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第12回 “まちの電気屋さん”を父から引き継いだ薬剤師【噂の狭研ラヂオ】

動画解説今回は愛知県岡崎市の株式会社パナドーム藤井伸昌社長にインタビュー。パナドームはもとは町の便利な電気屋さん。その稼業を継いだ藤井社長は電気屋に薬局をプラスして地域のライフサポートを担う多角化経営の事業を始めました。地域住民に頼りにされる電気屋の父を見て育った息子が描く薬局の形とは?

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日本人統合失調症患者に対するブロナンセリン経皮吸収型製剤の52週間長期投与試験

 ブロナンセリン経皮吸収型製剤は、日本において統合失調症治療に使用可能な薬剤であり、錠剤とは異なるいくつかの利点をもたらす可能性がある。藤田医科大学の岩田 仲生氏らは、日本人統合失調症患者におけるブロナンセリン経皮吸収型製剤の長期安全性および有効性の評価を行った。CNS Drugs誌オンライン版2019年12月27日号の報告。 日本の37施設において、成人の統合失調症患者を対象としたオープンラベル試験を実施した。対象患者は、コホート1またはコホート2のいずれかに登録された。コホート1は、ブロナンセリン錠8~16mg/日を6週間投与した後、ブロナンセリン経皮吸収型製剤40~80mg/日を52週間貼付した。経皮吸収型製剤の用量は、錠剤の用量に従って決定した。コホート2は、ブロナンセリン経皮吸収型製剤を40mg/日より開始し、40~80mg/日で52週間貼付した。両コホートともに、1~2週間のフォローアップを行った。 安全性のエンドポイントは、有害事象(AE)、治療関連AE、錐体外路系AE(DIEPSSスコアの変化量として評価)の発生、抗パーキンソン薬の併用、皮膚刺激を含む皮膚関連AEの発生とした。血清プロラクチン濃度、バイタルサイン、体重、心電図(ECG)の変化、補正QT(QTc)間隔などの検査値も評価した。自殺念慮は、コロンビア自殺重症度評価尺度(Columbia-Suicide Severity Rating Scale:C-SSRS)スコアを用いて評価した。有効性は、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の合計およびサブスケールスコア、臨床全般印象度(CGI-S)スコアを用いて、経皮吸収型製剤での治療期間を通じて評価した。その他のエンドポイントは、薬に対する構えの調査票(Drug Attitude Inventory 10:DAI-10)合計スコア、健康関連QOL評価尺度(EuroQol-5 Dimension:EQ-5D)効用値、剤形に関する患者アンケートを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は、同意が得られた223例(コホート1:117例、コホート2:106例)であった。・コホート1の117例中108例がブロナンセリンの錠剤で治療を開始し、その後経皮吸収型製剤へ移行した97例について安全性分析が行われた。・コホート2では106例中、ブロナンセリン経皮吸収型製剤で治療された103例について安全性分析を行った。・全体で、男性は91例(45.5%)であった。・平均年齢は43.8歳であった。・治療中止は、コホート1で40例(41.2%)、コホート2で44例(42.7%)であった。・中止理由は、AEが18.6%(コホート1)および11.7%(コホート2)、同意の撤回が13.4%(コホート1)および20.4%(コホート2)、皮膚関連AEは全体で7例であった。・AEは、174例(87.0%)で報告された。重篤なAEは、13件12例(コホート1:6例、コホート2:6例)で認められた。・重篤なAEは、統合失調症関連が6件、その他が7件(衝動制御障害、骨折、鼻出血、喘息、誤嚥性肺炎、ヘモフィルス性肺炎、肺炎)であった。・主なAEは、鼻咽頭炎62例(31.0%)、適用部位紅斑45例(22.5%)、適用部位そう痒感23例(11.5%)、アカシジア20例(10.0%)であった。・AE発生率は、コホート1で84.5%、コホート2で89.3%であり、類似していた。・錐体外路系AEは51例(25.5%)、皮膚関連AEは83例(41.5%)で認められた。・これらのAEは、いずれも重篤ではなかった。・52週目におけるDIEPSS合計スコアのベースラインからの平均変化量は、-0.1±1.55であり、顕著な影響は認められなかった。・併用薬に関しては、抗パーキンソン薬が、コホート1で33.0%(97例中32例)、コホート2で22.3%(103例中23例)に認められた。・皮膚関連AEの大部分は治療初期に発生し、外用療法で適切に管理できた。・ベースライン時に、すべてのC-SSRSカテゴリで「いいえ」と回答した患者129例中、自殺念慮の出現ありと評価された患者は13例(10.1%)であった。・ベースライン時に、すべてのC-SSRS自殺行動カテゴリで「いいえ」と回答した患者172例中、経皮吸収型製剤での治療中に自殺行動が認められた患者は1例(0.6%)であった。・プロラクチンレベル、バイタルサイン、体重、ECG、代謝関連パラメータ、QTc間隔を含む臨床検査値に有意な変化は認められなかった。・体重の平均変化量は、コホート1で-0.04±4.561kg、コホート2で-0.67±6.841kgであった。・52週目におけるPANSS合計スコアのベースラインからの平均変化量は、コホート1で-0.1±11.6、コホート2で-3.4±15.3であった。・PANSSスコアは、コホート1においてブロナンセリンの錠剤から経皮吸収型製剤へ切り替え後も変化することなく、52週間の治療でスコアの低下が認められた。・52週目におけるCGI-Sスコアのベースラインからの平均変化量は、両コホートを合わせて-0.2±1.03であった。・52週間の経皮吸収型製剤での治療後、DAI-10合計スコアは、データが利用可能な129例中82例(63.6%)において、ベースラインと比較し、増加または変化なしであった。・両コホートを合わせた200例におけるintention-to-treat分析では、最終評価時点でのEQ-5Dのベースラインからの平均変化量は、-0.0365±0.17603であった。・ブロナンセリン経皮吸収型製剤に対する患者の印象は、おおむね肯定的であった。 著者らは「ブロナンセリン経皮吸収型製剤は、統合失調症の長期治療に安全かつ効果的に使用できる薬剤である」としている。

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地政学時代のメンタルヘルス(解説:岡村毅氏)-1171

 現代は地政学の時代などともいわれるが、香港の動乱において住民のメンタルヘルスが悪化しているという報告である。 はじめに私の立場を申し上げると、科学に関していろいろ述べるが、政治に対しては一切述べるつもりはない。なお前提として本論文も政治的には中立で抑制がきいていると思われる。 さて、本論文は住民の長期縦断研究の解析であるが、2014年の反政府デモ(雨傘運動/オキュパイセントラル運動)、2019年の「民主化デモ」と動乱が続き、depressionが5倍に増え、PTSDが戦時にも匹敵するレベルであることが報告されている。また、世界のその他の大都市でも動乱が起きる中で(たとえばパリの黄色いベスト運動)、この研究の科学的価値があるとしている。 この論文を読んでどのように考えるか? これほどまでに住民のメンタルヘルスを破壊する圧政はとんでもないと感じるか、平和が一番なのだからデモはやめようと思うかは、個人の自由である。合理的に考えても理解できない現象が多くなってきており、思考力が試される時代である。いずれにしても考える材料をたくさん与えてくれる論文といえよう。 ここから下は私の意見であるが、本来社会の闇を照らし、見えない人に光を当て、声なき人の声を聴くことも科学の役割であるはずだ。たとえば米国からは、(私の専門である貧困研究との絡みでいうと)アフガニスタンとイラクの退役軍人のホームレスリスクの研究などもなされているし(Metraux S, et al. Am J Public Health. 2013;103 Suppl 2:S255-261.)、欧州に移動したシリアからの難民のメンタルヘルスの研究も多く報告されている。本論文も含めて、こうした現実を厳しく評価する報告を読めば、あなたが自分の頭で考えることができる人であれば、世界の真実をかなり正しく知り、妥当に行動することができるのではないだろうか? 本論文を読んであらためて思ったが、その他大勢のつまらない研究ではなく、現実世界に鋭く迫る研究をしたいものである。

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034)患者さんの言葉、うのみにするべからず!【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第34回 患者さんの言葉、うのみにするべからず!しがない皮膚科勤務医デルぽんです☆皮膚科医は、病変部である皮疹を見れば、だいたいのことはわかります。患者さんが、たとえ問診でごまかそうとしても、皮膚は正直なのです。その人の受診までの経時的な変化が見えてくるような気さえします。私がまだ駆け出しの医者だった頃、患者さんに「よくならない」と言われると、何とかしてその訴えをなくそうと、薬を変えることで解決しようとしていました。今思えば、ただやみくもに処方を変更する前に、できることがたくさんありました。たとえば、外用薬をきちんと塗れているか聞いて、再度塗り方の指導を行ったり、皮疹の状態をきちんと評価し、前回と比べてよくなっていることなどを伝えて、患者さんの認識と擦り合わせたりなど。若い頃は、患者さんの表面的な発言の枝葉末節に囚われていて、生活背景にまで目を向けられていなかったのだな、と今さらながらに反省です。まさに木を見て森を見ず。大切なのは、目の前の状態だけでなく、疾患の全体像。全体を見ようとすれば、おのずと生活背景にも意識が向きます。皮膚科医としての経験を積む中で、ようやくそのことがわかってきたような気がします(まだまだ私も未熟者で、先輩方から学ぶ面も多い身ですが…)。もちろん、患者さんから学ぶ面も少なからずあるので、おごらず日々の診療にまい進したい所存です!それでは、また~!

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医師の働き方改革で薬剤師の権限が拡大?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第40回

日本各地で「働き方改革」が叫ばれてきましたが、医師を中心とする医療者の働き方については根本的な取り組みは後回しにされてきました。しかし、もはや医師の働き方改革も待ったなしの状態となり、積極的な議論がなされています。医師の働き方改革の始まりは、政府が掲げた「一億総活躍社会の実現」のために、2017年3月にまとめられた「働き方改革実行計画」でした。その中で医師も時間外労働規制の対象となりましたが、罰則がないことから強制力はありませんでした。その後、2019年3月末に厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」において、時間外労働の上限時間は「年960時間以下、月100時間未満」が原則とされました。地域医療確保のためにやむを得ないと認められた場合や研修医などの例外的な場合には「年1,860時間以下、月100時間未満」と緩和されますが、勤務間インターバルなどの追加的健康確保措置を組み合わせることが求められました。ちなみに、同時期の2019年3月にケアネットが実施した医師を対象とした働き方に関するアンケートでは、年1,860時間を超える時間外労働をしていると答えた医師は6.5%であり、「特例とはいえ、過労死基準をはるかに超える上限規制は意味がない」など、特例の上限として提案されている年1,860時間に対する懸念の声が多く上がりました。医師の業務を他職種へタスク・シフトもし、医師の働き方改革が実行された場合には、薬剤師や他の医療者への影響は必ず生じるでしょう。その影響の1つが以前から議論されていたタスク・シフトです。先日、薬剤師、看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、医師事務作業補助者、救急救命士へのタスク・シフトについて、四病院団体協議会から要望が出ました。薬剤師に関しては下記のとおりです。薬剤師へのタスク・シフト医師等との協働により作成した包括的指示に基づいた投薬の実施、持参薬の継続提案、多剤併用薬に対する処方提案等、現行法の下で可能なタスク・シフトを確認し、医療機関内において薬剤師が主体的に業務を行えるようにすること。(2020年1月15日付四病院団体協議会「要望書 ~医師のタスク・シフティング/シェアリングについて~」より抜粋)薬剤師へのタスク・シフトに関わる内容としては、厚生労働省が2019年11月に設置した「医師等医療機関職員の働き方改革推進本部」の議論において、とくに進めるべき業務として「持参薬の入力などを含む術前服薬指導」「薬物療法のモニタリングの実施とその結果に伴う処方内容の見直しの提案」「プロトコールに基づいた投薬」などがあります。プロトコールに基づいた投薬については、医師の包括的指示と同意がある場合には、医師の最終確認・再確認を必要とせずに投薬することが可能です。保険薬局についても多少の議論があり、「処方医の事前の指示に基づき、問題が認められない場合は薬局薬剤師が分割調剤を実施」「定期的な分割調剤の都度、副作用の発現状況や服薬状況の確認」などが現行制度上可能であるとされています。分割調剤や多剤併用薬に対する処方提案については、現行法で可能なタスクです。しかし、すでに可能であるにもかかわらず現実的には行われていません。それによって医師の過重労働が発生しているのだとすれば、薬剤師側に何らかのアクションが強く求められる可能性もあります。正直「この議論で本当に変わるのか?」という疑問もありますが、着々と議論は進んでいます。とにもかくにも、医療者が継続可能な業務を行える環境が整うことが期待されます。

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パニック症患者におけるアルコール依存症発症率に関する性差研究

 パニック症患者におけるアルコール依存症発症率に性差があるかについては、よくわかっていない。台湾・台北市立連合医院のHu-Ming Chang氏らは、この疑問を明らかにするため、調査を行った。Drug and Alcohol Dependence誌オンライン版2019年12月23日号の報告。 対象は、台湾全民健康保険研究データベースより抽出したパニック症患者9,480例。このうち、フォローアップ期間中にアルコール依存症を発症した患者は169例(男性:89例、女性:80例)であった。アルコール依存症発症の相対リスクを一般集団と比較するため、標準化罹患比(SIR:standardized incidence ratio)を用いた。ネステッドケースコントロール研究デザインに基づき、各ケースについてコントロール10例を選択した。アルコール依存症診断前の診療や精神医学的併存疾患を分析するため、条件付きロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・アルコール依存症発症のSIRは、男性で3.36、女性で6.29であった。・アルコール依存症を発症した女性パニック症患者は、対照群よりも、外来受診が多かった。男性では、有意な差は認められなかった。・アルコール依存症を発症した女性では、以下を併発する可能性が高かった。 ●うつ病(調整リスク比[aRR]:2.94) ●人格障害(aRR:5.03) ●睡眠障害(aRR:1.72)・アルコール依存症を発症した男性では、以下を併発する可能性が高かった。 ●睡眠障害(aRR:1.85) ●その他の物質使用障害(aRR:3.08) 著者らは「パニック症患者は、一般集団と比較し、アルコール依存症発症リスクが高く、女性のほうがリスクが高かった。アルコール依存症発症前の精神医学的な併存疾患は、性差が認められたことから、予防的介入を検討する際には、性別を考慮する必要がある」としている。

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漫然投与薬に依存している患者の提案成功例【うまくいく!処方提案プラクティス】第13回

 すでに生じている症状の改善目的以外にも、予防目的で薬がどんどん増えていくことがあります。害が予想される場合は処方薬の整理をしたいところですが、患者さんの依存度が高い場合は中止が難しくなります。今回は、そのような場合の中止アルゴリズムについて紹介します。患者情報90歳、女性(個人在宅)、長男と同居中基礎疾患:認知症、脳出血内服管理:簡易懸濁法で経管投与(長男が管理)訪問看護:週3回処方内容(介入時)1.エレンタール®配合内用剤 3包 分3 毎食後2.ドンペリドン錠10mg 3錠 分3 毎食後3.酸化マグネシウム錠250mg 3錠 分3 毎食後 適宜調節4.ピコスルファートナトリウム内用液 便秘時 5〜8滴 適宜調節5.グリセリン浣腸 1個 便秘時本症例のポイントこの患者さんは、長期間上記の薬を継続していました。息子さんが熱心に服薬管理をしているため飲み忘れはなく、簡易懸濁の手技なども問題なく行えていました。しかし、1つ気になっていたのは、消化管運動の改善目的でドパミンD2受容体遮断薬であるドンペリドンを長期間服用していたことです。ドパミンD2受容体遮断薬は、上部消化管にあるドパミン受容体に作用することでアセチルコリンの遊離を促して運動機能を改善しますが、長期間服用するとアカシジア、ジスキネジアなどの錐体外路症状が生じることがあります。ドンペリドンは血液脳関門を通過しにくいため、比較的安全性は高いと考えられますが、長期間服用することで錐体外路症状の発現リスクはあると考えました。認知症の影響から身体機能低下は進行していましたが、もしこの錐体外路症状が生じるとさらに身体機能は低下し、本人および息子さんの負担が増加する可能性があります。そこで、服用契機をたどってみると、デイサービス利用時の移動で嘔吐したことがあり、それ以来ドンペリドンを定期服用しているとのことでした。経管投与に伴う逆流や便秘のコントロール不良も原因の1つと考えられるため、手技や投与量を検討することでドンペリドンを中止することも可能なのではないかと考えました。しかし、ご本人と息子さんがドンペリドンをやめることで嘔気をぶり返すのが怖いと訴えたため、単純な中止の提案ではなく、代替薬などを提案して不安にさせないようにする必要がありました。処方提案と経過訪問報告書を用いて、以下の処方提案をしました。「患者さんは、長期的にドパミンD2受容体遮断薬を服用しており、錐体外路症状が発現した場合にはさらなる身体機能の低下からご本人やご家族の負担が増大する懸念があります。服用契機は、デイサービス移動時の嘔吐と伺っていますので、定期服用ではなくデイサービス当日の移動前の頓服に切り替えるのはいかがでしょうか。あるいは、便秘や経管投与による胃食道逆流の症状から来る嘔気のコントロールであれば、消化管運動機能改善薬のモサプリドを同様の用法で服用するのはいかがでしょうか」。医師より、これまでドンペリドンが有効であったため他剤への切り替えではなく、有症状時の頓服にしようと承認を得ることができました。頓服に切り替え後、患者さんはドンペリドンを使うことなく経過しました。息子さんに薬を使わなくても症状がなくて安心してもらえたタイミングで、医師に今後の処方は中止することを提案したところ、承認を得ることができました。患者さんは、その後も嘔気の症状はなく、ドンペリドンを使わなくても安定した状態を保っています。

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嚥下障害のある患者にも使用できるパーキンソン病貼付薬「ハルロピテープ8mg/16mg/24mg/32mg/40mg」【下平博士のDIノート】第41回

嚥下障害のある患者にも使用できるパーキンソン病貼付薬「ハルロピテープ8mg/16mg/24mg/32mg/40mg」今回は、経皮吸収型ドパミン作動性パーキンソン病治療薬「ロピニロール塩酸塩経皮吸収型製剤」(商品名:ハルロピテープ8mg/16mg/24mg/32mg/40mg、製造販売:久光製薬、発売:協和キリン)を紹介します。本剤は、嚥下能力の低下した患者や消化管障害がある患者にも使用でき、家族や介護者が管理しやすいパーキンソン病治療薬として期待されています。<効能・効果>本剤は、パーキンソン病の適応で、2019年9月20日に承認され、2019年12月17日より発売されています。<用法・用量>通常、成人にはロピニロール塩酸塩として1日1回8mgから始め、必要に応じて1週間以上の間隔を空けながら8mgずつ増量します。胸部、腹部、側腹部、大腿部または上腕部のいずれかに貼付し、24時間ごとに貼り替えます。なお、年齢、症状により、1日量64mgを超えない範囲で適宜増減することができます。<副作用>国内臨床試験において、760例中478例(62.9%)に、臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、適用部位紅斑124例(16.3%)、適用部位そう痒感103例(13.6%)、傾眠86例(11.3%)、悪心80例(10.5%)、便秘46例(6.1%)およびジスキネジア43例(5.7%)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として、前兆のない突発的睡眠(0.7%)、極度の傾眠(頻度不明)、幻覚(3.6%)、妄想(0.4%)、興奮(0.1%)、錯乱(頻度不明)、せん妄(0.7%)などの精神症状、悪性症候群(頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は震えや筋肉のこわばり、日常生活動作・運動能力の低下などのパーキンソン病の症状を改善します。2.お風呂の後などタイミングを決めて、毎日1回同じ時間に薬を貼ってください。新しい薬を貼る前には、必ず前回の薬を剥がしてください。3.胸部、腹部、脇腹、太ももまたは上腕部のいずれかに貼りますが、かぶれなどを防ぐために毎回貼る場所を変えてください。かゆみやかぶれが現れたときは、医師や薬剤師に相談してください。4.この薬は、貼っている部位の温度が上がると薬の作用が高まる恐れがあります。テープを貼った部分が過度の直射日光やあんか、カイロ、湯たんぽ、サウナなどで熱くならないようにしてください。5.耐え難い眠気が突然現れることがあるため、この薬を使用中は自動車の運転や機械の操作、高所作業など、危険を伴う作業はしないでください。6.医師の指示なしに使用量を変更・中止すると、症状が悪化することがあるので、指示どおりに使用してください。<Shimo's eyes>ロピニロールはパーキンソン病の治療薬として広く用いられている成分で、既存薬として内服薬の速放錠と徐放錠が発売されています。ロピニロールの経皮吸収型製剤である本剤は、「ロピニロール」を「貼る」ということからハルロピと命名されました。パーキンソン病に用いる経皮吸収型製剤としては、ロチゴチンパッチ製剤(商品名:ニュープロパッチ)に次ぐ2剤目となります。パーキンソン病患者では、自律神経症状として胃排出能低下などの消化管障害が多いことが報告されています。そのため、経口薬では吸収が遅延して薬効の発現に影響し、オフ時間が生じることが懸念されています。本剤は経皮吸収型製剤であるため、消化管障害の影響を受けず、血中濃度が安定しやすいと考えられます。副作用としては、現在すべてのドパミン作動薬の添付文書では、「重要な基本的注意」として突発的睡眠の注意喚起がなされています。また、これらの薬剤は急に減量または中止すると悪性症候群、薬剤離脱症候群が現れることがあるので、患者さんのアドヒアランス確保は薬剤師の重要な責務と考えられます。投与量については、少量から使い始め、悪心、嘔吐などの消化器症状や血圧などを観察しながら、1週間以上の間隔を空けて増量します。本剤には5種類の規格があり、用量によっては2種類の規格が処方されることがありますので、貼り間違えることがないよう丁寧に説明しましょう。テープには日付を記入することができ、使用状況を目視で確認できるため、家族や介護者が管理しやすいという利点があります。患者用資材では、貼付部位を10ヵ所に区分してローテーションする方法が示されていますので、それらの資料も活用するとよいでしょう。参考1)PMDA ハルロピテープ8mg/16mg/24mg/32mg/40mg

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第33回 大豆製品摂取と乳がん、月経との影響を患者さんに聞かれたら【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 以前、乳がんのホルモン療法中の患者さんに、「納豆や豆乳などの大豆製品を摂取しても大丈夫?」と聞かれたことがあります。多くの乳がんはエストロゲンの作用で増殖しますので、大豆イソフラボンが女性ホルモン様作用を有すると聞いて疑問に思ったようです。似たような趣旨で、月経痛への影響を懸念される患者さんもいらっしゃいました。確かに、大豆に含まれるイソフラボンは、αおよびβエストロゲン受容体に結合できる17‐β‐エストラジオールと構造が類似しており、エストロゲン活性を有することが知られています1)。エストロゲンとの構造類似から植物エストロゲンと呼ばれることもありますが、実際のところ影響はあるのでしょうか。今回は大豆製品の疑問に関連する研究を紹介します。血清エストロゲン濃度や月経痛への影響は不明まず、豆乳摂取による血清エストロゲン濃度への影響についてです。閉経前の日本人女性を対象として、連続した3月経周期に毎日400mLの豆乳(約109mgのイソフラボンを含有)を摂取する豆乳補充食群(31例)と、対照の通常食群(29例)にランダムに割り付けて調査した岐阜大学の研究があります。結果として、各群間で血清エストロゲン濃度の変化や月経周期の長さに統計的な有意差はありませんでした2)。後に、同じ研究グループは19~24歳の日本人女性276例を対象に、月経痛と大豆製品、脂肪、食物繊維摂取との関係性についても横断研究をしています。食物繊維摂取量は有意に月経痛スケールと逆相関でしたが、大豆製品、脂肪の摂取量は月経痛スケールとの相関が見いだされませんでした3)。食物繊維のほうが月経痛に有用という何とも言い難い結果ですが、食品から大豆製品を通常摂取する分には月経周期や月経痛への影響はあまりなさそうです。大豆消費と乳がんのリスクは逆相関多目的コホート研究(JPHC研究)は、生活習慣とがんなどの生活習慣病との関連について日本の人口ベースで長期追跡調査を行い、これまでに多くの成果を発表しています。その中の1つで、大豆製品およびそこから摂取されるイソフラボン量と乳がんの発生率を調査したものがあります。同研究では、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県石川の4地域に在住している40〜59歳の女性2万1,852人を約10年間追跡しています。その結果、みそ汁とイソフラボンの摂取が乳がんリスクと逆相関することが示唆されました。イソフラボン摂取量が最低四分位数のものと比較して、第2四分位、第3四分位、最高四分位数の乳がんリスク比はそれぞれ0.76(95%信頼区間[CI]:0.47~1.2)、0.90(95%CI:0.56~1.5)、0.46(95%CI:0.25~0.84)でした。とくに、みそ汁を1日2杯以上飲む群では乳がんリスクが低い傾向にありました4)。乳がん内分泌療法中の患者の再発リスクも低下2002年8月~2003年7月の間に乳がんの手術を受け、その後内分泌療法を行っている患者524例を対象に中央値5.1年追跡し、大豆イソフラボンの食事摂取と乳がんの再発および死亡との関連を調べた研究もあります。アンケートにより食事状況を調査し、ハザード比(HR)を推定し、ER/PRのステータスと内分泌療法別(タモキシフェンまたはアナストロゾール)により層別化しています。閉経前患者では、全体の死亡率(30.6%)は大豆イソフラボンの摂取とは相関がありませんでした(HR:1.05、95%CI:0.78~1.71、最高四分位[>42.3mg/日]vs.最低四分位[<15.2mg/日])が、閉経後患者では最低四分位と比較して、最高四分位の再発リスクは有意に低いという結果でした(HR:0.67、95%CI:0.54~0.85)。閉経後ER+/PR+の患者およびアナストロゾールによる治療を受けている患者でも、大豆イソフラボンの食事摂取量が多いと再発リスクが低下していました5)。ほかにも、35件の研究のメタ解析では、大豆摂取が閉経前後双方において乳がん再発リスクと逆相関することも示唆されていますし6)、HER2の発現状態によらず大豆摂取が乳がんリスクと逆相関するとする中国人女性を対象とした研究もあります7)。また、前向き研究のメタ解析で、大豆イソフラボン摂取量が10mg/日増加するごとに、乳がんのリスクが3%(95%CI:1~5%)減少する用量依存性も示唆されています8)。大豆イソフラボンは理論的には乳がんなどのリスクを上げるように思いますが、これらの文献ではそうとも言えないようです。さまざまな情報を入手するにつれ不安に思われる患者さんもいらっしゃいますので、回答の参考になれば幸いです。1)Vitale DC , et al. Eur J Drug Metab Pharmacokinet. 2013;38:15-25.2)Nagata C , et al. J Natl Cancer Inst. 1998 2;90:1830-1835.3)Nagata C , et al. Eur J Clin Nutr. 2005;59:88-92.4)Yamamoto S, et al. J Natl Cancer Inst. 2003;95:906-913. 5)Kang X, et al. CMAJ. 2010;182:1857-1862.6)Chen M, et al. PLoS One. 20140;9:e89288.7)Baglia ML, et al. Int J Cancer. 2016;139:742-748.8)Wei Y, et al. Eur J Epidemiol. 2019 Nov 21. [Epub ahead of print]

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第11回 対人義務化!改正薬機法の波にどう乗るか?【噂の狭研ラヂオ】

動画解説2019年11月27日に参院本会議で可決された改正薬機法。「対物から対人へ」という流れのなか、今回の法改正ではついに薬剤師の服薬後のフォローが義務化され、薬局開設者にはその環境を整備することを義務としています。この波にどう乗るか?狭間先生が医師、そして薬局経営者の立場から解説します!

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改正薬機法が薬局に及ぼす影響総まとめ【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第39回

2020年は診療報酬改定や薬価改定など、さまざまなイベントがめじろ押しです。今回は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」の改正法が薬局に及ぼす影響について、いま一度考えてみたいと思います。1.薬剤師・薬局の在り方の見直し薬剤師による継続的な服薬状況の把握および服薬指導の義務の法制化薬剤師が、調剤時に限らず必要に応じて患者さんの薬剤の使用状況の把握や服薬指導を行う「服薬後のフォロー」が義務となり、医師への薬剤の使用に関する情報提供が努力義務となります。これまでは来局時や在宅訪問時でのみ患者さんと接していた薬剤師もいたと思いますが、今後は調剤後も継続的に患者さんをフォローし、フィードバックすることが求められます。「必要に応じて」「努力義務」ではありますが、ぜひ今後の薬剤師の役割として積極的に取り組み、「薬剤師はお薬を渡すだけ」というイメージから脱却しましょう!地域連携薬局と専門医療機関連携薬局医薬分業の推進、高齢化、在宅医療の増加に伴い、薬局・薬剤師も他職種と連携して地域の特性に応じた適切な役割を果たすために、「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」の認定制度が設けられます。「地域連携薬局」は入退院時に医療機関と情報共有したり、在宅医療で地域の薬局と連携したりしながら一元的・継続的に対応し、「専門医療機関連携薬局」はがんなどの専門的な薬学管理に他医療提供施設と連携して対応します。それぞれの機能に関する基準を満たしたうえで、都道府県知事の認定を受ける必要があります。まだ一般の方にはなじみのない名称だと思いますが、今後は病態に合わせて患者さん自ら薬局を選択する時代になりそうです。立地の良さに甘えることなく、役割を明確に打ち出して目指す薬局の体制づくりが必要です。オンライン服薬指導これまでもオンライン服薬指導は実証的に一部の地域で行われていましたが、医薬品の処方時に行われる薬剤師による服薬指導は、対面により行うことが法律で明記されていました。今回の改正により、テレビ電話などで患者さんの状態を確認しながら広く行うことが可能になります。具体的な手段は、今後の厚生労働省令において定められるとのことですが、薬局が遠い地域や忙しくて薬局に行く時間のない患者さんの利便性が向上しそうです。2.添付文書の電子的な方法による提供の原則化、医薬品等の包装等へのバーコード等の表示の義務付けこれまで、添付文書は容器や被包に記載できる場合を除いて医薬品に同梱することが義務付けられていました。しかし、今後は電子的な方法による提供が基本となり、最新の添付文書をWebサイトなどで確認することになります。そのため、最新の添付文書情報へアクセスするためのQRコードが容器などに記載されます。紙の添付文書の利便性は高いため、慣れないうちは印刷して手元に置きたくなるかもしれませんが、添付文書は頻回に改訂されることもあるため、電子的な方法でもすぐにアクセスできるか確認しましょう。3.信頼確保のための法令遵守体制の整備の義務付け残念ながら、昨年も医薬品の信頼に関わる事件がいくつかありました。そこで、薬局や医薬品製造業者・製造販売業者における法令遵守体制の整備が求められており、薬事に関する業務に責任を有する役員の設置、従業員に対して法令遵守のための指針の提示、法令遵守のための体制づくりなどが義務付けられます。課徴金の設定も予定されているので注意が必要です。これら改正薬機法の施行スケジュールは、3段階に分けられています。改正薬機法公布日から1年以内:「薬剤師・薬局の在り方の見直し」改正薬機法公布日から2年以内:「薬剤師・薬局の在り方の見直しのうち、機能別薬局等の認定」「添付文書の電子的方法による提供」「ガバナンスに関する改正内容および課徴金制度」改正薬機法公布日から3年以内:「バーコード等の表示」2015年10月に策定された「患者のための薬局ビジョン」が具体化されるという流れになっています。大変なこともあるかと思いますが、今年一年も信頼される薬局・薬剤師を目指して頑張りましょう。

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長期抗精神病薬治療が体重に及ぼす影響~コホート研究

 抗精神病薬は、長期間にわたり使用されることが多いにもかかわらず、体重への影響に関するエビデンスの大半は、短期的な臨床試験による報告にとどまっている。とくに、抗精神病薬の投与量による体重への影響については、ほとんど調査されていない。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのJuan Carlos Bazo-Alvarez氏らは、3種類の第2世代抗精神病薬を高用量または低用量で開始した患者における体重への短期的および長期的変化について検討を行った。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2019年11月14日号の報告。 本研究は、2005~15年に英国プライマリケアにて精神疾患と診断された患者を対象としたレトロスペクティブコホート研究。3種類の第2世代抗精神病薬(オランザピン、クエチアピン、リスペリドン)の初回使用より調査を行った。主要アウトカムは、性別および高用量または低用量で層別化した後の、抗精神病薬治療開始の4年前と4年後との体重変化とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は、女性2万2,306例、男性1万6,559例であった。・オランザピン治療は、体重変化が最も高く、高用量でより多くの体重増加が認められた。・4年後の体重増加は、オランザピンの高用量(5mg超)女性で平均+6.1kg、低用量(5mg以下)で平均+4.4kgであった。・オランザピン治療の最初の6週間における体重増加は、高用量で平均+3.2kg、低用量で平均+1.9kgであった。・男性でも、その傾向は同様であった。・リスペリドンおよびクエチアピン治療患者では、短期的および長期的な体重増加は少なかった。 著者らは「オランザピン治療は、体重増加が最も多かった。高用量とより多くの体重増加との関連が認められた。臨床医は、メンタルヘルス上のベネフィット、体重増加、その他の有害事象とのバランスを取るため、最低有効量による治療を心掛ける必要がある」としている。

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お年玉シーズンに知っておきたい「賢い贈与」のコツ【医師のためのお金の話】第28回

こんにちは。自由気ままな整形外科医です。令和になって初めてのお正月はいかがお過ごしでしょうか? 病院で忙しく働いていた先生もいらっしゃるでしょうが、自宅でのんびり過ごした先生も多かったのではないでしょうか。お正月のビッグイベントといえば「お年玉」。子供のころは親や親戚からもらうお年玉がとても楽しみでした。ところが、大人になると今度はお年玉を渡す立場になります。自分の子供だけではなく、両親や親戚の子供にまでお年玉を渡すようになると、たかがお年玉といえども結構な出費になります。年始から頭の痛い問題です(笑)。さて、お年玉も含めたお金を渡す行為は、税務的に「贈与」となります。もちろん、お年玉程度の金額で贈与税を支払う人はいないでしょうが、資産継承の観点からは贈与について知っておく必要があります。「暦年贈与」に潜む落とし穴医師は高額所得者であることが多く、同世代の方と比較してキャッシュフローが多い傾向にあります。このため、子供に対してまとまった金額を贈与する方も少なくありません。スムーズな資産継承のためには贈与が欠かせませんが、一般的によく行われているのは贈与金額を非課税枠の110万円以内にとどめて毎年贈与を繰り返す例です。このような贈与の仕方を「暦年贈与」といいます。110万円以内の暦年贈与は非課税なので贈与税申告も不要となり、気楽に贈与できることがメリットです。しかし毎年110万円ずつ子供に贈与していると、毎年一定の金額を贈与することが決まっている「定期贈与」と見なされる可能性があります。定期贈与は、贈与を開始した年に「定期的にお金を受け取る権利」の贈与を受けたものとして、これまでの贈与額の合計額に対して多額の贈与税が課税されてしまいます。これでは何のために暦年贈与したのかわからなくなりますね。「定期贈与」の回避策定期贈与と見なされるのを回避するためには、下記のような対策が有効といわれています。1)毎年「贈与契約書」を作成する2)受贈者本人の銀行口座へ振り込むことで記録を残す3)110万円を少しだけ超える金額を贈与して贈与税の申告を行う4)毎年違う時期に違う金額を贈与することで単発の贈与であることを強調する毎年贈与しているとトータルで大きな金額になってしまいます。上記の1)~2)の対策を行うことで、そのお金が一括で贈与したものではないことを証明するのです。3)に関しては110万円の非課税枠を超えて少額の贈与税が発生しても、暦年贈与をしたほうがトータルでの税額は抑えられます。たとえば111万円贈与した場合の贈与税は1,000円なので、10年贈与しても1万円にしかなりません。一方、1,110万円を一括贈与すると、100万円の贈与税になります。さらに、4)のように贈与の時期をランダム化することで、「暦年贈与だけども、あらかじめ決めた定期贈与ではありません!」と強調します。ここまでは一般的にいわれている定期贈与対策なので、抜かりなく実践するべきでしょう。私が実践する“ダメ押し”暦年贈与法一般的な暦年贈与の注意点をお話ししましたが、このまま終わっては面白くありません。そこで、私が毎年実践している暦年贈与の「コツ」を伝授いたします。前述の4つの対策は当然行っていますが、贈与契約書の空白スペースに、子供に「贈与を受けた感想」を書かせるようにしているのです。「おとなになったら大事に使いたいです」「お金をもらってうれしいです」などの子供の素直な感想を書いてもらうことで、贈与契約書に臨場感を醸し出します。子供の成長に従って書かれている内容や字もきれいになっていくので、税務署も否認しにくくなるはずです。子供にとっても大事に使わなければいけないというプレッシャーになるかもしれません。さらに、子供の感想入り贈与契約書を公証役場に持参して確定日付を取得します。公正証書にすると最低5,000円の費用がかかりますが、確定日付なら700円で済みます。確定日付は、単にその日その場所に贈与契約書が存在したという証明にすぎませんが、税務署に数年分の贈与契約書をまとめて作成したのではないかと疑われることを100%回避できるので有効です。ここまでやれば税務署も怖くない!?

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ウルソの特性を生かしたアドヒアランス改善提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第12回

 今回は、患者さんの服薬管理方法に着目し、用法をまとめたことでアドヒアランスが改善した事例を紹介します。分3内服の典型薬剤であるウルソデオキシコール酸の意外な特性を活かした処方提案ですので参考になれば幸いです。患者情報70歳、女性(施設入居)基礎疾患:原発性胆汁性肝硬変、心不全、糖尿病、逆流性食道炎内服管理:自己管理処方内容(介入時)1.ウルソデオキシコール酸100mg 3錠 分3 毎食後2.ラベプラゾール錠10mg 1錠 分1 朝食後3.フロセミド錠40mg 1錠 分1 朝食後4.インスリンリスプロ注 1日3回 毎食直前 朝4−昼4−夕4単位5.インスリングラルギン注 1日1回 就寝前 6単位本症例のポイント施設入居時、残薬だけで3ヵ月は生活できるほど大量に薬が余っていました。血糖コントロールは当然不良でしたが、患者さんに危機感はなく、「血糖自己測定(SMBG)は家事の際にしみて痛いから嫌だ」、「毎食後の注射は煩わしいから嫌だ」と訴えていました。薬剤師の訪問開始後、治療の必要性を伝えたり手技を確認したりしたものの、それでも毎回のように残薬があり、インスリンリスプロの単位数は4-4-4→6-6-4→6-6-6と、だんだん増量となっていきました。そうこうしているうちに、HbA1cは15.6まで上昇し、医師より血糖管理不良の判断がなされ、インスリングラルギンの単位数が16単位へ増量となりました。なお、ウルソデオキシコール酸については、昼・夕分はほとんど手が付けられておらず、肝機能も悪化気味でした。インスリン注射をきちんと打てていない理由は何かあらためて探ってみたところ、この患者さんは間食が大好きで、一日中何かしら食べていることが判明。さらに、インスリン単位数を上げているので間食を増やしてもいいのだと都合よく解釈し、実際には打っていないこともわかりました。そのような治療意識の低さが日々の内服薬の服薬アドヒアランスにも影響していました。患者さんの問題点を整理すると、(1)患者さんの病識不足による血糖管理不良、(2)内服アドヒアランス不良に伴う肝機能・心不全の悪化の2点だと考えました。患者さんにとって現状で何が一番負担かを聴取すると、毎食前のインスリンと毎食後の内服薬だという話を聞くことができました。ほぼすべてが負担と感じている状況ですが、服薬回数を減らすことでアドヒアランス向上につながる可能性があると思い、ウルソデオキシコール酸の服薬回数に着目しました。ウルソデオキシコール酸(UDCA)の薬理作用<利胆作用>:細胞障害性の胆汁酸トランスポーター発現→胆汁量増(胆汁うっ滞改善作用)<置換作用>:細胞障害の強い疎水性胆汁酸とUDCA(親水性:細胞障害なし)と置き換わることによる肝障害の軽減上記の置換作用は、投与回数ではなく総投与量が相関しているため、1日1回にまとめることは可能。ただし、消化器系副作用が増加するという報告もあるため注意が必要。このことから、ウルソデオキシコール酸を朝にまとめることで内服回数を1日1回に減らすことが可能と考えました。また、根本の問題である血糖管理も、インスリンリスプロ注をほとんど使用していないためであり、朝の内服に合わせたインスリングラルギンによる治療管理の提案と間食の節制などの指導を行うこととしました。処方提案と経過医師にトレーシングレポートを用いて、ウルソデオキシコール酸を朝にまとめることと、インスリングラルギンを朝単回にしてリズムを作るのはどうか提案しました。医師もコンプライアンスについて問題視していたため、まずはきちんと内服とインスリンを打つことが先決との返答をいただき、承認を得ることができました。その後、ウルソデオキシコール酸とほかの内服薬の服用タイミングがそろったことから一包化しました。すると、内服管理が朝のみになったことで本人の負担が軽減され、飲み忘れることがなくなりました。また、内服とインスリンの使用機会も同一となり、インスリンを確実に打てるようになりました。血糖推移も血糖管理手帳によると300~400台から120~200台まで改善しました。結果が良くなってきたことで、患者さんの意識が少しずつ変化し、今ではかなり自信がついたと感じています。間食をダラダラ食べ続けることが減ったことも影響していると考えます。なお、ウルソデオキシコール酸の投与回数を1回/日にまとめたことで消化器系副作用が懸念されていましたが、胸焼けや悪心などの症状の出現はなく経過しています。上垣佐登子ほか. 肝臓. 2007;48:559-561.

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アトピー性皮膚炎患者の全がんリスクは?

 アトピー性皮膚炎(AD)とがんの関連性についてはさまざまな見解がある。カナダ・トロント大学のLily Wang氏らは、一般集団と比較したAD患者のがんリスクを明らかにするシステマティックレビューとメタ解析を行った。観察的エビデンスとして、ADはケラチノサイトがんおよび腎がんのリスク増大と関連する可能性がある一方、肺・呼吸器系がんとの関連性は低い可能性が示されたという。結果を踏まえて著者は「さらなる研究を行い、現行エビデンスの不均一性と限界に焦点を当て、ADとがんリスクの関連性の基礎を成すメカニズムを解明する必要がある」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年12月11日号掲載の報告。 研究グループは、一般集団と比較したAD患者の非皮膚・皮膚がんのリスクを評価した。MEDLINE(1946年~)、Embase(1980年~)を2019年1月3日時点で検索し、「NEOPLASMS」「neoplas」「tumo」「cancer」「malignanc」および「Dermatitis, Atopic」「dermatit」「neurodermatit」「eczema」「disseminated」「neurodermatit」などの単語を含む論文を特定。観察試験(コホートおよびケースコントロール)でAD患者のがん推定リスクを対照(一般市民または非AD患者)と比較して報告していた論文を適格とし、包含した。 2人のレビュアーがそれぞれデータを抽出し、ROBINS-I評価ツールを用いて観察曝露試験を修正し、バイアスリスクを評価した。抽出したデータはランダム効果モデルを用いてプールし、標準化罹患率比(SIR)またはオッズ比(OR)を95%信頼区間(CI)値とともに算出した。不均一性についてCochrane Q統計およびI2統計を用いて評価した。 本研究の主なアウトカムは、SIRまたはORで評価したがんリスクとした。 主な結果は以下のとおり。・システマティックレビューとメタ解析には、住民ベースコホート試験8(572万6,692例)とケースコントロール試験48(11万4,136例)が包含された。・コホート試験間で、ADとケラチノサイトがん(5試験、pooled SIR:1.46、95%CI:1.20~1.77)、腎がん(2試験、1.86、1.14~3.04)、中枢神経系がん(2試験、1.81、1.22~2.70)、膵がん(1試験、1.90、1.03~3.50)に統計的に有意な関連が認められた。・48のケースコントロール試験間において、AD患者の中枢神経系がん(15試験、pooled OR:0.76、95%CI:0.70~0.82)、膵がん(5試験、0.81、0.66~0.98)のORは、コホート試験で高い発生率が認められたにもかかわらず、統計的に有意に低かった。・ケースコントロール試験では、肺・呼吸器系がんのORも低いことが示された(4試験、pooled OR:0.61、95%CI:0.45~0.82)。・ADとその他のがん(メラノーマを含む)の関連性を認めるエビデンスは見いだせなかった。・なお、その他多くのがんの試験では、データのプールの妨げとなるかなりの不均一性があり、包含試験間には中等度~重度のバイアスリスクが存在した。

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患者団体と製薬企業とのつながりとは/BMJ

 オーストラリア・シドニー大学のLisa Parker氏らは、患者団体と製薬企業の間の相互作用を調べる質的研究を行った。疾患別に存在する患者団体の多くが、製薬企業から資金提供を受けているが、患者団体は、患者および介護者に対する支援やアドボカシー、情報提供において重要な役割を担っている。また、医療および製薬の政策において影響力のあるアドボケイト(代弁者)としての地位を増しており、研究グループは、両者間の相互作用の解明を試みた。その結果、相互作用としての「asset exchange(資産交換)」の問題が明確になったという。BMJ誌2019年12月12日号掲載の報告。質的研究で、患者団体と製薬企業との関係性を調査 検討は、患者団体の代表者の観点から製薬企業のスポンサーシップをどのように見ているのか、また相互作用がどのように、なぜ、いつ発生するのかを調べることで、相互作用の質を理解し報告することを目的とした。 研究には、製薬企業と多様なレベルの資金提供でつながりのある、オーストラリアの23の患者団体から27人が参加。患者団体は、一般的な医療消費問題や疾患別の話題にフォーカスしている、地域または全国規模の団体であった。 調査は、倫理学の理論(グラウンデッドセオリー)で知られている経験的・質的インタビュー研究法を用い、インタビューでの聞き取りをデータカテゴリーにコード化して分析した。調査結果は、データを描出し解き明かすために新しい概念カテゴリーに編成され、また引用符でサポートされた。資金提供を受ければ、何らかの見返りを求められることに留意すべき 患者団体と製薬企業の関係性のタイプとして、製薬企業のスポンサーシップに対する姿勢の違いによる4つのタイプが特定された。 支配的な関係性(dominant relationship)のタイプは、ビジネスパートナーシップとして成功したタイプといえ、患者団体は企業の人間と密接な協力関係を築いていることが示された。このタイプの患者団体は、企業の悪影響の可能性を認識しつつ、企業の影響を回避する戦略があるとの自信を示していた。 その他の患者団体は、不十分(unsatisfactory)または未発達(undeveloped)な関係性であることが示され、いくつかの患者団体(すべて一般医療消費団体)は、製薬企業とは基本的な関心事が対立しており、自分たちのミッションと相いれないものであることを示した。 患者団体は、自分たちと製薬企業の間の相互作用は、団体のメンバーが興味を示す可能性がある新薬を会社が手にしたときにより多く発生していると報告した。 また、企業の資金提供を受け入れた患者団体は、企業と“asset”(資産)の交換に関わっていることが明らかになった。患者団体は、金銭、情報、アドバイスを受け取るのと引き換えに、企業にマーケティングや主要なオピニオンリーダーとの関係構築の機会を与えることや、医薬品の入手や助成金に関する企業のロビー活動に協力したり、治験への参加者集めを支援したり、企業の信頼性を強化することに関与していた。 著者は、「製薬企業のスポンサーシップについての患者団体の幅広い見方について理解することは、両者間のあらゆる倫理的懸念を特定し統制しようとする患者団体にとって役立つものとなるだろう」と述べるとともに、「製薬企業から金銭を受け取っている患者団体は、“返礼”として特定の資産を要求される可能性があることを想定しておくべきである」と指摘。続けて「活発にマーケティングを行う機会があると見なした患者団体への製薬企業による選択的な資金提供は、患者団体本来の活動を製薬企業の関心事にねじ曲げて向かわせる可能性があり、企業の代理人としてアドボカシーを発揮し、医療政策にも影響を及ぼす可能性がある」と警鐘を鳴らした。

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心拍数を下げて心臓の負担を減らす慢性心不全治療薬「コララン錠2.5mg/5mg/7.5mg」【下平博士のDIノート】第40回

心拍数を下げて心臓の負担を減らす慢性心不全治療薬「コララン錠2.5mg/5mg/7.5mg」今回は、HCN(hyperpolarization-activated cyclic nucleotide-gated)チャネル遮断薬「イバブラジン塩酸塩錠」(商品名:コララン錠2.5mg/5mg/7.5mg、小野薬品工業)を紹介します。本剤は、心臓の伝導性、収縮性、再分極および血圧に影響を与えず、心拍数を減少させる新規慢性心不全治療薬として期待されています。<効能・効果>本剤は、洞調律かつ投与開始時の安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全(β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)の適応で、2019年9月20日に承認され、2019年11月19日より発売されています。<用法・用量>通常、成人にはイバブラジンとして1回2.5mgを1日2回食後経口投与します。1回投与量は2.5mg、5mg、7.5mgのいずれかとし、増量する際は2週間以上の間隔を空けて段階的に調節します。目標とする安静時心拍数は50~60回/分とし、目標値を超える場合は段階的な増量、下回るまたは徐脈関連症状(めまい、倦怠感、低血圧など)が認められた場合は段階的な減量が必要です。なお、本剤は次のいずれかの患者に対して投与を検討します。β遮断薬の最大忍容量を投与されても安静時心拍数が75回/分以上の患者β遮断薬に対する忍容性がない、もしくは禁忌など、β遮断薬を使用できない患者<副作用>国内第III相試験(ONO-1162-03試験)および海外第III相試験(SHIFT試験)において、本剤が投与された安全性評価対象3,359例のうち、636例(18.9%)に副作用が認められました。主な副作用は、徐脈122例(3.6%)、光視症95例(2.8%)、胃腸障害47例(1.4%)、心不全27例(0.8%)、霧視15例(0.4%)でした。なお、心拍数減少を含む徐脈(8.0%)、光視症(同上)、霧視(同上)、房室ブロック(0.6%)、心房細動(0.3%)、心電図QT延長(0.2%)が、重大な副作用として報告されています(承認時)。<患者さんへの指導例>1.この薬は、心臓の過剰な働きを緩やかにすることで、心臓の負担を軽減して心不全の悪化を防ぎます。2.暗い部屋で突然稲妻のような光が見えたり、目がチカチカしたり、視界がかすんで見えたりするような症状が生じることがあります。これらの症状が認められた場合は、自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事しないでください。3.めまい、立ちくらみ、息切れ、脈が飛ぶ、動悸などの症状が現れたら、すぐに医師に連絡してください。4.このお薬は、妊娠・授乳している女性には使うことができません。妊娠を希望する場合は主治医に相談してください。<Shimo's eyes>慢性心不全の患者さんでは、十分な血液量を拍出できない心臓の働きを補うために、心拍数が高くなることがあります。それが長期間継続すると、日常生活に支障が生じるのみならず、予後にまで悪影響を及ぼすことが知られています。本剤は、心臓の洞結節に発現するHCNチャネルを阻害することで、心臓のペースメーカー電流を抑制して心拍数を減少させます。対象となる患者さんは、β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けていて、安静時心拍数が75回/分を上回る方に限定されますが、副作用や禁忌によってβ遮断薬が使用できない場合も可能です。本剤の効果が期待できるのは、心臓が正常なリズムを示す洞調律を保った患者さんであり、洞不全症候群や洞房ブロックなどの患者さんは禁忌です。また、収縮期血圧が90mmHg未満または拡張期血圧が50mmHg未満の低血圧、重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)の患者さんにも使用できません。本剤はCYP3Aの基質であるため、強力なCYP3A阻害作用を持つイトラコナゾール、クラリスロマイシンなどのほかにも、中等度のCYP3A阻害作用に加えて心拍数減少作用を持つベラパミル、ジルチアゼムとは併用禁忌です。副作用の眼症状発現について、本剤は洞結節のHCN4チャネルに加えて、視細胞のHCN1チャネルを阻害することが原因の1つと考えられています。光視症、霧視を認めた場合は、本剤の減量や投与中止を含めた対応を提案しましょう。なお、2019年9月現在、本剤は「慢性心不全」に関連する効能・効果について、100以上の国または地域で承認されています。参考1)PMDA コララン錠2.5mg/5mg/7.5mg

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ワクチン接種における副反応、副反応疑い報告制度と救済制度【今、知っておきたいワクチンの話】総論 第2回

はじめにワクチンの予防接種は、個人と集団(社会)を感染症から守るために重要な予防的措置である。しかし、ほかの医薬品と同様に副作用が起こるリスクはゼロではなく、極めてまれではあるが、不可避的に健康被害が起こり得る。そのため、私たち医療者はワクチン接種における副作用(副反応)とその報告制度、健康被害時の救済制度について理解し、ワクチン接種を受ける方(被接種者)やその保護者に対して予診の際にこれらについて説明し、副反応や健康被害が発生した際にはサポートできるようにしておく必要がある。「有害事象」「副作用」「副反応」は何が違う?「有害事象」「副作用」「副反応」、これらはワクチン接種に関連して使用される用語だが、使い分けができているだろうか(表1)。「有害事象」や「副作用」は、ワクチンを含む医薬品や手術などの医療行為に関連して使用され、「副反応」はワクチン接種に関連した事象に限定して使用される。いずれも「ワクチン接種をしたあとに起こった症状」に対して使用される用語だが、しばしば混同されている。とくに一般の方やマスメディアでは、誤解して使用や理解されていることがあり、医療者として注意が必要である。(図1)1)有害事象因果関係の有無を問わず、ワクチン接種など医薬品の投与や手術や放射線治療など医療行為を受けたあと患者(被接種者)に生じた医療上のあらゆる好ましくない出来事のこと。医療行為と有害事象との間に時間的に関連がある、前後関係はあるが、因果関係の有無は問わないということになる。そのため有害事象には、ワクチン接種後に偶然あるいは別の原因で生じた出来事も含まれる。しばしば、この時間的な前後関係をただちに因果関係であるかのようにメディアが報じたり、一般の方がそのように誤解していることに注意する。2)副作用治療や予防のために用いる医薬品の主な作用を主作用といい、主作用と異なる作用を副作用という。広義の副作用(side effect)には、人体にとって有害な作用と有害でない(好ましい、肯定的な)作用の両方が含まれる。一般的には医薬品による副作用に対しては、有害な作用である狭義の副作用(adverse drug reaction)が用いられる。医薬品と副作用の間には前後関係があり、また、副作用は医薬品の「作用」であるため、医薬品と副作用(による症状)の間には、因果関係があるということになる。3)副反応ワクチン接種の主作用(ワクチン接種の目的)は、ワクチン接種によって免疫反応を起こし、ワクチンが対象とするVPD(Vaccine Preventable Diseases:ワクチンで防げる病気)に対する免疫を付与することである。一方、ワクチン接種に伴う、免疫の付与以外の反応や接種行為による有害事象を副反応という。言い換えると副反応とは「ワクチン接種による(狭義の)副作用と接種行為が誘因となった有害事象」のことである。そのため、ワクチン接種と副反応の間には前後関係があり、因果関係があるということになる。表1 有害事象、副作用、副反応の違い画像を拡大する図1 有害事象、副作用、副反応の概念図画像を拡大する副反応・有害事象の要因と症状副反応・有害事象の主な要因と症状を表2に示す。表2 副反応・有害事象の主な要因と症状画像を拡大する1)不活化ワクチン一般的な副反応として、接種した抗原・アジュバンドやワクチン構成成分などで誘起された炎症による局所反応(発赤、硬結、疼痛など)や全身反応(発熱、発疹など)がある。また、数10万〜100万分の1の確率とまれではあるが重篤な副反応として、アナフィラキシーや血小板減少性紫斑病、脳炎・脳症などがある。医療者はこれらの副反応について、事前に被接種者や保護者に説明を行う。とくに頻度の高い一般的な副反応については、症状出現時の対応(表3)まで含めて説明する。また、接種後のアナフィラキシーなどに対応するため、接種後30分は院内で経過観察を行う。2)生ワクチン弱毒化したワクチン株による感染、つまり病原性の再獲得によって生じる副反応がある。なお、局所の発赤や発熱などの高頻度な副反応は、軽微な症状であるため、単独では予防接種後副反応疑い報告基準(後述)における医療者の報告義務規定にはあたらない。表3 高頻度な副反応の経過と対応画像を拡大する予防接種後副反応疑い報告制度とは予防接種後副反応疑い報告制度とは、予防接種法に基づき、「医師などが予防接種を受けた者が一定の症状を呈していると知った場合に厚生労働大臣に報告しなければならない(報告義務がある)制度」である。この制度は、予防接種後に生じる種々の身体的反応や副反応疑いについて情報を収集し、ワクチンの安全性について管理・検討を行い、国民に情報を提供すること、および今後の予防接種行政の推進に資することを目的としている。本制度は、2013年の法改正により大幅に変更され、2014年11月から副反応疑い報告(予防接種法)と医薬品・医療機器等安全性情報報告(医薬品医療機器等法)の報告先は独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA:Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)に一元化され、報告の方法が簡素化された。報告基準1)定期接種の場合予防接種法に基づいて報告基準があり、ワクチン(対象疾患)ごとに報告すべき症状、症状発生までの時間(期間)が規定されている(表4)。この報告基準にある症状(「その他の反応」を除く)について、それぞれに定められている時間までに発症した場合は、因果関係の有無を問わず、医師などは報告する義務がある。「その他の反応」については(1)入院、(2)死亡または永続的な機能不全に陥るおそれがある場合で、それが予防接種との因果関係が疑われる症状について報告する。また、報告基準にある症状でこの時間を超えて発生した場合でも、因果関係が疑われるものについては「その他の反応」として報告する。2)任意接種の場合定期接種の場合のような報告基準はなく、医師などは予防接種後副反応疑い報告書に症状名を記載する。表4 報告基準の例(一部抜粋)画像を拡大する報告方法予防接種後副反応疑い報告書を厚生労働省のWebサイトよりダウンロードし記入、または国立感染症研究所のWebサイトより入力アプリをダウンロードし、報告書PDFを作成、印刷し、PMDAへFAX(FAX番号:0120-176-146)にて送信する。これら報告の流れを図2に示す。図2 予防接種後副反応疑い報告の流れ画像を拡大する救済制度についてきちんと説明していますか?インフルエンザワクチンの任意接種用の予診票の医師記入欄には「本人又は、保護者に対して、予防接種の効果、副反応及び独立行政法人医薬品医療機器総合機構法に基づく救済について説明しました。」と記載がある。あなたは被接種者や保護者に対して、ワクチン接種における救済制度についてきちんと説明ができているだろうか。予防接種後の健康被害に対する救済制度前述のとおり、予防接種は感染症から個人と社会を守るための重要な施策であるが、極めてまれに健康被害が起こり得る。そのため、予防接種によって健康被害を受けた方に対する特別な配慮が必要であり、公的な救済制度が設けられている。救済制度は一律ではなく、定期接種、任意接種によって異なることに注意する。いずれの場合も給付の請求者は健康被害を受けた本人や家族であるため、医師は救済制度を紹介し、診断書や証明書の作成に協力する。ワクチン接種と健康被害との間に因果関係が認められた場合に救済給付が実施される(表5)。表5 予防接種後の健康被害救済制度の違い画像を拡大する給付の種類には、(1)医療機関での治療に要した医療費や医療手当(医療を受けるために要した諸費用)、(2)障害が残った場合の障害児養育年金または障害年金、(3)死亡時の葬祭料および一時金、遺族年金があるが、各制度によって給付額は大きく異なる。なお、国内未承認ワクチン(いわゆる輸入ワクチン)に対しては、輸入業者が独自の補償制度を設定している場合もあるが、これらの公的な制度は適応されないことにも注意する。1)定期接種の場合:予防接種健康被害救済制度予防接種健康被害救済制度は、予防接種法に基づく定期の予防接種(定期接種)により健康被害を受けた方を救済するための公的な制度である。定期接種を受けた方に健康被害が生じた場合、対象となる予防接種と健康被害との因果関係があるかどうかを疾病・障害認定審査会で個別に審査し、厚生労働大臣が因果関係を認定した場合は、市町村長は健康被害に対する給付を行う。給付の内容は、定期接種のうちA類疾病(B型肝炎、Hib感染症、小児の肺炎球菌感染症、ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ、結核、麻しん・風しん、水痘、日本脳炎、ヒトパピローマウイルス感染症)とB類疾病(インフルエンザ、高齢者の肺炎球菌感染症)で異なる。B類疾病による健康被害の請求の期限は、その内容によって2年または5年となっているため、とくに留意する。なお、健康被害について賠償責任が生じた場合であっても、その責任は市町村、都道府県または国が負うものであり、当該医師は故意または重大な過失がない限り、責任を問われるものではない。2)任意接種の場合:医薬品副作用被害救済制度および生物由来製品感染等被害救済制度医薬品副作用被害救済制度および生物由来製品感染等被害救済制度は、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構法(PMDA法)に基づく公的な制度である。これらの制度は、医薬品などを適正に使用したにもかかわらず発生した副作用による入院が必要な程度の疾病や日常生活が著しく制限される程度の障害などの健康被害を受けた方に対して、医療費などの給付を行い、被害を受けた方の迅速な救済(民事責任との切り離し)を図ることを目的としている。どちらの制度が適用されるかは、健康被害の内容や原因によって異なるが、申請窓口はいずれもPMDAであるため、患者や家族から健康被害の相談を受けた際にはPMDAの相談窓口(電話番号:0120-149-931)を紹介する。被接種者・保護者への説明資料以下のような一般の方向けの資料を活用する。日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」〔予防接種の副反応と有害事象〕医薬品副作用被害救済制度リーフレットまとめ「有害事象」「副作用」「副反応」はしばしば混同されて使用されており、医療者としてこれらの違いを理解する。医師などには予防接種後の副反応を疑った際に報告する義務がある。報告制度は定期接種、任意接種によって異なるが、報告先はPMDAに一元化されている。予防接種後の健康被害に対する公的な救済制度は、定期接種、任意接種によって異なるが、いずれもその請求は本人・家族が行うため、医療者はこれらの制度を紹介しサポートする。副反応疑い報告制度と救済制度制度の詳細については、「参考になるサイト」に示した、それぞれ厚生労働省やPMDAのWebサイトおよび『予防接種必携』1)を参照していただきたい。1)予防接種実施者のための予防接種必携 令和元年度(2019).公益財団法人予防接種リサーチセンター.2019.2)藤岡雅司ほか. 予防接種マネジメント. 中山書店;2013.3)中山久仁子編集. おとなのワクチン. 南山堂;2019.参考になるサイト1)予防接種後の有害事象.予防接種基礎講座〔2017年3月開催資料〕(厚生労働省)2)予防接種後副反応疑い報告制度(厚生労働省)[予防接種法に基づく医師等の報告のお願い][予防接種法に基づく副反応疑い報告(医療従事者向け)]3)予防接種後副反応疑い報告書〔別紙様式1〕(厚生労働省)4)「予防接種後副反応疑い報告書」入力アプリ(国立感染症研究所)5)予防接種健康被害救済制度(厚生労働省)6)医薬品副作用被害救済制度(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構〔PMDA〕).[制度の概要][医療関係者向け][一般の方向け]7)日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」予防接種の副反応と有害事象(日本小児科学会)講師紹介

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