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〔CLEAR! ジャーナル四天王(14)〕 喫煙率0%の世の中は幸福か?

この論文をざっくり要約すれば、喫煙率は国ごとで大きな差があり、男性では、低い国で20%、高い国では60%。女性では0.5%から24.4%である。 ただ男性で喫煙率が高く、女性の喫煙開始年齢が若い年代ほど早くなっているのは各国に共通した事実である。この結果を次なる活動へつなげるとしたら、男性の禁煙をさらに進め、女性がタバコを吸い始めないように若い世代に介入することが重要、ということだろうか。 そしていつの日かタバコを吸う人がゼロになれば最高だ。 しかし本当にそうか。 私は以前Twitterで喫煙者を擁護するような書き込みをしたところ、タイムラインが炎上した。そのときに思ったのは、タバコよりも、タイムラインに「死ね」とか書く人のほうがよほど怖いということだ。喫煙率0%の世界とは、ひょっとしたらそういう恐ろしい人に支配される世界かもしれない。 そんな世界ならば私は喫煙率50%の世界の方に住みたいと思うのだが、またそんなことをいうと大変なことになるのだろうか。

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『ボストン便り』(第41回)「世界の主流としての当事者参画」

星槎大学共生科学部教授ハーバード公衆衛生大学院リサーチ・フェロー細田 満和子(ほそだ みわこ)2012年8月31日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。紹介:ボストンはアメリカ東北部マサチューセッツ州の州都で、建国の地としての伝統を感じさせるとともに、革新的でラディカルな側面を持ち合わせている独特な街です。また、近郊も含めると単科・総合大学が100校くらいあり、世界中から研究者が集まってきています。そんなボストンから、保健医療や生活に関する話題をお届けします。(ブログはこちら→http://blog.goo.ne.jp/miwakohosoda/)*「ボストン便り」が本になりました。タイトルは『パブリックヘルス 市民が変える医療社会―アメリカ医療改革の現場から』(明石書店)。再構成し、大幅に加筆修正しましたので、ぜひお読み頂ければと思います。●マサチューセッツ慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎と繊維筋痛症(CFIDS/ME and FM)の会「この夏、ME/CFSの研究は大きく前進するための舵を切った」と、半年ぶりに再会したナンシーは、いつものように低いトーンの落ち着いた声で静かに言いました。彼女は、「マサチューセッツ CFIDS/ME and FMの会」の理事の一人です。この病気に30年以上も罹っていて、病気についての専門知識は深く、医学研究の進捗状況や医師たちの動向、さらにアメリカ内外の他の患者団体の動きにも精通しています。ナンシーは患者のための地域活動もしていて、地区患者会の例会の場所をとったり、会員に連絡したりしています。例会当日の会場設営もしていて、会員に和やかな楽しい時間を過ごしてもらおうと、スーツケース2つにお茶やお菓子を準備し、季節にちなんだ飾りつけもします。私が同行させて頂いた2月のバレンタインの月の例会は、ピンクと赤がテーマで、テーブルクロスは赤、紙皿や紙コップやナプキンはハートの模様で、ハート形の置物も用意されていました。ナンシーから手渡された、最近のアメリカ政府のME/CFS対策についての書類には、次のようなことが書かれていました。2012年6月13日と14日に、HHS(The Health and Human Services)は、慢性疲労症候群諮問委員会(The Chronic Fatigue Syndrome Advisory Committee: CFSAC)を開催しました。委員には10人のメンバーが選ばれましたが、臨床の専門家、FDA(食品医薬品局)代表を含む7人の元HHSメンバーのほかに、患者アドボケイトもメンバーとして入りました。そして、3時間にわたる公聴会が行われました。その他にも7つの患者団体の代表が報告をする機会が設けられました。さらに、このCFSACとは別に、HHSは所属を越えて協働できるために慢性疲労症候群の特別作業班(Ad Hoc Working Group on CFS)も結成しました。そこには、CDC(疾病予防管理センター)、NIH(国立健康研究所)、FDA(食品医薬品局)など各部局の代表も含まれています。こうした委員会や作業班が作られた背景には、オバマ大統領の意向があるといいます。インディアナ・ガジェットというオンライン新聞によると、ネバダ州のリノに住むME/CFS患者の妻は、2011年5月にオバマ大統領に、ME/CFS患者の救済、特にこの病因も分からず治療法もない病気の解明の為に、研究予算を付けて助けて欲しいという手紙を出しました。これに対してオバマ氏は、NIHを中心に研究を進めるための努力をすると回答しました。また、オバマ氏は、偏見を呼ぶCFSという病名にも配慮を示し、MEと併記したとのことでした。新聞記事は「これでオバマは新しい友人を何人か作った」と結ばれています。全米で約100万人いると推計されているこの病気の患者が味方になるなら、目前に大統領選を控えたオバマ氏にとって政治的に大きな力になることでしょう。●スウェーデンにおける自閉症とアスペルガーの会スウェーデンのストックホルム県に住むブルシッタとシュレジンは、ふたりとも「自閉症とアスペルガーの会」の有給職員です。ブルシッタには33歳になる自閉症の息子さんがいて、シュレジンには20歳になる自閉症と発達障害の息子さんがいます。8月に発達障害児・者への施策や医療を視察するためにスウェーデンを訪れたのですが、その際にこの二人にお会いしました。「自閉症とアスペルガーの会」は、患者も患者家族も、医療提供者も社会サービス提供者も学校関係者も、関心がある人がすべて入れる会です。親が中心になって1975年に設立され、ストックホルム県内では会員が3,000人います。全国組織もあって、こちらは会員が12,000人います。活動としては、メンバーのサポートをしたり、子どもたちの合宿を企画したりしています。ホームページがあり、機関誌も出しています。ブルシッタによれば現在の会の中心的な活動は、政治的な動きだといいます。確かに会の活動が様々な施策を実現してきたことは、色々なところで実感しました。今回、ストックホルム県内の、様々な制度を見聞したり施設(発達障害センター)を訪れたりしました。その際に、こうした制度や施設をコミューン(地方自治体)に作らせるように働きかけてきたのは、「自閉症とアスペルガーの会」のような親たちや専門職が加入している自閉症や発達障害の患者会だったということを、何人もの施設の長の方々から聞きました。さらには、自閉症に対する大学の研究にも、こうした患者会は大きな役割を果たしています。カロリンスカ研究所に付属する子ども病院における自閉症研究グループであるKIND(発達障害能力センター)は、企業やEU科学評議会などからの資金援助を受けていますが、その時大きな後押しになったのが、「自閉症とアスペルガーの会」だったといいます。KINDのディレクターのスティーブン・ボルト氏は、会からの大きな支えを強調していました。スウェーデンでは1980年代にハビリテーションのシステムが作られ、生きてゆくうえで支援が必要な人々に対する支援が整えられてきましたが、十分とは言えないままでした。それが1994年に施行されたLLS(特別援護法)によって、支援の制度は大きく前進しました。この法律の制定にも、患者団体などの利益団体の働き掛けが大きな後押しになったそうです。2004年にスタートした自閉症のハビリテーションセンターや、2007年にスタートしたADHD(注意欠陥・多動性障害)センターでも、責任者の方は口々に、患者会が政治家に働きかけることでセンターが誕生したと言っていました。そして、このような支援を受けることは、ニーズのある人々の権利なのだと繰り返していました。●各国での患者会の現状スウェーデンに先立って訪れたアルゼンチンで開かれた国際社会学会でも、各国で患者会が医療政策決定において重要な役割を担っていることが報告されました。私が発表した医療社会学のセッションでは、イギリスからは「当事者会・患者会とイングランドのNHS(National Health Service:筆者挿入)の変化」、イタリアからは「トスカーナ地方における健康保健サービスの向上と社会運動の役割」と題される研究成果が紹介されました。それぞれ、地域におけるヘルスケア改革に、当事者団体や患者団体のアドボカシー活動が大きな役割を果たしたことに関する実証研究でした。最後に私の発表の番となり、「日米における患者と市民の参加」と題した、日本とアメリカの合わせて7つの患者会に対する、アンケート調査とインタビュー調査の結果を報告しました。この調査は、2010年から2011年にかけて行われたもので、患者会の意味と役割について、メンバーに意識を尋ねたものです。アンケートに対しては、日本では132票、アメリカでは109票の有効回答が寄せられ、インタビューの方では23人の方が対象者になってくださいました。患者会は、脳障害、脳卒中、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群、ポストポリオ症候群、卵巣がんなどでした。当初は、アメリカの患者会の方が日本よりも、政治的問題に発言してゆくアドボカシー活動への関心が高く、実際に活動も行っているという仮説を立てましたが、どちらの国も同程度に関心が高く、活動をしているという結果が認められました。ただし日米とも、患者会がアドボカシー活動を積極的に行うようになってきたのは、ここ10年から20年のことだといいます。それまでは、患者や親たちは問題を個人で抱え込むしかなかったといいます。患者や親たちは、病気による身体的あるいは生活上の苦しさを理解されず、ましてや支援など受けることもできませんでした。そして逆に、病気のことをよく知らない一般の人や医療者から、非難するような言葉や態度を浴びせられてきたといいます。30年以上も筋痛性脳脊髄炎の患者であったナンシーの言葉を借りれば、「社会からは理解されず、医療者から虐待されてきた」というのです。それは発達障害を持つ子や親も同様でした。スウェーデンでも80年代くらいまでは、ADHDや自閉症を持つこども達は、さまざまな失敗をしては親や教師から叱られ、親の方も育て方が悪いと周囲から非難されてきたといいます。●日本の患者会昨年9月に、東京で開催されたランセットの医療構造改革に関するシンポジウムでは、タイからの登壇者に「日本では患者会との協働はどのようになっているのですか」と聞かれ、「患者会は、自分たちの半径5メートルしか見ていない」ので意見を聞いても仕方ないというようなことを権威ある立場の日本人医師が答え、椅子から転げ落ちるほどびっくりしました。ランセットの会議に招待されるような方が、そのようなことを国際社会の場で発言するとは、日本の医師をはじめとする医療界の認識の浅さや遅れではないか忸怩たる思いがしたものです。このことは、以前にMRICにも書きましたが、この状況は今後変わってゆくでしょうか。日本でも、いくつかの患者会はアドボカシー活動をしています。例えばNPO法人筋痛性脳脊髄炎の会(通称、ME/CFSの会)は、偏見に満ちた病名を変更させるために患者会の名前を変えました。そして、この病気の研究を推進してもらいように、厚労副大臣や元厚労大臣を始め、何人もの国会議員や厚労省職員に面会し、研究の重要性と必要性を訴えかけました。さらに、ME/CFS患者が適切な社会サービスを受けられるようにするため、いくつもの地方自治体の長や議会に要望書を提出し、複数において採択されてきています。さらにME/CFSの会は、この病気の世界的権威ハーバード大学医学校教授のアンソニー・コマロフ氏に、会が11月4日に開催するシンポジウムに向けてのメッセージも頂きました。ME/CFSは、未だに日本では医療者からも家族からも想像上の病気や精神的なものと誤解され、患者が苦しんでいることをご存知のコマロフ氏は、この病気が器質的なものであることを繰り返し、日本でも研究が進められるように呼びかけました。実際に研究が進んだり、社会サービスが受けられるようになったりといった具体的な成果はなかなか上がって来ていませんが、この様に患者会は、様々な活動を行い、続けていればいつか実現すると信じて続けられています。●当事者参画の可能性アルゼンチンの国際社会学会で同じセッションに参加していらしたシドニー大学教授のステファニー・ショート氏は、「私たち社会学者は、特に私の世代は、マルクス主義の影響が大きかったから、体制批判とか、社会運動とか、っていう視点で見ちゃうのよね。でも、今は時代が変わったわね」、とおっしゃっていました。彼女はまた、私の行った日米調査の調査票を使って、今度はオーストラリアでやろうという共同研究の話を持ちかけてくれました。もちろんぜひ調査を実施してみたいと思っています。次の国際社会学会の大会は横浜で開催されます。ちょうど私の所属する星槎大学も横浜に事務局がありますので、医療社会学の面々のパーティ係を任命されました。会場探しもしますが、その時までに、日本の行政や医療専門職が患者会の役割を重視し、患者のための医療体制ができてきたという報告をこの学会で発表できるようになればいいと思いました。謝辞:スウェーデンの患者会は、セイコーメディカルブレーンの主催する研修で知り合いました。研修を企画して下さった同社会長の平田二郎氏、研修参加を推奨し財政的支援をして下さった星槎グループ会長の宮澤保夫氏に感謝いたします。また、日米患者会調査の実施に当たって、資金の一部を助成して下さった安倍フェローシップ(Social Science Research Councilと日本文化交流基金)に感謝の意を表します。<参考資料>インディアナ・ガジェット オバマ、CFSについて応えるhttp://www.indianagazette.com/b_opinions/article_75b181eb-bd88-5fe4-bc90-f7b09f869ffd.html略歴:細田満和子(ほそだ みわこ)星槎大学教授。ハーバード公衆衛生大学院リサーチ・フェロー。博士(社会学)。1992年東京大学文学部社会学科卒業。同大学大学院修士・博士課程の後、02年から05年まで日本学術振興会特別研究員。コロンビア大学公衆衛生校アソシエイトを経て、ハーバード公衆衛生大学院フェローとなり、2012年10月より星槎大学客員研究員となり現職。主著に『「チーム医療」の理念と現実』(日本看護協会出版会)、『脳卒中を生きる意味―病いと障害の社会学』(青海社)、『パブリックヘルス市民が変える医療社会』(明石書店)。現在の関心は医療ガバナンス、日米の患者会のアドボカシー活動。

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年間37%の認知症高齢者が転倒を経験!:浜松医大

 認知症は転倒原因のひとつである。しかし、認知症高齢者における転倒リスクの研究はまだ十分になされていない。浜松医科大学 鈴木氏らは介護老人保健施設に入所している認知症高齢者における転倒の発現率、リスクファクターの検証を試みた。Am J Alzheimers Dis Other Demen誌9月号(オンライン版8月7日号)の報告。 対象は、認知症高齢者135例。調査期間は、2008年4月から2009年5月までの1年間。調査開始前に、認知機能検査(MMSE:Mini-Mental State Examination)、日常生活動作能力(PSMS:Physical Self-Maintenance Scale)、転倒に関連する行動評価(fall-related behaviors)、その他因子に関して調査した。統計解析は、転倒の有無による比較を行うため、検定、ロジスティック回帰分析を用いた。主な結果は以下のとおり。・調査期間中、50例(37.04%)が転倒を経験した。・多重ロジスティック回帰分析の結果、転倒に関連する行動評価(fall-related behaviors)の総スコアは転倒との有意な関連性が示された。・11項目の転倒に関連する行動評価は、認知症高齢者の転倒リスクを予測する有効な指標であると考えられる。関連医療ニュース ・アルツハイマー病患者におけるパッチ剤切替のメリットは? ・「炭水化物」中心の食生活は認知症リスクを高める可能性あり ・アルツハイマーの予防にスタチン!?

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10年後に10万人の“ジェネラリスト”創出を目指す!!

7月16日、東京大学伊藤国際学術研究センター(東京・文京区)において「Generalist Japan 2012」が、一般社団法人 Medical Studio(代表:野崎 英夫 氏)の主催、日本プライマリ・ケア連合学会、日本病院総合診療医学会の後援により開催された。当日は、祝日にも関わらず、全国より総合診療科の医師、研修医、医学生など300名以上が参集した。オープニング・リマーク:医療崩壊を救う“ジェネラリスト”特別に制作・編集された動画「Generalist Japan 2012 Opening Movie」で幕を開け、川島 篤志 氏(市立福知山市民病院 総合内科)の総合司会のもと開会を宣言、「今回の場は、ジェネラリスト(総合診療医)の将来を考え、実践する、その一歩として考え催されるものである。議論への積極的な参加をお願いしたい」と述べ、開始された。はじめに主催者代表として野崎 英夫 氏が「オープニング・リマーク」として自身が医師になった動機を語るともに、喫緊の問題を提起し、「医師不足により救急体制が崩壊しつつある、在宅医療でも現場の医師が不足している状況で、医師が早くこの事態に気づくことが重要。これからの病院はスペシャリスト(専門医)が集うところであり、医師はもっと院外へ出て、地域で共同体を作っていくことが大切だ。そして、未来の医療について大きく絵を描き、問題に気づき、解決するために行動を起こすことが求められている」と今回の開催の趣旨を述べた。オープニング・パネル:ジェネラリストは日本の医療を救うのか「オープニング・パネル」として「ジェネラリストは日本の医療を救うのか」をテーマに有識者4名のパネリストが会場を巻き込み、熱い議論を行った。問題提起として各パネリストから次のような発言がなされた。「現在は医療の知識の格差が顕著である。これからは命の延命の程度(社会、家庭、行政の関係で)が課題となる」や「ジェネラリストが今後の医療を変える突破口となると思う。今後は実態の把握、目指す目標、達成の手段など具体的にアクションを起こすことが大事」との指摘のほか、「沖縄は離島が多いため、自然とジェネラリストになることが求められる。そのノウハウを活かすために東京に来たが、地域医療について東京は遅れている。今後10年で10万人のジェネラリストを育成し、わが国の医療の格差(経済と知識の両方)を何とか解決しなくてはいけない」という目標設定や「日本とヨーロッパでは、医療者の定義が異なる。ヨーロッパでは、医師が医療・福祉・共同体作りを行っていて身近な存在だが、日本ではまだ遠い存在だと感じている。身近な存在には家庭医であるジェネラリストがなるべきだと考える」などのコメントが述べられた。続いてディスカッションとなり、「医療に関して情報公開が不完全であり、透明さがない。患者側も医療への理解力を上げていかないといけない」という意見や「地域での医師分布、専門領域での医師分布、昼夜間での医師分布の異常が起っている。医師全員が守備範囲を広げなくてはいけない。具体例として当院では、病院見学の際は見学者全員が院内PHSをもち医療活動を行う、参加型医療を実践させている。もちろん患者にも協力してもらい、医師の教育をポジティブに見てもらう、医師の育成の現場に参加させる試みを行っている」という事例紹介や「イギリスのGP(家庭医)のように『価値の実現共有』が必要。たとえば100個の医療変革アクションプランの発表が必要ではないか」という提案が行われた。会場からは、「ジェネラリストが活躍する時代だと実感している。これからは具体的な目標(増員人数や増員の方法、啓発方法など)を定め行動することが大事。若手医師には『総合医』という確固としたキャリアパスを示すことが大切」という提案や「専門医とジェネラリストが手を携えて診療にあたり、診療の見落としを無くすことが重要で張り合うものではない」という意見や「今までジェネラリストは、一般社会に存在を広めてこなかったことが反省点。現在の医療は、昔のように単純に診療をして、治療をしておしまいではなく、患者と寄り添い、患者の代弁人(アドボカシー)として関わることも重要な使命と考えている。このことを一般社会に広く周知する必要がある」などの提案がなされた。最後にパネリストが一言ずつコメントを寄せ、「今後の実行への期待」や「これから医療を変えるスタートとしたい」など抱負を述べた。午後からは会場を2ヵ所に分け、10名の識者から成る円卓会議「ジェネラリスト・ラウンドテーブル」と若手医師から構成される「エンパワーメント・セッション」が開催された。ジェネラリスト・ラウンドテーブル:ジェネラリスト大国ニッポンになるためにはジェネラリスト・ラウンドテーブルでは、「ジェネラリスト大国ニッポンになるためには」をテーマに3時間にわたるディスカッションが行われた。ディスカッションでは、次のような内容の問題提起や意見が出され、話し合いが行われた。――ジェネラリストの定義、教育、役割とは?活躍の場で名称は変わり、境界は曖昧である。ER、集中治療室、病院総合医、病院以外であれば家庭医と呼ばれる育てるには後期臨床研修後のキャリアパスが大事。ジェネラリストになるためのトレーニングはある程度必要(例:1次救急の患者を診療できるレベル)。そのため、へき地臨床研修と大病院での研修をバランスよく実施する必要がある専門医で補いきれない部分を補完するのはジェネラリストの役目――ジェネラリストをいかに広げていくか?ジェネラリストがこれから、行政、自治体とどうつながっていくのか、プロモートできる人(ジェネラリストの伝道師)を育てる総合診療部門は収益を生む部門であることを、より強調することと社会へのPRが大事ジェネラリストの横の連携が弱い。横の連携を強化し、診療ノウハウの交換やジェネラリストが語る場、居場所となる場(例:医師会)を作ることが必要――高齢者とジェネラリスト高齢者は疾患の数が多く、身体の恒常性も破たんしている場合もあり、治療して治すことは難しい。そこで、高齢者の患者に寄り添う医師としてジェネラリストが活躍するアメリカのように患者のQOLを重視し、患者とゆるい距離間で家族も巻き込み寄り添う、顧問的な役割にジェネラリストがぴったり合う。その際、もっとチーム力をもって看護師やセラピストを入れることも大切高齢者特有の終末期医療は、在宅医療で多くの経験を積む必要がある。研究がメインの大病院では学ぶことが難しい――ジェネラリストは医療の質を上げるか?わが国では、ジェネラリストになると生活環境が改善される。それを見越してジェネラリストが増えれば、過分な診療から解放された専門医の生活も改善され、医療の質全体が上がる今後、ジェネラリストが増えれば医療費が削減されるかどうかの検証は必要――ジェネラリストとしての研究への取り組みジェネラリストは個別化しているので医局のしがらみなく、コラボレーションをして研究、発表をしたらいい研究費用がなくてもジェネラリストでしかできないフィールド研究もある。今大事なのは、よく行われているリサーチ・クエスチョンではなく、ジェネラリストの素朴な疑問を整理し、研究・発表すること。ジェネラリスト全員の疑問を収集して、流すシステムが必要であり、それを指揮できる旗振り役も必要●自由討論――なぜジェネラリストはメジャーにならなかったのか?従来は精神論が多すぎた。ジェネラリスト自体の考えがバラけていて、一本化されていなかったのが問題。今後はジェネラリストが、医療の担い手として専門医に便利な存在であること、その効果を宣伝することが大事であり、社会に向かってわかりやすいものを作る必要がある一般への啓発は、マスコミを利用しないとうまくいかないジェネラリストとは、医療全体を見ることができる医師であると思う「ジェネラリストは収益が良い」という魅力あるモデルを示すことができれば、後に続く医師がでるエンパワーメント・セッション1:ジェネラリストの魅力を伝える医学教育孫 大輔 氏(東京大学 医学教育国際協力研究センター)の司会のもと、5名のパネリストから自己紹介とともにテーマに関するコメントが寄せられた。「研修医への教育内容の範囲(どこまで教えるか、任せるか)」、「1日の中での教育時間(指導の負担が大きすぎる)」、「医学教育の本質的な内容(医学教育が軽く見られている)」、「大学でのジェネラリストの低い地位について」などをもとに会場の参加者とディスカッションを行った。ディスカッションでは、若手医師をジェネラリストに導くために「大学等で居場所を作り、発表の場を作ることが必要」や「長い医学教育の中で臨床でしか教わらないヒドゥン(隠れた)カリキュラムがジェネラリストには大事。これをうまく活用すれば育成の時間節約になる」、「ジェネラリストを育てるためには臨床の現場を見せて、ベッドサイドで突き放して教えることで伸びる」、「指導医が研修医の診断能力を診断する。この時間を指導医が楽しめるかが教育のカギとなる」などの意見が寄せられた。最後に孫氏が、まとめとして次のポイントを示した。教育者自身が医学教育をとにかく楽しむヒドゥン(隠れた)カリキュラムの活用(背中で楽しさを見せる)大学での水先案内人を増やす(学内でジェネラリストの占めるポストを増やす)ジェネラリストだけでなく専門医とよい連携をする大学だけでなく地域とつながった医学教育が必要国民や市民参加型の医学教育を志向するエンパワーメント・セッション2:越境者たれ!コミュニティを変えるジェネラリストとはセッション2では、草場 鉄周 氏(北海道家庭医療学センター)の司会のもと、「地域とジェネラリストの関係について」ディスカッションが行われた。4名のパネリストが自己紹介とともに、テーマについて次のようにコメントを寄せた。「日本の医療はジェネラリスト待望の方向へ向かっている。地域で診療の格差が顕在化した今、その隙間を埋めることができるのがジェネラリストだと考える」という役割論や「地域医療の視点からジェネラリストは地域をつなげる大事な役目を担っていると思う」という地域との連携や「これから日本の医療で果たすジェネラリストの役割を考えていきたい。原発被災地で働いているが、将来の日本の姿が被災地にあるように思う。いかにチームの中心としてジェネラリストが活躍しなくてはいけないかをディスカッションしたい」という要望、そして「地方でも共同体がまとまっている地域とそうでない地域がある。その差が医療の受益の格差を生む一因ともなっている。どうすれば若手の医師が、ジェネラリストとして地域に残る、または入っていくのかその方法を考えたい」という問題提起が述べられた。以上のコメントに対し、会場からは「普段から地域の住民と医師とのコミュニケーションは大切である。何かのきっかけで急に行おうとしてもうまくいかないことがある」や「患者は医師の前ではかなり萎縮している。この見えない距離を縮めないと医師は、コミュニティのリーダーにはなれない」、「看護師などの他種職種と在宅医療のカンファレンスを行っている。医師はファシリテートをする役目だと思う」、「コミュニケーションの量が、活動の活発化に比例する。これからのコミュニティは、一方的な命令ではなく、対話をして納得してからではないと動いていかない」という意見などがあった。まとめとして草場氏から「ジェネラリストを育てるには、コミュニティを視野に入れた活動が必要。たとえば、地域医師会は限られた予算の中で医療をどうするか真剣に考えている。そうした地域の先輩の中に入り、活動を広げていくことが大切」と感想を述べ、セッションを終了した。ラップ・アップ・セッション:ジェネラリスト宣言「ラップ・アップ・セッション」として、1日の総括が行われた。セッションでは、司会の孫 大輔 氏が、「市民参加型の医療へ向け今日から新しいことが始まる予感がする。今後はジェネラリストの定義と質の保証が必要となるし、General Mindも養成する必要がある」と述べ、もう一人の司会者の坂本 文武 氏は「今回のように集い、考えることが大事。仕組みを変えていく努力が必要で、ディスカッションを通じて解決策を見つける。今後は医師だけでなく、別の立場の人の視点も大切」とコメントを寄せた。続いて当日の参加者全員に配布されたアブストラクト集の「私のジェネラリスト宣言」について説明が行われ、その場で参加者に「今からの気持ちの表明」として、個人の目標を記入してもらい、今後の取り組みへの奮起を促した。次に、事前に投票を行っていた「ジェネラリストが増えた社会のありかた」についての投票結果を発表。第1位には「ジェネラリストが協調・連携することで、スペシャリストの真価が効率的に発揮され、互いに尊厳をもって意見交換・連携できる社会」が選ばれた。最後にジェネラリスト宣言が発表され、次の一文が述べられ、はじめての「Generalist Japan 2012」は終了した。ジェネラリスト宣言「医療者が有機的に連携し、社会とのつながりを再構築することで、生老病死が生活の一部になっている社会」ジェネラリスト Japan 2012 Opening Movie http://www.youtube.com/watch?v=bE75pE66Y2gMedical Studio USTREAM(当日の動画が視聴できます)http://www.ustream.tv/channel/medical-studio-ustream#eventsMedical Studio のFacebookページ http://www.facebook.com/medicalstudio.jp

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小学生の貧血、校長への報奨金で改善

 健康サービスの提供者に、助成金のほかに成果に応じた報奨金を支払うことで、子どもの貧血が改善される可能性があることが、米国スタンフォード大学医学部のGrant Miller氏らが中国の農村地域で行った調査で示された。開発途上国には、健康状態の改善に寄与する安価で優れた効果を持つ技術やサービスはあるものの、それを遂行し普及させる技能が一般に弱いとされる。目標の達成に対して、その方法を問わずに支払われる報奨金は、サービスの提供における創造性や技術革新の促進に向けた動機づけを強化する可能性があるが、開発途上国ではこれまで、健康アウトカムに直接的に準拠した、能力に応じた報奨金の有効性の評価は行われていなかったという。BMJ誌2012年8月18日号(オンライン版2012年7月27日号)掲載の報告。報奨金の効果をクラスター無作為化試験で評価研究グループは、中国農村地域の子どもの貧血の改善における、健康サービス提供者への職能に応じた報奨金の支払いの効果を評価するために、クラスター無作為化試験を実施した。対象は、無作為に選ばれた中国北西部の農村地域の小学校72校(3,553人、4~5年生、9~11歳)。これらの学校が、以下の4つの群に無作為に割り付けられた。1)介入を行わない群、2)校長が貧血に関する情報のみを受け取る群(情報群)、3)校長が貧血の情報と無条件の助成金を受け取る群(助成金群)、4)校長が貧血情報と助成金に加え、生徒の貧血が改善した場合に報奨金を受け取る群(報奨金群)。助成金は、学校運営予算だけでは貧血対策費が賄えない学校に生徒1人当たり1日1.5円(赤身肉55~85gを購入できる)が拠出された。報奨金は、貧血生徒が非貧血と診断されると1人当たり150円が校長に支払われた(貧血生徒が半減した場合、月給の約2ヵ月分に相当)。非介入群に27校(1,623人)、情報群に15校(596人)、助成金群に15校(667人)、報奨金群には15校(667人)が割り付けられた。貧血はヘモグロビン濃度<115g/L(<11.5g/dL)と定義した。報奨金群で貧血が24%低下生徒の平均ヘモグロビン濃度は、非介入群に比べ情報群が1.5g/L(95%信頼区間[CI]:-1.1~4.1、p=0.245)上昇し、助成金群は0.8g/L(同:-1.8~3.3、p=0.548)、報奨金群は2.4g/L(同:0~4.9、p=0.054)上昇した。報奨金群では、平均ヘモグロビン濃度の2.4g/Lの上昇により貧血生徒が24%減少した。約20%の学校が本試験とは別の報奨金の支払い制度に参加していたが、情報群と報奨金群ではこれらの制度との相互作用が認められた。すなわち、既存の報奨金制度に参加していない学校に比べ、参加校の情報群ではヘモグロビン濃度が9.8g/L(95%CI:4.1~15.5、p=0.01)、報奨金群では8.6g/L(同:2.1~15.1、p=0.07)上昇していた。著者は、「報奨金の支払いは、健康アウトカムの改善に中等度の効果を有することが示唆された」と結論しており、「他の動機づけや既存の報奨金との相互作用を把握することが重要であり、これを理解しないとせっかくの増強された効果を見逃すことになる」と指摘している。

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現役CEOが医学生に語るキャリア形成、キャリア構築のコツ!

7月7日(土)慶應義塾大学信濃町キャンパスにおいて山本雄士氏(株式会社ミナケア 代表取締役)主催による「山本雄士ゼミ」の第4回が開催された。今回は、ノバルティス ファーマ株式会社 代表取締役社長である三谷宏幸氏をゲストに迎え、日本と世界のキャリア形成の違いやリーダーシップ論などを中心に話を聞いた。山本雄士ゼミは、ハーバード・ビジネススクールでMBA(経営学修士)を取得した山本氏をファシリテーターに迎え、ケーススタディを題材に医療の問題点や今後の取組みをディスカッションによって学んでいく毎月1回開催のゼミである。産業構造の大転換講演では、三谷氏が自身のキャリアを述べた後、国際ビジネスマンとしての視点から現在の日本の産業と世界、そして医療について語った。はじめに日本の産業構造の変化について、以前なら市場は国内だけ見ていればよかったが、今では全世界を見なくてはならなくなったこと、そして、外国からの文化の流入と融合への取り組みが必要となったことなど、三谷氏の分析的視点から語られた。講演では、大手家電メーカーを例に説明し、「日本企業は時代のニーズへの対応が不得意であり、視野狭窄で国内市場しか目が向いていなかった(ガラパゴス化)。その結果、今日のような事態を招いた」と語った。日本的思考法、グローバルの思考法「日本的思考とグローバルの思考」の違いについて説明し、「日本では文化の同質性から『あ・うんの呼吸』で仮説から一気に結論までもっていくが、グローバル思考では文化が異なるため仮説から論証を積み上げて結論までもっていく。論理的な思考というものがきちんとなされている。また、組織構成とキャリアパスの違いから日本企業はなあなあの仲良しクラブになりがちだが、グローバル企業では個々人の責任の所在を明らかにし、リスクを選び、リスクに見合った利益を手にする考え方が主流である」と日本と外資系企業の違いを説明した。そのうえで、外資系企業の強さについて、その要素は3つあり、(1)規模、(2) 開発力、(3) 人材と企業文化であるとした。具体的に、製薬メーカーであれば規模が大きいほど研究・開発力が大きくなる。そして、開発に関して「規模で劣る日本の製薬メーカーが、研究・開発の分野の絞り込みをできていないところが心配だ」とコメントするとともに、(3) 人材と企業文化についてはリーダーシップ論とキャリア形成法を交えて詳しく説明を行った。求められるリーダーとは?三谷氏が以前所属していたGE(ゼネラル・エレクトリック)を例に「リーダーに求められる資質」として「『外部思考、想像力、専門性、明瞭な思考、包容力』の5つの資質が、大人数を納得させ、動かす資質である」と説明。そして、リーダーに求められる能力として「専門知識、ビジネス知識、企業価値にもとづく行動規範、リーダーシップ」が必要だと説明した。次に、混同されがちな「リーダー」と「管理職」の違いを説明し、「リーダーはアクセルであり、ビジョンを重視し、柔軟性をもっている。管理職はブレーキであり、ロジックを重視し、一貫性をもっている」とその差異を説明した。最後に主体的なキャリア構築の勧めとして、「継続的に挑戦し、学んでいくマインドが大切である」と述べ、次の言葉を聴講者に贈り、講演を終えた。“Control your destiny or someone else will”(自分の運命は自分で選べ)                                                                -Jack Welch(GE 元CEO)引き続き、質疑応答となり、多くの参加者が質問を寄せた。――人材教育は日本企業と外国企業のどちらがよいか?決して日本が劣っているわけではない。しかし、外資の戦い方やさまざまなプレゼンテーションの仕方は勉強になるし、ロジカルな思考も強くなれる。――社長になるための資格は?社長になる方程式はないので自分で作るしかない。ただロジカルな思考ができる面で、理系は有利だと思う。また、現場は人間性、リーダー力を養う場になるので現場に出て修行を積むことも大事。現場での人の動かし方や苦労を知り、失敗することで成功への意欲が出てくる。――キャリアを変えるために行うべきことは何か?キャリアの変更については、「自分の強み、将来の予想、過去の成功例」を見出すことだと思う。同じグループだけを見ているのではダメ。自分自身でいえば、自己実現の充足が今のポジションをもたらしている。学ぶことを止めないこと、私は、自分の学びの確認に海外を見ている。――医療業界で若手が元気になるには?日本の研究環境も変わりつつあるが、まだ世界レベルではないように思う。たとえば米国のボストン近郊のケンブリッジは大学、企業の研究所、ベンチャーが集積していて、研究者がお互いに刺激し合っている。日本では、価値を転換して臨床研究の評価を上げるなども必要だと思う。――医療の世界へ来た動機と今後の抱負以前いたGEで医療に関わり、興味があった。機会があれば挑戦したいと思い医療の世界に来た。これからも、さらなる自己実現と周りの人が驚くようなスピードで経営を行っていきたいと思う。『医療イノベーション 5か年戦略』とディスカッション後半のディスカッションでは、資料に『医療イノベーション 5か年戦略(案)』(医療イノベーション会議・発行)と『平成24年度診療報酬改定の概要』(厚生労働省・発行)を使い、前者の立案に参加した山本氏が、内容の要旨と今後の医療施策の動向について説明した。資料から「人口動態変動で今後は高齢者が増加し、死亡率が増加する(少子多死時代の到来)。この社会環境の中で医療をどう位置づけるかが問題。今までの日本は、低コストで効率のよい医療を提供していたが、今では国家財政的に厳しい時代に来ている」と将来への論点を提示した。次に『医療イノベーション5か年戦略』の内容を詳説し、「政府として今までの議論を基に、今後志向することは何か」を説明した。とくに今回「『広い視点から医療技術評価のあり方を検討する』、『予防から終末期に至る包括的なケアを考える』という2つの事柄が入ったことは画期的なこと」と述べた。この後、質疑応答となり、資料の内容やゼミの活動についてさまざまな質問が寄せられた。たとえば「今回の『医療イノベーション』の特色は何か?」という質問に「いままで基本理念がなかったが、健康長寿、産業振興(医薬品の開発)、世界への発信という3つを明記した。また、PDCAサイクルによるチェック機能を入れたところが大きな特色」と回答した。また、「日本の医療に明るさが見えない。さまざまなゼミや研究会で出された提案が、なかなか政策に反映されず、政府の審議会だけで決まってしまうことに、とても歯がゆさを感じている」という感想に対して、「このゼミは、いろいろな世代、立場の人が集まって議論する場であり、なかには中央省庁の方も出席されている。声が届かないことはないと思う。また、ゼミの場は、いわば道場であり、ゼミでの議論を自分のものにして、実現できるようになっていってもらいたい。今後はゼミでの議論も踏まえて、政策提言できる動きもしていきたい」と述べ、ゼミを終了した。なお今後のスケジュールは次の通り(いずれも16:00~19:00の開催予定)。第5回 9月8日(土):ワイス(製薬会社のケーススタディ)第6回 10月13日(土):後期ガイダンス&クリーブランド・クリニック(アメリカの病院のケーススタディ)第7回 11月10日(土):『医療戦略の本質』の読書会&西ドイツ頭痛センター(ドイツの病院のケーススタディ)第8回 12月8日(土):ピッツニーボウズ(アメリカの医療保険者に関するケーススタディ)第9回 1月12日(土)(仮):外部講師による講演会第10回 2月9日(土)(仮):セダケア(地域のヘルスケアシステムのケーススタディ)●ゼミ公式HP http://yamamoto.umin.jp/●ゼミ公式Facebook http://www.facebook.com/#!/groups/226064334073359/●講演者経歴■関連リンク・三谷宏幸氏著作『世界で通用するリーダーシップ』・山本雄士氏著作『医療戦略の本質』『奇跡は起こせる わが子を救うため、新薬開発に挑戦したビジネスマン』

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低・中所得国は男性喫煙率が高く、女性の開始年齢が若年化:30億人の解析

 低・中所得国は英米に比べ、男性の喫煙率が高く、女性の喫煙開始時期が男性と同じ年齢に若年化しつつあり、禁煙率も低いことが、米国・ニューヨーク州立大学バッファロー校のGary A Giovino氏らGATS Collaborative Groupの調査で明らかとなった。現在、喫煙に起因する死亡率は高所得国が18%、中所得国が11%、低所得国は4%だが、喫煙率は高所得国で低下傾向にあるのに対し、低・中所得国では増加し死亡率も上昇している。WHOによれば、毎年約600万人が喫煙関連の原因で死亡しており、このままでは21世紀中に世界で約10億人が喫煙が原因で若年死するとされるが、低・中所得国の喫煙状況に関する信頼性の高いデータはないという。Lancet誌2012年8月18日号掲載の報告。14の低・中所得国と英米のデータを解析GATS Collaborative Groupは、低・中所得国における成人の喫煙パターンや喫煙関連因子を評価するために、横断的な国別の世帯調査である「世界成人喫煙調査(GATS)」のデータを用いて解析を行った。2008年10月1日~2010年3月15日までに、14ヵ国(バングラデシュ、ブラジル、中国、エジプト、インド、メキシコ、フィリピン、ポーランド、ロシア、タイ、トルコ、ウクライナ、ウルグアイ、ベトナム)の15歳以上を対象に世帯調査を行い、喫煙関連情報を収集した。14ヵ国間の喫煙の重み付き点推定(weighted point estimate)と95%信頼区間(CI)を算出し、2008年の英国のGeneral Lifestyle Survey、2006~2007年の米国のTobacco Use Supplement to the Current Population Surveyのデータと比較した。喫煙率は男性48.6%、女性11.3%、禁煙率は英米で高いGATS参加国と英米を合わせた16ヵ国の約30億人が解析の対象となった。そのうち喫煙者は約8億5,200万人で、中国が3億100万人、インドが2億7,500万人を占めた。GATS 14ヵ国の喫煙率は男性が48.6%(95%CI:47.6~49.6)、女性は11.3%(同:10.7~12.0)であった。そのうち、葉巻やパイプなどを除くタバコ製品の喫煙率は男性が40.7%(範囲:ブラジルの21.6%からロシアの60.2%)、女性は5.0%(同:エジプトの0.5%からポーランドの24.4%)だった。喫煙者の多く(82%)が既製のタバコ製品を好んだが、インドやバングラデシュでは無煙タバコや巻きタバコが一般的だった。ほとんどの国では、調査時に55~64歳の女性は同年代の男性に比べ喫煙開始年齢が高かったが、25~34歳では男女間の喫煙開始時期に差はなかった。禁煙率(喫煙経験があるが調査時は喫煙していない者の割合)は中国、インド、エジプト、ロシア、バングラデシュで低く(5ヵ国全体で20%未満)、英国、米国、ブラジル、ウルグアイで高かった(5ヵ国全体で35%以上)。著者は、「GATS参加14ヵ国は英米に比べ、男性の喫煙率が高く、女性の喫煙開始時期が若年化しており、禁煙率が低いことが示された」と結論し、「これらの知見は、喫煙関連の罹病率や死亡率を低下させるには、喫煙開始の予防や禁煙の促進に向けた努力が必要とのこれまでの見解を補強するもの」と指摘している。

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ケアネット白書~糖尿病編2012

株式会社ケアネットでは、このほど「ケアネット白書 糖尿病編(以下、糖尿病白書2012)」をまとめた。本調査は、2型糖尿病患者を1ヵ月に1人以上診察している医師を対象に、2012年3月にインターネット調査を実施し、その回答をまとめたものである。以下、(1)調査方法(2)患者背景(3)治療現状(4)糖尿病治療薬の選択と重要視する事項―などを中心に、「糖尿病白書2012」の概要を紹介する。CONTENTS1.調査目的と方法2.結果1)回答医師の背景2)2型糖尿病患者の背景3)2型糖尿病の治療4)薬剤の使用状況5)薬剤選択の際に重要視する項目6)新薬の情報源として役に立つもの

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ケアネット白書~糖尿病編2012

1.調査目的と方法本調査の目的は、糖尿病診療に対する臨床医の意識を調べ、その実態を把握するとともに、主に使用されている糖尿病治療薬を評価することである。2型糖尿病患者を1ヵ月に10人以上診察している全国の医師502人を対象に、(株)ケアネットのウェブサイトにて、アンケート調査への協力を依頼し、2012年3月19日~26日に回答を募った。2.結果1)回答医師の背景回答医師502人の主診療科は、一般内科が36.5%で最も多く、次いで糖尿病・代謝・内分泌科で35.9%、循環器科で12.4%である。それら医師の所属施設は、病院(20床以上)が72.7%、診療所(19床以下)が27.3%となっている。医師の年齢層は40-49歳が最も多く33.1%、次いで50-59歳以下が30.9%、39歳以下が30.1%と続く。40代から50代の医師が全体の6割以上を占めている(表1)。表1画像を拡大する2)2型糖尿病患者の背景1ヵ月に診察している2型糖尿病患者数最近(2012年3月基準)1ヵ月に、外来で診察している2型糖尿病患者は全体平均138.0人である。診療科別で見ると、糖尿病・代謝・内分泌科は平均266.8人、その他の診療科では平均65.9人であった。その2型糖尿病患者について、過去1~2ヵ月の血糖コントロールの指標であるHbA1c(NGSP:以下同)値をそれぞれ層別に分類して患者数を聞いている。HbA1c値別の2型糖尿病患者数HbA1c値については、糖尿病治療ガイド2012-2013(日本糖尿病学会編)に基づき、6.2%未満(血糖コントロール優)6.2%以上6.9%未満(血糖コントロール良)6.9%以上7.4%未満(血糖コントロール不十分)7.4%以上8.4%未満(血糖コントロール不良)8.4%以上(血糖コントロール不可)――の5つの階層に分けた。最近1ヵ月に診察している2型糖尿病患者(平均138.0人)のうち、HbA1c 6.9%未満と血糖コントロールが比較的良好なのは36.2%で、全体の63.8%は良好な血糖コントロールが得られていない状態である。その中でも血糖コントロールの指標で『不可』に相当するHbA1c 8.4%以上の患者が14.5%みられている(図1)。図1画像を拡大する3)2型糖尿病の治療管理目標値2型糖尿病治療におけるHbA1c値の管理目標値を患者の年代別に聞いたところ、患者が「若年者・中年者(65歳未満)」の場合には6.65%であったのに対し、「高齢者(65歳以上)」では7.05%であった。若年・中年者と比べて、高齢者の管理目標値はやや甘く設定されている実態が明らかになった。血糖コントロールの指標血糖コントロール指標として、HbA1c値に加えてとくに重要視する項目としては、「空腹時血糖値」「食後2時間血糖値」が多く、次いで「随時血糖値」「SMBGでの血糖変動」が続いた。診療科別では、糖尿病・代謝・内分泌科では「食後2時間血糖値」を重視する割合が最も高く、その他の診療科では「空腹時血糖値」を重視する割合のほうが高かった(図2)。図2画像を拡大する初期治療最近1ヵ月に診察している2型糖尿病患者(平均138.0人)のうち、約9%が食事・運動療法のみで治療を行っており、約90%は食事・運動療法に加え、何らかの薬物療法を行っている(図3)。図3画像を拡大する4)薬剤の使用状況2型糖尿病患者に対する薬剤の併用状況「食事・運動療法+薬物療法で治療している患者数」を100%としたとき、1剤のみを処方している患者は32.6%で、2剤併用が39.8%、3剤以上の併用が27.5%であった。薬物治療を行っている約2/3にあたる67.3%の患者では、何らかの薬剤を併用している(図4)。図4画像を拡大する2型糖尿病に対する糖尿病治療薬の使用状況について2型糖尿病に対する糖尿病治療薬をSU薬、速効型インスリン分泌促進薬、α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)、ビグアナイド(BG)薬、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、インスリン製剤、その他――のカテゴリーに分けて、食事・運動療法に加えて薬物療法を実施する際の第一選択薬を聞いた(図5)。図5画像を拡大する使用が最も多いのはDPP-4阻害薬で、回答した医師全体の26.9%が第一選択薬として使っている(図5上)。次いで多いのがBG薬で、20.9%。以下、SU薬が18.4%、α-GIが15.0%、速効型インスリン分泌促進薬が5.7 %となっている。<糖尿病・代謝・内分泌科での第一選択薬>回答医師の属性が糖尿病・代謝・内分泌科の場合、最も選択の多いのがBG薬で33.4%であった(図5中央)。次いで多いのがDPP-4阻害薬で28.5%、SU薬13.0%、α-GIは8.1%であった。<その他の診療科(糖尿病・代謝・内分泌科以外)での第一選択薬>回答医師の属性がその他の診療科の場合、最も選択の多いのがDPP-4阻害薬で26.0%を占めている(図5下)。以下、SU薬が21.4%、α-GIが18.9%、BG薬が14.0%などとなっている。糖尿病・代謝・内分泌科(図5中央)と比べると、SU薬、α-GIの割合が増加し、その分、BG薬の割合が減少している。5)薬剤選択の際に重要視する項目なお、薬剤を選択する際に重要視する項目についても聞いている(複数回答)。最も多いのは「低血糖をきたしにくい」で、69.5%の医師が挙げている。以下、インスリン抵抗性改善(66.9%)、食後高血糖改善(66.3%)などが主なものである(図6左)。図6画像を拡大する<糖尿病・代謝・内分泌科での重要視項目>回答医師の属性が糖尿病・代謝・内分泌科の場合、薬剤選択で重要視する項目として最も多いのは「低血糖をきたしにくい」で、78.9%の医師が挙げている(図6中央)。以下、体重増加をきたしにくい(73.9%)、血糖降下作用(70.6%)などが主なものである。<その他の診療科(糖尿病・代謝・内分泌科以外)での重要視項目>回答医師の属性がその他の診療科の場合、薬剤選択で重要視する項目として最も多いのは「インスリン抵抗性を改善する」で、70.5%の医師が挙げている(図6右)。以下、食後高血糖を改善する(68.0%)、低血糖をきたしにくい(64.3%)などが主なものである。全体的な傾向をまとめると、専門医の方が「低血糖をきたしにくい」薬剤を最重要視し、「体重増加をきたしにくい」薬剤を重要視することが多く、非専門医の場合は「インスリン抵抗性を改善する」薬剤を重要視する傾向がある。とはいえ、診療科を問わず、「低血糖をきたしにくい」薬剤が重要視されていることが明らかとなった。6)新薬の情報源として役に立つものここ数年、糖尿病領域においては新薬の発売が続いている。そこで、糖尿病の新薬の情報を得る際に、役に立つと感じる情報源についても調査した(図7)。最も多いのは、製薬会社MRで66.9%、次いで製薬会社主催の講演会(65.3%)であった。以下、研究会(46.4%)、学会のセミナー(43.8%)、医療専門サイト(41.4%)と続いた。図7画像を拡大する

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「身体のために禁煙しましょう」、さて先生ご自身は?医師の喫煙率2012

分煙化、禁煙エリアの拡大と、社会全体として嫌煙モードが高まる一方の昨今。もちろん院内も例外ではなく、全館禁煙という施設も増加している様子。2011年の「全国たばこ喫煙者率調査」(JT実施)によると、日本全体では21.1%。2010年10月の値上げの影響を受けて大幅に下がった2011年調査と比較すると、減少率は鈍化しているようです。そんな中、患者さんに禁煙を勧める立場にある先生方の喫煙率はどうなのか?ケアネットで2011年9月に実施したアンケートでは8.6%。さて約1年後の今回の結果はいかに?「医師の喫煙率2012」、前回と比較しながらご覧下さい。また、疾患リスクとの関係から少しずつ高まりつつある「喫煙者は医療の負担額を上げるべき」という考え方についても賛否をうかがってみました!結果概要はこちらコメントはこちら設問詳細タバコについてお尋ねします。JTが2012年5月に実施した「全国たばこ喫煙者率調査」によると、現在の全国の喫煙者率は21.1%でした。うち男性は32.7%(前年比-1.0ポイント)、女性は10.4%(同-0.2ポイント)と、男女とも漸減傾向にあります。なお対前年比で見ると、昨年調査時は2010年10月の値上げの影響を受け全体で2.8ポイント下がりましたが、今年度調査では0.6ポイントの減少に留まりました。そこで先生にお尋ねします。Q1. 先生は喫煙されていますか。喫煙している以前喫煙していた喫煙したことがないQ2. 「喫煙は医療費増につながっているため、喫煙者は保険料や医療費などの負担額を上げるべき」という考え方がありますが、いかがお考えですか。賛成反対どちらともいえないQ3. コメントをお願いします(ご自身の喫煙に関して、禁煙された方はそのきっかけ、院内の喫煙環境、禁煙外来を含め患者・家族からの要望や状況など、タバコに関わることでしたら何でも結構です)アンケート結果Q1. 先生は喫煙されていますか。Q2. 「喫煙は医療費増につながっているため、喫煙者は保険料や医療費などの負担額を上げるべき」という考え方がありますが、いかがお考えですか。2012年8月17日(金)実施有効回答数:1,000件調査対象:CareNet.com医師会員結果概要医師の喫煙率は7.1%、国民全体での変化に比較し高い減少率調査対象者の喫煙率は7.1%、2011年9月に実施した同調査では8.6%であり、1.5ポイントの減少となった。国民全体では2012年21.1%(前年比-0.6ポイント)、2011年21.7%(同-2.8ポイント)と減少率の鈍化が見られる一方(JT実施「全国たばこ喫煙者率調査」より)、医師の喫煙者は着実に減りつつあることが見て取れる。なお「喫煙したことがない」医師は、前回と変わらず56.7%という結果となった。「喫煙者は医療の負担額を上げるべき」 、考え方には約6割が賛成"喫煙は医療費増につながるため、喫煙者は保険料や医療費などの負担額を上げるべき"という考え方に対する賛否を尋ねたところ、賛成58.1%、反対15.5%となった。賛成医師からは「なぜ非喫煙者が喫煙による疾患の医療費も負担しなければならないのか」「疾患リスクが上昇することは証明されているため、応分の負担を求めるべき」といった意見が多く寄せられた。反対派からは、「飲酒・肥満・塩分過多など他の生活習慣や嗜好品の扱いはどうするのか」「喫煙者確認が困難」などのコメントが寄せられた。禁煙のきっかけ「患者からの視線」「子供のため」「院内の禁煙拡大」など様々以前吸っていたが禁煙に成功した医師は全体の36.2%。きっかけとしては、「自身が禁煙を勧める側にあるため」「COPDの患者を見て」など立場上の理由のほか、「子供ができたこと」「院内が完全禁煙となり、喫煙のたびに外出しては仕事にならない」など環境の変化によるものも多く挙がった。CareNet.comの会員医師に尋ねてみたいテーマを募集中です。採用させて頂いた方へは300ポイント進呈!応募はこちらコメント抜粋 (一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「結婚を機に禁煙しました。家族への影響を考えると喫煙を続けるという選択肢はなく、喫煙歴は10年でしたが、あっさり禁煙できました。 今では嫌煙家で海外のように禁煙者をもっと守るような環境に日本も早くなってほしいと切に願っています。」(30代,男性,耳鼻咽喉科)「もともと喫煙していないが、医療費の増大につながっていることは明らかで、喫煙者に応分の負担を求めるべき。」(50代,男性,消化器科)「自動車保険のようにリスク細分化するのも手かと思う。不健康な人の負担を上げるよりも、健康な人にメリットが出る制度が望まれる。」(30代,男性,呼吸器科)「禁煙のきっかけは子供が生まれたことでした。 精神科病院なので病棟の全面禁煙はできておりません。」(40代,男性,精神・神経科)「禁煙に一番影響を与えるのは周囲の環境変化だと思う。実際自分の場合も結婚や子供の誕生がきっかけであった。そういうきっかけを利用すると不思議と難なく禁煙できるのではないか?」(40代,男性,内科)「職員の反対があり、禁煙外来が開設できていません。抵抗勢力が身内に多いです。」(30代,男性,神経内科)「体に何もいいことがないのに、いつまでも販売して続ける国の考えがさっぱりわからない」(30代,男性,外科)「喫煙をするのであればそのリスクとコストをかぶる覚悟が必要な時代なのでしょうね」(30代,男性,産業医)「勤務時間に喫煙している医師を見かけるが1回10分としても6回で1日1時間となり、非喫煙者に比べ労働時間も少なくなっている。喫煙者については保険料、医療費、たばこ税の増額は当然のこと。」(40代,男性,血液内科)「喫煙は嗜好の問題なので、他人に迷惑をかけない限りは許容されるべきと考えます。医療費増につながっているのは喫煙の他にも過食やアルコール多飲などもあるわけですから、喫煙者のみ負担額を上げるというのはおかしな話です。わたし自身は運動を始めたため、必然的に禁煙に至りました。喫煙していると運動が苦しかったからです。」(50代,男性,外科)「自分では喫煙歴はありません。あそびで1回ふかしたことがある程度。 個人的には喫煙には非常に冷たい気持ちですが、喫煙したい人が喫煙する場所が全くなってしまっているのはちょっとかわいそうに思うと気もあります。私に迷惑がかからないところで勝手に吸うことまで制限して欲しいとは思いません。」(40代,男性,耳鼻咽喉科)「患者によくないという以上、医者が喫煙していたらまったく信頼が得られない。」(40代,男性,外科)「喫煙が健康に悪いことはわかっていても医師が喫煙しているケースは多い。現在病院敷地内は禁煙だが、入り口の外に出て並んで吸っている人を多数見かけ、非常に印象が悪いと常々思っている。」(40代,男性,基礎医学系)「喫煙は百害あって一利無しなのは一目瞭然のため、とにかく全国民を強制的に禁煙させるように強く働きかけるべきである」(30代,男性,循環器科)「たばこ1箱1,000円に」(40代,男性,小児科)「自分だけへの影響であれば自己責任だが、間接喫煙として周囲へ悪影響を及ぼすため、売られていること自体間違い。」(30代,男性,総合診療科)「マナーの悪い喫煙者はどこにでもいます。喫煙は百害あって一利なし、健康にも、環境にも、有害です。喫煙自体を法律で禁じてもらいたいくらいです。」(30代,女性,形成外科)「禁煙した人にメリットがあるよう示してあげることも大切である。」(50代,男性,循環器科)「本人以外にも多大な影響を与える以上、一定の制限は止むを得ないと思います。本人の喫煙する権利とのバランス考量は必要と思いますが、原則として新規に習慣喫煙者が登場しない方向へ政策的に誘導すべきだと考えます。」(40代,男性,呼吸器科)「自分自身は喫煙しないから喫煙者がどう扱われても影響ないが,何でも厳しくしようという風潮はいずれ自分の身にも及ぶと予想されるので,一種の防波堤として喫煙者にそう厳しく当たるな,と思っている,」(50代,男性,皮膚科)「婚約時期に禁煙し、その後1度も喫煙したことがない。健康のためだけの禁煙は難しいのでは。家族などの大切なひとのための禁煙であれば、うまくいく可能性が高いと思う。」(50代,男性,泌尿器科)「全面禁煙に賛成です、ある意味、周りの人に迷惑がかかると考えると麻薬より悪いかも」(40代,男性,循環器科)「中途半端な値上げではなく、海外並に価格をあげるべき」(40代,男性,小児科)「今は禁煙の場所が増えたので、自分の家以外で吸おうと思うと、院外や学外へ行かなければならず、そうなると仕事にならないので、医者の喫煙者も本当に少なくなったと思います。」(30代,女性,神経内科)「30年前医局で禁煙の風が吹き、外来の机から突然灰皿がなくなったことをきっかけにやめました。」(60代,男性,内科)「喫煙者はリスクが高いので当然。また、禁煙治療が保険で行われるのもどうかと思う。タバコを吸わない人がなぜ喫煙者の禁煙にともなう治療費を払わないといけないのか」(50代,男性,呼吸器科)「30年前になりますが、病院の勤めが昼夜問わずで忙しすぎて、このままでは、恐らく健康を害してしまうと判断し、禁煙をしました。以後は全く吸っていません。喫煙する人の気持ちもわかりますし、喫煙したことのない人の気持ちもわかります。ただ、今の風潮ではやはり喫煙環境が悪くなるのは致し方ないことかと思います。」(60代,男性,小児科)「COPDの患者さんから「先生、俺みたいになりたくないなら、タバコはやめたほうがいいよ」と言われたのがきっかけで、ニコチンパッチやガムを使ってやめました。」(40代,男性,麻酔科)「受動喫煙による疾病リスクの増加の問題も有り,この厳しい財政状況の中では,喫煙者に多くの財政負担を求めるのは必然の流れ.」(40代,男性,内科)「喫煙は明らかに癌やCOPD、心血管疾患のリスク上げることが証明されているので、自己負担を上げ、責任を取らせるべき。非喫煙者が喫煙者の負担を強いられるのは問題。」(30代,男性,循環器科)「高校生の頃タバコ吸ってましたが、医学部に入って辞めました。あのころは運動していたんで、禁煙で成績が良くなったのが励みでした。禁煙は減塩と同じで個々人への働きかけとともに社会への働きかけも必要です。製薬メーカーももっと禁煙に力を入れてほしいです。MRさんでタバコを吸っているのは論外でしょう。 タバコはひと箱2000円でもいいと思います。」(40代,男性,代謝・内分泌科)「『タバコは嗜好品ではなく薬物』 『喫煙者は病気であり治療が必要』 『その害を国が率先してお墨付きを与え国民にまき散らしている』 という啓発が必要」(30代,男性,神経内科)「喫煙する人が疾患にかかりやすいのだから、受益者負担で高くすべきだと思う。父は吸っているから肺気腫のような症状が出ているが、自業自得であるし、医療費が高くても仕方がないと感じる。私自身はそれを見ているので吸いたくもないし周囲ですっているのも嫌である。」(40代,男性,神経内科)「喫煙者かどうか正しく申告するはずがないので、タバコの販売価格に上乗せする形で徴収し医療費へ回すべきだと思いますね。」(50代,男性,耳鼻咽喉科)「医療に従事する者として禁煙は早くしたかった。が、なかなかできなかった。子供ができたことで一念発起し、自分のためでなく、子供のために、とやめた。 現在院内では看護師と事務職の喫煙率が高い。喫煙後うがいなどをしているようだが、時々においが残り、そのまま患者さんのところに行くので、患者さんがどう思っているのか、気になる。」(40代,男性,産業医)「個人の嗜好なので、条例・法律規制しないかぎり個人の自由。副流煙・受動喫煙に対する配慮は必要。」(40代,男性,整形外科)「税金をたくさん払っているのだから、そこは考慮してほしい。やはり分煙。 喫煙者を悪者にするなら販売自体をやめてほしい」(40代,男性,泌尿器科)「禁煙外来の充実が望ましいが、労力の割には点数が少ないように感じられ、余裕のある医療施設でないと普及が難しいと思います。」(40代,男性,内科)「10数年間1日20本吸っていましたが30歳代後半に不整脈を自覚したのをきっかけに禁煙しました。当時は禁煙補助薬もなく、禁煙の最初の1-2週間がとてもつらかったのを今でも覚えています。」(50代,男性,内科)「禁煙外来をしたいが,保険で診療ではCO測定を必須としているが測定器は10万円以上もするため断念している。また,喫煙を止めた者の割合等を、社会保険事務局長に報告しなければならないなど敷居を高くしすぎている。当局は医師を全く信用していない。」(50代,男性,循環器科)「生活保護を受けている人が、明らかにタバコが原因になっているCOPDの治療を受けつつもタバコを吸い続けているのをみると、今の医療制度はおかしいんじゃないかと思う。」(30代,女性,外科)「保険料の設定において、各個人のリスクを勘案するのは現実的でない。 それよりもタバコが健康にすごい害をもたらす、タバコから市民権を奪うような風潮になってほしい。そのためにはマスコミの力が必要であるが、マスコミは大スポンサーであるJTに遠慮してタバコの真実の姿を視聴者に伝えられないところに大きな問題がある。」(30代,男性,呼吸器科)「受益者負担を考えると喫煙は医療費を押し上げているのだから押し上げている分は喫煙者に負担してもらうのが合理的。」(40代,男性,腎臓内科)「入院患者が職員の自転車置き場などでたむろしてたばこを吸っているのは何とかならないのかなぁと思います。小児の患者に付き添っている患者の母親が、患児を連れて他の人たちといっしょに吸っているのを見ると、受動喫煙の知識とかもないのかと唖然とします。」(40代,男性,その他)「まず、歩きタバコは傷害罪にしたほうがいい。」(40代,男性,精神・神経科)「健診学会、ドック学会のデータを見ても、喫煙の害は明らかです。健康を害して国民総生産を押し下げているものと思います。国の対応も甘くもっと積極的に禁煙キャンペーンをはるべきと思います。」(50代,男性,その他)「喫煙していたのは若いころだけで、特に抵抗なく禁煙しました。院内は室内禁煙で、喫煙所が1か所のみあります。医療費(保険診療)はリスクのある人にも平等に負担される仕組みが日本での前提ですから、これを崩せばいくらでもリスクを考えた負担(あるいは加入拒否)がまかり通るように思います。保険者に加入者の健康維持を働きかけさせるという観点からは、喫煙者が加入したら保険者に補助をして、そのかわり禁煙にどれだけ導いたかを評価してもよいかもしれません。」(50代,男性,小児科)「保険料や医療費をどのくらいにするのかを決めるのが大変でしょうし、現場も大変でしょう。「私は喫煙者です」という自己申告制ですね。 それよりもタバコの値段を上げる。 喫煙のきっかけは何だったのでしょうか。好奇心・大人ぶりたいなどではないでしょうか?」(70代以上,男性,産婦人科)「喫煙したことで医療費の増加に影響しているかもしれないが、1日1本の人と1日0本の人では程度が変わってくると思います。喫煙量に関係なくでは不満が出るでしょうし、その際にその人個人の喫煙量がどのくらいかを証明することができないでしょうし、難しいと思います。喫煙した結果の医療費を上げるよりも、喫煙する際のたばこ税を相当額上げることの方がいいと思います。」(30代,男性,救急医療科)「医師になった時に禁煙しました 喫煙が法律で禁止されているわけではないので、負担増については少し疑問です 喫煙だけでなく飲酒も問題ですし」(50代,男性,内科)「タバコや副流炎の害悪をアピールすることや分煙,禁煙の徹底が大切なのであって,喫煙者の医療費を上げることは当然,患者が嘘をつくことにつながるため反対である.金銭的に負のインセンティブをつけるならたばこ税を調整・増額すればよい.」(40代,男性,神経内科)「喫煙は中毒(依存症)です。誰かが適切に指導すれば禁煙もその継続も可能です。個人的には、あの臭いはもう受け付けないです。」(40代,男性,内科)「喫煙者のマナーの悪さ(道端でたばこを吸って吸殻はそのままポイ・・・など)は耐え難いものがある。たばこ税はもっともっと上げるべきだし喫煙者の医療費負担を上げてもいいぐらいだと思う。」(40代,男性,小児科)「自分は健康にかなり気を遣っているが、喫煙者と同じ保険料、医療費を払うのは解せない。喫煙者の負担を増やすべきである。たばこ関連税は全て医療保険に回すべきである。 目の前で吸わなくても、外で吸ってから部屋に入られると、それだけで部屋の中がタバコ臭くなり、迷惑である。」(40代,男性,放射線科)「禁煙してみると生活があまりに快適になるので、他人にも勧めたくなります。」(60代,男性,神経内科)「明らかな発ガン物質を"堂々と""合法的に""PRまでして"売っているなんて信じられない。」(50代,男性,産業医)「喫煙する医師は患者からどう見られているか考えた事が無いのだろうか?また人に迷惑をかけてはいないという言い訳は成立しない。」(40代,男性,代謝・内分泌科)「85歳です。40年ほど前完全禁煙しました。 小児科は忙しく余り吸う暇がありませんでしたが、当時タバコを吸うことは男のステイタスであったような気がします。まだ煙草の害が余り説かれていなかったころでしたが、医師の中にたばこの害を説く熱心な方がいて禁煙を勧めていました。その方の影響を受けました。それから強引に、喫煙する方の子供は診察しません。と張り紙をして禁煙運動をしてきました。3,40年も前ことです。少しは効き目があったようです。」(70代以上,男性,小児科)「全ての疾患をタバコにつなげる風潮がある。実際診療していてタバコはそれほどrisk factorになっているのか疑問をもつことが少なくない。今のところ健康寿命も世界一だがこの世代の人々は喫煙率は非常に高かった。日本の医療レベルが制度・技術ともに抜きんでていたから、と言えばそれまでだが果たしてそれが全てなのだろうか?」(40代,男性,外科)「咳が止まらないと受診した患者さんが喫煙を続けていることがよくあります。咳止め薬を希望されますが無駄だと思います。」(40代,男性,循環器科)

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治験、臨床研究データをリアルタイム入力 EDCシステム開発

先端医療振興財団 臨床研究情報センター(以下、TRI)は24日、治験、臨床研究の症例データを、インターネットを介してリアルタイムで入力することで、スピードアップと効率化を図れるEDC(Electronic Data Capture)システム『eClinical Base』を独自に開発し、提供を開始したことを発表した。『eClinical Base』の大きな特徴は、症例報告書に関する内容を記載した設定仕様書(エクセル)をシステムにインポートすることにより試験設定が完了すること。つまり、試験設定が非常に簡便であり、症例報告書の変更等にも迅速に対応することができるという。登録割付機能や、SASデータセット出力機能のほか、「Part11(21CFR Part11)システム仕様対応」「GCP(Good Clinical Practice)システム仕様対応」「ERES(Electronic Records and Electronic Signature)準拠」さらに国際共同治験に適合するため、「CDISC(Clinical Data Interchange Standards Consortium)」や多言語での運用も可能だ。 これらもすべてTRIが開発し、運用している。TRIでは2003年の発足以来、一貫してアカデミアの臨床研究の立ち上げと運営を支援し、その数は2012年8月現在で165件に達している。また、EDCシステムを積極的に活用することで効率化を進め、現在稼動している研究の70%以上でEDCを利用している。今後『eClinical Base』を利用し、100%EDCにて実施する予定とのこと。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.tri-kobe.org/news/pdf/20120824_PressRelease.pdf

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薬物依存PTSD患者、PE法による統合治療でPTSD症状がより大きく改善

外傷後ストレス障害(PTSD)で薬物依存を有する患者に対して、PTSDの認知行動療法の1つである持続エクスポージャー法(prolonged exposure therapy:PE)を用いたPTSD・薬物依存の併用治療は、薬物依存の重症度を増大することなくPTSD症状をより大きく改善することが明らかにされた。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のKatherine L. Mills氏らが、103人の患者について行った無作為化対照試験の結果報告したもので、JAMA誌2012年8月15日号で発表した。薬物依存を有するPTSD患者は少なくないが、そうした患者に対するPE法の適切性については明らかでなかったという。治療9ヵ月後に、PTSDと薬物依存症の重症度変化を評価研究グループは2007~2009年に、オーストラリア・シドニーの医療機関で、精神疾患の診断基準「DSM-IV-TR」によりPTSDと薬物依存症の診断を受けた患者103人について試験を開始した。被験者を無作為に2群に分け、一方には、PE法によるPTSDと薬物依存症の併用治療(COPE)と、薬物依存症に対する通常の治療を行った。もう一方の対照群には、薬物依存症に対する通常の治療のみを行った。主要エンドポイントは、治療開始9ヵ月後の臨床診断面接尺度(CAPS)によるPTSD重症度の変化と、国際比較診断用構造化面接(CIDI)による薬物依存症の重症度の変化だった。CAPSでは15ポイント、CIDIでは1ポイント以上の変化を臨床的に有意な変化とした。PTSD重症度はCOPE群でより大きく改善、薬物依存症重症度改善幅は両群で同等その結果、両群ともに、試験開始9ヵ月後までにPTSD重症度の有意な改善が認められた。CAPS変化の平均値は、COPE群が-38.24(95%信頼区間:-47.93~-28.54)、対照群は-22.14(同:-30.33~-13.95)だった。両群の平均格差は-16.09(同:-29.00~-3.19)で、COPE群のPTSD重症度改善幅が対照群に比べて有意に大きかった。薬物依存症の重症度についても、両群ともに9ヵ月間で有意な改善が認められたが、その改善幅は、COPE群が0.43に対し対照群が0.52と、両群に有意な差は認められなかった(罹患率比:0.85、同:0.60~1.21)。その他、薬物使用、うつ症状、不安症状の変化幅についても、両群で有意な差は認められなかった。

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プライマリ・ケアでの女性へのパートナーの暴力に関するスクリーニング、QOLは改善せず

プライマリ・ケアで行われている、女性に対するパートナーの暴力に関するスクリーニングや関連プログラムの紹介は、身体的・精神的QOLスコアの改善にはつながらないことが報告された。米国疾病予防管理センター(CDC)のJoanne Klevens氏らが、約2,700人の女性について行った無作為化比較試験の結果で、JAMA誌2012年8月15日号で発表された。パートナーの暴力に関するスクリーニングは、多くの医療機関で実施されているが、患者のアウトカムに与える影響についてのエビデンスは乏しかったという。パートナー暴力のスクリーニングとプログラムを紹介、1年後のQOLスコアを比較研究グループは、2009年5月~2010年4月にかけて、米国イリノイ州クック郡のプライマリ・ケア医療機関10ヵ所を通じて、2,708人の女性患者について試験を開始した。被験者は18歳以上で、英語またはスペイン語を話し、パートナーと一緒に来院した人は除外した。同グループは被験者を無作為に3群に分け、第1群には「パートナーの暴力判定尺度」を用いたスクリーニングを行い、結果が陽性の場合には地域のパートナーの暴力に関するプログラムを紹介した(909人)。第2群には、スクリーニングを行わずに、同プログラムのみを紹介した(893人)。第3群は対照群として、スクリーニングもプログラム紹介も行わなかった(898人)。主要アウトカムは、1年後の生活の質(QOL)質問票短縮版(SF-12)による、身体的・精神的QOLスコアだった。身体的・精神的QOLスコアはいずれの群でも同等被験者のうち、2,364人(87%)が1年後に追跡可能だった。被験者の平均年齢は39歳で、55%が非ラテン系アフリカ系アメリカ人で、教育歴が高校以下だった人は57%だった。結果、試験開始1年後の身体的QOLスコア平均値は、スクリーニング/プログラム紹介群(801人)で46.8(95%信頼区間:46.1~47.4)、プログラム紹介群(772人)で46.4(同:45.8~47.1)、対照群(791人)で47.2(同:46.5~47.8)と、3群間で有意な差は認められなかった。精神的QOLスコア平均値についても、それぞれ48.3(同:47.5~49.1)、48.0(同:47.2~48.9)、47.8(同:47.0~48.6)と有意な差は認められなかった。また、仕事を休んだり家事を遂行できなかった日数や、入院日数、救急室や外来ケアを訪れた件数、パートナーの暴力に関するプログラムへの問い合わせ率などについても、3群間で有意な差は認められなかった。

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成人T細胞白血病リンパ腫におけるモガムリズマブ欧米第2相臨床試験開始

協和発酵キリン株式会社は23日、治療経験のある成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)を対象としたモガムリズマブ(一般名、開発コード: KW-0761)の欧米第2相臨床試験を開始したことを発表した。モガムリズマブは、ATLを対象疾病とした希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を、米国食品医薬品局および欧州委員会から受けている。モガムリズマブは、ATL細胞など、様々な悪性T細胞に過剰発現しているCCR4に対するヒト化モノクローナル抗体。同剤は、同社独自の強活性抗体作製技術「POTELLIGENT(ポテリジェント)」を応用した抗体で、ADCC活性による抗腫瘍効果を示すという。国内では、「ポテリジオ点滴静注20mg」という製品名で、再発又は難治性のCCR4陽性のATLの治療薬として、2012年5月29日から販売されている。同剤は、当社初の抗体医薬で、ポテリジェント技術を応用した抗体医薬としては、世界初である。今回の欧米第2相臨床試験の対象疾患は、治療経験のあるATL患者で、多施設ランダム化オープン比較試験(被験者をモガリズムマブ群と治験担当医師選択的治療群にランダムに割り付け、非盲検で比較を行う試験)を実施するという。予定試験期間 は、2012年7月~2015年6月。実施場所は米国、イギリス、フランス、ベルギーおよびその他の国で、目標症例数は70。主要評価項目は、全奏効率。詳細はプレスリリースへhttp://www.kyowa-kirin.co.jp/news/2012/20120823_01.html

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(7)〕 はたして運動療法は慢性心不全患者に潜む「うつ症状」を改善しえるのか?

慢性心不全はその病態が重症になれば心拍出量の低下から「労作時の息切れ」や「全身倦怠感」など、うつ病とよく似た症状が出現する。また慢性心不全の治療は根治することがなく長期にわたり、患者は塩分コントロールによる食事制限や飲水量制限が厳しく科せられることが多く、抑うつ状態となる場合も少なくない。実際、慢性心不全患者の20~40%にうつ病が合併するという報告がなされている。 左室収縮障害をもつ慢性心不全患者を対象とした最近の研究では、急性増悪時の症状の32%が「全身倦怠感」であり、その患者の25%にうつ病に対する薬物治療がなされており、その他の症状を主訴とする患者よりもその割合が有意に高いことが報告されている1)。 さらに、この「全身倦怠感」は心不全の病態悪化のみならず、うつ症状による影響があるという報告もある2)。つまり「全身倦怠感」を主訴に入院する心不全患者には少なからず「うつ症状」の関与があり、心不全の病態のみならず「うつ病」の有無の確認やそのケアも必要となる。 それを受けて、これまで慢性心不全治療によるうつ症状の改善効果を検証するべく、いくつもの臨床試験がなされてきたが、エビデンスレベルの高い研究では、残念ながらよい結果は報告されていない。その意味で、慢性心不全患者、約2300人を対象とした、多施設参加のRandomized研究「The HF-ACTION」3)のテーマである「慢性心不全患者に対する有酸素運動療法が、うつ症状を改善するか否か?」は、臨床的に大変興味のある研究であった。 結果は、有酸素運動群において、運動開始から3ヵ月後および12ヵ月後におけるうつ症状の改善については統計学的な有為差は得られたものの、残念ながら臨床的に「有酸素運動療法が心不全患者のうつ症状を改善した」とはいえなかった。さらに心不全関連の死亡については有酸素運動群で成績が良かったが、再入院については有酸素運動群でより悪い成績となっている。慢性心不全に対する有酸素運動療法の予後改善効果については一定のエビデンスが得られているため、それを差し引いて考えると、(1)有酸素運動のうつ症状改善効果、および、(2)うつ症状を有する心不全患者の予後改善効果、は、ともに否定的であった。 ただ、本試験のInclusion criteriaはEFが35%以下の慢性心不全患者すべてを対象にしており、その主訴や病態ごとの細かい層別解析は、今回は報告されていない。先に述べた通り「全身倦怠感を主訴として訴える慢性心不全患者のみ」を対象として解析を行った場合に、どのような結果が得られるのか、大変興味のあるところである。

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高血圧患者さんの食塩摂取量への意識を高めるiPhone アプリ

 食塩の過剰摂取が血圧上昇と関連していることは古くから知られており、減塩による降圧効果も証明されている。メタアナリシスの結果によると、1gの減塩によって収縮期血圧1mmHgの降圧が期待できる。しかし、6g/日前半まで食塩摂取量を落とさなければ有意な降圧は達成できていない。このことを根拠にわが国では高血圧患者の減塩目標として6g/日未満を推奨している。 しかし、健康増進法に基づく食品の栄養成分表示のうち、塩分については現在、ナトリウム量で表示することになっている。食塩はナトリウムと塩素が結合したもので、ナトリウムの原子量は23、塩素の原子量は35.5である。すなわちがナトリウム1gは、食塩2.54gに相当する。日本高血圧学会は2011年に、食塩量での表示を義務化するよう、消費者庁などに要望書を提出している。 さて、昨今、iPhoneなどいわゆるスマートフォンが普及し、iPhoneを持っている高血圧患者さんも珍しくはない。そんな患者さんにオススメしたいのが『塩分とりすぎ計算機』というアプリ。栄養成分表示の中のナトリウムを入力するだけで、食塩に換算すると何グラム摂取したのかを簡単に計算してくれる。計算結果は一般成人の一日目標摂取量に対する割合として、円グラフで分かりやすく表示される。 ただ、前述の目標摂取量はWHOが一般成人に推奨している「5g」に対する割合であり、日欧米で高血圧患者の目標として推奨されている「6g」に対する割合ではない。さらに個々の食品における食塩量を計算するだけで、1日の累積食選摂取量が記録されていくわけではないのが残念。常にナトリウム量が明らかなものを食しているわけではないから食べたメニューを選択すると標準的な含有食塩量が記録されるなどの機能があると利用機会が増えるのでは。 まだまだ実践的ではないが、高血圧患者さんの食塩摂取量への意識を高める方法の一つとしては検討してみてもよいかも。塩分摂り過ぎ計算機 (App Store)http://itunes.apple.com/jp/app/yan-fentorisugi-ji-suan-ji/id544655976?mt=8&ign-mpt=uo%3D4

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スタチンによるLDL-C低下療法、低リスク集団でも血管イベントを低減

 スタチンによるLDLコレステロール(LDL-C)低下療法は、血管イベントの低リスク集団においても主要血管イベント(MVE)の抑制効果を発揮することが、Cholesterol Treatment Trialists’(CTT)Collaboratorsによる検討で示された。スタチンはLDL-Cを低下させることで血管イベントを予防するが、血管イベントのリスクが低い集団における効果は、これまで明らかにされていなかった。血管疾患の既往歴のない集団は血管イベントの絶対リスクが低いものの、血管イベントの半数以上はこの集団で発生しているため、とくにスタチン治療の1次予防効果は解明すべき重要な課題とされる。Lancet誌2012年8月11日号(オンライン版2012年5月17日号)掲載の報告。低リスク集団におけるスタチンの効果をメタ解析で評価研究グループは、血管イベントの低リスク集団におけるスタチンの効果を評価するために、27件の無作為化試験のメタ解析を行った。27試験のうち、22件は標準用量のスタチンと対照を比較し[13万4,537例、ベースラインの平均LDL-C値:3.70mmol/L(≒143mg/dL)、1年後のLDL-C値の差:1.08mmol/L(≒41.8mg/dL)、追跡期間中央値:4.8年]、5件は強化スタチン療法と低強化スタチン療法の比較試験[3万9,612例、2.53mmol/L(≒97.8mg/dL)、0.51mmol/L(≒19.7mg/dL)、5.1年)であった。MVEは、主要冠動脈イベント(非致死的心筋梗塞、冠動脈死)、脳卒中、冠動脈血行再建術の施行とした。ベースラインにおける血管イベントの5年発生リスクで5つの群(<5%群、5~<10%群、10~<20%群、20~<30%群、≧30%群)に分け、LDL-C値1.0mmol/L(≒38.67mg/dL)低下当たりのMVE発生リスクの率比(RR)を算出した。<5%群と5~<10%群を低リスク群とした。ガイドラインの再考が必要スタチンのLDL-C低下効果により、年齢、性別、ベースラインのLDL-C値や血管疾患の既往歴にかかわらず、MVEのリスクが有意に低下した[LDL-C値1.0mmol/L低下当たりのMVE発生リスクのRR(以下、単にRRと表記):0.79、99%信頼区間(CI):0.77~0.81、p<0.0001]。スタチンによるMVEの低下効果は、低リスク群(RR:<5%群0.62、5~<10%群0.69)と高リスク群(同:10~<20%群0.79、20~<30%群0.81、≧30%群0.79)でほぼ同等だった(傾向性検定:p=0.04)。これは、主に低リスク群における主要冠動脈イベント(RR:<5%群0.57、p=0.0012、5~<10%群0.61、p<0.0001)および冠動脈血行再建術(同:<5%群0.52、p<0.0001、5~<10%群0.63、p<0.0001)のリスクの有意な低減を反映するものであった。10%未満の2つの低リスク群を合わせた集団における脳卒中の発生リスクのPRは0.76(p=0.0012)と良好だったが、10%以上の集団も同様に良好であったため差は認めなかった(傾向性検定:p=0.3)。血管疾患の既往歴のない集団では、スタチン治療によりMVE(RR:0.85、95%CI:0.77~0.95)および全死因死亡(RR:0.91、95%CI:0.85~0.97)のリスクが有意に低下した。スタチンによるLDL-C低下療法が、がんの発生率(RR:1.00、95%CI:0.96~1.04)やがん死亡率(RR:0.99、95%CI:0.93~1.06)、その他の非血管死亡率を増加させるとのエビデンスは認めなかった。著者は、「MVEの5年発生リスクが10%未満の低リスク群では、LDL-C値が1.0mmol/L低下するごとに、絶対値で5年間に1,000人当たり約11人の血管イベントを抑制することが示された。このベネフィットは、既知のスタチン治療の有害性を大きく上回るものである」と結論し、「現行のガイドラインでは、このような低リスク集団はスタチン治療の適応ではない。今回の知見は、ガイドラインの再考の必要性を示唆するもの」と指摘している。

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血漿HDL-C高値、心筋梗塞のリスクを低下させない可能性が

 血漿HDLコレステロール(HDL-C)値の上昇が、必ずしも心筋梗塞のリスクを低減しない可能性があることが、米国・ペンシルバニア大学のBenjamin F Voight氏らの検討で明らかとなった。血漿HDL-C高値は心筋梗塞のリスク低減と関連するとされるが、その因果関係は不明である。遺伝子型は、減数分裂時にランダムに決定され、非遺伝子的な交絡因子の影響を受けず、疾患過程の修飾も受けないことから、バイオマーカーと疾患の因果関係の検証にはメンデル無作為化(mendelian randomization)解析が有用だという。Lancet誌2012年8月11日号(オンライン版5月17日号)掲載の報告。因果関係を2つのメンデル無作為化解析で評価研究グループは、血漿HDL-C高値と心筋梗塞のリスク低下の因果関係を検証するために、2つのメンデル無作為化解析を実施した。まず、20試験(心筋梗塞2万913例、対照9万5,407例)のデータを用いて、内皮リパーゼ遺伝子(LIPG Asn396Ser)の一塩基多型(SNP)の評価を行った。次いで、心筋梗塞1万2,482例および対照4万1,331例のデータを使用し、HDL-Cと関連する14の頻度の高いSNPから成る遺伝子型スコアについて検討した。また、陽性対照(positive control)として、LDLコレステロール(LDL-C)に関連する13のSNPの遺伝子型スコアの評価も行った。遺伝子型スコアによるHDL-C値上昇はリスクと関連なしLIPG 396Ser対立遺伝子の保有率は2.6%であった。LIPG 396Ser対立遺伝子保有群は、非保有群に比べHDL-C値が0.14mmol/L(≒5.4mg/dL)有意に高かった[p=8×10(-13)]が、心筋梗塞リスクに関連するその他の脂質および非脂質因子は両群間に差を認めなかった。このHDL-C値の差により、LIPG 396Ser対立遺伝子保有群では心筋梗塞のリスクが13%低下すると予測された[オッズ比(OR):0.87、95%信頼区間(CI):0.84~0.91]。しかし、対立遺伝子保有群における心筋梗塞のリスク低下は有意ではなかった(OR:0.99、95%CI:0.88~1.11、p=0.85)。観察疫学試験では、HDL-C値の1 SDの上昇により心筋梗塞リスクが有意に低下した(OR:0.62、95%CI:0.58~0.66)。しかし、遺伝子型スコアに基づくHDL-C値の1 SDの上昇は心筋梗塞のリスクとは関連しなかった(OR:0.93、95%CI:0.68~1.26、p=0.63)。一方、観察疫学試験におけるLDL-C値の1 SDの上昇により心筋梗塞リスクが有意に上昇し(OR:1.54、95%CI:1.45~1.63)、遺伝子型スコアによるLDL-C値の1 SDの上昇も心筋梗塞リスクの有意な上昇と有意な関連を示した[OR:2.13、95%CI:1.69~2.69、p=2×10(-10)]。著者は、「血漿HDL-C値の上昇をもたらす遺伝子的メカニズムが、必ずしも心筋梗塞のリスクを低減しない可能性が示唆される」と結論し、「これらの知見は、血漿HDL-C値の上昇が一律に心筋梗塞のリスク低下をもたらすとのコンセプトに疑問を呈するもの」としている。

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痛みの治療薬をどう選択するか 「抗てんかん薬」

「抗てんかん薬の使い方」広島大学病院 手術部 大下恭子氏鎮痛薬としての抗てんかん薬の歴史は、1960年代のジフェニルヒダントイン、カルバマゼピンの三叉神経痛に対する報告から始まっている。その後、コントロールスタディや動物実験の疼痛モデルにおいて、鎮痛効果が次々と報告されるようになった。 1998年にRCTで帯状疱疹後神経痛に対するガバペンチンの有効性が報告され、米国でもガバペンチンの帯状疱疹後神 経痛への適応が承認され、国際疼痛学会でのアルゴリズムでも第一選択薬として発表されるに至っている。本邦の日本ペインクリニック学会の薬物治療アルゴリズムにおいても、Caチャネルα2σリガンドであるプレガバリンとガバペンチンが第一選択薬となっており、ほかの抗てんかん薬も、第一選択、第二選択、第三選択で効果が出ない場合に考慮してもよいオプションとして、その他に分類されている。それらガイドラインのアルゴリズムのもとになったのは、多くのRCTとNNTの指標であるが、ガバペンチン、プレガバリンはオピオイドや三環系抗うつ薬と並んでNNTが低く、有効性の高い薬物として分類されている。しかしながら、そのガイドラインにも問題点が指摘されている。RCTの対象疾患が限られた疾患であること、2剤の効果の直接的比較研究が少ないこと、長期予後を評価したものが少ないこと、臨床を反映したコンビネーション処方による研究が少ないことである。今回、当施設麻酔科外来において、抗てんかん薬のうちプレバカリンとクロナゼパムについて3年間の処方状況調査を行った。痛みの種類を持続痛・発作痛・誘発痛の3つに分け、投薬開始直前と投薬後の2点で患者に聴取しNRSで評価、同時に痛みの性状についても別の評価を行った。まず処方状況であるが、プレガバリン処方開始前はクロナゼパムが多かったが、プレガバリン処方開始後は、プレガバリンの処方件数が伸びている。プレガバリン処方患者数は、2012年3月までで114名。そのうち73名でプレガバリン開始後に痛みの改善を自覚している。投薬疾患は、帯状疱疹後神経痛、帯状疱疹の急性期の痛み、各種の神経障害を呈する疾患が多い。プレガバリン処方全症例でのNRSの変化をみると、持続痛・発作痛・誘発痛、いずれも開始後に有意差をもって低下している。他剤との併用も含め64%の症例で鎮痛効果を認めた。プレガバリンとの併用薬は、ほかの抗てんかん薬が26%、抗うつ薬が37%、オピオイドが31%であった。痛みの性状別でみると、ほとんどの痛みの性状で軽減を示しているが、しびれるような痛みを訴える患者では有効率が低く出ている。クロナゼパムについては、他剤との併用例を含め48%、約半数の症例で鎮痛効果を認めた。クロナゼパム処方症例全体ではNRSは減少傾向にあるものの、有意な変化はみられなかった。ただし、有効症例に限って変化をみると、持続痛、発作痛、誘発痛いずれも有意にNRSの低下をみている。痛みの性状と治療効果を検討すると、灼けるような痛み、電気が走るなどの発作性痛みや誘発痛に対して高い有効性を示していた。ただ、プレガバリンと同様にしびれるような痛みに関しては有効症例が少なかった。副作用はプレガバリン、クロナゼバムともに眠気やふらつきの副作用が他剤と比較して高い頻度で出ていた。副作用による中止症例はプレガバリンで6例、クロナゼバムで2例だった。抗てんかん薬とひとくくりにいっても、さまざまな作用機序がある。今後、作用機序の異なる薬物の併用が有効である可能性が考えられる。

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寄稿 線維筋痛症の基本

廿日市記念病院リハビリテーション科戸田克広痛みは原因の観点から神経障害性疼痛(神経障害痛)と侵害受容性疼痛(侵害受容痛)およびその合併に分類され、世界標準の医学では心因性疼痛単独は存在しないという考えが主流である。通常、日本医学ではこれに心因性疼痛が加わる。線維筋痛症(Fibromyalgia、以下FM)およびその不全型は日本医学の心因性疼痛の大部分を占めるが、世界標準の医学では神経障害痛の中の中枢性神経障害痛に含まれる。医学的に説明のつかない症状や痛みを世界の慢性痛やリウマチの業界はFMやその不全型と診断、治療し、精神科の業界は身体表現性障害(身体化障害、疼痛性障害)と診断、治療している。FMの原因は不明であるが、脳の機能障害が原因という説が定説になっている。器質的な異常があるのかもしれないが、現時点の医学レベルでは明確な器質的異常は判明していない。脳の機能障害が原因で生じる中枢性過敏症候群という疾患群があり、うつ病、不安障害、慢性疲労症候群、FM、むずむず脚症候群、緊張型頭痛などがそれに含まれる。先進国においてはFMの有病率は約2%であるが、その不全型を含めると少なくとも20%の有病率になる。FMおよび不全型の診断基準は「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント -」に記載されている1)。医学的に説明のつかない痛みを訴える場合には、FMあるいはその不全型を疑うことが望ましい。FMもその不全型も治療は同一であるため、これらを区別する意義は臨床的にはほとんどない。薬物治療のみならず、禁煙、有酸素運動、患者教育、認知行動療法などが有効である。ただし、認知行動療法は具体的に何をすればよいかわからない部分が多く、それを行うことができる人間が少ないため、実施している施設は少ない。人工甘味料アスパルテームによりFMを発症した症例が報告されたため、その摂取中止が望ましい1)。当初は必ず一つの薬のみを上限量まで漸増し、有効か無効かを判定する必要がある。副作用のために増量不能となった場合や、満足できる鎮痛効果が得られた場合には、上限量を使用する必要はない。つまり、上限量を使用せずして無効と判断することや、不十分な鎮痛効果にもかかわらず上限量を使用しないことは適切ではない(副作用のために増量不能の場合を除く)。一つの薬の最適量が決まれば、患者さんが満足できる鎮痛効果が得られない限り、同様の方法により次の薬を追加する。これは国際疼痛学会が神経障害痛に一般論として推奨している薬物治療の方法である。2、3種類の薬を同時に投与することは望ましくない。どの薬が有効か不明になり、同じ薬を漫然と投与することになりやすいからである。世界標準のFMでは有効性の証拠の強い順に薬物を使用することが推奨されているが、その方法は臨床的にはあまり有用ではない。投薬の優先順位を決定する際には有効性の証拠の強さのみならず、実際に使用した経験も考慮する必要がある。さらに論文上の副作用、実際に経験した副作用、薬価も考慮する必要がある。FMは治癒することが少ない上に、FMにより死亡することも少ないため、30年以上の内服が必要になることがしばしばあるからである。FMの薬物治療においては適用外処方は不可避であるが、保険請求上の病名も考慮する必要がある。さらに、日本独特の風習である添付文書上の自動車運転禁止の問題も考慮する必要がある。抗痙攣薬、抗不安薬、睡眠薬、ほとんどの抗うつ薬を内服中には添付文書上自動車の運転は禁止されているが、それを遵守すると、少なくない患者さんの生活が破綻するばかりではなく、日本経済そのものが破綻する。以上の要因を総合して、薬物治療の優先順位を決めている1)。これにより医師の経験量によらず、ほぼ一定の治療効果を得ることができる。ただし、それには明確なエビデンスはないため、各医師が適宜変更していただきたい。副作用が少ないことを優先する場合や自動車の運転が必須の患者さんの場合には、眠気などの副作用が少ない薬を優先投与する必要がある。すなわち、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(ノイロトロピン) 、メコバラミンと葉酸の併用、イコサペント酸エチル、ラフチジン、デキストロメトルファンを優先使用している。痛みが強い場合には、有効性の証拠が強い薬、すなわちアミトリプチリン、プレガバリン、ミルナシプラン、デュロキセチンを優先使用している。抗不安薬は常用量依存を引き起こしやすいため、鎮痛目的や睡眠目的には使用せず、パニック発作の抑制目的にのみ使用し、かつ3ヵ月以内に中止すべきである。FMにアルプラゾラムが有効と抄録に書かれた論文2)があるが、本文中では有効性に関して偽薬と差がないという記載があるため、注意が必要である。ステロイドはFMには有害無益であり、ステロイドが有効な疾患が合併しない限り使用してはならない。昨年、日本の診療ガイドラインが報告された。筋緊張亢進型、腱付着部炎型、うつ型、およびその合併に分類する方法および各タイプ別に優先使用する薬は世界標準のFMとは異なっており、私が個人的に決めた優先順位と同様に明確なエビデンスに基づいていない。たとえば、腱付着部炎型にサラゾスルファピリジンやプレドニンが有効と記載されているが、それはFMに有効なのではなく、腱付着部炎を引き起こすFMとは異なる疾患に有効なのである。糖尿病型FMにインシュリンが有効という理論と同様である。薬を何種類併用してよいかという問題があるが、誰も正解を知らない。私は睡眠薬を除いて原則的に6種類まで併用している。1年以上投薬すると、中止しても痛みが悪化しないことがある。そのため、1年以上使用している薬は中止して、その効果が持続しているかどうかを確かめることが望ましい。引用文献1) CareNetホームページ カンファレンス Q&A:戸田克広先生「「正しい線維筋痛症の知識」の普及を目指して! - まず知ろう診療のポイント-」2)Russell IJ et al: Treatment of primary fibrositis/fibromyalgia syndrome with ibuprofen and alprazolam. A double-blind, placebo-controlled study. Arthritis Rheum. 1991;34:552-560.

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