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第25回 対面での吸入指導がアドヒアランスに与える影響は予想以上に大きい【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 気管支喘息やCOPD患者さんへの吸入指導は日常的にあるため、わかりやすい説明は薬剤師に求められる必須スキルの1つです。薬局で説明する旨の医師指示が処方箋に記載されているケースも少なくなく、私も新人のころはすべてのデバイスごとの手順や使用上のピットフォールを必死で覚えたものです。デモ用キット、リーフレット、ビデオなどの充実した資材が製薬会社から提供されていますので、患者さんにとって最も有用な説明手段を選択したいですよね。今回は、その参考となるリアルワールドデータ(実臨床で得られたデータ)の調査を紹介します。対面での実技指導を好む患者が83%REAL(Real-life Experience and Accuracy of inhaLer use)調査という、適切な吸入器の使用、吸入手技、吸入器の特性など、患者アドヒアランスへ影響すると考えられる23項目について電話で行われた調査があります1)。2016年1月4日~2月2日に調査が実施され、対象はブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、オランダ、英国、米国の9ヵ国から抽出された軽度~重度のCOPD患者764例(平均年齢56±9.8歳)でした。使用吸入器の内訳は、ブリーズヘラー186例、エリプタ191例、ジェヌエア194例、レスピマット201例でした。自己申告のアドヒアランスは、66歳以上の患者と比較して65歳以下の患者では有意に低く、性別、疾患の重症度、診断からの経過時間では有意差はみられませんでした。手技の説明では、吸入器を用いた対面による指導(吸入デモ)が「とても役に立つ」と回答している割合が最も高く、吸入デモ83%>ビデオ58%>口頭による使用説明51%>リーフレット34%という結果でした。吸入デモの回数が多い患者ほどアドヒアランスが高く、さらに呼吸器科医自身による指導を受けている患者ではより良好でした。少なくとも過去2年間に医療者による吸入手技の確認を受けたことがないと回答した患者は29%で、手技の確認を受けた患者ではよりアドヒアランスが良好かつ全量を吸入できている自信がありました。なお、全量を吸入したという実感があったのは、ブリーズヘラーを用いた患者では93%、ジェヌエアでは84%、エリプタでは80%、レスピマットでは76%でした。吸入指導は、呼吸器科医(41.3%)、薬剤師(20.2%)、看護師(18.1%)、一般医(12.0%)、その他(8.4%)によって行われており、呼吸器科医は自ら患者を指導する割合が高かったのに対し、一般医はほかの医療者に委任する割合が高いという結果でした。製剤特性や用法に依存する部分もありますが、アドヒアランスを高めるポイントは、対面での吸入デモ、小まめな手技確認、とくに呼吸器科医による吸入指導、ということになると思います。患者が好む吸入器は簡単・シンプル治療満足度には、吸入指導の方法という観点とは別に、吸入器に対する好みの問題もあります。これに関しては、COPD患者、喘息患者の吸入器の好みに関するリアルワールドデータの調査があります2)。こちらは、欧州、米国、日本および中国で実施された呼吸器疾患プログラムから、喘息(12歳以上の患者)、COPD(気道閉塞が確認された40歳以上の患者)、喘息とCOPDのオーバーラップ(ACO)の7,300例を超える患者データが収集され、吸入維持療法の現在の治療法と吸入器の種類、医師の好み、患者が重要と考える吸入器の特性および満足度を変数として解析した研究です。よく処方されているのが、ドライパウダー式の吸入器(62.8~88.5%の患者)と加圧噴霧式定量吸入器(18.9~35.3%の患者)でした。ディスカス、エリプタ、タービュヘイラーなどに次いでエアゾール剤が多いというのはさほど違和感はないかと思います。吸入器の特性について重視する要素として、どの疾患においても「使い方がシンプルで簡単」ということが半数以上の患者で挙げられ、長持ちして壊れにくい、持ち運びが簡便、充填の必要がない、吸入のために息を吸い込む必要がない、毎回肺に同じ量の薬が届く、薬剤の残数がわかるなどの特性が続きます。最近の吸入器は工夫があるものも多いので、各製剤の特徴を把握して図にまとめておくと説明しやすいと思います。吸入器の種類も多様化していますので、うまく吸えないときはその原因を特定したり、改善策のアドバイスや適切な吸入器への変更を提案したりすることもあるでしょう。吸入アドヒアランスはCOPDや喘息の治療効果に直結するので、背景因子を理解して患者さんに共感しつつも、しっかりと対面で説明や提案ができるようにしておきたいものです。1)Price D, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018;13:695-702.2)Ding B, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018;13:927-936.

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高血圧症、閾値を問わず心血管転帰の独立リスク因子/NEJM

 高血圧症は、その定義(収縮期・拡張期血圧値)が130/80mmHg以上または140/90mmHg以上にかかわらず、有害心血管イベントのリスク因子であることが、一般外来患者130万例を対象に行ったコホート試験で示された。収縮期高血圧および拡張期高血圧はそれぞれ独立したリスク因子であることや、収縮期血圧上昇のほうがアウトカムへの影響は大きいことも示されたという。米国・カイザーパーマネンテ北カリフォルニア(KPNC)のAlexander C. Flint氏らによる検討で、NEJM誌2019年7月18日号で発表された。外来での収縮期・拡張期血圧値と心血管アウトカムの関連は不明なままである中、2017年に改訂された高血圧症のガイドラインでは2つの閾値が示され、治療における複雑さが増していた。8年間の有害心血管イベント発生リスクを検証 研究グループは、KPNC(カリフォルニア州北部を中心に400万人超が加入する)の会員データを用いて、一般外来成人患者130万例を対象に試験を行った。 多変量Cox生存分析により、8年間にわたる収縮期・拡張期高血圧の複合アウトカム(心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中)への影響の大きさを調べた。解析では、人口統計学的特性と併存疾患について調整を行った。140mmHg以上、zスコア1上昇で心血管リスクは1.18倍 収縮期・拡張期高血圧の負担は、それぞれが有害アウトカムの独立予測因子であることが示された。生存モデルにおいて、収縮期高血圧の持続的負担は、同値140mmHg以上の場合で、zスコア1上昇におけるハザード比(HR)は1.18(95%信頼区間[CI]:1.17~1.18)だった。また、拡張期高血圧の持続的負担については、同値90mmHg以上の場合で、zスコア1上昇におけるHRは1.06(同:1.06~1.07)だった。 同様の予測結果は、高血圧症の閾値が低い場合(130/80mmHg以上)や、高血圧症の閾値を使わずに収縮期・拡張期血圧値を予測因子として用いた場合でも得られた。 また、拡張期血圧とアウトカムにはJカーブの関連性が認められた。その関連性には年齢およびその他共変量のいずれか1つ以上の関与が示唆され、また拡張期血圧が最低四分位範囲の人では、収縮期高血圧の影響がより大きいことが見てとれた。

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HR+/HER2-進行乳がんへのPI3K阻害薬alpelisib、日本人解析結果(SOLAR-1)/日本臨床腫瘍学会

 ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)進行乳がんに対する、α特異的PI3K阻害薬alpelisibとフルベストラント併用療法の有効性を評価する第III相SOLAR-1試験の日本人解析結果を、第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で、愛知県がんセンターの岩田 広治氏が発表した。なお、同患者に対するalpelisib併用療法は、SOLAR-1試験の結果に基づき、2019年5月にPI3K阻害薬として初めてFDAの承認を受けている。alpelisib併用群とプラセボ群に割り付け SOLAR-1試験は、HR+/HER2-進行乳がん患者(ECOG PS≦1、1ライン以上のホルモン療法歴あり、進行後の化学療法歴なし)を対象とした国際第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験。登録患者はPIK3CA遺伝子変異陽性もしくは陰性コホートに分けられ、それぞれalpelisib併用群(alpelisib 300mg/日+フルベストラント500mg/1サイクル目のみ1日目、15日目に投与、以降28日を1サイクルとして1日目に投与)とプラセボ群(プラセボ+フルベストラント)に1:1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、PIK3CA陽性コホートにおける無増悪生存期間(PFS)。副次評価項目は、PIK3CA陰性コホートのPFS、両コホートの全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、安全性などであった。 alpelisib併用療法の主な結果は以下のとおり。・全体で572例が登録され、うち日本人は68例(PIK3CA陽性が36例、陰性が32例)。両コホートでそれぞれalpelisib併用群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた(陽性:alpelisib併用群17例 vs.プラセボ群19例、陰性:15例 vs.17例)。・日本人集団の年齢中央値は両群とも67歳。BMI中央値は25kg/m2 vs.21.4kg/m2で全体集団(26.5kg/m2 vs.26.1kg/m2)よりも低く、PS 0の割合は88.2% vs.89.5%と全体集団(66.3% vs.65.7%)よりも高かった。その他のベースライン特性は全体集団と同様であった。・PIK3CA陽性コホートにおけるPFS中央値は、全体集団ではalpelisib併用群11.0ヵ月に対しプラセボ群5.7ヵ月とalpelisib併用群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.50~0.85; p=0.00065)。これに対し日本人集団では、alpelisib併用群9.6ヵ月に対しプラセボ群9.2ヵ月と両群で差はみられなかった(HR:0.78、95%CI:0.35~1.75)。・PIK3CA陽性コホートにおけるalpelisibの曝露期間は、全体集団で平均8.0ヵ月、中央値5.5ヵ月(0.0~29.0)、平均相対的用量強度(RDI)77.8%だったのに対し、日本人集団では曝露期間の平均4.2ヵ月、中央値1.4ヵ月(0.3~21.1)、平均RDI 58.8%であった。・日本人集団において、全体集団と比較してalpelisib併用群で多くみられたGrade3以上の有害事象は、皮疹(日本人集団:43.8%/ 全体集団:20.1%)、膵炎(15.6%/5.6%)、重度皮膚有害反応(9.4%/1.1%)であった。・alpelisib併用群の有害事象による治療中止は、日本人集団では全Gradeで56.3%、Grade3以上で25.0%と、全体集団(25.0%、13.0%)と比較して多く発生した。日本人集団で治療中止につながった有害事象は、高血糖症(18.8%)、皮疹(12.5%)、重度皮膚有害反応(9.4%)など。Grade3以上の皮疹は多くが14日以内に起きていた。・投与開始後8日目におけるalpelisibの血中トラフ濃度を日本人と日本人以外で比較すると、平均値474ng/mL vs.454ng/mL、中央値410ng/mL vs.442ng/mLと差はみられなかった。 ディスカッサントを務めた虎の門病院の尾崎 由記範氏は、他のPI3K阻害薬による臨床試験での重篤な皮疹の発生率は3.8~8.0%(全体集団)1)2)で、43.8%という数字は顕著に高いことを指摘。alpelisibの第I相試験で皮疹の発生は用量依存的に増加している点3)、今回のサブセット解析で最初の数週間で多く発生している点などに触れ、日本人集団での最適用量の再検討や、経口非鎮静性抗ヒスタミン薬の予防的使用の検討が必要ではないかとの考えを示した。 岩田氏は発表後の質疑において、アジア人の他のポピュレーションでは全体集団と同様の結果が得られていることを明らかにし、日本人集団を対象とした追加試験を行う必要があるとした。

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薬機法改正で「服薬後のフォロー」が薬剤師の義務に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第29回

2020年に法改正を目指している「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法、薬機法)」により、薬局・薬剤師の業務が大きく変わりそうです。厚生労働省は薬局で働く薬剤師に対し、必要に応じて患者の服用状況や副作用を継続的に確認し、指導するよう義務付ける。現状は医師の処方箋に基づいた薬の調剤に偏っている。服用後に処方内容が適切かどうかをチェックするといった本来業務が不十分との指摘が多い。法改正で職務を明確にし、改善を促す。6月に医薬品医療機器法の改正案が通常国会で審議入りしたが、衆院採決前に閉会し継続審議となった。秋に想定する臨時国会での成立を目指す。2020年にも施行される見通しだ。(2019年7月9日付 日本経済新聞)改正と聞くと「何か悪いことをしたのかしら…」と思う人もいるかもしれませんが、今回の改正は2013年に薬事法から医薬品医療機器等法と改正された際に、施行後5年を目途に見直しをすることが決められていたものです。この改正案は、6月の通常国会では会期切れとなり採決されずに継続審議となりましたが、秋の臨時国会で成立する見込みです。改正案の概要としては、薬局薬剤師に対して、調剤時に限らず必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握や服薬指導を行う義務、患者の薬剤の使用に関する情報を医師などに提供する努力義務を法制化することが求められています。単純に患者さんから聞いたことをそのまま医師に伝える伝言ゲームではなく、薬剤師の知識を生かした問題解決や処方提案のスキルが求められています。そのほかにも、薬局・薬剤師に関する項目として、患者さん自身が自分に適した薬局を選択することができるように、機能別の薬局を導入することが求められています。「患者の服薬情報の一元的把握」「服用後の継続的な服薬指導」「高齢者の多剤投与対応」「在宅医療」「専門性の高い薬学的管理が継続的に必要となる薬物療法」などのさまざまな課題で薬剤師が職能を発揮するために、入退院時に医療機関と情報共有したり、在宅医療で地域の薬局と連携したりしながら一元的・継続的に対応する「地域連携薬局」と、がんなどの専門的な薬学管理に他医療提供施設と連携して対応する「専門医療機関連携薬局」という2つの機能の薬局が想定されています。なお、テレビ電話などによる遠隔診療からの遠隔服薬指導も盛り込まれていますが、実施には多少猶予期間が設けられそうです。薬剤師の職務に服用後のフォローが義務化されるということは、非常に大きな変化です。これらが採決され、改正医薬品医療機器等法が施行されると、これは薬剤師の義務になり、責任も業務量も増えるでしょう。課題はたくさんあると思いますが、一般の方の「薬局の中にいる人」や「ただ薬を渡してくれる人」というイメージが変わるように、前向きに取り組みたいと思います。

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最終回 常にプロフェッショナルであるために【週刊・川添ラヂオ】

動画解説最終回で川添先生が語るのは記憶に残る2人の患者さんに関するエピソード。その2人はなんと川添先生に激怒した患者さんで、彼らに言われた言葉が先生の生き方の原動力になっているんだそうです。若き先生がやってしまった失敗とは?いつまでも挑み磨き続ける川添先生からみなさんへのラストエール。

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治験の非特定化被験者データ、共有基準を満たした大手企業は25%/BMJ

 米国・イェール大学のJennifer Miller氏らは、臨床試験の非特定化された被験者レベルデータについて、その共有の実態を調べると同時に改善するためのランキングツールを開発した。同ツールを用いたところ、大手製薬企業においてデータ共有評価基準を完全に満たしていたのは25%であったという。同値はランキングツール使用後に33%まで改善したことや、その他の試験の透明性については高得点であったこと、また一部の会社については透明性やデータの共有について、改善にはほど遠い結果が示されたことなども報告した。BMJ誌2019年7月10日号掲載の報告。10のガイドラインを基に評価基準を作成 Miller氏らは、2015年に米国食品医薬品局(FDA)で新規薬物の承認を受けた大手製薬企業を対象に、各社の非特定化された被験者レベルデータ共有に関する状況を調査した。 ClinicalTrials.gov、Drugs@FDA(FDA承認薬データベース)、企業ウェブサイト、データ共有のためのプラットフォームおよびレジストリ(Yale Open Data Access[YODA]プロジェクトやClinical Study Data Request[CSDR]など)、製薬企業への聞き取り調査を基に、データ共有法や方針について評価した。データシェアリングの評価基準としては、患者や企業、研究者や規制当局なども加わり作成された、データ共有に関する主な10のガイドラインを基に行った。 主要評価項目は、企業レベルでの多項目評価で、臨床試験の患者レベルデータ(分析準備ができているデータセットやメタデータなど)の入手のしやすさ、各薬物・治験レベルの登録と結果報告およびパブリケーション、企業レベルの全般的透明性のランキング、企業のデータ共有に関する方針や実態を改善するための評価・ランキングツールの実用性だった。評価のフィードバックで3社が改善 大手製薬企業のうちデータ共有評価基準を完全に満たしていたのは、全体の25%だった。企業のデータ共有に関するスコアの中央値は、63%(四分位範囲:58~85%)だった。 評価結果を対象企業にフィードバックしたところ、3社が改善し、同基準を完全に順守する企業の割合は33%に、全体のスコア中央値は80%(同:73~100%)にそれぞれ上昇した。 当初、データ共有評価基準を満たさなかった理由で最も多かったのは、共有データの期日までの提出不履行(75%)と、データ数とアウトカムの未報告であった。 新規医薬品において、患者登録率は中央値100%(四分位範囲:91~100%)、結果の報告率は同65%(36~96%)で、雑誌などで発表された割合は同45%(30~84%)だった。一方で医薬品ごとにみると、新薬承認申請のための臨床治験データが承認後6ヵ月以内に公に入手可能だった割合は半数に満たなかった(42%)。 Miller氏らは、開発した評価・ランキングツールは、大手製薬企業のデータ共有方針と実態が評価可能であり、企業の実態改善に影響力をもつものだと述べている。

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腎機能を考慮したファモチジンの変更提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第1回

 千葉県柏市にある在宅医療特化型薬局「つなぐ薬局」の鈴木です。私は現在、施設往診同行や在宅訪問などで積極的に医師とコミュニケーションを取り、処方提案を行っています。これまの学びを処方提案という形でアウトプットすることで、薬剤師の立場と視点による薬物治療の適正化を推進し、患者さんがより良い状態になっていくことを実感しています。このコラムでは、薬学的管理の質を向上させる処方提案の重要性とともに、薬局薬剤師の視点での提案のコツをお伝えしたいと思います。処方提案する際には、ご家族からの訴えが重要な手掛かりとなることがあります。認知症様の症状が生じていると聞き取り、検査値や処方薬を見直したところ、高齢者では注意が必要な薬剤がありました。今回は腎機能を起点に処方提案した症例についてご紹介します。患者情報75歳、女性、身長:140cm、体重:45kg現病歴:脳梗塞、認知症同居の家族から、最近話が通じにくいことが多いと訴えあり。処方内容アスピリン腸溶錠100mg 1錠 分1 朝食後マニジピン錠10mg 1錠 分1 朝食後プラバスタチン錠10mg 1錠 分1 朝食後ファモチジン錠20mg 2錠 分2 朝夕食後酸化マグネシウム錠330mg 2錠 分2 朝夕食後メマンチン錠20mg 1錠 分1 夕食後前月の検査値(L/D)Scr:1.02mg/dL、eGFR:40.63mL/min/1.73m2、Mg:2.0mg/dLHDL:45mg/dL、LDL:118mg/dL本症例の着眼点この患者さんは、脳梗塞の2次予防のために低用量アスピリンを服用継続していて、その消化性潰瘍予防のためファモチジンを服用していました。処方箋の受付時に家族から聴取した「会話のつじつまが合わないことが多い」という訴えは、認知症に伴う周辺症状の可能性もありますが、ファモチジンによるせん妄や意識障害の可能性も示唆されます。腎機能が低下している場合、腎排泄型のH2受容体拮抗薬であるファモチジンの血中濃度が持続して過量投与となることがあります。『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』において、「すべてのH2受容体拮抗薬は可能な限り投与を控える。とくに入院患者や腎機能低下患者では、必要最小限の使用にとどめる」ということが記載されています。腎機能を正しく評価して薬剤投与設計を行うために、下記の評価を行いました。腎機能の評価Cockcroft-Gaultの式を用いて推算CCrを算出することができます。計算するために必要なパラメータはScr(血清クレアチニン)、年齢、体重、性別で、女性は筋肉量が少ないため、係数の0.85を乗じます。<Cockcroft-Gaultの式>男性:CCr(mL/min)=(140-年齢)×体重(kg)/(72×Scr)女性:CCr(mL/min)=(140-年齢)×体重(kg)/(72×Scr)×0.85通常は上記の簡易式が用いられるが、身長が考慮されていないので、肥満患者では腎機能を過大評価してしまう可能性がある。そのため、実体重ではなく標準体重や理想体重を用いて計算することもある。<標準体重(男女共通)>身長(m)×身長(m)×22(係数)<理想体重>男性=50+{2.3×(身長-152.4)}/2.54女性=45+{2.3×(身長-152.4)}/2.54今回の患者さんの場合、CCr(Cockcroft-Gaultの式にて推算):33.9mL/min、体重未補正eGFR:30.5mL/minであり、60mL/min>CCr>30mL/minの場合のファモチジンの推奨投与量は、20mg 1日1回あるいは10mg 1日2回となります。本症例において、ファモチジンは過量投与です。なお、腎機能が低下している場合、マグネシウムの蓄積に伴う高Mg血症を評価することも重要ですが、検査結果は基準値内であり、自覚症状の面からも高Mg血症は否定的です。処方提案と経過腎機能を評価したところ、ファモチジンが過量投与となっており、減量が望ましいと判断しました。また、せん妄のような症状も現れており、H2受容体拮抗薬が影響していることも考えられます。そこで、処方医に電話で、ファモチジンを1日1回に減量あるいは肝代謝型のPPI(プロトンポンプ阻害薬)に変更してみるのはどうか提案しました。その結果、ファモチジンは中止となり、ランソプラゾールOD錠15mgが開始となりました。後日家族に確認したところ、会話のつじつまが合わないということは減ったと聴取しました。本症例のポイント・定期的に血液検査の結果と身長・体重を聴取する。・薬物投与設計のための腎機能評価を正しく理解する。・H2受容体拮抗薬は腎排泄型薬剤が主であり、高齢者においてはせん妄や意識障害のリスク因子となる。「透析患者に対する投薬ガイドライン」, 白鷺病院,(参照:2019年6月24日)日本老年医学会ほか 編. 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015. メジカルレビュー社;2015.

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遠隔転移のリスクを低減させる去勢抵抗性前立腺がん治療薬「アーリーダ錠60mg」【下平博士のDIノート】第29回

遠隔転移のリスクを低減させる去勢抵抗性前立腺がん治療薬「アーリーダ錠60mg」今回は、前立腺がん治療薬「アパルタミド錠(商品名:アーリーダ錠60mg)」を紹介します。本剤を服用することで、去勢抵抗性前立腺がん患者の無転移生存期間を延長し、臨床症状の悪化を遅らせることが期待されています。<効能・効果>本剤は、遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がんの適応で、2019年3月26日に承認され、2019年5月30日より発売されています。本剤は、アンドロゲン受容体(AR)に選択的に結合し、ARのシグナル伝達を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。<用法・用量>通常、成人にはアパルタミドとして1日1回240mgを経口投与し、患者の状態により適宜減量します。なお、痙攣発作やGrade3または4の副作用が発現した場合には、添付文書に記載の基準を考慮して、本剤を休薬、減量または中止する必要があります。<副作用>国際共同第III相試験において、本剤が投与された安全性評価対象例803例(日本人34例を含む)のうち、565例(70.4%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、疲労181例(22.5%)、皮疹123例(15.3%)、甲状腺機能低下症38例(4.7%)、そう痒症33例(4.1%)、体重減少27例(3.4%)でした(承認時)。なお、重大な副作用として、痙攣発作(0.1%)、心房細動(0.2%)、心不全(0.4%)、心筋梗塞(0.2%)などの心臓障害、多形紅斑(0.2%)などの重度の皮膚障害が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、男性ホルモンの働きを阻害することで、前立腺がんの進行を抑制します。2.痙攣発作が現れることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械を操作する際は注意してください。3.発熱や皮疹、かゆみ、動悸、足のむくみなどが現れた場合には、医師・薬剤師に相談してください。4.皮膚を清潔に保ち、刺激を避け、保湿などのスキンケアを心掛けてください。<Shimo's eyes>前立腺がんは中高齢男性に多く、2025年には男性のがん罹患率のなかで最も高くなると予測されています。治療は、アンドロゲンの働きを抑えるホルモン療法が主に行われますが、ホルモン療法に抵抗性を示した場合、あるいは外科的去勢後に症状が増悪した場合は予後不良の「去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)」となります。CRPCに対する既存の抗アンドロゲン薬は、アンドロゲン合成酵素阻害薬のアビラテロン(商品名:ザイティガ)、アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害薬のエンザルタミド(同:イクスタンジ)が発売されており、本剤はエンザルタミドに次ぐ2剤目の経口アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害薬です。CRPCでは、約80%の患者が最終的に骨転移すると言われており、転移を遅延または予防することが重要です。海外と共同で行われた臨床試験では、プラセボと比較して、本剤の投与により無転移生存期間を延長し、遠隔転移と死亡リスクを低下させることが認められています。重大な副作用としては、痙攣発作、重度の皮膚障害、うっ血性心不全などが挙げられています。日本人では皮疹が発生しやすいと言われているため、保湿剤によるスキンケアなどの生活指導によって、副作用による患者のQOL低下を防ぐことが大切です。なお、本剤は2019年7月現在、「転移性去勢感受性前立腺がん」に対して、適応拡大承認の申請中です。

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第46回 スピーチの質に直結する“マイクチェック”【週刊・川添ラヂオ】

動画解説川添流上手なスピーチの方法第3弾。完璧なスピーチを行うために川添先生が最後にやっている事はなんとマイクチェック!会場に入ったら用意されたマイクは性能が良い物か、古くてハウリングする物かを確かめ、どのように持ち喋るのがベストかを考えましょう。講演のプロはここまでやる!一段上のスピーチのコツを伝授します!

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第24回 脳梗塞/TIA患者の抗血小板薬2剤併用療法はいつまで行うのがベスト?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 抗血小板薬2剤併用療法(Dual antiplatelet therapy:DAPT)は、脳梗塞の既往がある患者さんやステント留置後の患者さんでよく行われるため、薬局で処方を見掛けることも多いと思います。今回は、2018年にBMJ誌に掲載された軽症虚血性脳梗塞または高リスク一過性脳虚血発作(TIA)患者におけるクロピドグレル+アスピリンのDAPTとアスピリン単独療法を比較したシステマティックレビュー(以下、SR)を紹介します1)。この研究が行われた背景には、BMJ Rapid Recommendations(RapidRecs)プロジェクトの一環として、治療方法の推奨を作るという目的があります。インパクトのある新規研究が発表されたら、診療ガイドラインの推奨を素早く作成するのが望ましいですが、現実的には特定の臨床上の疑問(Clinical question)に対して網羅的に研究を調査し、それらをまとめて分析統合を行う手順、つまりSRが行われ、新規研究が出てから推奨を作成するまでの時間的ギャップが課題となっています。たとえば、SRが最新かつ信頼があつい期間といえる“寿命”を調べた研究では、後行研究が出た後の統計的有意差の変化、効果量の50%を超える相対的な変化や意思決定に影響を与えるために十分な新情報、先行研究への重要な警告、より優れた治療法の出現を既存SRの寿命のシグナルとみた場合に、SRの“寿命”の中央値は5.5年で、1年以内に15%、2年以内に23%のエビデンスが覆り、7%はすでに出版時点で逆の結果が出ているという報告があり2)、タイムリーに新規研究を含めたまとめを作ることの大切さを物語っています。2020年には医学情報量が倍増するのにかかる期間はわずか0.2年(73日)になるという予測すらありますから3)、RapidRecsのように即座にSRを行う重要性は今後ますます増えるでしょう。DAPTを24時間以内に開始し、10~21日間の継続でベネフィット最大DAPT vs.アスピリン単独療法のSRに話を戻しますと、本研究は2018年7月にNew England Journal of Medicine誌に掲載されたPOINT trial(Johnston SC, et al. N Engl J Med. 2018;379:215-225.PMID: 29766750)の結果を受けて行われています。内容としては、急性軽症虚血性脳卒中または高リスクTIAと診断された患者で、クロピドグレル+アスピリンのDAPTを発症後3日以内に開始した場合と、アスピリン単独療法を発症後3日以内に開始した場合を比較し(最終的に組み入れられた研究は発症後24時間以内または12時間以内)、90日までの転帰(全死亡、脳卒中による死亡、非致死的虚血性/出血性脳卒中、頭蓋外出血、TIA、心筋梗塞、機能的転帰など)を調査した研究です。データベースのMEDLINE、EMBASE、CENTRAL、Cochrane Library、ClinicalTrials.gov、WHO website、PsycINFO、grey literatureを網羅的に検索して研究を集めています。2名の評価者によって、各研究のバイアスのリスクが評価され、最終的な合意形成は第三者を交えてされています。バイアスのリスクの評価基準は、Cochraneのrisk of biasツールの調整版が用いられており、各研究におけるランダム割り付けの有無、脱落データの割合、割り付けの隠蔽化、研究参加者/介入者/アウトカム評価者のマスキング、その他バイアスが評価されていますので、厳密な方法論で行われたSRとみてよいと思います。最終的に採用されたランダム化比較試験は3件(FASTER、CHANCE、POINT)で、合計症例数は1万447例でした。アウトカムごとに統合された結果をみると、DAPT群ではアスピリン単独群に比べ、非致死的脳卒中の再発が低減しており、リスク比は0.70(95%信頼区間[CI]:0.61~0.80)、絶対リスク減少率は1.9%(NNT換算すると53)でした。総死亡については両群で有意差はありませんでしたが(リスク比:1.27、95%CI:0.73~2.23)、中等度または重度の頭蓋外出血については、DAPT群のリスク比は1.71(95%CI:0.92~3.20)、絶対リスク上昇率は0.2%とアスピリン単独群よりも増加傾向にあり、軽微または小出血もDAPT群のリスク比は2.22(95%CI:1.60~3.08)、絶対リスク上昇率は0.7%と有意に増加しています。機能的転帰には有意差はありませんでした。経時的変化を見てみると、脳卒中イベントの発症の多くはDAPT群でもアスピリン単独群でもランダム化後10日以内に生じていますが、21日以降はほぼ平行線となっています。一方で、出血イベントはDAPT群で長期的にやや増えていきます。これらのことから、ハイリスクのTIAおよび軽度の虚血性脳卒中の患者における本研究の結果は、BMJ誌のClinical Practice Guideline4)のまとめとして以下の2点が強く推奨されています。イベント発生後24時間以内にDAPTを開始するDAPTは10~21日間継続し、21日を超える継続はしないDAPT継続中の患者さんの中には、脳卒中の再発が心配で治療を継続させたいという方もいるかもしれませんが、もし2剤で21日を超えて長期間投与されている場合は出血イベントのリスクを考慮し、処方医への情報提供を検討すべきと思います。1)Hao Q, et al. BMJ. 2018;363:k5108.2)Shojania KG, et al. Ann Intern Med. 2007;147:224-233.3)Densen P. Trans Am Clin Climatol Assoc. 2011;122:48-58.4)Prasad K, et al. BMJ. 2018;363:k5130.

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仮想現実=VR技術が手術を変える!セミナーのお知らせ

2019年7月18日(木)に開催される第74回日本消化器外科学会総会イブニングセミナーにて、医療VR(仮想現実)サービスを手掛けるHoloeyes株式会社とCareNetの共催で、手術をリアルにシミュレートする最新VR技術Holoeyes XRのレクチャーと体験を行います。Holoeyes XRは、患者のCTスキャンデータやMRIデータから3次元のVirtual Reality(VR)やAugmented Reality(AR)のアプリケーションを生成。患者の臓器の3Dモデルを共有して、術前のシミュレーションや術後の症例カンファレンスなどに活用できます。立体のビジュアルを共有することにより、非言語の豊なコミュニケーションが実現します。プレゼンターのHoloeyes COOで外科医の杉本真樹氏は、これまでに医用画像解析や手術支援システム、3Dプリンターによる生体質感臓器造形など、医学・工学分野の横断的な研究開発や科学教育に尽力。2014年Apple社Webにて、世界を変え続けるイノベーター30名に選出。2017年Microsoftイノベーションアワード優秀賞、およびWIRED AUDI イノベーションアワード受賞しています。本セミナーでは、参加者先着200名様にVRゴーグルを配布し、会場でHoloeyes XRで記録した複数の術例シミュレーションをVRで体験いただくことができます。医療現場や教育現場で活用できる次世代コミュニケーションツールを、この機会にぜひ体感ください。本セミナーと連携し、CareNet.comでもVRの世界を体感できる新しい医学教育コンテンツを紹介します。詳細概要日 時 :2019年7月18日(木)16:30~18:00場 所 :グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール1階 暁光(第13会場)地図はこちらテーマ :「VR仮想現実が消化管・肝胆膵手術支援を変える」~ホログラフィ手術支援加算と遠隔VRテレカンファレンス~演 者 :杉本 真樹 氏 (帝京大学冲永総合研究所 特任教授、Holoeyes株式会社 共同COO)座 長 :佐野 圭二 氏 (帝京大学医学部 外科学講座 教授)定 員 :200名注意事項:※VR体験にはスマートフォンをご持参ください。

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医師の起業に役立つ7つのビジネスモデル【医師のためのお金の話】第22回

医師の起業に役立つ7つのビジネスモデル先日、医師向けの医学論文意見交換サイトQuotomyを運営している大谷 隼一先生と、起業についてお話する機会がありました。大谷先生が勤務されている病院では、若手医師が起業を志すケースが多いそうです。医療とビジネスの間に横たわる障壁が確実に低くなってきていることを感じます。ただ、やみくもに起業しても成功するわけではありません。起業は道なき道を自分の経験と勘に従ってソロリソロリと進んでいくものです。そして、至る所に落とし穴が隠れています。小さな落とし穴であれば這い上がってこられますが、致命傷になってしまう大きな落とし穴も無数に存在します。机上の空論では、これらの落とし穴を回避することは不可能です。「習うより慣れよ」が起業を成功させるためには重要なのです。そうは言っても、もちろん押さえておくべきポイントはあります。それはビジネスモデルです。絶対に知っておくべき7パターンビジネスモデルとは、利益を生み出す商品やサービスに関する事業戦略と収益構造のことです。簡単に言うと、「誰に何をどのようにして提供して、どの部分でどれだけ儲けるかを簡潔に言い表したもの」です。いわゆるビジネスの戦略に相当します。ビジネスモデルが優れているからと言って起業が成功するわけではありませんが、稚拙であると確実に失敗します。このように言うと難しそうに思えますが、ビジネスモデルは小学生でも理解できる程度のものです。ここでは一般的によく言われている7つのパターンを挙げてみます。1)物販モデル(自動車、農家、工場など)2)小売モデル(スーパー、コンビニエンスストアなど)3)広告モデル(新聞、雑誌など)4)ライセンスモデル(映画、協会など)5)消耗品モデル(プリンターメーカーなど)6)継続課金モデル(電力会社、携帯電話など)7)マッチングモデル(不動産仲介、人材募集サイトなど)世の中のサービスは、上記のいくつかのパターンを組み合わせたものが多いです。たとえば、「食べログ」は3)広告モデルと6)継続課金モデルを組み合わせたビジネスモデルです。継続課金モデルとの組み合わせがカギそれでは、私たちが起業する場合に最もおすすめのビジネスモデルは何でしょうか?前述のビジネスモデルの中で最も安定的にビジネスを展開できると言われているのは6)継続課金モデルです。このビジネスモデルの代表例は、電力会社や携帯電話会社です。不動産賃貸業もこのモデルに該当します。電力会社は電気料金を、携帯電話会社は通信料を、大家さんは賃料を毎月課金し続けます。消費者はこれらの商品やサービスを利用し続けざるを得ません。継続課金モデルを採用している会社は、定期的に流入する売上のおかげで安定的なビジネスを展開できるのです。実際、このビジネスモデルを採用している企業の数は多く、最近では動画配信サイトの「Netflix」に代表されるサブスクリプション(売買ではなく特定期間内の使用権を販売する)方式が注目を集めています。ちなみに私の知り合いの医師は医療系コンサルティング事業を起業しましたが、顧問料として月額料金を徴収しています。この継続課金による定期収入でスタッフ給与などの固定費を賄って安定性を確保しつつ、クライアントが抱えている問題を解決するためのソリューションを提供することで青天井の収益を目指す戦略を掲げています。このケースは、前述の1)物販モデルと6)継続課金モデルの組み合わせであり、安定性と収益性を兼ね備えた秀逸なビジネスモデルのようです。押さえるべきは拡大よりも「絞り込み」ビジネスモデルで押さえておくべきポイントの1つに、対象とする領域や顧客の絞り込みが挙げられます。ありがちなのは、できるだけ多くの顧客を獲得しようとして、事業領域を広げ過ぎてしまうことです。ビジネスで利益を出すためには、事業領域の拡大ではなくて絞り込みが必要です。事業領域が広いと知識や経験を蓄積するのに時間が掛かります。これでは競合相手に勝つことはできません。ある領域に特化して付加価値をつけることが、競合相手を抑えて利益を出すことにつながるのです。前述の医療系コンサルティング事業を起業した医師は、クライアントを某専門職に絞っており、提供するサービスはある1つの問題解決手法に特化しています。このため、きわめて狭い領域ではあるものの、高い競争力を武器にして順調に業績を拡大しているようです。

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高齢進行胃がん患者への化学療法、低用量でベネフィット得られる可能性(GO2)/ASCO2019

 高齢でフレイルのある、進行胃・食道胃接合部がん患者において、2剤併用化学療法の用量を減らしても、高用量の場合と同等のベネフィットが得られる可能性が示唆された。米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で、オキサリプラチン+カペシタビン2剤併用療法の適正用量を検討した第III相GO2試験1)の結果を、英国・エジンバラ大学のPeter S Hall氏が発表した。 進行胃・食道胃接合部がんと診断される患者の中央値は75歳超で2)、多くがフレイルを有している。しかし、化学療法の標準的な用法用量の多くがフレイルのない、65歳未満の患者を対象とした臨床試験によって定められている。 Hall氏らが事前に実施した、同患者対象のエピルビシン+オキサリプラチン+カペシタビンとオキサリプラチン+カペシタビン、カペシタビン単剤の比較試験の結果、オキサリプラチン+カペシタビン2剤併用療法が良好な結果を示した3)。 GO2試験は、年齢やフレイルのために全量投与の3剤併用療法には不適格(ただし、GFR≧30、bili<2×ULNで2剤併用には適格性あり)の進行胃・食道胃接合部がん患者対象の、第III相無作為化、多施設共同、前向き対照、非盲検非劣性試験。登録患者はオキサリプラチン+カペシタビンの100%用量群(オキサリプラチン130mg/m2を3週ごと+カペシタビン625mg/m2×1日2回連日投与をPDまで)、80%用量群、60%用量群に1:1:1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は全生存期間(OS)の100%用量群に対する非劣性。その他の評価項目は、患者評価による総合治療効用(overall treatment utility:OTU)、毒性、QOLなどであった。フレイルは、9項目の高齢者総合機能評価を用いて評価され、3項目以上の該当者が重度のフレイルと判定された。 主な結果は以下のとおり。・2014~17年にかけて、英国の61施設から512例が登録され、100%用量群に170例、80%用量群に171例、60%用量群に173例が割り付けられた。全体の年齢中央値は76(51~96)歳、男性が75%で、PS≧2が31%、重度のフレイルと判定された患者は58%であった。ベースライン特性は、3群でバランスがとれていた。・主要評価項目であるPFS中央値はそれぞれ、4.9ヵ月 vs.4.1ヵ月 vs.4.3ヵ月。100%用量群に対する、80%用量群(ハザード比[HR]:1.09、95%信頼区間[CI]:0.89~1.32)および60%用量群(HR:1.10、95%CI:0.90~1.33)の非劣性が確認された(あらかじめ設定された非劣性マージン:1.34)。 ・副次評価項目であるOS中央値について、3群で有意差は確認されなかった(7.5ヵ月 vs. 6.7ヵ月vs. 7.6ヵ月)。・患者評価による9週時点でのOTUは、100%用量群(good:35%、intermediate:34%、poor:31%)、80%用量群(36%、26%、38%)、60%用量群(43%、27%、29%)。60%用量群は100%用量群と比較し、良好な傾向を示した(調整オッズ比:1.24、95%CI:0.84~1.84)。・患者評価による9週時点でのQOLは、100%用量群では変化がなかったが、80%用量群および60%用量群では、ベースライン時と比較して改善した。・毒性は60%用量群で100%用量群および80%用量群よりも低く、治療サイクル数の中央値は60%用量群で最も多かった。・ベースライン時の因子(年齢、PS、フレイル)ごとに、用量によるPFS、OS、OTUを比較した結果、有意な差は得られず、高用量治療でベネフィットを得る患者特性は特定されなかった。

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頭打ちの後発医薬品使用の裏で始まった新制度【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第28回

10年前の後発医薬品の使用割合はどのくらいだったか、覚えていますか? 2009年の後発医薬品の使用割合は35%で、計算方法は多少変わっていますが、現在は約70%ですので、約10年で後発医薬品の使用は2倍に増えています。報酬改定に追われるように…、というのは否めませんが、保険薬局の努力が後発医薬品の使用割合の増加に大きく貢献したことは間違いありません。しかし、このたび後発医薬品の使用割合が頭打ちになっているという調査結果が報告されました。2018年10月から19年1月にかけて、28都府県の保険薬局91施設を対象に実施した聞き取り調査の結果によると、後発医薬品調剤体制加算3の算定要件(数量ベースの後発品使用割合85%の基準)が新設されたことについて、70.7%が「要件が厳しい」と答えた。理由としては▽薬局の取り組みだけでは困難▽処方元の後発品に対する意識が変わらない限り難しい▽処方箋の「変更不可」欄がある限り難しい―といった声が上がった。(2019年6月17日付 日刊薬業)これは、日本製薬団体連合会という製薬企業の団体の中にある保険薬価研究委員会が行った研究報告です。後発医薬品の数量割合が70%を超えたあたりから頭打ち状態になっている保険薬局が多い点や、政府目標の80%を達成するためには、保険薬局の努力だけでは限界を感じている点などが明らかになっています。「現在が頭打ち」という状況は、私個人としても実感しています。2018年の報酬改定では、医科の報酬でも後発医薬品の使用を促進する改定がいくつかあったものの、調剤においては後発医薬品調剤体制加算の基準が引き上げられ、一番点数が大きい要件は85%になりました。正直、処方箋の変更不可欄のチェック率や、小児処方の変更の難しさなどを考えると、私が関わっている薬局での85%達成は難しいなと思っています。後発医薬品、上市後10年経過でさらに薬価引き下げここで改めて、後発医薬品の数量割合の目標を確認してみましょう。2017年に閣議決定された、いわゆる「骨太の方針2017」で、2020年9月までに後発医薬品の使用割合を80%とする、という目標が決まりました。これは内閣府が旗を振っているものですから、厚生労働省も上から達成を監視されているという状況なのでしょう。2020年9月までの報酬改定はあと1回だけです。かなり厳しい状況ですが、個人的には医師の処方権を考えると変更不可欄がなくなることはないだろうと思っていますので、もしかしたら目標達成の期限を延ばすのでは、とも思っています。しかし、国もただ手をこまねいているわけではなく、2019年4月より長期収載品の薬価を後発医薬品並みに引き下げる「G1、G2ルール」というかなり力業の制度が導入されました。現在は、最初の後発医薬品の収載から5年を経過し、10年を経過しない品目のうち、後発医薬品への置き換え率が80%となる先発医薬品の薬価が引き下げられています(Z2ルール)。G1ルールではそれに加え、10年が経過した品目に関して、後発医薬品への置き換え率が80%以上の品目の薬価を6年かけて2年ごとに薬価を引き下げていき、G2ルールでは置き換え率80%未満の品目の薬価を10年かけて2年ごとに引き下げていきます。これによって、長期収載品を有する製薬企業は、長期収載品を販売し続けるべきか、撤退すべきかの判断を迫られることになります。実際には、長期収載品を保持し続けたり、権利を他社に移譲したりする企業もあるようですが、市場から撤退する長期収載品が増える→後発医薬品を選択せざるを得ない医療機関が増える→後発医薬品の使用割合が増える、という流れが予想されます。金額ベースから数量ベースになったり、母数の考え方が変わったりと紆余曲折があった後発医薬品の使用促進が佳境を迎えていますので、引き続き注目したいと思います。

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高齢者進行非小細胞肺がん、膵がん患者に対する早期運動・栄養介入の多施設共同ランダム化第II相試験(NEXTAC-TWO)

 高齢の進行期がん患者の多くは、がん悪液質による疲労、食欲不振、および身体機能の低下を有しているが、効果的な介入が確立されていない。静岡県立静岡がんセンターの内藤 立暁氏らは進行期がんに対する栄養療法および運動療法を組み合わせた早期介入プログラムNEXTAC(The Nutrition and Exercise Treatment for Advanced Cancer program)の第I相試験(NEXTAC-ONE)を実施し、がん悪液質高リスクの高齢患者におけるNEXTACの実現可能性を報告した(Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle, 2018)。この結果に基づきNEXTACによる早期の運動・栄養介入の有効性を評価する多施設共同無作為化第II相NEXTAC-TWO試験が開始された。NEXTAC-TWO試験の実施の背景、設計などについて新潟県立がんセンター新潟病院 三浦 理氏らがBMC Cancer誌オンライン版2019年5月31日号で発表した。NEXTAC介入群と介入なしの対象群に130例の被験者を無作為に割り付け・対象:1次治療として化学療法実施予定の進行期非小細胞肺がん(NSCLC)または膵臓がん患者。年齢70歳以上、PS 2以下で適切な臓器機能を持ち介護を要しない患者・介入群:1次治療開始とともに、BCAA(分岐鎖アミノ酸)含有サプリメント摂取(大塚製薬:インナーパワー)と栄養カウンセリング、低強度在宅運動プログラム、身体活動計により測定された歩数に基づく身体活動量促進プログラムを医師のほか栄養士、理学療法士、看護師より成る多職種チームによる介入を行う・対照群:介入なし・評価項目:[主要評価項目]介護不要生存期間[副次評価項目]栄養状態、除脂肪体重、運動機能、ADL、QOL、全生存期間、安全性など わが国の15施設から130例の被験者を登録する。被験者を介入群と対照群に無作為に割り付け、無作為化から4回(登録時、4±2週、8±2週、12±2週)介入と評価を実施する。層別化因子は、PS(0~1対2)、原発がんの部位(肺と膵)、病期(Stage IIIとIV)、化学療法の種類(ドライバー遺伝子変異に対するキナーゼ療法とその他)など。筆頭著者 三浦 理氏のNEXTAC-TWO試験についてのコメント がん治療、とくに非小細胞肺がんの世界ではドライバー遺伝子変異に対するキナーゼ阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬による治療開発が非常に活発に行われている。それに伴い、長期生存が得られる症例が増えており、今後はQOLの改善、維持ということが重要視されるだろう。2019年、抗悪液質治療薬であるグレリン誘導体のアナモレリンが臨床導入される予定である。この薬剤は食欲改善効果と共に除脂肪体重増加効果はあるが、筋力の改善、増強は得られがたいことが臨床試験で示唆されている。今まで前向き試験で示されることができなかった多職種介入の有効性が本試験で示されれば支持療法の分野における大きな一歩であると考えられる。本試験はすでに症例登録は終了し観察期間に入っており、結果の公表が待たれる。

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第45回 トークはさんまと落語をマネろ【週刊・川添ラヂオ】

動画解説川添先生が話し上手な秘密はお笑いにあった!大学時代「ちゃんとした関西弁」習得のため、落語とお笑い番組を勧められた川添先生は、その特訓の副産物として今のトーク術を習得したそうです。明石家さんまに倣う世界一すごい話の聞き方、落語から学ぶ肩の凝らないスピーチの前振りなど、真似するだけで話し上手になれる方法を紹介します。

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血圧と認知症サブタイプ別リスク~260万人を長期観察

 血圧上昇と認知症リスクの関連は、期間や認知症のサブタイプにより異なるのだろうか。今回、英国・London School of Hygiene & Tropical MedicineのJohn Gregson氏らによる約260万人の後ろ向きコホート研究から、血圧上昇は認知症リスク低下と短期的には関連するが、長期的な関連はあまり大きくないことがわかった。また、長期的な関連は、アルツハイマー型認知症と血管性認知症では逆であったことが報告された。European Journal of Neurology誌オンライン版2019年6月24日号に掲載。 本研究は、United Kingdom Clinical Practice Research Databaseにおいて、1992~2011年に血圧を測定し、それ以前に認知症ではなかった40歳以上の259万3,629人のデータを解析。ポアソン回帰モデルを使用して、収縮期血圧と認知症(医師の診断による)との関連を調べた。血圧は認知症発症前駆期に低下すると考えられているため、血圧測定からの経過時間のカテゴリー(5年未満、5~10年、10年超)および認知症のサブタイプ(アルツハイマー型、血管性)別に関連を調べた。 主な結果は以下のとおり。・観察期間中央値は8.2年で、アルツハイマー型認知症4万9,161例、血管性認知症1万3,816例、その他の認知症2,541例の計6万5,618例の認知症が観察された。・平均収縮期血圧10mmHg上昇につき、認知症リスクは9.2%(95%CI:8.4~10.0)低かったが、この関連は血圧測定からの期間によって著しく変化した。・血圧測定後5年未満では、平均収縮期血圧10mmHg上昇につき、認知症リスクが15.8%(同:15.5~17.0)低く、血圧測定後5~10年ではリスクが5.8%(同:4.4~7.7)低かった。・血圧測定後10年超では、平均収縮期血圧10mmHg上昇につき、認知症リスクが1.6%(同:0.1~3.0)低かった。サブタイプ別にみると、アルツハイマー型認知症リスクは4.3%(同:2.5~6.0)低く、血管性認知症リスクは7.0%(同:3.8~10.2)高かった。■「サブタイプ」関連記事最もOSが良好な乳がんのサブタイプは?

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