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査読者が教える 臨床研究のロジック‐臨床センスを生かした統計解析と論文作成

カンファレンスの設定で学ぶ論文作成法大好評、森本 剛先生の「査読者が教えるシリーズ」第3弾。「ピエール先生と弟子(臨床医)のカンファレンス」という設定で、師弟のやりとりを通じて研究の論文化方法を学びます。論文の流れに沿って適宜掲載しているコラムでは、単なる用語解説にとどまらず、著者森本先生の実体験を基に適用できるケースや注意点などを紹介しています。SNSは一切しない森本先生の言葉が読めるのは本書のみ。初めての論文を書いてみよう!論文を書いたことがあるが、書き方のコツがつかめていない!論文を書いてもなかなか採用されない!論文作成の指導をすることになってしまった!という読者にはとくにオススメです。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    査読者が教える 臨床研究のロジック‐臨床センスを生かした統計解析と論文作成定価3,850円(税込)判型菊判、並製頁数208頁(写真・図・表:約100点)発行2023年4月著者森本 剛(兵庫医科大学)

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スタチンでアジア人乳がん患者のがん死亡リスク低下

 スタチン製剤を服用しているアジア人の乳がん患者では、スタチンを服用していない乳がん患者と比べて、がん関連の死亡リスクが有意に低かったことを、台湾・国立成功大学のWei-Ting Chang氏らが明らかにした。なお、心血管疾患による死亡リスクには有意差はなかった。JAMA Network Open誌4月21日号掲載の報告。 スタチンは化学療法と併用することで、がんの進行や微小転移を抑制することが報告されていて、乳がんの再発リスクを低減させる可能性が示唆されている。しかし、欧米の乳がん患者とは異なり、アジアの乳がん患者は診断時の年齢が比較的若く、ほとんどが心血管リスク因子を有していないため、スタチンの服用によって生存率が改善するかどうかは不明である。そこで研究グループは、アジア人の乳がん患者において、スタチン使用とがんおよび心血管疾患による死亡リスクとの関連を後方視的に調査した。 本コホート研究の対象は、台湾の国民健康保険研究データベース(NHIRD)と国民がん登録を用いて、2012年1月~2017年12月までに乳がんと診断された女性患者1万4,902例で、乳がんの診断前6ヵ月以内にスタチンを服用した患者と、スタチンを服用していない患者を比較した。年齢、がんの進行度、抗がん剤治療、併存疾患、社会経済的状況、心血管系薬剤などを傾向スコアマッチング法で適合させ、解析は2022年6月~2023年2月に実施された。主要アウトカムは死亡(全死因、がん、心血管疾患、その他)で、副次的アウトカムは新規発症の急性心不全、急性心筋梗塞や虚血性脳卒中などの動脈イベント、深部静脈血栓症や肺塞栓症などの静脈イベントであった。平均追跡期間は4.10±2.96年であった。 主な結果は以下のとおり。・スタチン使用群7,451例(平均年齢64.3±9.4歳)とスタチン非使用群7,451例(平均年齢65.8±10.8歳)がマッチングされた。・非使用群と比較して、使用群では全死因死亡のリスクが有意に低かった(調整ハザード比[aHR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.77~0.91、p<0.001)。・がん関連死亡のリスクも、非使用群と比較して、使用群では有意に低かった(aHR:0.83、95%CI:0.75~0.92、p<0.001)。・心不全、動脈・静脈イベントなどの心血管疾患の発生は少数であり、使用群と非使用群で死亡リスクに有意差は認められなかった。・時間依存性解析でも、非使用群と比較して、使用群では全死因死亡(aHR:0.32、95%CI:0.28~0.36、p<0.001)およびがん関連死亡(aHR:0.28、95%CI:0.24~0.32、p<0.001)が有意に少なかった。・これらのリスクは、とくに高用量スタチンを服用している群でさらに低かった。 これらの結果より、研究グループは「アジア人の乳がん患者を対象としたこのコホート研究では、スタチンの使用は心血管疾患による死亡ではなく、がん関連の死亡リスクの低減と関連していた。今回の結果は、乳がん患者におけるスタチンの使用を支持するエビデンスとなるが、さらなるランダム化試験が必要である」とまとめた。

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全く英語が話せなかった私のとっておき医療英語勉強法

私にもできる? 全く英語を話せない人が効率よく医療英語を習得・勉強する方法を披露!今回こそは英語をものにするぞとやる気を出しても、なかなか続かないというそこのあなた! どうせ私にはできないと最初から諦めているそこのあなた! 医師、医学生、薬剤師、看護師、いろいろな立場から、どのように医療英語を勉強しているかを紹介します。勉強法は人それぞれです。そんな勉強法があったのか、これなら自分にできるかも、と自分に合った英語学習法が見つかるはずです。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    全く英語が話せなかった私のとっておき医療英語勉強法定価3,080円(税込)判型A5判頁数146頁発行2023年4月編著者山田 悠史(マウントサイナイ医科大学 老年医学科 アシスタント・プロフェッサー/Medical English Hub[めどはぶ]代表)

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手持ち不足の薬剤の処方依頼前に継続の必要性を再検討【うまくいく!処方提案プラクティス】第53回

 今回は、手持ちの薬がなくなって服薬ができていなかった症例を紹介します。患者さんの希望で処方依頼をするシチュエーションは多々ありますが、状態によっては継続ではなく中止を提案することもあります。治療効果を意識して体調の変化を確認しましょう。患者情報80歳、男性(施設入居)基礎疾患気管支喘息、慢性気管支炎、前立腺肥大症、高血圧症、緑内障、便秘症、アレルギー性鼻炎介護度要介護2服薬管理施設職員が管理処方内容1.アジルサルタン錠40mg 1錠 分1 朝食後2.タムスロシン錠0.2mg 1錠 分1 朝食後3.ミラベグロン錠25mg 1錠 分1 朝食後4.アンブロキソール徐放錠45mg 1錠 分1 朝食後5.ベポタスチン錠10mg 2錠 分2 朝夕食後6.モンテルカスト錠10mg 1錠 分1 就寝前7.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 毎食後8.センノシド錠12mg 2錠 分1 就寝前9.ヒアルロン酸点眼液0.1% 1日3回 両眼10.タフルプロスト点眼液0.015% 1日1回 両眼本症例のポイントこの患者さんは、施設入居から4日目に当薬局に訪問介入の依頼がありました。入居前は薬剤を自己管理していたようですが、過去の飲み忘れも含めて約1ヵ月半分の持参薬があり、用法ごとの残数もそろっていない状況でした(朝:42、昼:66、夕:58、就寝前:70日分)。気管支喘息の診断を受けていたとのことで、ブデソニド・ホルモテロールの空容器を持参していましたが、夜間は不安だからプロカテロール吸入薬も吸入したいので処方してもらいたいという患者さんからの依頼がありました。よくよく話を聞いてみると入居3週間前からブデソニド・ホルモテロールもプロカテロールも残薬がなくなっていて、手元にないと不安なので処方してほしいとのことでした。情報分析これまでの情報から私なりに分析してみました。まず、大量かつ不均等の持参薬から患者さんの服薬アドヒアランスは不良であることが想像できます。薬に対する依存度が強く、患者さんから医師にさまざまな薬を要望している様子もあったため、使用していた薬剤の種類と処方理由を明確にしておく必要があると考えました。なお、患者さんが要望している吸入薬はどちらも約1ヵ月間使用していませんでしたが、喘息発作などは起きていません。前医の診療情報書に目を通したところ、小児喘息や成人時期の喘息発作の経験はなかったものの、患者によると喘息の素因があるとのことで、感冒の際に希望があり処方しているという文面を確認することができました。患者さんはその後、長期間にわたって吸入薬を使用していました。基礎疾患にある気管支喘息の診断情報に疑問をもち、訪問診療医に相談することにしました。処方提案と経過患者さんとの初回面談から3日目に訪問診療医の初診があったため同行することにしました。診察前に、医師に初回面談時のやりとりを共有しました。入居前は服薬アドヒアランスが安定していなかったと考えられ、患者さんの希望から吸入薬が追加されている可能性があるものの、約1ヵ月間使用していなくても発作症状はないことなどを伝えました。医師からは、診察時に呼吸音や病状を確認し、診断の見直しをするという返答がありました。その結果、気管支喘息を積極的に疑う所見ではないので、このまま吸入薬をやめて様子をみようという判断になりました。その2週間後の診療でもその間の喘息発作は認められませんでした。患者さんからは、吸入の負担が減って精神的に楽になったと聞き、その後も状態が悪化することなく施設で穏やかに生活されています。

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第157回 アステラス社員のスパイ疑い、考えられる3つの理由(前編)

あの事件が発覚してから1ヵ月が経過しようとしている。「あの事件」とは、アステラス製薬の50代の日本人男性社員が、北京で中国国家安全部に反スパイ法違反容疑で拘束された事件である。4月2日に訪中した外務大臣の林 芳正氏は、中国・国務委員兼外相の秦 剛氏との会談で拘束へ抗議の意を表明し、早期解放を要求。この2日後には在中国日本国大使館が領事面会を行い、この時点で拘束された社員の健康状態に問題がないことを確認したものの、それ以降はぱったりと情報が途絶えている。拘束された社員はアステラス製薬の前身である旧山之内製薬出身者で、中国事業の経験が約20年におよぶベテランのようだ。中国国内で活動する日本企業の団体である中国日本商会の役員を務めた経歴もあり、中国高官ともかなり交流があったと言われている。中国の反スパイ法は2014年に制定されたもので正式名称は「中華人民共和国反間諜法」である。制定当初の同法ではスパイ行為として、以下が規定されている。(1)中国の安全に危害を及ぼす活動(2)スパイ組織への参加あるいはスパイ組織やその代理人の任務引受け(3)国家秘密・国家情報を窃取、偵察、買収もしくは不法に提供する活動(4)公務員に対して中国を裏切るよう扇動、誘惑、買収する活動(5)敵に対する攻撃目標の指示(6)その他のスパイこの社員の拘束後にはこれらに加え、新たにこれらも追加された。▽国家の安全と利益に関わる文書・データ、資料や物品の窃盗行為▽国家機関や重要な情報インフラへのサイバー攻撃一見、具体的に見えるかもしれないが、規定された「中国の安全」とは何かが非常に曖昧である。もちろんこれを条文に詳しく書いてしまえば、国家機密そのものの例示になりかねないとの指摘もあるが、どちらかというと従来から法治というよりは人治の色彩が強い中国の場合、この曖昧さが「後出しじゃんけん」とも言われかねないイメージを強めてしまう。同法制定以降、これに関連して拘束された日本人は判明しているだけで17人。あえて「判明しているだけ」と記述したのは、拘束後約1年もその事実が明らかにされなかったケースがあるためだ。このうち裁判に至らず釈放された事例は5人のみ。少なくとも現状で今回拘束された社員が今後どうなるのかはまったく予測ができない。正直、第一報を聞いた時はかなり驚いた。世間一般では「反スパイ法」「製薬企業の社員」というキーワードから、「何らかの産業スパイを働いたのではないか?」「拘束して逆に日本の製薬業界やアステラス製薬が抱える技術情報を盗み取ろうとしているのでは?」と考える人は少なくないようだが、私見ながらその可能性は低いと考えているからだ。まず、日本と中国の製薬企業の研究開発力を比べれば、まだ日本のほうがいくらか上だ。ただし、中国は全世界の大学や研究所に日本より数多くの留学生を派遣し、それらの人材を基礎として中国の製薬企業は急速に力をつけている。そして両国の技術差は、日本の製薬企業関係者にとってリスクを冒してまで得なければならないほどのものでもなければ、中国側が外交関係悪化を覚悟してまで得ようとしなければならないものはない微妙な位置関係である。現時点でこの社員のどのような行為が反スパイ法に抵触したかの情報はまったくない。この点については彼が無事解放、あるいは最終的に刑が確定した段階でも中国側が明らかにすることはないだろう。それは、これまでそうしたケースがないからである。また、解放あるいは刑期満了による帰国後に当該社員やアステラス製薬が明らかにする可能性も低い。過去の事例でも解放者、刑期満了者がメディアなどの取材に応じたケースはほぼ皆無である。これには中国当局による口止めも予想されるが、同時に本人や勤務先に長期的な不利益が及ぶことを恐れて口をつぐんでしまっている側面もあると考えられる。こうした前提は承知の上で、中国の現状などを踏まえ、この社員が拘束された理由と私が予想しているものは3つある。―その1:中国共産党幹部などの汚職の巻き添えを食らった第一は中国の国家主席である習 近平氏の統治下で活発化している「汚職・腐敗撲滅運動」により摘発された中国共産党幹部などの巻き添えを食らった可能性である。中国の場合、共産党が国家を指導する、つまり国家の上に共産党があるという政治構造になっている。ちなみに習氏は中国の公式な国家元首である国家主席への就任直前に共産党のトップである総書記に就任しており、このことはまさに党→国家という順位を端的に示している。その共産党内にある党員の腐敗行為を監督する中央規律検査委員会は昨年10月、習氏による指導部発足以来の成果として10年間に約464万人の党員を汚職で摘発したことを明らかにした。事実上の一党独裁(表面には共産党以外の政党が存在するが、実際には共産党がすべての権力を握る「ヘゲモニー政党制」)ゆえに日本では「中国国内には共産党員なぞ、掃いて捨てるほどいる」と思っている人もいるかもしれない。しかし、中国の総人口約14億1,200万人のうち、共産党員は国民の約14人に1人未満の約9,671万人しかいない。つまり習氏の政権期間内に汚職摘発を受けたのは党員の約5%にものぼる。日本人向けの例えをすると、10年間で神奈川県の人口(約922万人)の半分が摘発されたとも表現できる。習氏の下で行われている汚職摘発はかなり容赦のないものだ。たとえば、2014年には中国人民解放軍の最高位階級の上将まで上り詰め、中国共産党中央政治局委員、党中央軍事委員会副主席も務めた徐 才厚氏が汚職で摘発され、党籍はく奪処分を受けたが、それだけに留まらない。念のため、わかりにくい中国共産党の権力構造を簡単に解説したい。中国の最高権力機関は、5年に1度開催される構成員約3,000人の一院制議会「全国人民代表大会(通称・全人代あるいは党大会)」。ただ、開催頻度からもわかるように、あくまで名目上の最高権力機関である。このため全人代閉会期間中に共産党を指導し、政策を決定する組織が全人代で選出された200人超の中央委員と170人弱の中央候補委員で構成される「中国共産党中央委員会」である。さらにこの党中央委員会も開催は年1回であるため、中央委員会全体会議で選出された20数人で構成される「中国共産党中央政治局」が日常的な政務を担い、さらにその中でも慣例上7人で構成される「中国共産党中央政治局常務委員会」が日常的な共産党の指導方針や国家の政策を決定している。海外ではこの7人を「チャイナ・セブン」と呼ぶこともある。当然、習氏もその一員である。中国では鄧 小平氏がトップだった時代から党内での無意味な権力闘争を避けることを目的に中央政治局常務委員経験者には暗黙の不逮捕特権があるとされてきた。しかし、習氏はこの慣例を破り、2012年11月まで常務委員会委員だった周 永康氏の党籍を汚職の罪ではく奪。最終的に周氏は裁判にかけられ無期懲役の判決が確定した。憲法の規定である国家主席の2期10年までという任期を改正してまで3期目を務める習氏にとって、この徹底した汚職摘発は最高権力者としての自分を周囲に納得させる手段であると同時に、時には政敵を粛正するために使える手段として欠かすことができないものである。さて今回拘束された社員は、複数の中国高官(共産党員)とかなり親交が深い人物と言われている。こうした立場にいると、親密度の高い相手が汚職で摘発された場合、その余罪追及に向けて周辺人物に身柄拘束が及ぶことは中国では珍しくない。実際、前述の周氏のケースも、まず本人の動静が途絶え、側近や周囲の親密度が高い人物の摘発が明るみに出たことで、周氏の摘発の可能性が噂され、それが後に現実になった。今回のケースがこれに該当していると仮定した場合、拘束された社員はたまたま外国人でかつ企業の駐在員だったことで消息が途絶えたことに周囲が気づきやすかったため、騒ぎになったとも考えられるもっとも1番目に挙げながら、このようなことを言うのも何だが、これは広く捉えた可能性の1つであって、むしろ私が考えているほかの2つのほうがより拘束理由に近いのではないかと考えている。次回は残り2つの可能性について言及したい。

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コロナ後の情報提供、MRの役割はどう変わる?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第109回

今や医療や調剤に関する情報収集は主にインターネットを用いるようになりました。医療用医薬品の添付文書は原則として製品への同梱が廃止されてPMDAのホームページで最新版を確認するようになり、勉強会もオンラインになりました。以前はMRさん主催の勉強会でお弁当を食べながら製品紹介を受ける、というのが薬局全体の底上げに一役買っていましたが、コロナ禍になってMRさんの訪問が規制されてほぼなくなりました。変わり続ける医療業界において、MRさんの役割も激変しそうです。MR認定センターと日本製薬工業協会が、「MRの果たすべき役割」をまとめた同名の冊子の改訂に向けて、月内に検討を開始する。製薬協が内部で検討し、1997年に初めて公表した冊子は、現在は認定センターが継承・発行しており、2017年の現行版を最後に改訂されていない。今回、MRを取り巻く現状などを確認しながらその中身について検討する。まとまった内容は26年度スタートの新たなMR認定試験制度で活用する見通し。関係者は25年2月の公表を視野に、8年ぶりの改訂へ取り組みを進める。(2023年4月17日付 日刊薬業)コロナ禍になり、製薬会社からの情報提供が急速にインターネット中心に移行しました。また、情報提供の内容も良くも悪くも規制が強化されたり、販売促進とは異なる中立的な立場のメディカルアフェアーズ(MA)が活躍したりするなど、MRさんの役割や業務が大きく変わりました。つい最近、「私はWeb担当のMRなんです」という方が現れてビックリしました。私が薬剤師になった約20年前は、4年制卒の薬剤師が大手製薬企業へ就職する場合の職種はMRがほとんどでした。2023年度においては、MR職を最も多く採用した会社でも30人未満で、一時期よりもずいぶん減少しました。新卒のMR採用を一切しないという判断をしている一部の外資系大手製薬企業もあるようです。MR認定試験は製薬会社以外の人にも門戸が開かれていますが普及しておらず、製薬会社がMRを採用しないとMRは減る一方でしょう。製薬会社自体がMRを経由しない情報提供を推進しようとしていると考えられます。冒頭の記事には「MRを取り巻く現状などを確認しながらその中身について検討する」とあり、MR認定センターと製薬団体が協力し合って何か新しい役割を提唱していくのでしょうか。オンラインの勉強会や情報収集だけだと薬局のスタッフの底上げが難しいと感じますので、医療機関や薬局への訪問や情報提供がどのように変わっていくのかとても興味があります。しかし、今からその議論を開始して、そのスタートは2026年とのこと。そのスピード感は大丈夫なのか…と少し不安にもなります。

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あめいろぐ移植

移植医療は究極のパラダイムシフト!在米日本人医療従事者による情報発信サイト「あめいろぐ」シリーズの第7弾は「移植」編。米国では「移植医療の存在しない世界はもはや想像すらできない」といわれています。実際、米国の全臓器の年間移植件数は約4万1,000件、うち心臓移植は米国3,818件であるのに比べて日本は59件(2021年)です。なぜ、移植医療は日本で普及せず、米国ではこれほど普及したのでしょうか? その答えと移植医療を打開する鍵が本書にあります。脳死移植、心停止後移植、渡航移植、移植医療の完全分業制、公平な臓器分配に関する議論やシステムなど、米国で活躍する日本人医師が移植医療の現場を解説し、その未来を語ります。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    あめいろぐ移植定価3,850円(税込)判型A5判頁数160頁発行2023年3月監修浅井 章博著者浅井 章博、川名 正隆、武田 浩二

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2型DMの追加処方に有益なのは?~816試験をメタ解析/BMJ

 中国・四川大学のQingyang Shi氏らはネットワークメタ解析を行い、2型糖尿病(DM)成人患者に対し、従来治療薬にSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬を追加投与する場合の実質的な有益性(心血管系および腎臓系の有害アウトカムと死亡の減少)は、フィネレノンとチルゼパチドに関する情報を追加することで、既知を上回るものとなることを明らかにした。著者は、「今回の結果は、2型DM患者の診療ガイドラインの最新アップデートには、科学的進歩の継続的な評価が必要であることを強調するものである」と述べている。BMJ誌2023年4月6日号掲載の報告。24週以上追跡のRCTを対象に解析 研究グループは、2型DM成人患者に対する薬物治療として、非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(フィネレノンを含む)とチルゼパチド(二重GIP/GLP-1受容体作動薬)を既存の治療オプションに追加する有益性と有害性の比較を目的にシステマティックレビューとネットワークメタ解析を行った。 Ovid Medline、Embase、Cochrane Centralを用いて、2022年10月14日時点で検索。無作為化比較試験で、追跡期間24週以上を適格とし、クラスの異なる薬物治療と非薬物治療の組み合わせを体系的に比較している試験、無作為化比較試験のサブグループ解析、英語以外の試験論文は除外した。エビデンスの確実性についてはGRADEアプローチで評価した。816試験、被験者総数47万1,038例のデータを解析 解析には816試験、被験者総数47万1,038例、13の薬剤クラスの評価(すべての推定値は、標準治療との比較を参照したもの)が含まれた。 SGLT2阻害薬と、GLP-1受容体作動薬の追加投与は、全死因死亡を抑制した(それぞれオッズ比[OR]:0.88[95%信頼区間[CI]:0.83~0.94]、0.88[0.82~0.93]、いずれも高い確実性)。 非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬については、慢性腎臓病を併存する患者へのフィネレノン投与のみが解析に含まれ、全死因死亡抑制の可能性が示唆された(OR:0.89、95%CI:0.79~1.00、中程度の確実性)。その他の薬剤については、おそらくリスク低減はみられなかった。 SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の追加投与については、心血管死、非致死的心筋梗塞、心不全による入院、末期腎不全を抑制する有益性が確認された。フィネレノンは、心不全による入院、末期腎不全をおそらく抑制し、心血管死も抑制する可能性が示された。 GLP-1受容体作動薬のみが、非致死的脳卒中を抑制することが示された。SGLT2阻害薬は他の薬剤に比べ、末期腎不全の抑制に優れていた。GLP-1受容体作動薬は生活の質(QOL)向上に効果を示し、SGLT2阻害薬とチルゼパチドもその可能性が示された。 報告された有害性は主に薬剤クラスに特異的なもので、SGLT2阻害薬による性器感染症、チルゼパチドとGLP-1受容体作動薬による重症胃腸有害イベント、フィネレノンによる高カリウム血症による入院などだった。 また、チルゼパチドは体重減少がおそらく最も顕著で(平均差:-8.57kg、中程度の確実性)、体重増加がおそらく最も顕著なのは基礎インスリン(平均差:2.15kg、中等度の確実性)とチアゾリジンジオン(平均差:2.81kg、中等度の確実性)だった。 SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、フィネレノンの絶対的有益性は、ベースラインの心血管・腎アウトカムリスクにより異なった。

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若年性ポリポーシス症候群〔JPS:Juvenile Polyposis Syndrome〕

1 疾患概要■ 定義若年性ポリポーシス症候群(Juvenile polyposis syndrome:JPS)は消化管に若年性ポリープが多発する常染色体顕性遺伝(優性遺伝)性の遺伝性ポリポーシス症候群である。臨床診断基準および2つの原因遺伝子の生殖細胞系列の遺伝子検査により診断する。本疾患は小児慢性特定疾病に指定されており、医療費助成の対象となる(20歳未満まで)。■ 頻度と平均発症年齢発症頻度は10~16万人に1人程度。わが国の推定患者数は750~1,200人。平均発症年齢は18.5歳とされる1)。■ 原因遺伝子JPSの原因遺伝子にはSMAD4遺伝子あるいはBMPR1A遺伝子の2つが知られている。臨床的若年性ポリポーシス症例において、この2つの遺伝子に病的バリアントが同定されるのは約60%とされる。SMAD4遺伝子は遺伝性出血性末梢血管拡張症(hereditary hemorrhagic telangiectasia:HHT[オスラー病])の原因遺伝子でもあり、SMAD4病的バリアント症例では、若年性ポリポーシスとHHTの症状を併発していることもある。また、BMPR1A遺伝子は染色体10q23に位置しており、カウデン病(現在ではPTEN過誤腫性症候群と包括的に呼称されることが多い)の原因遺伝子であるPTEN遺伝子と隣接している。このためこの領域に欠失が生じた場合には、若年性ポリポーシスとPTEN過誤腫症候群を併発し、幼少期に発症することがある。この欠失の診断は染色体Gバンド法あるいはマイクロアレイ検査により行う。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 臨床診断基準臨床的に、(1)大腸に5個以上の若年性ポリープが認められる(2)全消化管(2臓器以上)に複数の若年性ポリープが認められる(3)個数を問わずに若年性ポリープが認められ、かつ、JPSの家族歴が認められるのいずれかを満たしている場合を臨床的にJPSと診断する。■ 遺伝学的検査SMAD4遺伝子およびBMPR1A遺伝子のシークエンスおよび再構成の解析(MLPA:Multiplex Ligation-dependent Probe Amplification)を行う。臨床的に若年性ポリポーシスと診断されても約40%の症例には病的バリアントが認められていない。現在では、がんパネル検査を実施したときに、偶然に両遺伝子に病的バリアントが検出される場合があるが、ほとんどの場合がん細胞のみに生じている体細胞変異である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)以下に各疾患の臨床的所見とその治療について述べる。1)若年性ポリープ(Juvenile Polyp:JP)遺伝性ではない孤発性の若年性ポリープについて概要を述べる。孤発性の若年性ポリープは病理学的には過誤腫性ポリープに属し、小児の腸管ポリープの90%以上を占め、3~5歳に好発するとされる2)。孤発性の若年性ポリープは、多くが有茎性あるいは亜有茎性で、易出血性、子供の下血の原因として重要である。表面は比較的平滑で赤色調で、びらんを認めることが多い。病理学的には、異型のない腺管が嚢胞状に拡張したり、間質に浮腫と炎症細胞浸潤や毛細血管の増生を認める(図1)。図1 若年性ポリープの臨床所見画像を拡大する(a)孤発性の若年性ポリープの内視鏡像。亜有茎性の発赤調ポリープ。表面にはびらんを認める。(b)若年性ポリープの病理組織像。弱拡大像。嚢胞状に拡張した腺管と間質の浮腫を認める。(c)同強拡大像。腺管は異型性を示さず、間質には炎症細胞浸潤と血管の増生を認める。若年性ポリープでは腺腫との混在例もあることから、治療は内視鏡切除により病理学的診断も行うことが一般的である。孤発性の若年性ポリープは一般には非遺伝性であり悪性病変のリスク上昇とは関連がないと考えられている。2)若年性ポリポーシス(JPS)一方で、遺伝性の若年性ポリポーシスでは、単に若年性ポリープが複数発症している状態であるほかに、消化管が悪性化のポテンシャルを有していると考えられるため、生涯にわたり消化管病変のマネジメントを行う。病型としてポリポーシスの発生部位により全消化管型、大腸限局型、胃限局型に分けられる。わが国の病型別の頻度は全消化管型が27.4%、大腸限局型が36.3%、胃限局型が36.3%とされる3)。胃限局型であっても大腸にポリープが数個認められることが多い。また、SMAD4遺伝子に病的バリアントを認める症例では、胃限局型の表現型となることが多い(図2)。図2 胃限局型の若年性ポリポーシスの臨床所見画像を拡大する(a)胃限局型の若年性ポリポーシス例の手術標本。特に胃の体下部から前庭部にかけて、丈の高いポリープが密集している。(b)手術標本の断面像(c)ポリープの病理組織。弱拡大像。(d)同拡大像(×40)。腺管の嚢胞状の拡張および間質の浮腫、炎症細胞浸潤を認める。消化管の若年性ポリポーシスについては、孤発性の若年性ポリープと異なり、ポリポーシスの発生部位や分布および病理所見により、局所の内視鏡切除だけではなく、広範な胃全摘術あるいは大腸全摘術を考慮しなければならない場合もある。JPSが貧血や低蛋白血症の原因であるためだけではなく、将来的にも悪性腫瘍を併発しているリスクがあるためでもある。胃限局型で著明な貧血や低蛋白血症を発症している場合、胃全摘術によりこれらの症状は改善する。若年性ポリポーシス患者の悪性腫瘍の70歳時点での生涯罹患リスクは86%、臓器別では胃がんが73%、大腸がんが51%と高くなっているが、これはポリープの分布に依存する3)。■ その他のがん消化管以外のがんについては、若年性ポリポーシスにおいてはリスク上昇の報告はない4)。SMAD4遺伝子の変異は膵がんの55%にみられるが、わが国のポリポーシスセンターの171例の登録をみても、消化管以外のがんでは小腸がんや乳がんの登録が各1例ずつあるのみで膵がんの登録はない3)。■ 血管病変SMAD4遺伝子はオスラー病の原因遺伝子でもあるため、SMAD4変異症例では、オスラー病の一分症として、鼻出血や毛細血管の拡張、肺動静脈瘻を認める場合がある。とくに鼻出血は頻度が高い。■ 血縁者の対策若年性ポリポーシスと診断された発端者の第1度近親者は50%、第2度近親者は25%の確率で同じ体質を有する可能性があるので、血縁者への医療介入の機会を提供することは極めて重要である。米国のNCCNガイドラインでは、胃や大腸の内視鏡を12~15歳で開始して2~3年ごとに実施すること、また、SMAD4遺伝子に病的バリアントがある場合には、生後6ヵ月から鼻出血や肺動静脈瘻などの血管病変のスクリーニングを行うことを推奨している5)。未発症の血縁者に発端者と同じ変異があるかを検査する未発症者のキャリア診断は、原則として遺伝カウンセリングの実施体制が整備されている医療機関で行う。また、病的バリアントが認められた場合に具体的なマネジメントを提案できるなど実行可能な医療が提供できることが前提となる。4 今後の展望現在、化学予防など実施中の臨床試験は検索しうる限りない。また、リスク低減のための大腸全摘術やSMAD4病的バリアント変異例におけるリスク低減胃全摘術の有効性は不明である。そのほか、SMAD4遺伝子やBMPR1A遺伝子に病的バリアントを有するがんにおいて、有効性が期待できる分子標的薬は現時点ではない。若年性ポリポーシスは、消化管ポリポーシスがコントロールでき、当事者の疾患に対する適切な認識を持つことができれば、十分に対応可能な病態である。そのために継続的な家族との関わりを保てられる診療体制が必要である。5 主たる診療科若年性ポリポーシスは多数の診療科が連携してマネジメントを行う。消化管ポリポーシスのマネジメントが喫緊の診療なので、消化器内科がコアになることが多い。手術適応があれば消化器外科が対応する。その他、鼻出血には耳鼻咽喉科、肺動静脈瘻の塞栓療法は呼吸器内科や放射線科が対応する。未発症の血縁者へのサーベイランスや遺伝子診断は遺伝カウンセリング部門が担当する。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報消化管ポリポーシス難病班 若年性ポリポーシス症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センター 若年性ポリポーシス(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)GeneReviews Japan 若年性ポリポーシス症候群(医療従事者向けのまとまった情報)1)松本主之、新井正美、岩間達、他. 遺伝性腫瘍. 2020;20:79-92.2)日本小児外科学会ホームページ. 消化管ポリープ、ポリポーシス.(最終アクセス日:2023年4月2日)3)Ishida H, et al. Surg Today. 2018;48:253-263.4)Boland CR, et al. Gastrointest Endosc. 2022;95:1025-1047.5) National Comprehensive Cancer Network. NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Genetic/Familial High-Risk Assessment: Colorectal. Version2. 2022.Detection, Prevention, and Risk Reduction.(最終アクセス日:2023年4月2日)公開履歴初回2023年4月19日

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糖類の過剰摂取、心代謝疾患リスクを増大/BMJ

 食事による糖類(単糖類、二糖類、多価アルコール、遊離糖、添加糖)の過剰な摂取は、一般的に健康にとって益よりも害が大きく、とくに体重増加、異所性脂肪蓄積、心血管疾患などの心代謝疾患のリスク増大に寄与していることが、中国・四川大学のYin Huang氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年4月5日号で報告された。糖類摂取と健康アウトカムの関連をアンブレラレビューで評価 研究グループは、食事による糖類の摂取と健康アウトカムの関連に関する入手可能なすべての研究のエビデンスの質、潜在的なバイアス、妥当性の評価を目的に、既存のメタ解析のアンブレラレビューを行った(中国国家自然科学基金などの助成を受けた)。 データソースは、PubMed、Embase、Web of Science、Cochrane Database of Systematic Reviews、および参考文献リスト。対象は、急性または慢性の疾患のないヒトにおいて、食事による糖類の摂取が健康アウトカムに及ぼす影響を評価した無作為化対照比較試験、コホート研究、症例対照研究、横断研究に関する系統的レビューとメタ解析であった。 8,601本の論文から、73件のメタ解析と83項目の健康アウトカム(観察研究のメタ解析から74項目、無作為化対照比較試験のメタ解析から9項目)が特定された。体重増加、異所性脂肪蓄積と有意な関連 83項目の健康アウトカムのうち、食事による糖類の摂取と有意な関連が認められたのは、有害な関連が45項目(内分泌/代謝系:18項目、心血管系:10項目、がん関連:7項目、その他:10項目[神経精神、歯科、肝、骨、アレルギーなど])、有益な関連が4項目であった。 エビデンスの質(GRADE)が「中」の有害な関連としては、食事による糖類の摂取量が最も少ない集団に比べ最も多い集団では、体重の増加(砂糖入り飲料)(エビデンスクラス:IV)および異所性脂肪の蓄積(添加糖)(エビデンスクラス:IV)との関連が認められた。 エビデンスの質が「低」の有害な関連では、砂糖入り飲料の摂取量が週に1回分増加するごとに痛風のリスクが4%(エビデンスクラス:III)増加し、1日に250mL増加するごとに、冠動脈疾患が17%(エビデンスクラス:II)、全死因死亡率が4%(エビデンスクラス:III)、それぞれ増加した。 また、エビデンスの質が「低」の有害な関連として、フルクトースの摂取量が1日に25g増加するごとに、膵がんのリスクが22%高くなることが示唆された(エビデンスクラス:III)。 著者は、「既存のエビデンスはほとんどが観察研究で、質が低いため、今後、新たな無作為化対照比較試験の実施が求められる」と指摘し、「糖類の健康への有害な影響を低減するには、遊離糖や添加糖の摂取量を1日25g(ほぼ小さじ6杯/日)未満に削減し、砂糖入り飲料の摂取量を週1回(ほぼ200~355mL/週)未満に制限することが推奨される」としている。

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医療者の無症候コロナ感染が増加、既感染の割合は?/順大

 本邦では、ワクチン接種率が高いにもかかわらず、多くの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が確認されている。しかし、感染の既往を示す抗体の陽性率に関する研究は限られている。そこで順天堂大学では、医療者をはじめとした職員を対象として、2020年から年次健康診断時に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗体検査を実施している。2020年、2021年における抗N抗体※陽性率はそれぞれ0.34%、1.59%と低かったが、今回報告された2022年の調査結果では、17.7%に増加していた。また、抗N抗体陽性者のうち、約半数は感染の自覚がなかったことが明らかになった。本研究結果は、順天堂大学の金森 里英氏らによって、Scientific Reports誌2023年3月27日号で報告された。※ワクチンを接種した場合は抗S抗体が陽性となり、SARS-CoV-2に感染した場合は、抗N抗体と抗S抗体の両方が陽性になる。無症候コロナ感染が医療機関においても多く認められた 順天堂大学の年次健康診断(2022年7月17日~8月21日)を受診した3,788人(医師1,497人、看護師1,080人、検査技師182人、その他の医療従事者320人、事務職員542人、研究者157人、その他10人)を対象に、SARS-CoV-2抗体検査を実施した。 無症候コロナ感染を調査した主な結果は以下のとおり。・対象者3,788人の年齢(中央値)は36歳(範囲:20~86)で、女性が62.8%であった。ワクチン3回接種は89.3%であった。・2022年の年次健康診断時までに、357人がPCR検査に基づく新型コロナ感染歴を有していた。・2022年における抗N抗体陽性率は17.7%(669/3,788人)であった(2020年:0.34%、2021年:1.59%)。・抗N抗体陽性者669人のうち48.6%(325人)は、過去にPCR検査に基づく新型コロナ感染歴がなかった。また、抗N抗体陽性で、過去にPCR検査に基づく新型コロナ感染歴のある344人のうち、40人は無症候感染であった。・PCR検査に基づく新型コロナ感染歴のある357人のうち、79.0%(282人)は2022年1月以降(東京でのオミクロン株の初確認後)に感染していた。 著者らは、「ワクチン接種率が高く、徹底した感染対策がとられている医療機関においても無症候コロナ感染が多く認められたことから、無症候感染率の高さが急速な感染拡大を引き起こす要因となっている可能性がある。医療現場での感染拡大を完全に抑制することは難しいかもしれないが、医療現場では定期的な検温、衛生管理、マスクなどの継続的な取り組みが必要になる」とまとめた。

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PM2.5曝露で認知症リスク増加の可能性~メタ解析/BMJ

 直径2.5ミクロン未満の微小粒子状物質(PM2.5)への曝露が認知症リスクの増加と関連する可能性があり、ややデータが少ないものの二酸化窒素と窒素酸化物への曝露にも同様の可能性があることが、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のElissa H. Wilker氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年4月5日号に掲載された。認知症リスクと大気汚染物質の関連をメタ解析で評価 研究グループは、認知症リスクにおける大気汚染物質の役割の調査を目的に、文献の系統的レビューとメタ解析を行った(Harvard Chan National Institute of Environmental Health Sciences Center for Environmental Healthなどの助成を受けた)。 成人(年齢18歳以上)を対象に長期の追跡調査を行い、1年以上の曝露を平均化し、環境汚染物質と臨床的な認知症の関連を報告した研究を対象とした。 2人の研究者が別個に、所定のデータ抽出書式を用いてデータを抽出し、Risk of Bias In Non-randomised Studies of Exposures(ROBINS-E)の方法を用いてバイアスリスクを評価。結果に影響を与える可能性がある試験因子による違いが考慮された。オゾンには関連がない 2,080件の記録から51件の研究が適格基準を満たし、メタ解析には16件が含まれた。積極的症例確認を行った研究が9件、受動的症例確認を行った研究が7件で、それぞれ4件および7件はバイアスリスクが高いと判定された。 PM2.5については、14件の研究がメタ解析の対象となった。PM2.5の曝露量2μg/m3当たりの認知症のハザード比(HR)は1.04(95%信頼区間[CI]:0.99~1.09)であった。積極的症例確認を行った7件の研究では、HRは1.42(1.00~2.02)であり、受動的症例確認を行った7件の研究では、HRは1.03(0.98~1.07)だった。 また、二酸化窒素10μg/m3当たりのHRは1.02(95%CI:0.98~1.06)(9研究)、窒素酸化物10μg/m3当たりのHRは1.05(0.98~1.13)(5研究)であった。 一方、オゾン5μg/m3当たりのHRは1.00(95%CI:0.98~1.05)(4研究)であり、認知症との明確な関連は認めなかった。 著者は、「本研究におけるメタ解析によるハザード比には限界があり、解釈には注意が必要である」とし、「今回示された知見は、PM2.5やその他の大気汚染物質への曝露を制限することの公衆衛生上の重要性を支持し、疾病負担の評価や施策の審議を行う際に、環境汚染物質の認知症への影響に関する最良の推定値を提供するものである」と述べている。

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不健康なプラントベース食では死亡、がん、CVDリスクが増大

 “健康的”なプラントベース食(植物由来の食品)の摂取が多いほど、死亡、がん、心血管疾患のリスクが低くなるが、“不健康”なプラントベース食ばかりではそれらのリスクがむしろ高くなることが、英国・クイーンズ大学ベルファストのAlysha S. Thompson氏らの研究により明らかになった。JAMA Network Open誌2023年3月28日号掲載の報告。 プラントベース食は、卵、乳製品、魚、肉を少量のみ摂取またはまったく摂取しないことを特徴とする食事で、環境と健康の両方の理由から世界中で人気となっている。しかし、プラントベース食の質と死亡や慢性疾患のリスクに関する総合的な評価は不十分であった。そこで研究グループは、健康的なプラントベース食と不健康なプラントベース食が、英国成人の死亡や主要な慢性疾患(心血管疾患、がん、骨折など)と関連しているかどうかを調査した。 調査は、UKバイオバンクの参加者を前向きに収集して行われた。2006~10年に40~69歳の参加者を募集して2021年まで追跡し、データの解析は2021年11月~2022年10月に行われた。主要アウトカムは、健康的/不健康なプラントベース食の順守の程度による、死亡率(全死因死亡および疾患特異的死亡)および心血管疾患(全イベント、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中)、がん(全がん、乳がん、前立腺がん、結腸直腸がん)、骨折(全部位、椎骨、股関節)の相対的危険度であった。 健康的なプラントベース食か不健康なプラントベース食かどうかは、1日最低2回の食事を、24時間の平均摂取量に基づいて17項目の食品群(全粒穀物、果物、野菜、ナッツ、植物性の代替食品、紅茶/コーヒー、フルーツジュース、精製穀物、ジャガイモ、砂糖入り飲料、お菓子/デザート、動物性脂肪、乳製品、卵、魚介類、肉、その他の動物性食品)のスコアで評価した。 主な結果は以下のとおり。・参加者12万6,394例(平均年齢56.1歳、女性55.9%、白人91.3%)を10.6~12.2年間追跡したところ、5,627例の死亡、6,890例の心血管疾患イベント、8,939例のがん、4,751例の骨折が発生した。・健康的なプラントベース食をより多く摂取していたのは、女性、低BMI、高齢、服薬/健康異常なし、低アルコール摂取、高学歴の人であった。・健康的なプラントベース食の順守率が最も高い四分位集団では、最も低い集団と比較して、全死因死亡、全がん、全心血管疾患のリスクが低かった(死亡のハザード比[HR]:0.84[95%信頼区間:0.78~0.91]、がんのHR:0.93[0.88~0.99]、心血管疾患のHR:0.92[0.86~0.99])。・同様に、健康的なプラントベース食の順守率が最も高い集団では、心筋梗塞および虚血性脳卒中のリスクも低かった(心筋梗塞のHR:0.86[0.78~0.95]、虚血性脳卒中のHR:0.84 [0.71~0.99])。・一方、不健康なプラントベース食を最も多く摂取していた集団では、全死因死亡、全がん、全心血管疾患のリスクが高かった(死亡のHR:1.23[1.14~1.32]、がんのHR:1.10[1.03~1.17]、心血管疾患のHR:1.21[1.05~1.20])。・同様に、不健康なプラントベース食を最もよく摂取していた集団では、心筋梗塞および虚血性脳卒中リスクも高かった(心筋梗塞のHR:1.23[0.95~1.33]、虚血性脳卒中のHR:1.17[1.06~1.29])。・健康的または不健康なプラントベース食と、出血性脳卒中、個別のがん種、骨折(全部位、部位別)には有意差はみられなかった。・砂糖入り飲料、スナック/デザート、精製穀物、ジャガイモ、フルーツジュースの摂取量が少ない健康的な食事がリスクの低下と関連していた。・これらは、性別、喫煙状況、BMI、社会経済的地位、多遺伝子リスクスコア(PRS)と関連はみられなかった。 上記の結果より、研究グループは「健康的なプラントベース食の摂取が、心血管疾患、がん、および死亡のリスクの低下と関連していた。健康的なプラントベース食をより多く摂取し、動物性食品の摂取を減らすことで、慢性疾患の危険因子や遺伝子素因に関係なく健康に有益である可能性がある」とまとめた。

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第108回薬剤師国家試験合格率は69%、最下位の大学は29%【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第108回

第108回薬剤師国家試験が2月18~19日に全国10都道府県で実施され、3月22日に合格発表が行われました。厚生労働省は22日、第108回薬剤師国家試験について、合格者数は前年から▲5人の9,602人、合格率も例年並みの69%だったと発表した。新卒に限った合格率は84.86%(7,254人)で、こちらも例年並み。合格率の低い私立大薬学部で、新卒と既卒を合わせた合格率の最下位は青森大の29.21%、次いで下から姫路獨協大30.97%、第一薬科大36.36%、奥羽大39.18%、千葉科学大42.55%の順だった。(2023年3月23日付 RISFAX)新しく薬剤師になった人は9,602人で、昨年度とほぼ同様の結果でした。ここ10年ほどは、国家試験の合格率が話題になることが多かったような気がします。2013年度にあたる第99回において合格率60%という全薬剤師が震撼する数字をたたき出して以降、2015年度の第101回から5回連続で70%台という厳しい数字で推移し、2019年度の第105回以降は70%を下回っています。今回の合格率も69%で、60%台という数字も見慣れてしまいました。おそらく、環境の変化や何か具体的にテコ入れがされることがない限り、今後もこのくらいの数字で推移するのだろうと想像します。2006年度に薬剤師を養成する薬学部は4年制から6年制になりました。この前後から6年制薬学部の新設が相次ぎ、2006年度は66大学67学部でしたが、2021年度には77大学79学部に増え、入学する学生も大幅に増えました。2006年度に入学した1年生が国家試験受験資格を得る6年生になるのが最速で2012年度ですから、6年制への移行・新設薬学部の増加と、薬剤師国家試験の合格率の低迷が関連していると思われます。文部科学省は、これまでも定員充足率や国家試験合格率が低い私立大学を問題視しており、改善を促してきました。また、厚生労働省の推計によると、2020年に約32万人だった薬剤師数は、25年後の2045年には最大で約45万人となり、供給過多になると予測されています。2022年8月には、文部科学省が2025年以降の6年制薬学部の新設・定員増を規制する方針を明らかにしており、早ければ2022年度中に大学設置認可基準を改定すると言われていましたので、近いうちに何らかの発表がなされるのではないかと思います。6年制への移行や新設薬学部の大幅増、薬剤師国家試験の合格率の変化などさまざまなことがあった10年でしたが、これからまた新しいフェーズが始まるのかもしれません。

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第60回 正規確率プロットとは?【統計のそこが知りたい!】

第60回 正規確率プロットとは?今回も正規分布における分布の調査方法について説明します。前回解説した「歪度と尖度」と同様に観測されたデータ(サンプル)の累積相対度数の傾向から度数分布が正規分布であるかを調べる方法を「正規確率プロット(Normal probability plot)」と言います。正規確率プロットは、累積相対度数から「z値」と言う統計量を算出します。図1の度数分布の累積相対度数を、正規確率プロットによって正規分布であるかを調べてみましょう。図1z値とは、第58回で学習した、z分布(標準正規分布)における下側確率が累積相対度数となる横軸の値です。また、z値はExcel関数(図2)で求められます。図2 Excelでのz値の求め方算出したz値を表に書き込むと下記のようになります。表 z値(右端)を追加した一覧表次に、z値を縦軸、階級値を横軸にとり散布図(図3)を描きます。このグラフを「正規確率プロット」と言います。図3 事例の散布図散布点が直線傾向にあると判定できた場合、「度数分布の形状は正規分布である」と言えます。言い換えると直線傾向がみられるので、「正規分布である」と言えます。■判断の着眼点散布点に対する直線の当てはまり具合は決定係数で把握できます。決定係数が0.99以上の場合、度数分布は正規分布と判断します。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第55回 スピアマン順位相関係数の計算方法は?第56回 正規分布とは?第57回 正規分布の面積(確率)の求め方は?第58回 標準正規分布とは?第59回 歪度と尖度とは?

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死亡・CVリスクを低下させる食事法は?40試験のメタ解析/BMJ

 カナダ・マニトバ大学のGiorgio Karam氏らが7つの代表的な食事プログラムに関する試験についてメタ解析を行い、地中海式食事と低脂肪食を推奨するプログラムは、身体活動やその他の介入の有無にかかわらず、心血管疾患リスクが高い患者の全死因死亡および非致死的心筋梗塞を低減するという、中程度のエビデンスが示されたことを明らかにした。地中海式食事プログラムは、脳卒中リスクも低減することが示唆された。概してその他の食事プログラムは、最低限の介入(食事パンフレット配布など)に対する優越性は示されなかったという。BMJ誌2023年3月29日号掲載の報告。有名な構造的食事プログラム7つについてメタ解析で評価 研究グループは、心血管疾患リスクが高い患者の死亡および主要心血管イベントの予防について、名の知れた構造的食事療法と健康的な行動プログラム(食事プログラム)の相対的有効性を、無作為化比較試験のシステマティックレビューとネットワークメタ解析で評価した。 2021年9月時点でAMED(Allied and Complementary Medicine Database)、CENTRAL(Cochrane Central Register of Controlled Trials)、Embase、Medline、CINAHL(Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature)、ClinicalTrials.govを検索。心血管疾患リスクが高い患者について、食事プログラムと最低限の介入(健康的な食事に関するパンフレット配布など)または代替プログラムを比較した、9ヵ月以上追跡し、死亡または主要心血管イベント(脳卒中や非致死的心筋梗塞など)に関する報告のある無作為化試験を選択した。食事プログラムには、食事介入に加えて、運動や行動支援を含むものもあり、また副次的介入として薬による治療も含んだ。 アウトカムは、全死因死亡、心血管死、および個々の心血管イベント(脳卒中、非致死的心筋梗塞、予定外の心血管インターベンション)。 2人のレビュアーがそれぞれデータを抽出しバイアスリスクを評価。頻度主義的推定とGRADE(grading of recommendations assessment, development and evaluation)法を用いてランダム効果ネットワークメタ解析を行い、各アウトカムのエビデンスの確実性を評価した。 7つの食事プログラムに関する40件の適格試験(低脂肪食18、地中海式食事12、超低脂肪食6、加工脂肪食4、低脂肪+低ナトリウム食3、オーニッシュ食3、プリティキン食1)、被験者総数3万5,548例が解析に包含された。地中海式食事、全死因死亡28%減、心血管死45%減、非致死的心筋梗塞52%減 最終追跡報告時点で、中程度のエビデンスとして、地中海式食事プログラムは最低限の介入に対して、全死因死亡(オッズ比[OR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.56~0.92、中程度リスク患者のリスク差:追跡5年で-17/1,000例)、心血管死(0.55、0.39~0.78、-13/1,000例)、脳卒中(0.65、0.46~0.93、-7/1,000例)、非致死的心筋梗塞(0.48、0.36~0.65、-17/1,000例)の予防について優れることが示された。 また、中程度のエビデンスとして、低脂肪食プログラムは最低限の介入に対して、全死因死亡(OR:0.84、95%CI:0.74~0.95、中程度リスク患者のリスク差:追跡5年で-9/1,000例)、非致死的心筋梗塞(0.77、0.61~0.96、-7/1,000例)の予防について優れることが示された。 地中海式および低脂肪の両食事プログラムの絶対的有効性は、リスクがより高い患者で顕著だった。死亡と非致死的心筋梗塞のリスクについて、両食事プログラム間で証拠に基づく差はなかった。 その他の5つの食事プログラムについては概して、最低限の介入と比較してもベネフィットはほとんど、またはまったくないことが低~中程度のエビデンスで認められた。

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良性発作性頭位めまい症(BPPV)診療ガイドライン 2023年版

BPPV診療に必携・必読・必修のガイドライン登場!2009年に日本めまい平衡医学会が発表した「良性発作性頭位めまい症診療ガイドライン(医師用)」をベースに、現代的な手法に則って大幅にリニューアルした診療ガイドライン。CQは10のテーマに対して設定され、詳細なシステマティックレビューを通じたエビデンスに基づいた治療を推奨しています。また、頭位変換検査や頭位変換治療の実際などが、イラストを用いて詳説されています。BPPV診療の教科書として必携・必読・必修の1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    ●良性発作性頭位めまい症(BPPV)診療ガイドライン 2023年版定価2,860円(税込)判型B5判頁数88頁(図数:16枚)発行2023年3月編集日本めまい平衡医学会

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第155回 日本はパワハラ、セクハラ、性犯罪に鈍感、寛容すぎる?WHO葛西氏解任が日本に迫る意識改造とは?(後編)

パンデミック以前の日常が完全に戻ってきたこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末、関東はお花見日和でした。近所の公園では、葉桜となってきた桜の木の下で多くの人がノーマスクで宴会をしていました。パンデミック以前の日常が完全に戻ってきたわけですが、数週間前からこれだけ飲んで騒いでいるのに、新型コロナウイルス感染症の患者数は目立った増加となってはいません。感染症は本当に不思議な病気だなと思いながら、私も桜が舞い散る公園で、タコスにコロナビールを楽しみました。さて今回も、前回に引き続き、WHO(世界保健機関)の西太平洋地域事務局(フィリピン・マニラ)の葛西 健・事務局長が解任されたニュースを取り上げます。「The Lancet」が「グローバルヘルスの専門家たち葛西氏解任を歓迎」と報道WHOは3月8日、職員らへの人種差別的な発言などがあったとして内部告発され、昨年8月から休職中だった葛西・西太平洋地域事務局長を解任したと発表しました。日本国内では「解任理由がきちんと説明されていない」といった批判もあるようですが、国際的にはどうやら今回の解任を歓迎する声の方が大きいようです。医学雑誌の「The Lancet」は3月18日、「Global health experts welcome Kasai dismissal(グローバルヘルスの専門家たちが葛西氏解任を歓迎)」と題する記事を掲載しています1)。「葛西氏はWHO労働者への嫌がらせを行っていた」刺激的なタイトルのこの記事は、世界の複数のグローバルヘルスの専門家が、今回の調査や決定が適正に行われ、処分も妥当と考え、解任決定を歓迎していると報じています。記事によれば、WHOは虐待行為を一切容認しないという方針に沿って今回の内部告発を調査、すべてのWHOスタッフに適用される通常の手順に従って検討が行われたとのことです。その結果、葛西氏が「攻撃的なコミュニケーション、公の場での侮辱と人種的中傷」を含む、WHO労働者へのハラスメントを行っていたことが判明したとしています。これら結果を踏まえ、西太平洋地域委員会の投票が行われ、解任賛成13票、反対11票、棄権1票という結果となり、その後、非公開の理事会で葛西氏の解任が決定したとのことです。WHOの不正行為や虐待行為に対するチェックの目は一層厳しくなる同記事は、米国ジョージタウン大学のグローバルヘルス法の研究者の次のような発言も報じています。「この決定を行ったWHOに拍手を送る。その決定は正しかったが、もっと早く行われるべきだった。WHOは、誰もが尊重される安全で敬意に満ちた職場を作るために、可能な限り最高の基準を設定する必要があると考える」。同記事は、その他の世界のグローバルヘルスの専門家たちの今回の決定に対する賛意も伝えています。それらはある意味、日本が期待を持って送り込んでいた葛西氏の”評判”とも言えるもので、日本政府にはなかなか手厳しい内容となっています。ところで、WHO内部では葛西氏の事例のようなハラスメントだけではなく、エボラ出血熱発生中に起きたWHO労働者や援助労働者に対する性的虐待なども問題視されており、同記事は、葛西氏に行われた内部調査や解任決定を機に、WHOの組織内におけるその他のさまざまな不正行為や虐待行為に対するチェックの目は一層厳しくなるに違いない、と書いています。横浜DeNAに現役バリバリのMLBの投手入団そう言えば、WBC開催中の3月14日、横浜DeNAベイスターズは3年前の2020年、シンシナティ・レッズ時代にサイ・ヤング賞を獲得(同年に同じく候補となったダルビッシュ有投手と争いました)したMLB投手、前ロサンゼルス・ドジャースのトレバー・バウアー投手と契約を結んだことを発表しました。現役バリバリのMLBの投手がNPBに来るということで大きなニュースになりました。実は彼、2021年に知人女性に対するドメスティックバイオレンスの禁止規定違反でメジャーリーグ機構から324試合の長期の出場停止処分を受け(その後、異議申し立てをし、処分は194試合に短縮)、今年1月にドジャースとの契約が解除された選手です。契約解除後、MLBでは新たな契約をする球団は現れず、うまくDeNAが獲得したというわけです。MLBが獲得に動かなかった理由は多々あるようです。ヒューストン・アストロズの投手陣が強力な粘着物質を使っている疑いがあることを”チクリ”、粘着物質使用厳格化のきっかけを作ったことでMLBの選手たちから裏切り者扱いされた、という説も流れていますが、女性に対するドメスティックバイオレンスの一件も少なからず影響していることは確かでしょう。そうした”問題”選手を、トラブルにはとりあえず目をつぶって獲得し、大喜びしているのも日本人のパワハラ、セクハラへに対する鈍感さ、寛容さのなせる業かもしれません。DeNAは3月24日に横浜市内で華々しくバウアー投手の入団会見を行いましたが、その5日後の29日に同選手が「右肩の張りを訴えた」と球団が発表、4月中の一軍デビューは先送り濃厚となってしまいました。「バウアー投手はMLB復帰のために日本にリハビリに来ただけ。もとより真剣に投げる気はない」という声もあるようです。BBC制作ジャニーズのドキュメンタリーをほぼ黙殺の日本マスコミパワハラ、セクハラ関連の話題ということでは、英国のBBCが制作、公開したドキュメンタリー「Predator:The Secret Scandal of J-Pop」(J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル)を日本のマスコミのほとんどが黙殺したことも挙げておきたいと思います。2019年に死去したジャニーズ事務所の創業者、ジャニー喜多川氏によるジャニーズJr.の少年への性的虐待を追ったこのドキュメンタリー、日本ではBBCワールドニュースで3月18日、19日に配信放送されました。この件について日本のマスコミで報道したのはかねてからジャニーズ問題を追ってきた週刊文春と、FRIDAYデジタル、日刊ゲンダイDIGITALなどごく一部でした。香港や韓国、台湾のメディアも大きく取り上げたというのに、日本のマスコミの沈黙ぶりは、異常と言えるかもしれません。こうした鈍感さ、時代遅れの寛容さや忖度は、葛西氏のパワハラ同様、国際社会ではもう認められなくなってきています。そうした自覚と意識改造が日本人には早急に求められていると思いますが、皆さんいかがでしょう。「ジャニー喜多川氏の性的虐待の事実と、メディアに与えた強い影響力を調査し、社会が見て見ぬふりをすることの残酷な結果を明らかにする」(BBCワールドニュースのWebサイトより)というこの番組、4月18日までAmazonプライム・ビデオで視聴可能です。興味のある方はご覧下さい。参考1)Zarocostas J, Lancet. 2023 Mar 18. [Epub ahead of print]

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『BLUE GIANT』を観て思いを新たに【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第24回

『THE FIRST SLAM DUNK』(スラムダンク)や『ONE PIECE FILM RED』など、今年の冬はアニメの映画のヒットが続きましたね~。とくに職場ではかなりの人が『スラムダンク』を観に行っていたようで、みんな良かったって言うんですよね~。いつまでやってるんだろ…でも今は仕事が忙しいからな~。なかなか時間が取れなくて『スラムダンク』は観に行けない。しかしですね、割と遅い時間に仕事が終わって、疲れた体を引きずってでも観に行った作品があります。それは『BLUE GIANT』です。主人公に感情移入できる特別な作品実は以前に「空手家心臓外科医、ドイツ武者修行の旅」で書かせてもらったことがあったのですが、BLUE GIANTは私にとって特別な作品なのです。BLUE GIANTの主人公は私と同時期にドイツ・ミュンヘンに住み、一緒にもがき苦しみながら、それぞれの道を切り開いていきました。私にとって彼は心の同志なのです。仕事終わりにレイトショーへ行き、たとえ翌日倒れたとしても! これだけは見逃すわけにはいかない。それほどの覚悟で観に行きました。参考にBLUE GIANTは、宮城県の高校生が世界一のジャズプレーヤーになるために、サックス片手に上京するお話です。旅の始まりのミュンヘン中央駅当初、BLUE GIANTは「ジャズが聴こえるマンガ」として注目を集めました。何を大げさな…と思うかもしれませんが、読んでみると、確かに聴こえてくるのです!主人公は常に「ジャズは激しい」と言い続けているのですが、ジャズが激しいというのがそもそもよくわからない。でも、きっとコイツは激しいジャズを奏でているんだろう、とイメージできてしまうマンガです。それがついに、彼のジャズを聴くことができる日が来るなんて…。映画化が決まったと知ったときは「実際にジャズを流すの? ハードル高すぎてコケるんじゃないか…」と心配したものですが…、完全な杞憂でした。演奏も演出も、人間ドラマも、ずっと最高でした。レイトショーでは、周りはおっさんしかいなくて、3分の1は飲み会後の酔っ払いが占めていました。でも、みんな泣いていました。鼻ジュルジュルさせながら。激しいジャズもあるんだと心に残りました。大切な作品だからこそお勧めしないでもですね。感動しまくった映画でしたが、まだ誰にも勧めていません。BLUE GIANTは自分にとって特別すぎて、「面白くなかった」と言われるとショックを受けそうですので…。「あいつはまだ闘っている。俺も頑張るしかない」と、ただ自分の心に刺さり、それだけでいいと思える映画でした。

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学会スライド 図解の技術‐グラフと表の効果的な見せ方・作り方

グラフ、表、フローチャート、学会スライド作成の達人を目指せ!学会発表のスライド作成で一番差がつくのが、グラフと表の作り方。パワーポイントのデフォルトで作るばかりでは、いつまでもスライド初級者のままです。本書を読んで学会発表の達人を目指しましょう! グラフと表を中心に、フローチャートなど、スライド作成時における図解のテクニックを解説します。フォント選びや色彩計画など、基本的なテクニックもバッチリです。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する学会スライド 図解の技術‐グラフと表の効果的な見せ方・作り方定価3,630円(税込)判型B5判頁数192頁発行2023年4月著者飯田英明(メディアハウスA&S)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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