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第1回 楽しい同行♪&無菌室稼動!【はらこしなみの在宅訪問日誌】

初めまして。はらこし なみと申します。在宅訪問専任の薬剤師をしています。目の前の患者さんの在宅療養をより良いものに!と、患者さんのサポートに奮闘しています。お別れのときのやるせなさを乗り越え、チーム医療での自分の立ち位置を見つめ直しながら、前向きに頑張る日々を綴っていきたいと思います。楽しい同行♪「次回は2週間後の25日に伺いますね~」いつもの看護師さんの締めくくりで部屋を出ます。ここは高齢者専用住宅。今日は医師と看護師に同行しています。「先生、次はクリスマスですね~」「ぼく、サンタクロースになるよ」は?まさか先生。待ち合わせ場所の施設玄関に現れた先生は赤かった!!!きゃあ、先生~。施設入居者の皆さん、軒並み血圧up↑↑先生とわからず動揺する方まで...急いでお髭とって「僕です!」高齢者や病気を患っている方にとっては刺激が強すぎた?ほんの少しの変化(温度、気候もそうですが)が体に影響するのだと再認識しました...。無菌室稼動の依頼が!さて。病院主催の緩和ケア勉強会に参加して他の職種の方々と連携するように心懸けています。勉強会の最後には参加者の各部門から連絡事項の伝達があります。病院で在宅訪問を担当している看護師さんから「TPN患者さんの在宅が開始予定なのですが、混合できますか?」と。ここは高齢者専用住宅。今日は医師と看護師に同行しています。夢に見ていた無菌室の稼働!!うちの薬局には無菌室がありますが、実際に処方箋を受けたことはこれまでなかったんです。しかし、実際に段取りを始めると・・・、準備する物品の多さ、手順の確認、注射薬剤の知識のなさに焦り、緊張の毎日。薬局薬剤師にとって、注射、輸液などを扱うことがなく、未知の世界です・・・。無菌調製している別店舗のスタッフに色々と教えてもらう日々が始まりました。調製前の準備から指導されっぱなしです・・・。「1回1回、ドアはしっかりしめる!」「ここ拭いた?」「ここに置いちゃだめだよ!」ありがたい指導のもと、ようやく稼働にこぎ着けました。初の輸液処方箋。適応外使用に四苦八苦ですが、資料やガイドラインなどを勉強して、実際の現場ではこのような使用法もあるのだ、と改めて感じています。やっと1例。いっぱいいっぱいですが、これからは必要としている患者さんに届けられるよう、努力したいと思います。

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コレステロールの吸収と合成を阻害する初の配合錠「アトーゼット配合錠LD/HD」【下平博士のDIノート】第1回

コレステロールの吸収と合成を阻害する初の配合錠「アトーゼット配合錠LD/HD」今回は、高コレステロール血症治療薬「エゼチミブ/アトルバスタチンカルシウム水和物配合錠LD/HD(商品名:アトーゼット)」を紹介します。コレステロールの吸収と合成をともに阻害するため、単独投与よりもLDLコレステロール値を低下させる可能性、また、1剤の服用で済むのでアドヒアランス向上や患者負担の軽減が期待できます。<効能・効果>高コレステロール血症、家族性コレステロール血症の適応で、2017年9月27日に承認され、2018年4月23日より販売されています。本剤は、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬であるエゼチミブと、HMG-CoA還元酵素阻害薬であるアトルバスタチンの配合剤です。異なる作用機序の成分を配合することで、小腸でのコレステロールおよび植物ステロールの吸収阻害作用と、肝臓でのコレステロール合成阻害作用により、血液中のコレステロールを低下させることが期待されます。なお、本剤を高コレステロール血症、家族性コレステロール血症治療の第1選択薬として用いることはできません。<用法・用量>通常、成人には1日1回1錠を食後に経口投与します。エゼチミブ/アトルバスタチンの含量は、LD錠が10mg/10mg、HD錠が10mg/20mgとなっており、アトルバスタチンの用量は、年齢、症状により適宜増減可能です。高コレステロール血症の場合はアトルバスタチンとして最大20mg、家族性高コレステロール血症の場合は最大40mgまで増量できます。<臨床効果>日本人高コレステロール血症患者309例を対象とした国内第III相二重盲検比較試験において、ベースラインからのLDLコレステロール変化率は、エゼチミブ10mg+アトルバスタチン10mg併用群はエゼチミブ10mgおよびアトルバスタチン10mgの各単独群との間、エゼチミブ10mg+アトルバスタチン20mg併用群はエゼチミブ10mgおよびアトルバスタチン20mgの各単独群との間に有意差が認められました。<副作用>国内の臨床試験では、臨床検査値異常を含む副作用が272例中4例(1.5%)に認められています。主な副作用は、胃炎、腹部膨満感、便秘などの消化器症状と、ALT増加、AST増加、γ-GTP増加、Al-P増加などの臨床検査値異常でした。<患者さんへの指導例>1.コレステロール吸収を抑える成分と、コレステロール合成を抑える成分の2種類が配合され、心血管系疾患の危険性を少なくすることが期待できます。2.一緒に飲んではいけない薬や避けたほうがよい薬がありますので、ほかに服用している薬があれば、必ず医師・薬剤師に伝えてください。3.手足のしびれ、筋力低下、筋肉痛、赤褐色の尿など[横紋筋融解症の前駆症状]がみられた場合や、これまでと違うだるさ、食欲不振、吐き気、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる症状[肝機能低下]がみられた場合はすぐに連絡してください。<Shimo's eyes>本剤を高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症の第1選択薬として使用すること、またはアトルバスタチン以外の同効薬の単独投与(ゼチーア錠も該当)からの切り替えは、原則として認められていないので注意が必要です。切り替えが下記に該当しない場合は疑義照会をする必要があります。【LD錠の適用】(1)エゼチミブ10mg+アトルバスタチン10mg併用、(2)アトルバスタチン10mgで効果不十分な場合【HD錠の適用】(1)エゼチミブ10mg+アトルバスタチン20mg併用、(2)アトルバスタチン20mg、(3)エゼチミブ10mg+アトルバスタチン10mg併用またはエゼチミブ/アトルバスタチン配合錠LDで効果不十分な場合本剤の薬価はLD錠、HD錠ともにゼチーア錠と同額のため、ゼチーア錠とリピトール錠あるいは後発のアトルバスタチン錠をそれぞれ単剤で併用するよりも医療費が軽減されます。アドヒアランスの向上も期待できるので、両剤を必要とする患者さんにとってメリットを感じやすいでしょう。通常、新薬の発売から1年間は14日分しか投与できないという処方日数制限がありますが、本剤の場合、既存薬のゼチーア錠とリピトール錠の併用療法は実質的に1年以上の臨床使用経験があるため、処方日数制限の対象外となっています。

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統計のそこが知りたい!

大好評をいただいた「わかる統計教室」に引き続き、医学統計のわかりにくい部分を解説する新コーナーの登場です。このコーナーでは、医学論文を読むに当たって多くの人が疑問に思うこと、勘違いしやすいことを取り上げ、簡潔にわかりやすく解説していきます。最初にこのコーナーで理解し、さらに「わかる統計教室」で詳しく学習していただければ、さらに理解は進みます。統計解析の専門家、志賀 保夫氏(株式会社アイスタット)に解説いただきます。●くわしい統計の学習は わかる統計教室

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第1回 「標準偏差」と「標準誤差」の使い分けは【統計のそこが知りたい!】

第1回 「標準偏差」と「標準誤差」の使い分けは論文、図などでよく目にする標準偏差(standard deviation:SD)と、よく似た統計用語に標準誤差(standard error:SE)があります。今回は、両者をどのように使い分けているのかについて解説します。※本稿では、標準誤差と標準偏差とが類似しているので、混乱を避けるため本文では「標準誤差」を「標準誤差(SE)」あるいは「SE」と表します。■標準偏差の働きを考える標準偏差とは何かを考えてみましょう。ご存じのように、ある薬剤の効果に関する試験を行った結果、得られたデータの散らばりの程度を数値で示すことができれば、その値を比較することによって薬剤を評価することができます。その散らばりの程度を示す数値のことを「標準偏差(standard deviation:SD)」といいます。注意が必要なのは、標準偏差は平均値と比べて、「どれだけばらついているか?」「差が大きいか?」を求めた数値ですので、データの分布が偏っていて外れ値があり、平均値と中央値が大きく異なるような場合は、このデータの代表値として平均値を用いるのは適切ではありません。その結果、標準偏差も外れ値に対して強く影響を受け、大きな値になってしまいます。次に標準誤差(SE)について考えてみましょう。標準誤差(SE)とは、標準偏差(SD)を√nで割った値です。上の式からもわかるように、標準誤差(SE)は必ず標準偏差よりも小さくなります。■母集団を知るために必要な尺度は何か?標準誤差(SE)は必ず標準偏差よりも小さくなりますので、標準誤差(SE)を用いてグラフなどを作成したほうがデータのバラツキが少ないように見えるので見かけがよくなります。実際に、多くの医学論文などで標準誤差(SE)が使われていますが、決して見かけをよくするために標準誤差(SE)を用いているわけではありません。もう一度、前述の式をよく見てみましょう。標準偏差が大きいと、外れ値があったり、試験の結果として得られるデータのバラツキが大きいということです。したがって、標準偏差は小さいほうが良いわけです。では、サンプルサイズnの大小関係については、どう考えればよいでしょうか。母集団のことを知るためには、サンプルサイズnは大きいほうが良いですね。標準誤差(SE)の式を見てください。標準偏差、nがどのような場合、標準誤差(SE)は小さくなるでしょうか?標準偏差が小さく、nが大きいときに標準誤差(SE)が小さくなります。つまり、データの散らばり程度とサンプルサイズnの大きさを考慮して求められた標準誤差(SE)は、母集団のことを知るためのバロメーターとなるのです。ですから、標準誤差(SE)は重要だということです。■誤差について考える簡単な事例で具体的にみてみましょう。次の図「薬剤Aと薬剤Bの平均値棒グラフ」は、論文で見る機会が多いと思います。図 薬剤Aと薬剤Bの平均値棒グラフ薬剤A、Bそれぞれの平均値に示されているエラーバーを見てください。これが誤差(エラー)を表していることはおわかりだと思いますが、その意味は何でしょうか。エラーバー(error bar)は、データの誤差(エラー)の程度を表すためのもので、±標準偏差、±標準誤差(SE)、パーセンタイル(percentile)、95%信頼区間(confidence interval:CI)などが使い分けられています。この図はどちらも同じデータを表したもので誤りではありません。しかし、エラーバーの長さが(1)と(2)で違います。つまり、論文の図あるいは説明文には、エラーバーが何を表しているかを明確に記さなければなりません。では、今回のテーマに戻り、標準偏差と標準誤差(SE)の使い分けについて考えてみましょう。エラーバーに標準偏差を用いるのは、標準偏差はデータのバラツキそのものを示す指標ですから、純粋にデータのバラツキを示したい、あるいは比べたいというときは標準偏差を使うべきです。たとえば、対象者がどのような特徴を持っていたのかを記述するときです。±標準偏差はおおよそデータの2/3が含まれる範囲としてかまいません。±1.96×標準偏差であれば、データのおおよそ95%が含まれます。これらの目安は、データが正規分布に従うときはかなり正確ですが、そうでないときには用いることはできません。身近な例では、人間ドッグ受診後に渡される臨床検査値の正常範囲は、健常人の95%が含まれる区間となっていることはよく知られています。一方、標準誤差(SE)は母集団のことを知るためのバロメーターですので、母集団の平均の区間推定量となります。ですから、母平均の推定をしたい、あるいは比べたいというときは標準誤差(SE)を示せばよいのです。母平均ですから、多くの論文で標準誤差(SE)が用いられているのです。●標準偏差の算出方法(1)個々のデータから平均値を引く。求められた値を「偏差(deviation)」という。(2)個々の偏差を平方する。(「偏差×偏差」)。求められた値を「偏差平方(squared deviation)」という。(3)求められたn例の偏差平方を合計する。合計の値を「偏差平方和(sum of squared deviation)」という。(4)偏差平方和をn数(n例)で割る。求められた値を「分散(variance)」という。(5)分散のルートを計算する。求められた値を「標準偏差(SD)」という。●標準誤差(SE)の算出方法■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション1 母集団、n数、サンプル数、サンプルサイズとはセクション5 標準誤差(SE)とは第4回 ギモンを解決! 一問一答質問3 標準偏差と標準誤差の違いは何か?

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保険薬局は非営利法人にすべきか?【赤羽根弁護士の「薬剤師的に気になった法律問題」】第1回 

最近、保険薬局が国民の保険料や税金を株主に還元することは問題であり、保険薬局は非営利法人に限定すべきとの主張を聞くことがあります。皆さん知ってのとおり、現在、薬局の多くは株式会社です。この指摘は、株式会社が保険薬局を運営していることに対してのものと考えてよいでしょう。よく、株式会社は誰のものかという議論がありますが、法的な「所有と経営の分離」という考えをもとにすれば、株式会社は株主のものと考えるのが一般的でしょう。だからと言って、株主が株式会社を全面的に自由にできるのではなく、取締役の選任ができたり、利益の分配が受けられたりするという意味です。だからこそ、株式会社は誰のものかという議論になるわけですが。株式会社と薬局法人の併存ならアリ?さて、今回は保険薬局が株主に、国民の保険料や税金を還元することについて指摘がありましたが、これは利益の配当が問題にされています。また、会社を清算した場合、残余財産分配の問題もあるかもしれません。ご存じのとおり、病院などを開設する医療法人は非営利とされ、配当は禁止されています。そのため、薬局も同様に非営利法人とすべきとの主張は以前からありました。取締役への報酬支払いであれば、働くことへの対価と見ることができますが、株主への配当に関して、保険料などが使われるのは適切ではないということなのかもしれません。これまでも、非営利で薬局を行う法人を薬局法人などと呼び話題になったことがありました。保険調剤だけに限るのであればそのような考えもわかりやすいですが、一般的な薬局では保険調剤と別に一般用医薬品の販売なども行っていますし、株式会社であるため、その他の事業を行っている場合も多くあります。薬局は、以前から小売りの一面があり、昨今言われる「健康サポート薬局」などの考えが進んでいけば、保険調剤だけでは完結しないでしょう。そう考えると、保険薬局を原則非営利として、医療事業などだけを行う医療法人のように、業務を限定するのは難しいかもしれません。そういう意味では、現在の保険薬局が保険調剤のみを行っているように見られているからこその指摘とも言えそうです。また、実際に、すでにこれだけ多くの株式会社が経営している保険薬局を、すべて非営利にするのはなかなか難しいように思いますし、思い切った規制をすると法的にも問題がありそうので、実現するのは容易ではありません。そのため、すぐに薬局法人などの議論が具体的に開始するとは思えませんが、既存の株式会社は据え置きと認めた上で、今後、法人の一形態として薬局法人なるものが認められる可能性はあるかもしれません。調剤報酬改定では、大手チェーン全体の収益を下げるような動きもあるようですが、営利がだめと言うなら、中小も大手も本来は関係がなく、全保険薬局の問題とも思えます。今後、どれだけ大きな議論になるかはわかりませんが、動きに注目しておいてもよいかもしれません。

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適切なワクチン接種は母子手帳の確認から

 ファイザー株式会社は、2017年12月13~18日、ワクチン接種に対する実態調査アンケートを行い、その結果を示した。 調査の結果、保護者が母子健康手帳(母子手帳)をいつも携帯し、医師との適切なコミュニケーション(母子手帳を見せるなど)をとることで、小児のワクチン接種に適切な状況がもたらされる可能性が示唆された。母子手帳の活用により、小児の感染症予防につながることが期待される。 主な結果は以下のとおり。・Q1.小児の診察時に母子手帳を見せていますか? 対象:1~5歳の小児を持つ母親1万726人 いつも見せている:44.1%(4,733人) 予防接種の時のみ見せている:47.7%(5,118人)「いつも見せている」の回答者は、小児が1歳では60.2%(1,248/2,074人)だが、成長するにつれて減る傾向があり、5歳では37.0%(815/2,202人)まで下がった。・Q2.なぜ診察時に母子手帳を毎回見せていないのですか?(複数回答) 対象:Q1.で「いつも見せている」と回答した以外の母親5,993人 見せてほしいと言われないから:91.9%(5,509人) その他の各回答:10%以下・Q3.肺炎球菌ワクチンの追加接種を実施しましたか?(Yes回答を集計) 対象:ワクチン接種スケジュールを順守できた2~5歳の小児の母親8,467人 母子健康手帳を病院で提示している群(8,119人)のYes回答:94.0% 母子健康手帳を病院で提示していない群(348人)のYes回答:86.0%医療機関で母子健康手帳を見せていないと、ワクチンの追加接種実施率が低い傾向にある。■参考ファイザー株式会社 プレスリリース

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病気があっても働き続けられる職場作り

『事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン』を更新 厚生労働省は、2018年4月24日に『事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン』(2016年2月作成)に、難病に関する留意事項、企業・医療機関連携のためのマニュアルなどを追加・更新したガイドラインを発表した。 このガイドラインは、事業場が、がん、脳卒中などの疾病を抱える患者に対し、適切な就業上の措置や治療に対する配慮を行い、治療と職業生活が両立できるようにするため、事業場における取組などをまとめたもの。「勤務状況を主治医に提供する際の様式例」などの様式例集のほか、支援制度、支援機関の情報、「企業・医療機関連携マニュアル」などが掲載されている。がん、脳卒中、肝疾患に難病を追加 今回、従来の留意事項の疾患である、がん、脳卒中、肝疾患に難病が追加された。「難病」については、「発病の機構が明らかでなく、治療法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなる疾病を指す」と定義し、就労世代に多い主な難病として「潰瘍性大腸炎、クローン病」「全身性エリテマトーデス」「パーキンソン病」を挙げ、疾患概要を説明している。 また、難病に共通してみられやすい症状として「全身的な体調の崩れやすさ-気力・体力の低下、疲れやすさなど」「発熱」「労作時の動悸・息切れ、筋力低下など」を示すとともに、これらに対して本ガイドラインでは、「難病治療の特徴を踏まえた対応」「メンタルヘルスへの配慮」「難病に対する不正確な理解・知識に伴う問題への対応」を企業などに求め、啓発している。■参考厚生労働省 治療と仕事の両立について■関連記事希少疾病ライブラリ 

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何から始める不動産投資?【医師のためのお金の話】第8回

何から始める不動産投資?こんにちは、自由気ままな整形外科医です。前回は、事前に不動産投資手法をしっかり勉強する必要があること、そして、おススメの勉強法についてお話ししました。さて、知識も仕入れたことだし、いよいよ不動産投資を始めてみるか! しかし、ちょっと待ってください。実際には、どのような不動産投資手法を選択するべきなのでしょうか。不動産投資の手法はさまざま不動産投資にはさまざまな手法があります。代表的な投資対象として、中古1棟マンション、新築1棟マンション、区分所有マンション、コインパーキング、築古木造戸建などがあります。これらの物件種類別の投資対象に、立地や銀行融資の有無などを掛け合わせることで、10種類以上の投資手法が確立されています。それぞれの投資手法には一長一短があり、これという正解はありません。Aさんにとってはフルローンでの中古1棟マンション投資が合っているが、Bさんにとっては現金買いでの築古木造戸建投資が望ましいなど、適切な投資手法は各人の目的とバックグラウンドによっても大きく異なります。一般的に、フルローンでの中古1棟マンション投資は、短期間で大きなキャッシュフローを得ることができます。このため、ホームランを狙うサラリーマン大家さんには人気の投資手法です。一方で、区分所有マンションや築古木造戸建投資は、現金買いが基本となります。これらの投資手法は、資金ショートしにくく手堅いものの、資産拡大スピードは遅いので、短期間で結果を出す必要に迫られている人からは敬遠されがちです。不動産投資の目的は明確に不動産投資の目的も、人によってさまざまです。一般的には、下記の5つを目的として不動産投資を行う人が多いです。1)賃料収入(インカムゲイン)目的2)売却益(キャピタルゲイン)目的3)節税対策4)相続対策5)現金の不動産化アーリーリタイアを狙うサラリーマン大家さんは、自らの生活費をまかなうために賃料収入からのキャッシュフローを確保する必要があります。必然的に、フルローンでの中古1棟マンション投資が人気化します。この場合、物件自体の資産価値に注目するのではなく、物件からのキャッシュフローを最大化することを重視します。一方、資産家が相続税圧縮のために、手元資金で不動産を現金買いするケースもあります。この場合は、資産価値が落ちにくい都市中心部の物件を投資対象にします。このような物件は利回りが低いためにキャッシュフローは出にくいですが、目的が相続税対策なので大きな問題にはなりません。では、医師の場合は、何を目的にすればよいのでしょうか?残念ながら“医師”というキーワードでひとくくりにすることはできません。医師の中にも相続対策や節税対策が必要な人もいれば、インカムゲインを目的とする人もいるからです。私の場合は、給与所得の節税対策、およびインカムゲインが目的です。投資を始めるに当たっては、自分の状況を勘案して、目的を明確化することが不動産投資の第一歩です。自分の得意な不動産投資手法を確立しようこのように不動産投資の目的によって、最適な不動産投資手法を選択する必要があります。そして、最初のうちは投資手法を1つに絞ることがポイントです。いろいろな不動産投資手法に目移りしていると、結局どの投資手法も身に付かず、中途半端に終わってしまいがちです。自分に合った投資手法を継続することで、経験値を高めていくことが重要なのです。

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第2回 医業は書く仕事【宮本研のメディア×ドクターの視座】

第2回 医業は書く仕事医師は、相手に何かを伝える職業です。医学知識を駆使して言葉を発し、必要な文章を書き、身体表現を含めて周囲へ伝えながら、臨床や研究に従事しています。とくに臨床医の場合、診療中は患者や家族へ伝える作業がひたすら続きます。病状を聞き取り、治療経過を思考回路に載せながら伝え直す。日々の猛烈な作業量のうち、相手に医療を理解してもらうために伝達のウェイトが高くなります。ともに働く看護師や薬剤師などに対しても、適切な判断や行うべき処置を伝え続けなければいけません。口数が少ない医師でも、責任をもって指示した事実がないと、周囲のスタッフが動き出せない事態が多くあるのではないでしょうか。人に何かを伝えようとした時、聞き手や読み手が何をもって理解するかを、十分に想定しておく必要があります。とくに口頭では、同じ用語やシチュエーションだとしても、伝えるニュアンスや状況が異なれば、違う意味に解釈される可能性が高くなります。けれども、カルテや検査伝票に文字として記す行為は、相手への伝わりやすさを文字によって証明でき、治療経過を通じて、誰からもわかりやすい要素です。書く努力を地道に続けていけば、個性を活かしながら自分の揺るぎないスキルとして磨き上げることができます。私は研修医のとき、受け持ち患者の紙カルテを、A4用紙で毎日1ページほど手書きしていました。細かい文字であらゆる事を順番に書きこみ、SOAPがどんどん膨らんでいきました。今日の事実をちゃんと書き残したいという想いが強かったのです。ところが、私のカルテを読んだ指導医は一言、「これは書き過ぎ・・・」と素っ気ない。入院サマリーでは字数を大きく削るわけですから、日々の経過をただ書きとめているだけでは、病状の重要点がわからないというわけです。「カルテは日記みたいに書くな」というシンプルな指摘は、時間が経ってみると納得できる重要な教訓でした。その後も主治医や当直医として、数え切れないカルテを書きました。余計なことを書かず、でも大切なことは書き漏らさない。記載が簡潔で、治療方針もまとまっている上司のカルテを空き時間に読んでは、そのエッセンスをこっそり学んできました。伝えるという意味で、手書きの場合は、とにかく誰からも判読できる字で書くことも重要です。「読めないカルテは、書いていないのと同じ」という指摘は、1学年上の研修医から教えてもらいました。臨床現場にいると、忙しさを理由に手を抜きたくなりがちですが、きちんとした文字で書くことは判断の正しさを証明する理由にもなります。「あの先生の指示書、字が汚くて読めない」という場合、解読するスタッフや部下のモチベーションも下がります。カルテの翻訳担当者が必要という場合、何も書いていないのと同じです。もちろん喋る場合でも色々な注意が必要ですが、口頭で聞いた内容は部分的な記憶になりがちで、雰囲気や意図は残りにくい。口頭では脳内で要点だけが記憶に収納され、完全には再現されません。若手時代のカルテを読み直すと、自分自身の変化を実感するだけでなく、当時の喋り方や職場の雰囲気も思い出すでしょう。医師は医業を行うために相手へ情報を伝えていく中で、「過去の自分自身に対しても何かを伝えようとしている」と、私は考えています。こうしてケアネットに加わり、メディア側の仕事をしていると、医師として独自に培った知見が役立つ場合が多い。臨床医としての雑多な経験が、ビジネスでもおおいに役立っています。苦労してきた過去の自分にも、先輩として言い聞かせているような感覚があるのです。昔の自分が書き残した文章が残っているのであれば、再読してみることをお勧めします。気が付かなかった“何か”を、今の自分であれば理解することができるはずです。迷いや不安を乗り越えた経験を思い出し、現在までのキャリアに至った道を再認識できることでしょう。若手医師であれば、これからの仕事において、書き残すことの重要性をとくに意識しましょう。電子カルテが普及してコピペが容易な労働環境になりましたが、本質的に伝える仕事であるのを軽視しないようにしてほしいと思います。コピペを多用して自らの意見で書き残さないことを繰り返していると、後になって院内での個人的評判に影響することも考えられます。短い時間内で一気に情報をアウトプットできるのは、厳しい鍛錬を経た医師の素晴らしい特性です。そして自然と身に付くより、努力して獲得するほうが後日の成長に繋がるはず。こうしてメディアの世界から医業を振り返ると、書くことを含めた医師の総合スキルは、ビジネスの世界と比較しても高度です。皆で見直すことで、自分の確かな足跡を納得できる良いきっかけになるのではないでしょうか。今日のカルテ、どのように記載しましたか?

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無過失補償制度は医療萎縮を止めるか

 2018年3月25日、第8回 医療法学シンポジウム(第2回 稲門医師会・稲門法曹会合同シンポジウム)が、都内において開催された。シンポジウムでは「無過失救済補償制度はどうあるべきか~産科医療だけでなく~」をテーマに、前半では現状における無過失補償制度の問題点や課題、今後の制度設計について、後半では医療者、法曹関係者が全体討論として議論を交わした。金銭補償だけでは語れない医療事故後のフォロー はじめに杉原 正子氏(東京医療センター精神科)が、今回のテーマを選定した理由を説明。産科医療補償制度を例に挙げ、現状では経済的な補償がなされた後、患者や家族が置き去りにされていると指摘。支給に関しては、「疑わしきは支給する」というスタンスで穏やかな支給が望まれると同時に、患者や家族に必要とされるものは、経済的な補償に加え、診療やケアができる医療施設の情報や最新の医療情報だと語った。そして、日本の医療事故への提言も含め、実現すべき救済とは何かを学際的に対話していきたいと期待を寄せた。 次にサリドマイド薬害事件の当事者(サリドマイド児)として、患者の視点から増山 ゆかり氏が「患者にとって救済とは何か?」をテーマに、事件後の患者が置かれている立場やその思いを語った。1958年に発生したサリドマイド薬害事件から60年が経過し、当時障害を持って生まれた胎児も平均で55歳を超え、当時は予見できなかった影響に悩まされている。具体的には、身体的欠損からくるさまざまな社会的制限や差別のほか、健康な人と比較すると、解剖的にも循環器系や腎臓系に問題を抱え、加齢も10年程度早いという。今でも治療を断られることもあり、患者は金銭補償だけでは、自立的生活を成り立たせることは困難だと訴えた。そして、日本の医療の長所を認めつつも、「患者の意見を医療者が聞き、こうした薬害の被害に向き合うことが大切ではないか」と提言を行った。 次に大磯 義一郎氏(浜松医科大学医療法学 教授)が「無過失補償制度の意義と目的」をテーマに、現在の医療事故発生とその後の医療裁判の問題点を挙げ、医療事故の加害者の処分だけでは、事故の真相究明、再発防止、被害者(患者とその家族)の救済にならないことを指摘。再び医療萎縮が起きないように、裁判のような紛争手続きではない制度設計の必要性を述べた。とくに金銭賠償では解決できない被害者の癒しや加害医療者の救済、科学的な事故の再発防止などは個別に考えていく問題であり、その中で個々の無過失補償制度の有無も決めていくことが重要だと語った。諸外国の補償制度と医療事故への対応 次に坂根 みち子氏(坂根Mクリニック 院長)が「日本とスウェーデンの医療事故調査制度と無過失補償」について説明。スウェーデンでは医療事故が発生した場合、患者やその家族は、医療裁判ではなく「地方の苦情委員会」「医療福祉監査局」など7つルートで、医療事故への対応や補償を訴えることができると説明した。基本的に事故の再発防止を目的に、加害医療者の責任追及ではなく双方が対話できる場を整え、そのような場の内容が臨床現場にフィードバックされ、さらなる事故防止に役立てられているという。翻ってわが国の制度では、臨床現場に医療事故情報をフィードバックする機会も機能も十分ではないため、現状では医療安全に寄与していないと指摘し、「医療事故調査制度の制度1本化」「現場へのフィードバック機能」「早急な無過失補償制度の構築」など7つの提言を行った。 次に岩田 太氏(上智大学法学部 教授)が「医療事故と制裁をめぐる国際比較」をテーマに、ニュージーランド、スウェーデン、フランス、英国とわが国の医療事故後の対応を解説した。ヒューマンエラーは必ず起こることを前提に、医療過誤処罰は、刑事ではなく別の形で行うべきという立場で、諸外国の事例を説明した。ニュージーランドでは、広範な医療事故補償制度があり、訴権放棄や刑事訴追がほぼないため医師の協力は得やすいが、金銭賠償で解決できない課題もあるという。フランスでは、補償認定には一定の労働能力の喪失という認定基準があり、その幅も狭いために私訴も多い。英国では、民事裁判で賠償の有無などが判断されており、医療安全はNational Health Service (NHS)が集中管理しているが、近年裁判数は急増していると、各国の状況が紹介された。同氏は、今後のわが国での問題事例への対処として、行政処分の拡充や医療事故調査制度の充実を例に提案を行った。 次に大滝 恭弘氏(帝京大学医療共通教育研究センター 准教授)が、「無過失補償制度へ向けて」をテーマに制度設計に向けた論点整理を行った。わが国の無過失補償制度を概観し、補償範囲、費用負担、過失認定、事故調査制度との関連などが、複雑に絡んでいることを指摘。たとえば、予防接種健康被害救済制度は、有過失関係なく救済されるほか、費用は国が負担している。しかし、こうした全面補償の制度は悪用もされやすく、制度の設計の難しさを示唆した。今後、無過失補償制度を作るに当たっては、前述の設計要件だけでなく、(かなり難しいが)患者の訴訟対応をどう盛り込むかが超えるべき壁と説明した。今も不足している医療者からの情報提供 後半の全体討論では、はじめにわが国の医療の問題点として、医療者側からの情報提供が不足していることが挙げられ、これらが医療不信の一因になっていると指摘された。たとえば、医師からの医療事故レポートなどは、日本医療機能評価機構へ上がっていかず、ほとんどが医師以外の医療者であること、また、問題の薬剤に関しても医薬品医療機器総合機構の資料からわかるはずだが、活用されていないのが現状で、事故の減少につながらないなど情報流通の問題も論じられた。補償制度を作るのであれば、患者の安全とリンクした制度が必要と提案が行われたほか、行政の問題として、わが国は医療の安全対策や予防に対して予算がつかないという点があり、問題のある薬剤が判明した場合、その回収が遅いという指摘もあった。そのほか、サリドマイドを例にすると、わが国では障害者が自立的生活を送ることが難しく、金銭補償とは別にフォローする制度を海外のように構築してほしいとの声もあった。日本の医療について、小手先だけの対応ではなく全体のシステムを変えないと、医療事故防止や医師不足の解決にはならないなど、深い議論が交わされた。

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高価な新薬が安い従来薬に敗れた日:高尿酸血症治療薬フェブキソスタットの屈辱(解説:桑島巌氏)-850

 心血管リスクが高い例では痛風を合併することが多く、以前は尿酸生成抑制薬アロプリノール(商品名:ザイロリック、サロベール、アロシトールなど)が尿酸低下効果も確実でありよく処方され、現在ではすでに後発品も登場している。 しかし、2011年に新薬フェブキソスタット(商品名:フェブリク)が登場すると、新薬に乗り換える臨床医が急増した。アロプリノールの尿酸低下作用は確実でしかも廉価であったにもかかわらず、なぜ薬価の高いフェブリクの処方が増えた理由については常に疑問に感じており、私自身はフェブリクを処方した経験はほとんどない。 そこにきて今回、フェブリクの心血管疾患の有害事象に対する非劣性を従来薬アロプリノールと比較、証明する目的で行われたCARES試験の驚きの結果が発表された。 痛風を合併している心血管高リスク症例6,190例を対象として、フェブキソスタット治療群とアロプリノール群にランダム化され、中央値32ヵ月追跡した。その結果、複合心血管イベントに関してはフェブキソスタットのアロプリノールに対する非劣性は認められたものの、2次エンドポイントである総死亡、心血管死のリスクは有意に高かったという結果であった。 フェブキソスタットは日本の帝人ファーマによって開発され、米国では武田薬品によって発売されているが、本試験は米国Takeda Development Center Americasの支援によって行われた試験である。 本試験のlimitationとして両群とも途中脱落例が異常に多いことが挙げられているが、その理由は明らかではない。両群における脱落率に差はないという。 この結果は非常に重大であり、高リスク合併例での本剤の処方について対応が必要だろう。

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013)お花見での急患の思い出【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第13回 お花見での急患の思い出しがない皮膚科勤務医デルぽんです☆いや~今年の桜は早かった~。東京では4月のはじめに早々に散ってしまいましたが、毎年お花見の季節になると、思い出す患者さんがいます。それは、まだ大学医局時代、形成外科も兼ねた皮膚科当直をしていたときのこと。お花見会場から顔面外傷の急患が運ばれてくるというので、「きっとまた、酔っぱらいだろう…」と思っていたのですが、違いました。救急ベッドのカーテンを開けてみると、そこには左目の端から右目の端までがパックリと割れてしまったオジサンが。よくよく話を聞いてみると、お花見中に突然、誰かの飛ばしていたラジコンが顔面に突っ込んできたのだとか…なんとも気の毒な話です。傷は深く、かなり念入りに縫いました。ラジコンの破壊力、恐るべし!後日、元気になったオジサンが、外来にお花を届けてくれました。お花見の季節になると、このオジサンのことを思い出します。世の中、いつなんどき怪我をするか、わかりません!飛んでくるラジコンには注意しようと思います☆ではでは!

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日本人統合失調症患者に対する個別作業療法の多施設ランダム化比較試験

 個別作業療法(IOT:individualized occupational therapy)プログラムは、急性期統合失調症入院患者の積極的な治療参加を促進し、認知機能やその他のアウトカムを改善するために開発された心理社会的プログラムである。このプログラムは、動機付け面接、自己モニタリング、個別訪問、手工芸活動、個別心理教育、退院計画で構成されている。信州大学のTakeshi Shimada氏らは、日本の精神科病院に最近入院した統合失調症患者のアウトカムに対する、集団作業療法(GOT:group occupational therapy)プログラムにIOTを追加した際の効果について、多施設オープンラベル盲検エンドポイントランダム化比較試験を実施し、検討を行った。PLOS ONE誌2018年4月5日号の報告。 統合失調症患者は、GOT+IOT群またはGOT単独群にランダムに割り付けられた。ランダム化された136例中129例がintent-to-treat(ITT)集団に含まれた。その内訳は、GOT+IOT群66例、GOT単独群63例であった。アウトカムは、ベースライン時および退院時または入院3ヵ月後に評価した。評価項目は、統合失調症認知機能簡易評価尺度日本語版(BACS-J)、統合失調症認知評価尺度日本語版(SCoRS-J)、社会的機能尺度日本語版、機能の全体的評定尺度(GAF)、内発的動機付け尺度日本語版(IMI-J)、服薬アドヒアランス尺度(MMAS-8)、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、患者満足度アンケート-8日本語版(CSQ-8J)とした。 主な結果は以下のとおり。・線形混合効果モデルによると、GOT単独群と比較し、GOT+IOT群で有意な効果が認められた項目は、以下であった。 ●言語記憶(BACS-J)p<0.01 ●作業記憶(BACS-J)p=0.02 ●言語流暢性(BACS-J)p<0.01 ●注意(BACS-J)p<0.01 ●複合スコア(BACS-J)p<0.01 ●興味/楽しみ(IMI-J)p<0.01 ●価値/有用性(IMI-J)p<0.01 ●知覚選択(IMI-J)p<0.01 ●IMI-J総スコア p<0.01 ●MMAS-8スコア p<0.01・GOT+IOT群は、GOT単独群と比較し、CSQ-8Jの有意な改善が認められた(p<0.01)。 著者らは「今回の結果より、IOTプログラムは、統合失調症患者の認知機能およびその他のアウトカムを改善するために有用であり、実施可能である」としている。■関連記事統合失調症への集団精神療法、効果はどの程度か統合失調症への支持療法と標準的ケア、その差は統合失調症患者のワーキングメモリ改善のために

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POEMS(クロウ-深瀬)症候群

1 疾患概要■ 概念・定義POEMS症候群の名称は、polyneuropathy、organomegaly、endocrinopathy、M-protein、skin changeの頭文字に由来する。「クロウ-深瀬症候群」、「高月病」とも呼ばれる。名称のとおり、多発ニューロパチーを中核症状とし、肝脾腫などの臓器腫大、内分泌異常、皮膚変化(色素沈着、剛毛、血管腫など)という多彩な症状を呈し、M蛋白を伴う全身性の疾患である。症状は多彩であるが、その病態基盤は形質細胞異常(plasma cell dyscrasia)とサイトカインである血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)の上昇であると考えられている。多発ニューロパチーが中核症状となることが多い一方で、plasma cell dyscrasia由来の疾患でもあり、神経内科または血液内科で診療することが多い。2015年1月に、新規に指定難病の1つとなった。■ 疫学わが国で行われた2003年の全国調査に基づく推定有病率は、10万人当たり0.3人であり、いわゆる希少疾病である。しかし、その多彩な症状ゆえに、診断が困難な例も少なくなく、実際の有病率はもう少し高い可能性がある。平均発症年齢は50代であるが、30代の発症もまれではない。男性に多い。■ 病因上述のごとく、POEMS症候群の病態の中心はplasma cell dyscrasiaとVEGFの上昇であると推定されている。VEGFは血管新生作用以外に強い血管透過性亢進作用を持ち、本症候群で特徴的に認められる浮腫、胸腹水などの所見とよく合致する。しかし、plasma cell dyscrasiaとVEGF上昇がどのように関連するかについては、現時点では不明である。また、多発ニューロパチー、内分泌異常、皮膚異常などの症状が生じるメカニズムについても明確になっていない。VEGF上昇とともに、TNFα、IL6、IL-12を含む複数の炎症性サイトカインの上昇も確認されており、複雑な病態に関与している可能性が高い。■ 症状POEMS症候群で認められる臨床症状として頻度が高いのは、多発ニューロパチー、浮腫、皮膚変化、リンパ節腫脹、女性化乳房である。典型的な多発ニューロパチーは、下肢優位の四肢遠位のしびれと筋力低下を呈する。重症度は症例により異なり、アキレス腱反射の低下のみの症例から重度の四肢麻痺の症例まで存在する。また、数ヵ月の経過で、歩行に介助が必要になるまで進行する例が多い。通常、浮腫は下腿以遠に目立つ。進行例では、明確な圧痕を残すほど顕著となり、腹部、上肢、顔面にも浮腫が出現する。皮膚変化は、色素沈着、剛毛の頻度が高い。色素沈着は独特のやや赤味を帯びた褐色を呈する(図)。剛毛は前腕や下腿に目立つ。画像を拡大する■ 予後POEMS症候群の機能・生命予後は、適切な治療が行われない場合、不良である。機能予後は、多発ニューロパチーの重症度に依存する。無治療では過半数の症例が、発症1年以内に杖歩行となる。また、1980年代は適切な治療が行われなかったため、平均生存期間は33ヵ月と報告されている。近年、疾患の認知度向上による診断技術の向上、ならびに骨髄腫治療の本症候群への応用による治療の進歩で、予後は大幅に改善しつつある。しかし、急速な悪化を認めうる疾患であり、また多臓器障害が生じることも少なくないので、治療方針検討や経過観察には、慎重を期す必要がある。低アルブミン血症、初回治療への反応性不良、高齢(50歳以上)、肺高血圧、胸水、腎機能障害などが、予後不良因子として挙げられている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)POEMS症候群の診断は診断基準に基づいて行われる。しかし、類似の診断基準が複数あり、いずれも感度・特異度について検討されていないのが、現在の問題点である。国際的に最も代表的な基準は、2012年のCochrane database systematic reviewで採用されているものである。しかし、わが国では、下表の診断基準が指定難病の認定に使用されている。本診断基準の特徴は、単クローン性形質細胞増殖が検出できない例であっても、積極的に診断できる点において優れている。そのため、日常診療で運用する上では、下表の診断基準を用いる方が、診断感度も高く、利便性にも優れる。表 POEMS症候群の診断基準●大基準多発ニューロパチー血清VEGF上昇(1,000 pg/mL以上)M蛋白(血清または尿中M蛋白陽性 [免疫固定法により確認] )●小基準骨硬化性病変、キャッスルマン病、臓器腫大、浮腫、胸水、腹水、心嚢水、内分泌異常*(副腎、甲状腺、下垂体、性腺、副甲状腺、膵臓機能)、皮膚異常(色素沈着、剛毛、血管腫、チアノーゼ、爪床蒼白)、乳頭浮腫、血小板増多(1)Definite:大基準3つ+小基準 少なくとも1つ(2)Probable:大基準2つ+小基準 少なくとも1つ*糖尿病と甲状腺機能異常は有病率が高いため、これのみでは本基準を満たさない。引用: Misawa S, et al. Clin Exp Neuroimmunol. 2013;4:318-325.以下に、検査、診断に際しての注意点を列記する。1)多発ニューロパチー明確な自覚症状を認めない場合もあり、神経伝導検査によるニューロパチーの有無の検索と性状の確認は必須である。原則は、本症候群のニューロパチーの性状は脱髄と二次的軸索変性である。非常に軽症例では、ごくわずかの異常しか認められない場合もある。2)単クローン性の形質細胞増殖血液・尿のM蛋白のスクリーニングにより、大部分の症例では検出可能である。しかし、POEMS症候群ではM蛋白の量は非常に微量のため、免疫固定法による確認が必須である。M蛋白のサブクラスの多くはIgGまたはIgAのλ型である。3)VEGF外注検査会社で測定可能である。VEGF値の測定は、診断確定、治療効果判定に非常に有用であるが、現時点では保険適用にないことが大きな問題点である。血清・血漿のいずれで測定すべきかの結論は出ていない。しかし、指定難病の認定は血清で行われている。外注検査会社に「血清で測定」の指示にて依頼する。4)骨病変硬化性変化が一般的である。しかし、溶骨性変化や混合性変化を認めることもある。胸腹水の検索目的で施行した胸腹骨盤部のCT検査の骨条件で胸骨、椎体、骨盤などの硬化性病変をスクリーニングすることが可能である。さらに精査を進める際には、PET検査が有用である。5)内分泌障害性腺機能異常、甲状腺機能異常、耐糖能異常、副腎機能異常などの頻度が高い。スクリーニング検査として、LH・FSH・E2(エストラジオール)・テストステロン・TSH・FT3・FT4・血糖・インスリン・ACTH・コルチゾールなどの検査を行う。鑑別診断として問題となりやすいのは、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy:CIDP)、ALアミロイドーシスである。POEMS症候群の進行例では、浮腫・皮膚障害をはじめ、多彩な典型的症状を伴うため、鑑別が問題となることは少ない。しかし、発症初期で臨床症状や検査所見が揃わない場合には、ニューロパチーの臨床および神経伝導検査所見を詳細に比較することにより、鑑別が可能となる。CIDPの典型例の臨床症状は、左右対称性のしびれと近位筋を含む筋力低下であり、四肢遠位優位のしびれと筋力低下を呈するPOEMS症候群とは臨床症状が異なる。しかし、CIDP、POEMS症候群とも、神経伝導検査は脱髄所見を示すこと、CIDPのほうが有病率・認知度ともに高いことが影響し、POEMS症候群がCIDPと初期診断される確率は高い。典型的CIDPの多くの症例では、ステロイド、免疫グロブリン、血漿交換などの治療に反応する。したがって、治療抵抗例では診断の再考が必要な場合がある。ALアミロイドーシスは、POEMS症候群と同様、四肢遠位優位のしびれと筋力低下を呈する。しかし、神経伝導検査では軸索変性所見を呈するため、POEMS症候群とは異なる。その他、大量の胸水や腹水単独で発症する例もあり、原因が特定できない場合には、本症候群を鑑別疾患の1つとして挙げることも考慮する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)POEMS症候群の症状は多彩であるが、治療のターゲットはplasma cell dyscrasiaである。そのため、近年は骨髄腫の治療法が本症候群に応用されている。治療方針の原則は、若年者では自家移植、高齢者では免疫調整薬が第1選択とされてきた。移植適応年齢の上限は、65歳から70歳へと、近年引き上げられつつある。自家移植に伴う関連死や再発のリスクが明確になりつつあることを考慮すると、若年軽症例、とくに30代の患者では、リスクとベネフィットおよび長期にわたる疾患コントロールの観点から、移植が第1選択とは必ずしもいい切れなくなってきている。そのような症例では、免疫調整薬が第1選択となる可能性がある。以下に、現在有効であると考えられている治療法について概説する。しかし、いずれも保険適用がないのが、問題点となっている。■ 自己末梢血幹細胞を伴う高用量化学療法通常、骨髄腫とほぼ同様の方法で行われている。自己末梢血幹細胞採取は、顆粒球コロニー刺激因子単独またはシクロホスファミド(商品名:エンドキサン)併用で行われる。続いて、高用量のメルファラン(同:アルケラン)による前処置後に幹細胞移植が行われる。最近では、移植前にサリドマイド(同:サレド)、レナリドミド(同:レブラミド)やボルテゾミブ(同:ベルケイド)などの前治療を行い、病勢をコントロールしてから、自家移植へ進むこともある。移植後、VEGF値は約1~3ヵ月で速やかに低下し、引き続き臨床症状全般の改善が生じる。移植後の再発に関する報告も増えつつあり、無増悪生存率は1年で98%、5年で75%とされる。再発後の治療の選択肢としては再移植、サリドマイドなどの免疫調整薬などが選択されることが多い。■ 免疫調整薬現時点における免疫調整薬の選択肢は、サリドマイド、レナリドミドである。サリドマイド、レナリドミドとも、やはり骨髄腫と同様の用法・用量で使用されており、デキサメタゾン(同:レナデックス、デカドロンなど)が通常併用される。ポマリドミド(同:ポマリスト)は、レナリドミドの次に開発された免疫調整薬であるが、本症候群への使用の報告はまだない。サリドマイドは、本症候群における有効性が、プラセボ対照二重盲検ランダム化群間比較試験で、唯一示されている薬剤である。前記試験は、わが国において医師主導治験として実施されており、適用取得に向けて準備中である。レナリドミドについても、単群オープン試験が報告されており、やはり有効性が示されている。副作用として、サリドマイドでは徐脈、末梢神経障害などに、レナリドミドでは骨髄抑制に、とくに注意が必要である。若年軽症例では、現時点では自家移植ではなく免疫調整薬を選択しても、将来的には自家移植の適応となる可能性がある。その際には、レナリドミドの長期使用により、幹細胞採取が困難となる可能性があるため、長期的な展望の下に、薬剤の選択と治療期間の検討を行う必要がある。■ プロテアソーム阻害薬骨髄腫治療薬として主要な位置付けとなっているプロテアソーム阻害薬も、POEMS症候群に有効な可能性がある。本症候群においては、ボルテゾミブの有効性についての症例報告が集積されつつある。臨床試験の報告はない。カルフィルゾミブ(同:カイプロリス)については、1例の報告のみで、神経症状の安定化が認められたとされる。イキサゾミブ(同:ニンラーロ)については、現在、米国で臨床試験が進行中である。用法・用量は、骨髄腫と同様に使用されることが多い。しかし、プロテアソーム阻害薬の注意すべき副作用として、末梢神経障害がある。そのため、投与中は末梢神経障害の発現に注意しつつ、投与間隔の延長や治療の中断を考慮する。ボルテゾミブに関しての報告が最も多く、効果の発現が免疫調整薬と比較し、速やかな可能性がある。亜急性進行を示す例において、選択肢の1つとなる可能性がある。4 今後の展望現在、骨髄腫治療薬は、早いスピードで開発が進んでいる。これまでの免疫調整薬・プロテアソーム阻害薬の本症候群における有効性を鑑みると、新規薬もおそらく有効である可能性が高い。そのため、本症候群に応用できる選択肢が、今後も引き続き増加することが予測される。現時点では、本症候群における新規治療の試みは、希少かつ重篤な疾患であるがゆえに、1~数例の報告が主体である。しかし、サリドマイドの本症候群への適応拡大のために行われたランダム化群間比較試験のように、今後は適切な臨床試験を可能な限り行い、エビデンスを積み重ね、治療戦略を構築する試みを継続すべきである。治療の進歩に伴い、本症候群の認知度は確実に向上しており、早期診断・治療の加速により、予後は明らかに改善しつつある。また、稀少疾病の新規治療開発を加速させる手段の1つとして、本症候群の症例登録システムも構築されている。全国に散在している症例の情報を集積し、新規治療の有効性や予後について明らかにすることが目的である。さらに、未来の新規治療薬の臨床試験においては、適応となりうる患者に迅速に情報を届けることも、もう1つの主要な目的である。一方で、診断・病勢のマーカーとなるVEGF測定や有効とされる新規治療が、いまだ1つも保険適用とされていないことが、すべての患者さんが、いずれの医療機関でも標準的な診療を受けることへの大きな障壁となっている。このような問題点に関しても、今後の解決が期待される。5 主たる診療科神経内科または血液内科 ※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター クロウ・深瀬症候群(一般利用者と医療者向けのまとまった情報)千葉大学大学院医学研究院 神経内科学 J-POST trial(医療者向けのまとまった情報)千葉大学大学院医学研究院 神経内科学 患者登録システム(一般利用者と医療者向けの症例登録の窓口)患者会情報POEMS症候群 サポートグループ(本症の患者および家族の会)1)Kuwabara S, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012;6:CD006828.2)Misawa S, et al. Clin Exp Neuroimmunol. 2013;4:318-325.3)Dispenzieri A. Am J Hematol. 2014;89:214-223.4)Misawa S, et al. Lancet Neurol. 2016;15:1129-1137.5)Jaccard A. Hematol Oncol Clin North Am. 2018;32:141-151.6)Nozza A, et al. Br J Haematol. 2017;179:748-755.7)Mitsutake A, et al. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2018.[Epub ahead of print]公開履歴初回2015年07月28日更新2018年04月24日

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【GET!ザ・トレンド】小さじ10分の1の血液で、アルツハイマー病前臨床段階でのアミロイドβを検出(1)

「物質をレーザー照射によりイオン化(電荷を付加)する」技術(MALDI)と「真空中での飛行時間が質量によって異なる性質を利用し、物質を特定する」技術(TOF)を組み合わせた「MALDI-TOF*」。この質量分析法が、0.5mLの血液を用いるだけで、アルツハイマー病の前臨床段階から、脳内に蓄積するアミロイドの状態を推定することを可能にした。研究はNature誌で2018年2月に発表され、大きな話題となった。質量分析の研究(ソフトレーザー脱離イオン化法)で、2002年のノーベル化学賞を受賞した、島津製作所シニアフェロー(田中耕一記念質量分析研究所 所長)田中 耕一氏に、この発表内容について聞いた。*MALDI-TOF:matrix-assisted laser desorption ionization time-of-flight今回確立したアミロイドβの検出方法の概要をご紹介ください。一言でいうと、質量分析という高感度な方法を用いて、微量の血液0.5mLで、アルツハイマー病の原因といわれているアミロイド関連ペプチドを検出する方法です。0.5mLというと、だいたい小さじ10分の1に当たります。画像を拡大する抗体ビーズ法でAβ関連ペプチドを取り出す脳内で作られたアミロイドβ(Aβ)関連ペプチドが、血液中に漏出していることは以前から報告されていました。しかし、血液中には非常に多種多量のタンパク質やペプチドがあり、その中から極めて微量しかないAβ関連ペプチドの検出は、かなり難しい。草原の中から珍しい種子を探すようなものです。Aβ関連ペプチドの検出には、従来抗体を用いた質量分析(免疫沈降質量分析:IP-MS)が使われていましたが、精度は不十分でした。そのような中、当研究室の金子 直樹(島津製作所 田中耕一記念質量分析研究所 アプリケーショングループ 主任)が、Aβ関連ペプチドと結合する抗体を数多く付けた酸化鉄のビーズを用いた前処理方法(抗体ビーズ法)を大幅に改良し、Aβ関連ペプチドのみを血液から取り出すことに成功しました。その抗体ビーズからAβ関連ペプチドを分離して、マトリックス(イオン化補助剤)を添加し、レーザー照射でイオン化して、真空中の飛行時間からペプチドの質量を測定するのです。その結果、従来は存在すらわかっていなかったものも含め、22種類のAβ関連ペプチドが検出されました。ビーズ抗体に付着したAβ関連ペプチドを引き寄せ、取り出す原理(解説:田中 耕一氏)そこで検出されたAβ関連ペプチドから新たなバイオマーカーが発見されたわけですね?Aβ関連ペプチドとして、すでにAβ1-40とAβ1-42が知られていました。当初はAβ1-42の絶対量がバイオマーカーとして有用だと思っていたのですが、それより良い結果を示すものがありそうだと、この研究で新たに発見されたAβ関連ペプチドAPP* 699-711に着目したのです。Aβ1-42はアミロイド生成の原料となるため、血液への漏出が減少します。一方、Aβ1-40、APP 699-711は、血液への漏出はほぼ一定の割合です。この性質を利用し、APP 699-711/Aβ1-42のペプチド比からアミロイド蓄積の有無を高い精度で判別することができました。研究成果は2014年に発表しています。画像を拡大するその後、予備研究を行い、APP 699-711/Aβ1-42にAβ1-40/Aβ1-42を組み合わせた2つのペプチド比による複合バイオマーカーで、さらなる精度を証明したのが今回の発表です。有用性は、日本とオーストラリアの計373例のサンプルにおけるAβ蓄積について、PET画像判定と血漿の質量分析の結果を、ブラインドで検証しました。PET画像による脳内Aβ蓄積陽性・陰性例に対するROC解析のAUCが0.967、PET画像との正診率が約9割という良好な結果を示しました。従来はPETや脳脊髄液検査という負担の大きい検査が必要でしたが、質量分析によって、0.5mLの血液を用い、脳内Aβの蓄積量を前臨床段階から推定できました。*APP(Amyloid Precursor Protein):アミロイド前駆タンパク質今回の検出方法の確立までに苦心されたことは?抗体ビーズ法でAβ関連ペプチドの取り出しに成功し、血液バイオマーカーの共同研究を行った金子 直樹氏まず1つは、今までお話しした、バイオマーカー候補の発見までです。次は、臨床情報が付帯している検体を持っている方と組むことでした。弊社の金子が前処理方法を開発し、道具はそろっていたものの、判定に使えるかどうかかわからないという状態でした。医学界とのコミュニケーションが十分ではなかったので、適切なパートナーを探せなかったのです。そんな時、国立長寿医療研究センターの柳澤 勝彦先生とお会いできました。柳澤先生とは進む方向が一緒だったので研究もうまくいき、2014年の発表につながったと思います。さらに、海外とも一緒に研究しようという話になり、Nature誌で発表した今回の研究に広がっていきました。本研究のアルツハイマー病治療への活用についてお聞かせください。画像を拡大する現時点ではあくまで可能性の段階ですが、応用としては、3つ考えられます。1つ目はアルツハイマー病の根本治療薬の開発です。現在、アルツハイマー病を前臨床期から見分けられるのはアミロイドPETあるいは脳脊髄液検査だけです。コストも高く受診者への侵襲度も高くなります。私達の方法であれば、低コストかつ低侵襲で超早期のアミロイド蓄積度合いが推定可能です。現在の治療は、認知障害や諸症状が現れてから介入される場合がほとんどであり、アミロイドが完全に蓄積する前の状態がわかれば、根本治療薬開発が容易になります。2つ目は認知症の鑑別への応用です。たとえば、脳内のアミロイド蓄積を血液で推定することで、アルツハイマー病とその他の認知症を見分けることが容易になると聞いています。3つ目は超早期診断への応用です。アミロイドがたくさん蓄積する前の状態が見つけられれば、将来、治療や予防法の開発が伴うことで、早期治療や発症予防に活用できると思います。今後、医療分野において挑戦したい研究、疾患領域は?質量分析は、特定かつ微量な物質だけの検出もできます。それは、様々な病気の早期の状態を見る準備ができた、ということです。フェニルケトン尿症を含む新生児マススクリーニング検査や、微生物の同定など、臨床現場でもすでに活用されています。解決すべき課題はいくつもありますが、今後は、心臓を含む内臓疾患や様々ながんなどについても、少量の血液で早期に診断できるようになるかもしれません。この研究成果をサービスとして提供する予定はありますか?治療方法が十分ない現段階で検査として用いると、アルツハイマー病の危険性だけを発症する約20年も先んじて示唆することになってしまいます。治療薬や予防的介入が確立するまでは、一般に幅広く行う検査としては用いないほうが良いと思います。研究成果は当面、大学や製薬会社などからの受託分析で、創薬やアルツハイマー病のメカニズムの解明などの基礎研究に提供することとしています。実際、日米欧の様々な公的機関や企業から問い合わせをいただいています。

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