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中国のゼロコロナ政策終了直後、超過死亡が急増か

 中国では、コロナパンデミックの開始から厳格なゼロコロナ政策によって罹患率と死亡率は低く抑えられていた。しかし、2022年12月のゼロコロナ政策の解除により、以降2ヵ月間、中国全土の30歳以上において推定187万人の超過死亡が発生したことが、米国・シアトルのFred Hutchinson Cancer Research CenterのHong Xiao氏らの研究チームによる調査で確認された。JAMA Network Open誌2023年8月25日号掲載の報告。 本調査では、北京市の北京大学と精華大学、黒竜江省のハルビン工業大学の2016年1月1日~2023年1月31日までの職員の公開された訃報記事データが用いられた。訃報記事は、年齢、性別、役職、雇用形態(現職、退職)に関係なく、死亡したすべての職員が含まれ、掲載のプロセスはCOVID-19の流行前も流行中も一貫して行われていた。本データから30歳以上の死亡率の相対的変化を推定した。前COVID-19期(2016年1月~2019年12月)、ゼロコロナ政策期(2020年1月~2022年11月)、ポスト・ゼロコロナ政策期(2022年12月~2023年1月)の3つの期間に分け、負の二項回帰モデルを使用した。また、中国のインターネット検索エンジンBaiduにて、総検索量に対する死に関連するワード(葬儀社、火葬、埋葬など)の検索の頻度(Baidu指数:BI)の相対的変化も推計し、大学における30歳以上の死亡率との相関関係も分析した。さらに、これらの数値を基に、中国のその他の地域における超過死亡率を算出した。 主な結果は以下のとおり。・北京市と黒竜江省ともに、死亡数は2022年12月第4週にピークに達した。それと同時期の12月25日に、中国のほとんどの省で、死に関連するワードのネット検索のBIが最も高くなった。・ゼロコロナ政策の終了後、北京の2つの大学における死亡数は、予想死亡数に比べて大幅な増加を示し、2022年12月と2023年1月にそれぞれ403%(95%CI:351~461)と56%(95%CI:41~73)の増加を示した。ハルビン工業大学における死亡数は、2022年12月(12 vs.3、p<0.001)と2023年1月(19 vs.3、p<0.001)の両方で、予想された死亡数よりも統計的に有意に高かった。・ポスト・ゼロコロナ政策期の北京の大学での死亡のうち、男性は75.6%(95%信頼区間[CI]:65~84)、85歳以上は80.0%(95%CI:70~87)だった。85歳以上の死亡の割合は、前COVID-19期(51.9%)およびゼロコロナ政策期(62.3%)よりも高かった(p<0.001)。ハルビン工業大学でも同様のパターンがみられ、ポスト・ゼロコロナ政策期の死亡は、男性82.1%、85歳以上69.0%だった。・ポスト・ゼロコロナ政策期(2022年12月~2023年1月)では、中国全土で30歳以上の推定187万人(95%CI:71万~443万、1,000人当たり1.33人)の超過死亡が発生した。・チベットを除くすべての省で統計学的に有意な死亡率の増加が推計され、増加範囲は広西チワン族自治区の77%増(95%CI:24~197)から寧夏回族自治区の279%増(95%CI:109~658)であった。・超過死亡数は中国政府の公式推計値である6万人をはるかに上回ったが、超過死亡のパターンは、COVID-19に関連した病院での入院と死亡が2022年12月末にピークに達したという中国政府の報告と一致していた。 中国には包括的で一般に入手可能なデータが存在しないために、超過死亡数を推定するために行われた本研究において、中国のゼロコロナ政策の突然の解除が、全死因死亡率の有意な上昇と関連していることが明らかになった。著者は本結果について、COVID-19の集団への突然の伝播が集団死亡率に与える影響を理解するうえで重要だとまとめている。

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医師によるコロナのデマ情報、どう拡散された?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック中、ソーシャルメディア(SNS)上で、ワクチン、治療法、マスクなどに関する誤った医療情報が広く拡散されたことが社会問題となった。このような誤情報の拡散には、一部の医師も関わっていたことが知られている。COVID-19の誤情報について、情報の種類や、利用されたオンラインプラットフォーム、誤情報を発信した医師の特徴を明らかにするために、米国・マサチューセッツ大学のSahana Sule氏らの研究チームが調査を行った。JAMA Network Open誌2023年8月15日号に掲載の報告。 本調査では、2021年1月1日~2022年5月1日の期間に米国在住の医師によって拡散されたCOVID-19の誤情報を特定するため、SNS(Twitter、Facebook、Instagram、Parler、YouTube)およびニュースソース(The New York Times、National Public Radio)の構造化検索を行った。誤情報を発信した医師の免許取得州と専門分野を特定し、フォロワー数やメッセージの質的内容分析を行い、記述統計を用いて定量化した。COVID-19の誤情報は、評価期間中の米国疾病予防管理センター(CDC)のガイダンスに裏付けされていない、またはそれに反する主張、CDCがカバーしていないトピックに関しては既存の科学的エビデンスに反する主張と定義した。 主な結果は以下のとおり。・評価期間中にCOVID-19の誤情報を伝えたことが確認された米国の医師は52人だった。うち50人は米国29州において医師免許を取得したことがあり、ほか2人は研究者だった。医師免許は1州以上で有効44人、無効3人、一時停止/取り消し4人、一部の州で停止/取り消し1人。専門は28分野にわたり、プライマリケアが最も多かった(18人、36%)。・16人(30.7%)が、America's Frontline Doctors※のような、誤った医療情報のプロパガンダを過去に行ったことがある団体に所属していた。・20人(38.5%)が5つ以上の異なるSNSに誤情報を投稿し、40人(76.9%)が5つ以上のオンラインプラットフォーム(ニュースなど)に登場した。最も利用されたSNSはTwitterで、37人(71.2%)が投稿していた。フォロワー数の中央値は6万7,400人(四分位範囲[IQR]:1万2,900~20万4,000人)。・誤情報は次の4カテゴリーに分類された:(1)ワクチンは安全ではない/効果がない、(2)マスクやソーシャルディスタンスはCOVID-19の感染リスクを減少させない、(3)臨床試験を終えていない/FDAの承認を受けていない薬剤を有効と主張する(イベルメクチン、ヒドロキシクロロキンなど)、(4)その他(国内外の政府や製薬企業に関連する陰謀論など)。・40人(76.9%)の医師は、4カテゴリーのうち1カテゴリー以上投稿していた。・カテゴリー別で投稿が多い順に、ワクチンに関する誤情報(42人、80.8%)、その他の誤情報(28人、53.8%)、薬剤に関する誤情報(27人、51.9%)。 本結果は、パンデミック中にさまざまな専門分野や地域の医師が誤情報の拡散という“インフォデミック”に加担したことを示唆している。研究チームが確認した限り、本研究はSNS上での医師によるCOVID-19誤情報の拡散に関する初めての研究だという。フェイクニュースを拡散することは、近年、医学の内外で利益を生む産業となっているという。医師による誤った情報の拡散に関連する潜在的な有害性の程度、これらの行動の動機、説明責任を向上するための法的・専門的手段を評価するために、さらなる研究が必要だと指摘している。※America's Frontline Doctorsは、遠隔医療サービスを実施し、主にCOVID-19に対するヒドロキシクロロキンとイベルメクチンを全国の患者に処方するために、1回の診察につき90ドルを請求し、少なくとも1,500万ドルの利益を得ている。このような団体は、パンデミックの公衆衛生上の危機、政治的分裂、社会的孤立という状況の中で、より声高に発言し、目立つようになっていた。

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心原性ショックを伴う急性心筋梗塞、VA-ECMOの有用性は?/NEJM

 心原性ショックを伴う急性心筋梗塞で早期血行再建を行う患者において、体外式生命維持装置(ECLS)とも呼ばれる静脈動脈-体外式膜型人工肺(VA-ECMO)を用いた治療は、薬物治療のみと比較し30日全死因死亡リスクを低下せず、むしろ中等度または重度の出血や治療を要する虚血性末梢血管疾患のリスクを高めることが示された。ドイツ・ライプチヒ大学のHolger Thiele氏らが、ドイツとスロベニアで行われた医師主導の多施設共同無作為化非盲検試験「ECLS-SHOCK試験」の結果を報告した。死亡に対するECLSの有効性に関するエビデンスはないにもかかわらず、梗塞関連心原性ショックの治療におけるECLSの使用が増加していた。NEJM誌オンライン版2023年8月26日号掲載の報告。主要アウトカムは30日全死因死亡 研究グループは、心原性ショックを伴う急性心筋梗塞で、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)または冠動脈バイパス術(CABG)による早期の血行再建が予定されている18~80歳の患者を、ECLS+通常の薬物治療群(ECLS群)または通常の薬物治療のみの群(対照群)に、1対1の割合に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、30日全死因死亡、安全性評価項目は中等度または重度の出血(BARC出血基準のタイプ3~5)、脳卒中、外科的治療またはカテーテル治療を要する虚血性末梢血管疾患などで、intention-to-treat解析にて評価した。30日全死因死亡率はECLS群47.8% vs.対照群49.0%で有意差なし 2019年6月~2022年11月に、877例がスクリーニングを受け、420例が無作為に割り付けられた。このうち同意が得られなかった3例を除く417例(ECLS群209例、対照群208例)が解析対象となった。 30日全死因死亡は、ECLS群で209例中100例(47.8%)、対照群で208例中102例(49.0%)に認められ、相対リスクは0.98(95%信頼区間[CI]:0.80~1.19、p=0.81)で有意差は認められなかった。事前に規定したサブグループ解析および事後解析でも、同様の結果であった。 その他の副次アウトカムである機械的換気期間中央値は、ECLS群7日(四分位範囲[IQR]:4~12)、対照群5日(3~9)であった(群間差中央値:1日、95%CI:0~2)。 安全性については、中等度または重度の出血の発現率はECLS群23.4%、対照群9.6%(相対リスク:2.44、95%CI:1.50~3.95)、外科的治療またはカテーテル治療を要する虚血性末梢血管疾患はそれぞれ11.0%および3.8%(2.86、1.31~6.25)であった。

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腸閉塞を起こした進行がん患者の症状改善には手術が有効

 進行した腹腔内腫瘍、特に卵巣がんや大腸がんの患者に頻発する悪性腸閉塞(malignant bowel obstruction;MBO)に対しては、最善の治療法がいまだ明確になっていない。こうした中、MBO患者に対して手術による治療を行うことで、手術を行わない場合に比べて退院後生存期間が延長するわけではないが、MBO関連の症状は改善することが、ランダム化比較試験の要素も含むハイブリッドデザインの臨床試験で示された。米ペンシルベニア大学ペレルマン医科大学院外科学分野のRobert S. Krouse氏らが実施したこの研究は、「The Lancet Gastroenterology & Hepatology」に8月1日掲載された。 MBOは、嘔吐、疼痛、便秘などの大きな苦痛をもたらし、命を脅かす可能性もある。MBOの原因は、腫瘍による腸の閉塞や、手術や放射線治療の結果として生じた癒着やその他の合併症である。MBOが発生する患者は、概して末期がんに直面しており、生活の質(QOL)を改善し、症状や疼痛を軽減することを目的とした緩和ケアを受けている。 MBOに対する治療は、手術か薬物療法のどちらかであるが、どちらがより良いのかは明確になっていない。今回の試験は、この点を明らかにすることを目的に、米国、メキシコ、ペルー、コロンビアの研究機関で登録されたMBO患者221人(女性65%)を対象に実施された(解析対象者は199人)。ランダム化に同意した患者49人は、試験登録時に手術による管理を受ける群(24人)と非手術的な管理を受ける群(25人)に割り付けられた。ランダム化を希望しなかった残りの150人の患者は、患者の希望による治療を受けた(手術群58人、非手術群92人)。 その結果、主要評価項目とした、試験開始から91日時点での退院後生存期間の平均は、ランダム化を受けた患者では、手術群で42.6日、非手術群で43.9日、自分で治療法を決めた患者では、手術群で54.8日、非手術群で52.7日であった。複数の要因を考慮して検討すると、手術群では非手術群よりも試験開始から91日時点での退院後生存期間が平均2.9日長かったが、両群間に統計学的な有意差は認められなかった(P=0.50)。また、試験開始から5週目の時点での対象者の摂食能力についても、両群で同程度であった。 その一方で、手術群では、試験開始から4週目の時点での嘔吐、便秘、吐き気、疼痛の症状スコアが非手術群よりも良好であり、MBO関連症状が改善したことが示唆された。さらに、手術群では、退院後のMBO関連症状の報告数についても、非手術群より少なかった。 Krouse氏は、「この緊急性の高い問題を抱える患者をランダム化比較試験に登録するのが困難であることは、最初から分かっていた。それでも、MBOに対する最善の治療法を知ることは、臨床医、患者とその家族にとって非常に大きな意味を持つ」と述べる。そして、「得られた結果に基づき、われわれは、手術適応のMBO患者には、症状を改善するために、入院後なるべく早くに手術を行うべきだと考えている」と話している。 Krouse氏は本研究を主導したSWOG(Southwest Oncology Group)がんリサーチネットワークのニュースリリースの中で、「MBOに対する最善の治療法や、受ける治療の種類により影響を受ける可能性のあるQOL因子などについて、臨床医に推奨事項を提示できるよう、われわれは引き続きデータの解析を進めている。研究施設と研究者を結ぶわれわれのネットワークを利用することで、このがんサバイバー集団における他の重要な問題の検討も可能になるだろう」と述べている。

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慢性呼吸器疾患の世界的負荷を定量化

 慢性呼吸器疾患(CRD)は、2019年の全世界における死因の第3位で、死亡者数は400万人に上った、とする研究結果が「eClinicalMedicine」5月号に掲載された。 内分泌・代謝人口科学研究所(イラン)のSara Momtazmanesh氏らによる慢性呼吸器疾患の国際共同研究グループは、204カ国・地域における、1990年から2019年までのCRDの死亡者数、有障害年数、損失余命年数、障害調整生存年数(DALY)、有病者数、新規発症者数を、性別、年齢、地域、社会人口統計学的指標で分けて推定した。CRDは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、じん肺、間質性肺炎、サルコイドーシス、その他と定義した。 解析の結果、CRDは2019年の全世界における死因の第3位で、死亡者数は400万人、有病者数は4億5460万人であった。1990年から2019年にかけて、CRDの総死亡者数と有病者数はそれぞれ28.5%、39.8%増加したが、年齢調整後の総死亡者数と有病者数はそれぞれ41.7%、16.9%減少した。CRDによる死亡の主要原因はCOPDで、有病者数は2億1230万人、死亡者数は330万人であった。CRDの中で最も有病者数が多かったのは喘息で、2億6240万人であった。1990年から2019年にかけて、COPD、喘息、じん肺の年齢調整後の負荷指標は世界的に減少したが、同期間に間質性肺炎とサルコイドーシスの年齢調整後の新規発症者数と有病者数は上昇した。CRDによる死亡とDALYに最も寄与した要因は喫煙であり、次いで大気汚染と職業的リスクであった。 著者らは「CRDによる疾病負荷を軽減するためには、タバコ規制対策と大気の質改善戦略を世界的に完全に遵守することが重要である。社会人口統計学的指標が低度または低中度の国での死亡者数やDALYの高さは、予防、診断、治療の改善策の緊急的必要性を強調している」と述べている。 なお複数人の著者が、バイオ医薬品業界との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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CVD2次予防でのアスピリン、低所得国では不十分/JAMA

 アスピリンは、アテローム動脈硬化性心血管疾患(CVD)のイベントを減少させ、CVD既往例の死亡率を改善する効果的で安価な選択肢とされる。米国・セントルイス・ワシントン大学のSang Gune K. Yoo氏らは、CVDの2次予防においてアスピリンは世界的に十分に使用されておらず、とくに低所得国での使用が少ないことを明らかにした。研究の成果は、JAMA誌2023年8月22・29日合併号で報告された。51ヵ国の健康調査のデータを用いた横断研究 研究グループは、51の低・中・高所得国で2013~20年に実施された全国的な健康調査から収集した個々の参加者のデータを用いて横断研究を行った(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成を受けた)。 参加者は年齢40~69歳の非妊娠成人で、対象となった健康調査には自己申告によるCVD既往歴とアスピリン使用に関するデータが含まれた。国別の1人当たりの所得水準、地域、個々の参加者の社会経済的な人口統計学データに基づき、自己申告によるCVDの2次予防におけるアスピリンの使用状況を評価した。 12万4,505人が解析に含まれた。年齢中央値は52歳(四分位範囲[IQR]:45~59)で、50.5%(IQR:49.9~51.1)が女性、53.4%(95%信頼区間[CI]:52.0~54.8)が農村部に居住していた。1万589人(8.2%)が自己申告によるCVDの既往歴を有していた。使用率は40.3%、WHO目標値を下回る CVD既往例における2次予防のためのアスピリン使用率は40.3%(95%CI:37.6~43.0)であった。 所得別の2次予防のためのアスピリン使用率は、低所得国(7ヵ国)が16.6%(95%CI:12.4~21.9)、低中所得国(23ヵ国)が24.5%(20.8~28.6)、高中所得国(14ヵ国)が51.1%(48.2~54.0)、高所得国(7ヵ国)は65.0%(59.1~70.4)だった。 CVDの2次予防におけるアスピリン使用率の世界保健機関(WHO)の目標値(適格者の50%以上)を満たした国は、ベラルーシ、チェコ、英国(評価はイングランドで行われた調査データに基づく)、イラン、イラク、ヨルダン、クウェート、レバノン、トルクメニスタン、米国であった。 CVD既往例では、若年より高齢、女性より男性、低学歴より高学歴、農村部より都市部居住者でアスピリンの使用率が高く、これらの個々の特性(年齢別、性別、学歴別、居住地別)では、所得が高い国ほど使用率が高くなる傾向を認めた。低所得国と比較して高所得国では、年齢別、性別、学歴別、居住地別の2次予防のためのアスピリン使用率が、相対的には2~5倍に達し、絶対的には20~60%大きかった。 著者は、「CVDを含む非感染性疾患による早期死亡を減少させるという目標を達成するには、国の保健政策と保健システムが、エビデンスに基づくアスピリンの使用を促進する方法を開発し、これを実践し、結果を評価する必要がある」としている。

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紅茶キノコで血糖コントロール改善?

 日本では紅茶キノコと呼ばれ、海外ではコンブチャと呼ばれている発酵飲料が、糖尿病患者の血糖コントロール改善に役立つ可能性を示唆するデータが報告された。米ジョージタウン大学のDaniel Merenstein氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Nutrition」に8月1日掲載された。 コンブチャは、紀元前200年ごろに中国で飲まれ始めた発酵飲料で、1990年代に入ると米国でも飲用されるようになり、健康に良いと考えて飲む人も少なくない。Merenstein氏らの研究は対象が12人と小規模なものではあるが、その考え方が正しい可能性のあることを示している。 この研究は、無作為化二重盲検クロスオーバー試験として実施された。成人2型糖尿病患者12人を2群に分け、コンブチャまたはプラセボ(各240mL)を4週間摂取してもらい、8週間のウォッシュアウト期間をおいて割り付けを切り替え、再び4週間摂取してもらった。その結果、コンブチャ摂取条件では4週間後の空腹時血糖値が、164mg/dLから116mg/dLへと有意に低下した(P=0.035)。一方、プラセボ条件では162mg/dLから141mg/dLの変化であり、この変化は非有意だった(P=0.078)。 Merenstein氏によると、これまでにも複数の研究からコンブチャの潜在的なメリットが示されてきているが、糖尿病患者に対する有用性を検討した研究はこれが初めてだという。同氏は、「これは出発点であり、さらに多くの研究が必要だ」と語っている。 この研究報告に対して、米ロングアイランド・ジューイッシュ医療センターおよび米ホフストラ/ノースウェルのドナルド・アンド・バーバラザッカー医科大学のRifka Schulman-Rosenbaum氏は、「確かにコンブチャ摂取条件で空腹時血糖が低下しているが、この結果のみでは何とも言えない」と論評。加えて、「患者がこのような情報を重視するあまり、通院や血糖値のモニタリング、服薬遵守などの、糖尿病治療に欠かせないことを軽視してしまうのではないか」と懸念を表明している。 コンブチャは、紅茶または緑茶に細菌、酵母、砂糖を加え、発酵させて酢酸を生成させるといった方法で作られる。発酵プロセスの進行中に、細菌と酵母はスコビー(SCOBY)と呼ばれる膜を形成する。このSCOBYを含むコンブチャはプロバイオティクスとして作用すると考えられていて、血圧管理から発がん抑制まで、さまざまな健康上のメリットにつながると一部で信じられている。ただしエビデンスはまだない。しかしMerenstein氏は、「データが不足しているだけであって、われわれの研究をきっかけに米国立衛生研究所(NIH)やその他の機関が研究を始めることを期待したい」と語っている。 なお、この研究は外部からの資金提供を一切受けずに行われた。研究に用いられたコンブチャは一つのブランドの製品のみだったが、著者らは、「コンブチャに含まれている主要な細菌や酵母は共通性が高く、ほかのブランドの製品も類似の機能性を有しているのではないか」と述べている。

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骨髄異形成腫瘍では誤診がまれではない

 骨髄異形成腫瘍(MDS)は診断が困難で、誤診もしばしば生じるため、セカンドオピニオンが必要であることを示唆した研究結果が発表された。研究論文の上席著者である、米マイアミ大学シルベスター総合がんセンターのMikkael Sekeres氏は、「診断の難しさや頻繁な誤診が、患者に不適切な治療やその他の潜在的に有害な結果を招くリスクを高める」と警鐘を鳴らしている。この研究論文は、「Blood Advances」に8月8日掲載された。 MDSは、造血幹細胞の機能異常が原因で正常な血液細胞が作られなくなる病態で、急性骨髄性白血病(AML)に進展する傾向がある。診断時の患者の年齢は、通常は60歳以上であり、生存期間は1年未満から10年程度までと幅がある。米国での新規MDS症例は年間約2万例と見積もられているが、過少報告や誤分類のために実際はそれ以上である可能性がある。 Sekeres氏らは今回、米国立心肺血液研究所(NHLBI)の全米骨髄異形成腫瘍自然史研究(National MDS Natural History Study)への参加者のデータを用いて、地域の病院の病理医による診断と中央の血液がんと骨髄腫を専門とする病理医(以下、専門病理医)による診断とを比較した。全米骨髄異形成腫瘍自然史研究は、MDSに関するデータと生物試料のリポジトリを構築して、この疾患に関する理解を深めることを目的としたもので、MDSの疑いがある患者やMDSと診断された患者で、治療の一環として骨髄生検が予定されている人が登録されている。 本研究では、918人(平均年齢72歳)が解析対象とされた。地域の病院で入力された診断データに基づくと、このうちの264人(29%)はMDS、15人(2%)は骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍(MDS/MPN;血液細胞の異常形成と骨髄幹細胞の過剰な増殖を併せ持つ)、62人(7%)は特発性血球減少症(ICUS)、577人(63%)はそれ以外の診断を受けており、骨髄芽球率30%未満のAMLの診断を受けた患者はいなかった。 この診断結果は、その後の専門病理医によるレビュー後に、3分の1程度が別の診断に再分類された。すなわち、MDSは266人(29%)、MDS/MPNは45人(5%)、ICUSは49人(5%)、骨髄芽球率30%未満のAMLが15人(2%)、それ以外が543人(59%)となった。地域の病理医による誤診断の53%は病理医の診断が研究用のフォームに誤記入されたことが原因であったことから、全体での誤診率は15%、MDSでの誤診率は21%と計算された。この結果は、MDS患者を含む全国がんレジストリの正確性に疑問を投げかけるものであると研究グループは述べている。さらに、地域の病理医と専門病理医の診断が一致しなかった症例では、一致した症例と比べて治療を受けた患者の割合が低く(25%対40%)、また、不一致例の7%は不適切な治療を受けていた。 Sekeres氏は、「これらの研究結果は、特にMDSのような希少な血液・骨髄腫瘍性疾患では、米国国立がん研究所(NCI)指定のがんセンターに所属する専門家の意見を求めることの重要性を浮き彫りにするものだ」と述べる。同氏は、地域の腫瘍医や病理医は、血液がんのようなまれながんよりも、乳がんのようなより一般的ながんの診断経験の方が豊富であることを指摘し、「地域の医師は、よりまれながんの診断の可能性を疑わせるような微妙な兆候を見逃す可能性がある」と懸念を示す。 研究グループは、この研究結果が、MDSに関するデータベースや、NCIの監視疫学遠隔成績(SEER)プログラムに大きな影響を与えるとの見方を示す。同プログラムは1970年代初期からがんの診断と転帰の傾向を監視している。Sekeres氏はさらに、「血液がんは診断が難しく、患者が正確に診断され、タイムリーに適切な治療を受けるためには、高度に熟練した病理医と連携する高度に専門化した臨床医によるセカンドオピニオンが必要だ」と主張している。

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不安で眠れない時はどうしたらいい?【医学生お悩み相談ラヂオ】第7回

動画解説第7回は、医学部6年生の女性からのお悩み。卒業試験が徐々に近づくにつれ、不安感が増して眠れなくなるとのこと。大学受験とはまた違った緊張感に苦しんでいる様子です。卒業試験、マッチングで失敗も成功も経験してきたえど先生のアドバイスには説得力があります。

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臓器がわかる3Dグラフィックス ORGAN ROOMS

医学専門出版社がつくったしっかり学べるアートブック本書は、イユダエマさん(2021年大阪芸術大学デザイン学科グラフィックデザインコース卒業)による卒業制作作品「ORGAN ROOMS」をもとに制作したアートブックです。本作品は9つの臓器をそれぞれの部屋に見立ててその働きをわかりやすく表現したもので、大阪芸術大学卒業制作選抜展で公開された段階でも、医学的にかなり調べこんで制作されたものでした。単行本化にあたり、アートのよさを残しつつ、医学専門出版社として、より正しくわかりやすい表現にできないかと検討を重ねるとともに、アートブックとしてだけでなく、読み物としても楽しめるよう、臓器にまつわる豆知識を盛り込んでいます。なお、幅広い読者層を想定し、全ページにわたり振り仮名をつけています。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    臓器がわかる3Dグラフィックス ORGAN ROOMS定価2,750円(税込)判型A4判頁数42頁発行2023年7月著者ORGAN ROOMS編集部(編・著)

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統合失調症患者の認知機能を含む症状に対するメトホルミンの影響~メタ解析

 統合失調症または統合失調感情障害患者の抗精神病薬誘発性メタボリックシンドローム(MetS)のマネジメントに対し、メトホルミンは優れた有効性を示す薬剤である。メトホルミンによる抗うつ効果や認知機能改善への影響も検討されているものの、これらの情報はシステマティックに評価されていなかった。イタリア・ミラノ大学のVera Battini氏らは、抗精神病薬治療中の統合失調症患者における認知機能およびその他の症状に対するメトホルミンの影響を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、統合失調症の認知機能やその他の症状に対し、メトホルミンのある程度の効果が確認された。メトホルミンの潜在的な薬理学的効果を明らかにするためには、適切な尺度を用いた長期にわたる研究が必要であるとしている。Frontiers in Psychiatry誌2023年7月12日号の報告。 2022年2月までに公表された、統合失調症および統合失調感情障害と診断された後、体重増加の治療のために抗精神病薬の追加療法としてメトホルミン治療を実施した患者を対象に、精神症状および認知機能の変化を評価したランダム化比較試験(RCT)をPubMed、ClinicalTrials.gov、Embase、PsycINFO、WHO ICTRPのデータベースより検索した。 主な結果は以下のとおり。・該当したRCT19件のうち、適格基準を満たした12件をメタ解析に含めた。・安定期統合失調症患者において、24週間のメトホルミン治療により、良好な傾向が認められた(標準化平均差:-0.40[95%信頼区間[CI]:-0.82~0.01]、オッズ比:0.5[-2.4~3.4])。・統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)および陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)による評価は、研究間の不均一性が低く、より良い影響が確認された。・1つの研究では、プラセボにおいてBACSの言語記憶サブドメインの好ましい変化が報告されていた(平均差:-16.3[95%CI:-23.65~8.42])。・最も報告された副作用は、胃腸障害、口腔乾燥症、錐体外路症状であった。・精神医学的有害事象、とくに統合失調症の再発に起因する症状も報告されていた。

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divarasib、既治療のKRAS G12C変異固形がんに有望/NEJM

 KRAS G12C変異陽性固形がんに対し、divarasibの単剤療法は持続的な臨床効果をもたらし、有害事象はほとんどがGrade2以下であった。カナダ・トロント大学のAdrian Sacher氏らが、12ヵ国35施設で実施された第I相試験「GO42144試験」の結果を報告した。divarasib(GDC-6036)は共有結合型KRAS G12C阻害薬で、in vitroにおいてソトラシブやadagrasibより高い効力と選択性を示すことが報告されていた。NEJM誌2023年8月24日号掲載の報告。非小細胞肺がん、大腸がん、その他の固形がんを対象に単剤療法の第I相試験を実施 研究グループは2020年7月29日〜2022年10月7日に、KRAS G12C変異を有する既治療の局所進行または転移を有する固形がん患者137例(非小細胞肺がん60例、大腸がん55例、その他の固形がん22例)に、divarasib 50~400mgを1日1回経口投与した。まず、50mgと100mgの単回用量漸増コホートに順次登録した後、3+3デザインを用いて200mgと400mgの用量漸増コホートに追加登録し、さらに400mgの用量拡大コホートに登録した。 試験の主要目的は安全性の評価であり、薬物動態、抗腫瘍効果、奏効および耐性のバイオマーカーについても評価した。忍容性は良好、奏効率は非小細胞肺がんで53%、大腸がんで29% 検討したいずれの用量(50mg、100mg、200mg、400mgを1日1回投与)においても、用量制限毒性および治療に関連した死亡は報告されなかった。 治療関連有害事象(TRAE)は127例(93%)に発現し、主な事象は悪心(74%)、下痢(61%)、嘔吐(58%)であった。Grade3のTRAEは15例(11%)に、Grade4は1例(1%)に発現した。TRAEにより19例(14%)で投与量が減量され、4例(3%)が投与を中止した。 抗腫瘍効果は、非小細胞肺がんで奏効率53.4%(95%信頼区間[CI]:39.9~66.7)、無増悪生存期間(PFS)中央値は13.1ヵ月(95%CI:8.8~推定不能)、大腸がん患者でそれぞれ29.1%(95%CI:17.6~42.9)、5.6ヵ月(95%CI:4.1~8.2)であった。その他の固形がん患者においても、奏効が観察された。 血中循環腫瘍DNAの経時的評価において、奏効に関連するKRAS G12C変異アレル頻度の低下が示され、divarasibに対する耐性に関与する可能性のあるゲノム変化が同定された。

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便通異常症診療ガイドライン2023―慢性下痢症

本邦初の慢性下痢症のガイドライン日本消化管学会編集による『便通異常症診療ガイドライン2023』の「慢性下痢症」編。Mindsの作成マニュアルに準拠し、臨床上の疑問をCQ(clinical question)、BQ(background question)、FRQ(future research question)に分けて解説。冒頭には診断・治療のためのフローチャートを掲載し、下痢症の定義・分類・診断基準から疫学、病態生理、診断検査、内科的治療について、最新知見を盛り込み、日常診療に必携の1冊となっている。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    便通異常症診療ガイドライン2023―慢性下痢症定価3,080円(税込)判型B5判頁数80頁発行2023年7月編集日本消化管学会電子版でご購入の場合はこちら

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ファイザーとモデルナ、高齢者により安全なワクチンはどっち?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)mRNAワクチンの安全性と有効性は、モデルナ社製ワクチンでもファイザー社製ワクチンでも高いとされている。しかし、高齢者におけるワクチン接種後の有害事象の発生という点では、軍配はモデルナ社製ワクチンに上がるとする研究結果が報告された。米ブラウン大学公衆衛生大学院、老年学・ヘルスケア研究センターのDaniel Harris氏らが米国立老化研究所の資金提供を受けて実施した研究で、詳細は、「JAMA Network Open」に8月2日掲載された。 Harris氏は、「COVID-19にまつわる有害事象の発生リスクは、新型コロナウイルスに自然感染した場合の方が、mRNAワクチンを接種した場合よりもはるかに高い。しかし、世界人口の70%以上が何らかのCOVID-19ワクチンを接種した今となっては、ワクチンの供給についてさほど心配する必要はない」と説明する。そして、現時点で必要とされているのは、どのワクチンを接種するかを決める際の判断材料となる、ワクチンの安全性と有効性に関する詳細な情報だと強調する。 今回の研究でHarris氏らは、mRNAワクチンの1回目接種を終えた、66歳以上の出来高払い方式のメディケア受益者638万8,196人(平均年齢76.3歳、女性59.4%)を対象に、モデルナ社製ワクチンとファイザー社製ワクチン接種後の有害事象の発生について比較を行った。対象者の38.1%はプレフレイル(フレイル前段階)、6.0%はフレイルと判定されていた。また、339万704人がファイザー社製ワクチンを、299万7,492人がモデルナ社製ワクチンを接種していた。有害事象としては、深部静脈血栓症、肺塞栓症、血小板減少性紫斑病、ギラン・バレー症候群、急性心筋梗塞など12種類について検討した。 検討した12種類の有害事象の発生率は全て1%以下であり、最も高かったのは深部静脈血栓症の0.27%と肺塞栓症の0.23%であった。あらゆる因子を調整したモデルを用いた解析からは、モデルナ社製ワクチンの方が肺塞栓症リスクが4%低く、また、血栓塞栓症の複合(急性心筋梗塞、深部静脈血栓症、出血性脳卒中、非出血性脳卒中、肺塞栓症)のリスクも2%低いことが示された。モデルナ社製ワクチンはさらに、COVID-19と診断されるリスクがファイザー社製ワクチンよりも14%低かった。ただし、このようなリスク低下は、フレイルと判定された人では6%にとどまっていた。 Harris氏は、「この研究結果は、公衆衛生の専門家が、フレイルのある人も含めた高齢者にとって、どのmRNAワクチンが望ましいかを検討する上で役に立つ」と話す。同氏はまた、健康に慢性的な問題を抱えていることの多い高齢者は、臨床試験から除外されることが多いことを指摘し、「介護施設に入居している高齢者ではCOVID-19の重症化リスクが高いことを考えると、高齢者でのワクチンの安全性と有効性を調べることは極めて重要である」としている。 では、なぜモデルナ社製ワクチンの方が、わずかではあるが有害事象の発生リスクが低かったのか。Harris氏は、「安全性と有効性は相互に関連している。モデルナ社製ワクチンを接種した患者の方が、ファイザー社製ワクチンを接種した人よりも肺塞栓症やその他の有害事象のリスクがわずかに低かったのは、モデルナ社製ワクチンの方がCOVID-19罹患リスクを低減させる効果が高いことに起因する可能性がある」と話している。 ただし、この研究では、有害事象の発生リスクの違いが、安全性または有効性のどちらに起因するのかについて、結論付けることはできなかった。また、本研究で検討されたのはmRNAワクチンの初回投与後についてだけであり、研究グループは、さらなる研究が必要だとしている。

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手術見学で何も教えてもらえない【医学生お悩み相談ラヂオ】第6回

動画解説第6回は、医学部5年生の男性から。外科志望にもかかわらず、手術見学で縫合の練習しかさせてもらえないと、臨床実習に対する不安の声が届きました。多くの医学生や研修医の悩みに向き合ってきた民谷先生が、解決に導くある工夫を提案します。

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レビー小体型認知症のパーキンソニズムに対するゾニサミド補助療法

 レビー小体型認知症(DLB)患者のパーキンソニズムに対してレボドパで効果不十分な場合、レボドパの増量とゾニサミド併用の効果および安全性の違いについては、よくわかっていない。大阪大学の池田 学氏らは、レボドパ300mg/日以下で治療されたパーキンソニズムを伴うDLB患者を対象に、ゾニサミド25mg/日併用療法とレボドパ100mg/日増量療法の比較を行った。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年7月20日号の報告。 本DUEL研究は、多施設共同ランダム化非盲検並行群間非劣性試験として実施された。観察期間中、レボドパ300mg/日以下で4週間投与を行った。その後患者は、ゾニサミド25mg/日併用群またはレボドパ100mg/日増量群にランダムに割り付けられた。主要評価項目は、16週目および24週目のMDS-UPDRS Part III総スコアの平均変化とした。 主な結果は以下のとおり。・16週目および24週目のMDS-UPDRS Part III総スコアの調整平均変化は以下のとおりであった。【ゾニサミド併用群】16週目:-6.3、24週目:-4.4【レボドパ増量群】16週目:-0.8、24週目:2.0・24週目の調整平均差は、-6.4(95%信頼区間:-13.5~0.7)であり、信頼区間の上限値は、非劣性マージン(3.0)よりも低かった。・MDS-UPDRS Part II、Eating Questionnaire、EuroQol-5 dimension-5 level (EQ-5D-5L)、Zarit介護負担尺度、その他の副次的評価項目の総スコアは、両群間で差は認められなかった。・有害事象の発生率は、両群間で差は認められなかった。 その結果を踏まえて著者らは、「レボドパで効果不十分な場合、ゾニサミド25mg/日を併用することで、DLB患者の運動症状に中程度の効果が期待できる。しかし、本研究では、レボドパ増量が想定されているほどの効果が得られなかったため、ゾニサミド25mg/日併用がレボドパ100mg/日と同程度の効果があるかは、検証できなかった」としている。

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便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症

便秘症の定義から治療まで最新知見を盛り込み、6年ぶりに改訂日本消化管学会編集による『便通異常症診療ガイドライン2023』の「慢性便秘症」編。Mindsの作成マニュアルに準拠し、臨床上の疑問をCQ(clinical question)、BQ(background question)、FRQ(future research question)に分けて解説。冒頭には診断・治療のためのフローチャートを掲載し、便秘症の定義・分類・診断基準から疫学、病態生理、診断検査、内科的治療について、前版以降の進歩や最新知見を盛り込み、日常診療に必携の1冊となっている。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症定価3,300円(税込)判型B5判頁数144頁発行2023年7月編集日本消化管学会電子版でご購入の場合はこちら

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スマホによる介入、不健康な飲酒を抑制/BMJ

 不健康なアルコール使用を自己申告した大学生において、アルコール使用に対する介入としてスマートフォンのアプリケーションへのアクセスを提供することは、12ヵ月の追跡期間を通して平均飲酒量の抑制に有効であることが、スイス・ローザンヌ大学のNicolas Bertholet氏らが実施した無作為化比較試験の結果で示された。若年成人、とくに学生において、不健康なアルコール使用は発病や死亡の主な原因となっている。不健康なアルコール使用者に対する早期の公衆衛生的アプローチとして、世界保健機関(WHO)はスクリーニングと短期的介入を推奨しているが、スマートフォンによる介入の有効性については明らかではなかった。BMJ誌2023年8月16日号掲載の報告。スイスの大学生1,770例を介入群と対照群に無作為化 研究グループは、スイスの4つの高等教育機関(ローザンヌ大学、スイス連邦工科大学ローザンヌ校、エコール・オテリエール・ド・ローザンヌ、University of Applied Sciences and Arts Western Switzerland’s School of Health)において参加者を募集した。アルコール使用障害特定テスト-簡易版(AUDIT-C)によるスクリーニングで不健康なアルコール使用が陽性(スコアが男性4点以上、女性3点以上)と判定され、試験への参加に同意した18歳以上の学生1,770例を、ブロック法で介入群(884例)と対照群(886例)に1対1の割合で無作為に割り付けた(盲検化)。介入群では、スマートフォンを用いたアルコール使用に対する簡単な介入(アプリケーションの提供)を行った。 主要アウトカムは、6ヵ月後における標準アルコール飲料(基準飲酒量[ドリンク]、スイスの1ドリンクは純粋エタノール10~12g相当)の1週間の飲酒数量。副次アウトカムは過去30日間の大量飲酒日数(男性5ドリンク以上、女性4ドリンク以上)、その他のアウトカムは、1回の最大飲酒量、アルコール関連事象、学業成績。それぞれ3ヵ月後、6ヵ月後および12ヵ月後に評価した。スマホによる介入で、1週間の基準飲酒量、大量飲酒日数、1回の最大飲酒量が低下 2021年4月26日~2022年5月30日の間に、1,770例が無作為化された(介入群884例、対照群886例)。平均年齢は22.4歳(SD 3.07)、女性が958例(54.1%)、学部生1,169例(66.0%)、修士課程533例(30.1%)、博士課程43例(2.4%)、その他の高等教育課程25例(1.4%)で、ベースラインの1週間の平均基準飲酒量は8.59ドリンク(SD 8.18)、大量飲酒日数は3.53日(同4.02)であった。 1,770例の追跡率は、3ヵ月後96.4%(1,706例)、6ヵ月後95.9%(1,697例)、12ヵ月後93.8%(1,660例)であった。 介入群の学生884例のうち、738例(83.5%)がアプリケーションをダウンロードした。介入は、1週間の基準飲酒量(発生率比:0.90、95%信頼区間[CI]:0.85~0.96)、大量飲酒日数(0.89、0.83~0.96)、1回の最大飲酒量(0.96、0.93~1.00)に関して有意な全体的効果を示し、追跡期間中の飲酒アウトカムは介入群で対照群より有意に低かった。一方、介入はアルコール関連事象や学業成績には影響しなかった。

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新型コロナなど呼吸器系ウイルスの重複感染率はどの程度か

 米国で、2022年後半に実施された2万6,000件以上の呼吸器系ウイルスの検査結果を調べたところ、陽性結果の1%以上で新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス、RS(呼吸器合胞体)ウイルスの重複感染が認められたとする研究結果が報告された。重複感染は、21歳以下の若年者の間で多く認められたという。米クエスト・ダイアグノスティックス社のテクニカルディレクターを務めるGeorge Pratt氏らによるこの研究結果は、米国臨床化学会年次総会(2023 AACC、7月23〜27日、米アナハイム)で発表された。 Pratt氏は今回の研究背景について、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが終息に向かい始め、人々の行動様式が変化する中で、われわれは、他の呼吸器系ウイルスの再流行とそれらの重複感染、特に、再流行を見せている新型コロナウイルスとの重複感染の可能性を調査することが重要だと考えた」と説明する。 重複感染は、呼吸器系疾患のアウトブレイクが複数発生した場合に起こりやすい。例えば2022年後半に米国でRSウイルス感染症例が急増した際には、COVID-19のパンデミックと季節性インフルエンザの流行が重なった。Pratt氏らは、同時に複数の感染症に罹患した場合には、重症化や治療合併症のリスクが高まると指摘する。 今回の研究でPratt氏らは、2022年の秋に107日にわたって実施された2万6,657件の呼吸器系ウイルス(RSウイルス、新型コロナウイルス、A型・B型インフルエンザウイルス)の検査結果を収集して分析した。この中には、21歳以下の患者に対して実施された9,800件の検査の結果も含まれていた。 その結果、陽性結果の1.33%、全検査結果の0.55%で、2種類以上のウイルスの重複感染が認められることが明らかになった。重複感染率は感染しているウイルスにより異なり、成人では、新型コロナウイルスとRSウイルスの重複感染での0.38%から、A型インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスの重複感染での2.28%までの幅があった。これに対して、21歳以下の若年者での重複感染率はいずれのウイルスの組み合わせでも成人より高く、新型コロナウイルスとA型インフルエンザウイルスの重複感染では6%に上った。 Pratt氏は、「本研究は、米国北東部で複数のウイルスについて同時に実施された大量の検査結果に基づいている点が斬新だ。2万6,000件以上の検査結果を調査できたことは、われわれにとって大きな財産となった」と述べる。 Pratt氏はさらに、「インフルエンザシーズンやその他の呼吸器系ウイルスの流行の経験を重ねていくことで、重複感染率に関するさらなるデータの蓄積が可能となる。今回の研究は、この先、重複感染率が減少するのか増加するのかを評価する際に役立つデータポイントになることだろう」との考えを示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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