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がん免疫療法ガイドライン 第3版

4年ぶりの改訂! がん免疫療法の最新エビデンスを網羅的に解説!適応拡大が急速に進むがん免疫療法の臓器横断的ガイドラインとして4年ぶりの大改訂となる第3版では、新たに登場した免疫チェックポイント阻害薬に加え、BiTE抗体やCAR-T細胞療法に関するエビデンスを収載しています。また、近年急速に蓄積している臨床研究成果のシステマティックレビューに基づいた記載が大幅に追加されました。免疫関連有害事象についても最新かつ適切な情報を提供しています。さらに、5つの臓器横断的Background Question(BQ)を新設し、より充実した内容となりました。治療医のみならず、がん免疫療法に携わるすべての医療者に役立てていただきたい1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    がん免疫療法ガイドライン 第3版定価3,300円(税込)判型B5判頁数264頁(図数:29枚、カラー図数:5枚)発行2023年3月編集日本臨床腫瘍学会

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臨床心理士と精神科医の夫婦が子育てで大事なこと全部まとめてみました

シネマセラピーでおなじみ荒田先生のマンガでよくわかる!0~18歳の子育て大全CareNet.comの連載「シネマセラピー」でおなじみの精神科医、荒田 智史先生。シネマセラピーでは、子育てをテーマとして解説いただくこともありましたが、この度「科学的根拠に基づく子育て」を掲げた著書が発売されました。「厳しくすべきか見守るべきか」「親がリードすべきか」「子どものペースに合わせるべきか」など、成長に伴って変化していく子育ての悩みについて、発達心理学、行動遺伝学、進化心理学という3つの視点で解決する本書。非認知能力、自己肯定感、自己効力感、子供のHSP、教育虐待、性教育、中学受験、反抗、思春期危機、レジリエンス、いじめ、不登校など…乳児期~思春期の子育てで気になる課題と対処をマンガでわかりやすく解説しています。本書は、子育てに悩む親だけでなく、医療関係者(精神科医や小児科医など)の方々にもお役立ていただける内容となっているため、ぜひ読んでいただきたい一冊です。また、病院の待合室に置いていただければ、子育てでお困りの患者さんにもお役立ていただけます。著者・荒田よりご挨拶臨床心理士で妻の杉野珠理との共著です。私たちがいっしょになって、みなさんのお悩みやご心配に全力でお答えしています。エビデンスだけでなく、臨床的なケース、そして夫婦としてのリアルな子育ての現実(ときに葛藤!?)も盛り込みました。この本が、患者さんへの子育てのアドバイス、そしてみなさん自身の子育ての参考になればうれしい限りです。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    臨床心理士と精神科医の夫婦が子育てで大事なこと全部まとめてみました定価1,980円(税込)判型四六判頁数352頁発行2023年3月著者杉野 珠理、荒田 智史

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出産後の母親へのオピオイド処方、乳児の短期有害アウトカムに関連なし/BMJ

 カナダ・サニーブルック保健科学センターのJonathan S. Zipursky氏らは、出産後の母親へのオピオイド処方が、児の有害アウトカムの短期的リスクを増加させるかどうかを検討する住民ベースコホート研究を行い、両者間に関連はないことを明らかにした。北米では、ほとんどの母親が出産後に母乳で育児を開始する。乳児の呼吸器系または中枢神経系の抑制を引き起こすと予想されない量ではあるが、すべてのオピオイドは母乳へ移行する。母乳で育てられた乳児のオピオイド毒性に関する報告が散見されているが、母乳中のオピオイドを大量摂取したためと考えられていた。BMJ誌2023年3月15日号掲載の報告。出産後7日以内のオピオイド処方と乳児の30日以内有害アウトカムを検討 研究グループは、ICES MOMBABY(カナダ・オンタリオ州の全出生児とその母親の98%以上を特定可能)、Narcotics Monitoring Systemなどの各種データベースを用い、2012年9月1日~2020年3月31日の期間にオンタリオ州の病院で出産し7日以内に生存退院した母子86万5,691組を特定し、退院後7日以内にオピオイドが処方された母親とその児(処方群)、ならびに処方群の母親と年齢、出産年、分娩様式などを傾向スコアマッチング法で適合させた、オピオイドが処方されなかった母親とその児(非処方群)について解析した。 主要アウトカムは、指標日(オピオイド処方群は処方日、非処方群は処方群とマッチさせた模擬的な日付)から30日以内の乳児の入院、副次アウトカムは同期間の乳児の救急外来受診、すべての外傷による入院、新生児集中治療室(ICU)への入室、蘇生または呼吸補助を伴う入院、全死因死亡とした。解析には、Cox比例ハザード回帰モデルを使用した。死亡を含む有害アウトカムに有意差なし オピオイド処方群8万5,675例(オピオイドを処方された母親8万5,852例の99.8%)と、非処方群8万5,675例が解析対象となった。 30日以内に入院した乳児は、オピオイド処方群で2,962例(3.5%)、非処方群で3,038例(3.5%)であり、オピオイド処方群の乳児は非処方群の乳児と比較して指標日から30日以内に入院する可能性は高くなかった(ハザード比[HR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.93~1.03)。 指標日から30日以内の救急外来受診は、オピオイド処方群9,053例(10.6%)、非処方群8,714例(10.2%)で、オピオイド処方群がやや高かったが(HR:1.04、95%CI:1.01~1.08)、その他の乳児の有害アウトカムに差は確認されず、また、乳児死亡は報告されなかった。 結果を踏まえて著者は、「特定の母親への出産後の短期オピオイド使用に注意を払うことを支持するが、臨床医と両親は不安を抱く必要はなく、乳児への有害リスクは低い」と述べている。

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二次性僧帽弁逆流へのTEER、5年間の評価/NEJM

 ガイドラインに基づく最大用量の薬物療法後も心不全と中等度~重度の二次性僧帽弁逆流症が認められる患者において、僧帽弁の経カテーテル的edge-to-edge修復術(TEER)は薬物療法単独と比較し、フォローアップ5年間での心不全による入院リスクを半減し、全死因死亡リスクも約30%低減した。米国・マウントサイナイ・アイカーン医科大学のGregg W. Stone氏らが、614例を対象に行った無作為化比較試験の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2023年3月5日号掲載の報告。米国とカナダ78ヵ所でTEER vs.薬物療法単独の無作為化比較試験 研究グループは、2012年12月27日~2017年6月23日に米国とカナダにある78ヵ所の医療機関を通じて、ガイドラインに基づく最大用量の薬物療法を実施後、心不全と中等度~重度の二次性僧帽弁逆流症が認められる患者614例を登録した。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはTEERを(デバイス群302例)、もう一方には薬物療法のみ(対照群312例)を行い追跡調査した。 主要有効性エンドポイントは、フォローアップ2年間の、心不全によるすべての入院だった。また、すべての心不全入院の年間発生率、全死因死亡年間発生率、死亡または心不全入院のリスク、および安全性、その他のアウトカムについて5年間評価した。心不全入院年間発生率のハザード比0.53 5年間の評価に基づく心不全入院年間発生率は、デバイス群33.1%、対照群57.2%だった(ハザード比[HR]:0.53、95%信頼区間[CI]:0.41~0.68)。5年間の全死因死亡率は、デバイス群57.3%、対照群67.2%だった(0.72、0.58~0.89)。 死亡または心不全入院の発生率は、デバイス群73.6%、対照群91.5%だった(HR:0.53、95%CI:0.44~0.64)。 デバイス特有の安全性イベント発生率は、5年間で1.4%(4/293例)報告され、全イベントが術後30日以内の発生だった。

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第155回 コロナ罹患後症状をメトホルミンが予防 / コロナで父親の顔がわからなくなった女性

long COVIDを糖尿病治療薬メトホルミンが予防昔ながらの糖尿病治療薬メトホルミンの新型コロナウイルス感染症罹患後症状(long COVID)予防効果が米国の無作為化試験で認められ1)、「画期的(breakthrough)」と評するに値する結果だと有力研究者が称賛しています2)。COVID-OUTと呼ばれる同試験では駆虫薬として知られるイベルメクチンとうつ病治療に使われるフルボキサミンも検討されましたが、どちらもメトホルミンのようなlong COVID予防効果はありませんでした。COVID-OUT試験は2020年の暮れ(12月30日)に始まり、被験者はメトホルミン、イベルメクチン、フルボキサミン、プラセボのいずれかに割り振られました。被験者、医師、その他の試験従事者がその割り振りを知らない盲検状態で実施されました。また、被験者をどこかに出向かせることがなく、試験従事者と直接の接触がない分散化(decentralized)方式の試験でもあります。募ったのは肥満か太り過ぎで年齢が30~85歳、コロナ発症から7日未満、検査でコロナ感染が判明してから3日以内の患者です。箱に入った服用薬一揃いは試験参加決定の当日または翌日に被験者に届けられ、結果的に試験参加同意から最初の服用までは平均して1日とかかりませんでした。メトホルミンの服用日数は14日間で、用量は最初の日は500mg、2~5日目は500mgを1日に2回、6~14日目は朝と晩にそれぞれ500mgと1,000mgです。メトホルミン投与群とプラセボ群合わせて1,125例がlong COVIDの検討に協力することを了承し、1ヵ月に1回連絡を取ってlong COVIDの診断があったかどうかが300日間追跡されました。その結果、およそ12例に1例ほどの8.4%がその診断に至っていました。肝心のメトホルミン投与群のlong COVID発生率はどうかというと約6%であり、プラセボ群の約11%に比べて40%ほど少なく済んでいました。発症からより日が浅いうちからのメトホルミン開始はさらに有効で、発症から4日未満で開始した人のlong COVID発現率は約5%、4日以上経ってから開始した人では約7%でした。上述のとおりイベルメクチンやフルボキサミンのlong COVID予防効果は残念ながら認められませんでした。COVID-OUT試験のlong COVID結果報告はまだプレプリントであり、The Lancet on SSRNに提出されて審査段階にあります。メトホルミンの効果はlong COVIDの枠にとどまらずコロナ感染の重症化予防も担いうることが他でもないCOVID-OUT試験で示されています。その結果はすでに査読が済んで昨夏2022年8月にNEJM誌に掲載されており、第一の目的である低酸素血症、救急科(ED)受診、入院、死亡の予防効果は認められなかったものの、メトホルミン投与群のED受診、入院、死亡は有望なことにプラセボ群より42%少なくて済みました3)。さらに試験を続ける必要はあるものの、値頃で取り立てるほど副作用がないことを踏まえるにメトホルミンが用を成すことは今や確からしいことをCOVID-OUT試験結果は示していると米国屈指の研究所Scripps Research Translational Instituteの所長Eric Topol氏は述べています2)。Topol氏はbreakthroughという表現を安易に使いませんが、安価で安全なメトホルミンのCOVID-OUT試験での目を見張る効果はその表現に見合うものだと讃えています。メトホルミンの効果を重要と考えているのはTopol氏だけでなく、たとえばハーバード大学病院(Brigham and Women's Hospital)の救急科医師Jeremy Faust氏もその1人であり、「コロナ感染が判明したらすぐにメトホルミン服用を開始する必要があるかと肥満か太り過ぎの患者に尋ねられたら、COVID-OUT試験結果を根拠にして “必要がある”と少なくとも大抵は答える」と自身の情報配信に記しています4)。コロナ感染で顔がわからなくなってしまうことがあるコロナ感染で匂いや味がわからなくなることがあるのはよく知られていますが、顔が区別できなくなる相貌失認(prosopagnosia)が生じることもあるようです。神経系や振る舞いの研究結果を掲載している医学誌Cortexに相貌失認になってしまった28歳のコロナ感染女性Annie氏の様子や検査結果などをまとめた報告が掲載されました5,6)。Annie氏は2020年3月にコロナ感染し、その翌月4月中ごろまでには在宅で働けるほどに回復しました。コロナ感染してから最初に家族と過ごした同年6月に彼女は父親が誰かわからず、見た目で叔父と区別することができませんでした。そのときの様子をAnnie氏は「誰か知らない顔の人から父親の声がした(My dad's voice came out of a stranger's face)」と説明しています。相貌失認に加えて行きつけのスーパーまでの道で迷うことや駐車場で自分の車の場所が分からなくなるという方向音痴のような位置把握障害(navigational impairment)もAnnie氏に生じました。また、long COVIDの主症状として知られる疲労や集中困難などにも見舞われました。Annie氏のような症状はどうやら珍しくないようで、long COVID患者54例に当たってみたところ多くが視覚認識や位置把握の衰えを申告しました。脳損傷後に認められる障害に似た神経精神の不調がコロナ感染で生じうるようだと著者は言っています。参考1)Outpatient Treatment of COVID-19 and the Development of Long COVID Over 10 Months: A Multi-Center, Quadruple-Blind, Parallel Group Randomized Phase 3 Trial. The Lancet on SSRN :Received 6 Mar 2023.2)'Breakthrough' Study: Diabetes Drug Helps Prevent Long COVID / WebMD3)Carolyn T, et al. N Engl J Med. 2022;387:599-610.4)Metformin found to reduce Long Covid in clinical trial. Jeremy Faust氏の配信5)Kieseler ML, et al. Cortex. 9 March 2023. [Epub ahead of print]6)Study Says Long COVID May Cause Face Blindness / MedScape

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治療抵抗性うつ病に対するガイドラインの推奨事項

 うつ病は、重篤かつ広範に及ぶメンタルヘルス関連疾患である。うつ病は、2つ以上の抗うつ薬による治療でも寛解が得られず、治療抵抗性うつ病に至ることも少なくない。ブラジル・サンパウロ大学のFranciele Cordeiro Gabriel氏らは、診断および治療の改善を目的に作成された臨床診療ガイドライン(CPG)における治療抵抗性うつ病に対する推奨事項について、それらの品質および比較をシステマティックに評価した。その結果、うつ病治療のための高品質なCPGにおいて、治療抵抗性うつ病の定義および使用が統一されておらず、治療抵抗性うつ病に対する共通したアプローチも見当たらなかった。PLOS ONE誌2023年2月6日号の報告。 CPGを作成している専門データベースおよび組織を検索した。CPGの品質および推奨事項は、独立した研究者によりAGREE IIおよびAGREE-REXを用いて評価した。治療抵抗性うつ病の定義および推奨事項を含む高品質なCPGのみを対象に、divergenciesとconvergenciesおよび長所と短所を調査した。 主な結果は以下のとおり。・高品質の推奨事項を含む高品質のCPG7件のうち、特定の治療抵抗性うつ病の定義を含む2つのCPG(ドイツの国民診療ガイドライン[NVL]、米国の退役軍人省および国防総省の臨床診療ガイドライン[VA/DoD])を選択した。・これら2つのCPG間で収束する治療戦略は、見当たらなかった。・電気けいれん療法は、NVLで推奨されているもののVA/DoDでは推奨されておらず、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法は、VA/DoDで推奨されているもののNVLでは推奨されていなかった。・NVLでは、リチウム、甲状腺または他のホルモン治療、精神刺激薬、ドパミン作動薬の使用を推奨していたが、VA/DoDでは、これらの薬剤による増強治療を記載していなかった。・VA/DoDでは、ケタミンまたはesketamineの使用を推奨していたが、NVLでは、これらの薬剤について言及されていなかった。・その他の違いでは、抗うつ薬の併用、心理療法による増強治療、入院の必要性の評価などは、NVLのみで推奨されていた。

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患者さんのための胃がん治療ガイドライン 2023年版

19年ぶりの改訂!検査から治療まで、患者さんが知りたい胃がんのことを丁寧に解説胃がんの専門家である日本胃癌学会の医師が、患者さんやご家族のために胃がんの検査から手術、内視鏡治療、薬物療法などの治療まで、科学的な根拠を基に丁寧に解説した、安心できる1冊です。19年ぶりの改訂で、Q&Aが大幅に増え、手術後の生活や薬物療法で使う薬の種類など、患者さんの疑問により多くお応えできるようになりました。医療者の方にも、患者さんとのコミュニケーションツールとしておすすめです。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    患者さんのための胃がん治療ガイドライン 2023年版定価1,540円(税込)判型B5判頁数112頁(カラー図数:42枚)発行2023年2月編集日本胃癌学会

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抗精神病薬とプロラクチンレベル上昇が骨折リスクに及ぼす影響

 抗精神病薬による治療が必要な患者は、骨粗鬆症関連の脆弱性骨折を含む骨折リスクが高いといわれている。これには、人口統計学的、疾患関連、治療関連の因子が関連していると考えられる。インド・National Institute of Mental Health and NeurosciencesのChittaranjan Andrade氏は、抗精神病薬治療と骨折リスクとの関連を調査し、プロラクチンレベルが骨折リスクに及ぼす影響について、検討を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2023年1月30日号掲載の報告。 主な結果は以下のとおり。・たとえば、認知症患者では、認知機能低下や精神運動興奮により転倒リスクが高く、統合失調症患者では、身体的に落ち着きがない、身体攻撃に関連する外傷リスクが高く、抗精神病薬服用患者では鎮静、精神運動興奮、動作緩慢、起立性低血圧に関連する転倒リスクが高くなる。・抗精神病薬は、長期にわたる高プロラクチン血症により生じる骨粗鬆症に関連する骨折リスクを高める可能性がある。・高齢者中心で実施された36件の観察研究のメタ解析では、抗精神病薬の使用が大腿骨近位部骨折リスクおよび骨折リスクの増加と関連していることが示唆された。この結果は、ほぼすべてのサブグループ解析でも同様であった。・適応疾患と疾患重症度の交絡因子で調整した観察研究では、統合失調症患者の脆弱性骨折は、1日投与量および累積投与量が多く、治療期間が長い場合に見られ、プロラクチンレベルを維持する抗精神病薬よりも、上昇させる抗精神病薬を使用した場合との関連が認められた。また、プロラクチンレベル上昇リスクの高い抗精神病薬を使用している患者では、アリピプラゾール併用により保護的に作用することが示唆された。・骨折の絶対リスクは不明だが、患者の年齢、性別、抗精神病薬の使用目的、抗精神病薬の特徴(鎮静、精神運動興奮、動作緩慢、起立性低血圧に関連するリスク)、1日投与量、抗精神病薬治療期間、ベースライン時の骨折リスク、その他のリスク因子により異なると考えられる。・社会人口統計学的、臨床的、治療に関連するリスク因子に関連する転倒および骨折リスクは、患者個々に評価し、リスクが特定された場合には、リスク軽減策を検討する必要がある。・プロラクチンレベルの上昇リスクの高い抗精神病薬による長期的な治療が必要な場合、プロラクチンレベルをモニタリングし、必要に応じてプロラクチンレベルを低下させる治療を検討する必要がある。・骨粗鬆症が認められた場合には、脆弱性骨折を予防するための調査やマネジメントが求められる。

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新型コロナワクチン、米国政府の投資額はいくら?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNAワクチンの開発、製造、購入に関連した米国政府の投資額を調べた結果、少なくとも319億ドルに上ることを、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のHussain S. Lalani氏らが明らかにした。このうち、COVID-19パンデミック前の30年間(1985~2019年)にわたり基礎的研究に投じmRNAワクチンの重要な開発に直接寄与した投資額は、3億3,700万ドルだったという。また、2022年3月までのパンデミック中に投じた金額は少なくとも316億ドルで、臨床試験(6%)、ワクチン開発(2%)、ワクチン購入(92%)に充てられていた。著者は「これらの公的投資は何百万人もの命を救うことにつながり、また将来のパンデミックへの備えとCOVID-19をしのぐ疾患を治療する可能性ももたらし、mRNAワクチン技術の開発に見合ったものであった」と述べ、「社会全体の健康を最大化するために、政策立案者は、公的資金による医療技術への公平かつグローバルなアクセスを確保しなければならない」とまとめている。BMJ誌2023年3月1日号掲載の報告。NIHデータやRePORTERなどでワクチン開発への研究助成金などを算出 研究グループは1985年1月~2022年3月にかけて、米国国立衛生研究所(NIH)の資金提供に関するデータや研究成果を収載したReport Portfolio Online Reporting Tool Expenditures and Results(RePORTER)などを基に、米国政府がmRNA COVID-19ワクチンの開発に投じた公的資金を算出した。 政府の助成金を、mRNA COVID-19ワクチン開発の4つの重要なイノベーション(脂質ナノ粒子、mRNA合成または改良、融合前スパイクタンパク質構造、mRNAワクチンバイオテクノロジー)への主任研究者、プロジェクトのタイトルおよびアブストラクトをベースとした直接的または間接的な関与、あるいは関与が認められないもので評価した。 同ワクチン開発研究に対する直接的な公的投資額について、パンデミック前の1985~2019年と、パンデミック後の2020年1月~2022年3月で分類し評価した。COVID-19パンデミック後、ワクチン購入に292億ドル投資 NIHによるmRNA COVID-19ワクチンの開発に直接関連した研究助成金は、34件だった。これらの助成金と、その他の米国政府助成金・契約金の合計は、319億ドルだった。そのうち、COVID-19パンデミック前の投資額は3億3,700万ドルだった。 パンデミック前、NIHはmRNAワクチン技術の基礎的研究や橋渡し(translational)科学研究に対し1億1,600万ドル(35%)を投資。米国生物医学先端研究開発局(Biomedical Advanced Research and Development Authority:BARDA)は1億4,800万ドル(44%)、米国国防総省は7,200万ドル(21%)を、それぞれワクチン開発に投資した。 パンデミック後には、米国公的資金はワクチン購入に292億ドル(92%)を、臨床試験支援に22億ドル(7%)を、製造に加え基礎的研究および橋渡し科学研究に1億800万ドル(1%未満)を費やしていた。

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第30回 市販薬にご用心!?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)患者さんの内服薬は処方薬以外も確認しよう!2)注意が必要な市販薬を知ろう!【症例】23歳女性。特記既往はなく、手術歴もない。仕事中に頭痛、嘔気を自覚した。しばらく様子をみていたが症状が改善せず、嘔吐も認めたため、仕事を早退し、外来を受診した。●来院時のバイタルサイン意識清明血圧108/61mmHg脈拍102回/分(整)呼吸18回/分SpO299%(RA)体温36.1℃中毒の入り口中毒患者さんはどのように来院するでしょうか。薬を過量に内服したことを自己申告ないし発見され来院する場合も多いですが、その他、意識障害、嘔気・嘔吐、頭痛、動悸、ふらつきなどを主訴に来院します。また、重篤な場合にはショック、痙攣、心停止状態で搬送されてくることもあります。今回は、どこでも来院しうる一見軽症そうにみえる中毒患者さんに関して取り上げます。市販薬の現状コロナ禍となり、自宅に解熱鎮痛薬や総合感冒薬を常備している方も多くなりました。発熱や咽頭痛を主訴に来院した患者さんに対して、アセトアミノフェンなどを処方するとともに、今後に備えて患者さん、ご家族へ市販薬を常備するようにオススメした方も少なくないと思います。適切に使用すれば基本的には問題ありませんが、内服量や方法を誤ってしまうと、いくら市販薬といえども危険なことはいくらでもあります。薬局やコンビニ、さらにはインターネット上で総合感冒薬などの市販薬はいくらでも入手可能です。規制がかかっている薬剤もありますが、実際のところ抜け穴はいくらでもあり、購入しようと思えば購入できてしまっているのが現状でしょう。注意が必要な市販薬処方薬ではベンゾジアゼピン系などの薬に注意が必要ですが、市販薬ではどのような薬剤が問題となっているのでしょうか。表11)が代表的な薬剤であり、みなさんもよくみかけると思います。実際に、救急外来で診療していると、これらの薬剤を過量に内服し、来院する方を多く経験するとともに、常備し乱用している方も少なくありません。これらの薬剤がなぜ問題なのか、代表的な2剤を中心に簡単に説明しておきましょう。表1 注意が必要な市販薬1)商品名:エスエスブロン錠(表2)成分は主に4つです。上から、オピオイド、エフェドリン、抗ヒスタミン薬、カフェインです。ジヒドロコデインは半合成オピオイドです。オピオイド受容体に結合し、中枢神経抑制作用や呼吸抑制作用を発揮し、高揚感や多幸感をもたらします。メチルエフェドリンは、エフェドリンの作用を抑えたものですが、アンフェタミン類に属し、中枢神経興奮作用や交感神経興奮作用を発揮します。これらの成分が含まれる薬剤を適正量以上に、また不用意に内服すると、他の成分と相互作用を及ぼし頭痛や嘔気・嘔吐、興奮などの症状、さらには意識障害やショック、痙攣、呼吸抑制などの重篤な病態を引き起こします。表2 エスエスブロン錠2)商品名:パブロンゴールドA(表3)エスエスブロン錠と共通している成分が多いことに気付くと思います。大きな違いとしてパブロン系の薬にはアセトアミノフェンが含有されているという点です。この点は非常に重要であり、アセトアミノフェンは多量に内服すると肝毒性があり、場合によっては肝不全に陥るリスクがあります(アセトアミノフェン中毒に関しては、以前の連載「第24回 風邪薬1箱飲んだら、さぁ大変」を参照してください。表3 パブロンゴールドAエスエスブロン錠は規制がかかっているため、本来は薬局などで購入する際は1瓶までです。これは販売元のホームページにも明記されています。また、値段も決して安くはないため、同成分が含まれ、比較的安価なパブロン系の薬剤を購入する流れがあります。パブロン系は規制がかかっていないため、多量に購入可能なのです(中国向けの転売目的で多量に購入されたニュースが今年に入ってから流れていましたよね)。市販薬を乱用している方は10代、20代も多く、最近の状況を知るためにはSNSも有用です。twitterで「ブロン」、「金パブ(パブロンゴールド)」、「メジコン」などで検索すると多くの投稿が閲覧できます。「市販薬中毒なんてそんなに多くないでしょ!?」、そう感じている先生はちょっとのぞいてみてください。本症ではどうだったか冒頭の症例はそもそも市販薬の中毒を疑わなければ診断は難しいかもしれません。実際に、初めは本人も薬を内服したことを話してくれませんでした。しかし、改めて確認すると職場のストレスなどを理由に市販薬を過量に飲んでしまったことを打ち明けてくれました。セルフメディケーションは大切です。しかし、一般用医薬品(OTC医薬品)を不適切に利用している方も少なくありません。「くすりもりすく」、これは処方薬だけでなく市販薬も含め常に意識し対応することが重要です。1)松本俊彦、他. 2020年全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患実態調査.2022.

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今後の医師のマスク着用意向は?/医師1,000人アンケート

 新型コロナウイルス感染症対策として、これまで屋内では原則マスク着用、屋外では原則マスク不要とされてきたが、2023年3月13日よりマスクの着用は個人の判断が基本となった。CareNet.comでは、医師のプライベートにおけるマスク着用意向を探るため、会員医師1,000人を対象に『今後のマスクの着用意向に関するアンケート』を実施した。その結果、大多数の医師がマスクの着用基準が個人判断になることに賛成であり、プライベートでマスクを外したい医師と外したくない医師がほぼ半数であることが明らかとなった(2023年3月2日実施)。新型コロナウイルスに感染したことがある医師は3人に1人 Q1では、これまでの新型コロナウイルスの感染歴を聞いた。感染したことのある医師は32%、感染したことがない医師は68%であった。なお、CareNet.comで2022年12月10~17日に実施した調査では、感染したことのある医師は26%、感染したことがない医師は74%で、感染したことのある医師が増えていた。着用基準が個人判断になることに賛成の医師は68% Q2では、マスクの着用基準が個人判断になることに賛成かどうかを聞いた。「とても賛成」は23%、「どちらかといえば賛成」は45%であり、個人判断になることに賛成の医師は68%であった。「どちらかといえば反対」は16%、「とても反対」は6%、「どちらともいえない/わからない」は11%であった。新型コロナウイルスの感染経験の有無別でもほぼ同様の結果であった。・感染歴あり(328人):とても賛成25%、どちらかといえば賛成46%、どちらかといえば反対16%、とても反対4%、どちらともいえない/わからない9%・感染歴なし(700人):とても賛成23%、どちらかといえば賛成44%、どちらかといえば反対15%、とても反対6%、どちらともいえない/わからない12%「外したい」「外したくない」派はほぼ同数 Q3では、マスクの着用基準が個人判断になる3月13日以降、プライベートでマスクを外したいかどうかを聞いた。「できるだけ外したい」は41%、「できるだけ外したくない」は43%でほぼ同数であった。「どちらともいえない/わからない」は16%であった。感染経験の有無別では、感染歴のある医師のほうがマスクを外したい意向がやや強かった。・感染歴あり(328人):できるだけ外したい44%、できるだけ外したくない40%、どちらともいえない/わからない16%・感染歴なし(700人):できるだけ外したい40%、できるだけ外したくない44%、どちらともいえない/わからない16%マスクを外さないほうがよい状況は「飛行機、バス、電車」 Q4では、医師としてプライベートであってもマスクを外さないほうがよいと考える状況を聞いた(複数回答)。多い順に、飛行機/バス/電車、デパート/ショッピングモール、ライブ/スポーツ観戦(観客も声を出す可能性のある催事)、映画館/美術館/博物館、近所のスーパー、飲食店、カラオケ、クラシックコンサート/観劇(観客は声を出さない催事)、スポーツジム/フィットネスクラブ、公園/路上、屋外のスポーツ競技であった。 なお、フリーコメントでは、混雑時のバスや電車はつけたほうがよいが、飛行機は必要ないと区別する意見もあった。今後感染拡大すると考える医師は67% Q5では、マスクの着用判断が個人に委ねられることで、今後の新型コロナウイルス感染症の流行に変化が生じると考えるかどうかを聞いた。「とても感染が拡大する」は16%、「やや感染が拡大する」は51%で、着用判断が個人になることで感染が拡大すると考える医師は67%と大多数であった。「あまり感染は拡大しない」は19%、「ほぼ感染は拡大しない」は5%、「どちらともいえない/わからない」は9%であった。 フリーコメントでは、「社会の流れとしてはやむを得ないと思うが、恐らく感染は拡大して多少の死者を許容する形になるだろう」「マスクを外す場合、社会として、死者数が増えることを容認することが前提。現時点ではマスクを外すことが目的になり、その先のことの説明が足りない」「緩和していくことにより死者が増え後戻りしていくと思う」など、感染の再拡大を懸念する声が寄せられた。自由回答のコメント 最後に、マスクの着用判断が個人に委ねられることや、今後のマスク着用や感染対策について意見を聞いた。マスク着用を継続したい/継続してほしい医師・医療従事者はずっとマスクを着用することになるでしょう。・医療機関、高齢者もいる公共施設では着用すべき。・人の多い閉鎖空間ではマスク必要。・感染が拡大したときの医療現場の負担や社会の混乱を考えると、少なくともマスク着用を推薦したほうがよいと思う。・マスクを外すメリットが小さいのに、リスクが多すぎます。マスクを外したい/外してもよいと考える医師・マスクは着用しなくてよいが、換気だけは十分するよう国から通達してほしい。・基本的に有症状時に着用すればよいと思います。・感染が一時的に広がっても、自然免疫をつける上でも、外したほうがよいと思う。・世界の標準に合わせるべき。・マスクしなくてよい。感染が広がってもそれが自然なことなので無理なことはしなくてよいと思う。その他・周囲からの同調圧力が心配(外せ、外すなとも)。・政府の方針が、国主導で対応→自己責任で体調管理と各病院・医院に放り投げに変わっただけ。次の流行の波が来たら、これまで以上に医療崩壊。・あまりにも感染が増加し医療体制に支障が出るようなら再検討してほしい。・個人で判断ができず、医師に聞いてくる人たちがいます。子供ではないので自分で判断してほしい。・コロナに限らず、インフルエンザなど感染症流行時は自らの判断で感染予防に努めるべき。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。医師もマスクを外したい?/医師1,000人アンケート

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認定薬局のメリットはやはり大きかった!在宅件数、売上も増加【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第106回

皆さんの薬局は、専門医療機関連携薬局や地域連携薬局、健康サポート薬局などの認定を取得していますか? つい認定を取得することを目標としがちですが、取得がゴールではなく、実際はその取得によってようやくスタートラインに立てます。しかし、認定後の運用には課題が付いて回るため、どのように取り組んでいこうかと取得前から不安に感じている薬局は多いのではないでしょうか。この度、日本保険薬局協会(NPhA)が認定を取得した薬局を対象としてアンケートを実施しました。認定に関して知っておいて損はない、勉強になる結果となっていますので、早速見ていきましょう。このアンケートは、認定薬局の実態を把握することを目的として、在宅および連携の実績と実例、認定取得のメリット・デメリット、課題と展望についてヒアリングを行いました。2022年10~11月に会員薬局の認定薬局を対象として行われ、17社262薬局から回答を得て、2023年2月にその結果が公表されました。実際に認定を得た薬局のみからの回答であり、「実際にやってみた」人たちのリアルな意見は貴重です。私が興味を持ったのは、認定を取得した薬局にそのメリット・デメリットを聞いている項目です。まず、メリットはどのようなことが挙げられたのでしょうか。認定取得のメリットとして、半数以上の薬局が「従業員のスキル向上」「従業員のモチベーション向上」と回答しました。それに続いて、「スムーズな多職種連携、連携機会の増加」「患者からの信頼度向上」「薬局としての認知向上」などが挙げられました。実際に在宅や介護の相談や依頼が増えた、連携が進んだ、患者数や売上が向上した、などの具体的なメリットも挙げられています。「認定を取ってみたけど全然メリットがない…」ということがなくてよかったです。実際に薬局の信頼度向上につながっているのでしょう。デメリットは各所コストの増大一方、認定を取得したデメリットとして多かったものは、「業務時間・残業時間の増大」「人手不足」「教育研修コストの増大」であり、多くの薬局で各種コストが増大していることがわかります。また、無菌調剤に取り組む薬局については、その設備だけでなく研修費用やメンテナンスなどに関しても費用がかかるといったコメントもありました。業務が増えるのはやむを得ないのかもしれませんが、研修や医療機関との打ち合わせなどに時間を要する+業務量が増加する→残業が増える→従業員のモチベーションが低下する、という負の連鎖が心配です。業務の増大をモチベーションやスキルの向上といった良い方向にどうやって変えていけるかが、認定薬局の継続のポイントになりそうです。在宅対応事例についてもとても参考になります。退院時カンファレンスへの参加から在宅移行した事例や、緩和ケアや看取りにかかわった事例、施設在宅における往診同行などの介入事例などに関してはその領域や程度について掲載されていますので、ご自身の薬局における実際の患者さんと照らし合わせながら読むとよいと思います。この結果を見ると、確かに調剤や服薬指導といった日々行っているような業務とは異なり、医療機関や施設に出向き、ヒアリングや調整を行い、在宅の結果をトレーシングレポートにして報告…など、かなり時間と労力を要する業務が増えるのだなと感じます。本アンケートは回答数がそれほど多くないため、数字を追うよりもその実態に関するコメントを読むことに意味があるように思いました。NPhAのアンケートはこのような実態に沿った調査報告が公表されることが多く、背中を押してくれるような内容が多いと感じます。申請がまだという薬局でも日々の業務の参考になるのではないでしょうか。参考1)認定薬局ヒアリング調査報告書

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第154回 両親とも雄の健康なマウスが誕生/精子を増やす仕事

親がどちらも雄のマウスができた雄マウスの細胞から作成した卵細胞を使って両親とも雄のマウスを誕生させ、先立つ研究とは一線を画して生殖可能な成獣に成長させることができました1,2)。生殖研究の世界で名を馳せ、2021年から大阪大学に籍を置く3)林 克彦教授らの研究成果です。英国のロンドンでの学会「Third International Summit on Human Genome Editing」で先週8日に発表されました。まだ論文にはなっていませんが、Nature誌に投稿済みとBBCニュースは伝えています4)。両親とも雄のマウスを作ったのは実は林教授らが初めてではありません。4年半ほど前の2018年10月に中国の研究チームが両親とも雌または雄のマウスの誕生をすでに報告しています5)。両親とも雌のマウスは幸いにも生殖可能な成獣に成長できたのに対して、両親とも雄のマウスは長くは生きられず残念ながら生後数日で死んでしまいました。林教授らが作った両親とも雄のマウスはそうではなく、仔を授かれる成獣へと正常に成長することができたことが中国のチームの成果とは一線を画します。雄のマウスの細胞もヒトと同様にたいていX染色体とY染色体を1つずつ有します。林教授らはまず雄マウスの細胞一揃いを幹細胞様の細胞に作り変え、いくつかがY染色体を失うまで培養しました。Y染色体はしばしばおのずと失われることが知られています。そうしてY染色体を失った細胞から次はX染色体を2つ持つ細胞を作ります。そのためにはリバーシン(reversine)という化合物が使われました。細胞分裂の際の染色体配分にちょっかいを出すリバーシンの働きによってX染色体を2つ備えた細胞(XX細胞)を見つけ出し、続いてそれらXX細胞が卵細胞へと作り変えられました。そうしてできた卵細胞が雄の精子と受精してできた胚が雌マウスの子宮に移植され、待望の仔マウス誕生を研究者は目にすることができました。ただし成功率は低く、630もの胚を移植して誕生したマウスはわずか7匹のみでした。とはいえ7匹はどうやら正常で、生殖可能な成体に発育しました。今後の課題の1つとして両親とも雄のマウスを注意深く調べ、普通に生まれたマウスと比較して違いがあるかどうかを検討する必要があると林教授は言っています。さらなる研究の積み重ねで安全性や効率などの課題が解消してヒトでも通用するようになればX染色体を全部または部分的に欠くターナー症候群の女性の不妊やその他の性染色体関連の不妊の治療に林教授らの染色体介入技術は役立ちそうです。ターナー症候群は林教授の今回の成果のきっかけを成すものであり、それら女性の不妊治療手段の研究がそもそもの始まりでした2)。林教授らの技術は不妊治療の枠を超えた用途もありそうです。たとえば男性同士のカップルがその2人の血を引く子を代理母の助けを借りて授かれるようになるかもしれません。もっというと、1人の男性が自身の血のみを引く子をいわば“自家受精”によって授かることを遠い未来には可能にするかもしれません。とはいえそのような利用法は技術うんぬんの枠を超えたものであり、倫理や意義について手広い話し合いが必要でしょう。技術面だけに限って言うと両親とも男性の子を産むことは理論上可能でしょうが2)、人間社会に果たしてその技術が馴染むかどうかはわからない1)と林教授は言っています。精子を増やす仕事もろもろの課題が解決していつの日か男性同士のカップルが子を授かれるようになったとして、卵細胞になる細胞を提供する側と精子を提供する側を決めるのは悩ましいかもしれません。しかしいずれにせよ精子を十分に備えているに越したことはないでしょう。本連載第139回でも紹介したように世界の男性の精子数は心配なことにどうやら減っていますが、先月2月前半に発表された報告で精子数が多いことに関連する仕事の特徴が見つかっています。それは重いものを繰り返し持ち上げたり動かしたりすることです。不妊治療を求めるカップルを募って実施されているEnvironment and Reproductive Health (EARTH)試験の男性被験者の解析によって判明しました。EARTH試験は日頃接する化学物質や生活習慣の生殖への影響を調べることを目的としており、1,500人を超える男女の検体やデータが集められています。今回発表されたのはEARTH試験の男性被験者377人の解析結果であり、仕事で重いものをしばしば持ち上げたり動かしたりしている男性は仕事で体をあまり動かさない男性に比べて精子濃度が46%高く、射精中の全精子数が44%多いことが示されました6,7)。仕事でより体を動かしていると答えた男性は男性ホルモンであるテストステロン濃度が高く、意外にも、女性ホルモンであるエストロゲン濃度も高いという結果が得られています。そのエストロゲン濃度の上昇は豊富なテストステロンがエストロゲンに変換されたことによるのではないかと研究者は想定しています。それら2つのホルモンを正常範囲に保つためにテストステロンがエストロゲンに変わる仕組みがあることが知られています。不妊は増え続ける一方で、その原因は多岐にわたりますが、およそ40%は男性側の要因にあるようです。精子数と精液の質は男性が原因の不妊が増えていることに大いに寄与しているようです。EARTH試験の男性936人を調べた先立つ解析では精子濃度と精子数が2000年から2017年にそれぞれ37%と42%低下していました8)。EARTH試験に参加しているのは不妊治療を求める男性であり、今回の解析で示されたような体を動かすことと生殖指標の関連が一般男性にも当てはまるかどうかを調べる必要があります。また、体を動かすことと生殖を関連付ける生理的な仕組みがさらなる試験で明らかになることが期待されます。参考1)The mice with two dads: scientists create eggs from male cells / Nature2)Mice have been born from eggs derived from male cells / NewScientist3)大阪大学NEWS & TOPICS4)Breakthrough as eggs made from male mice cells / BBC5)Li ZK, et al. Cell stem cell. 2018;23:665-676.6)Minguez-Alarcon L, et al. Human reproduction. 2023 Feb 11. [Epub ahead of print]7)Study shows higher sperm counts in men who lift heavy objects / Harvard University8)Minguez-Alarcon L, et al. Environ Int. 2018;121:1297-1303.

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第59回 歪度と尖度とは?【統計のそこが知りたい!】

第59回 歪度と尖度とは?今回は、引き続き正規分布に関連した項目である「ゆがみ」(歪度:わいど)と「とがり」(尖度:せんど)を説明します。「ゆがみ」(歪度:Skewness)は「分布が正規分布からどれだけ歪んでいるか」を表します。「とがり」(尖度:Kurtosis)は「分布が正規分布からどれだけ尖っているか」を表します。集団の分布は、左右対称であったり、峰が右にあったり、山が2つあったり、さまざまな場合があります。そこで正規分布を基準としたとき、集団の分布が上下あるいは左右に、どの程度偏っているかを調べるための散布度が「ゆがみ」と「とがり」です(図1)。図1 形で理解するゆがみ(歪度)ととがり(尖度)「ゆがみ」、「とがり」が0に近いほどその集団の分布は正規分布に近いといえますが、残念ながら値がいくつの区間に入れば正規分布に従うという統計学的基準はありません。経験上、度数分布の歪度、尖度どちらも-0.5~0.5の間にあれば、度数分布の形状は正規分布と判断します。図2の3つの中では、Bが「ゆがみ」「とがり」の値がいずれも-0.5~0.5の間にあるので「正規分布である」といえます。図2 どれが正規分布の図か【度数分布の形状を判別する際の目安】歪度、尖度ともに-0.5~0.5の間にあれば正規分布図3の事例は、20代女性29人の1ヵ月間に「かかりつけ医」に診療にいった回数のデータです。この分布の歪度、尖度を求め、このデータは正規分布であるかを求めてみましょう。図3 29人の受診回数に関するデータ歪度と尖度を求めて判断します。両方とも図4のようにExcel関数で求められます。図4以上から、歪度=1.1719>0.5、尖度=1.6798>0.5であるため、「かかりつけ医」に診療にいった回数の度数分布は正規分布とはいえないことがわかりました。次回は「正規確率プロット」について説明します。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第41回 外れ値とは?第54回 スピアマン順位相関係数とは?第55回 スピアマン順位相関係数の計算方法は?第56回 正規分布とは?第57回 正規分布の面積(確率)の求め方は?

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ドイツ医師免許試験対策のコツ【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第23回

前回の記事で書かせていただいたのですが、ドイツで医師免許を取得するためには専門用語試験“Fachsprachpruefung”に合格する必要があります。ぶっちゃけネイティブ並みのドイツ語が話せるのであれば問題ないのですが、現実問題はそうはいきません。実際、私が試験に合格した時点では、まだまだ十分なドイツ語コミュニケーションが取れている状態ではありませんでした。しかし、そこはやはり試験ですので、ある程度の対策を練ることはできます。前回お話しした通り、Fachsprachpruefungは原則的に「患者問診→カルテ記載→上級医へのプレゼン」の順番に進みます(州によって順番が違うこともあります)。患者問診の攻略法初めの患者問診とカルテ記載はとにかく時間勝負になります。患者問診の対策として、私はどんな疾患が来ても大丈夫なくらいしっかりした定形文を作成しました。とにかく時間が足りませんし、模擬患者に好き勝手に喋らせると、聴き取れないドイツ語を話し始める可能性があるので、基本的に“closed question”でまくし立てるように質問攻めにできるような定型文に仕上がっています。“Ja(はい)/Nein(いいえ)”、もしくは「3日前」や「刺すような」などの単語だけで答えさせるように工夫を凝らした自慢の作品です(内科の先生に聞かれたら怒られそうですが)。試験の際、模擬患者は不安や怒りなどの感情をぶつけて来たり、やたらと病名を知りたがったりすることがあります。しかしこういった「難しいシチュエーション」もある程度パターン化されていて、「あなたの不安はもっともです。それを解決するために、引き続き私の質問に答えてくれますか?」や「この問診の内容を上級医に報告し、検査を行った後に再度病名について話をします」など、切り返しもすべて用意しておきました。ここまでやり込むことで、どんな意地悪な模擬患者が相手でも、大体20分ジャストくらいで問診を終えることができるようになりました。カルテ記載の攻略法続くカルテ記載は形式が州ごとに差が大きいのが特徴です。こちらも手がつるくらい全速力で書いても20分ギリギリの分量となります(これはどこの州でも同じみたいです)。とにかく焦りながら書くことになりますので、多少の誤字・文法ミスは目をつむってくれます。しかし、大事なのは記載の際には「『接続法1式』という、かなり特殊な文法を用いて書かなくてはならない」ということです。これはドイツ語で、「伝聞」した内容を伝えるときに用いられる文法形態です(日本語で言うところの「患者がこう言っていた」という言い回しのことです)。これは結構マニアックな文法で、実際にドイツに住んでいても、ニュースや新聞くらいでしか耳にすることも、目にすることもないような表現形態です。ドイツ語の文法の教科書でもしっかりしたものでないと、勉強することはできません。とはいっても、一度理解してしまえば割と簡単です。プレゼンの攻略法最後に「上級医へのプレゼン」が最大の難関となります。プレゼンの最中に、上級医はどんどん質問を挟んできます。「鑑別疾患は何だ」、「必要な検査は?」などから、「話しているときの患者の様子はどうだった? 苦しそうだったか? お腹を押さえたりしていなかったか?」「それは緊急事態じゃないか! こんなところでプレゼンしている場合じゃない。まず何から始めないといけないの?」などなど、非常にバリエーションに富んだ質疑がなされます。あくまでドイツ語の試験であるため、本来は「わからないことはわからない」と答えてディスカッションすれば問題ないのですが…。正直そちらの方が難しいと言えます。取り上げられる疾患はある程度絞られていますので、疾患をドイツ語である程度説明できるように準備しておくことが重要になります。画像上部のKHKはいわゆる「冠動脈疾患」です。私は、こんな感じで疾患のポイントをまとめた資料を暗記して、上級医の質問に備えました。ドイツ医師免許対策はなかなか情報が集まらず、受験時は苦労するかも知れません。Approbation受験をされる際の参考になれば幸いです。

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うつ病に対するSSRIの治療反応

 うつ病に対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の臨床反応の発現には、数週間を要することも少なくない。また、そのメカニズムは十分に把握されているとはいえない。オランダ・ユトレヒト大学のLynn Boschloo氏らは、うつ病の臨床症状に対するSSRIの直接的および間接的な効果について、プラセボ対照の状態と比較し評価を行った。その結果、SSRIは主に感情症状の改善を介して、間接的に認知症状やいくつかの覚醒/身体症状を改善することが明らかとなった。著者らは、本結果はSSRIの作用機序の解明や、臨床でのSSRIに対するレスポンダーおよび非レスポンダーの早期特定に役立つ可能性があると述べている。Translational Psychiatry誌2023年1月21日号の報告。 米国食品医薬品局(FDA)に登録されたSSRIの有効性に関する28件の試験に参加したうつ病成人患者8,262例のデータを分析した。うつ病の臨床症状は、治療後1、2、3、4、6週目に、ハミルトンうつ病評価尺度17項目(HDRS-17)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・Network estimation techniqueでは、SSRIは抑うつ気分および精神的不安といった2つの感情症状に対し、迅速かつ強力な直接的効果を示していた。なお、他の症状への直接的効果は弱い、または認められなかった。・4つの認知症状(罪責感、自殺念慮、仕事/活動での興味の喪失、集中困難を含む遅滞)のすべてに対しては実質的な間接的効果が認められており、SSRIによる大幅な改善が示されたが、主に抑うつ気分の大幅な改善が報告された患者においてであった。・精神的不安への直接的な影響を介して、身体的不安および焦燥といった2つの覚醒/身体症状に小さな間接的効果が認められた。・睡眠障害やその他の覚醒/身体症状に対する直接的および間接的な効果は弱い、または認められなかった。

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コロナ感染拡大しやすいのは夜間営業店~東京都で大規模調査/東北大

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック下では、ロックダウンなど人流の抑制や行動制限の介入による感染拡大のコントロールが世界的に実施されてきたが、社会経済への影響も大きかった。現在はワクチン接種の普及に伴い行動制限の緩和が進んでいるものの、直近の第8波ではコロナ関連死亡者数が過去最多を更新し、依然として感染拡大のコントロールは困難だ。 社会経済活動を維持しつつ感染拡大リスクが高い場面に焦点を絞った感染防止対策の構築のため、東北大学の今村 剛朗氏らによる東京都、東北大学医科学研究科、国立感染症研究所の合同チームは、東京都に報告されたコロナ感染者4万4,054例を対象として、保健所での積極的疫学調査による情報を用いた後ろ向き解析を行った。その結果、夜間営業店と医療機関・福祉施設とでクラスターが多く生じていたことなどが明らかとなった。JAMA Network Open誌2023年2月24日号に掲載の報告。 本研究では、ワクチン接種実施以前の2020年1月23日~12月5日の期間に東京都に報告された新型コロナウイルス感染者4万4,054例を対象として後ろ向き解析を行った。この期間において、コロナ第1波が2020年1月14日~5月25日、第2波が5月26日~9月30日、第3波の一部が10月1日~12月6日であった。 対象者の感染経路を、海外、ナイトライフ、飲食店、職場、家庭、医療機関(福祉施設含む)、その他の7つの感染環境に分類し、感染環境ごとの症例数およびその後の感染伝播の発生可能性を比較した。「ナイトライフ」の定義は、レストラン、バー、ナイトクラブ(ホストクラブ、ホステスクラブ含む)、その他の夜間営業の飲食店とした。ナイトライフは、さらに接待を伴う施設と接待を伴わない施設とに分類し、性的サービスを提供する施設は、接待を伴う施設に分類した。「飲食店」の定義は、ナイトライフの定義を満たさない飲食店とした。 主な結果は以下のとおり。・全症例数4万4,054例のうち、2万5,241例(57.3%)は男性患者で、患者の年齢中央値は36歳(四分位範囲:26~52)であった。・感染経路が確認できたのは1万3,122例で、家庭6,768例(51.6%)、次いで医療機関2,733例(20.8%)、ナイトライフ1,174例(8.9%)であった。・症例致死率(CFR)は、医療機関で最も多く(2,733例中268例[9.8%])、医療機関におけるすべての死亡例は、患者または訪問者の間で発生した(すなわち、医療従事者の間では発生しなかった)。・6,624件の感染現場が特定され、1次感染例から5例以上の2次感染例(クラスター)が確認された感染現場数は、ナイトライフが380件中72件(18.9%)、医療機関が329件中119件(36.2%)で、飲食店、職場、家庭、その他の環境よりもとくに多かった。・特定されたナイトライフ380件の中で、接待を伴う施設でクラスターが193件中59件(30.6%)発生していた。一方、接待を伴わない施設でのクラスターは187件中13件(7.0%)だった。・ナイトライフの症例は流行の波の初期に多く、家庭と医療機関の症例は後期に多かった。第1波では、ナイトライフでの発症日の中央値は、家庭での発症日の中央値よりも10日早く、医療機関での発症日の中央値よりも16日早かった。第2波では、ナイトライフでの発症日の中央値は、家庭よりも35日、医療機関よりも40日早かった。・ナイトライフの症例と比較して、家庭および医療機関の症例は、その後の感染伝播を引き起こす可能性が低かった。家庭の調整オッズ比[aOR]:0.03(95%信頼区間[CI]:0.02~0.05)、医療機関のaOR:0.57(95%CI:0.41~0.79)。・家庭環境は世代間伝播と関連し、非家庭環境は主に同年齢群間の伝播であった。・感染現場が特定されていない3万932例において、ナイトライフの履歴のある症例は、履歴のない症例よりも、非家庭環境へ感染伝播する可能性が高く(aOR:5.30、95%CI:4.64~6.05)、家庭環境へ感染伝播する可能性は低かった(aOR:0.85、95%CI:0.75~0.97)。 著者は本結果について、ナイトライフで確認されたCOVID-19症例は、家庭および医療機関での症例よりも、その後に感染伝播する可能性が高いため、とくに流行の初期段階において、ナイトライフの場を対象としたサーベイランスや行動制限の介入を優先させるべきだとしている。

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FMCテキストブック 出生前検査・診断と遺伝カウンセリングの実際

出生前検査・診断・遺伝カウンセリングの「最前線」!国内における胎児診療の専門家集団が、出生前検査・診断の正しい知識や手技の実際、診療の問題点、遺伝カウンセリングの心構えやノウハウに至るまで、余すことなく解説しました。出生前検査・診断をこれから行おうとしている医療従事者はもちろん、産科・胎児・周産期医療に携わるすべての医療従事者の道しるべとなる1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    FMCテキストブック 出生前検査・診断と遺伝カウンセリングの実際定価9,350円(税込)判型B5判頁数400頁発行2023年2月編集中村 靖/田村 智英子電子版でご購入の場合はこちら

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平均血糖値とHbA1c値の乖離の理由が明らかに/京都医療センターほか

 平均血糖値が同じ180mg/dLであってもHbA1c値が7.0%台の人もいれば、9.0%近くの人もいると、A1c-Derived Average Glucose(ADAG)研究で報告されている。これらの平均血糖値とHbA1c値の乖離現象はヘモグロビン糖化に個人差があるのではないかと推察されている。2型糖尿病ではヘモグロビン糖化インデックス(Hemoglobin glycation index:HGI)が高い人は、糖尿病合併症、心血管疾患、死亡リスクが増大すると報告されている。しかし、日本人1型糖尿病での報告はなかった。 そこで、坂根 直樹氏(京都医療センター 臨床研究センター 予防医学研究室長)らのFGM-Japan研究グループ(9施設)は日本人1型糖尿病を対象に、HGIに及ぼす要因を検討したところ、性別(女性)、HbA1c値、腎機能(eGFR)、血糖変動(%CV)が関連していることが明らかとなった。Journal of Diabetes Investigation誌2023年2月14日号の報告。 1型糖尿病211例の過去90日間の連続血糖測定(CGM)データを用いて、平均血糖や血糖変動指標などを算出した。HGIは「実測されたHbA1cから平均血糖から予測されたHbA1cを引き算」して求められ、高HGI・中HGI・低HGIの3群に分類された。平均血糖値とHbA1c値の乖離の要因を多変量解析した結果 平均血糖値とHbA1c値の乖離の要因を検討した主な結果は以下のとおり。低HGI、中HGI、高HGIの順に、・女性の割合が多くなった(45.1%、58.6%、74.3%、p=0.002)・HbA1c値が高くなった(7.0±0.8%、7.4±0.7%、8.2±0.8%、p=0.029)・Hb値は低くなった(13.9±1.7g/dL、13.7±1.3g/dL、13.2±1.4g/dL、p=0.024)・推定腎機能は低くなった(83.4±21.3、75.6±20.1、75.1±19.4、p=0.029)・血糖変動指標の中でADRR(38.7±9.8、41.4±11.1、43.5±10.9、p=0.031)と%CV(32.6±5.1、34.8±6.7、35.0±5.9、p=0.029)が高くなった しかし、その一方で・年齢、糖尿病歴、BMI、糖尿病合併症、糖尿病治療、食事・運動習慣、生活習慣では3群間に差を認めなかった・平均血糖、GMI、TAR、TIR、TBRでは3群間に差を認めなかった その他・多変量解析の結果、性別(女性)とHbA1c値と独立して、%CVとeGFRがHGIと有意に関連していた(R2=0.44) 共同研究者の三浦 順之助氏(東京女子医科大学 内科学講座 糖尿病・代謝内科分野)は、本研究について「ヘモグロビン糖化の個人差の一部が解明されたことは、糖尿病診療の上で大きな意義がある。遺伝的要因や炎症などがヘモグロビンの糖化に関係している可能性も考えられ今後も検討が必要である」と述べている。

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第150回 かかりつけ医機能の確認めぐりひと悶着、制度化の芽も摘んだ日本医師会の執念

かかりつけ医確認は「事実行為」or「行政行為」?法案提出直前までドタバタこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、久しぶりに八ヶ岳山麓に住む大学時代の先輩宅を訪れ、硫黄岳に登って来ました。夏沢鉱泉から夏沢峠までは穏やかで快適な雪道でしたが、峠からピークまでは氷雪が覆う急登ルートで、冷たい強風が吹いていました。頂上には寒過ぎて長居できず、記念撮影だけして早々に下山しました。それでも、赤岳、甲斐駒ケ岳、富士山、北アルプスの山々が見える素晴らしい眺望で、厳冬期の八ヶ岳を堪能することができました。ただ、雪は例年よりもかなり少なかったです。さて、今回は、再度、かかりつけ医機能の制度整備について書いてみたいと思います。法案提出直前までドタバタしたかかりつけ医問題。かかりつけ医機能の確認が「事実行為」か「行政行為」か、などは患者にとっては些末などうでもいいことですが、日本医師会にとっては徹底的にこだわるべきポイントだったようです。全世代型社会保障制度関連法案、閣議決定し通常国会に提出政府は2月10日、かかりつけ医機能の制度整備などを盛り込んだ「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案(通称、全世代型社会保障制度関連法案)」を閣議決定し、同日、通常国会に提出しました。この連載の「第147回 かかりつけ医機能制度化、全世代型社会保障構築会議構成員の発言から見えてくる『骨抜き』の背景」では、しょぼい制度になってしまった理由について考察しました。この回を書いていた段階では、法案は自民党の厚生労働部会で審査中でした。「かかりつけ医の制度化などを巡って慎重論が出たため、了承は見送られたようです。報道等によれば、都道府県の確認体制への不安(確認を厚労省は行政行為と説明し、それへの反発があった模様)などがあるようです。いずれにせよ、政府は与党の了承を経て閣議決定し、今国会で成立させたい考えなので、小幅の修正で法律案提出となりそうです」と書きました。しかし、「小幅」どころか見方によっては180度転換とも言える修正となりました。「確認は行政行為」という説明を取り下げ、処分性を伴わない「事実行為」と再説明自民党の厚生労働部会は2月6日に再度審査を行いました。この時、厚生労働省は、「かかりつけ医機能」を報告した医療機関が機能の要件を満たしているかなどを都道府県が「確認」する仕組みについて、前回行った「確認は行政行為」という説明を取り下げ、処分性を伴わない「事実行為」だと改めて説明し直しました。2月7日付のメディファクスの報道によれば、「厚労省は、考え方の整理が十分でなかったと謝罪し、確認は行政行為ではなく、『取り消し』などの処分性を伴わない事実行為と整理した、と報告した」とのことです。「都道府県による法的な確認の仕組みがない、従来の病床機能報告などと同様の仕組みになる」との考え方も示したそうです。さらに「『制度でかかりつけ医を縛るものではないのか』との議員の声に対しては、制度的に定めるものではないと強調した」とのことです。この説明変更によって自民党の厚生労働部会は同法案を了承、10日の閣議決定となりました。なお、法案そのものの条文は変更せず、解釈変更で対応するそうです。登録制や認定制の“芽”を摘んでおきたかった日本医師会「行政行為」とは、行政庁が法律の定めに従って、一方的な判断に基づいて、国民の権利義務その他法的地位を具体的に決定する行為のことを言います。厚労省が最初、「かかりつけ医機能」報告の確認を行政行為としたのは、単純なミスなのか、何らかの意図を持っていたのかは不明です。ただ、仮に「行政行為」ということになれば、確認によって不備や虚偽が見つかった時、何らかの行政処分(認定や登録の制度が仮にできれば、その取り消しも)が下される可能性があります。今回のかかりつけ医機能の制度整備が、将来的にかかりつけ医の登録制や認定制につながらないよう、“族議員”によって「行政行為」ではなく単なる「事実行為」だという言質を取り、早めに“芽”を摘んでおきたかった、という日医の強い執念が透けて見えます。「『かかりつけ医』と『かかりつけ医以外の医師』を区別するものでもない」と松本会長日医の松本 吉郎会長は2月15日の定例記者会見で、全世代型社会保障制度関連法案が2月10日に閣議決定され、通常国会において今後審議されること関連して、日医の「かかりつけ医機能の制度整備」などに対する考え方を説明しました。そこで松本会長は法案について、「加藤 勝信厚生労働大臣のリーダーシップの下、ステークホルダーそれぞれのベクトルの均衡点で一定の決着をみた」と話すとともに、かかりつけ医について改めて、「あくまで国民が選ぶものであり、国民にかかりつけ医をもつことを義務付けたり、割り当てたりするものではない」と強調しました。そして、「かかりつけ医・かかりつけ医機能の認定制」には明確に反対する考えを示すとともに、法案に書かれた「かかりつけ医機能の報告」は、「かかりつけ医機能を認定するものではなく、機能を持っていないからその人はかかりつけ医ではない、といったものではない。ましてや『かかりつけ医』と『かかりつけ医以外の医師』を区別するものでもない」と主張しました。そして、自民党の厚生労働部会に出席した国会議員から、「法案に明記された都道府県の『確認』は、行政処分につながる『行政行為』ではなく、現時点での診療実績の有無や受け入れる体制等を含めた、事実行為の『確認』であると厚労省から説明があった」と伝え聞いたことも付け加えましたただ「制度を作った」という事実を作るための制度行政行為か事実確認かのひと悶着は、日医の意を受けた自民党議員からの質問によって起こっていたと予想できます。それにしても、何の強制力も、発展性も、拡張性もない、ただ「制度を作った」という事実を作るためだけの制度というものは果たして必要なのでしょうか?担当する厚生労働省の役人に徒労感はないのでしょうか。この連載の「第147回 かかりつけ医機能制度化、全世代型社会保障構築会議構成員の発言から見えてくる『骨抜き』の背景」では、全世代型社会保障構築会議の権丈 善一構成員(慶應義塾大学商学部教授)の「手さえ挙げれば誰でもみんながかかりつけ医になることができるという方向で制度設計することは、これまで岸田総理や加藤大臣が言ってきた患者の視点に立った改革とは距離が相当にあると思います」という言葉を紹介しましたが、法案ができてからも「行政行為」か「事実行為」かにこだわる日医の姿勢からは、確かに患者のことを思いやる視点はまったく見えてきません。「かかりつけ医機能」の報告制度に果たして実効性はあるのか、法案成立後も注視していきたいと思います。

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