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周囲の凄い人たちと比べてしまって不安です【医学生お悩み相談ラヂオ】第20回

動画解説第20回は、医学部4年生の女性から、周囲に成績上位で、しかも積極的に課外活動もこなす、すごい人たちと自分を比べてしまい不安になってしまうというお悩み。医学部に存在する体力・気力オバケのすごい人たちとの関わり方、考え方を同じような悩みをよく聞いてきた民谷先生がズバリ回答します。

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欧州で行われた臨床研究の結果は、日本の臨床に当てはめることはできない?(解説:山地杏平氏)

 BIOSTEMI試験の5年生存追跡結果が、TCT 2023で発表され、Lancet誌に掲載されました。ST上昇型心筋梗塞(STEMI)症例において、生分解性ポリマーを用いた超薄型シロリムス溶出性ステントであるOrsiroとエベロリムス溶出性ステントのXienceを比較した試験の追跡期間を5年に延長した試験になります。 第2世代の薬剤溶出性ステントであるXienceは、第1世代の薬剤溶出性ステントであるCypherやTaxusと比較し有意に優れていることが多くの試験で示されてきました。その一方で、Xience以降に新たに発売された薬剤溶出性ステントは、Xienceに対して非劣性は示されてきたものの、優越性が示されたものはありませんでした。2014年にLancet誌で発表されたBIOSCIENCE試験でも、これまでの試験と同様に、OrsiroはXienceと比較して非劣性であることが示されましたが、そのサブグループであるSTEMI症例において、有意にOrsiroが優れていることが示唆されました。 この結果を受けて始められたのが、BIOSTEMI試験で、BIOSCIENCE試験と同じく、ベルン大学が中心となって行われた多施設共同の無作為化比較試験です。STEMI症例においては、BIOSCIENCE試験のサブグループ解析と同様に、Orsiroが心筋虚血に伴う再血行再建が有意に少なかったことが2019年にLancet誌で報告されています。そしてさらに今回報告されたのが、追跡期間を5年まで延長したものであり、その結果はきわめて穏当で、初期の差が維持され、とくに“late catch-up phenomenon”が見られず、遠隔期のイベントにおいても変化がないと報告されています。 スイスでは、IVUSやOCTといった冠動脈イメージングデバイスは、臨床研究以外ではほとんど用いられておらず、日本で行われている手技と比べ、やや控えめなサイズのデバイスが選択されることが多いように思います。そのような環境においては、STEMI症例を治療するのであれば、より薄い金属でできているOrsiroのほうが、Xienceと比較して優れていることは間違いなさそうです。一方で、冠動脈イメージングデバイスを用いて、積極的に後拡張を行う日本の手技では、OrsiroがXienceと比較して有意に優れているかはわからないように思いますし、BIOSTEMI試験の結果を受けて使用するステントが大きく変わることはないようにも思います。ただし、少なくともOrsiroはその他の第2世代の薬剤溶出性ステントと比較して、劣ってはいないことは間違いない事実であることは認識しておいてよいのではないでしょうか。 BIOSTEMI試験および、BIOSCIENCE試験はいずれも私が留学していたベルン大学が中心となって行われており、TCTでは本試験のprincipal investigatorであるThomas Pilgrim先生や、その上司であるStephan Windecker先生に久しぶりにお会いできました。Stephan Windecker先生を一躍有名にしたのが、2005年にNew England Journal of Medicine誌に報告された第1世代の薬剤溶出性ステントであるCypherやTaxusを直接比較したSIRTAX試験です。以後も長期にわたってエビデンスを出し続けているベルン大学ですが、現在も日本からの留学生を受け入れてもらっています。われこそはと思われる方がおられましたら、ぜひベルン大学留学を考えてみてください!

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患者×外科医の性別パターン、術後死亡率との関連は?/BMJ

 患者と外科医の4タイプの性別の組み合わせ(男性患者・男性外科医、女性患者・女性外科医、男性患者・女性外科医、女性患者・男性外科医)で、術後30日以内の死亡率に大きな差はなく、患者と外科医の性別の一致による臨床的に意義のある差を認めないことが、カナダ・トロント大学のChristopher J.D. Wallis氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年11月22日号で報告された。米国の手術を受けた65歳以上の後ろ向き観察研究 研究グループは、米国における患者と外科医の性別一致と術後死亡率との関連を評価する目的で、後ろ向き観察研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]/国立マイノリティ健康格差研究所[NIMHD]などの助成を受けた)。 解析には、2016~19年に米国の急性期病院で14の主要な待機的または非待機的(緊急または準緊急)手術のうち1つを受けた65~99歳の出来高払いメディケア受給者のデータを使用した。外科医の自己申告による性別のデータは、Medicare Data on Provider Practice and Specialty(MD-PPAS)のデータベースを用いて収集した。主要アウトカムは、術後30日以内の死亡率とした。 手術を受けた290万2,756例のうち、128万7,845例(44.4%)で性別が同じ外科医による手術が行われ、120万1,712例(41.4%)が男性患者・男性外科医の組み合わせ、8万6,133例(3.0%)が女性患者・女性外科医の組み合わせであった。 また、161万4,911例(55.6%)で性別が異なる外科医による手術が行われ、5万2,944例(1.8%)が男性患者・女性外科医の組み合わせ、156万1,967例(53.8%)が女性患者・男性外科医の組み合わせだった。待機的手術の術後死亡率は、女性外科医で低い 補正後の術後30日死亡率は、男性患者・男性外科医群が2.0%、男性患者・女性外科医群が1.7%、女性患者・男性外科医群が1.5%、女性患者・女性外科医群は1.3%であった。 待機的手術における患者と外科医の性別一致に関しては、男性外科医による手術を受けた女性患者と比較して、女性外科医による手術を受けた女性患者でわずかに死亡率が低かった(補正後リスク差:-0.2%ポイント、95%信頼区間[CI]:-0.3~-0.1、p<0.001)が、女性外科医による手術を受けた男性患者に比べ、男性外科医による手術を受けた男性患者では死亡率が高かった(0.3%ポイント、0.2~0.5、p<0.001)。しかし、これらの群間の差は小さく、臨床的な意義を認めなかった。 一方、非待機的手術では、患者と外科医の性別の一致による術後死亡率の違いを示唆するエビデンスは得られなかった。 待機的手術では、女性外科医は男性外科医に比べ、補正後の術後死亡率が低かった(0.5% vs.0.8%、補正後リスク差:-0.3%ポイント、95%CI:-0.3~-0.2、p<0.001)が、非待機的手術では、このような差はなかった(5.2% vs.5.4%、-0.1%ポイント、-0.4~0.1、p=0.25)。また、手術の種類で層別化すると、待機的結腸切除術では外科医の性別が患者の死亡率と関連し、女性外科医で死亡率が低かった(1.9% vs.2.3%、-0.4%ポイント、-0.7~-0.2、p<0.001)が、ほかの手術では関連性は有意でなかった。 著者は、「これらの知見の根本的なメカニズムを理解することで、すべての患者のケアのプロセスとパターンを改善する機会が得られる。現在進行中の定性的かつ定量的な研究により、外科医と患者の性別と共に、人種やその他の共有アイデンティティ(shared identity)の側面が、ケアの質や術後のアウトカムにどのような影響を及ぼすかを、より詳細に説明できるようになると考えられる」としている。

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医師数が少なく検査機器数が多い日本の医療/OECD

 経済協力開発機構(OECD/本部:フランス・パリ)から加盟38ヵ国に関する医療レポートが、11月7日に公表された。レポートでは、新型コロナ感染症(COVID-19)が与えた各国への影響のほか、医療費、医療の質などに関する内容が記載されている。わが国は、平均寿命はOECDの中で84.5歳と1番長いが、受診率の多さ、医師数、電子化の遅れなど他の国との差もあり、今後の課題も提示されている。 以下に概要を示す。【COVID-19禍での国民の健康状態について】・2020~22年のCOVID-19での10万人当たり死亡率は、ノルウェー、インドが同順で38人、ニュージーランドが45人、わが国が46人と4番目に低かった。・2020年は平均余命が伸びた半面、21年は0.1歳短くなった。・COVID-19初期(2020年)には17%の人がうつの症状を訴えていた。・自殺者は2020年に10万人当たり15.4人だった(参考:2019年14.6人)。【医療支出の現状と今後について】・2022年または直近年のGDPに占める医療支出の割合は、アメリカの16.6%、ドイツの12.7%、フランスの12.1%に次いで、わが国は11.5%と4番目に多かった。・2021年の政府支出に占める公的医療費支出の割合は、わが国が22%と1番高く、アメリカ、イギリス、アイルランドが21%と続いた。・2021年の受診回数は、韓国15.7回が1番多く、わが国は11.1回と2番目に多く、スロバキアが11.0回と続いた。OECDの平均受診回数は6.0回だった。・2021年の高齢化率は、65歳以上の人口割合で、わが国は28.9%と1番高く、次いでイタリアの23.6%、ギリシャの22.8%と続いた。OECDの高齢者割合の平均は18.0%だった。【医療資源の活用について】・2021年の1,000人当たりの病床数は、韓国の12.8床が1番多く、次いでわが国の12.6床、ブルガリアの7.9床と続いた。OECDの平均病床数は4.3床だった。・2021年の病院支出における内訳では、OECDの平均では入院が64%、日帰りが6%、外来が24%、介護が3%、その他が3%だった。これに対しわが国は、入院が63%、日帰りが1%、外来が23%、介護が10%、その他が3%と介護の割合が高かった。・2021年の平均在院日数は、韓国が18.5日と1番多く、次いでわが国が16.0日、ハンガリーが9.7日と続いた。OECDの平均在院日数は7.7日だった。・2019年または直近年の人口100万人当たりのCT、MRIなどの医療機器数は、わが国が1番多く178台、次いでオーストラリアが88台、アメリカが86台と続いた。OECDの平均医療機器台数は48台だった。・2021年の医師数は、1,000人当たりでギリシャが1番多く6.3人、次いでポルトガルの5.6人、オーストリアが5.4人と続いた。わが国は5番目に少なく2.6人だった。また、OECDの平均医師数は3.7人だった。【予防医療について】・2021年または直近年の喫煙率を男女合わせた数字でみると、インドネシアが1番多く33%、次いでブルガリアが29%、トルコが28%と続いた。わが国は男性27%、女性8%で、OECDの平均喫煙率は、男性20%、女性12%だった。・2021年または直近年の乳がん検診率(50~69歳女性)は、デンマークが1番多く83%、次いでフィンランドとポルトガルが82%と続き、わが国は45%だった。OECDの平均受診率は54%だった。【医療へのアクセスとデジタル化について】・2021年または直近年の医療での自己負担額割合は、トルコとクロアチアが1番低く1.4%、次いでコロンビアが1.7%と続き、わが国は2.4%だった。OECDの平均の医療での自己負担額割合は3.3%だった。・2021年の開業クリニックにおける電子カルテ利用率は、クロアチアが1番低く3%、次いでポーランドとスイスが30%と続き、わが国は42%と5番目に低かった。OECDの平均開業クリニックにおける電子カルテ利用率は93%で、欧米、とくに北欧の利用率はほぼ100%だった。

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完全磁気浮上LVAD装着の重症心不全、アスピリンは不要?/JAMA

 完全磁気浮上の左心補助人工心臓(LVAD)を装着した重症心不全患者において、ビタミンK拮抗薬(VKA)による抗血栓療法は、VKA+アスピリンと比較して血栓塞栓症のリスクが増加することはなく、出血イベントを減少させる。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMandeep R. Mehra氏らが、北米、欧州、オーストラリアなど9ヵ国の51施設で実施された多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Antiplatelet Removal and Hemocompatibility Events With the HeartMate 3 Pump trial:ARIES-HM3試験」の結果を報告した。LVADは重症心不全患者の生活の質と生命予後を向上させるが、非外科的出血イベントは最も一般的な合併症である。連続流LVADでは、抗血小板薬としてのアスピリンをVKAとともに使用することが義務付けられているが、有効性と安全性に関して決定的なエビデンスはないままであった。JAMA誌オンライン版2023年11月11日号掲載の報告。VKA+プラセボvs. VKA+アスピリンで無イベント生存と出血を比較 研究グループは、完全磁気浮上のLVADであるHeartMate 3(HM3)を装着し、その後はHM3以外の機械的循環補助を必要としない重症心不全患者を、装着後2~7日目にプラセボ群とアスピリン(100mg/日)群に1対1の割合で無作為に割り付け、VKA療法(目標国際標準比[INR]:2.0~3.0)とともに投与した 主要エンドポイントは、HM3装着後14日以内に投与中止を要する外科的合併症またはイベントが発生した患者を除いた主要解析対象集団における、12ヵ月時の非外科的血液適合性関連主要有害イベント(脳卒中、ポンプ血栓症、非外科的大出血、または末梢動脈血栓塞栓症など)のない生存(無イベント生存)の複合で、プラセボ群のアスピリン群に対する非劣性マージンは片側97.5%信頼限界の下限-10%とした。また、重要な副次エンドポイントを、主要解析対象集団における非外科的出血イベントの発生頻度とした。VKA+プラセボで1年無イベント生存率は6%高く、出血イベントは減少 2020年7月~2022年9月の期間に、628例が無作為化された(プラセボ群314例、アスピリン群314例)。このうち、主要解析対象集団は589例(プラセボ群296例、アスピリン群293例)で、患者背景は77%が男性、61%が白人で、追跡期間中央値は14ヵ月であった。 12ヵ月時点の無イベント生存率は、プラセボ群74.2%、アスピリン群68.1%であり、プラセボ群が高く、プラセボ群のアスピリン群に対する非劣性が示された(群間差:6.0%、片側97.5%信頼限界の下限:-1.6%、p<0.001)。 非外科的出血イベントの発生頻度はプラセボ群25.9/100患者年、アスピリン群39.5/100患者年で、アスピリンの回避は非外科的出血イベントの減少と関連していた(相対リスク:0.66、95%信頼区間:0.51~0.85、p=0.002)。 プラセボ群で脳卒中またはその他の血栓塞栓性イベントの増加は認められず、この結果は患者のサブグループ間で一致していた。

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2型糖尿病患者のメトホルミン服用中止は認知症リスクを高める?

 2型糖尿病患者が、長期的な使用が前提とされている血糖降下薬のメトホルミンの服用を早期に中止すると、加齢に伴い、思考力や記憶力に問題の生じるリスクが高まる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。論文の上席著者である、米ボストン大学の疫学者Sarah Ackley氏は、「メトホルミンの服用を続けることが、認知症発症の予防や遅延につながることが分かった。これは大きな励みとなる結果だ」と述べている。この研究の詳細は、「JAMA Network Open」に10月25日掲載された。 Ackley氏によると、メトホルミンには幅広い効能があるため、通常、糖尿病治療の第一選択肢とされており、特定の理由がない限り服用を継続することが推奨されている。メトホルミンの服用により腎障害などの副作用が生じた患者や、薬に頼らない血糖コントロールを希望する患者では、メトホルミンの服用が中止されることがある。 今回の研究では、米カイザーパーマネンテ北カリフォルニアのサービス利用者から抽出した2型糖尿病患者4万1,346人を対象に、腎障害を理由としないメトホルミンの服用中止と認知症の発症との関連が検討された。対象者はいずれも1955年以前の出生で、メトホルミンの服用開始時に腎臓病の診断歴はなかった。認知症発症については、電子健康記録が導入された1996年から2020年まで追跡された。対象者のうち、1万2,220人(メトホルミン服用開始時の平均年齢59.4歳、女性46.2%)はメトホルミンの服用を途中で中止し(服用中止群)、残りの2万9,126人(同61.1歳、46.6%)は服用を継続していた(服用継続群)。 解析の結果、服用中止群では服用継続群に比べて認知症の発症リスクが21%高いことが明らかになった(ハザード比1.21、95%信頼区間1.12〜1.30)。媒介分析で、この関連性にHbA1c値やインスリン使用の変化が及ぼす影響を検討したところ、有意な影響は確認されなかった。 メトホルミンの服用中止後の血糖値の上昇やインスリンの使用増加が認知症の発症に影響を及ぼさない可能性が示された点について、論文の筆頭著者である米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の疫学者Scott Zimmerman氏は、「メトホルミンの血糖降下作用以外の他の作用が、認知症の発症予防に関与している可能性が高い。この洞察は、今後の研究において、効果的な介入策や予防策を特定する際に役立つだろう」と述べている。 Zimmerman氏は、メトホルミンを服用中だがその中止を考えている人は、まずは主治医に相談するべきだと助言する。同氏は、「患者ごとに、認知症の発症リスクやメトホルミンの副作用の程度、患者の希望などの多くの要素を考慮してバランスを取る必要がある。糖尿病合併症の予防だけでなく、メトホルミンの利点も、検討材料の一つだ」と説明している。 米アルツハイマー病創薬財団の加齢・アルツハイマー病予防部長を務めているYuko Hara氏は、「この結果は、メトホルミンが認知症の発症リスクを低下させることを示唆する既存の研究報告と一致している」と話す。同氏は、「2型糖尿病とアルツハイマー病には、脳へのグルコース取り込み障害など共通の特徴がいくつかある。加えて、両疾患ともインスリン抵抗性と高レベルの酸化ストレスに関連している。したがって、2型糖尿病患者は、メトホルミンやその他の糖尿病治療薬で血糖値をコントロールし、生活習慣を是正することで、認知症の発症リスクを低減させられる可能性がある」と話している。 一方、米ノースカロライナ大学チャペルヒル校糖尿病ケアセンター所長のJohn Buse氏は、「メトホルミンの服用を中止することで認知症の発症リスクが高まると結論付けるには時期尚早だ」との見方を示す。同氏は、メトホルミンが、記憶力や思考力の低下をもたらすビタミンB12の濃度低下を招いている可能性など、今回の結果をもたらした要因が他にもある可能性を指摘。「この研究結果は、掘り下げて検討する価値はあるものの、メトホルミンの服用中止が悪い考えであることを明示するものでないことは確かだ。メトホルミンが現存する薬物の中で最も有効で安全な薬物であることは明らかであり、腎臓の問題などメトホルミンの服用を中止すべき正当な理由がないのであれば、使用を継続すべきだ」と強調している。

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緊急避妊薬の処方箋なしの試験販売が開始【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第121回

緊急避妊薬の処方箋なしの試験販売が開始11月28日より、一部薬局で緊急避妊薬を処方箋なしで販売する試験が始まります。緊急避妊薬の販売対応の大きな一歩で、私個人としてはとても急な展開に驚いています。望まない妊娠を防ぐために性交後に服用する「緊急避妊薬(アフターピル)」について、医師の処方箋なしでの試験的な薬局販売を28日から開始すると、厚生労働省が17日、発表した。業務委託を受けた日本薬剤師会が20日開始に向けて準備していたが、調整に時間がかかった。日本薬剤師会によると、各都道府県に2〜3店ずつ、全国145薬局で順次販売する。対象は16歳以上で、18歳未満は保護者の同伴が必要になる。販売価格は7千〜9千円程度。事前の電話連絡が必要で、試験販売開始時に薬局一覧を同会がウェブサイトで公表する。(2023年11月17日付 日本経済新聞)現在、いわゆる緊急避妊薬を入手するには産婦人科などの医師が発行した処方箋が必要です。オンライン診療でも処方可能ですが、避妊失敗や性暴力などによる望まない妊娠を防ぐには早急な入手・服用が必要であるため、市販化を要望する声が高まっていました。そこで、厚生労働省が長年議論を重ね、調査研究として薬局販売することを決めました。今回販売が可能となった緊急避妊薬はレボノルゲストレル(商品名:ノルレボ錠)とその後発医薬品で、性交後72時間以内に服用することで妊娠を8割程度阻止できます。試験販売の薬局は原則、以下の要件を満たすことと発表されています。(1)研修を受けた薬剤師がいる。(2)夜間や土日祝日の対応が可能。(3)近くの産婦人科などと連携できる。(4)個室があるなどプライバシーが確保できる。今回は適正な販売を確保できるかなどを調べる調査研究を目的とした試験販売ですので、この調査研究に同意した16歳以上の女性(18歳未満は保護者の同意が必要)にしか販売できません。なお、薬剤師の目の前で服薬してもらう必要がありますが、これは日本だけの要件のようです。試験販売の期間は2024年3月までで、調査結果を踏まえてスイッチOTC化して市販化が検討されるようです。実質4ヵ月間の試験販売で、しかも全国で150軒弱の薬局という非常に少ない参加ですので、販売経験が集まるかなどの問題があると思います。しかし、手軽とはとてもいえない要件ですが、緊急避妊薬を市販するうえでの課題が明確になり、1人でも多くの女性が安全にそしてできるだけ不安が少なく緊急避妊薬を服用できる時代になることが望まれます。

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第191回 リドカインが苦味にまつわる仕組みでがん細胞を死なす

リドカインが苦味にまつわる仕組みでがん細胞を死なす良薬口に苦しとはよく言ったもので、苦い薬リドカインに備わると思しき別の効能がその苦味にまつわる仕組みに端を発するらしいことが米国・ペンシルバニア大学のチームの研究で示されました1)。その別の効果とは抗がん作用です。20年ほども前の観察試験で局所麻酔が乳がん手術患者の再発や転移を減らしうることが示唆されています2)。リドカインは言わずもがな局所麻酔薬の1つであり、外来での外科処置でよく使われます。乳がん以外のがんへのリドカインの検討もいくつかあり、化学療法を助けたり転移を抑制したりするなどの効果を有するらしいことが示唆されています。リドカインは電位依存性ナトリウム(Nav)チャネルを阻害して感覚神経からの痛み信号を遮断します。リドカインが担いうる抗がん作用がそのNavチャネル阻害によるのかその他の仕組みによるのかはよくわかっていませんでした。リドカインは苦いだけに、25種類ある苦味受容体T2Rの1つT2R14を活性化します。T2R14を含むいくつかのT2R受容体の活性化は核内やミトコンドリアのCaイオン上昇を介して気道上皮細胞や頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)細胞を死なすことがわかっています。そこでペンシルバニア大学のチームはリドカインがT2R14への作用を介してHNSCC細胞、もっというとそれ以外のがん細胞を死なすのではないかと考えました。その予想はどうやら正しく、リドカインはHNSCC細胞のT2R14活性化によってCaイオンを動かしてHNSCC細胞を弱らせ、やがては死に至らしめました。ヒトパピローマウイルス(HPV)と関連するHNSCCではT2R14遺伝子の発現が盛んなことも示され、リドカインによるT2R14活性化が最も有益かもしれません。そこで研究チームはHPV関連HNSCCの標準治療に加えてリドカインも投与する試験を計画しています3)。試験はペンシルバニア大学医学部のがん治療部門Abramson Cancer Centerが担当します。ペンシルバニア大学のチームはHNSCCを題材に研究を進めていますが、乳がんへのリドカインの効果の検討はより年季が入っています。欧州臨床腫瘍学会(ESMO)での昨年の発表に続いて今年4月に論文になった大規模無作為化試験の結果、乳がんの手術に際してリドカインを手術前に腫瘍に直接注射したところ非注射の対照群に比べて生存が改善しました4)。試験はリドカインがNavチャンネル阻害を介して転移促進経路を食い止めるとの想定で実施されました。実際のところ生存の改善に加えて転移の減少も認められており、仕組みがどうあれ乳がん細胞の転移手段に手出しすることでリドカインは転移を減らし、手術後の経過を改善する働きがあるらしいと試験の担当者は述べています5)。乳がんもHNSCCと同様にT2R14を発現します。よって同試験で認められたリドカイン注射の生存改善にはT2R14への作用も寄与しているかもしれません1)。参考1)Miller ZA, et al. Cell Rep. 2023 Nov 16. [Epub ahead of print]2)Exadaktylos AK, et al. Anesthesiology. 2006;105:660-664. 3)Lidocaine may be able to kill certain cancer cells by activating bitter taste receptors / Eurekalert4)Badwe RA, et al. J Clin Oncol. 2023 Apr 6. [Epub ahead of print]5)Lidocaine Presurgery May Improve Survival in Early Breast Cancer / Medscape

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「遺伝子パネル検査で治療法が見つからない」は誤解?/日本肺癌学会

 肺がん遺伝子検査は、「コンパニオン診断→標準治療→CGP検査(遺伝子パネル検査)」という流れで行われる。CGP検査は、標準治療が終了あるいは終了見込みとなった段階で保険診療での使用が可能とされている。しかし、検査が受けられる病院が限られていたり、保険適用となるのは生涯で1回のみということもあったりすることから、肺がん患者においては十分に普及しているとは言い難い。そこで、近畿大学病院における肺がん患者のCGP検査の実態が調査された。その結果、非小細胞肺がん(NSCLC)患者では、想定以上にCGP検査後に遺伝子検査結果に基づく次治療へ到達していたことが明らかになった。高濱 隆幸氏(近畿大学医学部腫瘍内科/近畿大学病院ゲノム医療センター)が、本研究の詳細を第64回日本肺癌学会学術集会で報告した。NSCLC患者の約2割がCGP検査で次治療に到達 高濱氏らの研究グループは、2019~22年に近畿大学病院において保険診療でCGP検査を受けた肺がん患者100例(NSCLC 76例[腺がん58例、扁平上皮がん10例、大細胞神経内分泌がん3例、その他5例]、小細胞肺がん[SCLC]24例)を対象として、CGP検査の実態を調査した。CGP検査の検体は92%の患者が組織検体を利用しており、そのうち70%は生検検体であった。 調査の結果、NSCLC患者の17%(13/76例)はCGP検査後にエキスパートパネル推奨に基づく次治療へ到達していた。13例の治療薬の内訳は、承認薬5例、治験薬7例、患者申出療養1例であった。SCLC患者では、次治療へ到達した患者はいなかった。 また、CGP検査でドライバー遺伝子変異が認められた患者のうち、10%以上の患者は次治療に到達できなかった。主な理由は、PS不良、治験の適格基準不適合、患者の意思(治験施設が遠方で不可など)であった。 がんゲノム情報管理センター(C-CAT)の調査では、CGP検査後に次治療へ到達した患者の割合は9.4%(エキスパートパネル推奨に基づく治療薬の提示は44.5%)と報告されている1)。これらのことから、高濱氏は今回の結果について、単施設での調査という限界は存在するものの、NSCLC患者において想定よりも高い割合でCGP検査が次治療に結びついたのではないかとまとめた。どのようにCGP検査を活用すべきか? 肺がんCGP検査は組織型を限定するべきであろうか? これについて、今回の調査で扁平上皮がんや大細胞神経内分泌がんでも次治療に到達した患者がいたこと、生検検体と手術検体では組織型が一致しない場合があること2)、西日本がん研究機構(WJOG)の調査(REVEAL試験)では非腺がんの8.5%にドライバー遺伝子変異を認めたことを例に挙げ、NSCLCについては腺がんだけでなく、非腺がんでもCGP検査の実施を検討する余地があると述べた。 また、マルチコンパニオン診断でドライバー遺伝子変異が認められた患者にCGP検査を行う意義はあるのか、考察されていた。分子標的薬に対する耐性変異の発見に有用な場合があること、コンパニオン診断では報告対象外のバリアントがCGP検査で発見されて次治療につながる可能性があることを高濱氏は指摘した。 とくに、EGFR遺伝子については、マルチ遺伝子検査で検出ができないがCGP検査で検出できるバリアントが多く存在する。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)でも、uncommon変異に対するアファチニブの有用性が報告されており(ACHILLES/TORG1834試験)3)、uncommon変異の検出も今後は重要となっていくものと思われる。いつ、誰にCGP検査を実施すべきか? 最後に、高濱氏はCGP検査をすべき患者と実施タイミングについて以下のとおりまとめた。<対象>・とくに腺がん、ドライバー遺伝子変異がみつかっていない患者・長期生存の患者(過去のバイオマーカー検査が不十分な可能性がある患者)・初回生検検体が不足していた患者、IHCでの検体が不十分な患者、腫瘍マーカーで腺がんの要素が考えられる患者は、非腺がんでも考慮<タイミング>・NGS検査が可能なクオリティー・量の生検検体を最初に採取し、CGP検査が出せるようにしておく・CGP検査には時間がかかるため、1次治療開始時から相談を開始し、標準治療終了「見込み」の時点で検査をオーダーする・がんゲノム医療が提供できる病院以外で治療を受けている患者は、CGP検査が受けられる病院への紹介が必要となるため、早くから主治医の先生と相談していくことが重要

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既治療の転移TN乳がんへのペムブロリズマブ、健康関連QOLへの影響(KEYNOTE-119)

 既治療の転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対してペムブロリズマブを化学療法と比較したKEYNOTE-119試験では、主要評価項目である全生存期間がペムブロリズマブは化学療法と同等であったが、ペムブロリズマブの治療効果はPD-L1発現レベルが高いほど大きかったことが報告されている。今回、本試験における健康関連QOLを解析した結果、臨床アウトカムと一致しており、PD-L1陽性スコア(CPS)10以上の患者の結果に左右されるようであると英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University of LondonのPeter Schmid氏らが報告した。European Journal of Cancer誌2023年12月号に掲載。 本試験は、対象患者をペムブロリズマブ群(3週ごと200mgを静脈内投与、最大35サイクル)と医師選択治療群に1対1で無作為に割り付けた。事前に規定された探索的評価項目は、健康関連QOL(EORTC QLQ-C30、QLQ-BR23)のベースラインからの変化と有用性(EQ-5D-3L)であった。悪化するまでの期間(time to deterioration:TTD)は、治療開始から最初に10点以上悪化するまでの期間とした。 主な結果は以下のとおり。・健康関連QOLはPD-L1 CPSが10以上の187例を解析した。・ベースラインから6週時点(主要解析時)までの変化は、QLQ-C30 GHS/QoL(最小二乗平均スコアの群間差:4.21、95%信頼区間:-1.38~9.80)、QLQ-C30の機能尺度(身体、役割、認知、社会)、QLQ-C30の症状尺度/項目(疲労、悪心/嘔吐、呼吸困難、食欲不振)、QLQ-BR23の症状尺度/項目(全身療法による副作用、脱毛による動揺)において、化学療法よりペムブロリズマブで良好だった。・TTD中央値は、QLQ-C30のQHS/QoL(4.3ヵ月vs.1.7ヵ月)、QLQ-C30の悪心/嘔吐(7.7ヵ月vs.4.8ヵ月)、QLQ-BR23の全身療法による副作用(6.1ヵ月vs.3.4ヵ月)において、化学療法よりペムブロリズマブのほうが長かった。・その他の健康関連QOLの評価項目は、治療による差がほとんど認められなかった。

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口腔癌診療ガイドライン 2023年版 第4版

4年ぶりの改訂で総説とCQを徹底的にブラッシュアップ!口腔癌診療に関わる医療者必携の診療ガイドライン、4年ぶりの改訂版出来。2019年版およびNCCNガイドラインを骨格とした診療アルゴリズムに添う内容に総説をブラッシュアップし、すべての診療指針を詳細に解説します。また、新たなクリニカルクエスチョン(CQ)も、GRADEアプローチをはじめ各種の方法でエビデンスを精密に解析しました。保険診療を基本とした口腔癌診療全体をカバーする、臨床でさらに使いやすくなった決定的最新版です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    口腔癌診療ガイドライン 2023年版 第4版定価4,620円(税込)判型B5判頁数252頁(図数:17枚)発行2023年11月編集口腔癌診療ガイドライン改訂合同委員会

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難問・奇問、古めの問題には要注意【医学生お悩み相談ラヂオ】第18回

動画解説第18回は、医学部6年生の男性から、過去問を完璧に覚えてしまったので、手を出さない方が良いとは聞く、更に昔の問題や難問に手を出していこうか悩んでいるというご相談。思わぬ落とし穴があることや試験への戦略を民谷先生が的確にアドバイスします。

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認知症の進行抑制に難聴治療がカギとなる可能性/難聴対策推進議員連盟

 国会議員で組織する難聴対策推進議員連盟が、「難聴対策で認知症の進行抑制-補聴器を用いた聴覚介入の有用性を」テーマに、メディアセミナーを開催した。セミナーでは、難聴と認知症の関係や難聴と社会的孤立や受傷リスクの増大、難聴患者の声などの講演が行われた。認知症のリスクが高いグループに聴覚機能介入は効果あり はじめにフランク・リン氏(ジョンズ・ホプキンス大学教授)が「認知症の進行抑制における聴覚介入の有用性-ACHIEVE試験の結果より-」をテーマに研究内容と今後の展望について説明した。 全世界で高齢化による認知症の患者が増加している。そんな中、中年期および老年期の難聴は、認知症の深刻なリスク因子であることが明らかになっている1)。 難聴になると、認知的負荷、脳への刺激減少、社会的孤立が進み、認知機能の低下や認知症をもたらすとされている。そこで、リン氏らの研究グループは、高齢者の加齢と認知機能の健康評価について研究するACHIEVE試験を行った2)。 本試験は、70~84歳の被験者977例について、認知症のリスクが高いグループ(ARICコホート)238例とリスクが低いグループ(De novoコホート)739例に分け、補聴器の装着とその教育についての介入を2018~22年に行い、その結果を解析したもの。 その結果、ARICコホートでは聴覚介入により3年後の全般的な認知機能の低下は48%抑制された。一方、De novoコホートでは効果は認められなかったが、その理由として認知機能の変化速度が遅いために3年の研究期間では効果観察が難しいことが推定された。  そのほか、全参加者で自己認識によるコミュニケーション能力の低下、孤独感、社会性にプラスの効果がみられた。 リン氏は、これらの結果を受けて、「米国では『聴力検査と聴覚介入への保険適用』『補聴器市場の発展とコスト削減促進の法規制』『啓発キャンペーンの実施』などを政府に求めていく」と展望を語った。難聴になると社会的孤立が進む つぎに内田 育恵氏(愛知医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座 教授)が、「認知症だけじゃない! 難聴を放っておいてはいけない理由」をテーマに、難聴と就労、社会交流、受傷リスクの増加など3つの視点でレクチャーを行った。 「難聴と就労・雇用」について、アメリカとノルウェーの研究から難聴があると低所得、失業、非雇用などと有意な関連があったこと、また、難聴が仕事のパフォーマンスと有意な関連があることを示した。その一方で、英国や日本、デンマーク、フランスなど8ヵ国の調査から補聴器を使用すると難聴による就業上のデメリットをサポートできるという肯定的な回答がいずれも8割を超えていたという結果も示した。 「難聴と社会的交流」について、アメリカとわが国の研究から、難聴者は社会的ネットワークのサイズが小さく、人との交流に不利であることが示された。そこで、内田氏らは全国7つの大学と共同し、高齢者で補聴器装着初心者の6ヵ月の追跡調査を行った(HA-ProA study)。本研究は、平均年齢76.9歳(±6.6歳)の補聴器初心者94例を対象に行い、その結果、補聴器の導入前後で周囲との社会性が有意に変化していた。たとえば、86歳男性では家族や友人、医師などとの心理的距離は近くなるなど補聴器導入後に変化を起こしていた3)。 「難聴と転倒・事故受傷リスク」について、米国の研究では難聴があると転倒での受傷頻度や事故受傷のリスクが高かったことが説明された。とくに重度難聴者では事故全般のオッズ比は1.9倍、運転関連では2.4倍になるという報告も示された4)。 その一方で、補聴器を使用するとアルツハイマー病・認知症のハザード比は0.824、うつ・不安症では0.894、負傷をともなう転倒では0.871となる報告もある5)と紹介し、難聴には早期からの対応が必要だとレクチャーを終えた。 その他、難聴により人工内耳術を受け、補聴器を使用している患者さんの声として周囲の負担を軽減できたこと、仕事を続けることができたことなどが患者自身から語られた。 最後に総括として山岨 達也氏(日本聴覚医学会 理事長/東京逓信病院 病院長)が、難聴対策の重要性として聴覚障害者と災害について触れた。災害の際、聴覚障碍者は情報弱者となるとして、宮城県の災害事例を示し、被災死亡率が1.03%であったのに対し、障害者の死亡率は2.06%と2倍だったことを説明した。 そして、課題として、補聴器使用の段階ではすでに認知症が進んでいる可能性があり、高齢者の難聴スクリーニングが行われていないことが問題と指摘。今後自治体を中心に高齢者の聴覚検査を行うべきだと提案した。

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ソーシャルメディアの閲覧が子どものスポーツ離れの一因に

 TikTokやInstagramなどのソーシャルメディアに投稿された写真には、体型が大幅に加工された非現実的なものが少なくない。70人の子どもを対象にした予備的な研究で、そのような理想化されたアスリートの写真を目にした子どもは、自分の体型がそのスポーツには適していないと思い込んでやめてしまう可能性のあることが示された。米Nemours小児病院のスポーツドクターであるCassidy M. Foley Davelaar氏らによるこの研究結果は、米国小児科学会(AAP)のNational Conference & Exhibition(AAP Experience 2023、10月20〜24日、米ワシントン)で発表された。 スポーツをすることは、子どもが心身ともに健全に育つ上で有用なことが知られている。しかし、現実には、70%の子どもが13歳までにスポーツをやめてしまう。また、14歳になるまでにスポーツをやめる女子の割合は男子の2倍以上といわれている。 この研究では、スポーツからの離脱に、ボディイメージ、ソーシャルメディア、ジェンダーと文化的なバイアスなどの因子が及ぼす影響について検討された。Davelaar氏らは、地域のスポーツ団体に所属するか、スポーツクリニックを受診した8〜18歳の子ども70人に調査を実施し、その回答の分析を行った。対象者には、現在スポーツを行っている者だけでなく、過去にスポーツを行っていた者も含まれていた。 その結果、調査参加者がスポーツをやめた理由として挙げたものの中で最も多かったのはコーチング(指導者との関係性の問題)であったが、そのほかの理由として、ソーシャルメディア閲覧を通じたボディイメージの低下とスポーツの競争性によるプレッシャーも多いことが明らかになった。競争性を理由にスポーツをやめた参加者の割合は、女子の方が男子よりも多かった(35.5%対10.3%)。また、ソーシャルメディアで目にした他者の競技能力と自分の能力を比較することとスポーツからの離脱との間には強い相関があることが示され、スクリーンタイム、運動、ボディイメージはスポーツからの離脱と統計学的に有意に関連することが明らかになった。例えば、自分の競技能力にあまり自信のない参加者は、自分自身のボディイメージをそのスポーツに「あまり向いていない」と評価していた。 この研究には関与していない、米ネイションワイド小児病院の小児心理学者であるErin McTiernan氏は、「子どもというものは、フィルターがかけられたり加工されたソーシャルメディア上の非現実的な顔や体型の写真を見て、気付かないうちに自分と比較してしまいがちだ。実生活での活動や人間関係が自尊心を育むのに役立っている子どもなら、その影響を払いのけることができるが、全ての子どもがそうできるわけではない」と話す。同氏は、「この研究は小規模ではあるが、ソーシャルメディアが原因で子どもが健康的な活動をやめてしまう頻度はどの程度なのかという重要な問題を提起した」との見方を示す。 McTiernan氏は、ティーンエイジャーの生活の中でソーシャルメディアの使用を禁じるのは現実的ではないが、時間制限やその他のルールを設けることはできると話す。同氏は、「何より重要なのは、スポーツやその他の活動、友人や家族と顔を合わせる時間など、子どもに実生活でたくさんの経験を積ませることだ」と言う。さらに、子どもがソーシャルメディア上で閲覧しているコンテンツや、それが子どもに抱かせる感情を親が把握する必要性についても強調している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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第71回 セフトリアキソンとランソプラゾール併用で死亡リスク上昇?

にわかに話題となった併用Unsplashより使用X(旧Twitter)で「セフトリアキソンとランソプラゾールを併用すると死亡リスクが上昇する」という話が注目を集めました。なぜバズったかというと、この組み合わせが結構臨床で多いからです。セフトリアキソンは、呼吸器系などで頻繁に使用されるβラクタム系抗菌薬です。もともと内服していたり、消化器系の症状があったり、ステロイドが併用されていたりすると、プロトンポンプ阻害薬(PPI)が併用されることが多くなります。代表的なPPIが、ランソプラゾールです。バズり元の論文は、カナダのオンタリオ州からの後ろ向き研究です1)。すでにセフトリアキソンとランソプラゾールの併用により、心電図上の補正QT間隔が延長することが示されているため、これが実臨床的にどう影響するかという検証になります。傾向スコア重み付け(IPTW法)を用いて解析したところ、ランソプラゾール群とその他のPPI群の調整後リスク差は、心室性不整脈または心停止で1.7%(95%信頼区間[CI]:1.1~2.3)、院内死亡で7.4%(95%CI:6.1~8.8)でした。NNH(number needed to harm)に換算すると、それぞれ58.8、13.5という結果でした(表)。表. セフトリアキソンとPPIの併用リスク(文献1より引用)結局どうする?セフトリアキソンとランソプラゾールがhERGカリウムチャネルを阻害してQT延長を起こす、というメカニズムとされています2)。これが心筋細胞の活動電位時間を規定する因子であることが知られています。今回の報告は、質の高いランダム化比較試験ではなく、後ろ向きコホート研究である点は解釈に注意が必要です。ランソプラゾールは各病院のフォーミュラリの推奨度が高い薬剤でもあるので、今後の動向には注意したいところです。参考文献・参考サイト1)Bai AD, et al. Ceftriaxone and the Risk of Ventricular Arrhythmia, Cardiac Arrest, and Death Among Patients Receiving Lansoprazole. JAMA Netw Open. 2023;6(10):e2339893.2)Lorberbaum T, et al. Coupling data mining and laboratory experiments to discover drug interactions causing QT prolongation. J Am Coll Cardiol. 2016;68(16):1756-1764.

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次の報酬改定は調剤基本料、地域支援体制加算が狙い撃ち?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第120回

朝晩が涼しくなり、年末の気配がしてきました。来年度の2024年度は診療報酬・調剤報酬改定の年です。今回の調剤報酬改定の目玉は、「調剤基本料と地域支援体制加算の見直し」になりそうです。次の改定にあたって、11月1日に財政制度等審議会・財政制度分科会が開催されました。国全体の予算のうち、社会保障にいくら充てられるかを財務省が発表したあと、それがこの財政制度等審議会で議論されます。その社会保障の資料から調剤基本料と地域支援体制加算の見直しがポイントだと読み取れますので、資料と議論をみていきましょう。まず、今回の改定について、「薬局に求められる機能を踏まえた調剤報酬の見直し」をすると記載されています。その理由として、「薬局数・薬剤師数が増えていること」「薬局は病院・診療所の近隣が大半であること」「薬剤師技術料がおおむね維持されていること」が挙げられています。なにやら、薬局を取り巻く状況はコロナ禍を除いておおむね良好であると捉えられているようです。そして、今後は「対人業務への真の意味でのシフトが必要」とされています。ここは重要なので抜粋して紹介します。【「対人業務」への真の意味でのシフトの必要性】かねてより厚生労働省は薬剤師について、医師に処方された薬の調製・交付などの「対物中心の業務」から、処方内容を確認し、医師への疑義照会などにより重複投薬・相互作用等の防止、患者への服薬指導など、「対人業務」へのシフトを目指してきた。対人業務については、医療機関等への情報提供や在宅訪問への関与のように伸びているものもある一方で、多剤・重複投薬に係る患者や医師との調整を評価する点数といった算定回数が少ないものも存在する。また、2022年度改定では対人業務の評価体系の見直しが行われたが、既存の点数の一部を表面上対人業務と整理するにとどまっている。結構厳しい評価ですが、前向きに解釈すれば、「まだまだできる!」と言ってくれている気もします。そして、これらの結果を踏まえ、今回の見直しは以下の2点としています。【調剤基本料の見直し】調剤基本料は、薬局の運営維持に要するコストを、処方せんの集中率と受付回数の側面を含めた効率性の観点も含め、経営の実態を踏まえて評価したもの。実際に集中率が高い薬局は備蓄している医薬品目数が少ない傾向にあり、その点においては集中率の低い薬局に比べ低コスト。なお、いわゆる敷地内薬局については、誘致が過熱するなどの課題が生じている。令和2年度診療報酬(調剤報酬)改定では、一部の処方せん集中率が高い薬局を調剤基本料2や調剤基本料3イの対象とする見直しを行っているが、その影響は極めて限定的であり、見直しは不十分である。予算執行調査によれば、処方せん集中率が高い薬局であっても、集中率が低く小規模な薬局と同様に調剤基本料1が算定されている。【地域支援体制加算の見直し】地域支援体制加算は、地域包括ケアシステムの中で地域医療に貢献する薬局を評価するもの。調剤基本料1の薬局を対象とした地域支援体制加算1・2は、それ以外の調剤基本料の薬局を対象とした地域支援体制加算3・4に比べ、実績に係る要件が大きく緩和されている。これらの結果を総合すると、調剤基本料1および地域支援体制加算1・2は狙い撃ち間違いなしと思われます。前回の2022年度の改定の際、地域支援体制加算が従来の一律38点から4つの区分に分かれ、地域支援体制加算1・2と地域支援体制加算3・4の点数と要件の違いに驚きましたが、この2年間はあくまでも猶予期間であり、その間に実績を積みましょう、ということだったのでしょう。これから2月あたりまで議論が続きますが、どのような実態や議論が出てくるのでしょうか。薬局や薬剤師への期待を感じられる議論になるといいなと思いつつ見守っていきます。

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研修医になると悪い大人が寄ってくる?【医学生お悩み相談ラヂオ】第17回

動画解説第17回は、医学部5年生の男性から医学部に伝わるある怖い噂話についてご相談。社会人1年目でもある研修医時代に気を付けておきたいウソのようなホントの怖い話を実体験とともにえど先生に教えていただきます。

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NSCLCへのニボルマブ+イピリムマブ±化学療法、実臨床の安全性・有効性は?(LIGHT-NING)/日本肺癌学会

 進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療として、2020年11月にニボルマブ+イピリムマブ±化学療法が保険適用となり、実臨床でも使用されている。また、国際共同第III相試験CheckMate 9LA試験、CheckMate 227試験の有効性の成績は、非常に少数例ではあるものの日本人集団が全体集団よりも良好な傾向にあった一方、Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現割合は、日本人集団が全体集団よりも高い傾向にあったことが報告されている。そこで、ニボルマブ+イピリムマブ+化学療法(CheckMate 9LAレジメン)、ニボルマブ+イピリムマブ(CheckMate 227レジメン)を使用した患者のリアルワールドデータを収集するLIGHT-NING試験が実施された。本試験の第3回中間解析の結果について、山口 哲平氏(愛知県がんセンター呼吸器内科部)が第64回日本肺癌学会学術集会で発表した。試験デザイン:後ろ向き観察研究対象:未治療の進行・再発NSCLC患者525例試験群1:ニボルマブ(360mgを3週ごと)+イピリムマブ(1mg/kgを6週ごと)+化学療法(3週ごと、2サイクル)(CM 9LA群:308例)試験群2:ニボルマブ(240mgを隔週または360mgを3週ごと)+イピリムマブ(1mg/kgを6週ごと)(CM 227群:217例)評価項目:[主要評価項目]治療状況、全生存期間(OS)、Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)、治療中止に至ったTRAEなど[副次評価項目]irAEの発現時期とirAEに対する治療内容および症状改善までの期間、irAEの有効性への影響など 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は70歳、女性が18.7%、PS 0~1/2/3以上が89.1%/6.5%/1.5%、扁平上皮がんが27.0%、PD-L1発現状況が1%未満/1~49%/50%以上/不明は46.5%/34.7%/9.1%/9.7%であった。・治療別にみた年齢中央値はCM 9LA群が67歳、CM 227群が73歳、75歳以上の割合はそれぞれ11.7%、40.1%であり、高齢の患者では化学療法を含まないニボルマブ+イピリムマブが多く選択される傾向にあった。・解析時点において、イピリムマブのみを中止した患者の割合は2.5%、ニボルマブとイピリムマブの両剤を中止した患者の割合は85.3%で、イピリムマブ中止の内訳は病勢進行が43.6%、有害事象が38.3%、その他が5.9%であった。・Grade3/4のTRAEは40.2%(CM 9LA群:49.7%、CM 227群:26.7%)に発現し、いずれかの薬剤の中止に至ったTRAEは37.9%(それぞれ41.9%、32.3%)に発現した。・治療関連死は3.4%(CM 9LA群:3.6%[11例]、CM 227群:3.2%[7例])に認められ、間質性肺疾患(9例)が最も多かった。・OS中央値は、CM 9LA群が24.3ヵ月、CM 227群が21.9ヵ月であり、1年OS率はそれぞれ69.1%、62.8%であった。・無増悪生存期間(PFS)中央値は、CM 9LA群が6.4ヵ月、CM 227群が6.2ヵ月であり、1年PFS率はそれぞれ32.2%、37.5%であった。・医師判定に基づく奏効率は、39.6%(CM 9LA群:40.7%、CM 227群:37.8%)であった。 本結果について、山口氏は「安全性に関する新たなシグナルは観察されず、安全性プロファイルはCheckMate 9LA、227試験と同様であった。治療関連死の原因としては肺臓炎関連が多かった。有効性に関して、CM 9LA群とCM 227群は同様の結果であり、PD-L1発現割合によっても治療効果に大きな差はみられなかった」とまとめた。

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「産業医資格」、超人気の取得講座を受けるには…【実践!産業医のしごと】

産業医を始めるのに必要な資格とは産業医を始めるには、産業医の資格が必要です。最も知られているのは「日本医師会認定産業医」の資格ですが、産業医資格の取得にはそのほかにもいくつかの方法があります。産業医は、医師であり以下のいずれかの要件を備えた者であればよいとされています。産業医の要件(1)厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行う研修を修了した者(2)産業医の養成課程を設置している産業医科大学その他の大学で、厚生労働大臣が指定するものにおいて当該過程を修めて卒業し、その大学が行う実習を履修した者(3)労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者(4)大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれらの経験者この要件だけを見てもわかりにくいですね。結論から言えば、臨床を中心に働いている医師の方が産業医として働きたいと考えたら、日本医師会や産業医科大学が行う研修や講座を受けることをお勧めします。労働衛生コンサルタントは、実務経験を問われることが多く、産業医経験なしで挑むにはハードルが高いでしょう。数年の実務を経て受験するのがよいと思います。産業医資格を取得できる研修・講座について日々の仕事に忙しい医師にとって、自由に休みを取ることは難しく、産業医資格の取得では「研修のためのスケジュールを確保できるか」が一番の重要なポイントです。産業医研修の受講の仕方には、2つのパターンがあります。1)集中研修合宿のような集中研修で、トータル6~7日間(連続または数日間×複数回の分割)に産業医の資格を取得する方法です。短期間で取得できることから、夏休みなどをうまく利用し連続して研修を受ける医師が多いようです。そのようなスケジュールの確保が難しければ、数時間~1日など細かく分けて研修を受講し、必要な単位数を取得していきます。最近では産業医の人気も高まってきており、受講の募集が早期に締め切られてしまう傾向にあるようです。とくに、短期間で集中的に産業医資格を取得する研修は、人気チケットのように、参加枠を確保できるのかが一番の勝負となっています。以下に、短期間で取得できる集中研修を主催している施設を挙げました。スケジュールのめどが付いたら、募集開始初日に申し込むのがよいでしょう。産業医資格の集中研修を行っている施設一覧産業医科大学11月と2月に連続6日間(2023年度の場合)東京医科歯科大学8月頃に連続7日間帝京大学夏期(3日間)、冬期(4日間)の計7日間獨協医科大学8~9月の週末の合計6日間東北大学11月(2日間)、12月(2日間)、1月(2日間)の計6日間岡山大学7月(3日間)、9月(3日間)の計6日間2)産業医学基本講座集中研修以外では、「産業医学基本講座」という、東京と北九州で行われる産業医を体系的かつ集中的に講義と実習で学べる講座があります。たとえば、東京での開講は6~10月の約5ヵ月で、火・木曜日の夜間および隔週土曜日に行われます。受講を修了すると産業医資格の取得はもちろん、労働衛生コンサルタントの筆記試験の免除など多くのメリットがあるため、本気で産業医として働くことを考えている方にはこちらをお勧めします。産業医研修・講座の探し方についてここまでに紹介したように、産業医研修・講座はさまざまな時期や場所で行われるため、目的とする研修を効率よく探すことも重要です。以下のような情報源から受けたい研修を探し、スケジュールを確認して申し込みを行うとよいでしょう。1)日本医師会サイト(研修会検索)日本医師会のホームページから、産業医研修に関する情報を得られます。都道府県や研修種別で検索できるので便利です。2)都道府県医師会サイト医師会の研修会日程は、各都道府県の医師会サイトに記載されています。東京都は、東京都医師会のサイトで詳細を確認できます。3)その他産業医学振興財団や各都道府県の産業保健総合支援センターのサイトでも、産業医研修が案内されています。産業医学振興財団では、メールマガジンを使って財団が開催する産業医研修をタイムリーに知らせてくれます。今回は、産業医資格の取得の仕方について解説しました。先日、日本医師会認定の産業医研修を受けたことを証明する「単位シール」が、フリマサイトで販売されていたことがニュースになりました。産業医研修は、産業医に求められる幅広い知識を効率的に学べる貴重な機会であり、残念な話です。企業の産業医への期待値は高く、産業医の重要性と役割は年々増しています。産業医資格さえあればよかった時代は昔のこと。学んだことは、今後の実務にも役立つものばかりですので、最大限に研修を活用して、価値の高い産業医を目指しましょう。参考産業医について~その役割を知ってもらうために~/厚生労働省

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