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ワルファリン服用の急性虚血性脳卒中へのt-PA、症候性頭蓋内出血リスク増大みられず

組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)静注療法を行った急性虚血性脳卒中患者の症候性頭蓋内出血リスクについて、ワルファリン服用中の患者のリスクは非服用患者と比べて増大しないことが示された。その他のt-PA合併症や院内死亡率についても、ワルファリン服用による増加は認められなかった。米国・デューク臨床研究所のYing Xian氏らが、約2万4,000人の急性虚血性脳卒中患者について行った観察試験の結果で、JAMA誌2012年6月27日号で発表した。t-PA静注療法患者について、ワルファリン服用有無で出血リスク増大との関連を分析最近のガイドラインでは、ワルファリン治療中の患者へのt-PA静注は、国際標準比(INR)1.7以下の患者への投与が推奨されているが、ワルファリン服用中の患者に関するt-PA静注療法の安全性に関するデータはほとんどない。そこで研究グループは、ワルファリン服用中患者と非服用患者とを比較する目的で、2009年4月~2011年6月の間に1,203病院で登録されたAHA Get With The Guidelines–Stroke(GWTG-Stroke)レジストリの患者データから、急性虚血性脳卒中を発症した国際標準比(INR)が1.7以下の人で、組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)を静注した2万3,437人について観察試験を行った。被験者のワルファリンの服用歴の有無と、症候性頭蓋内出血の発症リスクとの関連を分析した。被験者のうちワルファリン服用中だったのは1,802人(7.7%)で、INR中央値は1.20(四分位範囲:1.07~1.40)だった。ワルファリンを服用していた人は、そうでない人に比べ、高齢で、共存症が多く、脳卒中の程度も重度だった。症候性頭蓋内出血、重度全身性出血、t-PA合併症などいずれも発症率は同等症候性頭蓋内出血の補正前発症率は、ワルファリン服用群が5.7%と、ワルファリン非服用群の4.6%に比べ有意に高率だった(p<0.001)。しかし、試験開始時点における臨床的因子で補正後は、両群の同発症率に有意差は認められなかった(補正後オッズ比:1.01、95%信頼区間:0.82~1.25)。 ワルファリン服用群と非服用群では、重度全身性出血率(補正後オッズ比:0.78、同:0.49~1.24)、t-PA合併症率(同:1.09、同:0.93~1.29)、院内死亡率(同:0.94、同:0.79~1.13)のいずれも有意な差は認められなかった。INR 1.7以下のワルファリン服用患者への血栓溶解療法は、症候性頭蓋内出血リスクと統計的に有意な関連は認められなかった(補正後オッズ比:INR 0.1増大につき1.10、95%信頼区間:1.00~1.20、P=0.06)。 (當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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「一般名処方加算」新設、その後の実施率は

今回の「医師1,000人に聞きました」、テーマは “一般名処方”。2012年4月より、2012年4月の診療報酬改定における後発医薬品使用促進策の一つとして「一般名処方加算」が新設されたことは先生方ご存知の通りです。この改定を受けて先生方の意識はどう変化したのか?「4月以降実施するようになった」医師は全体でどれくらい?病院と診療所、実施率はどう違う?CareNet.comで2011年12月に実施した一般名処方の実施率調査も比較しながらご覧ください。結果概要はこちらコメントはこちら設問詳細「一般名処方」についてお尋ねします。4月6日付の『日刊薬業』によると、『4月の診療報酬改定で加算点数が新設されたことをきっかけに、全国各地で一般名処方を含む処方箋が増加している。当初は加算新設の効果に懐疑的な見方もあったが、改定施行直後からクリニックを中心に一般名処方が広がっているもようだ。この急増ぶりに東京都薬剤師会は3日付で、処方医や薬局薬剤師が一般名処方に不慣れな中では調剤過誤につながる恐れもあることから、傘下薬局に注意喚起の事務連絡を出した。4月の診療報酬改定では後発医薬品使用促進策の一つとして「一般名処方加算」が新設。医師が一般名処方を含む処方箋を発行した場合、交付1回当たり2点を保険請求できるようになった。一般名処方を含む処方箋について全国の調剤薬局からは、「前年に比べ2割ほど増加した」(札幌市の調剤薬局)、「すごく多い。混乱している」(広島県の調剤薬局チェーン)との声が出ている。大阪府薬剤師会の乾英夫副会長は「府内でも増えている。混乱しているのは確か」と話す。東京都薬は「一般名記載の処方薬を含む処方箋がかなり多い。ここまで来るとは思っていなかった」(事務局)と、予想以上の急増を指摘している。台東区の薬局の薬剤師は「一般名処方の処方箋は全体の25~30%。処方箋発行元医療機関の約9割が一般名処方を出している」と説明する。(略)』とのこと。そこで先生にお尋ねします。Q1. 先生の勤務施設では、一般名処方を行なっていますか?1.行なっている2.一部行なっている3.行なっていないQ2. Q1で「行なっている」「一部行なっている」と回答した先生にお尋ねします。一般名処方に関して、以下当てはまるものを全てお答え下さい。これまで行なっていなかったが、4月以降行なうようになった以前から行なっていたが、4月以降増えたレセコンの設定で自動的に一般名処方となる後発薬のある薬剤はほぼ全てを一般名処方としている処方薬のうち少なくとも1種類は一般名処方としている処方箋の書き方に難しさを感じるどの後発薬を調剤するかは調剤薬局に任せる調剤薬局からの問合せが増えた当てはまるものはないQ3. Q1で「行なっていない」と回答した先生にお尋ねします。今後一般名処方を行なう予定はありますか?1.行いたい2.薬剤によっては一般名処方でも良い3.行いたくないQ4.コメントをお願いします。今回の診療報酬改定、ご勤務施設の方針、処方箋を書く際やレセコンについて感じること、一般名処方の浸透に対してのお考えなど、一般名処方に関することでしたらどういったことでも結構です。アンケート結果Q1. 先生の勤務施設では、一般名処方を行なっていますか?Q1で「行なっている」「一部行なっている」と回答した先生にお尋ねします。一般名処方に関して、以下当てはまるものを全てお答え下さい。Q3. Q1で「行なっていない」と回答した先生にお尋ねします。今後一般名処方を行なう予定はありますか?2012年6月15日(金)~20日(水)実施有効回答数:1,000件調査対象:CareNet.com医師会員結果概要一般名処方を行なっている医師は3割超、前回調査時より倍増 診療所医師では半数を超える勤務施設での現在の実施状況では、「行なっている」との回答が15.1%(昨年5.7%)、「一部行なっている」が19.3%(同11.5%)。何らかの形で実施している医師は17.2%から34.4%と、昨年12月の調査時と比較すると倍増した結果になった。また、そうした医師に状況を尋ね「これまで行なっていなかったが、4月以降行なうようになった」との回答が60.8%。「以前から行なっていたが4月以降増えた」が14.8%であった。また施設規模別で見ると、病院医師で合計30.1%、診療所医師で56.0%の実施率となった。今後について、現在行なっていない医師の6割が「行いたい」「薬剤によっては」と回答一方、現在「行なっていない」と回答した医師に今後の意向を尋ねたところ、「薬剤によっては一般名処方でも良い」51.4%、「行いたくない」40.5%、「行いたい」8.1%という結果となった。『後発薬の信頼性に問題がある』『商品名で覚えていたものを新たに覚えなおすのは難しい』といった回答が多く見られた。「行いたい」とした中では、『自動変換してくれるなら』『面倒なので』など、レセコンに関するコメントを寄せた医師が多かった。「後発薬のある薬剤はほぼ全て一般名処方」としている医師は11.6%その他、現在行なっている医師の状況として「レセコンの設定で自動的に一般名処方となる」との回答が16.3%いる一方で、「処方箋の書き方に難しさを感じる」との回答が16.0%とほぼ同程度となった。「処方箋のうち少なくとも1種類は一般名処方としている」は15.7%、「後発薬のある薬剤はほぼ全てを一般名処方としている」との回答が11.6%。CareNet.comの会員医師に尋ねてみたいテーマを募集中です。採用させて頂いた方へは300ポイント進呈!応募はこちらコメント抜粋 (一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「成分・効能が同じでも患者さんの方からすれば違ったものと捉えることが多いようです。医療費高騰の観点からのみでジェネリックにするのは考え物です。」(60代,病院勤務,リハビリテーション科)「後発品と先発品で適応疾患が異なるのが問題。当院では一般名では印字できないのですべて手書きになります。一般名処方は現状では普及しないと思います。」(50代,病院勤務,精神・神経科)「後発品の数が多すぎて、後発品の商品名で処方しても薬局によっておいているものが違い、その度変更可かどうかと問い合わせがくる。それも面倒なのだが、一般名はなじみがなく処方する際に手間がかかる。先発品の名称で処方しても、「変更可」とチェックを入れれば一般名処方と意味は同じになると思うので、かならずしも一般名でなくていいと思う。もう少し現場のことを考えてほしい。」(30代,病院勤務,外科)「仕事が煩雑になり大変迷惑。」(40代,病院勤務,精神・神経科)「処方された薬剤名を電子カルテに残したほうが良いと思うので手間が増えている。」(50代,その他,内科)「処方箋が長くなるので、印刷されているとはいえ、見づらい。コンピューター入力できない項目(例えば、不均等な服用、汎用しない頓服項目)など、つい書き加えるのを忘れる。医療機関はたいへんな思いをして2点しか加算されない。薬局ばかりが得をしていると感じている。」(40代,診療所勤務,精神・神経科)「移行期は作業が増えるが、将来的には効率的かと思う。」(30代,病院勤務,精神・神経科)「病院全体の問題なので当科の一存では決められない。やるならやるでいいし、やらなくても良い。」(50代,病院勤務,泌尿器科)「一般名処方をしてでも2点を稼がなければいけない保険制度に問題あり。一般名処方が一般化すればやがては2点加算も無くなり、逆に商品名処方だと減点される方向に動くだろう。製薬メーカーのMR活動は消滅。対薬局MS活動が中心になるだろう。医薬品の精度、安全性はどのように担保し、薬害時の補償はどうするのだろうか。」(50代,病院勤務,泌尿器科)「一般名を調べるのに時間をとられて、業務に支障あり。 」(50代,病院勤務,整形外科)「血圧関係では、慣れたARBを使用したいので一般名処方はしたくない。」(60代,その他,産婦人科)「一般名で構わないと思うが、この無理やりなやり方には反発を感じる」(40代,診療所勤務,精神・神経科)「点眼ビンの使いやすさや点眼時の刺激などが各薬剤にて全く異なるので、眼科的にはなじまない」(40代,診療所勤務,眼科)「調剤薬局からの問い合わせが多く、非常に手間を感じている」(30代,診療所勤務,腎臓内科)「一般名処方出来る薬と出来ない薬があるので、混乱している。4月に入って直ぐに後発薬のあるものすべてを一般名処方に変えたが月の半ばでレセコン会社から半分以上出来無いとの連絡があり戻して混乱した。その根拠が分からない。」(50代,その他,眼科)「加算につながることなので、経営上やらざるを得ないが、露骨なジェネリックへの誘導措置であり、気分はあまりよくない。」(40代,診療所勤務,内科)「電子カルテが、製品名を入力しても一般名が選べるとか、サポート機能が充実すれば一般名処方はやぶさかではない」(50代,病院勤務,外科)「自分がわざと安いジェネリック薬を選んで処方しても,薬局で高いジェネリックに変更されている.これまでと逆のことがおこっている.」(30代,病院勤務,神経内科)「いままでよりわかりやすくていいです。ただ、患者さんに商品名を伝えるべきなのか、一般名にするのかは、どちらにしても名前が変わってくることが多いため、患者がどう感じているか心配ではある。」(30代,診療所勤務,膠原病科)「商品名に慣れ親しんだ患者さんやベテラン医師に受け入れられるまで時間はかかると思うが、一般名処方をすると、先発品と後発品を同じ名前で処方できる、一般名で学んだ薬学の知識を新人医師がそのまま使えるというメリットがある。いずれ世間は一般名処方に移行していくと思う。」(30代,病院勤務,呼吸器科)「他の医療機関から来た患者の処方を見るときは、一般名処方の方が、聞いたこともないジェネリック薬品の製品名よりはるかに良いと思います。」(50代,診療所勤務,代謝・内分泌科)「電子カルテの動きが遅くなるため実施していない。」(40代,診療所勤務,耳鼻咽喉科)「いちいち薬局からこの薬にしましたと連絡を受けるのは面倒」(60代,その他,泌尿器科)「後発品の普及をさせたい意図はわかるが 現場の状況を厚生省はよく検討して欲しい」(30代,病院勤務,麻酔科)「いろいろな医療機関で様々な薬を処方されていてその患者が入院した場合何の薬を処方されていたのか調べるのが大変な労力がいる。またすべて同じ効果があるのか疑問。」(60代,病院勤務,外科)「レセコンでは一般名→商品名、商品名→一般名いずれも変換できますので、特に困ることはないのですが、保険点数2点ですからねえ、労力の割には報われないような気がします。」(50代,病院勤務,外科)「一般名が複雑な名称の場合があり(例えばxxxxリン酸塩、など)、また馴染みの少ない名称の場合も少なくなく、処方ミスに繋がる可能性がある。」(50代,病院勤務,代謝・内分泌科)「アップデートの必要がある情報が山のように有るので、覚えないですむ情報に時間を費やすのはさけたい」(40代,病院勤務,外科)「他施設から紹介されてくるケースで、後発品の処方がなされているケースだと何が投与されているのか一々調べなければならない。それなら一般名処方のほうがましに感じる。 」(40代,病院勤務,整形外科)「電子カルテのソフトで対応していかないと,何の薬が出ているのかわからないので,医療事故の原因になるはず…」(50代,病院勤務,呼吸器科)「薬剤師、医師とも不慣れな一般名より、商品名での処方が良いと考えている。現状の「どちらでも良い」という中途半端な状態がもっとも危険。」(50代,その他,外科)「当院の処方は全て自動的に(変更不可)になっている」(50代,診療所勤務,整形外科)「いまだ過渡期になるのでしょうか?かなり前から議論されていますが、いまだに統一した見解、取り決めがなされていないのは疑問に思います」(40代,病院勤務,麻酔科)「これだけ医療ミスが問題とされているのに、 わざわざ一般名にしてミスをするリスクをあげる必要性があるのだろうか?」(40代,病院勤務,膠原病科)「医師になったばかりの頃は、一般名の処方の方が判りやすかったが、段々、経験を積むにつれて、メーカーごとに違う薬剤名の方に慣れ親しんで行った。だから、これから医師になる人々にとっては一般名処方は良い傾向だと思う。」(50代,病院勤務,産婦人科)「一般名のほうがよいが、コメディカル(看護師など)の方々にも浸透するにはまだまだ時間が掛かると思う」(30代,病院勤務,その他)「コンピュータで一般名が選択できるので処方は簡単。」(30代,診療所勤務,産婦人科)「院内処方なので、一般名にするメリットは感じない。制度でそうするというのなら従うが、慣れるまではしんどいな。」(40代,病院勤務,精神・神経科)「処方された薬剤に関する責任の所在を明確にしてほしい」(40代,病院勤務,精神・神経科)「長い目で見れば、製品名と一般名の2種類を記憶する必要がなくなるので、一般名処方は推進されるべきと思います。 」(30代,病院勤務,腎臓内科)「今から、以前覚えた商品名に対する一般名を覚える余力がない。」(40代,病院勤務,血液内科)「後発薬の場合、実際に効果が違うように思うものがあるのも確かであり、指定が必要なものもあるかと思います。 また、患者さん側も薬の名前が違うことに不安を感じるのでは。 混乱を招かないためにも後発薬は一般名そのものや一般名をもじったものにして欲しいものです。」(30代,病院勤務,整形外科)「現場が混乱し、インシデントの原因となるので、一般名処方が必要だとか一般名が定着しているものに限って行なうべきと思います。」(30代,病院勤務,整形外科)「この制度はおかしい。「後発品への変更可」から、「後発品への変更不可」に変化し、ここで一般名にしたところで、現場が混乱するだけ。後発品変更不可としない処方箋に2点つくようにしさえすればよかったのに」(40代,病院勤務,内科)「先発薬にこだわりたい。」(40代,病院勤務,内科)「たった2点のためやるかと思うと、情けないです。」(40代,診療所勤務,産婦人科)「昔ながらによく使用している薬剤を、一般名でいまさら覚えるのがおっくうです。」(40代,病院勤務,呼吸器科)「電子カルテのオプション整備費としてかなりの金額が必要ですので、考慮中です。」(60代,病院勤務,消化器科)「一般名をすぐに連想させるような商品名であると覚えやすいため使用してもよいと考える」(20代,病院勤務,産婦人科)「以前は紛らわしい名前の薬の書き間違いによる医療事故が取りざたされていましたが、ジェネリックや一般名処方ではますます間違いが増えることが明らかです。(処方している医師仲間が言っているので間違いないです。)今は患者の命よりも医療費の抑制が優先される時代なんだと理解しています。」(50代,病院勤務,呼吸器科)「とくに勤務施設からの指示はありませんが、ジェネリック医薬品の採用品がころころ変わるこの頃、一般名での処方のほうが便利かもしれない」(40代,病院勤務,内科)

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成人トゥレット症候群に対するアリピプラゾール治療成績(100例報告)

トゥレット症候群は1,000~2,000人に1人の割合で発症する神経精神疾患である。小児期で発症し、チック症状の軽快と増悪を繰り返しながら慢性に経過する。原因は明らかになっていないものの、脳内神経伝達物質であるドパミンの過剰活動によると考えられている。そのため、トゥレット症候群の治療では抗精神病薬(適応外)を使用することも少なくない。Wenzel氏らは抗精神病薬アリピプラゾールがトゥレット症候群に対し、有用であるかを検討した。J Clin Psychopharmacol 誌オンライン版2012年6月19日付報告。専門外来受診患者を含むトゥレット症候群患者100例(男:女=78:22、平均年齢27.1±11.5歳)を対象にアリピプラゾール5~45㎎/日(平均:17.0±9.6mg/日)を投与した際の、有効性および忍容性を後ろ向き検討にて実施した。対象患者のうち95例は1剤以上の神経抑制薬で効果不十分であった症例であった。主な結果は以下のとおり。 ・82例でチック重症度の著しい改善が認められた。・48例で治療効果を12ヵ月以上維持することが可能であった。・5例で抑うつや不安、攻撃性などが認められた。・31例で治療を中断した。中断理由は、効果不十分7例、副作用(眠気、興奮、体重増加、睡眠障害)15例、効果不十分かつ副作用4例、その他5例であった。・成人トゥレット症候群患者におけるアリピプラゾールによる治療は、これまでの報告同様、有効性と安全性が示された。(ケアネット 鷹野 敦夫) 関連医療ニュース ・増加する青年期うつ病 、早期発見へ ・双極性I型障害におけるアリピプラゾールの有効性-AMAZE試験より- ・学習障害の有無によるメチルフェニデートの有用性を検証

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第4回医療事故に係る調査のあり方に関する検討部会感想文

医療制度研究会中澤 堅次 2012年6月25日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  この文章の目的は、医療事故調査制度に関心を持たれている人たちに、問題を共有していただくことで、中澤の個人的な感想として書かせていただいています。代表する団体がなく、どのような資格で参加したのか自分でもわかりませんが、個別の診療に責任を持ってきた一臨床医としての立場で、皆様のご意見をいただき、具体化が進む議論の参考にさせていただきたいと思います。第4回はささえあい医療人権センターCOML理事長山口育子氏のプレゼンから始まり、そのあとでいよいよ、事故調の目的、対象と範囲、調査を行う組織というようにテーマを絞って決めてゆく段階になりました。次回は7月26日に開催予定です。1)山口育子氏の発表山口理事長の発表は、家族の声が反映されるので、実態に即した分析が行われ、今後議論の核になるポイントを良くおさえていると思いました。家族の不信の原因は、説明不足など情報の共有がなされていないことや、医療者の態度と対応にまずさがある。家族が求めることは、真相究明、謝罪、賠償、処分、再発防止であり、現行制度では訴訟以外に訴え出るところがなく、納得のゆく第三者の説明を求めている。山口氏がイメージする第三者は、公的で地域格差がなく、迅速な対応が得られ、手続きが簡単な、専門的で多角的で、臨床経験者による検証が望まれる。また、患者側にわかりやすい説明が出来る説明者が必要で、検討の結果を現場にフィードバックできる組織を求めており、調査は双方からの申し出により始まり、死亡だけに限定されない組織を考えているとの内容でした。その他、医療の不確実さ、専門性、幅の広さなどが要求され簡単ではないことにも触れています。問題の本質をつかんでおり良い発表と思いました。質疑では、不満の解消に院内調査の重要性が議論され、大方は共通した方向性になりましたが、原告団を代表する立場で参加されている豊田氏からは、院内調査には技術的に限界があるとの意見がだされていました。2)本題の討論1.目的について院内調査重視の小生と、第三者機関重視の樋口氏では目的の認識も異なりましたが、大方の意見は、目的は原因究明と再発防止でした。また原因究明は目的ではなく手段だという認識もあり、目的は再発防止だという点で一致していました。小生は被害を受けた人の希望に沿って、補償と再発防止だと主張しましたが、補償の考えはほかの委員には重視されず、取り上げられませんでした。処分が目的という議論が表面に出ないので、処分と再発防止は両立しないことをはっきりさせるために、産科医療補償制度を例にとって説明したところ、多くのメンバーが産科医療補償制度の設立にかかわっており、事実認識の相違と反論が小生に集中しました。弁護士の加藤氏と宮澤氏から具体的な説明がされ、報告書は公正なものであり、司法判断に事実上使われるのは仕方がないという意見だったので、それが問題であることを伝えました。同じく制度設立にかかわった飯田氏は同じ意見を出したが受け入れられなかったことを述べられ、看護協会代表の松月氏からも、看護師が処分の対象になっていることに対する懸念が出されました。2.対象範囲について対象は死亡例に限り、発展的には死亡例以外に広げるというのが大方の意見です。第三次試案では院長に課せらた強制的な届出によるケースが対象でしたが、家族または医療者が届け出たケースが基本になるということで異論がないようでした。小生としては、犯罪死と故意の疑われる事故死は対象としないことを確認する必要があると思っていますが、目的が再発防止に絞られたので意見を出すチャンスがありませんでした。3.調査を行う組織について小生を除きすべての構成員は第三者組織を作るという意見で、小生にいいかと確認されましたので、今の段階で決めずに、議論が進んだ後でもう一度振り返りの議論を認めてもらうことをお願いしました。そして第三者機関が出来るとしても、その場合は司法と行政からは独立したものでなくてはならないことを強調しておきました。今後第三者を作るということを軸に議論は進むと思われます。

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米国の大学医師の給与、男女間で格差

米国の大学で医学研究に従事する医師(physician researcher)の給与について、専門性、研究施設の特性、学問的生産性、大学ランク、労働時間、その他の格差の因子で補正後も、男女の格差が存在することが明らかにされた。米国・ミシガン大学のReshma Jagsi氏らが行った調査の結果による。一般に同じように働いている男性と女性の医師に同様の給与が支払われているかどうかは不明であった。JAMA誌2012年6月13日号で発表した。NIHアワードK08、K23授与者1,853人を対象に調査研究グループは、比較的均一な医師研究者集団に性差による給与格差があるのか、あるとすれば、その格差は専門性や生産性その他の因子で説明できるかどうかについて調査を行った。調査は、2009~2010年にかけて郵送調査で行い、対象は、2000~2003年に米国国立衛生研究所(NIH)からアワードK08およびK23の研究費を授与された1,853人のうち、住所が特定できた1,729人だった。郵送調査の回収率は71%。解析対象は、米国内の大学施設で診療へと結びつけており、現在の年俸を報告した800人の医師に限定した。主要評価項目は自己申告による年俸で、以下の特性を踏まえた線形回帰モデルで解析した。性、年齢、人種、婚姻状況、子どもの有無、付加的な学位等級、大学での職位、指導的地位、専門性、研究施設のタイプ、地域、NIHの資金提供順位、Kアワード授与以降の施設経験、授与されたKアワードタイプ、Kアワードによる資金提供研究施設、Kアワード授与後の年数、資金提供額、出版実績、労働時間、研究に費やす時間。同じ能力なら女性医師の給与はいまより1万2,000ドル超高いはず調査集団における平均給与は、女性医師が16万7,669ドル(95%信頼区間:15万8,417~17万6,922)、男性医師が20万433ドル(同:19万4,249~20万6,617)だった。専門性、大学での職位、指導的地位、出版実績、研究時間で補正後の最終モデルでも、男性のほうが高給だった(+1万3,399ドル、P=0.001)。Peters-Belson解析(男性の回帰モデルから導き出された係数を女性にあてはめた)の結果、女性医師の平均給与は、もし女性医師が正確に計った特性を備えている男性だとすると、観察された給与より1万2,194ドル高くなるはずであることが示された。(朝田哲明:医療ジャーナリスト)

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厚労省も新制度義務化:精神疾患患者「社会復帰」へ

 「統合失調症」へ呼称変更されてから10年が経過した。この間を振り返り、「統合失調症呼称変更で何が変わったか?」との演題で、国立精神神経医療研究センター 高橋清久氏がヤンセンファーマメディアセミナーにて講演した(2012年6月14日)。社会復帰を目指した「統合失調症」への呼称変更 2002年、世界精神医学会(WPA)横浜大会と同時開催された日本精神神経学会総会において「精神分裂病」から「統合失調症」へ呼称が変更された。変更の背景には、精神分裂病という病名が「精神そのものの分裂」と誤解されることによる患者や家族の苦痛が、予後や社会復帰への悪影響につながっていることがあった。そのため、病名が患者や家族に不利益をもたらさないよう考慮し、さまざまな新病名案の中から「統合失調症」が選ばれ、これに改めることとした。さらなる「統合失調症」への理解を求める 本セミナーでは20代~60代の一般人男女500名を対象に、統合失調症に対する理解度やイメージに関する全国web調査の結果も報告された。精神疾患の病名に対する認知状況では、「うつ病」が92.4%と最も高い一方で、「統合失調症」は55.6%と約半数程度であった。さらに「精神分裂病」に対する認知度は64.6%と統合失調症よりも依然として高い結果であった。また、「統合失調症」の認知状況は、「あまり知らない」「全く知らない」と回答した割合が61%、「非常によく知っている」「よく知っている」と回答した割合が14%と大きな開きがあり、病名および疾患全般に関する理解が十分でないことを示す結果となった。統合失調症患者との触れ合いがポイント 統合失調症のイメージに関する調査では、多くの方が「実際よりも重い病状の病気である」との認識を持っている。そして、以前の調査よりは減少してはいるものの、「なるべく関わりたくない」と不安を抱いている割合が高かった。また、「統合失調症」に対する認知が高い(非常によく知っている/よく知っていると回答)人ほど統合失調症患者は差別されているというイメージを持っていることもわかった。 高橋氏は「統合失調症に対する誤ったイメージを是正する手段として、患者との触れ合いを体験することが重要である」と語る。看護学生を対象に、統合失調症患者への実習体験前後のイメージ調査の報告を紹介し、実習前は統合失調症に対し「怖い」「暗い」「コミュニケーションが取れない」と感じていたが、実習後は「怖くない」「やさしい」「普通」とイメージが変化することから、より多くの方々に触れ合い体験する機会を持ってほしいと述べた。統合失調症の治療ゴールは「社会復帰」 社会復帰を目指す上で、治療薬や治療ターゲットも変化している。入院主体の医療から外来移行、社会復帰を目指し、第二世代抗精神病薬を主体とした単剤治療や再発防止をターゲットとした治療が求められるようになってきた。最近では第二世代抗精神病薬の剤型も豊富になっており、「液剤」や「口腔内崩壊錠」「徐放錠」「持続性注射剤」など患者の希望や生活スタイルに合わせた剤型選択が可能となり、服薬アドヒアランスの向上および再発予防に寄与するものと考えられる。高橋氏は「持続性注射剤の使用は社会復帰やQOL向上などメリットが大きい」ということを具体的な事例を交えて強調した。統合失調症患者の「社会復帰」へ厚労省も動き出す 厚生労働省は、新たに精神障害者の採用を企業に義務づける方針を固めた。障害者雇用促進法は、企業などに、全従業員に占める障害者の割合を国が定める障害者雇用率以上にするよう義務づけている。これまで、障害者の範囲は「身体障害者」「知的障害者」に限られていたが、「統合失調症」や「うつ病」などの精神疾患患者を新たに加える。これにより、統合失調症患者の社会復帰がさらに進み、より多くの方々の統合失調症に対する認知向上と偏見の是正がもたらされることが期待される。関連医療ニュース 日本おける抗精神病薬の用量はアジア各国と比較し、まだ多い―REAP調査― パリペリドンはリスペリドンより安全性プロファイルが良好 認知症の在宅支援強化へ、厚労省が新対策  担当者へのご意見箱はこちら

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鍼灸の現状と問題(2) 保険外併用療養費の考察

北海道鍼灸マッサージ柔整協同組合 理事 健保対策委員長NPO法人 全国鍼灸マッサージ協会 理事 広報/渉外局 健保推進担当渡邊 一哉2012年6月15日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 鍼灸が現状の健康保険法の87条、療養費の枠組みで健保の支払いが償還払いになって久しい。昭和の30年代には日本鍼灸師会が健保の推進を掲げて運動している事からそれ以前、戦後マッカーサーが鍼灸禁止の発令をしようと、日本の医療者と論議になっているのが昭和25年前後と思われる事から、それから数年で健康保険を使っての鍼灸が始まってる事になる。 現在の日本の鍼灸は医業行為とは呼ばれず、法的には医業類似行為と言われている。これに不服を感じ、医業になるべきだ、医療行為となぜ言われないのか?と鍼灸の業界団体もまた、ここ数年で相次いで設立された鍼灸系の大学などでも、盛んに研究が行われ、EBMの確立に躍起になっている。 おそらく、数年の後にはある程度EBMの確立を生むかもしれない。それはそれで素晴らしい事だし、そうなる事を願ってはいる。鍼灸が病院内医療として行われ、それが患者さんに使われる事で、医療経済の側面からも薬剤や、リハビリテーションと並び、鍼灸は強力な武器にもなる可能性がある。 製薬会社から妨害があるのではないか?とか、薬剤師会と対立するのではないか?と言うような声もあるにはあるが、だとしても医療の選択肢として患者さんが医師と話し合いの上で、もしくは患者の意思を尊重してとなるのであれば、それはそれで問題のある事だとは思えない。 仮にEBMが確立をして医療に参入するとなるとどういう事が起こってしまうのか。病院内で行われる医療行為はすべて医師法に遵守した形で行われている。1.医師法第17条 医師でなければ、医業をなしてはならない。第18条 医師でなければ、医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。 このように医師に業務独占、名称独占を与えている。今の病院医療は、医師が業務独占があるために、他のメディカルスタッフはすべて医師の処方で業務をこなしている。しかも請求は保険給付である。現物給付と言われる給付の方法で請求は医師が行うのはご承知の通りである。 あまり今のところ、鍼灸の医療参入に関してはせいぜい混合診療の問題が発生しているくらいのもので、鍼灸という業務としての問題を提起する方はいない。 今の時点で鍼灸が健保を適応しているのは制度上は健康保険法の第87条の療養費の部分である。(療養費)第八十七条 保険者は、療養の給付若しくは入院時食事療養費、入院時生活療養費若しくは保険外併用療養費の支給(以下この項において「療養の給付等」という。)を行 うことが困難であると認めるとき、又は被保険者が保険医療機関等以外の病院、診療所、薬局その他の者から診療、薬剤の支給若しくは手当を受けた場合におい て、保険者がやむを得ないものと認めるときは、療養の給付等に代えて、療養費を支給することができる。 この療養費の87条は療養の給付が困難であると認める時と条文上では書かれている。現在のこの条文に関しての運用は、厚労省から通知がでている。 最新の厚労省の鍼灸に関しての疑義解釈資料(平成24年2月13日発布)によれば、療養の給付等が困難な場合とは慢性病であり、医師による適当な医療手段のないもので主として神経痛、五十肩、腰痛など他類焼疾患となっており、漫然と医療を受け続けても、治癒に至らないものとされている。 この解釈を巡っては様々な論議があるが、今のところは医師の同意書が発行されれば、その条件に関してはあまり言わない保険者が大半を占める。一部、保険医療機関担当規則を持ち出してくる保険者もいるにはいるが、そもそも日本の行政は裁量行政であり、その場その場、時代時代に、条文を無理矢理都合を合わせて行く事が日本の行政であり、そうでないと時代が移行する度に、条文改正や、国会での論議という事になるのは大変な事で、それである程度、幅を持たせて解釈をしている。 時に拡大し過ぎ、飛躍し過ぎという話もあるが、それをある程度調整をつけていくのが医療であれば厚労省の役割でもあろうと思う。 話を戻すが、この療養費は、償還払いが原則で、現物給付は請求権は医師にあるのに対し、償還払いは被保険者請求である。 それを代理請求して鍼灸師、もしくは第3者が行っている現状がある。これはこれで複雑で煩雑な書類を被保険者が行う手間を、慣れている者が行うことでガードが下がり国民の受療が進むというメリットはある。 これがEBMが進み、医療になるとすると、医師以外は医療を行えないという医師法の原則からいくと鍼灸師は医師の処方下でないと鍼灸治療が行えなくなるという現実がある。あくまで条文を条文通りに行くとという事であるが。 事、医師法に関しては、他の法律と違い、かなりコンプライアンスを守らなければいけないし、医師法は日本の医療に関しては統治している法律である。ここの医師以外で医療を行うという部分に鍼灸師が参入する事を医師はおろか、他の医療関連職種も黙っているわけには行かないだろうと思う。 この問題は、くしくもEBMがある程度確立し、日本で鍼灸が認められ、病院内医療として行われ始めると同時に発生する。 この問題をいったいどうしていくのがいいのか。日本の現存の開業鍼灸師は、病院内医療が始まるとどうなるのか?ここに解決の道はないのか。 私案であるが、保険外併用療養費に鍼灸を選定療養としてでも入れる事で、病院内では保険外併用療養費として、病院外では健康保険法87条の療養費払いとして、支払う事が可能になるのであれば、病院医療と開業鍼灸師との共存が可能である。あくまで法律上ではあるが。 保険外併用療養費に鍼灸が認められれば、混合診療問題も鍼灸に関しては除外される事になる。鍼灸が医療参入できないのはひとつには混合診療問題からだと言われている事からそれは問題回避する事ができる。 現在の保険外併用療養費は下記になる。●評価療養(7種類)・先進医療(高度医療を含む)・医薬品の治験に係る診療・医療機器の治験に係る診療 ・薬事法承認後で保険収載前の医薬品の使用・薬事法承認後で保険収載前の医療機器の使用・適応外の医薬品の使用・適応外の医療機器の使用●選定療養(10種類)・特別の療養環境(差額ベッド)・歯科の金合金等・金属床総義歯・予約診療・時間外診療・大病院の初診・小児う触の指導管理・大病院の再診 ・180日以上の入院・制限回数を超える医療行為 この指定は厚労大臣が認定して行う事になっていて、そこに鍼灸が参入というのはもっとも今の法律を変えず、開業鍼灸師も打撃を大きくはうけず、病院医療で行う事からさらにEBMの確立に向けていけると思うし、国民のアクセスのしやすくなる。 医療経済的にどうなのか?と問われれば、やってみないとわからない事が多く、予想としては薬剤やその他の医療と基本的には併用はできない仕組み作りにして行くと経済効果もあるとは思うのだが、厚労省側で、一部地域やもしくは時限的にとかで選定療養としてやってみないと医療経済的にはわからない。 とりあえず、地域を限定してやってみるというのも方法である。その際、開業鍼灸師には、同意書の発行など医師が渋る事のないように便宜をはかる必要があり、あくまで、選択は患者さんが、国民にあるという姿勢で行く事が必要ではないかと思われる。料金的にも保険外併用療養費であれば、はり術きゅう術 電療合わせて1525円になり、開業鍼灸師であれば、その割合負担が患者さんの負担である。厚労省の裁量行政でなんとかなる話なのである。

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教育講演「分子標的薬の現状と展望―副作用対策を含めて―」

座長 清原 祥夫氏 (静岡がんセンター 皮膚科)中川 秀己氏(東京慈恵会医科大学 皮膚科学講座)ビスフォスフォネートの抗腫瘍効果についてはいまだ賛否両論がある。現在までにいくつかの臨床試験の結果が報告されており、システマティックレビューとメタ分析が行われた。ここでは、主にチロシンキナーゼ阻害薬による皮膚症状の特徴と対処法、抗体医薬使用時の注意すべき副作用について前編、後編に分けてレポートする。皮膚科医とチロシンキナーゼ阻害薬・抗体医薬の関わりとは?本教育講演では、まず、自治医科大学皮膚科学教室 大槻マミ太郎氏が分子標的薬の概要について講演を行った。初めに、大槻氏は、今後、シェアを確実に伸ばしていく薬剤として低分子のチロシンキナーゼ阻害薬や高分子の抗体医薬などを挙げ、これらの薬剤がターゲットを絞り込む分子特異的治療の両輪となっていると述べた。キナーゼ阻害薬は主に抗がん剤として用いられており、皮膚科領域でも、悪性黒色腫などに対する開発に期待が高まっている一方、現時点では、その副作用として高頻度に発現する皮膚症状とその対処法に注目が集まっている。また、抗体医薬は免疫疾患のQOL改善に貢献度が高く、皮膚科では乾癬治療薬としてTNFαやIL-12、IL-23を標的とした生物学的製剤に期待が寄せられているが、ほかの適応疾患における使用により、乾癬型の薬疹の発現が報告されており、その対処も議論されている。このことを踏まえ、乾癬の治療に関しては、新しい分子標的薬は標的がピンポイントであるため、副作用も絞り込まれると期待されているが、特定の経路のみ抑制すると別の経路が活性化される可能性があり、未知なる「逆説的副作用」が生じる可能性がある。一方で、シクロスポリンなど作用点は多岐にわたるがさまざまな経路を幅広く抑制しうる薬剤は、副作用も経験的に熟知されており、古典的であるがゆえに、使い勝手の良い薬剤ともいえる、と大槻氏は述べた。EGFR阻害薬の皮膚症状と対処法:主にざ瘡様発疹について滋賀医科大学皮膚科学講座 藤本徳毅氏はEGFR(上皮増殖因子受容体)阻害薬による皮膚症状と対処法について、考察を述べた。EGFR阻害薬には、ゲフィチニブ(商品名:イレッサ)やエルロチニブ(同:タルセバ)などのチロシンキナーゼ阻害薬と、セツキシマブ(同:アービタックス)やパニツムマブ(同:ベクティビックス)などのモノクローナル抗体があり、非小細胞肺がんや大腸がん、膵がんなどに使用されている。これらの薬剤は、EGFRシグナルを阻害することにより、腫瘍の増殖を抑制し、原疾患への効果を発揮する。一方でEGFRは正常皮膚の表皮基底細胞や外毛根鞘細胞などにも発現することがわかっており、EGFR阻害により、活性化EGFRが減少し、ケラチノサイトの角化異常、角質の菲薄化、角栓の形成が亢進することで高頻度で皮膚障害が生じると言われている。EGFR阻害薬の皮膚症状としては、主にざ瘡様発疹や乾皮症、爪囲炎などが多く、稀なものとしては脱毛性病変などが挙げられる。これら皮膚症状は、重症度が高いほど、原疾患に対するEGFR阻害薬の有効性が高い、つまり生存期間が長いことが示されており、治療効果をはかる指標となる可能性も示唆されている。ざ瘡様発疹の対処法とは?続いて、それぞれの皮膚障害の特徴や対処法について言及した。ざ瘡様発疹はEGFR阻害薬投与後、数日で発現し、4~6週でピークを迎え、6~8週で軽快するケースが多い。また、顔面や体幹に好発し、掻痒や疼痛を伴うが面疱は認められず、大半が無菌性であると言われている。藤本氏は、ざ瘡様発疹は高頻度に発現することがわかっているが、チロシンキナーゼ阻害薬よりもモノクローナル抗体のほうが重症な皮疹が出る印象がある、とつけ加えた。重症度については、日本臨床腫瘍研究グループによって公表されている「有害事象共通用語規準ver4.0 日本語訳JCOG版」(CTCAE v4.0 - JCOG)を用いるのが一般的である。ここでは、体表面積と社会的要素を中心に5段階のGradeに分類されている。ほかにも、各製品の適正使用ガイド等に、掻痒、疼痛の有無によるGradeの目安や発疹出現時の用量調節の基準などが掲載されており、参考にできるとした。対処法については、基本的に、皮膚症状による薬剤の休薬や減量は避けたいとしながら、確立していないものの経験的に実施されているいくつかの治療法について紹介した。ざ瘡様発疹の場合、炎症性ざ瘡の治療に準じて、外用抗菌薬が用いられる。また、局所療法の1つとして、ステロイド外用薬が使用されており、藤本氏は、顔面については、Grade2の場合はstrong class、Grade3でvery strong classを使用すると述べた。しかし、これまでの国内外の文献を見てみると、その評価は一定していないことにも触れ、ステロイド外用薬は即効性はあるが、上手に使いこなすことが重要であると強調した。さらに、Grade2以上または細菌感染合併例には、テトラサイクリン系抗菌薬内服(とくにミノサイクリン)が有効であることも述べた。ミノサイクリンに関しては、海外から、「6週間程度の服用を推奨する」、「皮膚症状の予防効果がある」などの報告がある一方で、「そのエビデンスレベルは不明」とする報告もあるとした。ほかにも、免疫抑制剤の外用薬を使用し、有効性が認められた報告やアダパレンゲルについても言及したが、いずれも一定の評価は得られていないとした。その他の副作用への対処法は?乾皮症は4~35%程度の発現頻度であり、EGFR阻害薬投与後、1~2ヵ月で症状が発現することが多い。治療としては、まずはヘパリン類似物質やワセリン、尿素製剤外用などによって保湿を行い、効果が得られない場合は、ステロイド外用薬を併用する。この症状に関しては、保湿による予防が重要である、と述べた。また、爪囲炎は6~12%程度の発現頻度であり、薬剤投与後2~4ヵ月くらいから見られる症状である。基本的には、浸出液が見られる場合、洗浄、クーリング、テーピング、保湿剤等による処置を行うが、発赤や腫脹が見られる場合には、初期から、very strong~strong classのステロイド外用薬を積極的に用いることが重要である。そのほか、細菌感染合併例には短期間のミノサイクリン内服、さらに外科的処置として部分抜爪や人口爪も考慮されるとした。毛髪異常に関しては、薬剤投与開始後2、3ヵ月で見られることが多いが、頻度は不明であり、中にはまつ毛や眉毛が伸びる症例も見られる。基本的には、EGFR阻害薬を中止しないことには改善しないが、患者さんからの訴えも多くはないため、中止・休薬するケースは少ないと述べた。このようなEGFR阻害薬による皮膚症状では、予防が重要であると言われている。スキンケアの指導は、清潔、保湿、刺激からの保護を基本とし、たとえば、「保湿剤はこすらずに、手のひらでおさえて塗る(スタンプ式塗布)」「外出時は日焼け止めを使用する」「爪は長く伸ばしてまっすぐ切る」などこまめな指導が必要となってくる。藤本氏は、これらスキンケアの方法を患者にわかりやすく説明し、薬剤の写真が入った説明書を配布するなどして、皮膚症状が出ても患者があわてずにすむように指導を行うことも重要である強調し、講演を締めくくった。

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医師と「法への不服従」に関する論考

神戸大学感染症内科岩田 健太郎 2012年6月12日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 平岡諦氏の「日本医師会は「医の倫理」を法律家(弁護士)に任せてはいけない」(MRIC. vol. 496. 497)を興味深く読みました。平岡氏は「医の倫理」は「法」よりも上位にあり、日本医師会は「医の倫理」に遵法を要求していることから、法律家(弁護士)が「医の倫理」規定に参画するのは間違っていると主張します。本稿の目的は平岡氏のこの大意「そのもの」への反論ではありません。平岡氏が指摘するような日本医師会の医療倫理への「操作」や歴史的プロセスについて、あるいはそこにおける弁護士の意味や役割についてぼくは十分な情報を持っていませんし、また関心事でもないからです。しかし、部分的には異議を持ちましたので、その点については、あくまでも各論的に指摘したいと思います。アメリカ医師会の倫理綱領を紹介して平岡氏はそこで「『法への非服従』を謳っている」と説明し、「A physician shall respect the law and also recognize a respondsibility to seek changes in those requirements which are contrary to the best interests of the patient」という文章を紹介します。しかし、「法への非服従」には二つの意味があります。一つは現行法を遵守しつつ、その法が「悪法である」と主張して変化を求めること、もう一つは現行法を悪法だと無視して進んで違法行為を行うことです。平岡氏が主張する「法への非服従」は後者にあたります。しかし、アメリカ医師会の文章では「seek changes」と書かれていますから、素直に読めば前者の意味と理解するのが自然です。平岡氏は自身の見解、医師の「法への非服従」にあまりにこだわるあまり、AMAの見解を曲解しています。ナチスドイツが行ったユダヤ人やその他の民族の大虐殺、そして医療の世界における非道な人体実験は我々の倫理・道徳的な観念に大きな揺さぶりをもたらしました。問題は、これらの非道な行為が「悪意に満ちた、悪魔的な集団によって行われた」というより、ハンナ・アーレントらが指摘するように、普通の常識的な人物たちが当時の法と上司の命令に素直に従って行った悪烈な行為であったことが大きな問題であったのです。ですから、それに対する大きな反省を受けて、「明白に犯罪的な命令には従ってはならない」(ハンナ・アーレント「イスラエルのアイヒマン」みすず書房 225ページ)という考えがでてきました。これが平岡氏の言う「法への非服従」でしょう。さて、「明白に犯罪的な命令には従ってはならない」は普遍的な原則です。ナチスドイツの法と命令に従った全ての人に適応可能な原則なのですから。したがって、「法への非服従」を求められる職業は平岡氏が主張するように医師だけに要求される倫理観ではありません。看護師などの他の医療者や、教師や、あるいはあらゆる社会人にも適用可能な原則です。しかし、ナチスドイツにしても、日本の731部隊にしても、その人体実験は極端なまでに悪らつで、また例外的な悪事でした。医療者は一般的に善良な意志を持っており、また善良なプラクティスを心がけています。それが必ずしも患者にとって最良な医療になる保証はありませんが、少なくともナチスドイツや731部隊的な行為は日常的には行われません。あれは、極めて例外的な事項です。日常的にあんなことが頻発されてはたまったものではありません。例外的なのだから忘却しても構わない、と申し上げたいのではありません。ハンナ・アーレントが指摘するように、そのような例外的な悪らつ非道は「ふつうの人」にも起こりえる陥穽を秘めています。だから、ぼくらはそのような「極端な悪事」にうっかり手を貸してしまうリスクを常に認識しておかねばなりません。繰り返しますが、「明白に犯罪的な命令には従ってはならない」というハンナ・アーレントの格率は、そのような極端な事例において適応が検討されるもので、日常的な格率ではありません。一方、アメリカはかなり強固な契約社会であり、法とか社会のルールを遵守するのが正しいと主張する社会です。アメリカのような契約社会でルールを破っても構わない、という考え方はかなりリスクが大きいのです。医師を含め、医療者も法やルールをきちんと遵守することが日ごろから要求されています。平岡氏のいう「法への非服従」はアメリカ医療の前提にはありません。だからAMAはseek changesとは言っても、act against the lawとは明記しなかったのです。もしアメリカにおいてそれが許容されることがあったとしても、繰り返しますが、極めてレアなケースとなるでしょう。アメリカ以外の社会においても、法への非服従が正当化されるのはナチスドイツ的な極めて例外的な悪事、「明白に犯罪的な命令」に限定されます。しかも、何が犯罪的なのかは自分自身で判断しなければならないのですが、その基準は「あいまい」であってはなりません。ハンナ・アーレントは「原則と原則からの甚だしい乖離を判別する能力」(同ページ)が必要と述べます。「甚だしい」乖離でなければならないのです。臨床試験の医療倫理規定であるヘルシンキ宣言もナチスドイツの人体実験の反省からできたものですが、ホープは極めて例外的なナチスドイツ的行為が、日常的な臨床試験の基準のベースになっていることに倫理的な問題を指摘しています(医療倫理、岩波書店)。あまりにも杓子定規で性悪説的なヘルシンキ宣言のために、患者が医療サービスを十全に受ける権利が阻害されているというのです。形式的で保険の契約書みたいなインフォームドコンセント、過度に官僚的なプロトコルなどがその弊害です。医療倫理を善と悪という二元的でデジタルな切り方をするから、こういう困難が生じるのです。多くの場合、医療の現場は白でも黒でもないグレーゾーンであり、ぼくら現場の専門家に求められるのは、「どのくらいグレーか」の程度問題なのですから。そして、アメリカであれ、日本であれ、他の世界であれ、医師が「法への不服従」を正当化されるのは(正当化されるとすれば、ですが)、極めて黒に近い極端で例外的な事例においてのみ、なのです。また、平岡氏は日本医師会がハンセン病患者の隔離政策に対応してこなかったことを批判します。その批判は正当なものです。しかし、それは「法の改正を求める」という方法と「法そのものをあえて破る」ことが区別されずに批判されています。たとえば、現行の悪法を悪法だと批判し、改正を求めることもひとつの方法なのです。そして、(引用)『医師の職業倫理指針』では「法律の不備についてその改善を求めることは医師の責務であるが、現行法に違反すれば処罰を免れないということもあって、医師は現在の司法の考えを熟知しておくことも必要である」となっています。すなわち、日本医師会は「遵法」のみを医師に要求し、「法への非服従」を医師に求めていないのです。このことは、日本医師会が「悪法問題」を解決していないことを示しています。(引用終わり)と医師会も「法律の不備」を指摘し、改善を求める必要は認めているのですから、少なくともAMAと(WMAはさておき)主張はそう変わりないのだとぼくは思います。また、平岡氏はジュネーブ宣言を引用して「いかなる脅迫があっても」と訳しますが、原文は「even under threat」、、脅迫下においても、、、という言及のみで「いかなる」=under any circumstances、とは書かれていません。この点では平岡氏の牽強付会さ、議論の過度な拡大解釈、が問題になります。平岡氏は日本医師会が「世界標準」から外れており、そこに(WMAに)従わないのが問題だといいます。その是非は、ここでは問いません。しかし、そもそも医の倫理に「世界標準」などというものを作ってしまえば、それは倫理を他者の目、「他者の基準」に合わせてしまうことを意味しています。しかし、たとえWMAがいう「規範」であっても、それが自分の中にある道徳基準を極端に外れている場合は、それに従わないというのが、カントらが説く自律的な倫理観です。AMAがこういっている、WMAがそう訴えている、「だから」それに従うというのは、そもそもその自律的な倫理原則から外れてしまいます。これは本質的なジレンマです。自律と他律のこのジレンマは、ヘーゲルら多くの哲学者もとっくみあった極めて難しい問題ですが、いずれにしても「世界標準だから」医師会にそれに従えと言うのは、自律を原則とする医療倫理における大きなパラドックスではないでしょうか。AMAの倫理規定を読むと、ぼくはいつもため息を禁じえません。http://www.ama-assn.org/resources/doc/ethics/decofprofessional.pdfそこには例えば、Respect human life and the dignity of every individual.とあります。全ての人の生命と尊厳を尊重せよと説きます。しかし、その基盤となるアメリカの国民皆保険に強固に反対してきたのも、またAMAでした(医師の利益が阻害されるからです)。このようなダブルスタンダードが、もっとも非倫理的な偽善ではないかとぼくは考えます。日本医師会がどうあるべきかは、本稿の趣旨を超えるものですが、少なくともAMAやWMAを模倣することに、その回答があるのではないことは、倫理の自律性という原則に照らし合わせれば確かなのです。

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新生児脳症に対する低体温療法後の長期アウトカム

新生児脳症に対する低体温療法の有効性に関する無作為化試験の長期アウトカムが報告された。6~7歳時点における死亡またはIQスコア70未満の複合エンドポイント発生率は、通常治療群より全身低体温療法群のほうが低かったものの、有意差は認められなかったという。ただし、低体温療法群のほうが死亡率が低く、生存例における重度障害の発生率の増大は認められなかった。米国・ミシガン小児病院のSeetha Shankaran氏らによる本検討は、これまでに18~22ヵ月時点での早期報告が行われており、その時点では死亡率および中等度~重度障害発生の有意な低下が示されていた。NEJM誌2012年5月31日号掲載報告より。通常治療群と低体温療法群で諸機能の長期アウトカムを評価研究グループは、中等度~重度の脳障害を有する新生児を、通常治療(対照群)または食道温度33.5°Cで72時間全身冷却後、緩徐に復温する治療(低体温療法群)に割り付け追跡した。6~7歳となった参加者について、認知機能、注意・遂行機能、視空間機能、神経学的アウトカム、身体的・心理社会的健康度を評価した。主要評価項目は、死亡またはIQスコア70以下とした。今回の解析では208例の試験参加者のうち、190例で主要評価項目データが入手利用できた。死亡またはIQスコア70以下、低体温療法群47%、対照群62%、P=0.06死亡またはIQスコア70以下は、低体温療法群は93例のうち46例(47%)、対照群は97例の58例(62%)でみられた(P=0.06)。死亡はそれぞれ27例(28%)と41例(44%)で(P=0.04)、死亡または重度障害はそれぞれ38例(41%)と53例(60%)だった(P=0.03)。生存小児は122例(低体温療法群70例、対照群52例)で、その他の転帰データが得られた。このうち、中等度~重度障害がみられたのは、低体温療法群69例中24例(35%)、対照群50例中19例(38%)だった(P=0.87)。また、注意・遂行機能障害はそれぞれ4%と13%で(P=0.19)、視空間機能障害は4%と3%でみられた(P=0.80)。

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手術患者に対するトラネキサム酸、輸血リスク低減は確たる証拠あり

 手術における輸血リスクを低減するとされるトラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)の有効性エビデンスについて、英国・London School of Hygiene and Tropical MedicineのKatharine Ker氏らによるシステマティックレビュー・累積メタ解析の結果、過去10年に遡って強いエビデンスがあり、輸血に関してはこれ以上試験を行っても新たな知見はもたらされないだろうと報告した。しかし、「血栓塞栓症イベントと死亡率に対する影響については、いまだ明らかではない」として、手術患者にその情報を提供し選択をさせるべきであると結論。小規模な臨床試験をこれ以上行うのではなく、種々雑多な患者を含む大規模プラグマティックな試験を行うことの必要性について言及した。BMJ誌2012年5月26日号(オンライン版2012年5月17日号)掲載報告より。システマティックレビューで129試験・総患者数1万488例を解析 Ker氏らは、手術患者へのトラネキサム酸投与に関する輸血、血栓塞栓症イベント、死亡に関する効果の評価を目的とした。Cochrane対照設定試験中央レジスター、Medline、Embaseの初刊行~2011年9月の間の発表論文、WHO国際臨床試験登録プラットフォームと関連論文参照リストを検索し、解析論文を特定した。 対象となったのは、手術患者についてトラネキサム酸投与と非投与またはプラセボ投与を比較した無作為化対照試験で、アウトカムとして、輸血を受けた患者数、血栓塞栓症イベント件数(心筋梗塞、脳卒中、深部静脈血栓症、肺塞栓症)、死亡件数を測定していたものとした。論文執筆の言語や刊行の有無などは問わなかった。 結果、1972~2011年の間の129試験・総患者数1万488例のデータが解析に含まれた。血栓塞栓症イベントに対する効果は不明、死亡に対する効果も不確定 トラネキサム酸投与は輸血を受ける確率を3分の1低減することが認められた(リスク比:0.62、95%信頼区間:0.58~0.65、P<0.001)。この効果は、割付隠蔽化を用いて解析に制限をかけた場合も維持された(同:0.68、0.62~0.74、P<0.001)。 一方で、心筋梗塞(同;0.68、0.43~1.09、P=0.11)、脳卒中(同:1.14、0.65~2.00、P=0.65)、深部静脈血栓症(同:0.86、0.53~1.39、P=0.54)、肺塞栓症(同:0.61、0.25~1.47、P=0.27)については効果が明らかではなかった。 死亡の発生は少なかった(同:0.61、0.38~0.98、P=0.04)が、割付隠蔽化を用いて解析に制限をかけた場合は、考慮すべき不確定さが認められた(同:0.67、0.33~1.34、P=0.25)。 累積メタ解析の結果、輸血に対するトラネキサム酸の効果のエビデンスは確たるものであること、過去10年にわたってそのエビデンスは確実に入手できることが示された。

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労働安全衛生法改正法案は本当にメンタルヘルス対策の充実・強化になるのか

井上法律事務所 弁護士井上 清成 2012年6月4日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 1. メンタルヘルス対策の充実・強化 労働安全衛生法の一部を改正する法律案が政府より提出され、国会で審議中である。今は、受動喫煙対策の充実・強化の一環として打ち出された「職場の全面禁煙、空間分煙」の事業者への義務付けが議論の中心となっているらしい。しかし、その法律案の真の問題点は、むしろ「メンタルヘルス対策の充実・強化」というもう一つの柱の方にあるように思う。メンタルヘルス対策の充実・強化については、「労働者の安全と健康の一層の確保を図るため、労働者の精神的健康の保持増進のための措置を充実する」必要があることが、その法律案の提出理由とされている。確かに、自殺者が毎年3万人を超えている現状においては、メンタルヘルス対策の充実・強化は喫緊の課題であろう。しかし、法律案を読む限り、本当にメンタルヘルス対策の充実・強化になっているのか、疑問が拭えない。2. 精神的健康の状況を把握するための検査法律案は、現行の労働安全衛生法で第66条から第66条の9までの10ヶ条に「健康診断」として規定されている条文の後ろに、「精神的健康の状況を把握するための検査等」という1ヶ条を、第66条の10として追加するものである。現行法に1ヶ条追加するのであるから、その程度はともかく、少なくとも充実・強化にはなるように、一見すると思えよう。新設の第66条の10の概要は、次のようなものである。「○医師又は保健師による労働者の精神的健康の状況を把握するための検査を行うことを事業者に義務付ける。○労働者は、事業者が行う当該検査を受けなければならないこととする。○検査の結果は、検査を行った医師又は保健師から、労働者に対し通知されるようにする。医師又は保健師は、労働者の同意を得ないで検査の結果を事業者に提供してはならないこととする。○検査の結果を通知された労働者が面接指導の申出をしたときは、医師による面接指導を実施することを事業者に義務付ける。○面接指導の申出をしたことを理由として不利益な取扱いをしてはならないこととする。○事業者は、面接指導の結果、医師の意見を聴き、必要な場合には、作業の転換、労働時間の短縮その他の適切な就業上の措置を講じなければならないこととする。」3. 健康診断からメンタルヘルス検査に縮減現行の労働安全衛生法は、その第66条第1項において、「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない。」と規定していた。この「健康診断」には、問診その他の方法により心身の状況を把握することも含まれていると思われる。つまり、法的には、「精神的健康の状況を把握する」ことも包含されていたと言えよう。しかし、法律案は、メンタルヘルス検査などとして第66条の10を単に追加したのではない。併せて、第66条第1項にも修正を加えようとしている。「医師による健康診断」から「精神的健康の状況に係るものを除く。」とした。つまり、現行の労働安全衛生法上の「健康診断」から「精神的健康の状況を把握する」ことを除外し、「健康診断」の内容を縮減してしまおうとしているように思う。いわば「健康診断」から単なる「検査」への縮減である。そうだとすれば到底、メンタルヘルス対策の「充実・強化」とは評しえない。現に、日本産業衛生学会の産業医部会幹事会による2012年1月13日付け「“労働安全衛生法の一部を改正する法律案”のうち、『メンタルヘルス対策の充実・強化』の部分が、労働者のためにならないことが明らかなために、廃案または一旦保留として大幅な修正を求めます」との要望(ただし、現在は、改訂により廃止されたらしい。)では、「医師による健康診断で心の健康面は診ないことを求め」「心身の健康を分離して健康診断を行うことを強いる施策」として批判されていた。4. 医師の意見から労働者の自己申告に縮減健康診断からメンタルヘルス検査への縮減と共に、医師の意見から労働者の自己申告への縮減という問題点もある。それは、現行の健康診断が「医師による」となっていたのを、メンタルヘルス検査を「医師又は保健師による」としたことに伴う。典型的には、今までは事業所の産業医が健康診断の結果を知っていたので、事業者に意見を申し述べることができた。ところが、今後は産業医自らが担当するとは限らないので、メンタルヘルス検査の結果を事業所の産業医が知りえるとは限らない。検査の結果を通知された労働者が自発的に医師による面接指導を受けることを「希望する旨を申し出」ない限り、事業所の産業医は精神的健康の状況を知りえないかもしれないのである。いわば医師の主導的な意見による改善から、今後は労働者の自発的な自己申告による改善へと、システムが一気に変更してしまいかねない。少なくとも、医師の指導中心から労働者の自己責任中心へと、大なり小なり考え方がシフトしていくように思う。果たしてそれが本当にメンタルヘルス対策の充実・強化と言えるのかどうか、十分な議論が必要である。5. 技巧的な仕切りより全面的な助成を今回の労働安全衛生法改正法案は、健康診断と検査とに仕分け、保健指導と自己申告とを仕切り、それらをもってメンタルヘルス対策の「充実・強化」だと称しているにすぎないと思う。本当の「充実・強化」につなげるためには、むしろ、技巧的な仕分けや仕切りは要らない。プライバシー保護を十分に踏まえつつも、健康診断・保健指導・面接指導を充実させ、産業医と精神科医・心療内科医との連携を強化させるなど、諸施策を総合的に推進していくべきである。そして、そこにおいて政府の果たすべき役割は、技巧的な仕分けや仕切りなどでなく、諸施策推進のための全面的な支援や助成に徹し切ることであろう。

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高齢者介護施設での身体拘束、ガイドラインや行動理論による介入で減少

高齢者介護施設(nursing home)に対し、ガイドラインや行動理論による介入を行うことで、身体拘束を受ける入所者の割合が減少することが示された。ドイツLubeck大学のSascha Kopke氏らが、36ヵ所の高齢者介護施設について行った集団無作為化試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年5月23・30日合併号で発表した。ドイツでは、身体拘束は法的に規制されており、また身体拘束の有効性と安全性についてエビデンスがないにもかかわらず、多くの高齢者介護施設でいまなお行われている現状だという。また米国の高齢者介護施設では20%で身体拘束が行われているとの報告もあるという。入所者の2割以上が身体拘束を受ける、36施設について無作為化試験研究グループは、2009年2月~2010年4月にかけて、高齢者介護施設36ヵ所を無作為に2群に分け試験を行った。試験適格とされた施設では、入所者の2割以上が身体拘束を受けていた。対象施設の一方の群(18施設、入所者数2,283人)にはエビデンスに基づき作成されたガイドラインおよび計画的行動理論に基づく介入を行い、もう一方の群(18施設、同2,166人)は対照群として特別の介入は行わなかった。介入を行った施設に対しては、看護職員に対するグループセッション、一部の看護師に対する追加的訓練、看護師や入所者、親戚などに対する教育的資料の配布などを行った。対照群には、一般的な情報を提供した。身体拘束を受ける割合、介入群は対照群より6.5%ポイント低率主要アウトカムは、試験開始から6ヵ月時点の、ベッド両側柵、ベルト、固定テーブルの設置、その他自由な行動を規制する仕掛けを用いた身体拘束を受けている入所者の割合とした。評価は、覆面調査員による1日3回の直接的評価で行われた。調査を開始したすべての施設で調査は完遂し、被験者全員について追跡を完了することができた。調査開始時点で、身体拘束を受けていた入所者の割合は対照群が30.6%、介入群では31.5%と同等だった。6ヵ月時点の同割合は、対照群が29.1%に対し、介入群では22.6%と有意に低率で、絶対格差は6.5%だった(95%信頼区間:0.6~12.4、クラスター補正後オッズ比:0.71、同:0.52~0.97、p=0.03)。同割合は、3ヵ月時点から6ヵ月時点に安定的に推移していた。転倒や転倒による骨折、向精神薬の処方率について、両群で有意差は認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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CKD診療ガイド改訂 -慢性腎臓病(CKD)は原疾患、腎機能と尿所見でリスク評価を-

日本慢性腎臓病対策協議会(東京都文京区、理事長:槇野博史、J-CKDI)は、1日、CKD診療に関して、かかりつけ医の標準化と腎臓専門医の連携を目的とした「CKD診療ガイド2012」を発行した。「CKD診療ガイド」は、2009年以来3年ぶりの改訂となる。本ガイド改訂委員長の今井圓裕氏は、今回の最も大きな改訂点として、CKDの重症度分類が腎機能だけでなく、原疾患、尿所見を評価した分類に変更されたことを挙げ、その他、血圧管理、貧血管理が臨床上に影響を及ぼす点として掲げた。最大の改訂点となった重症度分類の変更は、わが国でなく、国際腎臓病ガイドライン(KDIGO)も同様の見直しを行なっていると今井氏は言う。従来は糸球体濾過量(G = GFR)を基にした腎機能のみで評価してきたが、尿蛋白・尿アルブミン値(A = Albumin)、原疾患(C = Cause)を加えたいわゆるCGA分類で評価する。これはアルブミン尿や蛋白尿が、腎機能とは独立して末期腎不全、心血管死の発症リスクであることを示すエビデンスが確立してきたため。病期は4つに区分され、リスクに応じて腎臓専門医への相談・紹介基準や、腎臓専門医への通院間隔が推奨されている。次に注目すべき改訂点は、血圧管理。CKDにおける血圧管理については国際的に基準が変わってきており、現在の降圧目標レベルが過剰であると捉えられつつあると今井氏は述べた。これまでの蛋白尿が1g/日以上を認めるCKD患者の降圧目標値は「125/75mmHg未満」が推奨されてきたが、今回の改訂により撤廃され、「130/80mmHg以下」に統一された。高齢者においては、「140/90mmHg未満を目標に降圧し、腎機能悪化や臓器の虚血症状がみられないことを確認し、130/80mmHg以下に降圧する、収縮期血圧110mmHg未満への降圧は避ける」とさらに慎重な構え。特に夏期、RA系阻害薬投与例において、過降圧を来たし、急性腎障害で搬送される例も少なくないことも例に挙げ、高齢者における過降圧に注意を喚起した。また、推奨する降圧薬については、糖尿病and/or蛋白尿が認められる場合は、従来どおりRAS阻害薬を第一選択薬とすることは変わりないが、糖尿病も蛋白尿もみられないCKD例においては、降圧薬の種類を問わないことが記述された。貧血管理の改訂も注目すべき改訂点と言える。前回の改訂があった2009年以降、貧血の改善が臨床転帰につながらなかった試験が発表された。遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤の投与については、「投与開始Hb値=10g/dL、治療目標Hb値=10~12g/dL、13g/dLを超えないよう配慮する」と基準を明記している。今回の改訂において、「重症度分類の変更」が意味するところは、蛋白尿、アルブミン尿が末期腎不全、心血管死の独立した危険因子であるものとして捉え、尿検査を定期的に実施していくことの重要性を促すものと捉えている。(ケアネット 藤原 健次)

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第3回 相当程度の可能性:治療と患者の死亡

■今回のテーマのポイント1.高度の蓋然性をもって因果関係の立証ができなかったとしても、「相当程度の可能性」の存在が証明できれば、不法行為による損害賠償責任を負う2.この法理は、結局は、因果関係の証明を緩和することと同じ効果をもつ3.「相当程度の可能性」さえ認められれば、過失の軽重を問わず損害賠償責任を負うこととなり得るのは問題である事件の概要56歳の男性(X)。午前4時半頃に突然の背部痛により目を覚まし、しばらくして背部痛は軽快したものの、妻の強い勧めもありY病院の救急外来を受診しました。医師Aは、心窩部に圧痛を認め、胸部聴診上心雑音、不整脈は認められなかったことから、第一に急性膵炎を、第二に狭心症を疑い、急性膵炎に対する点滴加療を開始しました。しかし、その5分後(診察開始から15分後)にXは、突如呼吸停止に至り、医師Aが蘇生処置を行うも2時間後に死亡しました。Xの死因は不安定狭心症からの急性心筋梗塞と考えられました。死亡後Xの妻と子らが、Y病院に対し診断、治療上の過失があるとして損害賠償請求を行いました。原審(高裁)では、適切な治療を行ったとしてもXが救命できたということはできないとして、Xの死亡との関係では、因果関係がないとしましたが、「患者が適切な医療を受ける機会を不当に奪われたことによって受けた精神的苦痛を慰藉すべき責任がある(期待権侵害)」として、200万円の損害賠償責任を認めました。これに対し、最高裁は、原審とは異なる判示をした上で、原審を維持しました。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過56歳の男性(X)。午前4時半頃に突然の背部痛により目を覚まし、しばらくして背部痛は軽快したものの、妻の強い勧めもありY病院の救急外来を受診しました。Xは、医師Aに対し、上背部痛及び心窩部痛があり、現在痛みは軽減していること、7、8年前にも同様の痛みがあり、その時は尿管結石であったことを伝えました。医師Aの診察では、心窩部に圧痛を認め、胸部聴診上心雑音、不整脈は認められなかったこと、尿検査では潜血を認めなかったことから、第一に急性膵炎を、第二に狭心症を疑い、診察室の向かいの部屋でペンタジンの筋注及びガベキサートメシル酸塩(商品名:FOY)の点滴静注を開始しました。Xは、点滴のため部屋を移った5分後(診察開始から15分後)に、突如「痛い、痛い」と言い、大きく痙攣した後、すぐに意識を消失しました。付き添いに来ていたXの子の知らせで医師Aが駆け付けたところ、ほどなく呼吸停止に至りました。医師Aらが蘇生処置を行うも奏効せず、診察開始から2時間後にXは死亡しました。Xの死因は、不安定狭心症からの急性心筋梗塞と考えられました。事件の判決本件のように、疾病のため死亡した患者の診療に当たった医師の医療行為が、その過失により、当時の医療水準にかなったものでなかった場合において、右医療行為と患者の死亡との間の因果関係の存在は証明されないけれども、医療水準にかなった医療が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されるときは、医師は、患者に対し、不法行為による損害を賠償する責任を負うものと解するのが相当である。けだし、生命を維持することは人にとって最も基本的な利益であって、右の可能性は法によって保護されるべき利益であり、医師が過失により医療水準にかなった医療を行わないことによって患者の法益が侵害されたものということができるからである(最判平成12年9月22日民集54巻7号2574頁)。ポイント解説本判決は、医療バッシングが苛烈を極めた時期に出された判決であり、大きな問題(鬼の子)として民事医療訴訟において、いまだに禍根を残していますし、法理論的にも様々な問題が指摘されています。この判決が、混乱を導く原因となっているのは、判示において「右医療行為と患者の死亡との間の因果関係の存在は証明されないけれども、医療水準にかなった医療が行われていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されるとき」というように因果関係の立証を緩和しているかのように受け取られたからです。しかし、前回(第2回 因果関係:不作為と患者の死亡)述べましたように、因果関係の証明は、「経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明すること」であり、それが認められない場合には、因果関係が「ない」こととなります。つまり、民事訴訟においては、あくまで因果関係は「ある」か「ない」かであり、「ありそう」というだけでは「ない」とみなされるのです。それでは、本判決が示した「相当程度の可能性」というのは一体民法709条※1におけるどの要件を示しているのでしょうか。本件判決では、上記判示の後、「生命を維持することは人にとって最も基本的な利益であって、右の可能性は法によって保護されるべき利益であり、医師が過失により医療水準にかなった医療を行わないことによって患者の法益が侵害されたものということができるからである」と示しており、この「相当程度の可能性」は、民法709条における「法律上保護される利益」に該当すると述べています。したがって、本判決に従うと、(1)過失:医療水準に満たない診療(2)損害:「相当程度の可能性」(3)因果関係:(1)と(2)の間の因果関係ということとなります。しかし、理論上はそのように説明ができるとはいえ、(2)と(3)は結局、同じ立証となりますので、結論としては、(1)と「相当程度の可能性」(一般的に20%程度と考えられています)さえ立証できればよいということになり、ぐるっと回って因果関係の証明の程度が緩和されたことと同じになります※2。本判決のもう一つの問題点としては、「相当程度の可能性」自体が民法709条の要件である「法律上保護される利益」であるとしてしまったため、別の要件である過失の程度、すなわち医療水準からの解離の程度、悪質性を問わずに、独立して「相当程度の可能性」が認められることとなり得るということです。つまり、期待権の議論は、癌などの重篤な疾患において、病院側弁護士が、「確かに医療者に重大な過失はあったが、その過失とは関係なく癌により死亡していた」と主張してきた場合に、患者側が、因果関係を高度の蓋然性をもって証明することは困難であり、その結果、敗訴するという事案がしばしば認められたことから出てきたものであり、重大な過失がある場合にまで、まったく損害賠償責任を負わないとすることが「損害の衡平な分担」という不法行為法の基本理念からみて適切かという指摘は理解できます。しかし、本判決により、過失の重大性を問わず、たとえ軽微な過失であったとしても、「相当程度の可能性」が認められれば、損害賠償責任が認められるということとなると、救済の範囲が過剰となりすぎ、大きな問題となります(「二重の緩和」問題)。突然の家族の死亡で困窮している家族を救済すべきという感覚は理解できますし、そうあるべきと考えますが、それは社会保障制度や生命保険でカバーすべきものであり、医療機関や医師を違法とそしることでカバーすべきものではありません。また、因果関係の緩和には紛争促進効果があります。裁判による紛争解決の限界を理解し、すべての救済について過失認定を前提とした司法によるのではなく、社会保障制度の充実等によりカバーできる範囲は、司法の外にゆだねる必要があるといえます。※1民法709条「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」とされており、不法行為の要件には、(1)過失(又は故意)、(2)損害、(3)((1)と(2)の間の)因果関係があります(第1回ポイント解説参照)※2ただし、因果関係を「相当程度の可能性」までしか立証できない場合には、損害が患者の死亡等から「相当程度の可能性」を侵害されたこととなるため、賠償額が大きく減額されます(10分の1以下)。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます(出現順)。最判平成12年9月22日民集54巻7号2574頁

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ログインについて

ログインログイン認証ID・パスワードまたはメールアドレス・パスワードを入力してもログインできない場合の対処方法が知りたいID・パスワードの確認方法が知りたいIDを変更する方法が知りたいパスワードを変更(再設定)する方法が知りたい画像認証(reCAPTCHA)とは何か知りたい画像認証(reCAPTCHA)に失敗した場合の対処方法が知りたい外部サイトへのCareNet ID連携をやめたいログイン認証ID・パスワードまたはメールアドレス・パスワードを入力してもログインできない場合の対処方法が知りたい入力された「メールアドレスまたはID」および「パスワード」が、ご登録の情報と一致しているかご確認ください。※パスワードは大文字・小文字を区別します。※CapsLockキーがオンになっていないかもご確認ください。オンになっている場合、すべて大文字で入力されている可能性があります。入力内容を確認してもログインできない場合は、こちらより「パスワード再設定」をお手続きいただき、再度ログインをお試しください。ID・パスワードの確認方法が知りたいこちらより「パスワード再設定・ID確認」をお手続きいただけます。現在ご登録のパスワードはセキュリティ上の都合により表示されません。パスワードがご不明な場合は、新しいパスワードを再設定してください。IDを変更する方法が知りたいこちらより「会員情報変更ページ」にアクセスのうえ、お手続きください。パスワードを変更(再設定)する方法が知りたいこちらより、お手続きください。画像認証(reCAPTCHA)とは何か知りたい自動プログラムによる不正アクセス防止の観点から、Google社提供の画像認証システム「reCAPTCHA(リキャプチャ)」を導入しています。お手数をおかけしますが、画像選択画面が表示された際は必ずご対応いただきますようお願いいたします。操作方法は、こちらのガイドをご覧ください。画像認証(reCAPTCHA)に失敗した場合の対処方法が知りたい自動プログラムによる不正アクセス防止の観点から、Google社提供の画像認証システム「reCAPTCHA(リキャプチャ)」を導入しています。画像選択画面の操作方法は、こちらのガイドをご覧ください。「画像認証に失敗しました。」と表示される場合、以下の可能性がありますので、ご確認をお願いいたします。(1)画像選択に「不足」や「誤り」があった可能性自動プログラムによる読み取り・操作を防ぐために、選択候補が視認しづらい場合があります。また、正しく選択されても同じマス内に別の画像が表示され、繰り返し操作を求められる場合もあります。その際は、選択群の中に新たな画像が表示されていないかご確認いただき、「対象となる選択候補がなくなる状態」まで選択を続けてください。(2)ご利用のブラウザが、一時的な不具合を起こしている、または最新のバージョンでない可能性推奨環境で利用されているかご確認のうえ、以下の方法をお試しください。1.ログインできないブラウザで、シークレットウィンドウやプライベートブラウズを利用してログインを試みる。シークレットウィンドウやプライベートブラウズで不具合なく正常にログインできた場合、利用されているブラウザのキャッシュが原因と思われます。ブラウザのキャッシュをクリアしていただければ、シークレットウィンドウやプライベートブラウズを利用しない状態でも正常にログインできるようになると思われます。改善しない場合、以下をお試しください。2.ブラウザのバージョンをアップする。ブラウザが最新のバージョンでない場合、正常に動作しなくなる場合があります。お手数をおかけしますが、ブラウザを最新のバージョンにアップデートのうえ、ログインをお試しください。改善しない場合は、別のブラウザでログインをお試しください。

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在宅医療、ご関心ありますか?

今回の「医師1,000人に聞きました」、テーマは “在宅医療”。厚生労働省の方針により、2012年度から在宅・介護への支援策が大幅に拡充されることとなりました。市町村ごとに連携拠点を設け、スタッフの人件費を補助するなど、将来的な死亡者数の増加に向けて対応を進めるとのこと。既に在宅専門で開業されている方、ご自身のクリニックや中核病院で部分的に携わっている方など様々かと思いますが、先生はいかがお考えでしょうか?ということで今回は、在宅医療に対する関心や不安要素についてお尋ね!厚労省や家族、その他関係者に期待することなど、多数寄せられたコメントも必見です。結果概要はこちらコメントはこちら設問詳細在宅医療に対する先生方のお考えについてお尋ねします。1月30日の日本経済新聞によると厚生労働省は2012年度から在宅での医療・介護への支援策を大幅に拡充する。医療と介護サービスを一体提供するための連携拠点を2000カ所設けるほか、深夜の往診などの報酬を上げ、医師らが積極的に取り組むように促す。(中略)厚労省は12年度、地域の在宅医療の核となる連携拠点を現在の10倍の約100に増やす。在宅医療に積極的な病院や診療所などを拠点に選定。ケアマネジャーの資格を持つ看護師など、医療と介護の両方に詳しいスタッフの人件費を補助する。日本の死亡者数は20年後に現在より約40万人多い160万人程度まで増える見込み。厚労省はそれまでに連携拠点を各市町村で1カ所以上、計2000程度まで増やす方針だ。当初は予算措置で後押しするが、徐々に地域の医療関係者が自律的に進めるよう診療報酬などで促す。日本は1950年ごろには8割超の人が自宅で最期を迎えていたが、現在は12.4%。欧米より低く、その分、平均入院日数が米国の5倍、ドイツの3倍と長い。在宅の医療・介護が充実すれば、高齢者らが退院して自宅へ戻りやすくなる。長期入院が減り、病床不足の解消にもつながる。がん患者の自宅療養に備え、抗がん剤の調剤に必要な無菌室を整備し、地域の薬局が共同利用できるようにする。(後略)』とのこと。そこで先生にお尋ねします。Q1. 在宅医療に対する関心度をお聞かせください。在宅専門医療を行なっている/今後行いたいご自身のクリニックにて、外来診療と並行で在宅医療を行なっている/今後行いたい地域の中核病院にて、在宅医療に携わっている/今後携わりたい自分自身の患者さんで必要に迫られた場合のみ行なっている/今後行いたい在宅医療に携わることは考えていない(.Q1で 「在宅医療に携わることは考えていない」を選択された先生以外)Q2. 在宅医療を行なう、あるいは今後始める上で、障害もしくは不安に感じることがありましたらお選び下さい。24時間365日での対応が可能かどうか提携先病院との関係構築総合的な診療を行うこと患者、患者家族とのコミュニケーション多職種間でのコミュニケーション経営・報酬ご自身の時間(余暇)が減る可能性その他(         )Q3. コメントをお願いします(診療報酬の次回改定へのご意見、厚労省・勤務施設・メディアほか関係各所に期待すること、不安に感じること、患者から要望されること、既に行なっている方はご自身のご経験など、在宅医療に関することであればどういったことでも結構です)アンケート結果Q1. 在宅医療に対する関心度をお聞かせください。(.Q1で 「在宅医療に携わることは考えていない」を選択された先生以外)Q2. 在宅医療を行なう、あるいは今後始める上で、障害もしくは不安に感じることがありましたらお選び下さい。2012年5月7日(月)実施有効回答数:1,000件調査対象:CareNet.com医師会員結果概要『在宅医療に携わっている』『今後携わりたい』医師は全体の3割実施状況あるいは今後の意欲といった形で尋ねたところ、『在宅専門医療』で診療中あるいは実施したいとの回答は6.4%。在宅専門でなく外来診療と並行での形を希望する医師は、『自らのクリニック』10.4%、『地域の中核病院』14.0%となった。これらを合計した30.8%の医師が、現在在宅医療に携わっている、あるいは今後携わりたいと考えている結果となった。在宅医療を始める上での不安要素、最多は『24時間365日対応が可能かどうか』在宅医療に対し何らかの関心を持つ医師に、今後始める上で障害もしくは不安に感じることを尋ねたところ、74.5%の医師が『24時間365日対応』への不安を挙げた。次いで、患者急変時等に協力する『提携先病院との関係構築』47.0%、『自身の時間(余暇)が減る可能性』33.4%と続いた。24時間365日対応については、「複数の担当者で輪番できればかなりのことができる」といった意欲的な声も一部見られた。CareNet.comの会員医師に尋ねてみたいテーマを募集中です。採用させて頂いた方へは300ポイント進呈!応募はこちらコメント抜粋 (一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「付け焼き刃的な診療報酬改定では…。 本質的な問題として、医師の偏在や能力の検定、患者/患者家族及び、マスコミを含めた教育についての幅広い論議が必要であろう。 その内容として、実務担当している我々とすると、在宅で療養することは、先進的治療を行うことではなく、ケア中心の治療になるし、その過程で在宅での(想定内の)急変や看取りを行うことになる。今のように、何かあったらすぐに警察沙汰になる、マスコミの報道対象になる、といった風潮に対して、社会としてもっと成熟すべきである、といったことなど。」(開業医(訪問診療の実施を掲げている),50代,神経内科)「“在宅の医療・介護が充実すれば、高齢者らが退院して自宅へ戻りやすくなる”というのを、“高齢者がどこに住むのか”という都市計画から政府が組み上げて行かないと、抜本的な改革にならないし長続きしないと思う。」(勤務医(専門医志向),50代,外科)「複数の担当者で輪番するしかない!グループ化できればかなりなことができる。」(勤務医(総合医志向),60代,脳神経外科)「そもそも一人事業所で24時間対応などできません。在宅医療の前提がそうであるなら、現在可能な範囲でしている在宅診療から撤退するしかありません。」(開業医(訪問診療の実施を掲げている),50代,内科)「国が医療費削減を目指しているなら、方向性は間違っている。在宅医療には病院以上に費用がいるはず」(勤務医(専門医志向),40代,精神・神経科)「現在勤務している病院が在宅医療も行っています。しかし、日中の仕事であればよいのですが、夜間対応は本来の仕事に影響ありますので、控えさせていただきたいと思っています。 従って、夜間対応専門の医師に対する診療報酬を期待します。」(勤務医(専門医志向),50代,外科)「訪問診療の点数を上げられても、その点数で請求するとレセプトの平均点数が上がってしまい、厚生局の個別指導の対象となってしまう。また訪問診療は監査の対象となるため、事務処理が面倒である。点数は低くても事務的に楽な往診で請求しなければならない。」(開業医(訪問診療の実施を掲げている),50代,内科)「在宅死に関する、意識改革が無ければ、結局、病院での死から施設での死に代わるだけで、医療費負担が介護費負担に代わるだけになるのではと懸念を感じる」(勤務医(総合医志向),50代,外科)「24時間体制に対する報酬はしっかり考えてもらえないと踏みこめません。」(勤務医(今後開業を検討),40代,消化器科)「在宅メインで開業したいと考えているが、まだまだ報酬などの面で不透明なので、一抹の不安はある。」(勤務医(専門医志向),30代,救急医療科)「24時間対応するためのスタッフを雇用するための、継続した財政的支援をお願いしたい。」(勤務医(総合医志向),50代,内科)「診療報酬の少なさとコメディカルへの給与が不安」(勤務医(専門医志向),40代,外科)「かかりつけ医などのクリニックで診療する場合や、難病や重度障害者に対して拠点病院とかかりつけ医が協働する場合、さらに多職種が関わりカンファレンスを繰り返す場合などに、きめ細かく報酬を設定してもらいたい。」(勤務医(専門医志向),50代,神経内科)「名ばかりの在宅医療施設も多いと聞く。誠実にやっている医療機関の評価にも影響するので実績等の把握が必要。」(開業医(訪問診療の実施を掲げている),40代,消化器科)「現実に請求できるような点数設定にしてほしい。高額すぎると、地方では請求できない。」(開業医(訪問診療の実施を掲げている),50代,循環器科)「今でも不当に安い診療報酬しか付いていないので、まともに引き合うだけの報酬をつける気があるのかどうか、在宅診療が常態化、一般化しありがたみが薄れれば現れるであろうモンスターペイシェントなどが気がかりだ。」(開業医(訪問診療の実施を掲げている),40代,眼科)「報酬の欲しい開業医が手を挙げるだろうが、夜間、休日など自分が遊びたい時間は全部総合病院に丸投げするのが目に見えている。」(勤務医(専門医志向),40代,外科)「介護に携わる人に対する報酬が低すぎて、定着しないため、そうした方々の報酬体系を考えて頂きたい」(勤務医(今後開業を検討),40代,整形外科)「田舎の場合、訪問先どうしの距離が離れすぎていて移動時間ばかりかかって、採算が取れません。」(勤務医(総合医志向),30代,外科)「御家族の介護力が低下する中、在宅医療をフォローする地域の体制の整備が不十分なままで診療報酬による誘導がなされることはあるべき姿ではないと思われる。」(勤務医(総合医志向),40代,内科)「“病院にいるようなサービスは期待できないことを患者および家族に覚悟させる”覚悟が行政側にあるのか約束させるべき。 美辞麗句を並べて在宅を推進すると矛盾をすべて現場がかぶることになる。」(勤務医(総合医志向),50代,代謝・内分泌科)「在宅で看取るとおっしゃられていたご家族が急変時に混乱され方針を決定することの重要性を痛感した」(開業医(外来のみ/外来に加えて必要に迫られた場合のみ往診),50代,内科)「必要性は十分に認識しているが、設備の整った場所での診療にこだわりたいので、今は関心がありません。」(勤務医(総合医志向),50代,消化器科)「国の医療政策に関する説明を現場に丸投げせずに、患者及び国民に直接積極的な啓蒙をしてほしい。 ・実際に行った医療政策の検証結果およびその責任を明確に国民に示すべき。」(開業医(外来のみ/外来に加えて必要に迫られた場合のみ往診),40代,内科)「在宅診療をするには、その家まで行く時間が必要。それをどう効率化するか。また夜間専門の開業医・クリニックが合ってもいいかなと思います。」(勤務医(総合医志向),50代,精神・神経科)「急速な高齢化で、どんなに制度を充実させても、在宅で看ることができる家族がいる場合の方が少ないように感じます。現実には在宅医療ができる家族は少ないと思います。」(勤務医(専門医志向),50代,外科)「今後、団塊世代の高齢化を控え、病院だけで支えることは困難。在宅による医療の必要性を感じています。」(勤務医(今後開業を検討),30代,その他)「都市部と地方で同じシステムの構築は難しいと思うのですが…。」(勤務医(総合医志向),40代,内科)「在宅ケアは理想的ですが、痴呆・寝たきり状態の様な患者は、家族の犠牲が大きすぎる。高齢者の対する検査・治療の制限も必要」(勤務医(専門医志向),50代,泌尿器科)「在宅医療が輪番制など医師の個人負担の軽減が肝要」(勤務医(総合医志向),50代,呼吸器科)「個人経営の医院で24時間365日対応は不可能であり、結果、地域の病院に対応をお願いする事になってしまうと考えます。」(勤務医(専門医志向),40代,消化器科)「老人ホームが多くありますが、ナースがいても些細な事でも全て主治医に電話で指示を仰ぐような指導がなされているところも多いです。往診そのものよりも、書類の多さや電話対応などを減らすことができれば中身の濃い往診を多数こなせるのではと思います。」(勤務医(総合医志向),30代,内科)「自分は向いていないと思うが、在宅に携わってくださる先生が多い地域は中核病院としても非常に助かり、かつトラブルも少ない。ぜひ押し進めていただきたい。」(勤務医(専門医志向),40代,消化器科)「懸念事項 ・患者さんを自宅で看取るというご家族の覚悟が あるのか、 ・在宅医療への過度な期待はないか、 ・在宅医療に何を求めるのかをきちんと患者さん 側が見据えているか」(勤務医(今後開業を検討),50代,精神・神経科)「在宅は、家族、しかも、主に女性を介護という終わりの見えない苦行に向かわせるだけのものにすぎない。自宅で過ごせる幸いな高齢者がどれだけいるというのだろう。それを推進する意図が何であるのか、まったく理解できない。」(勤務医(専門医志向),30代,救急医療科)「中核病院が遠方の、田舎の診療所では、いやでも在宅医療を行わなくてはならない。」(開業医(訪問診療の実施を掲げている),60代,内科)「家族の意欲が最も重要で、自宅の物理的な状況、家族を支援する力が大事だと思います。 また、在宅での主役は本人のはずですが、実際には家族が気持ちよく介護できるかどうか、が最重要課題だと思いますので、家族が主役だろうと考えています。 その家族を引き立てるために、医師は縁の下で支える程度で良いのだろうと思います。」(勤務医(総合医志向),40代,リウマチ科)「可能な限り対応したいとは思っているが、現在でもほぼ自由な時間がないほど多忙なため、現実的に行えない。在宅対応の医師を雇わないと難しい」(開業医(外来のみ/外来に加えて必要に迫られた場合のみ往診),50代,泌尿器科)「結局連携体制とって協力しない方、施設も多く自分が他の 連携医の深夜帯の仕事をせざるを得ず、燃え尽きた経験があるので自分の出来る範囲でしている。」(開業医(外来のみ/外来に加えて必要に迫られた場合のみ往診),40代,内科)「何時呼ばれるかわからない状態での在宅診療を一人で行う事が不安です。夜もおちおち眠れません。日中は外来があります。」(開業医(外来のみ/外来に加えて必要に迫られた場合のみ往診),50代,外科)「1人の医師に責任が重いシステムなため、出来れば携わりたくない。」(勤務医(専門医志向),40代,精神・神経科)「環境整備がないと(交代制など)ないと疲弊するのでは?」(勤務医(専門医志向),40代,外科)「一人で365日は不可能。と言ってなかなか仲間は見つけられない。」(勤務医(専門医志向),60代,腎臓内科)「希望の無い仕事はしない」(勤務医(専門医志向),50代,皮膚科)「亡くなる人は増えるが、拠点の定員は満たされず、かえって医師不足が加速すると考える。」(勤務医(専門医志向),40代,精神・神経科)「在宅医療は時流だと思います。自宅で看取られたいのは、心情として理解できます。」(勤務医(総合医志向),40代,内科)「クリニックで行うときには、グループで夜間や休日の対応をシェアすることが不可欠と思う。また病院の場合、医師や看護師等は、複数で対応できるような人員確保が必要。」(勤務医(総合医志向),50代,小児科)「高齢者が多い中、家族の協力が得られないケースが多いように見受けられます。人任せ、といったところでしょうか?まず、家族が受け入れることのできる体制、あるいは、家族が受け入れてやっていくんだという体制を時間がかかってでも行わなければ、今のままでは医療体制は崩壊すると感じています。厚生省が動きだすのが遅すぎです!」(勤務医(総合医志向),30代,外科)「バス運転手には休みを取らせる義務があるのに、医者には休みを取らせないのか、国民も政府も矛盾を感じないのか。」(勤務医(総合医志向),50代,脳神経外科)「診療サイドには加算がついたけれども、在宅介護をする家族には解決しなければいけない多数の問題が残存している。この解決に乗りださなければ、根本的推進にはならない」(勤務医(総合医志向),50代,内科)「在宅での看取りを完遂することには、多くのハードルがあり、結局最後は病院に搬送されてくるケースが多い。往診医による見取りをぜひ進めていただきたい。また、これとは別に家族の受け入れが悪くなっている時代の流れがあり、なかなか在宅療養が進まないのが現実である。」(勤務医(今後開業を検討),50代,内科)「何かというと医療訴訟になってしまう昨今において、在宅でお看取りした後に、些細なことで訴えられてしまう可能性があるのではないか。」(勤務医(専門医志向),40代,代謝・内分泌科)「最新医療をやっていきたい」(勤務医(専門医志向),40代,循環器科)「金をかけずに(開業医等の善意に期待して)入院患者を減らそうという目論見で到底納得できない。満足の得られる医療を提供しようと思うのであれば、それ相当に金をかけるべき。」(勤務医(専門医志向),40代,小児科)「個人に負担がかからないか心配です。チーム医療の中で考えないと難しいと思います。」(勤務医(今後開業を検討),50代,呼吸器科)「受け入れ先の病院の確保が一番問題。受け入れ拒否することもあるので。」(開業医(外来のみ/外来に加えて必要に迫られた場合のみ往診),40代,内科)「今後、在宅医療は必要となることは必須であり、関わりたいとは考えますが、本院でも、医師不足が深刻であり、日常の診療にも支障が生じており、在宅医療を考えることすら、困難な状況です。」(勤務医(専門医志向),40代,消化器科)「自宅で臨終を迎えるようにするという方針は間違っていないと思うが、総合内科的な技量を持った医師を育てないと、患者家族への押し付けに終わってしまいそう。」(勤務医(総合医志向),40代,小児科)「24時間拘束のようになりはしないか、不安がある。」(勤務医(今後開業を検討),50代,内科)「重症心身障害児(者)医療を行っている。在宅重症心身障害児(者)のケアをやらねばと考えてはいるが、医師数・ナース数からして無理であり、悩んでいる。」(勤務医(専門医志向),60代,小児科)「在宅の件数を増やせば毎日夜の対応に追われて身体が持たない。在宅もインターネットの情報が氾濫して無理な要求をしてくる家族も多く不安である。」(勤務医(総合医志向),50代,循環器科)「介護を必要とする人をまとめたほうが経済的。無理して在宅にする必要はない。」(勤務医(専門医志向),60代,外科)「入院が必要な患者が在宅医療になってしまうことを危惧しています。」(勤務医(総合医志向),50代,小児科)「個人的には在宅医療は必要であるとは考えますが、自分が携わるつもりは今の所ありません。 在宅もいいのですが、大規模で比較的安い値段の施設は作れないものでしょうか? 在宅で介護している方をもっと社会に出したほうが経済的にいいような気がするのですが… 家族が過度な期待をしないように(やがてはモンスター化するでしょうから)説明をしないといけないでしょうね。」(勤務医(専門医志向),30代,脳神経外科)「無理な患者まで退院させて在宅にならなければいいが。」(勤務医(総合医志向),50代,基礎医学系)「小児における在宅医療には問題が山積みなため、今後は高齢者のみならず小児における検討を望む(NICU退院者や脳症、髄膜炎後遺症の寝たきり患者などニーズは多いので)」(勤務医(専門医志向),40代,小児科)「患者家族に在宅を勧めることが大変に感じます。」(勤務医(総合医志向),40代,小児科)「血液内科医として専門性を高めた医療を行いたいと考えているため。血液内科と在宅医療はなかなかリンクが難しい。 ただし、輸血などが在宅で行えることが望ましいと考えているため、一部血液内科でQOLを維持するために輸血を行える在宅医がいるとよいと思う。」(勤務医(専門医志向),20代,血液内科)

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妊娠初期の中絶、ミソプロストール投与で術後合併症を有意に低下

妊娠初期の人工妊娠中絶について、プロスタグランジンアナログ製剤のミソプロストール(商品名:サイトテック、本邦では抗NSAID潰瘍剤としてのみ承認、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与禁忌)400μgの経膣投与により、吸引法単独と比べて合併症を低下することが明らかにされた。これまで、ミソプロストールを用いた人工妊娠中絶の合併症発生率については有用な情報がほとんどなかったが、世界保健機関(WHO)のOlav Meirik氏らが国際多施設共同無作為化試験を行い報告した。Lancet誌2012年5月12日号(オンライン版2012年3月8日号)掲載報告より。施術3時間前にミソプロストール400μgまたはプラセボを投与Meirik氏らは、2002年10月22日~2005年9月24日にかけて9ヵ国14施設で無作為化並行群間比較試験を行った。妊娠初期(first trimester)で中絶を望む健常な女性を対象に、吸引法による人工中絶手術の3時間前にミソプロストール200μg錠2錠またはプラセボ2錠のいずれかを経膣投与するよう無作為に割り付けた。治療管理にあたるスタッフ以外は、治験参加者も医療スタッフも、割り付け情報を知らされなかった。追跡調査は最長で2週間とした。主要評価項目は、吸引法による1つ以上の合併症(子宮頸部裂傷、子宮穿孔、不全流産、子宮再掻爬、骨盤炎症性疾患、その他の重篤な有害事象)とした。即時性合併症の解析では、薬物投与と吸引法を受ける女性を含めたが、遅延性合併症の解析には、追跡可能な症例のみを含めた。ミソプロストール400μg投与群で合併症発生率が有意に低下被験者は、ミソプロストール投与群2,485例、プラセボ投与群2,487例だった。両群で56例が追跡ができなかった。吸引法に伴い1つ以上の合併症がみられたのは、ミソプロストール群2,427例中50例(2%)、プラセボ群2,431例中74例(3%)だった[相対リスク(RR):0.68、95%信頼区間(CI):0.47~0.96]。ミソプロストール群では、子宮頸部裂傷は認められず、子宮穿孔は3例に認められた。プラセボ群では頸部裂傷が2例、子宮穿孔は1例だった。不全流産については、ミソプロストール群19例(<1%)、プラセボ群55例(2%)でみられた(RR:0.35、95%CI:0.21~0.58)。子宮再掻爬を必要としたのは、14例(

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2型糖尿病肥満、薬物療法+外科的肥満手術で血糖コントロール有意に改善

2型糖尿病非コントロールの肥満患者について、薬物療法に加えて胃バイパス術など外科的肥満手術を行うことが、薬物療法単独よりも有意に血糖コントロールを達成するとの報告が発表された。米国・Bariatric and Metabolic InstituteのPhilip R. Schauer氏らが、無作為化非盲検単独施設試験の結果、報告したもので、これまでは観察研究においては、胃バイパス術などを受けた2型糖尿病患者における病状の改善が認められていた。NEJM誌2012年4月26日号(オンライン版2012年3月26日号)掲載報告より。150例を対象に薬物療法単独と外科的手術群の血糖コントロール改善を比較Schauer氏らによるSurgical Treatment and Medications Potentially Eradicate Diabetes Efficiently(STAMPEDE)試験は、2007年3月から2011年1月にクリーブランドクリニック単施設で行われた無作為化試験で、2型糖尿病を有するBMI 30~35以上の肥満患者を対象に、血糖コントロール達成について、薬物療法単独と外科的手術(Roux-en-Y胃バイパス術と胃切除術)を併用する群とを比較して行われた。被験者は150例、平均年齢は49±8歳、66%が女性であり、血糖値平均は9.2±1.5%であった。追跡期間は12ヵ月、主要エンドポイントは、治療12ヵ月後に血糖値6%以下に到達した患者の割合とした。被験者150例のうち93%が、12ヵ月の追跡期間を完了した。治療後の血糖値平均、薬物療法単独群7.5%に対し、胃バイパス術群6.4%、胃切除群6.6%結果、主要エンドポイントを達成した患者の割合は、薬物療法単独群12%(5/41例)に対し、胃バイパス術群42%(21/50例、P=0.002)、胃切除群37%(18/49例、P=0.008)だった。血糖コントロールは3群すべて改善したが、薬物療法単独群の改善された血糖値平均7.5±1.8%に比べて、胃バイパス術群は6.4±0.9%(P<0.001)、胃切除群は6.6±1.0%(P=0.003)だった。手術群はいずれも、術後は血糖降下薬、脂質低下薬、降圧薬の使用量が減少した。一方で、薬物療法群は増量していた。また、手術群はインスリン抵抗性指数(HOMA-IR)も有意に改善していた。その他には、患者4例が再手術を受けていたが、死亡や命に関わるような合併症の発生例はなかった。研究グループは今回の結果を受け、さらなる無作為化試験での検証の必要性を提言している。

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