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Hibを追加した乳幼児の5種混合ワクチン「ゴービック水性懸濁注シリンジ」【最新!DI情報】第9回

Hibを追加した乳幼児の5種混合ワクチン「ゴービック水性懸濁注シリンジ」今回は、沈降精製百日せきジフテリア破傷風不活化ポリオヘモフィルスb型混合ワクチン(商品名:ゴービック水性懸濁注シリンジ、製造販売元:阪大微生物病研究会)」を紹介します。本剤は、既存の4種混合ワクチンの抗原成分にインフルエンザ菌b型(Hib)の抗原成分を加えた5種混合ワクチンであり、乳幼児期のワクチン接種回数が減少することで、乳幼児および保護者の負担軽減が期待されています。<効能・効果>百日せき、ジフテリア、破傷風、急性灰白髄炎およびHibによる感染症の予防の適応で、2023年3月27日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>初回免疫として、小児に通常0.5mLずつを3回、いずれも20日以上の間隔をおいて皮下または筋肉内に接種します。追加免疫では、初回免疫後6ヵ月以上の間隔をおいて、通常0.5mLを1回皮下または筋肉内に接種します。<安全性>国内第III相試験(BK1310-J03)において、皮下接種後の副反応は91.7%に認められました。そのうち、接種部位の主な副反応として、紅斑78.9%、硬結46.6%、腫脹30.1%、疼痛13.5%が認められました。全身性の主な副反応は、発熱(37.5℃以上)57.9%、易刺激性27.1%、過眠症24.1%、泣き23.3%、不眠症13.5%、食欲減退13.5%でした。<患者さんへの指導例>1.このワクチンは、5種混合ワクチンです。2.百日せき、ジフテリア、破傷風、急性灰白髄炎およびHibによる感染症の予防の目的で接種されます。3.生後2ヵ月から接種を開始し、計4回の定期接種を行います。4.明らかに発熱(通常37.5℃以上)している場合は接種できません。5.接種後30分間は接種施設で待機するか、ただちに医師と連絡がとれるようにしておいてください。6.接種後は健康状態によく気をつけてください。接種部位の異常な反応や体調の変化、高熱、けいれんなどの異常を感じた場合は、すぐに医師の診察を受けてください。<ここがポイント!>本剤は、既存の4種混合ワクチン(百日せき、ジフテリア、破傷風、不活性化ポリオ混合ワクチン)の成分に加えて、インフルエンザ菌b型ワクチンの成分を混合した5種混合ワクチンです。百日せきは、乳幼児早期から罹患する可能性があり、肺炎や脳症などの合併症を起こし、乳児では死に至る危険性があります。ジフテリアの罹患患者は、1999年以降は日本で確認されていませんが、致死率の高い感染症です。破傷風は、菌が産生する神経毒素によって筋の痙攣・硬直が生じ、治療が遅れると死亡することもあります。急性灰白髄炎(ポリオ)は、脊髄性小児麻痺として知られており、主に手や足に弛緩性麻痺が生じ、永続的な後遺症が残る場合や呼吸困難で死亡することもあります。インフルエンザ菌b型はヒブ(Hib)とも呼ばれ、この菌が何らかのきっかけで進展すると、肺炎、敗血症、髄膜炎、化膿性の関節炎などの重篤な疾患を引き起こすことがあります。これらの感染症はワクチンの接種によって予防が可能で、日本では予防接種法で定期接種のA類疾病に該当します。しかし、乳幼児期には、これら以外の感染症に対するワクチンの接種も必要なため、保護者の負担の大きさや接種スケジュール管理の煩雑さが問題となっています。本剤は、百日せき、ジフテリア、破傷風、ポリオおよびHib感染症に対する基礎免疫を1剤で同時に付与できるため、乳幼児への注射の負担および薬剤の管理を軽減できるメリットがあり、2024年4月から定期接種導入が予定されています。また、本剤は皮下接種だけでなく、筋肉内接種も可能です。生後2ヵ月以上43ヵ月未満の健康乳幼児267例を対象とした国内第III相試験(皮下接種)において、本剤接種後における初回免疫後の各抗体保有率は、ジフテリアが99.2%、その他は100%であり、追加免疫後はすべて100%でした。追加免疫後では、すべての抗原に対して初回免疫後よりも高い免疫原性を示すことが確認されました。

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日本における小児に対する抗精神病薬処方の動向

 統合失調症は、幻覚・妄想やその他の症状を特徴とする精神疾患である。日本においても統合失調症の治療ガイドラインが確立されているが、小児患者に対する薬物療法は推奨されていない。さらに、小児統合失調症患者に対する抗精神病薬の処方傾向は、あまりよくわかっていない。東北医科薬科大学病院の菊池 大輔氏らは、2015~22年の日本における小児外来患者に対する抗精神病薬の処方動向を明らかにするため、本研究を実施した。その結果、日本では小児統合失調症に対して、主にアリピプラゾールとリスペリドンが処方されており、アリピプラゾールの処方割合が時間の経過とともに有意に増加していることを報告した。Journal of Pharmaceutical Health Care and Sciences誌2024年1月2日号の報告。 対象は2015年1月1日~2022年12月31日に、急性期地域医療連携病院を受診した0~18歳の統合失調症患者。2023年11月時点での日本人小児外来患者の管理データを分析した。対象薬剤は、2022年12月時点に日本で発売されている統合失調症の適応を有する薬剤とした。期間中の抗精神病薬の年間処方傾向は、その割合に応じて算出した。各抗精神病薬の処方割合の評価には、Cochran-Armitageの傾向検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・小児統合失調症患者に対して主に処方されていた抗精神病薬は、アリピプラゾールとリスペリドンであった。・男性患者では、アリピプラゾールの処方割合が21.5%(2015年)から35.9%(2022年)へ有意な増加が認められた(p<0.001)。一方、リスペリドンの処方割合は、47.9%(2015年)から36.7%(2022年)へ有意な減少が認められた(p<0.001)。・女性患者においても、男性と同様に、アリピプラゾールの処方割合が21.6%(2015年)から35.6%(2022年)へ有意に増加し(p<0.001)、リスペリドンの処方割合は、38.6%(2015年)から24.8%(2022年)へ有意に減少していた(p<0.001)。

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休暇中に働く医師、燃え尽き症候群のリスク高い

 超過勤務が多くなりがちな医師は、燃え尽き症候群(バーンアウト)のリスクが高いという報告は数多い。また、労働者全般を対象とした研究では、休暇中に仕事を完全に切り離すことも重要であり、生産性を向上させ、精神的疲労を軽減させることが報告されている。医師における休暇の取得と休暇中の労働は、燃え尽き症候群や職業的充実感とどのように関連しているのか。米国医師会のChristine A. Sinsky氏らによる研究の結果がJAMA Network Open誌2024年1月2日号に掲載された。 研究者らは米国の医師を対象に、2020年11月20日~2021年3月23日に調査票による横断調査を実施した。データ解析は2023年3~7月に実施した。過去1年間に取得した休暇日数、休暇中に患者ケアおよびその他の専門的業務に費やした時間(1日当たり)、休暇中の電子カルテ(EHR)に来た業務のカバー率、休暇取得の障壁についての情報が収集された。バーンアウトはMaslach Burnout Index、職業的充実感はStanford Professional Fulfillment Indexを用いて測定した。 主な結果は以下のとおり。・休暇に関する調査に回答した米国人医師3,024人(年齢中央値50歳、男性62%)が対象となった。過去1年間に15日以下の休暇を取得した医師は59.6%で、うち6~15日が39.7%、5日以下が19.9%だった。年間15日以上の休暇を取得した医師の割合が高い診療科は麻酔科、放射線科で、最も低いのは救急科だった。・その一方で、70.4%の医師が休暇中に患者ケアに関連した業務を行った、と回答しており、うち休暇日1日当たり30分以下の勤務が37.3%、30~60分が18.3%、60~90 分が7.3%、90分以上が7.4%だった。・休暇中、「電子カルテの業務が完全にカバーされている」と報告した人は半数以下(49.1%)だった。・休暇取得にまつわる懸念として、「臨床をカバーしてくれる人を見付けること」「経済的な懸念」に対して「かなりある」「非常にある」(5段階の選択肢)との回答は、年間15日以上の休暇を取得する可能性の低下と関連していた。・「年間15日以上の休暇取得」「休暇中の電子カルテ業務の完全カバー」との回答は、バーンアウト率の低下と関連していた。・一方、休暇日1日当たり30分以上を患者ケアに関連した業務に費やすことは、バーンアウト率の上昇と関連していた。 著者らは「休暇の取得日数と、休暇中に患者関連の業務を行うことは、医師の燃え尽き症候群と関連していた。医師が適切に休暇を取得し、臨床責任をカバーできるシステムレベルの取り組みを行うことが、医師の業務負担を軽減させる可能性がある」としている。

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心房細動のない心房性疾患患者の潜因性脳卒中、アピキサバンの再発予防効果は?/JAMA

 心房細動を伴わない心房性心疾患の証拠がある、潜因性脳卒中(cryptogenic stroke)を呈した患者において、アピキサバンはアスピリンと比較して脳卒中再発リスクを有意に低下しなかった。米国・Weill Cornell MedicineのHooman Kamel氏らが「ARCADIA試験」の結果を報告した。心房性心疾患は、臨床的に明らかな心房細動を認めない場合において、脳卒中と関連することが示されている。心房細動への有益性が示されている抗凝固療法が、心房性疾患を有するが心房細動は有さない患者の脳卒中を予防するかどうかは不明であった。JAMA誌オンライン版2024年2月7日号掲載の報告。1,015例を対象に有効性(脳卒中再発予防)と安全性を評価 ARCADIA試験は、潜因性脳卒中および心房性心疾患の証拠(PTFV1>5,000μV、NT-ProBNP>250pg/mL、心エコーでの左房直径≧3cm/m2と定義)がある患者において、脳卒中の二次予防のための抗凝固療法と抗血小板療法を比較する第III相の多施設共同二重盲検無作為化試験。試験登録と追跡調査は2018年2月1日~2023年2月28日に行われ、National Institutes of Health StrokeNet and the Canadian Stroke Consortiumに参加する185施設から患者1,100例を登録し、そのうち1,015例が試験に参加した。 被験者は、1対1の割合でアピキサバン群(5mgまたは2.5mgを1日2回投与、507例)またはアスピリン群(81mgを1日1回投与、508例)に無作為化され追跡評価を受けた。無作為化の時点で被験者に心房細動の証拠はなかった。 主要有効性アウトカムは脳卒中の再発で、time-to-event解析にて評価した。無作為化後に心房細動と診断された患者を含む全被験者を対象とし、無作為化した各群に従って解析が行われた。主要安全性アウトカムは、症候性頭蓋内出血およびその他の大出血であった。平均追跡期間1.8年で試験は中止に 平均追跡期間1.8(SD 1.3)年で、事前に計画された中間解析後に試験は無益であるとして中止となった。 被験者1,015例の平均年齢は68.0(SD 11.0)歳、女性が54.3%であり、87.5%が追跡期間の調査を完了した。 脳卒中再発の発生は、アピキサバン群40例(年率4.4%)、アスピリン群40例(年率4.4%)であった(ハザード比[HR]:1.00、95%信頼区間[CI]:0.64~1.55)。 症候性頭蓋内出血はアピキサバン群では発生せず、アスピリン群で7例(年率1.1%)に発生した。その他の大出血の発生は、アピキサバン群5例(年率0.7%)、アスピリン群5例(年率0.8%)であった(HR:1.02、95%CI:0.29~3.52)。

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職場でのウェルネスプログラムは効果なし?

 多くの企業が、従業員に向けてマインドフルネス、ライフコーチング、睡眠の質の改善、その他多くの問題に焦点を当てた無料のウェルネスプログラムの利用を推奨している。しかし、このようなプログラムの中でウェルビーイングの向上に寄与するのはたった1種類に過ぎなかったことが、4万6,000人以上の英国人労働者を対象にした調査結果の解析から明らかになった。英オックスフォード大学のウェルビーイング・リサーチ・センターのWilliam Fleming氏によるこの研究結果は、「Industrial Relations Journal」に1月10日掲載された。 この研究は、Britain's Healthiest Workplace(BHW)調査の2017年と2018年のデータに基づくもの。BHW調査には、2014年から2018年の間に総計で233企業の従業員4万6,336人が参加し、繰り返し調査に回答していた。調査では、仕事の満足度やストレスレベルなどとともに、帰属意識や会社からのサポートレベル、トレーニングを受ける機会についても問われていた。Fleming氏は、個人レベルのウェルビーイングに対する介入の効果を、介入への参加者と非参加者の間で比較した。介入は、マインドフルネス、レジリエンス、ストレスマネジメント、リラクゼーションクラス、ウェルビーイングアプリなどで、その数は約90種類に及んだ。 その結果、チャリティーやボランティアプログラムを除いて、従業員のウェルビーイングは、個人レベルのメンタルヘルスへの介入プログラムに参加しているかいないかにかかわらず、変化していないことが明らかになった。また、マインドフルネスやレジリエンス/ストレスマネジメントなどの介入は、ウェルビーイングに悪影響を与え得ることも示唆された。ただしこの結果は、こうした介入にはもともとメンタルヘルスのレベルが低下している人の参加が多いため、意図した効果が得られなかった可能性もあると考えられた。 こうした結果についてFleming氏は、「得られた結果は、個人レベルでのウェルビーイングに対する介入の広がりと正当性に挑戦状を突きつけるものだ」と話す。また同氏は、「これらの結果が物議を醸す内容であることは承知している。しかし、企業が本当に従業員の気分を改善したいのであれば、スケジュール、給与、人事考課などの労働条件を改善するのが最善の策なのかもしれない。従業員がマインドフルネスアプリや睡眠プログラム、ウェルビーイングアプリを利用したいと思うこと自体は何も悪くない。しかし、企業が従業員のウェルビーイング増進を望むのであれば、働き方に関する改革が必要だ」とNew York Times紙に語った。 米スプリングヘルス社の共同設立者で米イェール大学の心理学分野のAdam Chekroud氏は、「この研究で、職場において実施されているウェルネスプログラムの効果が全面的に否定されたのは、信憑性の高くない介入に焦点を当てているからだ」と述べ、今回の研究結果に対して否定的な見解を示している。スプリングヘルス社は、従業員を、メンタルヘルスを高めるための心理療法やオンライン薬物療法に結び付けるプラットフォームを運営している。同氏によると、スプリングヘルス社による2022年の研究では、同社のサービスを利用した1,132人の米国人労働者のほとんどが抑うつの軽減を実感したほか、欠勤日数の減少や、職場の生産性に関する自己申告の上昇も確認されたという。 一方で、英国のメンタルヘルス財団で研究・応用学習の責任者を務め、世界保健機関(WHO)や英イングランド公衆衛生局(PHE)に対してメンタルヘルス向上を目指す取り組みについて助言を行っているDavid Crepaz-Keay氏は、「この研究結果は、従業員支援の有効性を一貫して示唆してきた、これまでの多くの研究よりも確実に強固だ」と述べ、Fleming氏を支持する立場を明示している。

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女性診療の疾患と薬がよくわかる ウィメンズヘルスケアのための薬の使い方

女性診療の知りたかった知識が満載!「月刊薬事」66巻2号(2024年1月臨時増刊号)女性診療では、女性特有の生理やホルモンの変化と症状に合わせたホルモン剤の使い方や、妊娠中や授乳中の薬の影響など特別な知識が必要なため、「むずかしそう」というイメージが強いのではないでしょうか。本書では、近年注目が高まっているウィメンズヘルスケアの視点から、外来治療を行う婦人科疾患から救急・入院治療が必要な疾患、さらに妊娠・授乳中の薬物療法、不妊治療の薬における注意点などについて、薬物治療とセルフケアを中心に解説します。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する 女性診療の疾患と薬がよくわかる ウィメンズヘルスケアのための薬の使い方定価4,400円(税込)判型B5判頁数316頁発行2024年1月編集柴田 綾子ご購入はこちらご購入はこちら

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情報の取捨選択のセンスを身に付ける【国試のトリセツ】第27回

§1 アセスメント情報の取捨選択のセンスを身に付けるQuestion〈109E48〉86歳の男性。なんとなく元気がないと家族から往診の依頼があった。数日前から食欲が低下し、いつもより元気がないと同居の妻から説明を受けた。本人は何ともないと言う。ほぼベッド上の生活で食事摂取は自立しているが、それ以外のADLには介助を必要としている。5年前から脳梗塞後遺症(左片麻痺)、混合型認知症、高血圧症、前立腺肥大症および胆石症で訪問診療を受けている。意識レベルはJCS I-2。体温36.5℃。脈拍112/分、整。血圧110/80mmHg。呼吸数16/分。SpO296%(room air)。眼瞼結膜は貧血様でない。眼球結膜に黄染を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部では腸雑音がやや亢進し、右季肋部の触診を行うと右手で払いのけようとする。下腿に浮腫を認めない。正しい判断はどれか。(a)浮腫を認めないので心不全ではない。(b)腹痛の訴えがないので胆嚢炎ではない。(c)SpO2が96%なので呼吸不全ではない。(d)体温が36.5℃なので腎盂腎炎ではない。(e)眼瞼結膜が貧血様でないので消化管出血ではない。

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2023年12月期 決算説明

2023年度実績及び2024年度予想について   :代表取締役社長 COO 藤井勝博中期計画2025の評価及び今後の方向性について:代表取締役会長 CEO 大野元泰※IRページは こちら からお戻りいただけます※タイトルを選ぶとお好きなチャプターからご覧いただけます。※IRページは こちら からお戻りいただけます.banAdGroup{display:none;}

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第199回 脳神経外科の度重なる医療過誤を黙殺してきた京都第一赤十字病院、背後にまたまたあの医大の影(前編)

京都市が京都第一赤十字病院に対して改善を求める行政指導こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は久しぶりに奥多摩に行って来ました。真冬のちょうどこの時期、度々訪れている六ツ石山(1,479m)です。昨年は頂上でも積雪がほとんどなく地球温暖化を嘆いたのですが、今年は、先週月曜日に降った大雪のお陰で、麓から雪がたっぷり残っており、快適な冬山登山を楽しむことができました。今週から一気に暖かくなるそうですが、春が来る前に、もう1回くらい冬型の気圧配置の下、南岸低気圧が通過しないかと期待しています。さて、今回は、患者に対する手術の説明や診療記録の取り扱いが不適切だったとして京都市保健所が京都第一赤十字病院(京都市東山区、池田 栄人院長)に対して改善を求める行政指導を行ったというニュースを取り上げます。患者の死亡例も含む不適切とされた複数の事例は最近のものではなく、3年近く前に起こったものです。なぜ今ごろになって表沙汰になり、京都市が動く事態となったのでしょうか。調べてみると、同病院や日本赤十字社の医療過誤や医療事故を隠蔽しようとする体質が浮かび上がってきました。不適切とされた事例はいずれも同病院の脳神経外科で確認1月19日付の京都新聞、NHK等の報道によれば、患者に対する手術の説明や診療記録の取り扱いが不適切だったとして、京都市(京都市保健所は京都市が設置)が18日までに、京都第一赤十字病院(以下、第一日赤)に対し、改善を求める行政指導をしていたことがわかったとのことです。これらの報道によれば、不適切とされた事例はいずれも同病院の脳神経外科で確認されたものです。2020年に行われた脳腫瘍の手術では、その後、予定外の再手術となった理由について、患者や家族に説明した記録が見つかりませんでした。さらに同年、手術後に死亡した別の患者の死亡診断書には「手術なし」と事実と異なる記載をしていました。また、2021年には、研修医の医療処置を受けた患者が死亡していますが、遺族には処置を施した説明をしていませんでした。こうした事例の中には、病院の医療安全管理委員会に適切に報告されず、事後の検証も十分行われていなかったケースもあるとのことです。以上の3件のほか、2019~21年に手術後などに9人が死亡し、他にも3人の患者で不適切な対応があったとの情報が市には寄せられており、京都市は同病院に対し、3月18日までに再検証した上、改めて報告するよう求めたとのことです。診療録の記載方法、治療法などについての患者への説明方法、患者の遺族に対する診療経過の説明方法などを指導各紙報道から約1週間後の1月24日、第一日赤は同病院のWebサイトに、「京都市保健所による行政指導について」というタイトルのお詫び文を掲載しました1)。それによれば、京都市保健所が同病院に対し指導および再検証を求める通知を行ったのは1月17日でした。指導内容は、診療録の記載方法、治療法などについての患者への説明方法、患者の遺族に対する診療経過の説明方法、死亡診断書の記載方法、医療安全管理委員会の運用方法などに関する指導などで、医療機関としては当然行っているべき基本的な事柄ばかりです。逆に言えば、それらのことがいかに杜撰に行われていたかがうかがい知れます。また、医療安全部門での把握や医療事故対応、管理者報告・院内共有、再発防止等について再検証を求めたのは、再検証し保健所に報告するものが12件、再検証のみ求められたものが49件もありました。「月刊Hanada」が3号連続で第一日赤の医療過誤の実態をスクープ京都市が外部からの情報提供を基に、第一日赤に医療法25条による立ち入り検査に入ったのは昨年10月で、計3回行われました。いったい立ち入り検査のきっかけは何だったのでしょうか。実は、2023年9月26日発売の「月刊Hanada」(飛鳥新社)の11月号に、「告発スクープ!正常脳を切除、禁忌の処置で死亡 医療事故を放置 日本赤十字社の闇」と題する記事が掲載されています。ジャーナリストの長谷川 学氏によるこの記事は、事故当時、第一日赤に在籍していた医師や患者家族等への取材に加え、患者家族が京都地方裁判所を通じて同病院に診療情報の開示請求を行って取得した証拠などを基に執筆されています。同記事には、京都市が「手術の説明や診療記録の取り扱いが不適切だった」と問題視したいくつかの事例について、その詳細が書かれています。脳腫瘍ではない正常脳の一部を摘出、脳圧が高まっている患者では禁忌の腰椎穿刺を研修医が単独で実施同記事によれば、2020年に行われた70代女性に対する脳腫瘍摘出手術では、一度目の手術で執刀医は箇所を間違えて開頭、脳腫瘍ではない正常な脳の一部を摘出していました。しかし医師たちはそのミスを患者、家族には伝えず、「もう一つ怪しいものがある」と再度手術を行い、腫瘍の摘出を行っていました。患者は今も後遺症に悩まされ続けているとのことです。2021年に起きた研修医の医療処置を受けた患者が死亡した事例は、静脈洞血栓症が疑われる20代女性に対し、脳圧が高まっている状態では禁忌とされる腰椎穿刺を行ってしまったというものです。脳圧亢進時は脳ヘルニアを起こす危険性があり禁忌とされていることを知らなかった研修医が、独断かつ単独で腰椎穿刺を行い、患者を死に至らしめていました。しかし、家族には「脳の細胞がやられているので助からない」と伝えられたのみで、腰椎穿刺を行ったことは伏せられていました。院内の安全対策委員会でも事故の調査委員会は設置されなかったとのことです。完全な隠蔽と言えます。「月刊Hanada」は続く12月号で「告発キャンペーン第2弾 京都府立医大の深い闇 正常脳を誤って摘出 第一日赤脳外科部長が謝罪」の記事を、さらに2023年1月号では「告発キャンペーン第3弾 正常脳を引っ掻き回し切除 凄まじい手術ビデオ 第一日赤に立入検査」の記事を掲載しています。同じく長谷川氏による執筆で、1月号に最初の告発記事を掲載してからの第一日赤の動き(正常脳摘出の患者・家族には謝罪するも、腰椎穿刺死亡の家族には報告・謝罪なし)や、その他の腰椎穿刺死亡例の存在、京都市が立ち入り検査に至った経緯、医療事故調査制度の限界などについて報じています。脳神経外科が2つ併存の異常さ、京都府立医大系列の第二脳神経外科で事故多発「月刊Hanada」の一連の記事を読んで驚いたのは、第一日赤で事故が多発していた当時、同病院には脳神経外科が2つあったという事実です(現在は1つ)。第一脳神経外科、第二脳神経外科と名付けられ、それぞれに部長、医局員がおり手術が行われていたとのことです。そして、事故が多発していたのは京都府立医大の脳神経外科からの派遣で構成された第二脳神経外科でした。府立医大系列ではない第一脳神経外科の部長(当時)は、事故が頻発していることに危機感を持ち、同病院の経営陣や日本赤十字社本社、さらには京都府立医大の脳神経外科などに幾度も注意喚起を行い、改善を求めたものの、事態は一向に改善されなかったのだそうです。「月刊Hanada」の記事によれば、今回の京都市の立ち入り検査は、この元部長が、同誌11月号の報道をきっかけとして、10月に市に公益通報を行ったことによるものだそうです。同誌の報道だけでは第一日赤は動こうとせず、京都市に対する公益通報が行われ、立ち入り検査が入って初めて、一部の事故は表沙汰になり、患者にも事実が伝えられたわけです。過誤や事故の原因を究明しようともせず、ただ隠蔽していた第一日赤現行の医療事故調査制度は、すべての医療機関に対して、医療事故で患者が死亡した場合、第三者機関である医療事故調査・支援センターに報告することや、原因を調査することなどを義務付けています。しかし、報告や調査を行うケースに該当するかどうかは医療機関の院長等の判断に任されています。そうした、医師に”甘い”とも言える運用ルールが、過誤や事故の隠蔽につながっていることが最近問題視されています。一連の報道を読むと、過誤や事故の原因を究明しようともせず、ただ隠蔽していた第一日赤の悪質さは度を越しているように感じます。それにしても、一昨年、大津市民病院の医師大量退職事件に関連して京都府立医大のジッツ戦略についてはこの連載でも幾度か取り上げましたが(「第121回 大量退職の市立大津市民病院その後、今まことしやかに噂されるもう一つの“真相”」、ほか)、今回の第一日赤の件でも同大が絡んでいる点が、なかなか興味深いところです(この項続く)。参考1)京都市保健所による行政指導について/京都第一赤十字病院

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抗肥満薬アライ、内臓脂肪をどのくらい減らす? 【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第125回

要指導医薬品として承認された抗肥満薬「アライ」を覚えていますでしょうか。承認されたのはちょうど1年前の2023年2月で、その審査に4年もかかったこと、また久しぶりのダイレクトOTCであることも話題になりました。公式ブランドサイトには「今春発売予定」とあり、2024年3月4日の世界肥満デーに合わせて、アライの発売を記念した記者発表会を開催するようです。なんだかいよいよという感じがしてきましたね。「アライ」は、大正製薬によって申請された日本初となる内臓脂肪・腹囲減少薬で、成分名はオルリスタットです。「成人(18歳以上)」「腹囲が男性85cm以上/女性90cm以上」「生活習慣改善の取り組みを行っている」人の内臓脂肪および腹囲の減少が期待できるOTC医薬品です。「腹囲が男性85cm以上/女性90cm以上」というのは、いわゆるメタボリックシンドロームの基準と同じなので、本剤の必要のない人が過度なダイエットのために使用することはできません。なお、要指導医薬品ですのでオンラインでは販売できず、再審査期間が8年設定されます。このアライの気になる作用機序は、消化管の中でリパーゼを不活性化し、食事に含まれる脂質の体内吸収を抑制することで、減量効果を得ようとするものです。臨床試験において、投与開始から24週の内臓脂肪面積の変化率はプラセボ群-5.78% vs.アライ群-14.10%、腹囲変化量は-1.63cm vs.-2.49cmで、いずれもプラセボ群に対して有意に減少していました(p<0.05)。副作用としては、作用メカニズムに由来する油の漏れ、便を伴う放屁、脂肪便や下痢などですが、肝障害にも注意が必要です。注目すべきは、長期投与試験で「油の漏れ」が30%超、「便を伴う放屁」が20%超に発生しているという点です。軽微な副作用とはいえ、これらがQOLに及ぼす影響は大きいと考えられ、服薬継続に影響を及ぼしそうな気がします。本剤の販売には、腹囲などの基準や食事・運動習慣の確認だけでなく、1ヵ月間の生活習慣記録の確認も必要です。それらを薬剤師が確認し、アライを適切に服用することで肥満が改善したという報告が1年後に聞かれることを期待したいと思います。なお、この記者発表会では、日本肥満学会の理事長の講演やアライの情報提供だけでなく、購入フローのデモンストレーションや製品の配布(薬剤師の確認のうえ、本剤の対象者のみ)も行われるようです。いよいよ発売が近くなり、患者さんから聞かれる機会も増えると思うので、参考になれば幸いです。

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ADHD治療薬、長期使用で心血管疾患リスク増大

 注意欠如・多動症(ADHD)の罹患者数は過去数十年で大幅に増加しており、治療薬の処方もそれに伴い増加している。ADHD治療薬には心拍数・血圧の上昇との関連が報告されているが、これに関し、重大な心血管疾患(CVD)との関連を調査した研究結果が発表された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のLe Zhang氏らによる本研究の結果は、JAMA Psychiatry誌2024年2月1日号に掲載された。 2007~20年にスウェーデン国内でADHD診断を受けた、または同国で承認されたADHD治療薬である精神刺激薬(メチルフェニデート・アンフェタミン・デキストロアンフェタミン・リスデキサンフェタミン)および非精神刺激薬(アトモキセチン・グアンファシン)のいずれかの処方を受けた6~64歳の患者を対象に、ADHD治療薬の長期使用とCVD(虚血性心疾患・脳血管疾患・高血圧・心不全・不整脈・血栓塞栓症・動脈疾患・その他の心疾患)の関連を調査した。CVDの既往歴がある患者は除外され、ADHD治療薬の累積使用期間は14年以内であった。 主な結果は以下のとおり。・CVDを発症した1万388例(年齢中央値34.6歳、男性59.2%)を同定し、CVDを有さない対照者5万1,672例とマッチさせた。両群の追跡期中央値は4.1年だった。・ADHD治療薬の使用期間が長いほど、非使用者と比較したCVDリスクが増加していた。(使用期間1~2年の調整オッズ比[aOR]:1.09、3~5年:1.27、5年超:1.23)。・ADHD治療薬の長期使用は高血圧(5年超のaOR:1.80)、動脈疾患(5年超のaOR:1.49)のリスク増加と関連していた。・14年の追跡期間全体では、ADHD治療薬の使用期間が1年延長するごとにCVDリスクが4%増加し、最初の3年は8%とより大きなリスク増加が見られた。小児および青年(25歳未満)、成人(25歳以上)において同様のパターンが観察された。 研究者らは「この症例対照研究では、ADHD治療薬の長期服用がCVD、とくに高血圧と動脈疾患のリスク増加と関連していることが明らかになった。これらの所見は、ADHD治療薬の長期使用について治療方針を決定する際に、潜在的な利益とリスクを慎重に比較検討することの重要性を強調するものである。臨床医は治療期間中、定期的かつ一貫して心血管系の徴候や症状をモニタリングすべきである」と結論付けている。

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母乳最低限の超早産児の神経発達、ドナーミルクvs.早産児用粉ミルク/JAMA

 最小限の母乳しか与えられなかった超早産児は、ドナーミルクまたは早産児用粉ミルクのいずれを与えられても、修正月齢22~26ヵ月時点の神経発達アウトカムに差異は認められなかった。米国・アイオワ大学のTarah T. Colaizy氏らが、Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Development Neonatal Research Networkに参加している米国の大学医療センター15施設で実施した無作為化二重盲検臨床試験「MILK試験」の結果を報告した。出生後入院中の超早産児の母乳育児は、早産児用粉ミルクと比較して神経発達の良好なアウトカムと関連しているが、母乳をまったく与えていない、または最小限しか与えていない超早産児において、ドナーミルクが早産児用粉ミルクと同様の神経発達上の利点をもたらすかは不明であった。JAMA誌オンライン版2024年1月30日号掲載の報告。修正月齢22~26ヵ月でのBSID認知スコアを比較 研究グループは、2012年9月7日~2019年3月13日に、生後7日未満で参加施設に入院した在胎週数29週0日未満または出生時体重1,000g未満の新生児を登録した。主な登録基準は、(1)出産した母親が授乳を開始していない、(2)授乳は開始されたが出産後21日以前に母親が搾乳を中止、(3)出生後7~21日の間、母乳供給量が最小限(5日間の平均母乳量が3オンス/日以下)であった。 登録した新生児をドナーミルク群または早産児用粉ミルク群に無作為に割り付け、無作為化から生後120日時点か死亡または退院のいずれか早い日まで与えた。母乳の基準が満たされていれば、生後21日目までいつでも無作為化できるとした。 主要アウトカムは、修正月齢22~26ヵ月で測定されたBayley乳幼児発達検査(BSID)の認知スコアとした。無作為化から修正月齢22~26ヵ月の間に死亡した乳児には、54ポイント(スコア範囲:54~155、≧85は神経発達の遅れがないことを示す)を割り当てた。副次アウトカムは、BSIDの言語および運動スコア、院内での成長、壊死性腸炎、死亡などを含む24項目であった。修正月齢22~26ヵ月の追跡調査終了日は2021年11月15日であった。ドナーミルク群と早産児用粉ミルク群で神経発達アウトカムに有意差なし 適格新生児1,965例のうち、483例が無作為化された(ドナーミルク群239例、早産児用粉ミルク群244例)。在胎週数中央値は26週(四分位範囲[IQR]:25~27)、出生時体重中央値は840g(IQR:676~986g)、女児52%であった。出産した母親の人種は、自己申告で黒人52%(247/478例)、白人43%(206/478例)、その他5%(25/478例)であった。 追跡調査前に死亡した乳児は54例だった。生存乳児の88%(376/429例)は、修正月齢22~26ヵ月で評価された。 調整平均BSID認知スコアは、ドナーミルク群80.7(SD 17.4)、早産児用粉ミルク群81.1(SD 16.7)、補正後平均群間差は-0.77(95%信頼区間[CI]:-3.93~2.39)で、両群間に有意差はなかった。補正後平均BSID言語スコアおよび運動スコアにも有意差は認められなかった。 死亡率(追跡調査前の死亡)は、ドナーミルク群13%(29/231例)、早産児用粉ミルク群11%(25/233例)であった(補正後群間リスク差:-1%、95%CI:-4~2)。壊死性腸炎は、ドナーミルク群では4.2%(10/239例)に発生したが、早産児用粉ミルク群では9.0%(22/244例)に発生した(-5%、-9~-2%)。 体重増加は、ドナーミルク群22.3g/kg/日(95%CI:21.3~23.3)、早産児用粉ミルク群24.6g/kg/日(23.6~25.6)で、ドナーミルク群のほうが緩徐であった。

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令和6年度コロナワクチン接種方針を発表、他ワクチンと同時接種が可能に/厚労省

 厚生労働省は2月7日の「新型コロナワクチン接種体制確保事業に関する自治体向け説明会」1)にて、令和6年度(2024年度)の接種方針を発表した。2月5日に開催された第55回生科学審議会予防接種・ワクチン分科会2)の議論を踏まえ、2024年3月末まで特例臨時接種が実施されている新型コロナワクチンは、4月以降、インフルエンザや高齢者の肺炎球菌感染症と同じ定期接種のB類疾病に位置付け、高齢者等に対して個人の発病または重症化を予防し、併せて蔓延予防に資することを目的とした接種を実施することとした。対象は65歳以上、もしくは60歳~64歳で心臓、腎臓、呼吸器のいずれかの機能の障害、またはヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害を有する者。定期接種開始は9月以降となる。他ワクチンとの同時接種も可能に 新型コロナワクチンと他疾病ワクチンとの接種間隔については、特例臨時接種となっている現在は、インフルエンザの予防接種は同時接種可能であるが、その他の予防接種との間隔は13日以上空けることとされている。4月以降は定期接種実施要領の規定どおり、注射生ワクチン以外のワクチンにおいては接種間隔を定めず、医師がとくに必要と認めた場合は同時接種を行うことが可能とした。この方針は、諸外国における新型コロナワクチンと他疾病ワクチンとの同時接種を可能とする状況も参考にされた。秋冬接種はWHO推奨株を基本に 接種に使用するワクチンについて、これまでは流行株の状況やワクチンの有効性等に関する知見に加え、諸外国の動向も踏まえて決定し、その後、ワクチンの製造販売業者による薬事申請等がなされ供給されていた。また、世界保健機関(WHO)は2023年以降、株構成に関する専門家会議を少なくとも年2回開催する方針を示している。直近では2023年12月に開催された3)。これらを踏まえ、令和6年度の秋冬接種に用いられるワクチンの検討については、最新のWHOの推奨株を用いることを基本とした。選択肢の確保の観点から、mRNAワクチン以外にもさまざまなモダリティのワクチンを開発状況に応じて用いることとし、具体的な対応株の検討などは、インフルワクチン同様に、研究開発及び生産・流通部会にて行われる。

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背景知識が評価基準を決める【国試のトリセツ】第26回

§1 アセスメント背景知識が評価基準を決めるQuestion〈110B52〉16歳の女子。胸部刺創のため同級生らに抱きかかえられて来院した。現病歴突然見ず知らずの男性に左前胸部をサバイバルナイフにて刺された。受傷後すぐに近くにいた同級生らに助け出され、一般救急外来に運ばれてきた。同級生らの話では、病院の近くの公園で、青年男性の無差別な暴力行為が発生しており、他にも数人が負傷しているとのことである。既往歴特記すべきことはない。生活歴高校生。家族歴両親、兄弟とも健康。現 症意識は清明。身長150cm(推定)、体重40kg(推定)。体温35.5℃。脈拍120/分、整。血圧80mmHg(触診)。呼吸数28/分。SpO296%(room air)。ショック状態と判断し、直ちに医療従事者を集めた。蘇生処置室に搬入し、酸素投与を開始の上、静脈路を確保して輸液を開始した。左第5肋間鎖骨中線よりやや内側に長さ3cm程度の刺創を認めるが、体表への出血は止まっており、衣服には径数cm程度の血液が付着している〈110B50〉。吸気時に大腿動脈の拍動が減弱し、胸部の聴診で心音が減弱している、創部より呼吸に伴う吸気の流入出が疑われ、呼吸音は左側でわずかに減弱している。触診で皮下気腫は認めない〈110B51〉。この患者を救命救急センターに転送することにした。搬送時間として少なくとも30分は見込まれる。左側の呼吸音はさらに減弱し、ポータブル撮影による胸部X線写真でも明らかな気胸を認める。転送前に行う処置として必要性が低いのはどれか。(a)創閉鎖(b)心囊穿刺(c)中心静脈路確保(d)胸腔ドレナージ(e)尿道カテーテル留置

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フレイル、「やせが多い」「タンパク質摂取が重要」は誤解?

 人生100年時代といわれ、90歳を迎える人の割合は女性では約50%ともされている。そのなかで、老衰が死因の第3位となっており1)、老衰の予防が重要となっている。また、要介護状態への移行の原因の約80%はフレイルであり、フレイルの予防が注目されている。 そこで、2024年1月26日(腸内フローラの日)に、青森県りんご対策協議会が「いま注目の“健康・長寿”における食と腸内細菌の役割 腸内細菌叢におけるりんごの生体調節機能に関する研究報告」と題したイベントを開催した。そのなかで、内藤 裕二氏(京都府立医科大学大学院 医学研究科 教授)が「京丹後長寿研究から見えてきたフレイルの現状~食と腸内細菌の役割~」をテーマに、日本有数の長寿地域とされる京丹後市で実施している京丹後長寿コホート研究から得られた最新知見を紹介した。フレイルの4つのリスク因子、やせではなく肥満がリスク 内藤氏はフレイルのリスク因子は、大きく分けて4つあることを紹介した。1つ目は「代謝」で、糖尿病や高血圧症、がんの既往歴、肥満などが含まれる。実際に、京丹後市のフレイルの人にはやせている人はほとんどいないとのことである。2つ目は「睡眠」で、睡眠時間ではなく睡眠の質が重要とのことだ。3つ目は「運動」で、日常的な身体活動度の低さがリスク因子になっているという。4つ目は「環境」で、これには食事、薬剤、居住地などが含まれる。このなかで、内藤氏は運動と食事の重要性を強調した。高タンパク質食はフレイルの予防にならない!? 厚生労働省が公開している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、65歳以上の高齢者のフレイルやサルコペニアの発症予防には、少なくとも1g/kg/日以上のタンパク質摂取が望ましいとしている2)。しかし、内藤氏はこれだけでは不十分であると指摘した。高齢者の高タンパク質食は、サルコペニアの発症予防にならないどころか発症のリスクとなっているという報告もあり3)、単純にタンパク質を多く摂取すればよいわけではないことを強調した。フレイル予防に有用な栄養素とは? 内藤氏は、京丹後長寿コホート研究でフレイルと非フレイルを比較した結果を報告した(未発表データ)。3大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物)について検討した結果、フレイルの有無によって脂質や炭水化物の摂取量には差がなく、タンパク質についても植物性タンパク質がフレイル群でわずかに少ないのみであった。しかし、6大栄養素(3大栄養素+ミネラル、ビタミン、食物繊維)に範囲を広げて比較すると、フレイル群はカリウムやマグネシウム、ビタミンB群、食物繊維の摂取が少なかった。また、食物繊維を多く含む食品のなかで、その他野菜(非緑黄色野菜)や豆類の摂取がフレイル群で少なかったことも明らかになった。 京丹後長寿コホート研究では、食物繊維の摂取が腸内細菌叢にも影響することもわかってきた。食物繊維の摂取と酪酸産生菌として知られるEubacterium eligensの量に相関が認められたのである。Eubacterium eligensの誘導に重要な食物繊維はペクチンであり4)、内藤氏は「りんごにはペクチンが多く含まれており、フレイル群で不足していたカリウムやマグネシウムも多く含まれているので、フレイル予防に役立つのではないか」と述べた。 食物繊維について、現在の日本人の食事摂取基準2)では成人男性(18~64歳)は21g/日以上、15~64歳の女性は18g/日以上が摂取目標値とされている。しかし、最新の世界保健機関(WHO)の基準では、10歳以上の男女は天然由来の食物繊維を25g/日摂取することが推奨されているため5)、内藤氏は「日本が世界基準に遅れをとっていることを認識してほしい」と述べた。

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超改訂版 流れがわかる学会発表・論文作成 How To

症例報告で身につける「一生モノ」のアカデミックスキル本格的な研究活動を行う際に身につけておきたいアカデミックスキルは、症例報告を通じて習得することができます。本書では、症例報告の準備から実際の発表までの「流れ」をわかりやすくまとめています。2004年に出版され、好評を博した初版以来のエッセンスを残しつつ、全ページ新しく原稿を書きおろした事実上の新刊です。オンライン発表、英語での論文執筆などにも触れており、時代の変化と著者自身の経験の蓄積を反映した指南書となっています。若手医師や医学生はもちろん、薬剤師・看護師・理学療法士など、臨床に携わりながら症例報告を行う可能性のあるすべての医療関係者に向けた1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する 超改訂版 流れがわかる学会発表・論文作成 How To定価4,180円(税込)判型B5判頁数248頁発行2023年12月著者佐藤 雅昭ご購入はこちらご購入はこちら

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第200回 非オピオイド鎮痛薬が米国承認申請へ

まずは急性痛第III相試験が成功本連載で2年ほど前に取り上げた依存やその他のオピオイドにつきものの副作用の心配がない経口の非オピオイド鎮痛薬が2つの第III相試験で術後痛を有意に緩和し、いよいよ米国FDAの承認申請に進みます1)。試験の1つには腹部の脂肪を除去する腹壁形成手術患者1,118例、もう1つには外反母趾の瘤(バニオン)を取る手術患者1,073例が参加しました。それら2試験のどちらでも米国のバイオテック企業Vertex Pharmaceuticalsの神経ナトリウムチャネル阻害薬VX-548の時間加重合計(SPID48)がプラセボを有意に上回りました。SPID48は点数が大きいほど48時間に痛みがより鎮まったことを意味し、腹壁形成手術患者と外反母趾手術患者の試験でのVX-548投与群のSPID48はプラセボ群をそれぞれ有意に48点と29点上回りました。しかしながら、定番のオピオイド薬との比較ではVX-548は勝てませんでした。腹壁形成手術患者の試験でのVX-548投与群のSPID48はオピオイド薬(ヒドロコドンとアセトアミノフェンの組み合わせ)より高めでしたが勝ったとはいえず、外反母趾手術患者の試験でのVX-548投与群のSPID48はオピオイド薬未満でした。オピオイド薬との比較は残念な結果となりましたが、第一の目標であるプラセボとの比較で勝利したことを受けてVX-548はいよいよ今年中頃までに米国FDAに承認申請されます。手術や手術以外も含む多様な患者へのVX-548の効果や安全性を調べた別の第III相試験の結果も踏まえ、急な痛みの治療薬として承認申請される予定です。対照群なしのその第III相試験ではVX-548使用患者の83%が好転(good, very good, or excellent)したと自己評価しました。慢性痛の用途も目指すVX-548は慢性痛への効果の検討も進んでおり、去年の12月には糖尿病患者の神経痛(糖尿病神経障害)への効果を調べた第II相試験での有望な結果が報告されています2)。点数が大きいほどより痛いことを意味する下限0で上限10の数値的疼痛評価尺度(Numeric Pain Rating Scale:NPRS)が一日一回のVX-548投与で有意に2点強下がり、糖尿病神経障害の治療薬プレガバリンの1日3回投与と同程度の効果がありました。プレガバリンと効果が同程度でもVX-548の1日1回投与は強みになるかもしれません。Vertex社はFDAとの協議の後に糖尿病神経障害へのVX-548の大詰め試験を始める予定です。糖尿病神経障害は末梢神経痛の2割を占めます。Vertex社はさらに患者数が多い腰仙部神経根障害への同剤の第II相試験も昨年の12月に開始しています3)。腰仙部神経根障害は末梢神経痛の実に4割を占めます。装い新たなオピオイド薬も健闘オピオイド薬はとくに慎重な扱いが必要とはいえ、VX-548が勝てなかったことも示すように頼りになる薬として引き続き出番は多そうです。それゆえより安全に使えるようにする取り組みが脈々と続いています。米国のサンディエゴを拠点とするEnsysce Biosciences社が開発している半減期が長いオピオイド薬PF614はその1つで、第II相試験後のFDAとの協議結果を踏まえたうえで今年後半に第III相試験が始まります4)。VX-548の試験でも使われたhydrocodoneとアセトアミノフェンの合剤の製品Vicodinは4~6時間ごとの服用が必要ですが5)、PF614は半減期が12時間と長いので1日2回の服用で事足ります。また、乱用されやすさを確認する試験でPF614はオキシコドンに比べて好まれず、再び使いたいという欲求の程がより低くて済むことが確認されています。米国のオピオイド乱用の惨禍は深刻で、2021年のオーバードーズによる死者10万例(10万6,699例)の75%が処方用オピオイドを含む何らかのオピオイドに関連するものでした6)。ゆえにオピオイドの代わりとして使いうるVX-548やPF614のようなより安全な新しい処方薬の役割は大きいに違いなく、同国のオピオイド惨禍を落ち着けることに役立つでしょう。参考1)Vertex Announces Positive Results From the VX-548 Phase 3 Program for the Treatment of Moderate-to-Severe Acute Pain / BUSINESS WIRE 2)Vertex Announces Positive Results From Phase 2 Study of VX-548 for the Treatment of Painful Diabetic Peripheral Neuropathy / BUSINESS WIRE3)Evaluation of Efficacy and Safety of VX-548 for Painful Lumbosacral Radiculopathy (PLSR)4)Ensysce Biosciences Announces Positive End of Phase 2 Meeting with FDA for PF614 to Treat Severe Pain / ACCESSWIRE5)Vicodin / FDA6)Drug Overdose Death Rates / NIH

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GLP-1受容体作動薬、従来薬と比較して大腸がんリスク低下

 グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬は、2型糖尿病の治療薬として日本をはじめ海外でも広く承認されている。GLP-1受容体作動薬には、血糖低下、体重減少、免疫機能調節などの作用があり、肥満・過体重は大腸がんの主要な危険因子である。GLP-1受容体作動薬が大腸がんリスク低下と関連するかどうかを調査した研究がJAMA Oncology誌2023年12月7日号オンライン版Research Letterに掲載された。 米国・ケース・ウェスタン・リザーブ大学のLindsey Wang氏らの研究者は、TriNetXプラットフォームを用い、米国1億120万人の非識別化された電子カルテデータにアクセスした。GLP-1受容体作動薬と、インスリン、メトホルミン、α-グルコシダーゼ阻害薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、スルホニル尿素薬、チアゾリジン系薬剤(ただし、SGLT2阻害薬は2013年、DPP-4阻害薬は2006年が開始年)の7薬剤を比較する、全国規模の後ろ向きコホート研究を実施した。 コホートは、人口統計、社会経済的な健康決定要因、既往症、がんや大腸ポリープの家族歴および個人歴、生活習慣要因などで調整され、ハザード比(HR)および95%信頼区間[CI]を用いた解析を行った。次いで、肥満・過体重、性別で層別化した患者を対象にした解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・2005~2019年に2型糖尿病を理由に医療機関を受診し、それまでに抗糖尿病薬の使用歴がなく、受診後に抗糖尿病薬を処方された、大腸がんの診断歴がない122万1,218例が対象となった。・追跡期間15年時点で、GLP-1受容体作動薬はインスリン(HR:0.56、95%CI:0.44~0.72)、メトホルミン(HR:0.75、95%CI:0.58~0.97)と比較して、大腸がんのリスク低下と有意に関連していた。この有意差は男女でも一貫しており、肥満・過体重の患者ではインスリン(HR:0.50、95%CI:0.33~0.75)、メトホルミン(HR:0.58、95%CI:0.38~0.89)と、さらなるリスク低下が見られた。・SGLT2阻害薬、スルホニル尿素薬、チアゾリジン系薬剤との比較でもリスク低下は見られたが、インスリン、メトホルミンほどではなかった。α-グルコシダーゼ阻害薬とDPP-4阻害薬との比較では、統計学的有意差は見出されなかった。 研究者らは、本研究の限界として「未測定または未制御の交絡因子、自己選択、逆因果、観察研究に特有のその他のバイアスの可能性があるため、本試験の結果は他のデータや研究集団による検証が必要である。また、抗糖尿病治療歴のある患者における効果、基礎となる機序、GLP-1受容体作動薬がほかの肥満関連がんに及ぼす効果についても、さらなる研究が必要である」としている。

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第196回 がん治療にも影響大?患者が医師に相談できず困っていること

人が日常生活の中で加齢を感じる瞬間の1つが“食”に関するものだろう。「若い頃はあれだけ食べられたのに」という話はよく聞く。ちなみにこの点については、私もいくつか思い当たることがある。最初の経験は、いわゆるアラフォーの頃だ。20代から市中の牛丼チェーン店に行くと「大盛・つゆだく」を頼むことが常態化していたが、この頃からいつものように頼んだ牛丼を食べ始めて2~3分で、「ちょっと多過ぎたかな」と感じ始めるようになった。とはいえ、当時はまだなんとか食べきれる。が、食後に胸焼けが起こり、最終的には「大盛・つゆだく」のオーダーを後悔してしまうのだ。この頃はまだ老いを認めたくない時期でもあったため、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」で同じことを約2年間は繰り返した。さすがにアラフィフとアラカンの中間地点にいる現在は、アラフォー当時ほど馬鹿な真似はしない。よほどのことがない限り大盛は頼まなくなり、たまたま入店した飲食店がいわゆる普通盛りでも盛りの良い店の場合、料理到着時にギョッとする(とはいえ、ほとんどの場合は食べ切ってしまうのだが)。そしてこれからは少食化も年々進行するだろう。そう思うのは親、とりわけ父親を見ているからだ。元々、食べることは大好きな父親だったが、最近は通常の1人前の弁当やラーメンなら、7割程度は食べるが、食べきることは少なくなった。一方、母親はある時期を境に完全な少食となった。今から約20年前、胃がんの手術で胃体部を中心に胃の約3分の1を切除したからである。日本有数のがん専門病院で手術をした母親は、術後も地元から新幹線を利用して定期受診のため上京し、その度ごとに私は母の受診に同伴した。同伴したのにはいくつか理由がある。まず、母親は医学的知識に乏しく、私が同伴しているほうが心強いと考えていたことが最も大きい。これに付随した理由を挙げるならば、一応、私は母親の2人の子供のうちの1人だから、主治医も顔を合わせておきたいということもあるだろう。そしてもう1つの付随する理由、今考えれば比較的大きな理由だったと考えられるのは“食事”のことだ。術後の母親は物理的に胃が小さくなったのだから、当然今までと同じようには食べられなくなった。周知のように胃切除後には「ダンピング症候群」が起こる。結果、驚くほど母親の食は細くなった。そのため、受診同伴時に母親は私と食事をしたがった。普通の1人前が食べきれないから、自分が食べられる範囲に留め、残りは私に食べてもらうためである。術後1年ほどはやたらと寿司店を選択することが多く、そこではいわゆる握りのセットではなく、お好みで食べることがほとんどだった。理由は単純で量を調節しやすいからだった。今でもよく覚えているのは、ある時に握りずしを2貫食べると、「もうお腹いっぱい」と半ば苦しそうに呟いた母親の姿。まだ、30代前半だった私は内心で「え?たった2貫?」と驚いたものだ。そして母親が寿司屋を選んだ理由には、たぶん店側への配慮もあったと思う。母親の受診先の近辺は寿司屋と言っても高級店が多く、母親が2貫でも私が握りの上などを注文すれば、それなりの勘定になったからだ。母親の社会人生活はほぼ自営業だったゆえに、店側のことも考えていたのはほぼ間違いないだろう。私を食事に同伴させるときの口癖が「残したらお店の人に悪い」だった。そんな母親も術後約20年を経た今はあの当時よりは食べられるようになった。それでも外で提供される食事の場合、食べられるのは最大で6割ほどである。以前の本連載で歩行が退化しつつある軽度認知障害(MCI)の父親を老老介護する母親が、父親に適した車椅子をなかなか見つけられない悩みを書いたが、今年の正月の帰省時に実はこの食事のことも母親の悩みの一つであるらしいことを知った。それは私が久しぶりに両親と地元の繁華街で食事をした時のことである。この時は両親が行ったことがない創業約100年の老舗・中華料理店を選んだ。味も接客も素晴らしい店で、私の中学校の同級生の実家である。両親とも非常に喜んでくれたし、いつもよりも2人とも食べていたと思うが、やはり両親とも自分が選んだ料理は食べきれず、残りは私が食べることになった。私が2人の食べ残しを口にしている最中、食べ終えたはずの母親はなぜか再び店のメニューに目を通していた。そして父親に向かってふと口にした。「あ、小皿料理があるね。これだったら来やすいね、お父さん」そうか。胃がんの手術後に食が細くなった母親にとって、父親までもが食が細くなったことは、父親の歩行退化と同時に外出の足かせの1つになっていたのだ。今後、2人と食事に行く時はそのことも考慮しなければならないのだと痛感したのである。そして最近、あるプロジェクトを目にした。スキルス胃がん患者の轟 哲也氏(2016年逝去)が作ったスキルス性胃がんの患者会で、現在は特定非営利活動法人となっている「希望の会」が始めた「はんぶんごはんプロジェクト」。現在同法人の理事長は亡くなった哲也さんの妻・轟 浩美氏が務めている。同プロジェクトは胃がんの症状・術後障害・副作用、あるいはその他の体調不良などで今まで通りに食べることが叶わなくなった人向けに少量の提供が可能な飲食店、調理キットを扱う業者などの情報を収集して公開・検索サイト化を目指すもの。なんと素晴らしい試みだろう。実現すれば自分にとっても両親にとっても有益なものになる。そんな希望を抱いている。だが、同時に同プロジェクトを知り、忸怩たる思いも抱いている。約20年、このプロジェクトが解決しようとしている悩みを私も頭の片隅に置いていたはずなのに、提供できる情報が思い浮かばない。たぶん母親もそうだろう。結局、現状は仕方がないのだと諦めていたのだ。実はこのプロジェクトを目にした瞬間、ほぼ忘れかけていた約20年前の記憶がよみがえってきた。母の受診日ではないある日、私は受診先の病院周辺を歩き回っていた。周辺で一軒一軒の飲食店の店先を舐めまわすように眺めて歩いた。この時の私が何をしていたかと言うと、店先に「少量提供可」のような表示がある飲食店がないかと探していたのである。前述のように母親の受診先は日本有数のがん専門病院。母親のような悩みを抱えている人が多く受診していることだけは疑いがない。だからその病院の周辺にはもしかしたら母親が気兼ねなく入れそうな、しかもそうしたことを謳っている飲食店があるかもしれないと思ったのだ。しかし、少なくとも私が歩き回った範囲ではそうした飲食店は見当たらなかった。完全な徒労だった。当時、私は会社員記者を辞め、フリーとなり3年目。仕事はやや壁にぶち当たっていた。帰り際にふと「もし物書きとして生きていけなければ、この街で母親のような人向けに飲食店でもやろうか」と思った。今考えればフリーの物書きとして実績も出せない人間が栄枯盛衰の激しい飲食業界で生き残っていけるわけはないのだが…。むしろそう思うくらいなら、表示がなくとも各飲食店の「病気のために少ししか食べられない人向けに少ない量の提供は可能でしょうか?」と一軒一軒訪ね歩けばよかったのだ。結局、約20年、私は母親の悩みを半ば他人事のように考えてきたのだろうと猛省している。多様性の社会と言われるようになって久しいが、その多様なニーズに応える世の中にはまだまだ至っていないのが実状である。多くの人はそれぞれが大切だと思う身近な問題を抱えながら生きている。とはいえ、それはあくまで身近、せいぜい半径1km程度圏内で経験することがほとんどだ。多様性が加速すればするほど、人はそのニーズに追いつけていけなくなる。多様性に応えきれていない世の中なのは、極論を言えば誰のせいでもない。だからこそ自分が感じたふとした疑問・悩みを世に明らかにし、形にしていくことが重要だと、このプロジェクトを知って改めて痛感している。この件で何も提供できる情報はない私だが、たぶんこの場に集う医療者の中にはこのプロジェクトに提供できる情報をお持ちの人も少なくないだろう。ぜひご協力をお願いしたい。

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肥満の変形性関節症患者での減量は「ゆるやかに」が重要

 肥満症治療薬を使って体重を徐々に落とすことは変形性関節症(osteoarthritis;OA)患者の延命に役立つことが、新たな研究で明らかになった。ただし、急速な減量は、生存率の改善には寄与しないばかりか、場合によっては心血管疾患のリスクをわずかに上昇させる可能性も示された。中南大学(中国)のJie Wei氏らによるこの研究の詳細は、「Arthritis & Rheumatology」に12月6日掲載された。 肥満は関節炎の悪化要因である上に、早期死亡のリスク因子でもある。現行のガイドラインでは、過体重や肥満の変形性膝関節症/変形性股関節症の患者に対しては減量が推奨されているが、OA患者での減量と死亡との関連に関するデータは少ない。 そこでWei氏らは今回、過体重や肥満の変形性膝関節症/変形性股関節症患者6,524人(平均年齢60.9歳、女性70.2%、平均BMI 38.1)を対象に、肥満症治療薬による1年間の体重減少と全死亡率やその他の疾患との関連を検討した。対象患者のデータは、ウゴービやZepbound(ゼップバウンド)のような肥満症治療薬が登場する前の2000年1月1日から2022年3月31日の間に収集されたものであり、患者は肥満症治療薬としてオルリスタット(5,916人)、シブトラミン(488人)、rimonabant(リモナバント、120人)を服用していた。 5年間の追跡期間中の全死亡率は、1年の間に体重が増加したか変化のなかった人で5.3%、体重減少が緩徐〜中等度(2〜10%の減少)だった人で4.0%、急速(10%以上の減少)だった人で5.4%であった。体重が増加したか変化のなかった人を基準とした場合の全死亡のハザード比は、「緩徐〜中等度」の人では0.72(95%信頼区間0.56〜0.92)と有意に減少していたが、「急速」の人では0.99(0.67〜1.44)と有意ではなかった。さらに、「緩徐〜中等度」と「急速」のいずれの群でも、体重の減少に伴い、高血圧、2型糖尿病、静脈血栓塞栓症のリスクが低下するという減量の保護効果が認められた。しかし、体重減少が急速だった人では、心血管疾患のリスクについては、統計的に有意ではないものの上昇が認められた。一方、がんリスクについては、どちらの群でも有意な関連は認められなかった。 では、なぜ急速に減量した人でのみ、心血管疾患のリスク増加が認められたのだろうか。研究グループによると、先行研究では、急速な減量は心臓にダメージを与える可能性のあるタンパク質や電解質、微量栄養素の欠乏といった不健康な状態に関係することが示されているという。 研究グループは、本研究から学ぶべき重要ポイントとして、「肥満症治療薬によるゆるやかな減量は、過体重や肥満のOA患者の全体的なウェルネスを改善させる可能性がある」とまとめている。また、「今回の結果は、ゆるやかな減量を推奨している、肥満症治療の世界的なガイドラインと一致するものだ」と述べている。

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