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保険薬局協会が「公平な調剤報酬」求め要望書を提出【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第25回

「非薬剤師による調剤が可能」と明らかにした「0402通知」の発出、財務省での社会保障の議論など、2020年度診療報酬改定に向けた動きが着々と進んでいます。その報酬改定に関して、日本保険薬局協会(NPhA)が要望書を提出しました。日本保険薬局協会は5月9日、2020年度診療報酬改定に向けた要望書を厚労省に提出したと発表した。2016年度調剤報酬改定以降、一定規模以上の規模の薬局グループに対して調剤基本料の減算の流れが続いていることを「複雑化し、不公正な状況をもたらしている」と指摘。そのうえで、地域支援体制加算の要件について触れ、「各薬局、薬剤師が果たしている機能に応じた公正な調剤報酬に改定するよう」求めた。(2019年5月13日付 ミクスOnline)日本保険薬局協会は、保険薬局が中心となって2004年に設立された団体です。2018年4月時点での会員数(法人数)は、賛助会員を合わせると477法人となっています。日本薬剤師会が、中小の薬局の会員が多く、病院も含めた薬剤師全体の職能団体であるのに対し、日本保険薬局協会は、比較的店舗数が多い中堅以上の保険薬局チェーンを中心とした団体といえます。この日本保険薬局協会が示した地域支援体制加算の要件とはどのようなものなのでしょうか。立地や法人の規模で算定できる地域支援体制加算は「不公平」まず、地域支援体制加算とは、2018年度改定で新設された加算で、それ以前の基準調剤加算を踏襲し、より地域医療に貢献する薬局を評価する目的で新設されたものです。しかし、ふたを開けてみると、調剤基本料1を算定する保険薬局とそれ以外の薬局における難易度には雲泥の差があり、算定の実態から「調剤基本料1を算定しなければ取れない加算」、さらには「調剤基本料1を算定していれば取れる加算」とまでいわれる点数となりました。日本保険薬局協会は、「地域医療への貢献実績がなくても立地や法人の規模で算定できる地域支援体制加算は公平ではない」と指摘し、調剤基本料1以外の場合の既存8要件に「健康サポート薬局」「24時間開局」「地域ケア会議などへの参加」「AMR対策に関する啓発活動」などを加え、そのうち8つの要件を満たすことで算定を可能とすることを要望しています。また、地域支援体制加算以外にも、以下のような要望を提出したと報じられています。かかりつけ薬剤師指導料の算定要件に関して、勤務時間を女性活躍の視点から32時間から30時間に緩和すること調剤基本料を決める処方箋集中率の計算において、在宅関連点数に関わる処方箋を含めること認知症患者に対する在宅業務の重要性を評価する加算制度の創設吸入薬の服薬指導加算の創設医療機関、薬局間におけるプロトコル締結、運用の推進およびその評価薬局薬剤師によるポリファーマシー介入に対する評価ICT技術の活用要は、日本保険薬局協会は、薬局の立地ではなく、それぞれの薬局の機能や薬剤師が果たしている業務について評価することを求めているといえます。薬局はその医療環境によって特色があって当然だと私は思っているので、吸入指導や認知症対応、AMR対策などさまざまな評価項目があるのはよいことなのではないかと思います。立地や会社規模は関係なく、機能で勝負するために薬局を地域に適した方向に舵取りするということは、患者さんにとっても、そして現場で頑張る薬剤師にとってもメリットがあることなのではないでしょうか。

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第39回 札束の入った封筒を渡されたら【週刊・川添ラヂオ】

動画解説まるで自分の孫のことのように川添先生の結婚報告を喜んでくれた患者さん。彼女の認知機能がだんだんと低下していくのを目の当たりにした先生は…。在宅訪問を開始した98年に出会った高齢患者さんのエピソードをお話しします。今ならもっとできることがあったはず!患者さんの認知症にいち早く気が付く方法もご紹介。

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第20回 意識消失発作の症例から学ぶ脈拍の異常2【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回は脈拍の異常を来した患者さん2例を紹介します。脈の乱れは「不整脈」といわれ、その不整脈が徐脈であっても頻脈であっても、患者さんの状態が「不安定」であるときに急を要します。徐脈や頻脈が認められた時、どのような点に気を付けて患者さんと接することがポイントになるでしょうか?症例を通してシミュレーションしていきましよう。患者さんGの場合◎経過──156歳、女性。施設の介護職員です。勉強会が終了し後片付けをしていたときに急に動悸が始まって、倒れそうになりました。椅子に座り苦しそうにしています。「どうしたの?大丈夫?」と職員が心配して集まってきました。◎経過──2Gさんは、以前から動悸を自覚することがあり、病院では「WPW症候群※1、発作性頻拍症」と診断されていると話してくれました。今までは動悸が長く続くことがなかったため経過を見ていました。「今日は少しひどいみたい...」その日は休みだったのですが、勉強会のために施設に来ました。今は夕方ですが、その日に限って昼食はまだ食べておらず水分もあまり摂っていなかったそうです。顔色は蒼白で冷汗をかいています。脈は非常に速くて弱く不規則でした。なんとなく少しボーッとしています。(ショックの徴候かも...)そう思いました。バイタルサインは表の通りで、顕著な頻脈の他に血圧低下が認められました。総合的にみて「循環(C:circulation)」の異常があります。※1 Wolf-Parkinson-White syndrome:ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群正常な刺激伝導(電気信号の流れるルート)では、洞結節から発した電気信号は心房から房室結節を経て心室へ至る。しかし同症候群では、通常のルート以外にKent(ケント)束と呼ばれるバイパス(副伝導路)を有するため、心室への信号は房室結節とKent束を経由することになり、心電図上デルタ波と呼ばれる波形が生じる。副伝導路が存在するため、発作性上室性頻拍を来すことがある。◎経過──3勉強会後に一時席を外していた医師と看護師が戻ってきました。WPW症候群と診断されていることを聞き、Gさんの状態とバイタルサインを見て、救急車を呼ぶことにしました。医師の指示を受けた看護師は静脈路を確保しました。まもなく救急車が到着し心電図モニターを開始しました。「偽性心室頻拍※2ですね...」医師はそう言って、近隣の病院へと向かいました。※2 WPW症候群で心房細動発作が起こると、心房からの頻回の電気信号が、信号を通しやすい副伝導路を通り心室へと伝わる。デルタ波があるために、発作時のQRS幅が広く、心室頻拍のような心電図波形を示すことから「偽性心室頻拍」と呼ばれる。心室細動に移行する危険があるため緊急を要する場合が多い。頻脈に対する診療アルゴリズム図4は頻脈の診療アルゴリズムです。頻脈が確認されたら患者さんの状態が不安定か否かを確認します。図4にあるような症状や徴候があれば「不安定」な状態と考えられ、直ちに治療を開始します。ご覧の通り、不安定か否かを判断する基準は徐脈の場合と同じですね。エピローグ頻脈のGさんは、病院に搬送された後、救急外来で抗不整脈薬による治療を受けました。その日、大事をとって入院し、後日カテーテルアブレーション※3の治療を受けました。退院後、施設に薬を届けに行くとGさんは「あなたがいる所にはいろいろ事件が起こるわね」と冗談交じりに笑顔で話しかけてくれました。※3 経皮的にカテーテルを心臓内部の標的部位に挿入し、高周波通電を行い、頻脈の原因となる異常興奮部位(Kent束)を電気的に焼灼する方法。頻脈性不整脈を根治する治療法。徐脈と頻脈、安定と不安定「徐脈と頻脈」といっても多くの種類の不整脈があります。どんな徐脈性不整脈や頻脈性不整脈であっても、それにより血圧などの循環動態が悪くなったり、図3や図4に示すような「不安定な状態」を示唆したりするような、バイタルサインに大きく影響するような不整脈は緊急度が高いということは、知っておくとよいと思います。

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国内初1日1回経口投与の子宮筋腫症状治療薬「レルミナ錠40mg」【下平博士のDIノート】第25回

国内初1日1回経口投与の子宮筋腫症状治療薬「レルミナ錠40mg」今回は、GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)アンタゴニスト製剤「レルゴリクス錠(商品名:レルミナ錠40mg)」を紹介します。本剤は、フレアアップ現象を生じることなく子宮筋腫に基づく諸症状を改善する国内初の経口薬です。<効能・効果>本剤は、子宮筋腫に基づく諸症状(過多月経、下腹痛、腰痛、貧血)の改善の適応で、2019年1月8日に承認され、2019年3月1日より発売されています。また、2021年12月に「子宮内膜症に基づく疼痛の改善」の適応が追加されました。<用法・用量>通常、成人にはレルゴリクスとして40mgを1日1回食前に経口投与します。なお、初回投与は月経周期1~5日目に行います。本剤の投与によって、エストロゲン低下作用に基づく骨塩量の低下がみられることがあるので、6ヵ月を超える投与は原則として行われません。<副作用>国内第III相試験で認められた主な副作用は、不正子宮出血(46.8%)、ほてり(43.0%)、月経異常(15.5%)、頭痛、多汗、骨吸収試験異常(各5%以上)などでした。なお、重大な副作用としてうつ状態(1%未満)、肝機能障害(頻度不明)、狭心症(1%未満)が認められています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、下垂体に作用して卵巣からの女性ホルモンの分泌を低下させることで、子宮筋腫に基づく過多月経、下腹痛、腰痛、貧血などの症状を改善します。2.初回は、月経が始まった日から5日目までの間に服用を開始してください。3.食後の服用では薬の効き目が低下するため、食事の30分以上前に服用してください。4.この薬を服用している間はホルモン性避妊薬以外の方法で避妊をしてください。5.長期に使用すると骨塩量が低下することがあるため、日ごろから適度な運動を心がけ、カルシウムやビタミンD、ビタミンKを含む食材を積極的に取りましょう。6.気分が憂鬱になる、悲観的になる、思考力が低下する、眠れないなど、うつ様の症状が現れた場合にはご連絡ください。7.女性ホルモンの低下によって、ほてり、頭痛、多汗などの症状が現れることがあります。症状がつらいときはご相談ください。<Shimo's eyes>従来、子宮筋腫の薬物療法としてGnRHアゴニストであるリュープロレリン酢酸塩(商品名:リュープリン注)やブセレリン酢酸塩(同:スプレキュア皮下注/点鼻液)などが用いられています。GnRHアゴニストは、下垂体前葉にあるGnRH受容体を継続的に刺激することで本受容体を減少させ、卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体形成ホルモン(LH)の分泌を抑制させます。投与開始初期にはFSHやLH分泌が一過性に増加するため、不正性器出血や月経症状の増悪などのフレアアップ現象が生じやすいことが知られています。これに対しGnRHアンタゴニスト製剤である本剤は、GnRH受容体を選択的に阻害することでFSHとLHの分泌を抑制します。このため、投与開始初期であってもフレアアップ現象を生じることなく女性ホルモンであるエストラジオールおよびプロゲステロンの産生を低下させます。本剤は1日1回服用の経口薬であり、子宮筋腫に伴う諸症状に悩んでいる患者さんのアドヒアランスとQOLの向上が期待できます。投与に当たっては、妊娠中や授乳中でないかを確認するとともに、服用タイミングなどの指導をしっかり行ってこまめに経過を観察するようにしましょう。※2021年12月の添付文書改訂に伴い、一部内容の修正を行いました。

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腰痛診療ガイドライン2019発刊、7年ぶりの改訂でのポイントは?

 2019年5月13日、日本整形外科学会と日本腰痛学会の監修による『腰痛診療ガイドライン2019』(編集:日本整形外科学会診療ガイドライン委員会、腰痛診療ガイドライン策定委員会)が発刊された。本ガイドラインは改訂第2版で、初版から実に7年ぶりの改訂となる。いまだに「発展途上」な腰痛診療の道標となるガイドライン 初版の腰痛診療ガイドライン作成から現在に至るまでに、腰痛診療は大きく変遷し、多様化した。また、有症期間によって病態や治療が異なり、腰痛診療は複雑化してきている。そこで、科学的根拠に基づいた診療(evidence-based medicine:EBM)を患者に提供することを理念とし、『Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2014』で推奨されるガイドライン策定方法にのっとって腰痛診療ガイドライン2019は作成された。腰痛診療ガイドライン2019は9つのBackground Questionと9つのClinical Question 腰痛診療ガイドライン2019では、疫学的および臨床的特徴についてはBackground Question (BQ)として解説を加え、それ以外の疫学、診断、治療、予防についてはClinical Question (CQ)を設定した。それぞれのCQに対して、推奨度とエビデンスの強さが設定され、益と害のバランスを考慮して評価した。推奨度は、「1.行うことを強く推奨する」、「2.行うことを弱く推奨する(提案する)」、「3.行わないことを弱く推奨する(提案する)」、「4.行わないことを強く推奨する」の4種類で決定する。エビデンスの強さは、「A(強):効果の推定値に強く確信がある」、「B(中):効果の推定値に中程度の確信がある」、「C(弱):効果の推定値に対する確信は限定的である」、「D(とても弱い):効果の推定値がほとんど確信できない」の4種類で定義される。腰痛診療ガイドライン2019では腰痛の定義がより明確に 腰痛診療ガイドライン2019において、腰痛は「疼痛の部位」、「有症期間」、「原因」の3つの観点から定義された。疼痛の部位からの定義では、「体幹後面に存在し、第12肋骨と殿溝下端の間にある、少なくとも1日以上継続する痛み。片側、または両側の下肢に放散する痛みを伴う場合も、伴わない場合もある」とされた。有症期間からは、発症から4週間未満のものを急性腰痛、発症から4週間以上3ヵ月未満のものを亜急性腰痛、3ヵ月以上継続するものを慢性腰痛と定義した。原因別の定義では、「脊椎由来」、「神経由来」、「内臓由来」、「血管由来」、「心因性」、「その他」に分類される。とくに「悪性腫瘍」、「感染」、「骨折」、「重篤な神経症状を伴う腰椎疾患」といった重要疾患を鑑別する必要がある。腰痛診療ガイドライン2019では運動療法は慢性腰痛に対して強く推奨 腰痛診療ガイドライン2019では、運動療法については「急性腰痛」、「亜急性腰痛」、「慢性腰痛」のそれぞれについて評価され、そのうち「慢性腰痛」に対しては、「運動療法は有用である」として強く推奨(推奨度1、エビデンスの強さB)されている。それに対して、「急性腰痛」、「亜急性腰痛」に対してはエビデンスが不明であるとして推奨度は「なし」とされた。腰痛診療ガイドライン2019では各薬剤の推奨度とエビデンスの強さを評価 腰痛診療ガイドライン2019が初版と大きく異なる点は、推奨薬の評価方法である。まず、腰痛診療ガイドライン2019では、「薬物療法は疼痛軽減や機能改善に有用である」として、強く推奨(推奨度1、エビデンスの強さB)されている。そのうえで、腰痛を「急性腰痛」、「慢性腰痛」、「坐骨神経痛」に区別して、各薬剤についてプラセボとのランダム化比較試験のシステマティックレビューを行うことでエビデンスを検討し、益と害のバランスを評価して推奨薬を決定した。オピオイドについては、過量使用や依存性を考慮して弱オピオイドと強オピオイドに分けられている。 腰痛診療ガイドライン2019での各薬剤の推奨度とエビデンスの強さは以下のとおり。●急性腰痛に対する推奨薬<非ステロイド性抗炎症薬> 推奨度1、エビデンスの強さA<筋弛緩薬> 推奨度2、エビデンスの強さC<アセトアミノフェン> 推奨度2、エビデンスの強さD<弱オピオイド> 推奨度2、エビデンスの強さC<ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液> 推奨度2、エビデンスの強さC●慢性腰痛に対する推奨薬<セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬> 推奨度2、エビデンスの強さA<弱オピオイド> 推奨度2、エビデンスの強さA<ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液> 推奨度2、エビデンスの強さC<非ステロイド性抗炎症薬> 推奨度2、エビデンスの強さB<アセトアミノフェン> 推奨度2、エビデンスの強さD<強オピオイド>(過量使用や依存性の問題があり、その使用には厳重な注意を要する) 推奨度3、エビデンスの強さD<三環系抗うつ薬> 推奨度なし*、エビデンスの強さC(*三環系抗うつ薬の推奨度は出席委員の70%以上の同意が得られなかったために「推奨度はつけない」こととなった)●坐骨神経痛に対する推奨薬<非ステロイド性抗炎症薬> 推奨度1、エビデンスの強さB<Caチャネルα2δリガンド> 推奨度2、エビデンスの強さD<セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬> 推奨度2、エビデンスの強さC

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第38回 初めて「自分の患者だ」と思った日【週刊・川添ラヂオ】

動画解説薬剤師にはそれぞれに忘れられない患者さんがいるもの。今回は心に残る患者さんシリーズとして、1996年の病院薬剤師時代に川添先生が「自分の患者だ」と初めて認識し、その後の人生をも大きく変えた80代女性のエピソードをお話しします。皆さんの心に残るエピソードもぜひ番組にお寄せください!

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第22回 患者と医療者の認識にはこんなに大きなギャップがある【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 薬局で得られる患者さんの情報は病院と比べると限られているため、患者さんが病院で聞いた情報や、知らないことの確認がしばしばコミュニケーションの入り口となります。今回は、患者さんが何を理解していて、何を医療者に伝えていないのか示唆を与えてくれる米国の論文を2つ紹介します。なお、米国には、患者経験価値(PX:Patient eXperience)から医療サービスを評価し、それが金銭的なインセンティブに結び付くHCAHPS(Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems)という患者評価指標があるため、PXを調査した研究が豊富にあり参考になります。1つ目は医療者側と患者側の認識の齟齬について調査した研究です1)。コネチカット州にある367床の病院で行われたアンケート調査で、2008年10月10日~2009年6月23日に入院した患者の経験を評価しています。合計89人の患者と43人の医療者が参加し、患者の多くが高卒以上という教育水準で、平均年齢は57.3歳、平均在院日数は5.4日(範囲:2.0~36.0日)でした。結果をみると、患者と医療者の認識のギャップが浮き彫りになっています。たとえば、医療者の77%が患者は診断名を理解していると考えていますが、実際には退院日に自分の診断名を正しく回答している患者は57%でした。また、患者の67%が入院中に薬剤を新規処方されていますが、そのうち25%は医療者から新しい薬の処方があることについて説明を受けていないと回答しています。薬剤の有害事象については90%の患者が説明を受けたことがないと回答していますが、有害事象について一度も話したことがないと回答した医療者は19%でした。心理的ケアについては、患者の半数である46人が入院中に不安や恐怖を感じており、うち25人(54%)は医療者とそのことについて話し合ったことがないと回答している一方で、98%の医療者が少なくとも1回は患者と不安や恐怖について話し合っていたと回答しています。薬局においても、自分はきちんと伝えた、患者さんも理解しているはず、と思わずに、新規薬剤や有害事象の説明や不安のケアを、より丁寧に行うことの重要性を再認識させられる結果です。患者の70%超は医療者にあえて話していないことがある続いて、患者が治療上重要な情報をどれだけ医療者に開示しているかについて、米国の成人4,510例を対象としたオンライン調査の研究を紹介します2)。患者情報を得ることは、正しい診断や指導、禁忌薬投与の回避などに大切ですが、70%超が何らかの重要な事項を医療者へ伝えていないという結果が出ています。2015年3月16~30日にクラウドソーシングのAmazon Mechanical Turk (MTurk)を用いた調査(n=2,096)と、2015年11月6~17日にアンケート調査会社のSurvey Sampling International(SSI)による調査(n=3,011)から参加者を募り、2018年9月28日~10月8日にデータ解析が行われました。無効回答を除いた最終的なサンプルサイズは、2,011例(MTurk)+2,499例(SSI)の計4,510例でした。プライマリアウトカムとして、医療者への7タイプの情報の非開示が設定され、各アウトカムにおける患者の割合は以下のとおりでした。全体では、MTurkで1,630人(81.1%)、SSIで1,535人(61.4%)が少なくとも1つ以上の情報開示をしていません。その理由をみていくと、多い順に「行動について判断や指導をされたくない(MTurk 81.8%、SSI 64.1%)」「その行動がいかに悪いか聞かされたくない(MTurk 75.7%、SSI 61.1%)」「認めるのが恥ずかしい(MTurk 60.9%、SSI 49.9%)」「難しい患者だと思われたくない(MTurk 50.8%、SSI 38.1%)」「医療者の余計な時間を取りたくない(MTurk 45.2%、SSI 35.9%)」「問題だと思っていない(MTurk 38.6%、SSI 32.9%)」「ばかだと思われたくない(MTurk 37.6%、SSI 30.6%)」「記録に残されたくない(MTurk 34.5%、SSI 30.6%)」などと続きます。中には「医療者がその問題を解決できると思わないから(MTurk 27.7%、SSI 28.9%)」のような溝を感じさせる回答もあり、こうした心情への配慮の大切さを物語っています。1つ目の文献において、医療者がしばしば自己紹介していないことが言及されていますが、相手が自己開示しなければ自分も情報提供しづらいという心理は返報性の原理から納得のいくことです。私が以前勤めていた薬局では、まずあいさつして名乗ることが手順化されていましたが、改めて大切なことであったと思います。弊社の電子薬歴システムユーザーで在宅患者数が急速に伸びている薬局があり、秘訣を聞いた際の回答はこうでした。「自分たちや自分たちができることを患者さんに伝える努力をしました」。1)Olson DP, et al. Arch Intern Med. 2010;170:1302-1307.2)Levy AG, et al. JAMA Netw Open. 2018;1:e185293.

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第19回 意識消失発作の症例から学ぶ脈拍の異常1 【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回は脈拍の異常を来した患者さん2例を紹介します。脈の乱れは「不整脈」といわれ、その不整脈が徐脈であっても頻脈であっても、患者さんの状態が「不安定」であるときに急を要します。徐脈や頻脈が認められた時、どのような点に気を付けて患者さんと接することがポイントになるでしょうか?症例を通してシミュレーションしていきましよう。プロローグ本日あなたは施設に内服薬を届けに来ています。「この前、低血糖で入院になったEさんは大丈夫かしら...」そう、今日は前回、低血糖による意識障害のため入院になったEさんの入所している施設に来ています。Eさんは退院後、いつも通り元気にレクリエーションに参加していました。「よかった(笑)」あなたは少しホッとしました。さて、今回は内服薬を届けに来ただけではありません。先日、意識消失発作を来したFさんの件もあり、嘱託の医師・看護師を交えて、施設職員との勉強会が開かれることになり、その時の状況をよく知っているあなたも参加することになったのです。再び、患者さんFの場合勉強会にて(第18回で紹介したFさんです。あの日、あなたが体験し本人から聞いたことをプレゼンテーションしています)72歳、女性。普段から元気な方で特に既往歴はありません。2回ほど、失神したことがありますが病院を受診しておらず、常用薬もありませんでした。心臓突然死の家族歴はありません。あの日、施設に入所している知人に会いに来たところ、面会の最中にフラッとする感じがありました。不安に思い帰宅しようとして歩行中に、意識消失発作を来し転倒しました。意識消失の時間は、(あのときは長く感じましたが)助けを呼んでいる間に回復したので、数十秒から1分程度と考えられます。痙攣はありませんでした。意識が回復した後にFさんから聞いた話では、前兆なく意識をなくしたようです。あなたがそう話し終えると、医師から、その後救急車で病院を受診して、洞機能不全症候群の診断でペースメーカーの治療となりましたと、追加の報告がありました。心臓の刺激伝導系「心電図」という名前がある通り、心臓は電気が流れて動いています〈図1〉。まず、「洞結節」という右心房の上の方にある部分で電気が起こります。そして心房を通って心房筋が収縮し、心房と心室の間にある「房室結節」という中継地点に到達します。さらに「ヒス束」、「右脚と左脚」にわかれ、最終的に「Purkinje(プルキンエと読みます)線維」を通って心室筋へと電気が流れていき心室が収縮します。これらの電気的興奮が伝わる特殊な心筋の経路を刺激伝導系と言います。「洞結節」では1分間に60〜100回の頻度で 規則正しく電気活動が起こりますから、正常な心臓ではこの60〜100回/分 が心拍数ということになります。ちなみに、心拍数というのは心臓の拍動の数ですが、脈拍数は橈骨動脈など末梢血管での脈の回数です。脈拍数が1分間に60回未満である場合を徐脈と言い、100回以上のとき頻脈と言います。徐脈の原因徐脈となる原因は、大きく分けて2つあります。洞結節で発生する電気信号が少なくなった場合と、洞結節からの電気信号が心室筋に伝わらなくなった場合です。前者を洞機能不全症候群といい、後者を房室ブロックと言います。(これらの疾患もそれぞれ原因がありますが、ここでは割愛します)図2は洞機能不全症候群の患者さんの心電図です。*印が心房を流れる電気的興奮の波(P波と言います)ですが、それが一時的になくなっているのがわかります。つまり、洞結節での電気信号が出ていない状態であり、洞機能不全があると判断されます。徐脈に対する診療アルゴリズム今回のFさんは、この洞機能不全症候群だったわけです。さて、徐脈に伴う症状には、めまいや失神といった脳への血流が足りなくなって起こる症状(脳虚血症状)や、倦怠感や息切れといった心臓のポンプ機能の低下による症状(心不全症状)があります。その中でも、バイタルサインに異常を来している状態が最も急を要します。図3は救急診療における徐脈の診療アルゴリズム(手順)です。目の前の患者さんが徐脈を呈しているとき、まずは徐脈による症状があるか否かを確認します。意識状態の悪化、失神、持続する胸痛、呼吸困難などの症状や、血圧低下、ショックの所見などの徴候があるときには、その患者さんは「不安定である」と判断し、直ちに専門医への連絡や治療が必要です。これらの不安定であると判断する症状や徴候は、バイタルサインの異常を来している場合に起こります。ちなみに、急性心筋梗塞の合併症として徐脈性不整脈を来すときがあり、そのため「持続する胸痛」という症状も含まれます(急性心筋梗塞は緊急度の高い疾患です)。Fさんが歩こうとしたとき、救急隊がそれを止めて車いすに乗せたのは、急な容態変化が起こり得ると判断したからです。先日のFさんの出来事をもう1度振り返り、その日の勉強会は終了しました。が、勉強会の後片付けをしていたとき、スタッフの1人が具合悪そうにしています。

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「0402通知」が早くも調剤料引き下げの議論に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第24回

先日のコラム『「薬剤師以外による調剤可能」通知の衝撃度』において、「非薬剤師による調剤」を可能と明示した通知「調剤業務のあり方について」を紹介しました。この通知は「0402(ぜろよんぜろに)通知」と呼ばれていますが、このような呼び方になじみがないという方もいると聞きます。行政から発出され、業界に大きな影響を及ぼす通知は、その発出された月と日の数字を四桁にして並べ固有名詞化することがあります。たとえば、10月26日に発出された通知だったら「1026(いちぜろにろく)通知」となります。このような呼び方は、これからも採用されると思いますので、法則を覚えておくとよいと思います。それはさておき、そのコラムの最後を「このくらいのサプライズがまだほかにあっても不思議ではない」と締めくくりましたが、すでにその兆候が出てきているように感じています。その兆候の最も顕著なものが、2020年度調剤報酬改定への影響です。次回の改定までまだあと1年もあるじゃん!とお思いの方もいるかもしれませんが、すでに議論は始まっています。むしろ、毎回このくらいの時期に、エビデンスが存在する内容や発出された通知の内容が改定の目玉になることが多いように思います。非薬剤師による調剤や機械化により調剤料は引き下げ?ゴールデンウイーク前の4月23日、各省庁への予算を振り分ける財務省が財政制度等審議会財政制度分科会を開催し、社会保障に関する改革案を提示しました。その中には、調剤報酬に関して、0402通知などを参考に挙げながら、対物業務が調剤業務のあり方や技術進歩などによって効率化できること、薬剤師を対人業務へシフトさせていく中でかかりつけ機能の有無による薬局の報酬水準の適正化が必要であることなどから、調剤基本料、調剤料および薬学管理料などの見直しを行うべきとの意見が、改革の方向性として記載されています。この0402通知に関して、ピッキングなどは非薬剤師が行ってもその後の監査で薬剤師がきっちり監査をしていれば問題ないということが白黒はっきりしただけ、と認識している方もいるかもしれません。私も単純なピッキングを含めてすべて薬剤師が行わなければならないという規制には疑問を感じていたので、はっきりしたのはよかったと思っていますが、このタイミングでの通知発出とそれを基にした財務省での議論、という流れをみると、何か根本的なものが変わるのではないかと推察できます。0402通知にもあるように、軟膏剤、水剤、散剤などの計量、混合や監査、そして薬剤の管理などは薬剤師が行うこととありますので、対物業務の責任は減りません。しかし、極論を言えば、次回の改定で「薬剤師は対人業務のみを評価する」となる可能性もゼロではありません。2020年4月になって急に慌てて対人業務に専念することは無理があると思いますので、薬を渡した後のフォローや医師へのフィードバックなどの新たな取り組みを行いつつ、実際の調剤や薬剤管理の手順の構築などの業務効率化を図る必要もありそうです。

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第37回 大学院在学中、川添58歳への挑戦【週刊・川添ラヂオ】

動画解説4月から大学院修士課程に在籍している川添先生。博士課程の修了は6年後58歳となる予定です。病院、薬局、在宅とさまざまな場所で活躍する川添先生ですが、研究発表では「うまくできていない」と先輩方からはなじられることもあったそう。大学院進学を決断した川添先生が説く「薬剤師への大学院進学の勧め」。

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長時間作用型持効性注射剤による統合失調症患者の機能アウトカムへの効果~メタ解析

 心理社会的機能障害は、統合失調症で一般的にみられる。非定型抗精神病薬の長時間作用型持効性注射剤(LAI)は、アドヒアランスを改善することにより、心理社会的機能を改善すると考えられる。しかし、臨床試験において非定型抗精神病薬LAIが心理社会的機能に及ぼす影響を検討したシステマティックレビューは報告されていない。オーストラリア・アデレード大学のAndrew T. Olagunju氏らは、非定型抗精神病薬LAIとプラセボまたは経口抗精神病薬を比較したランダム化比較試験のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The Australian and New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2019年4月8日号の報告。 主要データベースより、2018年までの非定型抗精神病薬LAIとプラセボまたは経口抗精神病薬を比較したランダム化比較試験を言語の制限なく検索した。心理社会的機能の変化とその予測因子に関する調査結果をシステマティックにレビューした。心理社会的機能の変化に関するデータは、ランダム効果モデルを用いてメタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・システマティックレビューには26研究、メタ解析には19研究、8,616例(男性の割合:68.1%)が含まれた。・非定型抗精神病薬LAIは、心理社会的機能の改善において、プラセボ(標準化平均差[SMD]:0.39、95%信頼区間[CI]:0.32~0.47、p<0.001、I2=0%、9研究)および経口抗精神病薬(SMD:0.16、95%CI:0.01~0.31、p=0.04、I2=77%、10研究)と比較し優れており、その優位性は、短期および長期試験においても維持されていた。・心理社会的機能の不良の予測因子は、治療期間の長さ、症状重症度、認知機能不良、病識不良であった。・機能の評価は、単一または複数の方法の組み合わせにより評価したが、ほとんどの研究において、主要アウトカムではなかった。・その他のバイアス要因としては、盲検およびランダム化不良の報告が含まれていた点であった。 著者らは「非定型抗精神病薬LAIの心理社会的機能に対する改善効果は、プラセボと比較し有益であったが、経口抗精神病薬に対する優位性は大きくなかった。ベースライン時の重度な精神症状は、心理社会的機能の不良を予測した」としている。

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HIV予防薬服用で性感染症が増加するのは悪いことなのか?(解説:岡慎一氏)-1040

 いったんHIVに感染すると、現在の治療では治癒は不可能である。つまり、一生涯におよぶ治療が必要となる。日本では、年間の医療費は約250万円/人である。30歳前後でHIVに感染し、40年間治療を受ければ1人約1億円の医療費がかかる。HIV治療の公費負担は感染者が増えれば増えるほどかさむことになる。この10年間、毎年1,500人前後の新規感染者が発見されている。残念ながら、コンドーム推進キャンペーンが有効だとはいえない状況である。 世界で唯一、新規感染者を減らす方法として有効性が確立されているのは、今回の論文に出てくるHIV Pre-Exposure Prophylaxis(PrEP)である。PrEPとは、HIV感染リスクの高い人が前もって予防薬を服用することである。この予防法は非常に有効で、しっかりと予防薬さえ飲んでいれば、コンドームなどを使わなくてもHIVに感染することはほぼゼロになる。使わなくてもよければ使わない人が増えるのは当然で、その結果として、その他の性感染症(STI)が増加することは容易に予測される。この研究でも実際にSTIが増加したことが示されている。当然PrEPを始めると定期的にSTIの検査を受けるので、より多くのSTIが見つかるはずである。したがって、この論文では、検査件数で補正している。PrEP前に比べ検査件数で補正するとSTI全体で1.12倍増えている。しかしである。たった1.1年のフォローアップ期間である。PrEPにより定期的なSTI検査と早期診断・早期治療を徹底していけば、STI自体も減ってくるはずである(そのような地域もある)。さらに、HIV感染症と他のSTI、たとえば注射一本で治る淋病との重要度は比べようもない。HIVに対するrisk compensationとして1.12倍STIが増えたとしても取るに足らないことであろう。 現在、新規HIV感染者が激減しているのは、PrEPが実施されている国や地域のみである。2016年にWHOがHIVガイドラインでPrEPを強く推奨してから、2019年4月現在、世界ではすでに44ヵ国でPrEPが承認されている。そろそろ日本もcost effectivenessの確立されたPrEPの薬事承認をすべきときに来ている。

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自分への投資と資産形成は両立できる!【医師のためのお金の話】第20回

自分への投資と資産形成は両立できる!大学医局制度が維持されていた時代の医師の価値観は、おおむねいくつかのパターンに限られていました。代表的なものは、医師になったら30歳前後で結婚して、子供を2~3人もち、マイホームを購入し、自分の専門分野を極め、卒後10年前後で開業するか否かを悩み、65歳くらいで第一線を退いて、その後は時々仕事をしながら悠々自適に過ごすパターンです。しかし現在では、医師の価値観も多様化しています。多くの医師は専門医を取るでしょうが、学位まで取得しようと考える人は少数派になってきました。また、アカデミックポジションを極めようとする医師が少なくなったことも、1つの傾向として挙げられます。これに対して、自身のQOLを重視する医師の数は増えています。どのような価値観であっても自分の人生ですから、他人がとやかく言うべきものではありません。医師として頑張ると資産形成できない?最近は、医師の中でも経済的自由を志す人が増えてきました。そのような方は比較的若い時代から蓄財に励み、資産形成を粛々と実践しています。このような考えに対して、「やりたいことを犠牲にしてまで、資産形成をしたいと思わない」といった意見があります。このような意見の裏側には、「お金よりも医師としての研鑽のほうが大事だよ」という思いが見え隠れします。もちろん、医師としてのスキルを磨くのは若い時にしかできないので、大いに自己研鑽するべきです。しかし、スキルアップのために自分への投資をたくさんしたからといって、資産形成ができないわけではありません。一般的な医師が資産形成できない理由は、自分に投資するからではなく、単に浪費生活を続けているからです。確かに、留学すると経済的には大きな打撃を受けます。しかし、長期間の留学を除けば、資産形成が犠牲になるということはありません。たとえ大学院に進学するとしても、医師はアルバイトだけで一般の人と比べて高額な所得を稼ぎ出します。もちろん、常勤医師として働くより少ないですが、だからといって資産形成ができない言い訳にはなりません。このことから、ほとんどのケースで、医師としてのスキルを磨くことと、資産形成は両立できると考えています。「若い時は自分を犠牲にしてまで資産形成したいと思わない」という意見は、単なる甘えにすぎないと私は考えています。若い時の研鑽は医師キャリアのモデルケース繰り返しますが、医師としてのスキルアップのために自分へ投資をすることと資産形成は両立可能だと思います。実際、医師としてストイックに研鑽して、仕事に情熱を傾けるほど、普段の生活でお金を使う場面がなくなります。このため、知らないうちに資産形成のタネ銭が貯まるという副次的効果が見込めます。意外かもしれませんが、若い時に医師としてのスキルを高めることは、同時に資産形成のタネ銭を貯めることにつながるので、医師キャリアのモデルケースではないかと考えています。自分への投資と資産形成は両立できる!そうはいっても、多くの医師はこのようなモデルケースに該当しないです。医師の業務はストレスフルなので、ついつい散財しがちです。医師は真面目な人が多いので、自分のスキルアップに余念はないのですが、ストレスの反動から浪費を繰り返してしまうため、資産形成のタネ銭が貯まらないのです。しかも、自分が散財しているという意識が低いため、40歳前後になってふとわれに返ると、ほとんど資産がないことに気付く医師が後を絶ちません。このような事態を避けるためにも、卒後10年ほどはストイックに医師としてのスキルアップを志向すると同時に、ストレスに起因する散財を意識して抑制することを心掛ける必要があります。これだけで、自分への投資と資産形成は両立できるということを、ぜひ知ってほしいのです。

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第18回 意識の異常〜意識障害と意識消失発作-2【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回は意識レベルの異常を来した患者さん2例を紹介します。「意識障害」と「意識消失発作」はともによく耳にする言葉ですが、これらの違いはご存じでしょうか?2つの症例を通して学びたいと思います。患者さんFの場合◎経過──170歳代と思われる女性。低血糖の件が落ち着き、あなたが施設を後にしようと玄関に向かうと、横から70歳代と思われる女性がフラフラと歩いてきました。そしてなんと、あなたの目の前でバタンと卒倒してしまいました。頭を打ち、床には少量の血液が流れました。「大丈夫ですか!」呼びかけてもピクリとも動かず、反応がありません。「誰か!」そう叫んだその後、女性はゆっくりと眼を開けました。「大丈夫ですか?」と尋ねると、こちらを向いてうなずいてくれました。集まってきた施設の職員と一緒に、その方をベッドに寝かせる頃には、意識はすっかり良くなっていました。◎経過──2話を聞くと、その日は施設に入所している知人に会いに来たのだそうです。面会の最中にフラッとするような感じがしたのが気になり、帰宅しようと歩いていました。すると、スーッと意識をなくし、気がついたら倒れていて、周りにたくさんの職員さんが集まっていたといいます。以前にも同じように意識をなくしたことが2回あるとのこと。話を聞きながら、バイタルサインを確認すると、徐脈があることに気がつきました〈表4〉。意識消失発作とは「失神」とも呼ばれ「一過性の意識消失発作で、体位が維持できないもの。発症は比較的急速であるが、速やかに完全に自然回復するもの」と定義されます。一過性に脳全体の血流が低下することによって起こる発作で、その原因は表5のとおりです。失神の患者さんの3人に1人は原因不明だったとの報告がありますが、ぜひ覚えていてほしいのは、心原性失神の場合には他の原因の失神に比べて予後が悪く、突然死の前兆となる場合があることです。◎経過──3あなたが「頭をケガしたみたいですから、病院に行った方がよいですよ」と言うと、施設の職員の1人は「倒れたときに救急車を呼んでしまいました」と言いました。本人は「もう大丈夫なんですけど...」とつぶやきながら、到着した救急車に歩いていこうとしましたが、救急隊員にとめられ、車いすで施設のベッドから救急車に向かいました。◎経過──4病院に到着してから、再び意識消失発作があったそうです。意識消失発作時、救急外来での心電図モニターでは顕著な徐脈が確認され、洞機能不全症候群※の診断でペースメーカーを入れることになりました。ペースメーカー移植術が無事に終わると、その後は意識消失発作を起こすことはなくなったそうです。※心臓の収縮リズムを調節する洞房結節の機能障害により徐脈が生じ、脳、心臓、腎臓などの機能不全を呈する症候群。徐脈から脳の虚血が起こり、意識消失発作などを引き起こすことがある。エピローグ疲労困憊したあなたは、やっと自宅に帰ってきました。「今日は大変な一日だったわ...、早く寝よう...」「でも、また同じような患者さんに出会ったらどうしたらいいのかしら...」そう思ったあなたは、寝る前に少しだけ教科書を開いてみることにしました。意識障害と意識消失発作これらの違いを理解できましたか?言葉は似ていますが、その意味や疑われる疾患が異なることを知っておいてください。意識障害は急を要することはわかっていただけると思います。意識消失発作(失神)は、意識障害と違ってまもなく意識の状態は改善しますが、意識消失発作を繰り返したり、ときに生命にかかわる疾患が隠れていたりすることがあるので、注意しましょう。

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添付文書改訂:スーグラ、フォシーガ/ゾフルーザ、タミフル/セロクエル、ビプレッソ、タケキャブほか【下平博士のDIノート】第24回

スーグラ錠25mg/50mg、フォシーガ錠5mg/10mg画像を拡大する<用法・用量>【イプラグリフロジン錠】1型糖尿病:インスリン製剤との併用において、通常、成人にはイプラグリフロジンとして50mgを1日1回朝食前または朝食後に経口投与します。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら100mgを1日1回まで増量可能です。【ダパグリフロジン錠】1型糖尿病:インスリン製剤との併用において、通常、成人にはダパグリフロジンとして5mgを1日1回経口投与します。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら10mgを1日1回まで増量可能です。<使用上の注意>1.本剤はインスリン製剤の代替薬ではありません。インスリン製剤の投与を中止すると急激な高血糖やケトアシドーシスが起こる恐れがあるので、本剤の投与にあたってはインスリン製剤を中止しないでください。2.本剤とインスリン製剤の併用にあたっては、低血糖リスクを軽減するためにインスリン製剤の減量を検討します。ただし、過度な減量はケトアシドーシスのリスクを高めるので注意してください。なお、臨床試験では、インスリン製剤の1日投与量の減量は、イプラグリフロジン錠では15%、ダパグリフロジン錠では20%以内とすることが推奨されました。<Shimo's eyes>選択的SGLT2阻害薬であるイプラグリフロジン錠(商品名:スーグラ)とダパグリフロジン錠(同:フォシーガ)の効能・効果に、1型糖尿病が追加されました。これまで、成人1型糖尿病患者で、インスリン療法を行っても血糖コントロールが不十分な場合に使用できる経口薬はα-グルコシダーゼ阻害薬のみでしたが、今回の適応追加で、イプラグリフロジン錠またはダパグリフロジン錠による良好な血糖コントロールの維持や合併症の予防ができると期待されています。SGLT2阻害薬は、インスリン非依存的な血糖降下作用を示しますが、併用にあたっては低血糖やケトアシドーシスの発現に注意しましょう。ゾフルーザ錠10mg/20mg、タミフルカプセル75/タミフルドライシロップ3%画像を拡大する<重要な基本的注意>出血が現れることがあるので、患者およびその家族に以下を説明してください。1.血便、鼻出血、血尿、吐血、不正子宮出血などが現れた場合には医師に連絡すること。2.投与数日後にも現れることがあること。<併用注意(併用に注意すること)>ワルファリン:併用後にプロトロンビン時間が延長した報告があります。併用する場合には、患者の状態を十分に観察するなど注意しましょう。<Shimo's eyes>抗インフルエンザ治療薬のオセルタミビル(商品名:タミフル)とバロキサビル(同:ゾフルーザ)において、これらとの因果関係が否定できない出血に関する副作用が複数報告されたことを受け、厚生労働省医薬・生活衛生局が「使用上の注意」改訂の指示を出しました。また、「併用注意」としてワルファリンが追記されたため、抗凝固療法を行っている患者さんでは、慎重な観察が必要となります。セロクエル錠25mg/100mg/200mg、細粒50%、ビプレッソ徐放錠50mg/150mg、タケキャブ錠10mg/20mgほか画像を拡大する<重大な副作用>中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(SJS)、多形紅斑が現れることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行ってください。<Shimo's eyes>薬疹の中では最も重症であるTENの死亡率は20~30%と考えられています。TENとSJSは重症多形滲出性紅斑と呼ばれる1つの疾患群に含まれ、水疱、びらんなどで皮膚がむけた部分が体表面積の10%未満の場合はSJS、10%以上の場合はTENと称されています。原因となる薬剤は多種多様で、ラモトリギン、ゾニサミド、カルバマゼピン、フェノバルビタールなどの抗てんかん薬やアロプリノール、各種解熱鎮痛薬などが挙げられます。発熱(38℃以上)を伴う皮膚や口唇、眼球結膜、外陰部などの皮膚粘膜移行部における発疹やただれ、破れやすい水ぶくれのような症状が現れた場合、ただちに医師または薬剤師に相談するように指導しましょう。

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第36回 「薬剤師以外も調剤可能」で薬剤師の年収は? 川添が"タブー"に切り込む! 【週刊・川添ラヂオ】

動画解説「薬剤師以外の者が調剤してはならない」という薬剤師法19条が2019年4月2日に厚労省によって覆されることとなりました。皆さんはこの通知についてどう感じたでしょうか?調剤以外の時間が増えることを喜ぶ人、仕事を奪われることを心配する人、さまざまな意見があります。さて川添先生が早速調べた調剤補助員の時給は?そして今後の薬剤師の年収は?変化する薬剤師の働き方を説く!

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第17回 意識の異常〜意識障害と意識消失発作-1【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回は意識レベルの異常を来した患者さん2例を紹介します。「意識障害」と「意識消失発作」はともによく耳にする言葉ですが、これらの違いはご存じでしょうか?2つの症例を通して学びたいと思います。患者さんDの場合◎経過──182歳、男性。施設入所中の方です。杖をついて歩くことができ、施設内でのレクリエーションにも積極的に参加しています。生活習慣病として高血圧症・糖尿病・脂質異常症があり、主治医からは降圧薬・経口血糖降下薬処方されています。普段は元気に過ごされていますが、2日前から発熱・嘔吐・下痢があり、ウイルス性胃腸炎との診断で嘱託医から胃粘膜保護薬と整腸薬が処方されました。本日、あなたが施設に行くと、職員があわただしく動き回っている光景を見ました。「大丈夫ですか!? 大丈夫ですか!?」見ると、いつも元気で過ごしているEさんが、ベッド上にぐったりとして意識がないようです。一方で、他の職員は嘱託医に電話連絡しているところでした。意識と、意識の中枢と、意識障害意識という言葉は、医学だけでなくいろいろな分野でいろいろな意味合いで使われているようですが、一般的には「目が覚めていて(覚醒)、自分や周囲の状況が認識できている(認知)状態」と定義されます。これらが障害された状態を意識障害といいます。ヒトは覚醒しているとき、脳幹にある「脳幹網様体」と呼ばれる部分に身体の感覚が入り、それが脳の視床という部分を介して大脳皮質に伝わります(上行性網様体賦活系といいます)〈図〉。この脳幹網様体が障害された時、または、両側の大脳が広範に障害された時に意識障害を生じます。意識障害の状態は表1のJapan Coma Scale(JCS)を参考にしてください。スライドを拡大する◎経過──2意識がないEさんを目の当たりにして、あなたは少し動揺してしまいました。(先生には連絡が行っているはずだから、こういうときこそ落ち着いて、基本に立ち返って...)あなたは一度深呼吸をして、バイタルサインを確認しました〈表2〉。Eさんはぐっしょりと全身に汗をかいています。(意識レベル以外にあまり異常はないわ...。どうしよう)意識障害の原因前述の通り、脳幹網様体や、両側大脳が広範に障害されると意識の状態が悪くなります(=意識障害を来します)。これらが障害されるのは、脳出血・脳梗塞といった頭蓋内疾患の場合もありますし、脳幹や大脳に影響を及ぼすような脳以外の疾患の場合もあります。意識障害の原因を検索するとき、表3のような「アイウエオチップス」という覚え方があります。表3を見ていただくと、実は脳の疾患に伴う意識障害よりも、脳以外の疾患を原因とする意識障害の方が多いことに気がつきます。ですから、「意識障害=脳の疾患」という訳ではありません。意識障害の鑑別には、その場のバイタルサインだけでなく、意識障害に至った病歴、既往歴、服用歴、身体診察、さらに血液検査、血液ガス分析、頭部CTを含めた画像診断が必要となります。この観点から、意識障害の患者さんは必ず病院の受診が必要ですが、意識障害の原因疾患の中でも緊急度の高いのは、バイタルサインに異常を来している場合(呼吸や循環にも異常がある場合)と低血糖です。スライドを拡大する◎経過──3(そういえばEさん、糖尿病の薬を内服している!)そう思ったとき、嘱託医が到着しました。医師が診察を始めるのと同時に、看護師は医師の指示で血糖を測定しました〈写真〉。「血糖『20未満』です」看護師が言うと、医師は静脈路確保の後、50%ブドウ糖液を40mL静注し、まもなくEさんの意識レベルは改善しました。最近の嘔吐・下痢で食事があまり摂れないのに、経口血糖降下薬は継続していたため、低血糖になったと考えられました。内服薬の効果の持続する時間を考えると、低血糖が遷延する可能性があり、提携している病院に入院することとなりました。医師はEさんを搬送するため、救急車に同乗していきました。

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第21回 関節リウマチとMTXにまつわるお役立ちエビデンス集【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 関節リウマチの罹患率は人口の1%とも言われ、とくに女性の患者は男性の2~3倍と多く、いずれの年代でも発症しうる疾患です1)。関節リウマチ治療の第1選択薬は言わずと知れたメトトレキサート(MTX)で、関節破壊の進行を抑制するために重要かつ有名な薬剤です。今回はそのMTXに関連するエビデンスをあらためて紹介します。有効性についてMTXの有効性については、関節リウマチ患者732例においてMTX単独投与の効果をプラセボと比較したコクランのシステマティックレビュー2)など、すでに十分なエビデンスがあります。これは1997年に発表されたレビューの2014年改訂版で、レビューに含まれているのは1980〜90年代の試験です。以前の治療や併用薬としてNSAIDsや他の抗リウマチ薬を使用している場合もありますが、有効性については、ほとんどの主要評価項目で有意な改善を認めています。ACR50(圧痛関節数、膨張関節数、患者による疼痛評価、患者による全般活動性評価、などの評価で必須項目を含む50%以上の改善)を達成したのは100人当たりプラセボ8例、MTX23例で、健康関連QOLのNNT(Number Needed to Treat:必要治療数)=9、X線写真における関節破壊の進行評価のNNT=13と、MTXの有意な効果が示されています。一方で、3~12ヵ月の評価では、プラセボと比較して100人当たり9例に、多くの有害事象による中止が報告されています。葉酸との併用について葉酸またはフォリン酸(ロイコボリン)を摂取することで、MTXによる悪心、腹痛、肝機能異常などが低減し、口内炎も減る傾向にあることが示唆されています3)。こちらもコクランに掲載された、MTXと葉酸またはプラセボ併用を比較した6つの二重盲検ランダム化比較試験、計624例を含むシステマティックレビューです。葉酸またはフォリン酸併用群では、24~52週のフォローアップで、消化器系の副作用(悪心、嘔吐、腹痛)の絶対リスク減少率-9.0%、相対リスク減少率-26.0%、NNT=11と、プラセボ群よりも有意に減少しています。同じ期間の口内炎の発生については、絶対リスク減少率-6.2%、相対リスク減少率-27.8%で、統計的有意差はないものの減少傾向にありました。また、肝毒性(トランスアミナーゼ上昇)の発生率は、8〜52週間のフォローアップ期間において、絶対リスク減少率-16.0%、相対リスク減少率-76.9%、NNT=6と、葉酸を併用する多くのメリットが示されています。なお、葉酸併用によるMTXの効果の有意な減弱はありませんでした。関節リウマチ治療におけるMTX診療ガイドライン 2016年改訂版においても、MTXを継続している患者では、必要に応じて葉酸を併用することが推奨されています4)。投与間隔については、MTX服用の24~48時間後が一般的です。同ガイドラインによれば、そのベストな投与間隔について明確なエビデンスはないとされていますが、少なくともその時間を空ければMTXの効果に影響はないだろうとのことです。なお、ロイコボリンレスキュー療法の研究では、MTX服用後42~48時間を過ぎてしまうとMTXの毒性が発現しやすくなることが報告されています5)。感染症リスクについてMTXは免疫抑制作用を有する薬剤ですので、肺炎、発熱、口内炎など感染兆候に注意を払うことも大切です。2015年にLancetに掲載されたネットワークメタ解析で、慢性関節リウマチ患者において、MTX使用時と生物学的製剤使用時の重篤感染症(死亡例、入院例、静脈注射の抗菌薬使用例)発現リスクについて検討されています6)。結果としては、生物学的製剤はDMARDsに比べて重篤感染症リスクが約30%高く、とくにMTX使用歴がある患者および標準〜高用量の生物学的製剤使用患者ではリスクが高いという傾向にありました。年間1,000人当たりの重篤感染症発生人数は、DMARDs服用群で20例、標準量の生物学的製剤使用群で26例、高用量の生物学的薬剤使用群で37例、生物学的製剤との併用群で75例です。MTX使用歴がない患者では、感染症リスクの有意な増加はありませんでした。近年では多くの生物学的製剤が発売されているので、MTXとの併用時や易感染性疾患罹患時の感染兆候モニタリングは意識しておくとよいでしょう。1)MSDマニュアル 関節リウマチ2)Lopez-Olivo MA, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2014;6:CD000957.3)Shea B, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2013;5:CD000951.4)関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン 2016年改訂版5)Cohen IJ, et al. Pediatr Blood Cancer. 2014;61:7-10.6)Singh JA, et al. Lancet. 2015;386:258-265.

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