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診療に役立つLGBTQsの基礎知識

 LGBTという言葉を聞いたことはありますか? これは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字をとった言葉で、セクシュアルマイノリティの総称として使われています。多様性を強調するためにQuestioningを加えて、LGBTQsと表現することもあります。 性の多様性に関する知識は診療にも必要不可欠です。当事者が声を上げ始め、各自治体による同性パートナーシップ制度の成立などの社会変化もある今、知らないでは済まされない時代になりつつあります。今回はCareNeTVで配信中の「診療に役立つLGBTQsの基礎知識」講師で、川崎協同病院総合診療科・にじいろドクターズの吉田 絵理子氏に医師が知っておくべきことを聞きました。なぜ性的マイノリティの人々についての理解が必要なのでしょうか? 性的マイノリティの人々は、差別や偏見、いじめといった社会的困難に遭遇しやすいことを背景として、国内外においてさまざまな疾患リスクが高いことが報告されています。例えば、性的マイノリティ全般においてうつ病や自殺企図、物質依存のリスクが高い1)ことが報告されています。また、男性と性交渉する男性のHIV感染リスクが高い2)ことは広く知られていますが、学校での性教育は異性愛を前提としているため、同性間でのセーファーセックスに関する知識を得る機会が限られているといった課題があります。さらに安心して定期的に性感染症のチェックを受けられるような医療機関は非常に限られているのではないでしょうか。日常診療でLGBTQsの方々に出会っているのでしょうか? 電通ダイバーシティ・ラボが2018年に行った調査結果では、回答者の約9%がLGBTQsに相当したと報告しています3)。この数値をそのまま当てはめられるわけではありませんが、外来では1コマあたり1人以上のLGBTQsの患者さんを診ているかもしれないということです。何科の医師であっても、診療している患者さんの中にはLGBTQs当事者の方がいると考えられます。LGBTQsの人を診たことがないのではなく、診ていることに気付いていないのです。すべての人にかかわるSOGIという概念とは? SOGIとは、Sexual Orientation(性的指向)とGender Identity(性自認) の頭文字をとった言葉です。性的指向は性愛・恋愛の対象、性自認は自分の性をどう認識しているか、です。SOGIはLGBTQsの人だけではなく、すべての人にかかわる概念です。あらゆるSOGIの人が受診しやすい環境を整えること大切です。また職員の中にも性的マイノリティの人はいますので、あらゆるSOGIの人が働きやすい環境作りも同様に重要です。問診で必要な情報を聴取するには? 当事者の中には、医療者から差別的対応を受けたことをきっかけに、セクシュアリティに関係する事柄を医師に話さない・話せない・話したくない、と思う方もいらっしゃいます4)。さらに深刻な場合は、受診自体を控えるケースもあります5)。 例えばうつ病で通院していても性的指向・性自認についての悩みを話せていないという声もありますし、同性・異性それぞれのパートナーがいる患者が性感染症を心配して受診した際に、性行為についての正確な情報を医師に開示できないために、適切な診断や予防医療の提供、セーファーセックスの指導が行われていない、といったことも起きています。セクシュアリティにかかわらず使える問いかけは? こういったことを防ぐには、多様なセクシュアリティの人が受診しているということを前提とした問診の基本を知っておく必要があります。 例えば、「結婚していますか」「(女性に対して)彼氏はいますか」という質問は異性愛を前提としていますが、「パートナーの方はいますか」というジェンダーに中立的な聞き方であれば異性・同性どちらも含まれます。セクシュアルヒストリーについて聴取する際にも異性間の性交渉を前提とはせずに、「正確な診断をする上で必要なので皆さんに伺っているのですが、性行為の相手は男性ですか女性ですかそれとも両方ですか」といった問いかけ方をするとよいでしょう。 性的指向、性自認、性行動について決めつけてしまうことが診療の妨げになりうるということもぜひ押さえてほしい事柄です。例えばトランス男性(出生時に割当てられた性別が女性で、性自認が男性)の人が、女性を好きになるとは限りません。トランス男性でゲイという人もいますし、男性との性交渉で妊娠することもありえます。 問診には技術も必要ですが、最も大切なことは、個人的な感情がどうあれ、医師として患者さんのあり方を尊重しサポーティブな態度で接することだと思います。施設単位で受診ハードルを下げる工夫は? 施設単位で行えることもあります。トランスジェンダーの方が受診しやすくなるように、問診票の性別欄を男女の二択ではなく自由記載ができるようにする、呼び入れを番号で行う、または通称名の使用ができることをわかりやすく伝えるといったことができます。トイレや入院着などもジェンダーで分けずに使えるものを準備することも大切です。 ハード面の工夫もさることながら、とくに重要なのは、スタッフの守秘義務の徹底です。セクシュアリティについて、患者の家族であっても本人の同意なく開示しないこと。どこまで自身のセクシュアリティを開示するかはあくまで本人が決めることです。関係するスタッフの間で対応が統一されるよう、とくに注意を要する事柄です。今後の展望をお聞かせください LGBTQsといってもセクシュアリティごとに健康リスクは異なります。あらゆるセクシュアリティの人が、日本全国どこででも、予防も含めた適切な医療サービスを安心して受けられるよう、そうした知識も広げていきたいと思っています。今までLGBTQsに馴染みがなかった先生方が、多様なセクシュアリティに配慮した環境を整備するのはハードルが高いと思われるかもしれません。すべてではなく、できること1つでも取り組むことから始めていただければ、それは多くの方の安心につながっていきます。ぜひ、一緒に取り組んでいきましょう。吉田 絵理子氏(川崎協同病院総合診療科・にじいろドクターズ)2003年京大理学部卒後、阪大医学部に学士編入。07年卒業。川崎協同病院での初期研修、聖隷三方原病院で後期研修ののち、11年より現職。総合診療医を中心とした「にじいろドクターズ」では、主に医療従事者を対象に性の多様性と医療に関する学びの場などを提供している。■関連コンテンツCareNeTV「診療に役立つLGBTQsの基礎知識」■参考文献・参考サイトはこちら1) King.M, et al. BMC Psychiatry. 2008;8:e1-17.  Haas AP, et al. J Homosex. 2011;58:10-51. .2) 厚生労働省エイズ動向委員会.2018年エイズ発生動向年報.2018.3) 株式会社電通コーポレートコミュニケ―ション局広報部. dentsu NEWS RELEASE 2019. 4) 性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する法整備のための全国連合会. 性的指向および性自認を理由とするわたしたちが社会で直面する困難のリスト(第3版). 2019.5) 浅沼智也ら.GID/トランスジェンダーの医療機関に関するアンケート調査結果. GID学会 第21回研究大会・総会プログラム・抄録集; 43. 2019.

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日本における産後のうつ症状と妊娠中の体重増加との関係

 産後のうつ症状(PPDS)と妊娠中の体重増加との関係については、依然として議論の余地が残っている。福島県立医科大学の山口 明子氏らは、産後1ヵ月のPPDSと妊娠中の体重増加との関係について、妊娠前のBMIに基づいて、調査を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2021年2月2日号の報告。 2011~14年に日本人女性8万927人を対象に、プロスペクティブコホート研究を実施した。妊娠前のBMIに基づき、対象者をG1(18.5kg/m2未満)、G2(18.5~20.0kg/m2)、G3(20.0~23.0kg/m2)、G4(23.0~25.0kg/m2)、G5(25kg/m2以上)の5グループに分類した。PPDSに関連する不十分または過剰な妊娠中の体重増加の潜在的なリスク因子を特定するため、母体年齢、教育、年間世帯収入、喫煙、出産歴、分娩方法、母乳の中止、精神的ストレス、妊娠中のエネルギー摂取量で調整した後、各グループに対して多重ロジスティック回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・G3の女性において、不十分な妊娠中の体重増加がPPDSのリスク因子であることが示唆された(調整オッズ比:1.24、95%CI:1.14~1.36)。・この結果は、内在的要因により変化は認められなかった。 著者らは「妊娠前のBMIが20.0~23.0kg/m2の女性では、妊娠中の不十分な体重増加がPPDSのリスク因子であるため、PPDSを早期に発見するためにも、妊娠中の体重をモニタリングすることが推奨される」としている。

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うつ病治療アプリに対する医師や患者の期待

 スマートフォンアプリが増加し続けている現代社会において、アプリによる治療ツールの有効性は十分に実証されておらず、導入率も依然として不十分である。フランス・クレルモン・オーベルニュ大学のMarie-Camille Patoz氏らは、アドヒアランス向上に関連する効率的なアプリ開発を行うため、ユーザー中心のアプローチを通じて設計した架空のうつ病治療アプリに対する患者および医師の期待を特定することを目的とし、本研究を行った。BMC Psychiatry誌2021年1月29日号の報告。 精神科医および一般開業医、過去12ヵ月間でうつ病を経験した患者を対象に、フォーカスグループ法を用いて、半構造化面接を実施した。録音したインタビューの音声を文字起こしし、定性的な内容分析を用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象は、医師26人および患者24人。・フォーカスグループは、性別と年齢のバランスの取れた分布を示した。・対象者のほとんどはスマートフォンを所有しており(医師:96.1%、患者:83.3%)、アプリも使用していた(医師:96.1%、患者:79.2%)。・定性的な内容分析では、内容、操作特性、アプリ使用に対する障壁といった3つの主なテーマが明らかとなった。それぞれの内容は、以下のとおりであった。【期待される内容】 ●アプリにより収集された患者情報に関するデータ ●心理教育に関する情報提供 ●治療ツールに関する情報提供 ●日常生活のマネジメントを支援する機能 ●このツールに期待される機能【操作特性】 ●アプリの目的 ●潜在的なターゲットユーザー ●使用方法 ●アクセシビリティ ●セキュリティ【アプリ使用に対する障壁】 ●潜在的なアプリユーザーに関する懸念 ●潜在的なユーザーのアクセシビリティ ●安全性、副反応、有用性 ●機能性・テーマやカテゴリに関しては、医師と患者で共通であった。 著者らは「架空のうつ病治療アプリは、医師、患者ともに期待値が高く、うつ病治療において重要な役割を担う可能性がある。このようなツールにユーザーが期待する重要なポイントとして、簡単かつ直感的な使い方とパーソナライズされたコンテンツが挙げられる。うつ病治療においては、うつ病に関する情報提供、自己モニタリング機能、緊急時の支援を可能とするアプリが求められている」としている。

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重症精神疾患患者における抗精神病薬切り替えと体重変化~メタ解析

 重症精神疾患患者では、肥満や代謝により臨床的な悪影響が懸念されるが、これを予防できる可能性がある。心血管代謝の負担を軽減するうえで、抗精神病薬の切り替えが有用かを、オーストラリア・クイーンズランド大学のDan Siskind氏らが検討を行った。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2021年2月6日号の報告。 2020年3月8日までの文献をPubMED、Embase、PsycINFO、Cochraneより検索した。抗精神病薬切り替え群と継続群における体重および代謝変化を比較するため、群全体と群内でのメタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・抽出された61研究のうち、59研究をメタ解析に含めた(エビデンスの質高評価40%)。・切り替え群と継続群を比較したメタ解析では、アリピプラゾールのみが体重を有意に減少させた(-5.52kg、95%CI:-10.63~-0.42、p=0.03)。一方、オランザピンは、体重を有意に増加させた(2.46kg、95%CI:0.34~4.57、p=0.02)。・アリピプラゾールへの切り替えにより、空腹時血糖(-3.99mg/dL、95%CI:-7.34~-0.64、p=0.02)およびトリグリセライド(-31.03mg/dL、95%CI:-48.73~-13.34、p=0.0001)の有意な改善が認められた。・アリピプラゾールおよびオランザピンによる切り替え群と継続群において、治療中止と精神症状の評価に違いは認められなかった。・切り替え後のメタ解析では、体重減少との関連が認められた薬剤はアリピプラゾール(-1.96kg、95%CI:-3.07~-0.85、p<0.001)、ziprasidone(-2.22kg、95%CI:-3.84~-0.60、p=0.007)であった。一方、体重増加と関連が認められた薬剤は、オランザピン(2.71kg、95%CI:1.87~3.55、p<0.001)、クロザピン(2.80kg、95%CI:0.26~5.34、p=0.03)であった。・amisulpride、パリペリドン、リスペリドン、クエチアピン、ルラシドンに切り替えた場合、体重およびその他の心血管代謝に有意な影響は認められなかった。 著者らは「アリピプラゾールやziprasidoneのような体重増加リスクの低い抗精神病薬に切り替えることにより、体重プロファイルや心血管代謝を改善することが可能である。抗精神病薬の切り替えを行う際には、切り替え前後の体重増加リスクを考慮する必要がある。精神症状の安定している患者に対する抗精神病薬の切り替えは、症状悪化リスクを鑑み検討すべきである」としている。

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老年精神薬理学の最近の進展に関する専門家の意見

 高齢化社会が進むにつれ、老年精神疾患への対応に関する重要性が高まっている。米国・ケース・ウェスタン・リザーブ大学のAwais Aftab氏らは、アルツハイマー病(AD)、重度または難治性のうつ病、がんおよび終末期ケアに焦点を当て、老年精神医学に関連する最近の進展についてレビューを行った。Expert Review of Clinical Pharmacology誌オンライン版2021年2月5日号の報告。 ADの疾患修飾療法、診断用放射線トレーサ、認知症の神経精神症状に対する薬剤、ケタミン、esketamine、サイケデリックス薬、カンナビノイドについて、PubMed、Google Scholar、Medscape、ClinicalTrials.govより過去6年間の文献を非システマティックに検索し、レビューを行った。 主なレビューは以下のとおり。・非常に早期のADを対象とした抗アミロイド薬の試験が注目されており、aducanumabはFDAで審査中、いくつかの薬剤は第III相試験が進行中であった。・AD診断のためのアミロイドおよびタウ蛋白のPETスキャンは、FDAにより承認されている。・認知症の神経精神症状に対する有望な薬剤として、pimavanserin、ブレクスピプラゾール、エスシタロプラム、デキストロメトルファン/キニジン配合剤、リチウムが挙げられる。・esketamineは、一般成人の治療抵抗性うつ病治療に対し承認されているが、高齢患者を対象とした第III相試験において有効性を示すことができなかった。・終末期およびがん関連のうつ病および不安症に対するサイケデリックス支援療法のベネフィットに関する予備的なエビデンスが報告されている。・カンナビノイドに関するエビデンスは、不十分であった。

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妊婦におけるうつ病の重症度と周産期有害リスクとの関連

 妊娠中は、不安神経症やうつ病の発症に対する脆弱性が高まる。中国・中南大学のKwabena Acheampong氏らは、中等度~重度のうつ病と軽度のうつ病の妊婦における周産期の有害アウトカム発生リスクの比較を行った。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2021年1月21日号の報告。 ガーナ・ベクワイ市のアドベンティスト病院で募集されたうつ病を有する妊婦360例を対象に、プロスペクティブコホート研究を実施した。2020年2月に調査を開始し、2020年8月までフォローアップを行った。うつ病の重症度評価には、Patient Health Questionnaires-9(PHQ-9)を用いた。重症度の定義は、中等度~重度をPHQ-9スコア15以上、軽度をPHQ-9スコア15未満とした。軽度うつ病と比較した中等度~重度のうつ病を有する妊婦の調整済み相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・中等度~重度のうつ病と分類された妊婦は、43例(11.9%)であった。・潜在的な交絡因子で調整した後、中等度~重度のうつ病を有する妊婦は、軽度うつ病と比較し、以下のリスクが高かった。 ●妊娠高血圧腎症(調整RR:2.01、95%CI:1.21~3.33) ●帝王切開(調整RR:1.78、95%CI:1.18~2.70) ●会陰切開(調整RR:1.66、95%CI:1.06~2.60)・一方、うつ病の重症度と周産期のアウトカムとの間に、統計学的に有意な差は認められなかった。 著者らは「中等度~重度のうつ病を有する妊婦は、妊娠高血圧腎症、帝王切開、会陰切開などのリスクが高かった」としている。

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うつ病の再発に対する残存不眠症状の影響~日本のコホート研究

 うつ病の残存不眠症は、再発リスクに関連するといわれている。東京女子医科大学の稲田 健氏らは、不眠症状の残存している患者とそうでない患者におけるうつ病の再発パターンの比較を行った。Journal of Affective Disorders誌2021年2月15日号の報告。 日本の健康保険レセプトデータベースを用いてレトロスペクティブ縦断的コホート研究を実施した。対象は、2006年1月~2017年6月にうつ病と診断され抗うつ薬を処方された患者。残存不眠症の定義は、睡眠薬の処方として定義し、うつ病の再発は、抗うつ薬の処方として定義した。主要アウトカムは、うつ病の再発までの期間と1年再発率とした。うつ病の再発に関連する因子は、多変量解析により評価した。再発頻度に対する残存不眠症の影響を評価するため、カイ二乗検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・分析対象患者3万381例中、残存不眠症が認められた患者は4,166例であった。・残存不眠症患者の再発までの期間は、残存不眠症のない患者と比較し、有意に短かった(p<0.001)。・うつ病の1年再発率は、残存不眠症患者で43.4%(95%CI:41.9~45.0)、残存不眠症のない患者で7.4%(95%CI:7.1~7.7)であった。・うつ病の再発リスクは、残存不眠症患者のほうが有意に高かった(p<0.0001)。・残存不眠症は、ほかのさまざまな因子と比較し、うつ病再発の高リスクとの関連が認められた(オッズ比:9.98、95%CI:9.22~10.81)。 著者らは「本検討は、レセプトデータに基づいた分析であり、患者の正確な状態や服薬状況は反映されていない」としながらも「残存不眠症は、日本人うつ病患者の再発リスク因子であると考えられる」としている。

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統合失調症患者における小児期の心理行動特性~日本のレトロスペクティブ研究

 統合失調症は、初期発達障害のフレームワークに適応することを示唆する科学的エビデンスが、疫学的研究や遺伝学的研究によって報告されているが、将来統合失調症を発症する子供の心理的行動の特徴は、十分に解明されていない。京都女子大学の濱崎 由紀子氏らは保護者による報告を通じて、小児期統合失調症患者に特有の特徴を明らかにするため、検討を行った。BMC Psychiatry誌2021年1月26日号の報告。 対象は、DSM-IV-TR基準を満たした20代の統合失調症外来患者54例および性別と年齢をマッチさせた健康対照者192例。すべての対象の6~8歳時の特徴を評価するため、対象者の保護者に対する子供の行動チェックリスト(CBCL)のレトロスペクティブ評価質問票を用いた。小児期統合失調症に特有の心理行動の特徴を推定するため、t検定、ロジスティック回帰、ROC曲線解析を用いた。得られたロジスティック回帰モデルを使用して、CBCLスコアに基づいてリスク予測アルゴリズムのプロトタイプを作成した。 主な結果は以下のとおり。・8つのCBCLサブスケールのtスコアのうち、その後の統合失調症診断と有意な関連が認められた項目は、以下のとおりであり、これらの平均スコアは、小児期の臨床範囲に該当しなかった。 ●引きこもり(p=0.002) ●思考の問題(p=0.001) ●攻撃的行動の欠如(p=0.002)・8つのCBCLサブスケールに基づくロジスティック回帰モデルのアルゴリズムは、ROC曲線下の面積が82.8%(95%CI:76~89)であった。このことは、統合失調症の晩年発症に関して、アルゴリズムの予測精度が中程度であることを示唆している。 著者らは「保護者の報告によると、統合失調症の発症を予測する小児期の心理的行動の特性に違いがあることが示唆された。この新たに開発されたアルゴリズムは、その有効性をさらにテストするうえで、将来の研究に使用することが望まれる」としている。

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うつ病患者の睡眠薬処方パターンと再発への影響~日本のレトロスペクティブ研究

 日本においてうつ病患者数は増加している。うつ病は寛解期であっても、不眠症状が持続することが少なくない。不眠症の薬理学的治療では睡眠薬が使用されるが、うつ病の再発や寛解後に残存する不眠症状に対する影響はよくわかっていない。武田薬品工業株式会社ジャパンメディカルオフィスの山戸 健太郎氏らは、日本の大規模な健康保険レセプトデータベースを用いて、うつ病患者に対する睡眠薬処方パターンおよびうつ病の再発に対する睡眠薬処方パターンの影響を調査した。BMC Psychiatry誌2021年1月13日号の報告。 対象は、うつ病診断後、抗うつ薬と睡眠薬を処方された20~56歳のうつ病患者をJMDCデータベース(2005~18年)より抽出した。抗うつ薬治療を180日超経過した後に中止した患者を1年間フォローアップし、うつ病の再発を評価するため、カプランマイヤー法を用いた。うつ病の再発に対する睡眠薬処方パターンの影響を分析するため、ロジスティック回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・2006年1月~2017年6月に抗うつ薬治療を開始したうつ病患者17万9,174例中、睡眠薬を処方された2,946例を分析対象とした。・睡眠薬の併用療法は29.2%であり、多くの患者において睡眠薬は単剤療法(70.8%)で用いられていた。・主な睡眠薬処方パターンは、以下のとおりであった。 ●ベンゾジアゼピン系睡眠薬単剤療法:26.2% ●非ベンゾジアゼピン系睡眠薬単剤療法:28.9% ●睡眠薬の2剤併用療法:21.1%・複数の睡眠薬が処方された患者では、抗不安薬、抗精神病薬、気分安定薬、鎮静系抗うつ薬の併用が多かった。・うつ病の1年再発率は、睡眠薬の単剤、併用療法または睡眠薬の種類にかかわらず同程度であり、約20%であった。・抗うつ薬治療中止後1年以内でのうつ病の再発オッズ比(OR)と関連する因子は以下のとおりであった。 ●被保険者の配偶者(OR:1.44、95%信頼区間[CI]:1.03~2.02) ●被保険者の配偶者以外の家族(OR:1.46、95%CI:0.99~2.16) ●鎮静系抗うつ薬の処方(OR:1.50、95%CI:1.24~1.82) 著者らは「日本人うつ病患者に対する睡眠薬の使用は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬が最も多く、併用療法が行われることも少なくない。うつ病の再発に対する睡眠薬処方パターンの影響は認められなかったが、睡眠薬を選択する際には、薬剤間の有効性や安全性の違いを考慮する必要がある」としている。

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認知症介護者の人道的負担~日本の大規模横断研究

 急速な高齢化社会へ進む日本では、認知症やアルツハイマー病の有病率の増加に伴い、介護者の必要性が高まっている。岐阜薬科大学の大野 慎也氏らは、日本での認知症やアルツハイマー病の介護者における人道的負担について、それ以外の介護者との比較を行った。Journal of Medical Economics誌2021年号の報告。 日本の健康調査National Health and Wellness Survey(NHWS)の2018年のデータを用いて、横断的研究を行った。対象は、認知症やアルツハイマー病の介護者805人、それ以外の介護者1,099人、非介護者2万7,137人。アウトカムの指標は、健康関連QOL尺度(HRQoL)であるSF-12、健康状態を評価するEQ-5D、健康が生産性や活動に及ぼす影響、うつ病と不安症の評価とした。群間比較を行うため、潜在的な交絡因子で調整した後、多変量解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・認知症かそれ以外かにかかわらず介護者は、非介護者よりも、HRQoL、EQ-5Dスコアが低く、全活動障害が多く、不安を経験する傾向が認められた。・日常生活動作(ADL)については、基本的ADLおよび手段的ADLへの影響は、認知症介護者とそれ以外の介護者との間で有意な差は認められなかった。・認知症介護者は、それ以外の介護者よりも、治療の決定や財政的マネジメントと深い関わりが認められた。・患者の居住環境をみると、1人の患者をケアしている認知症介護者において、施設入所は282人、地域社会居住は395人であった。・地域社会居住患者の認知症介護者では、基本的ADLおよび手段的ADLへの影響が大きかった。・認知症とがんの両方を有する患者の介護者は、どちらか一方を有する患者の介護者よりも、介護負担がより大きかった。 著者らは「日本において認知症やアルツハイマー病介護者の人道的負担は、患者の生活環境や合併症に影響されることが示唆された。介護者の負担を軽減するためにも、効果的なケアサポートの提供は不可欠である」としている。

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商用ビデオゲームによるうつ病予防の可能性

 うつ病や抑うつ症状は、多くの青年や若年成人に影響を及ぼす主な公衆衛生上の問題である。さまざまな研究が行われているにもかかわらず、若者を対象としたうつ病予防プログラムの効果に関する報告は、限定的である。また、うつ病予防プログラムをベースとした若者に対する心理療法は、潜在的に最も重要であると考えられる。メンタルヘルスに不可欠な感情的および社会的スキルを若者が実践するうえで、商用ビデオゲームは魅力的な代替方法となる可能性がある。オランダ・ラドバウド大学のMarlou Poppelaars氏らは、抑うつ症状の悪化を予防するため商用ビデオゲームの可能性について調査を行った。Frontiers in Psychology誌2021年1月12日号の報告。 対象は、抑うつ症状を有する15~20歳の244例(平均年齢:17.11±1.76歳、女性の割合:66.4%)。商用ビデオゲームJourneyのうつ病予防に対する有効性を評価するため、Journey(ソーシャルアドベンチャーゲーム、平均時間:3時間20分)群、Flower(リラックスできる1人用ゲーム:平均時間:2時間36分)群、対照(ゲームなし)群にランダムに割り付け、4週間プレーした。また、ビデオゲームを用いたうつ病予防のための潜在的なアクションメカニズムを調査した。 主な結果は以下のとおり。・介入後12ヵ月までに、若者の抑うつ症状の変化に対しJourneyをプレーすることの有用性は認められなかった。・また、Journey特有のアクションメカニズムも認められなかった。・しかし、研究期間を通じて、対象者の抑うつ症状の軽減、拒否感の低下、希望や楽観性の増加が認められた。・拒否感または沈思黙考が減少した人、希望や楽観性または気晴らしや問題解決が増加した人では、抑うつ症状の改善が最も高かった。 著者らは「効果的なうつ病予防戦略として商用ビデオゲームJourneyの有用性は示されなかったが、拒否感、希望、楽観性、沈思黙考、気晴らし、問題解決が、今後のうつ病予防のターゲットとなりうる可能性が示唆された。メンタルヘルスを促進するためのゲームに関する今後の研究では、ゲームの潜在的なアクションメカニズムが、誰にどのように効果的であるかを調査するため、慎重に検討した研究デザインが求められる」としている。

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うつ病から双極性障害への転換に影響を及ぼす怒りの感情

 怒りや易怒性といった感情は、躁病やうつ病(とくに混合状態)の患者でみられる双極性障害の顕著な症状である。オランダ・ライデン大学病院のRahele Mesbah氏らは、うつ病の既往歴を有する患者における、怒りや易怒性と双極性障害への転換との関連について調査を行った。Depression and Anxiety誌オンライン版2021年1月27日号の報告。 オランダで実施されたうつと不安に関する9年間のフォローアップ調査より抽出したうつ病患者を対象とした。躁症状の評価は、Composite International Diagnostic Interviewを用いて、フォローアップ2、4、6、9年目に行った。躁症状と怒りに関連する因子を横断的に調査した。怒りに関連する因子を評価するため、Spielberger Trait Angerサブスケール、Anger Attack調査票、パーソナリティ障害調査票のクラスターBのパーソナリティ特性、反応的攻撃性尺度を用いた。反応的攻撃性が躁症状の発症を予測するかを評価するため、プロスペクティブにCox回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害患者(77例)は、うつ病患者(349例)、寛解期うつ病患者(1,159例)と比較し、怒りや反応的攻撃性の特性スコアが有意に高かった。同様に、Anger Attack、反社会的特性、境界性特性も高かった。・1,744例のプロスペクティブ分析では、反応的攻撃性は躁症状の発症を予測し(28例)、多変量調整ハザード比は1.4(95%信頼区間:1.02~1.93、p=0.037)であった。 著者らは「怒りは、単極性うつ病から双極性障害への転換を予測するリスク因子である。双極性障害への転換が認められた患者は、怒り、興奮、過敏性がより多く出現することが示唆された」としている。

873.

日本人統合失調症患者に対するブレクスピプラゾール切り替え療法の安全性

 CNS薬理研究所の石郷岡 純氏らは、アリピプラゾールまたは他の抗精神病薬(ドパミンD2受容体アンタゴニスト)からブレクスピプラゾールに切り替えた際の、長期的な安全性の評価を行った。Human Psychopharmacology誌オンライン版2021年1月26日号の報告。 日本人統合失調症外来患者を対象とした56週間オープンラベル試験の事後分析を行った。オープンラベル試験では、ブレクスピプラゾール2mg/日へ4週間で切り替えを行った後、52週間フレキシブルドーズ(1~4mg/日)で投与した。主要評価項目は、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド、血糖、体重、プロラクチンとした。副次的評価項目は、有効性、治療による有害事象(TEAE)、錐体外路症状、補正値QT間隔との関連とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者186例中84例(45.2%)は、同意の撤回や有害事象のために治療を中断した(アリピプラゾールからの切り替え群[APZ群]:32.9%、他の非定型抗精神病薬からの切り替え群[AP群]:54.8%)。・56週目のベースラインからの平均変化は、両群ともに総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド、血糖値ではわずかであり、平均体重(APZ群:1.1±4.4kg、AP群:0.4±4.6kg)のわずかな増加が認められた。・平均プロラクチンレベルは、APZ群でわずかな増加が認められたが、AP群では減少が認められた。・症状の重症度は、両群ともに減少が認められた。・TEAE発生率は、86.6%(161例)であった。各群のTEAE発生率は、APZ群で84.1%、AP群で88.5%であり、重度のTEAE発生率は、APZ群で9.8%、AP群で14.4%であった。・錐体外路症状、QT間隔の変化は、ほとんど認められなかった。 著者らは「ブレクスピプラゾールへの切り替えは、代謝異常、体重増加、高プロラクチン血症、錐体外路症状、QT延長、精神症状への長期的な影響が少ない治療方法である」としている。

874.

うつ病に対するインターネットベースの認知行動療法~メタ解析

 患者自身に適した個別化された治療法を選択することで、うつ病に対するインターネットベースの認知行動療法(iCBT)の有効性を高めることができるかもしれない。スイス・ベルン大学のEirini Karyotaki氏らは、患者レベルのデータを使用して、うつ病に対するガイド付きまたはガイドなしのiCBTの短期および長期有効性を評価した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2021年1月20日号の報告。 PubMed、Embase、PsycInfo、Cochrane Libraryより、2019年1月1日までに公表されたランダム化比較試験(RCT)を抽出した。ガイド付きまたはガイドなしのiCBTを相互またはうつ病患者と対照群との比較を行ったRCTを選択した。選択基準を満たしたすべての研究より、利用可能な患者レベルのデータを収集した。うつ症状の重症度評価は、介入後、ランダム化6および12ヵ月後に評価した。さまざまな患者特性と相対的な治療効果との関連を評価するため、システマティックレビューおよび患者レベルのデータを用いたネットワークメタ解析を実施した。主要アウトカムは、こころとからだの質問票(PHQ-9)スコアとした。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした研究42件のうち、39件(うつ病患者:9,751例)をネットワークメタ解析に含めた。そのうち、8,107例分の患者データを統合した。・ガイド付き、ガイドなしのiCBTは、対照群と比較し、短期および長期有効性が高かった。・ガイド付きiCBTは、ガイドなしiCBTと比較し、介入後の有効性は有意に高かったが(PHQ-9スコア平均差[MD]:-0.8、95%信頼区間[CI]:-1.4~-0.2)、ランダム化6および12ヵ月後の差を示すエビデンスは見つからなかった。・ガイド付きiCBTとガイドなしiCBTの有効性の相対的な関連性に最も影響を及ぼす因子は、ベースライン時のうつ症状であった。・ベースライン時のPHQ-9スコアが5~9の閾値下うつ病患者では、ガイド付きiCBTとガイドなしiCBTの有効性の差は小さかった。一方、PHQ-9スコアが9超の患者では、ガイド付きiCBTは、良好なアウトカムとの関連が認められた。 著者らは「うつ病患者に対するガイド付きiCBTは、ガイドなしiCBTと比較し、有効性が高く、中等度~重度のうつ病患者では、その差はより顕著であった。軽度または閾値下うつ病患者では、ガイドなしiCBTでも同様の効果が期待できるようである。うつ病に対する治療リソースを最適化するために、個別化された治療方法を選択する必要がある」としている。

875.

日本人高齢者における新たな認知症診断予測因子~コホート研究

 高齢者の認知症を予防することは、公衆衛生上の重要な課題である。認知症の予測因子を早期に発見し、是正することは重要であるが、定期的に収集された医療データに基づく認知症の予測因子は、すべて明らかになっているわけではない。京都大学の中奥 由里子氏らは、定期的に収集したレセプトデータを用いて、認知症診断の潜在的な予測因子を調査した。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2021年1月13日号の報告。 新潟県の75歳以上の高齢者を対象に、2012年(ベースライン)と2016年(フォローアップ)のレセプトデータを用いて、レトロスペクティブコホート研究を実施した。年齢、性別、診断、処方箋などのベースライン特性に関するデータを収集し、その後の新規認知症診断の潜在的な予測因子との関係を調査するため、多変量ロジスティック回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時に、認知症と診断されていなかった高齢者22万6,738人をフォローアップした。・認知症と診断された高齢者は、2万6,092人であった。・交絡因子で調整した後、その後の認知症診断と有意な関連が認められた因子は、以下のとおりであった。 ●脳血管疾患(オッズ比[OR]:1.15、95%信頼区間[CI]:1.11~1.18) ●うつ病OR:1.38、95%CI:1.31~1.44) ●抗精神病薬の使用(OR:1.40、95%CI:1.31~1.49) ●催眠鎮静薬の使用(OR:1.17、95%CI:1.11~1.24) 著者らは「定期的に収集したレセプトデータを分析したところ、うつ病、抗精神病薬の使用、催眠鎮静薬の使用、脳血管疾患などの精神神経症状が、新規認知症診断の予測因子であることが明らかとなった」としている。

876.

双極性障害とうつ病を鑑別するための感情調節神経回路の調査

 双極性障害(BD)患者の最大40%は、最初にうつ病と診断されており、情緒不安定は両疾患で共通して認められる。しかし、認知的再評価による感情調節の違いが、BDとうつ病を鑑別するのに役立つかは、よくわかっていない。オーストラリア・シドニー大学のSabina Rai氏らは、寛解期BD患者とうつ病患者の感情調節について、調査を行った。Bipolar Disorders誌オンライン版2020年12月25日号の報告。 年齢、性別、うつ病重症度をマッチさせた寛解期BD患者38例、寛解期うつ病患者33例、健康対照者37例を対象に、fMRIスキャン中の感情調節認知再評価タスクを調査した。対象者には、画像の再評価(Think条件)、ネガティブな画像を受動的に見る(Watch条件)、ニュートラルな画像を受動的に見る(Neutral条件)のいずれかを行い、その影響を評価した。感情調節に特有の神経回路における再評価(Think条件vs.Watch条件)および反応性評価(Watch条件vs.Neutral条件)についてグループ間での違いを調査するため、放射化分析、結合性解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・グループとは無関係に、Watch条件では、Think条件およびNeutral条件と比較し、最もネガティブに評価した。また、Neutral条件と比較し、Think条件では、よりネガティブな評価であった。・とくに、BD患者では、うつ病患者と比較し、再評価における前帯状皮質膝下部(sgACC)活性の低下が認められたが、反応性評価においては、sgACC活性がより大きかった。・うつ病患者では、BD患者と比較し、反応性評価において右扁桃体の活性がより大きかった。・タスク関連の連結性は、グループ間で差は認められなかった。 著者らは「寛解期BD患者およびうつ病患者は、感情的な情報を処理および調整するうえで、異なる脳領域と関与していることが示唆された。これらの違いは、両疾患を鑑別し、BDの根底にある病態生理への新たな洞察を検討するうえで役立つ可能性がある」としている。

877.

日本における緊急事態宣言下のマタニティハラスメントとうつ病との関連

 妊娠への差別として知られるマタニティハラスメントは、先進国において広まったままである。しかし、マタニティハラスメントによるメンタルヘルスへの影響を調査した研究は、十分とはいえない。北里大学の可知 悠子氏らは、日本における妊娠中のマタニティハラスメントとうつ病との関連を調査した。Journal of Occupational Health誌2021年1月号の報告。 日本において一部地域の緊急事態宣言が続く2020年5月22日~31日に妊婦(妊娠確認時に就業していた女性)359人を対象に横断的インターネット調査を実施した。マタニティハラスメントは、国のガイドラインで禁止されている16事項のいずれかを受けた場合と定義した。うつ病の定義は、エジンバラ産後うつ病自己評価票日本語版(EPDS)スコア9以上とした。分析には、ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・就業していた妊婦の24.8%は、上司や同僚からマタニティハラスメントを受けていた。・人口統計、妊娠状態、作業状態、COVID-19への恐怖で調整した後、マタニティハラスメントを経験した妊婦では、経験しなかった妊婦と比較し、うつ病を発症する可能性が高かった(オッズ比:2.48、95%信頼区間:1.34~4.60)。・この関連は、COVID-19に伴うテレワークの有無に影響されなかった。 著者らは「就業していた妊婦の約4分の1は、マタニティハラスメントを経験しており、経験しなかった女性よりもうつ病の有病率が高かった。テレワークを通じて、オフィスから物理的に離れたとしても、マタニティハラスメントによるうつ病への影響は減少しなかった。妊婦のメンタルヘルスと雇用を守るために、雇用主は法律を順守し、マタニティハラスメントを防止する措置を講ずる必要がある」としている。

878.

統合失調症患者に対する補助的ヨガトレーニング

 統合失調症患者の認知機能障害改善に対するヨガトレーニングの許容性および有効性に関連する要因を特定するため、インド・Dr. Ram Manohar Lohia HospitalのTriptish Bhatia氏らは、検討を行った。Acta Neuropsychiatrica誌オンライン版2020年12月9日号の報告。 インド人統合失調症患者の認知機能に対するヨガトレーニングの影響を検討した2つの臨床試験でのデータを分析した。分析に使用した臨床試験は、21日間のランダム化比較試験(286例、3、6ヵ月のフォローアップ)および21日間の非盲検試験(62例)であった。ヨガトレーニング後の認知機能(注意力、顔の記憶)改善とベースライン特性(年齢、性別、社会経済状況、教育状況、教育期間、症状重症度)との関連を調査するため、多変量解析を用いた。許容性に関連する要因は、スクリーニングされた参加者と試験に登録された参加者、試験完了者と非完了者の人口統計学的変数を比較することで特定した。 主な結果は以下のとおり。・試験に登録された参加者は、スクリーニング時に試験を拒否した参加者よりも年齢が若かった(t=2.952、p=0.003)。・試験への登録または完了に関連する他の特性は認められなかった。・有効性に関しては、顔の記憶の尺度において、認知機能の改善効果および持続性と教育期間との関連が認められた。・その他のベースライン特性とヨガトレーニングとの関連は認められなかった(148例)。 著者らは「若年の統合失調症患者では、ヨガトレーニングは許容される。また、心理社会的特性の個人差も認められず、特定の認知機能改善に役立つであろう。そのため、統合失調症患者の補助療法として、ヨガトレーニングを組み込むことは有用であると考えられる。重要な点として、ヨガトレーニングは、すべての年齢の統合失調症患者の認知機能を改善する可能性があることが挙げられる」としている。

879.

統合失調症の薬理学的マネジメント~日本の専門医のコンセンサス

 従来の統合失調症ガイドラインは、臨床的に重要な問題を解決するための方法を必ずしも提供しているわけではない。慶應義塾大学の櫻井 準氏らは、精神科専門医を対象に、統合失調症の治療オプションに関する調査を行った。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2021年1月12日号の報告。 日本臨床精神神経薬理学会の認定精神科医141人を対象に、統合失調症治療における19の臨床状況について、9段階で治療オプションの評価を行った(同意しない「1」~同意する「9」)。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬の第1選択薬は、主要な症状により以下のように異なっていた。【陽性症状】●リスペリドン:7.9±1.4●オランザピン:7.5±1.6●アリピプラゾール:6.9±1.9【陰性症状】●アリピプラゾール:7.6±1.6【抑うつ、不安症状】●アリピプラゾール:7.3±1.9●オランザピン:7.2±1.9●クエチアピン:6.9±1.9【興奮、攻撃性】●オランザピン:7.9±1.5●リスペリドン:7.5±1.5・顕著な症状のない患者の再発予防に対する第1選択薬として、アリピプラゾール(7.6±1.0)が選択された。・社会的統合のために選択された薬剤は、アリピプラゾール(8.0±1.6)、ブレクスピプラゾール(6.9±2.3)であった。・錐体外路症状の懸念がある患者に対する第1選択薬は、クエチアピン(7.5±2.0)、アリピプラゾール(6.9±2.1)であった。 著者らは「これらの臨床的推奨は、特定の状況における特定の抗精神病薬使用に関する専門医のコンセンサスを表しており、エビデンスとの間の現在のギャップを補完するものであろう」としている。

880.

日本におけるCOVID-19第2波によるうつ病リスク

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる社会的混乱は今も続いており、これが国民の社会的抑制につながっている。北里大学の深瀬 裕子氏らは、COVID-19によるメンタルヘルス関連のリスク因子を明らかにし、具体的な対処方法について検討を行った。BMC Psychiatry誌2021年1月12日号の報告。 日本でCOVID-19の第2波が起こっていた2020年7月に、Webベースの調査を実施した。人口統計、こころとからだの質問票(PHQ-9)、怒りの状態、怒りのコントロール、コーピング尺度(Brief COPE)を測定した。設定変数によるPHQ-9スコアの多変量ロジスティック回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象者2,708人のうち、18.35%がうつ病であった。・ロジスティック回帰分析では、抑うつ症状発症の予測因子は、以下のとおりであった。●基礎疾患あり(オッズ比[OR]:1.96、95%信頼区間[CI]:1.32~2.92)●無職(OR:1.85、95%CI:1.22~2.80)●マイナスの経済状況の経験(OR:1.33、95%CI:1.01~1.77)●怒りの状態(OR:1.17、95%CI:1.14~1.21)●怒りのコントロール(OR:1.08、95%CI:1.04~1.13)・一方、抑うつ症状発症のORが1未満であった因子は以下のとおりであった。●年齢が高い(OR:0.97、95%CI:0.96~0.98)●世帯収入800万円以上の高収入(OR:0.45、95%CI:0.25~0.80)●既婚(OR:0.53、95%CI:0.38~0.74)・対処戦略と抑うつ症状との関連について、ORは以下の順であった。●プランニング(OR:0.84、95%CI:0.74~0.94)●機器的サポートの利用(OR:0.85、95%CI:0.76~0.95)●自粛(OR:0.88、95%CI:0.77~0.99)●行動の放棄(OR:1.28、95%CI:1.13~1.44)●自己非難(OR:1.47、95%CI:1.31~1.65) 著者らは「日本ではロックダウンは行われなかったが、COVID-19パンデミックに伴う長期的な心理的苦痛によって、抑うつ症状の有症率は、パンデミック前の2~9倍に増加した。社会的混乱への対処または回避する方法を、1人または他者と実践することは、メンタルヘルスの維持に役立つが、人口統計的影響が対処戦略より強く、高リスク因子を有する人への治療が求められる」としている。

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