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妊娠初期の抗てんかん薬カルバマゼピン、二分脊椎症と関連

妊娠第一トリメスターにおける抗てんかん薬カルバマゼピン(商品名:テグレトールなど)服用と先天異常との関連について、バルプロ酸(商品名:デパケンなど)よりも低リスクではあったが、二分脊椎症が特異であると認められることが、システマティックレビュー、ケースコントール試験の結果、示された。オランダ・フローニンゲン大学薬学部門のJanneke Jentink氏らによる。カルバマゼピンは、妊娠可能な欧州女性において最も一般的に服用されている。これまでその先天異常との関連を示唆する試験は複数あるが、個々の試験は小規模でリスク検出力が統計的に不十分なものであった。BMJ誌2010年12月11日号(オンライン版2010年12月2日号)掲載より。文献レビューと380万分娩登録ベースのEUROCATデータを用いて解析試験は、妊娠第一トリメスターにおけるカルバマゼピン曝露と特異的な主要先天異常との関連を同定することを目的とし、Jentink氏らは、これまで公表されたすべてのコホート試験で試験目的のキーとなるインディケーターを同定し、住民ベースのケースコントロール試験で、そのインディケーターを検証した。レビューは、PubMed、Web of Science、Embaseを使って文献検索を行うとともに、1995~2005年に欧州19の先天異常レジストリから登録されたデータを含むEUROCAT Antiepileptic Study Databaseのデータも解析に含んだ。被験者は、文献レビューからは8試験のカルバマゼピン単独療法曝露2,680例、EUROCATからは先天異常が報告登録された9万8,075例(分娩全体数は380万例)であった。主要評価項目は、妊娠第一トリメスターでのカルバマゼピン曝露後の主要先天異常の全出現率、文献レビューで規定した5つの先天異常のタイプの症例群とコントロール群の2群(非染色体症候群と染色体症候群)との比較によるオッズ比であった。バルプロ酸よりもリスクは低い結果、文献レビューでの全出現率は3.3%(95%信頼区間:2.7~4.2)であった。先天異常登録例では131例の胎児がカルバマゼピンに曝露していた。先天異常のうち二分脊椎症だけが、カルバマゼピン単独療法群との有意な関連が認められた(非抗てんかん薬群との比較によるオッズ比:2.6、95%信頼区間:1.2~5.3)。しかし、そのリスクはバルプロ酸と比べると低かった(オッズ比:0.2、95%信頼区間:0.1~0.6)。その他の先天異常についてはエビデンスが得られなかった。総肺静脈還流異常症はカルバマゼピン単独療法群では0例であり、唇裂(口唇裂有無含む)オッズ比は0.2(95%信頼区間:0.0~1.3)、横隔膜ヘルニアは同0.9(同:0.1~6.6)、尿道下裂は同0.7(同:0.3~1.6)であった(オッズ比はすべて非てんかん薬群との比較)。さらに探索的解析の結果では、単心室欠損症と房室中隔欠損症のリスクが高いことは示された。Jentink氏は、「バルプロ酸よりもリスクは低いが、カルバマゼピンの催奇形性として相対的に二分脊椎症が特異である」と結論。また、データセットは大規模であったが、複数の主要な先天異常のリスク検出力は不十分であったとも述べている。

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死亡率が最も低いのはBMI値20~25未満:白人成人146万人の解析

これまで、BMI値30.0以上の肥満と定義される人では、心血管疾患や脳卒中、その他特異的がんによる死亡率が増大することが立証されていたが、全死因死亡率との関連については明らかにされていなかった。そこで米国立がん研究所 疫学・遺伝学部門のAmy Berrington de Gonzalez氏ら研究グループは、19の前向き試験に参加した白人成人146万人のデータを集め解析した。NEJM誌2010年12月2日号掲載より。白人成人146万人のデータを解析解析対象となった19の試験は、米国立がん研究所Cohort Consortiumに登録された前向き試験で、1970年以後を基線とし、追跡期間5年以上、各試験の被験者死亡に1,000例以上の非ヒスパニック系白人を含むものだった。基線での、身長、体重、喫煙データがあり、既往歴(メラノーマ以外のがん、心疾患)、飲酒、教育レベル、婚姻状況、身体活動に関する情報があった。解析された被験者は、19~84歳(中央値58歳)の白人成人146万人分のデータで、年齢、参加していた研究、身体活動、飲酒、教育、婚姻状況で補正後、Cox回帰分析を用いて、BMI値と全死因死亡率との関連についてのハザード比と95%信頼区間を推定した。BMI値と全死因死亡率はJ字型曲線の関連被験者の基線におけるBMI中央値は、26.2だった。追跡期間中央値10年(5~28年)の間に、16万87例が死亡していた。非喫煙者の健常者についてみたところ、BMI値と全死因死亡率とにはJ字型曲線の関連が認められた。BMI値22.5~24.9階層群を基準とした、女性の、BMI値とのハザード比(95%信頼区間)は以下であった。 ・15.0~18.4階層群 1.47(1.33~1.62)・18.5~19.9階層群 1.14(1.07~1.22)・20.0~22.4階層群 1.00(0.96~1.04)・25.0~29.9階層群 1.13(1.09~1.17)・30.0~34.9階層群 1.44(1.38~1.50)・35.0~39.9階層群 1.88(1.77~2.00)・40.0~49.9階層群 2.51(2.30~2.73)男性のハザード比も女性と同等だった。また20.0未満のハザード比は、追跡期間が長期となるにつれ小さくなっていた。Gonzalez氏は、「白人成人では、過体重と肥満、そしておそらく低体重も、全死因死亡率の上昇と関連する。概して全死因死亡率は、BMI値20.0~24.9階層群で最も低い」と結論している。なお、米国では成人の3分の2が、その他先進諸国では半数以上が、過体重もしくは肥満であるという。(武藤まき:医療ライター)

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低リスク前立腺がん患者には積極的経過観察が妥当、選択は個々人の意思で

65歳で前立腺がんの診断を受けた仮定的コホートで、選択した治療の違いによるQOL調整後の期待余命(Quality-adjusted life expectancy ;QALE)について検討した意思決定解析の結果、積極的経過観察を選択した患者群が、他の放射線治療や手術などを選択した患者群に比べアウトカムは良好で、積極的経過観察が妥当な治療戦略であることが示された。米国ハーバード大学医学部ダナファーバーがん研究所のJulia H. Hayes氏らの報告によるもので、「治療か積極的経過観察かの選択は個々人が中心的に担うもの」と結論している。JAMA誌2010年12月1日号掲載より。仮想患者のPSA値は10ng/mL未満、病期分類T2a以下、グリーソン・スコア6以下本研究の背景には、米国では、2009年には前立腺がん患者が19万2,000人に上り、そのうち低リスク患者が70%を占め、90%以上が初期治療として手術や放射線治療を受けるものの、その大半が一つ以上の副作用を有するとの報告を踏まえ、「PSAスクリーニングを受けた人の最大60%で前立腺がんが診断される時代に、治療を義務づけることはないであろう」という著者らの提起がある。しかし、低リスク前立腺がんに対する積極的経過観察と、放射線治療や外科治療について、その長期アウトカムや生活の質(QOL)に与える影響を分析した試験はほとんどなかった。研究グループは、65歳で初めて診断を受けた、臨床的限局性の低リスク前立腺がんの仮想コホートについて、過去の研究結果に基づくシミュレーション・モデルを作り、意思決定解析を行った。仮想患者のPSA値は10ng/mL未満、病期分類T2a以下、グリーソン・スコア6以下の患者とされた。患者の選択肢は、近接照射療法、強度変調放射線治療(IMRT)、前立腺全摘除術、または積極的経過観察だった。積極的経過観察では、定期的な直腸内診、PSA値検査と、生検(診断の1年後、それ以降は3年ごと)を行い、グリーソン・スコアが7以上や、その他疾患の進行が認められた場合や、患者の選択意思が示された場合に処置が行われた。主要評価項目は、それぞれの選択肢におけるQALEだった。QALEは積極的経過観察が最高、次いで近接照射療法、最低は前立腺全摘除術結果、QALEが最高だったのは積極的経過観察群で、質調整後の生存年数は11.07 QALYだった。次いで、近接照射療法の10.57 QALY、IMRTの10.51 QALY、前立腺全摘除術の10.23 QALYだった。前立腺がんでの死亡の相対リスクは、診断時にいずれかの治療をした場合が、積極的経過観察群と比べ0.6倍と低かった。それにもかかわらず、QALEは積極的経過観察群が最高のままだった。QALE増加、最適治療は、個々人が積極的経過観察かいずれかの治療を行うかによっていることが認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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教授 鈴木康夫 先生「最先端の治療で難病患者を支える、グローバルな医療現場」

1981年滋賀医科大学卒業後、千葉大学医学部第二内科入局。アイルランド・トリニティ大学留学。2003年東邦大学医学部付属佐倉病院内科助教授、2004年同院消化器センター長、2006年より現職。日本消化器内視鏡学会認定指導医、日本消化器病学会認定専門医。難病「潰瘍性大腸炎」「クローン病」が日本で急増中「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」は、日本ではまだ歴史が浅い病気で、元々は欧米諸国の白色人種に多いことで知られています。特に北欧・西欧・北米地域で広がりをみせており、クローン病は近代化された地域の人たちに多く発症している病気であると認知されています。しかし、今、日本でこれら両疾患が急増しています。当院の診療科では約800人以上の患者さんを診療しており、外来には多い時で1日約100人位の患者さんが来院します。患者さんの絶対数は欧米諸国に比べまだまだ少ないのですが、増加率が他の国に比べ高いのが特徴です。私は日本人を取り巻く食生活、ライフスタイル、衛生環境などの変化が影響していると考えています。我々が最近注目している発症要因の一つに、腸内細菌のバランスがあります。まだ研究している段階ですが、腸というのは実は複雑な臓器で腸内の各種要因、特に細菌叢のバランスが重要で、それらは大脳へも強く影響している可能性もあることがわかってきました。最近話題にされるメタボリックシンドロームですが、その病因にも腸が関係している可能性があり、腸の働きがクローズアップされています。私たち人間の体は腸の働きによって健康を保っているとも考えられているのです。よって、我々は「潰瘍性大腸炎」「クローン病」と、腸内細菌叢のバランスとの因果関係に注目しているのです。難病相談、講演活動の日々が臨床開発のヒントに十数年前まで、千葉県には「潰瘍性大腸炎」「クローン病」を専門に診察する医師がいなかったこともあり、現在では急増する患者さんに対応が追いつかない医療機関が多くあります。また、最近では治療方法の選択肢が多くなったため、治療の質を上げてもらうために、それぞれの治療成績、治療戦略、対処方法などについて講演して回っている状況です。また、講演活動とともに地域での難病相談にも20年近く携わっています。県内全域を一人で回っていたこともありました。講演・難病相談とともに年々回数が増加していますが、今では後輩の専門医が参加してくれるようになり、手分けして対応できるようになりました。悩み相談に応じることにより、多くのことを学ぶことができました。病院の外来では、多い時で1日100人の患者さんを診察しなければならないため、残念ながら一人の患者さんに多くの時間を割くことができません。一方、難病相談では一人ひとりに時間を割けるため、様々なことを知ることができます。その中から研究開発のヒントを得たことは数多く、まさに臨床は研究の基礎でもありますね。患者さんには情報を開示して治療の道を迷わせない「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」はとても手ごわく、またきめ細かい診断が必要です。そのため私は内視鏡を用いた検査から診断まで、一貫して自分で行うようにしています。その他はチームで治療にあたることになりますが、良質のチーム医療を行うためにはスタッフ同士の意思統一が必要不可欠です。また、最近ではインターネット上に疾患の情報が氾濫しているため、疾患や治療方法に対する誤った認識をもたらしているようです。そのため、私は医師をはじめ、看護師、薬剤師、栄養士と患者さんたちが一堂に会する会合をもち、栄養・薬剤・治療などに関する正確な情報開示を行い、当院での治療方針を説明し共有してもらうようにしています。スタッフの意思を統一し、また患者さんの気持ちをきちんと落ち着かせるためにも、このような会合を大切にしています。海外研究留学でクローン病患者と再度出会ったことで私が入局した頃は、海外留学をして欧米から学ぶというスタイルがほとんどでした。私はEPAの抗炎症効果に関する共同研究をすることになり、アイルランドに研究留学しました。研修医として初めての受け持ち患者さんがクローン病だったのですが、不思議な御縁で、留学でクローン病とまた出会うことになりました。留学するまで、クローン病はまだまだ日本では珍しい病気でしたのであまり意識したことはありませんでした。また、それまでの私は、当時の先端医療をリードしていた内視鏡が好きで、特にがん領域での内視鏡治療に携わっていきたいとの強い思いがありました。しかし、この留学で2年間内視鏡から離れたこと、多くのクローン病の患者さんたちに出会い、おそらくこれから日本でも増加する病気の一つになるだろうと思うようになったことから、「潰瘍性大腸炎」「クローン病」の臨床研究をしていきたいと考えるようになりました。そして帰国後は、困っている難病患者さんを前にして留学での経験を生かして貢献したいという気持ちが日に日に大きくなり、今に至っています。今の若い人たちは海外留学を希望する人が少ないと聞いていますが、自分の専門分野がどこで一番臨床研究されているかと考えると、やはり留学は重要な位置を占めるのではないでしょうか。そういった意味でも後輩たちに留学を勧めています。海外の生活は苦労が多いのですが、その苦労が人生のプラスにもなりその後の医師としてのキャリアに大いに役立つと思います。若い人にはもっと外へ出かけ、知識や技術を磨くきっかけにして欲しいと考えています。グローバルに活躍できる医療現場がここにはある今現在、当院では世界同時進行で、新薬の臨床製薬治験を行っています。病院のある佐倉市は都市部からは離れていますが、この地で欧米諸国と肩を並べられる、最先端の診療体制を構築することができたと自負しております。私の場合、身近にこの分野の先輩・指導者はいませんでした。そのため積極的に外へ出かけていき専門医の先生たちとコミュニケーションを取る、海外に出向き最新治療の情報を入手するなどして勉強することが多かったです。特に難病の専門分野を極めるにはこれが一番大事だと私は思います。医師としてこの分野で頑張るという強い思い、志は高く持ち、視線は患者さんと同じでいるというのが私のいつも信条としていることです。患者さんと同じ目線で病気を診ていると、わからなかったこともみえてくるものです。医師は自分の思い込みだけで診療をしていては駄目ですね。困っている患者さんは大勢います。私が若い時は欧米からただ学ぶだけでしたが、今の日本は他国をリードすることができると思います。目の前で困っている患者さんのためにも、今まで以上に世界に先駆けた臨床研究を行って欲しいと思うのです。最近、診療など上手くこなせる若い医師は多いのですが、一歩踏み出していける人が少ないと感じています。難病は先がみえず、特にこの病気は再発を繰り返す特徴があり、患者さんにとっては一生を通じて苦痛が伴いますから、患者さんの情報をしっかり把握できることが望ましいでしょうね。私はチームスタッフや若い医師に、「私たちの治療は世界で肩を並べられるものである。自信を持つよう」と常々言い聞かせています。佐倉から世界へ最新治療・治験の発信を行っており、これからもここ佐倉から発信していくつもりです。これからの医療を創っていく若い医師たちには、どんな場所でも、どんな環境でも、自信を持って世界に通じる医療創りに挑戦していただきたいと思います。質問と回答を公開中!

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教授 鈴木康夫先生の答え

気分転換方法について潰瘍性大腸炎やクローン病などは、ある意味患者さんと一生の付き合いかと思います。私も慢性疾患を診ていますが、患者、家族とのコミュニケーション疲れから、医局を去る後輩もいます。先生のところでは、息抜きといいますか、コミュニケーション疲れを取り除くような気分転換について、何か取り組まれているでしょうか?もし極秘のノウハウ等あれば是非ご教示ください!残念ながら特別なノウハウはありませんし、特別な息抜き法もありません。確かに慢性疾患患者さん特有の気質があり、外来診療時間は長く神経を使う度合いも多いのはそれぞれ担当医の辛いところかもしれません。しかし、教科書や論文では判らない知識を個々の患者さんとの直接的対話や診療で初めて会得できることが未だ多くあるのも炎症性腸疾患の特徴ではないかと感じています。患者さんは日々の辛い思いを主治医に吐き出した時に初めて救われるのだ、と自分を納得させ、目の前の患者さんこそが生きた教材と知識の源だ、と思い日々の診療を楽しんでください。幸い、炎症性腸疾患は治療法が適切であれば患者さんは明らかに改善し満足いたします。患者さんが寛解し喜ぶ瞬間こそが我々主治医にとっての本当の息抜きを与えてくれる瞬間なのです。講演会の予定について是非先生の講演会に参加させていただきたいのですが、どこかに講演会のスケジュールなど掲載されているのでしょうか?ホームページなどがあれば教えていただきたく思います。宜しくお願いします。残念ながら、私個人の講演会のスケジュールをまとめてホームページでは掲載してはおりません。ただし、各市町村保健所が主催する講演会に関しては、各市町村の難病ホームページで開示している筈ですので参考にしてください。また、炎症性腸疾患に関するサイトがいくつか設立運営されており、そのようなサイト上に講演会の日程などが開示される場合もあるかもしれませんので、チェックして参考にしてください。患者・家族対応慢性疾患、特に難病だと、診断結果を患者・家族へ伝える瞬間が特に重要かと思います。先生が診断結果を伝えるときに気をつけていることや工夫していることをご教示ください。突然、難病と言い出すのは大変な誤りです。炎症性腸疾患患者さんに対して、いきなり難病ですと切り出すことは絶対にしてはならないことです。まずは病気の特徴や一般的な長期経過、そして治療法の説明をすること、個々の患者さんによって病状は様々であることを告げることも必要です。そして最終的には、現状では病因が不明であり完治が難しいという意味で、俗にいう難病に指定されている、ということを説明するべきです。難病といえども、以前に比べ格段に治療法は進歩し完治に近い治癒も可能であることも教えてあげる必要があります。後期研修について後期研修医は募集しておりますでしょうか?卒後4年目、肛門科にいますが、炎症性腸疾患の患者を多くみるようになり、興味を持っています。できれば専門としたいと考えております。情報あれば教えていただきたく存じます。当科では後期研修医制度を設け、積極的な受け入れ態勢を十分に準備しております。詳細は佐倉病院内科のホームページを参考にしてください。判りにくい場合には、ご連絡いただければいつでも対応いたしますし、参考のために来院され見学することや体験学習も可能です。 研究について現在行われている研究について教えてください。ホームページには、C型慢性肝疾患の発表資料は掲載されていますが、それ以外の情報がありません。他に何の研究を行っているのか教えてください。(医学部5年)炎症性腸疾患に関しては、基礎研究・臨床研究を含め多くの様々な研究を行なっています。その主な研究は:遺伝子工学技術を応用した細菌分析法により潰瘍性大腸炎・クローン病患者における腸内細菌叢変動の分析、その研究法を応用したprobioticsとsynbioticsの治療効果の解析、顆粒球吸着除去療法における有効性発現機序の解明、潰瘍性大腸炎病態形成と顆粒球機能異常の関連性、抗TNF-α抗体測定キットの開発、炎症性腸疾患患者抗TNF-α抗体製剤二次無効発現機序の解明、クローン病におけるre-set therapyの開発、免疫抑制剤至適投与法の開発、サイトメガロウイルス腸炎の診断と治療、新規内視鏡画像診断法の開発などを実施しています。その他、肝臓癌・膵臓癌に対する多剤併用カクテル療法の開発、肝炎・肝硬変に対するインターフェロン療法の開発なども行なっています。小児潰瘍性大腸炎記事拝見しました。毎日100人ほどの診察、恐れ入ります。外来患者のうち、小児潰瘍性大腸炎の患者さんはどの位いるのでしょうか?最近は小児潰瘍性大腸炎が増えてきたと聞くのですが、やはり増加傾向にあるのでしょうか?実際に診療されている先生の感覚値をお聞きしたく思います。私自身は内科医で小児科が専門ではありませんので、特段に潰瘍性大腸炎小児患者を多く診ているわけではありません。しかし、近隣の病院から小学生高学年以上の中学生・高校生で潰瘍性大腸炎・クローン病と診断された場合に私のところへ紹介されてくる場合が多いようです。最近では、以前に比べそのような若年者潰瘍性大腸炎患者さんの紹介率が増加傾向にあると感じています。以前には詳細な統計が存在していなかったようですが、最近炎症性腸疾患を専門にしている小児科の先生達が集計した全国統計では、小児潰瘍性大腸炎患者数は近年増加傾向にあり、重症化・難治化しやすい特徴があると報告されています。潰瘍性大腸炎罹患後の瘢痕症例は24歳男性。12年前潰瘍性大腸炎に罹患し、ステロイドパルスなどの治療を受け、現在は緩解。内服薬も必要としない。2年前のCFで、罹患時の影響か(?)5cmくらいの線状の瘢痕を認めた。この部分は将来、悪性化の可能性が他の部分に較べて高くなるのでしょうか。よろしくお願い致します。重症の潰瘍性大腸炎では、治癒寛解後も強い炎症部位に一致して瘢痕が残る場合があります。そのような部位が完全に瘢痕化したままで再燃を生じない限り、癌化の心配は通常はありません。潰瘍性大腸炎に関連した大腸癌の発生は、慢性的炎症が持続する結果として癌化を生じることが推測されています。従って、瘢痕化した部位は通常炎症が全く消失していますので特段に癌化の恐れはありません。潰瘍性大腸炎と他の腸炎との鑑別、治療方針について30代女性が粘血便で外来受診し、大腸内視鏡検査実施、所見としては盲腸と直腸にやや易出血性の発赤した粘膜があり、数か所を生検しました。病理診断は潰瘍性大腸炎の寛解期に矛盾しないがUCとの確定診断はできずとのことでした。ペンタサの投与で患者さんの症状は一旦軽減しましたが、ペンタサを中止して半年後くらいから、時に粘血便があり、なんとなく腹がすっきりしないとの訴えです。下痢はなく著名な下血はありません。再度CF生検でもUCの寛解期に矛盾せずとの診断です。現在、ペンタサを再度処方して様子を見ております。特に悪化するわけではありませんが、すっきりと良くなるわけでもなく、診断もはっきりせず、対応に苦慮しております。今後どのような方針あるいは検査、治療で臨めばよいのかご教示いただけるとありがたくよろしくお願いいします。実際の大腸内視鏡写真がないので明確なお答えは困難ですが、文面から推測すると直腸炎型潰瘍性大腸炎と診断されます。直腸炎型では盲腸にも同時に炎症所見を伴うことがよく観察されますので、潰瘍性大腸炎としては矛盾がありません。潰瘍性大腸炎では多くの患者さんが寛解後も再燃を繰り返しますので、症状が改善しても直ぐに服用は中止せずそのまま継続することが望まれます。直腸炎型でペンタサ服用によっても改善を認めない場合には、ペンタサ注腸剤の併用をお勧めいたします。ペンタサ剤の特性として病変部位に直接到達作用する必要があり、直腸炎型では注腸剤によるペンタサあるいはステロイド剤の直接的注入法が内服に比べ副作用が少なく有効性をさらに発揮してくれる可能性があります。潰瘍性大腸炎の食事私は管理栄養士です。先日潰瘍性大腸炎の患者さんから「生寿司を食べたい」の質問を受けました。潰瘍性大腸炎の症状にもよると思いますが時節がらノロウィルスの流行している時期であり、ノロウィルスに感染し下痢をすることは潰瘍性大腸炎にとって好ましくないと考えます。果物、大根おろし等は生で食べてもおかずになるものは原則加熱して食べることが必要と考えますがいかがでしょうか。アドバイスを頂きたく投稿しました。潰瘍性大腸炎の患者さんが、ウイルス・細菌感染による各種感染性腸炎や抗生剤・消炎鎮痛剤服用に伴う薬剤性腸炎の発症に注意することは、病状の再燃予防には重要であります。しかし、通常の感染予防・衛生管理を怠らなければ必要以上に過剰な食事管理をすることが医学的な意味を持つとは思えません。本来生で食することが可能である、新鮮で衛生的な食材であれば、加熱など必要ないと考えます。個々の患者・個々の病状に応じて適切な食事指導を実施すべきであり、科学的根拠のない画一的食事指導は人生の大事な要素である食の楽しみを奪いストレスを誘引してむしろマイナスになることを肝に銘じるべきです。潰瘍性大腸炎の合併症について潰瘍性大腸炎を発症3ヶ月で大腸の全摘出を受けた患者さん術後、膵炎を発症されたとのこと医師からは潰瘍性大腸炎の合併症で免疫性の膵炎だろうと診断されたとのことです現在は症状も治まっており、ときおりある自覚症状にフオイパンの服用をしているとのことでしたただ、膵炎が悪化した場合はステロイドを再開する必要がでてくるかもしれないと医師より言われているそうですせっかく大腸を全摘出しステロイドを中止することができたのにまた服用しなければならないのかと心配されています大腸を全摘出しても合併症は軽減されないのでしょうかまた、膵炎が悪化した場合の治療方法について伺えれば幸いですよろしくお願いいたします通常は膵炎を含めた様々な潰瘍性大腸炎の腸管外合併症は大腸全摘術によって改善するものですが、稀に大腸全摘術後に発症する場合もあります。その様な場合は、発現している症状・臓器に応じ限定した治療法も考慮されますが一般的にはステロイド剤を中心にした全身的治療薬の投与が必要となってきます。そして、ステロイド剤投与を避けたい場合には代わりに免疫抑制剤・免疫調節薬投与が有効性を発揮します。今回の場合、仮にフォイパンを服用しているにも関わらず自己免疫性膵炎が悪化しステロイド剤投与を避けたいとお考えであれば、主治医と相談し免疫抑制剤治療をご考慮してはいかがでしょうか。総括炎症性腸疾患は多彩な病像を形成する複雑な疾患群です。画一的にならず個々の患者さんの病状・病態を的確に判断し、適切な判断に基づいたきめ細かな医療の実践が望まれます。最近、炎症性腸疾患に関する情報が氾濫し一部には不適切な情報も含まれて患者さんに誤解を生んでいます。炎症性腸疾患における診療レベルは近年、著しいスピードで進化しています。我々主治医は勿論、薬剤師・看護師や栄養士といった患者さんに関わる全ての医療人は、科学的根拠に基づいた正確な情報を患者さんに対して迅速に適切に開示する努力を怠ってはなりません。教授 鈴木康夫 先生「最先端の治療で難病患者を支える、グローバルな医療現場」

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会員の皆様方へお知らせ NPO法人 日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会のご案内

NPO法人 日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会とは近年、産科、小児科などの医師不足、診療科の偏在化が問題視されていますが、その影で外科崩壊も進んでいます。日本は将来、外科医が激減し、手術を受けられない患者さんがあふれるという事態に陥りかねません。2009年に発足されたNPO法人日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会(略称:若手外科系医師を増やす会)は、外科系医師の待遇改善と志望者の増加を目指し、「教育」「広報」「行政対応」の3本柱を軸に日々活動しています。詳細は日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会ホームページへ代表者のご挨拶近年、医師の偏在が社会的問題として取り上げられ、日本学術会議や日本医師会からも声明や要望が出されています。医師・診療科の偏在に対して厚労省は医学部定員の増加などの対応をしていますが、現状を改善するためには十分とは言えません。特に医学生は3K(きつい、汚い、厳しい)の科には進まず、現在では3無し(当直がない、救急がない、癌がない)の科に進路を進めています。その結果、小児科、産科のみならず外科医の希望者も減少し、同時に政府の医療費削減等は外科医の労働環境を悪化させて、リスクの高い外科を選択しない事に拍車をかけているのです。この状況では何十年先に本邦に於いて、癌、心臓および移植手術等が受けられなくなる日が来るかもしれません。我々は日本から外科医がいなくなることを憂い、我々の考えに賛同してくださった多くの方の支援を得て、このNPO法人を設立することにしました。そして皆様の共に行動を起こし、この危機を解決し国民の健康に貢献していきたいと願っています。理事長 松本晃 副理事長 北島政樹画像を拡大する画像を拡大する日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会は、ご賛同いただける皆様のご支援をいただくために協力会員を広く募集しています。協力会員募集ページへ外科医の魅力とは?外科系先輩医師からの熱いメッセージを動画で視聴いただけます。動画メッセージのページへ「きみが外科医になる日」 2010年11月19日発売日本の将来のためには外科医が必要だ!日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会著者「きみが外科医になる日」が講談社から発売されました。若い外科医を目指す若者たちに向けた名医からのメッセージ、若手外科医から先輩医師としての外科医のナマの生活を公開、巻頭対談としてソフトバンク王貞治会長と理事北島先生の対談と盛りだくさんな内容です。ご興味のある方はぜひお手にとってみてください。Amazonで購入する© 株式会社 講談社 2010 Printed in Japan <内 容>■第一章「世界の王を支える外科医」医療対談 王貞治×北島政樹(主治医)■第二章明日の手術の担い手たち「今日だけは、私も外科医だ」これが外科医の仕事場だ臨床研修の現場から若手外科医インタビュー■第三章名医からのメッセージ■第四章外科医を取り巻く社会環境■第五章近未来の外科医療低侵襲化への挑戦注目される手術支援ロボット ほか■付 録診療報酬改定表日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会 主な活動内容ほかケアネットは、「NPO法人日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会」を応援しています

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プライマリ・ケアで、高血圧の検出率が高い地域は冠動脈疾患死亡率が低い

プライマリ・ケアで高血圧の検出率が高い地域では、冠動脈疾患(CHD)死亡率が低いことが、英国Leicester大学保健科学部門のLouis S. Levene氏らの調査で明らかになった。英国内各地域でプライマリ・ケアを担う152ヵ所のプライマリ・ケア・トラスト(PCT)を対象に住民ベースの調査を行い明らかになったもので、JAMA誌2010年11月10日号で発表された。英国では2000年に、「2010年までに75歳未満のCHD死亡率を5分の2に引き下げる」との目標を立て、すでに実現したのだが、PCT間のCHD死亡率に格差があるという。調査は、格差の要因を見つけることを目的に行われた。CHD死と、各トラストの集団特性、医療サービス特性との関連を分析研究グループは、英国内152のPCT(2008年時点の登録患者数:5,430万人)について、2006~2008年のCHDの年齢調整死亡率と、各PCTの集団特性(貧困指数・喫煙率・白人比率・糖尿病患者割合)や提供する医療サービス特性(プライマリ・ケアサービス提供量、高血圧検出率、P4Pデータ)との関連について、階層的回帰分析を行った。CHDの年齢調整死亡率は、ヨーロッパ基準人口10万当たり2006年が97.9人(95%信頼区間:94.9~100.9)、2007年が93.5人(同:90.4~96.5)、2008年が88.4人(同:85.7~91.1)だった。年間の減少率は、10万人当たり約5人だった。貧困指数・喫煙率・白人比率・糖尿病患者割合と正の相関、高血圧検出率と負の相関調査期間3年間を通じて、集団特性のうち、貧困指数・喫煙率・白人比率・糖尿病患者割合の4項目が、CHD死亡率と正の相関が認められた。一方で、医療サービス特性のうち、高血圧検出率が、同死亡率と負の相関が認められた(各年の補正後決定係数は、2006年がr2=0.66、2007年がr2=0.68、2008年がr2=0.67)。なお、人口10万人当たりのプライマリ・ケア医数やスタッフの労働時間など、その他の医療サービス特性とCHD死亡率には、有意な相関は認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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講師 斎藤充先生「骨粗鬆症治療「50%の壁」を打破する「骨質マーカー」」

日本整形外科学会認定専門医、日本骨粗鬆症学会評議員など多数の学会所属、役員・評議員を務める。骨質研究会世話人。日本における骨粗鬆症関連研究では多くの研究奨励賞受賞、主にコラーゲンと骨質関連の基礎研究および臨床研究を得意とする関節外科医。高齢化の波で患者は増加、治療は「50%の壁」に阻まれている骨粗鬆症の患者さんは現在約1,100万人いるといわれています。60歳以上では約半数の方に症状が見受けられます。私は外来で400人くらいの患者さんを診ていますが、その他、郊外型の病院でも約400人の患者さんを受け持っています。しかし、約1,100万人のうち15%ほどの患者さんしか治療されておらず、残りの約85%は骨折しやすい状況にあるのにもかかわらず治療されていません。医師の骨粗鬆症に対する認識不足と、高齢者の急増も相まって、治療が追いついていないのが現状です。高齢者は骨粗鬆症がきっかけで寝たきりになる確率が高く、同時に死亡の危険性が高まるため治療すべき疾患であり、高齢者医療の大きな問題の一つになっています。骨粗鬆症による骨折を起こされた方は、骨折のない方に比べて、死亡のリスクは8倍も上昇します。これまで、骨粗鬆症の治療にあたっては、骨密度を高める薬剤の処方のみで、他にこれといった治療が施されていませんでした。しかし、骨密度が改善したにもかかわらず新たに骨折を起こしてしまう方が少なくありません。これが「治療効果の50%の壁」です。人間にいろいろなタイプの人がいるように、骨粗鬆症にもいろいろなタイプがあり、その人に合う治療を考えなくてはいけません。そのような理解を踏まえて、私たちの研究により骨の強さは、骨密度すなわちカルシウムの量の問題だけで説明できないことがわかってきたのです。私たちはここから骨の量や密度だけではなく、「骨の質」が重要ということを発見しました。私は、整形外科の長年の診療経験の中で、手術で骨を触りすべての患者さんは個々に違う骨を持っていることを実感しました。人間の体の中で、骨だけを治療しても何の解決にもつながらないのです。臨床医は、現場で患者さんを直接診察し、治療して疑問点を基礎研究に展開し、その原因を突き止めることができます。骨粗鬆症は3つのタイプに区別される骨の強さは骨密度だけではないということは、整形外科医には一般的に知られていましたが、今まで骨の質、またその質を具体的に評価するものさしがありませんでした。私は、整形外科医として、骨や血管・軟骨・腱といった組織を支えるコラーゲンの研究をしていました。コラーゲンに分子レベルで過剰な老化産物が蓄積している患者さんは、骨にカルシウムが蓄積されていても、骨や血管がもろく、骨折や動脈硬化を同時に発症することを見出しました。そこで、遺伝子の研究と並び蛋白質の老化について世界初となる分析装置を独自に開発・研究し、骨の質を評価するマーカー「骨質マーカー」を作り上げました。骨質マーカーはコラーゲンの老化産物そのものを測定、患者さんの全身のコラーゲンの老化状態を判別します。コラーゲンは、鉄筋コンクリートの鉄筋、骨密度はコンクリートに相当するため、錆びの程度を骨質マーカーで評価することで患者さんの体質に合ったテーラーメイド治療ができます。骨質マーカーで判別できる骨粗鬆症の患者さんの3つのタイプI、「骨質劣化型」……骨密度が高く骨質が悪いII、「低骨密度型」……骨密度が低く骨質が良いIII、「低骨密度+骨質劣化型」……骨密度・骨質ともに低い「骨密度が高く骨質の良い人」に比べて、Iのタイプでは1.5倍、IIでは3.6倍、IIIのタイプは7.2倍も骨折の危険性が高くなることが判明しています。糖尿病、高血圧、動脈硬化、腎機能障害、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの患者さんは、全身性のコラーゲンに過剰老化が生じるため、骨のコラーゲンの錆びにより、骨密度が高くても骨質劣化型骨粗鬆症と診断できます。骨密度を高める薬剤以外に、骨質を改善するエストロゲン受容体モジュレーター(SERMs)や、各種ビタミン類(ビタミンB群、葉酸、ビタミンK・D)の併用も、骨密度と骨質を同時に改善できます。SERMsとの併用は一般的には行われないため、保険適応のあるビタミン剤を併用するのがよいでしょう。骨質の良悪は、血液・尿検査で、血中のホモシステインという悪玉アミノ酸の測定、コラーゲンの老化産物(ペントシジン)の測定による2つの評価が有効です。「骨質マーカー」は、誰も研究していなかった分野から生まれた私には中学・高校とサッカーのインターハイ・国体の選手として活躍した経験があります。そのため、自然とスポーツ医学を勉強したいと考えるようになりました。当時、慈恵医大はスポーツ医学に関して他大学より一歩リードしていたという理由から入学を決断しました。しかし、スポーツ医学を学ぶ前に運動器疾患の基礎となる整形外科を学ばなくてはいけませんでした。整形外科医として学んでいる間に、世間は高齢化と共ともに骨粗鬆症患者が急増、手術執刀で様々なタイプの骨を観察することにより、骨の強さは量や密度ではなく、質が重要であると実感しました。同時に、何が原因で骨質が悪くなり骨折するのかと疑問が湧いてきたのです。そこで、手術治療で患者さんの骨を触り、元々骨がもろい人、堅い人もいる骨の体質に注目しました。病態の解明のため患者さんの骨にどんな違いがあるのかと漠然と考えていました。そんな時、コラーゲンの研究を多く手がけた教授から、昔行っていたコラーゲンの研究を引き継ぐようにいわれましたが、ゲノム・遺伝子研究が全盛の時代、コラーゲンと蛋白質の研究にはまったく興味を持てませんでした。師に従い研究を始めましたが、コラーゲンの研究は楽ではなかったので、独自に分析装置を開発しました。この分析装置の開発がきっかけとなり今日の骨質低下の機序の解明からバイオマーカーの発見に至ったわけです。世界中の研究者は、手間のかかるコラーゲンの研究には手を出さずキットさえあればできる遺伝子解析に没頭していた当時からすると、私としては、まさか15年後にこんな発見に繋がるとは夢にも思いませんでした。私は、臨床医として患者さんの治療、日々実験を続けるうちに、コラーゲンの老化が進行しやすい患者さんは、骨密度が高くても骨折や動脈硬化を同時に発症することに気づきました。そして,コラーゲンの過剰老化こそ、骨質低下の本体であることを突き止めました。長年の無駄に思える実験や臨床経験は、今思えば何一つ無駄ではありませんでした。「無駄こそ大事な引き出し」で、今では世界のライバル達から、どのような質問をされても誰にも負けない豊富な引き出しのおかげで返答し戦うことができます。私は、この臨床を行いながら行う基礎研究という日本独自のスタイルは、世界と戦うためにも良いシステムだと思っています。臨床研究の発表、研究が世界で認知されるためには誰も注目していなかった骨質とコラーゲンの密接な関係と体全体の老化が、世間で話題になり始めたころ、この臨床研究の分野で分子レベルから患者さんの臨床データまで持っていたのは私だけでした。その圧倒的な引き出しの数は世界のどのチームにも負けませんでした。そして、世界中の研究者たちが、ポストゲノムの時代に突入し、ようやく蛋白質の研究に目を向け出したころ、我々のデータの正当性が次々と世界から追認され、妥当性が証明されました。せっかくのデータを埋もれさせないために、私はその成果を世界の研究者に知ってもらう手立てとして、必死に英文の研究論文を執筆していきました。ある欧米の教授に「世界と戦うためには、同じサッカー場に入らなくてはいけない。そのために日々、スパイクを磨き、技術を磨け。今、君はそのすべてを備えた。自信を持ってフィールドに入ってきなさい。Trust your Brain !!」と。海外留学の経験のない私でも、英語論文を発表することで、世界はよい仕事には正しい評価をしてくれるのだと思いました。今では、骨研究の名だたる英文雑誌から総説執筆の依頼を受けるなど、オピニオンリーダーになることができました。十数年、地道に頑張ってきたことが報われた、と感じています。最先端のことも大切ですが、地道に継続することが大事でしょう。現在、研究で発見した基礎的、臨床的事実は、診療ガイドラインに盛り込まれるようになり、臨床に役立つ基礎研究ができたと自負しています。今後の骨粗鬆症の治療において、骨質マーカーの測定が一般的になり、適切な治療をされてない患者さんがいなくなることを祈ります。臨床研究は目の前にあるもの、標準は世界へ地道で長い研究生活でしたが、数年前まで研究はあまり楽しいとは思えませんでした。世間に認知されるために様々な臨床的事実を把握し、基礎研究で解明できないかを自分で考えてきました。私の研究はすべてを自分たちで行っています。町工場ともいえるような時間と手間が他の研究チームと比べて数倍かかり、決して楽ではありません。データを取り、積み重ねていくことで、知られていた理論を提唱づけることができ、社会的にも認知されるわけです。しかし、これは臨床医だからできることですね。海外留学をして論文を書き、華々しくこれから活躍したいという方もおられると思います。しかし、長くは続かず消えていく方も多く見てきました。また、先端医療など新しいことに飛びつきたくなる時が必ずありますが、そうではない研究課題でも、どこかに宝は隠れているものです。私の場合、研究が進むにつれ、知識という引き出しが多くなり、いつの間にか、どんな質問、疑問にも答えられるようになっている自分に気が付くことができました。どんな研究でも地道に頑張っていれば、必ず花が開き患者さんのためになるでしょう。いくら有名な先生のもとで研究室の一つの歯車の一つとして動いて立派な論文を作成したとしても、その後の自分自身のアイデアで研究が立案できるか、それを世界というフィールドにもっていけるかが大切なのです。良いアイデアを持ち研究を続けていくことができるのかにかかっています。情熱を注げるもの、テーマに出会えた時、患者さんの治療に生かすことができるのなら医師として研究者として幸せだと思います。そして、世間で認知され、国内からそれは世界へと道が続いていきます。あなたの目の前には研究すべきテーマ、やらなければいけないことがあるかもしれません。それが面白いと思えば、人に伝えることも容易になり、プレゼンもきっとうまくなります。自分の分野が明確化し、その分野での自分の地位を築くことにつながるでしょう。質問と回答を公開中!

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無症候性頸動脈狭窄症に対する即時的頸動脈内膜剥離術、長期的な予後改善効果が明らかに

無症候性頸動脈狭窄症に対する即時的な頸動脈内膜剥離術(CEA)の施行は、遅延的にCEAを行う場合に比べその後10年間の脳卒中リスクを有意に抑制することが、イギリスJohn Radcliffe病院のAlison Halliday氏らが行った無作為化試験で示された。CEAは頸動脈の狭窄を除去するものの、脳卒中や死亡のリスクを引き起こす可能性もある。一方、直近の脳卒中症状やその他の神経学的症状がみられない無症候性の頸動脈狭窄症に対するCEAは脳卒中の発症を数年にわたり抑制することが示されているが、長期的な予後を検討した試験はないという。Lancet誌2010年9月25日号掲載の報告。10年間に30ヵ国126施設から3,120例を登録ACST-1の研究グループは、無症候性の頸動脈狭窄症に対する即時的CEAの長期的な脳卒中予防効果を評価する二重盲検無作為化試験を実施した。1993~2003年までに30ヵ国126施設から無症候性頸動脈狭窄症患者3,120例が登録され、即時的にCEAを施行する群(施行までの期間中央値1ヵ月)あるいは遅延的に施行する群(93%が1年以内には施行されなかった)に無作為に割り付けられた。フォローアップは、患者が死亡するか、生存期間中央値が9年に達するまで継続された。主要評価項目は、周術期の死亡率/罹病率(30日以内の死亡、脳卒中の発症)および非周術期の脳卒中の発症率とした。脳卒中リスクが即時的施行群で46%低下CEA即時的施行群に1,560例、遅延的施行群にも1,560例が割り付けられた。1年後も無症候であった症例は、即時的施行群が89.7%、遅延的施行群は4.8%であり、5年後はそれぞれ92.1%、16.5%であった。全体の30日以内の周術期脳卒中/死亡リスクは3.0%(95%信頼区間:2.4~3.9%、CEA 1,979件中、非障害性脳卒中26例+障害性/致死的イベント34例)であり、両群間に差はみられなかった。周術期イベントおよび脳卒中以外の原因による死亡を除外すると、5年後の脳卒中リスクは即時的施行群が4.1%、遅延的施行群は10.0%、10年後はそれぞれ10.8%、16.9%であり、脳卒中発症率比は0.54(95%信頼区間:0.43~0.68、p<0.0001)と即時施行群で有意に低下した。障害性/致死的脳卒中は即時的施行群が62件、遅延的施行群は104件、非障害性脳卒中はそれぞれ37件、84件であった。周術期イベントと脳卒中を合わせると、5年後のリスクはそれぞれ6.9%、10.9%、10年後のリスクは13.4%、17.9%であった。試験期間を通じてほとんどの症例が抗血栓療法や降圧療法を受けており、薬物療法の施行状況は同等であった。脂質低下療法の有無にかかわらず、また75歳未満では男女ともに即時的施行群でリスクが有意に低下したが、75歳以上では有意差を認めなかった。著者は、「75歳以下の無症候性頸動脈狭窄症に対する即時的CEAは施行後10年間の脳卒中リスクを有意に抑制し、その半数は障害性あるいは致死的脳卒中リスクの低減であった」と結論し、「将来的なベネフィットはCEAが施行されなかった病変のリスク(薬物療法で治療可能)、今後の手術リスク(本試験のCEAとは異なる可能性あり)、平均余命が10年を超えるか否かに依存する」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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中高年の前兆を伴う片頭痛は、男女とも心血管疾患死・全死因死亡の独立リスク因子

アイスランド大学薬理学部のLarus S Gudmundsson氏ら研究グループは、中高年の前兆を伴う片頭痛と心血管死および全死因死亡との関連を検討する住民ベースの前向きコホート研究を行った。レイキャビクとその周辺住民で1907~1935年に生まれた1万8,725例の男女を対象に行われた。BMJ誌2010年9月4日号(オンライン版2010年8月24日号)より。平均年齢53歳男女を約26年追跡主要評価項目は、心血管疾患死・非心血管疾患死・全死因死亡とされた。被験者(平均年齢53歳、範囲:33~81歳)の調査票と臨床データは、1967~1991年のレイキャビク・スタディから入手し解析が行われた。被験者の頭痛に関しては、前兆の有無、または偏頭痛、頭痛の有無に分類された。追跡期間中央値25.9年(0.1~40.2年)、47万990人・年のうち、1万358例の死亡が報告された。そのうち、心血管疾患死は4,323例、その他死亡は6,035例だった。女性の場合は非心血管疾患死亡のリスクも高い前兆を伴う片頭痛を持つ人は、全死因および心血管疾患による死亡のリスクが、頭痛のなかった人と比べて増大した。全死因の補正後(性・多変数)ハザード比は1.21(95%信頼区間:1.12~1.30)で、心血管疾患死亡についてもリスクの有意な上昇が認められた(同:1.27、 1.13~1.43)。心血管疾患死亡に関するさらなる検討からは、前兆を伴う片頭痛を持つ人は、冠動脈心疾患死亡(同:1.28、1.11~1.49)、脳卒中死亡(同:1.40、1.10~1.78)のリスクが高かった。前兆を伴う片頭痛を持つ女性の場合は、非心血管疾患死亡のリスクも高かった(同:1.19、1.06~1.35)。これらから研究グループは、「前兆を伴う片頭痛は、男女ともにおいて心血管疾患死および全死因死亡の独立リスク因子である」と結論し、「片頭痛を有する人(特に前兆を伴う人)では、冠動脈心疾患死亡リスクと脳卒中死亡リスクが、わずかながらも高いといえるだろう」と報告している。

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34~37週未満での後期早産児、RDSなど呼吸性疾患リスク増大

妊娠34週~37週未満の後期早産では、新生児呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome:RDS)などの呼吸器疾患発生リスクが、妊娠39~40週の満期出産に比べ有意に増大することが、米国内最新の大規模データで裏付けられた。この点に関するデータはこれまで、10年以上前の、米国外データによるものしかなかったが、米国イリノイ大学シカゴ校のJudith U. Hibbard氏らが、米国内約23万件の出産データを基にして調べ明らかにした。JAMA誌2010年7月28日号掲載より。2万弱の早産児のうち、36.5%がNICU同研究グループは、米国内の病院19ヵ所(12機関)での、2002~2008年の23万3,844件の出産について、後ろ向きに追跡した。主要評価項目は、RDS、新生児一過性多呼吸、肺炎、呼吸不全、振動換気法または通常換気法によるサポートの発症・発生だった。その結果、追跡期間内の後期早産1万9,334件のうち、7,055人(36.5%)が新生児集中治療室(NICU)入室となり、2,032人に呼吸機能障害が認められた。一方、満期出産は16万5,993人で、うちNICU入室となったのは1万1,980人(7.2%)、呼吸機能障害がみられたのは1,874人だった。RDS発症は妊娠38週の0.3%に対し34週の10.5%RDSを発症したのは、妊娠38週の0.3%(4万1,764児中140児)に対し、妊娠34週の新生児では10.5%(3,700児中390児)と大幅に高率だった。その他の呼吸器疾患について、妊娠38週と妊娠34週の新生児について比べてみると、新生児一過性多呼吸の発症率は0.4%対6.4%、肺炎は0.1%対1.5%、呼吸不全は0.2%対1.6%と、いずれも34週の群で高率だった。同傾向は、振動換気法または通常換気法によるサポートについても認められた。RDSの発症リスクは、妊娠34週から週数の増加につれて低下し(補正後オッズ比が34週40.1→38週1.1)た。妊娠37週の39~40週に対するオッズ比は3.1だったが、38週では有意差はなくなった。この傾向は、新生児一過性多呼吸(補正後オッズ比が34週14.7→38週1.0)、肺炎(同7.6→0.9)、呼吸不全(同10.5→1.4)についても認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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投身自殺名所への防止柵設置で自殺は減ったか? 既遂者約1万5,000人の解析

カナダ・トロント市の投身自殺名所の橋への自殺防止柵設置によって、その橋での自殺は解消されたものの、市全体の自殺率には変化がなかったことが、Sunnybrook Health Sciences Centre and Women’s College Hospital(トロント市)のMark Sinyor氏らの調査で明らかとなった。今回の結果と同様、これまでの調査でも防止柵設置後に全体の自殺率が低下したとの報告はない。一方、柵の設置がある程度自殺を予防しているのか、あるいは単に別の橋が代用されたり別の手段で自殺が試みられているのかははっきりしていないという。BMJ誌2010年7月24日号(オンライン版2010年7月6日号)掲載の報告。自殺防止柵設置前後の自殺既遂者約1万5,000人の記録を調査研究グループは、年間の投身自殺率が「金門橋(Golden Gate Bridge、アメリカ・サンフランシスコ市)」に次いで世界で2番目に高率の橋である「ブロア通り高架橋(Bloor Street Viaduct、カナダ・トロント市)」への自殺防止柵の設置が、自殺率に変化をもたらしたかについて調査を行った。対象は、1993~2001年(自殺防止柵設置前の9年間)および2003年7月~2007年6月(設置後の4年間)のオンタリオ州主席検死官事務所の記録に記載された自殺既遂者1万4,789人。主要評価項目は、ブロア通り高架橋、その他の橋、高層建築物からの人口当たりの年間投身自殺率、および他の手段による年間自殺率とした。投身自殺への誘惑に満ちた特別の場所ではないことが判明トロント市の人口当たりの年間投身自殺率は、ブロア通り高架橋への自殺防止柵設置前が56.4、設置後が56.6であり、設置前後で全体的な変化はみられなかった(p=0.95)。防止柵設置前のブロア通り高架橋における平均年間投身自殺率は9.3であったのに対し、設置後は自殺は1件も起きていない(p<0.01)。ブロア通り高架橋以外の橋における平均年間投身自殺率は、柵設置前の8.7に対し設置後は14.2と有意に増加しており(p=0.01)、高層建築物からの投身自殺率は設置前の38.5から42.7へと増大したものの有意な差は認めなかった(p=0.32)。著者は、「ブロア通り高架橋での投身自殺は防止柵の設置によって解消されたが、トロント市全体の人口当たりの年間投身自殺率に変化はなかった。その原因は、他の橋や高層建築物からの投身自殺が代償的に増加したためと考えられる」と結論し、「これらの知見により、ブロア通り高架橋が人を自殺に誘う独特の場所ではないこと、また防止柵を設置しても近隣に代わりになる橋などがあれば絶対自殺率には影響がない可能性が示唆される」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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首つりした人の多くは、その後1年以内に同じ方法で自殺に成功:未遂者約5万人の解析

 首つり/絞首/窒息による自殺未遂歴のある者は、その後の自殺成功率がレファランス(服毒自殺未遂)の6倍以上にのぼり、87%が1年以内に目標を達成し、90%以上が未遂と同じ方法で死亡していることが、スウェーデン・カロリンスカ研究所臨床神経科学部のBo Runeson氏らが実施したコホート研究で判明した。自殺は主要な死亡原因であり、自殺のリスクがある者の評価法および治療法のいっそうの改善は一般臨床における最優先課題である。自殺未遂歴はその後の自殺既遂の強力なリスク因子であり、精神疾患と自殺企図が共存する場合は既遂リスクがさらに増大するという。BMJ氏2010年7月24日号(オンライン版2010年7月13日号)掲載の報告。初回自殺未遂の方法別の転帰を解析 研究グループは、未遂に終わった自殺の方法とその後の自殺既遂リスクの関連を検討するために、フォローアップ期間が21~31年に及ぶ全国的な長期コホート研究を実施した。 対象は、1973~1982年の入院患者のうち過去に自殺未遂歴のある4万8,649人で、1973~2003年までの自殺既遂状況を調査した。Cox多変量回帰モデルを用い、服毒を基準として初回自殺未遂の方法別の転帰について解析を行った。首つり未遂した人はその後90%以上が首つりで自殺に成功していた フォローアップ期間中に5,740人(12%)が自殺した。自殺既遂リスクは、以前に未遂に終わった自殺の方法によって大きなばらつきがみられた。 転帰が最も不良だったのは、以前に未遂に終わった自殺の方法が首つり、絞首、窒息の者であった。すなわち、この群の男性の54%(258人)および女性の57%(125人)が後に自殺に成功しており(年齢、性別、教育歴、国外からの移住状況、精神疾患の併発状況で補正後のハザード比:6.2、95%信頼区間:5.5~6.9)、87%(333人)は未遂後1年以内に目標を達成していた。 これ以外の未遂自殺の方法(ガス自殺、高所からの飛び降り、拳銃や爆薬の使用、入水)は、その後の自殺既遂リスクが首つりに比べて有意に低かったが、それでもハザード比は1.8~4.0に達していた。 刃物などで身体を切る、刺すなどの方法(補正ハザード比:1.0)、その他の方法(同:0.9)、自殺未遂の遅発効果やその他の自傷行為による損傷(同:0.7)がその後に自殺既遂に至るリスクは、レファランスカテゴリーとした服毒(未遂法の84%を占め、最も多い)とほぼ同じレベルであった。 自殺成功者のほとんどが、未遂に終わった自殺の方法と同じ方法で死亡しており、たとえば首つり未遂者はその90%以上が首つりで自殺に成功していた。著者は、「社会人口学的な交絡因子や精神疾患の併発状況で補正を行っても、未遂に終わった自殺の方法によってその後の自殺既遂リスクを予測できることが示された」と結論し、「首つり、入水、拳銃や爆薬、高所からの飛び降り、ガス自殺が未遂に終わった者には、強力なアフターケアを行うべきである」と主張している。

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特発性頭蓋内圧亢進症への低エネルギー食介入、3ヵ月で有意に改善

特発性頭蓋内圧亢進症を有する女性への、食事療法(低エネルギー食)介入は、有意に頭蓋内圧を低下し、耳鳴りなどの症状、乳頭浮腫も改善することが、英国バーミンガム大学免疫・感染症スクール眼科教育部門のAlexandra J Sinclair氏らによる前向きコホート研究の結果、報告された。食事療法終了後も3ヵ月間、効果は持続していたことも確認された。BMJ誌2010年7月17日号(オンライン版2010年7月7日号)掲載より。425kcal/日の低エネルギー食介入後の、頭蓋内圧の低下を観察試験は、英国内の病院の外来および臨床研究施設から被験者を集め行われた。被験者は、BMIが>25、乳頭浮腫を呈し、頭蓋内圧>25cmH2O、慢性(3ヵ月超)特発性頭蓋内圧亢進症の女性25人だった。手術治療を受けた患者は除外された。被験者は試験登録後、3ヵ月間は新規介入を受けず(ステージ1)、続く3ヵ月間は低エネルギー食(1,777kJ/日、425kcal/日)の介入を(ステージ2)、その後3ヵ月間は追跡期間とされた(ステージ3)。主要評価項目は、食事療法介入後の頭蓋内圧の低下。副次評価項目には、頭痛(headache impact test-6)スコア、乳頭浮腫[超音波測定(視神経乳頭腫脹、神経鞘腫直径)、OCT測定(乳頭周囲網膜厚)]、ハンフリー視野の平均偏差、LogMAR視力、その他症状を含んだ。評価は、基線、3、6、9ヵ月時点で行われ、また頭蓋内圧は、腰椎穿刺にて、基線、3、6ヵ月時点で測定された。体重、頭蓋内圧、頭痛、乳頭浮腫が有意に低下ステージ1の間は、各値に変化はみられなかった。ステージ2の間では、体重[平均15.7(SD:8.0)kg、P

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主任教授 森田峰人先生「産科婦人科最先端治療は患者個々への対応が決め手」

東邦大学医療センター大森病院 医学部産科婦人科学講座 主任教授を務める。子宮筋腫治療最前線の場で患者個々の生活環境へ対応することで定評がある。日本産科婦人科内視鏡学会常務理事、日本生殖医学会評議員などその他産科婦人科系で数多くの役員を兼務。分娩施設減少で医療従事者にもしわ寄せ社会的に今、産科医療に大きな問題点があります。それは分娩施設が少なくなっているということです。たとえば東邦大学医療センター大森病院がある大田区では、4カ所の分娩施設しかなく、妊婦はもとより医療従事者にもそのしわ寄せは来ています。分娩施設が少ないため、区内の施設で出産できるのは大田区民の妊婦の約半数です。大田区以外でもこの問題は大きく周産期医療の学会で問題になっています。この周産期医療の問題点は解決する糸口がみつかっていません。分娩施設は少なく、また産科医の不足がさらに問題点を大きくしています。生殖機能ハイリスク症例を受け入れる大きな拠点もできましたが、解決にはいたっていません。当医療センター大森病院でも40歳以上のハイリスク分娩の患者さんが増えています。現在、普通の分娩をする場所が減少しています。年間約1000例の分娩症例のうち20%は高年齢出産です。30代でも以前は高齢出産とされていましたが、今はそれをはるかに超えた年齢の方が多くなっているというのが最近の分娩事情です。これは女性をとりまく社会環境やライフスタイルの変化が大きな理由です。以前と比べ男性と同等に外で働いている女性が多くなったこと、また結婚時期の選択肢が広がっています。おそらく、これからもライフスタイルは変化し続けるでしょう。私たち産科婦人科医療は女性のライフスタイルの変化とともに対応を迫られています。興味のある診療科目から自分の専門領域へ社会的に問題にされやすい産科婦人科ですが、その診療科目を私が選択したのは、生命が生まれるという医療世界の中で唯一喜ばしい診療科目だと思ったからです。人間の生命が誕生する、生殖に大きく関わることに大変興味を持ち、今もなお奥深さを感じています。生殖機能を子どもが産める身体として温存・治療して改善するなど私にとって、治療方法を模索することは研究対象として大変深いものがあります。また私は大学4年生の授業を担当しているのですが、講義をすると産科婦人科の診療科目に対する興味関心を大きく持ってもらえます。そして、お産という太古の時代から何も変わらず人類は生まれてくるということに、この診療科目の深さを感じています。産科では、新しい命が生まれてくるという素晴らしい瞬間に立ち会えるのです。私たちが学生の頃と違い、今はインターネットなど調べる手段がたくさんあり、学生たちは多くの知識を身につけています。しかし、多くの知識が一につながらず苦慮している姿を時々見かけます。広い視野を持った一人の人間として患者さんに接してもらいたいですね。専門領域は知識だけでは極めることができませんから。お産はまだまだわからないことが多い世界でもあります。そこにいろいろな疑問を持って生殖機能に関する産科婦人科という診療科目に接していただきたいです。子宮温存希望患者のために最善を尽くす私のところへ初診に来る患者さんは、子宮筋腫だとすでにわかっている人たちが多く来院します。中でも筋腫からくる症状に常日頃から悩まされているようです。そして、特に最近多いのが、未婚で未妊の方たちです。日本は海外に比べて未婚で出産する人の割合が少なく、このような方々の来院は以前では考えられませんでした。私の場合は、年間350人の手術例のうち150人は子宮筋腫の患者さんです。手術侵襲の少ない方法をとって手術に臨んでいます。多くの患者さんは他の病院で子宮全摘出を言われ、温存を望んで来院しますが、本当に本人にとって温存がよいかどうか判断し、的確に伝えられるように努めています。子宮筋腫は良性であり、手術が絶対的に必要であると判断して勧めることはしません。患者さんそれぞれの症状のつらさや、年齢、将来の妊娠・出産の希望を総合して、自身に判断してもらいます。私は、子宮温存を望む方のためにあらゆる努力をしています。たとえば、子宮を残すためには開腹手術の必要性を説明し、こちらの治療方針に理解をしてもらう努力をしています。全てに最善を尽くし患者さんの理解を得ています。チーム医療で治療方針、一人ひとりの患者さんのために当医局内では、毎週カンファレンスを行っていますが、患者さんにどれだけのエビデンスに基づいた治療方法を提案できるか、意見を出し合い探っていきます。患者さんの困っている症状、お子さんが欲しいかどうか、カルテデータにとらわれずに患者さんの状況を踏まえた治療方針を打ち出すことを、私どものチーム医療で行っています。しかし、診察を決めかねるケースがあれば、毎週のカンファレンス以外でも症例を検討できるよう、チームの体制の強化には万全を尽くしています。東邦大学医療センター大森病院の産科婦人科では、子宮筋腫・卵巣腫瘍・子宮内膜症などに対して内視鏡技術認定医によるチーム医療が行われており全国から患者さんが来院します。まずは患者さんにお会いすることから始まります。病気だけを診る医療ではない診察を心がけているため、私どものチーム医療体制への信頼がここへ集約しているのです。医学はサイエンスですが、サイエンスだけでは治療できない部分が相当あり、患者さんは一人ひとり違う身体を持っているわけです。そこには決まりきった治療はないのです。同じ病気に対して同じ診察・治療の説明をするのではなく、患者さんに合った説明をすべきです。若い医師たちの診察方法をみていると、一つの症状に対して一通りの説明しかできない人が多いように感じます。それでは患者さんのための医療とはいえないでしょう。医師は治療方針をどれだけ患者さんに説明することができるかだと思います。カンファレンスではエビデンスに基づいた治療方針を打ち出すことができるか、一つでも満足してもらえる治療方針を提供することができるか、そういう医療を常に目指しています。これからも臨床・研究の場で産科婦人科を希望する学生が減り人材不足気味でしたが、最近は希望者が少しずつ増えてきましたね。3人に1人いるであろう子宮筋腫という一般的な病気ではありますが、まだ解明できていない部分が大きいのです。生殖の補助医療というのは約20年の歴史で発達してきました。しかし、子宮筋腫がなぜできるのかは未だわかっていません。私たち医師にはやるべきことがまだまだたくさんあります。私はこれからも研究してまいります。自分の診療について悩んでいる方も多いことでしょう。どうしたらよいのか?私は、自分の診療に対して疑問を持って臨むこと、また常に何に対しても興味を抱くことをモットーとしています。新しいことが正しいとも限りませんが、技術は進歩しているわけです。何事にも興味関心を持っておくべきでしょう。そして、自分の治療を振り返ることは必要でしょうね。まず、患者さんの話をよく聞くこと、その上で自分の患者さんへの治療方針を述べることができるように整理して伝えることができるようにしておくと良いですね。患者さんは最近の情報伝達の進歩により知識を多く持っていますから、その知識が正しいかどうかを判断し、間違っている知識だった場合はエビデンスに基づく正しい知識に置き換えられるような対応が必要です。診療の説明をするためには、正常で健康な身体のこと、つまり基礎医学が理解できていないと患者さんに説明はできないですね。病院に勤務すると病気の患者さんしか来院しませんから、健康体のことがわからず説明に困窮する場合もあります。だから、まずは基礎医学をしっかり極めてください。治療に対し理解を得られるような説明をすることができるかによってコミュニケーション能力が問われることでしょう。質問と回答を公開中!

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主任教授 森田峰人先生の答え

子宮内膜症と低用量ピルについて子宮内膜症の治療で低用量ピルを使用することもあるかと思いますが、副作用の発現はどうでしょうか?私自身は内膜症を診るわけではないのですが、患者さんから相談を受けることがあるので、症例数が多いであろう大学病院臨床現場での状況を知りたいです。宜しくお願いします。OC(ピル)はエストロゲン+プロゲストーゲンの配合剤であることはご存じと思います。これらのホルモン依存性に副作用が発生すると考えられます。一般的にエストロゲンとしてエチニルエストラジオールが、プロゲストーゲンとしてノルエチステロン、デソゲストレル、レボノルゲストレルがあり、OCの種類によってこれらの組み合わせや1相性、2相性、3相性が存在します。一般的にエストロゲン依存性の副作用としては、悪心・嘔吐、頭痛、水分貯留、帯下増加などが、プロゲストーゲン依存性の副作用としては、倦怠感、抑うつ感、乳房緊満感などが、アンドロゲン依存性(プロゲストーゲンには男性ホルモン活性があります)の副作用として、体重増加、ニキビ、食欲亢進、性欲亢進、男性化兆候などがあります。これらの副作用発現率は各種プロゲストーゲンの種類により異なるとは思いますが、全体的な副作用発現率として、悪心・嘔吐は1.2~29.2%、頭痛は3.4~15.7%、体重増加は0.8~2.2%、乳房緊満感は0.1~20%等となっており、これらのマイナートラブルは、通常、3か月以内で消失するともいわれています。子宮内膜症患者さんの月経痛改善のための効果ですが、ほとんどの場合効果はあると感じています。しかしながら、OCの各種副作用の発現により、継続しての服用が困難になる場合もあります。そのような場合には、OCの種類を変更することで継続服用が可能になる場合が多々あり、1種類のOCがダメであってもあきらめる必要はありません。子宮頸がんワクチンの効果・副反応について最近、子宮頸がんワクチン接種に関して助成金が出るとか出さないとか、何かと話題になっていますが、そもそもこのワクチン、実際の効果は如何なものなのでしょうか?「日本人には合わない」などおっしゃっている先生もいるようです。また、副反応についても現場の見解を知りたいと思っています。差し支えない範囲で結構ですのでご教授お願いします。現在使われているワクチンはHPVの遺伝子型が16と18に対するものです。日本人の子宮頸がんに関連するHPV遺伝子型が16と18であるものは58.8%(16型44.8%+18型14.0%)と報告されています。海外の報告では16/18が70.7%(16型53.5%+18型17.2%)で、その他31,33,35,51,52,53,56,58,59,68の10の型が31.2%に検出され、その他の型が9.0%であったとなっています。日本人の統計で、このワクチンでHPV16/18型の感染による子宮頸がんの発生を予防できる全体に占める割合は60%弱ということになります。よって、16/18による子宮頸がん発生を100%抑制できるとして、ハイリスクHPV感染者の0.15%ががんになるのを防げる場合の、費用対効果がどうなるのかは現在のところはっきりしていません。さらに大切な事として、日本における子宮頸がん検診率は23%程度であり、この健診率を先進国並みの60~82%に持って行く方法を考える必要があると思います。副反応に関しましては、全てのワクチンに言えることですが、何らかの重篤な合併症が引き起こされる可能性は否定できません。一般的な副反応として、局所の疼痛や発赤は90%程度に認められておりますが、当院での接種に際しては、幸いなことに重篤な副反応には遭遇しておりません。今後、これらの副反応に関しましても日本におけるデータが集積されてくるものと思います。研修について産婦人科医を目指している医学生です。産婦人科医になるにあたり、小児科(NICU)を経験した方が良いと聞きます。また、病院によっては一定期間NICUへ行かせてくれるところもあると聞きます。大森病院さんでも、このように小児科(NICU)のことを勉強したり、経験したりする機会はあるのでしょうか?ホームページを拝見しましたが、その辺の情報がなかったので教えて頂ければと思います。東邦大学医療センター大森病院でも小児科(NICU)のことを勉強したり、経験したりすることになります。産婦人科のホームページで「入局希望の方へ」を見て頂くと「後期研修プログラム」として1年目に「産科・周産期」と記載してありますが、この期間に3か月間、新生児科(NICU/GCU)の研修を行うことになります。また、後期研修期間中に、「腫瘍」「生殖内分泌」を専門医レベルまで習得してもらうために、2年目「腫瘍」、3年目「生殖内分泌」を主な研修期間としてトータルで3年間での研修計画をたてています。その後に、さらに新生児科での研修を希望される場合には、適時相談により、更に高度な新生児科での研修を行うことも可能です。産科婦人科の専門領域について初期研修中の者です。最近、産婦人科医に興味を持つようになりました。産婦人科の専門領域を大きく分けると、周産期、婦人科腫瘍、生殖医学の3つと教わりましたが、どれを専門にするのか?を決めるのは、通常どの位のタイミングなのでしょうか?また、森田先生はいつ頃、どんな理由で今の専門(婦人科腫瘍でしょうか?)に決めたのでしょうか?場違いな質問でしたら申し訳ありません。宜しくお願いします。後期研修として産婦人科に進んだ場合、まず目指していただくのは産婦人科専門医です。当院でもまずはそれを第1目標にしています。通常、後期研修3年間(初期研修2年とあわせて卒後5年)が終了した時点で専門医の受験資格ができます。それまでは、「周産期」「腫瘍」「生殖内分泌」の3本の柱をしっかりと研修し、専門医取得を目指します。通常は、その後に専門性のあるサブスペシャリティの各種指導医や認定医取得、および研究などを行うことになります。自分自身の場合は、卒業が27年前ですので、現在のような初期研修、後期研修制度はなく、卒業して直ちに医局に入局し、2年間の研修医、その後2年間の関連病院での研修の後に、卒後5年目に大学に帰局して研究を始めるとともに、当時、黎明期であった婦人科内視鏡に興味を持ち、臨床では生殖医療や関連する子宮内膜症、子宮筋腫などの診療に携わってきました。自身のおかれている環境によっても、これら専門領域選択に適切な時期や場所が大きく異なる可能性もあります。まずは、興味を持ち、かつ、その領域にすすむ事ができる環境にあるかどうかの見極めは大切なことでないかと思います。また、産婦人科としてのジェネラリストを目指すという道もあります。妊娠糖尿病患者を診るときに気をつけること妊娠糖尿病患者を診るときに気をつけていることがありましたらご教授下さい。特に糖尿病専門医との連携方法で気をつけていることや、こうすると上手く行く!といったノウハウをお聞きしたいと思っております。私の病院には糖尿を診れる医師はいないため、いつも他院の先生方との連携になってしまいます。どのように連携するのが良いのか毎日模索している日々です。ご教授お願いします。ご質問いただきました内容に関して、的確にお応えできる回答を持ち合わせておりませんが、他院の先生と連携をとって妊娠糖尿病患者を診ておられるご苦労は大変かと思います。ご存じの対応であるとは思いますが、妊娠糖尿病患者に対しては、食事指導、運動療法からはじまり、妊娠中の運動療法は比較的制限を受けることから、食事療法のみで血糖コントロールが目標に到達しない場合には、迷うことなくインスリン療法を開始する、ということに尽きると思います。男性産婦人科医が気をつけること産婦人科は、女性医師と違って男性医師は色々と気を遣わないといけない科だと思います。先生が男性産婦人科医として気をつけている点を教えてください。産婦人科の診察対象は女性生殖器であることから、最近は、女性医師の診察を希望する患者さんも増加しています。まず、大切なことは、不安を抱いている患者さんに対して、出来るだけその不安を取り除き、適切な診療ができる環境を作り出すことにあります。一言で言い表すのは難しいですが、常に、そのような気持ちで患者さんと接するよう心がけています。また、男性医師は、診察の場面では必ず女性の看護師を同席させることも忘れてはならない事です。日本の産婦人科領域の臨床研究レベルについて海外に比べた時、日本の産婦人科領域の臨床研究はどの位の位置にいるのでしょうか?また、海外への留学は必要なのでしょうか?僕はまだ医学生なのですが、将来は先生のように研究も臨床もでき、多くの患者さんのライフスタイルにあった治療提案ができるドクターになりたいと思っています。日本の産婦人科領域の臨床研究レベルは決して諸外国に劣っているとは思いません。しかし、日本人であるが故の不利な点があります。世界で研究に対する評価を得るためには英文論文の執筆は不可欠です。しかしながら、日本ではやはり主に日本語による論文執筆が先になり、英文は後回しになる傾向があるように思えます。もちろん、英文の論文を多数輩出している優れた日本人研究者もたくさんいらっしゃいますが、大変な努力が必要であることは事実です。海外への留学に関する事ですが、この留学は研究留学のことと理解してコメントします。留学には、研究留学と臨床留学がありますが、現在、大多数を占めるのは大学医局からの研究留学です。しかし、研究留学は目的意識を高く持たないと得るものは少ないと思われます。必ずしも留学が必要である理由は存在しないと思います。臨床遺伝について大森病院さんのホームページで、臨床遺伝についての記載がありますがもう少し教えて頂けないでしょうか?今大学病院では、具体的にどんな研究や取り組みが行われているのか?どのような成果を上げているのか興味あります。是非宜しくお願いします。近年、疾患に限らず生命現象ほとんどが遺伝子によって制御されていることが解明され、注目を浴びています。臨床遺伝学は、基礎遺伝学(いわゆる遺伝学)と臨床をつなぐ重要な分野として発展してきています。さらに最近では、生活習慣病などの多因子疾患も、遺伝子が関与している事が判明しています。しかし、遺伝学的検査を行うときに、十分な説明がなされず、施行されたり、結果を適切に判断することが出来ず、誤った説明などがなされ、時に、患者、その家族に誤解を招く場合があります。大森病院には、日本人類遺伝学会、遺伝カウンセリング学会認定の、臨床遺伝専門医が2名(いすれも産婦人科医)がおり、専門医研修施設に認定されています。産婦人科領域、生殖遺伝(挙児希望、習慣流産など)、周産期遺伝(出生前診断、高齢妊娠など)を中心に、火曜日午後、遺伝相談外来として対応しています。また、内科、外科など他科の担当医と協力し、横断的に、遺伝学的検査施行時、結果説明時など患者、その家族と話し合う機会を設けています。窓口は、産婦人科外来となっており、電話にて担当医と受診の予約についてお話しいただけます。妊娠を控えている慢性腎臓病実臨床にて妊娠を控えている慢性腎臓病の患者に対してどのような降圧剤を選択するのがベストか、臨床研究などの結果があれば教えていただければ幸いです.まず、慢性腎臓病合併妊婦では早期に妊娠高血圧症候群をおこして、母児共に予後が悪い事はよく知られております。したがいまして、妊娠前に十分に腎機能検査を行い、GFR 50ml/分以下、血清クレアチニン1.5mg/dl以上、血清尿酸値6.0ng/ml以上、降圧剤投与での血圧160/110mmHg以上、あるいは腎生検にて活動性病変のある者には妊娠を許可すべきではありません。これらの条件をクリアして、血圧の管理を行い、拡張期血圧を90~100mmHgの範囲に、収縮期血圧155~160mmHgを超えない事を目標に、妊娠が成立しても継続して投与が可能な薬剤を選択する事が望まれます。第1選択はヒドララジンもしくはメチルドパになります。また、妊婦に対してはACE阻害剤、アンギオテンシン受容体拮抗薬は禁忌であり、妊娠前にこれらの薬剤によりコントロールされている場合には薬剤の変更が必要になります。したがいまして、妊娠を目指して降圧剤を使用する場合にはヒドララジンもしくはメチルドパによる良好なコントロールがその後の管理が行いやすい状況にすると思われます。月経か否か性器出血が主訴の患者さんで性成熟期で子宮がある場合、どれが月経なのか不正性器出血なのか分からないと言われます。まず頚部・内膜の細胞診はとり、経膣エコーを見るかと思いますが、産婦人科として出血が月経かどうかを判断する術はあるでしょうか。産後の不正出血などでも(明らかな遺残ではなく)それが月経なのか何なのか判断に迷うことがあります。お教えいただけないでしょうか。 性器出血の様子だけから判断することは困難です。出血の様子に加え経腟超音波所見は重要で、特に子宮内膜の状態は評価に大きく役立ちます。患者さんのもともとの月経周期や体型なども判断材料になる機会は少なくありません。総合的に評価することとなります。総括たくさんの、また様々な内容のご質問をいただきありがとうございました。産婦人科の3本柱は、「周産期」「腫瘍」「生殖内分泌」であり、まだまだ伝えきれないほどの魅力ある診療および研究分野がたくさんあります。少しでも興味を持って、産婦人科の世界に入ってきてくれる人たちが増えてくれることを願っています。主任教授 森田峰人先生「産科婦人科最先端治療は患者個々への対応が決め手」

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トラネキサム酸が、出血性外傷患者の死亡リスクを低減:2万例の無作為化試験

出血性外傷患者に対して、トラネキサム酸(商品名:トランサミンなど)短期治療を早期に開始すると、安全性を保持しつつ死亡リスクが有意に改善されることが、イギリスLondon School of Hygiene & Tropical MedicineのHaleema Shakur氏らが実施した「CRASH-2試験」(http://www.crash2.lshtm.ac.uk/)の結果から明らかとなった。外傷による院内死亡の約3分の1は出血が原因であり、多臓器不全による死亡にも出血が関与している。トラネキサム酸は、待機的手術を施行された患者の出血を低減させる可能性が示唆されているという。Lancet誌2010年7月3日号(オンライン版2010年6月15日号)掲載の報告。40ヵ国、2万例の外傷患者のプラセボ対照無作為化試験CRASH-2試験の研究グループは、外傷患者に対する短期的トラネキサム酸治療の早期投与が、死亡、血管閉塞性イベント、輸血の費用に及ぼす効果を評価するためにプラセボ対照無作為化試験を実施した。40ヵ国274施設から重篤な出血あるいはそのリスクを有する2万211例の外傷患者が登録され、8時間以内にトラネキサム酸を投与する群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられた。トラネキサム酸は、10分以上かけて1gを負荷投与したのち、8時間で1gを静注投与することとした。患者および試験関係者(各施設の担当医師、試験運営センターのスタッフ)には、治療割り付け情報は知らされなかった。主要評価項目は受傷後4週以内の院内死亡とし、死亡原因を出血、血管閉塞(心筋梗塞、脳卒中、肺塞栓)、多臓器不全、頭部外傷、その他のカテゴリーに分けて解析した。全死亡が有意に9%低下、出血による死亡リスクも有意に15%改善トラネキサム酸群に1万96例が、プラセボ群には1万115例が割り付けられ、それぞれ1万60例、1万67例が解析の対象となった。全死亡率は、プラセボ群の16.0%(1,613/1万67例)に対し、トラネキサム酸群は14.5%(1,463/1万60例)と有意に抑制された(相対リスク:0.91、95%信頼区間:0.85~0.97、p=0.0035)。出血による死亡リスクも、プラセボ群の5.7%(574/1万67例)に対し、トラネキサム酸群は4.9%(489/1万60例)と有意に低下した(相対リスク:0.85、95%信頼区間:0.76~0.96、p=0.0077)。著者は、「トラネキサム酸は、出血性外傷患者の死亡リスクを安全に低減する。これらの結果に基づき、出血性外傷患者ではトラネキサム酸の使用を考慮すべきである」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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糖尿病の血管疾患リスクはどの程度? 70万人のメタ解析

糖尿病の存在は、肥満、脂質異常、高血圧など従来のリスク因子とは別個に、血管疾患リスクを約2倍に高めることが、Emerging Risk Factors Collaborationが実施した102もの試験のメタ解析で明らかとなった。糖尿病は冠動脈心疾患や脳卒中のリスク因子として確立されているが、年齢、性別、従来のリスク因子の有無などでリスクの程度はどれくらい変化するのか、致死的心筋梗塞と非致死的心筋梗塞、虚血性脳卒中と出血性脳卒中とでは糖尿病の影響はどの程度は異なるのかという問題は未解決のままだ。さらに、非糖尿病患者における血糖異常の意義についても同様の問題が残されているという。Lancet誌2010年6月26日号掲載の報告。糖尿病の血管疾患リスクを定量的に評価するメタ解析研究グループは、血管疾患リスクに及ぼす糖尿病の影響を定量的に評価することを目的に102のプロスペクティブ試験のメタ解析を行った。Emerging Risk Factors Collaborationが実施した試験から血管疾患の既往のない患者を抽出し、個々の患者の糖尿病、空腹時血糖値およびその他のリスク因子の記録について解析した。個々の試験を年齢、性別、喫煙状況、収縮期血圧、BMIで補正して回帰分析を行い、これらのデータを統合して血管疾患に対するハザード比(HR)を算出した。糖尿病の血管疾患に対するHRは1.73~2.27、空腹時血糖値の関連はわずか102のプロスペクティブ試験から抽出された69万8,782人(5万2,765人が非致死的あるいは致死的血管疾患を発症、849万人・年)が解析の対象となった。糖尿病の冠動脈心疾患に対する補正HRは2.00(95%信頼区間:1.83~2.19)、虚血性脳卒中に対する補正HRは2.27(同:1.95~2.65)、出血性脳卒中は1.56(1.19~2.05)、分類不能の脳卒中は1.84(同:1.59~2.13)、その他の血管死の合計が1.73(同:1.51~1.98)であった。脂質、炎症、腎機能のマーカーでさらに補正しても、HRに明確な変化は認めなかった。冠動脈心疾患に対するHRは男性よりも女性で高く、70歳以上よりも40~59歳で、非致死的疾患よりも致死的疾患で高かった。成人の糖尿病有病率を10%とすると、血管疾患の11%が糖尿病関連と推算された。空腹時血糖値は血管リスクと直線的な関連はなく、3.90mmol/Lと5.59mmol/Lで有意な差はみられなかった。空腹時血糖値3.90~5.59mmol/Lの場合と比較して、空腹時血糖値≦3.90mmol/Lの場合の冠動脈心疾患に対するHRは1.07(95%信頼区間:0.97~1.18)、5.60~6.09mmol/Lの冠動脈心疾患に対するHRは1.11(同:1.04~1.18)、6.10~6.99mmol/Lでは1.17(同:1.08~1.26)であった。糖尿病歴のない集団では、従来のリスク因子のほかに、空腹時血糖値や空腹時血糖異常に関する情報を付加しても、血管疾患の検出基準が改善されることはなかった。著者は、「糖尿病は、他の従来のリスク因子とは別個に、広範な血管疾患のリスクを約2倍に上昇させる。非糖尿病集団では、空腹時血糖値の血管疾患リスクとの関連はわずかであった」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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急性肺損傷や急性呼吸不全症候群への高頻度振動換気法の有効性

急性肺損傷および急性呼吸不全症候群(ARDS)治療として高頻度振動換気法が従来の機械的人工換気法に代わって行われるようになってきているが、高頻度振動換気法が従来法に比べ死亡率を低下させるとのエビデンスは明らかになっていない。大規模試験は進行中だが試験完了にはまだ時間を要することから、カナダ・トロント大学のSachin Sud氏らは、過去に行われた8つの無作為化試験を対象とするメタ解析を行った。BMJ誌2010年6月12日号(オンライン版2010年5月18日号)掲載より。臨床転帰、生理学的転帰、安全性を比較検討Sud氏らは、急性肺損傷と急性呼吸不全症候群(ARDS)の治療について高頻度振動換気法と従来法との臨床的かつ生理学的効果を比較検討する、システマティック・レビューおよびメタ解析を行った。電子データソースを用い、2010年3月までの論文を検索し選定した。試験選択基準は、急性肺損傷あるいはARDSを有する成人または小児を対象に、高頻度振動換気法と従来の機械的人工換気法との比較が検討されていた無作為化試験とした。3人の研究者がそれぞれ個別に、あらかじめ定義されたプロトコルに従い、臨床転帰、生理学的転帰、安全性についてデータを抽出し、ランダム効果モデルを用いて解析を行った。また、選定した全試験研究者から、明確な試験方法を聞き取り、追加データを入手した。死亡率、治療の失敗、有害事象から高頻度振動換気法が優位と分析選定されたのは、8つの無作為化試験(n=419)。そのほとんど(86%)がARDS患者だった。方法論に質的問題はなかった。24時間、48時間、72時間時点での吸入酸素濃度に対する酸素分圧比(PaO2/FiO2)は、高頻度振動換気法を受けている患者の方が16~24%高かった。また同群の方が、平均気道内圧が22~33%まで上昇したが、酸素化指標に有意差は認められなかった(P≦0.01)。高頻度振動換気法群に無作為に割り付けられた患者では、死亡率が有意に低下し(リスク比:0.77、95%信頼区間:0.61~0.98、P=0.03、6試験、365例、死亡160例)、治療の失敗(難治性の低酸素血症、高炭酸血症、緊張低下、気圧性外傷)が治療中断によるものとの関連は低かった(同:0.67、0.46~0.99、P=0.04、5試験、337例、有害事象73例)。その他リスクは両群で同等だった。また、試験間の生理学的転帰にはかなりの不均一性が認められた(I2=21~95%)が、臨床転帰には認められなかった(I2=0%)。また臨床転帰の大半はイベントに基づくものではなかった。これらの結果から研究グループは、高頻度振動換気法は生存率を改善する可能性があり、かつ害悪ももたらさなさそうだと結論づけた。進行中の大規模多施設試験完了にはまだ数年を要する中、本解析データは現時点でARDS患者に対し同術式を用いている、あるいは適用を考えている臨床家に役立つものとなるとまとめている。

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新型インフル・パンデミックの機内伝播リスク、感染者席2列以内で3.5%

2009新型(A/H1N1)インフルエンザ・パンデミックに関して、WHOが非常事態を宣言したのは2009年4月25日だった。同日、ニュージーランドの開業医から、3週間のメキシコ旅行を終え米国ロサンジェルスから6時間前に帰国した高校生グループに、インフルエンザ様症状を認めたことが報告された。フライト中12人が症状を申告、後に9人が新型インフルだったことが特定された。旅客機内での感染伝播リスクは示唆されるが、機内でのインフルエンザ感染拡大が特定された例はこれまで3件しかなく、本件はそのうちの貴重な一つ。この事例を対象に、ニュージーランドのオタゴ大学公衆衛生学部門のMichael G Baker氏らは、旅客機内での感染伝播リスクと、着陸後の乗客に対するスクリーニングおよび追跡調査の効果について調査を行った。BMJ誌2010年6月12日号(オンライン版2010年5月21日号)掲載より。感染者がいた後部座席搭乗者の、到着後3.2日以内の罹患状況を追跡Baker氏らは、乗客に対し行われる健康調査票と、症状を呈した乗客への追跡検査の結果を利用し後ろ向きコホート研究を行った。対象としたのは、ニュージーランド、オークランドの国際空港に、2009年4月25日に到着したボーイング747-400機(定員379名)の後部座席搭乗者(定員128名)で、高校生グループ24人(学生22人、教師2人)と、周辺座席の搭乗者102人(うち74人はニュージーランド居住者、19人は外国人観光者、9人は乗継)のうちインタビュー調査に応じてくれた97人(95%)について検討された。主要評価項目は、到着後3.2日以内に新型インフル罹患が検査確認された搭乗者で、感染感度および特異度、またコンタクト追跡の完遂度およびタイムリーさについても調べられた。せき単独症状の感染感度92.3%と非常に高かった高校生グループでフライト中に症状を訴え、後に新型インフルと検査確定されたのは9人だった。その他の乗客のうち、到着後に新型インフルを発生した人は5人いたが、機内感染拡大例と検査確定されたのは12時間後に症状を発症した1人と、48時間後に症状を発症した1人の計2人だった。この2人は、フライト中以外の感染が考えられなかった。またこの2人の座席は、機内で罹患していたことが検査確定された乗客の座席から2列以内の範囲にあった。同範囲内の乗客は57人いて、感染リスクは3.5%(95%信頼区間:0.6~11.1%)と推計された。なお、後部座席全体での同リスクは1.9%(同:0.3~6.0%)と推計された。感染感度は、「せき」単独症状が非常に高く(症状を訴えなかったのは1例のみ)92.3%だった。その他の発熱、咽頭痛、鼻水などは30%台と低かった。また複数症状でのインフルエンザ様症状定義づけの感度は相対的に低く、米国版を用いた感度は38.5%、ニュージーランド版は米国版よりは高かったが61.5%だった。公衆衛生従事者による追跡精密検査が行われたのは93%だった。到着後72時間以内でコンタクトが取れたのは、52%にすぎなかった。以上からBaker氏は、「現代の商業飛行には、低いながらも確実に新型インフルエンザ・パンデミックの伝播リスクが、感染者の近くに集中し存在する。また曝露搭乗者の追跡調査、スクリーニングは、彼らがいったん空港を立ち去ってしまうと緩徐で困難であることが明らかになった」とまとめている。

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