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子供の体脂肪量測定、正確で簡便な方法を開発/BMJ

 身長、体重、年齢、性別、民族という5つの因子に基づき、子供の体脂肪量をBMIより正確に測定する可能性のある新たなモデルが開発された。英国・ロンドン大学のMohammed T. Hudda氏らが、BMJ誌2019年7月24日号で報告した。体重に基づく尺度として、BMIは非脂肪量(lean mass)と脂肪量(fat mass)を判別せず、既定のBMIの集団でも脂肪量に大きなばらつきがあり、心血管代謝疾患のリスクとの関連にも違いが生じる可能性があるという。子供の体脂肪量の評価を改善するために、日常的に利用しやすい測定値に基づく、より正確で簡便な方法が求められている。4つの横断研究をメタ解析で統合し、モデルを導出 研究グループは、複雑な評価形式を要さず、身長や体重などの人口統計学的な情報を使用した子供の体脂肪量の予測モデルを開発し、妥当性を検証する目的で、個人レベルのデータを用いたメタ解析を行った(英国心臓財団などの助成による)。 予測モデルの開発には、英国の4つの横断研究に参加した4~15歳の多民族で構成される2,375例(男児1,136例[47.8%])のデータを用いた。外的妥当性の検証には、11~12歳176例の形態測定値と重水希釈法による体脂肪量のデータを使用した。 内的妥当性の評価では、optimism(モデルの過大評価)を推算し、bootstrap法(1,000サンプル)を用いてこの過大評価を調整することで予測能を修正した。 身長、体重、年齢、性別、民族の予測変数を含む最終モデルは、きわめて高い予測能(optimismの調整R2:94.8%、95%信頼区間[CI]:94.4~95.2)を示すとともに、実測値と予測値の優れた較正(calibration)が達成され、過大評価の最小化と良好なモデルの一般化可能性がもたらされた。 外的妥当性の検討では、体脂肪量の実測値と予測値の良好な較正(較正slope:1.02、95%CI:0.97~1.07)とともに、モデルの有望な一般化可能性(R2:90.0%、95%CI:87.2~92.8)が示された。体脂肪量の実測値と予測値の平均差は-1.29kg(95%CI:-1.62~-0.96)だった。BMIに比べ、正確性が改善する可能性 4~15歳の子供の体脂肪量推定値の予測計算式は以下のとおり。 体脂肪量=weight-exp[0.3073×height2-10.0155×weight-1+0.004571×weight+0.01408×BA-0.06509×SA-0.02624×AO-0.01745×other-0.9180×ln(age)+0.6488×age0.5+0.04723×male+2.8055] ・exp:指数関数、ln:自然対数変換 ・子供が黒人(BA)、南アジア系(SA)、他のアジア系(AO)、その他の民族(other)の場合の数値は1、これら以外の場合の数値は0とする。 ・子供の民族が不明の場合は白人として扱う。 ・身長はメートル(m)、体重はキログラム(kg)、年齢は歳(years)、体脂肪量はキログラム(kg)。 たとえば、12歳の身長1.6m、体重42kgの黒人少女の体脂肪量は、42−exp[0.3073×1.62-10.0155×42-1+0.004571×42+0.01408×1-0.06509×0-0.02624×0-0.01745×0-0.9180×ln(12)+0.6488×120.5+0.04723×0+2.8055]=42−exp[3.5262]=42-33.9929=8.01kgとなる。 著者は「この予測モデルは、肥満の効果的な調査や予防、マネジメントにおいて、子供の体脂肪量の評価の正確性を、BMIと比較して改善する可能性がある。また、このモデルを国際的に適用するには、さまざまな集団におけるさらなる妥当性の検証を要する」としている。

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本邦初、高齢者のがん薬物療法ガイドライン発行/日本臨床腫瘍学会

 約3年をかけ、高齢者に特化して臓器横断的な視点から作成された「高齢者のがん薬物療法ガイドライン」が発行された。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で概要が発表され、作成委員長を務めた名古屋大学医学部附属病院の安藤 雄一氏らが作成の経緯や要点について解説した。なお、本ガイドラインは日本臨床腫瘍学会と日本癌治療学会が共同で作成している。高齢者を一律の年齢で区切ることはせず、年齢幅を持たせて評価 本ガイドラインは「Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2014」に準拠し、臨床試験のエビデンスとともに、益と害のバランス、高齢者特有の価値観など多面的な要因に基づいて推奨の強さが検討された。作成委員会からは独立のメンバーによるシステマティックレビュー、専門医のほか非専門医・看護師・薬剤師・患者からの委員を加えた推奨パネルでの投票により、エビデンスの強さ(4段階)と推奨の強さ(2段階+推奨なし)が決定されている。 対象となる高齢者については、一部のCQを除き具体的な年齢で示すことはしていない。各薬物療法の適応になる基本的な条件を満たしており、PS 0または1、明らかな認知障害を認めず、主な臓器に機能異常を認めない患者が対象として想定されている。“実臨床で迷うことが多い”という観点で12のCQを設定 12のクリニカルクエスチョン(CQ)は、CQ1が総論、CQ2~3が造血器、CQ4~6が消化管、CQ7~9が呼吸器、CQ10~12が乳腺という構成となっている(下記参照)。各CQは実臨床で遭遇し判断に迷うもの、そして臨床アウトカムの改善が見込まれるものという観点で選定。例えば呼吸器のCQ7は、予防的全脳照射(PCI)を扱っており、薬物療法ではないが、実臨床で迷うことが多く重要、との判断から取り上げられた。 推奨パネルでの投票で意見が割れ、最終的な決定にあたって再投票を実施したCQも複数あった。呼吸器のCQ8では、高齢者の早期肺がんに対する術後補助化学療法としてのシスプラチン併用について検討している。報告されている効果は5年生存率で+10%と小さく、1%の治療関連死が報告されている。判断について意見が分かれたが、最終的に、「実施することを明確に推奨することはできない(推奨なし)」とされている。 本ガイドラインでは、関連のエビデンス解説や推奨決定までの経緯についての記述を充実させており、巻末には各CQについて一般向けサマリーを掲載している。患者ごとに適した判断をするために、また患者にリスクとベネフィットを正確に伝えるために、これらの情報を活用することが期待される。独自のメタアナリシスを実施したCQも そもそも高齢者は臨床試験の選択基準から除外されることが多く、エビデンスは全体的に乏しい。評価できるエビデンスがサブグループ解析に限られ、直接高齢者を対象としたRCTは存在しないものが多かった。消化器のCQ5では、70歳以上の結腸がん患者に対する術後補助化学療法について検討しているが、70歳以上へのオキサリプラチン併用療法は、現状の報告から明確な上乗せ効果は確認できず、一方で末梢神経障害の増加が認められることから、「オキサリプラチン併用療法を行わないことを提案(弱く推奨)」している。 独自のメタアナリシスを行ったCQもある。乳がん領域のCQ11では、高齢者トリプルネガティブ乳がんの術後化学療法で、アントラサイクリン系抗がん剤の省略が可能かどうかを検討している。2つの前向き試験(CALGB49907とICE II-GBG52)のメタアナリシスを行い、アントラサイクリン系抗がん剤を省略することで生存期間と無再発生存期間が短縮する可能性が示唆された。その他心毒性についての観察研究結果などのエビデンスも併せて検討された結果、「アントラサイクリン系抗がん薬を省略しないことを提案(弱く推奨)」している。各領域で取り上げられているCQ[総論] CQ1 高齢がん患者において,高齢者機能評価の実施は,がん薬物療法の適応を判断する方法として推奨されるか?[造血器] CQ2 高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療方針の判断に高齢者機能評価は有用か? CQ3 80才以上の高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してアントラサイクリン系薬剤を含む薬物療法は推奨されるか?[消化器] CQ4 高齢者では切除不能進行再発胃がんに対して,経口フッ化ピリミジン製剤とシスプラチンまたはオキサリプラチンの併用は推奨されるか? CQ5 結腸がん術後(R0切除,ステージIII)の70才以上の高齢者に対して,術後補助化学療法を行うことは推奨されるか?行うことが推奨されるとすれば,どのような治療が推奨されるか? CQ6 切除不能進行再発大腸がんの高齢者の初回化学療法においてベバシズマブの使用は推奨されるか?[呼吸器] CQ7 一次治療で完全奏効(CR)が得られた高齢者小細胞肺がんに対して,予防的全脳照射(PCI)は推奨されるか? CQ8 高齢者では完全切除後の早期肺がんに対してどのような術後補助薬物療法が推奨されるか? CQ9 高齢者非小細胞肺がんに対して,免疫チェックポイント阻害薬の治療は推奨されるか?[乳腺] CQ10 高齢者ホルモン受容体陽性,HER2陰性乳がんの術後化学療法でアントラサイクリン系抗がん薬を投与すべきか? CQ11 高齢者トリプルネガティブ乳がんの術後化学療法でアントラサイクリン系抗がん薬の省略は可能か? CQ12 高齢者HER2陽性乳がん術後に対して,術後薬物療法にはどのような治療が推奨されるか?

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免疫CP阻害薬のやめ時は?最終サイクル後の30日死亡率/日本臨床腫瘍学会

 進行・難治性がん患者に免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を使用する機会が増えているが、明確な中止基準は確立されていない。2011 national cancer strategy for Englandでは、回避可能な全身性抗がん剤治療(SACT)による害の臨床指標として、30日死亡率を提唱している。今回、一宮市立市民病院 龍華 朱音氏らが、ICI治療の最終サイクル後30日以内に死亡した患者について調査したところ、PS不良の患者にICI治療が選択される傾向があり、また、最終サイクルの治療費が従来の治療の約10倍となっていることが明らかになった。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で報告された。 本研究では、2016年1月~2018年6月にSACTを受けたすべてのがん患者のデータを同定し、最終サイクル後30日以内に死亡した患者を後ろ向きに収集した。ICIの最終サイクル後30日以内に死亡した患者(ICI群)と、主に細胞障害性抗がん剤による従来のSACTの最終サイクル後30日以内に死亡した患者(非ICI群)の2群に分け、死因、臨床的特徴、治療関連因子を比較した。なお、経口抗がん剤および局所動脈/髄腔内注射の投与患者は除外した。 主な結果は以下のとおり。・SACTを受けた1,442例のうち90例が、最終レジメンをICIで治療されていた。・ICIの最終サイクル後30日以内に16.7%(15/90例)が死亡し、ICI以外のレジメンで治療され死亡した1.6%(22/1,352例)より死亡率が高かった。・ICI群の年齢中央値(範囲)は71歳(60~86歳)、男性14例/女性1例、最終サイクル時のECOG PSが0~1が4例、2~4が11例であった。死因は、腫瘍の進行11例、感染症3例、その他(免疫関連肝炎)1例であった。・ICI群は非ICI群と比べて、男女の割合(14/1 vs. 13/9、p=0.028)、PS 2~4の割合(73.3% vs.40.9%、p=0.040)、治療費中央値(821,310円vs.87,610円、p<0.001)が有意に高かった。 龍華氏は、抗がん剤治療後早期死亡を引き起こす主因として、治療関連死および積極的治療適応外の2点を挙げた。また、ICI治療における30日死亡率が高い理由として、細胞障害性抗がん剤に忍容性がない患者にICIが投与されている可能性を指摘した。さらに、医療資源の浪費抑制のために、上記の積極的治療適応外に該当する緩和ケアが有用な患者においては、ICI中止のための適切なガイドラインが必要である、と結論した。 発表後の質疑において、龍華氏は、肺癌診療ガイドライン2018年版では、PS 3~4の患者(ドライバー遺伝子変異/転座陰性もしくは不明、PD-L1発現は問わない)へは薬物療法を行わないよう推奨されているが、実臨床では、ICIは免疫関連有害事象が発現しなければ投与できてしまうこと、治療効果が得られず腫瘍増大を来した症例にもPseudo-Progressionであることを期待して4サイクルまで継続しようとするなど、やめ時が難しいという問題を提起した。

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EGFR陽性NSCLCへのエルロチニブ+ラムシルマブ、東アジア人集団でも有用性示す(RELAY)/日本臨床腫瘍学会

 EGFR変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療で、日本人を含む東アジア人症例においても、EGFR-TKIエルロチニブと抗VEGF-R2抗体ラムシルマブの併用療法がエルロチニブ単剤と比較してPFSを延長した。第III相RELAY試験における、東アジア人サブセットの中間解析結果を、がん研究会有明病院の西尾 誠人氏が第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で発表した。 RELAY試験は、活性型EGFR変異(Exon19delまたはExon21 L858R)を有し、CNS転移のない、未治療の進行NSCLC患者を対象とした第III相国際共同二重盲検無作為化試験。登録患者はラムシルマブ(10mg/kg2週ごと投与)+エルロチニブ(150mg/日)群と、プラセボ+エルロチニブ(150mg/日)群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。また、患者は性別、地域(東アジア vs.その他)、EGFR変異ステータス(Ex19del vs.L858R)、EGFR変異検査法(Therascreen/Cobas vs.その他)で層別化された。 主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は奏効率(ORR)、奏効持続期間(DoR)、全生存期間(OS)、安全性など。その他探索的な評価項目として、PFS2(無作為化から2度目の病勢進行あるいは全死因死亡のいずれかの発生までの期間)、バイオマーカー分析が設定された。 主な結果は以下のとおり。・全体で449例が登録され、うち東アジア人は336例(75%)。日本人は41施設から211例が登録された。ラムシルマブ併用群に166例、プラセボ群に170例が割り付けられた。女性は両群で64%、年齢中央値は65歳/64歳、Ex19delは51%/49%であった。・PFS中央値は、全体集団で併用群19.4ヵ月 vs.プラセボ群12.4ヵ月(ハザード比[HR]:0.591、95%信頼区間[CI]:0.461~0.760、p<0.0001)、東アジア集団で19.4ヵ月 vs.12.5ヵ月(HR:0.636、95%CI:0.485~0.833、p=0.0009)と併用群で有意に延長した。・EGFR変異のステータスによる差はなく、全体集団と同様に東アジア集団でも併用群でPFS中央値を延長した:Ex19delを有する患者で19.2ヵ月 vs. 12.4ヵ月(HR:0.629、95%CI:0.430~0.921)、L858Rを有する患者で19.4ヵ月 vs. 12.5ヵ月(HR:0.644、95%CI:0.439~0.945)。・ORRは77% vs.74%と全体集団同様に差がみられなかったが、DoR中央値は16.2ヵ月 vs. 11.1ヵ月と、併用群で延長した(HR:0.646、95%CI:0.481~0.868)。・中間解析時点でのPFS2中央値は33.1ヵ月 vs. 未到達、全体集団同様に併用群で良好な傾向がみられている(HR:0.771、95%CI:0.529~1.124)。・中間解析時点でのOS中央値は両群ともに未到達、全体集団同様に併用群で良好な傾向がみられている(HR:0.824、95%CI:0.491~1.383)。・ベースライン時にT790M変異陽性の患者はいなかったが、病勢進行30日後の測定では、併用群43%、プラセボ群50%で発現しており、両群に差はみられなかった(p=0.530)。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現率は全体集団で72% vs.54%、東アジア集団で71% vs.49%であった。・東アジア集団において、併用群で多くみられたGrade3以上のTRAEは、高血圧(21% vs. 5%)、ざ瘡様発疹(18% vs. 9%)であった。出血性イベント(55% vs.27%)も併用群で多い傾向がみられたが、Grade3以上は2% vs.1%であった。ILDの発現は少なく、Grade3以上は1% vs.2%で、Grade4の症例は報告されていない。

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第10回 下肢の痛み【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第10回 下肢の痛み腰・下肢痛と言われるように、腰痛疾患に伴う下肢痛もよく見られます。統計によりますと、日本では約30万人以上の患者さんが、腰・下肢痛、坐骨神経痛、神経根障害などとして診断されています。今回は、この下肢の痛みを取り上げたいと思います。腰椎疾患・血管疾患・末梢神経障害の3分類で考える下肢の痛みは、大きく分けて腰椎疾患由来の痛み、血管疾患由来の痛み、末梢神経障害由来の痛みに分類されます。1)腰椎疾患由来の痛み腰痛疾患に由来する痛みで、一般的には坐骨神経痛と称されます。椎骨や椎間板によって腰神経が圧迫されるために、対応する下肢や臀部に放散するしびれや痛みが生じます。具体的には、脊椎管狭窄症や椎間板へルニアなどの疾患によって、病変部の神経が圧迫されて下肢痛が生じます。下図に示されるように、それぞれの病変部に応じて痛みが感じられます。神経圧迫がなくても、炎症によって責任神経に沿って痛みを感じることがあります。画像を拡大する2)血管疾患由来の痛み血管疾患は、動脈由来と静脈由来とに分類されます。動脈由来では、閉塞性動脈硬化症(ASO)が代表的疾患です。動脈の血流が悪くなりますと、運動時のみに痛みを感じていたのが、次第に安静時にも痛みを感じるようになります。また、下肢に痛みを急激に感じるときには、血栓などによる急性下肢動脈閉塞の可能性も高く、緊急対応が必要になりますので注意しなくてはなりません。静脈由来では、蛇行静脈が見られたり、下肢が腫脹したりする下肢静脈瘤が最も多く認められております。下肢が急に腫れて痛みを感じる場合には、深部静脈血栓症の可能性もありますので、十分に注意する必要があります。3)末梢神経障害由来の痛み下肢の末梢神経が、圧迫されたり、絞扼されたりすると、その神経の支配領域に一致した痛みを伴います。異常感覚性大腿神経痛が代表的疾患ですが、この場合は大腿外側に痛みや痺れが見られます。その他に気を付けなければならない下肢痛としては、複合性局所疼痛症候群(CRPS)があります。この疾患は、外傷後などに遷延する四肢の痛みで、皮膚の異常感覚や色調異常などが見られます。時に、注射穿刺後に生じることもあります。また、帯状疱疹、蜂窩織炎、足底腱膜炎などは、よく見られる疾患です。仙腸関節痛や大腿骨頭壊死などでも下肢痛が見られます。シンスプリントやアキレス腱断裂は、運動後に生じる下肢痛です。長期間にわたって痛みを訴えたり、事故や労災などが関与したりしている場合には、心理社会的な要因が存在することもありますので注意が大切です。次回は陰部・肛門痛について述べます。1)服部政治ほか 日本における慢性疼痛を保有する患者に関する大規模調査. ぺインクリニック25:1541-1551.2004.2)山村秀夫ほか編. 痛みを診断する.有斐閣;1984.p.25-263)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S146-147

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第25回 対面での吸入指導がアドヒアランスに与える影響は予想以上に大きい【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 気管支喘息やCOPD患者さんへの吸入指導は日常的にあるため、わかりやすい説明は薬剤師に求められる必須スキルの1つです。薬局で説明する旨の医師指示が処方箋に記載されているケースも少なくなく、私も新人のころはすべてのデバイスごとの手順や使用上のピットフォールを必死で覚えたものです。デモ用キット、リーフレット、ビデオなどの充実した資材が製薬会社から提供されていますので、患者さんにとって最も有用な説明手段を選択したいですよね。今回は、その参考となるリアルワールドデータ(実臨床で得られたデータ)の調査を紹介します。対面での実技指導を好む患者が83%REAL(Real-life Experience and Accuracy of inhaLer use)調査という、適切な吸入器の使用、吸入手技、吸入器の特性など、患者アドヒアランスへ影響すると考えられる23項目について電話で行われた調査があります1)。2016年1月4日~2月2日に調査が実施され、対象はブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、オランダ、英国、米国の9ヵ国から抽出された軽度~重度のCOPD患者764例(平均年齢56±9.8歳)でした。使用吸入器の内訳は、ブリーズヘラー186例、エリプタ191例、ジェヌエア194例、レスピマット201例でした。自己申告のアドヒアランスは、66歳以上の患者と比較して65歳以下の患者では有意に低く、性別、疾患の重症度、診断からの経過時間では有意差はみられませんでした。手技の説明では、吸入器を用いた対面による指導(吸入デモ)が「とても役に立つ」と回答している割合が最も高く、吸入デモ83%>ビデオ58%>口頭による使用説明51%>リーフレット34%という結果でした。吸入デモの回数が多い患者ほどアドヒアランスが高く、さらに呼吸器科医自身による指導を受けている患者ではより良好でした。少なくとも過去2年間に医療者による吸入手技の確認を受けたことがないと回答した患者は29%で、手技の確認を受けた患者ではよりアドヒアランスが良好かつ全量を吸入できている自信がありました。なお、全量を吸入したという実感があったのは、ブリーズヘラーを用いた患者では93%、ジェヌエアでは84%、エリプタでは80%、レスピマットでは76%でした。吸入指導は、呼吸器科医(41.3%)、薬剤師(20.2%)、看護師(18.1%)、一般医(12.0%)、その他(8.4%)によって行われており、呼吸器科医は自ら患者を指導する割合が高かったのに対し、一般医はほかの医療者に委任する割合が高いという結果でした。製剤特性や用法に依存する部分もありますが、アドヒアランスを高めるポイントは、対面での吸入デモ、小まめな手技確認、とくに呼吸器科医による吸入指導、ということになると思います。患者が好む吸入器は簡単・シンプル治療満足度には、吸入指導の方法という観点とは別に、吸入器に対する好みの問題もあります。これに関しては、COPD患者、喘息患者の吸入器の好みに関するリアルワールドデータの調査があります2)。こちらは、欧州、米国、日本および中国で実施された呼吸器疾患プログラムから、喘息(12歳以上の患者)、COPD(気道閉塞が確認された40歳以上の患者)、喘息とCOPDのオーバーラップ(ACO)の7,300例を超える患者データが収集され、吸入維持療法の現在の治療法と吸入器の種類、医師の好み、患者が重要と考える吸入器の特性および満足度を変数として解析した研究です。よく処方されているのが、ドライパウダー式の吸入器(62.8~88.5%の患者)と加圧噴霧式定量吸入器(18.9~35.3%の患者)でした。ディスカス、エリプタ、タービュヘイラーなどに次いでエアゾール剤が多いというのはさほど違和感はないかと思います。吸入器の特性について重視する要素として、どの疾患においても「使い方がシンプルで簡単」ということが半数以上の患者で挙げられ、長持ちして壊れにくい、持ち運びが簡便、充填の必要がない、吸入のために息を吸い込む必要がない、毎回肺に同じ量の薬が届く、薬剤の残数がわかるなどの特性が続きます。最近の吸入器は工夫があるものも多いので、各製剤の特徴を把握して図にまとめておくと説明しやすいと思います。吸入器の種類も多様化していますので、うまく吸えないときはその原因を特定したり、改善策のアドバイスや適切な吸入器への変更を提案したりすることもあるでしょう。吸入アドヒアランスはCOPDや喘息の治療効果に直結するので、背景因子を理解して患者さんに共感しつつも、しっかりと対面で説明や提案ができるようにしておきたいものです。1)Price D, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018;13:695-702.2)Ding B, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018;13:927-936.

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高血圧症、閾値を問わず心血管転帰の独立リスク因子/NEJM

 高血圧症は、その定義(収縮期・拡張期血圧値)が130/80mmHg以上または140/90mmHg以上にかかわらず、有害心血管イベントのリスク因子であることが、一般外来患者130万例を対象に行ったコホート試験で示された。収縮期高血圧および拡張期高血圧はそれぞれ独立したリスク因子であることや、収縮期血圧上昇のほうがアウトカムへの影響は大きいことも示されたという。米国・カイザーパーマネンテ北カリフォルニア(KPNC)のAlexander C. Flint氏らによる検討で、NEJM誌2019年7月18日号で発表された。外来での収縮期・拡張期血圧値と心血管アウトカムの関連は不明なままである中、2017年に改訂された高血圧症のガイドラインでは2つの閾値が示され、治療における複雑さが増していた。8年間の有害心血管イベント発生リスクを検証 研究グループは、KPNC(カリフォルニア州北部を中心に400万人超が加入する)の会員データを用いて、一般外来成人患者130万例を対象に試験を行った。 多変量Cox生存分析により、8年間にわたる収縮期・拡張期高血圧の複合アウトカム(心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中)への影響の大きさを調べた。解析では、人口統計学的特性と併存疾患について調整を行った。140mmHg以上、zスコア1上昇で心血管リスクは1.18倍 収縮期・拡張期高血圧の負担は、それぞれが有害アウトカムの独立予測因子であることが示された。生存モデルにおいて、収縮期高血圧の持続的負担は、同値140mmHg以上の場合で、zスコア1上昇におけるハザード比(HR)は1.18(95%信頼区間[CI]:1.17~1.18)だった。また、拡張期高血圧の持続的負担については、同値90mmHg以上の場合で、zスコア1上昇におけるHRは1.06(同:1.06~1.07)だった。 同様の予測結果は、高血圧症の閾値が低い場合(130/80mmHg以上)や、高血圧症の閾値を使わずに収縮期・拡張期血圧値を予測因子として用いた場合でも得られた。 また、拡張期血圧とアウトカムにはJカーブの関連性が認められた。その関連性には年齢およびその他共変量のいずれか1つ以上の関与が示唆され、また拡張期血圧が最低四分位範囲の人では、収縮期高血圧の影響がより大きいことが見てとれた。

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HR+/HER2-進行乳がんへのPI3K阻害薬alpelisib、日本人解析結果(SOLAR-1)/日本臨床腫瘍学会

 ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)進行乳がんに対する、α特異的PI3K阻害薬alpelisibとフルベストラント併用療法の有効性を評価する第III相SOLAR-1試験の日本人解析結果を、第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で、愛知県がんセンターの岩田 広治氏が発表した。なお、同患者に対するalpelisib併用療法は、SOLAR-1試験の結果に基づき、2019年5月にPI3K阻害薬として初めてFDAの承認を受けている。alpelisib併用群とプラセボ群に割り付け SOLAR-1試験は、HR+/HER2-進行乳がん患者(ECOG PS≦1、1ライン以上のホルモン療法歴あり、進行後の化学療法歴なし)を対象とした国際第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験。登録患者はPIK3CA遺伝子変異陽性もしくは陰性コホートに分けられ、それぞれalpelisib併用群(alpelisib 300mg/日+フルベストラント500mg/1サイクル目のみ1日目、15日目に投与、以降28日を1サイクルとして1日目に投与)とプラセボ群(プラセボ+フルベストラント)に1:1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、PIK3CA陽性コホートにおける無増悪生存期間(PFS)。副次評価項目は、PIK3CA陰性コホートのPFS、両コホートの全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、安全性などであった。 alpelisib併用療法の主な結果は以下のとおり。・全体で572例が登録され、うち日本人は68例(PIK3CA陽性が36例、陰性が32例)。両コホートでそれぞれalpelisib併用群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた(陽性:alpelisib併用群17例 vs.プラセボ群19例、陰性:15例 vs.17例)。・日本人集団の年齢中央値は両群とも67歳。BMI中央値は25kg/m2 vs.21.4kg/m2で全体集団(26.5kg/m2 vs.26.1kg/m2)よりも低く、PS 0の割合は88.2% vs.89.5%と全体集団(66.3% vs.65.7%)よりも高かった。その他のベースライン特性は全体集団と同様であった。・PIK3CA陽性コホートにおけるPFS中央値は、全体集団ではalpelisib併用群11.0ヵ月に対しプラセボ群5.7ヵ月とalpelisib併用群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.50~0.85; p=0.00065)。これに対し日本人集団では、alpelisib併用群9.6ヵ月に対しプラセボ群9.2ヵ月と両群で差はみられなかった(HR:0.78、95%CI:0.35~1.75)。・PIK3CA陽性コホートにおけるalpelisibの曝露期間は、全体集団で平均8.0ヵ月、中央値5.5ヵ月(0.0~29.0)、平均相対的用量強度(RDI)77.8%だったのに対し、日本人集団では曝露期間の平均4.2ヵ月、中央値1.4ヵ月(0.3~21.1)、平均RDI 58.8%であった。・日本人集団において、全体集団と比較してalpelisib併用群で多くみられたGrade3以上の有害事象は、皮疹(日本人集団:43.8%/ 全体集団:20.1%)、膵炎(15.6%/5.6%)、重度皮膚有害反応(9.4%/1.1%)であった。・alpelisib併用群の有害事象による治療中止は、日本人集団では全Gradeで56.3%、Grade3以上で25.0%と、全体集団(25.0%、13.0%)と比較して多く発生した。日本人集団で治療中止につながった有害事象は、高血糖症(18.8%)、皮疹(12.5%)、重度皮膚有害反応(9.4%)など。Grade3以上の皮疹は多くが14日以内に起きていた。・投与開始後8日目におけるalpelisibの血中トラフ濃度を日本人と日本人以外で比較すると、平均値474ng/mL vs.454ng/mL、中央値410ng/mL vs.442ng/mLと差はみられなかった。 ディスカッサントを務めた虎の門病院の尾崎 由記範氏は、他のPI3K阻害薬による臨床試験での重篤な皮疹の発生率は3.8~8.0%(全体集団)1)2)で、43.8%という数字は顕著に高いことを指摘。alpelisibの第I相試験で皮疹の発生は用量依存的に増加している点3)、今回のサブセット解析で最初の数週間で多く発生している点などに触れ、日本人集団での最適用量の再検討や、経口非鎮静性抗ヒスタミン薬の予防的使用の検討が必要ではないかとの考えを示した。 岩田氏は発表後の質疑において、アジア人の他のポピュレーションでは全体集団と同様の結果が得られていることを明らかにし、日本人集団を対象とした追加試験を行う必要があるとした。

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薬機法改正で「服薬後のフォロー」が薬剤師の義務に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第29回

2020年に法改正を目指している「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法、薬機法)」により、薬局・薬剤師の業務が大きく変わりそうです。厚生労働省は薬局で働く薬剤師に対し、必要に応じて患者の服用状況や副作用を継続的に確認し、指導するよう義務付ける。現状は医師の処方箋に基づいた薬の調剤に偏っている。服用後に処方内容が適切かどうかをチェックするといった本来業務が不十分との指摘が多い。法改正で職務を明確にし、改善を促す。6月に医薬品医療機器法の改正案が通常国会で審議入りしたが、衆院採決前に閉会し継続審議となった。秋に想定する臨時国会での成立を目指す。2020年にも施行される見通しだ。(2019年7月9日付 日本経済新聞)改正と聞くと「何か悪いことをしたのかしら…」と思う人もいるかもしれませんが、今回の改正は2013年に薬事法から医薬品医療機器等法と改正された際に、施行後5年を目途に見直しをすることが決められていたものです。この改正案は、6月の通常国会では会期切れとなり採決されずに継続審議となりましたが、秋の臨時国会で成立する見込みです。改正案の概要としては、薬局薬剤師に対して、調剤時に限らず必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握や服薬指導を行う義務、患者の薬剤の使用に関する情報を医師などに提供する努力義務を法制化することが求められています。単純に患者さんから聞いたことをそのまま医師に伝える伝言ゲームではなく、薬剤師の知識を生かした問題解決や処方提案のスキルが求められています。そのほかにも、薬局・薬剤師に関する項目として、患者さん自身が自分に適した薬局を選択することができるように、機能別の薬局を導入することが求められています。「患者の服薬情報の一元的把握」「服用後の継続的な服薬指導」「高齢者の多剤投与対応」「在宅医療」「専門性の高い薬学的管理が継続的に必要となる薬物療法」などのさまざまな課題で薬剤師が職能を発揮するために、入退院時に医療機関と情報共有したり、在宅医療で地域の薬局と連携したりしながら一元的・継続的に対応する「地域連携薬局」と、がんなどの専門的な薬学管理に他医療提供施設と連携して対応する「専門医療機関連携薬局」という2つの機能の薬局が想定されています。なお、テレビ電話などによる遠隔診療からの遠隔服薬指導も盛り込まれていますが、実施には多少猶予期間が設けられそうです。薬剤師の職務に服用後のフォローが義務化されるということは、非常に大きな変化です。これらが採決され、改正医薬品医療機器等法が施行されると、これは薬剤師の義務になり、責任も業務量も増えるでしょう。課題はたくさんあると思いますが、一般の方の「薬局の中にいる人」や「ただ薬を渡してくれる人」というイメージが変わるように、前向きに取り組みたいと思います。

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最終回 常にプロフェッショナルであるために【週刊・川添ラヂオ】

動画解説最終回で川添先生が語るのは記憶に残る2人の患者さんに関するエピソード。その2人はなんと川添先生に激怒した患者さんで、彼らに言われた言葉が先生の生き方の原動力になっているんだそうです。若き先生がやってしまった失敗とは?いつまでも挑み磨き続ける川添先生からみなさんへのラストエール。

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治験の非特定化被験者データ、共有基準を満たした大手企業は25%/BMJ

 米国・イェール大学のJennifer Miller氏らは、臨床試験の非特定化された被験者レベルデータについて、その共有の実態を調べると同時に改善するためのランキングツールを開発した。同ツールを用いたところ、大手製薬企業においてデータ共有評価基準を完全に満たしていたのは25%であったという。同値はランキングツール使用後に33%まで改善したことや、その他の試験の透明性については高得点であったこと、また一部の会社については透明性やデータの共有について、改善にはほど遠い結果が示されたことなども報告した。BMJ誌2019年7月10日号掲載の報告。10のガイドラインを基に評価基準を作成 Miller氏らは、2015年に米国食品医薬品局(FDA)で新規薬物の承認を受けた大手製薬企業を対象に、各社の非特定化された被験者レベルデータ共有に関する状況を調査した。 ClinicalTrials.gov、Drugs@FDA(FDA承認薬データベース)、企業ウェブサイト、データ共有のためのプラットフォームおよびレジストリ(Yale Open Data Access[YODA]プロジェクトやClinical Study Data Request[CSDR]など)、製薬企業への聞き取り調査を基に、データ共有法や方針について評価した。データシェアリングの評価基準としては、患者や企業、研究者や規制当局なども加わり作成された、データ共有に関する主な10のガイドラインを基に行った。 主要評価項目は、企業レベルでの多項目評価で、臨床試験の患者レベルデータ(分析準備ができているデータセットやメタデータなど)の入手のしやすさ、各薬物・治験レベルの登録と結果報告およびパブリケーション、企業レベルの全般的透明性のランキング、企業のデータ共有に関する方針や実態を改善するための評価・ランキングツールの実用性だった。評価のフィードバックで3社が改善 大手製薬企業のうちデータ共有評価基準を完全に満たしていたのは、全体の25%だった。企業のデータ共有に関するスコアの中央値は、63%(四分位範囲:58~85%)だった。 評価結果を対象企業にフィードバックしたところ、3社が改善し、同基準を完全に順守する企業の割合は33%に、全体のスコア中央値は80%(同:73~100%)にそれぞれ上昇した。 当初、データ共有評価基準を満たさなかった理由で最も多かったのは、共有データの期日までの提出不履行(75%)と、データ数とアウトカムの未報告であった。 新規医薬品において、患者登録率は中央値100%(四分位範囲:91~100%)、結果の報告率は同65%(36~96%)で、雑誌などで発表された割合は同45%(30~84%)だった。一方で医薬品ごとにみると、新薬承認申請のための臨床治験データが承認後6ヵ月以内に公に入手可能だった割合は半数に満たなかった(42%)。 Miller氏らは、開発した評価・ランキングツールは、大手製薬企業のデータ共有方針と実態が評価可能であり、企業の実態改善に影響力をもつものだと述べている。

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腎機能を考慮したファモチジンの変更提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第1回

 千葉県柏市にある在宅医療特化型薬局「つなぐ薬局」の鈴木です。私は現在、施設往診同行や在宅訪問などで積極的に医師とコミュニケーションを取り、処方提案を行っています。これまの学びを処方提案という形でアウトプットすることで、薬剤師の立場と視点による薬物治療の適正化を推進し、患者さんがより良い状態になっていくことを実感しています。このコラムでは、薬学的管理の質を向上させる処方提案の重要性とともに、薬局薬剤師の視点での提案のコツをお伝えしたいと思います。処方提案する際には、ご家族からの訴えが重要な手掛かりとなることがあります。認知症様の症状が生じていると聞き取り、検査値や処方薬を見直したところ、高齢者では注意が必要な薬剤がありました。今回は腎機能を起点に処方提案した症例についてご紹介します。患者情報75歳、女性、身長:140cm、体重:45kg現病歴:脳梗塞、認知症同居の家族から、最近話が通じにくいことが多いと訴えあり。処方内容アスピリン腸溶錠100mg 1錠 分1 朝食後マニジピン錠10mg 1錠 分1 朝食後プラバスタチン錠10mg 1錠 分1 朝食後ファモチジン錠20mg 2錠 分2 朝夕食後酸化マグネシウム錠330mg 2錠 分2 朝夕食後メマンチン錠20mg 1錠 分1 夕食後前月の検査値(L/D)Scr:1.02mg/dL、eGFR:40.63mL/min/1.73m2、Mg:2.0mg/dLHDL:45mg/dL、LDL:118mg/dL本症例の着眼点この患者さんは、脳梗塞の2次予防のために低用量アスピリンを服用継続していて、その消化性潰瘍予防のためファモチジンを服用していました。処方箋の受付時に家族から聴取した「会話のつじつまが合わないことが多い」という訴えは、認知症に伴う周辺症状の可能性もありますが、ファモチジンによるせん妄や意識障害の可能性も示唆されます。腎機能が低下している場合、腎排泄型のH2受容体拮抗薬であるファモチジンの血中濃度が持続して過量投与となることがあります。『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』において、「すべてのH2受容体拮抗薬は可能な限り投与を控える。とくに入院患者や腎機能低下患者では、必要最小限の使用にとどめる」ということが記載されています。腎機能を正しく評価して薬剤投与設計を行うために、下記の評価を行いました。腎機能の評価Cockcroft-Gaultの式を用いて推算CCrを算出することができます。計算するために必要なパラメータはScr(血清クレアチニン)、年齢、体重、性別で、女性は筋肉量が少ないため、係数の0.85を乗じます。<Cockcroft-Gaultの式>男性:CCr(mL/min)=(140-年齢)×体重(kg)/(72×Scr)女性:CCr(mL/min)=(140-年齢)×体重(kg)/(72×Scr)×0.85通常は上記の簡易式が用いられるが、身長が考慮されていないので、肥満患者では腎機能を過大評価してしまう可能性がある。そのため、実体重ではなく標準体重や理想体重を用いて計算することもある。<標準体重(男女共通)>身長(m)×身長(m)×22(係数)<理想体重>男性=50+{2.3×(身長-152.4)}/2.54女性=45+{2.3×(身長-152.4)}/2.54今回の患者さんの場合、CCr(Cockcroft-Gaultの式にて推算):33.9mL/min、体重未補正eGFR:30.5mL/minであり、60mL/min>CCr>30mL/minの場合のファモチジンの推奨投与量は、20mg 1日1回あるいは10mg 1日2回となります。本症例において、ファモチジンは過量投与です。なお、腎機能が低下している場合、マグネシウムの蓄積に伴う高Mg血症を評価することも重要ですが、検査結果は基準値内であり、自覚症状の面からも高Mg血症は否定的です。処方提案と経過腎機能を評価したところ、ファモチジンが過量投与となっており、減量が望ましいと判断しました。また、せん妄のような症状も現れており、H2受容体拮抗薬が影響していることも考えられます。そこで、処方医に電話で、ファモチジンを1日1回に減量あるいは肝代謝型のPPI(プロトンポンプ阻害薬)に変更してみるのはどうか提案しました。その結果、ファモチジンは中止となり、ランソプラゾールOD錠15mgが開始となりました。後日家族に確認したところ、会話のつじつまが合わないということは減ったと聴取しました。本症例のポイント・定期的に血液検査の結果と身長・体重を聴取する。・薬物投与設計のための腎機能評価を正しく理解する。・H2受容体拮抗薬は腎排泄型薬剤が主であり、高齢者においてはせん妄や意識障害のリスク因子となる。「透析患者に対する投薬ガイドライン」, 白鷺病院,(参照:2019年6月24日)日本老年医学会ほか 編. 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015. メジカルレビュー社;2015.

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遠隔転移のリスクを低減させる去勢抵抗性前立腺がん治療薬「アーリーダ錠60mg」【下平博士のDIノート】第29回

遠隔転移のリスクを低減させる去勢抵抗性前立腺がん治療薬「アーリーダ錠60mg」今回は、前立腺がん治療薬「アパルタミド錠(商品名:アーリーダ錠60mg)」を紹介します。本剤を服用することで、去勢抵抗性前立腺がん患者の無転移生存期間を延長し、臨床症状の悪化を遅らせることが期待されています。<効能・効果>本剤は、遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がんの適応で、2019年3月26日に承認され、2019年5月30日より発売されています。本剤は、アンドロゲン受容体(AR)に選択的に結合し、ARのシグナル伝達を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。<用法・用量>通常、成人にはアパルタミドとして1日1回240mgを経口投与し、患者の状態により適宜減量します。なお、痙攣発作やGrade3または4の副作用が発現した場合には、添付文書に記載の基準を考慮して、本剤を休薬、減量または中止する必要があります。<副作用>国際共同第III相試験において、本剤が投与された安全性評価対象例803例(日本人34例を含む)のうち、565例(70.4%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、疲労181例(22.5%)、皮疹123例(15.3%)、甲状腺機能低下症38例(4.7%)、そう痒症33例(4.1%)、体重減少27例(3.4%)でした(承認時)。なお、重大な副作用として、痙攣発作(0.1%)、心房細動(0.2%)、心不全(0.4%)、心筋梗塞(0.2%)などの心臓障害、多形紅斑(0.2%)などの重度の皮膚障害が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、男性ホルモンの働きを阻害することで、前立腺がんの進行を抑制します。2.痙攣発作が現れることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械を操作する際は注意してください。3.発熱や皮疹、かゆみ、動悸、足のむくみなどが現れた場合には、医師・薬剤師に相談してください。4.皮膚を清潔に保ち、刺激を避け、保湿などのスキンケアを心掛けてください。<Shimo's eyes>前立腺がんは中高齢男性に多く、2025年には男性のがん罹患率のなかで最も高くなると予測されています。治療は、アンドロゲンの働きを抑えるホルモン療法が主に行われますが、ホルモン療法に抵抗性を示した場合、あるいは外科的去勢後に症状が増悪した場合は予後不良の「去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)」となります。CRPCに対する既存の抗アンドロゲン薬は、アンドロゲン合成酵素阻害薬のアビラテロン(商品名:ザイティガ)、アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害薬のエンザルタミド(同:イクスタンジ)が発売されており、本剤はエンザルタミドに次ぐ2剤目の経口アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害薬です。CRPCでは、約80%の患者が最終的に骨転移すると言われており、転移を遅延または予防することが重要です。海外と共同で行われた臨床試験では、プラセボと比較して、本剤の投与により無転移生存期間を延長し、遠隔転移と死亡リスクを低下させることが認められています。重大な副作用としては、痙攣発作、重度の皮膚障害、うっ血性心不全などが挙げられています。日本人では皮疹が発生しやすいと言われているため、保湿剤によるスキンケアなどの生活指導によって、副作用による患者のQOL低下を防ぐことが大切です。なお、本剤は2019年7月現在、「転移性去勢感受性前立腺がん」に対して、適応拡大承認の申請中です。

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第46回 スピーチの質に直結する“マイクチェック”【週刊・川添ラヂオ】

動画解説川添流上手なスピーチの方法第3弾。完璧なスピーチを行うために川添先生が最後にやっている事はなんとマイクチェック!会場に入ったら用意されたマイクは性能が良い物か、古くてハウリングする物かを確かめ、どのように持ち喋るのがベストかを考えましょう。講演のプロはここまでやる!一段上のスピーチのコツを伝授します!

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第24回 脳梗塞/TIA患者の抗血小板薬2剤併用療法はいつまで行うのがベスト?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 抗血小板薬2剤併用療法(Dual antiplatelet therapy:DAPT)は、脳梗塞の既往がある患者さんやステント留置後の患者さんでよく行われるため、薬局で処方を見掛けることも多いと思います。今回は、2018年にBMJ誌に掲載された軽症虚血性脳梗塞または高リスク一過性脳虚血発作(TIA)患者におけるクロピドグレル+アスピリンのDAPTとアスピリン単独療法を比較したシステマティックレビュー(以下、SR)を紹介します1)。この研究が行われた背景には、BMJ Rapid Recommendations(RapidRecs)プロジェクトの一環として、治療方法の推奨を作るという目的があります。インパクトのある新規研究が発表されたら、診療ガイドラインの推奨を素早く作成するのが望ましいですが、現実的には特定の臨床上の疑問(Clinical question)に対して網羅的に研究を調査し、それらをまとめて分析統合を行う手順、つまりSRが行われ、新規研究が出てから推奨を作成するまでの時間的ギャップが課題となっています。たとえば、SRが最新かつ信頼があつい期間といえる“寿命”を調べた研究では、後行研究が出た後の統計的有意差の変化、効果量の50%を超える相対的な変化や意思決定に影響を与えるために十分な新情報、先行研究への重要な警告、より優れた治療法の出現を既存SRの寿命のシグナルとみた場合に、SRの“寿命”の中央値は5.5年で、1年以内に15%、2年以内に23%のエビデンスが覆り、7%はすでに出版時点で逆の結果が出ているという報告があり2)、タイムリーに新規研究を含めたまとめを作ることの大切さを物語っています。2020年には医学情報量が倍増するのにかかる期間はわずか0.2年(73日)になるという予測すらありますから3)、RapidRecsのように即座にSRを行う重要性は今後ますます増えるでしょう。DAPTを24時間以内に開始し、10~21日間の継続でベネフィット最大DAPT vs.アスピリン単独療法のSRに話を戻しますと、本研究は2018年7月にNew England Journal of Medicine誌に掲載されたPOINT trial(Johnston SC, et al. N Engl J Med. 2018;379:215-225.PMID: 29766750)の結果を受けて行われています。内容としては、急性軽症虚血性脳卒中または高リスクTIAと診断された患者で、クロピドグレル+アスピリンのDAPTを発症後3日以内に開始した場合と、アスピリン単独療法を発症後3日以内に開始した場合を比較し(最終的に組み入れられた研究は発症後24時間以内または12時間以内)、90日までの転帰(全死亡、脳卒中による死亡、非致死的虚血性/出血性脳卒中、頭蓋外出血、TIA、心筋梗塞、機能的転帰など)を調査した研究です。データベースのMEDLINE、EMBASE、CENTRAL、Cochrane Library、ClinicalTrials.gov、WHO website、PsycINFO、grey literatureを網羅的に検索して研究を集めています。2名の評価者によって、各研究のバイアスのリスクが評価され、最終的な合意形成は第三者を交えてされています。バイアスのリスクの評価基準は、Cochraneのrisk of biasツールの調整版が用いられており、各研究におけるランダム割り付けの有無、脱落データの割合、割り付けの隠蔽化、研究参加者/介入者/アウトカム評価者のマスキング、その他バイアスが評価されていますので、厳密な方法論で行われたSRとみてよいと思います。最終的に採用されたランダム化比較試験は3件(FASTER、CHANCE、POINT)で、合計症例数は1万447例でした。アウトカムごとに統合された結果をみると、DAPT群ではアスピリン単独群に比べ、非致死的脳卒中の再発が低減しており、リスク比は0.70(95%信頼区間[CI]:0.61~0.80)、絶対リスク減少率は1.9%(NNT換算すると53)でした。総死亡については両群で有意差はありませんでしたが(リスク比:1.27、95%CI:0.73~2.23)、中等度または重度の頭蓋外出血については、DAPT群のリスク比は1.71(95%CI:0.92~3.20)、絶対リスク上昇率は0.2%とアスピリン単独群よりも増加傾向にあり、軽微または小出血もDAPT群のリスク比は2.22(95%CI:1.60~3.08)、絶対リスク上昇率は0.7%と有意に増加しています。機能的転帰には有意差はありませんでした。経時的変化を見てみると、脳卒中イベントの発症の多くはDAPT群でもアスピリン単独群でもランダム化後10日以内に生じていますが、21日以降はほぼ平行線となっています。一方で、出血イベントはDAPT群で長期的にやや増えていきます。これらのことから、ハイリスクのTIAおよび軽度の虚血性脳卒中の患者における本研究の結果は、BMJ誌のClinical Practice Guideline4)のまとめとして以下の2点が強く推奨されています。イベント発生後24時間以内にDAPTを開始するDAPTは10~21日間継続し、21日を超える継続はしないDAPT継続中の患者さんの中には、脳卒中の再発が心配で治療を継続させたいという方もいるかもしれませんが、もし2剤で21日を超えて長期間投与されている場合は出血イベントのリスクを考慮し、処方医への情報提供を検討すべきと思います。1)Hao Q, et al. BMJ. 2018;363:k5108.2)Shojania KG, et al. Ann Intern Med. 2007;147:224-233.3)Densen P. Trans Am Clin Climatol Assoc. 2011;122:48-58.4)Prasad K, et al. BMJ. 2018;363:k5130.

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仮想現実=VR技術が手術を変える!セミナーのお知らせ

2019年7月18日(木)に開催される第74回日本消化器外科学会総会イブニングセミナーにて、医療VR(仮想現実)サービスを手掛けるHoloeyes株式会社とCareNetの共催で、手術をリアルにシミュレートする最新VR技術Holoeyes XRのレクチャーと体験を行います。Holoeyes XRは、患者のCTスキャンデータやMRIデータから3次元のVirtual Reality(VR)やAugmented Reality(AR)のアプリケーションを生成。患者の臓器の3Dモデルを共有して、術前のシミュレーションや術後の症例カンファレンスなどに活用できます。立体のビジュアルを共有することにより、非言語の豊なコミュニケーションが実現します。プレゼンターのHoloeyes COOで外科医の杉本真樹氏は、これまでに医用画像解析や手術支援システム、3Dプリンターによる生体質感臓器造形など、医学・工学分野の横断的な研究開発や科学教育に尽力。2014年Apple社Webにて、世界を変え続けるイノベーター30名に選出。2017年Microsoftイノベーションアワード優秀賞、およびWIRED AUDI イノベーションアワード受賞しています。本セミナーでは、参加者先着200名様にVRゴーグルを配布し、会場でHoloeyes XRで記録した複数の術例シミュレーションをVRで体験いただくことができます。医療現場や教育現場で活用できる次世代コミュニケーションツールを、この機会にぜひ体感ください。本セミナーと連携し、CareNet.comでもVRの世界を体感できる新しい医学教育コンテンツを紹介します。詳細概要日 時 :2019年7月18日(木)16:30~18:00場 所 :グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール1階 暁光(第13会場)地図はこちらテーマ :「VR仮想現実が消化管・肝胆膵手術支援を変える」~ホログラフィ手術支援加算と遠隔VRテレカンファレンス~演 者 :杉本 真樹 氏 (帝京大学冲永総合研究所 特任教授、Holoeyes株式会社 共同COO)座 長 :佐野 圭二 氏 (帝京大学医学部 外科学講座 教授)定 員 :200名注意事項:※VR体験にはスマートフォンをご持参ください。

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医師の起業に役立つ7つのビジネスモデル【医師のためのお金の話】第22回

医師の起業に役立つ7つのビジネスモデル先日、医師向けの医学論文意見交換サイトQuotomyを運営している大谷 隼一先生と、起業についてお話する機会がありました。大谷先生が勤務されている病院では、若手医師が起業を志すケースが多いそうです。医療とビジネスの間に横たわる障壁が確実に低くなってきていることを感じます。ただ、やみくもに起業しても成功するわけではありません。起業は道なき道を自分の経験と勘に従ってソロリソロリと進んでいくものです。そして、至る所に落とし穴が隠れています。小さな落とし穴であれば這い上がってこられますが、致命傷になってしまう大きな落とし穴も無数に存在します。机上の空論では、これらの落とし穴を回避することは不可能です。「習うより慣れよ」が起業を成功させるためには重要なのです。そうは言っても、もちろん押さえておくべきポイントはあります。それはビジネスモデルです。絶対に知っておくべき7パターンビジネスモデルとは、利益を生み出す商品やサービスに関する事業戦略と収益構造のことです。簡単に言うと、「誰に何をどのようにして提供して、どの部分でどれだけ儲けるかを簡潔に言い表したもの」です。いわゆるビジネスの戦略に相当します。ビジネスモデルが優れているからと言って起業が成功するわけではありませんが、稚拙であると確実に失敗します。このように言うと難しそうに思えますが、ビジネスモデルは小学生でも理解できる程度のものです。ここでは一般的によく言われている7つのパターンを挙げてみます。1)物販モデル(自動車、農家、工場など)2)小売モデル(スーパー、コンビニエンスストアなど)3)広告モデル(新聞、雑誌など)4)ライセンスモデル(映画、協会など)5)消耗品モデル(プリンターメーカーなど)6)継続課金モデル(電力会社、携帯電話など)7)マッチングモデル(不動産仲介、人材募集サイトなど)世の中のサービスは、上記のいくつかのパターンを組み合わせたものが多いです。たとえば、「食べログ」は3)広告モデルと6)継続課金モデルを組み合わせたビジネスモデルです。継続課金モデルとの組み合わせがカギそれでは、私たちが起業する場合に最もおすすめのビジネスモデルは何でしょうか?前述のビジネスモデルの中で最も安定的にビジネスを展開できると言われているのは6)継続課金モデルです。このビジネスモデルの代表例は、電力会社や携帯電話会社です。不動産賃貸業もこのモデルに該当します。電力会社は電気料金を、携帯電話会社は通信料を、大家さんは賃料を毎月課金し続けます。消費者はこれらの商品やサービスを利用し続けざるを得ません。継続課金モデルを採用している会社は、定期的に流入する売上のおかげで安定的なビジネスを展開できるのです。実際、このビジネスモデルを採用している企業の数は多く、最近では動画配信サイトの「Netflix」に代表されるサブスクリプション(売買ではなく特定期間内の使用権を販売する)方式が注目を集めています。ちなみに私の知り合いの医師は医療系コンサルティング事業を起業しましたが、顧問料として月額料金を徴収しています。この継続課金による定期収入でスタッフ給与などの固定費を賄って安定性を確保しつつ、クライアントが抱えている問題を解決するためのソリューションを提供することで青天井の収益を目指す戦略を掲げています。このケースは、前述の1)物販モデルと6)継続課金モデルの組み合わせであり、安定性と収益性を兼ね備えた秀逸なビジネスモデルのようです。押さえるべきは拡大よりも「絞り込み」ビジネスモデルで押さえておくべきポイントの1つに、対象とする領域や顧客の絞り込みが挙げられます。ありがちなのは、できるだけ多くの顧客を獲得しようとして、事業領域を広げ過ぎてしまうことです。ビジネスで利益を出すためには、事業領域の拡大ではなくて絞り込みが必要です。事業領域が広いと知識や経験を蓄積するのに時間が掛かります。これでは競合相手に勝つことはできません。ある領域に特化して付加価値をつけることが、競合相手を抑えて利益を出すことにつながるのです。前述の医療系コンサルティング事業を起業した医師は、クライアントを某専門職に絞っており、提供するサービスはある1つの問題解決手法に特化しています。このため、きわめて狭い領域ではあるものの、高い競争力を武器にして順調に業績を拡大しているようです。

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