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第66回 カットオフ値とは?【統計のそこが知りたい!】

第66回 カットオフ値とは?カットオフ値(Cutoff value)とは、定量データを区切るために用いる基準の値のことです。医療分野に絞っていえば、ある検査の陽性、陰性を分ける値のことで、「病態識別値」とも呼ばれています。検査結果によって、特定の疾患に罹患した患者と罹患していない患者を分ける境界値のことです。いくつかの事例で解説します。(1)肥満を判定するBMIのカットオフ値は30以上である。(2)大腸がんをスクリーニングする便潜血検査のカットオフ値は、約120ng/mLである。(3)日本動脈硬化学会では、LDLコレステロール値が140mg/dL以上である場合、HDLコレステロール値が40mg/dL未満である場合に脂質異常症を疑うこととしている。たとえば、(1)の肥満は健康に重大な悪影響を及ぼします。肥満指数(BMI)は体重(kg)を身長(m)の2乗で割って算出され、測定・計算が簡単で、肥満・痩せの指標として広く使われており、その水準が健康リスクや死亡率と深く関係していることが海外の多くの研究で報告されています。WHOでは国際的な基準(カットオフ値)として、BMIは25以上を過体重、30以上を肥満としています。BMI(kg/m2)=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)■真陽性、偽陽性、偽陰性、真陰性とは過体重であるかのカットオフ値は25ですが、ある生活習慣病をスクリーニングするBMIのカットオフ値は25とは限りません。そこで、ある生活習慣病のBMIのカットオフ値を算出するために、病院に来院した患者20人にこの検査をしました。表1~3にその結果をまとめます。画像を拡大する表1:BMIの検査結果およびある生活習慣病の疾病の有無(陽性、陰性)を調べたデータです。表2:表1のデータを陽性・陰性別にBMIを降順で並べ替えました。表3:表2のデータについて、陽性・陰性別BMI数値別に患者人数を集計したものです。このデータにおけるカットオフ値を求めることが課題ですが、とりあえず、カットオフ値を27とします。そこで表4にBMI27以上、27未満別の陽性・陰性別の患者人数を集計しました。表4 カットオフ値27以上とした場合の陽性・陰性別の人数表4の4つのセルの値は、表5に示す名前が付けられています。表5 真陽性、偽陽性、偽陰性、真陰性の定義真陽性(A)実際に疾患がある人が陽性と判断されること偽陽性(B)実際には疾患がない人が陽性と判断されること偽陰性(C)実際に疾患がある人が陰性と判断されること真陰性(D)実際には疾患がない人が陰性と判断されること■感度、特異度とは理想的なカットオフ値とは、検査陽性者(BMI検査で陽性と判定された患者)は皆疾患(疾病有無で陽性の患者)があり、検査陰性者は皆疾患がないと判定できる検査です。しかし、現実的にはどのようなカットオフ値を設定しても、疾患があるが陰性と判定(偽陰性)、疾患がないが陽性と判定(偽陽性)される患者が出現します。したがって、適正なカットオフ値は、偽陰性および偽陽性と判定される患者が少なくなるように定められる検査です。裏返せば真陽性および真陰性と判定される患者が多くなるカットオフ値が適正だということです。先ほどの表4における真陽性は3人、真陰性は13人です。真陽性が多いかの判断は、「疾患がある患者のうち検査陽性者がどれほどいるかの割合(真陽性者÷疾病有無陽性者)」で調べることができます。求められた値を「感度」と言います。表5の単語名を使って感度を求める式を示します。表4について感度を求めると、3÷(3+3)=0.5(50%)です。真陰性が多いかの判断は、「疾患がない患者のうち検査陰性者がどれほどいるかの割合(真陰性者÷疾病有無陰性者)」で調べることができます。求められた値を「特異度」と言います。表5の単語名を使って特異度を求める式を示します。表4について特異度を求めると、13÷(13+1)=0.929(92.9%)です。感度、特異度の両方が大きければ、設定したカットオフ値は良いといえます。このケースでは、特異度(92.9%)は大きいですが、感度(50%)は大きいといえません。そのため27以上に設定したカットオフ値は適正とはいえません。カットオフ値を26以上として、表3のデータについて、陽性・陰性別の患者人数を表6に集計しました。表6 カットオフ値を26以上とした場合の陽性・陰性別人数表6について感度と特異度を求めます。感度、特異度の両方が大きいので、設定したカットオフ値26以上は適正といえそうです。カットオフ値27以上と26以上について検討しましたが、その他のカットオフ値すべてについて感度、特異度を求め、どのカットオフ値が適正かを調べなければなりません。表7にその結果を示します。表7 感度、特異度感度、特異度どちらも高いのはBMI26以上で、この生活習慣病の疾病の有無を判定するBMIのカットオフ値は26以上であるといえます。カットオフ値を算出するための方法として、今まで述べてきた「感度・特異度最小値法」以外にも別の方法があります。次回はカットオフ値を算出するための他の方法を紹介します。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問18 ロジスティック回帰分析とは?質問21 ロジスティック回帰分析の説明変数の選び方は?質問22 ロジスティック回帰分析の事例特別編 カットオフ値とROC解析

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事例033 ミグシス錠の査定【斬らレセプト シーズン3】

解説事例では、片頭痛を訴える患者に処方したロメリジン(商品名:ミグシス)錠(以下「ミグシス」)がD事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)にて査定となりました。傷病名も用量も添付文書に記載された範囲内であり、再度、添付文書をみてみました。投薬禁忌に、「頭蓋内出血又はその疑いのある患者」とあります。病名には1年前の開始日にて「脳出血」が記載されています。その他のコメントなどの記載はありません。したがって、投与禁忌病名が存在するため算定要件に合致しないとして、コンピュータ審査により査定となったものと推測できます。医師にこの旨を伝えて尋ねると、「レセプトチェックシステムで指摘はあったが、脳出血再発の兆候はなく開始日も1年前であり特段の治療も行われていない、そのままで良いものとして提出に回した」と返答を頂きました。現在治療中の保険診療に対して直接に係わらない病名は、無用の査定を招くために速やかに転記して整理をいただくか、「脳出血再発の兆候が無いためミグシス錠を投与」などと医学的に必要としたコメントを頂けるようにお願いしました。このように、医学上では適切であっても保険診療では不適切とされる事例は、多々あります。こうした査定を防ぐためには、レセプトチェックシステムにて明らかに保険診療の範囲を超えると指摘があった場合には、必ず修正もしくはコメントをいただけるように重ねて医師にお願いしました。

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趣味がうつ病の予防に役立つ可能性

 趣味を持つこと、例えば編み針や絵筆を手に取ったり、あるいは好きな小説を読んだりすることは、高齢者の抑うつ症状の軽減につながるという研究結果が発表された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)疫学・ヘルスケア研究所のHei Wan Mak氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に9月11日掲載された。 この研究は、米国、日本、中国、英国、その他のヨーロッパ諸国(オーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、エストニア、フランス、ドイツ、イタリア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス)の計16カ国に及ぶ5件の研究データを用いて、65歳以上の高齢者9万3,263人(各国対象者の平均年齢71.7〜75.9歳)を対象に行われた。趣味は、「余暇に楽しみとして取り組む活動」と定義され、ガーデニング、ゲーム、美術工芸、ボランティア活動、読書、サークル活動など、多岐にわたるものが含まれた。 4年から8年にわたるデータを分析した結果、趣味を持つことは、抑うつ症状の軽減、主観的な健康感、幸福感、生活満足度の増加に関連していることが明らかになった。この結果は、パートナーや配偶者との同居の有無、仕事の有無、世帯収入などの他の要因を調整しても変わらなかった。 Mak氏は、「4つの結果のうち、趣味と最も強い関連を示したのは生活満足度だった。趣味には、自分の心と体をコントロールできていると感じたり、生きがいを見つけたり、日々の問題に取り組む能力があると感じたりするなど、多くの働きがある。これらの働きにより、後年の生活満足度が向上するのかもしれない」と同大学のニュースリリースで述べている。 研究グループによると、この研究は観察研究であるため、因果関係を証明することはできないが、趣味と幸福の間に関連がある可能性を示唆しているという。Mak氏はさらに、「趣味とウェルビーイングの関係は双方向であり、精神的に健康な人ほど趣味を持つ傾向があり、趣味を続けることで生活満足度が向上する可能性がある」と話す。 趣味を持つ人の割合は国によって大きく異なり、スペインでは51.0%だったのに対し、デンマークでは96.0%、スウェーデンでは95.8%、スイスでは94.4%だった。割合が最も低かったのは中国で、37.6%だった(ただし、中国では社会的な趣味についてのみ調査され、一般的な趣味については調査されていない)。また、平均余命や国民の幸福度が高い国では、趣味を持つ人の割合が高く、趣味を持つこととウェルビーイングとの関連も、これらの国でより強かった。 Mak氏は、「われわれの研究結果が示しているのは、加齢によって精神的な健康やウェルビーイングが低下するのを、趣味を持つことで防げるという可能性だ。この可能性は、多くの国や文化的環境で一貫して認められた」と述べている。さらにこの研究は、「高齢者のウェルビーイングと健康増進の方法として、趣味へのアクセスを促進する政策立案者を支援するものでもある」と付け加えている。

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肥満の指標で死亡率と相関するのはBMIでも体脂肪率でもなく…

 BMIとは、ご存じのとおり肥満度を表す指標として国際的に用いられている体格指数1)である。しかし、同じBMIを持っていても体組成と脂肪分布によって個人間でばらつきがあるため、“死亡リスクが最も低いBMI”については議論の余地がある。そこで、カナダ・Vascular and Stroke Research InstituteのIrfan Khan氏らが死亡率に最も強く相関する肥満に関する指数を検証するため、全死因死亡および原因別(がん、心血管疾患[CVD]、呼吸器疾患、またはその他原因)の死亡率とBMI、FMI(脂肪量指数)、WHR(ウエスト/ヒップ比、体型を「洋なし型」「リンゴ型」と判断する際に用いられる)2)の関連性を調査した。その結果、WHRはBMIに関係なく、死亡率と最も一貫性を示した。ただし、研究者らは「臨床上の推奨としては、質量と比較した脂肪分布に焦点を当てることを考慮する必要がある」としている。JAMA Network Open誌2023年9月5日号掲載の報告。肥満に関する指標で死亡率に最も強く相関したのはWHR 本研究は、英国全土の臨床評価センター22施設のデータを含む、英国バイオバンク(UKB)に登録された2006~22年における死亡者データ(38万7,672例)を発見コホート(33万7,078例)と検証コホート(5万594例:死亡2万5,297例と対照2万5,297例)にわけて調査が行われた。発見コホートは遺伝的に決定付けられた肥満度を導出するために使用され、観察分析およびメンデルランダム化(MR)解析が行われた。 死亡率に最も強く相関する肥満に関する指標を検証した主な結果は以下のとおり。・観察分析の対象者は平均年齢[±SD]56.9±8.0歳、男性17万7,340例(45.9%)、女性21万332例(54.2%)、MR解析の対象者は平均年齢[±SD]61.6±6.2歳、男性3万31例(59.3%)、女性2万563例(40.6%)だった。・BMIおよびFMIと全死因死亡との関係はJ字型であった一方で、WHRと全死因死亡との関係は直線的だった(WHRのSD増加あたりのHR:1.41、95%信頼区間[CI]:1.38~1.43)。・遺伝的に決定付けられていたWHRは、BMIよりも全死因死亡と強い関連を示した(WHRのSD増加あたりのオッズ比[OR]:1.51[95%CI:1.32~1.72]、BMIのSD増加あたりのOR:1.29[95%CI:1.20~1.38]、異質性のp=0.02)。・この関連は女性よりも男性のほうが強く(OR:1.89[95%CI:1.54~2.32]、異質性のp=0.01)、BMIやFMIとは異なり、遺伝的に決定付けられていたWHRと全死因死亡の関連はBMIに関係なく一貫していた。

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医療従事者、職種ごとの自殺リスク/JAMA

 米国の非医療従事者と比較した医療従事者の自殺のリスクについて、正看護師、医療技術者、ヘルスケア支援従事者の同リスクが高いことを、米国・コロンビア大学のMark Olfson氏らがコホート研究の結果で報告した。歴史的に医師の自殺リスクは高かったが、この数十年で減少した可能性が指摘されていた。一方で、他の医療従事者の自殺リスクに関する情報は、依然として不足していた。今回の結果を踏まえて著者は、「米国の医療従事者のメンタルヘルスを守るため、新たな計画への取り組みが必要である」とまとめている。JAMA誌2023年9月26日号掲載の報告。26歳以上の184万2,000人について解析 研究グループは、2008年の米国コミュニティ調査(American Community Survey:ACS)を国民死亡記録(National Death Index:NDI)に連携させた米国コミュニティ間の死亡率格差(Mortality Disparities in American Communities:MDAC)データを用い、26歳以上の雇用されているACS参加者184万2,000人を同定し解析した。調査期間は、2019年12月31日まで。 主要アウトカムは、年齢および性別で標準化した自殺率で、6つの医療従事者グループ(医師、正看護師、その他の医療診断または治療従事者、医療技術者、ヘルスケア支援従事者、社会/行動ヘルスワーカー)および非医療従事者について推定した。Cox比例ハザードモデルを用い、年齢、性別、人種/民族、配偶者の有無、教育、居住地(都市部または地方)で調整後、非医療従事者に対する医療従事者の自殺に関するハザード比(HR)を算出した。ヘルスケア支援従事者、正看護師、医療技術者で自殺のリスクが上昇 10万人(年齢中央値44歳[四分位範囲[IQR]:35~53]、女性32.4%[医師]~91.1%[正看護師])当たりの年間標準化自殺率は、ヘルスケア支援従事者21.4(95%信頼区間[CI]:15.4~27.4)、正看護師16.0(9.4~22.6)、医療技術者15.6(10.9~20.4)、医師13.1(7.9~18.2)、社会/行動ヘルスワーカー10.1(6.0~14.3)、その他の医療診断または治療従事者7.6(3.7~11.5)、非医療従事者12.6(12.1~13.1)であった。 非医療従事者に対する自殺の調整後HR(aHR)は、医療従事者全体が1.32(95%CI:1.13~1.54)、ヘルスケア支援従事者が1.81(1.35~2.42)、正看護師が1.64(1.21~2.23)、および医療技術者が1.39(1.02~1.89)で増加したが、医師は1.11(0.71~1.72)、社会/行動ヘルスワーカーは1.14(0.75~1.72)、その他の医療診断または治療従事者は0.61(0.36~1.03)で増加しなかった。 なお、著者は研究の限界として、死亡率のデータは2019年に終了しており新型コロナウイルス感染症時代の自殺リスクを反映していないこと、ICD-10の臨床修正コードに基づく死亡データは自殺死を正確に分類していない可能性があること、個々の調査の回答の正確性を検証する手段がないこと、ACSは雇用前の自殺未遂や精神障害など重要な自殺のリスク因子を調べていないこと、などを挙げている。

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選択肢のつくり方を意識する【国試のトリセツ】第9回

§1 一般問題選択肢のつくり方を意識するQuestion〈110I49〉41歳の男性。職場の定期健康診断で白血球増多を指摘されたため来院した。1年前の健診でも軽度の白血球増多を指摘されていた。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸部リンパ節と鎖骨上リンパ節とに腫大を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦で脾を左季肋下に10cm触知する。下腿に浮腫を認めない。血 液 所 見赤血球466万、Hb14.7g/dL、Ht44%、網赤血球1.4%、白血球51,600(骨髄芽球1.5%、骨髄球6%、後骨髄球9.5%、桿状核好中球19.5%、分葉核好中球45.5%、好酸球3%、好塩基球7.5%、単球2%、リンパ球6%)、血小板37万。血液生化学所見総蛋白6.7g/dL、AST 18 IU/L、ALT 15 IU/L、LD 601 IU/L(基準176~353)。CRP 0.2mg/dL。骨髄血塗抹May-Giemsa 染色標本(A)と骨髄血染色体分析(B)とを次に示す。この患者で考えられる所見はどれか。画像を拡大する(a)尿酸低値(b)高カルシウム血症(c)ビタミンB12 低値(d)エリスロポエチン低値(e)好中球アルカリフォスファターゼスコア低値

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自殺関連ツイート急増後に自殺した人の特徴

 マスメディアやソーシャルメディアでの自殺関連情報が、自殺リスクの高い人の自殺行動を促してしまう懸念が指摘される中、ツイッター(現:エックス)に自殺関連ツイート(同:ポスト)が急増した数日後に自殺に至った人の特徴を検討した研究結果が報告された。40歳以下、男性、失業中、都市生活者などは、ツイート件数増加後にハイリスクとなる可能性があるという。岡山大学病院新医療研究開発センターの三橋利晴氏の研究によるもので、詳細は「JMIR formative research」に8月10日掲載された。 マスメディアでの自殺報道が自殺行動を増やす可能性があることから、世界保健機関(WHO)が自殺報道に際しての留意事項を公表するなどの対策が取られている。ただしこれまでのところ、どのような人がメディア情報の影響を受けやすいのかは不明。また近年は、ソーシャルメディアでの情報発信・閲覧の比重が増え、それらの情報と自殺行動との関連も指摘されている。メディア情報の影響を受けやすい人の特徴が分かれば、実効性の高い自殺予防対策を確立する一助となると考えられる。これを背景として三橋氏は、ツイッター上の自殺関連ツイート数が急増した後に、自殺既遂に至った人の属性を解析することにより、その特徴を明らかにすることを試みた。 解析対象期間は2011~2014年で、この間の全ツイートの約1割にあたるランダムサンプルの中から、「自殺」、「自死」などの自殺関連の単語を含むツイートを抽出。そこから、「予防」、「対策」、「プロジェクト」、「支援・サポート」、「ディスカッション」、「カンファレンス」など、自殺予防活動に関連する単語が含まれているツイートを除外し、残ったツイートを「自殺関連ツイート」としてカウントした。一方、この間の自殺による死亡については、厚生労働省「人口動態統計」から情報を得た。また感度分析として、自殺以外の「予期せぬ死亡」についても同様の検討を行った。 1日当たりの自殺関連ツイート数は、57~6万875件の範囲に分布していた。前日からの変動は0.14~44.3倍の範囲であり、その95パーセンタイルに相当する、前日比1.79倍を超過して増加していた日を「自殺関連ツイートが急増した日(曝露日)」と定義。曝露日の3日後および7日後の自殺による死亡者の特徴〔年齢(40歳以下/41歳以上)、性別、就業状況、婚姻状況、居住地域(都市部/非都市部)〕を、ケースオンリー解析(症例内のみでの比較)により検討した。ケースオンリー解析は、もとは遺伝因子と環境因子の相互作用の検討に用いられていたが、近年では、時間経過とともに変化するリスクへの曝露と関連が予測される因子との相互作用の検討などにも用いられている。 解析に必要な情報が欠落している死亡者は除外した。なお、解析対象日を曝露日の3日後と7日後とした理由は、気温と死亡リスクとの関連を検討した先行研究が曝露日当日と2日後のデータを解析しており、ツイート件数と自殺との関連はそれよりもややタイムラグが長いと考えられたため。また、データ取得時期(2011~2014年)のツイッター利用率が40歳以下で高いことから、年齢は40歳を基準に二分した。 解析対象期間の自殺による死亡者数は15万9,490人(平均年齢58.5±20.6歳、男性65.1%)だった。曝露日の3日後に自殺既遂に至った人には、以下のような特徴が認められた。年齢が40歳以下〔オッズ比(OR)1.09(95%信頼区間1.03~1.15)〕、男性〔OR1.12(同1.07~1.18)〕、失業者〔自営業に対してOR1.12(1.02~1.22)〕、離婚〔婚姻関係ありに対してOR1.11(1.03~1.19)〕、都市に居住〔OR1.26(1.17~1.35)〕。一方、婚姻状況が死別の場合はオッズ比の有意な低下が認められた〔OR0.83(0.77~0.89)〕。就業状況に関しては、会社員、農業従事者、および「その他」は、関連が非有意だった。 曝露日の7日後に自殺既遂に至った人の解析結果も、失業者で関連が非有意であることを除き、曝露3日後の解析結果と同様だった。一方、感度分析として行った「予期せぬ死亡」(11万5,072人、男性55.3%)については、婚姻状況が死別の場合に曝露7日後のオッズ比が有意に高いこと以外〔OR1.08(1.02~1.15)〕、予期せぬ死亡との関連は認められなかった。そのため、この研究で得られた結果は、自殺による死亡に特異的と考えられた。 これらの結果から三橋氏は、「自殺関連ツイートへの感受性と関連する個人的特徴が明らかになった。若年者、男性、失業者、離婚者などは、自殺関連ツイートの急増に対して脆弱な可能性がある」と結論付けている。 ツイート件数と自殺行動が関連し得る背景として同氏は、「自殺関連ツイートを閲覧することによって受ける影響と、ツイートを見なくてもその時点の社会情勢などから受ける影響という二つの経路で、自殺行動のリスクが上昇してしまうのではないか」とし、特に前者についてはツイッター利用率の高い若年者でより大きな影響が生じる可能性を考察。また、「自殺リスクの高い人はネガティブな情報にアクセスする傾向が指摘されており、ツイッターのリツイート機能などを介して、そのような人たちがクラスター化することもあるようだ」と述べ、そういったハイリスク者を特定した上での公衆衛生対策を推進する必要性を指摘している。

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国試を乗り切れるか不安で仕方ありません【医学生お悩み相談ラヂオ】第11回

動画解説第11回は、医学部6年生の男性からのお悩み。大学生活にはすでに慣れてはいるものの、大きな試験を前に、家族からのサポートをなかなか受けられない心細さが今になって不安材料にもなっているとのこと。この危機的状況を打破するために、えど先生が伝えた意外なアドバイスとは!?

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豆乳の摂取と認知症リスク低下との関連が認められた

 これまでの研究において、ミルク(milk)の摂取は認知機能低下を予防可能であるかが調査されてきた。しかし、その結果は一貫していない。その理由として、これまで研究の多くは、ミルクそれぞれの役割を無視していることが重要なポイントであると考えられる。そこで、中国・中山大学のZhenhong Deng氏らは、各種ミルクの摂取と認知症リスクとの関連を調査した。その結果、豆乳(soy milk)の摂取と認知症(とくに非血管性認知症)リスク低下との関連が認められた。Clinical Nutrition誌2023年8月30日号の報告。豆乳摂取者はすべての原因による認知症リスクが低かった 英国バイオバンクのデータベースより、ベースライン時に認知機能低下が認められなかった参加者を対象に大規模コホート研究を実施した。ミルクの主な種類(全乳、無脂肪牛乳、豆乳、その他の牛乳、ミルク摂取なし)は、ベースライン時に自己報告により収集した。主要アウトカムはすべての原因による認知症とした。アルツハイマー病および血管性認知症を副次的アウトカムに含めた。 豆乳ほか各種ミルクの摂取と認知症リスクとの関連を調査した主な結果は以下のとおり。・参加者30万7,271人(平均年齢:56.3±8.1歳)のうち、フォローアップ期間中(中央値:12.3年)にすべての原因による認知症を発症した人は、3,789人(1.2%)であった。・潜在的な交絡因子で調整した後、ミルク摂取なしの人と比較し、豆乳摂取者のみにおいて、すべての原因による認知症リスクの有意な低下が認められた(ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.54~0.90)。・豆乳の非摂取者(全乳、無脂肪牛乳、その他の牛乳)と比較した場合でも、豆乳摂取者は、すべての原因による認知症リスクが低かった(HR:0.76、95%CI:0.63~0.92)。なお、認知症の遺伝的リスクとの相互作用は認められなかった(p for interaction=0.15)・豆乳摂取者は、アルツハイマー病リスクが低かったが(HR:0.70、95%CI:0.51~0.94、p=0.02)、血管性認知症リスクとの有意な関連は認められなかった(HR:0.72、95%CI:0.47~1.12、p=0.14)。・豆乳の摂取量や頻度との関連性を明らかにするためにも、さらなる研究が求められる。

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出題者の意図を汲む【国試のトリセツ】第8回

§1 一般問題出題者の意図を汲むQuestion〈108B21〉成人男性の背面を次に示す。脊髄下端の位置に最も近いのはどれか。(a)(1)(b)(2)(c)(3)(d)(4)(e)(5)Question〈111B1〉検者が右利きの場合、腰椎穿刺を行うのに最も適切な被検者の体位はどれか。(a)座位(b)砕石位(c)腹臥位(d)右側臥位(e)左側臥位Question〈111C9〉腰椎穿刺において穿刺針がくも膜下腔に達するまでに通過する組織の順で正しいのはどれか。(a)後縦靭帯 → 棘上靭帯 → 黄色靭帯 → 硬膜(b)棘上靭帯 → 棘間靭帯 → 黄色靭帯 → 硬膜(c)棘上靭帯 → 棘間靭帯 → 前縦靭帯 → 硬膜(d)後縦靭帯 → 棘間靭帯 → 前縦靭帯 → 硬膜(e)前縦靭帯 → 棘上靭帯 → 黄色靭帯 → 硬膜

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久しぶりに『貧乏物語』を思い出しました!(解説:後藤信哉氏)

 アスピリンの心血管イベント抑制効果は、ランダム化比較試験、メタ解析により確立している。重篤な出血合併症リスクも定量化されており、心血管病の2次予防におけるアスピリンの有効性、安全性は確立されている。アスピリンの歴史は長い。薬も安価である。米国ではOTC薬として普通に薬局で売っており、最近は高くなったかもしれないが、安い薬局を探せば400錠を10ドルで購入できた記憶がある。日本でも価格によりアスピリンの使用を躊躇した記憶はない。 本論文では、2013年から2020年まで、世界51ヵ国の心血管病の既往がある症例のアスピリン使用率を調査した。論文では心血管病の既往があっても、所得が低い国のアスピリン使用率は低いと報告している。冠動脈疾患を対象とした新薬開発のランダム化比較試験でも、アスピリンは90%以上の症例に使用されている。本論文が示した、心血管病の既往歴のある症例でのアスピリン使用率が全体で40.3%(95%CI:37.6%~43.0%)とは、にわかには信じ難い結果であった。 昭和生まれの筆者が子供のころの日本は貧しかった。しかし、1945年の敗戦と荒廃からはだいぶ回復して高度経済成長期であった。筆者も敗戦後の貧困と荒廃の時期などはわからない。本研究では、低所得国のアスピリン使用率は16.6%(95%CI:12.4%~21.9%)、低中所得国では24.5%(95%CI:20.8%~28.6%)、upper middleとなると51.1%(95%CI:48.2%~54.0%)、高所得国では65.0%(95%CI:59.1%~70.4%)と、安価なアスピリン使用率も各国の国富と相関性があることを示した。 昔、河上 肇の『貧乏物語』を読んだことがある。人類が共通して必要な最小限の衣食住・医療環境をみんなに整えることを第一の目的とすれば、貧しい国でも有効・安全なアスピリンを使用できて、心筋梗塞の再発などを世界で減少させることができるかもしれない。しかし、経済的に余裕があると、生存に必要がなくても格好いい服・車、ほとんどのヒトが現実には使用できない著しく高価な薬などをつい作って売ってしまう。付加価値の高いものを作り出すほうが、資本主義社会では効率的に金持ちになれる。この論文を読んで、久しぶりに『貧乏物語』を思い出した。 科学的視点では、所得の低い国より高い国のほうが単に臨床データが充実していることを本論文は反映しているだけとの可能性があることを指摘しておきたい。 日本の戦後の貧困と混乱の中で、先人が医療の方向をどのように決めたかに興味があれば、武見 太郎の『実録 日本医師会』を読むとよい。社会主義的に規制された医療業界の中で、製薬・医療デバイス産業などが資本主義競争にさらされている現状はこのままでよいのだろうか?

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MR認定試験が2段階に?それって誰のため?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第118回

MR認定試験が2段階に?それって誰のため?MRの登竜門であるMR認定試験。そのMRの認定制度の変更内容が少しずつ見えてきました。ただ、何のため・誰のための変更なのかは疑問が残ります。MR認定センターは26年度から新たなMR認定制度を打ち出す。医薬品の適正使用に当たる資質を評価する資格試験を経て、製薬企業による専門的な教育を受けたあとにMRとして認定される2段階方式にする方針だ。26年度以降に入社する社員が対象となる見込みで、近澤洋平専務理事/事務局長は本紙取材に「今後はMRとしての入り口の試験になる」と説明。資格試験に合格できなかった場合は、MRとしての「活動はできない」と語った。(2023年9月15日付け RISFAX)現在、MR認定試験は毎年12月に年1回実施されています。以前は製薬会社で一定期間の導入研修を受けることが受験資格となっていましたが、2009年度からは医薬品卸のMS、2021年度からは学生も受験資格が得られるようになり門戸は広がりました。10年ほど前は5,000人を超える受験者がいましたが、現在は減少の一途をたどっていて、とくに直近の3年間はコロナ禍の医療機関の出入り禁止も影響したのか受験者は激減し、2022年度は1,232人まで落ち込んでいます。そのような中、MR認定センターは2026年度にMR認定試験を抜本改革し、2段階方式にする方針を示しています。第1段階の基礎教育終了試験は、医薬品の適正使用に当たるための「資質」を評価する試験とされています。医薬品の適正使用のために知っておくべきことなどを問うのでしょう。またMRだけを対象とするのではなく、MSL(メディカルサイエンスリエゾン)や安全管理部門、くすりの相談窓口といった職種の人も広く受け入れる方針です。そして第2段階として製薬企業による専門的な教育を受け、実務教育終了ドリルをクリアして認定を受けることでMR認定証が交付されます。これまでは認定試験に不合格でも、導入教育さえ修了してそれが認定されるとMR活動はできていましたが、今後は試験の合格をもって導入教育における基礎教育が修了したと認定します。そのため、万が一試験に不合格だと導入教育が修了したとは認定されず、MR活動を行えなくなります。今後は年に複数回受けられるようにすることも提案されていますが、合格するまで仕事ができない…というのは会社で肩身が狭いだろうなと思います。なお、大学生が就職活動の一環として受検し、就職先の製薬企業がより専門的に教育する流れを想定する、なども盛り込まれています。この制度の変更については、今年の10月から厚生労働省も交えた有識者会議で本格的に議論を開始し、来年1月にMR認定センターの理事会で決定する予定とのことです。第1段階の資格はいったい何のため? 製薬会社や医療機関はそれを求めているのか? 誰にメリットがあるのか? など、個人的には前途多難な気配がします。2段階方式やほかの職種も取り込むなどの複雑な制度作りよりも、MRがどのような役割や責任を負うのか、どう医療に貢献するのか、ということをより明確にすることが先ではないかと思います。MRの試験なんて関係ないし興味もないという人が多いと思いますが、なんだかこれって薬局や薬剤師の資格と少し似ている気がします。健康サポート薬局や地域連携薬局、かかりつけ薬局や認定薬剤師など、われわれの業界にもさまざまな資格がありますが、患者さんにその役割やメリットを感じてもらえているのかなと疑問に思います。新しい制度を作ることが目的になってしまって、医療にどう貢献をするのかという一番大事なことが伝わっていないのであれば本末転倒です。MR認定制度の例を見ながら反省しつつ、足元を見つめ直そうと思った次第です。

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授業や実習先での「振る舞い方」を悩んでます【医学生お悩み相談ラヂオ】第10回

動画解説第10回は、医学部5年生の女性からのお悩み。大学の授業や実習先の病院で、その場の雰囲気に合わせることが難しく、距離感をなかなかつかめないとのこと。漠然とした相談に対して、多くの医学生を見てきた民谷先生が場面に応じたコミュニケーションのコツを指南します。

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「爪白癬は外用薬で治す」は誤解?

 昨年6月にイムノクロマト法を用いた白癬菌抗原キット「デルマクイック爪白癬」が発売されたことを契機に、以前に比べ、内科医でも爪白癬の診断に対応できるようになったのをご存じだろうか。今回、常深 祐一郎氏(埼玉医科大学医学部皮膚科 教授)が『本邦初の白癬菌抗原検査キットによる爪水虫診断と正しい治療法~爪水虫診療は新たなステージへ~』と題し、今年4月に発表された爪白癬の治療実態調査の結果、新たな抗原キットなどについて説明した(佐藤製薬・マルホ共催メディアセミナー)。爪白癬は外用薬で治せる、という誤解 日本人の10人に1人は爪白癬に罹患しており、その多くが高齢者である。高齢者では足の爪白癬が転倒リスク1)やロコモティブシンドローム、フレイルの原因になるほか、糖尿病などの合併症を有する患者においては白癬病変から細菌感染症を発症し、蜂窩織炎や時には壊死性筋膜炎を発症するなど命を脅かす存在になる場合もあるため、完全治癒=臨床的治癒(爪甲混濁部の消失)+真菌学的治癒(直接鏡検における皮膚糸状菌が陰性)を目指す必要がある。 爪白癬の治療は診断さえついてしまえば、外用薬を処方して継続を促せば…と思われることが多いのだが、その安易な判断が「治療の長期化につながり、結局治癒に至らない」と常深氏は指摘した。外用薬は白癬菌が爪の表面に存在する表在性白色爪真菌症(SWO)には効果が高いが、その他の病型では経口抗真菌薬が優れているという。また、「遠位側縁爪甲下爪真菌症(DLSO)の軽症であれば外用薬でも治せると考えられているが、治癒まで時間を要し、その間に次に述べるように脱落が多くなってしまうことから、軽症の間に経口薬で治癒させることが望ましい。もちろんDLSOの中等症以上では経口薬が必要であるし、近位爪甲下爪真菌症(PSO)、全異栄養性爪真菌症(TDO)では経口薬による治療が推奨される」と、病態ごとの剤型の使い分けが重要であることに触れた。皮膚科専門医でも、経口薬を避ける傾向に そうはいっても、とくに高齢者への経口薬処方は、ポリファーマシーの観点や肝機能への影響から敬遠される傾向にある。これに対し、同氏は治療継続率のデータを引用2)し、「経口薬のほうが外用薬より治療継続率が高く、脱落しにくいことが明らかになっている。外用薬の場合は投与開始から1ヵ月時点ですでに4割強が脱落してしまう。一方で、経口薬は投与開始3ヵ月時点でも6割の人が継続している。爪白癬治療に年齢は関係ない」と説明した。 上述のように、治癒率や患者の治療継続率からも爪白癬への経口薬処方が有効であることは明確だが、診断に自信がないと、外用薬で様子を見てしまうということが多そうだ。また、皮膚科専門医は顕微鏡を用いたKOH直接鏡検法で診断することができるが、他科の医師においては視診で判断していることが多いのが実情である。この点について、「皮膚科医であっても視診のみで診断を行うと30%程度は誤った判断をするため3)、やはり検査は必要。爪甲鉤弯症などが爪白癬と誤診されることもある4)」と述べたうえで、「経口薬は外用薬と比較して検査で確定診断がつかないと処方しづらく、“本当に薬を処方していいのか”という不安が処方医に生じる」と医療者側の問題点を挙げた。<爪白癬と誤診されやすい疾患>・掌蹠膿疱症の爪病変・緑色爪(green nail)・黄色爪症候群(yellow nail syndrome)・爪甲鉤弯症・厚硬爪甲 昨年に上市された検査法『イムノクロマト法』は迅速および簡便で感度が高く、皮膚科専門医が行うKOH直接鏡検法や真菌培養法に比べ、技術や検査時間も不問であることから視診による誤診も防ぐことが可能である。同氏は「鏡検できる医師がいない場合、顕微鏡がない施設や往診先での検査に適しており、また、鏡検での見落としを防ぐために検査を併用するのも有用」と述べ、皮膚科専門医ならびに一般内科医に向けて、「精度の高い検査を患者に提供して確定診断が得られた後に適切な薬剤を処方する、という正しい診断フローに沿った治療にもつながる」とコメントした。 最後に同氏はクリニカル・イナーシャ(clinical inertia)5)という言葉に触れ、「これは直訳すると“臨床的な惰性or慣性”。患者が治療目標に達していないにも関わらず治療が適切に強化されていない状態を意味する」と定義を説明し、「患者側がクリニカル・イナーシャに陥る要因は、治療効果の正しい知識不足や経口薬による副作用への懸念、飲み合わせへの懸念などが漠然とある。一方、医師側の要因には完治が必要であるとの認識不足、治癒への熱意や責任感不足などがあり、両者のクリニカル・イナーシャが相乗的に負の方向に働き、外用薬が漫然と使用されてしまう。しかし、爪白癬の治療意義、新たな検査法や経口薬の有用性を理解していけば解決できる」と締めくくった。

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脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕

新たなエビデンスを加え、66項目の大改訂!最新のエビデンスを反映させるなどの目的で、例年、全面改訂の約2年後に追補版を発売してきた『脳卒中治療ガイドライン』ですが、近年の本領域の進歩は長足であり、今回は全140項目中66項目を改訂しました。エビデンスレベルの高い新しいエビデンスを加えたほか、新しいエビデンスはないものの推奨度が現実と乖離しているものなども見直したため、今回は「追補」ではなく「改訂」として発売しました。主な改訂点●抗血栓薬や血栓溶解薬などの記載変更について抗血栓薬については、その1種であるDOAC(直接作用型経口抗凝固薬)の高齢者適応のほか、DOACの中和剤に関する記載も増やしました。また、血栓溶解薬は使用開始時期によって効果が左右されますが、起床時発見もしくは発症時刻不明の虚血性脳血管障害患者に対するエビデンスなどを加えました。さらに、くも膜下出血の治療後に生じる可能性がある遅発性脳血管攣縮については、新たに登場した治療選択肢にも触れるなどの変更を行いました。●危険因子としての糖尿病・心疾患・慢性腎臓病(CKD)の管理について主に糖尿病治療で使われるGLP-1やSGLT-2などの薬剤には、近年、新たなエビデンスが得られていることから、推奨度を含めて記載を見直しました。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕定価8,800円(税込)判型A4判頁数332頁発行2023年8月編集日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会

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転移のある膵がん1次治療、NALIRIFOXがOS・PFS改善(NAPOLI-3)/Lancet

 米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のZev A. Wainberg氏らは、欧州、北米、南米、アジア、オーストラリアの18ヵ国187施設で実施した無作為化非盲検第III相試験「NAPOLI 3試験」の結果、転移のある膵管腺がん(mPDAC)の1次治療としてNALIRIFOX(ナノリポソーム型イリノテカン+フルオロウラシル+ロイコボリン+オキサリプラチン)はnab-パクリタキセル+ゲムシタビンと比較し、全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことを報告した。膵管腺がんは依然として、生命予後が最も不良の悪性腫瘍の1つであり、治療選択肢はほとんどないとされている。Lancet誌オンライン版2023年9月11日号掲載の報告。NALIRIFOX群vs.nab-パクリタキセル+ゲムシタビン群で評価 研究グループは、未治療のmPDACで18歳以上のECOG PS 0~1の患者を、地域(北米vs.東アジアvs.その他の地域)、PS(0 vs.1)、肝転移(ありvs.なし)で層別化し、NALIRIFOX群またはnab-パクリタキセル+ゲムシタビン群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 NALIRIFOX群では、28日を1サイクルとして1日目と15日目に、ナノリポソーム型イリノテカン50mg/m2、フルオロウラシル2,400mg/m2、ロイコボリン400mg/m2およびオキサリプラチン60mg/m2を46時間以上かけて持続点滴静注した。nab-パクリタキセル+ゲムシタビン群では、28日を1サイクルとして1日目、8日目および15日目に、nab-パクリタキセル125mg/m2とゲムシタビン1,000mg/m2を静脈内投与した。 主要評価項目は、intention-to-treat集団におけるOSで、両群において少なくとも543件のイベントが観察された時点で評価した。副次評価項目はPFSなどであった。また、試験薬を少なくとも1回投与されたすべての患者を解析対象として安全性を評価した。 2020年2月19日~2021年8月17日の期間に、計770例が無作為に割り付けられた(NALIRIFOX群383例、nab-パクリタキセル+ゲムシタビン群387例)。NALIRIFOX群でOSが有意に延長 追跡期間中央値16.1ヵ月(四分位範囲[IQR]:13.4~19.1)において、OS中央値はNALIRIFOX群11.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.0~12.1)、nab-パクリタキセル+ゲムシタビン群9.2ヵ月(8.3~10.6)であった(ハザード比[HR]:0.83、95%CI:0.70~0.99、p=0.036)。12ヵ月OS率は、NALIRIFOX群45.6%(95%CI:40.5~50.5)、nab-パクリタキセル+ゲムシタビン群39.5%(34.6~44.4)であり、18ヵ月OS率はそれぞれ26.2%(20.9~31.7)、19.3%(14.8~24.2)であった。 また、副次評価項目であるPFSは、NALIRIFOX群7.4ヵ月(95%CI:6.0~7.7)、nab-パクリタキセル+ゲムシタビン群5.6ヵ月(5.3~5.8)であった(HR:0.69、95%CI:0.58~0.83、p<0.0001)。 治療関連死は、NALIRIFOX群で6例(2%)、nab-パクリタキセル+ゲムシタビン群で8例(2%)であった。

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第2章 資格試験の観点からの医師国家試験【国試のトリセツ】Introduction

Introduction第2 章は「資格試験の観点からの医師国家試験」を取り扱います。医師国家試験は、第95回(2001年実施)以降、第111回(2017年実施)までは出題問題数が500問でした。第112回(2018年実施)より400問となり、3日間実施だった日程が2日間になっています。問題の分類は、一般問題、臨床実地問題、必修問題の3区分を踏襲しており、本章ではそれぞれの傾向と対策を講じていきます。§1一般問題§2臨床実地問題§3必修問題§4演習の工夫§1 一般問題一般問題は、「設問文」→「選択肢」という構造で成り立っています。「単純な知識の想起によって解答できる問題」が大半を占めているのが特徴です。医師国家試験の問題作成のプロセスの中には「主題を定める」という留意事項があります。つまり、提示された問題には出題背景やテーマが存在しているのが通常です。問題作成者は「受験生が●●について■■できる」という到達目標を設計しているので、過去問の演習では、その到達目標に沿うことができれば学習効率が高まります(#8 出題者の意図を汲む)。設問文以外には、選択肢に一般問題の特徴が現れます。したがって、選択肢がどのような制約で作成されているのかを事前に知っていれば、選択肢を吟味する際に役に立つのです(#9 選択肢のつくり方を意識する)。正解の選択肢は、唯一であるように作られています。ここが医療現場と最も矛盾する点であり、医師国家試験と実臨床とが乖離する要因を担っています(第3 章の#42 実臨床と資格試験との乖離を知る / #47 臨床には正解がない参照)。また、提示された選択肢は、それぞれが「最もらしいもの」であることが望ましいとされており、「ナンセンス肢」を含まないように配慮されています。例えば、生後18時間の新生児がチアノーゼを呈して頻呼吸に陥っているときに考えるべき疾患は何かと問うた場合に、選択肢に「乳児肥厚性幽門狭窄症」が含まれていた場合には「ナンセンス」となるのです。この選択肢を「肥厚性幽門狭窄症」として差し替えれば、肥厚性幽門狭窄症が乳児の疾患であることを知っていなければ除外できなくなるので選択肢の適正化を図れます。医師国家試験は、多肢選択式問題の形式をとっているので、選択肢の吟味は避けられない行程となります。地道な作業ではありますが、復習の際には選択肢をひとつひとつ大切に扱うことで、効率を高めることができます(#10 正しい内容を述べた選択肢から要点を抽出する / #11 誤った内容を述べた選択肢では誤りの箇所を正す)。このように、一般問題を演習する場合には、背景に存在している出題テーマを汲み取ろうとするプロセスと、選択肢をどのように扱っていくかという2点が重要になります。ここでまずは、臨床実地問題を解く上でも重要になる一般問題へのアプローチ方法について考えていきましょう。§2 臨床実地問題臨床実地問題は、図のような構造で成り立っています。すなわち、「本文」→「画像」→「設問文」→「選択肢」という順での配置です。このセクションでは以下のように、それぞれの要素ごとに取扱原則を設けています。画像を拡大するこれらに加え、第1章 七大原則の#2〜6を組み合わせると、第112回医師国家試験から問題数の割合が増えた臨床実地問題への対策が可能となるのです。臨床実地問題では、単に知識を問うような形式ではなく、(a)与えられた情報をどのように解釈・評価するのか、(b)知識を応用してどのように問題解決するのか、を問うような形式が好んで選ばれます。(a)は「アセスメント」と呼ばれる思考過程であり、第3章の§1で重点的にとり上げます。一方、(b)は問題解決能力を要するという点で(a)よりも高次的な形式となります。この形式では、医師の思考に沿った出題が可能になるという点で、より「臨床色の強い」問題が出来上がります。医師の思考については第3章の§2と§3で触れます。このように、第2章では資格試験でのテクニカルな切り口で、(そして第3章では実臨床の要素を踏まえた切り口で)医師国家試験を多角的に眺めることを意図しています。§3 必修問題必修問題は、医師として必ず知っておくべき基本が問われます。したがって、1問あたりの難易度は一般問題・臨床実地問題と比べると平易な問題が多く配置されるのが特徴となっています。合格基準は、80%以上の得点という絶対基準が適用されています。そのため「みんなが解ける問題を確実に得点する」という原則をいかに保てるかが、基準クリアの条件となります。大学入試の試験当日には「魔物が潜んでいる」と喩えられることがありますが、医師国家試験も同様に普段通りの自分を出せないような状況が起こりえます。このセクションでは、本番でのパフォーマンスを著しく低下させるような代表的なケースを取り上げて、リスクヘッジを行うことを目指します。例えば、本番では通常の演習とは異なり、正解を確認する術がないので見直しをした後で答えを変更したり、あるいは変更しようかどうか迷う状況が起こり得ます(#17 見直しで迷ったときは最初の答えを優先させる)。禁忌問題を気にしすぎて、「みんなが解ける問題」を間違ってしまうことも有り得ます(#18 禁忌問題は治療・緊急性・倫理的配慮で察知する)。他には、自信満々で答えた問題が、実は自大学での常識に過ぎず、Global Standard から掛け離れているがために失点することもあります(#19 local factor は排除する)。また、必修問題には高正解率の問題が大半を占めますが、中には正解率が5割に満たないような難問・奇問も紛れ込んでいるのが通常です。そのような問題に対面して生じたモヤモヤとした感情をいかに切り替えるかが大事なのです(#20 モヤモヤ問題をいち早く察知して適切に対応する)。医師国家試験を解くのは人間なので、エラーがどうしても付きまといます。統計上、エラーのパターンは比較的限られており、エラーが生じるメカニズムとその対応策を事前に知っていれば、本番のパフォーマンスを普段通りに近づけることができるはずです。巻末の付録に、遭遇頻度が高く、時に致命的になりやすいエラーを集めたコラムを配置しているので、必修問題に不安を覚える受験生は、そのエラー集も参考にすると良いでしょう。合格圏に達している受験生は、普段通りに解ければ何ら心配する必要がないのが必修問題です。しかし、試験本番に潜む魔物に対して、どのような事前準備が行えるかが合否の鍵を握っているといっても過言ではありません。§4 演習の工夫まず、医師国家試験の過去問演習における鉄則から§4はスタートします(#21 過去問は直近3カ年分を徹底的に研究・演習する)。どのような理由で直近3カ年を重視するかについて言及しています。次に、学習効率を高めるためには演習の量と質について考える必要があります。つまり、一問の演習あたりの精度と速度が効率を規定しているとも換言できます。量に重きを置き過ぎたせいで結果として押さえるべきポイントを反復する機会が少なくなってしまいがちな受験生は、演習のフォームを修正する必要があります(#22 30秒サマリーで反復の回数を増やす)。一方で、質に重きを置き過ぎたせいで結果として進捗が遅くなる傾向になる受験生は、演習速度を改善することが求められます(#23 速読では(1)診断、(2)根拠、(3)治療を確認する)。演習のフォームという点では、七大原則の#3、#4、#5を徹底することで、一問あたりから得られる学びを増幅させることができます。しかし、#3、#4、#5は演習の負荷を上げる効果があり、演習の質が高まる一方で、演習速度を低下させるという欠点があります。質にしろ、量にしろ、度が過ぎた場合には成績が伸び悩む現象が起こります。適宜、演習フォームを見直して、精度と速度のバランスをうまく調整することが重要です。このように、§4では普段のトレーニングをどのように最適化すればよいかについて考察します。第2章以降は、問題ごとにCheckpointを設けています。いずれも本書に登場する「基本ルール」で構成されています。その問題を解くときに有用と思われる記述をpickupしています。解いた後で「基本ルール」を意識してアプローチしたかどうかを確認する目的で適宜利用してください。より詳しい理解が必要であれば、該当するナンバー(#)を参照できるような配置にしているので、うまく活用していただけると幸いです。

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日本におけるSNS上のがん情報、4割超が誤情報

 SNSの普及により、患者はがん情報に容易にアクセスできるようになった。しかし、患者の意思決定に悪影響を与えかねない誤情報や有害情報も大量に発信されている。日本のSNSにおけるがん情報はどの程度信頼できるものなのか。これについて調べた名古屋市立大学病院 乳腺外科の呉山 菜梨氏らによる研究結果がJMIR formative research誌オンライン版2023年9月6日号に掲載された。 研究者らは、Twitter(現:X)上で2022年8~9月に投稿された、日本語の「がん」という言葉を含むツイートを抽出した。1)がんの発生や予後に関する言及、2)行動の推奨・非推奨、3)がん治療の経過や有害事象に関する言及、4)がん研究の成果、5)その他がんに関連する知識・情報、を含むがん関連ツイートを抽出対象とし、「いいね」の数が最も多かった上位100ツイートを選定した。それぞれのツイートについて、日本のがんセンターまたは大学病院で臨床に携わる医師である2名の独立したレビュアーが、情報が事実か誤情報か、有害か安全かを、誤情報と有害なツイートについてはその判断理由とともに評価した。 主な結果は以下のとおり。・抽出されたツイートは計6万9,875件であった。上位ツイート100件のうち、誤情報が含まれていたのは44件(44%)、有害情報が含まれていたのは31件(31%)、誤情報と有害情報の両方が含まれていたのは30件(30%)であった。・誤情報は、証明されていない(38/94、40.4%)、反証されている(19/94、20.2%)、不適切な適用(4/94、4.3%)、エビデンスの強度の誤り(14/94、14.9%)、誤解を招く(18/94、19.1%)、その他の誤情報(1/94、1.1%)に分類された。・有害情報は安全情報よりも「いいね」される頻度が高く、誤情報がリツイートされる頻度は事実に基づいた情報よりも、有害情報がリツイートされる頻度は安全な情報よりも、それぞれ有意に高かった。・正確性と有害性を合わせた分析では、「事実-安全」「事実-有害」「誤情報-安全」「誤情報-有害」と評価されたツイートの割合は、それぞれ55%、1%、14%、30%であった。・「いいね」やリツイートの数が最も多かったのは、「日本では、米国から余った抗がん剤や廃棄される抗がん剤が輸入されているため、がんの死亡率が高い」という誤った情報であった。 著者らは、「日本では、Twitter上でがんに関連する誤った情報や有害な情報が蔓延していることが明らかであり、この問題に関するヘルスリテラシーと意識を高めることが極めて重要である。さらに、行政機関や医療従事者は、患者やその家族が十分な情報を得たうえで意思決定できるよう、正確な医療情報を提供し続けることが重要である」と結論付けている。

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卒業試験って大学によって違うの?傾向を教えて【医学生お悩み相談ラヂオ】第9回

動画解説第9回は、医学部6年生の女性から卒業試験に関するお悩み。日々の勉強で力がついてきている自負はあるが、やはり不安があり、最近の傾向を知りたいとのこと。大学によって出題傾向は違うのか?どの大学にも共通するものはあるのか?えど先生は、卒試で絶対気をつけるべきポイント、心構えを教えてくれました。

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精度と速度のバランスを調整して演習する【国試のトリセツ】第7回

精度と速度のバランスを調整して演習するQuestion〈109G61〉72 歳の男性。全身倦怠感を主訴に来院した。現病歴7 日前に自宅を出たところでつまずいて転倒し、腰痛が生じたため自宅近くの診療所にて鎮痛薬を処方されて頻回に服用していた。3日前から全身倦怠感と食欲低下とを自覚していたが、今朝になり食事がとれなくなったため家族に付き添われて受診した。既往歴中学生時に虫垂炎。高血圧症、糖尿病および脂質異常症で内服治療中。生活歴喫煙は60歳まで20本/日を40年間。12年前から禁煙している。飲酒は機会飲酒。家族歴父親が肺癌で死亡。母親が脳卒中で死亡。現 症意識レベルはJCSI-1。身長160cm、体重66kg。体温36.4℃。脈拍52/分、整。血圧120/60mmHg。呼吸数18/分。SpO2 98%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。浮腫を認めない。検査所見血液所見:赤血球383万、Hb 11.0g/dL、Ht 34%、白血球8,400、血小板22万。血液生化学所見:総蛋白7.0g/dL、アルブミン3.5g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、AST 34IU/L、ALT 42IU/L、LD 341IU/L(基準176~353)、ALP 281IU/L(基準115~359)、γ-GTP 48IU/L(基準8~50)、アミラーゼ74IU/L(基準37~160)、CK 162IU/L(基準30~140)、尿素窒素32mg/dL、クレアチニン1.6mg/dL、尿酸8.4mg/dL、血糖124mg/dL、HbA1c 6.8%(基準4.6~6.2)、Na 138mEq/L、K 7.8mEq/L、Cl 108mEq/L。CRP 0.3mg/dL。直ちに行うべき検査はどれか。(a)頭部CT(b)心エコー検査(c)尿中薬物検査(d)12誘導心電図(e)胸部X線撮影

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