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TN乳がん1次治療でのipatasertib+ PTX、PIK3CA/AKT1/PTEN変異を持つ患者でPFS改善せず(IPATunity130)/SABCS2020

 PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異を持つ、手術不能な局所進行または転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者の1次治療において、経口AKT阻害薬ipatasertibとパクリタキセル(PTX)の併用は、PTXのみと比較してPFSの改善がみられなかった。シンガポール・国立がんセンターのRebecca Dent氏が、第III相IPATunity130試験コホートAの結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。 同治療法については、第II相LOTUS試験において無増悪生存期間(PFS)の改善が報告され、なかでもPIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異を有する患者でより顕著な効果が得られていた。・対象:PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異を持ち、測定可能病変のある、手術不能な局所進行または転移を有する、化学療法未治療([術前]術後化学療法終了から12ヵ月以上)のTNBC患者(ECOG PS:0/1、タキサン単剤療法への適格性あり)・試験群:PTX 80mg/m2(Day1、8、15)+ipatasertib 400mg(Day1~21)を1サイクル28日として投与(ipatasertib群)168例・対照群:PTX 80mg/m2(Day1、8、15)+プラセボ(Day1~21)(プラセボ群)87例・評価項目:[主要評価項目]治験責任医師評価によるPFS[主要副次評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、安全性など・層別化因子:[術前]術後化学療法の有無、地域(アジア vs.欧州 vs.北米 vs.その他)、腫瘍の変異状態(PIK3CA/KT1 活性型変異 vs. PIK3CA/AKT1 活性型変異のないPTEN異常) 主な結果は以下のとおり。・2018年2月~2020年4月に計255例が登録され、ipatasertib群とプラセボ群に2:1の割合で無作為に割り付けられた。・ベースライン時の患者特性は、[術前]術後化学療法歴有がipatasertib群48% vs.プラセボ群55%、手術不能・局所進行がんが21% vs.13%。PD-L1陽性が29% vs.40%、PIK3CA /AKT1活性型変異を有する患者が両群とも51%で、両群間で有意な差がある項目はなかった。・追跡期間中央値8.3ヵ月において、主要評価項目のPFS中央値は、ipatasertib群7.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.6~8.5) vs.プラセボ群6.1ヵ月(95%CI:5.5~9.0)であった(層別ハザード比[HR]:1.02、95%CI:0.71~1.45、log-rank検定のp=0.9237)。・ORRはipatasertib群39% vs.プラセボ群35%、CBRは47% vs.プラセボ群45%。・ipatasertib/プラセボによる治療期間中央値は5.9ヵ月 vs. 5.6ヵ月と差はみられず、PTX治療期間も両群で差はなかった。・安全性については、以前の報告と一致していた。 同試験ではOSのフォローアップが進行中のほか、ipatasertibによるベネフィットを受けうるバイオマーカーの探索が行われている。

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特発性肺線維症へのST合剤、生存ベネフィット認めず/JAMA

 中等症~重症の特発性肺線維症(IPF)について、コトリモキサゾール(ST合剤:スルファメトキサゾールとトリメトプリムの合剤)はプラセボと比較して、死亡・肺移植または予定外の初回入院までの期間の複合アウトカムの発生を低下しないことが、英国・イースト・アングリア大学のAndrew M. Wilson氏らによる検討で示された。IPFは予後不良で治療法が限られており、肺微生物叢の変化による肺への細菌負荷が死亡率に関連するとされている。先行の小規模無作為化試験においてST合剤投与による臨床アウトカムの改善および優れた費用対効果が示唆され、また探索的解析で健康関連のQOLや酸素必要量の改善、および試験プロトコールを順守した被験者における12ヵ月間の死亡率低下が示されていたが、生存ベネフィットのエビデンスは確定されていなかった。JAMA誌2020年12月8日号掲載の報告。中等症~重症IPFへのST合剤の有効性、二重盲検プラセボ対照無作為化試験で評価 研究グループは、中等症~重症IPF患者におけるST合剤の有効性を確定する、二重盲検プラセボ対照並行群比較無作為化試験を行った。被験者は、IPFで息切れ症状(MRC息切れスケールスコア>1)と肺機能障害(努力肺活量[FVC]予測値≦75%)を有する患者で、英国の間質性肺疾患専門医療センター39ヵ所で、2015年4月(最初の患者が受診)~2019年4月(最後の患者のフォローアップ完了)に342例が試験に参加した。 被験者は、1日2回960mgのST合剤を服用する群(170例)または適合プラセボを服用する群(172例)に無作為に割り付けられ、最短12ヵ月間および最大42ヵ月間のフォローアップを受けた。また、全患者に1日1回5mgの経口葉酸が投与された。 主要アウトカムは、死亡(全死因)・肺移植・予定外の初回入院までの期間であった。副次アウトカムは15項目で、主要エンドポイントの呼吸関連イベントの各項目、肺機能(FVCおよび肺ガス交換能)、患者報告のアウトカム(MRC息切れスケール、5段階EQ-5D質問票、咳重症度、Leicester Cough Questionnaire[LCQ]、King's Brief Interstitial Lung Disease[KBILD]質問票スコア)などであった。死亡・肺移植・予定外入院の複合アウトカムほか副次アウトカムも、有意差なし 無作為化を受けた342例(平均年齢71.3歳、女性46例[13%])において、283例(83%)が試験を完了した。フォローアップ期間中央値(四分位範囲)は1.02年(0.35~1.73)であった。 ST合剤群およびプラセボ群のイベント件数はそれぞれ、0.45(84例/186フォローアップ人年)、0.38(80例/209フォローアップ人年)で、ハザード比は1.2(95%信頼区間[CI]:0.9~1.6、p=0.32)であった。 その他のイベントアウトカム、肺機能、患者報告のアウトカムについても統計的有意差は認められなかった。有害事象は、ST合剤群696例(悪心89例、下痢52例、嘔吐28例、および発疹31例など)、プラセボ群640例(悪心67例、下痢84例、嘔吐20例、および発疹20例など)が報告された。

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第37回 早大が統合に踏み切れない東京女子医大の事情と「三派連合」の存在

慶應義塾大学が2023年4月をめどに東京歯科大学を統合、同大11番目の学部として歯学部が誕生する見通しだ。国内の総合大学では初めて医学部、看護医療学部、薬学部、歯学部の医療系4学部が揃うことになる。一方、慶大のライバルである早稲田大学は、長年に渡って東京女子医科大学との統合話が浮上しては立ち消え、実現に至っていない。その理由として、両大学の経営状況に加え、他大学からの“妨害”があったというきな臭い話も聞こえる。まず、慶大と東京歯科大が統合するメリットとは何か。先述の通り、慶大は医療系4学部を擁する国内初の総合大学として、ブランド力が一層強化される。また、附属校から歯科医を目指す場合、これまでは他大へ出るしかなかったが、晴れて内部進学が可能になる。一方、東京歯科大は経営状態が良好で国家試験の合格率も高いが、学生数の減少や歯科医師供給過剰による競争激化が進む中、「慶應」ブランドで優秀な学生集めることができる。つまり両者の統合は、名実ともに“Win-Win”の関係で成立するのだ。早大と東京女子医大の場合はどうか。東京女子医大にとって創立120年の節目である2020年は、悪いニュースが相次いだ。7月には、約30億円の病院の赤字と職員へのボーナス不支給、それを不満とした看護師400人の大量退職が報じられた。その後、同大は慌ててボーナスを支給した。その直後、2021年度の入学生から、6年間の学費を3,400万円から1,200万円アップの4,600万円にすると突如発表し、受験生に衝撃を与えた。総額が最も高い川崎医科大学(岡山県倉敷市)の4,740万円に次ぐ高さだ。背景には、コロナ禍による大学病院の収益悪化があるとされる。また10月には、6年前の医療事故について医師6人が書類送検される事態も起きた。関係者は「大学病院の財務状況とガバナンスが不全状態にある今の東京女子医大は、早大にとっては“お荷物”だ」と打ち明ける。一方、早大関係者は「17年から基金運用を始めるなど、早大の経営状況も順風満帆ではない。歴代総長のほぼ全員が検討し、『早稲田の悲願』と言われてきた医学部設置だが、うまみのある大学でないと統合は難しい」と打ち明ける。つまり現状を見る限り、早大と東京女子医大では“Win-Win”の統合になり得ないということだ。もう1つ、早大の医学部設置が叶わない背景を知る人物は次のように話す。「約20年前に、早大が医学部を持てるようにいろいろ動いたが、慶大、日本大学、東海大学の三派連合が立ちはだかり、どうにもこうにも行かなかった」と振り返る。ましてや三派連合の一角・慶大が医療系4学部を揃えるとなれば、医療界における慶大勢力はこれまで以上に強まるだろう。「早稲田大学医学部」の実現は、さらに遠のきそうだ。

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Pfizer社の新型コロナワクチンの第III相試験結果/NEJM

 ファイザーとビオンテックによる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「BNT162b2」について、16歳以上における30μgの2回投与の有効率は95%で、同有効率は年齢や性別、基礎疾患の有無といったサブグループでも同程度であった。また、中央値2ヵ月間の安全性は、その他のウイルスワクチンと類似していた。アルゼンチン・Fundacion INFANTのFernando P. Polack氏らによる、進行中の第II/III相国際共同プラセボ対照観察者盲検化pivotal有効性試験の結果で、NEJM誌オンライン版2020年12月10日号で発表した。BNT162b2は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のfull-lengthスパイクタンパク質をコードする脂質ナノ粒子製剤・修飾ヌクレオシドmRNAワクチンである。第III相試験はコロナワクチンBNT162b2を3週間隔で2回投与 第III相試験は、16歳以上の健康な男女を無作為に2群に分け、一方には新型コロナウイルスワクチンBNT162b2(30μg)を、もう一方にはプラセボを、それぞれ21日間隔で2回投与した。 主要エンドポイントは、検査によって確認されたCOVID-19に対するワクチンの有効性および安全性だった。第III相試験での新型コロナウイルスワクチンの有効率は95% 第III相試験では合計4万3,548例が無作為化を受け、4万3,448例が注射投与を受けた。新型コロナウイルスワクチンのBNT162b2群が2万1,720例、プラセボ群は2万1,728例だった。 2回目投与後7日以降にCOVID-19の発症が確認されたのは、プラセボ群が162例だったのに対し、BNT162b2群は8例で、BNT162b2の有効率は95%だった(95%信用区間[Crl]:90.3~97.6)。 ワクチン有効率は、65~75歳未満で94.7%であり、年齢や性別、人種、民族、ベースラインのBMI、基礎疾患の有無で分類したサブグループにおいて類似していた(概して90~100%)。 安全性プロファイルは、注射部位の短期的な軽度~中等度の疼痛、倦怠感、頭痛で特徴付けられた。重度有害イベントの発現頻度は低く、両群で類似していた。

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今年はさみしいクリスマスマーケット【空手家心臓外科医、ドイツ武者修行の旅】第23回

冬の長いドイツでは、12月になると日照時間も短くなり、1日の大半が夜のようになります。寒いし暗いし、正直外に出るのがかなり億劫になっちゃいます。ですが、12月は1ヵ月まるまるクリスマスマーケットが行われます(ドイツ語では“Weihnachtsmarkt”「ヴァイナハツマルクト」と呼ばれます)。大都市ニュルンベルクなどのクリスマスマーケットは規模が大きく有名なのですが、クリスマスマーケット自体はどの街でも行われています。毎年この時期の週末は、近隣の街にも足を伸ばして「ご当地クリスマスマーケット巡り」に出かけていました。もちろん、わがグライフスバルトでもクリスマスマーケットは行われます。小さな街なのですが、広場には所狭しと出店が並び、子供用のカートレース場や即席観覧車なんかも作られたりします(画像の真ん中あたりに観覧車の上半分が写っています)。ところが…新型コロナウイルス感染症の強烈な第2波がやってきたドイツでは、現在ロックダウンが行われており、各地でクリスマスマーケットの中止が発表されています。当地ではこれは結構大きな事件のようで、地域のネットの掲示板も悲しみの声で溢れかえっていました。数年前、テロ事件でヨーロッパがお騒ぎになったときでも、セキュリティを厳重にすることでクリスマスマーケットは敢行されていたのですが…流石に今回は難しかったようです。広場にポツンとグライフスバルトでは、「せめてクリスマスツリーだけでも」と広場にポツンとツリーだけが飾られました。(「単にキャンセルができなかっただけ」との意見もちらほら聞かれていますが…)。これはこれで風情があって、悪くないと思いましたが、地元の方々は「クリスマスマーケットをやらないなら、ただ転倒のリスクがあるだけだ」と、ネット掲示板でプチ炎上していました…まあ正直どうでもいいんですが。イベントがないと、冬のドイツの夜は長過ぎですから…。クリスマスマーケット、来年は無事再開されるといいな…。

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認知機能の改善作用を示したビフィズス菌株とは?

 脳と腸が自律神経などを通じて強く関連し、その状態に影響を及ぼしあう脳腸相関がいわれるようになって久しく、腸内細菌が認知症に関連するとの報告も多いが、因果関係の証明にはいたっていない。今回、2本の二重盲検無作為化比較試験を経て、ビフィズス菌MCC1274摂取による認知機能の維持・改善作用が示唆された。2020年11月24日、「ビフィズス菌MCC1274の認知機能改善作用とその可能性」と題したメディアセミナー(主催:森永乳業)が開催され、佐治 直樹氏(国立長寿医療研究センター もの忘れセンター)、清水 金忠氏(森永乳業株式会社研究本部 基礎研究所)、新井 平伊氏(アルツクリニック東京)が登壇し、試験の概要や関連研究、今後の展望について講演した。認知症の有無で腸内細菌叢の構成は異なる 佐治氏は、認知機能と腸内細菌の関連について調べる国内のレジストリ研究(Gimlet study)から得られた知見をいくつか紹介。腸内細菌叢の構成を調べた結果、認知症の人では、認知症でない人よりもバクテロイデス(常在菌)が減り、その他の不明な細菌の割合が増えていることが明らかになった1)。さらに、その変化は認知症の前段階(軽度認知障害[MCI])からみられることも確認された2)。 なぜ腸内細菌が認知症と関連するかについては、神経反射、循環器系、免疫系という大きく3つの経路における機序が考えられている。加えて、同レジストリ研究からは、腸内細菌の代謝産物が認知症に関連することが示唆された。代謝産物の濃度が1SD上昇した場合のオッズ比をみると、アンモニアで1.60(95%信頼区間:1.04~2.52)と認知症との関連性が高かったが、乳酸では0.28(0.02~0.99)と低かった3)。軽度認知障害の疑いのある50歳以上で有意にスコア改善 清水氏は、ビフィズス菌MCC1274の臨床試験の経緯について紹介。まずはじめに、同社が保有するビフィズス菌株の中からアルツハイマー型認知症の発症を抑制する可能性がある菌株としてMCC1274を特定した。アルツハイマーモデルを用いたプレ臨床試験では、MCC1274投与による認知機能改善作用および脳内炎症抑制作用が観察された4)。 続いて実施された二重盲検プラセボ対照群間比較試験では、物忘れが気になる120人の被験者をMCC1274カプセル(200億/日)群またはプラセボ群に無作為に割り付け、12週間摂取後の認知機能(MMSEおよびRBANSによる評価)を比較した。その結果、全被験者対象の解析では群間有意差がみられなかったが、認知機能が低下したサブグループ(RBANS総合スコア41点未満)解析では、MMSEおよびRBANSで有意な改善が認められた5)。 この結果を受け、認知症ではなく(MMSEスコア22点以上)、かつRBANSスコアが低く軽度認知障害の疑いのある50歳以上80歳未満の80人を対象に、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施された。その結果、MCC1274カプセル(200億/日)の16週間の摂取により、主要評価項目であるRBANSスコア合計の摂取後の実測値、そして前後の変動値とも有意な改善がみられ、即時記憶、視空間・構成、遅延記憶を司る認知領域の点数も有意に向上した6)。 今後は、作用機序解析や認知症発症者に対する寄与について研究を続ける見通しだという。アルツハイマー病以外への効果や菌の特異性など、今後の展開にも期待感 新井氏は、今回のビフィズス菌MCC1274の研究報告について、何より研究プロセスが治療薬開発に匹敵するアプローチであると高く評価。「サプリメントとして分類されているものの中で、ここまで徹底して検討し、エビデンスを積み重ねてきているものは他にない」と話し、サプリや特保食品としての展開は十分に準備ができた状態だと期待感を示した。 そのうえで、今後解明が期待される点として、1)抗炎症作用、2)特異性(菌の特異性、疾患特異性)、3)アミロイド仮説を挙げた。1)については、血液(末梢血)だけでなく、脳脊髄液や脳内炎症マーカーで検討できないかと指摘。2)については、今回のMCC1274 vs.乳酸菌や、他のビフィズス菌ではどうなのか、臨床家として大変興味があると話した。また、MCI群はアルツハイマー病だけではない点から、脳画像も含めて診断し、均一性を高めて検討してもらえたらと提案。3)については、経口摂取で腸内に投与されたビフィズス菌が、アミロイドβの沈着にどんな効果が実際にあるのかは大変興味深い、と話した。■参考1)Saji N, et al. Hypertens Res. 2019 Jul;42:1090-1091.2)Saji N, et al. Sci Rep. 2019 Dec 18;9:19227.3)Saji N, et al. Sci Rep. 2020 May 18;10(1):8088.4)Kobayashi Y, et al. Sci Rep. 2017 Oct 18;7:13510.5)Kobayashi Y, et al. Benef Microbes. 2019 May 28;10:511-520.6)Xiao J, et al. J Alzheimers Dis. 2020;77:139-147.

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世界初の経口投与可能なGLP-1受容体作動薬「リベルサス錠3mg/7mg/14mg」【下平博士のDIノート】第64回

世界初の経口投与可能なGLP-1受容体作動薬「リベルサス錠3mg/7mg/14mg」今回は、2型糖尿病治療薬「セマグルチド(商品名:リベルサス錠3mg/7mg/14mg、製造販売元:ノボ ノルディスク ファーマ)」を紹介します。本剤は、世界初の経口投与可能なGLP-1受容体作動薬であり、注射剤に抵抗がある患者さんであってもQOLを損ねずに良好な血糖コントロールを得られることが期待できます。<効能・効果>本剤は、2型糖尿病の適応で、2020年6月29日に承認、同年11月18日に薬価収載されています。<用法・用量>通常、成人には、セマグルチド(遺伝子組換え)として1日1回3mgを開始用量として経口投与し、4週間以上投与した後に1日1回7mgの維持用量に増量します。1日1回7mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合には、1日1回14mgまで増量することができます。なお、本剤の吸収は胃の内容物により低下することから、1日の最初の飲水・食事前にコップ半分の水(約120mL以下)とともに本剤を服用します。服用時および服用後少なくとも30分は、飲食およびほかの薬剤の経口摂取を避ける必要があります。分割や粉砕、かみ砕いて服用することはできません。<安全性>日本人が参加した第III相臨床試験(併合データ)において、安全性評価対象症例3,290例中1,166例(35.4%)に副作用が認められました。主な副作用は、悪心355例(10.8%)、下痢204例(6.2%)、食欲減退147例(4.5%)、便秘143例(4.3%)、嘔吐142例(4.3%)でした(承認時)。なお、重大な副作用として、急性膵炎(0.1%)、低血糖(頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は膵臓に作用して、血糖値が高くなった際にインスリンの分泌を促すことで血糖値を下げます。2.1日の最初の飲食の前に、空腹の状態でコップ約半分の水とともに服用してください。その後の飲食や他剤の服用は、本剤の服用から少なくとも30分経ってからにしてください。3.本剤は吸湿性が強いため、服用直前にシートから取り出してください。また、割ったりかんだりしないでください。4.冷や汗が出る、血の気が引く、手足の震えなど、低血糖が考えられる症状が発現した場合は、速やかに砂糖かブドウ糖が含まれる飲食物を摂取してください。高所作業、自動車の運転などを行う際は十分に注意してください。5.胃の不快感、便秘、下痢などの消化器症状が起こることがあります。症状が長く続く場合や、嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛などが現れた場合は、すぐに病院か薬局に連絡してください。<Shimo's eyes>本剤は初の経口GLP-1受容体作動薬であり、同成分の皮下注製剤(商品名:オゼンピック)は一足早く発売されています。GLP-1受容体作動薬は分子量が大きいため、胃からの吸収が難しく、消化酵素により分解されやすいこともあり、これまで注射剤しかありませんでした。本剤は、サルカプロザートナトリウム(SNAC)と呼ばれる吸収促進剤を添加することで、胃からの吸収が促進され、生物学的利用能が高まったことから経口投与が可能となりました。本剤の吸収は錠剤表面の周辺部に限定されることから、SNACの含有量の差異および物理的に2つの錠剤が胃内に存在すると本剤の吸収に影響を及ぼす可能性があるため、本剤14mgを投与する際に7mg錠を2錠で投与することはできません。また、本剤のシートをミシン目以外で切って保管すると、湿気などの影響を受ける恐れがあります。そのため、調剤の際はとくに注意が必要です。臨床効果については、2型糖尿病患者を対象とした2つの国内試験、国際共同試験、海外臨床試験などで、HbA1cの持続的な改善効果が示されました。また、SGLT2阻害薬のエンパグリフロジン、DPP-4阻害薬、さらにGLP-1受容体作動薬リラグルチド皮下注などとの比較試験においても、HbA1cや体重の低下量は同等かより良好な結果を示しています。本剤を含むGLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬は、いずれもGLP-1受容体を介した血糖降下作用を有しており、併用した場合の有効性および安全性は確認されていないため、両剤が処方されている場合は疑義照会が必要です。本剤の吸収は胃の内容物により低下するため、起床後に空腹の状態で服用し、その後の30分間は何も飲食してはいけないなど、特別な注意が必要です。患者さんの理解度を確かめながら指導とフォローアップをしっかり行いましょう。参考1)PMDA 添付文書 リベルサス錠3mg/リベルサス錠7mg/リベルサス錠14mg

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境界性パーソナリティ障害と自殺企図~10年間のフォローアップ調査

 境界性パーソナリティ障害(BPD)は、自殺企図などの自殺行動の強力なリスクである。自殺行動リスクに影響を及ぼす因子を明らかにすることは、適切な自殺予防介入を考えるうえで重要であろう。米国・ハーバード大学医学大学院のShirley Yen氏らは、BPD患者の自殺企図に関連する因子をプロスペクティブに調査するため、10年にわたるフォローアップによるCollaborative Longitudinal Study of Personality Disorders(CLPS)研究を実施した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2020年11月18日号の報告。 CLPS研究は、4つのパーソナリティ障害(PD)の成人患者と比較対照群としてうつ病および最低限のPDの特徴を有する成人を対象としたマルチサイト自然主義的プロスペクティブ研究である。対象患者は、ニューヨーク州ニューヨーク、マサチューセッツ州ボストン、コネティカット州ニューヘブン、ロードアイランド州プロビデンスで治療のため受診し、入院、部分入院、外来で治療された患者733例(募集期間:1996年9月~1998年4月および2001年9月~2002年8月)。そのうち1回以上のフォローアップ評価を完了した患者は701例であった。フォローアップサンプル701例のデータを用いて、2019年3月~2020年8月に分析を行った。対象者には、半構造化診断面接および各種自己報告を実施し、年1回最大10年間の評価を行った。10年間のプロスペクティブフォローアップ期間の自殺企図に対するベースライン時の人口統計学的因子およびBPD、個々のBPD基準を含む臨床的リスク因子を調査するため、多重ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・701例の背景は以下のとおりであった。 ●女性:447例(64%) ●白人:488例(70%) ●独身:527例(75%) ●仕事がない:433例(62%) ●いくつかの大学教育経験:512例(73%)・人口統計学的因子(性別、雇用、教育)および臨床的因子(児童性的虐待、アルコール使用障害、物質使用障害、心的外傷後ストレス障害)で調整した後、自殺企図と関連する最も強力な因子は、すべての障害の中でBPDであった(オッズ比[OR]:4.18、95%CI:2.68~6.52)。・その他の有意な因子およびBPD基準を共変数とした場合、以下のBPD基準は、自殺企図との独立した有意な関連が認められた。 ●不安定な自己像(OR:2.21、95%CI:1.37~3.56) ●慢性的な空虚感(OR:1.63、95%CI:1.03~2.57) ●見捨てられることを避けるための必死の努力(OR:1.93、95%CI:1.17~3.16) 著者らは「BPD患者の自殺企図と有意な関連が認められた、不安定な自己像、慢性的な空虚感、見捨てられることを避けるための必死の努力は、BPD患者の自殺リスクを評価するうえで、臨床的に見逃されている可能性がある。BPDは比較的寛解率が高いことを踏まえると、これらの基準は独立して評価すべきであり、自殺のリスク因子としてさらに研究が進むことが望まれる」としている。

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第34回 民間企業、新型コロナPCR検査センターに格安で参入の動き

<先週の動き>1.民間企業、新型コロナPCR検査センターに格安で参入の動き2.薬価引き下げ、来春から毎年改定へ3.75歳以上の医療費負担、引き上げの対象を年収200万円以上に4.マイナンバーが主軸のデータヘルス集中改革プラン、医療現場にも影響が?5.コロナ感染拡大で、地域医療構想の工程見直し6.薬価算定ルールやメタボ健診のあり方に見直しを/行政改革推進会議1.民間企業、新型コロナPCR検査センターに格安で参入の動き民間企業グループが東京でPCR検査専門の施設を開設している。これは発熱などの症状がない人を対象とした自費で行われる検査であり、診療や感染拡大防止を目的に行う行政検査とは異なり、公費ではカバーされない。従来から行われていたクリニックや病院での自由診療の検査費用は2〜4万円のところが多く、気軽に受けられなかったニーズを取り込んだのだろう。メディアで報道された施設前には、予約者が行列する姿が見られた。課題としては、直接的な医師の介在がないため、検査結果で陽性となった場合の対応や、精度のばらつきなどが懸念されている。感染拡大の収束が見られない中、帰省や出張前など社会的なニーズなどもあり、この動きは広がる可能性が高い。(参考)格安の民間PCR検査に予約殺到 その「陰性」過信禁物(朝日新聞)民間PCR1980円から 格安で拡大、検査身近に 精度・感染把握に課題も(日経新聞)2.薬価引き下げ、来春から毎年改定へ来年度の薬価引き下げについて、対象品目を全体の半数以上とする案をめぐって、政府は製薬業界と議論の大詰めを迎えている。中央社会保険医療協議会・薬価専門部会では、新型コロナ感染拡大の中で、薬価改定を実施すべきかを検討してきたが、9日の部会では具体的な改定の内容(対象品目の選定基準や、適用ルールなど)や医薬品卸、医療機関・薬局などの経営への影響をめぐって検討が行われた。従来は2年おきの診療報酬と同時に薬価改定が行われていたが、2018年にまとめられた「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2018」の閣議決定により、来春から毎年改定となる。政府は医療費削減のため、できるだけ多くの品目を引き下げるべきという方針で、公定価格から8%以上差のある約8,700品目の引き下げを行い、3,600億円の抑制案を中心に検討を進めている。今年中に最終決定を行い、来年4月から引き下げられる見通し。(参考)薬価引き下げ 政府・与党 来年度の対象品目で詰めの調整へ(NHK)2021年度薬価改定に向けた議論続く、診療・支払両側の意見の溝は依然広く深い―中医協・薬価専門部会(GemMed)中央社会保険医療協議会 薬価専門部会(第172回)議事次第(厚労省)3.75歳以上の医療費負担、引き上げの対象を年収200万円以上に75歳以上の医療費の窓口負担を2割まで引き上げる政府の方針について、与党自民党と公明党の間で議論を続けてきたが、9日、対象者は単身世帯で年収200万円以上とし、2022年度後半に実施することで菅 義偉首相と公明党の山口 那津男代表が合意した。この決定により、所得上位30%の約370万人が該当となった。2020年度の現役世代の負担が6兆8,000億円に上る中、負担の軽減効果は約880億円に留まる。これは、全世代型社会保障検討会議が近くまとめる最終報告に盛り込まれ、来年の通常国会に関連法案提出となる見込み。今後、後期高齢者の増加に伴い、医療費だけでなく介護費も含め、社会保障費の増大をいかに抑制するかは政府にとって大きな課題となる。(参考)75歳以上医療費 2割に引き上げ 年収200万円以上対象で合意(NHK)高齢者医療費 2割負担、年収200万円 22年10月以降 自公合意(毎日新聞)4.マイナンバーが主軸のデータヘルス集中改革プラン、医療現場にも影響が?厚労省は9日に「第6回健康・医療・介護情報利活用検討会、第5回医療等情報利活用WG及び第3回健診等情報利活用WG」を開催し、オンライン資格確認や電子処方箋等を進めるデータヘルス集中改革プランの取りまとめについて議論した。2022年夏までに「全国で医療情報を確認できる仕組みの拡大」「電子処方箋の仕組みの構築」「個人の保健医療情報を活用できる仕組みの拡大」の3つのアクションを行う方針について了承した。さらに内閣官房も11日に高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」を開催した。この中で「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ報告」の素案をまとめた。報告書によれば、今後の取り組みとしてマイナンバー関連システムの整備、マイナンバー利活用の促進、マイナンバーカードの機能強化のほか、カード発行促進と地方自治体における業務システム整備などが挙げられている。政府は共通的な基盤・機能を提供する複数のクラウドサービスの利用環境を整備し、早期に運用を開始し、マイナポータルで閲覧できる情報の拡充を進め、健診・検診情報(特定健診、事業主健診、がん検診、学校健診など)、薬剤情報、医療費通知情報、就労関係情報(職業訓練履歴や保有資格など)などについても実現することを求めている。今後、マイナンバーを活用して医師免許などの資格管理システムの開発・構築を行い、2024年度にデジタル化を目指すことになる見込み。(参考)マイナンバーカードと運転免許証一体化 導入前倒しの報告書案(NHK)第6回健康・医療・介護情報利活用検討会、第5回医療等情報利活用WG及び第3回健診等情報利活用WG 資料(厚労省)マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ(第6回)議事次第(政策会議)5.コロナ感染拡大で、地域医療構想の工程見直し厚労省は「地域医療構想に関するワーキンググループ」を9日に開催し、新型コロナ感染拡大による医療現場の負担を考慮し、2019年に再編や統合の検討が必要と判断された公立・公的病院について、具体的な対応方針を求める期限の先送りを決定した。感染状況には地域差がある中で、地域医療構想の議論の進捗状況にも地域差が生じ得ることを踏まえると、現時点で全国一律に取り組みを求めることは困難であるとし、現時点で工程を提示することは適切ではないため、この冬の感染状況を見ながら、あらためて具体的な工程の設定について検討するとされた。また、具体的対応方針の再検証に関連して、100万人以上の二次医療圏の「類似かつ近接」の分析、民間医療機関の特性に応じた議論活性化に向けた分析(回復期・慢性期の観点など)など、残された課題についても、今後議論を進めていく必要がある。(参考)新型コロナウイルス感染症対応を踏まえた今後の医療提供体制の構築に向けた考え方(案)(厚労省)6.薬価算定ルールやメタボ健診のあり方に見直しを/行政改革推進会議9日、行政改革推進会議が開催され、秋の年次公開検証などの取りまとめが公開された。医療関係については、薬価算定と特定健診・特定保健指導について指摘がなされた。薬価算定について、現在の薬価算定プロセスで製薬会社から提供される原価情報が十分ではないとし、適正な薬価算定が行えるよう見直しを進めていくべきであると示された。情報開示度の低い医薬品については算定要価をさらに厳しくする仕組みを検討するなどの見直しを行い、薬価の適正性を確保するよう努めるべきである。また、特定健康診・健指導については、2021年度の概算要求額が225.8億円に上り、その費用対効果について指摘もあった。これまでの実施状況を踏まえ、医療費適正化および健康増進双方の観点から、改めて事業効果について検証し、次期医療費適正化計画の策定に向け、特定保健診査および特定保健指導の在り方について検討すべきと厚労省に対して見直しを求めた。(参考)行政改革推進会議(第41回)議事次第(政策会議)

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処方箋なしに医薬品を販売した薬局が処分、確認すべきルールは?【赤羽根弁護士の「薬剤師的に気になった法律問題」】第22回

先日、処方箋なしに処方箋医薬品を販売したとして、当該薬局に業務停止処分が下されたという報道が立て続けに2件ありました。報道によれば、いずれも従業員に販売したもののようですが、あらためてこのルールを確かめておく必要があるでしょう。・参考:第6回 処方箋なしで医療用医薬品を販売していい場合とダメな場合零売を行う薬局もあるが、法令は順守しなければならない薬局で扱う医療用医薬品は、処方箋医薬品と処方箋医薬品以外の医療用医薬品に分類することができます。このうち、厚生労働大臣から指定される処方箋医薬品は、原則、処方箋の交付を受けた者以外の者には販売できません。販売が認められる「正当な理由」は、『薬局医薬品の取扱いについて』(薬食発0318第4号 平成26年3月18日 厚生労働省医薬食品局長)で示されていますが、大規模災害時などかなり限定されているので、処方箋なしでの販売は基本的にはできないという認識を持っておきましょう。一方、処方箋医薬品以外の医療用医薬品は、法的なルールに従えば販売が可能です。このような医薬品の販売は「零売」などといわれ、最近では積極的に行う薬局もあるようです。ただし、『薬局医薬品の取扱いについて』では、処方箋医薬品と同様「正当な理由」が認められる場合に販売することが原則とされており、使用者本人への販売のみなどのさまざまなルールを順守する必要があります。また、処方箋医薬品以外の医療用医薬品は薬局医薬品に該当しますので、2020年9月1日に施行された改正薬機法によって、必要に応じた継続的な服薬管理が求められることにも注意を要します。薬機法36条の4 第5項第一項又は前項に定める場合のほか、薬局開設者は、薬局医薬品の適正な使用のため必要がある場合として厚生労働省令で定める場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局において医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師に、その販売し、又は授与した薬局医薬品を購入し、又は譲り受けた者の当該薬局医薬品の使用の状況を継続的かつ的確に把握させるとともに、その薬局医薬品を購入し、又は譲り受けた者に対して必要な情報を提供させ、又は必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない。来年施行される改正薬機法を見据えた薬局のガバナンス強化が求められるさて、今回は業務停止処分がされましたが、2021年8月1日に施行される改正薬機法では、薬局におけるガバナンスの強化が求められます。このガバナンスに関する省令について、先日パブリックコメントの募集がありました(2020年11月6日~12月10日)。まだ省令が決まったわけではありませんが、ここで示された概要では、薬局開設者または販売業者の業務の適正を確保するために必要な体制として以下を整備すべきとされています。薬局開設者又は販売業者の業務の遂行が法令に適合することを確保するために必要な規程の作成を行う体制薬局開設者又は販売業者の薬事に関する業務に責任を有する役員及び従業者に対する教育訓練及び評価を行う体制業務の遂行に係る記録の作成、管理及び保存を行う体制薬事に関する業務に責任を有する役員及び従業者の業務を監督するために必要な情報を収集し、その業務の適正を確保するために必要な措置を講ずる体制上記のほか、薬局開設者又は販売業者の業務の適正を確保するために必要な人員の確保及び配置その他の薬局開設者又は販売業者の業務の適正を確保するための体制※e-GOV「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係省令の整備等に関する省令案について(概要)」より引用。また、複数の許可を受けている薬局開設者には、「当該許可を受けている全ての店舗等(配置販売業者においては全ての区域)において法令遵守体制が確保されていることを確認するために必要な措置(この場合に、薬局開設者又は販売業者を補佐する者を置くときは、その者が有する権限を明らかする等必要な措置を含む。)」とあり、すべての店舗を踏まえた法令順守体制が求められます。さらに、「補佐する者を置くとき」の措置も求めており、薬局開設者や管理薬剤師以外の者に関して言及されている点でも注目です。今回のような処分の報道を受けて、あらためて処方箋医薬品を含めた医薬品の管理について確認しておくことはもちろんですが、改正薬機法施行の準備という点も踏まえて、薬局のガバナンス強化についても併せて検討しておく必要があると考えます。参考資料1)「薬局医薬品の取扱いについて」(薬食発0318第4号 平成26年3月18日 厚生労働省医薬食品局長)2)医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係省令の整備等に関する省令案に関する御意見の募集について(e-COVパブリックコメント)

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「肺癌診療ガイドライン」改訂、会員アンケートから見えた改善点は?/日本肺癌学会

 2020年11月、「肺癌診療ガイドライン」改訂版が公開された。肺癌診療は新規薬剤が次々と承認され、ガイドラインが毎年改訂されるという特異な状況にある。11月に行われた第61回日本肺癌学会学術集会では「肺癌診療ガイドライン(薬物):過去10年の軌跡とこれからの未来」と題し、ガイドライン作成・改訂のこれまでを振り返り、今後について議論するシンポジウムが行われた。 この中で国立がん研究センター東病院呼吸器内科の野崎 要氏は「ガイドラインは誰のものか?:アンケート結果報告」と題し、日本肺癌学会正会員(医師)の薬物療法従事者を対象に行ったアンケート結果を発表した。このアンケートは肺癌診療ガイドラインの使用実態を調査し、以後の改訂に活かすことを目的に、2020年6~10月にWeb上で行われたもの。有効回答数は540だった。 「現在の肺癌診療ガイドラインに満足していますか?」(単一回答)との設問では、「満足している」(28%)、「どちらかといえば満足している」(65%)との回答が計93%となり、概ね満足している現状が確認された。さらに、「肺癌診療ガイドラインを日々の診療において参考にしていますか?」との設問にも「参考にしている」(76%)、「どちらかといえば参考にしている」(21%)で計97%と、多くが参考にしていると答えた。 演題のテーマにも掲げられた「肺癌診療ガイドラインの最も適切な読者対象は?」(単一回答)との設問には「肺癌診療専門医」が58.5%だった一方で、「肺癌診療非専門医」との回答も29.4%あり、「その他」として「肺癌診療に携わるすべての医師・医療者」といった回答も寄せられた。野崎氏は「専門医のニーズを満たしつつ、非専門医も使えるガイドラインを提供する、というこれまでの方針の妥当性を確認できた」とした。 続けて、「現在の肺癌診療ガイドラインの長所」(複数回答可)として挙げられた点としては、「樹形図により選択肢が明確である」(64.1%)、「各項の内容が詳しく記述されている」(55.4%)、「推奨の記載が明確である」(54.5%)等、各改訂時に委員が工夫、改善してきた点が評価された。一方で「短所」としては、「同じCQで推奨される治療法が複数ある」(24.1%)が最多となり、その最たる例として「EGFR遺伝子陽性NSCLC患者の1次治療」として7種ものレジメンが挙げられている状況を紹介した。「委員会内でもこの点は常に議論になっている。現場であまり使われなくなった薬剤は削るべきとの議論もあったが、現在のエビデンスでは時期尚早と判断した」(野崎氏)と説明した。 自由記載欄には「保険適応のない薬剤が推奨されており、しかも解説がない」「発刊時には既に新しい治療が期待されていることが多いので、その注意書きが欲しい」といった治療の進歩が速い肺癌診療ならではの意見も寄せられた。 「推奨度の決定に置いて、重要な要素は下記のどれだと考えますか?」という設問において優先順位順に回答を募ったところ、1番は「全生存期間(OS)」75.4%、2番は「無増悪生存期間(PFS)」が51.1%と過半以上を占めたが、3番以降は「費用対効果」「QOL」「毒性(有害事象)」と回答が分かれたという点も紹介した。 遺伝子パネル検査や新規薬剤の登場で高額化が著しいがん診療において、現在ガイドラインでは触れられていない「費用対効果(コスト)」の視点を盛り込むべきなのか、盛り込むとしたら誰の視点から評価すべきなのか、という点は、シンポジウム全体を通じた大きな論点となっていた。 第61回日本肺癌学会学術集会は21日(月)までオンデマンド配信が行われている(http://conference.haigan.gr.jp/61/ondemand/ 要参加登録)。

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医師が選ぶ「2020年の顔」TOP5!(医療人、政治家部門)【ケアネット医師会員アンケート結果発表】

新型コロナの国内発生と流行、緊急事態宣言、東京五輪延期…本当にいろいろあった2020年―。今年を振り返ってみて思い浮かぶのは誰の顔でしょうか。ケアネットでは医師会員にアンケートを実施。535人の先生方にご協力いただき、選ばれた「今年の顔」は?今回は、医療人部門と政治家部門のTOP5をご紹介します!新型コロナのコメンテーター部門 、文化・芸能人部門 はこちら!医療人部門第1位 尾身 茂氏ダントツの得票数で第1位となったのは、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議およびその後の分科会で、中心的役割を担っている尾身 茂先生。経験に裏付けされたリーダーシップはもちろん、記者会見などでは報道陣からの質問に根気強く答える姿も印象的でした。選んだ理由のコメント中には、「安定」や「信頼」という言葉が多く並びました。 「尾身 茂」氏を選んだ理由(コメント抜粋)指導者として信頼しています。(60代 産婦人科/大阪府)今年はこの人しかいないでしょう。(40代 内科/東京都)医療と政治の板挟みに苦悩しているところが印象に残った。(50代 精神科/神奈川県)第2位 忽那 賢志氏コメンテーター部門での1位に続き、医療人部門でも2位にランクイン。新型コロナの最前線で診療に当たる感染症専門医として、医師からの知名度と信頼度の高さが伺える結果となりました。国内での症例数があまり多くなかった段階から、エビデンスに自身の診療経験からの知見を織り交ぜ、わかりやすく解説されていた姿が印象に残った先生も多かったのではないでしょうか。 「忽那 賢志」氏を選んだ理由(コメント抜粋)臨床で活躍されており、経験、知識も豊富で、説明も論理的で分かりやすい。(40代 内科/埼玉県)最も信頼できるから。(40代 精神科/愛知県)さまざまなメディア、講演会などで見かける機会が多かったから。(20代 臨床研修医/滋賀県)第3位 岩田 健太郎氏ダイアモンドプリンセス号についてのYouTube動画の配信は、大きな反響を呼びました。選んだ理由についてのコメントでは、「世の中にインパクトを与えた」という声のほか、「良くも悪くも発信力があった」といった声も。現場の医療者が発信する情報として、その後も発信を継続的にチェックしていたという声もあがっています。 「岩田 健太郎」氏を選んだ理由(コメント抜粋)新型コロナウイルス感染症に関する行動および発言が際立っていた。(40代 精神科/北海道)現場の実態をわかっているから。(30代 糖尿病・代謝・内分泌内科/兵庫県)いい意味でも悪い意味でも印象に残ったから。(50代 神経内科/徳島県)第4位 西浦 博氏 「西浦 博」氏を選んだ理由(コメント抜粋)純粋に学問的見地からがんばっておられた。(40代 皮膚科/東京都)統計を介したモデルだが世間で議論するたたき台となった。(30代 膠原病・リウマチ科/北海道)コロナ対策で奮闘された。(20代 臨床研修医/東京都)第5位 山中 伸弥氏 「山中 伸弥」氏を選んだ理由(コメント抜粋)独自の視点で情報発信されているので。(50代 消化器内科/山口県)ツベルクリンの話に共感したから。(50代 産婦人科/愛媛県)政治家部門第1位 安倍 晋三氏憲政史上最長となる7年8ヵ月の長期政権を築き、今年9月に体調不良を理由に辞任した安倍 晋三前内閣総理大臣が第1位に。 アベノマスクや給付金支給などの施策を含め、先進諸国の中では結果的に感染者数を抑えたことを評価する声、体調を慮る声が多くみられました。持病とされる潰瘍性大腸炎に光を当てることにも貢献されたのではないでしょうか。 「安倍 晋三」氏を選んだ理由(コメント抜粋)日本で結果的に感染者を増やさなかったから。(30代 泌尿器科/福岡県 他多数)体調の悪い中リーダーとして可能なかぎりの仕事をされたと思います。(30代 耳鼻咽喉科/福岡県)在任時のさまざまな対策は今も続行されている。(50代 消化器外科/鹿児島県)第2位 吉村 洋文氏新型コロナウイルス感染拡大で各首長のリーダーシップが求められるなか、1975年生まれ45歳の大阪府知事はスピード感のある対応や発信力の高さで注目を集めました。ポピドンヨード入りのうがい薬を推奨した件では批判を浴びましたが、「何とか状況を改善しようと先頭に立って行動している」と評価する声が多く上がりました。 「吉村 洋文」氏を選んだ理由(コメント抜粋)誤った情報もあるが、責任ある立場でより良い方向を目指している姿勢が伝わるから。(30代 小児科/大阪府)第一波の時の対応の早さは今までの日本の政治家ではあまり見られなかったと思う。(40代 泌尿器科/兵庫県)フットワーク良く決断力がある。(40代 糖尿病・代謝・内分泌内科/京都府)第3位 菅 義偉氏第2次安倍政権が発足した2012年以降、長きにわたり官房長官を務めてきた菅氏が、安倍政権を引き継ぐ形で第99代内閣総理大臣に就任しました。突然の交代、そして新型コロナ感染症対応が求められる難しいタイミングでの就任となりましたが、官房長官としての第一波への対応経験に期待するコメントが多く寄せられました。 「菅 義偉」氏を選んだ理由(コメント抜粋)官房長官として初期対応から重責を担っていたから(20代 臨床研修医/滋賀県)安倍政権時代から比較的バランスのとれた政策、実行力が感じられた(40代 血液内科/宮城県)期待も込めて(40代 病理診断科/島根県)第4位 オードリー・タン(唐 鳳)氏 「オードリー・タン」氏を選んだ理由(コメント抜粋)封じ込めに成功した台湾のキーマンである。(40代 神経内科/茨城県)日本のITがいかに遅れているのかを気づかせてくれた。(30代 臨床研修医/福岡県)若くて頭も切れて素晴らしい。(40代 皮膚科/群馬県)第5位 蔡 英文氏 「蔡 英文」氏を選んだ理由(コメント抜粋)民主主義的な手法でコロナ収束に導いた。(30代 内科/広島県)初期のコロナ対策は見事。(30代 心療内科/東京都 他多数)★アンケート概要★アンケート名 :『2020年振り返り企画!さまざまな分野の「今年の人」を挙げてください』実施日    :2020年11月12日~19日調査方法   :インターネット対象     :CareNet.com会員医師有効回答数  :535件

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日本人のCOVID-19による血栓症発症率は?

 合同COVID-19関連血栓症アンケート調査チームによる『COVID-19関連血栓症に関するアンケート調査』の結果が12月9日に発表された。それによると、日本人での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連血栓症の発症率は、全体では1.85%であることが明らかになった。 この調査は、COVID-19の病態の重症化に血栓症が深く関わっていることが欧米の研究で指摘されていることを受け、日本人COVID-19関連血栓症の病態及び診療実態を明らかにすることを目的として行われたもの。2020年8月31日までに入院したCOVID-19症例を対象とし、全国の病院399施設のうち109施設からCOVID-19患者6,082例に関する回答が寄せられた。なお、合同調査チームは厚生労働省難治性疾患政策研究事業「血液凝固異常症等に関する研究」班、日本血栓止血学会、日本動脈硬化学会の3組織合同によるもの。 主な調査結果は以下のとおり。・Dダイマーは症例全体の72%で測定され、入院中に基準値の3~8倍の上昇を認めたのはそのうちの9.5%、8倍以上の上昇を認めたのは7.7%と、多くの症例で血栓傾向がみられた。・血栓症は1.85%(血栓症に関する回答のあった5,687例のうち105例)に発症し、発症部位は(重複回答を可として)、症候性脳梗塞22例(血栓症症例の21.0%)、心筋梗塞7例(同6.7%)、深部静脈血栓症41例(同39.0%)、肺血栓塞栓症29例(同27.6%)、その他の血栓症21例(同20.0%)であった。・血栓症は、軽/中等症の症例での発症が31例(軽/中等症症例の0.59%)、人工呼吸器/ECMO使用中の発症が50例(人工呼吸/ECMO症例まで要した重症例の13.2%)であった。・症状悪化時に血栓症を発症したのは64例だったが、回復期にも26例が血栓症を発症していた。・抗凝固療法は、76病院で6,082例のうち880例(14.5%)に実施された。治療法の主な内訳は、未分画ヘパリン591例(880例中の67.2%)、低分子量ヘパリン111例(同13.0%)、ナファモスタット234例(同26.6%)、トロンボモジュリンアルファ42例(同4.8%)、前述の薬剤併用138例(同15.7%)、直接経口抗凝固薬[DOAC]91例(同10.3%)、その他42例(同4.8%)だった。・予防的抗凝固療法の実施について回答した49施設によると、予防的投与を行った患者背景として、Dダイマー高値、NPPV(非侵襲的陽圧換気)/人工呼吸患者、酸素投与患者などが挙げられた。

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「眉毛がない」悲しみも、薬剤師の言葉ひとつで変わる? 【堀美智子のハートに効くラヂオ】第2回

動画解説「患者さんと一緒になって落ち込むことが寄り添うことではない」と語る堀先生。抗がん剤の副作用で眉が抜けてしまい、「眉毛が描けない」と嘆く患者さんを見て、先生が考えた“明るく生きるための術”とは?

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インフルとの鑑別を追記、COVID-19診療の手引き第4版/厚生労働省

 12月4日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第4版」を公開した。 同手引きは診療の手引き検討委員会が中心となって作成され、第1版は3月17日に、第2版は5月18日に、第3版は9月4日に公表され、随時最新の内容に更新している。 今回の改訂では、日本産科婦人科学会の協力を得て、臨床像や院内感染対策の更新を図ったほか、検査法、薬物療法などに関する新しい知見や行政対応に関する情報を反映させている。 同委員会では「これまでと同様に医療現場で参考にされ、患者の診療ケアの一助となることを期待する」と述べている。主な改訂点【臨床像】・「臨床像」の画像所見の紹介点数が重症度別に追加された・「重症化のリスク因子」で妊婦が削除された・「合併症」で「二次性細菌・真菌感染症」が追記された・「症状の遷延(いわゆる後遺症)」で日本の知見が追記された・「妊婦例の特徴」が1項目追記された【症例定義・診断・届出】・「抗原検査」の「各種検査の特徴」など図表が刷新された・「インフルエンザとの鑑別」が1項目追記された【薬物療法】・「薬物療法」中の「その他の薬剤例」でアドレノメデュリン、イベルメクチン、バリシチニブが追記された・同じく「薬物療法」中で「回復者血漿など」が1項目追記された【院内感染対策】・「死後のケア」中で「個別の場面における主な関係者」の表が追記された

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新たな後発品促進策はバイオシミラーに焦点 個別薬剤の指標も示唆【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第58回

薬局において、後発医薬品の情報収集や採用業務はもはやルーチンワークになったのではないでしょうか。私が薬剤師になった2000年代前半の後発医薬品は、メーカーからの情報提供は不十分で、包装などもイマイチでしたし、患者さんの認知度も低くて拒否されることも多くありました。現在では調剤する薬剤の半分以上が後発医薬品になり、患者さんも抵抗はないように思います。それは、国の後押しと現場の薬剤師の地道な努力の成果だと私は思っています。この国の後押しに関しては、2017年に閣議決定されたいわゆる「骨太の方針2017」で、2017年当時は60%台だった後発医薬品の使用割合を2020年9月までに80%とするという目標を定めて使用を促進しました。また、最終期限である2020年9月に向けた最後のテコ入れとして、同年4月の調剤報酬改定では、後発医薬品の使用割合が低い場合の後発医薬品調剤体制加算は引き下げられ、高い場合は引き上げられました。「できる薬局」にアメを集中的に与えることで、後発医薬品の使用をさらに促すという意図が読み取れました。最新の2020年9月時点での使用割合が公表されるのはもう少し先になりそうですが、4月あたりで70%台後半に達していると聞きます。コロナ禍のイレギュラーな医療現場の状況では、もし目標未達であったとしても細かく追及されることはないように思いますが、今後もさらに後発医薬品の使用を促進するための動きが出てきました。田村憲久厚生労働相は11月27日の経済財政諮問会議で、バイオシミラー(BS)の使用促進策を含めた後発品の「新目標」を今年度中に設定することを表明した。医療現場や患者が抱く有効性・安全性に対する不安や、経済的なインセンティブが働かない高額療養費制度などが普及のハードルとなっているBSに関しては、諮問会議の民間議員も重点課題として位置付け目標設定するよう提言。大型バイオ医薬品の特許切れによってBS成分数は現時点では計14成分に増加しており、厚生労働省は「個別薬剤」まで踏み込んだ対策や数量以外の指標追加も検討する構えだ。(2020年11月30日付 RISFAX)「え! また新たな目標が設定されるの!?」と思ったのは私だけではないはずです。この記事によると、2019年9月の薬価調査に基づき推計した後発医薬品への切り替えによる医療費適正効果額は1兆6,166億円となっていますが、バイオシミラーの金額割合は約20%にとどまっています。先発バイオ医薬品は非常に高価な薬剤が多いですが、バイオシミラーだと薬価が約70%になりますので、切り替えのインパクトは大きいと着目したのでしょう。バイオシミラーは先発バイオ医薬品と適応に違いがあるなど、実際に切り替える際には課題も少なくありませんが、まだ品目が少ない現状だからこそ個別薬剤を狙い撃ちにした対策や指標の検討をにおわせています。バイオシミラーと後発医薬品の違いがわからなかったり、有用性に懸念があったりする患者さんは多いため、地道に後発医薬品を紹介してきたときのような努力がまた必要となるかもしれません。早くも年内に目標が設定されそうですので、今後の動向を見守りたいと思います。

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認知症診断後1年以内の自殺リスク

 重度の認知症であれば、自殺を実行するための機能が損なわれることで自殺を防ぐことができるが、初期および軽度の認知症の場合、認知機能が比較的保たれているため、疾患の進行による将来への不安を醸成し、自殺の実行を助長する可能性がある。韓国・延世大学校のJae Woo Choi氏らは、認知症診断を受けてから1年以内の高齢者の自殺リスクについて調査を行った。Journal of Psychiatry & Neuroscience誌オンライン版2020年10月29日号の報告。アルツハイマー型認知症は自殺リスクが高かった 国民健康保険サービスのシニアコホートデータを用いて、2004~12年に認知症と診断された高齢者3万6,541例を抽出した。認知症の定義は、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコア26以下および臨床的認知症評価尺度(CDR)スコア1以上またはGlobal Deterioration Scale(GDS)スコア3以上とし、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、その他/特定不能の認知症を含めた。性別、年齢、併存疾患、インデックス年で1:1の傾向マッチングを行い認知症でない高齢者を対照群として抽出し、2013年までフォローアップを行った。認知症診断後1年以内の自殺による死亡の調整済みハザード比(aHR)を推定するため、時間依存的Cox比例ハザードモデルを用いた。 認知症診断を受けてから1年以内の高齢者の自殺リスクの調査の主な結果は以下のとおり。・認知症診断後、最初の1年間で46例の自殺が確認された。・認知症高齢者は、対照群と比較し、自殺リスクが高かった(aHR:2.57、95%信頼区間[CI]:1.49~4.44)。・アルツハイマー型認知症(aHR:2.50、95%CI:1.41~4.44)またはその他/特定不能の認知症(aHR:4.32、95%CI:2.04~9.15)の高齢者は、対照群と比較し、自殺リスクが高かった。・他の精神疾患を合併していない認知症患者(aHR:1.96、95%CI:1.02~3.77)および合併している認知症患者(aHR:3.22、95%CI:1.78~5.83)は、対照群と比較し、自殺リスクが高かった。・統合失調症(aHR:8.73、95%CI:2.57~29.71)、気分障害(aHR:2.84、95%CI:1.23~6.53)、不安症または身体表現性障害(aHR:3.53、95%CI:1.73~7.21)と認知症を合併している患者は、認知症を合併していない各疾患の患者と比較し、自殺リスクが高かった。 著者らは「本研究は、自殺率の高い韓国の高齢者を対象とした試験であり、異なる背景を有する集団に本結果をそのまま当てはめるには、注意が必要である」としながらも「認知症診断後1年以内での自殺リスクの上昇が認められた」としている。

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第24回 風邪薬1箱飲んだら、さぁ大変!【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)若年者の嘔気・嘔吐では必ず鑑別に!2)拮抗薬はきちんと頭に入れておこう!【症例】26歳女性。ご主人が帰宅すると、自宅で繰り返し嘔吐している患者さんを発見し、辛そうにしているため救急要請。救急隊からの情報では、リビングの机の上には市販薬の空箱が数箱あり、嘔吐物には薬塊も含まれていた様子。●受診時のバイタルサイン意識10/JCS血圧119/71mmHg脈拍98回/分(整)呼吸25回/分SpO299%(RA)体温36.2℃瞳孔3/3 +/+既往歴特記既往なし内服薬定期内服薬なし最終月経2週間前風邪薬の成分とはみなさん風邪薬を服用したことがあるでしょうか? 医療者はあまり使用することはないかもしれませんが、一般の方は風邪らしいなと思ったら薬局などで購入し、内服することは多いでしょう。救急外来や診療所に発熱や咳嗽を主訴に来院する患者さんの中には、市販薬が効かないから来院したという方が一定数いるものです。市販薬を指定されている量を内服している場合には、それが理由でとんでもない副作用がでることはまれですが、当然服用量が過剰になればいろいろと問題が生じます。風邪薬の成分は、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの解熱鎮痛薬、クロルフェ二ラミンマレイン酸塩などの抗ヒスタミン薬、ジヒドロコデインリン酸塩などの鎮咳薬、そして無水カフェインが含まれている商品が多いです。今回は救急外来で遭遇する頻度が比較的高い「アセトアミノフェン中毒」について重要な点をまとめておきます。その他、カフェイン、ブロン、ブロムなども市販薬の内服で起こり得る中毒のため、是非一度勉強しておくことをお勧めします。アセトアミノフェンの投与量以前、アセトアミノフェンは1日最大量1,500mg(1回最大量500mg)と少量の使用しか認められていませんでしたが、2011年1月から1日最大量4,000mg(1回最大量1,000mg)と使用可能な量が増えました。また、静注薬も発売され、みなさんも外来で痛みを訴える患者さんに対して使用していることと思います。高齢者に対しても、肝機能障害やアルコール中毒患者では2,000〜3,000mg/日を超えないことが推奨されていますが、そうでなければ1回の投与量は10〜15mg/kg程度(1,000mgを超えない)が妥当と考えられています。アセトアミノフェン中毒とはアセトアミノフェンは、急性薬物中毒の原因物質として頻度が高く、救急外来でもしばしば遭遇します。最も注意すべきは肝障害であり、アセトアミノフェン中毒で急性肝不全を呈した患者の3週間死亡率は27%と非常に高率です1)。そのため、十分量使用しながらも中毒にならないように管理する必要があります。アセトアミノフェンの大部分は肝臓で抱合され尿中に排泄されますが、一部は肝臓で分解され、N-アセチル-p-ベンゾキノンイミン(NAPQI)を生成し、これをグルタチオンが抱合することで尿中に排泄されます。NAPQIは毒性が高いのですが、アセトアミノフェンが適正の量であれば、グルタチオンによって解毒されます。しかし、過剰量の場合には、グルタチオンが枯渇し、正常の30%程度まで減少するとNAPQIが蓄積、肝細胞壊死へと進行してしまいます2)。そのため、アセトアミノフェンを過剰に摂取した場合には、グルタチオンを増やすことが必要になるわけです。NACとは中毒診療において重要なこととして、拮抗薬の存在が挙げられます。拮抗薬が存在する薬剤は限られるため頭に入れておきましょう(参考:第7回 意識障害その6 薬物中毒の具体的な対応は?)。アセトアミノフェンに対する拮抗薬はN-アセチルシステイン(NAC)です。NACは、グルタチオンの前駆体であり、中毒症例、特に肝細胞壊死へと至ってしまうような症例では必須となります。タイミングを逃さず、NACの投与が開始できれば肝不全は回避できます。ちなみにこのNAC、投与経路は経口です。静注ではありません。臭いをかいだことがある人は忘れない臭いですよね。腐った卵のあの臭い…。NACはいつ投与するかそれではいつNACを投与するべきでしょうか。アセトアミノフェンの血中濃度が迅速に判明する場合には、その数値を持って治療の介入の有無を判断することがある程度することが可能です。ちなみに、アセトアミノフェン摂取後の経過時間を考慮した血中濃度で判断する必要があり、内服直後の数値のみをもって判断してはいけません。一般的には4時間値が100μg/mLを超えているようであればNAC開始が望ましいとされます(以前は150μg/mLでしたが、肝障害発症の予防を強固に、そして医療費の削減のため基準値が下げられました)。“Rumack-Matthewのノモグラム”は有名ですね2)。そのため、摂取時間を意識した測定、経過観察が大切です。測定が困難な場合には、内服した量から推定するしかありません。アセトアミノフェンを150mg/kg以上(50kgであれば7,500mg)服薬していた場合にはNAC療法が推奨されます。この7,500mgという量をみてどのように思いますか? 前述した通り、アセトアミノフェンの1日の最大投与量として許容されている量は4,000mgです。中毒量が目の前に存在することがよくわかると思います。痛みに悩む患者さんは多く、処方されている薬を飲み過ぎてしまうと、簡単に中毒量に達してしまう可能性があるため注意が必要なのです。1箱飲んだら危険製品にもよりますが、アセトアミノフェンが含有される風邪薬や頭痛薬など鎮痛薬と称される市販薬は、1錠に含まれるアセトアミノフェンは80~200mg程度と少量の物が多いのですが、1箱80錠のものも存在します。また、インターネット上で購入しようと思えば500mg錠100錠など、中毒量を購入することは簡単にできてしまうのが現状です。初療時のポイントは、本症例のように嘔気・嘔吐を認める患者など過量内服患者を拾い上げること、そしてNACの適応となり得る量を内服していないかを血中濃度や推定内服量から見積もり判断することです。さいごにアセトアミノフェンは使用し易く、処方する機会は多いと思います。しかし、使用方法を間違ってしまうと肝不全へ陥ってしまう可能性のある恐い薬でもあります。安全な薬というイメージが強いかもしれませんが、いかなる薬もリスクであるため、処方する際には正しい内服方法を丁寧に患者さんに説明しましょう。また、過量内服患者ではNACの適応を理解し、肝障害を防ぎましょう。1)Ostapowicz G,et al. Ann Intern Med. 2002;137:947-954.2)Heard KJ. N Engl J Med. 2008;359:285-292.

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