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第19回 意識消失発作の症例から学ぶ脈拍の異常1 【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回は脈拍の異常を来した患者さん2例を紹介します。脈の乱れは「不整脈」といわれ、その不整脈が徐脈であっても頻脈であっても、患者さんの状態が「不安定」であるときに急を要します。徐脈や頻脈が認められた時、どのような点に気を付けて患者さんと接することがポイントになるでしょうか?症例を通してシミュレーションしていきましよう。プロローグ本日あなたは施設に内服薬を届けに来ています。「この前、低血糖で入院になったEさんは大丈夫かしら...」そう、今日は前回、低血糖による意識障害のため入院になったEさんの入所している施設に来ています。Eさんは退院後、いつも通り元気にレクリエーションに参加していました。「よかった(笑)」あなたは少しホッとしました。さて、今回は内服薬を届けに来ただけではありません。先日、意識消失発作を来したFさんの件もあり、嘱託の医師・看護師を交えて、施設職員との勉強会が開かれることになり、その時の状況をよく知っているあなたも参加することになったのです。再び、患者さんFの場合勉強会にて(第18回で紹介したFさんです。あの日、あなたが体験し本人から聞いたことをプレゼンテーションしています)72歳、女性。普段から元気な方で特に既往歴はありません。2回ほど、失神したことがありますが病院を受診しておらず、常用薬もありませんでした。心臓突然死の家族歴はありません。あの日、施設に入所している知人に会いに来たところ、面会の最中にフラッとする感じがありました。不安に思い帰宅しようとして歩行中に、意識消失発作を来し転倒しました。意識消失の時間は、(あのときは長く感じましたが)助けを呼んでいる間に回復したので、数十秒から1分程度と考えられます。痙攣はありませんでした。意識が回復した後にFさんから聞いた話では、前兆なく意識をなくしたようです。あなたがそう話し終えると、医師から、その後救急車で病院を受診して、洞機能不全症候群の診断でペースメーカーの治療となりましたと、追加の報告がありました。心臓の刺激伝導系「心電図」という名前がある通り、心臓は電気が流れて動いています〈図1〉。まず、「洞結節」という右心房の上の方にある部分で電気が起こります。そして心房を通って心房筋が収縮し、心房と心室の間にある「房室結節」という中継地点に到達します。さらに「ヒス束」、「右脚と左脚」にわかれ、最終的に「Purkinje(プルキンエと読みます)線維」を通って心室筋へと電気が流れていき心室が収縮します。これらの電気的興奮が伝わる特殊な心筋の経路を刺激伝導系と言います。「洞結節」では1分間に60〜100回の頻度で 規則正しく電気活動が起こりますから、正常な心臓ではこの60〜100回/分 が心拍数ということになります。ちなみに、心拍数というのは心臓の拍動の数ですが、脈拍数は橈骨動脈など末梢血管での脈の回数です。脈拍数が1分間に60回未満である場合を徐脈と言い、100回以上のとき頻脈と言います。徐脈の原因徐脈となる原因は、大きく分けて2つあります。洞結節で発生する電気信号が少なくなった場合と、洞結節からの電気信号が心室筋に伝わらなくなった場合です。前者を洞機能不全症候群といい、後者を房室ブロックと言います。(これらの疾患もそれぞれ原因がありますが、ここでは割愛します)図2は洞機能不全症候群の患者さんの心電図です。*印が心房を流れる電気的興奮の波(P波と言います)ですが、それが一時的になくなっているのがわかります。つまり、洞結節での電気信号が出ていない状態であり、洞機能不全があると判断されます。徐脈に対する診療アルゴリズム今回のFさんは、この洞機能不全症候群だったわけです。さて、徐脈に伴う症状には、めまいや失神といった脳への血流が足りなくなって起こる症状(脳虚血症状)や、倦怠感や息切れといった心臓のポンプ機能の低下による症状(心不全症状)があります。その中でも、バイタルサインに異常を来している状態が最も急を要します。図3は救急診療における徐脈の診療アルゴリズム(手順)です。目の前の患者さんが徐脈を呈しているとき、まずは徐脈による症状があるか否かを確認します。意識状態の悪化、失神、持続する胸痛、呼吸困難などの症状や、血圧低下、ショックの所見などの徴候があるときには、その患者さんは「不安定である」と判断し、直ちに専門医への連絡や治療が必要です。これらの不安定であると判断する症状や徴候は、バイタルサインの異常を来している場合に起こります。ちなみに、急性心筋梗塞の合併症として徐脈性不整脈を来すときがあり、そのため「持続する胸痛」という症状も含まれます(急性心筋梗塞は緊急度の高い疾患です)。Fさんが歩こうとしたとき、救急隊がそれを止めて車いすに乗せたのは、急な容態変化が起こり得ると判断したからです。先日のFさんの出来事をもう1度振り返り、その日の勉強会は終了しました。が、勉強会の後片付けをしていたとき、スタッフの1人が具合悪そうにしています。

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「0402通知」が早くも調剤料引き下げの議論に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第24回

先日のコラム『「薬剤師以外による調剤可能」通知の衝撃度』において、「非薬剤師による調剤」を可能と明示した通知「調剤業務のあり方について」を紹介しました。この通知は「0402(ぜろよんぜろに)通知」と呼ばれていますが、このような呼び方になじみがないという方もいると聞きます。行政から発出され、業界に大きな影響を及ぼす通知は、その発出された月と日の数字を四桁にして並べ固有名詞化することがあります。たとえば、10月26日に発出された通知だったら「1026(いちぜろにろく)通知」となります。このような呼び方は、これからも採用されると思いますので、法則を覚えておくとよいと思います。それはさておき、そのコラムの最後を「このくらいのサプライズがまだほかにあっても不思議ではない」と締めくくりましたが、すでにその兆候が出てきているように感じています。その兆候の最も顕著なものが、2020年度調剤報酬改定への影響です。次回の改定までまだあと1年もあるじゃん!とお思いの方もいるかもしれませんが、すでに議論は始まっています。むしろ、毎回このくらいの時期に、エビデンスが存在する内容や発出された通知の内容が改定の目玉になることが多いように思います。非薬剤師による調剤や機械化により調剤料は引き下げ?ゴールデンウイーク前の4月23日、各省庁への予算を振り分ける財務省が財政制度等審議会財政制度分科会を開催し、社会保障に関する改革案を提示しました。その中には、調剤報酬に関して、0402通知などを参考に挙げながら、対物業務が調剤業務のあり方や技術進歩などによって効率化できること、薬剤師を対人業務へシフトさせていく中でかかりつけ機能の有無による薬局の報酬水準の適正化が必要であることなどから、調剤基本料、調剤料および薬学管理料などの見直しを行うべきとの意見が、改革の方向性として記載されています。この0402通知に関して、ピッキングなどは非薬剤師が行ってもその後の監査で薬剤師がきっちり監査をしていれば問題ないということが白黒はっきりしただけ、と認識している方もいるかもしれません。私も単純なピッキングを含めてすべて薬剤師が行わなければならないという規制には疑問を感じていたので、はっきりしたのはよかったと思っていますが、このタイミングでの通知発出とそれを基にした財務省での議論、という流れをみると、何か根本的なものが変わるのではないかと推察できます。0402通知にもあるように、軟膏剤、水剤、散剤などの計量、混合や監査、そして薬剤の管理などは薬剤師が行うこととありますので、対物業務の責任は減りません。しかし、極論を言えば、次回の改定で「薬剤師は対人業務のみを評価する」となる可能性もゼロではありません。2020年4月になって急に慌てて対人業務に専念することは無理があると思いますので、薬を渡した後のフォローや医師へのフィードバックなどの新たな取り組みを行いつつ、実際の調剤や薬剤管理の手順の構築などの業務効率化を図る必要もありそうです。

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第37回 大学院在学中、川添58歳への挑戦【週刊・川添ラヂオ】

動画解説4月から大学院修士課程に在籍している川添先生。博士課程の修了は6年後58歳となる予定です。病院、薬局、在宅とさまざまな場所で活躍する川添先生ですが、研究発表では「うまくできていない」と先輩方からはなじられることもあったそう。大学院進学を決断した川添先生が説く「薬剤師への大学院進学の勧め」。

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長時間作用型持効性注射剤による統合失調症患者の機能アウトカムへの効果~メタ解析

 心理社会的機能障害は、統合失調症で一般的にみられる。非定型抗精神病薬の長時間作用型持効性注射剤(LAI)は、アドヒアランスを改善することにより、心理社会的機能を改善すると考えられる。しかし、臨床試験において非定型抗精神病薬LAIが心理社会的機能に及ぼす影響を検討したシステマティックレビューは報告されていない。オーストラリア・アデレード大学のAndrew T. Olagunju氏らは、非定型抗精神病薬LAIとプラセボまたは経口抗精神病薬を比較したランダム化比較試験のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The Australian and New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2019年4月8日号の報告。 主要データベースより、2018年までの非定型抗精神病薬LAIとプラセボまたは経口抗精神病薬を比較したランダム化比較試験を言語の制限なく検索した。心理社会的機能の変化とその予測因子に関する調査結果をシステマティックにレビューした。心理社会的機能の変化に関するデータは、ランダム効果モデルを用いてメタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・システマティックレビューには26研究、メタ解析には19研究、8,616例(男性の割合:68.1%)が含まれた。・非定型抗精神病薬LAIは、心理社会的機能の改善において、プラセボ(標準化平均差[SMD]:0.39、95%信頼区間[CI]:0.32~0.47、p<0.001、I2=0%、9研究)および経口抗精神病薬(SMD:0.16、95%CI:0.01~0.31、p=0.04、I2=77%、10研究)と比較し優れており、その優位性は、短期および長期試験においても維持されていた。・心理社会的機能の不良の予測因子は、治療期間の長さ、症状重症度、認知機能不良、病識不良であった。・機能の評価は、単一または複数の方法の組み合わせにより評価したが、ほとんどの研究において、主要アウトカムではなかった。・その他のバイアス要因としては、盲検およびランダム化不良の報告が含まれていた点であった。 著者らは「非定型抗精神病薬LAIの心理社会的機能に対する改善効果は、プラセボと比較し有益であったが、経口抗精神病薬に対する優位性は大きくなかった。ベースライン時の重度な精神症状は、心理社会的機能の不良を予測した」としている。

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HIV予防薬服用で性感染症が増加するのは悪いことなのか?(解説:岡慎一氏)-1040

 いったんHIVに感染すると、現在の治療では治癒は不可能である。つまり、一生涯におよぶ治療が必要となる。日本では、年間の医療費は約250万円/人である。30歳前後でHIVに感染し、40年間治療を受ければ1人約1億円の医療費がかかる。HIV治療の公費負担は感染者が増えれば増えるほどかさむことになる。この10年間、毎年1,500人前後の新規感染者が発見されている。残念ながら、コンドーム推進キャンペーンが有効だとはいえない状況である。 世界で唯一、新規感染者を減らす方法として有効性が確立されているのは、今回の論文に出てくるHIV Pre-Exposure Prophylaxis(PrEP)である。PrEPとは、HIV感染リスクの高い人が前もって予防薬を服用することである。この予防法は非常に有効で、しっかりと予防薬さえ飲んでいれば、コンドームなどを使わなくてもHIVに感染することはほぼゼロになる。使わなくてもよければ使わない人が増えるのは当然で、その結果として、その他の性感染症(STI)が増加することは容易に予測される。この研究でも実際にSTIが増加したことが示されている。当然PrEPを始めると定期的にSTIの検査を受けるので、より多くのSTIが見つかるはずである。したがって、この論文では、検査件数で補正している。PrEP前に比べ検査件数で補正するとSTI全体で1.12倍増えている。しかしである。たった1.1年のフォローアップ期間である。PrEPにより定期的なSTI検査と早期診断・早期治療を徹底していけば、STI自体も減ってくるはずである(そのような地域もある)。さらに、HIV感染症と他のSTI、たとえば注射一本で治る淋病との重要度は比べようもない。HIVに対するrisk compensationとして1.12倍STIが増えたとしても取るに足らないことであろう。 現在、新規HIV感染者が激減しているのは、PrEPが実施されている国や地域のみである。2016年にWHOがHIVガイドラインでPrEPを強く推奨してから、2019年4月現在、世界ではすでに44ヵ国でPrEPが承認されている。そろそろ日本もcost effectivenessの確立されたPrEPの薬事承認をすべきときに来ている。

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自分への投資と資産形成は両立できる!【医師のためのお金の話】第20回

自分への投資と資産形成は両立できる!大学医局制度が維持されていた時代の医師の価値観は、おおむねいくつかのパターンに限られていました。代表的なものは、医師になったら30歳前後で結婚して、子供を2~3人もち、マイホームを購入し、自分の専門分野を極め、卒後10年前後で開業するか否かを悩み、65歳くらいで第一線を退いて、その後は時々仕事をしながら悠々自適に過ごすパターンです。しかし現在では、医師の価値観も多様化しています。多くの医師は専門医を取るでしょうが、学位まで取得しようと考える人は少数派になってきました。また、アカデミックポジションを極めようとする医師が少なくなったことも、1つの傾向として挙げられます。これに対して、自身のQOLを重視する医師の数は増えています。どのような価値観であっても自分の人生ですから、他人がとやかく言うべきものではありません。医師として頑張ると資産形成できない?最近は、医師の中でも経済的自由を志す人が増えてきました。そのような方は比較的若い時代から蓄財に励み、資産形成を粛々と実践しています。このような考えに対して、「やりたいことを犠牲にしてまで、資産形成をしたいと思わない」といった意見があります。このような意見の裏側には、「お金よりも医師としての研鑽のほうが大事だよ」という思いが見え隠れします。もちろん、医師としてのスキルを磨くのは若い時にしかできないので、大いに自己研鑽するべきです。しかし、スキルアップのために自分への投資をたくさんしたからといって、資産形成ができないわけではありません。一般的な医師が資産形成できない理由は、自分に投資するからではなく、単に浪費生活を続けているからです。確かに、留学すると経済的には大きな打撃を受けます。しかし、長期間の留学を除けば、資産形成が犠牲になるということはありません。たとえ大学院に進学するとしても、医師はアルバイトだけで一般の人と比べて高額な所得を稼ぎ出します。もちろん、常勤医師として働くより少ないですが、だからといって資産形成ができない言い訳にはなりません。このことから、ほとんどのケースで、医師としてのスキルを磨くことと、資産形成は両立できると考えています。「若い時は自分を犠牲にしてまで資産形成したいと思わない」という意見は、単なる甘えにすぎないと私は考えています。若い時の研鑽は医師キャリアのモデルケース繰り返しますが、医師としてのスキルアップのために自分へ投資をすることと資産形成は両立可能だと思います。実際、医師としてストイックに研鑽して、仕事に情熱を傾けるほど、普段の生活でお金を使う場面がなくなります。このため、知らないうちに資産形成のタネ銭が貯まるという副次的効果が見込めます。意外かもしれませんが、若い時に医師としてのスキルを高めることは、同時に資産形成のタネ銭を貯めることにつながるので、医師キャリアのモデルケースではないかと考えています。自分への投資と資産形成は両立できる!そうはいっても、多くの医師はこのようなモデルケースに該当しないです。医師の業務はストレスフルなので、ついつい散財しがちです。医師は真面目な人が多いので、自分のスキルアップに余念はないのですが、ストレスの反動から浪費を繰り返してしまうため、資産形成のタネ銭が貯まらないのです。しかも、自分が散財しているという意識が低いため、40歳前後になってふとわれに返ると、ほとんど資産がないことに気付く医師が後を絶ちません。このような事態を避けるためにも、卒後10年ほどはストイックに医師としてのスキルアップを志向すると同時に、ストレスに起因する散財を意識して抑制することを心掛ける必要があります。これだけで、自分への投資と資産形成は両立できるということを、ぜひ知ってほしいのです。

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第18回 意識の異常〜意識障害と意識消失発作-2【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回は意識レベルの異常を来した患者さん2例を紹介します。「意識障害」と「意識消失発作」はともによく耳にする言葉ですが、これらの違いはご存じでしょうか?2つの症例を通して学びたいと思います。患者さんFの場合◎経過──170歳代と思われる女性。低血糖の件が落ち着き、あなたが施設を後にしようと玄関に向かうと、横から70歳代と思われる女性がフラフラと歩いてきました。そしてなんと、あなたの目の前でバタンと卒倒してしまいました。頭を打ち、床には少量の血液が流れました。「大丈夫ですか!」呼びかけてもピクリとも動かず、反応がありません。「誰か!」そう叫んだその後、女性はゆっくりと眼を開けました。「大丈夫ですか?」と尋ねると、こちらを向いてうなずいてくれました。集まってきた施設の職員と一緒に、その方をベッドに寝かせる頃には、意識はすっかり良くなっていました。◎経過──2話を聞くと、その日は施設に入所している知人に会いに来たのだそうです。面会の最中にフラッとするような感じがしたのが気になり、帰宅しようと歩いていました。すると、スーッと意識をなくし、気がついたら倒れていて、周りにたくさんの職員さんが集まっていたといいます。以前にも同じように意識をなくしたことが2回あるとのこと。話を聞きながら、バイタルサインを確認すると、徐脈があることに気がつきました〈表4〉。意識消失発作とは「失神」とも呼ばれ「一過性の意識消失発作で、体位が維持できないもの。発症は比較的急速であるが、速やかに完全に自然回復するもの」と定義されます。一過性に脳全体の血流が低下することによって起こる発作で、その原因は表5のとおりです。失神の患者さんの3人に1人は原因不明だったとの報告がありますが、ぜひ覚えていてほしいのは、心原性失神の場合には他の原因の失神に比べて予後が悪く、突然死の前兆となる場合があることです。◎経過──3あなたが「頭をケガしたみたいですから、病院に行った方がよいですよ」と言うと、施設の職員の1人は「倒れたときに救急車を呼んでしまいました」と言いました。本人は「もう大丈夫なんですけど...」とつぶやきながら、到着した救急車に歩いていこうとしましたが、救急隊員にとめられ、車いすで施設のベッドから救急車に向かいました。◎経過──4病院に到着してから、再び意識消失発作があったそうです。意識消失発作時、救急外来での心電図モニターでは顕著な徐脈が確認され、洞機能不全症候群※の診断でペースメーカーを入れることになりました。ペースメーカー移植術が無事に終わると、その後は意識消失発作を起こすことはなくなったそうです。※心臓の収縮リズムを調節する洞房結節の機能障害により徐脈が生じ、脳、心臓、腎臓などの機能不全を呈する症候群。徐脈から脳の虚血が起こり、意識消失発作などを引き起こすことがある。エピローグ疲労困憊したあなたは、やっと自宅に帰ってきました。「今日は大変な一日だったわ...、早く寝よう...」「でも、また同じような患者さんに出会ったらどうしたらいいのかしら...」そう思ったあなたは、寝る前に少しだけ教科書を開いてみることにしました。意識障害と意識消失発作これらの違いを理解できましたか?言葉は似ていますが、その意味や疑われる疾患が異なることを知っておいてください。意識障害は急を要することはわかっていただけると思います。意識消失発作(失神)は、意識障害と違ってまもなく意識の状態は改善しますが、意識消失発作を繰り返したり、ときに生命にかかわる疾患が隠れていたりすることがあるので、注意しましょう。

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添付文書改訂:スーグラ、フォシーガ/ゾフルーザ、タミフル/セロクエル、ビプレッソ、タケキャブほか【下平博士のDIノート】第24回

スーグラ錠25mg/50mg、フォシーガ錠5mg/10mg画像を拡大する<用法・用量>【イプラグリフロジン錠】1型糖尿病:インスリン製剤との併用において、通常、成人にはイプラグリフロジンとして50mgを1日1回朝食前または朝食後に経口投与します。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら100mgを1日1回まで増量可能です。【ダパグリフロジン錠】1型糖尿病:インスリン製剤との併用において、通常、成人にはダパグリフロジンとして5mgを1日1回経口投与します。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら10mgを1日1回まで増量可能です。<使用上の注意>1.本剤はインスリン製剤の代替薬ではありません。インスリン製剤の投与を中止すると急激な高血糖やケトアシドーシスが起こる恐れがあるので、本剤の投与にあたってはインスリン製剤を中止しないでください。2.本剤とインスリン製剤の併用にあたっては、低血糖リスクを軽減するためにインスリン製剤の減量を検討します。ただし、過度な減量はケトアシドーシスのリスクを高めるので注意してください。なお、臨床試験では、インスリン製剤の1日投与量の減量は、イプラグリフロジン錠では15%、ダパグリフロジン錠では20%以内とすることが推奨されました。<Shimo's eyes>選択的SGLT2阻害薬であるイプラグリフロジン錠(商品名:スーグラ)とダパグリフロジン錠(同:フォシーガ)の効能・効果に、1型糖尿病が追加されました。これまで、成人1型糖尿病患者で、インスリン療法を行っても血糖コントロールが不十分な場合に使用できる経口薬はα-グルコシダーゼ阻害薬のみでしたが、今回の適応追加で、イプラグリフロジン錠またはダパグリフロジン錠による良好な血糖コントロールの維持や合併症の予防ができると期待されています。SGLT2阻害薬は、インスリン非依存的な血糖降下作用を示しますが、併用にあたっては低血糖やケトアシドーシスの発現に注意しましょう。ゾフルーザ錠10mg/20mg、タミフルカプセル75/タミフルドライシロップ3%画像を拡大する<重要な基本的注意>出血が現れることがあるので、患者およびその家族に以下を説明してください。1.血便、鼻出血、血尿、吐血、不正子宮出血などが現れた場合には医師に連絡すること。2.投与数日後にも現れることがあること。<併用注意(併用に注意すること)>ワルファリン:併用後にプロトロンビン時間が延長した報告があります。併用する場合には、患者の状態を十分に観察するなど注意しましょう。<Shimo's eyes>抗インフルエンザ治療薬のオセルタミビル(商品名:タミフル)とバロキサビル(同:ゾフルーザ)において、これらとの因果関係が否定できない出血に関する副作用が複数報告されたことを受け、厚生労働省医薬・生活衛生局が「使用上の注意」改訂の指示を出しました。また、「併用注意」としてワルファリンが追記されたため、抗凝固療法を行っている患者さんでは、慎重な観察が必要となります。セロクエル錠25mg/100mg/200mg、細粒50%、ビプレッソ徐放錠50mg/150mg、タケキャブ錠10mg/20mgほか画像を拡大する<重大な副作用>中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(SJS)、多形紅斑が現れることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行ってください。<Shimo's eyes>薬疹の中では最も重症であるTENの死亡率は20~30%と考えられています。TENとSJSは重症多形滲出性紅斑と呼ばれる1つの疾患群に含まれ、水疱、びらんなどで皮膚がむけた部分が体表面積の10%未満の場合はSJS、10%以上の場合はTENと称されています。原因となる薬剤は多種多様で、ラモトリギン、ゾニサミド、カルバマゼピン、フェノバルビタールなどの抗てんかん薬やアロプリノール、各種解熱鎮痛薬などが挙げられます。発熱(38℃以上)を伴う皮膚や口唇、眼球結膜、外陰部などの皮膚粘膜移行部における発疹やただれ、破れやすい水ぶくれのような症状が現れた場合、ただちに医師または薬剤師に相談するように指導しましょう。

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第36回 「薬剤師以外も調剤可能」で薬剤師の年収は? 川添が"タブー"に切り込む! 【週刊・川添ラヂオ】

動画解説「薬剤師以外の者が調剤してはならない」という薬剤師法19条が2019年4月2日に厚労省によって覆されることとなりました。皆さんはこの通知についてどう感じたでしょうか?調剤以外の時間が増えることを喜ぶ人、仕事を奪われることを心配する人、さまざまな意見があります。さて川添先生が早速調べた調剤補助員の時給は?そして今後の薬剤師の年収は?変化する薬剤師の働き方を説く!

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第17回 意識の異常〜意識障害と意識消失発作-1【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回は意識レベルの異常を来した患者さん2例を紹介します。「意識障害」と「意識消失発作」はともによく耳にする言葉ですが、これらの違いはご存じでしょうか?2つの症例を通して学びたいと思います。患者さんDの場合◎経過──182歳、男性。施設入所中の方です。杖をついて歩くことができ、施設内でのレクリエーションにも積極的に参加しています。生活習慣病として高血圧症・糖尿病・脂質異常症があり、主治医からは降圧薬・経口血糖降下薬処方されています。普段は元気に過ごされていますが、2日前から発熱・嘔吐・下痢があり、ウイルス性胃腸炎との診断で嘱託医から胃粘膜保護薬と整腸薬が処方されました。本日、あなたが施設に行くと、職員があわただしく動き回っている光景を見ました。「大丈夫ですか!? 大丈夫ですか!?」見ると、いつも元気で過ごしているEさんが、ベッド上にぐったりとして意識がないようです。一方で、他の職員は嘱託医に電話連絡しているところでした。意識と、意識の中枢と、意識障害意識という言葉は、医学だけでなくいろいろな分野でいろいろな意味合いで使われているようですが、一般的には「目が覚めていて(覚醒)、自分や周囲の状況が認識できている(認知)状態」と定義されます。これらが障害された状態を意識障害といいます。ヒトは覚醒しているとき、脳幹にある「脳幹網様体」と呼ばれる部分に身体の感覚が入り、それが脳の視床という部分を介して大脳皮質に伝わります(上行性網様体賦活系といいます)〈図〉。この脳幹網様体が障害された時、または、両側の大脳が広範に障害された時に意識障害を生じます。意識障害の状態は表1のJapan Coma Scale(JCS)を参考にしてください。スライドを拡大する◎経過──2意識がないEさんを目の当たりにして、あなたは少し動揺してしまいました。(先生には連絡が行っているはずだから、こういうときこそ落ち着いて、基本に立ち返って...)あなたは一度深呼吸をして、バイタルサインを確認しました〈表2〉。Eさんはぐっしょりと全身に汗をかいています。(意識レベル以外にあまり異常はないわ...。どうしよう)意識障害の原因前述の通り、脳幹網様体や、両側大脳が広範に障害されると意識の状態が悪くなります(=意識障害を来します)。これらが障害されるのは、脳出血・脳梗塞といった頭蓋内疾患の場合もありますし、脳幹や大脳に影響を及ぼすような脳以外の疾患の場合もあります。意識障害の原因を検索するとき、表3のような「アイウエオチップス」という覚え方があります。表3を見ていただくと、実は脳の疾患に伴う意識障害よりも、脳以外の疾患を原因とする意識障害の方が多いことに気がつきます。ですから、「意識障害=脳の疾患」という訳ではありません。意識障害の鑑別には、その場のバイタルサインだけでなく、意識障害に至った病歴、既往歴、服用歴、身体診察、さらに血液検査、血液ガス分析、頭部CTを含めた画像診断が必要となります。この観点から、意識障害の患者さんは必ず病院の受診が必要ですが、意識障害の原因疾患の中でも緊急度の高いのは、バイタルサインに異常を来している場合(呼吸や循環にも異常がある場合)と低血糖です。スライドを拡大する◎経過──3(そういえばEさん、糖尿病の薬を内服している!)そう思ったとき、嘱託医が到着しました。医師が診察を始めるのと同時に、看護師は医師の指示で血糖を測定しました〈写真〉。「血糖『20未満』です」看護師が言うと、医師は静脈路確保の後、50%ブドウ糖液を40mL静注し、まもなくEさんの意識レベルは改善しました。最近の嘔吐・下痢で食事があまり摂れないのに、経口血糖降下薬は継続していたため、低血糖になったと考えられました。内服薬の効果の持続する時間を考えると、低血糖が遷延する可能性があり、提携している病院に入院することとなりました。医師はEさんを搬送するため、救急車に同乗していきました。

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第21回 関節リウマチとMTXにまつわるお役立ちエビデンス集【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 関節リウマチの罹患率は人口の1%とも言われ、とくに女性の患者は男性の2~3倍と多く、いずれの年代でも発症しうる疾患です1)。関節リウマチ治療の第1選択薬は言わずと知れたメトトレキサート(MTX)で、関節破壊の進行を抑制するために重要かつ有名な薬剤です。今回はそのMTXに関連するエビデンスをあらためて紹介します。有効性についてMTXの有効性については、関節リウマチ患者732例においてMTX単独投与の効果をプラセボと比較したコクランのシステマティックレビュー2)など、すでに十分なエビデンスがあります。これは1997年に発表されたレビューの2014年改訂版で、レビューに含まれているのは1980〜90年代の試験です。以前の治療や併用薬としてNSAIDsや他の抗リウマチ薬を使用している場合もありますが、有効性については、ほとんどの主要評価項目で有意な改善を認めています。ACR50(圧痛関節数、膨張関節数、患者による疼痛評価、患者による全般活動性評価、などの評価で必須項目を含む50%以上の改善)を達成したのは100人当たりプラセボ8例、MTX23例で、健康関連QOLのNNT(Number Needed to Treat:必要治療数)=9、X線写真における関節破壊の進行評価のNNT=13と、MTXの有意な効果が示されています。一方で、3~12ヵ月の評価では、プラセボと比較して100人当たり9例に、多くの有害事象による中止が報告されています。葉酸との併用について葉酸またはフォリン酸(ロイコボリン)を摂取することで、MTXによる悪心、腹痛、肝機能異常などが低減し、口内炎も減る傾向にあることが示唆されています3)。こちらもコクランに掲載された、MTXと葉酸またはプラセボ併用を比較した6つの二重盲検ランダム化比較試験、計624例を含むシステマティックレビューです。葉酸またはフォリン酸併用群では、24~52週のフォローアップで、消化器系の副作用(悪心、嘔吐、腹痛)の絶対リスク減少率-9.0%、相対リスク減少率-26.0%、NNT=11と、プラセボ群よりも有意に減少しています。同じ期間の口内炎の発生については、絶対リスク減少率-6.2%、相対リスク減少率-27.8%で、統計的有意差はないものの減少傾向にありました。また、肝毒性(トランスアミナーゼ上昇)の発生率は、8〜52週間のフォローアップ期間において、絶対リスク減少率-16.0%、相対リスク減少率-76.9%、NNT=6と、葉酸を併用する多くのメリットが示されています。なお、葉酸併用によるMTXの効果の有意な減弱はありませんでした。関節リウマチ治療におけるMTX診療ガイドライン 2016年改訂版においても、MTXを継続している患者では、必要に応じて葉酸を併用することが推奨されています4)。投与間隔については、MTX服用の24~48時間後が一般的です。同ガイドラインによれば、そのベストな投与間隔について明確なエビデンスはないとされていますが、少なくともその時間を空ければMTXの効果に影響はないだろうとのことです。なお、ロイコボリンレスキュー療法の研究では、MTX服用後42~48時間を過ぎてしまうとMTXの毒性が発現しやすくなることが報告されています5)。感染症リスクについてMTXは免疫抑制作用を有する薬剤ですので、肺炎、発熱、口内炎など感染兆候に注意を払うことも大切です。2015年にLancetに掲載されたネットワークメタ解析で、慢性関節リウマチ患者において、MTX使用時と生物学的製剤使用時の重篤感染症(死亡例、入院例、静脈注射の抗菌薬使用例)発現リスクについて検討されています6)。結果としては、生物学的製剤はDMARDsに比べて重篤感染症リスクが約30%高く、とくにMTX使用歴がある患者および標準〜高用量の生物学的製剤使用患者ではリスクが高いという傾向にありました。年間1,000人当たりの重篤感染症発生人数は、DMARDs服用群で20例、標準量の生物学的製剤使用群で26例、高用量の生物学的薬剤使用群で37例、生物学的製剤との併用群で75例です。MTX使用歴がない患者では、感染症リスクの有意な増加はありませんでした。近年では多くの生物学的製剤が発売されているので、MTXとの併用時や易感染性疾患罹患時の感染兆候モニタリングは意識しておくとよいでしょう。1)MSDマニュアル 関節リウマチ2)Lopez-Olivo MA, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2014;6:CD000957.3)Shea B, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2013;5:CD000951.4)関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン 2016年改訂版5)Cohen IJ, et al. Pediatr Blood Cancer. 2014;61:7-10.6)Singh JA, et al. Lancet. 2015;386:258-265.

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職場の健康プログラム、社員の健康や医療費減に効果なし?/JAMA

 職場における栄養・運動指導といった健康プログラムは、定期的な運動や体重管理を促す効果はあるものの、血圧やコレステロールなどの検査測定値や医療費の削減には効果がないことが示された。米国・ハーバード・メディカル・スクールのZirui Song氏らが、米国内160ヵ所の職場を対象に、クラスター無作為化比較試験を行い明らかにしたもので、JAMA誌2019年4月16日号で発表した。企業は、社員の健康改善や医療費削減のために職場健康プログラムへの投資を増やしているが、それらプログラムの効果に関する実証エビデンスはほとんどないという。栄養摂取や運動、ストレス解消について8回講義 研究グループは、2015年1月~2016年6月にかけて米国内160ヵ所の職場を対象に試験を行った。2016年6月30日までの医療費請求データと雇用データを集め、2016年7月1日~8月31日に質問票や検査測定値を収集した。 試験対象の職場から無作為に20ヵ所(4,037例)を抽出して介入群とし、各職場の登録栄養士が、栄養摂取、身体活動、ストレス解消やその他の関連するトピックスについて8回の講義を行った。残りの140ヵ所の職場は対照群とし、何も行わなかった。 評価は、4領域について行った。(1)自己申告による健康・行動に関するサーベイ(29アウトカム)および、(2)スクリーニングによる臨床検査測定値(10アウトカム)の2領域については、介入群20ヵ所と対照群から無作為に抽出した対照群主要20ヵ所について比較した。(3)医療費と医療サービス利用状況(38アウトカム)および、(4)欠勤率、就労期間、パフォーマンス評価(就労成果)などの雇用アウトカム(3アウトカム)については、介入群20ヵ所と対照群140ヵ所を比較した。欠勤率や仕事のパフォーマンスにも効果なし 総被験者数は3万2,974例で、平均年齢38.6歳、女性45.9%だった。サーベイとスクリーニングへの参加率は、介入群がそれぞれ36.2%、44.6%、対照群主要20ヵ所は34.4%、43.0%だった。 18ヵ月時点で、自己申告による健康関連アウトカムのうち、定期的に運動を行っている、と回答した割合は、対照群61.9%に対し、介入群は69.8%と有意に高率だった(補正後群間差:8.3ポイント、95%信頼区間[CI]:3.9~12.8、p=0.03)。積極的に体重管理を行っている割合も、対照群54.7%に対し、介入群が69.2%と高率だった(同:13.6ポイント、7.1~20.2、p=0.02)。 しかし、そのほかの、自己申告による健康・行動に関する27項目(自己申告の健康、睡眠の質、食物選択など)、臨床検査測定値10項目(コレステロール、血圧、BMIなど)、医療・薬剤費や医療サービス利用状況の38項目、雇用アウトカム3項目(欠勤率、就労期間、就労成果)についてはいずれも、介入による有意な効果は認められなかった。 著者は、「データが不完全なアウトカムがあり限定的ではあるが、今回の結果は、短期的な健康プログラムが提供できる費用対効果の予測を加減することになるだろう」とまとめている。

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第16回 発熱の症例・全てのバイタルが異常。何を疑う?-3【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回の症例は、発熱を来した症例です。発熱のため受診される高齢者は少なくありませんが、なかには早期に治療を開始しないと生命にかかわる場合もあります。患者さんDの場合◎経過──3家族の到着後、医師・訪問看護師、施設の職員とあなたは、家族とよく相談して、近隣の救急病院に救急搬送することにしました。その晩、帰宅したあなたは、SIRSと敗血症について調べてみました。「サーズ、サーズっと。あら?SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome;重症急性呼吸器症候群)とは違うのね?」教科書を読むと、細菌毒素などにより様々なサイトカインや血管拡張物質が放出されて末梢血管抵抗が低下し、相対的に循環血液量が減少することで血圧が低下、臓器への低灌流や臓器障害を来すことが書かれていました。臓器への低灌流や臓器障害を来している場合は重症敗血症(severe sepsis)」と呼ばれ、適切な補液を行っても改善しない血圧低下があること、血圧を維持するためにドパミンやノルアドレナリンなどの昇圧薬を必要とする場合には「敗血症性ショック(septic shock)」といわれること、さらに循環動態を安定化させるための初期治療(Early Goal Directed Therapy; EGDT)について学びました。「すぐに点滴を始めたのは、このためだったのね」敗血症診療ガイドライン2016(J-SSCG2016)と新しい敗血症の定義つい最近、敗血症診療ガイドラインが新しくなったのをご存知ですか?新しいガイドラインでは敗血症の定義は「感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされる状態」と変更されました。敗血症の病態について、「感染症による全身性炎症反応症候群」という考え方から、「感染症による臓器障害」に視点が移されたわけです(図2)。本文の「経過3」には「臓器への低灌流や臓器障害を来している場合は『重症敗血症』と呼れ・・・」とありますが、この以前の重症敗血症が今回の敗血症になりました。また、敗血症性ショックの診断基準は、「適切な輸液にもかかわらず血圧を維持するために循環作動薬を必要とし、『かつ血清乳酸値>2mmol/Lを認める』」となりました。そこで何か感じませんか?そうなんです、敗血症の定義からSIRSがなくなったんです。SIRSは体温・脈拍数・呼吸数・白血球数から診断できますね。新しい敗血症はバイタルサインからその徴候に気付くことができるのでしょうか・・・。敗血症の診断「感染症によって臓器障害が引き起こされた状態」が新しい敗血症の定義でしたね。そこで、どうしたら臓器障害がわかるんだろうという疑問が出てきます。臓器障害は「SOFA(sequential organ failure assessment)スコア」によって判断します(表4)。感染症があり、SOFAスコアが以前と比べて2点以上上昇していた場合に臓器障害があると判断して、敗血症と診断します。この表をみるとすぐに点数を付けるのは難しいな・・・と思いますよね。そこで、救急外来などではqSOFA(quick SOFA)を使用します(表5)。意識の変容・呼吸数(≧22回/分)・収縮期血圧(≦100mmHg)の3項目のうち2項目以上を満たすときに敗血症を疑います。ガイドラインが新しくなったといっても、やはりバイタルサインによって敗血症かどうか疑うことができますね。敗血症が疑われたら、その次にSOFAスコアを評価して、敗血症と診断するわけです。具体的な診断の流れを図に示します(図3)。スライドを拡大するスライドを拡大するEGDT(Early Goal Directed Therapy)についてEGDTは、中心静脈圧・平均動脈圧などを指標にしながら、補液・循環作動薬などを使用して、尿量・血中乳酸値などを早期に改善しようとする治療法ですが、近年の臨床試験ではEGDTを遵守しても有益性は見いだせなかったという結果が得られました。ただ、敗血症性ショックに対する初期治療の一つは補液であることにかわりはありません。時の流れでガイドラインが変わっても患者さんを診るときにバイタルサインが重要なことは変わっていないようですね。エピローグ救急搬送先の病院で細菌学的検査、抗菌薬の投与、およびドブタミン、ノルアドレナリンによる治療が行われました。敗血症性ショックでした。約3週間が経ち、退院後にあなたが訪問すると、その91歳の女性は以前と同じようにベッドの上に寝ていました。以前と同じように寝たきりの状態で、以前と同じように職員の介助で何とか食事をしていました。本人の家族(長男)に新しく処方された薬について説明する機会がありました。ベッドサイドで長男と話をしていると、普段無表情な本人が、長男が来ているところを見て少しニコッと微笑んだように見えました。五感を駆使して、患者さんの状態を感じとる今回のポイントは、敗血症とSIRSの概念を知り、急を要する発熱を見極めることができるようになることでした。それともう1つ、今回のあなたは五感を駆使して患者さんの状態を知ろうとしました。ぐったりしているところや呼吸の状態を"視て"、呼吸が速い様子(息づかい)を耳で"聴き"ながら、手や手首を"触れて"体温や脈の状態を確認しました(味覚と嗅覚が入っていないなんて言わないでくださいね)。緊急度を素早く察知する手段のひとつですから、バイタルサインと併せて患者さんを注意して観察するとよいと思います。

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家族性アミロイドポリニューロパチー〔FAP: familial amyloid polyneuropathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)は、代表的な遺伝性全身性アミロイドーシスである1,2)。組織の細胞外に沈着したアミロイドは、コンゴレッド染色で橙赤色に染まり、偏光顕微鏡下でアップルグリーンの複屈折を生じる。電子顕微鏡で観察すると、直径8~15nmの枝分かれのない線維状の構造物として観察される。現在までに、36種類以上の蛋白質がヒトの体内でアミロイド沈着を形成する蛋白質として同定されている3)。FAPを生じるアミロイド前駆蛋白質として、トランスサイレチン(TTR)、ゲルソリン、アポリポ蛋白質A-Iが知られているが、大部分のFAP患者は、TTRの遺伝子変異によるため、以下はTTRを原因とするFAP(TTR-FAP)に関して概説する。近年、国際アミロイドーシス学会は、TTR-FAPに代わる病名として「遺伝性TTR(ATTRv)アミロイドーシス」の使用を推奨しているが3)、わが国ではFAPの病名が現在も使用される場合が多いため、本稿ではFAPの病名を用いて概説する。本疾患の原因分子であるTTRは、主に肝臓から産生され血中に分泌される血清蛋白質である。その他のTTR産生部位として、脳脈絡叢、眼の網膜色素上皮、膵臓ランゲルハンス島のα細胞が知られている。血中に分泌された本蛋白質は、127個のアミノ酸から構成されるが、豊富なβシート構造を持つことにより、アミロイド線維を形成しやすいと考えられている。TTR遺伝子には150種類以上の変異型が報告されており、その大部分がFAPの病原性変異として同定されてきた。TTRの30番目のアミノ酸であるバリンがメチオニンに変異するVal30Met型が、最も高頻度に認められる1,2)。生体内では、通常TTRは四量体として機能し、四量体の中心部には1分子のサイロキシン(T4)が強く結合し、T4の運搬を担っている。また、TTRはレチノール結合蛋白質との結合を介して、ビタミンAの輸送も担っている。■ 疫学以前はFAP ATTR Val30Metの大きな家系が、ポルトガル、スウェーデン、日本(熊本県と長野県)に限局して存在すると考えられていたが、近年、世界各国からFAP ATTR Val30Met患者の存在が確認されている1,2)。また、明確な家族歴がなく高齢発症のFAP が日本各地から報告されており4)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、糖尿病性ニューロパチー、手根管症候群、腰部脊柱管狭窄症などの非遺伝性末梢神経障害の鑑別疾患として本症を考えることが重要である。スウェーデンでは、FAP ATTR Val30Met遺伝子保因者の3~10%しか発症しないことが知られているが、わが国においても、TTR遺伝子に変異を持ちながら、終生FAPを発症しない症例も存在する。Val30Met以外の変異型TTRによるFAPもわが国から多く報告されている(図1)。わが国の疫学調査の結果では、国内の推定患者数は約600人であるが、的確に診断されていない症例が多く存在する可能性がある。画像を拡大する■ 病因TTRに遺伝子変異が生じると、TTR四量体が不安定化し、単量体へと解離することが、アミロイド形成過程に重要であると、in vitroの研究で示されている。しかし、アミロイドがなぜ特定の部位に沈着するのか、どのように細胞や臓器の機能を障害するのかは、明らかにされていない。アミロイド線維を形成するTTRの一部は断片化されており、アミロイド線維形成への関与が議論されている。■ 症状1)神経症状末梢神経障害は、軸索障害が主体で神経軸索が細胞体より最も遠い両下肢遠位部の症状が初発症状となる場合が多い。また、神経症状は一般に自律神経、感覚(温痛覚低下)、運動(両側末梢優位)の順で症状が出現することが多い。これは、アミロイド沈着により小径無髄線維から大径有髄線維の順に障害が進行するためと考えられている。病初期には、下肢末梢部である足首以下で、温痛覚の低下を認めるが触覚は正常である解離性感覚障害を認める場合が多い。温痛覚障害のため、足の火傷や怪我に患者本人が気付かない場合がある。筋萎縮、筋力低下など運動神経障害は、感覚障害より2~3年遅れて出現する場合が多いが、まれに運動神経障害が主体で感覚障害が軽い症例もある。進行期には、高度の末梢神経障害による四肢の感覚障害と筋力低下や呼吸筋麻痺などを呈する。アミロイド沈着による手根管症候群を呈する場合がある。とくに家族歴が明らかでない症例では、病初期にCIDP、糖尿病性ニューロパチー、腰部脊柱管狭窄症などと誤診されることが多く、注意が必要である。症例によっては、脳髄膜や脳血管のアミロイド沈着による意識障害や脳出血など中枢神経症候を呈する場合がある。2)消化器症状重度の交代性下痢便秘や嘔気などの消化管症状が出現する。末期には持続性の下痢となり、吸収障害や蛋白質の漏出も生じる。3)循環器系障害早期より自律神経障害による起立性低血圧や、アミロイド沈着による房室ブロック、洞不全症候群、心房細動などの不整脈が生じる。心筋へのアミロイド沈着により心不全を生じ、心室の拡張障害が収縮障害に先行すると考えられている。TTR変異型により心症候が主体で、末梢神経障害が目立たないタイプがある。4)眼症状変異型TTRは肝臓のみならず網膜からも産生されており、アミロイド沈着による硝子体混濁はFAP患者に多く認められる。硝子体混濁が本症の初発症状である症例もある。前眼部へのアミロイド沈着による緑内障を来し、進行すると失明の原因となる。また、涙液分泌低下によるドライアイも生じる。5)腎障害アミロイド沈着によるネフローゼ症候群や腎不全を呈するが、症例によりその程度は異なる。病初期には目立たない場合が多い。■ 分類TTR変異型により症候が異なる場合がある。アミロイドポリニューロパチー(末梢神経障害)が主体となるタイプ(Val30Metなど)、心アミロイドーシスにより不整脈や心不全が主体となるタイプ(Ser50Ile、Thr60Alaなど)、脳髄膜・眼アミロイドーシスにより一過性の意識障害や脳出血、白内障や緑内障が強く生じるタイプ(Ala25Thr、Tyr114Cysなど)がある。また、同じATTR Val30Metを持つFAP患者でも、ポルトガルでは若年発症(20~30代で発症)が多く、スウェーデンでは高齢発症(50歳以降)が多い。わが国でも、本疾患の集積地である熊本や長野のFAP患者は若年発症が多いが、他の地域では高齢発症で家族歴が確認できない症例が多く、70歳以降の発症も少なくない。■ 予後未治療の場合は、発症からの平均余命は若年発症のFAP ATTR Val30Metは約10~15年1)、高齢発症のFAP ATTR Val30Metは約7年4)である。進行期には、呼吸筋麻痺、重度の起立性低血圧、心不全、致死的な不整脈、ネフローゼ症候群、腎不全、蛋白漏出性胃腸症、重度の緑内障などを呈する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)本症の診断基準を表に示す。病初期に各治療法の効果が高いため、早期診断、早期治療が重要である。臨床症候や各種の臨床検査により本症が疑われる場合には、生検によりアミロイド沈着を検索すること、および専門施設に依頼し、免疫組織化学染色や質量分析法でTTRがアミロイドの構成成分であることを確認する必要がある(図2)。生検部位は、侵襲度の比較的低い消化管(胃、十二指腸、直腸)、腹壁脂肪、口唇の唾液腺、皮膚などが選択されるが、病初期にはアミロイド沈着が検出されない場合もある。本症の疑いが強い場合は、繰り返し複数部位からの生検を行うことが重要である。また、前述の部位からアミロイド沈着が確認できない場合は、障害臓器である末梢神経や心筋からの生検も考慮する必要がある。TTRがアミロイド原因蛋白質として同定された場合は、野生型TTRが非遺伝性に生じる老人性全身性アミロイドーシス(SSA)(野生型TTR[ATTRwt]アミロイドーシス)との鑑別のため、遺伝子検査や血液中TTRの質量分析によりTTR変異の解析を必ず行う(図3)。画像を拡大する画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)FAPに対する治療は、近年、劇的に進歩している。長く実施されてきた肝移植療法に加えて、TTR四量体の安定化剤であるタファミジス(商品名: ビンダケル)が、国内でも2013年9月に希少疾病用医薬品として承認され、現在、本疾患に対し広く使用されている。また、核酸医薬によるTTR gene silencing療法の国際的な臨床試験が終了し、良好な結果が得られている。図4にFAPに対する治療法を研究中のものを含めて示した。画像を拡大する■ 肝移植療法本疾患の病原蛋白質である変異型TTRの95%以上が肝臓で産生されていることから、1990年にスウェーデンで本疾患に対する治療法として肝移植が初めて行われ、その有効性が示されてきた5)。FAP患者の血液中の変異型TTRは、正常肝が移植された後に速やかに検出感度以下まで低下する。しかし、肝移植で本疾患が完全に治癒するわけではなく、末梢神経障害を含めて、症候の大部分は移植後も残存する。また、発症から長期間経過し、病態が進行した症例や、高齢患者、BMIが低値(低栄養状態)であると、移植後の予後が不良であるため、肝移植が実施できない場合も少なくない。そして、症例によっては、肝移植後も症候(とくに心アミロイドーシス)が進行するケースもある。眼の網膜色素上皮細胞や脳脈絡叢からは、肝移植後も継続して変異型TTRが産生され続けているため、眼や脳・脊髄では、肝移植後も変異型TTRによるアミロイドが形成され、症候も悪化する症例が報告されている。他の治療法が開発されたことにより、本症に対する肝移植の実施数は減少傾向にある。■ TTR四量体安定化剤(タファミジス)TTR四量体が不安定となり単量体へと解離することが、TTRのアミロイド形成過程に重要な過程と考えられている。TTR四量体の安定化作用を持つ薬剤が、本症の新たな治療薬として研究開発されてきた。非ステロイド系抗炎症薬の1つであるジフルニサルなどにTTR四量体の安定化作用が確認され、本症の末梢神経障害に対する進行抑制効果が確認された6)。ジフルニサルには、非ステロイド系抗炎症薬が元来持つCOX阻害作用があり、腎障害などの副作用が出現する可能性が想定されたため、COX阻害作用を持たずにTTR四量体のより強い安定化作用を示す新規化合物としてタファミジスが新たに開発された。本薬剤の国際的な臨床治験が実施され、生体内でもTTR四量体を安定する作用が確認されるとともに、末梢神経障害の進行を抑制する効果が確認されている7)。また、心症候に対する効果も報告された8)。わが国では2013年9月に本症による末梢神経障害の進行抑制目的で承認されている。■ 核酸医薬(TTR gene silencing療法)9, 10)Small interfering RNA(siRNA)9) やアンチセンスオリゴ(ASO)10) を用いて、肝臓におけるTTRの発現抑制を目的としたgene silencing療法の開発が行われ、強いTTR発現抑制効果と良好な治療効果が確認されている9, 10)。これらのgene silencing療法では、変異型TTRに加えて、野生型TTRの発現抑制も標的としている。これらの治療法は、今後、本疾患に対する標準的な治療法となることが期待されている。■ その他の研究段階の治療法前述のごとく、肝移植療法の実施やTTR四量体安定化剤の臨床応用、gene silencing療法によるTTR発現抑制法の開発など、本疾患に対する治療法は近年急激に発展しているが、いずれもアミロイド原因蛋白質であるTTRの発現抑制および安定化を標的としており、沈着したアミロイドを除去する治療法は確立していない。さらなる治療法の改善を目指して、図4に示した方法をはじめとした多くの治療法の開発が精力的に行われている。■ 対症療法本症では、心伝導障害の進行は必発であるため、I度房室ブロックの段階でペースメーカーの植え込みを考慮する場合がある。致死的な不整脈が発生する場合には、植込み型除細動器を積極的に検討する必要がある。起立性低血圧に対して、弾性ストッキングや腹帯の使用を考慮する。手根管症候群に対しては、手術療法を考慮する。眼アミロイドーシスによる白内障や緑内障に対しても手術療法が必要となる。そのほかにも、自律神経症状や消化管症状、心不全などに対して内服薬による対症療法を試みるが、十分な効果が得られない場合が少なくない。4 今後の展望肝移植療法がFAPに対して実施され始めて28年以上が経過し、その有効性とともに治療法としての限界や関連する問題点が明らかになってきた。TTR四量体の安定化剤が臨床応用され、広く使用されるにつれて、本症に対する肝移植実施数は減少傾向にある。また、肝臓でのTTR発現抑制を目的とした核酸医薬によるgene silencing療法の臨床治験で良好な結果が得られ、わが国でも承認が待ち望まれる。これらの治療法の長期的な効果に関しては、まだ不明な点が多く残されているため、長期予後に関する調査が必要である。さらに、すでに組織に沈着したアミロイド線維を除去できる根治療法の研究開発が必要である。5 主たる診療科脳神経内科、循環器内科、眼科、移植外科、消化器内科、腎臓内科、整形外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報家族性アミロイドポリニューロパチーの診療ガイドライン(日本神経学会)(医療従事者向け診療情報)難病情報センター:全身性アミロイドーシス(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)熊本大学 大学院生命科学研究部 脳神経内科学分野(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)熊本大学 医学部附属病院 アミロイドーシス診療センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)信州大学 医学部第3内科 アミロイドーシス診断支援サービス(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)GeneReviews(Pub Med)(医療従事者向けの診療、研究のまとまった情報)GeneReviews(日本語版)(医療従事者向けの診療、研究のまとまった情報)FAP WTR(FAPに対する肝移植に関する国際的レジストリ)(医療従事者向けの診療、研究のまとまった情報)THAOS(TTRアミロイドーシスの自然経過に関する国際的調査)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)The Registry of Mutations of Amyloid Proteins(TTR変異の国際的レジストリ)(医療従事者向けの研究情報)OMIM(医療従事者向けの診療・研究のレビュー情報)日本アミロイドーシス学会(医療従事者向けの研究情報)国際アミロイドーシス学会(ISA)(医療従事者向けの研究情報)厚生労働省 難治性疾患政策研究事業「アミロイドーシスに関する調査研究」班(医療従事者向けの研究情報)患者会情報道しるべの会 second step あゆみ ブログ(患者のブログ)1)Ando Y, et al. Arch Neurol. 2005;62:1057-1062.2)Ueda M, et al. Transl Neurodegener. 2014;3:19.3)Benson MD, et al. Amyloid. 2019 [Epub ahead of print]4)Koike H, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2012;83:152-158.5)Yamashita T, et al. Neurology. 2012;78:637-643.6)Berk JL, et al. JAMA. 2013;310:2658-2667.7)Coelho T, et al. Neurology. 2012;79:785-982.8)Maurer MS, et al. N Engl J Med, 2018;379:1007-1016.9)Adams D, et al. N Engl J Med. 2018;379:11-21.10)Benson MD, et al. N Engl J Med. 2018;379:22-31.公開履歴初回2013年08月08日更新2019年04月23日

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研修受講シールがオークションで売買! かかりつけ薬剤師制度にも影【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第23回

2016年度の報酬改定により、かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料を算定する施設基準の1つに「研修認定制度の研修認定を取得している」という要件が入ったことから、研修認定薬剤師を目指す薬剤師が爆発的に増えました。薬局内だけにいるとどうしても目先の薬局業務のことばかり考えがちですので、座学やレポート提出、学会参加などによって新しい情報や取り組みを知り、知識をアップデートするのはとても素晴らしいことだと思います。しかし、薬剤師への信頼が地に落ちかねない、研修に関連する事件が起きています。今般、一部の薬剤師認定制度実施機関から交付されている研修受講シールが、インターネット上のオークションサイト等で売買されている事例が確認されました。不適切な方法により入手した研修受講シールにより、研修認定を取得する行為は、研修認定制度の信頼性を揺るがしかねないものであり、また、調剤報酬請求の適正性にも疑念を生じさせるものです。(中略)薬局に勤務する薬剤師が不適切な方法で研修認定を取得しないよう周知徹底を行っていただきたく、ご協力の程よろしくお願いいたします。(2019年3月1日付 厚生労働省課長通知「薬剤師研修認定制度の適切な運用について」より一部抜粋)実は受講シールの転売は以前から問題視されていましたが、今回、NHKにより受講シールの不正入手の問題が報じられ、それを受けて厚生労働省から上記の通知が発出されました。私自身も、オークションサイトで受講シールが出品されているのを目にしたことがあります。1点や1枚という単位で出品されている場合もあれば、5枚などの複数枚が連なって出品されている場合もあり、見つけたときは目を疑いました。どのくらいの価格を高いと思うかは人それぞれだと思いますが、あるオークションサイトでは1単位1,000~5,000円程度で出品されており、私の印象としては研修の受講料や交通費を考えるとそれほど高くはないかなと思いました。今後の研修では受講者名簿を薬剤師研修センターに提出か厚労省からの通知と同日に、公益財団法人日本薬剤師研修センターは、「研修受講シールに関する不正行為について」という薬剤師向けの文書を出しています。その中には、「認定後に不正が判明した場合は、実施要領の規定に従って認定の取り消しを行う」「不正を行うことは医療職種である薬剤師の本分にもとる行為であり、深く恥じるべきもの」と厳しい言葉が並んでいます。研修会を実施する機関に対しては、受講者名簿を整備して配布状況を厳格に管理すること、名簿を日本薬剤師研修センターに提出できるようにすること、本人確認を確実に行うこと、未受講者の受講シールの回収を徹底することなどの不正行為防止のための対応が求められています。一部の人たちの不正によって取り締まりが強まり、研修開催の手間を増やしてしまうのは残念なことです。研修認定の取得がかかりつけ薬剤師の要件になり、薬局の利益を上げたい経営者などから研修認定薬剤師になるように求める圧力があったのかもしれません。しかし、本来は自己研さんを積むことで患者さんの健康に貢献するための制度であり、この受講シールによってかかりつけ薬剤師指導料・包括管理料を算定しているのであれば、不当な算定と言わざるを得ません。研修認定薬剤師となっても、継続研修によって3年ごとに30単位(各年5単位以上)が必要です。これからも研修は続き、シールの交付は続きます。売りに出す人、買う人の両方が薬剤師全体の信用を失墜させるのだと反省し、自浄できる業界であってほしいと切に願います。

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糖尿病性腎臓病におけるエンパグリフロジンの複合腎・心血管アウトカム/国際腎臓学会

 SGLT2阻害薬エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)によるEMPA-REG OUTCOME試験における、ベースライン時の顕性アルブミン尿を伴う糖尿病性腎臓病(DKD)患者での複合腎・心血管アウトカムの結果が、4月12~15日にオーストラリアで開催された国際腎臓学会(ISN)-World Congress of Nephrology(WCN)2019にて公表された。日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社と日本イーライリリー株式会社が発表した。 EMPA-REG OUTCOME試験では、心血管イベントの発症リスクが高い2型糖尿病患者において、標準治療にエンパグリフロジンを上乗せ投与した結果、プラセボ群と比較して、主要評価項目である複合心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)のリスクが14%減少し、心血管死リスクが38%減少したことが報告されている。さらに同試験の副次評価項目では、腎症の初回発現もしくは悪化を評価した複合腎イベントの相対リスクが39%低下したことも示されている。 今回、EMPA-REG OUTCOME試験のさらなる解析として、腎イベントのリスクが高い、ベースライン時の顕性アルブミン尿を伴うDKD患者(30≦eGFR<90mL/分/1.73m2かつUACR>300mg/g)と、その他の患者(eGFR≧90mL/分/1.73m2またはUACR≦300mg/g)における複合腎・心血管アウトカム(末期腎不全[腎代替療法の開始またはeGFR<15 mL/分/1.73m2の持続]、血清クレアチニン値の倍加、腎疾患による死亡または心血管死のいずれかとして定義)の解析が行われた。また、その他の評価項目として、複合心血管アウトカム(心不全による入院または心血管死)、心血管死、複合腎アウトカム(末期腎不全、血清クレアチニン値の倍加、腎疾患による死亡)および全死亡について解析が行われた。 その結果、全体集団において、エンパグリフロジン群はプラセボ群と比較し、複合腎・心血管イベントリスクが43%低下した(ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.46~0.70)。また、腎イベントリスクが高い集団であるベースライン時の顕性アルブミン尿を伴うDKD患者においては54%低下し(HR:0.46、95%CI:0.31~0.68)、その他の患者においても41%低下した(HR:0.59、95%CI:0.46~0.75)。 これらの複合腎・心血管イベントでの一貫した効果は、複合心血管イベント、心血管死、複合腎イベント、全死亡においても示された。

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第35回 お薬手帳のココだけは絶対に書いてほしい【週刊・川添ラヂオ】

動画解説お薬手帳が本領を発揮するのは災害時。阪神大震災の教訓から生まれたお薬手帳は、2011年東日本大震災の際には避難所などでの医療支援において大変助けになりました。患者さんの服薬内容をすぐに把握できれば、より多くの患者さんがスムーズに医療支援を受けられます。そのお薬手帳で現在使用されていないことが多い項目があります。ココは絶対書いてほしい、と川添先生が力説する項目とは?

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失業と不眠症との関連

 順天堂大学の前田 光哉氏らは、雇用形態と不眠症関連症状との関連について調査を行った。Industrial Health誌オンライン版2019年3月27日号の報告。 日本の国民生活基礎調査2010のデータより、20~59歳の4万3,865人の匿名データを分析した。雇用形態は、正規雇用、非正規雇用、自営業、その他、失業者、非労働力の6カテゴリで定義した。不眠症関連症状の性別特異的オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、交絡因子で調整した多変量ロジスティック回帰分析を用いた。さらに、精神疾患、喫煙状況、年齢による層別分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・男性における不眠症関連症状の多変量ORは、失業者で2.5(95%CI:1.8~3.4)、非労働力で2.1(95%CI:1.2~3.7)であった。・女性における不眠症関連症状の多変量ORは、失業者で1.9(95%CI:1.5~2.5)であった。・精神疾患で層別分析を行ったところ、この関連性は、精神疾患のない人において、より明確であった。なお、喫煙や年齢との関連性は認められなかった。 著者らは「失業または非労働力男性において、不眠症関連症状の有意に高いORが認められた。そして、この関連性は、精神疾患のない人において、とくに明確であった」としている。■関連記事仕事のストレスとベンゾジアゼピン長期使用リスクとの関連仕事のストレスが大きいほど、うつ病発症リスクは高い:獨協医科大学仕事の早期リタイアは認知症リスクを高める

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症候性AFの第一選択にアブレーション加わる/不整脈非薬物治療ガイドライン(2018 年改訂版)

 「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)」が、2019年3月29日に発表された。本ガイドラインは2011年改訂の「不整脈非薬物治療ガイドライン」、および2012年発表の「カテーテルアブレーションの適応と手技に関するガイドライン」の統合・改訂版。第83回日本循環器学会学術集会(3月29~31日、横浜)で、ガイドライン作成の合同研究班班長である栗田 隆志氏(近畿大学病院 心臓血管センター)、野上 昭彦氏(筑波大学医学医療系 循環器不整脈学)が、植込み型心臓電気デバイス(CIED)とカテーテルアブレーションの主な改訂点についてそれぞれ講演した。ICD適応を日本のエビデンスで裏付け CIEDでは、虚血性の冠動脈疾患および非虚血性心筋症に対する植込み型除細動器(ICD)の適応を、フローチャートの形で整理。ともに考え方や推奨度そのものは、2011年版から大きな変化はない。しかし非虚血性心筋症に対する一次予防では、DANISH試験を含むメタ解析や日本発のエビデンスなど、最新試験結果による推奨度の裏付けがなされた。 栗田氏は、「とくに2つの日本のデータから、非虚血性心筋症の一次予防におけるICD適応の根拠を得ることができたことは大きい。2015年発表のCHART-2試験によって示された、1次予防適応のクラスIならびにクラスIIa相当の患者における致死的不整脈の発生率はこの推奨度を支持する。また、2018年発表のNippon Stormからは、非虚血性の一次予防における適切作動率が、虚血性の二次予防と同程度という結果が得られており、有用性が示されている」と述べた。ESCではQRS幅130ms未満はCRT禁忌、しかし日本では? 心臓再同期療法(CRT)の適応は非常に複雑なため、NYHA心機能分類、薬物治療の施行、LVEF、QRS波形、QRS幅、調律に応じた推奨度を一覧化した表を不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)で初めて掲載している。この中で議論となったのが、CRT 適応とするQRS幅の下限値だ。2013年のEchoCRT試験の結果を受けて、ESC(欧州心臓病学会)の2016年のガイドラインでは、130ms未満はクラスIII(禁忌)となっている。 しかし、日本では120~130msの心筋症患者でもCRTレスポンダーの報告があること、またEchoCRT試験のサブ解析では、左室拡張末期容量(LVEDV)の小さな症例ではCRTの有用性が示されていることなどから、本改訂版では変更なく、下限値を120msとしている。 その他、旧版以降に登場した、リードレスペースメーカ、ヒス束ペーシング、経皮的リード抜去術などの新たな治療法についてもガイドラインでは項目立てされ、エビデンスが整理されている。症候性AFでは、薬物治療とカテーテルアブレーションが第一選択に 野上氏は、まず大前提として甲状腺機能亢進症、肥満、高血圧、糖尿病といった心房細動(AF)のリスク因子の適切な治療なくして、カテーテルアブレーションの施行はないことを強調。そのうえで、症候性AFにおいては、近年発表された3つのRCTやメタ解析でその有用性が示されたことから、抗不整脈薬の投与を経ないカテーテルアブレーションの施行を、抗不整脈薬投与とともに第一選択としてガイドラインでは推奨したと説明した。発作性/持続性AFでは、第一選択としてクラスIIaの推奨度が示されている。長期持続性AFについてはエビデンスが十分ではないが、抗不整脈薬による治療効果が乏しいため、同じくIIbの推奨度がガイドラインでは示されている。 一方、無症候性AFでは、長期予後を改善するというエビデンスは十分ではない。そのため不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)では2012年版と変更なく、推奨度はIIbのままとなっている。周術期の抗凝固療法についての改訂点は まず、ワルファリンとダビガトランを投薬中の患者については、休薬なしでAFアブレーションを施行することにクラスI、その他のDOACについてはクラスIIaの推奨度が不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)では示された。一方、多くの病院で行われている、DOACの術前1回ないし2回の休薬についても、ABRIDGE-J試験の結果などからIIaの推奨度となっている。 その他、単形性持続性心室頻拍(VT)におけるアミオダロン投与有の患者、右室流出路あるいは末梢プルキンエ線維起源の心室期外収縮(PVC)契機の多形性VT・心室細動(VF)に対するアブレーションに、クラスIの推奨度が示されている。■関連記事「心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)」発表/日本循環器学会急性冠症候群ガイドラインの改定点は?/日本循環器学会

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