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うつ病の発症、HHV-6が持つ遺伝子SITH-1が関与か:慈恵医大

 これまで、ヒト遺伝子の中にうつ病の原因となる有効な遺伝子は発見されていなかった。今回、東京慈恵会医科大学の近藤 一博氏らは、ヒトに寄生する微生物を含む遺伝子群(メタゲノム)に着目、ヒトに潜伏感染しているヒトヘルペスウイルス6B(HHV-6B)が持つ、うつ病の原因となる遺伝子SITH-1を発見したことを発表した。SITH-1は脳のストレスを亢進させることでうつ病を発症させる作用があり、うつ病と診断されない程度の軽いうつ症状にも影響していたという。iScience誌オンライン版2020年5月21日号掲載の報告。SITH-1がうつ病になる前から作用していることが示唆された HHV-6Bは小児期に突発性発疹として感染し、ほぼ100%のヒトが潜伏感染している。HHV-6Bは脳神経に親和性の高いウイルスで、さまざまな脳神経疾患や精神疾患との関係が予想されている。研究チームはHHV-6Bが嗅球で潜伏感染する際に発現するSITH-1遺伝子を発見、疾患との関係を調べた。 SITH-1は、細胞内へカルシウムを流入させ、アポトーシスを誘導する。また、マウスの嗅球による実験では、SITH-1を発現させると嗅球が細胞死を起こし、さらにSITH-1を発現させたマウスは脳のストレスが亢進し、うつ状態になった。ヒトの場合、嗅球の組織をとることは危険であるため、SITH-1がカルシウムを流入させるときの特殊な構造を突き止め、これに対する抗体を測定することで嗅球でのSITH-1の発現を調べた。この活性型SITH-1に対する抗体を測定する方法を用い、健常人とうつ病患者におけるSITH-1発現を比較した。また、SITH-1が脳のストレスを亢進させることによってうつ病が起こりやすくなると考えられることから、SITH-1がうつ病になる前からヒトに影響を与えている可能性を検証するため、「健常人でまったくうつ症状のない人」と「うつ病というほどではないけれども軽いうつ症状がある人」の活性型SITH-1抗体価も比較した。 健常人とうつ病患者におけるSITH-1発現を比較した主な結果は以下のとおり。・うつ病患者は健常人に比べ、SITH-1特異的抗体の検出量が有意に高かった(p=1.78×10 -15)。・抗体陽性率はうつ病患者で79.8%、健常者で24.4%だった(オッズ比[OR]:12.2)。・「うつ病というほどではないけれども軽いうつ症状がある人」も「健常人でまったくうつ症状のない人」に比べて、SITH-1抗体価が有意に高かった。 著者らは、「SITH-1遺伝子はうつ病の発症に大きな影響を持つ遺伝子であり、うつ病の発症メカニズムの解明や治療法の開発に新たな展開をもたらすことが期待できる。さらにSITH-1がうつ病になる前から作用していることが示唆されたことから、SITH-1抗体検査によってうつ病の早期発見やうつ病のなりやすさの予測ができる可能性がある」としている。

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M-1グランプリ【実はボケってメンタルの症状!? 逆にネタから症状を知ろう!】Part 1

今回のキーワード笑う心理精神機能の異常非定型発達異変メタ認知緊張緩和皆さんは、お笑いが好きですか? 笑うと、すっきりしますよね。それにしても、お笑いって何でしょうか? なぜ笑ってしまうのでしょうか? そもそもなぜ笑いは「ある」のでしょうか? そして、笑いをどう生かしましょうか?実は、お笑いのボケは、その多くがメンタルヘルスで見られる症状に重なります。今回、そのパターンを、主にテレビ番組の「M-1グランプリ」でのネタを通して、精神医学的に分類し、ふだん馴染みにくいメンタルヘルスの症状をイメージアップしてみましょう。また、逆にまだネタになっていないメンタルヘルスの症状を探ってみましょう。さらに、笑う心理の要素を解き明かし、その起源を進化心理学的に掘り下げて、笑う意味を一緒に考えていきましょう。なお、お笑い芸人の表記は通称として、敬称は省略しています。 お笑いって何?お笑いネタのボケは、普通とは違うこと(異常)、まさに「おかしい」ことです。その「おかしさ」のパターンは、精神医学的に、大きく3つに分けられます。1.メンタル症状1つ目は、メンタル症状です(精神機能の異常)。これは、精神症候学的に、7つに分けられます。(1)言い間違い―記憶の異常・ナイツの「ヤホー漫才」(2008)ボケ:「ヤホーってサイトで調べてきたんですけど」ツッコミ:「ヤフーね。ヤフーって読むんだわ、あれ」ボケ:「ぼく、こうもん見えてもですね」ツッコミ:「『こう見えても』だろ。肛門見せちゃだめだよ」・サンドウィッチマン(2007)ボケ:(街頭アンケートで)「目のところに、こう、材木、入れますんで」ツッコミ:「モザイクね!」→語音の間違い(音韻性錯語)・ナイツ(2008)ボケ:「(宮崎駿は)世界でも3本の指が入る映画監督だと」ツッコミ:「指に!だよ」→「てにをは」の間違い(錯文法)・替え歌ひな祭り:「明かりをつけましょ爆弾に~♪お花をあげましょ毒の花~♪」→単語の間違い(意味性錯語)・ジャルジャル(2015)「なんぜやねん(なんでやねん)」「ちゃがうわ(違うわ)」「膝の峠越え」「子どもの小便百祟り」「雷坊主の添い寝節」などのありそうで聞いたことがない言い回しやことわざを使うボケ→新しく言葉を作る(語新作ジャルゴン) 「ゴトウ」「イントネーション」などの単語のアクセントを変える→アクセントの間違い(プロソディ障害)1つ目は、言い間違いです。これらのネタは、言葉が分からなくなる失語(言語障害)の症状としてまとめられ、認知症を代表とする記憶の異常に分類されます。逆に、この分類でまだお笑いネタになっていないと思われるのは、聞き間違い(感覚失語)、記憶違い(記憶錯誤)、もの忘れの帳尻合わせで新しく話を作る(作話)などが挙げられます。(2)見間違い―知覚の異常・モノボケバナナを耳に当てて「もしもし」と言う→見間違い(物体失認)ズボンを上着として着る→やり間違い(着衣失行)・ガレッジセール「こいつ(相方)、めっちゃビビリ。夜中に一緒に信号待ちしてて、後ろから誰かに見られてるって。『誰だ!』って振り向いたら、選挙ポスターだった」→見間違い(錯視)2つ目は、見間違いです。これらのネタは、見ることをはじめとして、ものごとが分からなくなる失認や錯覚などの知覚障害としてまとめられます。さらに、失認は、ものや体の動かし方が分からなくなる失行(運動障害)に発展します。認知症、不安症、統合失調症などの知覚の異常に分離されます。逆に、この分類でまだお笑いネタになっていないと思われるのは、見えないはずのものが見える(幻視)、幻聴の相手と会話する(対話性幻聴)、グロテスクな体感の異常(体感幻覚)などが挙げられます。(3)大げさ―意欲の異常・ヒロシ「俺より裕福なホームレスを知ってます 」「うちの子供もヒロシなのって言われても困ります」「触ってないのに手から草のにおいがします 」→自虐ネタ。自分はだめだと大げさに思い込んでいます(うつ状態)。・オリエンタルラジオの「武勇伝」ボケ:「カーナビの指示を全部無視♪」ツッコミ:「スゴい!お台場行くのに埼玉経由♪」ボケ「端から全裸で野球拳♪」ツッコミ:「スゴい!ただただ裸になりたいだけ♪」・クールポコフリ:「モテようとしてオートロックの部屋に住んでいる男がいたんですよ~」ボケ:「なあーにぃー?やっちまったなあ!!」ツッコミ:「男は黙って」ボケ:「南京錠!」→自賛ネタ。自分はすごいと大げさに思い込んでいます(躁状態)。しかし、実際は、武勇ならぬ無様(ぶざま)であったり、モテようとして逆にますますモテなくなるおかしさがあります。3つ目は、大げさです。これらのネタは、うつになったりハイテンションになっているのが特徴です。うつ病や双極性障害などの意欲の異常に分類されます。逆に、この分類でまだお笑いネタになっていないと思われるのは、ひきこもり(無為自閉)が挙げられます。(4)思い込み―思考の異常・チュートリアルの「妄想ネタ」(2006)フリ:「自転車のチリンチリンを盗られてんねん」ボケ:「大丈夫か、おまえ?」「いったん(漫才やめて)帰るか?」「ご両親に言うたんか?」「座れ、座れ」「おまえ、チリンチリン盗られてショックな顔して漫才しとるんか?」「どんな芸人魂やねん!」「無理するな」「強がらんでもええから」(ただならぬ表情で)→話の内容は、大変な被害に遭ったと思い込み(被害妄想)、壮大なストーリーができあがっています(妄想構築)。・鳥居みゆきのカルト芸全身白の服を着て、険しい表情で、「はい!趣味は!立ち飲み!ウォッカ!ジンジャ(神社)!モ・ス・ク!」「ショートコント。ゴルフ。おい、キャディ、パターをくれ。そうそうこの北海道パターを体全体にまんべんなく塗って」「アイアーン、アイアーンって、このバンカー!」「それっ!ヒットエンドラ~ン、ヒットエンドラ~ン。バッティングセンターでバ・ン・ト」と踊り叫び続けます。→話の形式は、語音が似ている以外、ほとんど脈絡がないです(滅裂)。4つ目は、思い込みです。これらのネタは、考えが不合理であったり、まとまっていないのが特徴です。統合失調症を代表とする思考の異常に分類されます。逆に、この分類でまだお笑いネタになっていないと思われるのは、無関係なことに関係があると思い込む勘ぐり(関係妄想)、すごい発明をしたと思い込む(発明妄想)、何となく不気味な気分になる(妄想気分)、回りくどい(迂遠)などが挙げられます。(5)気にしい―感情の異常・ブラックマヨネーズ(2005)吉田:「運命の人との最初のデートはどこに行く?」小杉:「ボウリングとかええんちゃう?」吉田:「でもなあ、ボウリングってなんか汚いイメージあるやろ」「靴とか使い回しやし、ボウリングの球とか誰が入れた穴か分からんやろ」→小杉の提案に対して、吉田が毎回、神経質に否定的な返答をします(全般不安)・プラスマイナス岩橋の「やってはいけないことをやってしまうクセ」・「笑ってはいけない」シリーズで、笑うと罰ゲームを受ける→やってはいけないと思うとついやってしまう(禁断的思考)5つ目は、気にしいです。これらのネタは、何かしらに気になっているのが特徴です。不安症や強迫症などの感情の異常に分類されます。逆に、この分類でまだお笑いネタになっていないと思われるのは、「鬼電」(見捨てられ不安)、パニック発作、フラッシュバック、抜毛症、美容整形マニア(醜形恐怖)、ゴミ屋敷(ため込み症)などが挙げられます。(6)キャラ立ち―自我意識の異常・フットボールアワー(2003)ボケ役の岩尾が個性的な運転手になりたいと言い、「そんなに東京駅に行きたいのかい?」「どうだい?アクセルを踏まれている気分はどんなだい?」と、SMプレイの女王様の口調で接客を続ける。・ライセンス(2006)「大人向けドラえもん」の設定のもと、「(テストで0点だったなんて)オー、ジーザス!」「そんな時は先生にこう言ってやるのさ」とアメリカンコメディ風のドラえもんを演じる。→キャラになりきる・トム・ブラウン(2018)ボケ:「(サザエさんに出てくる)あの中島くんを5人集めて合体させて、最強の中島くん、ナカジマックスを作りたいんですよ~」→変身・土佐兄弟「もしも兄弟が入れ替わったら」との設定の上、おもちゃの取り合いで、兄と弟のそれぞれの行動パターンに、「泣かんかい!」「逃げんかい!」などと相手の知らない戦略のツッコミを入れる。→入れ替わり6つ目は、キャラ立ちです。これらのネタは、何かになり替わり、自分が自分でなくなるのが特徴です。解離症や統合失調症などの自我意識の異常に分類されます。逆に、この分類でまだお笑いネタになっていないと思われるのは、幽体離脱(離人症)、記憶喪失(解離性健忘)、憑依(多重人格)、体が勝手に動く(作為体験)などが挙げられます。(7)シュール―意識の異常・POISON GIRL BAND(2004)ボケ:「中日の選手の帽子から出てくるのは、おっさんの頭だけなんだ」(中略)「で立浪の頭が出てきたら当たりね」ツッコミ:「当たり?当たりとかあんの?まあ2,000本ヒット打ってるから、立浪の頭が出てきたら当たりなのね」ボケ:「もう1回引いていいよ」ツッコミ:「もう1回引いていいの!?帽子を?」「まあ当たりだからね。もう1回引いて落合監督が出たら?」ボケ:「もう総取り。親の総取りだね」ツッコミ:「俺は親だったんだ」ボケ:「そう、12球団の」ツッコミ:「12球団の!?」「そういうゲームなの?選手たち、立ってんの?ここに?」ボケ:「そうそうそう」(背筋を伸ばすジェスチャー)→選手の帽子を取るというくじ引き、その景品が12球団という非現実的なゲームを当たり前のように話す・バカリズムの「都道府県」(教師の振る舞いで)「はい、先週は日本の都道府県について勉強しました。それでは、おさらいです」(都道府県の形のイラストを見せて)「ここはどこでしょうか? そうです。青森県です。総人口は…総面積は…本州の最北端に位置しており、リンゴの生産量が1位の県です。あと、持つとしたら」(下北半島を横からつかむイラストを見せて)「こうですね」「さあ、続いてはここはどこでしょうか? そうです。福井県です。…」と生真面目な表情で授業が淡々と進む。ツッコミなし。→都道府県の持ち方の解説という非現実的な授業をする7つ目は、シュールです。これらのネタは、ありえない設定や展開によって非現実的であるのが特徴です。せん妄などの意識の異常に分類されます。逆に、この分類でまだお笑いネタになっていないと思われるのは、初めての場所なのに来たことがある(デジャブ)などのタイムスリップ、もう一人の自分が別の場所にいる(ドッペルゲンガー)、母親が替え玉で本物の母は別にいる(カプグラ症候群)、駅前にもう1つ同じ自宅がある(重複記憶錯誤)などのパラレルワールドが挙げられます。次のページへ >>

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うつ病から双極性障害や統合失調症への移行~15年間のプロスペクティブ研究

 うつ病から双極性障害、統合失調症、統合失調感情障害への移行について、その時間的パターンと予測因子を調査するため、フィンランド・ヘルシンキ大学のIlya Baryshnikov氏らは、レジスターベースのコホート研究を実施した。Bipolar Disorders誌オンライン版2020年5月8日号の報告。うつ病から双極性障害や統合失調症への移行は初年度が最も高い 1996~2011年に精神科病棟へ初回入院したすべてのうつ病患者4万3,495例を15年間フォローアップした。診断転換の累積発生率および部分分布ハザード比(SHR)は、累積発生関数およびFine-Gray部分分布モデルを用いて定義した。 うつ病から双極性障害、統合失調症、統合失調感情障害への診断転換を調査した主な結果は以下のとおり。・15年間の診断転換の累積発生率は以下のとおりであった。 ●全体:11.1%(95%CI:10.7~11.6) ●双極性障害:7.4%(95%CI:7.0~7.8) ●統合失調症:2.5%(95%CI:2.3~2.7) ●統合失調感情障害:1.3%(95%CI:1.1~1.4)・発生率が最も高かったのは、初年度であった。・精神病性うつ病は、軽度うつ病よりも診断転換リスクが高かった。 ●双極性障害:SHR=2.0(95%CI:1.5~2.7) ●統合失調症:SHR=5.3(95%CI:3.3~8.7) ●統合失調感情障害:SHR=10.6(95%CI:4.0~28.4)・女性、重症うつ病、パーソナリティ障害の合併は、双極性障害への診断転換の予測因子であった。・一方、若年および男性は、精神病性疾患への診断転換の予測因子であった。 著者らは「初回入院となったうつ病患者の約9人に1人は、15年の間に他の精神疾患へ診断転換が行われており、そのリスクは最初の1年以内で最も高くなる。精神病性うつ病患者は、とくに脆弱であることが示唆された。また、精神病性疾患への診断転換は、双極性障害よりも早く起こる可能性がある。男性では、精神病性疾患への転換リスクが高いのに対し、女性、再発うつ病エピソード、重度の全体的機能障害、パーソナリティ障害では、双極性障害への転換リスクが高まる」としている。

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COVID-19、アンケートから見えた医療者のメンタル状況と対策を識者が解説

COVID-19の拡大を受け、医療現場では長期に渡って対応を迫られる状況が続いている。20床以上の医療機関に勤務するケアネット会員医師に、経営・組織・心理面での影響、とくに個人と組織のメンタル面での影響についてアンケートで聞いた(アンケート結果についてはこちら)。アンケート結果を踏まえつつ、今後の医療者が取るべき対策について、国際医療福祉大学大学院教授の中尾 睦宏氏に聞いた(聞き手・構成:ケアネット 杉崎 真名)。今回のCOVID-19感染流行とこれまでの大規模災害時と比べ、医療者に求められている対応は何が大きく異なるでしょうか?一番は「医療機関・地域内で対応を完結させなければならない」点でしょう。これまでの大規模災害では、被災地以外や海外からの派遣・応援が望めましたが、今回は全国・地球規模の問題であり、人の移動にも制限があって各地域内で対応せざるを得ません。日常診療に加えてCOVID-19対応をしなくてはならず、病床数を含めてキャパオーバーになっても応援を頼めない、というプレッシャーは大きい。時間的なロードマップが描けない苦しさもあります。災害であれば発生後から復興に向けた計画を立てられますが、今回はいつ収束するかの見通しが立ちにくく、収まったとしても第2波、第3波が来るかもしれない。そうした緊張感に常にさらされています。アンケート回答者が勤務する20床以上の医療機関は、発熱外来などCOVID-19対応をしている総合病院が多いでしょうが、どうしても呼吸器・感染症・耳鼻咽喉科などに負荷が偏りがち。一方で外来患者が減った科もあるので、診療科の垣根を超えた院内連携が今まで以上に求められています。また、できる範囲での地域を超えた連携も必要です。それぞれの立場や利害が異なる場合が多いため、ここでは、行政や専門家団体などによる、ある程度強権的な舵取りも必要になってくるでしょう。アンケートにおける「医師の日常診療の影響」の回答結果をどう分析され、どのような課題が浮き彫りになったとお考えですか?中尾 睦宏氏。取材はオンラインで行った回答では「院内感染防止のための特別な対応が必要になった」(63.4%)が最も多く、それに伴って「感染リスクに自身・スタッフがさらされることに不安を覚える」(57.4%)や「衛生資材の確保が難しくなった」(53.9%)も高い回答率となっています。入室前に体温測定をしたり、診察室の患者-医師の距離を取ったり、診療が終わるたびに消毒したりなど、通常より手間暇がかかり、診療効率は落ちます。さらに今後はCOVID-19に関連したさまざまな疾患も増えてくることが予測されます。たとえば、4月以降にCOVID-19感染者が「たこつぼ型心筋症」を発症した、という症例報告がありました。収縮期の心臓の動きが局所的に悪くなる疾患ですが、強いストレスや激しい情動を契機に引き起こされることが多いとされ、大震災後に発症者数が増加しています。このように、今後はCOVID-19そのものだけでなく、その周囲の疾患も併せて診療することが求められます。「来院者が減り、経営面の不安が出るようになった」(37.3%)との回答も目立ちます。実際、定期昇給なしやボーナス減額を通告された勤務医もいるようです。ただでさえハイリスクの中で仕事をしている最中、「努力-報酬バランス」(仕事の遂行のために行われる努力に対して得られる報酬が少ないと感じられた場合により大きなストレス反応が発生するというモデル)が崩れ、きつい思いをしている勤務医も多いことでしょう。医師は責任感があり、我慢強い人が多いので、不安や恐怖心を公にしにくい面もあると思います。こうした「見通しが立たない状況が続くことに疲れやいらだちを感じる」(35.5%)点も問題で、中長期的な医療体制の大きなロードマップを国や専門団体が示し、現場の医師を少しでも安心させる配慮が求められます。定期的なアンケートやストレスチェックにより、随時こうした状況を捕捉することも重要でしょう。医師には、専門技能の習得や研鑽も欠かせませんが、「学会や勉強会などの直接的なコミュニケーションの機会が失われた」(55.6%)という点は医学全体のレベル維持に支障を来しかねません。現在の医学教育や臨床体制は平時を基準としていますが、今後は現在のような非常時が続くことを想定した“プランB”も用意する必要があるでしょう。一方、「医療者に対する差別や偏見にさらされ、つらい思いをしている」(9.4%)や「COVID-19に関する情報が足りず、診療に不安を覚える」(12.6%)はそこまで高い割合にはなっていません。現状は落ち着いて情報を取捨選択し、周囲の支援を受け働き続けている医療者が大半だと思われます。世界を見渡したとき、医療者の働き方やメンタルケアへの取り組みで参考になる動きはありますか?今回のCOVID-19対応をしている医療従事者のメンタルヘルス問題を集計した論文がいくつか発表されています1)。現在は中国・武漢のものが中心で、その内容からは「うつ、不安、不眠、ストレスの自覚」などの有訴率が高まっており、心理的なサポート不足を感じる人が多いことが伺えます。アンケートの記述コメントでは、スタッフのメンタルサポートのために「臨床心理士を配置した」「専門の相談窓口をつくった」といった内容が寄せられており、こうした素早い動きは評価すべきでしょう。とはいえ、私自身も長年医療者のストレス問題をみてきましたが、医師は弱音を吐くことが苦手な人が多く、窓口を設置してもなかなか活用されない面があることも事実です。アンケートの回答には、オンラインミーティングや勉強会など、制約のなかでもコミュニケーションをとる工夫をしている声が多くありました。こうした日々の取り組みやちょっとした遊び心が、長期的なメンタルヘルス対策につながります。東日本大震災のとき、遺体回収などの過酷な任務に就いた自衛隊は、任務後に不安やつらさをメンバー同士で吐き出し合う時間を設け、「自分だけがつらいのではない」と確認するメンタルケアを行っていたそうです。こうした例を参考に、マネジメント層の方はメンバーが本音を言い合える場をつくることを意識するとよいでしょう。米国では医療従事者のメンタルヘルス面における情報提供も進んでおり、トラウマティック・ストレス研究センター (Center for the Study of Traumatic Stress)では 医療従事者向けのCOVID-19対応マニュアルを作成しており 、その日本語版も用意されています。日本赤十字社がまとめた「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に 対応する職員のためのサポートガイド」の内容も非常に充実しています。国立精神・神経医療研究センターも医療者のためのケアの方法をまとめました。自分に合ったリラックス方法を見つけたり、自施設の取り組みを検討、確認したりするうえで参考になるでしょう。今後、長期に渡るであろうCOVID-19対応において、医療者が心身の健康を保つためのポイントは?各種論文や調査からは、各医師が全力で困難に立ち向かっている最中であることが伺えますが、長期戦になればその忍耐にも限界が来ます。自らの精神的健康を守るために、ストレス対応の基本を確認しておくとよいでしょう。「ストレスモデル」(図1)は仕事のストレス要因に個人的な要因、仕事以外の要因、緩衝要因が作用し合い、心理・身体・行動面のストレス反応を生み、その持続がメンタル疾患につながる、というモデルです。図1画像を拡大する国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and Health: NIOSH)の職業性ストレスモデルを参考に編集部作成また、「高ストレス状態のモデル図」(図2)ではイライラ→身体不調→不安→うつが相関していることが確認できます。身体疾患のうしろにメンタル疾患が潜んでいることも多くあります。単に「最近疲れやすい」「調子が出ない」とやり過ごさず、適宜自分の状況を当てはめてみるようにしましょう。図2画像を拡大する中尾氏の資料より自分の思考のクセを知り、気持ちや行動をコントロールする「認知行動療法」の基本も誰もが知っておくべきです。今後は、AIやビッグデータを利用したメンタルケアのサービスが登場し、使いやすくなることに期待しています。組織面からは、今回導入が進んだ遠隔診療のさらなる充実と普及をはかり、不要な感染リスクを高めない工夫が求められるでしょう。同時に、長期的な課題になりますが、医療者教育に「危機管理学」や「組織論」を組み込むことも重要だと感じます。COVID-19は突如出現した厄災ではありますが、医師の偏在や医療者個人に無理を強いる働き方など、医療現場が長らく抱える問題をあらわにしました。医療に注目が集まる今、医療者はみずからと周囲の人の心身を守るため、必要なケアと発信をしていくべきでしょう。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。新型コロナに関する日常診療への影響、ストレスや悩みを教えてください

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高齢者の血清尿酸値とうつ病との関係

 可溶性尿酸塩は、とくに中枢神経系における抗酸化作用として機能することが示唆されている。血清尿酸値が低いと神経変性疾患のアウトカム不良につながることを示唆するデータも存在するが、メンタルヘルスに対する影響は十分に評価されていない。韓国・中央大学校のWoo-Joong Kim氏らは、大規模サンプルを用いて、血清尿酸値とうつ病との関連について調査を行った。Arthritis Research & Therapy誌2020年5月6日号の報告。 対象者の社会人口統計学的特性、身体的および精神的健康状態に関する情報は、2016年の韓国国民健康栄養調査(KNHANES)のデータを用いた。うつ症状の評価には、こころとからだの質問票(PHQ-9)を用いた。年齢により、若年成人(19~39歳)、中年成人(40~59歳)、高齢者(60歳以上)に層別化し、分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象者は、5,332例。・男女別に血清尿酸値の分布を四分位に分類した。 ●Q1(男性:4.9mg/dL以下、女性:3.7mg/dL以下) ●Q2(男性:5.0~5.7mg/dL、女性:3.8~4.3mg/dL) ●Q3(男性:5.8~6.6mg/dL、女性:4.4~4.9mg/dL) ●Q4(男性:6.7mg/dL以上、女性:5.0mg/dL以上)・高齢者では、血清尿酸値の四分位とPHQ-9スコアとの間に有意な負の相関が認められた(男性:p for trend=0.020、女性:p for trend=0.048)。・調整後においても、血清尿酸値の低レベル(Q1、Q2)は、高レベル(Q3、Q4)と比較し、高齢者のうつ病の全体的な負担と有意な関連が認められた。 ●女性高齢者(OR:1.78、95%CI:1.21~2.61) ●男性高齢者(OR:3.35、95%CI:1.16~9.70) 著者らは「血清尿酸値が低いと、高齢者のうつ病リスクが高まることが示唆された。このことは、メンタルヘルスに臨床的な影響を及ぼす可能性がある」としている。

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産後うつ病と食事との関係~メタ解析

 一般集団において、食事パターンがうつ病や抑うつ症状の発症に影響を及ぼすことが、観察研究によるエビデンスで示唆されている。しかし、出産後の女性における食事と産後うつ病(PPD)との関係を検討した研究はほとんどない。オーストラリア・ディーキン大学のRachelle S. Opie氏らは、出産後の女性の食事とPPD症状との関連を調査するため、既存の公表済みの研究よりデータを統合し検討を行った。Maternal and Child Health Journal誌オンライン版2020年5月4日号の報告。 1835年~2020年4月に公開された関連文献を、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、PubMed、PsycInfoのデータベースよりシステマティックに検索した。 主な結果は以下のとおり。・特定された研究931件より、適格基準を満たした6件が解析に含まれた。・横断研究4件、コホート研究2件であった。・1件を除くその他すべての研究において、産後の健康的な食事に対するアドヒアランスの高さがPPD症状の少なさと関連しているといった、1つ以上の逆相関が認められた。・さらなる縦断研究や介入研究で確認された場合、果物、野菜、魚、穀物、豆類、ハーブに重点を置いたバランスの取れた食事は、PPD発症率を低下させることに役立つ可能性がある。 著者らは「出産後の女性における食事は、PPD症状に影響を及ぼす可能性があり、さらなる長期的な介入研究が求められる」としている。

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「デパス」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第2回

第2回 「デパス」の名称の由来は?販売名デパス®錠0.25mg/0.5mg/1mg、デパス®細粒1%一般名(和名[命名法])エチゾラム(JAN)効能又は効果神経症における不安・緊張・抑うつ・神経衰弱症状・睡眠障害うつ病における不安・緊張・睡眠障害心身症(高血圧症、胃・十二指腸潰瘍)における身体症候ならびに不安・緊張・抑うつ・ 睡眠障害統合失調症における睡眠障害下記疾患における不安・緊張・抑うつおよび筋緊張頸椎症、腰痛症、筋収縮性頭痛用法及び用量神経症、うつ病の場合通常、成人にはエチゾラムとして1日3mgを3回に分けて経口投与する。心身症、頸椎症、腰痛症、筋収縮性頭痛の場合通常、成人にはエチゾラムとして1日1.5mgを3回に分けて経口投与する。睡眠障害に用いる場合通常、成人にはエチゾラムとして1日 1~3mgを就寝前に1回経口投与する。なお、いずれの場合も年齢、症状により適宜増減するが、高齢者には、エチゾラムとして1日1.5mgまでとする。警告内容とその理由該当しない(現段階では定められていない)禁忌内容とその理由(原則禁忌を含む)禁忌(次の患者には投与しないこと)1.急性閉塞隅角緑内障の患者[抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある。]2.重症筋無力症の患者[筋弛緩作用により、症状を悪化させるおそれがある。]※本内容は2020年6月3日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2019年9月改訂(改訂第18版)医薬品インタビューフォーム「デパス錠® 0.25mg/0.5mg/1mg、デパス®細粒1%」2)田辺三菱製薬:製品情報

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統合失調症と自閉スペクトラム症の判別に~脳機能的結合からのアプローチ

 統合失調症スペクトラム障害(SSD)と自閉スペクトラム症(ASD)との関係については長年議論されてきたが、いまだに解明には至っていない。京都大学の吉原 雄二郎氏らは、ASDとSSDの関係を定量化および視覚化するために、安静時機能結合MRIに基づき健常対照群(HC)から患者を判別する両方の分類手法を用いて調査を行った。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2020年4月17日号の報告。 信頼性の高いSSD分類手法を開発するため、慢性期SSD患者を含む京都大学医学部附属病院のデータセット(170例)よりSSD固有の機能的接続を自動的に選択する高度な機械学習アルゴリズムを適応した。SSD分類手法の一般化の可能性は、2つの独立した検証コホートと初回エピソード統合失調症患者を含む1つのコホートによりテストした。SSD分類手法の特異性は、ASDとうつ病の2つの日本人コホートによりテストした。分類手法の機能的結合の加重線形総和は、疾患の神経分類の確実性を表す生物学的ディメンションを構成した。以前に開発したASD分類手法をASDディメンションとして使用した。SSD、ASD、HC群の分布は、SSDおよびASDの生物学的ディメンションで調査した。 主な結果は以下のとおり。・SSD群とASD群は、2つの生物学的ディメンションにおいて、重なり合う関係性と、非対称な関係性の両方の特性があることが示唆された。・SSD群は、ASD傾向があるのに対し、ASD群にはSSD傾向が認められなかった。 著者らは「生物学的な安静時の脳機能結合と、従来の症状や行動から規定される精神疾患の診断を基に、高度な機械学習アルゴリズムを用いてSSDの判別法を新たに開発できた」とし「各精神疾患の判別法の開発により、生物学的な側面からの各精神疾患の関係性についての解明につながることが期待でき、今後の精神疾患の個別化医療に役立つであろう」としている。

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統合失調症患者における性機能障害~メタ解析

 多くの臨床研究において、統合失調症患者は性機能障害(SD)の発症リスクが高いと報告されているが、SDの有病率を算出した研究は十分ではない。中国・Taizhou Central HospitalのShankun Zhao氏らは、統合失調症患者におけるSDの関連を明らかにするため、メタ解析を実施した。The Journal of Sexual Medicine誌オンライン版2020年4月13日号の報告。 統合失調症患者の性機能に関する適格な報告をMEDLINE(PubMed)、Embase(OVID)、Cochrane Libraryデータベース、PsycINFOよりシステマティックに検索し、メタ解析を実施した。統合失調症とSDとの関連は、相対リスク(RR)、95%信頼区間(CI)を算出することで検出した。エビデンスの質は、GRADE-profilerを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・観察研究10件(ケースコントロール研究3件、横断研究7件)が抽出された。・3,570例(統合失調症患者1,161例、健康対照群2,409例)が登録された(平均年齢:28.6~46.2歳)。・以下のように、統合失調症患者は性別とは無関係に、SDリスクの増加との有意な関連が認められた。 ●男女の報告(3件):RR=2.24(95%CI:1.66~3.03、p<0.001)、不均一性:I2=0.0%、p=0.431、エビデンスの質:低 ●男性の報告(7件):RR=2.63(95%CI:1.68~4.13、p<0.001)、不均一性:I2=82.7%、p<0.001、エビデンスの質:中 ●女性の報告(5件):RR=2.07(95%CI:1.46~2.94、p<0.001)、不均一性:I2=79.7%、p=0.001、エビデンスの質:低 著者らは「本研究は、男女の統合失調症患者におけるSDリスクを調査した最初のメタ解析であるが、選択した研究全体でかなりの異質性が認められた」としながらも、「統合失調症患者にける潜在的なSDリスクが確認されたことから、臨床医は患者の性機能を定期的に評価し、好ましい抗精神病薬を選択する必要性がある」と述べ、「統合失調症患者のSD有病率は、一般集団と比較し高いため、統合失調症患者の性生活を改善するために、より具体的な心理学的および薬理学的介入が求められる」としている。

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第8回 新型コロナ予防・治療・メンタルヘルスへの活用が期待される漢方薬の可能性

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する既存薬の活用が期待される一方、新型コロナの感染予防・軽傷者の重症化予防やメンタルヘルスに対する漢方薬の活用が注目されている。日本東洋医学会では、漢方薬などによる対症療法とその後の重症化の有無との関連を調べるため、医療機関に症例の報告を呼び掛けている1)。また、薬局・薬店からなる日本中医薬研究会は新型コロナ治療の予防・治療に対し、中国漢方である中医薬(中国伝統医薬)の有効性を探るため、日中の医師や薬剤師らによるウェブ交流会を4月に行った。振り返ると、2009年の新型インフルエンザ流行時には、麻黄湯や銀翹散、小柴胡湯などの漢方薬に抗ウイルス作用が確認されている。タミフルやリレンザといった抗インフルエンザ治療薬に麻黄湯などの漢方薬を合わせて使うと一定の効果が見られたという。COVID-19に関連し、中国は3月、顕著な治療効果が見られたという「三薬三方(三つの処方と薬)」を選出し、清肺排毒湯、化湿敗毒方、宣肺敗毒方という3つの中医薬を推奨している。このうち、COVID-19用に創薬され、軽症から重症までカバーするという清肺排毒湯には麻黄湯と小柴胡湯が構成生薬の一部として使われている。新型コロナの感染確認者の91.5%が中医薬を使い、臨床治療の効果観察では、中医薬の総有効率は90%超に上っているという。日本国内においても、清肺排毒湯を日本で処方可能なエキス剤で作り、軽症者の重症者化予防に処方している医療機関がある。無症状者を含めた予防には、免疫力を高める効果が報告されている補中益気湯や十全大補湯などがある。メンタルヘルスに関しては、新型コロナによる自粛生活で、高齢者を中心に運動不足による持病悪化や、ストレスや経済的不安によるうつ病症状を訴える人が増えている。また、経済の悪化に伴う失業者の増加により、累計自殺者数が27万人増との試算もある。「コロナうつ」への対応も重要な課題だが、精神科や心療内科の受診をためらう人は少なからずいる。それに比べると、漢方薬はハードルがいくぶん低くなるようだ。ストレス緩和効果が得られる漢方薬には、加味逍遙散や柴胡加竜骨牡蛎湯、酸棗仁湯などがある。ただ、漢方薬は西洋薬の処方のようにはいかないのはご存じの通り。漢方薬は病名ではなく、患者個々人の体質と症状に対する処方が原則だ。漢方薬においても、現段階でCOVID-19への特効薬がない以上、予防段階では体力を付けて免疫力を上げる、感染したら発熱しないようにする、発熱したら早く治るようにするというように、段階によって使う漢方薬が異なり、患者ごとに症状を見ながら処方を判断しなければならない。ただ、新型コロナウイルスは変異の速いRNAウイルスの一種で、現在効いている新薬がいつ効かなくなるかわからない懸念がある。漢方薬を扱っている医療従事者は「免疫力の強化を本来重視する漢方薬は、変異に対してもある程度有効なのでは」と期待している。1)COVID-19一般治療に関する観察研究ご協力のお願い(日本東洋医学会)

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統合失調症の陽性症状に対する薬物療法と心理療法の比較~メタ解析

 統合失調症に対する薬物療法と心理療法の2つの治療戦略の効果について意義のある比較が可能か確認するため、ドイツ・ミュンヘン工科大学のIrene Bighelli氏らが、患者および研究の特性を調査した。Schizophrenia Bulletin誌2020年4月10日号の報告。 陽性症状を有する統合失調症患者を対象とした抗精神病薬治療と心理療法に関する最近の2つのメタ解析に含まれるすべてのランダム化比較試験を、EMBASE、MEDLINE、PsycINFO、Cochrane Library、ClinicalTrials.govより検索した。薬物療法と心理療法の違いを分析するために、Wilcoxon-Mann-Whitney検定およびカイ二乗検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析には、抗精神病薬治療の研究80件(1万8,271例)と心理療法の研究53件(4,068例)が含まれた。・心理療法の研究には、以下の特徴が認められた。 ●重症度の低い患者の多さ(p<0.0001) ●罹病期間の短さ(p=0.021) ●持続期間の長さ(p<0.0001) ●抗精神病薬併用介入の実施(p<0.0001) ●アウトカム評価の盲検化を含む一部でのバイアスリスクの高さ(p<0.0001) ●公的資金の出資頻度の高さ(p<0.0001)・抗精神病薬治療の研究には、以下の特徴が認められた。 ●サンプルサイズの大きさ(p<0.0001) ●研究センターの規模が大きい(p<0.0001) ●男性患者の多さ(p=0.0001) ●入院患者の多さ(p<0.0001) ●高齢な患者の多さ(p=0.031) ●診断運用基準のより頻繁な使用(p=0.006) ●製薬会社の支援・両研究ともに、利益相反の差は認められなかった(p=0.24)。 著者らは「研究間の主な違いは、心理療法ではバイアスリスクが高く、薬物療法ではより重篤な患者が含まれていたことだった。そのため、ネットワークメタ解析を検討する前に、患者および研究の特性を注意深く考慮する必要がある。精神薬理学者と心理療法士は、競合するのではなく、患者の利益のために治療の最適化を目指すべきである」としている。

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初回エピソード統合失調症の10年間の軌跡と陰性症状アウトカム

 初回エピソード統合失調症スペクトラム障害患者における10年間の軌跡と陰性症状アウトカムについて、中国・香港大学のSherry Kit Wa Chan氏らが、調査を行った。Schizophrenia Research誌オンライン版2020年4月8日号の報告。 標準治療と早期介入における10年間のアウトカムを比較した歴史的対照研究から対象患者を抽出した。特定された298例中、10年間のフォローアップで臨床的および機能的なアウトカムを収集できた患者は214例であり、最終分析には209例が含まれた。カルテ情報は、標準化されたデータ入力フォームを用いてシステマティックに収集した。陰性症状、入院、雇用に関する情報は、最初の1~3年は月に1回、4~10年は3ヵ月に1回収集した。10年間の陰性症状のクラスターを調査するため、階層クラスター分析を用いた。クラスターメンバーシップに関連する人口統計および初期の臨床症状、10年間のフォローアップ期間中の陰性症状について、さらに調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・クラスター分析では、陰性症状の3つのクラスターが特定された。15%の患者は再発例であった。・標準治療と早期介入の間に、クラスターメンバーシップの違いは認められなかった。・陰性症状再発と有意に関連する因子は、男性、4年目の入院であった。・10年間のフォローアップ期間中、全体的な陰性症状の予測因子は以下のとおりであった。 ●教育レベルの低さ ●1年目の陰性症状スコアの高さ ●最初の3年間の失業期間の長さ・男性は、意欲と快楽消失の予測因子であり、精神疾患の未治療期間は、快楽消失の予測因子であった。 著者らは「本結果より、長期的なアウトカムの不均一性が認められ、個別化された介入の重要性が示唆された」としている。

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小児・青年に対する抗精神病薬使用と急性ジストニア

 小児および青年における抗精神病薬治療による急性ジストニアの発生率とそのリスク因子について、トルコ・Ankara Yildirim Beyazit UniversityのSelma Tural Hesapcioglu氏らが検討を行った。Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology誌オンライン版2020年4月7日号の報告。 2015~17年に大学病院の小児および青年期精神科外来を受診し、抗精神病薬による治療を受け、2回以上のフォローアップを受けた患者を対象に、レトロスペクティブチャートレビューに基づくコホート研究を実施した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬治療を受けた4~19歳の患者は、441例であった。・抗精神病薬治療の理由は、以下のとおりであった。 ●行動障害(21.5%) ●注意欠如多動症(13.2%) ●知的障害を伴う過敏性と攻撃性(12.9%)・急性ジストニアは、30例(6.8%)で発生し、フォローアップ99.5±223.3日(中央値:34日)後に認められた。・急性ジストニアは、1つの抗精神病薬で治療された患者391例中11例(2.8%)、2つの抗精神病薬で治療された患者50例中19例(38.0%)で発生した(p<0.001)。・1つの抗精神病薬で治療された患者における急性ジストニア発症までの期間は、抗精神病薬治療開始後4.0±4.0日、抗精神病薬増量後2.7±2.4日であった。・2つの抗精神病薬で治療された患者における急性ジストニア発症までの期間は、2つ目の抗精神病薬を追加後3.0±2.3日、2つ目の抗精神病薬増量後1.6±0.8日であった。・1つの抗精神病薬で治療された患者における急性ジストニア発生率は、第1世代抗精神病薬(FGA)で10.5%、第2世代抗精神病薬(SGA)で2.2%であった(p=0.037)。・急性ジストニアの発生により、抗精神病薬を変更した患者は急性ジストニアの症例30例中12例(40.0%)であった。・急性ジストニアに関連する独立したリスク因子は、以下のとおりであった。 ●抗精神病薬の多剤併用(p<0.0001) ●入院治療(p=0.013) ●FGA使用(p=0.015) ●統合失調症の診断(p=0.039) ●双極性障害の診断(p<0.0001) 著者らは「小児および青年における急性ジストニアのリスクは、SGAや低力価FGAでは低く、中~高力価FGAでは高かった。急性ジストニアの発生には、積極的な抗精神病薬による治療が関連している可能性がある」としている。

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うつ病から双極性障害への転換に対する早期予測因子~コホート研究

 うつ病と双極性障害は、どちらも主要な気分障害であるが、治療戦略や予後が異なる。双極性障害患者では、初期でみられるうつ症状によりうつ病と診断されうることが、その後の治療結果に影響を及ぼす可能性がある。これまでの研究では、うつ病と診断された患者のうち、時間経過とともに双極性障害を発症する患者が少なくないと示唆されている。このような双極性障害は、治療抵抗性うつ病の一因となる可能性がある。台湾・国立中正大学のYa-Han Hu氏らは、人口ベースのコホート研究を実施し、10年間のフォローアップ期間中にうつ病から双極性障害へ診断が変更された患者の割合およびその危険因子について調査を行った。さらに、うつ病から双極性障害へ転換するリスク層別化モデルの開発を試みた。JMIR Medical Informatics誌2020年4月3日号の報告。 台湾全民健康保険研究データベースを用いて、2000年1月~2004年12月に新規でうつ病と診断された患者を対象に、レトロスペクティブコホート研究を実施した。すべてのうつ病患者を、次のいずれかの条件を満たすまでフォローアップした。(1)精神科医による双極性障害の診断、(2)死亡、(3)2013年12月まで。すべてのうつ病患者を、フォローアップ期間中の双極性障害への転換に従って、転換群または非転換群に振り分けた。うつ病から双極性障害へ転換するリスク層別化モデルを作成するため、最初の6ヵ月間の6つの変数(患者の特性、身体的合併症、精神医学的合併症、ヘルスケアの使用状況、疾患重症度、向精神薬の使用)を抽出し、決定木分析(classification and regression tree:CART法)を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象は、うつ病患者2,820例。・フォローアップ期間中に双極性障害と診断された患者は536例(19.0%)であった。・CART法により双極性障害転換リスクの有意な予測因子は、以下の5つであった。 ●最初の6ヵ月間で使用された抗精神病薬の種類 ●最初の6ヵ月間で使用された抗うつ薬の種類 ●精神科外来通院の合計回数 ●受診1回当たりに使用されたベンゾジアゼピンの種類 ●気分安定薬の使用・双極性障害への転換に関し、このCART法によるリスクによって、高リスク群、中リスク群、低リスク群に分類可能であった。・高リスク群では、うつ病患者の61.5~100%は双極性障害と診断された。・低リスク群では、うつ病患者の6.4~14.3%のみが双極性障害と診断された。 著者らは「CART法により、双極性障害へ転換する5つの有意な予測因子が特定された。これらの予測因子を用いた単純なプロセスにより転換リスクの分類は可能であり、本モデルは双極性障害の早期診断のために日々の臨床診療に適用可能である」としている。

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日本人統合失調症患者におけるブレクスピプラゾール切り替えの安全性と有効性

 東京女子医科大学の石郷岡 純氏らは、日本人統合失調症患者200例を対象に行ったブレクスピプラゾール単剤療法切り替えの試験データを用いて、事後分析を実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年4月15日号の報告。 試験期間は8週間、4週間の切り替えフェーズと4週間の切り替え後フェーズで構成されている。ブレクスピプラゾールへの切り替えスケジュールは、最初に1mg/日で投与を開始し、第4週目までに2mg/日まで増量した。それまでに使用されていた抗精神病薬は、第3週より徐々に減量し、第4週目までに中止した。ブレクスピプラゾールの投与量は、CGI-I基準に従い、最大4mg/日まで増量可能とした。 主な結果は以下のとおり。・第8週目のブレクスピプラゾールの投与量別の割合は、以下のとおりであった。 ●1mg/日:1.8% ●2mg/日:23.2% ●3mg/日:25.0% ●4mg/日:50.0%・第8週目の治療中止率は、17.0%であった。・主な治療中止理由は、同意の撤回(9.5%)、有害事象の発生(5.5%)、医師の判断(2.0%)であった。・一般的に認められた有害事象は、鼻咽頭炎(13.5%)、統合失調症症状の悪化(9.0%)、不眠症(6.5%)、頭痛(5.5%)、アカシジア(5.5%)であった。・治療中止率と前治療薬との関連では、アリピプラゾールからの切り替えにおける治療中止率は4.9%であったが、ほかの抗精神病薬からの切り替えにおける治療中止率は、25.4%であった。 著者らは「ブレクスピプラゾールへ切り替える際、主要な前治療薬がオランザピンの場合には、治療中止に至る有害事象を考慮し、慎重な切り替えが求められる」としている。

1116.

ADHDとうつ病との関連

 注意欠如多動症(ADHD)は、将来のうつ病との関連が示唆されており、両疾患の間には遺伝的関連があるといわれている。英国・カーディフ大学のLucy Riglin氏らは、ADHDやADHDの遺伝的罹病性がうつ病と関連するかについて、2つの異なる方法を用いて調査を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2020年4月6日号の報告。 まず、Avon Longitudinal Study of Parents and Children(ALSPAC)研究より8,310例を用いて、小児ADHD(7歳)と若年成人の再発性うつ病(18~25歳)との関連を評価した。次に、2サンプルのメンデルランダム化(MR)分析により、ADHDの遺伝的罹病性とうつ病との関連を、公開されているゲノムワイド関連解析(GWAS)データを用いて調査した。 主な結果は以下のとおり。・小児ADHDは、若年成人における再発性うつ病リスクの増加と関連が認められた(OR:1.35、95%CI:1.05~1.73)。・MR分析では、ADHDの遺伝的罹病性がうつ病に及ぼす因果関係が示唆された(OR:1.21、95%CI:1.12~1.31)。・うつ病のより広い定義を用いた場合、MR分析の所見と異なり、うつ病に対して弱い影響が示唆された(OR:1.07、95%CI:1.02~1.13)。 著者らは「ADHDは将来のうつ病リスクを高め、ADHDの遺伝的罹病性がうつ病に及ぼす因果関係が示唆された」としている。

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双極性障害とアルコール使用障害

 これまでの研究において、双極性障害(BD)患者のアルコール使用障害(AUD)の合併が報告されているが、BD患者のアルコール使用パターンはよくわかっていない。英国・ウスター大学のKatherine Gordon-Smith氏らは、大規模英国サンプルを用いて、生涯で最も大きい平均週間アルコール消費量の調査を行った。Bipolar Disorders誌オンライン版2020年4月2日号の報告。 定期的な飲酒経験のある双極I型障害の女性1,203例および男性673例を対象に、半構造化インタビューを実施した。 主な結果は以下のとおり。・現在の英国推奨アルコール摂取ガイドラインの2倍以上定期的に飲酒していた患者は、女性で52.3%、男性で73.6%であった。・男女ともに、生涯アルコール消費量の増加と有意な関連が認められたのは以下の項目であった。 ●自殺企図:女性(OR:1.82、p<0.001)、男性(OR:1.48、p=0.005) ●ラピッドサイクリング:女性(OR:1.89、p<0.001)、男性(OR:1.88、p<0.001)・女性のみで、アルコール消費量の増加と有意な関連が認められたのは以下の項目であった。 ●うつ病エピソード(OR:1.35、p<0.001) ●躁病エピソード(OR:1.30、p<0.004) ●最も悪い躁病エピソード中の機能障害の少なさ(OR:1.02、p<0.001) ●精神科入院の減少(OR:0.51、p<0.001) ●パニック症の合併(OR:2.16、p<0.001) ●摂食障害の合併(OR:2.37、p<0.001) 著者らは「実臨床において、BD患者のアルコール消費量に関する詳細な情報を収集する意義は大きいと考えられる。アルコール消費量が多いからといって、必ずしもAUDの基準に達しているわけではないが、BDの疾患経過、とくに女性の摂食障害の合併を予測するうえで役立つであろう」としている。

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統合失調症に対するドパミンD2/D3受容体パーシャルアゴニストの忍容性の比較

 アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、cariprazineは、ほかの第2世代抗精神病薬と異なり、ドパミンD2/D3受容体に対するパーシャルアゴニスト作用を有している。オーストラリア・モナッシュ大学のNicholas Keks氏らは、3剤のドパミンD2/D3受容体パーシャルアゴニストについて比較を行った。CNS Drugs誌オンライン版2020年4月3日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・アリピプラゾールとは対照的に、ブレクスピプラゾールは、ドパミンD2活性が低く、セロトニン5-HT1Aおよび5-HT2A受容体親和性が高い。一方、cariprazineは、ドパミンD3受容体親和性が最も高く、半減期も最も長い。・ドパミン受容体パーシャルアゴニスト(DRPA)の主な副作用は、軽度~中等度のアカシジアであり、多くは治療開始数週間のうちにごく一部の患者で認められる。・DRPA間の違いについて、決定的な結論に至るには直接比較研究が必要ではあるが、入手可能なエビデンスによる比較では、アカシジアはブレクスピプラゾールが最も発生率が低く、cariprazineが最も高いと考えられる。・体重増加リスクは、アリピプラゾールとcariprazineは低く、ブレクスピプラゾールは中程度である。・DRPAは、過鎮静、不眠症、悪心のリスクが低かった。・DRPAは、高プロラクチン血症リスクが低く、おそらく性機能障害リスクも低いと考えられる。・一部の患者では、プロラクチン濃度の低下が認められ、とくにDRPA治療開始前にプロラクチンレベルが上昇している患者で認められた。・DRPAは、有害事象による治療中止率は低く、忍容性は良好であった。・アリピプラゾールは、おそらくDRPA活性による病的賭博やほかの衝動制御行動と関連している可能性がある(ブレクスピプラゾールおよびcariprazineでの報告は認められなかった)。・DRPAによる糖尿病および遅発性ジスキネジアリスクは明らかではなかったが、低リスクであると考えられる。 著者らは「DRPAの忍容性は良好であることから、とくに統合失調症の治療初期における第1選択治療として検討すべきである」としている。

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高齢者における難聴とうつ病との関係~メタ解析

 高齢者における難聴とうつ病との関連を報告した研究では、結果に矛盾がみられている。このことから、西オーストラリア大学のBlake J. Lawrence氏らは、関連エビデンスのシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The Gerontologist誌2020年4月2日号の報告。 MEDLINEなどの学術データベースの検索およびOpenGreyなどでの灰色文献の検索を行い、2018年7月17日までの関連記事を抽出した。横断的研究またはコホート研究を含めた。アウトカムの効果は、オッズ比(OR)として算出し、ランダム効果メタ解析を用いてプールした。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした研究は35件(14万7,148例)であった。・横断的研究が24件、コホート研究が11件であった。・難聴は、高齢者におけるうつ病オッズの大きさと有意な関連が認められた(OR:1.47、95%信頼区間[CI]:1.31~1.65)。・研究デザインで層別化した場合、横断的研究(OR:1.54、95%CI:1.31~1.80)およびコホート研究(OR:1.39、95%CI:1.16~1.67)のいずれにおいても、難聴はうつ病オッズの大きさと関連していた。また、研究デザイン間で、効果の推定値に差は認められなかった(Q=0.64、p=0.42)。・難聴とうつ病の関連に対する補聴器の使用などのモデレーター変数の影響は認められなかったが、これらの調査結果は注意して解釈する必要がある。・出版バイアスは認められなかったが、全体的な効果の推定値の確実性は「低」に分類された。 著者らは「高齢者では、難聴に関連するうつ病のオッズ増大がみられる可能性があり、この関連は、研究や研究参加者の特性による影響を受けないと考えられる」としている。

1120.

SSRI治療抵抗性うつ病に対するボルチオキセチン補助療法

 うつ病の治療において、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は基本となる。しかし、SSRIでは治療反応が得られないこともあり、多くの場合、併用戦略が必要となる。イタリア・University "G. D'Annunzio" ChietiのDomenico De Berardis氏らは、SSRI治療抵抗性うつ病患者に対する併用療法としてのボルチオキセチンの有効性を評価した。Revista Brasileira de Psiquiatria誌オンライン版2020年3月9日号の報告。 8週間以上のSSRI治療で治療反応が得られなかった外来の成人うつ病患者36例を対象とし、レトロスペクティブにレビューした。対象患者に対し、現在のSSRIにボルチオキセチン(5~20mg/日)を追加し、8週間の治療を行った。主要アウトカムは、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)合計スコアのベースラインからの変化量と治療反応率(HAM-Dスコアの50%以上減少およびエンドポイントでの臨床全般印象度の改善度[CGI-I]スコアが1または2)とした。HAM-Dスコア7以下を寛解と定義した。追加アウトカムの指標は、Snaith-Hamilton Pleasure Scale(SHAPS)、Scale for Suicide Ideation(SSI)とした。 主な結果は以下のとおり。・8週間の治療を完了した患者は32例であった。・8週間後、HAM-Dスコアの有意な減少が認められた(p≦0.001)。・治療反応率は41.7%、寛解率は33.3%であった。・SHAPSおよびSSIの有意な減少も認められた(各々p≦0.001)。 著者らは「本研究は、サンプルサイズが小さく、無作為化および対照研究ではなく、レトロスペクティブデザインであることを考慮する必要がある」としながらも、「治療抵抗性うつ病に対する最初の治療として、ボルチオキセチン補助療法は有用性および忍容性が高いと考えられる」としている。

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