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こんにちは。自由気ままな整形外科医です。最近、家族がとある病気で入院して手術を受けました。幸い経過は良好なのですが、加入している医療保険がまったく使えないことに気付いてがくぜんとしました。加入している保険は、今回の治療に要した医療費をほとんどカバーできなかったのです。どうしてこのようなことが起こったのでしょうか? 十分な保険金が支払われなかった原因を調べてみると、どうやら加入している医療保険が時代遅れなものになっていたようです。入院期間短縮の影響が医療保険を直撃今回の家族の治療においては、ひと昔前の治療と比べて大きな差異がありました。それは入院期間の短縮化です。2013年に加入していたこの医療保険の条件は下記のようなものでした。生命共済契約時期:2013年月額保険料:4,000円入院(疾病):9,000円通院(疾病):0円手術:0円今回は4日間の入院で手術も含めた医療費の自己負担額は約20万円でした。差額ベッド代等が含まれており、高額療養費制度の適用にもなりません。医療保険では3万6,000円しか補填されず、残念ながら医療保険はあまり役に立ちませんでした。周知のように、昨今はどの疾患においても、入院期間を極力短くして外来での治療をメインにすることが主流となっています。このような医療体制の変化は、医療保険にも大きな影響を及ぼしています。かつての医療保険では、入院期間が保険金の算出基準に大きなウエイトを占めていました。つまり、入院期間が長ければ、より多くの保険金が支払われたのです。ところが、最近では入院期間が短縮化される傾向のため、入院期間で保険金が決まっていた従来の医療保険では、必要とされる医療費を賄えないのです。これでは何のために医療保険を掛けているのかわからないですね。保険商品も進化しているこのような医療体制の変化に合わせて、生命保険会社も新たな保険商品を開発しています。売れ筋は、日帰り入院であってもまとまった保険金を一時支給するタイプのようです。たとえば、私が見直しを検討している三井住友海上あいおい生命の「&LIFE 新医療保険A(エース)プレミア」の場合、仮に2013年当時の年齢で加入していたとすると、下記のような条件になります。月額保険料:7,872円入院(疾病):一律12万5,000円(6日目以降は5,000円/日)通院(抗ガン剤治療):10万円/月手術(入院):5万円ガン診断給付特約:100万円今回の入院であれば入院給付と手術給付で計17万5,000円が支払われることになり、医療費の9割が賄えた計算になります。2013年に加入した医療保険と比べると圧倒的に有利ですね。生命共済は一般的な生命保険会社よりも保険料が安価でそこに引かれたのですが、見直しを怠っていました。従来の医療保険は、日帰り入院手術では十分な保険金が支払われず、消費者の納得が得られません。入院期間短縮の流れに合わせて、保険会社も消費者のニーズに応える医療保険を開発しています。そして、この傾向はがん保険においてとくに顕著です。がんでも入院短期化の流れは同様ですし、高額の治療薬や長く続く外来診療など、治療に多額のお金が必要となるケースが多くなります。このような消費者のニーズに応じて、数十~数百万円の一時金を支給するがん保険が増えています。入院期間の短縮化という医療者にとって当然の事実が、医療保険の商品性にまで影響を与えているとは、医師でありながら考えが及んでいませんでした。ああ、もう少し目端が利けばよかったのになあ…。私に限らず、医師は自分や家族が入っている保険の内容について構っている人は少ない印象です。昔の保険はすべてお宝ではない予定利率の高かった時代の終身保険には、高い利率で運用できる「お宝保険」が多いというのは周知の事実です。このため、保険商品は昔に契約したもののほうが優れていると思っている人も多いかもしれません。しかし、医療保険に関しては、そうとは言い切れません。入院期間短縮化や治療方法の進化は、医療保険にも大きな影響を与えています。昔に加入した医療保険は見直したほうが良い場合が多いでしょう。キーワードは「一時金の大きさ」です。病は突然やってきますが、その際に必要なのは治療に向き合い、その間の生活を維持するためのまとまったお金です。もちろん一時金が大きい保険は保険料も高くなりますが、医師の仕事は自分の時間と引き換えに成り立っています。治療に専念すれば収入が減ったり途絶えたりするかもしれません。とくに傷病手当金のない国民健康保険に入っている開業医はリスクが高いでしょう。そのようなときに、大きな一時金を受け取れる医療保険が大きな助けになってくれることでしょう。