サイト内検索|page:5

検索結果 合計:2848件 表示位置:81 - 100

81.

自殺念慮を伴ううつ病は治療抵抗性へつながるのか

 治療抵抗性うつ病は、自殺行動と関連している。自殺リスクは、治療抵抗性うつ病の予測因子であるため、自殺念慮を有するうつ病患者は、将来治療抵抗性うつ病を発症する可能性が高まる。そのため、現在自殺念慮を有するうつ病患者では、治療抵抗性うつ病のリスク因子の早期特定が非常に重要となる。フランス・モンペリエ大学のBenedicte Nobile氏らは、現在自殺念慮を有するうつ病患者におけるうつ病の非寛解率および治療抵抗性うつ病のリスク因子の特定を試みた。また、ベースライン時の自殺念慮が、ベースライン時のうつ病重症度や6週間後のうつ病寛解率に及ぼす影響を評価した。Psychiatry Research誌2024年12月号の報告。 対象は、2つのフランス大規模プロスペクティブ自然主義的コホート研究(LUEUR研究、GENESE研究)より抽出した、うつ病成人外来患者(DSM-IV基準)。抗うつ薬の開始または切り替えから6週間、フォローアップを行った。現在自殺念慮を有する患者とそうでない患者の間で、社会人口統計学的および臨床的特徴、早期症状改善に違いがあるかを比較するため、ロジスティック回帰モデル(単変量、多変量)を用いた。抗うつ薬の開始または切り替えを行った患者は、それぞれ分析した。治療抵抗性うつ病の定義は、抗うつ薬変更後6週間でうつ病が寛解しなかった場合とした。 主な結果は以下のとおり。・抗うつ薬の切り替えを行った患者における非寛解の主な予測因子は、2週間目の不安症状の早期改善不良であった。・抗うつ薬治療開始患者におけるベースライン時の自殺念慮は、ベースライン時のうつ病重症度およびうつ病寛解率との関連が認められた。・ベースライン時のうつ病重症度だけでは、うつ病寛解率を説明することはできなかった。 著者らは「現在自殺念慮を有するうつ病患者では、不安症状および自殺念慮をターゲットとした特定の薬理学的および非薬理学的治療を行い、その効果を短期的に評価することで、うつ病寛解率を向上させる可能性が示唆された」としている。

82.

映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その1)【宗教体験と幻覚妄想は表裏一体!?(統合失調症の二面性)】Part 1

今回のキーワード宗教体験幻聴被害妄想知覚の異常思考の異常宗教妄想皆さんは、「神のお告げが聞こえる」「私たちは罰を受けている」と説かれるとどう思いますか? これらのいわゆる預言や神罰の境地、つまり宗教体験は、古くから世界各地で共通してみられます。一方で、率直なところ、周りで誰も話していないのに声が聞こえる幻聴や、周りから何かされているのではないかと思い込む被害妄想と何が違うのでしょうか?この答えを探るために、今回は、映画「ミスト」とドラマ「ザ・ミスト」を合わせて取り上げます。この2つの作品は、原作が同じで、展開もかなり似ていますが、登場人物の設定が違い、ドラマの方がより複雑な人間関係になっています。ただ、この2つの作品に共通して一際存在感を発揮していくキャラクターがいます。映画では「カーモディさん」、ドラマでは「ナタリー」です。今回は、この2人に焦点を当て、精神医学の視点から、宗教体験と幻覚妄想は表裏一体であるわけを説明し、統合失調症という心の病の二面性について一緒に考えてみましょう。なお、今回は、このシネマセラピーの記事における映画「ミスト」の後編になります。前編「宗教の起源」と中編「マインドコントロールのメカニズム」については、以下の記事をご覧ください。宗教体験が幻覚妄想と表裏一体であるわけは?あるのどかな田舎町に突然立ち込めた濃い霧(ミスト)。その中に入ってしまった町の人たちは、次々と大けがをして死んでいきます。何とかその霧から逃れた人たちは、大きな建物の中に避難しますが、そこに閉じ込められてしまいます。彼らは、わけがわからず恐怖に震え、途方に暮れるだけだったのでした。そんななか、映画ではカーモディさん、ドラマではナタリーが、信仰心によって存在感を発揮していきます。まず、この2人の言動から、宗教体験が幻覚妄想である理由を大きく2つ挙げて、精神医学的に説明しましょう。(1)神のお告げが聞こえる―幻聴映画版のカーモディさんは、異常事態の当初、トイレの中で涙を流しながら神と対話していました。彼女は、「どうか私にこの人たちを助けさせてください」「あなたの言葉を説かせてください」「光で導かせてください」「悪人ばかりではないはずです」「あなたの赦しによって何人かは救うことができるはずです」「天国の門をくぐれるはずです」「1人でも救えたら、私の人生に意義が見いだせます」「私の役割を果たせるのです」「そしてあなたのおそばに行ける」「あなたのご意志を全うできるのです」と語ります。ドラマ版のナタリーは、アリやクモを神格化して、会話しているようなシーンが描かれていました。1つ目の宗教体験は、神のお告げが聞こえ、神と対話することです。これらは、宗教的には預言と見なされますが、精神医学的にはそれぞれ命令幻聴、対話性幻聴が当てはまります。なぜなら、周りで誰も話していないのに声が聞こえてくるという知覚の異常としては、このような宗教体験も幻聴もやはり区別できないからです。(2)私たちは罰を受けている―被害妄想映画版のカーモディさんはやがて、周りの人たちに「真実が見えない?」「私たちは罰を受けている」「神のご意思に背くことをしているから」「禁じられた神の古き掟を破っているから」「月面を歩いたり、原子を分裂させたり、幹細胞の研究や中絶!」「生命の神秘を破壊する」「神だけに許された世界への冒涜よ!」「神の審判が下ったのよ」「地獄の魔物が解き放たれた」「燃える星が天から落ちてきた」などと熱心に説き続けます。ちなみに、この神罰の一連のセリフは、9.11テロの直後にキリスト教原理主義の高名な総帥が言った言葉のパロディです。ドラマ版のナタリーは、以前に森林警備隊員から聞いた話を語り出します。「クマの母親が3頭の子グマを生んだの。でも、その母クマはそのうちの2頭を殺したの。彼はショックを受けたわ。そして、すぐに残りの1頭を保護したの。でも、あとからわかったのは、母グマはその2頭が感染症にかかっていたのを知っていたからなの。残りの1頭の命を守るためだったの」「この霧の目的はそれと同じ」「人間も自然の一部よ」と確信して言っていました。2つ目の宗教体験は、私たちは罰を受けていて、それはもともと人間は罪深いからと思い込むことです。これらは、宗教的には神罰や原罪と見なされますが、精神医学的にはそれぞれ被害妄想と罪業妄想が当てはまります。なぜなら、合理的な根拠なく思い込んでしまう思考の異常としては、このような宗教体験も妄想もやはり区別できないからです。なお、「罰を受ける」根拠を「人間の存在が罪(原罪)だから」としている点では、後付けの関係妄想とも言えます。つまり、すでに問題が起きているという状況(被害)が先であることから、被害妄想がこの宗教体験の本質であると言えます。次のページへ >>

83.

映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その1)【宗教体験と幻覚妄想は表裏一体!?(統合失調症の二面性)】Part 2

じゃあなんで宗教体験は統合失調症と見なされないの?宗教体験と幻覚妄想は、知覚や思考の異常という精神医学的な視点では区別できないことがわかりました。そして、幻覚妄想を主症状とする精神障害は統合失調症ですが、実際の研究でも、宗教体験とこの統合失調症は、同じ脳領域が過活動になっていることがわかっています1)。それでは、なぜ宗教体験は統合失調症と見なされないのでしょうか?その理由は、宗教体験は、宗教という文化として世界中で古くから受け入れられてきたからです。つまり、正常か異常か、健康か病気かは、社会で受け入れられるかどうか、常に多数決で決まっていることがわかります。なお、この健康の概念の詳細については、関連記事1をご覧ください。以上より、同じ知覚や思考の異常でも、社会的に受け入れられている場合は宗教体験、受け入れられていない場合は統合失調症になるわけです。この点で、たとえ宗教体験であっても、それでトラブルを起こし、社会的に受け入れられなくなれば、宗教妄想を呈した統合失調症と診断します。逆に言えば、宗教体験は、統合失調症と同じ心理現象(幻覚妄想)のプラス面を見ているだけと言い換えられます。これが、統合失調症の二面性です。つまり、統合失調症は、宗教に関連した何らかの存在理由があることが想定できます。それは一体、何なのでしょうか?(次回へ続く)1)「宗教の起源」p.246:ロビン・ダンバー、白揚社、2023<< 前のページへ■関連記事ドキュメンタリー「WHOLE」(後編)【自分の足を切り落とすことが健全!?(健康の定義)】

84.

統合失調症患者が考える抗精神病薬減量の動機と経験

 統合失調症患者の多くは、時間の経過とともに、抗精神病薬の減量または中止を望んでいる。デンマークでは、政府の資金で専門外来クリニックが設立され、抗精神病薬の減量指導が行われてきた。デンマーク・コペンハーゲン大学のAlexander Nostdal氏らは、クリニック通院患者における抗精神病薬減量の動機および過去の経験に関するデータを収集し、報告を行った。Psychiatric Services誌2024年11月1日号の報告。 対象患者は、抗精神病薬の中止または減量についての動機に関する自由記述式調査に回答した。過去の投薬中止経験、症状、動機、副作用レベルに関する情報も併せて収集した。 主な結果は以下のとおり。・88例中76例(86%)が調査に回答した。・抗精神病薬を中止した主な動機は、副作用(71%)、抗精神病薬服用の必要性に関する不安(29%)であった。・その他の要因には、長期的な影響への懸念、診断への同意、効果不十分の経験、服薬によるスティグマを感じるなどが挙げられた。・抗精神病薬中止に関する過去の経験は42例から報告され、そのうち23例は再発経験を報告した。・ほとんどの患者は、減量(75例中73例、97%)または中止(75例中62例、83%)を実現可能だと考えていた。 著者らは「専門家の指導による抗精神病薬の減量の動機付け要因は、中止を選択した患者を対象とした過去の研究結果と一致していた。抗精神病薬中止による再発を経験した患者においても、そのほとんどが減量または中止が実現可能であると考えていた。最適な治療連携を行ううえで、患者の動機と信念を理解することは最も重要である。指示に従い減量を行うことで、抗精神病薬の突然の中止や根拠のない中止を減らすことが可能である」と結論付けている。

85.

CKDの早期からうつ病リスクが上昇する

 腎機能低下とうつ病リスクとの関連を解析した結果が報告された。推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2を下回る比較的軽度な慢性腎臓病(CKD)患者でも、うつ病リスクの有意な上昇が認められるという。東京大学医学部附属病院循環器内科の金子英弘氏、候聡志氏らの研究によるもので、詳細は「European Journal of Clinical Investigation」に9月27日掲載された。 末期のCKD患者はうつ病を併発しやすいことが知られており、近年ではサイコネフロロジー(精神腎臓学)と呼ばれる専門領域が確立されつつある。しかし、腎機能がどの程度まで低下するとうつ病リスクが高くなるのかは分かっていない。金子氏らは、医療費請求データおよび健診データの商用データベース(DeSCヘルスケア株式会社)を用いた後ろ向き観察研究により、この点の検討を行った。 2014年4月~2022年11月にデータベースに登録された患者から、うつ病や腎代替療法の既往者、データ欠落者を除外した151万8,885人を解析対象とした。対象者の年齢は中央値65歳(四分位範囲53~70)、男性が46.3%で、eGFRは中央値72.2mL/分/1.73m2(同62.9~82.2)であり、5.4%が尿タンパク陽性だった。 1,218±693日の追跡で4万5,878人(全体の3.0%、男性の2.6%、女性の3.3%)にうつ病の診断が記録されていた。ベースライン時のeGFR別に1,000人年当たりのうつ病罹患率を見ると、90mL/分/1.73m2以上の群は95.6、60~89の群は87.4、45~59の群は102.1、30~44の群は146.5、15~29の群は178.6、15未満の群は170.8だった。 交絡因子(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、高血圧・糖尿病・脂質異常症)を調整後に、eGFR60~89の群を基準として比較すると、他の群は全てうつ病リスクが有意に高いことが示された。ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおり。eGFR90以上の群は1.14(1.11~1.17)、45~59の群は1.11(1.08~1.14)、30~44の群は1.51(1.43~1.59)、15~29の群は1.77(1.57~1.99)、15未満の群は1.77(1.26~2.50)。また、尿タンパクの有無での比較では、陰性群を基準として陽性群は1.19(1.15~1.24)だった。 3次スプライン曲線での解析により、eGFRが65mL/分/1.73m2を下回るあたりからうつ病リスクが有意に上昇し始め、eGFRが低いほどうつ病リスクがより高くなるという関連が認められた。 これらの結果に基づき著者らは、「大規模なリアルワールドデータを用いた解析の結果、CKDの病期の進行とうつ病リスク上昇という関連性が明らかになった。また、早期のCKDであってもうつ病リスクが高いことが示された。これらは、CKDの臨床において患者の腎機能レベルにかかわりなく、メンタルヘルスの評価を日常的なケアに組み込む必要のあることを意味している」と総括。また、「今回の研究結果は、サイコネフロロジー(精神腎臓学)という新たな医学領域の前進に寄与すると考えられる」と付け加えている。 なお、eGFRが90以上の群でもうつ病リスクが高いという結果については、「本研究のみではこの理由を特定することは困難だが、CKD早期に見られる過剰濾過との関連が検出された可能性がある」と考察されている。

86.

うつ病に対する認知行動療法、クレアチン補助療法が有用

 前臨床および臨床研究によると、手頃な価格で入手可能な栄養補助食品クレアチン一水和物は、従来の抗うつ薬治療において有用な補助療法となりうる可能性がある。英国・グラスゴー・カレドニアン大学のNima Norbu Sherpa氏らは、うつ病に対する認知行動療法(CBT)に加え、クレアチンまたはプラセボを8週間投与した場合の有効性を比較するため、二重盲検ランダム化プラセボ対照パイロット試験を実施した。European Neuropsychopharmacology誌2025年1月号の報告。 うつ病患者100例を対象に、クレアチン+CBT群50例またはプラセボ+CBT群50例にランダムに割り付けた。主要な有効性アウトカムは、こころとからだの質問票(PHQ-9)スコアの変化とし、混合モデル反復測定共分散分析を用いて評価した。許容性(すべての原因による治療中止)、忍容性(有害事象による治療中止)、安全性(有害事象が認められた患者数)の評価には、ロジスティック回帰を用いた。年齢、性別、ベースライン時のうつ病スコアにより調整したエフェクトサイズを算出した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者100例の平均PHQ-9スコアは17.6±6.3、女性は50例、平均年齢は30.4±7.4歳。・治療8週間後、PHQ-9スコアは両群ともに低下していたが、クレアチン+CBT群のほうが有意な低下が認められた(平均差:−5.12)。・すべての原因および有害事象による治療中止、有害事象が認められた患者の割合は、両群間で同等であった。 著者らは「本試験では、クレアチンは、うつ病患者に対するCBTの補助療法として有効かつ安全であることが示唆された」とし、「今後、より長期かつ大規模な臨床試験が必要とされる」としている。

87.

双極症I型に対するアリピプラゾール月1回投与〜52週間ランダム化試験の事後分析

 人種間における双極症の診断・治療の不均衡を改善するためには、その要因に関する認識を高める必要がある。その1つは、早期治療介入である。双極症と診断された患者を早期に治療することで、気分エピソード再発までの期間を延長し、機能障害や病勢進行に伴うその他のアウトカム不良を軽減する可能性がある。米国・Otsuka Pharmaceutical Development & CommercializationのKarimah S. Bell Lynum氏らは、早期段階の双極症I型患者における長時間作用型注射剤アリピプラゾール月1回400mg(AOM400)の有効性および安全性を調査するため、52週間ランダム化試験の事後分析を行った。International Journal of Bipolar Disorders誌2024年10月27日号の報告。 双極症I型患者に対するAOM400とプラセボを比較した52週間の多施設共同二重盲検プラセボ対照ランダム化中止試験のデータを分析した。ベースライン時の年齢(18〜32歳:70例)または罹病期間(0.13〜4.6年:67例)が最低四分位に該当した患者を早期段階の双極症I型に分類した。主要エンドポイントは、ランダム化から気分エピソード再発までの期間とした。その他のエンドポイントには、気分エピソードの再発を有する患者の割合、ヤング躁病評価尺度(YMRS)、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)の合計スコアのベースラインからの変化を含めた。 主な結果は以下のとおり。・AOM400による維持療法は、若年患者または罹病期間の短い患者において、プラセボと比較し、すべての気分エピソードの再発までの期間を有意に延長させた。【年齢最低四分位:18〜32歳】ハザード比(HR):2.46、95%信頼区間(CI):1.09〜5.55、p=0.0251【罹病期間最低四分位:0.13〜4.6年】HR:3.21、95%CI:1.35〜7.65、p=0.005・AOM400による気分エピソードの再発抑制は、主にYMRS合計スコア15以上または臨床的悪化の割合の低さに起因する可能性が示唆された。・年齢または罹病期間が早期段階の双極症I型患者におけるMADRS合計スコアのベースラインからの変化は、AOM400がプラセボと比較し、うつ病を悪化させなかったことを示唆している。・AOM400の安全性プロファイルは、以前の研究と一致していた。・AOM400単独療法で安定していた患者が元の研究には含まれているため、AOM400に治療反応を示した患者集団が多かった可能性があることには、注意が必要である。 著者らは「AOM400は、早期段階の双極症I型において、プラセボと比較し、すべての気分エピソードの再発までの期間を有意に延長することが確認された。これらの結果は、AOM400による維持療法の早期開始を裏付けるものである」と結論付けている。

88.

砂糖の摂取量とうつ病や不安症リスクとの関連〜メタ解析

 世界中で砂糖の消費量が急激に増加しており、併せてうつ病や不安症などの精神疾患の有病率も増加の一途をたどっている。これまでの研究では、さまざまな食事の要因がメンタルヘルスに及ぼす影響について調査されてきたが、砂糖の摂取量がうつ病や不安症リスクに及ぼす具体的な影響については、不明なままである。中国・成都中医薬大学のJiaHui Xiong氏らは、砂糖の摂取量とうつ病や不安症リスクとの関連を包括的に評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Frontiers in Nutrition誌2024年10月16日号の報告。 食事中の砂糖の総摂取量とうつ病、不安症リスクとの関連を調査した研究をPubMed、Embase、Cochrane Library、Web of Science、China National Knowledge Network (CNKI)、WangFangより、システマティックに検索した。選択基準を満たした研究は、システマティックレビューに含め、品質評価したのち、データ抽出を行った。メタ解析には、Stata 18.0 ソフトウェアを用いた。 主な結果は以下のとおり。・40研究、121万2,107例をメタ解析に含めた。・砂糖の摂取量は、うつ病リスクを21%増加(オッズ比[OR]:1.21、95%信頼区間[CI]:1.14〜1.27)させることが示唆されたが、不安症リスクとの全体的な関連性には、統計学的に有意な結果が得られなかった(OR:1.11、95%CI:0.93〜1.28)。・異質性が高いにも関わらず(I2=99.7%)、結果は統計学的に有意であった(p<0.000)。・サブグループ解析では、砂糖の摂取とうつ病リスクとの関連は、さまざまな研究デザイン(横断研究、コホート研究、ケースコントロール研究)、サンプルサイズ(5,000例未満、5,000〜1万例、1万例超)にわたり、一貫していた。・女性は、男性よりもうつ病リスクが高かった(OR:1.19、95%CI:1.04〜1.35)。・さまざまな測定法の中でも、食物摂取頻度調査(FFQ)は、最も有意な効果を示した(OR:1.32、95%CI:1.08〜1.67、I2=99.7%、p<0.000)。・測定ツールのサブグループ解析では、砂糖の摂取とうつ病リスクとの間に有意な相関が、こころとからだの質問票(PHQ-9)、うつ病自己評価尺度(CES-D)で示唆された。【PHQ-9】OR:1.29、95%CI:1.17〜1.42、I2=86.5%、p<0.000【CES-D】OR:1.28、95%CI:1.14〜1.44、I2=71.3%、p<0.000・高品質の横断研究およびコホート研究では、砂糖の摂取とうつ病リスクとの間に有意な関連が認められ、ほとんどの結果はロバストであった。・砂糖の摂取と不安症リスクの全体的な分析では、有意な影響がみられなかったが、とくにサンプルサイズが5,000例未満の研究(OR:1.14、95%CI:0.89〜1.46)および食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いた研究(OR:1.31、95%CI:0.90〜1.89)といった一部のサブグループにおいて有意に近づいていた。 著者らは「食事中の砂糖の総摂取量は、一般集団におけるうつ病リスク増加と有意に関連していたが、不安症リスクとの関連は有意ではなかった。これらの関連性についての信頼性を確保するためには、さらに質の高い研究が求められる。本研究により、食事中の砂糖摂取量がメンタルヘルスに及ぼす影響、サブグループ分析によって潜在的な高リスク群に対するうつ病や不安症の予防に関する新たな知見が得られた」と結論付けている。

89.

統合失調症に対して最も良好なシータバースト刺激プロトコールは

 反復経頭蓋外磁気刺激(rTMS)の1つであるシータバースト刺激(theta burst stimulation:TBS)は、頭蓋上のコイルから特異的なパターン刺激を発生することで、短時間で標的脳部位の神経活動を変調させる。TBSには、間欠的な刺激パターンであるintermittent TBS(iTBS)による促通効果と持続的な刺激パターンであるcontinuous TBS(cTBS)による抑制効果がある。現在までに、統合失調症に対するTBSプロトコールがいくつか検討されているが、その有効性に関しては、一貫した結果が得られていない。藤田医科大学の岸 太郎氏らは、成人統合失調症患者に対し、どのTBSプロトコールが最も良好で、許容可能かを明らかにするため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。JAMA Network Open誌2024年10月1日号の報告。 2024年5月22日までに公表された研究を、Cochrane Library、PubMed、Embaseデータベースより検索した。包括基準は、TBS治療に関する公開済み、未公開のランダム化臨床試験(RCT)および統合失調症スペクトラム、その他の精神疾患またはその両方の患者を含むRCTとした。Cochraneの標準基準に従ってデータ抽出および品質評価を行い、報告には、システマティックレビューおよびメタ解析の推奨報告項目ガイドラインを用いた。研究間のバイアスリスクは、Cochrane Risk of Bias Tool ver.2.0で評価し、ネットワークメタ解析の信頼性アプリケーションを用いて、メタ解析結果のエビデンスの確実性を評価した。文献検索、データ転送精度、算出については、2人以上の著者によるダブルチェックを行った。主要アウトカムは、陰性症状に関連するスコアとした。頻度論的ネットワークメタ解析では、ランダム効果モデルを用いた。連続変数または二値変数の標準平均差(SMD)またはオッズ比は、95%信頼区間(CI)を用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・9つのTBSプロトコールを含む30件のRCT(1,424例)が抽出された。・左背外側前頭前野に対するiTBSのみが、シャム対照群と比較し、陰性症状を含む各症状の改善を認めた。【陰性症状スコア】SMD:−0.89、95%CI:−1.24〜−0.55【全体的な症状スコア】SMD:−0.81、95%CI:−1.15〜−0.48【PANSS総合精神病理スコア】SMD:−0.57、95%CI:−0.89〜−0.25【抑うつ症状スコア】SMD:−0.70、95%CI:−1.04〜−0.37【不安症状スコア】SMD:−0.58、95%CI:−0.92〜−0.24【全般的認知機能スコア】SMD:−0.52、95%CI:−0.89〜−0.15・陽性症状スコア、すべての原因による中止率、有害事象による中止率、頭痛の発生率、めまいの発生率は、いずれのTBSプロトコールおよびシャム対照群の間で有意な差は認められなかった。 著者らは「左背外側前頭前野に対するiTBSのみが、統合失調症患者の陰性症状、抑うつ症状、不安症状、認知機能改善と関連しており、忍容性も良好であった。統合失調症治療におけるTBSの潜在的な効果を評価するためには、さらなる研究が求められる」と結論付けている。

90.

日本におけるアルツハイマー病への多剤併用と有害事象との関連〜JADER分析

 アルツハイマー病は、世界的な健康関連問題であり、有病率が増加している。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChEI)やNMDA受容体拮抗薬などによる現在の薬物治療は、とくに多剤併用下において、有害事象リスクと関連している。香川大学の大谷 信弘氏らは、アルツハイマー病治療薬の組み合わせ、併用薬数と有害事象発生との関係を調査した。Medicina誌2024年10月6日号の報告。 日本の医薬品副作用データベース(JADER)より、2004年4月〜2020年6月のデータを分析した。対象は、AChEI(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)またはNMDA受容体拮抗薬メマンチンで治療された60歳以上のアルツハイマー病患者2,653例(女性の割合:60.2%)。有害事象とアルツハイマー病治療薬の併用および併用薬数との関連を評価するため、ロジスティック回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・JADERに報告されたアルツハイマー病治療薬の使用状況は、ドネペジル単剤療法41.0%、リバスチグミン25.0%、ガランタミン17.3%、メマンチン7.8%、メマンチン+AChEI 8.9%であった。・併用薬数は、併用薬なし17.5%、1種類10.2%、2種類8.6%、3種類10.0%、4種類6.1%、5種類以上47.7%であった。・主な併存疾患の内訳は、高血圧35.2%、脂質異常症13.6%、糖尿病12.3%、脳血管疾患10.7%、睡眠障害7.4%、虚血性心疾患6.1%、うつ病4.7%、パーキンソン病4.3%、悪性腫瘍3.1%。・有害事象の頻度は、徐脈6.4%、肺炎4.6%、意識変容状態3.6%、発作3.5%、食欲減退3.5%、嘔吐3.5%、意識喪失3.4%、骨折3.4%、心不全3.2%、転倒3.0%。・メマンチン+AChEI併用療法は、徐脈リスク上昇と関連していた。・ドネペジル単独療法は、骨折、転倒リスク低下との関連が認められた。・多剤併用療法は、有害事象、とくに意識変容状態、食欲減退、嘔吐、転倒の発生率上昇と有意な相関が認められた。・5種類以上の薬剤を使用した場合としなかった場合の調整オッズ比は、意識変容状態で10.45、食欲減退で7.92、嘔吐で4.74、転倒で5.95であった。 著者らは「アルツハイマー病治療における有害事象発生率は、アルツハイマー病治療薬の既知の有害事象や併用パターンとは無関係に、併用薬数と関連している可能性が示唆された」と結論付けている。

91.

統合失調症患者に対する抗精神病薬の投与経路変更の影響は〜メタ解析

 長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬は、症状の重症度や入院リスクの軽減など、統合失調症患者のアウトカム改善に寄与する。しかし、経口抗精神病薬からLAI抗精神病薬に切り替えた場合のアウトカムは十分に明らかになっていない。サウジアラビア・Jazan UniversityのAmani Kappi氏らは、統合失調スペクトラム症患者における経口抗精神病薬からLAI抗精神病薬に切り替えた際の臨床アウトカム、QOL、医療利用アウトカムを明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of the American Psychiatric Nurses Association誌オンライン版2024年10月23日号の報告。 対象研究をPubMed、Scopus、PsycInfo、CINAHLのデータベースより検索した。メタ解析を行うため、Comprehensive Meta-Analysisのプログラムを用いた。 主な結果は以下のとおり。・包含基準を満たした研究は41件であった。・LAI抗精神病薬に切り替え後、症状重症度、再入院回数、救急外来受診、医療費全体について改善が認められた。・社会機能の有意な改善も確認された。・外来受診頻度には、差が認められなかった。・LAI抗精神病薬の開始前と開始後では、薬局での費用が増加していた。 著者らは、「抗精神病薬の投与経路を経口からLAIに変更すると、統合失調症患者の臨床アウトカム、QOL、医療利用アウトカムを改善することが裏付けられた。より良い臨床アウトカムおよび医療利用の最適化のために、医療従事者は統合失調症治療においてLAIの早期使用を検討すべきであろう」と結論している。

92.

うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法、安定後は継続または中止?

 カナダ・トロント大学のRoger S. McIntyre氏らは、抗うつ薬治療とブレクスピプラゾール補助療法の併用により安定したうつ病患者における、ブレクスピプラゾール補助療法の継続または中止による再発までの期間を比較するため、第III相多施設共同二重盲検プラセボ対照並行群間ランダム化中止試験を実施した。Acta Neuropsychiatrica誌オンライン版2024年10月17日号の報告。 対象は、2〜3回の抗うつ薬治療で効果不十分であったうつ病成人患者1,149例。すべての患者に対し、ブレクスピプラゾール2〜3mg/日による補助療法を開始した(第A相、6〜8週間)。症状が安定した患者(第B相、12週間)489例は、ブレクスピプラゾール補助療法群(継続群)240例またはプラセボ補助療法群(中止群)249例に1:1でランダムに割り付けられた(第C相、26週間)。主要エンドポイントは第C相における再発までの期間、副次的エンドポイントはうつ病評価尺度スコアの変化とした。 主な結果は以下のとおり。・再発までの期間中央値は、1回以上の投与を行った患者の場合、両群ともにランダム化から63日であった。・再発基準を満たした割合は、継続群で22.5%(54例)、中止群で20.6%(51例)であった(ハザード比:1.14、95%信頼区間:0.78〜1.67、log-rank検定のp=0.51)。・うつ病評価尺度スコアは、第A〜B相で改善し、その効果は第C相でも維持された。・平均体重は、第A〜B相で2.2kgの増加が認められ、第C相では安定した。 著者らは「再発までの期間は、ブレクスピプラゾール補助療法を継続した場合と中止した場合において、同程度であった。いずれも、安定したうつ病患者の80%において、最終診断時に再発が認められなかった。ブレクスピプラゾール補助療法は、最大46週間にわたり忍容性が良好であり、中止後の副作用も最低限であった」と結論付けている。

93.

日本の小中高生の自殺リスク「学校に行きたくない」検索量と関連

 自殺は、日本における小児および青年期の主な死因となっている。自殺リスクの検出に、インターネットの検索量が役立つ可能性があるが、小児および青年期の自殺企図とインターネット検索量との関連を調査した研究は、これまでほとんどなかった。多摩大学の新井 崇弘氏らは、自殺者数と学校関連のインターネット検索量との関連を調査し、小児および青年期の自殺予防の主要な指標となりうる検索ワードの特定を試みた。Journal of Medical Internet Research誌2024年10月21日号の報告。 2016〜20年の警視庁より提供された日本の小中高生における自殺企図の週次データを用いて、検討を行った。インターネットの検索量は、Googleトレンドから収集した20の学校関連ワードの週次データを用いた。自殺による死亡者数と関連ワードの検索量との時間的な前後関係とタイムラグを推定するため、グレンジャー因果性検定および相互相関分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・「学校に行きたくない」「勉強」の検索ワードは、自殺発生率とのグレンジャー因果性が認められた。・相互相関分析では、「学校に行きたくない」では-2〜2(タイムラグ最高値:0、r=0.28)、「勉強」では-1〜2(タイムラグ最高値:-1、r=0.18)の範囲で有意な正の相関が認められ、自殺者数の増加に伴い検索量の増加が示唆された。・COVID-19パンデミック期間中(2020年1〜12月)では、「学校に行きたくない」の検索傾向は、「勉強」とは異なり、自殺頻度との高い関連性が認められた。 著者らは「『学校に行きたくない』のインターネット検索量のモニタリングは、小児および青年期の自殺リスクの早期発見につながり、Webベースのヘルプライン表示の最適化に役立つ可能性が示唆された」とまとめている。

94.

慢性期統合失調症患者の低握力が認知機能や精神症状と関連

 握力の低さや非対称性は、認知機能の低さと関連していることが報告されている。しかし、統合失調症入院患者における握力の低さと精神症状、握力の非対称性と認知機能および精神症状との関連は不明である。中国・Southwest Medical UniversityのJianlin Pu氏らは、慢性期統合失調症入院患者の認知機能および精神症状を評価する指標としての握力の妥当性を評価するため、本検討を実施した。PLOS ONE誌2024年9月26日号の報告。 2023年8月、慢性期統合失調症入院患者235例を募集した。利き手の握力を3回測定し、最高値を用いて低握力患者(男性:28kg未満、女性:18kg未満)を特定した。非利き手の握力と利き手の握力の比が0.9〜1.1の範囲外であった場合、非対称群と定義した。認知機能の評価にはモントリオール認知評価中国版(MoCA-C)、精神症状の評価には陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いた。握力と評価尺度スコアとの関連を評価するため、一般化線形モデル分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・共変量調整一般化線形モデルでは、握力の低さとMoCA-CスコアおよびPANSSスコアとの強い関連性が認められた。【MoCA-Cスコア】オッズ比(OR):0.819、95%信頼区間(CI):0.710〜0.945、p=0.006【PANSSスコア】OR:1.113、95%CI:1.036〜1.239、p=0.006・同様に、握力が低く、非対称である患者では、MoCA-CスコアおよびPANSSスコアとの強い関連性が認められた。【MoCA-Cスコア】OR:0.748、95%CI:0.653〜0.857、p<0.001【PANSSスコア】OR:1.118、95%CI:1.032〜1.211、p=0.006 著者らは「握力の非対称性の有無に関わらず、握力の低さは、 MoCA-Cスコアが低く、PANSSスコアが高くなる傾向があり、統合失調症入院患者の認知機能低下および精神症状の重症度と関連している可能性が示唆された。握力の低い患者をスクリーニングすることは、慢性期統合失調症入院患者の認知機能や精神症状を特定するための有益かつ直接的なアプローチとなりうる」と結論付けている。

95.

自宅で行う脳刺激療法がうつ病の症状を軽減

 自宅で行う脳刺激療法により、中等度から重度のうつ病を安全かつ効果的に治療できることが、米テキサス大学マクガバン医学部精神医学部長のJair Soares氏らが実施した臨床試験で示された。Soares氏らによると、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)と呼ばれる非侵襲的な脳刺激療法は、治療反応率とうつ病寛解率においてシャム刺激よりも優れていたという。この研究結果は、「Nature Medicine」に10月21日掲載された。Soares氏は、「この研究結果は、気分障害に苦しむ患者に、近い将来、革新的な治療法が利用可能になるかもしれないという希望をもたらすものだ」と述べている。 Soares氏らは、ハミルトンうつ病評価尺度(HDRS)での評価で重症度が中等度以上と判定された18歳以上のうつ病患者174人(平均年齢38.3±10.92歳、女性120人)を対象に、自宅で10週間にわたって行うtDCSの有効性を、シャム刺激との比較で検討するランダム化比較試験を実施した。対象者は、脳に本物の電気刺激を受ける群(介入群)とシャム刺激を受ける群(対照群)にランダムに割り付けられた。試験で使用したtDCSは、うつ病患者で活動低下が頻繁に認められる背外側前頭前野をターゲットに、2つの電極を通して0.5〜2mAの弱い電流を流すもので、患者が自分で行うことができる。介入群に割り付けられた対象者は、自宅で1回30分の刺激を、最初の3週間は週5回、その後の7週間は週3回受けた。 その結果、10週間後のHDRSスコアは、介入群では9.41点低下したのに対し、対照群では7.14点の低下にとどまっており、介入群では対照群に比べてうつ病の症状が有意に軽減したことが明らかになった。また、HDRSでの評価に基づくと、介入群の臨床反応性は対照群よりも有意に高く、治療反応率は、介入群で58.3%、対照群で37.8%であった。うつ病寛解率は、同順で44.9%と21.8%であった。 論文の上席著者である、英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)情動神経科学・心理療法分野教授のCynthia Fu氏は、「うつ病の負担を強く感じているのは、今現在、症状と闘っている世界中の2億8000万人の人々だ。抗うつ薬とセラピーを組み合わせた治療は、多くの人において効果的ではあるが、薬は日常生活に支障を来す副作用を伴い得る」と話す。その上で同氏は、「われわれの研究は、tDCSが、治療を必要としているうつ病患者にとって治療の第一選択になる可能性があることを証明した」と付け加えている。なお、本研究は、tDCSで使う刺激装置の製造元であるFlow Neuroscience社から資金提供を受けて実施された。

96.

統合失調症に対する電気けいれん療法後の再発率〜メタ解析

 統合失調症患者における急性期電気けいれん療法(ECT)後の再発リスクに関するエビデンスは、うつ病患者の場合と比較し、再発率に関する明確なコンセンサスが得られていない。関西医科大学の青木 宣篤氏らは、統合失調症における急性期ECT後の再発に関する縦断的な情報を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2024年10月4日号の報告。 統合失調症および関連疾患に対する急性期ECT後の再発や再入院に関するランダム化比較試験(RCT)、観察研究をシステマティックレビューおよびメタ解析に含めた。主要アウトカムは、ECT後3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月、24ヵ月時点における再発統合推定値とし、ランダム効果モデルを用いて算出した。サブグループ解析では、維持療法の種類別にECT後の再発率を評価した。 主な結果は以下のとおり。・6,413件中29研究(3,876例)が適確基準を満たした。・バイアスリスクは、すべてのRCT(4件)では一貫して低く、観察研究(25件)では低〜高の範囲であった。・急性期ECTで治療反応が認められた統合失調症患者の再発統合推定値は、次のとおりであった。【3ヵ月時点】24%(95%信頼区間[CI]:15〜35)【6ヵ月時点】37%(95%CI:27〜47)【12ヵ月時点】41%(95%CI:34〜49)【24ヵ月時点】55%(95%CI:40〜69)・急性期ECT後、継続/維持ECTに抗精神病薬を追加した場合、6ヵ月後の再発率は20%(95%CI:11〜32)であった。 著者らは「統合失調症に対する急性期ECTは、6ヵ月以内の再発が多く、とくに最初の3ヵ月以内に起こる可能性が高かった。再発率は、6ヵ月には横ばいとなったが、約半数は2年以内に再発すると予想される。統合失調症患者に対する急性期ECT後の治療戦略を最適化するためには、さらに質の高い研究が求められる」と結論付けている。

97.

本邦初、がん患者の「気持ちのつらさ」のガイドライン/日本肺癌学会

 2024年10月、日本がんサポーティブケア学会と日本サイコオンコロジー学会は『がん患者における気持ちのつらさガイドライン』(金原出版)を発刊した。本ガイドラインは、がん医療におけるこころのケアガイドラインシリーズの第4弾となる。第65回日本肺癌学会学術集会において、本ガイドラインの作成委員長の藤澤 大介氏(慶應義塾大学医学部)が本ガイドライン作成の背景、本ガイドラインで設定された重要臨床課題と臨床疑問(CQ:クリニカルクエスチョン)を紹介した。気持ちのつらさはがん治療や生命予後に悪影響 がん患者における気持ちのつらさは、QOLの低下や痛みの増強を招くだけでなく、がん治療のアドヒアランスの低下を招き、入院期間の延長や生命予後の悪化にもつながる。しかし、その多くは予防や治療が可能であると藤澤氏は強調する。そこで、本ガイドラインでは臨床における気持ちのつらさへの対応方法をアルゴリズムとして示した。 まず、気持ちのつらさへの対応の大原則として「初めから精神心理の専門家が関わるのではなく、すべての医療従事者が温かく常識的な対応をすることが重要である」と藤澤氏は述べた。具体的には、(1)支持的なコミュニケーション、(2)気持ちのつらさの可能性への気付き、(3)ニーズの特定と対応、(4)気持ちのつらさに類似した医学的状況の除外、が必要である。これらの対応をしたうえで、気持ちのつらさが持続する場合や、症状の重い気持ちのつらさが存在する場合には、より精神・心理ケアに特化した介入を検討するという流れである。詳細はガイドラインを参照されたい(p.96~100)。閾値以上の気持ちのつらさの緩和に関する9つのCQを設定 本ガイドラインでは、気持ちのつらさを緩和するための介入について、6つの重要臨床課題と9つのCQを設定した。なお、介入の効果の指標としてはうつ、不安、両者を統合したdistressを用いた。また、気持ちのつらさは正常範囲のものではなく、臨床的介入が必要とされる一定の重症度以上(閾値以上)のものを対象としている。 藤澤氏は、本発表では9つのCQのうち「薬物療法(CQ1、2)」「協働的ケア(CQ4)」「早期からの緩和ケア(CQ5)」「ピアサポート(CQ7)」について紹介した。 9つのCQのなかで、唯一強い推奨となったのは、協働的ケアであった(CQ4、推奨の強さ1[強い]、エビデンスの確実性[強さ]:A[強い])。協働的ケアとは、プライマリ・ケア提供者と精神心理の専門家が協力体制を作って、系統的なケアを提供するというモデルである。海外では、プライマリ・ケア提供者はトレーニングを受けた看護師が担うことが多い。協働的ケアは、本ガイドラインでは強い推奨となったものの「本邦での現状を考えると、実施していない施設が多いのではないか」と藤澤氏は指摘した。そこで、解決策として「がん診療拠点病院には、認定専門看護師が在籍しており、がんカウンセリング料などが算定できる。また、緩和ケアチームが機能していることが多いと考えられるため、がん診療拠点病院にハブとして機能していただき、精神心理の専門家、精神科などと連携しながら系統的な介入の実施を検討していくのが良いのではないか」と述べた。 続いて、藤澤氏は薬物療法について説明した。薬物療法で用いられるのは抗不安薬(CQ1)、抗うつ薬(CQ2)であるが、これらは本ガイドラインでは弱い推奨となった。この根拠として、対象をがん患者に限定すると、薬物療法のエビデンスはあまり確立していないことが挙げられた。ただし、抗不安薬や抗うつ薬は、がん患者に限定しなければ、不安やうつに対して十分なエビデンスを有しているため、有害事象について慎重に考慮したうえで使用することを提案するという形であると、藤澤氏は説明した。 早期からの緩和ケア(CQ5)については、「気持ちのつらさの改善を目的とした場合、単独では推奨しない」という推奨となった。この根拠としては、閾値以上の気持ちのつらさを有する患者を対象とした研究がなかったこと、閾値を設定しない研究では良好な結果もあったものの有意差がない研究が多かったことが挙げられた。ただし、藤澤氏は「早期からの緩和ケアは、進行がんの患者における症状緩和やQOLの向上に有益であることがわかっており、すべてのがん患者に対して実施を考慮すべきという基本スタンスは変わっていない」と付け加えた。 ピアサポート(CQ7)についても、早期からの緩和ケアと同様に「気持ちのつらさの改善を目的とした場合、単独では推奨しない」という推奨となった。こちらも、その根拠としてはエビデンス不足が挙げられた。ただし、うつ・不安以外のアウトカムの改善(例:自己効力感の向上)を認める研究はあり、「実施を否定するものではなく、より専門的な精神心理的介入と併用しながら実施することは十分に考えられる」と藤澤氏は述べた。 本発表の結語として、藤澤氏は「気持ちのつらさに対する介入には、すべての医療者が行うべき対応と、より専門的な介入がある。すべての医療者が重要なプレイヤーであり、専門的な介入に関するエビデンスを踏まえながら協働的に実施する形を作っていきたい」と述べた。

98.

米国成人の10人に6人は炎症誘発性の食生活

 米国成人の多くが、炎症を引き起こす食生活を送っていて、そのことが、がんや心臓病、その他の深刻な健康リスクを押し上げている可能性のあることが報告された。米オハイオ州立大学のRachel Meadows氏らの研究によるもので、詳細は「Public Health Nutrition」に9月27日掲載された。論文の筆頭著者である同氏によると、「米国の成人の57%が炎症を起こしやすい食生活を送っており、その割合は男性、若年者、黒人、教育歴が短い人、収入の低い人でより高かった」という。 Meadows氏らの研究には、2005~2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した20歳以上の成人3万4,547人(平均年齢47.8歳、女性51.3%)のデータが用いられた。NHANESでは、過去24時間以内に摂取したものを思い出すという方法により食習慣が把握されており、その結果に基づき、エネルギー調整食事性炎症指数(energy-adjusted dietary inflammatory index;E-DII)を算出した。 E-DIIは、n-3系脂肪酸、フラボノイド、アルコール飲料、ニンニクなど、45種類の食品や栄養素の摂取量を元に算出される。結果は-9~+8の範囲にスコア化され、0未満は炎症を抑制する食事、0超は炎症を誘発する食事であることを意味する。Meadows氏は、「食事療法に際して一般的に、果物や野菜、乳製品などの食品群の摂取量、または摂取エネルギー量、脂質・タンパク質・炭水化物摂取量に基づく指導介入が行われる。しかし、炎症という視点で評価することも重要だ」と述べている。 解析対象者のE-DIIは平均0.44(95%信頼区間0.39~0.49)と0を上回り、米国成人は全体的に炎症を誘発しやすい食生活を送っていることが示された。また、全体の57%は炎症誘発性の食生活、34%は抗炎症性の食生活であり、9%はニュートラルな食生活であることが分かった。 この結果についてMeadows氏は、食事の全体的なバランスの重要性を強調し、「果物や野菜をたくさん食べていたとしても、アルコールや赤肉を取り過ぎていれば、全体的な食生活は炎症誘発性に傾いている可能性がある。健康増進の手段として、抗炎症作用のある食品に着目してほしい」と語っている。同氏によると、「ニンニク、ショウガ、ウコン、緑茶、紅茶などが抗炎症作用を有している」という。ほかにも、全粒穀物、緑黄色野菜、サーモンなどの脂肪分の多い魚、豆類、ベリー類などが抗炎症作用のある食品とされており、これらはいずれも、健康的な食事スタイルとして知られる地中海食で、積極的に摂取される食品でもある。 抗炎症性の食生活に変えることの利点としてMeadows氏は、「糖尿病、心血管疾患、さらにはうつ病やその他の精神疾患を含む、多くの慢性疾患に良い影響を与える可能性がある」と解説。また、「慢性炎症を引き起こす要因は数多くあり、それらは全て相互に影響し合っている。睡眠に問題があることも重要な要素の一つだ。それらに対抗する手段として日々の食事を活用できる」としている。

99.

第2世代抗精神病薬治療104週間の最終治療結果〜国内JUMPs試験

 CNS薬理研究所の石郷岡 純氏らは、アリピプラゾール、ブロナンセリン、パリペリドンの104週間自然主義的研究である統合失調症に対する有用な薬物治療プログラム(JUMPs)試験の最終結果を報告した。BMC Psychiatry誌2024年9月5日号の報告。 本研究は、日本のリアルワールドにおける、第2世代抗精神病薬(SGA )3剤(アリピプラゾール、ブロナンセリン、パリペリドン)の長期的な有用性を検討するためのオープンラベル多施設共同ランダム化平行群間比較試験として実施された。対象は、抗精神病薬による治療または切り替えによる治療を必要とした20歳以上の統合失調症患者。主要エンドポイントは、104週にわたる治療中止率とした。副次的エンドポイントには、寛解率、個人的・社会的機能遂行度尺度(PSP)、安全性、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、QOL(EuroQol-5 dimension[(EQ-5D])を含めた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は、合計251例(アリピプラゾール:82例、ブロナンセリン:85例、パリペリドン:84例)。・104週時点での治療中止率に、有意な差は認められなかった(p=0.2385)。【アリピプラゾール】80.5%【ブロナンセリン】81.2%【パリペリドン】71.4%・寛解率(アリピプラゾール:42.9%、ブロナンセリン:46.7%、パリペリドン:45.8%)、PANSS、安全性などのエンドポイントも、同等であった。・全体コホートでは、104週目のPSP合計スコアの改善は、ベースラインと有意な違いが認められなかったが、104週目のQOLおよびPANSS合計スコア(すべてのサブスケールを含む)は、ベースラインと比較し、有意な改善が認められた(p<0.05)。・多変量解析では、治療中止の予測因子として、単剤療法切り替え前の罹病期間の短さおよびクロルプロマジン換算量1,000mg以上が確認された。 著者らは「104週の治療中止率は、アリピプラゾール、ブロナンセリン、パリペリドンで同等であった。寛解率、安全性、QOLなどの全体的な改善傾向は、治療継続において重要なポイントであることが示唆された」と結論付けている。

100.

日本人治療抵抗性うつ病患者に対するブレクスピプラゾール2mg補助療法の長期有用性

 うつ病患者では、抗うつ薬単独療法で治療反応が不十分な場合が少なくない。治療抵抗性うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法の有効性および安全性は、プラセボ対照ランダム化多施設共同並行群間第II/III相試験であるBLESS試験において確認されている。BLESS試験は、抗うつ薬単独療法で効果不十分であった日本人治療抵抗性うつ病患者740例を対象に、補助療法として6週間のブレクスピプラゾール1mg/日または2mg/日をプラセボと比較した試験である。関西医科大学の加藤 正樹氏らは、日本人治療抵抗性うつ病患者に対するブレクスピプラゾール2mg補助療法の52週間にわたる長期安全性および有効性を評価するため、本検討を行った。CNS Drugs誌オンライン版2024年10月18日号の報告。 52週間のオープンラベル試験では、6週間のBLESS試験を完了した患者および65歳以上の新規患者を対象とした。対象患者には、第1週目から固定用量としてブレクスピプラゾール2mg/日の漸増投与を行った。安全性評価には、治療中に発生した有害事象(TEAE、主要アウトカム)、臨床評価、検査値を含めた。有効性の評価には、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)、臨床全般印象度の改善度(CGI-I)、ハミルトンうつ病評価尺度17項目(HAMD-17)合計スコア、シーハン障害尺度(SDS)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・安全性/有効性対象には247例(ロールオーバー患者:216例、新規患者:31例)を含め、そのうち138例(55.9%、ロールオーバー患者:132例、新規患者:6例)が試験を完了した。・発生率が10%以上のTEAEは、体重増加(33.2%、82例)、アカシジア(23.5%、58例)、鼻咽頭炎(21.1%、52例)、傾眠(10.5%、26例)であった。・治療中止に至るTEAE発生率は、すべての患者で26.7%、新規患者で58.1%。・ベースラインから52週目までの平均体重増加は、4.2±6.5kg(138例)であり、ベースライン後の診察で7%以上の体重増加が認められた患者の割合は、44.5%(110例)であった。・遅発性ジスキネジア、自殺/自殺企図に関連する有害事象は認められなかった。・原因不明の死亡例が1例報告されたが、治療とは無関係であると判断された。・52週間の試験期間中、ブレクスピプラゾールを投与されたすべての患者においてベースラインからのMADRS合計スコアの改善が認められた(平均変化:−7.3±8.7)。・すべての患者における52週目でのMADRSの治療反応率は41.3%(57例)、寛解率は34.8%(48例)であった。・52週間の試験期間中、CGI-S(平均変化:−0.8±1.0)、HAM-D17合計スコア(同:−5.9±6.3)、SDS平均スコア(同:−1.0±2.2)のベースラインからの改善が認められ、長期ブレクスピプラゾール治療による症状の持続的な改善が示唆された。 著者らは「本試験は、高齢者を含む日本人うつ病患者に対するブレクスピプラゾール2mg/日の安全性プロファイルを評価した初めての研究であり、これまでの報告と同様に、新たな安全性リスクは認められず、52週間にわたる持続的な有効性が確認された」と結論付けている。

検索結果 合計:2848件 表示位置:81 - 100