有効性が評価された。結果を化学療法+NIVO群vs.化学療法群から見ていくと、OSにおいて主要評価項目のPD-L1≧1%の症例でOS中央値15.4ヵ月vs.9.1ヵ月(HR:0.54、p<0.0001)、全ランダム化症例でOS中央値13.2ヵ月vs.10.7ヵ月(HR:0.74、p=0.0021)と、いずれも統計学的有意差をもって化学療法+NIVO群が優れていた。PFSにおいても主要評価項目のPD-L1≧1%の症例でPFS中央値6.9ヵ月vs.4.4ヵ月(HR:0.65、p=0.0023)、全ランダム化症例でPFS中央値5.8ヵ月vs.5.6ヵ月(HR:0.81、p=0.0355)と、PD-L1≧1%の症例で統計学的有意差を認めたものの、全ランダム化症例では事前に設定した統計学的有意差を示すことができなかった。全奏効率(ORR)はPD-L1≧1%の症例で53% vs.20%、全ランダム化症例で47% vs.27%と、NIVOの併用によるメリットが認められた。次にIPI+NIVO群vs.化学療法群を見ていくと、OSにおいて主要評価項目のPD-L1≧1%の症例でOS中央値13.7ヵ月vs.9.1ヵ月(HR:0.64、p=0.0010)、全ランダム化症例でOS中央値12.8ヵ月vs.10.7ヵ月(HR:0.78、p=0.0110)と、いずれも生存曲線で最初は化学療法群が上を行っている傾向があったが、統計学的有意差をもってIPI+NIVO群が優れていた。PFSにおいては、主要評価項目のPD-L1≧1%の症例でPFS中央値4.0ヵ月vs.4.4ヵ月(HR:1.02、p=0.8958)、全ランダム化症例でPFS中央値2.9ヵ月vs.5.6ヵ月(HR:1.26)と、統計学的有意差を認めなかった。ORRはPD-L1≧1%の症例で35% vs.20%、全ランダム化症例で28% vs.27%と、IPI+NIVO群が化学療法群より優れていたが、化学療法+NIVO群よりも劣る結果であった。毒性に関しては、これまで他がん種で行われた化学療法+NIVOやIPI+NIVOと大きな違いはなかった。本試験では化学療法+NIVO群、IPI+NIVO群いずれもOSで有意差を示しており、いずれも今後承認が期待される。一方、IPI+NIVO群は、もうひとつの主要評価項目であるPD-L1≧1%の症例におけるPFSで有効性を検証することができず、また生存曲線で最初は化学療法群の下を行くことを考えると、化学療法+NIVOのほうがより好んで使われることが予測される。KEYNOTE-590の結果と併せて、PEMとNIVO両者が承認された後は、化学療法+PEMまたは化学療法+NIVOが最も使われるレジメンになるであろう。CheckMate 577の追加解析切除可能進行食道・食道胃接合部がんに対して、術前化学放射線療法(CRT)後の手術は、海外では重要な標準治療の1つであり、ランダム化第III相試験であるCheckMate 577は、術後のNIVOの1年間投与が無病生存期間(DFS)を有意に改善(NIVO群vs.プラセボ群で中央値22.4ヵ月vs.11.0ヵ月、HR:0.69、p=0.0003)することをすでに報告している。今回、有効性、安全性、QOLの追加解析が報告された。DFSのサブグループ解析では、年齢、性別、人種、PS、術前ステージ、原発の部位、組織型、リンパ節転移、組織のPD-L1発現、いずれのグループにおいてもNIVOの上乗せ効果が認められ、NIVOによるQOLの低下も認めなかった。食道がんにおける本邦の標準治療は、術前化学療法の後の手術である。本試験は日本人症例の登録が行われているが、この結果を本邦の実臨床に適用していけるかは解釈が分かれるところである。本邦でNIVOが術後補助療法というかたちで承認されれば、本邦の実臨床に適用する臨床試験をぜひ行ってほしい。胃がんHER2陰性の切除不能進行胃がんにおいては、PEMがKEYNOTE-062で1次治療の有効性が検証できなかった一方で、NIVOは全世界で行われたCheckMate 649や東アジアで行われたATTRACTION-4で、有効性(ATTRACTION-4のOSはnegative)が検証できたことがESMO virtual congress 2020ですでに報告されている。CheckMate 649の追加解析CheckMate 649は、HER2陰性の切除不能胃がんの1次治療において化学療法+NIVOと化学療法を比較した(IPI+NIVO群は途中で登録中止)ランダム化第III相試験であり、主要評価項目であるPD-L1 CPS≧5症例のOSとPFS、副次評価項目であるCPS≧1、全ランダム化症例のOSとPFSにおいて、化学療法+NIVO群が化学療法群より優れていることが報告されている。今回、さらなる有効性の解析が報告された。1,581例のランダム化された症例で最低でも12.1ヵ月以上フォローアップされた段階で、NIVO+化学療法群は全ランダム化症例でOS中央値13.8ヵ月vs.11.6ヵ月(HR:0.80、p=0.0002)、PFS中央値7.7ヵ月vs.6.9ヵ月(HR:0.77)と改善を認めた。ORRは58% vs.46%と化学療法+NIVO群で良好な結果であり、PD-L1 CPSはOS、PFSが良好な症例の選別に有効であることも示された。さらに、化学療法+NIVO群は臨床症状の悪化までの期間についても有意な改善を認めた(HR:0.77)。米国では化学療法+NIVOが2021年4月16日に、CPSにかかわらずすべての切除不能胃がんの1次治療として承認となっており、本邦でも2020年12月に一変申請がすでに提出されている。承認後は本邦でも切除不能胃がんの第1選択になっていくものと考える。KEYNOTE-811の奏効割合の報告KEYNOTE-811はHER2陽性の切除不能胃腺がんの1次治療において、化学療法+トラスツズマブ(Tmab)+PEMと化学療法+Tmab+プラセボを比較したランダム化第III相試験である。合計692例が登録予定で主要評価項目はOSとPFSであるが、最初の260例が8.5ヵ月以上フォローアップされたところで1回目の中間解析が行われた。有効性の評価対象は264例、安全性の評価対象は433例であった。ORRにおいて化学療法+Tmab+PEM群で74.4%、化学療法+Tmab+プラセボ群で51.9%とPEM併用によって22.7%(p=0.00006)も奏効例の増加が認められ、完全奏効例が11%も認められるなど深い奏効が得られていた。安全性において新たに懸念される事項は認められなかった。この結果をもって米国では化学療法+Tmab+PEMが2021年5月に迅速承認を得たが、本邦で同様の承認が得られるか不明である(本邦には同様の迅速承認制度はなく、また本邦において胃がんは希少疾患ではないため難しいと思われる)。今後OS、PFSなどの主要評価項目の有効性を確認し、正式な承認が得られていくものと考える。大腸がん高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)転移性大腸がんの1次治療において、PEM単剤と通常の化学療法を比較するランダム化第III相試験であるKEYNOTE-177試験では、すでに主要評価項目の1つであるPFSの有意な改善が報告されていて、米国、欧州で1次治療として承認を得ている(本邦では2020年9月に一変申請済み)。今回、最終解析としてもうひとつの主要評価項目であるOSの報告が行われた。KEYNOTE-177試験の生存データの最終解析PEM群200mg/3週間ごととmFOLFOX6/FOLFIRI±ベバシズマブ/セツキシマブ2週間ごと(化学療法群)を1対1に割り付け、化学療法群は病勢進行(PD)後、PEMのcrossoverがプロトコール治療として認められていた。OSはp値が0.0246を下回ったとき有意と判定されることとなっていた。最終解析ではPEM群と化学療法群でPFS中央値16.5ヵ月vs.8.2ヵ月(HR:0.59)であり、化学療法群のうち56例(36.4%)がPEMにcrossoverされ、さらに37例にプロトコール治療外でPD-1/PD-L1抗体が投与されたため、合計60.4%の症例がcrossoverとなった。OS中央値はPEM群と化学療法群で、到達せずvs.36.7ヵ月(HR:0.74、p=0.0359)とPEM群で良好な結果であったが、事前に設定された統計学的な有意差は検証できなかった。以上より、MSI-H転移性大腸がんの1次治療においてPEMはPFSで統計学的に有意に優れており毒性は軽かった。化学療法群でcrossoverした症例が多く、また、想定していたOSイベント数に到達しない段階での解析であることもあり、統計学的有意差は検証できなかったが、OSにおいても明らかに優れた結果であった。本邦でも、承認後はMSI-H転移性大腸がんの1次治療における標準治療になるであろう。TRUSTY試験転移性大腸がんの3次治療以降の選択肢としてトリフルリジン・チピラシル(FTD/TPI)+ベバシズマブ(BEV)の有効性がすでに複数の試験で報告されており、『NCCNガイドライン』にも記載されている。今回、本邦において、2次治療でFTD/TPI+BEVとFOLFIRIまたはS-1+イリノテカン(IRI)+BEVを比較する第II/III相臨床試験が実施された。1次治療においてオキサリプラチン/フルオロピリミジン+BEVまたは抗EGFR抗体薬(RAS野生型の場合)を行った症例を対象とし、FTD/TPI+BEV(試験群)とFOLFIRIまたはS-1+IRI+BEV(対照群)に1対1に割り付けを行った。主要評価項目はOSで、非劣性マージンのハザード比を1.33に設定した。副次評価項目はPFS、ORR、病勢制御割合(DCR)などであった。目標症例数は524例であったが、397例を登録した時点の中間解析で中止が勧告され、登録終了となった。試験群と対照群で、OS中央値は14.8ヵ月vs.18.1ヵ月(HR:1.38、p=0.5920)であり非劣性を示すことはできず、むしろ試験群が劣っている傾向であった。PFS中央値は4.5ヵ月vs.6.0ヵ月(HR:1.45)、ORRは3.8% vs.7.1%、DCRは61.2% vs.71.7%であった。次治療の実施率は59.9% vs.52.3%であった。サブグループで見ると、OSにおいてS-1+IRI+BEV例で試験群vs.対照群が13.2ヵ月vs.未到達(HR:2.14)とS-1+IRI+BEVが良好である一方で、FOLFIRI例では16.4ヵ月vs.17.5ヵ月(HR:1.07)であり、レジメンによる大きな差を認めた。転移性大腸がん2次治療としてのFTD/TPI+BEVはフルオロピリミジン+IRI+BEVに対して非劣性を検証できず、今後も2次治療の標準治療はフルオロピリミジン+IRI+BEVである。S-1+IRI+BEV例で対照群が良好であった理由は結論が出ないが、RAS変異症例の割合、前治療の抗EGFR抗体薬の使用割合などに偏りがあり、それらが影響している可能性が考えられる。DESTINY-CRC01試験の最終解析HER2遺伝子増幅を認める大腸がんは、転移性大腸がんの2~3%に存在し、抗HER2療法が有効であることが報告されている。トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は、すでにHER2陽性の乳がん・胃がんで標準治療となっているが、大腸がんにおいてもその有効性を見るDESTINY-CRC01が2020 ASCO virtualで報告されており、今回、最終解析の結果が報告された。HER2 IHC3+ or IHC2+/ISH+の症例においては、確定されたORRが45.3%、PFS中央値6.9ヵ月、OS中央値15.5ヵ月と優れた結果であり、前治療の抗HER2治療にかかわらず有効性を認めた。一方、HER2 IHC2+/ISH-、HER2 IHC1+の症例は奏効例が1例もおらず、有効性は認めなかった。毒性ではやはり間質性肺障害の頻度が9.3%と懸念される結果であった。現在、T-DXdの用量を5.4mg/kg Q3Wで6.4mg/kg Q3Wをランダム化比較する第II相試験であるDESTINY-CRC02が進行中である。終わりにこの1~2年の報告で、食道がん、胃がん、MSI-H大腸がんの1次治療で抗PD-1抗体の有効性が検証されたことにより、間もなくこれらの消化管がんの1次治療で抗PD-1抗体を第1選択で使う時代が来るだろう。NIVO、PEM、IPIの有効性の検証が一巡した現在、新たな治療標的に対する分子標的薬やADC製剤の開発や、ウイルス療法、光免疫療法など、まったく新しい発想の治療が消化管がんにおいて積極的に開発されることを期待したい。

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必ず読めるようになる医学英語論文 究極の検索術×読解術

英語論文検索・読解のノウハウを徹底解説。読まなければ、何も始まらない医学英語論文を読む目的は何か? その一つは、EBMの考え方に基づいてクリニカル・クエスチョンに答え、日常診療に役立てるためであり、もう一つは自ら研究を実践し、学会発表や論文執筆に備えるためである。本書ではPubMedを使った論文の検索方法とともに、斜め読みではなく論文全体を「精読」するために必要となる“予測読み”などの実践的な読解方法を詳細に解説。これから論文を読むすべての臨床家必読の書。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    必ず読めるようになる医学英語論文定価3,520円(税込)判型A5判頁数160頁発行2021年4月著者康永 秀生電子版でご購入の場合はこちら

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週1回投与のヒト成長ホルモン製剤「ソグルーヤ皮下注5mg/10mg」【下平博士のDIノート】第77回

週1回投与のヒト成長ホルモン製剤「ソグルーヤ皮下注5mg/10mg」今回は、長時間作用型ヒト成長ホルモンアナログ製剤「ソマプシタン(遺伝子組換え)(商品名:ソグルーヤ皮下注5mg/10mg、製造販売元:ノボ ノルディスク ファーマ)」を紹介します。本剤は、重症の成人成長ホルモン分泌不全症患者に週1回投与することで、体脂肪量の減少と筋肉・骨組織の成長を促し、体組成のバランスを改善します。<効能・効果>本剤は、成人成長ホルモン分泌不全症(重症に限る)の適応で、2021年1月22日に承認されました。診断および重症の基準は、最新の「成人成長ホルモン分泌不全症の診断と治療の手引き」の病型分類を参照することとされています。<用法・用量>通常、ソマプシタン(遺伝子組換え)として1.5mgを開始用量とし、週1回、同一曜日に皮下注射します。開始用量は年齢、性別、合併症などに応じて適宜増減します。60歳超の患者では1.0mg、経口エストロゲン服用中の女性患者では2.0mgが目安となっています。その後の投与量は、患者の臨床症状および血清インスリン様成長因子-I(IGF-I)濃度などの検査所見に応じて、最高用量8.0mgを超えない範囲で調整します。なお、投与量の調整は投与開始後2~4週間に1回を目安に行い、増量する場合は1回当たり0.5~1.5mgを目安とします。副作用の発現や血清IGF-I濃度が基準範囲上限を超えた場合は、投与量の減量や一時的な投与中止など適切な処置を行います。<安全性>第III相試験の併合結果333例中85例(25.5%)で副作用が確認され、主な副作用として、頭痛11例(3.3%)、関節痛、疲労各9例(2.7%)、末梢性浮腫7例(2.1%)、浮動性めまい、感覚鈍麻、体重増加、血中クレアチンホスホキナーゼ増加各4例(1.2%)などが報告されています。重大な副作用として、甲状腺機能亢進症および糖尿病(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.週1回投与する持続性の成長ホルモン製剤です。肝臓に働き掛け、体脂肪量を減少させ、筋肉や骨組織の成長を促し、体組成のバランスを改善します。2.大腿部、腹部などに皮下注射してください。注射箇所は毎回変更し、同一部位に短期間に繰り返し注射しないでください。3.浮腫、関節痛、視覚異常、頭痛、悪心または嘔吐、頻尿などの症状が見られたらご連絡ください。4.投与を忘れた場合は、あらかじめ定められた投与日から3日以内であれば、気付いた時点でただちに投与し、その後は元の曜日に投与してください。投与日から3日を超えていた場合は1回分スキップして、次の投与日に投与します。なお、曜日を変更する必要がある場合は、前回の投与から少なくとも4日間以上の間隔を空けてください。5.使用開始前後にかかわらず冷蔵庫で保管し、開封したものは6週間以内に使用してください。冷蔵庫がない環境での保管は、遮光・室温(30℃以下)で通算3日間(72時間)までとしてください。<Shimo's eyes>成人成長ホルモン分泌不全症(AGHD)とは、成人において成長ホルモン(GH)の分泌が損なわれることで、易疲労感やスタミナ低下、体脂肪の増加、筋肉・骨塩量の低下、血中脂質高値などさまざまな自覚症状や代謝異常を来す慢性疾患です。通常、GH補充療法が行われますが、GH分泌不全は生涯続くことが多いため、長期または生涯にわたる治療が必要です。従来のソマトロピン製剤(商品名:ノルディトロピン注、ジェノトロピン注、ヒューマトロープ注、グロウジェクト注、ソマトロピンBS注)は、主に1日1回の皮下投与製剤であることから、毎日の治療に負担を感じる患者も少なくないことが課題となっています。本剤は週1回投与の長時間作用型ヒト成長ホルモン誘導体であり、内分泌専門医の管理指導の下、自己注射が可能な製剤です。1.5mLカートリッジに入った溶解操作が不要なリキッドタイプで、複数回投与可能な使い捨てプレフィルドペン型注入器に装填されています。1回の投与量は、5mg剤が0.025~2mgまで0.025mg刻み、10mg剤が0.05~4mgまで0.05mg刻みで設定可能です。ソマプシタンの構造としては、101位のロイシン残基をシステイン残基に置換したアミノ酸骨格に、アルブミン側鎖が接合しており、内因性アルブミンとの可逆的な非共有結合により、本剤の消失が遅延することで作用持続時間が延長されます。注意すべきポイントとして、GHはインスリン感受性と耐糖能を低下させるため、血糖値とHbA1cなどのモニタリングが必要な点が挙げられます。また、甲状腺機能の低下や良性頭蓋内圧の亢進、血清コルチゾール値の低下、中枢性副腎皮質機能低下症が顕在化する可能性があるので注意が必要です。GHの体液貯留作用により、本剤による治療開始時に手足の浮腫、手根管症候群、関節痛、筋肉痛などが見られる場合がありますが、治療継続中に消失することも多いため、軽度であれば経過観察となることもあります。自己注射は、基本的にはインスリン注射と同様の手順で行います。使用済みの注射器・針の廃棄方法は、かかりつけ医や主治医、薬剤師に相談するよう伝えましょう。参考1)PMDA 添付文書 ソグルーヤ皮下注5mg/ソグルーヤ皮下注10mg

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デジタル手術イラストの描き方(着色~仕上げ編)【誰も教えてくれない手術記録 】第4回

第4回 デジタル手術イラストの描き方(着色~仕上げ編)こんにちは! 手術を描く外科医おぺなかです。今回は前回の続きで、手術イラストの着色~仕上げまでをお伝えします。前回は、下書き~線画を軸に、デジタルイラストの特徴である「レイヤー機能」について、少し掘り下げて紹介しました。今回もレイヤー機能の活用を中心に、イラスト完成までの流れを説明しますので、「レイヤーって何のこと?」と思われた方は、前回のコラムを先にご一読いただけると理解が深まるかと思います!(3)着色:色や構造ごとにレイヤーを分けるのがポイント!線画だけで着色をしなくても、手術イラストとしては成り立ちますが、やはり色が付いていたほうがより見やすくて伝わるイラストになります。私は、色塗りに「ソフトエアーブラシ」を愛用していますが、着色にもさまざまな質感のブラシが使えるので、いろいろと試してみてください。まず、線画レイヤーの下に、新規レイヤーを作成します。カラーパレットから塗りたい色を選択し、多少のはみ出しは気にせず大まかに塗っていきます。そして大体塗り終えたら、消しゴムツールを用いて線画からはみ出した部分を消していきましょう。広い面から塗って、不要な部分を後から消すほうが、早く簡単できれいに塗れると思います。大まかな着色⇒消しゴムで丁寧に消した図また、色が変わる隣り合った部分や構造でレイヤーを分けると、後から細かな修正がしやすくなるのでおすすめです。慣れるまでは、レイヤーに名前を付けて整理するといいですよ。各レイヤーに名前を付けた図色を塗った後は、影(黒、灰色)やハイライト(白)を重ねると、よりそれらしいイラストになると思います。これもレイヤーを分けて描くようにしましょう。レイヤーごとに透明度を調節できるので、影やハイライトが濃くなり過ぎてしまった場合は、透明度を下げると自然に仕上がりますよ。ポイントとしては、着色が終わったタイミングで線画と色のレイヤーをすべてグループ化しておきましょう(ソフトによってはフォルダに入れることでグループ化できるものもあります)。詳しいことは後で説明しますが、イラストの配置を調整するときなどに役立ちます。見本:着色後の完成図(4)仕上げ:手術の流れやポイントがわかるような矢印やテキストを書き込むさて、ついに最後のステップです。余白に矢印やテキストを書き込むことで、手術イラストから手術記録に仕上げていきます。付記する内容としては、病名、施行した術式解剖構造の名称術中所見(病変の様子、腫瘍であれば転移の有無、血管走行、癒着の程度など)手術操作の内容(郭清、剥離、血管/腸管切離など)手術に使用した道具(糸の種類・太さ、エネルギーデバイス、血管用クリップ、メッシュなど)などが一般的ですね。自分は手書き文字が好みですが、お絵描きソフトのテキストツールや、パワーポイントなどを使って仕上げる方法もよく用いられているようです。手書きの際は、グリッドなどの描画ガイドを用いると、字の大きさや傾きが整うのでおすすめです。また、文字を書く余白が足りない、何となく配置バランスが悪いなどと感じたら、各イラストの位置や大きさの調整をしましょう。ここで、先に説明したレイヤーのグループ化機能を活用します。グループ化した全レイヤーを選択した状態で、なげなわ(選択)ツールを用いて動かしたい範囲を指定すると、選択範囲の位置調整や拡大・縮小が可能です。なげなわツールで範囲指定⇒拡大・縮小した図最後に各工程の細かな調整を行って完成です! お疲れさまでした!見本:完成図(お絵かきソフトのテキストツールで文字入れ後)まとめここまで2回に分けて、手術イラストの下書きから完成までの過程を説明しましたが、いかがでしたか? 皆さんがデジタル手術イラストに挑戦するきっかけになればうれしいです。次回以降も、手術記録に関するいろいろな情報をお届けできたらと思っています。ではまた!

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第61回 医療従事者は新型コロナワクチン接種を義務とすべきか/忽那賢志

<先週の動き>1.医療従事者は新型コロナワクチン接種を義務とすべきか/忽那賢志2.64歳未満の接種目前もワクチン供給にブレーキ、今後の見通しは?3.オンライン初診の恒久化、今秋にも指針改定/厚労省4.全医療機関で勤務医の労働時間の実態調査へ/働き方改革5.費用対効果見合わず、後発品体制加算廃止を求める/財務省6.重点医療機関でクラスター、非接種の看護師12人が感染/沖縄1.医療従事者は新型コロナワクチン接種を義務とすべきか/忽那賢志感染症専門医・忽那 賢志氏がYahoo!ニュースに寄稿した内容が話題となっている。わが国においての新型コロナワクチン接種は、あくまでも希望制として進められているが、「医療従事者であってもワクチンを接種しない権利は守られるべきか、医療従事者は原則としてワクチンを接種すべきか」は、簡単に答えが出せない問題である。忽那氏は、国内におけるワクチン接種をしなかった医療従事者を含む医療機関でのクラスター発生事例を紹介し、「個人の『接種しない権利』は守られるべき」としながらも、「しかし医療従事者の場合は、ワクチン接種をしないことが直接患者さんへの被害につながることがあり、一般の方とは少し分けて考えるべきなのではないかと思います」と意見を綴った。同氏は、自身のTwitterアカウントで「こういう意見もあるよという程度のものですので議論のきっかけになれば幸いです」とコメントしている。(参考)医療従事者は新型コロナワクチン接種を義務とすべきか(Yahoo!ニュース)忽那賢志氏 Twitter(@kutsunasatoshi)2.64歳未満の接種目前もワクチン供給にブレーキ、今後の見通しは?河野規制改革担当相は、各自治体への新型コロナウイルスワクチン供給が、7月下旬以降、希望している量の3分の1程度になるとの見通しを明らかにした。これは、6月末までに1億回分が供給されたファイザー製ワクチンの供給量が今後減少するため。ワクチンの供給不足を理由に、新規予約を停止する自治体もあり、その影響で予約患者のキャンセル手続きに入った医療機関も出ている。当初伸び悩んでいたワクチン接種件数だが、「オリンピック開催の7月までに65歳以上の接種を完了させる」という目標達成のため、1日100万件接種の実施を推進してきた。各自治体は、国からの供給量が減少する中、接種計画の見直しを迫られる。(参考)ブレーキかかるワクチン接種 募る不満「政府も手探り」(朝日新聞)ワクチン供給に不安が94% 都道府県庁市区、共同通信調査(共同通信)ワクチン供給 “減少の見通し” 自治体の接種に影響も(NHK)3.オンライン初診の恒久化、今秋にも指針改定/厚労省25日、「経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太の方針)」と「規制改革実施計画」が閣議決定された。規制改革実施計画には、「デジタル時代に向けた規制の見直し」としてオンライン診療・服薬指導の特例措置の恒久化が含まれており、今秋までに対象となる症状などを定める見込み。なお、オンライン診療での初診はかかりつけ医を原則としているが、カルテで患者状態が把握できる場合や、事前に基礎疾患などを確認して、オンライン診療が可能と医師と患者が判断した場合は、初診からのオンライン診療を認める方針。(参考)初診からオンライン診療 恒久化へ秋にも指針改定 厚労省(NHK)オンライン初診、秋にも対象症状を線引き 厚労省(日経新聞)資料 令和3年「規制改革実施計画」(内閣府)4.全医療機関で勤務医の労働時間の実態調査へ/働き方改革厚労省は、1日に開催された「医師の働き方改革の推進に関する検討会」で、医療機関における医師労働時間短縮計画の作成ガイドライン案を修正し、2023年度末までは努力目標とすることを発表した。今年2月に成立した改正医療法により、2024年4月から診療に従事する勤務医に対して時間外労働の上限規制が適用される。このため、2021年からすべての医療機関に対して、医師の労働時間の調査を行い、各都道府県に設けられた医療機関勤務環境評価センターへの報告が求められる。また、現状で時間外労働が960時間を超える医師がいる病院で、2024年以降も特例のB・C水準の取得を希望する場合は、医師労働時間短縮の作成と医療機関勤務環境評価センターによる評価の受審が必須となる。(参考)23年度末までの医師時短計画は努力義務に 厚労省、作成ガイドライン案修正(CBnewsマネジメント)医師の労働時間把握へ、全病院に調査 21年度、厚労省(同)医師時短計画作成は努力義務だが「B水準等指定の前提」な点に変化なし、急ぎの作成・提出を―医師働き方改革推進検討会(1)(GemMed)第12回医師の働き方改革の推進に関する検討会 資料(厚労省)5.費用対効果見合わず、後発品体制加算廃止を求める/財務省財務省は29日に、国の事業に無駄がないか調べる予算執行調査について公表した。これまで、後発医薬品については、保険薬局を対象に「後発医薬品調剤体制加算」を設けて使用促進を図っており、2023年度末までに後発品の使用割合を、すべての都道府県で80%以上とする目標を設定している。現状では、保険薬局の7割超が加算を取得し、減算制度の適用はわずか0.3%。残りの薬局が目標を達成すると200億円の抑制効果がある一方、加算は年1,200億円に上るため、費用対効果が極めて薄いと財務省は主張している。来年の予算編成に向け、厚労省に見直しを求める。(参考)後発薬の診療報酬加算、廃止求める 財務省が調査(日経新聞)後発医薬品調剤体制加算、廃止を含めた見直し要請 財務省・調査「費用対効果も見合っていない」(CBnewsマネジメント)資料 令和3年度 予算執行調査の調査結果の概要(6月公表分)(財務省)6.重点医療機関でクラスター、非接種の看護師12人が感染/沖縄沖縄県は30日に、重点医療機関である沖縄県立中部病院において新型コロナウイルスのクラスターが発生したことを発表した。クラスターは5月24日~6月17日にかけて発生。7月1日時点で患者36人(うち死亡は17人)と職員15人の計51人の感染が報告された。このうち、ワクチン接種を希望しなかった看護師12人が感染したことが明らかになった。同院では6月17日を最後に新たな感染者は確認されていない。(参考)ワクチン非接種の看護師12人が感染 沖縄の県立病院(産経新聞)沖縄県立中部病院でクラスター 患者ら50人感染(毎日新聞)

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患者さん向け耳鳴診療Q&A

専門家が心を込めて解説。あなたの耳鳴りの悩みを解消します!耳鳴り診療のエキスパートたちによる患者さん向けの解説書が誕生しました。耳鳴り患者さんの抱く疑問などを、80のQ&Aにまとめました。耳鳴りのしくみ、検査・診断・治療、生活上の注意など、患者さんが持つあらゆる悩みに向き合います。効果の期待できる治療方法など、エビデンス(効果を示す証拠)をもとに丁寧に解説します。あなたの耳鳴りの悩みを解消するために、多くの専門家が力と知恵を寄せ合った渾身の1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    患者さん向け耳鳴診療Q&A定価2,200円(税込)判型B5判頁数180頁発行2021年5月編集日本聴覚医学会電子版でご購入の場合はこちら

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