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医師の認知症リスク~コホート研究

 より良い医療知識を多く有している医師は、認知症リスクが低いのではないだろうか。この疑問を明らかにするため、台湾・Chi-Mei Medical CenterのLi-Jung Ma氏らが検討を行った。Aging Clinical and Experimental Research誌オンライン版2019年8月19日号の報告。 医師2万9,388人、一般集団5万人、医師以外の医療従事者3万446人を含む、全国規模の人口ベース調査を実施した。2006~12年の病歴を追跡し、3群間および医師のサブグループ間で認知症有病率の比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・年齢、性別、頭部外傷、甲状腺機能低下、高血圧、糖尿病、脳卒中、血管疾患、心房細動、高コレステロール血症、うつ病、アルコール依存症で調整した後、医師は、一般集団と比較し、認知症有病率が低かった(調整オッズ比[AOR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.47~0.67)。・医師以外の医療従事者は、一般集団と比較し、認知症有病率が低かった(AOR:0.46、95%CI:0.36~0.60)。・医師と医師以外の医療従事者における認知症有病率に有意な差は認められなかった(AOR:0.98、95%CI:0.71~1.36)。・認知症有病率の高かった医師のサブグループは、高齢、小児科専門医、地方病院およびクリニック勤務であった。 著者らは「医師の認知症有病率は、一般集団よりも低かった。医師の中でも、特定のサブグループにおいて認知症有病率が高いことから、さらなる研究が必要とされる」としている。

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第12回 痛みの治療法【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第12回 痛みの治療法これまで11回にわたって、痛みの基本的概念から身体各部の痛みについて述べてまいりました。この<痛み>シリーズの最終回として、今回は痛みの治療法を概説いたします。痛み治療は末梢→中枢が原則、治療法は多岐に基本的な痛みの治療方針としては、神経の末梢部位から攻めていきます。たとえば神経ブロックにおきましても、罹患部分が末梢であれば痛みのトリガーポイントからブロックしていきます。効果が見られなければ、順次中枢部へと進んでいきます。末梢神経ブロックの次には、硬膜外ブロックが適応となります。その次には、脊髄や脳組織もターゲットとなります。電気神経刺激療法におきましても、体表の末梢神経から始めまして、脊髄電気刺激、脳電気刺激などへ移行し、鎮痛効果が見られなければ、神経ブロック同様に刺激部位を上位中枢へと移動していきます。大脳皮質を刺激する電気痙攣療法(ECT)は、うつ病に効果が認められておりますが、難治性慢性疼痛の治療にも応用されています。ECTによって嫌な記憶を忘れることも、疼痛の緩和をもたらすからです。低出力レーザー治療を含む光線療法も広く応用されてきております。レーザー治療は、神経ブロックの効果には多少及ばないものの、高齢患者を想定すると副作用が少ないために安全で有用性も高いと考えられております。患者参加型の疼痛治療法も試みられております。痛みは患者本人にしかわからないために、患者が痛みを感じた時に痛み治療薬を患者自身で投与する方法です。Patient Controlled Analgesia (PCA:自己調節鎮痛法)と呼ばれておりますが、ディスポーザブルセットからコンピュータ内蔵機器まで様々な装置が使用されております。主として鎮痛薬の静脈投与ですが筋肉投与も可能です。経口投与による頓服投与スタイルもPCAの一種ですが、あらかじめ基本となる鎮痛薬をベースとしまして、痛い時に使用する頓服用の鎮痛薬を、痛みが強くなるようであれば患者自身の判断で服用してもらいます。インターベンショナルな痛みの治療法も様々考案されております。そのうち、仙骨硬膜外腔癒着剥離術は腰痛治療にも応用されております。ビデオガイドカテーテルを仙骨裂孔から挿入し、ディスプレイ画面にて、癒着部を確認しながら、剥離を行っていきます。それと同時に生理食塩水で炎症部を洗浄し、発痛物質を洗い出すことによって、鎮痛を得る方法です。近年、分子生物学的手法の進展によって、痛みに関連する神経の受容体が次々と発見され、複雑な痛みの機序が徐々に解明されてきております。また、個々の患者さんによって、その疼痛機序は異なっておりますので、責任受容体や痛みの機序を容易に見つけ出すためのテストが必要になってきました。このためにドラッグチャレンジテスト(DCT)を活用することによって有効的な薬物を見出して、より効果的な薬物療法を施行していくことが大切です。使用される薬物としては、ケタミン、ATP(アデノシン3燐酸)、チオペンタール、ミダゾラム、モルヒネ、リドカイン、フェントラミンなどです。ケタミンはN-メチル‐D-アスパラギン酸(NMDA)受容体の拮抗薬であり、NMDA受容体の活性化が原因の痛みに効果的です。ATPは脊髄A1受容体を介する神経調節機構に働きます。チオペンタールは、抗痙攣作用や精神的原因などの中枢神経抑制作用によって、痛みを軽減する効果を持っています。ミダゾラムも、チオペンタールと同様の作用を持っておりますが、筋緊張の改善作用もありますので、疼痛も緩和されます。モルヒネは、脊髄オピオイド受容体に作用するとともに、下行性抑制系も賦活して、強い鎮痛効果を発揮します。リドカインは、痛み神経の異常興奮を抑制する作用を有しておりますので、神経が原因となる神経障害性疼痛に効果がみられます。フェントラミンは、痛みの機構に交感神経系の関与があるときに効果があります。このようにして、それぞれの患者の痛みの機構を解明することによって、関連する薬物の投与や、脊髄・脳電気刺激療法などの適応が考慮され、治療法が重点的に応用されるために患者の負担が少なくなる上、より良い効果が早く得られるため、有効率もそれだけ高くなります。難治性疼痛の患者さんには、認知行動療法、マインドフルネスなどの心理療法も活用されております。運動療法を含む理学療法にも効果が見られております。最近、痛み患者の遺伝子の解析も試みられております。痛みが残存する人、しない人などの遺伝子の違いが解明されれば、痛み治療対象者や治療対象薬の選定にも有用となります。人生100年時代への対策の一つとして、2,000万人と言われる慢性疼痛の患者さんが、痛みを軽減することによって、患者さん自身で完結できる人生を歩んでいただければ、この上ない喜びです。<CareNet.com編集部よりお知らせ>本連載は、今回でいったん完結となります。2020年1月より、花岡一雄先生執筆による新連載を開始予定です。痛みの治療法をより具体的に掘り下げ、密度の濃い内容でお届けいたします。ぜひ、ご期待ください!

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ボルチオキセチン治療中のうつ病患者における睡眠と抑うつ症状との関係

 うつ病患者では、睡眠障害が頻繁に認められる。治療反応と睡眠の質や変化との関連性に対するボルチオキセチンの影響について、中国・西南大学のBing Cao氏らが調査を行った。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2019年9月18日号の報告。ボルチオキセチンを8週間投与した睡眠の変化を評価 本研究は、うつ病患者におけるTHINC統合ツールによる認知機能変化に対する感受性を評価した臨床試験の事後分析として実施された。対象は、DSM-Vにおける中等度または重度のうつ病と診断された患者92例(18~65歳)および健康対照群54例。すべての患者に対し、オープンラベルでボルチオキセチン(10~20mg/日、フレキシブルドーズ)を8週間投与した。主要アウトカムは、0、2、8週目の睡眠の変化とした。睡眠の評価には、ピッツバーグ睡眠質問票、エプワース眠気尺度、不眠症重症度指数を用いた。副次的評価として、睡眠の変化と抑うつ症状の重症度との関連も調査した。ボルチオキセチンによる抑うつ症状改善は睡眠の改善と有意な関連 ボルチオキセチンによる治療反応と睡眠の変化の主な結果は以下のとおり。・うつ病患者は、対照群と比較し、0、2、8週目の各睡眠スコアが有意に不良であった(p<0.05)。・うつ病患者は、0週目から8週目までの間に各睡眠スコアの有意な改善が認められた(p<0.05)。・各睡眠スコアの改善と抑うつ症状の改善に、有意な関連が認められた。 著者らは「ボルチオキセチンで治療されたうつ病患者の抑うつ症状改善は、睡眠の改善と有意な関連が認められた。また、睡眠の改善は抗うつ薬治療反応の予測因子であると考えられ、全体的な抑うつ症状の重症度改善と直線的な相関が認められた」としている。

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急性期抗うつ薬治療中に悪化しやすい患者像

 適切な抗うつ薬治療を行っているにもかかわらず、症状が悪化するうつ病患者の割合を調査した研究は、これまでほとんどなかった。名古屋市立大学の明智 龍男氏らは、うつ病患者を含む多施設無作為化比較試験での抗うつ薬治療中における、うつ病悪化の割合とその予測因子について検討を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2019年9月9日号の報告。 うつ病悪化の定義には、抗うつ薬治療中の急性期うつ病患者を評価するために用いた0~9週目までの総PHQ-9スコアを使用した。うつ病の悪化に対する潜在的な予測因子として、ベースライン時の人口統計学的および臨床的データ、0~3週目までのPHQ-9スコアの変化、3週時点での副作用を評価した。 主な結果は以下のとおり。・1,647例中99例(6.0%)で、うつ病の悪化が認められた。信頼性の高い変化指標基準を適用した場合、この割合は小さくなった。・ロジスティック回帰分析により、以下の因子がうつ病の悪化と有意に関連していることが明らかとなった。 ●初回うつ病エピソードの発症年齢が若い ●現在、高齢である ●0~3週目までのPHQ-9スコアの大幅な増加・本研究の限界として、プライマリエンドポイントまでの期間が十分に長くなかった点、プラセボ群が含まれておらず、潜在的に関連する予測因子を包括的に調査できていない可能性がある点などが挙げられる。 著者らは「少数の患者で、急性期の抗うつ薬治療中に、うつ症状を悪化させることがある。初回エピソードの発症年齢、現在の年齢、抗うつ薬治療での早期ネガティブレスポンスは、その後の症状悪化の有用な予測因子である可能性が示唆された」としている。

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初回エピソード統合失調症に対するコンピューター化認知機能改善療法~ランダム化比較試験

 統合失調症患者は、社会的機能低下に関連する認知機能障害を呈する。コンピューター化された認知機能改善療法は、慢性期統合失調症の認知機能と機能障害の両方に対する改善効果が知られているが、これらのアプローチを統合失調症の初期段階に用いた場合の効果については、あまり知られていない。スペイン・Universidad Miguel HernandezのLorena Garcia-Fernandez氏らは、初回エピソード統合失調症患者を対象にコンピューター化認知機能改善療法の効果について検証を行った。Psychiatry Research誌オンライン版2019年9月7日号の報告。 特定のプログラムを受けている初回エピソード統合失調症患者86例を対象に、REHACOMのコンピューター化認知機能改善療法群またはアクティブ対照群(2回/週、24の1時間セッション)にランダムに割り付けた。臨床的特徴、認知機能および機能障害について、ベースライン時、治療介入後、介入完了6ヵ月後に評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・認知機能改善療法群36例、対照群50例が割り付けられた。・全体として神経認知機能および機能障害の有意な改善が認められ、治療介入後およびフォローアップ後で、両群間に差は認められなかった。・社会認知を除くすべての認知機能領域において、研究期間中にSD範囲0.5~1程度の改善が認められた。 著者らは「初回エピソード統合失調症外来患者に対するREHACOMのコンピューター化認知機能改善療法は、対照群と比較し、認知機能と機能障害の改善に効果的であることは証明されていない」としている。

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初回エピソードうつ病患者における発症年齢と皮質の厚さとの関連

 以前の研究で、早期発症成人うつ病(EOD)患者と遅発性成人うつ病(LOD)患者では、脳灰白質の体積変化に違いがあることが示唆されていた。中国・昆明医科大学のZonglin Shen氏らは、皮質の厚さ(CT)がうつ病の発症年齢の影響を受けるかについて検討を行った。Neuroreport誌オンライン版2019年9月9日号の報告。 EOD患者54例、LOD患者58例、若者対照群57例、高齢対照群58例の高解像度MRI画像より検討を行った。うつ病の重症度は、ハミルトンうつ病評価尺度17項目(HDRS17)を用いて評価した。患者のCTと臨床スコアとの関連について分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・診断における主要な影響は、左吻側前帯状皮質(rACC)、右下側頭回、右外側部前頭眼窩野(lOFC)、両側脳梁周において有意に認められた。・rACCおよび両側尾側前帯状皮質(cACC)において、CTに対する発症年齢の影響が顕著に認められた。・診断による発症年齢の相互作用の影響は、両側rACCおよび右lOFCで認められた。・EOD患者では、若者対照群と比較し、両側rACCにおけるCTの萎縮が観察された。・LOD患者では、高齢対照群と比較し、lOFCにおけるCTの肥大が観察された。・EOD患者では、LOD患者と比較し、右cACCおよび後帯状皮質(PCC)において皮質の萎縮が認められた。・右cACCまたはPCCと症状重症度または罹病期間との間に有意な関連は認められなかった。 著者らは「うつ病患者は、発症年齢が異なると、CT変化に明確な違いが生じており、EODとLODの病理学的メカニズムが異なる可能性が示唆された」としている。

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統合失調症患者に対する長時間作用型抗精神病薬治療と機能的および臨床的寛解との関連

 機能的寛解は、統合失調症の主要な治療目標となってきたが、良好なアウトカムの割合は、15~51%の範囲で大きなばらつきがある。また、臨床的寛解が機能的寛解の前提条件であるかについてもよくわかっていない。フランス・パリ大学のPhilip Gorwood氏らは、急性期エピソード後に長時間作用型持効性注射剤(LAI)による治療を開始した統合失調症患者の機能的および臨床的寛解との関連性を評価するため、プロスペクティブ観察研究を実施した。Psychiatry Research誌オンライン版2019年9月7日号の報告。 対象は、急性期エピソード後にLAI抗精神病薬による治療を開始したフランスの統合失調症患者。機能的および臨床的寛解を、FROGSおよびAndreasen基準を用いて評価し、臨床的寛解の役割および機能的寛解の予測因子について評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者(DSM-IV診断基準)303例を対象に、12ヵ月間フォローアップを行った。・12ヵ月間で、機能的寛解が認められた患者は45.1%、臨床的寛解が認められた患者は55.1%であった。・臨床的寛解により、機能的寛解の促進が認められた(OR:14.74)。とくに、5年未満の統合失調症患者では顕著であった(OR:23.73)。・その他の予測因子として、家族環境、教育レベル、雇用状況、ベースライン時の機能レベルおよび病識と関連が認められた。 著者らは「LAI治療を行った統合失調症患者の約半数において、1年間のフォローアップ後に機能的寛解が認められた。臨床症状の軽減および臨床的寛解の達成は、主に機能的寛解と関連が認められた。これらの結果から、機能的寛解を達成し、リカバリーの機会を最大化するためには、継続的かつ適切な対症療法が重要であると考えられる」としている。

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ブロナンセリンのドパミンD3受容体への作用

 ブロナンセリンは、リスペリドンやオランザピンなどの他の抗精神病薬と異なり、セロトニン5-HT2A受容体よりもドパミンD2/D3受容体に対する高い親和性を有する薬剤である。名城大学の竹内 佐織氏らは、動物モデルで観察された社会的欠損に対するブロナンセリンの効果へのドパミンD3受容体の関与を調査し、その作用の分子メカニズムの解明を試みた。Neurochemistry International誌2019年9月号の報告。ブロナンセリンのドパミンD3受容体アンタゴニスト作用が新規治療戦略として有用 マウスに、非競合的N-メチル-d-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬であるフェンシクリジン(PCP、10mg/kg、皮下注射)を1日1回14日連続投与した。その後、これらのマウスにおける社交性(社会的相互作用テスト)およびGluN1サブユニット(NMDA受容体の必須サブユニット)の発現を評価した。 ブロナンセリンの効果へのドパミンD3受容体の関与を調査した主な結果は以下のとおり。・ブロナンセリンでは、PCP誘発性社会的欠損の有意な改善が認められたが、オランザピンとハロペリドールでは認められなかった。・ブロナンセリンのこの作用は、7-OH-DPAT(ドパミンD3受容体アゴニスト)およびSCH23390(ドパミンD1受容体アンタゴニスト)によって拮抗された。・しかし、ブロナンセリンの改善効果は、DOI(セロトニン5HT2A受容体アゴニスト)によって阻害されなかった。・PCP誘発性社会的欠損は、U99194(ドパミンD3受容体アンタゴニスト)およびSKF38393(ドパミンD1受容体アゴニスト)によっても改善が認められ、7-OH-DPATまたはSCH23390によって拮抗された。・ブロナンセリンは、PCP投与マウスの前頭前野のプロテインキナーゼA(PKA)によるSer897でのGluN1リン酸化レベルの低下を有意に抑制した。 著者らは「ブロナンセリンのPCP誘発性社会的欠損の改善効果は、GluN1サブユニットのSer897リン酸化によるNMDA受容体活性(前頭前野のドパミンD3受容体アンタゴニスト作用を介したドパミンD1受容体PKAシグナル伝達)が関与していることが示唆された。そしてこの結果は、ブロナンセリンのドパミンD3受容体アンタゴニスト作用が新規治療戦略として有用であり、統合失調症患者でみられる社会的欠損にドパミンD3受容体が新規治療標的分子となりうることを示唆している」としている。

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統合失調症の認知機能に対する身体能力の影響

 統合失調症患者では、神経認知機能と身体能力が低下することがわかっているが、これら2つの因子の関連性を示すエビデンスは十分ではない。韓国・翰林大学校のJiheon Kim氏らは、統合失調症患者のさまざまな身体的パフォーマンスと認知機能との関連について、他の障害に関連する臨床症状を考慮したうえで、調査を行った。European Psychiatry誌2019年9月号の報告。 対象は、統合失調症患者60例。心肺持久力と機能的可動性の評価には、それぞれ踏み台昇降、supine-to-standing(STS)テストを用いた。実行機能とワーキングメモリの評価には、それぞれストループ課題、スタンバーグワーキングメモリ(SWM)課題を用いた。臨床症状の評価には、簡易精神症状評価尺度(BPRS)、うつ病自己評価尺度(BDI)、特性不安尺度(STAI)を用いた。神経認知に関連する予測因子を特定するために、関連する共変量で調整し、多変量解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・重回帰分析では、踏み台昇降は、ストループ課題(β=0.434、p=0.001)およびSWM課題(β=0.331、p=0.026)の時間と強い関連が認められ、STSテスト時間は、ストループ課題(β=-0.418、p=0.001)およびSWM課題(β=-0.383、p=0.007)の精度と強い関連が認められた。・他の臨床的相関を制御した後、総コレステロール値は、ストループ課題の精度と関連が認められた(β=-0.307、p=0.018)。・臨床症状とストループ課題またはSWM課題との関連は認められなかった。 著者らは「統合失調症患者の身体能力と神経認知機能との関連が示唆された。これらの因子は、修正可能であることを考慮すると、統合失調症患者に対する運動介入は、認知機能改善に役立ち、それにより機能や予後の改善につながる可能性がある」としている。

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新しい抗うつ薬の出現(解説:岡村毅氏)-1117

 まったく新しい機序の抗うつ薬に関する臨床からの報告である。まずは抗うつ薬についておさらいしてみよう。1999年にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が使えるようになり、うつ病の薬物療法に革命的な変化が起きた。それまでの古典的抗うつ薬には抗コリン作用(便秘など)や抗ヒスタミン作用(眠気など)などが伴ったが、SSRIには消化器症状(吐き気など)以外は比較的少なかったからである。 また、このころ(製薬業界にとっては黒歴史かもしれないが)うつはこころの風邪というキャンペーンがなされたりして、精神科・心療内科の敷居がずいぶん低くなった。うつはこころの風邪という言説は、今ではすっかり疾病喧伝(薬を売るために変な宣伝をしたという批判)の文脈で引用されるが、個人的には物事には両面があると思う。今では信じられないかもしれないが、「うつは弱い人がなるものだ」「精神科に行くなんて人生の破滅だ」と信じて、誰にも助けを求められずに重篤化する人もいたので、このキャンペーンによって救われた人もいただろう。 もちろん操作診断が使われるようになり、専門家が経験と知識に基づいて診断する「うつ病」から、いくつかの基準を満たしたときに診断される「うつ病エピソード」として捉えられるようになったことも大きいだろう。 ともあれ、20世紀から21世紀になるころ、うつ病は特殊で恐ろしい精神疾患ではなくなり、僕らの生活世界に現れた。人々は、かつてはそう簡単には「わたし、うつっぽいかも」とは言わなかったが、いまやずいぶん簡単に言うようになった。あれから20年間、いち臨床医としての意見であるが、SSRIが出たときのような革命的変化をもたらした薬剤は出ていない。 これは実は、統合失調症についてもいえる。1996年に同じく副作用が少ない非定型抗精神病薬が使えるようになって(もちろん、ないわけではない)、革命的な変化が起きた。具体的には新たな長期入院者はほとんど見なくなった。その後いくつかいい薬は出たが、破壊的イノベーションは起きていない。そして人々は「トウシツ」などと気軽に言うようになった。 おそらく50年前には、うつ病統合失調症を経験した友達がいる人は少なかったであろう。今では、たぶん普通のことだ。 いずれにせよ、うつ病の薬物治療は20年程度、革命的な進歩はない。よく言えば漸進している状態である。むしろ、うつ病として治療すべき状態と、そうではない状態(たとえば生活習慣の乱れをまずは治すべき状態)などの、薬物治療以前の仕分けがしっかりなされるようになってきている。また人的資源の少ないわが国でも認知行動療法もようやく行われつつある。修正型電気けいれん療法(m-ECT)もいまや広く行われている。薬物療法以外が拡充しているのだから、健全なことだと思う。 さて、うつ病の薬物治療で現在のところ期待されている薬剤は「ケタミン」と「GABA受容体作用薬」であろう。本論文は、後者についての明らかな臨床効果を報告するものである。 これが、革命を起こしたSSRI以来の20年間に出現した「その他大勢」の新薬の末席に連なることになるのか、ブレークスルーになるのかは、もうしばらく見てみないとわからないだろう。 なお、筆者は抗うつ薬が常に必要だとは思わない。うつ病の治療には薬物治療、精神療法、環境調整の3つの柱があり、とくに軽症の場合は薬物を使わなくてもよい場合も多い。一方で、医学はしょせん人間の営みであり、苦しむ人を支援するためには、3つの柱を総動員しなければならない。また、こころを込めて治療をしても治らないときもある。とはいえ、この3つの柱はがんの「標準治療」みたいなものであり、奇妙な代替療法に患者さんが迷い込まないことを祈りたい。

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ブレクスピプラゾールのリバウンド現象抑制作用

 統合失調症患者に対する抗精神病薬の長期治療は、ドパミンD2受容体感作により引き起こされると考えられる過感受性精神病や遅発性ジスキネジアを誘発する可能性がある。大塚製薬のNaoki Amada氏らは、ラットにおいて亜慢性期治療後のD2受容体感受性に対するブレクスピプラゾールの効果を検討した。また、他の非定型抗精神病薬を投与された亜慢性期ラットでのD2受容体に対する増強作用を、ブレクスピプラゾールが抑制できるかについて評価を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2019年9月5日号の報告。ブレクスピプラゾールは反復投与後のD2受容体感作のリスクが低い 最大D2受容体濃度(Bmax)およびアポモルヒネ(D2受容体アゴニスト)誘導性常同行動について、21日間のvehicle、ハロペリドール(1mg/kg)、ブレクスピプラゾール(Bmax:4または30mg/kg、常同行動:6または30mg/kg)のいずれかを投与したラットで測定した。次に、ミニポンプを介して21日間リスペリドン(1.5mg/kg/日)皮下投与を行ったラットにおいて、アポモルヒネ誘発運動亢進および(±)-2.5-ジメトキシ-4-ヨードアンフェタミン塩酸塩(DOI:5-HT2A受容体アゴニスト)誘発性頭部けいれん(head twitches)の増加に対する、ブレクスピプラゾール(3mg/kg)、アリピプラゾール(10mg/kg)、オランザピン(3mg/kg)経口投与の効果を評価した。 ブレクスピプラゾールの効果検討の主な結果は以下のとおり。・ハロペリドールおよびブレクスピプラゾール(30mg/kg[抗アポモルヒネ誘発性常同行動のED50の約10倍])は、Bmaxおよびアポモルヒネ誘発性常同行動の有意な増加が認められたが、ブレクスピプラゾール(4または6mg/kg)では認められなかった。・ブレクスピプラゾール(3mg/kg)とオランザピン(3mg/kg)では、リスペリドンで治療された亜慢性期ラットにおいて、アポモルヒネ誘発運動亢進およびDOI誘発性頭部けいれん(head twitches)の増加に対する有意な抑制効果が認められたが、アリピプラゾール(10mg/kg)では、アポモルヒネ誘発運動亢進のみの有意な抑制効果が認められた。 著者らは「ブレクスピプラゾールは、反復投与後のD2受容体感作のリスクが低く、リスペリドン反復投与後のD2および5-HT2A受容体に関連するリバウンド現象を抑制する」としている。

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統合失調症に対するブロナンセリン経皮吸収型テープ製剤の有効性と安全性

 ブロナンセリンは、統合失調症に適応を有する第2世代抗精神病薬である。藤田医科大学の岩田 仲生氏らは、急性増悪統合失調症患者におけるブロナンセリン経皮吸収型テープ製剤の有効性、安全性、薬物動態について検討を行った。Schizophrenia Research誌オンライン版2019年8月27日号の報告。 本試験は二重盲検多施設共同第III相臨床試験であり、1週間の観察期間中にプラセボの2つのテープ製剤を使用し、その後6週間の二重盲検期間を設け、患者を1日1回ブロナンセリン40mgテープ(40mg群)、80mgテープ(80mg群)またはプラセボテープ(プラセボ群)を貼付する群にランダムに割り付けた。主要エンドポイントは、PANSSスコアのベースラインからの変化量とした。安全性評価には、治療により発生した有害事象(TEAE)を含めた。 主な結果は以下のとおり。・2014年12月~2018年10月に患者を募集し、40mg群(196例)、80mg群(194例)、プラセボ群(190例)にランダムに割り付けた。そのうち77.2%が試験を完了した。・ブロナンセリンでは、プラセボと比較し、6週間でPANSS合計スコアの有意な改善が認められた(対プラセボ最小二乗平均[LSM]差:40mg群-5.6[95%CI:-9.6~-1.6、調整p=0.007]、80mg群-10.4[95%CI:-14.4~-6.4、調整p<0.001])。・ブロナンセリンの忍容性は良好であり、最も一般的なTEAEは、貼付部の紅斑、そう痒、アカシジア、振戦、不眠であった。 著者らは「ブロナンセリン経皮吸収型テープ製剤は、急性増悪統合失調症の症状を改善し、忍容性も許容可能であることが示された」としている。

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(膿疱性)乾癬〔(pustular) psoriasis〕

1 疾患概要■ 概念・定義表皮角化細胞の増殖あるいは角質の剥離障害によって、角質肥厚を主な病態とする疾患群を角化症という。なかでも炎症所見の顕著な角化症、つまり潮紅(赤くなること)と角化の両者を併せ持つ角化症を炎症性角化症と称するが、乾癬はその代表的疾患である1)。乾癬は、遺伝的要因と環境要因を背景として免疫系が活性化され、その活性化された免疫系によって刺激された表皮角化細胞が、創傷治癒過程に起こるのと同様な過増殖(regenerative hyperplasia)を示すことによって引き起こされる慢性炎症性疾患である2)。■ 分類1)尋常性(局面型)乾癬最も一般的な病型で、単に「乾癬」といえば通常この尋常性(局面型)乾癬を意味する(本稿でも同様)。わが国では尋常性乾癬と呼称するのが一般的であるが、欧米では局面型乾癬と呼称されることが多い。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の75.9%を占める3)。2)関節症性乾癬尋常性(局面型)乾癬患者に乾癬特有の関節炎(乾癬性関節炎)が合併した場合、わが国では関節症性乾癬と呼称する。しかし、この病名はわかりにくいとの指摘があり、今後は皮疹としての病名と関節炎としての病名を別個に使い分けていく方向になると考えられるが、保険病名としては現在でも「関節症性乾癬」が使用されている。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の14.6%を占める3)。3)滴状乾癬溶連菌性上気道炎などをきっかけとして、急性の経過で全身に1cm程度までの角化性紅斑が播種状に生じる。このため、急性滴状乾癬と呼ぶこともある。小児や若年者に多く、数ヵ月程度で軽快する一過性の経過であることが多い。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の3.7%を占める3)。4)乾癬性紅皮症全身の皮膚(体表面積の90%以上)にわたり潮紅と鱗屑がみられる状態を紅皮症と呼称するが、乾癬の皮疹が全身に拡大し紅皮症を呈した状態である。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の1.7%を占める3)。5)膿疱性乾癬わが国では単に「膿疱性乾癬」といえば汎発性膿疱性乾癬(膿疱性乾癬[汎発型])を意味する(本稿でも同様)。希少疾患であり、厚生労働省が定める指定難病に含まれる。急激な発熱とともに全身の皮膚が潮紅し、無菌性膿疱が多発する重症型である。尋常性(局面型)乾癬患者が発症することもあれば、本病型のみの発症のこともある。妊娠時に発症する尋常性(局面型)乾癬を伴わない本症を、とくに疱疹状膿痂疹と呼ぶ。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の2.2%を占める3)。■ 疫学世界的にみると乾癬の罹患率は人口の約3%で、世界全体で約1億2,500万人の患者がいると推計されている4)。人種別ではアジア・アフリカ系統よりも、ヨーロッパ系統に多い疾患であることが知られている4)。わが国での罹患率は、必ずしも明確ではないが、0.1%程度とされている5)。その一方で、健康保険のデータベースを用いた研究では0.34%と推計されている。よって、日本人ではヨーロッパ系統の10分の1程度の頻度であり、それゆえ、国内での一般的な疾患認知度が低くなっている。世界的にみると男女差はほとんどないとされるが、日本乾癬学会の調査ではわが国での男女比は2:16)、健康保険のデータベースを用いた研究では1.44:15)と報告されており、男性に多い傾向がある。わが国における平均発症年齢は38.5歳であり、男女別では男性39.5歳、女性36.4歳と報告されている6)。発症年齢のピークは男性が50歳代で、女性では20歳代と50歳代にピークがみられる6)。家族歴はわが国では5%程度みられる6,7)。乾癬は、心血管疾患、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、肥満、メタボリックシンドローム、非アルコール性脂肪肝、うつ病の合併が多いことが知られており、乾癬とこれらの併存疾患がお互いに影響を及ぼし合っていると考えられている。膿疱性乾癬に関しては、現在2,000人強の指定難病の登録患者が存在し、毎年約80人が新しく登録されている。尋常性(局面型)乾癬とは異なり男女差はなく、発症年齢のピークは男性では30~39歳と50~69歳の2つ、女性も25~34歳と50~64歳の2つのピークがある8)。■ 病因乾癬は基本的にはT細胞依存性の免疫疾患である。とくに、細胞外寄生菌や真菌に対する防御に重要な役割を果たすとされるTh17系反応の過剰な活性化が起こり、IL-17をはじめとするさまざまなサイトカインにより表皮角化細胞が活性化されて、特徴的な臨床像を形成すると考えられている。臓器特異的自己免疫疾患との考え方が根強くあるが、明確な証明はされておらず、遺伝的要因と環境要因の両者が関与して発症すると考えられている。遺伝的要因としてはHLA-C*06:02(HLA-Cw6)と尋常性(局面型)乾癬発症リスク上昇との関連が有名であるが、日本人では保有者が非常に少ないとされる。また、特定の薬剤(βブロッカー、リチウム、抗マラリア薬など)が、乾癬の誘発あるいは悪化因子となることが知られている。膿疱性乾癬に関しては長らく原因不明の疾患であったが、近年特定の遺伝子変異と本疾患発症の関係が注目されている。とくに尋常性(局面型)乾癬を伴わない膿疱性乾癬の多くはIL-36受容体拮抗因子をコードするIL36RN遺伝子の機能喪失変異によるIL-36の過剰な作用が原因であることがわかってきた9)。また、尋常性(局面型)乾癬を伴う膿疱性乾癬の一部では、ケラチノサイト特異的NF-κB促進因子であるCaspase recruitment domain family、member 14(CARD14)をコードするCARD14遺伝子の機能獲得変異が発症に関わっていることがわかってきた9)。その他、AP1S3、SERPINA3、MPOなどの遺伝子変異と膿疱性乾癬発症とのかかわりが報告されている。■ 症状乾癬では銀白色の厚い鱗屑を付着する境界明瞭な類円形の紅斑局面が四肢(とくに伸側)・体幹・頭部を中心に出現する(図1)。皮疹のない部分に物理的刺激を加えることで新たに皮疹が誘発されることをKoebner現象といい、乾癬でしばしばみられる。肘頭部、膝蓋部などが皮疹の好発部位であるのは、このためと考えられている。また、3分の1程度の頻度で爪病変を生じる。図1 尋常性乾癬の臨床像画像を拡大する乾癬性関節炎を合併すると、末梢関節炎(関節リウマチと異なりDIP関節が好発部位)、指趾炎(1つあるいは複数の指趾全体の腫脹)、体軸関節炎、付着部炎(アキレス腱付着部、足底筋膜部、膝蓋腱部、上腕骨外側上顆部)、腱滑膜炎などが起こる。放置すると不可逆的な関節破壊が生じる可能性がある。膿疱性乾癬では、急激な発熱とともに全身の皮膚が潮紅し、無菌性膿疱が多発する8)(図2)。膿疱が融合して環状・連環状配列をとり、時に膿海を形成する。爪病変、頬粘膜病変や地図状舌などの口腔内病変がみられる。しばしば全身の浮腫、関節痛を伴い、時に結膜炎、虹彩炎、ぶどう膜炎などの眼症状、まれに呼吸不全、循環不全や腎不全を併発することがある10)。図2 膿疱性乾癬の臨床像画像を拡大する■ 予後乾癬自体は、通常生命予後には影響を及ぼさないと考えられている。しかし、海外の研究では重症乾癬患者は寿命が約6年短いとの報告がある11)。これは、乾癬という皮膚疾患そのものではなく、前述の心血管疾患などの併存症が原因と考えられている。乾癬性関節炎を合併すると、前述のとおり不可逆的な関節変形を来すことがあり、患者QOLを大きく損なう。膿疱性乾癬は、前述のとおり呼吸不全、循環不全や腎不全を併発することがあり、生命の危険を伴うことのある病型である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)多くの場合、先に述べた臨床症状から診断可能である。症状が典型的でなかったり、下記の鑑別診断と迷う際は、生検による病理組織学的な検索や血液検査などが必要となる。乾癬の臨床的鑑別診断としては、脂漏性皮膚炎、貨幣状湿疹、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、亜鉛欠乏性皮膚炎、ジベルばら色粃糠疹、扁平苔癬、毛孔性紅色粃糠疹、類乾癬、菌状息肉症(皮膚T細胞リンパ腫)、ボーエン病、乳房外パジェット病、亜急性皮膚エリテマトーデス、皮膚サルコイド、白癬、梅毒、尋常性狼瘡、皮膚疣状結核が挙げられる。膿疱性乾癬に関しては、わが国では診断基準が定められており、それに従って診断を行う8)。病理組織学的にKogoj海綿状膿疱を特徴とする好中球性角層下膿疱を証明することが診断基準の1つにあり、診断上は生検が必須検査になる。また、とくに急性期に検査上、白血球増多、CRP上昇、低蛋白血症、低カルシウム血症などがしばしばみられるため、適宜血液検査や画像検査を行う。膿疱性乾癬の鑑別診断としては、掌蹠膿疱症、角層下膿疱症、膿疱型薬疹(acute generalized exanthematous pustulosisを含む)などがある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)外用療法副腎皮質ステロイド、活性型ビタミンD3製剤が主に使用される。両者を混合した配合剤も発売されている。2)光線療法(内服、外用、Bath)PUVA療法、311~312nmナローバンドUVB療法、ターゲット型308nmエキシマライトなどが使用される。3)内服療法エトレチナート(ビタミンA類似物質)、シクロスポリン、アプレミラスト(PDE4阻害薬)、メトトレキサート、ウパダシチニブ(JAK1阻害薬)、デュークラバシチニブ(TYK2阻害薬)が乾癬に対し保険適用を有する。ただし、ウパダシチニブは関節症性乾癬のみに承認されている。4)生物学的製剤抗TNF-α抗体(インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ ペゴル)、抗IL-12/23p40抗体(ウステキヌマブ)、抗IL-17A抗体(セクキヌマブ、イキセキズマブ)、抗IL-17A/F抗体(ビメキズマブ)、抗IL-17受容体A抗体(ブロダルマブ)、抗IL-23p19抗体(グセルクマブ、リサンキズマブ、チルドラキズマブ)、抗IL-36受容体抗体(スペソリマブ)が乾癬領域で保険適用を有する。中でも、スペソリマブは「膿疱性乾癬における急性症状の改善」のみを効能・効果としている膿疱性乾癬に特化した薬剤である。また、多数の生物学的製剤が承認されているが、小児適応(6歳以上)を有するのはセクキヌマブのみである。5)顆粒球単球吸着除去療法膿疱性乾癬および関節症性乾癬に対して保険適用を有する。4 今後の展望抗IL-17A/F抗体であるビメキズマブは、現時点では尋常性乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬に承認されているが、関節症性乾癬に対する治験が進行中(2022年11月現在)である。将来的には関節症性乾癬にもビメキズマブが使用できるようになる可能性がある。膿疱性乾癬に特化した薬剤であるスペソリマブ(抗IL-36受容体抗体)は静注製剤であり、現時点では「膿疱性乾癬における急性症状の改善」のみを効能・効果としている。しかし、フレア(急性増悪)の予防を目的とした皮下注製剤の開発が行われており、その治験が進行中(2022年11月現在)である。将来的には急性期および維持期の治療をスペソリマブで一貫して行えるようになる可能性がある。乾癬は慢性炎症性疾患であり、近年は生物学的製剤を中心に非常に効果の高い薬剤が多数出てきたものの、治癒は難しいと考えられてきた。しかし、最近では生物学的製剤使用後にtreatment freeの状態で長期寛解が得られる例もあることが注目されており、単に皮疹を改善するだけでなく、疾患の長期寛解あるいは治癒について議論されるようになっている。将来的にはそれらが可能になることが期待される。5 主たる診療科皮膚科、膠原病・リウマチ内科、整形外科(基本的にはすべての病型を皮膚科で診療するが、関節症状がある場合は膠原病・リウマチ内科や整形外科との連携が必要になることがある)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 膿疱性乾癬(汎発型)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本皮膚科学会作成「膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版」(現在、日本皮膚科学会が新しい乾癬性関節炎の診療ガイドラインを作成中であり、近い将来に公表されるものと思われる。一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報日本乾癬患者連合会(疾患啓発活動、勉強会、交流会をはじめとしてさまざまな活動を行っている。都道府県単位の患者会も多数存在し、本会のwebサイトから検索できる。また、都道府県単位の患者会では、専門医師を招いての勉強会や相談会を実施しているところもある)1)藤田英樹. 日大医誌. 2017;76:31-35.2)Krueger JG, et al. Ann Rheum Dis. 2005;64:ii30-36.3)藤田英樹. 乾癬患者統計.第32回日本乾癬学会学術大会. 2017;東京.4)Gupta R, et al. Curr Dermatol Rep. 2014;3:61-78.5)Kubota K, et al. BMJ Open. 2015;5:e006450.6)Takahashi H, et al. J Dermatol. 2011;38:1125-1129.7)Kawada A, et al. J Dermatol Sci. 2003;31:59-64.8)照井正ほか. 日皮会誌. 2015;125:2211-2257.9)杉浦一充. Pharma Medica. 2015;33:19-22.10)難病情報センターwebサイト.11)Abuabara K, et al. Br J Dermatol. 2010;163:586-592.公開履歴初回2019年9月24日更新2022年12月22日

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経皮吸収型抗精神病薬の理論的根拠と現状

 イタリア・ボローニャ大学のAngela Abruzzo氏らは、現在承認されている抗精神病薬の概要、主な利点を調査し、経皮吸収製剤の開発における理論的根拠について報告を行った。CNS Drugs誌オンライン版2019年9月6日号の報告。 過去10年間に公表された論文、特許、臨床試験を検索し、経皮吸収型抗精神病薬に関する研究の進展について調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・経皮吸収型抗精神病薬に関する利用可能なデータは、剤型の特徴、薬物吸収促進効果に焦点を当て報告、議論がなされていた。・現在、多数の抗精神病薬が承認されているにもかかわらず、経皮吸収システムによる開発が行われている薬剤は、アリピプラゾール、アセナピン、ブロナンセリン、クロルプロマジン、ハロペリドール、オランザピン、プロクロルペラジン、クエチアピン、リスペリドンなど一部の薬剤のみであった。・いくつかの研究や特許では、抗精神病薬の臨床的有用性を拡大する目的で、クリーム、フィルム、ゲル、ナノシステム、パッチ、液剤、スプレーなどの経皮吸収製剤が評価されていることが示唆された。・とくに、ナノ粒子/小胞の使用や浸透促進剤、イオン導入によるマイクロニードルなどさまざまな戦略の使用は、抗精神病薬の経皮吸収を改善させる可能性がある。・しかし、経皮吸収型抗精神病薬に関する臨床試験はほとんど行われておらず、アセナピンやブロナンセリンにおいて、薬物動態、有効性、忍容性に関して、興味深い臨床結果が示されている。・2019年6月18日、日本において統合失調症治療薬としてブロナンセリン経皮吸収型テープ製剤が承認され、2019年9月10日に発売された。・ブロナンセリン経皮吸収型テープ製剤は、1日1回(通常用量:40mg、最大用量:80mg)胸部、腹部、背部のいずれかに貼付することにより24時間安定した血中濃度を維持できるため、良好な有効性および安全性が期待できる薬剤である。・また、テープ製剤は、貼付の有無や投与量を視認できるメリットに加え、食事の影響を受けにくいことから、食生活が不規則な患者や経口投与が困難な患者にも使用可能である。

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うつ病と糖尿病合併に関する調査結果

 うつ病と糖尿病合併との関連を明らかにするため、オーストリア・ウィーン医科大学のGernot Fugger氏ら欧州リサーチコンソーシアムの治療抵抗性うつ病研究グループ(GSRD)は、多施設共同研究を実施した。Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry誌2019年8月30日号の報告。 DSM-IVでうつ病と診断された患者1,410例の2012~16年の人口統計および臨床情報を、横断的に検索した。糖尿病合併の有無により患者特性の比較には、記述統計、共分散分析(ANCOVA)、二項ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・うつ病患者の糖尿病合併ポイント有病率は、6%であった。・糖尿病合併うつ病患者は、高齢、重症、入院、慢性身体疾患の合併の割合が有意に高かった。・現時点での自殺リスクが有意に高く、メランコリックな特徴が顕著であった。・糖尿病合併うつ病患者は、さまざまな増強療法を組み合わせるよりも、1剤以上の抗うつ薬併用療法が行われていた。 著者らは「うつ病患者の糖尿病合併率は、これまでの研究よりも低かったが、研究の地理的要因における糖尿病有病率を考慮すると、一般人口と比較し、うつ病患者はリスクが高いことが示唆された。現時点では、自殺リスクが著しく増加しており、すべての糖尿病合併患者を徹底的に評価する必要がある。うつ病の重症度や治療反応は、糖尿病合併の影響を受けていなかった」としている。

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多飲症と抗精神病薬との関連

 山梨県立北病院の桐野 創氏らは、多飲症と抗精神病薬との関連を明らかにするためシステマティック・レビューを行った。Progress in Neuro-psychopharmacology & Biological Psychiatry誌オンライン版2019年8月28日号の報告。 抗精神病薬により誘発または改善された多飲症に関する臨床研究および症例報告を含み、MEDLINE、Embase、PsycINFOよりシステマティックに検索した。 主な結果は以下のとおり。・二重盲検ランダム化比較試験(RCT)1件、single-arm試験4件、横断研究1件、ケースシリーズ3件、ケースレポート52件を含む61件が抽出された。・二重盲検RCTでは、多飲症の改善において、オランザピンとハロペリドールとの間に有意な差は認められなかった。・single-arm試験では、2件においてクロザピン治療中に多飲症の改善が認められたが、他の2件ではリスペリドンによる改善が認められなかった。・横断研究では、低ナトリウム血症が第1世代抗精神病薬(FGA)で26.1%、第2世代抗精神病薬(SGA)で4.9%認められた。・ケースシリーズでは、2件においてクロザピンの多飲症改善効果が認められた。他の1件において、FGAで治療された多飲症患者は、統合失調症(70.4%)および精神遅滞(25.9%)であることが示唆された。・ケースレポートでは、90例中67例(75.3%)が統合失調症と診断された。・多飲症発症前に抗精神病薬治療を開始した83例の使用薬剤は、FGAが75例(90.3%)、リスペリドンが11例(13.3%)であった。とくに、ハロペリドール治療が24例(28.9%)と多かった。・抗精神病薬治療後に多飲症が改善した40例では、SGAが36例であり、主にクロザピン(14例、35.0%)で治療されていた。 著者らは「多飲症と抗精神病薬との関連は、高品質なエビデンスが不足しているため因果関係は不明なままであるが、ドパミンD2受容体に対する親和性の高い抗精神病薬は、多飲症リスク増加と関連している可能性がある。また、クロザピンは多飲症治療に有効である可能性がある」としている。

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GABAA受容体を標的とした新規抗うつ薬の展望/NEJM

 GABAA受容体に対する選択的ポジティブアロステリックモジュレーターのSAGE-217を14日間連日経口投与した結果、プラセボと比較して15日目のうつ症状が改善したが、有害事象の頻度はSAGE-217群で多かった。米国・Sage TherapeuticsのHandan Gunduz-Bruce氏らが、大うつ病性障害(うつ病)患者を対象とした第II相二重盲検比較試験の結果を報告した。うつ病の発症にGABAの神経伝達障害が関与していることが示唆されているが、大うつ病治療におけるSAGE-217の有効性および安全性は不明であった。NEJM誌2019年9月5日号掲載の報告。大うつ病患者89例を対象にSAGE-217の有効性と安全性を検討 研究グループは2017年4月~10月に米国内8施設において、大うつ病患者89例を登録し、SAGE-217群(1日1回30mg)およびプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)17項目の総スコア(範囲:0~52、スコアが高いほどうつ病が重度)の15日目におけるベースラインからの変化量であった。 副次評価項目は、その他のうつ病と不安に関する評価スコア(MADRS、Bech-6、HAM-A)のベースラインからの変化量、HAM-Dスコアがベースラインから50%超低下した患者の割合、HAM-Dスコアが7以下の患者の割合などで、2~8日目、および15・21・28・35・42日目に評価した。14日間のSAGE-217投与でうつ症状が改善、重篤な有害事象なし ベースラインの平均HAM-Dスコアは、SAGE-217群(45例)25.2、プラセボ群(44例)25.7であった。HAM-Dスコアの15日目におけるベースラインからの変化量の最小二乗平均(±SE)は、SAGE-217群が-17.4±1.3、プラセボ群が-10.3±1.3であった(変化量の最小二乗平均の群間差:-7.0、95%信頼区間[CI]:-10.2~-3.9、p<0.001)。 副次評価項目の群間差は、概して主要評価項目と同様の傾向にあった。 重篤な有害事象は確認されなかった。SAGE-217群において発現率が高かった有害事象は、頭痛、めまい、悪心、傾眠であった。 著者は研究の限界として、症例数の少なさ、副次評価項目の多変量の補正不足、対象患者の人種が限られていたことなどを挙げたうえで、「今後、うつ病に対するSAGE-217の効果の持続性や安全性を明らかにし、SAGE-217と既存の治療薬を比較検証するさらなる研究が必要である」とまとめている。

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統合失調症患者の洞察力がうつ、QOL、自殺に及ぼす影響

 統合失調症患者の半数以上が、生涯に自殺を試みる。より良い洞察力は、機能により良い影響をもたらすが、自殺企図の増加とも関連している。洞察力と自殺企図との関連を明確にするため、フランス・ベルサイユ大学のMickael Ehrminger氏らは、構造方程式モデリングを用いて検討を行った。Journal of Clinical Medicine誌2019年8月10日号の報告。 統合失調症スペクトラム障害患者の洞察力、QOL、うつ、自殺企図を、ベースラインおよび12ヵ月後の時点で測定を行った。これらの関連は、クロルプロマジン換算量、陽性症状、陰性症状、一般精神病理によりコントロールした潜在差スコアモデルを用いて調査した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者738例中、370例が試験を完了した。・洞察力のベースラインレベルは、自殺企図の変化を予測した。しかし、自殺企図のベースラインレベルは、洞察力の変化を予測しなかった。より良い洞察力は、自殺企図の根底にあり、その悪化を予測することが示唆された。・より良い洞察力→QOL不良→うつの増加→自殺企図の増加という時系列が示唆された。 著者らは「より良い洞察力は、統合失調症患者のQOL、うつ、自殺企図の悪化を予測した。本知見は、自殺企図に対する洞察力の長期的な影響を理解するうえで重要である。うつや自殺予防のモニタリングなしで、洞察力をターゲットとした介入を提案すべきではないと考えられる」としている。

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臨床的うつ病の補完代替療法~メタ解析

 うつ病に対する補完代替療法(CAM)の治療戦略や推奨事項は、臨床ガイドラインによって大きく異なる。ドイツ・デュースブルク・エッセン大学のHeidemarie Haller氏らは、臨床診断を受けたうつ病患者へのCAMに関するレベル1のエビデンスをシステマティックにレビューした。BMJ Open誌2019年8月5日号の報告。 2018年6月までのランダム化比較試験(RCT)のメタ解析を、PubMed、PsycInfo、Centralより検索した。うつ病の重症度、治療反応、寛解、再発、有害事象をアウトカムに含めた。エビデンスの質は、RCTおよびメタ解析などの方法論的質を考慮し、GRADEに基づいて評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・2002~18年に26件のメタ解析が実施されていた。・軽度~中等度のうつ病患者では、プラセボと比較し、セイヨウオトギリソウ(St. John's wort)の有効性が示唆された。さらに、セイヨウオトギリソウは、うつ病の重症度および治療反応に対する標準的な抗うつ薬治療との比較で有効性が示唆され、有害事象の有意な減少が認められた(エビデンスの質:中程度)。・再発うつ病患者では、うつ病の再発予防において、マインドフルネス認知療法が標準的な抗うつ薬治療よりも優れていることが示唆された(エビデンスの質:中程度)。・他のCAMに関するエビデンスは、エビデンスの質が低いまたは非常に低かった。 著者らは「2つを除き、臨床的うつ病に対するCAMは、エビデンスの質が低いまたは非常に低いことが示された。エビデンスは、主に元となるRCTやメタ解析の回避可能な方法論的欠陥のため、システマティックレビューおよびメタアナリシスのための優先的報告項目の基準に合致しないことから格下げする必要があり、さらなる研究が必要とされる」としている。

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統合失調症患者の喫煙関連疾患リスク

 統合失調症患者は、一般集団と比較し喫煙率が3倍で、喫煙関連疾患の影響を受けやすいといわれている。イスラエル・テルアビブ大学のIsrael Krieger氏らは、統合失調症患者の喫煙と慢性閉塞性肺疾患(COPD)および虚血性心疾患(IHD)の累積発症率について、健常な喫煙者と比較し評価を行った。Schizophrenia Research誌オンライン版2019年8月6日号の報告。 統合失調症患者1万502例とマッチした健常な喫煙者1万502例を対象に、COPDおよびIHDの累積発症率を評価するため、コホート研究を設計した。両群間のオッズ比(OR)および累積発症率を比較するため、階層ロジスティック回帰とカプランマイヤー回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・臨床的および人口統計学的要因で調整した後、統合失調症喫煙患者は、健常な喫煙者と比較し、COPD診断率が高かった(OR:2.14、95%CI:1.51~3.01、p<0.001)。・統合失調症喫煙患者では、COPD累積発症率の急速な増加が認められたが、IHD累積発症率は、健常な喫煙者と比較し低下していた。 著者らは「統合失調症患者では、COPDリスクが高いことが示唆された。この影響は、喫煙パターンの違いにより潜在的に説明が可能である。本調査では、統合失調症患者のIHDを過小評価している可能性があり、さらなる調査が必要と考えられる」としている。

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