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第2回 0402通知は薬剤師の職を奪うのか?【噂の狭研ラヂオ】

動画解説「薬剤師以外でも調剤可能」という内容のいわゆる0402通知。国は薬剤師の仕事を奪うつもりなのか?という噂についてハザケンが論じます。狭間先生いわく「これは薬剤師が本来やりたかった対人業務を行うための時間と気力と体力を温存するための段取りの1つ」。非薬剤師との共同について前向きに考えてみましょう!

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アトピー性皮膚炎、FLG変異に人種差

 アトピー性皮膚炎(AD)とフィラグリン遺伝子(FLG)変異との関連について、米国・ペンシルベニア大学のDavid J. Margolis氏らは、軽症~中等症アトピー性皮膚炎児のコホートにおいて、FLG機能欠損(LoF)変異は人種による顕著な違いがみられること、そしてそれがADの持続と関連していることを明らかにした。ADとFLG変異の関連に関しては4つの変異が最もよく評価に使われている。今回の結果を踏まえて著者は、「従来の4つの変異を調べるだけでは不十分である。ADについてFLG LoF変異に基づく遺伝子診断テストを計画する場合は包括的に行うべきであり、最もよく試験されている変異に依存すべきではない」と指摘している。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年7月31日号掲載の報告。 研究グループは、アフリカ系とヨーロッパ系の小児におけるFLG LoF変異を包括的に詳述し、ターゲットシーケンスの結果を比較するとともに、それらの変異とADの持続との関連を調べる前向きコホート試験を行った。Pediatric Eczema Elective Registry(PEER)を用いてサブコホートの遺伝子を評価し、軽症~中等症のAD児が解析に包含された。Massively parallel sequencing(MPS)を用いて、白人種およびアフリカ系アメリカンの小児のFLG LoF変異に着目した。2005年6月~2017年7月に患者登録し、データは2019年1月25日~5月10日に解析された。主要評価項目は、FLG LoF変異と白人種およびアフリカ系アメリカンとの関連性、有するリスク、ADの持続とした。 主な結果は以下のとおり。・計741例の小児が解析に包含された。女児394例(53.2%)、男児347例(46.8%)、発症時の平均(SD)年齢は1.97(2.72)歳であった。・包含対象のうち、白人種394例(53.2%)、アフリカ系アメリカン326例(44.0%)、その他21例(2.8%)であった。・MPSにより、AD児と関連する23個のFLG LoF変異が見つかった。・全コホートにおいて、FLG LoF変異の保有児は177例(23.9%)であり、124例が白人種(白人種に占める割合31.5%)、50例がアフリカ系アメリカン(同15.3%)であった。・アフリカ系アメリカン小児と比較した白人種小児におけるあらゆるFLG LoF変異の保有オッズ比(OR)は、2.44(95%信頼区間[CI]:1.76~3.39)であった。・数種のFLG LoF変異が人種に特有のものとして見つかった(たとえば、p.S3316*とp.R826*は、白人種では認められなかった)。・FLG LoF変異保有児は、持続するADを有する傾向が認められた(OR:0.67、95%CI:0.56~0.80)。

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「医薬品の販売情報提供活動に関するGL」薬剤師への影響は?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第31回

厚生労働省が適切な診療、医薬品の処方を確保するために策定した「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」の運用が、一部を除いて2019年4月から開始されています。残りの一部であった、製薬会社内の情報提供活動を監視する部門の設立に関しては10月までの猶予期間がありましたので、本ガイドラインはいよいよすべての項目がスタートします。薬剤師として気になるのは、「情報提供の何が変わるの?」ということだと思いますので、今回は薬局に関係するポイントをピックアップして紹介します。なぜガイドラインが作られたのか?端的に言うと、医療用医薬品のプロモーション活動は自主ルールが定められているにもかかわらず、不適切な広告、プロモーション活動が横行していたためです。厚生労働省は2016年より、全国の医療機関の中からモニター医療機関を選定し、医療用医薬品の広告などの適切性に関する調査を実施していますが、製品説明会などのいわゆるクローズドな場において、不適切な情報提供(事実誤認の恐れのある表現やデータ加工、未承認の効能効果の情報提供など)の事例が多く報告されています。そのため、広告を適正化することで医療用医薬品の適正使用を確保し、保健衛生の向上を図るためにガイドラインが策定されました。何が変わったのか?今までは、MRが製品説明を行う際に、MR個人が作成したプレゼン資料を用いることがありました。しかし、それでは情報提供の内容や質を製薬会社として担保できず、不適切な情報提供が発生する可能性があるため、現在では原則として、しかるべき部門が作成した資材のみ使用可能です。また、記載できる内容は、科学的および客観的な根拠に基づく情報のみで、試験の設計や結果を正確に明示し、医薬品の品質、有効性、安全性に関してネガティブな情報であっても積極的に記載することが求められるようになりました。今後は、これらの内容を確認して情報提供活動の適切性を監督する部門(販売情報提供活動監督部門)による審査をクリアした資材でのみ情報提供活動を行うことになります。プレゼン資料だけでなく、パンフレット、ホームページ、MRのプレゼン自体まで監視の対象です。なお、製薬会社の情報提供活動について苦情があった場合のために、窓口を設置して事実関係の調査や必要な措置を講じることも求められています。この監督部門の設立や窓口の設置には準備が必要であるため、2019年10月1日からスタートすればよいとされています。今までどおり、医薬品に関する情報はもらえるのか?上記のように、製薬会社の社内チェックは厳しくなりますが、基本的には今までと同様に情報提供をする製薬会社がほとんどだと思います。ただし、未承認薬、適応外の用法用量や明確に添付文書に記載されていない内容などについてはかなり厳格化されます。医療者から情報を求められた場合は提供が可能ですが、販売部門であるMR以外からの回答が望ましいとされているため、タイムラグが生じると予想できます。また、製薬会社のホームページから資材を直接ダウンロードするという簡易的な提供方法ではなくなる企業が増えるかもしれません。必要になることがわかっている資料や情報は、時間に余裕を持って入手するとよいでしょう。患者さんに影響はあるのか?製薬会社から一般の方向けの情報提供に若干影響がありそうです。当然のことですが、疾患啓発では、医療用医薬品による治療のみを推奨することや特定の製薬会社の薬剤へ誘引するような内容は禁止されています。また、ガイドラインやQ&Aでもかなりあいまいな文言なので解釈次第ではありますが、製薬会社が今回のガイドライン策定の背景を鑑み、誤解されないよう新聞や雑誌などの一般紙の取材を受けない、などとなれば、一般の方が入手できる情報が減る可能性はあります。ざっくりとではありますが、「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」のポイントをまとめました。製薬会社が医薬品の情報を一番多く持っていることは確かですが、待っていても添付文書やインタビューフォーム以上の情報は提供されませんので、これまで以上に必要な情報は自発的に収集する必要がありそうです。

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第27回 本当に高プリン体食は痛風の敵なのか【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 高尿酸血症や痛風の患者さんで、アルコールや肉・魚の内臓などプリン体を多く含む食品の摂取を制限されている方は多いと思います。プリン体は最終的に尿酸に代謝されるため、プリン体が多い食品を避けようというのはよく聞く話ですが、この摂取制限にどれほどの効果があるのでしょうか。プリン体制限食は尿中尿酸排泄を減らすと考えられていますが、プリン体は体内で生成される割合のほうが多いこともあり、尿酸値への影響は約1mg/dL程度と小さいことが知られています1)。さらに、尿酸値が多少高くても、必ずしも痛風発作が起こるわけではありません。無症候性高尿酸血症の結果を定量化するために、健康な男性2,046例を対象とした14.9年間にわたる追跡調査2)では、尿酸値と痛風発作の年間発症率の関係は下記のとおりでした。尿酸値9 mg/dL以上:年間発症率4.9%尿酸値7.0~8.9 mg/dL:年間発症率0.5%尿酸値7.0 mg/dL未満:年間発症率0.1%※尿酸値9 mg/dL以上の場合、痛風発作の5年累積発生率は22%。この研究では、痛風の強力な予測因子として、年齢、肥満度指数(BMI)、高血圧、コレステロール値およびアルコール摂取が指摘されています。多くの人が自覚症状がない疾患で、尿酸値と発作の発症率や食事の影響が小さいとなると、継続的なプリン体の摂取制限はなかなか難しいように思います。動物性プリン体の摂取制限は痛風発作の予防に有用しかし、プリン体制限食が急性痛風発作の発症予防に寄与するという報告もありますので紹介します。1つ目が2004年にNEJMに掲載された論文で3)、プリン体、タンパク質および乳製品の摂取が痛風発作の新規発症に及ぼす影響を前向きに調査したものです。対象はベースライン時点で痛風の既往がない男性 47,150 例で、食事要因と痛風の新規発症の関係を12年間追跡しています。研究期間中に痛風と初診断された730例のうち、各食品の摂取量が最小五分位群に対する最大五分位群の痛風の多変量補正相対リスクは次のとおりでした。肉類摂取量:1.41 (95%信頼区間[CI]1.07~1.86、p=0.02)魚介類摂取量: 1.51 (95%CI 1.17~1.95、p=0.02)乳製品摂取量の増加:0.56(95%CI 0.42~0.74、p<0.001)興味深いことに、プリン体が豊富な野菜の摂取量やタンパク質の総摂取量は痛風リスクの上昇と関連がみられませんでした。ちなみに、乳製品の摂取がリスク低減につながる理由として、尿酸とナトリウムが結合した針状結晶が関節で炎症を起こす過程を阻害するためという説があるようです4)。続いて、高プリン体食と再発性痛風発作リスクの関係を調べた症例クロスオーバー研究です5)。こちらはオンラインで募集した痛風患者633例を1年間追跡しています。平均年齢は54歳、78%が男性、88%が白人です。参加者は、痛風発作時に、発作発症日、発作の兆候、服用薬剤(抗痛風薬を含む)、発作前2日間の潜在的なリスクファクターの有無(プリン体含有食品の摂取を含む)について質問を受けています。すべての高プリン体食品(例:肉、内臓肉、肉汁、魚介類、豆類、ホウレンソウ、アスパラガス、マッシュルーム、酵母、ビール、その他ワインなどのアルコール飲料)が対象となっています。2日間の総プリン体摂取量の最小五分位群と比較して、他の各五分位群の再発性痛風発作のオッズ比の増加は、それぞれの群の低いものから1.17、1.38、2.21、4.76(p<0.001)で、動物性のプリン体摂取量については1.42、1.34、1.77、2.41(p<0.001)、植物性のプリン体摂取量については1.12、0.99、1.32、1.39(p=0.04)でした。プリン体摂取の影響は、性別、アルコール、利尿薬、アロプリノール、NSAIDs、コルヒチン服用のサブグループ間で一貫していました。高プリン体食の摂取で、再発性痛風発作のリスクが約5倍増加しており、とくに動物由来のプリン体の制限が有効であることが示唆されています。プリン体は食事由来よりも体内で生成される割合のほうが高いものの、実際にプリン体制限食では痛風発作が少ないというリスク感覚を持っておくと患者さんへ説明がしやすいかなと思います。植物性のプリン体摂取についてはあまり過敏になる必要はなさそうですが、アルコールや動物性のプリン体摂取は尿酸値への影響が直接大きくなかったとしても、痛風発作の原因になりうることや、乳製品が予防となりうることは押さえておくとよいでしょう。1)Kakutani-Hatayama M, et al. Am J Lifestyle Med. 2015;11:321-329.2)Campion EW, et al. Am J Med. 1987;82:421-426.3)Choi HK, et al. N Engl J Med. 2004;350:1093-1103.4)Dalbeth N, et al. Curr Rheumatol Rep. 2011;13:132-137.5)Zhang Y, et al. Ann Rheum Dis. 2012;71:1448-1453.

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アドヒアランス不良のカリウム薬の中止提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第3回

 今回は、長期間にわたってカリウム薬を服用していたことに着目した症例です。患者さんより聴取した不満を契機に医師へ血液検査結果を基にした中止提案を行い、中止後の検査値や自覚症状に問題がないことを医師および患者さんと確認し、無事に中止することができました。患者情報外来患者、70歳、女性、身長:154cm、体重:52kg現病歴:高血圧、骨粗鬆症投薬時に、毎食後の服薬が苦痛で、L−アスパラギン酸カリウムの服用をよく忘れるとの相談あり(医師には伝えていない)。市販薬やサプリメントの使用はなし。食事は規則正しく1日3食で、食事摂取量にむらはなし。処方内容(1、3の内科からの処方薬は10年以上服用中)1.テルミサルタン錠20mg 1錠 分1 朝食後2.アルファカルシドールカプセル0.25μg 1カプセル 分1 朝食後3.L−アスパラギン酸カリウム錠300mg 3錠 分3 毎食後症例のポイント患者さんは上記1と3の処方薬を長年服用していますが、L−アスパラギン酸カリウムを毎食後に服用することを苦痛に感じていました。たびたびあった服用忘れを医師には伝えていなかったため、アドヒアランスが良好だということを前提に処方が継続されている可能性がありました。L−アスパラギン酸カリウムは、薬剤性低カリウム血症のカリウム補給に用いられることが多くあります。低カリウム血症の原因となる薬剤として、漢方薬(芍薬甘草湯など市販薬にも成分として含まれるので要注意)や利尿薬(とくにループ利尿薬)、グリチルリチン酸、インスリンが挙げられますが、この患者さんの処方内容からは薬剤性の低カリウム血症が生じている可能性は低いと考えられました。患者さんから聞き取った範囲では、1日3食しっかりと食事を摂取していることから、食事でカリウムが著しく不足しているとも考えにくいです。直近の血液検査結果を持参してもらうと、アドヒアランス不良であったにもかかわらず、血清カリウム値は4.5mEq/Lと充足しており、中止しても大きな影響はないと推察しました。医師に血液検査結果と患者さんの希望について話をしてみたところ、そもそもL−アスパラギン酸カリウムの処方を開始したのは前医のため処方意図がわからないこと、血清カリウムなどのL−アスパラギン酸カリウムの評価を失念されていたことが発覚し、L−アスパラギン酸カリウムの処方が中止となりました。その際、次回診察の際にカリウム値の採血を提案しました。低カリウム血症とは、血清カリウム値が3.5mEq/L未満の場合であり、2.5~3.0mEq/Lが中等症、2.5mEq/L未満は重症と定義されている。2.5mEq/L未満の重症ないし急速な低下時には、心臓(不整脈)、筋肉(筋力低下・倦怠感・麻痺・筋痙攣)、消化管(イレウス・食欲不振・嘔気)、腎臓(多尿・腎機能障害)などに症状が出現する。とくにジギタリス製剤服用中の患者では致死的不整脈が起こりやすいので、血清カリウム値のモニタリングが重要となる。処方提案と経過L−アスパラギン酸カリウムの中止から1ヵ月後に患者さんが再来局されました。血液検査で血清カリウム値は4.1mEq/Lと基準値内であり、食欲不振や倦怠感・筋力低下による症状などの低カリウム血症に基づく症状もありませんでした。患者さんは薬局に相談したことで負担となっていた薬剤を中止できたことを喜んでくださり、信頼関係の構築にもつながって血圧・血液検査の提示や相談の機会も増えました。

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1日1回服用で脳内の神経伝達物質の働きを強める小児AD/HD治療薬「ビバンセカプセル20mg/30mg」【下平博士のDIノート】第31回

1日1回服用で脳内の神経伝達物質の働きを強める小児AD/HD治療薬「ビバンセカプセル20mg/30mg」今回は、中枢神経刺激薬「リスデキサンフェタミンメシル酸塩カプセル(商品名:ビバンセカプセル20mg/30mg)」を紹介します。本剤は、ドパミン/ノルアドレナリン遊離促進・再取り込み阻害薬で、1日1回の服用で血中濃度を持続的に維持し、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の症状を改善します。<効能・効果>本剤は、小児期におけるAD/HDの適応で、2019年3月26日に承認され、12月3日に発売されています。なお、本剤の使用実態下における乱用・依存性に関する評価が行われるまでの間は、他のAD/HD治療薬が効果不十分な場合にのみ使用します。<用法・用量>通常、小児にはリスデキサンフェタミンメシル酸塩として30mgを1日1回、朝に経口投与します。症状により1日70㎎を超えない範囲で適宜増減しますが、増量は1週間以上の間隔を空けて1日用量として20mgを超えない範囲で行います。<副作用>承認時における安全性評価対象症例172例中、臨床検査値異常変動を含む副作用は154例(89.5%)に認められました。主なものは、食欲減退136例(79.1%)、不眠78例(45.3%)、体重減少44例(25.6%)、頭痛31例(18.0%)、悪心19例(11.0%)でした。<患者さんへの指導例>1.この薬は、脳内の神経伝達物質の働きを強めることで、注意力散漫、衝動的で落ち着きがないなどの症状を改善します。2.睡眠に影響を与える恐れがあるため、午後の服用は避けてください。3.めまい、眠気、視覚障害などが起こることがあるので、危険を伴う作業や場所ではお子さんから目を離さないようにしてください。4.まれに自殺したい気持ちが現れることが報告されているので、いつもと違う様子を見かけたら、速やかに医療機関に連絡してください。5.本剤を適正な治療以外の目的で使用あるいは他人へ譲渡してはいけません。6.この薬の治療における役割や依存性などの危険性について、わからないことや不安なことがあれば、いつでも医師または薬剤師に相談してください。<Shimo's eyes>本剤は、中枢神経刺激系AD/HD治療薬であり、d-アンフェタミンとL-リジンのプロドラッグ製剤です。投与後に体内で徐々に活性体であるd-アンフェタミンに変換されることで、急激な血中濃度上昇を抑制し、その血中濃度を維持します。わが国における既存のAD/HD治療薬としては、中枢神経刺激薬としてメチルフェニデート徐放錠(商品名:コンサータ)、非中枢系としてアトモキセチン(同:ストラテラカプセル)およびグアンファシン(同:インチュニブ錠)が発売されています。国内では、以前よりアンフェタミン類の薬物乱用が問題となっており、過去にはメチルフェニデート即放性製剤の不適正使用が社会問題化したこともあるため、徐放性製剤であるメチルフェニデート徐放錠が開発されました。メチルフェニデート徐放錠は不適正な使用を防止するため、薬物依存を含むリスクを十分管理できる医師・医療機関、調剤責任者のいる薬局でのみ取り扱われるよう流通管理の厳格化などの必要な措置を講じることが求められています。本剤およびメチルフェニデートを取り扱う薬局・調剤責任者は、厚生労働省からの留意事項通知に基づいて「ADHD適正流通管理システム」への登録が必要です。なお、本剤は覚せい剤原料に指定されているため、薬局での管理には注意が必要です。本剤は、使用実態下における乱用・依存性の評価が行われるまでの間、他のAD/HD治療薬では効果不十分な場合にのみ変更で使用することができます。なお、承認時の臨床試験において、6歳未満および18歳以上の患者における有効性・安全性は確立していないため、18歳以上の患者への適応はありません。18歳未満から服用を開始し、かつ治療上の有益性が認められる場合のみ投与が可能です。相互作用については、高血圧クリーゼを避けるためにMAO阻害薬を投与中または投与中止後2週間以内の患者には禁忌です。また、炭酸水素ナトリウムなど、尿のpHをアルカリ化する薬剤を併用すると、本剤の活性体であるd-アンフェタミンの腎排泄が抑制されて作用が増強し、逆にアスコルビン酸などの尿のpHを酸性化する薬剤を併用すると作用が減弱するので、それぞれ併用注意となっています。本剤の大量投与時や曝露量増加によって細胞外セロトニン濃度が高まると、不安や発熱、震えなどを引き起こすセロトニン症候群が生じる恐れがあるため注意が必要です。注意事項が多いですが、服薬指導が一方的な情報提供にならないよう、患者さんやご家族の理解度をしっかり確認しつつ話を進めましょう。参考PMDA ビバンセカプセル20mg/ビバンセカプセル30mgADHD適正流通管理システム

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医師は仕事でSNSを使っている? 会員医師アンケート

「仕事上で最も利用している」のはYouTube多くの人が日常的に使っているソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)。人によっては、仕事上の情報収集・情報発信の目的で利用しているケースもある。では、医師の場合、研究や日常診療に役立つ情報を収集するために、どのSNSを利用しているのだろうか。ケアネットでは、2019年7月にCareNet会員医師を対象にSNS利用動向についてのアンケートを行った。アンケートは、2019年7月4日(木)~19日(金)の期間にインターネットで行われ、会員医師400人(20~30代・40代・50代・60代以上の各年代100人)から回答を得た。SNSの種類をFacebook、Twitter、Instagram、YouTubeの4つに絞ったうえで、それぞれについて「書き込み・投稿する」「閲覧のみ」「まったく利用しない」を選択してもらった(仕事上の利用動向調査を主目的としたため、プライベートでの利用が多いことが想定されるLINEは選択肢から除外した)。次に「4つのうち、仕事上で最も利用しているSNS」を選択してもらい、併せてその理由を聞いた。「書き込み・投稿する」と回答した人が最も多かったSNSはFacebookで14.2%、続いてTwitterで9.7%だった。特徴的な結果となったのがYouTubeで、「書き込み・投稿する」と答えた人は9.2%とTwitterと大きな差はなかったが、「閲覧のみ」と答えた人が71.5%と、ほかのSNSと比べて突出して多かった。「仕事上で最も利用しているSNS」への回答でもYouTubeが57%と最も多く、その理由しては「動画が診療に役立つ」との声が多く挙がった。一方、「仕事上では利用しない」「エビデンスの乏しい情報が多い」と情報の正確性を危惧し、「利用には慎重になる」という意見もあった。回答者は男性90%、20床以上が75%回答者400人(4区分の年代別に各100人)の内訳は、男性が90%、病床数別では、20床以上が約3/4だった。画像を拡大する「閲覧のみ」の利用率はYouTubeが突出して高いFacebook、Twitter、Instagram、YouTubeの4つのSNSの利用状況について、「利用している/書き込み・投稿する」「利用している/閲覧のみ」「利用していない」の3つから選択してもらった。「書き込み・投稿する」と回答した人数が最も多かったのはFacebookで14.2%(57人)、続いてTwitterで9.7%(39人)だった。YouTubeは、「書き込み・投稿する」と答えた人は9.2%(37人)とTwitterと大きな差はなかったが、「閲覧のみ」と回答した人が71.5%(286人)と、ほかのSNSに比べて突出して多かった点が特徴的だった。Instagramは「書き込み・投稿する」と「閲覧のみ」を合計しても109人と、最も利用者が少なかった。画像を拡大する世代別の差が少ないFacebook・YouTube、若年層中心のTwitter・Instagram年代別に見ると、どのSNSも年齢層が上がるにつれ「利用していない」比率が増える傾向はあるものの、Facebookはどの年代でも利用者と非利用者の比率が拮抗していた。YouTubeも年代を問わずに利用されているが、利用の仕方は「閲覧のみ」とする人が多かった。一方、Twitter・Instagramでは「書き込み・投稿する」ユーザーは、40代までの比較的若い層に偏っていた。画像を拡大する画像を拡大する女性のほうが利用に積極的利用者の比率を男女別で見たところ、大きな差は見られないケースが多かったものの、Twitterの利用率(書き込み・投稿する:女性20% vs.男性8%、閲覧のみ:女性28% vs.男性24%)、Instagramの利用率(書き込み・投稿する:女性18% vs.男性5%、閲覧のみ:女性25% vs.男性20%)などで女性のほうが高かった。画像を拡大する「仕事に使っている」のはYouTube「4つのSNSのうち、診療に関する情報を集めるために最も頻繁に使っているものを1つ選んでください」という設問では、YouTubeが57%(227人)で圧倒的な1位となった。続いてFacebookが23%(91人)、Twitterが11%(45人)となり、Instagramは2%(9人)だった。画像を拡大する診療科別では内科系でYouTubeの比率高い上記質問の回答を診療科別(内科系・外科系・その他)で分類したところ、内科系ではほかと比べてYouTubeの比率が高く、「手技の動画が便利」(内科・40代・男性)、「動画主体でわかりやすい」(呼吸器内科・30代・男性)といった声が挙がった。内科系では開業医の比率が高いことから勤務医よりも幅広い診療情報を求める傾向がある、とも考えられる。一方、外科系ではYouTubeの比率が相対的に低かった。「その他」ではTwitterの比率が最も高かったが、ここには臨床研修医が一定数含まれており、年代的な偏りが反映されているのかもしれない。画像を拡大する【分類詳細】内科系: 内科、神経内科、循環器内科、消化器内科、血液内科、呼吸器内科、糖尿病・代謝・内分泌内科、総合診療科外科系: 外科、整形外科、消化器外科、形成外科、脳神経外科、心臓血管外科その他: 小児科、精神科、放射線科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、眼科、皮膚科、臨床研修医リアルのつながり維持するFacebook、多様性&専門性のTwitter最後に「仕事で最も頻繁に使っているSNS」で、それぞれを選んだ理由について聞いた。利用者の最も多かったYouTubeでは、「診察手技や患者の所見の動画を見ることがある」(内科・30代・男性)「手技や神経学的徴候の参考にするため」(神経内科・30代・女性)「テキストではわかりにくい手技の実際や解説を動画で確認することがある」(その他・40代・男性)「オペ動画を見るため」(耳鼻咽喉科・50代・男性)といったように、診療や手術の動画を手軽に見られる、という利便性を挙げる声が多かった。Facebookを選んだ人からは、「医療関係者とつながっているSNSであるため」(小児科・30代・男性)「医師が実名で情報提供・情報共有をしているから」(その他・30代・女性)「年配の先生が使っている場合も多いため」(臨床研修医・20代・女性)といったように、リアルでつながりがある医師や職場の同僚・上司の発言をフォローしておくため、実名制で著名な医師の発言を検索できるため、医療者同士のFacebookグループに入っているから、といった理由が挙がった。Twitterを選んだ人からは、「その分野で権威のある方の意見を聞けるから」(外科・30代・男性)「勝手に情報が流れてくる。本音が聞けて面白い」(精神科・男性・40代)「専門家が集結するから」(放射線科・20代・男性)と、直接の知り合いではなくても有名医師の意見やそれに対するディスカッションを見ることができる、多くの専門家の意見を知ることができる、といった理由が挙がった。匿名でも使えることから、より本音に近い内容が見られたり、議論が盛り上がりやすかったり、という点を評価する人も多いようだ。Instagramは利用者自体が限られ、利用もプライベート目的がほとんどの様子。仕事上の情報収集・発信には、まだほとんど使われていないようだ。YouTube以外は「利用していない」が半数超「閲覧のみ」の利用者が7割を超えたYouTube以外では、「利用していない」との回答者が全体の半数を超えた。全体を通して目立ったのは、「診療に関する情報を集めるためには使っていない」(小児科・40代・男性)「エビデンスがない情報が多い」(精神科・60代・男性)「参考程度にしている」(循環器内科・60代・男性「実際に診療に使うことはほとんどない」(外科・60代・男性)といった「SNSと仕事には一定の距離を置いている」という声だ。SNSの炎上リスクはもとより、守秘義務事項が多い仕事特性、多忙さ、勤務中にPC・スマートフォンを操作できる状況にある人が少ない、といった医師特有の事情も相まって、仕事に関して積極的にSNSを利用する医師はごく一部にとどまっている様子がうかがえる。欧米では著名医師や研究室、ジャーナルなどがSNSを積極的に利用している例が多く、公式アカウントの開設・運営や限定公開設定の利用などによって、日本でも医師のSNS利用はもう少し広がる余地がありそうだ。実際、2019年の日本循環器学会学術集会では講演内容をTwitterで投稿する、日本抗加齢医学会総会では専用ハッシュタグを作って会期中にTwitterでの投稿を促すなど、SNS活用の取り組みが広がっている。参考までに、総務省が行った全国規模のネット利用動向調査※1内の各SNSの利用動向と今回の結果を比較した。すると、各SNSツールの利用動向では、「自ら情報発信や発言を積極的に行っている」とする人はFacebook:5.3%(今回の医師調査:14.2%)、Twitter:7.7%(同:9.7%)、Instagram:3.9%(同:6.5%)といずれも医師調査で高くなっており、「利用はしているが閲覧中心」とする利用者の比率も、すべてのSNSにおいて医師調査のほうが高かった※2。「積極的には使っていない」という慎重派が多いとはいえ、日本全体の平均値と比較した場合には、医師群の利用率の高さを予測できる結果となった。※1「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」(2018年)※2「利用はしているが閲覧中心」:今回の医師調査では「利用している/閲覧のみ」の回答者、総務省統計は「自ら情報発信や発言することよりも他人の書き込みや発言等を閲覧することのほうが多い」「ほとんど情報発信や発言せず、他人の書き込みや発言等の閲覧しか行わない」の回答者を合計したもの。

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乳がんリンパ浮腫のセルフケア、Webとパンフレットどちらが効果的

 乳がん治療関連リンパ浮腫(breast cancer-related lymphedema:BCRL)患者のケアに対するウェブベースのマルチメディアツールを用いた介入(Web Based Multimedia Intervention:WBMI)の結果が示された。米国・ヴァンダービルト大学のSheila H. Ridner氏らによる検討で、WBMIを受けた患者は、対照(パンフレットのみ)より生物行動症状(気分)が改善し、介入に対する知覚価値も高いことが示されたという。ただし、WBMI群は完遂率が低く、他の評価項目については大きな違いはみられなかったとしている。Journal of Women's Health誌オンライン版2019年7月17日号掲載の報告。 研究グループは、BCRLを有する女性患者の症状負荷、機能、心理面の健康、費用および腕の体積に対するWBMIの効果を評価する目的で、患者をWBMI群(80例)および対照群(80例)に無作為に割り付けた。WBMIは12項目から成り、それぞれ約30分を要した。対照群へは、パンフレットを提供するのみで、読むのに約2時間を要した。 介入前および介入後1、3、6および12ヵ月時に症状負荷、心理面の健康、機能および経費に関するデータを収集し、45例のサブグループは介入前および介入後3、6および12ヵ月時に腕の細胞外液量を生体インピーダンス法で測定した。また、介入に対する知覚価値についても調査した。 主な結果は以下のとおり。・介入の完遂率は、WBMI群58%、対照群77%で、統計学的に有意な差があった(p=0.011)。・Lymphedema Symptom Intensity and Distress Scale-Arm(LSIDS-A)に基づく症状の評価では、生物行動症状(気分)数はWBMIで減少を示したが、その他の症状については2群間で統計学的な有意差がなかった(効果量:0.05~0.28、p>0.05)。・他の変数の変化については、2群間で有意差は観察されなかった。・WBMIは、パンフレットよりもセルフケア情報が優れていると認識されていた(p=0.001)。 WBMIは生物行動症状を改善し、より質の高い情報と認識された。他の変数において統計的な有意に至らなかったのは、WBMI患者の介入完遂率の低さが影響している可能性があると筆者は結んでいる。

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収縮期血圧、拡張期血圧ともその上昇は心血管系発症リスクであることを確認(解説:桑島巖氏)-1099

 本論文は130万例という膨大な症例数の観察研究から、収縮期/拡張期血圧の心血管合併症発症リスクを高血圧の定義を130/80mmHg、140/90mmHgに分けて検討したものである。 結果としていずれの定義であっても収縮期血圧、拡張期血圧は、各々独立した発症リスクの予測因子であることが示され、収縮期血圧のリスクは拡張期血圧よりも予測リスクが高いことを証明した。 観察研究において収縮期血圧と拡張期血圧とを各々分け、心血管リスク評価にあたってはその解釈に十分に注意する必要がある。なぜなら加齢変化により収縮期血圧は上昇傾向となり、拡張期血圧は下降傾向をたどるからである。すなわち高齢者により脈圧が大きくなることは多くの臨床家が経験していることである。 観察疫学研究では必ず65歳前後からの心血管疾患発症リスクは、収縮期血圧が上昇するほど右肩上がりに高まる一方で、拡張期血圧は低くなるほど高まりJカーブ現象は必ず認められるのである。しかしこの現象をもって拡張期血圧を80mmHg以下に下げることは危険であるとの誤った判断をして一世を風靡したCruickshank博士(Cruickshank JM. BMJ. 1988;297:1227-1230.)に代表されるような専門医がわが国でも非常に多かったのである。 疫学研究での結果はランダム化試験によって確認される必要があるが、事実Jカーブ現象についてもSPRINT研究では認められていない。 観察研究である本論文でも拡張期血圧と血管リスクとの間にJカーブ現象が観察されているが、その関連性においては年齢およびその他共変量のいずれか1つの関与が示唆されていると述べていることから経年的変化によって生じた現象である事を示唆している。 拡張期血圧最低四分位範囲の対象例では、収縮期血圧の影響がより大きいとの結論を導きだしているのは妥当な解釈といえよう。

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医学論文史上、最凶最悪の誤嚥論文!【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第145回

医学論文史上、最凶最悪の誤嚥論文!いらすとやより使用さて、この論文を紹介するにあたり、虫が嫌いな人はご注意を! 満を持して登場する、私が数多く見てきた中で、最凶最悪の誤嚥論文です。心して読めッ!Vazirani J, et al.A complicated cockroach-ectomy.Respirol Case Rep. 2018;6:e00332.発作性心房細動の既往歴がある42歳男性がゴキブリを吸い込んだ! ということで救急部を受診しました。キャーーーー!!! もうこの時点でアウトーッ!!ゴキブリを吸い込んでしまった後、胸部の圧迫感、息切れ、そして肺の中を虫が動き回る感覚を訴えたそうです。いや、吸い込むってどういうことだよ、と突っ込みたくなるのですが、……おええええ! 想像もしたくない。バイタルサインはおおむね問題なかったのですが、左側の呼吸音が減弱し、喘鳴を聴取しました。ゴキブリ喘鳴。しかし、胸部レントゲン写真では特段異常はみられませんでした。この時点では、「うーん、ゴキブリを吸い込んだ? まさか患者さんの狂言じゃないだろうな…」と主治医も思っていたかもしれません。念のため…と気管支鏡検査を行ったところ、まずちぎれたゴキブリの下半分(腹部以下)が舌区に深く入りこんでおり、その他のゴキブリの破片も気管内に散在していました。疑ってスイマセン、本当でしたね…。見たくない…。見たくないよぉ……!論文には、絶対に見てはいけない「endobronchial cockroach(気管支内ゴキブリ)」の写真が掲載されています。見たい人はどうぞ、PubMedでフリーで読めます。処置の途中、急激に酸素飽和度が低下しました。ゴキブリによるアレルゲン曝露なのか、喉頭痙攣か、とにかく処置が継続できませんでした。いったん中断し、酸素化改善を待つしかありませんでした。その後、残りのゴキブリは咳嗽とともに喀出されたものもあったそうです。状態が落ち着いてきたので、念のため全身麻酔下でもう一度気管支鏡で摘出し、晴れて気管支からゴキブリは消え去りました。ふぅ、やれやれ。その後、患者さんは発熱し、血培からMicrococcus luteusが検出されました。踏んだり蹴ったり。泣きっ面に蜂。ゴキブリの持っていた腐敗菌だったのかどうかはわかりませんが、しかるべき抗菌薬によって治療されました。さて、ゴキブリ誤嚥は、小児で過去に1例報告されています1)。小児や精神科疾患の患者さんでは仕方ないのかなという気持ちはありますが、基本的に元気な成人がこんなもん誤嚥することはないはずです。なぜ誤嚥したのか結局よくわからなかったためか、論文のDiscussionではミクロコッカス菌血症やアレルギーの話が主体になっています(笑)。1)Marlow TJ, et al. J Emerg Med. 1997;15:487-489.

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ホテルの「クラブフロア」を使ってみよう!【医師のためのお金の話】第23回

ホテルの「クラブフロア」を使ってみよう!今日は資産形成から少し離れ、「ホテルライフ」についてお話をしたいと思います。私は2008年ごろからホテルの「クラブフロア」に好んで宿泊するようになりました。クラブフロアとは、一般の客室よりワンランク上のサービスが用意されている特別フロアのことです。私がクラブフロアの存在を知ったのは、書店で見掛けた書籍だったと思います。一般の宿泊客は入ることが許されない特別階と紹介されていました。ちょっと怖いイメージですよね。私でもクラブフロアに宿泊できるのかな?と、やや気後れしながら予約したのですが、一度宿泊するとあまりの居心地の良さに、すっかりクラブフロアのファンになってしまいました。クラブフロアのメリットとはクラブフロアを併設しているホテルのほとんどは、五つ星の高級ホテルです。五つ星ホテルは全体が豪華なのですが、中でもクラブフロアは特別階に存在し、一般の方はもちろん、通常の宿泊客も出入りすることができません。クラブフロアに宿泊すると下記のような特典を受けられます(ホテルによって違いがあります)。ジムやプールが無料クラブフロアでチェックイン・チェックアウトできる駐車場が無料クラブラウンジを利用できるクラブフロアに宿泊するメリットとして、多くのホテルが併設しているジムやプールを無料で利用できることが挙げられます(一般の宿泊客は有料のことが多いです)。私はクラブフロアに宿泊するときには基本は水着持参です。チェックインやチェックアウトをクラブフロアの専用レセプションでできるのも大きなメリットです。大きな荷物を持ちながら行列することなく、ウェルカムドリンクを飲みながらゆったりチェックインするのは、とても心地の良い経験です。そして、都心立地の五つ星ホテルでは駐車場料金がばかにならないことが多いですが、クラブフロア宿泊客は無料もしくは割引料金が適用されます。このように数々の特典があるのですが、クラブフロアに宿泊する最大の目的はクラブラウンジだと言っても過言ではありません。クラブラウンジの多くは、各種おつまみや軽食、そして夕方以降はアルコールを無料で楽しめるのです。クラブラウンジはホテルの高層階に位置することが多く、素晴らしい眺望をさかなにお酒を飲むのは最高のぜいたくです。ティータイムにチェックインしておいしいケーキを頂き、その後はプールで少し泳ぎ、乾いた喉をカクテルタイムにビールで潤します。夜が更けてナイトキャップの時間になるとカクテルを楽しんで一日を終える、といったクラブラウンジを中心としたぜいたくな時間を味わえます。印象に残るクラブフロア「お気に入りのクラブフロア」として、首都圏で初めに思い浮かぶのは、ホテルニューオータニの「エグゼクティブハウス 禅」です。こちらは1日6回のフードプレゼンテーション(フードの入れ替え)があり、ティータイムの時間からシャンパンが頂けます。ここはピエール・エルメ・パリのクロワッサンが有名ですが、他のフードもとてもおいしいのです。関西圏では、ザ・リッツ・カールトン大阪のクラブフロアが一押しです。最近では大阪のキタエリアにはリッツに比肩するホテルが続々と誕生していますが、ホスピタリティではリッツに一日の長があります。ただ、宿泊客の層が独特なので、私レベルでは少々肩身の狭い思いをしたこともあります。最後に福岡ですが、やはりグランドハイアット福岡です。キャナルシティ博多内にあって中洲にも近く、博多のすべてを満喫できます。首都圏や関西圏と比べて宿泊料金が手頃なのもうれしい点です。福岡の学会時などにお勧めのホテル&クラブフロアだと思います。クラブフロアのウマい利用法このような特典があるからには、宿泊料金はさぞ高額なのだろうと思われるかもしれませんが、実際にはそれほどではありません。エリアや時期にもよりますが、1室3万円台から宿泊できるホテルもあります。私は2008年から10年ほどの間に、日本全国のいろいろなホテルのクラブフロアに泊まりました。その経験から、クラブフロアの質が高いのは関西圏と福岡、一方で首都圏と東海エリアはサービスの質がイマイチでした。もちろん、各ホテルの差が大きいので首都圏のホテルがすべてだめと言っているわけではありませんが、傾向としては西高東低、という印象です。さて、クラブフロアにはどのような目的で宿泊するのが良いのでしょうか? 私は、観光ではなくホテルステイそのものを楽しむことをお薦めします。クラブラウンジをベースにして、プールなどで遊んでいると、あっという間に時間が過ぎます。リラックスできるので創作活動にももってこいです。それでは、宿泊する時期はどうでしょうか? 私のお薦めは、ゴールデンウイーク、お盆、年末年始などです。もちろん、宿泊料金はそれなりに高くはなりますが、極端に上がるわけではありません。とくに期間の長いゴールデンウイーク中にはよく「穴場の日」があります。クラブフロアを併設している五つ星ホテルは大都市圏に存在することが多いため、長期休暇中は下手なリゾート地に行くよりも空いている印象です。ゴールデン&シルバーウイークやお盆のように、どこに行っても混んでいる時期は、郊外ではなく都心のクラブフロアでゆっくり過ごすのがいいかもしれません。クラブフロア利用時の注意点一方、クラブフロアを利用するうえでの注意点もお話しします。ホテルは旅館業法で厳密に定員が決められています。子連れの場合、子供が12歳以下であれば1つの部屋に2名まで添い寝が可能であるケースが多いです。4人家族であっても子供が小さいうちは、クラブフロアに安く宿泊することが可能です。しかし、クラブラウンジは大人の空間であり、小さな子供が騒ぐことはご法度です。このため、実質的には小さな子供連れでクラブフロアを100%堪能することは難しいでしょう。また逆に子供が大きくなってくると、定員の関係で宿泊費がかさみ、宿泊しづらくなります。クラブフロアを楽しむには、独身もしくは子供がいない時期に利用するのが理想ではないでしょうか。海外旅行時にもクラブフロアの宿泊を検討したことがありますが、実際に利用したのは数回です。理由は、海外旅行では観光メインになるため、クラブフロアでゆっくりくつろいでいる時間がないからです。ビーチリゾートであっても、昼間はプールサイドやビーチで過ごすことが多く、夜は地元のおいしいレストランへ繰り出すので、クラブラウンジを利用する暇がありません。このような理由から、ホテルライフを楽しんで心身ともにリラックスしたいときにこそ、クラブフロアに宿泊することをお勧めします。

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第1回 噂の狭間研至とは何者か?【噂の狭研ラヂオ】

動画解説業界きってのオピニオンリーダーである狭間研至先生。第1回は、薬局に生まれ医師となり、そして再び薬局経営に戻ってきた経緯を語ります。中学時代に薬学部から医学部へ舵をきった理由、手術室から再び薬局に戻ってきた目的とは?噂の狭研の原点が今、明らかに。

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今話題の「フォーミュラリー」ってなんだ?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第30回

2020年度診療報酬改定の議論が始まったこともあり、「医療とお金に関することはもうなんでも!」という感じでさまざまなテーマが取り上げられています。そのような中、「フォーミュラリー」という言葉がよく聞こえてくるようになりました。厚生労働省は24日、中央社会保険医療協議会総会に20年度診療報酬改定に向けて、これまで出た意見をまとめた資料を示した。医薬品のフォーミュラリーに関しては「取り組み自体は評価するが、診療報酬上で評価する性質のものではない」などと整理。これについて、幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「(中略)これから地域でも院内でもフォーミュラリーを着実に推進するために、例えば何らかの算定要件にフォーミュラリーの策定を盛り込むという診療報酬上の対応は必要」と付言した。(2019年7月25日付 RISFAX)実はフォーミュラリーという言葉自体は10年以上前から存在していますが、まだ広く浸透しているとは言えません。これだ!という定義はまだないようですが、一般的には以下のように説明されているようです。「患者に対して最も有効で経済的な医薬品の使用方針」(日本医薬総合研究所)「有効性、安全性および経済性を考慮した医薬品の使用指針」(聖マリアンナ医科大学病院 薬剤部)「標準化した処方薬集」(浜松医科大学医学部附属病院 薬剤部)まとめると、「経済性や有効性を考慮して標準化された医薬品集」ということでしょう。医師の医薬品選択が短時間で効率的になり、使用できる医薬品の情報が充実して安全性が向上することが期待されています。その結果、医師の働き方改革にまでメリットがあるとかないとか。このフォーミュラリーが2020年度の報酬改定に影響するかどうかという議論にまでなっています。フォーミュラリー作成によって薬物治療の質向上昨年度からフォーミュラリーに関するいくつかの取り組みが行われ、日本調剤が協会けんぽ静岡支部から受託した事例の費用削減効果は大きな話題になりました。しかし、実際にフォーミュラリーに関わっている人はまだ少数なのではないでしょうか。フォーミュラリーがどういったもので、どのような点が評価されるのか整理してみたいと思います。フォーミュラリーと一言で言っても、院内フォーミュラリーと地域フォーミュラリーに分けられています。まず、院内フォーミュラリーですが、これは病院の採用薬の概念とほぼ同様で、病院全体の採用薬を薬剤部が取り仕切って情報収集および情報発信をすることにより、薬物治療をより安全に、そして経済的にするというものです。生活習慣病薬でもスペシャリティ薬でも新薬や配合剤が増え、後発医薬品の使用割合が70%を超えた今、医師それぞれが好きな薬剤やメーカーを選ぶことは非効率かつ非経済的であるため、多かれ少なかれ採用している病院が多いのではないでしょうか。病院薬剤師が採用薬を取りまとめて情報収集や発信をすることで、特徴や副作用情報の把握が容易になり、安全性が向上すると思われます。一方、地域フォーミュラリーについては、協会けんぽの支部単位や自治体、顔が見える範囲の医師や薬剤師のコミュニティ、中核病院を中心とした地域単位といったさまざまな単位が存在しています。病院やクリニックで主に使用する医薬品を地域共通で採用し、薬局がそれらを購入し、それ以外の処方薬は別途対応する、というものです。院内フォーミュラリーのメリットに加え、入退院があっても同じ薬剤が使われるため、フォローがしやすいというメリットがあります。経済効果は地域フォーミュラリーのほうが大きいでしょう。ともすれば医薬品の共同購入や経済性評価だけで終わってしまうこともあるようですが、どちらの場合であっても薬物治療の質を高めることも重要なポイントです。薬局での採用薬に関する情報の収集・提供に今まで以上に集中することができ、患者さんに対しても的確な説明ができるのではないでしょうか。ただし、「使用方針を定められたくない」と乗り気ではない医師をどう説得するか…などの問題もありそうですが。現在、このフォーミュラリーについて、中央社会保険医療協議会(中医協)で議論されています。その中で、健康保険組合連合会側からは「フォーミュラリーを推進していくことが後発医薬品の普及につながる。生活習慣病の対象薬剤だけで数千億円単位で薬剤の適正化につながる」という経済的メリットを強調する意見が出ていて、医師側からは「患者ファーストの観点でどの薬剤を使うのがいいのかを考え、さらに無駄のないような投薬をすることが副次的に収支の改善に寄与する」といった、フォーミュラリーに否定的な発言が出ています。個人的には、フォーミュラリーが報酬の加算になるかどうかは、まだ議論が尽くされておらず効果も明確になっていな現状では時期尚早だと思っていますが、財政が逼迫し、医師の働き方改革が叫ばれている状況ではまだどうなるかわかりません。もし自分の薬局の周辺でフォーミュラリーが作成されたらどうなるか、どのような問題がありそうか、ぜひ皆さんも考えてみてはいかがでしょうか。

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「無資格調剤で業務停止」から見直す薬剤師の独占業務【赤羽根弁護士の「薬剤師的に気になった法律問題」】第14回

先日、岡山県の薬局に対して、真庭保健所長が9日間の業務停止を命じたとの報道がありました。違反の内容は、薬剤師が不在であるにもかかわらず開局したことや、薬剤師が不在であるにもかかわらず薬剤師でない者に調剤をさせ、薬剤を販売または授与させたこと等のようです。「無資格調剤で業務停止」というと、厚生労働省が示した「調剤業務のあり方について」(薬生総発0402第1号平成31年4月2日厚生労働省医薬・生活衛局総務課長)、通称0402通知に関する処分なのではないかと思われがちですが、今回の問題はそもそも調剤業務の責任を担う薬剤師が不在とのことなので、0402通知に関するものではありません。ご存じのとおり、薬局においては例外的に、一定条件下での一時的な薬剤師不在時間が認められるようになった1)ものの、原則として薬剤師が不在の場合には開局できません。また、薬剤師以外の者は原則調剤を行えず(薬剤師法19条)、薬局開設者にも、「その薬局で調剤に従事する薬剤師でない者」に調剤させることが禁止されています(薬機法施行規則第11条の8第1項)。薬剤師法 第19条薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない。(後略)薬機法施行規則 第11条の8第1項薬局開設者は、その薬局で調剤に従事する薬剤師でない者に販売又は授与の目的で調剤させてはならない。(後略)このように、薬剤師でなければ調剤はできませんが、薬剤師以外に調剤をさせてはならない義務は薬局開設者にもあるので、当然ながら、薬局においてそのようなことをさせてはいけないわけです。今後、上記の0402通知に従って、薬剤師以外の者が調剤に関する業務に関わることが増えると想定されますが、もちろん、この原則は変わっていません。そのため、この通知でも「薬剤師が調剤に最終的な責任を有するということを前提として」「調剤に最終的な責任を有する薬剤師の指示に基づき」など、責任の所在は薬剤師にあることが強調されています。今回処分された薬局のように、薬剤師がそもそも薬局にいないなかで、薬剤師でない者が「調剤」を行うことに問題があるのは明らかです。0402通知が示されても、「調剤」が薬剤師の独占業務であること(薬剤師法19条)には変わりなく、その責任は薬剤師が負うことが前提だということを、薬局業務に携わる人は絶対に忘れてはなりません。その点を疎かにして運営すれば、今回のような問題になりかねませんし、今後の経営にも影響が出るかもしれません。0402通知が業界で話題になっているこの時期に、このような問題が明らかになったことは、「調剤」について改めて留意しなければならないと思わされたのではないでしょうか?参考資料1)「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令等の施行等について」薬生発0926第10号平成29年9月26日厚生労働省医薬・生活衛生局長

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第26回 化学療法時に用いられる各制吐薬の有用性をエビデンスから読み解く【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 がん化学療法では、疼痛管理や副作用の予防などさまざまな支持療法を行うため、それぞれのレジメンに特徴的な処方があります。代表的な副作用である悪心・嘔吐に関しては、日本癌治療学会による制吐薬適正使用ガイドラインや、ASCO、NCCN、MASCC/ESMOなどの各学会ガイドライン1)に制吐療法がまとめられていますので、概要を把握しておくと患者さんへの説明やレジメンの理解に有用です。悪心・嘔吐は大きく、化学療法から24時間以内に出現する急性悪心・嘔吐、25~120時間に出現する遅発性悪心・嘔吐、予防薬を使用しても出現する突出性悪心・嘔吐、化学療法を意識しただけでも出現する予期性悪心・嘔吐に分けられ、化学療法の催吐リスクに応じて制吐薬が決められます。今回は主な制吐薬である5-HT3受容体拮抗薬のパロノセトロン、NK1受容体拮抗薬のアプレピタント、MARTAのオランザピンのエビデンスを紹介します。パロノセトロンまずは、2010年に承認された第2世代5-HT3受容体拮抗薬であるパロノセトロンを紹介します。本剤は従来のグラニセトロンやオンダンセトロンとは異なる構造であり、5-HT3受容体への結合占有率、親和性、選択性が高く、半減期も約40時間と長いことから遅発性の悪心・嘔吐にも有効性が高いとされています。2018年版のNCCNガイドラインでは、パロノセトロンを指定しているレジメンもあります1)。パロノセトロンとグラニセトロンの比較試験では、CR(Coplete Response)率、すなわち悪心・嘔吐がなくレスキュー薬が不要な状態が、急性に関しては75.3% vs.73.3%と非劣性ですが、遅発性に関しては56.8% vs.44.5%(p<0.0001、NNT 9)とパロノセトロンの有効性が示されています2)。また、同薬剤によりデキサメタゾンの使用頻度を減らすことができる可能性も示唆されています3)。添付文書によると、便秘(16.5%)、頭痛(3.9%)のほか、QT延長や肝機能値上昇が比較的高頻度で報告されているため注意が必要ですが、悪心の頻度が多いと予期性の悪心・嘔吐を招きやすくなるため、体力維持や治療継続の点でも重要な薬剤です。院内の化学療法時に静注される薬剤ですので院外では見落とされることもありますが、アプレピタント+デキサメタゾンの処方があれば、5-HT3受容体拮抗薬の内容を確認するとよいでしょう。アプレピタント2009年に承認されたアプレピタントは、中枢性(脳内)の悪心・嘔吐の発現に関与するNK1受容体に選択的に結合することで、悪心・嘔吐を抑制します。一例として、NK1受容体拮抗薬を投与された計8,740例を含む17試験のメタアナリシスを紹介します4)。高度または中等度の催吐性化学療法に対して、それまで標準的だった制吐療法(5-HT3拮抗薬、副腎皮質ステロイド併用)に加えてNK1受容体拮抗薬を追加することで、CR率が全発現期において54%から72%(OR=0.51、95%信頼区間[CI]=0.46~0.57、p<0.001)に増加しています。急性/遅発性の両方で改善効果があり、なおかつ、この高い奏効率ですので、本剤が標準的に用いられるようになったのも納得です。一方で、因果関係は定かではありませんが、重度感染症が2%から6%に増えています(1,480例を含む3つのRCT:OR=3.10、95%CI=1.69~5.67、p<0.001)。また、CYP3A4の基質薬剤なので相互作用には注意です。オランザピンMARTAのオランザピンは、D2受容体拮抗作用および5-HT3受容体拮抗作用によって有意な制吐作用を示すと考えられており、2017年に制吐薬としての適応が追加されました。直近のASCOやNCCNのガイドラインの制吐レジメンにも記載があります1)。従来の5-HT3受容体拮抗薬+NK1受容体拮抗薬+デキサメタゾンの3剤併用と、同レジメンにオランザピンまたはプラセボを上乗せして比較した第3相試験5)では、シスプラチンまたはシクロホスファミド、およびドキソルビシンで治療を受けている乳がんや肺がんなどの患者を中心に約400例が組み入れられました。併用の5-HT3受容体拮抗薬はパロノセトロンが約75%で、次いでオンダンセトロンが24%でした。ベースの制吐薬3剤は、5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬に加えて、デキサメタゾンが1日目に12mg、2~4日目は8mg経口投与でガイドラインのとおりです。エンドポイントである悪心なしの状態は0~10のビジュアルアナログスケールで0のスコアとして定義され、化学療法後0~24時間、25~120時間、0~120時間(全体)で分けて解析されました。いずれの時点においてもオランザピン併用群で悪心の発生率が低く、化学療法後24時間以内で悪心がなかった割合はオランザピン群74% vs.プラセボ群45%、25~120時間では42% vs.25%、0~120時間の5日間全体では37% vs.22%でした。嘔吐やレスキューの制吐薬を追加する頻度もオランザピン群で少なく、CR率もすべての時点で有意に改善しています。なお、忍容性は良好でした。論文内にあるグラフからは、2日目に過度の疲労感や鎮静傾向が現れていますが、服用を継続していても後日回復しています。うち5%は重度の鎮静作用でしたが、鎮静を理由として中止に至った患者はいませんでした。服用最終日およびその前日には眠気は軽快しています。以上、それぞれの試験から読み取れる制吐薬の効果や有害事象を紹介しました。特徴を把握して、患者さんへの説明にお役立ていただければ幸いです。1)Razvi Y, et al. Support Care Cancer. 2019;27:87-95.2)Saito M, et al. Lancet Oncol. 2009;10:115-124.3)Aapro M, et al. Ann Oncol. 2010;21:1083-1088.4)dos Santos LV, et al. J Natl Cancer Inst. 2012;104:1280-1292.5)Navari RM, et al. N Engl J Med. 2016;375:134-142.

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鉄剤と葉酸の漫然投与を見抜き中止提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第2回

 処方提案をする際には、副作用や相互作用による影響を検討するだけでなく、患者さんの希望を聞き取り、前向きに治療を受けられるようにすることも重要です。今回は、多剤併用に悲観的な患者さんに漫然投与されていた薬剤の中止提案を行った症例を紹介します。患者情報施設入居、70歳、女性、身長:140cm、体重:50kg現病歴:関節リウマチ、高血圧、骨粗鬆症処方内容アムロジピン錠2.5mg 1錠 朝食後エソメプラゾールカプセル20mg 1カプセル 朝食後クエン酸第一鉄ナトリウム錠50mg 2錠 朝食後アルファカルシドール錠0.5μg 2錠 朝食後センナ・センナ実顆粒1g 朝夕食後葉酸錠5mg 2錠 朝夕食後アレンドロン酸錠35mg 1錠 起床時・木曜日症例のポイントこの患者さんは、「処方される薬が多いのは自分が重い病気だからであり、これ以上楽になることはない」と考え、悲観的になっていました。多剤併用が苦痛だったようです。上記の薬剤を継続することによって、心理的負荷の増加、鉄剤継続に伴う便秘や肝機能障害、胃腸障害などの懸念もありました。そこで、薬剤の削減ができないか見直しました。関節リウマチなどの炎症性疾患の患者さんでは貧血が比較的多くみられますが、それらによる二次性貧血の場合は原疾患の治療の見直しが必要になることがあります。また、葉酸錠とクエン酸第一鉄ナトリウム錠が長期間投与されていますが、メトトレキサートの副作用予防のための葉酸というわけでもないため患者さん自身はあまりメリットを感じておらず、投与量の見直しも行われていないようです。そこで、鉄欠乏性貧血もしくはリウマチに伴う二次性貧血の見極めの必要性、そして葉酸錠とクエン酸第一鉄ナトリウム錠の漫然投与の可能性を考え、血液検査からのアプローチを行いました。鉄欠乏性貧血は、貯蔵鉄が枯渇することでHb(ヘモグロビン)合成材料の血清鉄が不足して起こる。鉄の貯蔵と血清鉄の維持を行うフェリチンは鉄の貯蔵状態を反映しており、鉄剤治療を行う際の重要なモニタリング項目となる。貯蔵鉄を運搬するTIBC(トランスフェリン)は鉄欠乏の状態で増加することから、TIBCの増加は鉄の全体量としての不足を意味する。本来、鉄欠乏性貧血は、Hb:男性12g/dL未満・女性11g/dL未満、フェリチン:12ng/dL未満、TIBC:360μg/dL以上が治療対象となる。処方提案と経過往診同行の際に、医師に葉酸錠とクエン酸第一鉄ナトリウム錠の評価を提案しました。葉酸錠については葉酸、クエン酸第一鉄ナトリウム錠についてはフェリチンとTIBCの検査オーダーを依頼し、下記の血液検査結果(1)の結果が得られました。TIBCが正常であり、葉酸は充足過剰かつフェリチンが十分であることからリウマチの二次性貧血が疑われますが、めまい・ふらつき・倦怠感などの自覚症状もないことから、葉酸錠とクエン酸第一鉄ナトリウム錠の処方中止を医師に提案し、中止となりました。血液検査結果(1)(介入時提案)MCV:97、Hb:9.9g/dL(↓)、Alb:3.0g/dL、AST:13U/L、ALT:4U/LBUN:14.0mg/dL、Scr:0.61mg/dL、Na:139mEq/L、K:3.5mEq/L、Ca:9.1mg/dLFe:35μg/dL(↓)、TIBC:420μg/dL、フェリチン:203.5ng/mL、葉酸:706.0ng/mL(↑)両剤を中止後、自覚症状の出現や増悪などもなく2週間が経過し、服用錠数が減ったことで気持ちも楽になったことを患者さんより聞き取りました。フォロー中の血液検査結果(2)でも血清鉄こそ基準値に満たないものの、フェリチンは充足しており、自覚症状の出現もなく安定した体調を維持しています。本症例は、関節リウマチによる二次性貧血の可能性が高く、原疾患の治療コントロールを目標に現在もフォローを継続しています。血液検査結果(2)(処方変更3ヵ月後の検査結果)MCV:96、Hb:11.6g/dL、Alb:3.7g/dL、AST:16U/L、ALT:5U/L、BUN:16.2mg/dL、Scr:0.55mg/dL、Na:137mEq/L、K:4.0mEq/L、Ca:9.0mg/dLFe:30μg/dL(↓)、TIBC:385μg/dL、フェリチン:192.5ng/mL、葉酸:4.7ng/mL日本鉄バイオサイエンス学会治療指針作成委員会 編. 鉄剤の適正使用による貧血治療指針 改訂第3版. 響文社;2015.

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関節リウマチに対する3剤目の経口JAK阻害薬「スマイラフ錠50mg/100mg」【下平博士のDIノート】第30回

関節リウマチに対する3剤目の経口JAK阻害薬「スマイラフ錠50mg/100mg」今回は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬「ペフィシチニブ臭化水素酸塩(商品名:スマイラフ錠50mg/100mg)」を紹介します。本剤は、1日1回の服用でJAKファミリーの各酵素(JAK1/2/3、チロシンキナーゼ2[TYK2])を阻害し、関節リウマチによる関節の炎症や破壊を抑制します。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)の適応で、2019年3月26日に承認され、2019年7月10日より発売されています。なお、過去の治療において、メトトレキサート(MTX)をはじめとする少なくとも1剤の抗リウマチ薬などによる適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与します。<用法・用量>通常、成人はペフィシチニブとして150mg(状態に応じて100mg)を1日1回食後に投与します。なお、中等度の肝機能障害がある場合は、50mg/日を投与します。<副作用>後期第II相試験、第III相臨床試験2件および継続投与試験の4試験における安全性併合解析において、本剤が投与された患者1,052例中810例(77.0%)に副作用が認められました。主な副作用は、上咽頭炎296例(28.1%)、帯状疱疹136例(12.9%)、血中CK増加98例(9.3%)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として、帯状疱疹(12.9%)、肺炎(ニューモシスチス肺炎などを含む)(4.7%)、敗血症(0.2%)などの重篤な感染症、好中球減少症(0.5%)、リンパ球減少症(5.9%)、ヘモグロビン減少(2.7%)、消化管穿孔(0.3%)、AST(0.6%)・ALT(0.8%)の上昇などを伴う肝機能障害、黄疸(5.0%)、間質性肺炎(0.3%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、ヤヌスキナーゼという酵素を阻害することにより、関節の炎症や腫れ、痛みなどの関節リウマチによる症状を軽減します。2.持続する発熱やのどの痛み、息切れ、咳、倦怠感などの症状が現れた場合はすぐにご連絡ください。3.痛みを伴う発疹や皮膚の違和感、局所の激しい痛み、神経痛などが現れた場合は速やかに受診してください。4.この薬を服用している間は、生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)の接種ができません。接種の必要がある場合には主治医に相談してください。5.(妊娠可能年齢の女性の場合)この薬を服用中および服用終了後少なくとも1月経周期は、適切な避妊を行ってください。6.本剤を服用中の授乳は避けてください。<Shimo's eyes>関節リウマチの薬物療法は近年大きく進展しています。関節破壊の進行抑制を含めた病態コントロールのため、発症初期にはMTXをはじめとする従来型疾患修飾性抗リウマチ薬(cDMARDs)が使用されます。MTXなどを十分量で用いても効果不十分な場合には、生物学的製剤であるTNF阻害薬(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブなど)やIL-6阻害薬(トシリズマブなど)、T細胞活性抑制薬(アバタセプト)、もしくは低分子標的薬であるJAK阻害薬(トファシチニブ、バリシチニブ)が使用されます。本剤は、関節リウマチに用いる3剤目のJAK阻害薬で、JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2を阻害し、関節の炎症や破壊を抑制します。生物学的製剤は点滴または皮下注射での投与となりますが、しばしば発疹などの投与時反応や注射部位疼痛が問題となることがあります。JAK阻害薬は経口投与のため、非侵襲性の治療を望む患者さんや自己注射が困難な患者さんであっても、好みや生活環境に合わせた治療を選択することができると期待されています。また、本剤は相互作用も少なく、1日1回投与であるため、高齢者でも使用しやすいと考えられます。留意点としては、中等度の肝機能障害を有する患者については投与量の制限があることが挙げられます。また、本剤は免疫反応に関与するJAK経路の阻害により、結核、肺炎、敗血症などの感染症リスクが増大する懸念があることから、既存のJAK阻害薬2剤と同様に、生物学的製剤や他のJAK阻害薬などの免疫を抑制する薬剤との併用はできません。承認時の臨床試験では、副作用として12.9%で帯状疱疹が報告されているので、とくに高齢の患者さんでは、使用前に帯状疱疹ワクチン接種の有無などについて確認し、服用後に帯状疱疹が現れる可能性について注意喚起をしておく必要があるでしょう。

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