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1101.

うつ病の薬理学的マネジメント~日本の専門医のコンセンサス

 実臨床におけるうつ病治療は、常に従来のガイドラインに沿っているわけではない。慶應義塾大学の櫻井 準氏らは、精神科専門医を対象に、うつ病の治療オプションに関する調査を行った。Journal of Affective Disorders誌2020年4月1日号の報告。 日本臨床精神神経薬理学会の認定精神科医を対象に、うつ病治療における23の臨床状況について、9段階のリッカート尺度(同意しない「1」~同意する「9」)を用いて、治療オプションの評価を依頼した。114件の回答が得られた。治療オプションを、1次、2次、3次治療に分類した。 主な結果は以下のとおり。・抗うつ薬の第1選択薬は、主要な症状により以下のように異なっていた。 ●不安症状:エスシタロプラム(平均±標準偏差:7.8±1.7)、セルトラリン(7.3±1.7) ●興味の喪失:デュロキセチン(7.6±1.9)、ベンラファキシン(7.2±2.1) ●不眠症状:ミルタザピン(8.2±1.6) ●食欲不振:ミルタザピン(7.9±1.9) ●興奮および重度の焦燥感:ミルタザピン(7.4±2.0) ●自殺念慮:ミルタザピン(7.5±1.9)・1次治療に奏効しない場合の2次治療は、以下のとおりであった。 ●SSRIで奏効しない場合:SNRIへの切り替え(7.7±1.9)、ミルタザピンへの切り替え(7.4±2.0) ●SNRIで奏効しない場合:ミルタザピンへの切り替え(7.1±2.2) ●ミルタザピンで奏効しない場合:SNRIへの切り替え(7.0±2.0)・アリピプラゾール増強療法は、SSRI(7.1±2.3)またはSNRI(7.0±2.5)に対する部分的なレスポンスがみられた患者に対する1次治療と見なされていた。 著者らは「専門医のコンセンサスのエビデンスレベルは低く、本調査は、日本人の専門医のみが対象であった」としながらも、「臨床現場の専門医による推奨は有用であり、実際の臨床診療におけるガイドラインと情報に基づく意思決定を補助することができる。うつ病に対する薬理学的治療戦略は、患者の状況ごとのニーズと薬物療法プロファイルを考慮し、柔軟に対応すべきである」としている。

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急性期統合失調症に対する認知リハビリテーションの可能性

 多くの研究において、統合失調症患者に対する認知リハビリテーションが有用なアウトカムを示しているが、日常的および社会的機能に対する認知リハビリテーションの有効性は、よくわかっていない。また、認知リハビリテーションの内容や方法に関する検討は不可欠ではあるが、実施するタイミングも重要であると考えられる。東邦大学の根本 隆洋氏らは、急性期統合失調症患者に対する認知リハビリテーションの実現可能性および受容性について調査を行った。Early Intervention in Psychiatry誌オンライン版2020年3月26日号の報告。 入院病棟へ急性期入院した患者を15ヵ月間連続でエントリーし、入院後14日以内に8週間の認知リハビリテーションプログラムに参加できるかどうかを評価した。患者の状態や負担を考慮し、ワークブック形式の認知リハビリテーションプログラムを行った。 主な結果は以下のとおり。・エントリー期間中に新規入院した83例のうち、49例(59.0%)の患者が対象となった。・そのうち、22例(44.9%)が認知リハビリテーションプログラムへの参加に同意し、プログラムを開始した。・プログラムを完了した16例に対し、2回目の評価を行った。・実際に研究プログラムを完了した患者の割合は、適格患者の32.7%(49例中16例)であった。・参加者は、プログラムに対し、非常に満足していた。 著者らは「急性期統合失調症患者に対する認知機能改善の実現可能性および受容性を示す有望な結果が得られた。初回エピソード統合失調症患者に対する認知リハビリテーションの提供は、より良い機能アウトカムにつながることが期待できる」としている。

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統合失調症、 D2受容体への非結合薬剤は有効か?/NEJM

 急性増悪期統合失調症患者において、D2受容体に結合しない抗精神病薬SEP-363856はプラセボと比較し、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアのベースラインからの変化量を有意に改善させることが、東欧および米国の5ヵ国計34施設で実施された4週間の第II相無作為化二重盲検並行群間比較試験の結果、明らかとなった。米国・Sunovion PharmaceuticalsのKenneth S. Koblan氏らが報告した。SEP-363856は、ドパミンD2受容体に結合せず、微量アミン関連受容体1(TAAR1)とセロトニン5-HT1A受容体に対するアゴニスト活性を有する経口化合物で、統合失調症の精神病状態を治療する新しいクラスの向精神薬となる可能性があるという。NEJM誌2020年4月16日号掲載の報告。TAAR1/5-HT1AアゴニストであるSEP-363856の有効性と安全性をプラセボと比較検討 研究グループは、急性増悪期統合失調症の成人患者を、SEP-363856(50mgまたは75mg)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ1日1回4週間投与した。試験期間は2016年12月~2018年7月である。 主要評価項目は、投与4週後のPANSS(30~210点、点数が高いほど精神病症状が重度であることを示す)合計スコアのベースラインからの変化量、副次評価項目は臨床全般印象評価尺度(CGI-S)や簡易陰性症状尺度(BNSS)などの8項目のスコアのベースラインからの変化量で、修正intention-to-treat集団を対象に反復測定混合効果モデルを用いて解析した。PANSS合計スコアの平均変化量、SEP-363856で有意に改善 計245例がSEP-363856群(120例)およびプラセボ群(125例)に割り付けられた。 ベースラインのPANSS合計スコア平均値は、SEP-363856群101.4、プラセボ群99.7であり、投与4週後の平均変化量はそれぞれ-17.2および-9.7であった(最小二乗平均差:-7.5、95%信頼区間[CI]:−11.9~−3.0、P=0.001)。また、投与4週後のCGI-SスコアおよびBNSSスコアは、概して主要評価項目と同様に低下したが、多重比較は行わなかった。 SEP-363856の主な有害事象は傾眠、消化器症状などで、心臓突然死がSEP-363856群で1例報告された。錐体外路症状の発現頻度や、脂質、HbA1cおよびプロラクチン値の変化量は両群で類似していた。 著者は、試験期間が短いことや、18~40歳の患者を対象としたことなど、今回の研究の限界を挙げたうえで、「統合失調症患者に対するSEP-363856の有効性と副作用、ならびに既存薬との有効性の比較を明らかにするためには、さらなる長期で大規模な臨床試験が必要である」とまとめている。

1104.

うつ病や双極性障害における嗅覚記憶の比較

 嗅覚認識記憶の変化は、うつ病の感覚マーカーである可能性がある。そして、単極性うつ病と双極性うつ病で有意な差が存在する可能性もある。フランス・トゥール大学のFrancois Kazour氏らは、単極性および双極性うつ病の潜在的なマーカーを特定するため、検討を行った。Brain Sciences誌2020年3月24日号の報告。 双極性うつ病(DB)群、双極性寛解(EB)群、単極性うつ病(DU)群、単極性寛解(EU)群、正常対照(HC)群を募集した(176例)。対象者には、標準化された臨床評価および嗅覚評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・DU群、DB群、EU群は、HC群と比較し、嗅覚記憶に欠陥が認められた。・DB群は、新規の匂いを認識する能力が低かった。・DB群、DU群は、HC群と比較し、珍しい匂いの検出が限定的であった。・DB群は、それ以外の群と比較し、匂いを快適ではないと評価した。・すべての患者群は、HC群と比較し、快楽評価が低かった。・DB群は、EU群と比較し、感情的評価が低かった。 著者らは「抑うつ状態では、嗅覚記憶が障害を受けており、うつ病のマーカーであると考えられる。双極性うつ病患者における嗅覚記憶の障害は、寛解後も持続するため、双極性障害の特性マーカーであることが示唆された。単極性うつ病と双極性うつ病は、快楽評価で区分できる」としている。

1105.

慢性期統合失調症外来患者の維持治療におけるLAIと経口剤の比較

 台湾・マッカイ医科大学のSu-Chen Fang氏らは、慢性期統合失調症患者の維持療法において、抗精神病薬治療を長時間作用型注射剤(LAI)のみで行った患者と経口薬(PO)のみで行った患者における精神科サービスの利用率の比較を行った。Human Psychopharmacology誌オンライン版2020年3月17日号の報告。 2011年の台湾全民健康保険研究データベースより、維持療法を受けた慢性期統合失調症患者のコホートを作成し、12ヵ月間のフォローアップを行った。対象患者は、統合失調症と診断されて3年以上、2011年の入院歴がない、維持療法を1年以上受けていた患者とした。精神科サービスの利用を推定するために、inverse probability of treatment weighting (IPTW法)、ロジスティック回帰モデル、線形回帰モデル、負の二項回帰モデルを使用し、LAI群とPO群の共変量の不均衡を調整した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者4万194例中、LAI群は948例(2.36%)、PO群は3万9,246例(97.64%)であった。・LAI群で、PO群と比較し、有意な差が認められたのは以下の点であった。 ●精神科入院率の低さ(5.8% vs.8.4%、オッズ比:0.63、p<0.01) ●入院日数の短縮(65.9日vs.82.8日、係数b:-16.87、p=0.03) ●救急受診の少なさ(1.8回vs.2.3回、係数b:-0.24、p<0.01) 著者らは「LAIで治療された慢性期統合失調症患者は、POで治療された患者と比較し、再発リスクが低く、精神科サービスの利用率が低かった」としている。

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統合失調症や双極性障害患者における寛解後の睡眠と概日リズム障害~メタ解析

 統合失調症では、睡眠障害や概日リズム障害が一般的に認められるが、その特徴はよくわかっていない。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのNicholas Meyer氏らは、寛解期統合失調症患者における睡眠概日変化の重症度や不均一性について比較検討を行った。また、これらのエピソードについて双極性障害患者との比較を行った。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2020年3月10日号の報告。 統合失調症または双極性障害患者を対象としてアクチグラフィーパラメータを調査したケースコントロール研究をEMBASE、Medline、PsycINFOより検索した。患者群と対照群との標準化平均差および平均絶対差は、Hedges' gを用いて定量化し、変動性の差は、平均スケール変動係数比(CVR)を用いて定量化した。統合失調症と双極性障害の患者間のエフェクトサイズは、Wald検定を用いて比較した。 主な結果は以下のとおり。・30研究(患者群:967例、対照群:803例)が抽出された。・統合失調症および双極性障害の両患者群において、対照群と比較し、統計学的に有意な差が認められたのは以下のとおりであった。 ●総睡眠時間の長さ:統合失調症(平均差:99.9分、95%信頼区間[CI]:66.8~133.1)、双極性障害(平均差:31.1分、95%CI:19.3~42.9) ●床に入っている時間:統合失調症(平均差:77.8分、95%CI:13.7~142.0)、双極性障害(平均差:50.3分、95%CI:20.3~80.3) ●睡眠潜時の長さ:統合失調症(平均差:16.5分、95%CI:6.1~27.0)、双極性障害(平均差:2.6分、95%CI:0.5~4.6) ●運動活動の減少:統合失調症(平均差:-0.86分、95%CI:-1.22~-0.51)、双極性障害(平均差:-0.75、95%CI:-1.20~-0.29)・統合失調症では、双極性障害と比較し、総睡眠時間、睡眠潜時、中途覚醒についてのエフェクトサイズが有意に大きかった。・CVRでは、両患者群ともに、総睡眠時間、床に入っている時間、相対振幅(relative amplitude)の有意な上昇が認められた。 著者らは「統合失調症および双極性障害患者では、総睡眠時間の延長だけでなく、睡眠の開始および継続の問題、運動活動の低下が認められた。これらの要因は、睡眠概日フェノタイプに関連している可能性があり、それらを対象とした横断的介入の開発が求められる」としている。

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うつ病の原因リスク遺伝子

 うつ病に関連するいくつかの遺伝的変異は、ゲノムワイド関連解析(GWAS)により特定されている。しかし、リスク遺伝子座において関連シグナルの要因となる原因変異を特定することは、依然として大きな課題となっている。中国・Jining Medical UniversityのXin Wang氏らは、うつ病との因果関連が認められる遺伝子の特定を行った。Journal of Affective Disorders誌2020年3月15日号の報告。 Summary data-based Mendelian Randomization(SMR)とPsychiatric Genomics Consortium(PGC)のGWASサマリーおよび脳の発現定量的形質遺伝子座(expression quantitative trait loci:eQTL)データを用いて、その発現レベルとうつ病との因果関連が認められる遺伝子の特定を行った。次に、うつ病の病因におけるリスク遺伝子の潜在的な役割を調査するため、差次的発現解析、メチル化QTL解析、認知ゲノム解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・SMR統合分析では、ニューロン成長レギュレータ1(NEGR1)遺伝子にあるSNP rs10789336が脳組織のRPL31P12の発現レベルに有意な影響を及ぼし、うつ病リスクに寄与することが確認された(p=0.00000196)。・SNP rs10789336は、以下の3つの近いDNAメチル化部位のメチル化レベルとの関連が認められた。 ●cg09256413(NEGR1):p=0.000000000172 ●cg11418303(プロスタグランジンE受容体3[PTGER3]):p=0.00000478 ●cg23032215(ZRANB2アンチセンスRNA2[ZRANB2-AS2]):p=0.000123・差次的発現解析では、NEGR1遺伝子が前頭前野でアップレギュレートされていることが示唆された(p=0.00514)。・認知ゲノム解析では、SNP rs10789336と関連が認められたのは、以下のとおりであった。 ●認知能力:p=0.000000000000000241 ●学歴:p=0.0000000000000175 ●一般的な認知機能:p=0.00000000000265 ●言語数値推論:p=0.00000000000136 著者らは「NEGR1のSNP rs10789336が、うつ病リスクに影響を及ぼす可能性があることが示唆された。うつ病の病因に対するNEGR1の役割については、さらなる調査が求められる」としている。

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疲れを巡る最新研究(後編)…身体の疲れ?精神疾患?PCR検査で判別する時代に

講師紹介前編へストレスが疲労感を減らす!?近藤講演などで驚かれるのが、「ストレスが疲労感を減らしている」とお話ししたときです。確かにストレスには「疲労を増す」イメージがあるので、意外な感じがすると思います。ここでは、ストレスと呼ばれているものを、その原因である「ストレッサー」とその結果生じる身体の反応「ストレス応答」という2つに分けて考えてみましょう。脳がストレスの原因となるストレッサーを感知すると、脳の視床下部が反応し、副腎からコルチゾールとアドレナリンが出ます。これがストレス応答です。コルチゾールには抗炎症作用があって疲労感の原因である炎症性サイトカインの産生を抑えます。一方のアドレナリンには興奮作用があり、この2つの物質が作用する結果として、疲労感が減ります。つまり、疲労感は身体に「休め」というブレーキをかける役割を担い、ストレス応答は「行け」とアクセルを踏む役割を担うことで、両者がバランスを取っているのです(図4)。皆さんもあまりにも仕事が忙しいと、逆にしばらく疲れを感じなかった、という経験をされたことがあるのではないでしょうか。これは、仕事のプレッシャーがストレッサーとなってストレス応答を誘導し、疲労感を抑制してしまっている状態だと考えられます。画像を拡大するやりがちな「かえってマイナス」の疲労回復法近藤しかし、視床下部や副腎は消耗しやすい組織です。使い続けるうちにコルチゾールが減少して疲労抑制効果がなくなり、強い疲労感が前面に出てきます。ここで気を付けたいのは身体の疲労がマックスなのに疲労感をあまり感じない状態でいるため、「ストレスを解消しなきゃ」と考えて、さらに身体に負担をかける行動をとってしまうことです。具体的には、強度のスポーツ、長い入浴など、身体に負担をかける行為が挙げられます。このようなストレス解消法は、身体の疲労がある場合は避けたほうがよいのです。お薦めは、散歩や軽めの運動、音楽を聴く、きれいな景色を見るなど、「身体に負担をかけないストレス解消法」です。一方、「病的疲労」といって、身体がまったく疲れていないのに、脳が疲労感を持つケースもあります。これはうつ病などの中枢神経疾患が原因で起こる場合が多く、労働や運動で生じる身体の疲労とは異なる治療が必要となります。「身体の疲労」と「病的疲労」の見分け方近藤では、どうやって身体の疲労と病的疲労を見分ければよいのでしょう?また、ヘルペスの話に戻りましょう。前回、リン酸化した疲労因子が増えてタンパク質を合成できなくなり、臓器の働きが低下したり機能障害が起きたりすることが身体の疲れの原因、と説明しました。疲労因子が増加すればHHV-6やHHV-7の再活性化が起こり、唾液中に大量のウイルスが放出されます。つまり、「唾液中のHHV-6やHHV-7が増加していれば、身体が疲れている証拠」だといえるわけです。実際、労働時間の異なるヒトの唾液を採取し、ヒトヘルペスウイルス(HHV-6、HHV-7)を測定して比較したところ、「週40時間以上労働している人」(身体が疲労している人)は40時間未満労働している人(健康な人)に比べて、大幅に唾液中のウイルス量が多いことがわかりました。一方で、うつ病や筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群など、「身体の疲労」以外の要因から疲労感を訴えるケースでは、ウイルス量は健康な人と比べて同じかむしろ減る傾向がありました。つまり、「強い疲れ」という主訴の患者のHHV-6やHHV-7の量を検査することで、内科的治療がよいのか精神科的疾患や神経内科的疾患を考慮すべきなのかが、すぐに判断できるというわけです(図5)。画像を拡大するこの検査は、新型コロナウイルスで有名になったPCR検査です。HHV-6/HHV-7のPCR検査は保険適用外であり、まだ限られた医療機関でしか扱っていませんが、医療者の皆さんの関心の高まりと今後の広がりを期待しています。地味だけど確実な「疲労回復法」はこれ近藤「いろいろ言ってるけれど、結局どうやったら疲れはとれるの?」というのが皆さんの最も知りたいことかと思います。疲労の原因となる疲労因子はリン酸化したelF2αでした。このリン酸化をリセットして正常な状態に戻す「eIF2α脱リン酸化酵素」というものがあります。疲労因子に対して「疲労回復因子」と呼んでいます。疲労回復因子は、軽い運動によって誘導されます。また、疲労回復因子の誘導を助ける食品は、納豆・チーズ・玄米・大麦・玉ネギ・カレーに使うターメリックなどが挙げられます。また、ビタミンB1が不足すると疲労回復因子が誘導されにくくなります。これらの共通点は「抗酸化作用が強くない」こと。いわゆる「疲労回復」のイメージがあるニンニク・ウナギ・赤身肉などはこの抗酸化作用が強いので、前回にお話ししたように疲労感をとるだけの「見せかけの疲労回復」になる可能性があるのです。「疲労回復因子(eIF2α脱リン酸化酵素)」の誘導を助ける食品をしっかり摂取して、軽い運動をし、ストレスを軽減するためのリラックス法を行うというのが、地味ながらも正しい疲労回復法だと考えられます。医療者の皆さんも疲労とその機序を知り、患者さんや皆さん自身の診療やケアに、ぜひ役立ててください。書籍紹介『疲労ちゃんとストレスさん』にしかわたく(漫画・原作)・近藤一博(監修・原作)河出書房新社近藤氏の長年の研究成果と疲労に関する複雑な仕組みを、漫画家のにしかわ氏がストーリー&漫画化。疲労がどのように起きるのか、どのように回復するのか、擬人化されたキャラクターたちでわかりやすく解説した一冊。

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慢性期統合失調症に対するボルチオキセチン補助療法

 新規抗うつ薬ボルチオキセチンは、統合失調症の補助療法に期待される治療薬となる可能性がある。イラン・Tehran University of Medical SciencesのEhsan Mozen-Zadeh氏らは、統合失調症の陰性症状に対するボルチオキセチンの効果について評価を行った。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2020年3月2日号の報告。 慢性期統合失調症入院患者78例を対象とした、8週間のランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間試験を実施した。対象患者は、2ヵ月間のリスペリドン(4~6mg/日)治療で安定した後、ボルチオキセチン(10mg 1日2回)群またはプラセボ群にランダムに割り付けられた。主要アウトカムは陰性症状の改善とし、副次アウトカムは総合精神病理およびすべての症状とした。試験期間中の患者の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、錐体外路症状評価尺度(ESRS)、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)を用いた。すべての患者のベースライン時のPANSS陰性症状サブスケールスコアは、16以上であった。試験を完了した患者は、68例であった。 主な結果は以下のとおり。・ボルチオキセチン群は、プラセボ群と比較し、ベースラインから8週目のエンドポイントまで陰性症状スコアおよびPANSS合計スコアが有意に良好であった。 ●陰性症状スコア 平均差:-1.82、95%信頼区間(CI):-2.73~-0.92 ●PANSS合計スコア 平均差:-2.09、95%CI:-3.16~-1.01・PANSSの陽性症状スコアおよび総合精神病理スコアは、両群間に有意な差は認められなかった。・有害事象の発生率は、両群間で同等であった。 著者らは「本研究は、抗精神病薬治療中の統合失調症患者における、ボルチオキセチン補助療法の陰性症状に対する効果を明らかにした初めての報告である」としている。

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こころとからだの質問票(PHQ-9)によるうつ病評価の信頼度

 うつ症状のアンケートは、診断を分類するためのものではない。しかし、うつ病の有病率を推定するために、こころとからだの質問票(PHQ-9)のスコア10以上の患者をうつ病患者と定義することがある。カナダ・マギル大学のBrooke Levis氏らは、PHQ-9スコア10以上と構造化面接(Structured Clinical Interview for DSM:SCID)によるうつ病の有病率を比較し、PHQ-9のカットオフ値が有病率を正確に推定できるかについて評価を行った。Journal of Clinical Epidemiology誌オンライン版2020年2月24日号の報告。PHQ-9スコア10以上によるうつ病有病率は過大評価している可能性 PHQ-9スコアとSCIDのうつ状態を比較するためのデータセットを用いて、メタ解析を実施した。 PHQ-9のカットオフ値が有病率を正確に推定できるかについて評価した主な結果は以下のとおり。・主要な44研究より、9,242例(SCIDうつ病症例:1,389例)が抽出された。・プールされた有病率は以下のとおりであった。 ●PHQ-9スコア10以上:24.6%(95%CI:20.8~28.9) ●SCIDうつ病:12.1%(95%CI:9.6~15.2)・有病率の差は、11.9%(95%CI:9.3~14.6)であった。・研究レベルのPHQ-9スコア10以上の平均有病率は、SCID基準の2.5倍であった。・SCIDうつ病有病率と最も近い有病率が示されたのは、PHQ-9スコア14以上およびPHQ-9診断アルゴリズムであったが、研究レベルでの有病率は、SCID基準の有病率とは異なっており、それぞれの平均絶対差は以下のとおりであった。 ●PHQ-9スコア14以上:4.8%(95%CI:-13.6~14.5) ●PHQ-9診断アルゴリズム:5.6%(95%CI:-16.4~15.0) 著者らは「個々の研究において、統計的に修正する不均一性が多過ぎる」としながらも「PHQ-9スコア10以上によるうつ病有病率は、過大評価している可能性がある」としている。

1111.

ラツーダ:2つの精神疾患に適応を有する新たな非定型抗精神病薬

2020年3月25日、ラツーダ錠(一般名:ルラシドン塩酸塩)が「統合失調症」および「双極性障害におけるうつ症状の改善」を効能・効果として承認された。3月時点で、ラツーダ錠は統合失調症に関わる効能・効果では欧米を含む47の国または地域、そして双極I型障害うつに関わる効能・効果では米国を含む7つの国または地域で承認されている。「統合失調症」や「双極性障害におけるうつ症状」に対する有用な治療選択肢は日本では、近年、精神疾患のために医療機関を受診する患者が大幅に増加しており、その数は400万人を超えた。このうち、約80万人の患者が統合失調症と推計されている。統合失調症の主な症状は、陽性症状、陰性症状および認知障害であるが、これら症状の組み合わせは患者によって異なるため、病態は多岐にわたる。一方、双極性障害は数十万人の患者が存在すると考えられている。双極性障害は躁状態とうつ状態とを繰り返すが、うつ状態を呈する期間が長い傾向にある。さらに、精神疾患の中でも自殺企図率が高いため、日常生活に重大な影響を及ぼしやすい。このような背景を持つ両疾患では、非定型抗精神病薬による薬物治療が主流であった。しかし、体重増加や耐糖能異常など特徴的な副作用が懸念されることから、既存の非定型抗精神病薬の有する有効性に加え、その特徴的な副作用を軽減した新たな薬剤が求められている。有効性と非定型抗精神病薬に特徴的な副作用の軽減との両立を期待ルラシドンはドパミンD2、セロトニン5-HT2Aおよびセロトニン5-HT7受容体のアンタゴニスト、そしてセロトニン5-HT1A受容体のパーシャルアゴニストとして作用することで、陽性症状、陰性症状および認知障害を改善すると考えられている。その一方で、ヒスタミンH1やムスカリンM1受容体に対する親和性は低いため、体重増加などの非定型抗精神病薬の懸念点を軽減することが期待される。プラセボ対照試験で両疾患の症状改善を確認ルラシドンの承認は、統合失調症患者を対象とした国際共同第III相試験(PASTEL、JEWEL)および継続長期試験(JEWEL継続)、双極I型障害うつ患者を対象としたELEVATE試験の試験結果に基づいている。JEWEL試験では、DSM-IV-TR基準により統合失調症と診断された患者を、ルラシドン40mg/日群とプラセボ群に無作為に割り付け、有効性と安全性を検討した。主要評価項目である「投与6週間後におけるPANSS合計スコアのベースラインからの変化量」は、プラセボ群-12.7に対してルラシドン40mg/日群-19.3(p<0.001)であり、有意な改善を示した。また、ELEVATE試験では、DSM-IV-TR基準により双極I型障害うつと診断された患者を、ルラシドン80~120mg/日群および20~60mg/日群、プラセボ群の3群に無作為に割り付け、有効性と安全性を検討した。主要評価項目である「投与6週間後におけるMADRS合計スコアのベースラインからの変化量」は、プラセボ群-10.6に対してルラシドン80~120mg/日群-12.6(調整済p値:0.057)、ルラシドン20~60mg/日群-13.6(調整済p値:0.007)であり、20~60mg/日群において有意な改善を示した。JEWEL試験、ELEVATE試験の両試験において、ルラシドンの忍容性に関して大きな問題は認められなかった。新たな治療選択肢への期待ルラシドンは、上記以外にいくつもの試験が実施されており、統合失調症(維持期)患者に対する長期投与による再発リスクの低下や、既存の抗精神病薬で効果不十分な統合失調症患者におけるPANSS合計スコアの低下および体重増加の抑制などが示唆されている。従来の非定型抗精神病薬の懸念点を軽減したルラシドンの登場は、長期間の治療が必要となる両疾患の患者にとって、有用な治療選択肢になるのではないだろうか。今後、長期の使用経験が積まれ、その有用性が検証されることが期待される。

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第2世代抗精神病薬LAIの実行機能に対する影響

 第2世代抗精神病薬(SGA)の経口剤から長時間作用型注射剤(LAI)への変更は、認知機能を改善する可能性がある。イタリア・Magna Graecia University of CatanzaroのFabio Magliocco氏らは、SGA-LAIで治療された統合失調症患者における認知機能への影響について評価を行った。さらに、独立したリアルワールドにおける2つの異なるSGA-LAI(月1回のパリペリドンパルミチン酸[PP1M]、月1回のアリピプラゾール[AOM])治療について直接比較を行った。International Journal of Psychiatry in Clinical Practice誌オンライン版2020年3月5日号の報告。 対象は、12ヵ月以上連続して募集した統合失調症患者32例。AOM治療患者17例、PP1M治療患者10例が、精神病理学的、神経心理学的、機能的評価を完了した。群間の比較には、必要に応じてカイ二乗検定とt検定を行った。12ヵ月間の認知機能の変動を調査するため、GLM反復測定を用い、薬剤間での差をテストした。 主な結果は以下のとおり。・調査結果に対する時間の影響が認められたが、薬剤間での差は認められなかった。・SGA経口剤を使用した以前の研究と比較して、SGA-LAIの使用により、12ヵ月後の神経認知機能の有意な改善が認められた。・SGA-LAIのレジメン間での差は認められなかった。 著者らは「SGA経口剤治療ですでにベネフィットを得ている患者でも、SGA-LAIへ切り替えることで、社会的および認知的改善が期待できる」としている。

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疲れを巡る最新研究(前編)…エナジードリンク頼みの疲労回復法がとても怖い理由

講師紹介長年の研究で判明した、ウイルスと疲労の「深い関係」近藤なぜ、ウイルスを専門とする私が疲労の研究をしているのか、最初はいつも不思議がられます。私の所属はウイルス学講座で、長年ヒトヘルペスウイルス(HHV)を研究してきました。研究を進めるうちに、疲労・ストレスとヘルペスウイルスの間に深い関係があることがわかってきたのです。性器ヘルペスが知られているので、ヘルペスというとちょっと下ネタ的なイメージもありますが(笑)、私の専門は赤ちゃんの突発性発疹を起こすHHV-6とHHV-7です。3大生体アラームなのに研究が進んでいない「疲労」近藤そもそも、疲労の研究は世界的にマイナーです。日本では「疲労はうつや過労死といった疾患の要因になる」ということが一般的に受け入れられていますが、海外ではそうした認識自体がなく、慢性疲労症候群など「疾患の症状」としての認識しかありません。「疲労」は、「痛み」や「発熱」と並ぶ3大生体アラームです(図1)。それなのに、その原因・伝達物質も回復因子もまったくと言っていいほど解明されてこなかったのです。痛みや発熱は、その原因物質を見つけた人がノーベル賞を取っているほどなのに…。画像を拡大する「疲労感」と「身体の疲れ」は異なるもの近藤そもそも、まず知っておいていただきたいのが「疲労感」と「身体の疲れ」は別のもの、ということです。図1の右上にある炎症性サイトカインが、疲労研究のカギとなる存在です。炎症性サイトカインは、風邪などのウイルスが体内に侵入したときなどに、免疫細胞が出すことが知られている物質です。この炎症性サイトカインが脳に作用して「疲れた」と感じる、いわゆる「疲労感」を生み出します。風邪などの病気のときに疲れを感じるのはこのためです。一方で、健康な人も仕事や運動によって疲れを感じますが、この場合、免疫細胞は攻撃対象がいないはずですよね? では、なぜ疲れを感じるのでしょう?ここで、私の専門「ヘルペス」の登場です。ヘルペスウイルスは、感染しても多くの場合は症状が出ず、感染者はウイルスを潜ませたまま普通に生活しています(潜伏感染)。しかし、感染者が何らかの異常事態に見舞われると潜んでいたウイルスはそれを察知し、爆発的に数を増やして別の宿主に移ろうとします(再活性化)。私の専門のHHV-6やHHV-7は疲労を「異常事態」と見なして再活性化することを見いだしたのです。また、私たちは、HHV-6が危険を察知する信号となるのが「elF2α」という因子であることも発見しました。身体に疲労の負荷がかかると、このelF2αがリン酸と結合して「リン酸化elF2α」となり、その割合が一定を超えるとHHV-6がそれを察知して再活性化するのです。通常、elF2αはタンパク質を合成する役割があるのですが、リン酸化することでこの仕事ができなくなり、結果として臓器の働きが低下したり、機能障害が起きたりします。これが身体の疲労の原因です(図2)。画像を拡大する最初に出てきた疲労感の要因となる炎症性サイトカインも、このリン酸化elF2αの増加が引き金になって作られるので、疲労のカギとなる物質としてリン酸化elF2αのことを「疲労因子」と呼んでいます(図3)。画像を拡大する「エナジードリンク飲み過ぎ」が怖い理由近藤疲労感と身体の疲労が別物だと知っておくことの大切さは、身近なところにあります。多くの方は、疲労回復のために「エナジードリンク」を飲んだことがあるのではないでしょうか? 多くのエナジードリンクには「抗酸化作用」のある物質が入っています。私たちはこの抗酸化作用を持つ物質の代表格である「N-アセチルシステイン(NAC)」をマウスに注入し、疲労との関係を調べる研究を行いました。その結果、NACは肝臓における炎症性サイトカインの産生を低下させ、疲れを身体に伝えるアラームとなる疲労感を減少させることがわかりました。これが「疲れがとれた」と感じる理由です。しかし、ほかの臓器では疲労因子が増え続け、タンパク質合成が抑制されて臓器組織の機能低下が起こり続けることもわかりました。結果として、疲労感がないために無理をし続けて身体を壊す、ひどい場合は突然死につながる、などといったことが起こる可能性があるのです。近藤突然死とまでいかなくとも、「エナジードリンクを飲み続けて、いきなりやめたらぐったりした」という経験をされた方はいないでしょうか? これも「疲労感をまひさせる」抗酸化物質の影響です。まひする効果が切れたために、それまで蓄積していた疲労を一気に感じるのです。エナジードリンクは「緊急時に疲れをまひさせるもの」と認識し、摂り過ぎないようにすることが重要です。同様の働きをするものにカフェイン、抗酸化剤入りサプリ、ニンニクなどがあり、これらも摂り過ぎに注意が必要です。さらに、日本では薬機法に触れるために販売されていませんが、海外のエナジードリンクには大量の「タウリン」を含むものがあります。タウリンも抗酸化作用を持つ物質であり、上記のようなメカニズムで疲労感をまひさせてしまう可能性があります。実際、海外のエナジードリンクでは、過剰摂取した若者が死亡に至る事故も報告されています。一般に、このような事故は「カフェインの過剰摂取が原因」と解説されることが多いのですが、カフェインに加えて抗酸化物質が作用することで、疲労感がまひし、身体の異常に気付かず手遅れになった、という側面が大きいと考えています。後編へ書籍紹介『疲労ちゃんとストレスさん』にしかわたく(漫画・原作)・近藤一博(監修・原作)河出書房新社近藤氏の長年の研究成果と疲労に関する複雑な仕組みを、漫画家のにしかわ氏がストーリー&漫画化。疲労がどのように起きるのか、どのように回復するのか、擬人化されたキャラクターたちでわかりやすく解説した一冊。

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月1回アリピプラゾールへの切り替えの有効性と忍容性

 韓国・カトリック大学校のChi-Un Pae氏らは、統合失調症における月1回アリピプラゾール(AOM)のリアルワールドデータを収集し、評価を行った。Clinical Psychopharmacology and Neuroscience誌2020年2月29日号の報告。 統合失調症治療のために抗精神病薬の多剤併用(APpoly)またはアリピプラゾール以外の他の長時間作用型注射剤(LAI)で治療された患者において、AOMの初回使用後最大12ヵ月間の観察研究を行った。人口統計、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、臨床全般印象度(CGI-S)、有害事象などの利用可能な臨床情報を電子医療記録(EMR)より収集した。 主な結果は以下のとおり。・APpolyまたはLAIからAOMへ切り替えた患者は18例であった。・AOM使用前の平均AP数は、以前の治療不良時で2.2、使用直前で2.4であった。最も使用されていたAPは、アリピプラゾール、ブロナンセリン、クエチアピン、リスペリドンであった。・AOM使用により平均AP数は、12ヵ月間で0.7まで有意な減少が認められた(p<0.0001)。・12ヵ月間で、PANSS合計スコア(71.7→62.1、p=0.000)、CGI-Sスコア(3.4→3.1、p=0.008)の有意な減少が認められた。・観察期間中のベースラインからの変化では抗不安薬を含む向精神薬の有意かつ実質的な減少が認められた。・軽度な手の振戦およびアカシジアが3例で認められた。 著者らは「APpolyまたはLAI治療の統合失調症患者に対するAOMの使用は、効果的かつ忍容性が良好な治療オプションであることが確認された。今後、適切に設計された臨床試験が望まれる」としている。

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長時間作用型注射剤と経口の抗精神病薬との比較

 治療継続やアドヒアランスは、精神疾患の有効なアウトカムと関連する。精神疾患患者の治療継続やアドヒアランスを改善するための最良の選択肢の1つとして、経口抗精神病薬よりも長時間作用型注射剤(LAI)が挙げられる。イタリア・ASL Pescara General HospitalのAlessia Romagnoli氏らは、抗精神病薬のアドヒアランス、治療継続、切り替えを評価し、実臨床におけるLAIと経口剤との比較を行った。Current Clinical Pharmacology誌オンライン版2020年3月9日号の報告。 2011年1月~2019年2月に、イタリア・ASL Pescara General Hospitalで抗精神病薬治療を受けたすべての患者を対象に、薬理学的非介入レトロスペクティブ観察研究を実施した。アドヒアランスは、受け取った1日量と使用した1日量の比で測定した。抗精神病薬治療の継続性は、治療開始と終了の日々の差として算出した。 主な結果は以下のとおり。・アリピプラゾール治療患者840例、パリペリドン治療患者130例、リスペリドン治療患者925例を調査した。・アドヒアランスは、以下のとおりであり、LAIは経口剤と比較し、有意に優れていた。 ●アリピプラゾールLAI:0.89 ●パリペリドンLAIとリスペリドンLAI:0.82 ●アリピプラゾール経口剤:0.78 ●パリペリドン経口剤:0.70 ●リスペリドン経口剤:0.58・治療3年間にわたる継続曲線では、統計学的に有意な差は認められなかった(p=0.3314)。・製剤に基づく継続曲線でも、統計学的に有意な差は認められなかった。・切り替えが行われた患者の割合は、アリピプラゾール治療患者7%、リスペリドン治療患者12%、パリペリドン治療患者28%であった。 著者らは「本研究のいずれの薬剤においても、経口剤よりもLAIのほうがアドヒアランスが良好であったが、治療継続については、統計学的に有意な差が認められなかった」としている。

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慢性期統合失調症における抗精神病薬の減量・中止と再発リスク~メタ解析

 慢性期統合失調症患者に対する高用量の抗精神病薬使用は、より重篤な副作用につながり、リカバリーを妨げる可能性がある。しかし、抗精神病薬の減量は精神症状の再発リスクを伴うため、減量による再発のリスク因子を特定することは臨床に役立つと考えられる。オランダ・Mental Health Services RivierduinenのJan P. A. M. Bogers氏らは、慢性期統合失調症における抗精神病薬の減量または中止と再発リスクに関するシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2020年3月2日号の報告。 MEDLINE、EMBASE、PsycINFOより、1950年1月~2019年6月までの文献をシステマティックに検索し、慢性期統合失調症コホートにおける抗精神病薬の減量または中止後の再発率(イベント率:ER)について報告した研究をレビューした。1人年あたりのER、95%信頼区間(CI)を算出し、潜在的なリスク因子、患者特性、減量・中止の特徴、研究特性の特定を試みた。 主な結果は以下のとおり。・165の文献から46コホート(1,677例)における、抗精神病薬の減量または中止について記載された40件を研究に含めた。・精神症状再発のプールされたERは、1人年あたり0.55(95%CI:0.46~0.65)であった。・有意に高いERは以下において認められた。 ●入院患者 ●短い罹病期間の患者 ●抗精神病薬を中止、またはハロペリドール換算5mg未満に減量された患者 ●フォローアップが短期間または1990年以前に発表の研究 ●臨床的判断に基づいた(評価尺度を使用していない)再発の研究 著者らは「慢性期統合失調症に対し抗精神病薬の減量を行う場合には、精神症状の再発に対する強いリスク因子を考慮する必要がある」としている。

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双極性障害における強迫症の合併~メタ解析

 双極性障害(BD)患者では、強迫症(OCD)を併発することが多いといわれている。OCD併発のBD患者では、その症状やマネジメントが複雑化する。しかし、BD患者のOCD有病率は、明らかにはなっておらず、研究や最近のメタ解析により大きく異なっていた。ギリシャ・National and Kapodistrian University of AthensのPanagiotis Ferentinos氏らは、BDの横断的研究または生涯OCD有病率に関する研究のシステマティックレビューとメタ解析を実施。推定有病率の決定因子をメタ回帰により評価し、うつ病患者および一般集団との比較を行った。Journal of Affective Disorders誌2020年2月15日号の報告。 2019年1月までに公表された英語の関連文献を、PubMed、MEDLINEより検索した。有病率は、メタ解析前にFreeman-Tukey double arcsine transformationを用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・横断的に有病率を報告した研究は29件(6,109例)、生涯有病率を報告した研究は39件(8,205例)であった(8件は両方の報告)。・変量効果モデルでは、BD患者におけるOCD併発の推定値は以下のとおりであった。 ●生涯有病率:10.9%、95%CI:7.8~14.4 ●横断的有病率:11.2%、95%CI:7.6~15.3・一般集団の推定値は、生涯有病率2.5%、横断的有病率1.6%であった。・研究設定(疫学または臨床)、診断基準、手順、性別、BDサブタイプ、寛解状態は、メタ解析における推定有病率の不均一性に影響を及ぼさなかった。・年齢は、生涯有病率と小さいながらも有意な負の相関が認められた。・BD患者のOCD有病率は、うつ病患者と有意な差は認められなかった。 著者らは「BD患者の生涯OCD有病率は、一般集団の4.4倍であった。横断的有病率も生涯有病率と同様に高く、BD患者のOCD併発は、一般集団よりも慢性的で持続的であった」としている。

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日本人女性の出産前後の抗うつ薬処方

 東北大学の石川 智史氏らは、日本人女性における周産期の抗うつ薬処方率や処方パターンについて、調査を行った。Journal of Affective Disorders誌2020年3月1日号の報告。 妊娠前180日~産後180日の抗うつ薬処方率を調査するため、大規模管理データベースを用いて評価した。妊娠開始日および出産日は、アルゴリズムを用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象は、女性3万3,941人。・抗うつ薬が1剤以上処方されていた女性は、妊娠前180日~産後180日の期間で451人(133/1万分娩)、妊娠中では241人(71/1万分娩)であった。・抗うつ薬の処方率は、妊娠初期および中期に減少し、産後に増加した。・妊娠前に抗うつ薬を処方されていた339人中、妊娠中に抗うつ薬を中止した女性は151人(44.5%)であった。・研究期間中に最も頻繁に処方された抗うつ薬は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(356人、105/1万分娩)であり、次いで三環系/非三環系抗うつ薬(101人、30/1万分娩)であった。・妊娠初期にパロキセチンを1回以上処方されていた57人中13人(22.8%)は、パロキセチン25mg/日超で処方されていた。・妊娠前180日~産後180日に2種類以上の抗うつ薬を同時に処方されていた女性は、57人(17/1万分娩)であった。・本研究の限界として、処方された抗うつ薬が実際に使用されたとは限らない点、妊娠中に中絶または死産した女性は含まれていない点が挙げられる。 著者らは「日本では、出産前および産後の女性に対し、さまざまな抗うつ薬が処方されていた。また、妊娠した女性の約半数は、妊娠後に抗うつ薬での治療を中止していた。出産可能年齢の女性は、リスクやベネフィットのプロファイルに応じて、適切な抗うつ薬を選択する必要がある」としている。

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MADRSとHAMDの新規抗うつ薬の有効性に関する比較~メタ解析

 ハミルトンうつ病評価尺度(HAMD)に基づく有効性の推定は、その貧弱な心理測定特性のために、抗うつ薬の真の治療効果を過小評価している可能性があるといわれている。スイス・Zurich University of Applied SciencesのMichael P. Hengartner氏らは、ゴールデンスタンダードであるMontgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)とHAMDに基づく有効性の推定値の比較を行った。PLOS ONE誌2020年2月26日号の報告。MADRSとHAMDに基づく抗うつ薬の有効性の推定値に有意な差はない Ciprianiらから提供された急性期における抗うつ薬試験の包括的なデータセットを用いて、メタ解析を実施した。対象研究は、HAMD-17またはMADRSに基づき継続的にアウトカムを測定したプラセボ対照試験とした。エフェクトサイズ推定値の標準化平均差と薬剤とプラセボの生スコアの差を算出し、臨床医の評価による最小改善(臨床的に有意)の閾値を評価した。 MADRSとHAMDに基づく抗うつ薬の有効性の推定値の比較を行った主な結果は以下のとおり。・HAMD-17で評価した109試験(3万2,399例)およびMADRSで評価した28試験(1万1,705例)が抽出された。・サマリ推定値(エフェクトサイズ)は、HAMD-17で0.27(0.23~0.30)、MADRSで0.30(0.22~0.38)であり、その差はわずか0.03であった。サブグループ解析(p=0.47)およびメタ回帰(p=0.44)による統計学的に有意な差は認められなかった。・薬剤とプラセボの生スコアの差は以下のとおりであった。 ●HAMD-17:2.07(1.76~2.37)、最小改善の閾値:臨床医7pt、患者4pt ●MADRS:2.99(2.24~3.74)、最小改善の閾値:臨床医8pt、患者5pt 著者らは「全体として、HAMD-17とMADRSの有意な差が認められなかった。HAMD-17による評価が抗うつ薬の治療効果を過小評価しているわけではない。また、薬剤とプラセボの生スコアの差は、治療効果がわずかであることを示しており、平均的な患者にとって治療効果の重要性が疑わしいことが示唆された」としている。

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統合失調症患者に対するアリピプラゾール持続性注射剤の投与経路変更の受け入れ調査

 統合失調症患者の服薬アドヒアランスを改善するために、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬が使用される。しかし、日本ではまだ一般的ではない。現在、アリピプラゾールLAIの投与は、臀部筋肉内に加え三角筋内への投与が可能となっている。名城大学の亀井 浩行氏らは、アリピプラゾールLAIの投与経路を臀部から三角筋へ変更することによる、患者の受け入れ状況について調査を行った。Clinical Psychopharmacology and Neuroscience誌2020年2月29日号の報告。 対象は、アリピプラゾールLAIの臀部筋肉内投与を6ヵ月以上行った統合失調症外来患者32例。三角筋内への投与に切り替えた3ヵ月後に、痛みや恥ずかしさの変化について評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・投与経路の切り替えは、32例中17例が選択した。・3ヵ月後、9例が満足のいく評価をし、三角筋内への投与を継続していた。・三角筋内投与へ切り替える際の主な理由は、臀部筋肉内投与に関連する注射部の痛みと恥ずかしさであった。・三角筋から臀部筋肉内投与へ戻す際の主な理由は、三角筋内投与で経験する痛みであった。 著者らは「注射部位を選択できることは、アリピプラゾールLAI使用の普及につながるであろう」としている。

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