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妊娠高血圧腎症予防のための低用量アスピリン投与は今後妊娠28週までの投与が基本となるか(解説:前田裕斗氏)

 妊娠高血圧腎症予防のため、発症ハイリスク妊婦への妊娠初期からの低用量アスピリン投与は、標準的な治療になってきている。アスピリンの妊娠高血圧腎症予防機序はまだ不明な点もあるが、抗炎症作用や酸化ストレスの軽減から胎盤形成の障害を予防する効果があるとされ、そのため胎盤形成が行われる妊娠初期からの投与が望ましいと考えられている。一方、投与終了期間については一定した報告がなく、分娩時出血が増える可能性が報告されていることから36週での投与終了としている国が多い。しかし、アスピリン投与中に早産や妊娠高血圧腎症の進行から早期に分娩を行う必要が生じることもあり、臨床現場ではしばしばアスピリンの中止が分娩直前となり、出血に気を掛けながら分娩に臨むことになる場合がある。 本研究は妊娠高血圧腎症の高リスク患者のうち、妊娠中期のsFlt-1/PIGF比(可溶性fms様チロシンキナーゼ-1/胎盤増殖因子)が正常値、すなわち高リスク患者の中では比較的低リスクの妊婦を対象にアスピリン投与を妊娠28週まで行う介入詳と妊娠36週まで行う対照群に分け、妊娠高血圧腎症による分娩についての非劣性をアウトカムとしたランダム化比較試験を行った。結果は、中間解析までで対照群で常位胎盤早期剥離が介入群と比べ多く発症したことから試験終了となり、その時点での非劣性が示された。また、対照群では少なくとも1回以上の出血性合併症を起こす頻度が有意に高かった。詳しくは「早期妊娠高血圧腎症予防のアスピリンを24~28週で中止、発生率は?/JAMA」を参照されたい。 さまざまな副次的な結果が示されているが、最も重要なのは本研究の主目的である妊娠28週までのアスピリン投与が、妊娠36週までの投与に対して早発型妊娠高血圧腎症予防の点で非劣性を示したことだ。常位胎盤早期剥離やその他の合併症を軽減できるかどうかについては本研究ではサンプルサイズの問題などから結論づけることができない。この結果は臨床現場からすれば、早期に分娩となる可能性のある患者で低用量アスピリンを続けなくてもよいという点でありがたいといえる。妊娠高血圧腎症は遅発型もあるが、臨床的に最も問題になるのは今回の研究で扱われた早発型である点も臨床への応用においては都合がよい。 問題点としては、人種が異なるため日本人に適応できるかどうかが不明ということだろう。日本で大きな試験を行うというよりも、ある時点から28週までの投与に切り替えての比較を行う、あるいはすでに蓄積されたデータを後方視的に解析する形になると考えられる。今後日本からの研究にも期待したい。

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急性非特異的腰痛への鎮痛薬を比較~RCT98件のメタ解析/BMJ

 1万5千例以上を対象とした研究が行われてきたにもかかわらず、急性非特異的腰痛に対する鎮痛薬の臨床決定の指針となる質の高いエビデンスは、依然として限られていることを、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のMichael A. Wewege氏らがシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果、報告した。鎮痛薬は、急性非特異的腰痛に対する一般的な治療であるが、これまでのレビューではプラセボと鎮痛薬の比較で評価されており、鎮痛薬の有効性を比較したエビデンスは限られている。著者は、「臨床医と患者は、鎮痛薬による急性非特異的腰痛の管理に慎重となることが推奨される。質の高い直接比較の無作為化試験が発表されるまで、これ以上のレビューは必要ない」とまとめている。BMJ誌2023年3月22日号掲載の報告。無作為化比較試験98件、1万5千例以上について、ネットワークメタ解析 研究グループは、Medline、PubMed、Embase、CINAHL、CENTRAL、ClinicalTrials.gov、clinicaltrialsregister.eu、World Health Organization's International Clinical Trials Registry Platformを2022年2月20日時点で検索し、急性(6週未満)の非特異的腰痛を有する18歳以上の患者を対象とした鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬、パラセタモール[アセトアミノフェン]、オピオイド、抗けいれん薬、骨格筋弛緩薬、副腎皮質ステロイド)の無作為化比較試験(他の鎮痛薬、プラセボ、または未治療との比較)を特定した。 主要アウトカムは、治療終了時の腰痛強度(0~100スケール)、安全性(治療期間中のあらゆる有害事象の報告例数)。副次アウトカムは、腰部特異的機能(0~100スケール)、重篤な有害事象、治療中止とした。2人の評価者が独立して試験の特定、データ抽出、およびバイアスリスクの評価を行い、ランダム効果ネットワークメタ解析を実施した。エビデンスの信頼性は、CINeMA(Confidence in Network Meta-Analysis method)を用いて評価した。 無作為化比較試験98件(合計1万5,134例、女性49%)が特定され、69種類の薬剤または組み合わせが解析に組み込まれた(単剤療法42種類、併用療法27種類)。有効性に関するエビデンスの信頼性は「低い」または「非常に低い」 tolperisone(平均群間差:-26.1、95%信頼区間[CI]:-34.0~-18.2)、aceclofenac+チザニジン(-26.1、-38.5~-13.6)、プレガバリン(-24.7、-34.6~-14.7)およびその他の14種類の薬剤は、プラセボと比較して疼痛強度が低下したが、エビデンスの信頼性は「低い」または「非常に低い」であった。同様に、これらの薬剤の一部は有効性に有意差がないことが報告されたが、エビデンスの信頼性は「低い」または「非常に低い」であった。 安全性については、トラマドール(リスク比:2.6、95%CI:1.5~4.5)、パラセタモール+徐放性トラマドール(2.4、1.5~3.8)、バクロフェン(2.3、1.5~3.4)、パラセタモール+トラマドール(2.1、1.3~3.4)が、プラセボと比較して有害事象が増加する可能性があるが、エビデンスの信頼性は「中程度」から「非常に低い」であった。これら4種類の治療には、他の治療と比較して有害事象を増加させる可能性があるというエビデンスの信頼性が「高い」から「非常に低い」データもあった。副次アウトカムおよび薬剤クラスの2次解析でも、エビデンスの信頼性は「中程度」から「低い」ことが示された。

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新型コロナワクチン接種ガイダンスを改訂/WHO

 世界保健機関(WHO)は3月28日付のリリースで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種ガイダンスを改訂したことを発表した。今回の改訂は、同機関の予防接種に関する専門家戦略アドバイザリーグループ(SAGE)が3月20~23日に開催した会議を受け、オミクロン株流行期の現在において、ワクチンや感染、またはハイブリッド免疫によって、世界的にすべての年齢層でSARS-CoV-2の抗体保有率が増加していることが考慮されたものとなる。SARS-CoV-2感染による死亡や重症化のリスクが最も高い集団を守ることを優先し、レジリエンスのある保健システムを維持することに重点を置いた、新たなロードマップが提示された。 今回発表された新型コロナワクチン接種のロードマップでは、健康な小児や青年といった低リスク者に対するワクチン接種の費用対効果について検討されたほか、追加接種の間隔に関する推奨などが含まれている。 改訂の主な内容は以下のとおり。・ワクチン接種の優先度順に、高・中・低の3つグループを設定した。・高優先度群には、高齢者、糖尿病や心臓病などの重大な基礎疾患のある若年者、生後6ヵ月以上のHIV感染者や移植患者などの免疫不全者、妊婦、最前線の医療従事者が含まれる。この群に対して、ワクチンの最終接種から6~12ヵ月後に追加接種することを推奨している。・中優先度群には、健康な成人(50~60歳未満で基礎疾患のない者)と、基礎疾患のある小児と青年が含まれる。この群に対して、1次接種(初回シリーズ)と初回の追加接種を奨励している。・低優先度群には、生後6ヵ月~17歳の健康な小児と青年が含まれる。この群に対する新型コロナワクチンの1次接種と追加接種の安全性と有効性は確認されている。しかし、ロタウイルスや麻疹、肺炎球菌ワクチンなど、以前から小児に必須のワクチンや、中~高優先度群への新型コロナワクチンの確立されたベネフィットと比較すると、健康な小児や青年への新型コロナワクチン接種による公衆衛生上の影響は低く、疾病負荷が低いことを考慮して、SAGEはこの年齢層への新型コロナワクチン接種を検討している国に対し、疾病負荷や費用対効果、その他の保健の優先事項や機会費用などの状況要因に基づいて決定するように促している。・6ヵ月未満の乳児における重症COVID-19の負荷は大きく、妊婦へのワクチン接種は、母親と胎児の両方を保護し、COVID-19による乳児の入院の低減に効果的であるため推奨される。・SAGEは新型コロナの2価ワクチンに関する推奨事項も更新し、1次接種にBA.5対応2価mRNAワクチンの使用を検討することを推奨している。

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血小板無力症〔GT:Glanzmann thrombasthenia〕

1 疾患概要■ 定義血小板無力症(Glanzmann thrombasthenia:GT)は、1918年にGlanzmannにより初めて報告された1)一般的な遺伝性血小板障害(Inherited platelet disorders:IPD)であり、その中でも最もよく知られた先天性血小板機能異常症である。血小板インテグリンαIIbβ3(alphaIIbbeta3:いわゆる糖蛋白質[glycoprotein:GP]IIb/IIIaとして知られている)の量的欠損あるいは質的異常のため、血小板凝集機能の障害により主に中等度から重度の粘膜皮膚出血を伴う出血性疾患である。インテグリンαIIbβ3機能の喪失により、血小板はフィブリノーゲンや他の接着蛋白質と結合できなくなり、血小板による血栓形成不全、および多くの場合に血餅退縮が認められなくなる。 ■ 疫学血液凝固異常症全国調査では血液凝固VIII因子の欠乏症である血友病Aが男性出生児5,000人に約1人,また最も頻度が高いと推定される血漿蛋白であるvon Willebrand factor(VWF)の欠損症であるvon Willebrand病(VWD)については出生児1,000人に1人2、3)と報告される(出血症状を呈するのはその中の約1%と考えられている)。IPDは、これらの遺伝性出血性疾患の発症頻度に比べてさらに低くまれな疾患である。UK Haemophilia Centres Doctors Organisation(UKHCDO)に登録された報告2)では、VWDや血友病A・Bを含む凝固障害(87%)に比較して血小板数・血小板機能障害(8%)である。その8%のIPDの中ではGTは比較的頻度が高いが、明らかな出血症状を伴うことから診断が容易であるためと想定される(GT:5.4%、ベルナール・スーリエ症候群:3.7%、その他の血小板障害:90.1%)。凝固異常に比較して、IPDが疑われる症例ではその分子的な原因を臨床検査により正確に特定できないことも多く、その他の血小板障害(90.1%)としてひとくくりにされている。GTは、常染色体潜性(劣性)遺伝形式のために一般的にホモ接合体変異で発症し、ある血縁集団(民族)ではGTの発症頻度が高いことが知られている。遺伝子型が同一のGT症例でも臨床像が大きく異なり、遺伝子型と表現型の相関はない1、4)。血縁以外では複合ヘテロ接合によるものが主である。■ 病因(図1)図1 遺伝性血小板障害に関与する主要な血小板構造画像を拡大するインテグリンαIIbサブユニットをコードするITGA2B遺伝子やβ3サブユニットをコードするITGB3遺伝子の変異は、インテグリンαIIbβ3複合体の生合成や構造に影響を与え、GTを引き起こす。片方のサブユニットの欠落または不完全な構造のサブユニット生成により、成熟巨核球で変異サブユニットと残存する未使用の正常サブユニットの両方の破壊が誘導されるが、例外もありβ3がαvと結合して血小板に少量存在するαvβ3を形成する5)。わが国における血小板無力症では、欧米例とは異なりβ3の欠損例が少なく、αIIb遺伝子に異常が存在することが多くαIIbの著減例が多い。また、異なる家系であるが同一の遺伝子異常が比較的高率に存在することは単民族性に起因すると考えられている6)。このほかに、血小板活性化によりインテグリン活性化に関連した構造変化を促す「インサイドアウト」シグナル伝達や、主要なリガンドと結合したαIIbβ3がさらなる構造変化を起こして血小板形態変化や血餅退縮に不可欠な「アウトサイドイン」シグナル伝達経路を阻害する細胞内ドメインの変異体も存在する。細胞質および膜近位ドメインのまれな機能獲得型単一アレル変異体では、自発的に受容体の構造変化が促進される結果、巨大血小板性血小板減少症を引き起こす。「インサイドアウト」シグナルに重要な役割を果たすCalDAG-GEFI(Ca2+ and diacylglycerol-regulated guanine nucleotide exchange factor)[RASGRP2遺伝子]およびKindlin-3(FERMT3遺伝子)の遺伝子変異により、GT同様の臨床症状および血小板機能障害を発症する。この機能性蛋白質が関与する他の症候としては、CalDAG-GEFIは他の血球系、血管系、脳線条体に存在し、ハンチントン病との関連も指摘されており、Kindlin-3の遺伝子変異では、白血球接着不全III(leukocyte adhesion deficiency III:LAD-III)を引き起こす。LAD-III症候群は常染色体潜性(劣性)遺伝で、白血球減少、血小板機能不全、感染症の再発を特徴とする疾患である5)。■ 症状GTでは鼻出血や消化管出血など軽度から重度の粘膜皮膚出血が主症状であるが、外傷・出産・手術に関連した過剰出血なども認める。男女ともに罹患するが、とくに女性では月経や出産などにより明らかな出血症状を伴うことがある。実際、過多月経を訴える女性の50%がIPDと診断されており、さらにIPDの女性は排卵に関連した出血を起こすことがあり、子宮内膜症のリスクも高いとされている7)。■ 分類GTの分類では、インテグリンαIIbβ3の発現量により分類される。多くの症例が相当するI型では、ほとんどαIIbβ3が発現していないため、血小板凝集が欠如し血餅退縮もみられない。発現量は少ないがαIIbβ3が残存するII型では、血小板凝集は欠如するが血餅退縮は認める。また、非機能的なαIIbβ3を発現するまれなvariant GTなどがある1、5)。■ 予後GTは、消化管出血や血尿など重篤な出血症状を時折引き起こすことがあるが、慎重な経過観察と適切な支持療法により予後は良好である。GTの出血傾向は小児期より認められその症状は顕著であるが、一般的に年齢とともに軽減することが知られており、多くの成人症例で本疾患が日常生活に及ぼす影響は限られている。診断された患者さんが出血で死亡することは、外傷や他の疾患(がんなど)など重篤な合併症の併発に関連しない限りまれである1)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)血小板機能障害は1次止血の異常であり、主に皮膚や粘膜に発現することが多い。出血症状の状況(部位や頻度、期間、再発傾向、出血量)および重症度(出血評価ツール)を評価することは、出血症状を呈する患者の評価における最初の重要なステップである。出血の誘因が年齢や性別(月経)に影響するかどうかを念頭に、患者自身および家族の出血歴(術後または抜歯後の出血を含む)、服薬状況(非ステロイド性抗炎症薬)について正確な問診を行う。また、IPDを疑う場合は、出血とは無関係の症状、たとえば眼病変や難聴、湿疹や再発性感染、各臓器の形成不全、精神遅滞、肝腎機能など他器官の異常の可能性に注意を払い、血小板異常機能に関連した症候群型の可能性を評価できるようにする7)。【遺伝性血小板障害の診断】症候学的特徴(出血症状、その他症状、家族歴)血小板数/形態血小板機能検査(透過光血小板凝集検査法)フローサイトメトリー免疫蛍光法、電子顕微鏡法分子遺伝学的解析(Boeckelmann D, et al. Hamostaseologie. 2021;41:460-468.より作成)出血症状に対するスクリーニング検査は、比較的簡単な基礎的な臨床検査で可能であり非専門施設でも実施できる。血液算定、末梢血塗抹標本での形態観察、血液凝固スクリーニング、VWDを除外するためのVWFスクリーニング(VWF抗原、VWF活性[リストセチン補因子活性]、必要に応じて血液凝固第VIII因子活性)などを行う(図2)。上記のスクリーニング検査でIPDの可能性を検討するが、IPDの中には血小板減少を伴うものもあるので、短絡的に特発性血小板減少性紫斑病と診断しないように注意する。末梢血塗抹標本の評価では、血小板の大きさ(巨大血小板)や構造、他の血球の異常の可能性(白血球の封入体)について情報を得ることができ、これらが存在すれば特定のIPDが示唆される。図2 遺伝性血小板障害(フォン・ヴィレブランド病を含む)での血小板凝集のパターン、遺伝子変異と関連する表現型画像を拡大する血小板機能検査として最も広く用いられている方法は透過光血小板凝集検査法(LTA)であり、標準化の問題はあるもののLTAはいまだ血小板機能検査のゴールドスタンダードである。近年では、全自動血液凝固測定装置でLTAが検査できるものもあるため、LTA専用の検査機器を用意しなくても実施できる。図3に示すように、GTではリストセチンを除くすべてのアゴニスト(血小板活性化物質)に対して凝集を示さない。GTやベルナール・スーリエ症候群などの血小板受容体欠損症の診断に細胞表面抗原を測定するフローサイトメトリー(図4)は極めて重要であり、インテグリンαIIbβ3の血小板表面発現の欠損や減少が認められる。インテグリンαIIbβ3活性化エピトープ(PAC-1)を認識する抗体では、活性化不全が認められる8)。図3 血小板無力症と健常者の透過光血小板凝集検査法での所見(PA-200を用いて測定)画像を拡大する図4 血小板表面マーカー画像を拡大するGTでは臨床所見や上記の検査の組み合わせで確定診断が可能であるが、その他IPDを診断するための検査としては、顆粒含有量および放出量の測定(血小板溶解液およびLTA記録終了時の多血小板血漿サンプルの上清中での血小板因子-4やβトロンボグロブリン、セロトニンなど)のほか、血清トロンボキサンB2(TXB2)測定(アラキドン酸由来で生理活性物質であるトロンボキサンA2の血中における安定代謝産物)、電子顕微鏡による形態、血小板の流動条件下での接着および血栓形成などの観察、細胞内蛋白質のウェスタンブロッティングなどが参考となる。遺伝子検査はIPDの診断において、とくに病態の原因と考えられる候補遺伝子の解析を行い、主に確定診断的な役割を果たす重要な検査である。今後は、次世代シーケンサーの普及によるジェノタイピングにより、遺伝子型判定を行うことが容易となりつつあり、いずれIPDでの第一線の診断法となると想定される。ただしこれらの上記に記載した検査については、現段階では保険適用外であるもの、研究機関でしか行えないものも数多い。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)予防や治療の選択肢は限られているため、日常生活での出血リスクを最小限に抑えること、出血など緊急時の対応に備えることが必要である(図5)。図5 出血性疾患に対する出血の予防と治療画像を拡大する罹患している病名や抗血栓薬など避けるべき薬剤などの医療情報(カード)を配布することも有効である。この対応方法は、出血性疾患でおおむね同様と考えられるが、たとえばGTに対しては血小板輸血による同種抗体生成リスクを可能な限り避けるなど、個々の疾患において特別な注意が必要なものもある。この抗血小板抗体は、輸血された血小板除去やその機能の阻害を引き起こし、輸血効果を減弱させる血小板不応の原因となる。観血的手技においては、出血のリスクと処置のベネフィットなど治療効率の評価、多職種(外科医、血栓止血専門医、看護師、臨床検査技師など)による出血に対するケアや止血評価、止血対策のためのプロトコルの確立と遵守(血小板輸血や遺伝子組み換え活性化FVII製剤、抗線溶薬の使用、観血術前や出産前の予防投与の考慮)が不可欠である。IPD患者にとって妊娠は、分娩関連出血リスクが高いことや新生児にも出血の危険があるなどの問題がある。最小限の対策ですむ軽症出血症例から最大限の予防が必要な重篤な出血歴のある女性まで状況が異なるために、個々の症例において産科医や血液内科医の間で管理を計画しなければならない。重症出血症例に対する経膣分娩や帝王切開の選択なども依然として難しい。4 今後の展望出血時の対応などの臨床的な役割を担う医療機関や遺伝子診断などの専門的な解析施設へのアクセスを容易にできるようにすることが望まれる。たとえば、血友病のみならずIPDを含めたすべての出血性疾患について相談や診療可能な施設の連携体制の構築すること、そしてIPD診断については特殊検査や遺伝子検査(次世代シーケンサー)を扱う専門施設を確立することなどである。遺伝性出血性疾患の中には、標準的な治療では対応しきれない再発性の重篤な出血を伴う若い症例なども散見され、治療について難渋することがある。こうした症例に対しては、遺伝性疾患であるからこそ幹細胞移植や遺伝子治療が必要と考えられるが、まだ選択肢にはない。近い将来には、治療法についても革新的技術の導入が期待される。5 主たる診療科血液内科(血栓止血専門医)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター 血小板無力症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)国立成育医療研究センター 先天性血小板減少症の診断とレジストリ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)大阪大学‐血液・腫瘍内科学 血小板疾患研究グループ山梨大学大学院 総合研究部医学域 臨床検査医学講座(医療従事者向けのまとまった情報)1)Nurden AT. Orphanet J Rare Dis. 2006;1:10.2)Sivapalaratnam S, et al. Br J Haematol. 2017;179:363-376.3)日笠聡ほか. 日本血栓止血学会誌. 2021;32:413-481.4)Sandrock-Lang K, et al. Hamostaseologie. 2016;36:178-186.5)Nurden P, et al. Haematologica. 2021;106:337-350.6)冨山佳昭. 日本血栓止血学会誌. 2005;16:171-178.7)Gresele P, et al. Thromb Res. 2019;181:S54-S59.8)Gresele P, et al. Semin Thromb Hemost. 2016;42:292-305.公開履歴初回2023年3月30日

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よくわかる老年腫瘍学

これからの高齢者がん診療のスタンダード!高齢がん患者の「特徴(疫学、症状、社会経済的背景)」、機能評価の方法や治療法の選択、悪化を防ぐアプローチなどの「主治医として知っておきたいポイント」、「QOL・QOD(quality of death)」、老年腫瘍学の「教育」、高齢者を対象とした「臨床研究」など、“高齢者のがん”にまつわるトピックを網羅しています。症例提示では、医療現場での実際のアプローチが理解できるように解説しています。本書は、老年腫瘍学を学ぼうとするすべての学生・医療者のためのテキストを目指し、老年医学・臨床腫瘍学・支持医療のエキスパートが協力して編集、執筆、原稿チェックを行いました。高齢者のがん診療に携わる医療関係者必読の1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    よくわかる老年腫瘍学定価6,600円(税込)判型B5判頁数336頁発行2023年3月編集日本がんサポーティブケア学会電子版でご購入の場合はこちら

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大腸がん診療における遺伝子関連検査等のガイダンス 第5版 2023年3月

これからの大腸がん診療、遺伝子検査の実施に必須!最新の大腸がん診療における遺伝子関連検査(RAS変異・BRAF変異検査、HER2検査、ミスマッチ修復機能欠損の判定、包括的ゲノムプロファイリング検査、リキッドバイオプシーなど)について、適切な実施と治療への反映を解説。さらに、現在開発中の血管新生因子、DNAメチル化と多遺伝子アッセイ、腫瘍微小環境についても詳細に掲載し、これからの大腸がん診療に欠かせないガイダンスとなっています。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    大腸がん診療における遺伝子関連検査等のガイダンス 第5版 2023年3月定価2,420円(税込)判型B5判頁数116頁(図数:11枚)発行2023年3月編集日本臨床腫瘍学会

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ICIの継続判断にも有用、日本初のOnco-cardiologyガイドライン発刊

 本邦初となる『Onco-cardiologyガイドライン』が第87回日本循環器学会学術集会の開催に合わせて3月10日に発刊された。これまで欧州ではESC(European Society of Cardiology、欧州心臓病学会)などがガイドラインを作成・改訂しており、国内でもガイドライン発刊が切望されていたことから、日本臨床腫瘍学会と日本腫瘍循環器学会が協働しMindsに準拠したものを作成した。今回、学術集会の会長企画シンポジウム6「OncoCardiology:診断と治療Up-to-Date」において、Onco-cardiologyガイドラインのポイントについて発表された。Onco-cardiologyガイドラインは重要臨床課題10項目を選定 Onco-cardiologyガイドラインの目的は、(1)がん診療において心機能を正確に評価し、心血管疾患を適切に管理すること、(2)がん治療を中断することなく可能な限り継続することで、本ガイドラインの利用によってがん患者の全生存率とQOL改善が期待される。 Onco-cardiologyガイドラインは重要臨床課題を以下のように10項目を選定し、がん患者が薬物治療を行う過程からその後のがん治療関連心血管毒性(静脈血栓塞栓症、肺高血圧症、心不全)発現時の対応方法に関するquestionが盛り込まれている(p.9 総説1-9参照)。<重要臨床課題>1)がん薬物療法中の心機能のモニター2)心血管イベントを発症した患者に対する薬物療法の選択3)トラスツズマブのマネジメント4)血管新生阻害薬のマネジメント5)プロテアソーム阻害薬のマネジメント6)免疫チェックポイント阻害薬のマネジメント7)がん薬物療法における静脈血栓塞栓症のマネジメント8)がん薬物療法における肺高血圧症のマネジメント9)心毒性を有するがん薬物療法のマネジメント10)がん薬物療法における心血管イベントの予防 上記の2)を担当した矢野 真吾氏(東京慈恵会医科大学腫瘍・血液内科 診療部長/教授)は、「がん薬物療法中の心血管イベントを理由にがん薬物療法を中止することは再発率の増加や全生存期間の短縮につながることから、『Background question(BQ)2:がん薬物療法中に心血管イベントを発症した患者に対して、がん薬物療法を継続することは推奨されるか?』を設定した」とコメント。また、「欧米のガイドラインと比較して、Onco-cardiologyガイドラインはエビデンスのあるquestionはシステマティックレビューを行いCQとしたが、エビデンスのないquestionはBQまたはfuture research question(FRQ)にした点に注目してほしい」と述べ、「がん薬物療法が有効でかつ治療継続が可能と判断できる場合は、モニタリングと対症療法を行いながらがん治療の継続を検討する。治療継続が困難な場合は代替療法について検討することをこのBQのステートメントにした」と説明した。Onco-cardiologyガイドラインにICIと心筋炎の関係性 Onco-cardiologyガイドラインで、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と心筋炎の関係性について解説した庄司 正昭氏(国立がん研究センター中央病院総合内科・循環器内科)は、「ICIによる心筋炎は直接的なものと間接的なものがあるが、いずれもスクリーニングにはトロポニンや心電図などが重要」と話し、「トロポニンはICI心筋炎患者の94%で上昇を認めたが、トロポニンが上昇しても臨床的な心筋障害を認めないケースも報告されている。また、心電図異常はICI心筋炎患者の89%で認められた1)」と述べた(FRQ6-1:ICI投与中の心筋障害診断のスクリーニングは有用か?)。 さらに、心筋障害発生時のステロイドの使用(BQ6-2:ICIによる心筋障害発生時、その治療としてステロイド療法は有用か?)について、「使用すべき種類・投与経路・用量は定まっていないが有用な可能性があるため、ステロイドを選択しない手はない」とコメントし、座長ならびに演者を務めた阿部 純一氏(MDアンダーソンがんセンター 教授)からの“ICIで発症リスクの高い虚血性心疾患との鑑別”に関する問い対して、同氏は「虚血性心疾患では胸痛などの症状が見られることから、それらの患者の訴えにしっかり耳を傾けることがスクリーニング検査とともに重要」と回答した。Onco-cardiologyガイドラインにがん患者の高血圧治療 高血圧の視点からOnco-cardiologyについて解説した赤澤 宏氏(東京大学医学部付属病院 循環器内科)によると、がん患者における高血圧の管理や治療に関するエビデンスがほとんどない状況だという。実際に、高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)では『第7章:他疾患を合併する高血圧』にも項目立てられておらず、『第13章:二次性高血圧-薬剤誘発性高血圧 4)その他』の1つとして、がん分子標的薬、主として血管新生阻害薬(抗VEGF抗体医薬あるいは複数のキナーゼに対する阻害薬など)により高血圧が誘発される。発症率については薬剤、腫瘍の種類などにより異なるが、これらの薬剤使用時には血圧変化に注意する。通常の降圧薬を用いた治療を行うと、ESCのポジションペーパー同様の記載がなされている。このような現状を踏まえ、「JSH2025年改訂版には腫瘍循環器としてのCQを提案していきたい」と意気込んだ。なお、Onco-cardiologyガイドラインでは、『BQ4:血管新生阻害薬投与中の患者に対し、血圧管理が必要か?』が設定されており、血管新生阻害薬投与中の患者においても、非がん患者と同等の血圧コントロールをすることが望ましく、「がん患者における高血圧治療のエビデンスは乏しく、降圧治療の適応や強度は、がんの治療内容や予後、パフォーマンスステイタス、年齢や併存疾患、臓器障害、脳心血管リスクなどのさまざまな背景を考慮して、個別に対応する必要がある」と強く訴えた。

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若年者でOTC薬の問題増加、濫用恐れのある医薬品の範囲拡大へ【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第107回

若年者のOTC医薬品の濫用が問題になっている、というのは今に始まったことではありませんが、具体的にその状況を想像したり解決策を考案したりできる薬剤師はそれほど多くはないでしょう。恥ずかしながら私もそうです。この4月より、濫用などの恐れのある医薬品の指定範囲が拡大されますので、現在の問題や議論を紹介します。厚生労働省は3月8日に開いた「医薬品の販売制度に関する検討会」で、若者の間で増加している鎮咳薬や総合感冒薬といったOTC薬の濫用について、本人確認などの販売方法や、複数購入の防止、包装単位や製品表示の変更といった対応策の議論に着手した。第1類と第2類のネット販売を解禁し、危険ドラッグの取り締まりを強化した14年以降、OTC薬で中毒を起こした救急搬送事例が「増加傾向にある」と指摘。現状では多くの濫用のおそれのある成分が、薬剤師などによる情報提供が努力義務とされる「指定第2類」に分類されているが、さらなる対策の必要性を投げかけた。(2023年3月9日付 RISFAX)記事にある「医薬品の販売制度に関する検討会」の第1回は2023年2月に開催され、現在の医薬品の販売方法などが紹介されました。第2回の今回は、若者のOTC医薬品の濫用による薬物依存治療を行う医師の資料が提供され、その切迫性が浮き彫りになりました。その医師による報告内容は以下のとおりです。コロナ禍でOTC医薬品の過量服薬による救急搬送が2倍に増加した。OTC医薬品を主たる薬物とする依存症患者が急増した。「過去1年以内にOTC医薬品の濫用経験がある」という高校生は約60人に1人(2021~22年の調査)。濫用する高校生は、男性より女性が多く、社会的に孤立している可能性が高い。日本のOTC医薬品は含有成分が多い。恐怖教育は有効ではなく、薬剤師・登録販売者による声かけなどのソーシャルスキル・アプローチが有効。高校生の1%以上がOTC医薬品の濫用経験があり、またこの2~3年で状況が悪化していると知り、現状にぞっとしたのは私だけではないはずです。濫用の恐れのある医薬品の具体的な成分としては、エフェドリン、コデイン、ジヒドロコデイン、プソイドエフェドリン、メチルエフェドリン、ブロムワレリル尿素があります。現在はコデイン、ジヒドロコデイン、メチルエフェドリンは鎮咳去痰薬に限る指定範囲ですが、2023年4月1日より、鎮咳去痰薬に限らず総合感冒薬なども指定範囲となります。これらの6成分は、一般用医薬品のうち第1類医薬品と第2類医薬品に分類されているため、インターネット販売も可能です。第2類医薬品は患者・購入者への情報提供は義務ではなく努力義務ですので、意外と軽いなと思います。一方で、薬機法施行通知には、購入者が高校生や中学生を含む子供である場合は、その氏名や年齢を確認するとともに使用状況を確認する旨の記載があり、これらが確認できない場合は販売を行わないとされています。検討会に出席した専門家からは、インターネットも実店舗も含め、販売歴の記録や本人確認をしなければ買えない仕組みの構築が必要というコメントがありました。今後は販売方法の変更、複数購入の防止、包装単位や製品表示の変更などの仕組みを変える検討が行われるのではないかと想像します。これから春になり新しい環境での生活が始まると、若い人たちには新しい誘惑があるかもしれません。この問題の周知や声かけの強化など、薬局ですぐにできることも抑止力の1つになると思います。

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がん免疫療法ガイドライン 第3版

4年ぶりの改訂! がん免疫療法の最新エビデンスを網羅的に解説!適応拡大が急速に進むがん免疫療法の臓器横断的ガイドラインとして4年ぶりの大改訂となる第3版では、新たに登場した免疫チェックポイント阻害薬に加え、BiTE抗体やCAR-T細胞療法に関するエビデンスを収載しています。また、近年急速に蓄積している臨床研究成果のシステマティックレビューに基づいた記載が大幅に追加されました。免疫関連有害事象についても最新かつ適切な情報を提供しています。さらに、5つの臓器横断的Background Question(BQ)を新設し、より充実した内容となりました。治療医のみならず、がん免疫療法に携わるすべての医療者に役立てていただきたい1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    がん免疫療法ガイドライン 第3版定価3,300円(税込)判型B5判頁数264頁(図数:29枚、カラー図数:5枚)発行2023年3月編集日本臨床腫瘍学会

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臨床心理士と精神科医の夫婦が子育てで大事なこと全部まとめてみました

シネマセラピーでおなじみ荒田先生のマンガでよくわかる!0~18歳の子育て大全CareNet.comの連載「シネマセラピー」でおなじみの精神科医、荒田 智史先生。シネマセラピーでは、子育てをテーマとして解説いただくこともありましたが、この度「科学的根拠に基づく子育て」を掲げた著書が発売されました。「厳しくすべきか見守るべきか」「親がリードすべきか」「子どものペースに合わせるべきか」など、成長に伴って変化していく子育ての悩みについて、発達心理学、行動遺伝学、進化心理学という3つの視点で解決する本書。非認知能力、自己肯定感、自己効力感、子供のHSP、教育虐待、性教育、中学受験、反抗、思春期危機、レジリエンス、いじめ、不登校など…乳児期~思春期の子育てで気になる課題と対処をマンガでわかりやすく解説しています。本書は、子育てに悩む親だけでなく、医療関係者(精神科医や小児科医など)の方々にもお役立ていただける内容となっているため、ぜひ読んでいただきたい一冊です。また、病院の待合室に置いていただければ、子育てでお困りの患者さんにもお役立ていただけます。著者・荒田よりご挨拶臨床心理士で妻の杉野珠理との共著です。私たちがいっしょになって、みなさんのお悩みやご心配に全力でお答えしています。エビデンスだけでなく、臨床的なケース、そして夫婦としてのリアルな子育ての現実(ときに葛藤!?)も盛り込みました。この本が、患者さんへの子育てのアドバイス、そしてみなさん自身の子育ての参考になればうれしい限りです。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    臨床心理士と精神科医の夫婦が子育てで大事なこと全部まとめてみました定価1,980円(税込)判型四六判頁数352頁発行2023年3月著者杉野 珠理、荒田 智史

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出産後の母親へのオピオイド処方、乳児の短期有害アウトカムに関連なし/BMJ

 カナダ・サニーブルック保健科学センターのJonathan S. Zipursky氏らは、出産後の母親へのオピオイド処方が、児の有害アウトカムの短期的リスクを増加させるかどうかを検討する住民ベースコホート研究を行い、両者間に関連はないことを明らかにした。北米では、ほとんどの母親が出産後に母乳で育児を開始する。乳児の呼吸器系または中枢神経系の抑制を引き起こすと予想されない量ではあるが、すべてのオピオイドは母乳へ移行する。母乳で育てられた乳児のオピオイド毒性に関する報告が散見されているが、母乳中のオピオイドを大量摂取したためと考えられていた。BMJ誌2023年3月15日号掲載の報告。出産後7日以内のオピオイド処方と乳児の30日以内有害アウトカムを検討 研究グループは、ICES MOMBABY(カナダ・オンタリオ州の全出生児とその母親の98%以上を特定可能)、Narcotics Monitoring Systemなどの各種データベースを用い、2012年9月1日~2020年3月31日の期間にオンタリオ州の病院で出産し7日以内に生存退院した母子86万5,691組を特定し、退院後7日以内にオピオイドが処方された母親とその児(処方群)、ならびに処方群の母親と年齢、出産年、分娩様式などを傾向スコアマッチング法で適合させた、オピオイドが処方されなかった母親とその児(非処方群)について解析した。 主要アウトカムは、指標日(オピオイド処方群は処方日、非処方群は処方群とマッチさせた模擬的な日付)から30日以内の乳児の入院、副次アウトカムは同期間の乳児の救急外来受診、すべての外傷による入院、新生児集中治療室(ICU)への入室、蘇生または呼吸補助を伴う入院、全死因死亡とした。解析には、Cox比例ハザード回帰モデルを使用した。死亡を含む有害アウトカムに有意差なし オピオイド処方群8万5,675例(オピオイドを処方された母親8万5,852例の99.8%)と、非処方群8万5,675例が解析対象となった。 30日以内に入院した乳児は、オピオイド処方群で2,962例(3.5%)、非処方群で3,038例(3.5%)であり、オピオイド処方群の乳児は非処方群の乳児と比較して指標日から30日以内に入院する可能性は高くなかった(ハザード比[HR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.93~1.03)。 指標日から30日以内の救急外来受診は、オピオイド処方群9,053例(10.6%)、非処方群8,714例(10.2%)で、オピオイド処方群がやや高かったが(HR:1.04、95%CI:1.01~1.08)、その他の乳児の有害アウトカムに差は確認されず、また、乳児死亡は報告されなかった。 結果を踏まえて著者は、「特定の母親への出産後の短期オピオイド使用に注意を払うことを支持するが、臨床医と両親は不安を抱く必要はなく、乳児への有害リスクは低い」と述べている。

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二次性僧帽弁逆流へのTEER、5年間の評価/NEJM

 ガイドラインに基づく最大用量の薬物療法後も心不全と中等度~重度の二次性僧帽弁逆流症が認められる患者において、僧帽弁の経カテーテル的edge-to-edge修復術(TEER)は薬物療法単独と比較し、フォローアップ5年間での心不全による入院リスクを半減し、全死因死亡リスクも約30%低減した。米国・マウントサイナイ・アイカーン医科大学のGregg W. Stone氏らが、614例を対象に行った無作為化比較試験の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2023年3月5日号掲載の報告。米国とカナダ78ヵ所でTEER vs.薬物療法単独の無作為化比較試験 研究グループは、2012年12月27日~2017年6月23日に米国とカナダにある78ヵ所の医療機関を通じて、ガイドラインに基づく最大用量の薬物療法を実施後、心不全と中等度~重度の二次性僧帽弁逆流症が認められる患者614例を登録した。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはTEERを(デバイス群302例)、もう一方には薬物療法のみ(対照群312例)を行い追跡調査した。 主要有効性エンドポイントは、フォローアップ2年間の、心不全によるすべての入院だった。また、すべての心不全入院の年間発生率、全死因死亡年間発生率、死亡または心不全入院のリスク、および安全性、その他のアウトカムについて5年間評価した。心不全入院年間発生率のハザード比0.53 5年間の評価に基づく心不全入院年間発生率は、デバイス群33.1%、対照群57.2%だった(ハザード比[HR]:0.53、95%信頼区間[CI]:0.41~0.68)。5年間の全死因死亡率は、デバイス群57.3%、対照群67.2%だった(0.72、0.58~0.89)。 死亡または心不全入院の発生率は、デバイス群73.6%、対照群91.5%だった(HR:0.53、95%CI:0.44~0.64)。 デバイス特有の安全性イベント発生率は、5年間で1.4%(4/293例)報告され、全イベントが術後30日以内の発生だった。

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第155回 コロナ罹患後症状をメトホルミンが予防 / コロナで父親の顔がわからなくなった女性

long COVIDを糖尿病治療薬メトホルミンが予防昔ながらの糖尿病治療薬メトホルミンの新型コロナウイルス感染症罹患後症状(long COVID)予防効果が米国の無作為化試験で認められ1)、「画期的(breakthrough)」と評するに値する結果だと有力研究者が称賛しています2)。COVID-OUTと呼ばれる同試験では駆虫薬として知られるイベルメクチンとうつ病治療に使われるフルボキサミンも検討されましたが、どちらもメトホルミンのようなlong COVID予防効果はありませんでした。COVID-OUT試験は2020年の暮れ(12月30日)に始まり、被験者はメトホルミン、イベルメクチン、フルボキサミン、プラセボのいずれかに割り振られました。被験者、医師、その他の試験従事者がその割り振りを知らない盲検状態で実施されました。また、被験者をどこかに出向かせることがなく、試験従事者と直接の接触がない分散化(decentralized)方式の試験でもあります。募ったのは肥満か太り過ぎで年齢が30~85歳、コロナ発症から7日未満、検査でコロナ感染が判明してから3日以内の患者です。箱に入った服用薬一揃いは試験参加決定の当日または翌日に被験者に届けられ、結果的に試験参加同意から最初の服用までは平均して1日とかかりませんでした。メトホルミンの服用日数は14日間で、用量は最初の日は500mg、2~5日目は500mgを1日に2回、6~14日目は朝と晩にそれぞれ500mgと1,000mgです。メトホルミン投与群とプラセボ群合わせて1,125例がlong COVIDの検討に協力することを了承し、1ヵ月に1回連絡を取ってlong COVIDの診断があったかどうかが300日間追跡されました。その結果、およそ12例に1例ほどの8.4%がその診断に至っていました。肝心のメトホルミン投与群のlong COVID発生率はどうかというと約6%であり、プラセボ群の約11%に比べて40%ほど少なく済んでいました。発症からより日が浅いうちからのメトホルミン開始はさらに有効で、発症から4日未満で開始した人のlong COVID発現率は約5%、4日以上経ってから開始した人では約7%でした。上述のとおりイベルメクチンやフルボキサミンのlong COVID予防効果は残念ながら認められませんでした。COVID-OUT試験のlong COVID結果報告はまだプレプリントであり、The Lancet on SSRNに提出されて審査段階にあります。メトホルミンの効果はlong COVIDの枠にとどまらずコロナ感染の重症化予防も担いうることが他でもないCOVID-OUT試験で示されています。その結果はすでに査読が済んで昨夏2022年8月にNEJM誌に掲載されており、第一の目的である低酸素血症、救急科(ED)受診、入院、死亡の予防効果は認められなかったものの、メトホルミン投与群のED受診、入院、死亡は有望なことにプラセボ群より42%少なくて済みました3)。さらに試験を続ける必要はあるものの、値頃で取り立てるほど副作用がないことを踏まえるにメトホルミンが用を成すことは今や確からしいことをCOVID-OUT試験結果は示していると米国屈指の研究所Scripps Research Translational Instituteの所長Eric Topol氏は述べています2)。Topol氏はbreakthroughという表現を安易に使いませんが、安価で安全なメトホルミンのCOVID-OUT試験での目を見張る効果はその表現に見合うものだと讃えています。メトホルミンの効果を重要と考えているのはTopol氏だけでなく、たとえばハーバード大学病院(Brigham and Women's Hospital)の救急科医師Jeremy Faust氏もその1人であり、「コロナ感染が判明したらすぐにメトホルミン服用を開始する必要があるかと肥満か太り過ぎの患者に尋ねられたら、COVID-OUT試験結果を根拠にして “必要がある”と少なくとも大抵は答える」と自身の情報配信に記しています4)。コロナ感染で顔がわからなくなってしまうことがあるコロナ感染で匂いや味がわからなくなることがあるのはよく知られていますが、顔が区別できなくなる相貌失認(prosopagnosia)が生じることもあるようです。神経系や振る舞いの研究結果を掲載している医学誌Cortexに相貌失認になってしまった28歳のコロナ感染女性Annie氏の様子や検査結果などをまとめた報告が掲載されました5,6)。Annie氏は2020年3月にコロナ感染し、その翌月4月中ごろまでには在宅で働けるほどに回復しました。コロナ感染してから最初に家族と過ごした同年6月に彼女は父親が誰かわからず、見た目で叔父と区別することができませんでした。そのときの様子をAnnie氏は「誰か知らない顔の人から父親の声がした(My dad's voice came out of a stranger's face)」と説明しています。相貌失認に加えて行きつけのスーパーまでの道で迷うことや駐車場で自分の車の場所が分からなくなるという方向音痴のような位置把握障害(navigational impairment)もAnnie氏に生じました。また、long COVIDの主症状として知られる疲労や集中困難などにも見舞われました。Annie氏のような症状はどうやら珍しくないようで、long COVID患者54例に当たってみたところ多くが視覚認識や位置把握の衰えを申告しました。脳損傷後に認められる障害に似た神経精神の不調がコロナ感染で生じうるようだと著者は言っています。参考1)Outpatient Treatment of COVID-19 and the Development of Long COVID Over 10 Months: A Multi-Center, Quadruple-Blind, Parallel Group Randomized Phase 3 Trial. The Lancet on SSRN :Received 6 Mar 2023.2)'Breakthrough' Study: Diabetes Drug Helps Prevent Long COVID / WebMD3)Carolyn T, et al. N Engl J Med. 2022;387:599-610.4)Metformin found to reduce Long Covid in clinical trial. Jeremy Faust氏の配信5)Kieseler ML, et al. Cortex. 9 March 2023. [Epub ahead of print]6)Study Says Long COVID May Cause Face Blindness / MedScape

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治療抵抗性うつ病に対するガイドラインの推奨事項

 うつ病は、重篤かつ広範に及ぶメンタルヘルス関連疾患である。うつ病は、2つ以上の抗うつ薬による治療でも寛解が得られず、治療抵抗性うつ病に至ることも少なくない。ブラジル・サンパウロ大学のFranciele Cordeiro Gabriel氏らは、診断および治療の改善を目的に作成された臨床診療ガイドライン(CPG)における治療抵抗性うつ病に対する推奨事項について、それらの品質および比較をシステマティックに評価した。その結果、うつ病治療のための高品質なCPGにおいて、治療抵抗性うつ病の定義および使用が統一されておらず、治療抵抗性うつ病に対する共通したアプローチも見当たらなかった。PLOS ONE誌2023年2月6日号の報告。 CPGを作成している専門データベースおよび組織を検索した。CPGの品質および推奨事項は、独立した研究者によりAGREE IIおよびAGREE-REXを用いて評価した。治療抵抗性うつ病の定義および推奨事項を含む高品質なCPGのみを対象に、divergenciesとconvergenciesおよび長所と短所を調査した。 主な結果は以下のとおり。・高品質の推奨事項を含む高品質のCPG7件のうち、特定の治療抵抗性うつ病の定義を含む2つのCPG(ドイツの国民診療ガイドライン[NVL]、米国の退役軍人省および国防総省の臨床診療ガイドライン[VA/DoD])を選択した。・これら2つのCPG間で収束する治療戦略は、見当たらなかった。・電気けいれん療法は、NVLで推奨されているもののVA/DoDでは推奨されておらず、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法は、VA/DoDで推奨されているもののNVLでは推奨されていなかった。・NVLでは、リチウム、甲状腺または他のホルモン治療、精神刺激薬、ドパミン作動薬の使用を推奨していたが、VA/DoDでは、これらの薬剤による増強治療を記載していなかった。・VA/DoDでは、ケタミンまたはesketamineの使用を推奨していたが、NVLでは、これらの薬剤について言及されていなかった。・その他の違いでは、抗うつ薬の併用、心理療法による増強治療、入院の必要性の評価などは、NVLのみで推奨されていた。

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患者さんのための胃がん治療ガイドライン 2023年版

19年ぶりの改訂!検査から治療まで、患者さんが知りたい胃がんのことを丁寧に解説胃がんの専門家である日本胃癌学会の医師が、患者さんやご家族のために胃がんの検査から手術、内視鏡治療、薬物療法などの治療まで、科学的な根拠を基に丁寧に解説した、安心できる1冊です。19年ぶりの改訂で、Q&Aが大幅に増え、手術後の生活や薬物療法で使う薬の種類など、患者さんの疑問により多くお応えできるようになりました。医療者の方にも、患者さんとのコミュニケーションツールとしておすすめです。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    患者さんのための胃がん治療ガイドライン 2023年版定価1,540円(税込)判型B5判頁数112頁(カラー図数:42枚)発行2023年2月編集日本胃癌学会

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抗精神病薬とプロラクチンレベル上昇が骨折リスクに及ぼす影響

 抗精神病薬による治療が必要な患者は、骨粗鬆症関連の脆弱性骨折を含む骨折リスクが高いといわれている。これには、人口統計学的、疾患関連、治療関連の因子が関連していると考えられる。インド・National Institute of Mental Health and NeurosciencesのChittaranjan Andrade氏は、抗精神病薬治療と骨折リスクとの関連を調査し、プロラクチンレベルが骨折リスクに及ぼす影響について、検討を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2023年1月30日号掲載の報告。 主な結果は以下のとおり。・たとえば、認知症患者では、認知機能低下や精神運動興奮により転倒リスクが高く、統合失調症患者では、身体的に落ち着きがない、身体攻撃に関連する外傷リスクが高く、抗精神病薬服用患者では鎮静、精神運動興奮、動作緩慢、起立性低血圧に関連する転倒リスクが高くなる。・抗精神病薬は、長期にわたる高プロラクチン血症により生じる骨粗鬆症に関連する骨折リスクを高める可能性がある。・高齢者中心で実施された36件の観察研究のメタ解析では、抗精神病薬の使用が大腿骨近位部骨折リスクおよび骨折リスクの増加と関連していることが示唆された。この結果は、ほぼすべてのサブグループ解析でも同様であった。・適応疾患と疾患重症度の交絡因子で調整した観察研究では、統合失調症患者の脆弱性骨折は、1日投与量および累積投与量が多く、治療期間が長い場合に見られ、プロラクチンレベルを維持する抗精神病薬よりも、上昇させる抗精神病薬を使用した場合との関連が認められた。また、プロラクチンレベル上昇リスクの高い抗精神病薬を使用している患者では、アリピプラゾール併用により保護的に作用することが示唆された。・骨折の絶対リスクは不明だが、患者の年齢、性別、抗精神病薬の使用目的、抗精神病薬の特徴(鎮静、精神運動興奮、動作緩慢、起立性低血圧に関連するリスク)、1日投与量、抗精神病薬治療期間、ベースライン時の骨折リスク、その他のリスク因子により異なると考えられる。・社会人口統計学的、臨床的、治療に関連するリスク因子に関連する転倒および骨折リスクは、患者個々に評価し、リスクが特定された場合には、リスク軽減策を検討する必要がある。・プロラクチンレベルの上昇リスクの高い抗精神病薬による長期的な治療が必要な場合、プロラクチンレベルをモニタリングし、必要に応じてプロラクチンレベルを低下させる治療を検討する必要がある。・骨粗鬆症が認められた場合には、脆弱性骨折を予防するための調査やマネジメントが求められる。

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新型コロナワクチン、米国政府の投資額はいくら?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNAワクチンの開発、製造、購入に関連した米国政府の投資額を調べた結果、少なくとも319億ドルに上ることを、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のHussain S. Lalani氏らが明らかにした。このうち、COVID-19パンデミック前の30年間(1985~2019年)にわたり基礎的研究に投じmRNAワクチンの重要な開発に直接寄与した投資額は、3億3,700万ドルだったという。また、2022年3月までのパンデミック中に投じた金額は少なくとも316億ドルで、臨床試験(6%)、ワクチン開発(2%)、ワクチン購入(92%)に充てられていた。著者は「これらの公的投資は何百万人もの命を救うことにつながり、また将来のパンデミックへの備えとCOVID-19をしのぐ疾患を治療する可能性ももたらし、mRNAワクチン技術の開発に見合ったものであった」と述べ、「社会全体の健康を最大化するために、政策立案者は、公的資金による医療技術への公平かつグローバルなアクセスを確保しなければならない」とまとめている。BMJ誌2023年3月1日号掲載の報告。NIHデータやRePORTERなどでワクチン開発への研究助成金などを算出 研究グループは1985年1月~2022年3月にかけて、米国国立衛生研究所(NIH)の資金提供に関するデータや研究成果を収載したReport Portfolio Online Reporting Tool Expenditures and Results(RePORTER)などを基に、米国政府がmRNA COVID-19ワクチンの開発に投じた公的資金を算出した。 政府の助成金を、mRNA COVID-19ワクチン開発の4つの重要なイノベーション(脂質ナノ粒子、mRNA合成または改良、融合前スパイクタンパク質構造、mRNAワクチンバイオテクノロジー)への主任研究者、プロジェクトのタイトルおよびアブストラクトをベースとした直接的または間接的な関与、あるいは関与が認められないもので評価した。 同ワクチン開発研究に対する直接的な公的投資額について、パンデミック前の1985~2019年と、パンデミック後の2020年1月~2022年3月で分類し評価した。COVID-19パンデミック後、ワクチン購入に292億ドル投資 NIHによるmRNA COVID-19ワクチンの開発に直接関連した研究助成金は、34件だった。これらの助成金と、その他の米国政府助成金・契約金の合計は、319億ドルだった。そのうち、COVID-19パンデミック前の投資額は3億3,700万ドルだった。 パンデミック前、NIHはmRNAワクチン技術の基礎的研究や橋渡し(translational)科学研究に対し1億1,600万ドル(35%)を投資。米国生物医学先端研究開発局(Biomedical Advanced Research and Development Authority:BARDA)は1億4,800万ドル(44%)、米国国防総省は7,200万ドル(21%)を、それぞれワクチン開発に投資した。 パンデミック後には、米国公的資金はワクチン購入に292億ドル(92%)を、臨床試験支援に22億ドル(7%)を、製造に加え基礎的研究および橋渡し科学研究に1億800万ドル(1%未満)を費やしていた。

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第30回 市販薬にご用心!?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)患者さんの内服薬は処方薬以外も確認しよう!2)注意が必要な市販薬を知ろう!【症例】23歳女性。特記既往はなく、手術歴もない。仕事中に頭痛、嘔気を自覚した。しばらく様子をみていたが症状が改善せず、嘔吐も認めたため、仕事を早退し、外来を受診した。●来院時のバイタルサイン意識清明血圧108/61mmHg脈拍102回/分(整)呼吸18回/分SpO299%(RA)体温36.1℃中毒の入り口中毒患者さんはどのように来院するでしょうか。薬を過量に内服したことを自己申告ないし発見され来院する場合も多いですが、その他、意識障害、嘔気・嘔吐、頭痛、動悸、ふらつきなどを主訴に来院します。また、重篤な場合にはショック、痙攣、心停止状態で搬送されてくることもあります。今回は、どこでも来院しうる一見軽症そうにみえる中毒患者さんに関して取り上げます。市販薬の現状コロナ禍となり、自宅に解熱鎮痛薬や総合感冒薬を常備している方も多くなりました。発熱や咽頭痛を主訴に来院した患者さんに対して、アセトアミノフェンなどを処方するとともに、今後に備えて患者さん、ご家族へ市販薬を常備するようにオススメした方も少なくないと思います。適切に使用すれば基本的には問題ありませんが、内服量や方法を誤ってしまうと、いくら市販薬といえども危険なことはいくらでもあります。薬局やコンビニ、さらにはインターネット上で総合感冒薬などの市販薬はいくらでも入手可能です。規制がかかっている薬剤もありますが、実際のところ抜け穴はいくらでもあり、購入しようと思えば購入できてしまっているのが現状でしょう。注意が必要な市販薬処方薬ではベンゾジアゼピン系などの薬に注意が必要ですが、市販薬ではどのような薬剤が問題となっているのでしょうか。表11)が代表的な薬剤であり、みなさんもよくみかけると思います。実際に、救急外来で診療していると、これらの薬剤を過量に内服し、来院する方を多く経験するとともに、常備し乱用している方も少なくありません。これらの薬剤がなぜ問題なのか、代表的な2剤を中心に簡単に説明しておきましょう。表1 注意が必要な市販薬1)商品名:エスエスブロン錠(表2)成分は主に4つです。上から、オピオイド、エフェドリン、抗ヒスタミン薬、カフェインです。ジヒドロコデインは半合成オピオイドです。オピオイド受容体に結合し、中枢神経抑制作用や呼吸抑制作用を発揮し、高揚感や多幸感をもたらします。メチルエフェドリンは、エフェドリンの作用を抑えたものですが、アンフェタミン類に属し、中枢神経興奮作用や交感神経興奮作用を発揮します。これらの成分が含まれる薬剤を適正量以上に、また不用意に内服すると、他の成分と相互作用を及ぼし頭痛や嘔気・嘔吐、興奮などの症状、さらには意識障害やショック、痙攣、呼吸抑制などの重篤な病態を引き起こします。表2 エスエスブロン錠2)商品名:パブロンゴールドA(表3)エスエスブロン錠と共通している成分が多いことに気付くと思います。大きな違いとしてパブロン系の薬にはアセトアミノフェンが含有されているという点です。この点は非常に重要であり、アセトアミノフェンは多量に内服すると肝毒性があり、場合によっては肝不全に陥るリスクがあります(アセトアミノフェン中毒に関しては、以前の連載「第24回 風邪薬1箱飲んだら、さぁ大変」を参照してください。表3 パブロンゴールドAエスエスブロン錠は規制がかかっているため、本来は薬局などで購入する際は1瓶までです。これは販売元のホームページにも明記されています。また、値段も決して安くはないため、同成分が含まれ、比較的安価なパブロン系の薬剤を購入する流れがあります。パブロン系は規制がかかっていないため、多量に購入可能なのです(中国向けの転売目的で多量に購入されたニュースが今年に入ってから流れていましたよね)。市販薬を乱用している方は10代、20代も多く、最近の状況を知るためにはSNSも有用です。twitterで「ブロン」、「金パブ(パブロンゴールド)」、「メジコン」などで検索すると多くの投稿が閲覧できます。「市販薬中毒なんてそんなに多くないでしょ!?」、そう感じている先生はちょっとのぞいてみてください。本症ではどうだったか冒頭の症例はそもそも市販薬の中毒を疑わなければ診断は難しいかもしれません。実際に、初めは本人も薬を内服したことを話してくれませんでした。しかし、改めて確認すると職場のストレスなどを理由に市販薬を過量に飲んでしまったことを打ち明けてくれました。セルフメディケーションは大切です。しかし、一般用医薬品(OTC医薬品)を不適切に利用している方も少なくありません。「くすりもりすく」、これは処方薬だけでなく市販薬も含め常に意識し対応することが重要です。1)松本俊彦、他. 2020年全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患実態調査.2022.

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今後の医師のマスク着用意向は?/医師1,000人アンケート

 新型コロナウイルス感染症対策として、これまで屋内では原則マスク着用、屋外では原則マスク不要とされてきたが、2023年3月13日よりマスクの着用は個人の判断が基本となった。CareNet.comでは、医師のプライベートにおけるマスク着用意向を探るため、会員医師1,000人を対象に『今後のマスクの着用意向に関するアンケート』を実施した。その結果、大多数の医師がマスクの着用基準が個人判断になることに賛成であり、プライベートでマスクを外したい医師と外したくない医師がほぼ半数であることが明らかとなった(2023年3月2日実施)。新型コロナウイルスに感染したことがある医師は3人に1人 Q1では、これまでの新型コロナウイルスの感染歴を聞いた。感染したことのある医師は32%、感染したことがない医師は68%であった。なお、CareNet.comで2022年12月10~17日に実施した調査では、感染したことのある医師は26%、感染したことがない医師は74%で、感染したことのある医師が増えていた。着用基準が個人判断になることに賛成の医師は68% Q2では、マスクの着用基準が個人判断になることに賛成かどうかを聞いた。「とても賛成」は23%、「どちらかといえば賛成」は45%であり、個人判断になることに賛成の医師は68%であった。「どちらかといえば反対」は16%、「とても反対」は6%、「どちらともいえない/わからない」は11%であった。新型コロナウイルスの感染経験の有無別でもほぼ同様の結果であった。・感染歴あり(328人):とても賛成25%、どちらかといえば賛成46%、どちらかといえば反対16%、とても反対4%、どちらともいえない/わからない9%・感染歴なし(700人):とても賛成23%、どちらかといえば賛成44%、どちらかといえば反対15%、とても反対6%、どちらともいえない/わからない12%「外したい」「外したくない」派はほぼ同数 Q3では、マスクの着用基準が個人判断になる3月13日以降、プライベートでマスクを外したいかどうかを聞いた。「できるだけ外したい」は41%、「できるだけ外したくない」は43%でほぼ同数であった。「どちらともいえない/わからない」は16%であった。感染経験の有無別では、感染歴のある医師のほうがマスクを外したい意向がやや強かった。・感染歴あり(328人):できるだけ外したい44%、できるだけ外したくない40%、どちらともいえない/わからない16%・感染歴なし(700人):できるだけ外したい40%、できるだけ外したくない44%、どちらともいえない/わからない16%マスクを外さないほうがよい状況は「飛行機、バス、電車」 Q4では、医師としてプライベートであってもマスクを外さないほうがよいと考える状況を聞いた(複数回答)。多い順に、飛行機/バス/電車、デパート/ショッピングモール、ライブ/スポーツ観戦(観客も声を出す可能性のある催事)、映画館/美術館/博物館、近所のスーパー、飲食店、カラオケ、クラシックコンサート/観劇(観客は声を出さない催事)、スポーツジム/フィットネスクラブ、公園/路上、屋外のスポーツ競技であった。 なお、フリーコメントでは、混雑時のバスや電車はつけたほうがよいが、飛行機は必要ないと区別する意見もあった。今後感染拡大すると考える医師は67% Q5では、マスクの着用判断が個人に委ねられることで、今後の新型コロナウイルス感染症の流行に変化が生じると考えるかどうかを聞いた。「とても感染が拡大する」は16%、「やや感染が拡大する」は51%で、着用判断が個人になることで感染が拡大すると考える医師は67%と大多数であった。「あまり感染は拡大しない」は19%、「ほぼ感染は拡大しない」は5%、「どちらともいえない/わからない」は9%であった。 フリーコメントでは、「社会の流れとしてはやむを得ないと思うが、恐らく感染は拡大して多少の死者を許容する形になるだろう」「マスクを外す場合、社会として、死者数が増えることを容認することが前提。現時点ではマスクを外すことが目的になり、その先のことの説明が足りない」「緩和していくことにより死者が増え後戻りしていくと思う」など、感染の再拡大を懸念する声が寄せられた。自由回答のコメント 最後に、マスクの着用判断が個人に委ねられることや、今後のマスク着用や感染対策について意見を聞いた。マスク着用を継続したい/継続してほしい医師・医療従事者はずっとマスクを着用することになるでしょう。・医療機関、高齢者もいる公共施設では着用すべき。・人の多い閉鎖空間ではマスク必要。・感染が拡大したときの医療現場の負担や社会の混乱を考えると、少なくともマスク着用を推薦したほうがよいと思う。・マスクを外すメリットが小さいのに、リスクが多すぎます。マスクを外したい/外してもよいと考える医師・マスクは着用しなくてよいが、換気だけは十分するよう国から通達してほしい。・基本的に有症状時に着用すればよいと思います。・感染が一時的に広がっても、自然免疫をつける上でも、外したほうがよいと思う。・世界の標準に合わせるべき。・マスクしなくてよい。感染が広がってもそれが自然なことなので無理なことはしなくてよいと思う。その他・周囲からの同調圧力が心配(外せ、外すなとも)。・政府の方針が、国主導で対応→自己責任で体調管理と各病院・医院に放り投げに変わっただけ。次の流行の波が来たら、これまで以上に医療崩壊。・あまりにも感染が増加し医療体制に支障が出るようなら再検討してほしい。・個人で判断ができず、医師に聞いてくる人たちがいます。子供ではないので自分で判断してほしい。・コロナに限らず、インフルエンザなど感染症流行時は自らの判断で感染予防に努めるべき。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。医師もマスクを外したい?/医師1,000人アンケート

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認定薬局のメリットはやはり大きかった!在宅件数、売上も増加【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第106回

皆さんの薬局は、専門医療機関連携薬局や地域連携薬局、健康サポート薬局などの認定を取得していますか? つい認定を取得することを目標としがちですが、取得がゴールではなく、実際はその取得によってようやくスタートラインに立てます。しかし、認定後の運用には課題が付いて回るため、どのように取り組んでいこうかと取得前から不安に感じている薬局は多いのではないでしょうか。この度、日本保険薬局協会(NPhA)が認定を取得した薬局を対象としてアンケートを実施しました。認定に関して知っておいて損はない、勉強になる結果となっていますので、早速見ていきましょう。このアンケートは、認定薬局の実態を把握することを目的として、在宅および連携の実績と実例、認定取得のメリット・デメリット、課題と展望についてヒアリングを行いました。2022年10~11月に会員薬局の認定薬局を対象として行われ、17社262薬局から回答を得て、2023年2月にその結果が公表されました。実際に認定を得た薬局のみからの回答であり、「実際にやってみた」人たちのリアルな意見は貴重です。私が興味を持ったのは、認定を取得した薬局にそのメリット・デメリットを聞いている項目です。まず、メリットはどのようなことが挙げられたのでしょうか。認定取得のメリットとして、半数以上の薬局が「従業員のスキル向上」「従業員のモチベーション向上」と回答しました。それに続いて、「スムーズな多職種連携、連携機会の増加」「患者からの信頼度向上」「薬局としての認知向上」などが挙げられました。実際に在宅や介護の相談や依頼が増えた、連携が進んだ、患者数や売上が向上した、などの具体的なメリットも挙げられています。「認定を取ってみたけど全然メリットがない…」ということがなくてよかったです。実際に薬局の信頼度向上につながっているのでしょう。デメリットは各所コストの増大一方、認定を取得したデメリットとして多かったものは、「業務時間・残業時間の増大」「人手不足」「教育研修コストの増大」であり、多くの薬局で各種コストが増大していることがわかります。また、無菌調剤に取り組む薬局については、その設備だけでなく研修費用やメンテナンスなどに関しても費用がかかるといったコメントもありました。業務が増えるのはやむを得ないのかもしれませんが、研修や医療機関との打ち合わせなどに時間を要する+業務量が増加する→残業が増える→従業員のモチベーションが低下する、という負の連鎖が心配です。業務の増大をモチベーションやスキルの向上といった良い方向にどうやって変えていけるかが、認定薬局の継続のポイントになりそうです。在宅対応事例についてもとても参考になります。退院時カンファレンスへの参加から在宅移行した事例や、緩和ケアや看取りにかかわった事例、施設在宅における往診同行などの介入事例などに関してはその領域や程度について掲載されていますので、ご自身の薬局における実際の患者さんと照らし合わせながら読むとよいと思います。この結果を見ると、確かに調剤や服薬指導といった日々行っているような業務とは異なり、医療機関や施設に出向き、ヒアリングや調整を行い、在宅の結果をトレーシングレポートにして報告…など、かなり時間と労力を要する業務が増えるのだなと感じます。本アンケートは回答数がそれほど多くないため、数字を追うよりもその実態に関するコメントを読むことに意味があるように思いました。NPhAのアンケートはこのような実態に沿った調査報告が公表されることが多く、背中を押してくれるような内容が多いと感じます。申請がまだという薬局でも日々の業務の参考になるのではないでしょうか。参考1)認定薬局ヒアリング調査報告書

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