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わかる統計教室 第4回 ギモンを解決!一問一答 質問10(その3)

インデックスページへ戻る第4回 ギモンを解決!一問一答質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その3)質問10(その1) 質問10(その2)前回は、「数量データ」と「カテゴリーデータ」の相関関係について解説しました。今回は、「カテゴリーデータ」同士の相関関係について説明していきます。■クロス集計とクラメール連関係数表1はある疾患A、B、Cに罹患している患者さんに性格や生活習慣など4つの要素でアンケートをした結果です。この結果から4つの要素と罹患している疾患との関係を調べ、この関係性をみてみたいと思います。表1 例題のアンケート分析表クロス集計これらのデータはすべてカテゴリーデータです。カテゴリーデータとカテゴリーデータの基本解析は表2のクロス集計で行います。表2 例題のカテゴリーデータのクロス集計このアンケートでは、疾患Aは、「楽観的性格」「優柔不断」「不規則な生活習慣」「B型行動タイプ」、疾患Bは、「中庸的性格」「即断即決」「不規則な生活習慣」「A型行動タイプ」、疾患Cは、「悲観的性格」「優柔不断」「規則正しい生活習慣」「A型行動タイプ」、と回答した患者さんが高い割合を示していたことがわかります。クラメール連関係数表3のようにカテゴリーデータとカテゴリーデータの相関係数は、「クラメール連関係数」を適用します。疾患、性格、意思決定タイプ、生活習慣、行動タイプ、すべてカテゴリーです。この5変数相互のクラメール連関係数を表3に示します(クラメール連関係数の求め方は後で説明します)。表3 例題の5変数相互のクラメール連関係数表3で、罹患している疾患とほかの4変数のクラメール連関係数をみると、意思決定タイプと行動タイプが高く、次に性格が続きます。単相関係数や相関比と同様に、相関係数がいくつ以上あれば相関が強いという基準はありません。筆者は表4のように定めています。相関比の基準と同じです。また、あくまでもこの基準は、分析者が経験的な判断から決めることになります。表4 筆者流の相関の強弱の考え方表5の性格と罹患疾患のデータで、クラメール連関係数の求め方を説明します。クロス集計表の人数を「実測度数」といいます。表5 例題の性格と罹患疾患のデータの実測度数表6の期待度数は、次の式によって算出します。期待度数=縦計×横計÷総数表6 例題の性格と罹患疾患のデータの期待度数・次に示す計算式で、表7のようにセルごとに計算します。(実測度数-期待度数)2÷期待度数表7 例題のカイ2乗値の算出・クラメール連関係数を求めます。質問10では「2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?」ということで、3回に分けて解説してきました。ポイントは、比べたい2項目のデータのそれぞれのデータタイプが「数量データ」なのか、「カテゴリーデータ」なのかをきちんと確認すれば、その組み合わせで相関分析の解析手法と2項目間の関連性の強さを判断する相関係数も決まるということです。ここまでで、多変量解析を学ぶ前の基礎統計をおさらいしてきました。次回から医学統計でも用いられる多変量解析について、説明していきます。今回のポイント1)「カテゴリーデータ」と「カテゴリーデータ」の比較をする際の基本解析は、クロス集計を行い、関連性をみる!2)クラメール連関係数は「カテゴリーデータ」と「カテゴリーデータ」の相関関係の程度を示す数値である!3)クラメール連関係数は、単相関係数や相関比と同様に、いくつ以上あれば相関が強いといった統計学的基準はなく、あくまでも分析者が経験的な判断から基準を決める!4)2項目間の比較をする際の統計学的手法の使い分けのポイントは、比べたい2項目のデータのそれぞれのデータタイプが「数量データ」なのか「カテゴリーデータ」なのかを確認すること!インデックスページへ戻る

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60歳未満の降圧薬服用者、血圧高いと認知症リスク高い

 血圧と認知症の関係については相反する疫学研究結果が報告されている。今回、ノルウェー科学技術大学HUNT研究センターのJessica Mira Gabin氏らが、認知症診断の最大27年前まで(平均17.6年)の血圧と認知症について調査したところ、60歳以上では収縮期血圧と認知症が逆相関を示したが、60歳未満の降圧薬使用者では収縮期血圧や脈圧の上昇とアルツハイマー病発症が関連していた。Alzheimer's research & therapy誌2017年5月31日号に掲載。 本研究では、ノルウェーのNord-Trondelag郡における1995~2011年の認知症発症データを収集し、専門家パネルが診断を検証した。さらに、このデータを被験者の個人識別番号を用いて、1984~86年(HUNT1)および1995~97年(HUNT2)に実施された大規模な住民健康調査であるNord-Trondelag Health Study(HUNT研究)データと結び付けた。HUNT研究の参加者2万4,638人のうち579人がアルツハイマー病、またはアルツハイマー病と血管性の混合型認知症、または血管性認知症と診断された。 主な結果は以下のとおり。・60歳以上においては、年齢、性別、教育およびその他の関連する共変量を調整後、認知症全体、アルツハイマー病/血管性の混合型認知症、アルツハイマー病では収縮期血圧との逆相関が一貫して認められたが、血管性認知症では認められなかった。・この結果は、降圧薬の使用にかかわらず、HUNT1とHUNT2の両方で観察された。・60歳未満の降圧薬服用者では、収縮期血圧および脈圧とアルツハイマー病との間に有害な関連がみられた。

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大規模個別患者データに基づくBayes流メタ解析が“非ステロイド性消炎鎮痛薬(COX-2を含む)が総じて急性心筋梗塞発症リスクを増加させる”と報告(解説:島田 俊夫 氏)-685

 本論文では、急性心筋梗塞(AMI)発症の既往歴を有する6万1,460例を含む44万6,763例(38万5,303例はコントロール)の信頼できる大規模個別データ(カナダおよび欧州)を対象にAMIを主な評価項目とし、COX-2選択的阻害薬と従来型NSAIDsの使用と非使用者でAMI発症リスク差を検証するためにBayes流メタ解析1,2)が行われた。 最初1週目(1~7日)、1ヵ月未満、1ヵ月以上の期間でのNSAIDs投与が、いずれの期間においてもAMI発症リスクを有意に増加させた。最初1週目のNSAIDs使用によるAMI発症リスクの事後確率(オッズ比>1.0の事後確率)は、セレコキシブで92%、イブプロフェンで97%、 ジクロフェナク、ナプロキセンおよびrofecoxib(心血管系の副作用のために2004年に米国で販売中止、日本では未承認)でそれぞれ99%であった。対応する調整オッズ比(95%信頼区間)は、セレコキシブで1.24(0.91~1.82)、イブプロフェンで1.48(1.00~2.26)、ジクロフェナクで1.50(1.06~2.04)、ナプロキセンで1.53(1.07~2.33)、 rofecoxibで1.58(1.07~2.17)と高い発症リスクを示し、NSAIDsの高用量投与でさらにリスクが増加することも明らかになった。 1ヵ月を超える長期に渡る投与でのAMI発症リスクは、1ヵ月未満の投与と比較して、そのリスクを上回ることはなかった。服用中止による30日未満では、AMI発症リスクはわずかに低下するにとどまったが、その後1年間でAMI発症リスクはほぼ前の状態に復した。コメント: NSAIDs服用はAMI発症リスクを増加させると言われていたが、大規模症例の確保が難しい状況もあり信頼に足る大規模研究の実施は困難で、議論の余地が残っていた。従来のNSAIDsとCOX-2を含めた経口非ステロイド性消炎鎮痛薬のAMI発症リスク評価のために、ビッグデータを用いた個別データBayes流メタ解析手法3)を使用することで、症例数の不足やその他の問題点の解決に道が開かれた。 本研究によりナプロキセンを含むすべてのNSAIDsが、AMI発症リスクの増加と密接に関係していることが明らかになった。セレコキシブ(COX-2)のAMI発症リスクは従来のNSAIDsとほぼ同等かやや少ない程度であり、 rofecoxib(COX-2)よりは有意に低かった。AMI発症リスクはNSAIDsの最初の1ヵ月の使用期間中で、しかも高用量投与においてAMI発症リスクが最も高くなった。 要するに、NSAIDsの種類によりAMI発症リスクに多少の差があるけれども、COX-2および従来型NSAIDsともAMI発症リスクは五十歩百歩で、総じて気安く使用することへの警鐘として本論文の結果を真摯に受け止めることは重要である。今後、本論文で使用されたビッグデータとしての個別患者データに基づくBayes流メタ解析は、大規模集団形成が難しい研究に使用される有望な解析モデルになるかもしれない。■参考Kalil AC, et al. Intensive Care Med. 2011;37:420-429.Shimada T, et al. Rinsyo Byori. 2016;64:133-141.Riley RD, et al. BMJ. 2010;340:c221.

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DAAレジメン無効のHCVに3剤合剤が効果/NEJM

 C型肝炎ウイルス(HCV)慢性感染患者で、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)を含むレジメンで治療を行っても持続的ウイルス学的著効(SVR)が得られない患者に対し、ヌクレオチドポリメラーゼ阻害薬ソホスブビル+NS5A阻害薬velpatasvir+プロテアーゼ阻害薬voxilaprevirの配合剤を12週間投与することで、9割超のSVRが達成できることが示された。フランス・セントジョセフ病院のMarc Bourliere氏らが、2件の第III相無作為化比較試験を行って明らかにしたもので、NEJM誌2017年6月1日号で発表した。現状では、DAAを含む治療でSVRが達成できない場合には、次の治療選択肢は限られているという。「POLARIS-1」と「POLARIS-4」の2試験で評価 研究グループは2015年11月~2016年5月にかけて、DAAを含むレジメン治療歴のある患者を対象に、2件の第III相試験「POLARIS-1」と「POLARIS-4」を行った。 「POLARIS-1」試験では、HCV遺伝型1型に感染しNS5A阻害薬を含むレジメンの治療歴がある患者を無作為に2群に分け、一方にはソホスブビル+velpatasvir+voxilaprevirの配合錠を(150例)、もう一方にはプラセボを(150例)、それぞれ1日1回12週間投与した。また、その他のHCV遺伝型の患者については、ソホスブビル+velpatasvir+voxilaprevirの配合錠を投与した(114例)。 「POLARIS-4」試験では、HCV遺伝型1型、2型、3型に感染しNS5A阻害薬を含まないDAAレジメンで治療歴のある患者を無作為に2群に分け、ソホスブビル+velpatasvir+voxilaprevirの配合錠(163例)、またはソホスブビル+velpatasvirの配合錠を(151例)、それぞれ12週間投与した。また、HCV遺伝型4型の患者については、ソホスブビル+velpatasvir+voxilaprevirの配合錠を投与した(19例)。 主要エンドポイントは、治療終了12週時点のSVR率とした。ソホスブビル+velpatasvir+voxilaprevirでSVR率は96~98% 被験者のうち、実薬を投与した3群では、その46%が代償性肝硬変だった。 POLARIS-1試験では、SVR率はプラセボ群で0%だったのに対し、ソホスブビル+velpatasvir+voxilaprevirの3剤合剤群では96%(95%信頼区間[CI]:93~98)と、事前に規定した効果目標の85%に比べ、有意に高かった(p<0.001)。 POLARIS-4試験ではまた、ソホスブビル+velpatasvirの2剤合剤群のSVR率は90%だったのに対し、ソホスブビル+velpatasvir+voxilaprevirの3剤合剤群では98%(95%CI:95~99)と、同じく効果目標の85%に比べ有意に高率だった(p<0.001)。 発生頻度の高かった有害事象は、頭痛、疲労、下痢、悪心などだった。実薬を投与した群で、有害事象により治療を中断した人の割合は1%以下だった。

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10代の自傷・薬物・飲酒による緊急入院、自殺リスクが大幅増/Lancet

 自傷行為や薬物乱用、アルコール摂取関連といった理由で緊急入院した10~19歳の青少年は、事故で緊急入院した青少年に比べ、退院後10年間の自殺リスクが3.2~4.5倍高いことが示された。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのAnnie Herbert氏らが、緊急入院をした青少年約100万人について後ろ向きコホート研究を行い明らかにした。Lancet誌オンライン版2017年5月25日号掲載の報告。15年間の病院データを基にした後ろ向きコホート研究 研究グループは、1997年4月~2012年3月の英国内の病院データHospital Episode Statistics(HES)を基に、緊急入院した10~19歳の青少年を対象に、後ろ向きコホート研究を行った。 被験者について、救急外来受診の原因が自傷行為、薬物乱用やアルコール関連、暴力による外傷といった逆境関連の場合と、それ以外の事故関連の場合に分け、退院後10年間の死亡リスクを比較した。死亡の原因は、自殺、薬物またはアルコール関連死、他殺、事故死、その他の5つに分類した。自傷者の自殺リスク、事故受傷者に比べ5~6倍 対象期間中に確認された、緊急入院をした青少年は108万368例で、そのうち女子は38万8,937例(36.0%)、男子は69万546例(63.9%)、性別の記載不明が885例(0.1%)だった。このうち、性別の記載不明885例と、慢性疾患などによる入院(男子5万6,107例[8.1%]、女子4万549例[10.4%])を除外して分析した。 逆境関連の外傷で入院したのは33万3,009例(30.8%)で、うち女子は54.6%、男子は45.4%だった。また、事故関連の受傷で入院したのは64万9,818例(60.2%)で、うち女子は25.6%、男子は74.4%だった。 対象となった青少年のうち、退院後10年間の死亡は4,782例(0.5%)だった(女子1,312例[27.4%]、男子3,470例[72.6%])。 逆境関連入院群は事故関連入院群に比べ、退院後10年間の自殺リスクが約3.2~4.5倍だった(補正後サブハザード比:女子4.54、男子3.15)。薬物またはアルコール関連死のリスクも、約3.5~4.7倍に上った(同:女子4.71、男子3.53)。なお、逆境関連入院群の10年死亡リスク推計には殺人リスクも含んだが、発生件数が少なく統計的に明らかなリスクは提示できなかった。 退院後10年間の補正後事故死リスクは、男子では逆境関連入院群が事故関連入院群と比べて有意な増加を示したが(補正後サブハザード比:1.26、95%信頼区間[CI]:1.09~1.47)、女子では有意な増加は認められなかった(1.21、0.90~1.63)。また、その他の要因についても、死亡リスクの低下が女子では認められたが(0.64、同0.53~0.77)、男子では認められなかった(0.99、0.84~1.17)。 自傷行為での入院群は事故関連入院群と比べ、退院後の自殺リスクが大幅に増大し、女子では補正後サブハザード比は5.11(95%CI:3.61~7.23)、男子では6.20(同:5.27~7.30)だった。そのほか、薬物乱用やアルコール摂取関連の入院群では、同リスクが女子で4.55倍、男子で4.51倍だった。暴力による入院群は、同リスクが男子でのみ有意に増大し1.43倍だった。しかしながら暴力による入院をした女子では、事故関連入院群と比較して、自殺リスクが増大したが、統計的な有意差は認められなかった(補正後サブハザード比:1.48、95%CI:0.73~2.98)。 なお、各外傷タイプについて、自殺リスクと薬物またはアルコール関連死のリスクは、同程度に増大が認められた。 これらの結果を踏まえて著者は、自傷に限らず、薬物乱用とアルコール関連で入院した青少年に対しても、退院後の自殺予防のための介入が必要だと述べている。

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ホルモン抵抗性乳がんに著明な効果、CDK4/6阻害薬abemaciclib/ASCO2017

 CDK4/6選択的阻害薬abemaciclibのフルベストラントとの併用における忍容性と臨床活性が第III相試験であるMONARCH 2試験で支持された。米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)においてスタンフォード大学のGeorge W. Sledge氏が発表した。 MONARCH 2試験は、ホルモン受容体陽性HER2陰性進行乳がんで内分泌療法を受けた女性669例を対象とした第III相二重盲検試験。対象はネオアジュバント/アジュバント内分泌療法で進行した患者、または転移のある乳がんで初回内分泌療法で進行した患者。参加者は、abemaciclib+フルベストラント(A+F)群とプラセボ+フルベストラント(P+F)群に2:1に無作為に割り当てられた。 主要評価項目は、治験担当者評価による無増悪生存期間(PFS)、副次的評価項目は、客観的奏効率(ORR)、その他の有効性および安全性であった。abemaciclib+フルベストラント群のハザード比(HR)は0.703と仮定した。 結果、19.5ヵ月間の追跡期間(中央値)のPFSは、A+F群で16.4ヵ月、P+F群で9.3ヵ月と、A+F群で有意に改善した(HR:0.553、95%CI:0.449~0.681、p<0.0000001)。また、測定可能な疾患を有する患者のORRは、A+F群で48.1%、P+F群では21.3%と、A+F群で2倍以上の結果となった。A+F群で多く見られた治療関連有害事象は、下痢86.4%(P+F群24.7%)、好中球減少46.0%(P+F群4.0%)、悪心45.1%(P+F群22.9%)、疲労感39.9%(P+F群26.9%)であった。Sledge氏は、下痢は早期に起こり(典型的には初回の治療サイクルで発現)、その強度と頻度はabemaciclibの開始用量と強く関連していると解説した。 DiscussantであるIngrid A. Mayer氏(Vanderbilt-Ingram Cancer Center and Vanderbilt University Medical Center)は、MONARCH 2試験におけるPFSと最近公表されたPALOMA-3試験(palbociclib+フルベストラントまたはプラセボの試験)の結果との違いについて触れた。HRが同等であるにもかかわらずPALOMA-3試験のPFSがMONARCH 2試験より短い(palbociclib群9.5ヵ月、プラセボ群4.6ヵ月)のは、MONARCH 2試験の被験者の適格基準は化学療法未経験であるが、PALOMA-3試験には化学療法経験者が含まれていたことによるものであると述べた。この試験結果は、学会発表と同時にJournal of Clinical Oncology誌で公開された。■参考ASCO2017 AbstractSledge GW, et al. J Clin Oncol.2017 Jun 3.[Epub ahead of print]MONARCH 2試験(Clinical Trial.gov)

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第2回 レセプトの内容について ~レセプト作成を制する2つのポイント【医師が知っておきたいレセプトの話】

前回は日本の医療保険制度の仕組みとその中におけるレセプトの位置付けをご紹介させていただきました。今回からは「診療報酬明細書=レセプト」の中身に関して一緒に学んでいきましょう。ちなみにレセプトの語源は、ドイツ語で「処方せん」を意味する“Rezept”に由来すると言われています。日々の診療記録を制するものがレセプトを制す!皆さんは、レセプトと言われるとどんな印象をお持ちでしょうか? 「細かい」、「面倒くさい」、「よくわからない」という声が聞こえてきそうです。しかし、本来レセプトとは、「日々の診療記録を請求形式に合わせて抜き出したもの」であり、カルテに記載された情報がきっちりとしていれば、レセプトにそれらがきちんと抜き出されているかどうかをチェックするだけでいいのです。ついつい構えがちになってしまうレセプトですが、実は「日々の診療記録をきっちりとカルテ内に残すことを心掛ける」というシンプルかつ当たり前の意識がポイントなのです。とは言うものの、一定の「お作法」があることは否定できませんので、レセプトの様式を確認しながら掘り下げていきましょう。レセプト内で完結を!画像を拡大する多くの先生が図の帳票を見慣れていると思いますが、この2つが実際の医科レセプトの帳票です。「入院」、「入院以外」で分かれていますが、基本的な構成は大きく変わりません。ちなみに、紙媒体でチェックを行っている医療機関も多いと思いますが、平成23年度より、オンラインもしくは電子媒体での提出が義務付けられています。さて、ここで2つのチェックポイントをお伝えしましょう。1)「傷病名」、提供した「診療行為」がきっちりとカルテから転記されているか対象期間内に「対象患者が患っていた、もしくは疑われた疾病や傷病名」および「対象期間内に実際に提供した診療行為」がカルテからレセプトに転記されているかをチェック2)「傷病名」と「診療行為」の整合性がとれているか対象期間内に行った診療行為の裏付けとなる傷病名が記載されているか、また、整合性がとれているかをチェックレセプトにはさまざまな項目が並んでいますが、基本的には上記2項目のチェックだけでまずは十分です。提出されたレセプトをチェックする審査員(医師)は「レセプトそのもの」だけを見て審査を行います。つまり、レセプトだけが勝負となります。審査員に伝わるように情報の不足がないか、また、不自然ではないかを確認することが重要です。疑い病名の記載漏れに注意「傷病名」に関しては、「疑い病名」の記載に関して注意が必要です。たとえば、「ある疾病が疑われて検査を行ったが、結果的にはその疾病ではなかった」というケースを考えましょう。その際には、「この疾病を疑ったために、この検査を実施した!」という過程をきっちりと診療録内に残す必要があります。「医師は無駄な検査を実施するわけはない」と考えられますが、レセプト内ではあくまでも「傷病名」と「診療行為」との整合性を文書上でとることが必要なのです。さらに、傷病名が漏れていたことによる「査定」に関しては、再請求(異議申し立て)ができないのが原則です。可能性のある病名に関しては、それが「疑い」であってもきちんと診療録に記載し、レセプトに転記されているかどうかをチェックすることが非常に重要となります。医師の皆様は、患者さんのためを思って日々一生懸命に診療されています。日常の診療をしっかりと記録し、レセプトにきちんと転記することで、診療行為が正当に評価される仕組みがレセプトなのです。皆様の頑張りが報酬の面でも、しっかり評価されるようにしたいですね。

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尿pHで糖尿病発症を予測できるか~日本の大規模コホート

 これまでに2型糖尿病患者の低い尿pHとの関連が明らかになっているが、尿中pHと2型糖尿病の発症との関連は不明である。今回、京都府立医科大学の橋本 善隆氏らは、わが国における男性の大規模コホート研究で、低い尿pHが糖尿病の独立した予測因子となることを報告した。尿pHが簡単で実用的な糖尿病のマーカーである可能性が示唆された。Diabetes research and clinical practice誌オンライン版2017年5月9日号に掲載。 本研究は男性3,119人の5年間の観察研究である。参加者を尿pHで4群に分け、多変量ロジスティック回帰分析により、2型糖尿病発症の調整オッズ比(OR)および95%CIを算出した(年齢、BMI、喫煙、運動、飲酒、高血圧症、高トリグリセライド血症、LDLコレステロール値、空腹時血糖異常で調整)。 主な結果は以下のとおり。・追跡調査において113人が糖尿病と診断された。・糖尿病の発症率は、尿pHが最も低い群(尿pH=5.0)で6.9%(318人中22人)、2番目に低い群(尿pH=5.5)で3.4%(1,366人中46人)、3番目に低い群(尿pH=6.0)で3.5%(856人中30人)、最も高い群(尿pH≧6.5)で2.6%(579人中15人)であった。・尿中pHが最も低い群では、その他の群と比較して糖尿病発症リスクが高かった。2番目に低い群に対する多変量ORは1.91(95%CI:1.05~3.36、p=0.033)、3番目に低い群に対する多変量ORは1.99(95%CI:1.05~3.71、p=0.036)、最も高い群に対する多変量ORは2.69(95%CI:1.30~5.72、p=0.008)であった。

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医薬品広告や講演会はどうあるべきか~J-CLEAR春季セミナー

 NPO法人 臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR/理事長 桑島 巖氏)は、2017年5月13日、都内において春季セミナーを開催した。 第1部では、飯山 幸雄氏(国民健康保険中央会 常務理事)を講師に迎え、「保健医療分野におけるICT活用」と題した講演が行われた。続く第2部のシンポジウム「医薬品広告、講演会などの適正な在り方について」では、4名の各専門家が意見を交わした。保険事務からスタートするICTの活用 はじめに、政府が推進する「保健医療分野におけるICT活用」について、飯山氏が計画の概要、現在の進捗状況と問題点、今後の展望について説明した。 医療分野におけるICTの活用はマイナンバー制度のインフラを活用したものであり、情報流出などのリスクを避けるために分散管理方式で行われる。各機関や組織、団体が保管している個々の情報資産に対し独自符号を付け、この符号のやり取りで各間の情報の紐付けや利用を行うことが予定されている。 保健医療分野では主に保険事務で活用され、各医療機関と健康保険組合などで発行されたIDによる情報連携を可能にする、仕組み作りが行われようとしている。また、将来的には、収集されたビッグデータを活用することで、遠隔医療や地域間のネットワーク、健康サポート、救急災害医療、医療のイノベーションなどに応用し、国民にとって価値あるデータを増やしていく予定であると説明した。医師会、製薬協、さまざまな取り組み 第2部では、シンポジウム「医薬品広告、講演会などの適正な在り方について」が行われた。 はじめに基調講演として、羽鳥 裕氏(日本医師会 常任理事)が「医師会からみた医療情報提供の在り方」をテーマに、医師会の「臨床研究」への取り組み、会員医師へ向けた適正研究への啓発活動の実施などを報告した。医薬品に関する情報では、医師会発信の情報提供を行う一方で、後発医薬品の情報は個々の会員医師が自発的に入手することでカバーしているが、副作用などの情報がとくに後発医薬品製薬企業から不足していると、現下の問題を指摘した。 次に中垣 友宏氏(日本製薬工業協会製品情報概要審査会)から、「適正広告に対する製薬企業の取り組み」について語られた。製薬企業では適正使用の情報を提供するために、法律はもちろん、協会制定のプロモーションコードなどに沿った作成要綱が定められ、それらは製品パンフレットや配布資料、講演会資料、WEBサイトで順守されていること、また、日常的に審査会レポートの発行や会員企業への問題事項のフィードバック、eラーニングなどを行うことで、適正な広告の普及に努めていることを同氏は説明した。 続いて、和田 成雄氏(京都糖尿病医会)が「スポンサーなしの研究会、講演会の試み」として、企業主導ではない研究会の開催法について述べた。 研究会の目的は薬剤の効果を知ることだけではなく、ネガティブな内容も知ることが重要であるとしている。また、地元医師会や大学と共催することで会場費や事務費を節約しながら、内容においてはディベートやカンファレンスの実施など、製薬企業が行わないセッションを実施している。自主運営のメリットとしてテーマ・講師の選択が適正で自由であることを挙げ、本音が聞かれる反面、運営が煩雑であり、参加者に十分な配慮ができないこともあるが利点は大きいと、その経験を披露した。今後の広告適正化の在り方 最後に、座長の桑島氏と羽鳥氏の進行の下、医師と製薬企業との関係をどのように保つべきか総合討論が行われた。 一例として、製薬企業のスポンサーのない医師向けの講演会も多数開催されている例や、製薬企業主導であってもケースによっては、時間配分ですみ分けを行い、製品のファクトが聞ける講演会などを実現できることも報告された。 また、製薬企業のプロモーション媒体については、最近、医学誌などで増えている記事広告に触れ、総説記事の広告化が起きていること、海外では専門のエージェンシーがすでに多数存在することが報告された。さらに、WEB媒体の内容チェック体制への問題提起を受け、製薬企業や企業関係サイトの内容はパンフレットなどと同様に、自主規制や関係法令に即した運用の対象となることが説明された。■参考NPO法人 臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)■関連記事 CLEAR! ジャーナル四天王

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高齢者の肥満、有酸素運動+筋トレの併用が有効/NEJM

 肥満高齢者に対し食事による減量プログラムと運動療法を行う際、有酸素運動と筋力トレーニングを併せて実施することで、有酸素運動または筋力トレーニングのみを実施する場合に比べ、半年後の身体機能はより大幅に向上することが示された。米国・ベイラー医科大学のDennis T. Villareal氏らが、160例の高齢者を対象に行った無作為化比較試験で明らかにしたもので、NEJM誌2017年5月18日号で発表した。肥満はフレイルの原因となるが、減量は加齢に伴う筋量および骨量の低下を加速させ、結果としてサルコペニアやオステオペニアを生じさせるのではと指摘されていた。有酸素運動、筋力トレーニングとその併用を比較 研究グループは、肥満高齢者160例を対象に、減量によるフレイルからの回復や筋量・骨量の減少予防に資する、より効果的な運動の種類について検証した。 被験者を無作為に4群に分け、うち3群は減量プログラムとともにそれぞれ1)有酸素運動、2)筋力トレーニング、3)有酸素運動と筋力トレーニングを併用した。4)対照群には減量プログラムも運動療法も行わなかった。 主要評価項目は、ベースラインから6ヵ月後の、身体機能テスト(Physical Performance Test:0~36点で、高いほど身体機能が良好)の点数の変化とした。副次的評価項目は、その他のフレイルに関する指標、骨密度、身体機能の変化などとした。除脂肪体重の減少、有酸素運動群で5%と最大 被験者のうち試験を完了したのは141例(88%)だった。 身体機能テストのスコア変化は、1)有酸素運動群が14%(29.3から33.2点に)増加、2)筋トレ群が14%(28.8から32.7点に)増加だったのに対し、3)有酸素運動+筋トレ群は21%(27.9から33.4点に)増加と、より大幅に上昇した(それぞれボンフェローニ補正後、p=0.01、p=0.02)。また、すべての運動群は対照群と比べ、同点数が大幅に増加した(いずれもp<0.001)。 最大酸素消費量は、3)有酸素運動+筋トレ群(17%増)と1)有酸素運動群(18%増)が、2)筋トレ群(8%増)より大幅に増加した(いずれもp<0.001)。 筋力については、3)有酸素運動+筋トレ群(18%増)と2)筋トレ群(19%増)が、1)有酸素運動群(4%増)より大幅に増加した(いずれもp<0.001)。体重は、すべての運動群で9%減少したのに対し、4)対照群では有意な変化は認められなかった。 一方、除脂肪体重は、1)有酸素運動群では5%低下だったのに対し、3)有酸素運動+筋トレ群と2)筋トレ群ではそれぞれ3%低下、2%低下と、減少率はより小幅にとどまった(いずれもp<0.05)。股関節骨密度低下についても同様に、1)有酸素運動群が3%低下に対し、3)有酸素運動+筋トレ群と2)筋トレ群ではそれぞれ1%低下、0.5%低下にとどまった(いずれもp<0.05)。 運動関連の有害事象は、筋骨格損傷などが報告された。

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循環器内科 米国臨床留学記 第21回

第21回 カリフォルニアの医療通訳事情日本を訪れる外国人の数も年々増えており、日本でも外国人の受診が増えていると思います。私が臨床を行っているカリフォルニアは多人種が集まっており、言語が問題となることも多いです。メキシコなど中南米からの移民が多いために、ほかのどの州よりもスペイン語を話す人が多く、私の印象でも10~20%の人はスペイン語しかできず、通訳を必要とします。また、ベトナム戦争の頃に移住してきたベトナム人が住むリトルサイゴンという町が近いため、5~10%の患者はベトナム語しか話せません。中国人や韓国人も多く、日常臨床でも毎日通訳が必要となります。残念ながら、日本語しか話せない患者を診る機会はほとんどありません。問診などは、バイリンガルの家族がいれば通訳をお願いすることができますが、心臓カテーテルなどの手技の同意をとる際に、家族にお願いすることは許されません。病院が雇う通訳者はスペイン語、ベトナム語に限定されており、夜間は常駐していません。ですから、その他の言語については電話を使った通訳システムに頼らざるを得ません。電話による通訳は、通訳者の質が保障されておらず、難しいこともあります。さらに、医療用語は特殊なため、いくらバイリンガルでも医療用語に精通していないと会話が難しくなります。ましてや、医者であるわれわれもネイティブスピーカーでないことがあるため、時には診察に2~3倍以上の時間がかかります。病院が雇っている通訳者を介した通訳に比べると、電話による通訳はスムーズにはいきません。そんな中、ローテーション先のLong Beach市の病院ではテレビ電話を用いた通訳システムを採用しており、患者の表情や様子が通訳の助けになるため、音声だけの通訳よりは使いやすく感じます。カリフォルニアでは、法律で患者が通訳を求める権利があります。また、すべての病院は通訳サービスを提供することが義務付けられています。家族が通訳に入ると、患者に情報を隠したり、歪曲して伝えたりする可能性があります。例えば、民族的、宗教的な信念から、患者にがんの診断を伝えないなどといったことが挙げられます。ですから、たとえバイリンガルの家族がいても、患者本人が求める場合には必ず通訳を提供しなければなりませんし、同意書をとる時などは、家族を介しての通訳は認められません。そのような背景もあり、医療通訳は一つの職業としてしっかり認知されています。Payscaleというウェブサイトによると、医療通訳者の給料は時給が19ドル前後です。看護師(Registered Nurse)の時給が38ドル程度ですから、約半分です(ちなみにカリフォルニアの労働者の最低賃金は10ドルです)。日本では外国人を診る機会が基本的に少なく、医療従事者が英語を十分に話せるということはまだまだ少ないと思います。私も日本にいた頃、とくに東京で勤務していた際は、英語しか話せない患者を1ヵ月に一度程度は診ていました。十分な情報を伝えられていなかったこともあったと思います。当時は通訳サービスがなく、中国語を話す患者の診療に困ったこともありました。2020年の東京オリンピックに向けて、ますます外国人の訪問者数が増えそうですし、今後は英語以外の言語も含め、電話などを介した通訳サービスを拡張させていく必要があるように感じます。また、患者の利益を考えると、通訳を義務付ける法律の整備も必要なのかもしれません。

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マントル細胞リンパ腫〔MCL: Mantle cell lymphoma〕

1 疾患概要■ 概念・定義マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma:MCL)は、1992年にBanks氏らにより独立した疾患単位として提唱された悪性リンパ腫である。WHO分類第4版では、核不整を伴う小型、中型のリンパ球が単調に増殖するB細胞腫瘍であり、Cyclin D1遺伝子の転座を伴うと定義される1)。■ 疫学MCLは、非ホジキンリンパ腫の3~10%を占め、中年から高年層に多く、好発年齢は60歳前後で、男性に多く発症する1)。わが国においては、悪性リンパ腫の2~4%程度と報告されており、比較的まれな病理組織型である。■ 病因14q32に存在する免疫グロブリン重鎖遺伝子(IgH)と11q13に存在するCCND1遺伝子の相互転座 t(11;14)(q13;q32)により、Cyclin D1の過剰発現が生じて腫瘍細胞増殖を促進すると考えられている。さらに近年の分子生物学的研究の成果により、染色体転座に加えMCL発症に重要な役割を果たしていると考えられる遺伝子変異が同定されている。DNA修復に関わるATM遺伝子、クロマチン修飾に関わるWHSK1、MLL2およびMEF2B遺伝子、NFκBに関わるBIRC3遺伝子、Notchシグナルに関わるNOTCH1/2遺伝子などである。また、MCLの一部においてB細胞受容体(B-cell receptor:BCR)を介したシグナル伝達が恒常的に活性化しており、染色体転座および遺伝子変異と同様にMCLの発症に関与していると考えられている。とくにNFκBやBCRシグナルに関わる分子は、MCLにおける重要な治療標的と考えられるようになり、それらを標的とした分子標的薬の臨床導入も検討されている。Cyclin D1陰性例がMCLの5%以下に認められるが、そのような症例はCyclin D2、D3の過剰発現が確認されており、少数例の解析ではあるが、Cyclin D1陽性の典型例と陰性例で臨床的特徴や予後は変わらないと報告されている。■ 症状MCLの初発症状は、その他の非ホジキンリンパ腫と同様にリンパ節腫大で発症することが多く、特有の症状はない。しかし、MCLは90%近い患者において初発時に臨床病期III期・IV期の進行期であり、表在リンパ節腫大・脾腫以外に、節外病変に伴う症状を高頻度に認める。骨髄浸潤は50~70%に認める。消化管浸潤が20~30%に認められるため、腹部膨満・腹痛・下痢などの消化器症状を主訴として、消化器内科を受診して発見される患者も比較的多い。また、眼窩の腫脹で眼科を受診し、リンパ腫が疑われる場合もあり、多彩な症状で発見されることが特徴である。■ 分類MCLは、病理組織学的に腫瘍細胞は小型~中型の比較的均一な細胞の増殖からなり、腫瘍細胞にはアポトーシス像や分裂像をほとんど認めず、このような形態を示す例が9割近くを占める。その他に芽球様型(blastoid variant)、多形性型(pleomorphic variant)および小細胞型(small cell variant)と呼ばれる細胞形態学的亜型に分類される。さらに、腫瘍の組織構築によりびまん性、結節性およびマントルゾーンパターンに分類される。芽球様型および多形性型は、高悪性度型として予後不良と考えられている1)。■ 予後MCLの予後予測は、中高悪性度リンパ腫に対する予後予測因子である国際予後指標(international prognostic index:IPI)によりおおむね予測が可能であるが、より正確に予後を予測するモデルとしてMCL国際予後指標(mantle cell lymphoma IPI:MIPI)が提唱された2)。MIPIは、年齢、performance status(PS)、LDHおよび白血球数の4つの因子によりlow/intermediate/highの3群のリスクに分類するものである。全生存期間(overall survival:OS)中央値は、low risk群で中央値に到達せず、intermediate risk群 51ヵ月、high risk群 29ヵ月であり、予後層別化が可能であった。一方でMIPIは、計算式によりスコアを求める必要があるため煩雑であることから(図1)、より簡便にしたsimplified MIPI(s-MIPI)が提唱された(図2)。s-MIPIによる各群のOS中央値は、low risk群で中央値に到達せず、intermediate risk群 51ヵ月、high risk群 29ヵ月であった。さらにKi-67陽性強度が独立した予後因子であるとされている。画像を拡大する画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 病理組織学的診断MCLの診断は、リンパ節生検などによる腫瘍組織の病理組織学的診断がもっとも重要である。生検検体は、可能な限り新鮮検体、ホルマリン固定検体および凍結保存検体の3種類に分別して処理すべきである。ホルマリン固定検体を用いたHE染色にて形態学的に悪性リンパ腫が疑われれば、免疫組織学的検査を追加する。MCLはCD20などのB細胞マーカーに加えて、CD5が陽性で、Cyclin D1が腫瘍細胞の核に陽性となる。また、新鮮検体を用いてflow cytometry法により細胞表面抗原検索を併せて行う。通常MCLは、CD5、CD19、 CD20、 CD22、 CD79aが陽性で、CD10およびCD23が陰性である。染色体分析では、t(11;14)(q13;q32)が陽性となることが多く、病理組織学的診断を補強する意味で有用である。病理組織学的に、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、濾胞性リンパ腫および辺縁帯リンパ腫などが鑑別となる。そのため、免疫組織学的検査や細胞表面抗原検査の所見が、鑑別上重要である。■ 臨床病期診断悪性リンパ腫の治療方針を決定するうえで、臨床病期診断は重要である。リンパ節病変の評価として頸部から骨盤部のCT、骨髄検査が必須である。また、近年悪性リンパ腫の臨床病期診断におけるFDG-PETの有用性が指摘されており可能な限り実施する。その他、MCLは前述のように、消化管病変を有することが多いため、上部消化管内視鏡に加え、下部消化管内視鏡検査を行うことが望ましい。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)抗CD20モノクローナル抗体であるリツキシマブと高用量シタラビンを併用した強力な寛解導入療法に引き続いて、自家造血幹細胞移植大量化学療法(自家移植)を実施する治療戦略が、現時点でもっとも良好な病勢制御が期待でき、自家移植の適応を有する65歳以下の未治療進行期MCL患者における標準的治療法である。Geisler氏らの北欧グループによるR-maxi-CHOP/大量シタラビン療法3)やMD Anderson Cancer CenterによるHyperCVAD/MA療法4)の報告が、いずれも第II相試験の結果ではあるが、その根拠となっている。わが国においては、日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group:JCOG)よりR-high-CHOP/CHASER療法に引き続く、LEED療法を前処置とした自家移植の有効性が報告されている5)。自家移植の適応のない65歳を超える高齢のMCL患者では、わが国においてはR-CHOP療法が標準的治療法の1つとして位置付けられている。CHOP療法とR-CHOP療法を比較した臨床試験において、奏効割合でR-CHOP療法が有意に優れていたが、OSには有意差は認められなかった6)。一方、メタ解析では、リツキシマブ併用化学療法が化学療法群と比較してOSを延長することが示され、R-CHOP療法を含むリツキシマブ併用化学療法が標準的治療法と位置付けられた7)。また、R-CHOP療法とそれに引き続くリツキシマブ維持療法はOSを延長することが報告されている8)。ドイツからの報告では、R-CHOP療法と比較してベンダムスチン(商品名: トレアキシン)とリツキシマブ併用(BR)療法で有意にOSが延長したと報告された9)。さらにプロテアソーム阻害薬であるボルテゾミブ(同: ベルケイド)を併用したVR-CAP療法が、R-CHOP療法と比較して無増悪生存期間を延長することが第III相試験で示された10)。いずれも試験治療群が標準的治療法となり得るデータであった。わが国においてもMCLを含むB細胞リンパ腫に対するリツキシマブ維持療法および未治療MCLに対するボルテゾミブが保険承認され、さらにMCLを含む未治療低悪性度B細胞リンパ腫に対し、2016年12月に適応が拡大された。MCLにおいてB細胞受容体シグナルの恒常的活性化が認められており、同シグナルに関わるBruton’s tyrosine kinase(BTK)が有望な治療標的と考えられる。イブルチニブ(同:イムブルビカ)は、経口BTK阻害薬であり、再発・治療抵抗性MCLに対して高い有効性が示された11)。わが国においても再発・治療抵抗性MCLに対して2016年12月に適応が拡大され、再発・治療抵抗性MCLに対する重要な治療選択肢の1つに位置付けられている。4 今後の展望65歳以上の未治療MCL患者を対象とするイブルチニブ併用BR療法の有効性を検討する国際共同ランダム化第III相試験が、わが国も含めた国際共同試験として実施されている。同試験の結果により、自家移植非適応未治療MCL患者に対する新たな標準的治療法が、確立される可能性がある。また、免疫調整薬(Immunomodulatory drug: IMiD)であるレナリドミドは、リツキシマブとの併用で未治療MCLに対して第II相試験により高い有効性が示されており12)、MCLに対する今後の臨床開発が期待されている。5 主たる診療科血液内科、血液腫瘍科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報National Comprehensive Cancer Network(NCCN)NCCN guidelines for treatment of cancer by site: Non-Hodgkin lymphomas(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)European Society for Medical Oncology (ESMO)ESMO guidelines: Haematological malignancies(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Swerdlow SH, et al. WHO classification of tumours of haematopoietic and lymphoid tissues. 4th ed. World Health Organization;2008.2)Hoster E, et al. Blood. 2008;111:558-565.3)Geisler CH, et al. Br J Haematol. 2012;158:355-362.4)Bernstein SH, et al. Ann Oncol. 2013;24:1587-1593.5)Ogura M, et al. ASCO annual meeting 2015. Abstract #8565.6)Lenz G, et al. J Clin Oncol. 2005;23:1984-1992.7)Schulz H, et al. J Natl Cancer Inst. 2007;99:706-714.8)Kluin-Nelemans HC, et al. N Engl J Med. 2012;367:520-531.9)Rummel MJ, et al. Lancet. 2013;381:1203-1210.10)Robak T, et al. N Engl J Med. 2015;372:944-953.11)Wang ML, et al. N Engl J Med. 2013;369:507-516.12)Ruan J, et al. N Engl J Med. 2015;373:1835-1844.公開履歴初回2015年07月14日更新2017年05月23日

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うつ病患者、身体症状から見つけて

 2017年5月17日、東京において塩野義製薬株式会社主催のプレスセミナーが開催され、「うつ傾向のある人の意識と行動に関するアンケート調査※1」の結果が、藤田保健衛生大学 精神神経医学 教授の内藤 宏氏より発表された。その後、患者の身近な相談医として日常診療にあたっている宮崎医院 院長の宮崎 仁氏を交え、うつ傾向のある患者とかかりつけ医のコミュニケーションについて語られた。潜在的なうつ病患者の発掘は「かかりつけ医」にかかっている うつ病の患者数は、厚生労働省の統計で約73万人と推計されている1)。しかし、うつ病・うつ状態でありながらも医療機関で診断・治療を受けていない潜在的な患者が230万人存在すると推定されており2)、うつ症状を医師に相談できていない患者はまだ多く存在すると考えられる。うつ病・うつ状態の放置は、症状の悪化や治療の長期化につながることから、潜在患者の発掘は急務といえる。そのためには、かかりつけ医によるうつ状態の早期発見が望まれるが、潜在的なうつ病患者にどのような特徴があるのかを知るプライマリケア医は多いとはいえない。うつ傾向のある人はさまざまな不調を感じているが、内科医に相談する人は少ない そのような背景から、うつ病のスクリーニングに用いられる二質問法※2をベースに判定した「うつ傾向のある人」の特徴と行動の把握を目的として、インターネット調査が実施された。まず、うつ傾向のある回答者の基本属性や特性を把握するための予備調査が行われ、その後、潜在患者調査が行われた。予備調査の結果、うつ傾向がある人のうち、現在「うつ病/うつ状態」の診断をされている人は1割弱で、9割以上の人が未診断であることが明らかになった。また、うつ傾向のある人は、「疲労倦怠感」、「肩・腰・首の痛み」、「頭痛」といった身体症状を訴える割合が多かった。また、抑うつ気分以外にも「体のあちこちが重く感じる」、「不安でいてもたってもいられない」、「話や本の内容が入ってこない」などの訴えが多かった。潜在患者調査の結果、「うつ傾向ありで未診断」の人のうち、約半数は最近内科を受診しており、内科医との接点は少なくないことが示唆された。しかし、その内科医に「専門外のことでも相談できる」と回答した人は約2割で、精神的・身体的不調について相談意向があって、実際に相談したという人は約1割にとどまった。MUS(Medical Unexplained Symptoms)の陰に潜むうつ病 今回の調査で明らかになった「うつ傾向患者」における身体症状の特徴を示し、宮崎氏は、「“MUS”のラベルを付けただけで満足し、うつ病が見落とされている可能性がある」と非専門医によるうつ病診療の課題について語った。MUSとは、何らかの身体疾患が存在するかと思わせる症状が認められるものの、診察や検査で原因疾患が見いだせない病像である。不定愁訴や自律神経失調症などがMUSに該当し、プライマリケア外来患者の実に3~4割を占めるという3)。原因疾患不明の身体症状を訴える患者を、単なる不定愁訴として扱うのではなく、うつ病の可能性を意識して診療を行うことが大切である。「不定愁訴+不眠」に遭遇したら“心療モード”を起動 宮崎氏は、プライマリケア医が精神科診療のテクニックを導入して、精神科的な対応ができるようになるための教育訓練を行うPIPC(Psychiatry In Primary Care)研究会の活動を行っている。PIPC研究会では、初心者でもフォーマットに従って10分程度で精神科的評価ができる背景問診・MAPSO※3問診チェックリストを作成しており、日常診療で役立てるのも良いかもしれない。宮崎氏は、「MUSの患者に遭遇したら、睡眠について問診し、不眠であれば“心療モード”を起動して二質問法のうつ病スクリーニングを行う。さらにその他のうつ症状や希死念慮、躁・軽躁エピソードについても問診で探っていく」と、自身が行っている気分障害の問診手順について語った。専門医の治療が必要と判断した場合は、速やかに精神科医に紹介する。うつ病の早期発見・早期治療のために かかりつけ医は、患者の不調を発見するゲートキーパー的な役割を担っている。患者が相談しやすい良好な関係性を構築するためには、医師のほうから「最近どうですか?」、「気になるところはありませんか?」、「よく眠れていますか?」などと問いかけてみることも大切である。「患者が原因疾患不明の身体症状や不眠、食欲不振を訴える場合はうつ病の可能性を意識して、適切な問診を行い、潜在的なうつ病患者の早期発見・早期治療につなげてほしい」と宮崎氏は強調し、講演を締めくくった。※1 【調査概要】調査時期:2016年2月調査手法:インターネット調査(全国)調査対象:[事前調査]一般生活者の男女20~69歳 19,975人     [本調査]以下の対象者条件に合致する2,028人          対象者条件…事前調査に回答した人のうち、          二質問法で「うつ傾向あり」かつ          「うつ病の診断なし(および最近専門医に受診していない)」          に該当調査主体:塩野義製薬株式会社     ※調査結果の詳細は、セラピューティック・リサーチ誌2017年4月号      に掲載。     (内藤 宏ほか. Therapeutic Research. 2017;4:413.)※2 二質問法:「最近1ヵ月間、気分が沈んだり、憂鬱な気持ちになることがよくあった」または「最近1ヵ月間、物事に対して興味がわかない、心から楽しめないことがよくあった」のいずれか1項目該当で「うつ傾向あり」と判定(鈴木竜世ほか. 精神医学. 2003;45:669-708.)※3 MAPSO:Mood(気分障害)、Anxiety(不安障害)、Psychoses(精神病群)、Substance induced(薬物誘発性障害)、Organic/Other(器質性・その他)の略参考1) 厚生労働省. 平成26年患者調査(傷病分類編).2) 川上憲人. 神経・精神疾患診療マニュアル. 2013;142巻 特別号2:30.3) 宮崎 仁. 日本内科学会雑誌. 2009;98:188.

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わかる統計教室 第4回 ギモンを解決!一問一答 質問10(その2)

インデックスページへ戻る第4回 ギモンを解決!一問一答質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その2)質問10(その1)■相関分析2項目のデータの一方が変われば、他方もそれにつれて変わるのか。変わるのであればその関連性はどのくらい強いのかを統計学的に分析する手法が「相関分析」です。質問9(その2)で学びましたが、比べたい2項目のデータのそれぞれのデータタイプが「数量データ」なのか「カテゴリーデータ」なのかをきちんと確認すれば、その組み合わせで相関分析の解析手法と2項目間の関連性の強さを判断する相関係数も決まります。前回は、「数量データ」と「数量データ」の相関関係について解説しました。今回は、「数量データ」と「カテゴリー(分類)データ」の相関関係について説明していきます。■カテゴリー別平均と相関比ある地域のドラッグストア10店舗について、1日当たりの平均売上額と、ある日の10~18時までの店舗前通行人との関係を単相関係数で調べると0.73でした。通行人は、1日当たりの平均売上額への影響要素として重要な変数であることがわかりました。ところが、1日当たりの平均売上額の多少は、通行人のみならずいろいろな要素が絡み合って決まっているはずであり、通行人以外の項目についても1日当たりの平均売上額への影響度を調べなければなりません。影響要素として考えられる変数をピックアップして調査した結果、表1の結果を得ました。表1 1日当たりの平均売上額への影響要素影響要素の1日当たりの平均売上額への影響度を相関分析によって調べることにします。単相関係数は、数量データと数量データの相関関係を調べる解析手法です。1日当たりの平均売上額と競合店の有無、1日当たりの平均売上額と立地条件は、数量データとカテゴリーデータの関係ゆえ、単相関係数は適用できません。数量データとカテゴリーデータの基本解析は「カテゴリー別平均」、相関関係は「相関比」を適用します。カテゴリー別平均競合店の有無別の1日当たり売上の平均、立地条件別の1日当たり売上額の平均を「カテゴリー別平均」といいます。カテゴリー別平均を表2に示します。表2 例題のカテゴリー別平均相関比表3より相関比を求めると、1日当たり売上と競合店の有無は0.441、1日当たり売上と立地条件は0.432でした。単相関係数と同様に、相関比の値がいくつ以上あれば、相関が強いという基準はありません。そこで、筆者は次のように定めています。単相関係数の基準と異なるので留意してください。また、単相関係数と同様に、あくまでもこの基準は分析者が経験的な判断から決めることになります。表3 筆者流の相関比の強弱の考え方表4を用いながら1日当たり売上と立地条件の相関比の求め方を説明します。表4 例題の全体変動、群間変動、誤差変動群間変動と誤差変動を足すと全体変動に一致します。群間変動(SA)+誤差変動(SE)=全体変動(ST)216+284=500相関比は次の式で求められます。1日当たり売上への影響度は、通行人、競合店の有無、立地条件のうち、どの要素が高いのかを調べることにします。1日当たり売上と通行人の相関係数は単相関係数、ほかは相関比なので比較することができません。このような場合、数量データである通行人を表5のようにカテゴリー(分類)化することにより、カテゴリーデータとします。表5 例題のデータのカテゴリー(分類)化図のようにカテゴリー化した通行人と1日当たり売上の相関比を求めると0.641でした。図 例題の相関比相関比を比較すると、通行人が最も高く0.641、次に競合店の有無と立地条件がほぼ同じ値で続きます。今回は「数量データ」と「カテゴリーデータ」の相関関係についてご説明してきました。次回は「カテゴリーデータ」同士の相関関係について解説いたします。今回のポイント1)「数量データ」と「カテゴリーデータ」の比較をする際の基本解析は、カテゴリー別平均を算出し、関連性をみる!2)相関比は「数量データ」と「カテゴリーデータ」の相関関係の程度を示す数値である!3)相関比は、単相関係数と同様に、いくつ以上あれば相関が強いといった統計学的基準はなく、あくまでも分析者が経験的な判断から基準を決める!インデックスページへ戻る

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医師が知っておきたいレセプトの話

※ケアネットでは、本コーナーの記事内容から離れた、個別のレセプト請求や照会などに関する回答および取り次ぎは行っておりません。あらかじめご了承ください。High-Z Inc. ハイズ株式会社所在地新宿本社 東京都新宿区大久保1‐1‐10 グンカン東新宿ビル502汐留オフィス 東京都港区東新橋1‐2‐10 パル汐留ビル 9階TEL03-6280-6987 (代表)URLhttp://www.highz-inc.jp/index.html代表者裵 英洙業務内容医療機関向け経営コンサルティング業務ヘルスケアビジネスのアドバイザー業務講演・執筆 など

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第1回 そもそもレセプトって何ですか? ~日本の医療保険制度の概要【医師が知っておきたいレセプトの話】

さて初回は、日本の医療保険制度の仕組みをおさらいしておきましょう。日本の医療保険制度の特徴日本の医療保険制度の特徴は以下の3点です。1)国民皆保険制度国民全員を公的医療保険でカバー2)フリーアクセス受診する医療機関を国民が自由にチョイス3)現物給付医療サービスは直接給付(一部自己負担金あり)日本の医療保険制度の仕組み画像を拡大する図のように、私たちは国民皆保険制度の下、国民健康保険、全国健康保険協会(通称「協会けんぽ」)、共済組合など、必ずいずれかの医療保険に加入しています。そして、各々の「保険者」に毎月保険料を納付しています。けがをしたり体調を崩したりして、診療所や病院にかかった場合、一部の自己負担金(年齢や所得により自己負担割合は変化)を支払い、医療サービスを「現物給付」してもらいます。現物給付とは、現金をもらうのではなく、「医療行為というサービス」そのものをもらうことです。一方、医療サービスを提供した医療機関は、患者からの自己負担金以外の残りの金額を「審査支払機関」に請求し、支払いを受けることで、すべての対価を手にすることになります。このときに提供された医療サービスの対価として支払われる料金が、「診療報酬」なのです。よく耳にする“レセプト”とは、このときに医療機関が請求する「診療報酬明細書」のことです。「審査支払機関」は、「医療機関」から請求された金額の内容をチェックし、適正と判断した診療報酬を「保険者」に請求し、「保険者」から支払われた診療報酬を「医療機関」に支払っています。「審査支払機関」が内容のチェックを行い、適正でないと判断された場合、請求理由に問題があるとして減額されることを「査定(さてい)」、内容に不備があるとして医療機関に差し戻されることを「返戻(へんれい)」といいます。今回は、医師の方々が日々提供している診療がどのような制度の下で行われているか、それに付随する診療に関わるお金の流れをまとめてみました。しっかり診療した後のきっちりした報酬の流れも理解しておくと、日々頑張っている診療の意味をより深く考えるきっかけになりますね。次回からは「審査支払機関」、「レセプト」、「査定」、「症状詳記」など、医師の先生方が気になるテーマごとに、もう少し掘り下げてみていきましょう。

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染色体不安定性、NSCLC再発・死亡リスクを増大/NEJM

 染色体不安定性(chromosome instability)を介して誘導される腫瘍内不均一性(intratumor heterogeneity)は、非小細胞肺がん(NSCLC)の再発や死亡のリスクを高めることが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMariam Jamal-Hanjani氏らTRACERxコンソーシアムの検討で示された。この知見は、肺がんの予後予測因子としての染色体不安定性の可能性を支持するものだという。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年4月26日号に掲載された。NSCLCの腫瘍内不均一性やゲノム進化(genome evolution)の詳細な探索については、小規模な後ろ向きコホート研究しか行われておらず、治療戦略の指針となる腫瘍内不均一性の臨床的重要性や、ドライバー・イベントのクローン性は不明とされている。100例の327の腫瘍領域をシーケンシング 本研究は、早期NSCLCにおける腫瘍内不均一性と臨床転帰の関連を調査し、ドライバー・イベントのクローン性およびゲノム進化の過程の解明を目的とする前向きコホート試験である(Cancer Research UKなどの助成による)。患者登録は2014年4月に開始され、最終的に842例の登録を目標としており、今回は100例の解析結果が報告された。 全身療法を受けていない早期NSCLC患者100例(Stage IA~IIIA)から切除された検体を用いて、多領域全エクソームシーケンシングを行った。腫瘍の進化の過程を明らかにし、クローン(すべてのがん細胞に発現)およびサブクローン(一部のがん細胞に発現)のイベントを調査し、腫瘍内不均一性と無再発生存の関連を評価するために、327の腫瘍領域のシーケンシングを行い解析した。 腫瘍内不均一性については、変異(mutation、一塩基置換/ジヌクレオチド塩基置換、小挿入・欠失)または体細胞性コピー数変化(somatic copy-number alteration、染色体セグメントの獲得または喪失を反映)の評価を行った。コピー数不均一性の増加で再発・死亡リスクが上昇 対象の内訳は、男性が62例、女性が38例で、喫煙者が40例、元喫煙者が48例、非喫煙者が12例であり、組織型は腺がんが61例、扁平上皮がんが32例、その他が7例であった。 変異、体細胞性コピー数変化の双方で、広範な腫瘍内不均一性が観察され、サブクローンとして同定された体細胞変異の中央値は30%(範囲:0.5~93)、サブクローンとして同定された体細胞性コピー数変化の中央値は48%(範囲:0.3~88)であった。これは、腫瘍の発育過程で、変異および染色体レベルでのゲノム不安定性が進行していることを示唆する。 EGFR、MET、BRAF、TP53遺伝子のドライバー変異は、ゲノム重複(genome duplication)の発現前も、ほぼ常にクローン性であり、発がんへの関与が示唆された。一方、進化の後期に発現する不均一性ドライバー変化が腫瘍の75%以上に認められ、この変化はPIK3CA遺伝子やNF1遺伝子のほか、クロマチン修飾やDNA損傷応答・修復に関与する遺伝子に一般的にみられた。 ゲノム倍化(genome doubling)および進行する動的染色体不安定性は、腫瘍内不均一性と関連し、結果としてCDK4、FOXA1、BCL11A遺伝子の増幅を含む体細胞性コピー数のドライバー変化の平行進化(parallel evolution)が認められた。 また、変異の割合の増加は再発および死亡のリスク上昇と関連しなかったが、コピー数不均一性が増加すると再発および死亡のリスクが有意に上昇し(ハザード比[HR]:4.9、p=4.4×10-4)、多変量解析を行っても有意な差が保持されていた(HR:3.70、p=0.01)。 著者は、「現在進められている単一の遺伝子変異を標的とする取り組みに加え、同時に多数の遺伝子のコピー数を変化させる可能性のある染色体不安定性をよりよく理解する必要があり、このプロセスを抑制する治療は、無再発生存の低下を促進する不均一性や、腫瘍の進化を防止する可能性がある」としている。

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突然やってくる!? 外国人患者さん対応エピソード集 第4回

第4回 外国人受け入れ機関認証取得で思わぬメリットも国際化が進む中で、医療機関に求められている外国人患者受け入れ体制の整備。その体制を評価する「外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP・ジェイミップ)」とはどのような制度なのでしょうか。また、認証を受けた医療機関ではどのようなメリットを得られたのか、JMIP認証を行う一般財団法人日本医療教育財団の石井氏に伺いました。対談相手一般財団法人 日本医療教育財団 認証事業課 課長 石井 雅典 氏澤田:まずはJMIPとはどのような制度か、教えてください。石井:JMIPは、国内の医療機関の外国人患者受け入れ体制を調査し、一定の基準を満たす医療機関に認証を与える制度です。弊団体には、一定の研修を通じて調査に必要な知識・技能を習得した認定調査員(サーベイヤー)が70名ほどおり、医療機関の審査を行っています。サーベイヤーの応募資格としては、医師や看護師など、医療機関での勤務経験があることが条件の1つとなっています。澤田:現在JMIP認証を取得している医療機関は全国にどれくらいあるのですか?石井:2017年4月時点で、23医療機関が認証されています。2012年から受審を開始し、初年度は3件と初動はゆっくりでしたが、2016年度より厚労省の外国人患者受け入れ体制整備のための補助金制度が始まったことなどにより、昨今、受審を申し込む医療機関が増加してきています。澤田:国の補助金制度は後押しになりますね。JMIP審査における評価項目はどのようなものでしょうか?石井:評価項目の内容には大きく分けて3つのポイントがあります。まず1つ目は、院内の各部署に外国人患者受け入れ対応マニュアルが整備されていることです。受付・会計、各診療科などにおける外国人患者への対応方法が、どのスタッフが見ても理解できるようにわかりやすく説明してあることを確認します。2つ目は、問診票や検査説明、同意書などの院内文書が外国語に対応していることです。澤田:対応言語に関する基準はあるのでしょうか?石井:言語については英語を必須としています。プラスアルファで、地域の特性や病院の特性に応じて必要と考えられる言語に対応していることが望ましいです。3つ目は、院内表示の外国語対応です。すべては対応が難しくても、とくに院内の主要な場所や、放射線管理区域、避難経路図といった安全面に関わる表示については外国語対応を求めます。認証取得で、医療現場で実際にみられたメリットとは?澤田:実際にJMIPを取得した医療機関に、院内でどのような変化が表れていますか。石井:まずは正式なマニュアルが完成することで、受け入れが実際に円滑になったことです。JMIP認証医療機関には、国際部のような外国人患者受け入れを担当する部署がもともとある病院も少なくありませんが、担当部署があるとそこばかりに頼ってしまい、知識やスキルが部署依存、もしくは属人的になりがちです。澤田:マニュアル化により院内全体で、どのスタッフでも対応できるようになるのですね。石井:そうです。またそれがすべての患者さんへの対応を向上させることにつながるという点もみえてきました。インフォームド・コンセントに関わる文書確認のプロセス改善や、宗教や慣習へ多様な対応ができるようになること、また院内表示が整備されることは、日本人患者さんにとっても助かる利点だったのです。澤田:なるほど。最後に、今後JMIPの認証取得を検討している医療機関の皆さんにメッセージがあればお願いします。石井:JMIP認証は、今後増加する外国人患者さんを受け入れる体制の整備のみならず、外国人患者さんに関する何らかのトラブルが発生した時に、準備があっても起こったやむを得ない事態だったことを証明できる自己防衛の手段にもなりうると思います。ぜひ病院全体の体制整備に活用いただければと思います。澤田:うまく活用すれば、外国人患者さんだけでなく、すべての患者さんにとってメリットがあるのですね。ありがとうございました。<本事例からの学び>受け入れ体制整備は、外国人患者さんだけでなく、すべての患者さんの利益につながる

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内分泌代謝内科グリーンノート

ポケットに入る内分泌代謝内科の役に立つ知見研修医・家庭医・一般内科医が「遭遇する頻度の高い」および「頻度は低いが絶対に見逃してはいけない」疾患症候に絞り、臨床上のポイントをまとめた内分泌代謝内科のポケットマニュアル。「フィジカルから内分泌疾患を診断する!」(徳田安春)、「総合診療医と専門医の一問一答」(南郷栄秀・岩岡秀明)など目玉企画も満載でお届け。すべての医師の必読書!画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。    内分泌代謝内科グリーンノート定価3,200円 + 税判型B6変型判頁数238頁発行2017年4月編著岩岡 秀明Amazonでご購入の場合はこちら

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わかる統計教室 第4回 ギモンを解決!一問一答 質問10(その1)

インデックスページへ戻る第4回 ギモンを解決!一問一答質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その1)質問9では、多変量解析を学ぶ前の基礎統計のおさらいとして基本統計量について解説しました。今回は多変量解析の前にもうワンステップ、つまり2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法について3回にわたって説明していきます。■相関分析2項目のデータの一方が変われば、他方もそれにつれて変わるのか。変わるのであればその関連性はどのくらい強いのかを統計学的に分析する手法が「相関分析」です。質問9(その2)で学びましたが、比べたい2項目のデータのそれぞれのデータタイプが「数量データ」なのか「カテゴリーデータ」なのかをきちんと確認すれば、その組み合わせで相関分析の解析手法と2項目間の関連性の強さを判断する相関係数も決まります。まず、「数量データ」と「数量データ」の場合について解説します。■相関図と単相関係数下記の表1は、あるドラッグストアのそれぞれの店舗における売上額と広告費と店員数を示したものです。表1 各店舗の売上額、広告費、店員数広告費や店員数が多い店舗ほど、売上額が大きくなる傾向があるかどうかをみてみましょう。相関図図のように縦軸に売上額、横軸に広告費、店員数をとり、6つの店舗のデータをプロットした散布図を「相関図」といいます。図 例題の相関図相関図を見ると、広告費が多い店舗ほど売上額が高くなる傾向がみられます。同様に、店員数が多い店舗ほど売上額が高くなっています。広告費の値が決まれば売上額の値が決まるというわけではありませんが、両者の間に直線的な関連性が認められます。このような関係がみられるとき、「広告費と売上額との間には相関関係がある」といいます。※相関図は、縦軸を目的変数、横軸を説明変数とするのが一般的です。単相関係数「単相関係数」は「数量データ」と「数量データ」の相関関係の程度を示す数値です。単相関係数は、-1から+1までの値をとります。単相関係数が±1に近いときは2つの変数の関係は直線的であって、±1から遠ざかるにしたがって直線的関係は薄れていき、0に近いときは変数の間にほとんど直線的な関係はありません。※単相関係数を「ピアソン積率相関係数」ともいいます。売上額と広告費、売上額と店員数、広告費と店員数の単相関係数を表2に示します。表2 例題の単相関係数偏差平方和を求めます。 ⇒ 詳しくは質問9(その2)を参照ください。次に表3のように積和を求めます。表3 例題の積和偏差平方和、積和を表にしたものを「偏差平方和・積和行列」といいます(表4)。対角線、SYY、S11、S22が偏差平方和、他が積和です。表4 例題の偏差平方和・積和行列単相関係数はいくつ以上あればよいか相関係数の値が±1に近づくと相関関係が強くなり、反対に0に近づくと弱くなります。相関係数が0の場合のみ相関関係がありません。ちょっと信じられないかもしれませんが、相関係数がわずか0.1でも相関は弱いながらあるのです。したがって多くの場合、2変数の間には強弱の違いはありますが、相関関係がみられます。ここで大事なことは強い相関があるかどうかです。しかし、いくつ以上あれば相関が強いといった、統計学的基準はありません。医学統計の書籍などでは0.5としている場合もありますが、筆者のノウハウとしては表5のように決めています。あくまでもこの基準は、分析者が経験的な判断から決めることになります。表5 筆者流の相関の強弱の考え方あるドラッグストアでは、毎月売上額と広告費の単相関係数を算出しています。6ヵ月ほど前まで相関係数は0.5~0.7の間で推移していましたが、それ以降は0.3を一度も上回ったことがなかったとしましょう。相関係数が基準点の0.3を上回らないのは、広告費の売上に対する影響度が小さくなったと判断し、広告費の削減、あるいは広告内容の見直しを検討するということになります。今回は、「数量データ」と「数量データ」の相関関係について説明してきました。次回は、基本統計量についてご説明いたします。今回のポイント1)「数量データ」と「数量データ」の比較をする際の相関分析は、相関図(散布図)を描き両群の間の直線的な関連性をみる!2)単相関係数(ピアソン積率相関係数)は「数量データ」と「数量データ」の相関関係の程度を示す数値である!3)単相関係数は、いくつ以上あれば相関が強いといった統計学的基準はなく、あくまでも分析者が経験的な判断から基準を決める!インデックスページへ戻る

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