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一年の計は確定申告にありこんにちは、自由気ままな整形外科医です。そろそろ確定申告の時期がやってきます。確定申告と聞いて、皆さんはどのように感じるでしょうか?「計算方法がよくわからない」「なんだか面倒くさそう」「また追加で税金を支払わなければいけないのか」などなど、あまりよいイメージのない人が多いのではないでしょうか。確かに確定申告は面倒ですし、アルバイト収入のある勤務医は多額の税金を支払わなければいけません。よいイメージが湧かないのも当たり前ですね。しかし、私は1年の計画を決めるうえで、確定申告は重要なイベントだと考えています。「一年の計は確定申告にあり」と言っても過言ではありません。なぜ、確定申告がそれほど重要なのかを説明しましょう。多くの医師は税率43%ゾーンに該当最初にお伝えしたいことは個人所得にかかる税の仕組みです。「税制はとても複雑で難しい」と思っている方は多いことでしょう。しかし、法人税制と比較すると個人税制はとてもシンプルなのです。個人所得にかかる税には、所得税と住民税の2つがあります。いろいろ細かい規定がありますが、私たちにとって重要なのは税率のみ、と言ってよいでしょう。住民税は居住地によって若干の差異はありますが便宜上10%とします。その場合、個人所得税と住民税を合算した税率は下記のようになります。※国税庁ホームページの所得税の速算表を編集(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm)課税される所得金額は確定申告書の右上に記載されている金額であり、給与総額ではないことに注意する必要があります。上記のうち、多くの医師は課税所得金額900~1,800万円の階層に含まれます。アルバイトの「本当の手取り」を知っていますか?ここでは「額面年収1,500万円で、課税所得金額が1,000万円」の医師を例にして考えてみます。この場合、課税所得金額900万円超の100万円部分の税率が43%になります。アルバイト収入を加えて年収1,500万円になっている場合、本業に上積みされるアルバイト収入にかかる税率は43%です。この税率を基に考えてみると、1回4万円の夜診アルバイトの実質的な手取りは2万2,800円にしかなりません。このような事実が可視化されると、本当にそのアルバイトを継続するべきかを検討する、という選択肢も出てくるでしょう。生活習慣を見直して節約することでアルバイトに行くのと同じ効果を得られるかもしれません。一見すると、アルバイト収入は割がよいと感じられますが、実質的な手取りは43%ダウンとなっているのです。自分の時間を削ってアルバイトに精を出すより、生活習慣を見直して浪費を慎むほうが生活の質は向上するかもしれません。iDeCo・ふるさと納税に節税効果はほぼなし!残念ながら、個人所得の節税手段は多くはありません。iDeCo(個人型確定拠出年金)やふるさと納税は誰でも利用できますが、iDeCoは毎月積み立てできる限度額が少ないため実質的な効果に乏しく、ふるさと納税も節税というよりは「出血を多少抑える」程度の効果しかありません。一方で、少々難易度は上がりますが、小規模企業共済や不動産所得による損益通算を利用した節税法を実行すると、100万円単位で課税所得金額を引き下げられる可能性があります。900万円超部分の税率43%を33%にすることができれば、4万円の夜診アルバイトの実質的な手取りは2万2,800円から2万6,800円に改善するのです。小規模企業共済は加入資格のハードルが高いので、開業医や事業所得のある大学院生に限定されますが、不動産所得による損益通算を利用した節税法は、やる気さえあればほとんどの人が実行可能です。もちろん、不動産投資を実践することになるので事前にしっかり勉強する必要があります。何も勉強せずに不動産投資を開始することは自殺行為です。医師としての業務と不動産投資に割ける時間のバランスを考えると、1棟マンションなどの大規模な物件ではなく、中古の木造戸建て住宅などの小規模物件への投資が望ましいでしょう。なお、不動産投資による節税対策としては、迷惑な営業電話でおなじみの新築ワンルームマンション投資を思い浮かべる人が多いことでしょう。私は15年以上不動産投資を実践していますが、投資対象となりうる新築ワンルームマンションを見たことがありません。何があっても、新築ワンルームマンションを購入することだけは避けるべきだと思います。確定申告を通じて生活スタイルをデザインするここまで述べてきたように、確定申告対策によって、効率よく手残り収入を確保する方法をシミュレーションすることができます。何も考えずに貴重な自分の時間を削ってアルバイトに精を出すのは賢い方法ではありません。どうせアルバイトするのであれば、手残り金額を増やす節税方法を検討するべきですし、生活の質を考慮して、本当にアルバイトに行くのが望ましいのかも考えるべきでしょう。私は税率43%の課税所得金額900万円超の部分を、できるだけ少なくすることに注力しています。その方法は、アルバイト削減と不動産所得による損益通算を両輪としたものです。アルバイトを削減することで自分の時間が増え、不動産所得は節税だけではなく安定収入をもたらしてくれます。自分の生活の質を高めるために、確定申告を通じて自分の生活スタイルを見直してみてはいかがでしょうか?