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統合失調症の認知機能改善に対するメトホルミンの有用性

 統合失調症の陰性症状に対して、メトホルミンに本当に有用性があるかは、まだ結論が出ているとはいえない。中国・The Brain Hospital of Guangxi Zhuang Autonomous RegionのZhen-Juan Qin氏らは、統合失調症患者の神経認知機能に対するメトホルミンの効果に関するランダム化比較試験(RCT)を評価するため、システマティックレビューを実施した。Frontiers in Psychiatry誌2025年1月20日号の報告。 中国のデータベース(WanFang、Chinese Journal Net)および英語のデータベース(PubMed、EMBASE、PsycINFO、Cochrane Library)より、包括的な検索を実施し、統合失調症の神経認知アウトカムに対するメトホルミンの影響を評価したRCTを特定した。 主な結果は以下のとおり。・4件のRCT、統合失調症患者271例を対象に含めた。・3件のRCT(75%)において、MATRICSコンセンサス認知機能評価バッテリー(MCCB)、神経心理検査アーバンズ(RBANS)、ミニメンタルステート検査(MMSE)による評価では、メトホルミン群は、対照群と比較し、神経認知機能の有意な改善が認められたが、統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)では、有意な差が認められなかった。・2件のRCT(50%)において、メトホルミンの総合的な神経病理に対する効果が認められたが、両群間で有意な差は認められなかった。・2件のRCTにおいて、有害事象が報告されたが、食欲減退および下痢に関する結果に、一貫性は認められなかった。・その他の有害事象および治療中止率は、両群間で同程度であった。 著者らは「本検討により、メトホルミンは、統合失調症の神経認知機能を改善する可能性が示唆された。ただし、これらの結果を検証するためには、さらに大規模かつ二重盲検による高品質のRCTが必要とされる」と結論付けている。

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うつ病歴は慢性疾患の発症を早める

 過去にうつ病と診断されたことがある人は、同年代のうつ病歴がない人に比べて中高年期に慢性疾患に罹患している可能性が高く、また、より早いペースで新たな慢性疾患を発症する可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。英エディンバラ大学の統計学者であるKelly Fleetwood氏らによるこの研究は、「PLOS Medicine」に2月13日掲載された。Fleetwood氏は、「うつ病歴のある人は、ない人に比べて心臓病や糖尿病などの慢性疾患を発症しやすい」と述べている。 この研究では、UKバイオバンク参加者から抽出した17万2,556人を対象に、UKバイオバンク参加当時および追跡期間中のうつ病歴と慢性疾患との関連が検討された。対象者は、2006〜2010年にUKバイオバンクに参加し(参加時の年齢は40〜71歳)、評価を受けていた。追跡期間は平均6.9年だった。慢性疾患については、血液がん、固形がん、心筋炎、冠動脈性心疾患、脳卒中、1型および2型糖尿病、高血圧、勃起不全、アレルギー性・慢性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患、認知症など69種類を対象とした。対象者の17.8%に当たる3万770人がうつ病歴を持っていた。 解析の結果、うつ病歴がある人はうつ病歴がない人と比べて、UKバイオバンク参加時に有していた身体疾患の数が多く(平均2.9個対2.1個)、また年間の新たな疾患の発症数も多いことが明らかになった(平均0.20個/年対0.16個/年)。最も発生頻度の高かった疾患は、変形性関節症(うつ病歴ありの患者15.7%、うつ病歴なしの患者12.5%)、高血圧(12.9%対12.0%)、胃食道逆流症(13.8%対9.6%)であった。年齢、性別、社会経済状況を調整した上でも、うつ病歴のある人ではない人に比べて1.3倍の速さで新たに慢性疾患を発症することが示唆された(率比1.30、95%信頼区間1.28〜1.32)。さらに、試験参加時の疾患数や生活習慣なども調整して解析すると、この差はやや縮まったものの、それでも依然としてうつ病歴のある人の方が有意に発症の早いことが確認された(同1.10、1.09〜1.12)。 こうした結果を受けて研究グループは、「これらの結果は、うつ病を『全身』の病気として捉え、それに応じて治療する必要があることを意味している」と結論付けている。 研究グループはまた、「既存の医療制度は、複数の症状を抱える個人ではなく、個々の症状を治療するように設計されている」と指摘。「うつ病と慢性疾患の両方を抱える人をケアするために、総合的なアプローチを取る医療サービスが必要だ」と述べている。

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第4世代統合失調症治療薬KarXT、その安全性は〜メタ解析

 既存の薬剤とは異なる作用機序、より高い有効性および忍容性を有する新しい抗精神病薬に対するニーズは大きい。2024年9月、米国FDAは、急性期精神症状を伴う成人統合失調症患者を対象とした3つの二重盲検ランダム化プラセボ対照試験に基づきxanomelineとtrospiumを配合したKarXTを、新たな統合失調症治療薬として承認した。xanomelineは、直接的なドーパミンD2受容体阻害作用を持たない、M1/M4ムスカリン受容体二重作動薬である。このxanomelineと末梢ムスカリン受容体拮抗薬であるtrospiumを組み合わせたKarXTは、xanomeline関連の末梢ムスカリン受容体活性化による有害事象を軽減することが示唆されている。藤田医科大学の岸 太郎氏らは、統合失調症患者に対するKarXTの安全性および忍容性アウトカムを明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2025年1月29日号の報告。 急性期精神症状を伴う成人統合失調症患者を対象とした3つの二重盲検ランダム化プラセボ対照試験のランダム効果モデルペアワイズメタ解析を実施した。 主な内容は以下のとおり。・KarXTは、プラセボと比較し、すべての原因による治療中止、有害事象による治療中止、シンプソンアンガス評価尺度(SAS)スコアの変化、薬原性アカシジア評価尺度(BAS)スコアの変化、体重の変化、BMI変化、血圧変化、血清総コレステロール変化、血糖値変化、QTc間隔の変化および頭痛、傾眠、不眠、めまい、アカシジア、興奮、頻脈、胃食道逆流症、下痢、体重増加、食欲減退の発生率が同等であった。・KarXTは、プラセボと比較し、1つ以上の有害事象、口渇、高血圧、嘔気・嘔吐、消化不良、便秘、血清トリグリセライド上昇の発生率が高かった。・とくにKarXTは有効性に関して、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)総スコア、PANSS陽性症状サブスケールスコア、PANSS陰性症状サブスケールスコアの改善において、プラセボよりも優れた有用性が認められた。

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高カロリーの朝食はCVD患者のうつ病リスクを低減する

 心血管疾患(CVD)を持つ成人は、朝食を高カロリーにすることでうつ病の発症リスクを低下させられる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。ハルビン医科大学(中国)のHongquan Xie氏らによるこの研究結果は、「BMC Psychiatry」に1月31日掲載された。 研究グループによると、CVDを持つ人は一般集団と比べてうつ病を発症しやすいことに関するエビデンスは増えつつあるという。また、食事を摂取するタイミングは概日リズムに大きく影響し、概日リズムの乱れはうつ病の一因となる可能性も指摘されている。しかしながら、カロリーや主要栄養素の摂取タイミングとCVDを持つ人のうつ病発症との関連については明らかになっていない。 本研究では、2003年から2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)参加者から抽出した、CVDを持つ米国の成人3,490人を対象に、食事由来のカロリーまたは主要栄養素の摂取とうつ病発症との関連が検討された。3,490人中554人がうつ病の診断を受けていた。対象者は、24時間思い出し法を通じて測定された3食の摂取カロリーと主要栄養素のレベルに応じて、レベルが最も低い群(Q1群)から最も高い群(Q5群)までの5群に分類された。 ロジスティック回帰分析により、年齢や性別、教育レベル、喫煙状況などの交絡因子を調整して解析した結果、朝食の摂取カロリーのQ5群(565.1kcal以上)ではQ1群(197.0kcal未満)と比較してうつ病のリスクが低く、オッズ比(OR)は0.71(95%信頼区間0.51〜0.91)と推定された。これに対し、昼食や夕食の摂取カロリーについてのQ1群とQ5群の比較では、うつ病リスクについて両群で有意な差は認められなかった。さらに、夕食や昼食での摂取カロリーの5%を朝食に移すことで、うつ病リスクが5%低下することも示された(昼食から朝食:OR 0.95、95%信頼区間0.93〜0.97、夕食から朝食:同0.95、0.93〜0.96)。一方、タンパク質や炭水化物などの主要栄養素の摂取とうつ病リスクとの間には、統計学的に有意な関連は認められなかった。 こうした結果を受けて研究グループは、「本研究結果から言えることは、CVDを持つ人では、何を食べるかと同じくらい、いつ食べるかが重要だということだ。うつ病のリスクを低下させるには、食事によるカロリー摂取のタイミングを、体内時計のリズムに合わせて調整する必要がある」と述べている。

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抗うつ薬の有用性比較、SSRI vs.SNRI vs.新規抗うつ薬

 うつ病は、長期にわたる薬物療法を必要とすることが多く、有病率の高い衰弱性の疾患である。うつ病の薬物療法では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)が一般的に用いられるが、一部の患者では有効性および忍容性に限界がある。最近の研究でも、さまざまな経路を標的とした新しい抗うつ薬の有用性が示されている。パキスタン・Azad Jammu and Kashmir Medical CollegeのAmber Nawaz氏らは、うつ病患者に対するSSRI、SNRI、新規抗うつ薬の有効性、QOL改善、副作用プロファイルを評価するため、プロスペクティブコホート研究を実施した。Cureus誌2024年12月24日号の報告。 対象は、Abbas Institute of Medical Sciences の入院および外来うつ病患者300例。研究期間は、2024年3〜8月までの6ヵ月間。対象患者は、SSRI群、SNRI群、新規抗うつ薬群のいずれかに割り付けられた。うつ病の重症度の評価には、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)、QOLの評価には、標準化されたQOLスコアを用いた。各群の比較を行うために、t検定、分散分析(ANOVA)、カイ二乗検定などの統計分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・すべての群において、HAM-Dスコアの顕著な低下が認められた。・新規抗うつ薬群におけるHAM-Dスコアの平均低下が最も高かった(17.2、p<0.001)。・すべての群において、QOLの改善が認められた。・新規抗うつ薬群におけるQOLスコアの平均上昇が最も高かった(19.7、p<0.01)。・軽度〜中等度の副作用発現率は、SSRI群で32%、SNRI群で37%、新規抗うつ薬群で25%であり(p=0.04)、重度の副作用発現率は、SSRI群で6%、SNRI群で5%、新規抗うつ薬群で2%であり、新規抗うつ薬群で最も低かった。・アドヒアランスは、SSRI群で84%、SNRI群で82%、新規抗うつ薬群で91%であり、新規抗うつ薬群が最も高かった。 著者らは「新規抗うつ薬は、SSRIやSNRIよりも有効性および忍容性が優れ、QOLやアドヒアランス向上に寄与することが確認された。これらの結果は、従来の治療で効果不十分な患者にとって、新規抗うつ薬は代替薬となりうる可能性を示唆している。より長期的な多施設研究により、これらの結果を確認する必要がある」と結論付けている。

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COVID-19が日本の精神科医療に及ぼした影響

 COVID-19パンデミック中、日本では他の多くの国とは対照的に自殺が増加した。北海道大学の阿部 計大氏らは、COVID-19パンデミック中の日本における精神疾患患者の外来および入院治療へのアクセスが維持されていたかどうかを調査した。Social Science & Medicine誌2025年2月号の報告。 日本の急性期病院242施設のデータを用いて、COVID-19前後(2015〜19年vs.2020年)の精神疾患患者の精神科入院を比較するため、ポアソン回帰による差分分析を行った。2020年4月の日本政府による緊急事態宣言を外生的ショックとみなした。主要アウトカムには、統合失調症、気分障害、不安症、認知症、アルコール関連疾患の入院患者数および入院した外来患者数を含めた。 主な結果は以下のとおり。・研究期間中の外来患者数は7万9,867例、入院患者数は2,600例。・差分分析では、2020年4月以降、不安症を除く精神疾患患者で入院患者数および入院した外来患者数が減少していた。 【統合失調症】外来患者の入院率:0.92(95%信頼区間[CI]:0.83〜1.02)、入院患者数:0.71(95%CI:0.46〜1.09) 【気分障害】外来患者の入院率:0.92(95%CI:0.85〜0.99)、入院患者数:0.87(95%CI:0.50〜1.49) 【不安症】外来患者の入院率:1.02(95%CI:0.92〜1.13)、入院患者数:1.07(95%CI:0.69〜1.65) 【認知症】外来患者の入院率:0.88(95%CI:0.80〜0.96)、入院患者数:0.68(95%CI:0.38〜1.22) 【アルコール関連疾患】外来患者の入院率:0.77(95%CI:0.54〜1.11)、入院患者数:0.63(95%CI:0.43〜0.90) 著者らは「日本では、COVID-19パンデミックにより、不安症を除く精神疾患患者の入院が全体的に減少した。精神科医療の利用頻度減少は、日本における自殺率の上昇と対照的な関連があり、緊急時の精神科アクセスを評価する必要性が示唆された」と結論付けている。

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朝食の習慣や質と抑うつ症状との関連

 朝食は、1日で最も重要な食事とみなされることが多く、身体的および精神的健康に影響を与えると考えられる。多くの研究では、朝食を抜くことがうつ病に及ぼす影響に焦点が当てられているが、朝食の質や朝食時間について調査した研究はほとんどない。中国・西安交通大学のMengzi Sun氏らは、朝食習慣および朝食の質と抑うつ症状との関連性を調査した。Journal of Affective Disorders誌2025年4月15日号の報告。 対象は、2007〜18年の全国健康栄養調査(NHANES)の20歳以上の参加者2万3,839人。朝食習慣は、24時間食事回想法を2回実施して評価した。朝食摂取の有無とその時間を記録した。朝食の質を評価するため、朝食の質スコア(BQS)を算出した。抑うつ症状の評価には、こころとからだの質問票(PHQ-9)を用いた。関連性の評価には、バイナリロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・抑うつ症状のオッズ比(OR)は、朝食を想起しなかった人と比較し、1回想起した人で0.737(95%信頼区間[CI]:0.591〜0.919)、2回想起した人で0.766(95%CI:0.624〜0.939)であった。・朝食の質に対する抑うつ症状のORは、朝食の質が低い(BQS T1)群と比較し、朝食の質が中程度(BQS T2)群で0.895(95%CI:0.723〜1.108)、朝食の質が高い(BQS T3)群で0.716(95%CI:0.564〜0.908)であった(p for trend=0.013)。・朝食摂取時間に対する抑うつ症状のORは、午前8時より前に朝食を摂取した人と比較し、午前8〜9時に朝食を取った人で1.104(95%CI:0.888〜1.371)、午前9時以降に朝食を摂取した人で1.278(95%CI:1.030〜1.587)であった。 著者らは「朝食を抜くこと、朝食の質が低いこと、朝食摂取時間が遅いことは、抑うつ症状と独立して関連している」と結論付けている。

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統合失調症の陰性症状に対する抗精神病薬+スルフォラファンの有用性

 統合失調症の陰性症状に対する確立された治療法はほとんどなく、多くの患者では、陽性症状軽減後も陰性症状が持続している。酸化ストレス、炎症、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)に関わるエピジェネティックな変化は、統合失調症の病態生理と関連していると考えられている。中国・中南大学湘雅二医院のJing Huang氏らは、統合失調症の陰性症状軽減に対する抗酸化作用を有するHDAC阻害薬であるスルフォラファンの有効性を評価するため、24週間の二重盲検プラセボ対照試験を実施した。The Journal of Clinical Psychiatry誌2025年1月20日号の報告。 統合失調症(DSM-V基準)患者を2020年8月〜2022年8月に募集した。対象患者は、抗精神病薬とスルフォラファン(1,700mg/日)を併用したスルフォラファン群とプラセボを併用した対照群に2:1でランダムに割り付け、24週間投与を行った。解析対象患者は、スルフォラファン群53例、対照群24例。主要アウトカムは、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の陰性症状スコアの変化とした。 主な結果は以下のとおり。・スルフォラファン群は、対照群と比較し、PANSS陰性症状総スコア(p=0.01)およびPANSS陰性因子スコア(p=0.02)の有意な減少が認められた。・最も顕著な差は、24週目にみられ(p≦0.01)、24週時点でのエフェクトサイズは大きかった(d=0.8)。・スルフォラファンの陰性症状軽減効果は、PANSSの抑うつ症状および認知因子の変化により得られる作用ではなかった。 著者らは「高用量スルフォラファンの併用投与は、統合失調症患者の陰性症状改善に寄与する可能性が示唆された。この陰性症状軽減の臨床的意義については、さらなる評価が必要とされる」と結論付けている。

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統合失調症に対するアリピプラゾール併用による糖脂質代謝への影響〜メタ解析

 アリピプラゾール補助療法は、統合失調症の精神症状および代謝障害の改善に潜在的な影響を及ぼすことが現在の研究で示唆されている。しかし、これらの研究は不足しており、糖脂質代謝指標に関する詳細な分析が不十分である。中国・Yulin City Veterans' HospitalのTianbao Wei氏らは、アリピプラゾール補助療法が精神症状および糖脂質代謝に及ぼす影響を評価するため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2025年1月10日号の報告。 アリピプラゾール補助療法が糖脂質代謝および臨床症状に及ぼす影響を評価したRCTを、PubMed、EMBASE、Web of Science databasesよりシステマティックに検索した。 主な結果は以下のとおり。・アリピプラゾール補助療法は、統合失調症患者の血糖値、トリグリセライド、総コレステロール、LDL値を低下させたが、HDL値への有意な影響は認められなかった。・アリピプラゾールの短期的(8週間以内)および投与量15mg超で、代謝パラメータの有意な改善が認められた。・アリピプラゾール補助療法は、臨床症状の悪化につながる可能性も否定できないため、使用に際しては注意が必要である。 著者らは「アリピプラゾール補助療法は精神症状および代謝パラメータの両方を改善する潜在的なベネフィットが認められた。とくに糖脂質代謝指標に関して、これらの結果を確固たるものにするためには、より包括的な研究が求められる」と結論付けている。

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大規模研究が示した、SNSの使いすぎによるリスク【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第276回

大規模研究が示した、SNSの使いすぎによるリスク現代社会において、SNSは私たちの日常生活に深く染みついたコミュニケーションツールです。これまで、SNSのメンタルヘルスへの影響については、主にうつ病や不安との関連で議論されてきました。しかし、最新の研究により、「イライラ」との関連性が明らかになってきています。米国の研究チームが2023年11月~2024年1月にかけて実施した4万2,597人を対象とする大規模調査です。この調査で、SNSの利用頻度が高いほど、「イライラ」の度合いが強くなる傾向が確認されました。特筆すべきは、この関連性が年齢や性別、教育レベル、収入などの要因を考慮しても有意性が残存していたことです。 Perlis RH, et al.Irritability and Social Media Use in US Adults.JAMA Netw Open. 2025 Jan 2;8(1):e2452807.調査によると、対象者の約78%が少なくとも1つのソーシャルメディアプラットフォームを毎日利用しており、そのうち約14%が1日1回、39%が1日数回、25%が1日中利用していると回答しています。いや、多すぎやろ。利用頻度が高くなるほど、イライラの度合いを測るBrief Irritability Testのスコアも上昇する傾向が見られました。とくに興味深かったのは、単なるSNSの閲覧ではなく、投稿などの積極的な関与をする人ほど、イライラの度合いが強くなる傾向が確認されたことです。投稿頻度が高い医療従事者は注意しないといけませんね。プラットフォーム別では、TikTokとFacebookの利用者で最も顕著な関連性が見られ、TwitterやInstagramではやや控えめな傾向が確認されました。しかし、ユーザーが減っているSNSもあるので、「このSNSが危ない」とまでは断言できないでしょう。どのSNSもそれなりにリスクがあると理解すべきです。政治的な話題への関与度との関連も調査され、政治的な議論に頻繁に参加する人ほどイライラの度合いが強く、1日数回政治的な議論をする人では、そうでない人と比べてイライラスコアが1.20ポイント高くなっていました。確かに、政治・宗教・ワクチン、このあたりの話題で火力が強いポストをしているインフルエンサーは、結構イライラしている印象ですね…。みなさんも明日はわが身、気を付けましょう。

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テレビドラマ「説得」【親が輸血だめなら子供もだめ!?(医療ネグレクト)】Part 1

皆さんは、宗教上の理由で、輸血を拒む人をどう思いますか? 輸血自体にウイルス感染症などのリスクもあるため、たとえ輸血しなければ死んでしまうとしても、最終的には患者の自己決定権が優先されます。しかし、親が自分の子供への輸血を拒んでいる場合はどうでしょうか? そして、輸血しなければ死んでしまう場合はどうでしょうか?今回は、医療ネグレクトをテーマに、かつてのテレビドラマ「説得」を取り上げます。このドラマは、実際の事件をドラマ化しており、そのやり取りにはリアリティがあります。そして、この輸血拒否に対しての学会の対応ガイドラインと2023年までに出された厚労省の指針もご紹介します。さらに、輸血をどうするかという医療倫理としてだけでなく、子供にはどうするかという「子育て倫理」としても一緒に考えてみましょう。なんで輸血がだめなの?主人公は荒木。脱サラして小さな書店を妻と一緒に営んでいます。3人の子供にも恵まれ、ごく普通の家庭生活を送っていました。そんななか、ある日、2番目の子供の健が交通事故に遭います。荒木夫妻は医師から複雑骨折をして出血多量であるため、輸血して手術をすれば助かると言われます。ところが、荒木夫妻は輸血を頑なに拒みます。荒木は「宗教上の問題です」「私たちの宗教は輸血を禁じているんです」と説明します。代わる代わるに医師たちが説得を試みるのですが、荒木夫妻は一貫して「輸血しないで手術してください」と懇願するのです。別室での待機中、荒木夫妻は聖書の教えを唱え始めます。「あらゆる肉なるものの魂は、その血であり、魂がその内にあるから、いかなる肉なるものの血も食べてはならない。すべて、それを食べるものは断たれる」と。そして、妻が「私たちは委ねたんじゃない。あなたも私も健も、神の教えに従うって。それでいいって」と言います。荒木が「だけど、健にもしものことがあったら?」と戸惑っていると、妻は「わかってくれると思う、あの子は」と言い切ります。そしてとうとう救急車で運ばれてから数時間後、健は、目の前に輸血の点滴が準備されている手術台の上で、輸血されることのないまま、手術されることのないまま、息を引き取ります。荒木夫妻が悲しみに暮れていると、中学生の長女が駆けつけてきて、「健ちゃんかわいそうよ。大丈夫よ。健ちゃんは天国に行って必ず復活するんだもの。永遠の命を授かるんだもの」とたしなめるのでした。輸血拒否の論理は、血=命である。肉を食べることはできるが、その血は地に注いで神に返さなければならない。血を食べてしまうと、神から見放されてしまい、死んで天国に行けなくなるということです。そして、輸血も血を食べることになり禁じられます。ただし、自己血輸血や、主要成分ではないアルブミンや免疫グロブリンは受け入れる信者もいて、解釈が分かれています1)。それにしても、苦悩しながらも自分の子供の命よりも信仰を優先する言動には、あまりにも不合理に思われます。一方で、説得する医師の1人は「人間は信仰のためには死にもするし、殺しもするんです。今世界中で宗教上の違いから、どれだけの紛争や戦争が起こっているか」と述べ、理解を示そうとします。このセリフから、信仰とはそもそも不合理なものであり、それを文化的に受け入れられているかどうかの問題であることがわかります。そして、文化的に受け入れられない場合、精神医学的には妄想と呼ばれます。つまり、信仰と妄想は紙一重であり、表裏一体であることもわかります。実際の画像研究においても、信仰(宗教体験)と妄想状態(統合失調症)は、同じ脳領域が過活動になっていることがわかっています2)。なお、信仰と妄想の類似性の詳細については、関連記事1をご覧ください。次のページへ >>

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テレビドラマ「説得」【親が輸血だめなら子供もだめ!?(医療ネグレクト)】Part 3

輸血拒否に医療はどうすればいいの?健が死んで1ヵ月後、担当していた医師が、荒木に再会し、言います。「心臓外科が専門なんですが、手術しても社会に復帰できない子がたくさんいるんです。宗教的に言えば、神がそういうふうにつくったとしか…それを手術して、神の意思に反してるんじゃないかって気がする時も。そう言いながらも、やはり今手術しないと死んでしまうと言えば、やはり…あの直後、うちの病院では、今後(子供には)承諾が取れなくても、医師の判断で輸血をするという決定をしました」と。実際に、2008年に日本輸血・細胞治療学会と日本小児科学会は合同でガイドラインを出しました。そして、2022年と2023年に厚労省は、このガイドラインを踏まえて、宗教的虐待と医療ネグレクトに関する指針を出しました3,4)。なお、医療ネグレクトとは、医師が必要と判断した医療を親が子供に受けさせないことです。このガイドラインでは、年齢を3つの時期に区切り、場合分けをしています。まず、18歳以上は当然ながら、本人の意思が尊重されます。逆に、14歳以下は、拒否が親や本人にあったとしても、なるべく輸血しないとしつつも、最終的には輸血は可能になります。注目すべきは、15歳から17歳の年齢です。本人と親がどちらも拒否した場合のみ、輸血は不可になります。たとえば、長女は「教えを守れば天国に行ける」と確信していたので、中3で15歳になっているとすると、彼女に輸血することはできません。逆に、どちらかしか拒否しなかった場合は、なるべく輸血しないとしつつも、最終的には輸血は可能になります。なお、15歳で分けている理由は、15歳が民法で遺言の効力が生まれる年齢と定められているからです。また、知的障害などによって医療に関する判断能力がない場合は、14歳以下と同じく、輸血は可能になります。さらに、輸血を含めて治療が親によって阻害される場合は、児童相談所に虐待通告し、児童相談所で一時保護のうえ、家庭裁判所による親権停止の審判を受けて、治療を行うことができます。緊急性がある場合は、審判確定までの間に権利を保護する暫定的な処分(保全処分)を申し立てることで、すぐに効力が発生する措置がとられます。実際に、2021年に親権停止が認められたのは107件で、医療ネグレクトが原因とされるものは21件でした1)。また、輸血拒否をする教団(「エホバの証人」)の広報によると、2017年から2022年の5年間で、親権停止などの法的措置がとられたのは13件でした1)。「説得」とは?このドラマは、親の信仰によって子供の命が救えなくなるという、宗教と医療の衝突を生々しく描いていました。そして、信仰とは、妄想と同じく不合理で訂正不能であるため、いくら理屈をこねたり情に訴えたりして説得しようとしても、納得が得られないものであることもわかりました。学会のガイドラインや厚労省の指針のおかげで、親の信仰によって子供の命が救えなくなることはなくなりました。しかし、まだ問題が残っています。それは、命にかかわる急性疾患とは違い、すぐに命にかかわらない慢性疾患や、担当した医師が言っていたように手術しても必ずしも治るとは限らない疾患についてです。たとえば、実際に、子供が精神的に不調でも親が偏見やいわゆる根性論から児童精神科を受診させないケースは、時々見受けられます。このような場合は、司法が親権停止の判断を出すのが難しくなります。つまり、どこまでが医療ネグレクトでどこまでが親の裁量とするかという線引きの問題がまだ残っています。これは、医療を含む子育て全般にも言えることです。この線引きのために、信仰を押し付けるのはもっての外ですが、経験則や自分の思い入れ、思い込みではなく、アカデミックな視点が必要です。それは何より、子供の不利益にならないようにするためだからです。これからは、医療だけでなく、子育てにも倫理観が必要な時代になってきます。これは、医療倫理を超えて、子育てのあり方にも広がる「子育て倫理」と呼べるでしょう。なお、今回は治療をさせない親がテーマでしたが、逆に治療をさせすぎる親については、関連記事3をご覧ください。1)宗教と子供p.106、p.118、p.122、pp.124-125、pp.149-153:毎日新聞取材班編、明石書店、20242)宗教の起源p.246:ロビン・ダンバー、白揚社、20233)宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A:厚生労働省子供家庭局長通知、20224)宗教の信仰等を背景とする医療ネグレクトが疑われる事案への対応について:厚生労働省子供家庭局長、2023虐待についての関連記事教育虐待そして父になる(続編・その1)【英才教育で親がハマる「罠」とは?(教育虐待)】教育ネグレクト映画「かがみの孤城」(その2)【実は好きなことをさせるだけじゃだめだったの!?(不登校へのペアレントトレーニング)】Part 1<< 前のページへ■関連記事映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その1)【宗教体験と幻覚妄想は表裏一体!?(統合失調症の二面性)】Part 1Mother(続編)【虐待】映画「ラン」(前編)【なんで子供を病気にさせたがるの?(代理ミュンヒハウゼン症候群)】Part 1

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精神科再入院に対する各抗うつ薬の影響比較

 うつ病患者は、健康状態が悪化することが少なくない。さらに、複数の入院を経験した患者は、予後不良である傾向が高まる。うつ病に対する第1選択治療は、依然として抗うつ薬治療であるが、各抗うつ薬が精神科再入院リスクに及ぼす影響を評価したデータは、限られている。米国・ラトガース大学のHannah Mei氏らは、精神科入院うつ病患者における退院時の抗うつ薬選択と再入院率との関連を評価した。Cureus誌2024年12月22日号の報告。 対象は、抗うつ薬治療により退院した成人うつ病患者。対象患者の精神科再入院率を評価するため、単一施設レトロスペクティブカルテベースレビューを実施した。主要アウトカムは、抗うつ薬治療による30日間の精神科再入院率の比較とした。副次的アウトカムには、抗うつ薬治療による6ヵ月および1年間の精神科再入院率を含めた。オッズ比(OR)、95%信頼区間(CI)、p値を算出し、各抗うつ薬治療により退院した患者とそれ以外の抗うつ薬で治療した患者における再入院のORを比較した。 主な結果は以下のとおり。・この研究で用いられていた抗うつ薬は、bupropion、デュロキセチン、エスシタロプラム、fluoxetine、ミルタザピン、パロキセチン、セルトラリン、トラゾドン、ベンラファキシン。・退院時にセルトラリンで治療されていた患者は、他の抗うつ薬または複数の抗うつ薬を併用していた患者と比較し、30日以内の精神科再入院リスクが約4分の1であった(OR:0.228、95%CI:0.053〜0.978、p<0.05)。・退院時に抗うつ薬を併用していた患者は、単剤治療していた患者と比較し、再入院リスクが高かった(OR:4.517、95%CI:1.581〜12.908、p<0.05)。 著者らは「精神科入院うつ病患者に対する抗うつ薬の選択は、症状の再発や再入院リスクに影響を及ぼす可能性があり、慎重に検討する必要があることが示唆された。うつ病患者の精神科再入院リスクに及ぼす可能性のある他の因子を評価するためにも、さらなる研究が求められる」と結論付けている。

94.

統合失調症の疾患経過に発症年齢が及ぼす影響

 中国・天津大学のQingling Hao氏らは、慢性期統合失調症患者の初回入院年齢に影響を及ぼす因子、とくに臨床的特徴および血清パラメータに焦点を当て、検討を行った。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2025年1月21日号の報告。 対象は、中国の精神科病院17施設より募集した慢性期統合失調症患者1,271例。初回入院年齢を含む人口統計学的データおよび臨床データを収集した。精神症状、未治療期間、各血清パラメータの評価を行った。これらの因子と初回入院年齢との関連を調査するため、統計分析を行った。 主な内容は以下のとおり。・初回入院年齢の平均は、28.07±9.993歳。・独身および精神疾患の家族歴を有する患者では、入院時の年齢がより若年であった。・自殺念慮および自殺行動のある患者では、そうでない患者と比較し、入院年齢がより若年であった。・回帰分析では、早期入院年齢の重要なリスク因子として婚姻状況(独身)、精神疾患の家族歴、自殺念慮または自殺行動が特定された。・一方、未治療期間、総タンパク質、LDL値は初回入院年齢と正の相関が認められ、抗精神病薬の投与量およびアルブミン値は負の相関が認められた。 著者らは「本調査により、慢性期統合失調症患者の初回入院と関連する重要な因子が特定された」とし「統合失調症患者の治療アウトカムを改善するためにも、高リスク患者に対する早期介入および適切なサポートの重要性が示唆された」としている。

95.

MCI高齢者に対するVR介入の有効性〜メタ解析

 アルツハイマー病は、根治不能な疾患であるが、軽度認知障害(MCI)の段階で仮想現実(VR)を用いた介入を行うことで、認知症の進行を遅らせる可能性がある。中国・上海交通大学のQin Yang氏らは、MCI高齢者におけるVRの有効性を明らかにするため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Medical Internet Research誌2025年1月10日号の報告。 2023年12月30日までに公表された研究をWeb of Science、PubMed、Embase、Ovidよりシステマティックに検索した。対象研究は、55歳以上のMCI高齢者の認知機能、気分、QOL、体力に対するVRベース介入を自己報告で評価したRCT。調査されたアウトカムには、一般的な認知機能、記憶力、注意力/情報処理速度、実行機能、言語機能、視空間能力、うつ病、日常生活能力、筋力パフォーマンス、歩行/バランスなどを含めた。2人の独立した担当者により、特定された論文と関連レビューの検索結果およびリファレンスリストをスクリーニングした。介入の構成要素と使用された実施および行動変化の手法に関するデータを抽出した。適格基準を満たした場合に、メタ解析、バイアスリスク感度分析、サブグループ解析を実施し、潜在的なモデレーターを調査した。エビデンスの質の評価には、GRADEアプローチを用いた。 主な結果は以下のとおり。・18研究、MCI高齢者722例を分析に含めた。・VR介入は、VR認知トレーニング、VR身体トレーニング、VR認知運動デュアルタスクトレーニングがさまざまな没入レベルで行われていた。・VR介入により、記憶力、注意力/情報処理速度、実行機能の有意な改善が認められた。【記憶力】標準化平均差(SMD):0.2、95%信頼区間(CI):0.02〜0.38【注意力/情報処理速度】SMD:0.25、95%CI:0.06〜0.45【実行機能】SMD:0.22、95%CI:0.02〜0.42・セラピストによる介入のないVR介入でも、記憶力だけでなく注意力/情報処理速度の改善が認められた。・VR認知トレーニングにより、MCI高齢者の注意力/情報処理速度の有意な改善が認められた(SMD:0.31、95%CI:0.05〜0.58)。・没入型VRは、注意力/情報処理速度(SMD:0.25、95%CI:0.01〜0.50)および実行機能(SMD:0.25、95%CI:0.00〜0.50)の改善に対し有意な影響を示した。・一般的な認知機能、言語機能、視空間能力、うつ病、日常生活能力、筋力パフォーマンス、歩行/バランスに対するVR介入効果は、非常に小さかった。・GRADEアプローチに基づくエビデンスの質は多様であり、特定の認知機能評価に対しては中程度、その他の評価では低であった。 著者らは「MCI高齢者に対するVR介入は、記憶力、注意力/情報処理速度、実行機能の改善に有効であることが示唆された。エビデンスの質は中程度〜低であったことから、これらの結果を確認し、新たな健康関連アウトカムについても検討するうえで、さらなる研究が必要とされる」と結論付けている。

96.

日本における精神科入院に対する向精神薬頓服処方モニタリングプログラムの有用性

 向精神薬の頓服処方は、精神疾患に対する通常の薬物療法に加えて、興奮や不眠などの症状に対し、必要に応じて使用される。しかし、向精神薬頓服処方の有効性は、関連するエビデンスの質が低く、多剤併用につながる懸念がある。北里大学の斉藤 善貴氏らは、精神科入院患者を対象に向精神薬頓服処方モニタリングプログラムを導入し、プログラム実施前後の処方の変化をレトロスペクティブに調査した。BMC Psychiatry誌2025年1月17日号の報告。 対象は、2021年7月〜2023年6月の精神科入院患者389例。向精神薬頓服処方モニタリングプログラムは、2022年7月に実施した。対象患者を、モニタリング群および非モニタリング群(対照群)に分類した。人工統計学的データ(年齢、性別、診断)、入院前および退院時の定期処方、入院前および退院時の向精神薬頓服処方、入院中の向精神病薬頓服処方数を両群間で比較した。向精神薬処方に関するデータは、向精神薬のカテゴリ別に集計した。ボンフェローニ補正多重比較法を用いて、有意水準5%を0.00167に設定した。 主な結果は以下のとおり。・退院時の向精神薬頓服処方率は、モニタリング群で9.3%であり、対照群(28.1%)と比較し有意に低かった。・入院中に向精神薬頓服処方を行った患者の割合は、モニタリング群で29.8%であり、対照群(64.5%)よりも有意に低かった。・対照群では、入院前後の定期処方された向精神薬の薬剤数に有意な変化が認められなかった。・しかし、モニタリング群では、入院前の定期処方された向精神薬も薬剤数2.47±1.90から退院時には1.87±1.24へと有意な減少が認められた。 著者らは「向精神薬頓服処方モニタリングプログラムは、定期処方を含む向精神薬の多剤併用リスクを軽減させる可能性が示唆された。向精神薬の頓服処方を最適化し、多剤併用からの脱却を目指すためにも、さらなる研究が求められる」と結論付けている。

97.

10代の若者が自殺に向かう理由―未遂者対象解析

 10代の若者が自殺行動に至る理由やその手段などの特徴が明らかになった。日本医科大学付属病院精神神経科の成重竜一郎氏らの研究の結果であり、詳細は「BMC Psychiatry」に11月6日掲載された。学校や家庭の問題、および自閉スペクトラム症が、この世代の自殺リスクを押し上げている可能性があるという。 国内の自殺者数は近年減少傾向にあるが、10代の若者の自殺者数は変化が乏しく、依然としてこの世代の死因のトップを占めている。10代の自殺は他の世代とは異なる特徴を持つことが海外から報告されている。しかし日本人のデータは少なく詳細が不明。これを背景として成重氏らは、2010~2021年に同院救命救急センターに収容され、救命し得た症例を対象とする詳細な解析を行った。自殺企図の原因・動機や精神疾患の有無などは、2人以上の経験豊富な精神科医の討議により推定・診断した。 上記期間の自殺未遂による患者数は860人だった。このうち、10代の自殺未遂の特徴を探るという意図から、最も近い世代である20代の自殺未遂者を比較対照群とした。各群の患者数は、10代が59人(全体の6.9%)、20代が216人(同25.1%)だった。 まず、10代と20代の合計275人の全体としての特徴を見ると、女性が68.7%と多く、精神科の受診歴ありが74.2%、自傷行為の既往ありが61.8%だった。自殺行動の手段としては過量服薬が67.3%、高所からの飛び降りが17.8%などであり、認められた精神疾患・発達特性は、気分障害23.6%、パーソナリティー障害21.5%、適応障害17.1%、統合失調症と他の精神病性障害12.0%、自閉スペクトラム症9.8%などだった。 これらを10代と20代で比較した場合、性別の分布や自傷行為の既往には有意差がなかったが、精神科の受診歴は20代に多く(10代62.7%対20代77.3%)、高所からの飛び降りによる自殺企図(同順に28.8%対14.8%)や自閉スペクトラム症(28.8%対4.6%)は10代に多いといった有意差が認められた。 自殺企図の原因・動機については、学校の問題(40.7%対4.6%)、家庭の問題(39.0%対16.7%)、家庭の問題のうちの親子関係(30.5%対8.8%)などは10代が有意に多く、一方、恋愛上の問題(5.1%対32.4%)、仕事上の問題(3.4%対20.8%)、経済的な問題(0.0%対12.0%)は20代が有意に多かった。 次に、先行研究において10代の自殺に関連が深いと報告されている事柄を説明変数とするロジスティック回帰分析にて、10代の自殺企図に関連のある因子を検討。その結果、学校の問題(オッズ比〔OR〕14.338〔95%信頼区間5.557~36.998〕)、自閉スペクトラム症(OR7.297〔同2.541~20.956〕)、家庭の問題(OR2.860〔1.355~6.038〕)という三つの因子がそれぞれ独立して自殺企図に関連していることが示された。 著者らは、本研究が都心部の単一施設のデータに基づく解析であるため、日本の他の地域とは傾向が異なる可能性があることなどを留意点として挙げた上で、「10代の若者は、ある程度自分で環境を変えることのできる成人と比べ、学校や家庭などの容易に変え難い環境で発生する困難から逃れることができず、その葛藤が自殺企図につながる可能性を示唆している。10代の自殺防止対策には、これらの要因を考慮することが重要である」と述べている。 なお、学校や家庭の問題以外に、自閉スペクトラム症が10代の自殺企図に関連しているという結果については、「自分を取り巻く状況を変えることが難しい場合に、代替策として自身の特性を抑え込み、周囲に適応しようとする『社会的カモフラージュ』を強いられることで、精神的な負担がさらに増大しやすくなるためではないか」との考察が加えられている。

98.

重度精神疾患患者における第2世代抗精神病薬の心代謝プロファイルの安全性比較

 重度の精神疾患のマネジメントにおけるアリピプラゾールの心代謝への安全性および有効性の比較に関するエビデンスは限られており、その結果は一貫していない。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのAlvin Richards-Belle氏らは、他の第2世代抗精神病薬と比較したアリピプラゾールの心代謝プロファイルおよび有効性を調査した。PLoS Medicine誌2025年1月23日号の報告。 英国・プライマリケアにおけるアリピプラゾールとオランザピン、クエチアピン、リスペリドンを直接比較した観察エミュレーションを実施した。データは、Clinical Practice Research Datalinkより抽出した。対象は、2005〜17年に新たに抗精神病薬を使用した重度の精神疾患(双極症、統合失調症、その他の非器質性精神病)成人患者。2019年までの2年間、フォローアップを行った。主要アウトカムは、1年後の総コレステロール値(心代謝安全性)とした。主な副次的アウトカムは、精神科入院(有効性)とした。その他のアウトカムには、体重、血圧、すべての原因による治療中止、死亡率などを含めた。分析では、人口統計、診断、併用薬、心血管代謝パラメータなどのベースライン交絡因子で調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は2万6,537例。その内訳は、アリピプラゾール群3,573例、オランザピン群8,554例、クエチアピン群8,289例、リスペリドン群6,121例。・年齢中央値は53歳(四分位範囲:42〜67)、女性の割合は55.4%、白人の割合は82.3%、統合失調症の割合は18.0%。・アリピプラゾール群における1年後の総コレステロール値は、オランザピン群(調整平均[aMD]:−0.03、95%信頼区間[CI]:−0.09〜0.02、p=0.261)、クエチアピン群(aMD:−0.03、95%CI:−0.09〜0.03、p=0.324)、リスペリドン群(aMD:−0.01、95%CI:−0.08〜0.05、p=0.707)と同等であった。・体重や血圧などの他の心代謝パラメータは、とくにオランザピン群と比較し、アリピプラゾール群のアウトカムが良好であることが示唆された。・入院歴で調整した後、アリピプラゾール群の精神科入院率は、オランザピン群(調整ハザード比[aHR]:0.91、95%CI:0.82〜1.01、p=0.078)、クエチアピン群(aHR:0.94、95%CI:0.85〜1.04、p=0.230)、リスペリドン群(aHR:1.01、95%CI:0.91〜1.12、p=0.854)と同等であった。 著者らは「重度の精神疾患患者に対するアリピプラゾール治療は、他の第2世代抗精神病薬と比較し、1年後の総コレステロール値は同等であったが、体重や血圧などの他の心代謝パラメータは良好であり、有効性の違いも認められなかった」とし「本結果は、新規の重度精神疾患患者に対する抗精神病薬の選択時において、臨床意思決定の根拠となるであろう」と結論付けている。

99.

統合失調症の新治療戦略、マイクロバイオーム治療に関するメタ解析

 統合失調症は、慢性的な精神疾患であり、さまざまな症状が認められる疾患である。その症状は、大きく陽性症状、陰性症状、認知機能に分類される。統合失調症の病因は多因子性であり、遺伝的、神経生物学的、環境的因子が複雑かつ相互に関与しており、神経生物学的因子は、さまざまな神経伝達物質システムの異常と関連していると考えられる。この多因子性の病因および神経生物学的因子により、症状や臨床所見が多種多様となる。現在の抗精神病薬による治療は、依然として課題に直面しており、新たな治療法が求められている。最近の研究では、統合失調症患者と健康対照者における腸内マイクロバイオームの違いが明らかになっており、統合失調症と胃腸の健康に複雑な関連があると報告され、マイクロバイオームを標的とした介入が、臨床症状の改善に寄与する可能性が示唆されている。ブラジル・サンパウロ大学のLucas Hassib氏らは、薬物療法中の統合失調症患者の臨床アウトカムに対するマイクロバイオーム治療の有効性を調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Brain,Behavior, & Immunity-Health誌2024年12月11日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・81件の研究より、バイアスリスクの低い7件のランダム化比較試験、2件の非盲検試験を含む9件の研究(417例)をメタ解析に含めた。・全体的な複合エフェクトサイズでは、マイクロバイオーム治療後の臨床症状の有意な改善が示されたが(Hedges'g=0.48、95%信頼区間:0.09〜0.88、p=0.004、I2=62.35%)、エフェクトサイズは小さく、研究の異質性は中程度であった。・臨床研究および前臨床研究において、とくにラクトバチルス属とビフィズス菌属によるマイクロバイオーム治療は、神経、免疫、代謝経路に作用し、脳腸軸を介して統合失調症の症状に効果的な影響をもたらす可能性が示唆されている。 著者らは「統合失調症の主要または補助的な治療におけるマイクロバイオーム治療の可能性を明らかにするためには、大規模かつ高品質な試験が求められる」としている。

100.

混合性うつ病の精神運動興奮に対するトラゾドンIVの有効性

 精神運動興奮は、混合性うつ病の困難な症状であり、多くの場合、臨床アウトカムを悪化させ、治療を複雑化させる。イタリア・シエナ大学のPietro Carmellini氏らは、混合性うつ病患者を対象に、トラゾドン静脈内投与(IV)の有効性および忍容性を評価するため、レトロスペクティブ研究を実施した。International Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2025年1月13日号の報告。 対象は、混合性うつ病入院患者97例。症状重症度は、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)、ヤング躁病評価尺度(YMRS)、ハミルトン不安評価尺度(HAM-A)、7項目一般化不安障害質問票(GAD-7)、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)を用いて評価した。 主な内容は以下のとおり。・治療初期において、興奮、不安、易怒性の有意な低減が観察された。・相関分析では、トラゾドンIVの投与量とMADRS(r=−0.23、p<0.05)、GAD-7の項目5(r=−0.27、p<0.001)、CGI-S(r=−0.22、p<0.05)のスコア改善との間に有意な負の相関が認められた。・治療期間においても、GAD-7の項目5(r=−0.29、p<0.001)、CGI-S(r=−0.27、p<0.001)のスコア改善と負の相関が認められ、これは治療期間が長くなると効果が低減する可能性を示している。・回帰分析では、投与量ではなく治療期間がGAD-7の項目5およびCGI-Sのスコア改善に有意な影響を及ぼすことが示唆された。・トラゾドンは、忍容性が良好であり、軽度の副作用が11.3%の患者でみられた。 著者らは「混合性うつ病の興奮および関連症状の低減に対するトラゾドンIV治療、とくに初期段階での治療が有効であることを示唆しており、併せて治療期間を最適化することの重要性が示された。今後の研究において、個別化された投与戦略や長期アウトカムを調査する必要がある」としている。

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