サイト内検索|page:29

検索結果 合計:2849件 表示位置:561 - 580

561.

SSRIによる消化器系副作用リスク~ネットワークメタ解析

 うつ病治療では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が広く用いられている。SSRIの最も一般的な副作用は、消化器系に関連する症状であり、うつ病患者のコンプライアンス低下につながる。そのため、消化器系に対するSSRIの安全性を評価することは重要である。これまで、SSRIと他の抗うつ薬における消化器系副作用リスクを比較したいくつかのメタ解析が報告されているが、中国・Inner Mongolia Medical UniversityのZhuoyue Wang氏らは、各SSRIの消化器系副作用リスクを比較するためネットワークメタ解析を実施した。その結果、消化器系副作用リスクについては、fluoxetineが最も明確な利点を示し、セルトラリンは消化器系副作用リスクが最も高い可能性があることを報告した。Therapeutics and Clinical Risk Management誌2022年8月13日号の報告。 システマティックに検索し、5種類のSSRI(fluoxetine、エスシタロプラム、citalopram、パロキセチン、セルトラリン)とプラセボを比較した30件のランダム化比較試験(5,004例)が抽出された。 主な結果は以下のとおり。・5種類のSSRIのうち、消化器系副作用リスクが最も低かったのはfluoxetine(0.548)であり、最も高かったのはセルトラリン(0.611)であった。・胃腸に対する忍容性について、エスシタロプラムは、パロキセチン(オッズ比[OR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.43~0.87)およびセルトラリン(OR:0.56、95%CI:0.32~0.99)よりも優れていた。

562.

双極性障害患者の精神症状有病率~メタ解析

 幻覚や妄想は、双極性障害(BD)で一般的に認められる精神症状である。ノルウェー・オスロ大学のS. R. Aminoff氏らは、双極I型障害(BDI)および双極II型障害(BDII)における、精神症状の生涯および点有病率を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、BDIにおける精神症状のプールされた有病率は、これまで報告されていた値よりも高い可能性が示唆された。Psychological Medicine誌オンライン版2022年8月26日号の報告。 Medline、PsycINFO、Embase、Cochrane Libraryより、2021年8月5日までに公表された研究をシステマティックに検索した。成人BD患者における精神症状の生涯有病率を評価した研究54件(2万3,461例)および点有病率を評価した研究24件(6,480例)が選択基準を満たした。質および出版バイアスの評価を行い、有病率(95%信頼区間[CI])をランダム効果メタ解析で算出した。 主な結果は以下のとおり。・中程度以上の質を有する研究の評価では、精神症状のプールされた生涯有病率は、BDIで63%(95%CI:57.5~68)、BDIIで22%(95%CI:14~33)であった。・BDI入院患者における精神症状のプールされた生涯有病率は、71%(95%CI:61~79)であった。・外来患者またはBDII入院患者に関する研究はなかった。・BDIにおける精神症状のプールされた点有病病は、54%(95%CI:41~67)であった。・点有病率は、躁病エピソードで57%(95%CI:47~66)、うつ病エピソードで13%(95%CI:7~23.5)であった。・BDII、BDIうつ病、混合エピソード、BDI外来患者に関する十分な研究はなかった。

563.

自閉スペクトラム症から総合失調症への進展

 これまでの研究では、自閉スペクトラム症(ASD)の小児は、その後の人生において統合失調症の発症リスクが高いことが示唆されている。台湾・高雄栄民総医院のTien-Wei Hsu氏らは、ASDにおける診断の安定性および統合失調症への進展に対する潜在的な予測因子について調査を行った。その結果、統合失調症と診断されたASD患者の3分の2以上が、ASD診断から最初の3年間で進展しており、人口統計学的特徴、身体的および精神的な併存疾患、精神疾患の家族歴が、進展の重要な予測因子であることが示唆された。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2022年9月3日号の報告。 対象は、2001~10年にASDと診断された青年(10~19歳)および若年成人(20~29歳)の患者1万1,170例。統合失調症の新規診断患者を特定するため、2011年末までフォローアップ調査を実施した。統合失調症への進展およびその予測因子を推定するため、時間のスケールとして年齢を用いたカプランマイヤー法およびCox回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・10年間のフォローアップ調査におけるASDから統合失調症への進展率は10.26%であった。・統合失調症と診断された860例中580例(67.44%)は、ASDと診断されてから3年以内に統合失調症と診断されていた。・特定された予測因子は以下のとおりであった。 ●年齢(ハザード比[HR]:1.13、95%信頼区間[CI]:1.11~1.15) ●抑うつ症状(HR:1.36、95%CI:1.09~1.69) ●アルコール使用障害(HR:3.05、95%CI:2.14~4.35) ●物質使用障害(HR:1.91、95%CI:1.18~3.09) ●パーソナリティ障害クラスターA群(HR:2.95、95%CI:1.79~4.84) ●パーソナリティ障害クラスターB群(HR:1.86、95%CI:1.05~3.28) ●統合失調症の家族歴(HR:2.12、95%CI:1.65~2.74)

564.

認知症と肥満・糖尿病

 米国では、肥満、糖尿病、認知症などの慢性疾患が増加している。これら慢性疾患の予防や適切なマネジメント戦術に関する知見は、疾患予防のうえで重大かつ緊要である。米国・テキサス工科大学のAshley Selman氏らは、認知症と肥満および糖尿病との関連についての理解を深めるため、それぞれの役割を解説し、新たな治療法についての情報を紹介した。International Journal of Molecular Sciences誌2022年8月17日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・肥満、糖尿病、認知症の相互関係は、さらに解明されつつある。・肥満、糖尿病、認知症の発症に関連する炎症状態の一因として、加齢、性別、遺伝的要因、後天的要因、うつ病、高脂質の西洋型食生活が挙げられる。・この炎症状態は、食物摂取の調節不全およびインスリン抵抗性につながる可能性がある。・肥満は糖尿病発症につながる基礎疾患であり、後に、2型糖尿病(type 2 diabetes mellitus:T2DM)の場合には“3型(type 3 diabetes mellitus:T3DM)”すなわちアルツハイマー病へ進行する可能性がある。・肥満とうつ病は、糖尿病と密接に関連している。・認知症の発症は、ライフスタイルの改善、植物性食品ベースの食事(地中海式食事など)への変更、身体活動の増加により予防可能である。・予防のために利用可能ないくつかの外科的および薬理学的介入がある。・新たな治療法には、メラノコルチン4受容体(MC4R)アゴニストsetmelanotideやPdia4阻害薬が含まれる。・これらの各分野における現在および今後の研究は保証されており、新たな治療選択肢やそれぞれの病因に関する理解を深めることが重要である。

565.

統合失調症や双極性障害の興奮症状に対するデクスメデトミジン舌下投与の有用性

 米国・ニューヨーク医科大学のLeslie Citrome氏らは、統合失調症または双極性障害に関連する興奮症状を伴う成人患者において、デクスメデトミジンの臨床的有効性および忍容性を評価するため、治療必要数(NNT)、有害必要数(NNH)、likelihood to be helped or harmed(LHH)を用いた評価を行った。その結果、統合失調症または双極性障害に関連する急性興奮症状に対し、デクスメデトミジン舌下投与は良好なベネフィット-リスクプロファイルを有する治療であることが確認された。Advances in Therapy誌オンライン版2022年8月24日号の報告。 統合失調症または双極性障害の成人患者を対象にデクスメデトミジン舌下投与を評価した、二重盲検ランダム化プラセボ対照試験のデータの事後分析を行った。治療反応は、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)-Excited Component(PANSS-EC)のベースラインからの変化量40%以上と定義した。忍容性の評価は、有害事象の発生率とした。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症または双極性障害患者に対するデクスメデトミジン舌下投与後2時間において、プラセボと比較したPANSS-ECによる治療反応のためのNNTは、それぞれ以下のとおりであった。【統合失調症】 ●デクスメデトミジン120μg(NNT:3、95%CI:3~4、129例) ●デクスメデトミジン180μg(NNT:3、95%CI:2~3、125例)【双極性障害】 ●デクスメデトミジン120μg(NNT:4、95%CI:3~6、126例) ●デクスメデトミジン180μg(NNT:3、95%CI:2~3、126例)・プラセボと比較したNNHは、眠気を除くすべての有害事象において10を超えていた。・統合失調症および双極性障害におけるいずれの用量においても、NNHは7(95%CI:5~10)であった。・有効性と忍容性のアウトカムについて、すべてのケースにおいてLHHは1を超えていた。

566.

日本人高齢者における片頭痛有病率~糸魚川翡翠研究

 新潟・糸魚川総合病院の勝木 将人氏らは、日本人高齢者の頭痛、片頭痛、慢性連日性頭痛、痛み止めの使い過ぎによる頭痛(薬剤の使用過多による頭痛、薬物乱用頭痛)の有病率を調査するためアンケート調査を実施し、3ヵ月間の頭痛の有病率とその特徴を明らかにしようと試みた。結果を踏まえ著者らは、日本人高齢者の頭痛有病率は諸外国と比較し、決して高いものではないが、片頭痛による社会経済的損失は重大であり、疾患の理解、適切な治療や予防などが重要であると報告している。また、高齢者は、さまざまな併存疾患に関連する重度な頭痛といった特徴を持つ可能性が示唆された。Journal of Clinical Medicine誌2022年8月11日号掲載の報告。 2019年、3回目の新型コロナウイルスワクチン接種後の待機時間を利用し、新潟県・糸魚川市の糸魚川総合病院と能生国民健康保険診療所で、65歳以上の高齢者を対象にアンケート調査を実施した。片頭痛および薬物乱用頭痛の定義には、国際頭痛分類第3版を用いた。慢性連日性頭痛は、1ヵ月に15日以上の頭痛発生と定義した。K-means++法を用いて、クラスタリングを行った。 主な結果は以下のとおり。・有効回答者2,858例における有病率は、頭痛11.97%、片頭痛0.91%、慢性連日性頭痛1.57%、薬物乱用頭痛0.70%であった。・鎮痛薬の併用や非オピオイド鎮痛薬の使用頻度が高かった。・予防薬を使用していた片頭痛患者は1例のみであった。・K-means++法を用いて薬物乱用頭痛患者332例を4つのクラスターに分類したところ、各クラスターの頭痛に下記の特徴が認められた。 ●クラスター1:緊張型頭痛様 ●クラスター2:薬物乱用頭痛様 ●クラスター3:脳卒中・脂質異常症・うつ病などを既往に持つ重症な頭痛 ●クラスター4:光恐怖症や音恐怖症を持つ片頭痛様

567.

青年期の学力向上と抑うつ症状との関連

 シンガポール国立大学のRyan Y. Hong氏らは、青年期の学力向上と抑うつ症状との長期的な関連性を調査した。その結果、学力構築の維持を目的とした介入が、抑うつ症状の悪化を予防する可能性が示唆された。Development and Psychopathology誌オンライン版2022年8月12日号の報告。 対象は、シンガポールの青年741人。学業成績と抑うつ症状に関する過去の研究を拡張し、1学年度にわたる3-wave縦断的研究を行い、学力低下仮説(学力構築における過去の問題がその後の抑うつ症状に影響を及ぼす)および適応浸食仮説(過去の抑うつ症状がその後の能力構築に悪影響を及ぼす)の2つの競合する仮説を検証した。高次能力構築因子(複数の構成要素の動機付け変数を用いて操作可能)と抑うつ症状との関連性を評価するため、ランダムインターセプトとクロス遅延パネルモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・個人の能力構築の減少が、その後の個人の抑うつ症状を予測することが示唆されたが、逆の関係は認められなかった。・個人の能力構築の変動は、学年度末の成績と教師が報告した適応の問題を予測した。・全体として、学力低下仮説が支持された。

568.

不安症やうつ病の心理的再発予防介入~メタ解析

 不安症またはうつ病から寛解した患者に対する介入として、抗うつ薬の継続または中止と組み合わせた、心理的再発予防介入の有効性を評価するため、オランダ・アムステルダム自由大学のEsther Krijnen-de Bruin氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、寛解期うつ病患者では、心理的再発予防介入により、再発/再燃リスクの有意な減少が確認された。PLOS ONE誌2022年8月12日号の報告。 心理的再発予防介入と通常ケアを比較したランダム化比較試験(RCT)において再発/再燃の割合や期間を臨床アウトカムとして評価した研究を、PubMed、PsycINFO、Embaseより検索した。 主な結果は以下のとおり。・分析には、36件のRCTを含めた。・寛解期うつ病患者に対する心理的再発予防介入により、24ヵ月の再発/再燃リスクの有意な減少が認められた(RR:0.76、95%CI:0.68~0.86、p<0.001)。・この効果はフォローアップ期間が延長しても持続していたが、これらの結果はそれほど強くはなかった。・抗うつ薬の継続治療に心理的再発予防介入を併用することにより、24ヵ月間の再発リスクの有意な減少が認められたが(RR:0.76、95%CI:0.62~0.94、p=0.010)、フォローアップ期間が長くなると有意な差は消失した。・不安症の再発予防に焦点を当てた研究は2件のみであったため、メタ解析は実施できなかった。

569.

統合失調症患者のメタボリックシンドロームリスクに対する抗精神病薬の影響

 抗精神病薬が統合失調症患者のメタボリックシンドローム(MetS)発症に影響していることが、多くの研究で示唆されている。セルビア・クラグイェバツ大学のAleksandra Koricanac氏らは、抗精神病薬治療を受けている統合失調症患者におけるMetSの発症リスクおよび発症しやすい患者像を明らかにするため、検討を行った。その結果、リスペリドン治療患者およびクロザピン治療患者は、アリピプラゾール治療患者よりも、MetS発症リスクが高い可能性が示唆された。また、リスペリドン治療患者は、健康対照群と比較し、TNF-αとTGF-βの値に統計学的に有意な差が認められた。Frontiers in Psychiatry誌2022年7月25日号の報告。 安定期統合失調症患者60例を対象に、単剤使用の各抗精神病薬に応じて3群(リスペリドン群、クロザピン群、アリピプラゾール群)に分類した。また、健康な被験者20例を対照群とした。最初に、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いて評価し、その後プロラクチン値、脂質状態、血糖値、インスリン値、サイトカイン値(IL-33、TGF-β、TNF-α)、C反応性タンパク質(CRP)を測定した。BMI、HOMA指数、ウエスト/ヒップ比(WHR)、血圧も併せて測定した。 主な結果は以下のとおり。・リスペリドン群は、対照群およびアリピプラゾール群と比較し、プロラクチン値に有意な差が認められた。・クロザピン群は、対照群と比較し、HDLコレステロールおよびグルコースのレベルに有意な差が認められた。・アリピプラゾール群は、対照群と比較し、BMIの有意な差が認められた。・統計学的に有意な関連は、リスペリドン群ではTNF-αとグルコースおよびHOMA指数(IL-33とグルコース、TGF-βとグルコース)、クロザピン群ではTNF-αとBMI(IL-33とBMI、TGF-βとインスリンおよびHOMA指数)において認められた。・アリピプラゾール群のTGF-βとLDLコレステロールにおいて、統計学的に有意な負の関連が認められた。

570.

COVID-19パンデミック中のスマホ依存症とその後の自殺リスク

 COVID-19パンデミックによるロックダウン中、青少年のスマートフォン依存症や自殺率の増加が認められた。しかし、スマートフォン依存症と自殺リスクとの関係、その根底にある心理的メカニズムについてはよくわかっていない。中国・四川大学のGangqin Li氏らは、ロックダウンの最初の1ヵ月間における青少年のスマートフォン依存症と、その後5ヵ月間の自殺リスクとの関連を評価した。その結果、スマートフォン依存症の青少年における自殺リスクを減少するためには、日中の眠気や抑うつ症状の改善を目的とした介入プログラムがとくに有用である可能性が示唆された。BMC Public Health誌2022年8月12日号の報告。 中国の高等学校の生徒1,609人を対象に、Webベースの短期縦断調査を実施した。第1段階(T1)の調査では、2020年2月24日~28日(パンデミックのピーク時)に中国・四川省で、スマートフォン依存症の重症度および基本的な人口統計学的データを収集した。第2段階(T2)の調査では、T1の5ヵ月後に当たる7月11日~23日に、過去5ヵ月間のスマートフォン依存症、日中の眠気、抑うつ症状、自殺傾向を測定した。 主な結果は以下のとおり。・回帰分析により、隔離期間中のスマートフォン依存症は、抑うつ症状や日中の眠気で調整した後においても、その後5ヵ月間の自殺傾向の直接的な予測因子であることが明らかとなった。・一方、T1でのスマートフォン依存症は、T2での自殺傾向も間接的に予測し、抑うつ症状や日中の眠気はこの関連性を仲介していた。

571.

超加工食品の摂取と認知症リスク

 超加工食品の摂取が、うつ病、心血管疾患、すべての原因による死亡といった健康への悪影響と関連することを示唆するエビデンスが増加している。しかし、超加工食品が認知症と関連しているかは、よくわかっていない。中国・天津医科大学のHuiping Li氏らは、UK Biobankのデータを用いて、超加工食品と認知症発症との関連を調査した。その結果、超加工食品の摂取量が多いほど認知症リスクが上昇し、超加工食品の一部を未加工食品または最小限の加工食品に置き換えることで、認知症リスクが低下することを報告した。Neurology誌オンライン版2022年7月27日号の報告。 ベースライン時に認知症でない55歳以上の参加者7万2,083人を対象に、2回以上の24時間食事評価を行い、2021年3月までフォローアップした。超加工食品の定義は、NOVA分類に従った。アルツハイマー病および血管性認知症を含むすべての原因による認知症は、病院と死亡の電子記録を連携させることにより確認した。食事の超加工食品の割合とその後の認知症リスクとの関連を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。超加工食品を同等の割合で未加工食品または最小限の加工食品に置き換えた場合の認知症リスクを推定するため、代替分析法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間(71万7,333人年、中央値:10.0年)に認知症を発症した参加者は518例であり、そのうちアルツハイマー病は287例、血管性認知症は119例で認められた。・完全調整モデルでは、超加工食品の摂取と認知症リスクとの関連が認められた。 ●すべての原因による認知症(超加工食品の摂取量が10%増加した場合のハザード比[HR]:1.25、95%信頼区間[CI]:1.14~1.37) ●アルツハイマー病(HR:1.14、95%CI:1.00~1.30) ●血管性認知症(HR:1.28、95%CI:1.06~1.55)・食事の超加工食品の10%に当たる量を未加工食品または最小限の加工食品に置き換えた場合、認知症リスクが19%低下すると推定された(HR:0.81、95%CI:0.74~0.89)。

572.

日本人高齢者におけるうつ病と道路接続性との関係~JAGES縦断研究

 高齢者において、メンタルヘルス対策は重要であり、近隣環境がうつ病の保護因子として注目されている。これまでの調査では、近隣環境の重要な指標である道路接続性が高齢者の健康と関連していることが示唆されている。しかし、道路接続性とうつ病との関連については、不明なままであった。千葉大学のYu-Ru Chen氏らは、高齢者のうつ病と道路接続性との関係について調査を行った。その結果、道路接続性と高齢者のメンタルヘルスとの関連が示唆された。著者らは、本調査結果が今後の健全な都市計画の検討に貢献する可能性があるとしている。Scientific Reports誌2022年8月8日号の報告。 日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study:JAGES)2013-2016のデータを用いて、2013年にうつ病でなかった高齢者(老年期うつ病評価尺度スコア5未満)2万4,141人を対象に評価を行った。アウトカム変数は、2016年のうつ病診断とした。説明変数は、対象者の近隣800m圏内の交差点密度および空間構文によって算出した道路接続性とした。2016年のうつ病の新規診断に対するオッズ比および95%信頼区間を算出するため、ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・交差点密度が高い地域に住んでいる高齢者は、交差点密度が低い地域に住んでいる高齢者と比較し、3年後の新規うつ病発症率が17%低かった。・道路接続性が高い地域に住んでいる高齢者は、道路接続性が低い地域に住んでいる高齢者と比較し、3年後の新規うつ病発症率が14%低かった。・身体活動や社会的相互作用で調整した後でも、これらの関連は認められた。

573.

境界性パーソナリティ障害と統合失調症の幻覚・妄想症状の比較

 境界性パーソナリティ障害(BPD)でみられる幻覚・妄想は、これまで十分に研究されていなかった。オーストラリア・スウィンバーン工科大学のZalie Merrett氏らは、BPD患者の多感覚幻覚・妄想を現象学的に調査し、統合失調症スペクトラム障害(SSD)患者でみられるこれらの症状との比較を行った。併せて、臨床精神病理学的調査も行った。その結果、BPD患者では多感覚幻覚・妄想が頻繁に認められることから、BPDを治療する場合にはこれらの症状の把握が重要であることが報告された。Journal of Personality Disorders誌2022年8月号の報告。 調査対象は、成人患者89例。幻聴ありBPD群、幻聴なしBPD群、高BPD特性SSD群、低BPD特性SSD群の4群に分類した。 主な結果は以下のとおり。・BPD患者のうち、幻覚および幻触が81%、幻嗅が75%で報告され、妄想は94%が経験していた。・幻聴の有無にかかわらずBPD患者を比較したところ、非精神病性精神病理学の特徴に有意な差は認められなかった。・BPDの幻覚とSSDの幻覚の比較では、わずかな違いが認められたが、全体的には同様であった。・BPD群は、SSD群と比較し、パラノイア/不信感、罪業妄想の割合が有意に高かった。

574.

日本人統合失調症患者に対するブレクスピプラゾールと他の非定型抗精神病薬による治療中止率の比較

 統合失調症の再発予防には、治療継続が不可欠である。横浜市立大学の菱本 明豊氏らは、日本の実臨床現場における統合失調症患者に対するブレクスピプラゾール治療(BRX群)と他の抗精神病薬治療(OAA群)による治療中止までの期間を比較するため、健康保険レセプトデータを用いて検討を行った。その結果、BRX群はOAA群よりも治療中止リスクが低いことが示唆されたことから、統合失調症患者の治療継続にブレクスピプラゾールが有用である可能性を報告した。Advances in Therapy誌オンライン版2022年7月29日号の報告。 2017年4月~2020年5月の日本のレセプトデータベースより抽出した75歳未満の就業中の統合失調症患者およびその扶養家族の匿名化されたデータを評価した。ベースライン時の患者変数で調整した後、Cox比例ハザードモデルを用いて、主要アウトカムであるBRX群とOAA群における180日間の治療中止までの期間を比較し、ハザード比(HR)を95%信頼区間(CI)で推定した。180日間の累積治療継続率も合わせて推定した。主要アウトカムについては、感度分析およびサブグループ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・分析には、BRX群978例、OAA群4,898例を含めた。・BRX群は、OAA群よりも治療中止リスクが有意に低かった(HR:0.86、95%CI:0.78~0.95、p=0.0024)。・累積治療継続率は、BRX群(45.9%、95%CI:42.5~49.2)のほうがOAA群(39.5%、95%CI:38.1~41.0)よりも高かった(log-rank検定:p<0.0001)。・傾向スコアが一致した患者による分析においても、BRX群はOAA群よりも治療中止リスクが有意に低かった(log-rank検定:p=0.0466)。・感度分析およびサブグループ解析においても、同様の結果が得られた。

575.

統合失調症入院患者の口腔衛生状態とそれに関連する要因

 愛知学院大学の黒川 誉志哉氏らは、統合失調症入院患者における口腔衛生の状態と不良となる因子を明らかにするため、調査を行った。その結果、統合失調症患者は、口腔衛生状態が不良である傾向があり、バーゼル指数[BI]、男性、ADLの低さが口腔衛生不良と関連している可能性が示唆された。また、高齢になるほど虫歯リスクが高くなることも報告された。International Journal of Dental Hygiene誌オンライン版2022年8月3日号の報告。 対象は、統合失調症入院患者249例。口腔衛生状態(歯石指数[CI]、歯垢指数[DI])、虫歯歴を有する歯の平均数(平均DMFT)、関連因子(入院、クロルプロマジン換算量、年齢、バーゼル指数、歯磨きの頻度、口腔セルフケア能力)を含む改訂版の口腔評価ガイド(ROAG)について調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・口腔衛生状態の結果は、以下のとおりであった(中央値[範囲])。 ●CI:0.5(0~6.0) ●DI:1.7(0~6.0) ●ROAG:10.0(7.0~15.0)・平均DMFTは21.7±7.3であった。・クロルプロマジン換算平均量は524.4±353.6mg、BIは76.4±30.7であった。・BIとDIとの間に負の相関があり(r=-0.34)、年齢と平均DMFTとの間に正の相関が確認された(r=0.57)。・男性患者は、女性患者よりも口腔状態(ROAG)が不良な傾向が認められた。・最小二乗重回帰分析では、口腔健康状態に関連する因子として以下が確認された。 ●DIに対するBI ●平均DMFTに対する年齢 ●ROAGに対する性別 ●CI、DI、平均DMFTに対する口腔セルフケア能力

576.

うつ病リスクは旅行をしないと高くなる?高齢者の旅行とうつ病との関係

 韓国・ソウル大学のSeungjae Hyun氏らは、うつ病と旅行との相互関係を調査した。その結果、旅行しない人はうつ病リスクが高くなり、旅行とうつ病との間には相互関係があることが報告された。Annals of General Psychiatry誌2022年8月10日号の報告。うつ病リスクが1年間の旅行の有無で70%高く プロスペクティブコホート研究である韓国縦断研究(Korean Longitudinal Study of Ageing)より2008~16年のデータを用いて、参加者8,524人(平均年齢:63.1±10.5歳)を抽出し、分析を行った。うつ病の診断には、10項目のうつ病自己評価尺度(CES-D10)を用い、スコア4以上をうつ病と定義した。統計分析は、一般化推定方程式および交差遅延パネルモデルを用いた。 うつ病と旅行との相互関係を調査した主な結果は以下のとおり。・1年間旅行しなかった参加者は、旅行した参加者と比較し、翌年のうつ病リスクが71%高かった(相対リスク[RR]:1.71、p<0.001)。・うつ病の参加者は、非うつ病の参加者と比較し、旅行しないリスクが2倍以上高かった(RR:2.08、p<0.001)。・交差遅延パネルモデルでは、旅行での移動距離とうつ病のCES-D10スコアとの間に悪循環が観察された。より頻繁に旅行する参加者は、CES-D10スコアが低くなる傾向があり(係数:-0.04~-0.03、ps<0.01)、CES-D10スコアが高い参加者ほど、旅行する可能性が低かった(係数:-0.06~-0.03、ps<0.01)。

577.

第123回  高血圧治療用アプリ保険適用、中医協委員は健康アプリとの線引きの曖昧さやフォローアップの必要性を指摘

日本で2番目に承認されたDTxこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。週末から月曜にかけては、甲子園の高校野球観戦三昧でした。夏の全国高校野球選手権大会の決勝は仙台育英高校が下関国際高校に勝ち、優勝旗が初めて「白河の関超え」(東北勢の初優勝)をすることになりました。仙台育英は夏の大会決勝進出3度目にしての悲願達成です。個人的に記憶に鮮明なのは、大越 基投手が仙台育英のエースだった1989年の決勝です。大越投手は一人で全6試合を投げ抜き、帝京(東東京)との決勝は延長10回、0-2で敗れました。その大越投手、ダイエー・ホークス(当時)引退後は大学に入学し直して教員の資格を取り、現在は下関国際高校の地元でもある山口県下関市の早鞆(はやとも)高校野球部監督を務めています(2012年に春の選抜大会出場)。大越氏は決勝当日、8月22日の朝日新聞朝刊の「エール 東北人+山口の監督として」に登場、「OB、東北人としては育英を応援したいけど、山口県の監督としては下関に深紅の大優勝旗が来てほしい」と語っていました。同じ山口県内のライバル校を倒し、東北勢の長年の呪縛も解いた母校・仙台育英高校の優勝に、大越氏もほっと胸をなでおろしているのではないでしょうか。さて、今回は8月3日、中央社会保険医療協議会総会で医療機器として保険適用が決まったCureApp社の「CureApp HT高血圧治療補助アプリ」について書いてみたいと思います。日本で2番目に承認されたこのデジタル治療薬(Digital Therapeutics:DTx)に対し、中医協委員から使用実態についてのフォローアップの必要性を指摘されるなど、厳しい意見も多数出されました。月1回830点、6ヵ月を限度に算定中医協総会は8月3日、CureApp社の「CureApp HT高血圧治療補助アプリ」について保険適用を了承しました。診療報酬上は特定保険医療材料としては設定せず、新規技術料で評価されます。同社のニコチン依存症治療アプリも同様の区分で承認されており、これに準じた扱いです。具体的には、同アプリを使用して高血圧症に関する総合的な指導および治療管理を行った場合、アプリによる治療開始時に「禁煙治療補助システム指導管理加算」を準用する形で、140点を1回に限り算定します。また、同アプリを使用して高血圧症に関する総合的な指導および治療管理を行った場合に「血糖自己測定器加算の4(月60回以上測定する場合)」を準用し、月1回に限り830点を算定します。830点の算定については、初回の使用日の月から6ヵ月を限度としており、加えて前回算定日から、平均して7日間のうち5日以上、アプリに血圧値が入力されている場合にのみ算定できるとしています。なお、アプリの使用に当たっては、関連学会の策定するガイドラインおよび適正使用指針の順守を求めています。830点6ヵ月は患者側にとってはなかなか高い点数ですが、皆さんどう思われるでしょう? 6ヵ月間のアプリ使用料は3割負担で約1万5,000円となります。一般的なゲーム課金と比べると、少々高い印象です。同アプリは9月には保険収載される見通しです。中医協の資料によれば、推定適用患者数(ピーク時)は約824万人、このうち市場規模予測(ピーク時)として同アプリの使用患者数は約7万人と見積もられています。国はDTxなどプログラム医療機器の普及・定着に前のめり「CureApp HT高血圧治療補助アプリ」は、同社が自治医科大学の研究グループと共同開発した治療用アプリで、患者がスマートフォンなどを用いて使用するものです。患者がIoT血圧計で測定した家庭血圧や、生活習慣のログを日々記録すると、アプリはこれらのデータを基に、患者ごとに個別化された治療ガイダンスとして、食事、運動、睡眠などに関する情報を表示します。これにより患者の行動変容を促すことで降圧効果が得られるとしています。同アプリについては、本連載でも、2022年4月26日に薬事承認された直後に「第109回 高血圧治療用アプリの薬事承認取得で考えた、『デジタル薬』が効く人・効かない人の微妙な線引き(前編)」、「第110回 同(後編)」と2回に渡り取り上げ、国がDTxをはじめとするプログラム医療機器(SaMD)の普及・定着に相当前のめりになっている状況や、DTxの臨床試験の不可解さについて書きました。「アプリのアドバイスになかなか従わない人に果たして効果があるか」前編では、同アプリが薬事承認の了承に当たって、「承認後1年経過するごとに、市販後の有効性に関する情報を収集し、有効性が維持されていることを医薬品医療機器総合機構(PMDA)宛てに報告すること」という条件が付けられたことを紹介、「こうしたスマホアプリに順応して素直に行動を変えられる人ならよいが、頑固でアプリのアドバイスになかなか従わない人に果たして効果があるのだろうか」という素朴な疑問を投げかけました。続く後編では、「CureApp HT 高血圧症治療補助アプリ」の臨床試験の結果を読み解き、「主要評価項目であるABPM (24時間自由行動下血圧測定)による24時間のSBP(収縮期血圧)が、高血圧治療ガイドラインに準拠した生活習慣の修正に同アプリを併用した『介入群』と、同ガイドラインに準拠した生活習慣の修正を指導するのみの『対照群』を比較評価した結果、『介入群』の方が有意な改善を示した、とのことですが、『有意な改善』とは言っても、血圧の変化量の群間差は-2.4[-4.5〜-0.3]で、素人目には劇的というほどではありませんでした」と書きました。さらに、PMDAが公開した「CureApp HT 高血圧症治療補助アプリ」の審議結果報告書には臨床試験の対象患者について、「20歳以上65歳未満の降圧薬による内服治療を受けていないI度又はII度の本態性高血圧患者のうち、 食事・運動療法等の生活習慣の修正を行うことで降圧効果を十分に期待できると判断された患者を対象」と記載されているものの、「『降圧効果を十分に期待できる』をどう判断したかについては書かれていない」と指摘しました。また、DTxの成功例として知られる米Welldoc社の糖尿病治療用アプリ「BlueStar」も、相当厳格な対象患者絞り込みによって、有意差のある結果を出していたらしいことにも言及。DTxの開発は国内外で、糖尿病、うつ病、不眠症、アルコール依存症とさまざまな領域で活発化しているものの、大日本住友製薬など、開発に頓挫したケースもあることを紹介しました。中医協、支払側・診療側双方の委員から厳しい指摘この連載で書いたような、DTxの治療効果への疑問や、臨床試験での対象患者選びがブラックボックス化していることなどは、中医協委員も感じていたのかもしれません。総会では中医協委員から厳しい意見が出されました。日経メディカルやミクスオンラインなどの報道によれば、同アプリの保険適用に当たっては、支払側委員から「ニコチン依存症の治療用アプリとは異なり、(高血圧症治療補助アプリ)は健康アプリに近い印象があり、同様のアプリが今後登場してきた際には判断が難しくなるのではないか」、「通常の生活習慣指導と比較したアプリの効果についてはエビデンスがあるものの、他の健康アプリとの比較は行われていない」など、一般向けの健康アプリとの線引きの曖昧さが指摘されました。一方、診療側委員からは、「次回改定時には前例にとらわれず、専門組織からの意見などを受けて、本製品の評価について見直しを行うことも検討する必要がある。一定期間の使用を踏まえたアウトカム評価を導入することも必要ではないか」と使用実態についてのフォローアップが求められました。サワイ、CureAppが開発する肝炎治療用アプリの販売権を獲得健康アプリとの線引きの曖昧さの指摘や、フォローアップをしっかり行うようにとの要請など、なかなかに厳しい船出と言えます。しかし、DTxはこれからも次々と上市される見込みです。後発医薬品大手のサワイグループホールディングスは(サワイGHD)8月2日、CureAppが開発する肝炎の治療用アプリの販売権を獲得したと発表しました。契約一時金に加え、臨床試験の進展に応じCureAppに最大105億円を支払うとのことです。この治療用アプリは肝臓に炎症を引き起こす非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を治療対象にしたものです。医師の代わりに患者に食生活の見直しや運動などを促し、生活習慣の改善をめざすとしています。「CureApp HT 高血圧症治療補助アプリ」と同様、医師が患者に処方して使うDTxです。CureAppと東京大学医学部附属病院が共同で2016年10月より単施設における臨床研究を開始、2018年4月からは多施設共同臨床研究を実施し、認知行動療法に基づいた本アプリによる明確な体重減少ならびに肝線維化の改善効果が認められたとしています。今後、これまでの試験データを基に、第III相臨床試験に進む予定とのことです。第III相臨床試験はCureAppとサワイGHDが共同して行い、上市後の販売や営業活動はサワイGHDが担うとしています。NASHの患者は国内に200万人程度、その予備軍は推定1,000万人程度いるとされ、病気が進行すると肝硬変や肝がんを引きおこすおそれがあります。確立された薬物療法がなく、運動療法や食事療法などの生活改善が中心になっており、その一翼を同アプリが担うとしています。ただ、認知行動療法で体重減少を目指す点は理解できますが、その療法と肝線維化との関連性がどうなっているのか、プレスリリースや報道などでは今ひとつわかりません。それこそ、普通の一般向け減量アプリとの差別化はどうなるのでしょう。第III相臨床試験では、そのあたりもきちんと実証し、公表して欲しいと思います。

578.

COVID-19パンデミック中の長期抑うつ症状の予測因子

 COVID-19パンデミックは、それ以前と比較し、精神疾患の増加を引き起こしている。しかし、成人うつ病の長期的軌跡に対するパンデミックの影響は十分に検討されていない。英国・サウサンプトン大学のLara Rosa氏らは、COVID-19パンデミックの初期段階以降での抑うつ症状の軌跡と予測因子を明らかにするため、潜在成長曲線モデルを用いて検討を行った。その結果、COVID-19パンデミックによる孤独感は、すべての年齢層において抑うつ症状の長期的軌跡に多大なる影響を及ぼすことが示唆されたが、ソーシャルディスタンスの順守が抑うつ症状増加の予測因子ではないことから、著者らは、孤独を感じないようにつながりを育んでいくことが重要であると報告している。Evidence-Based Mental Health誌オンライン版2022年7月28日号の報告。 2020年5月、同年9月/10月、2021年2月/3月の各COVID-19パンデミック期間におけるデータを、英国の4つのコホート研究(MCS、NSコホート、BCS、NCDS)より収集した。分析対象は1万6,978人であり、ベースライン時の平均年齢はコホート研究別にそれぞれ20歳、30歳、50歳、62歳であった。アウトカムは、自己報告による抑うつ症状とした。 主な結果は以下のとおり。・すべてのパンデミック期間において、若年者は高齢者よりも抑うつ症状を有する割合が高かった(d=0.7)。・抑うつ症状は、2020年5月~9月/10月では全体的に安定していたが(標準化平均差[SMD]:0.03、95%CI:0.02~0.04)、2020年5月~2021年2月/3月ではすべての年齢層において増加が認められた(SMD:0.12、95%CI:0.11~0.13)。・孤独感は、すべてのコホート研究で抑うつ症状増加の最も強力な予測因子であり、相関が確認された。・パンデミック前のメンタルヘルスの問題や長期罹患は、すべての年齢層において、抑うつ症状の増加と有意な関連が認められた。・一方、ソーシャルディスタンスの順守は、抑うつ症状増加の予測因子ではなかった。

579.

うつ病の急性単剤治療反応、プラセボと比較/BMJ

 米国食品医薬品局(FDA)のMarc B. Stone氏らは、同局に提出された無作為化プラセボ対照試験におけるうつ病の急性単剤治療に対する反応を、試験参加者レベルの個別データを基に解析した。その結果、実薬およびプラセボとも大幅な改善をもたらす可能性があるが、同様に認められた三峰性の反応分布から、臨床試験でプラセボ効果を上回る実質的な抗うつ効果を有する被験者は約15%であることが示唆された。著者らは、薬物治療に特異的な意味のある反応を示す予測因子の必要性が明らかになったことを報告している。BMJ誌2022年8月2日号掲載の報告。232の無作為化二重盲検プラセボ対照試験の被験者データを解析 研究グループは、1979~2016年に米国FDAに提出された無作為化プラセボ対照試験における、うつ病の急性単剤治療に対する被験者個人レベルの反応分布を特徴付けるデータ解析を行った。 解析には、抗うつ薬の有効性研究の包含基準を満たした232の無作為化二重盲検プラセボ対照試験から、成人および子供の被験者7万3,388例が含まれた。 各試験で有効性の評価にはさまざまな手法が用いられていたことから、すべてのスコアを17項目のハミルトンうつ病評価尺度(HAMD17)スコアに変換。多変量解析にて、抗うつ薬(実薬)群とプラセボ群のうつ症状の改善への、年齢、性別、ベースライン重症度、試験年数の影響を調べた。反応分布は、有限混合モデルを用いて解析した。実薬vs.プラセボのLarge responses達成は24.5% vs.9.6% 実薬群とプラセボ群のランダムエフェクト平均群間差は1.75点(95%信頼区間[CI]:1.63~1.86)であり、実薬群を支持するものであった。 実薬とプラセボ間の差は、ベースライン重症度が増すほど有意に増大した(p<0.001)。被験者のベースライン特性で調整後、治療効果またはプラセボ反応の経時的な傾向はみられなくなった。 反応分布の最適適合モデルとして、3つの正規分布が見いだされた。それぞれベースラインから治療終了までの平均改善点16.0、8.9、1.7を示すもので、改善の程度が大きい反応(Large responses)、改善の程度が限定的な非特異的反応(Non-specific responses)、改善の程度がほとんどまたはまったく認められない反応(Minimal responses)として出現した。 実薬群はプラセボ群と比較して、Large responsesを示す可能性が大きく(24.5% vs.9.6%、オッズ比[OR]:3.07[95%信頼区間[CI]:2.05~4.91])、Minimal responsesを示す可能性は小さかった(12.2% vs.21.5%、0.51[0.41~0.62])。一方で、ほとんどの反応(実薬の63.3%、プラセボの68.9%)が、Non-specific responsesに分布されていた。また、Large responsesが得られる患者を1人増やすための実薬での治療必要数(NNT)は6.7(95%CI:5.7~7.7)であり、Minimal responsesの患者を1人減らすための実薬でのNNTは10.8(9.0~12.5)であった。 これらの結果を踏まえて著者は、「抗うつ薬で実質的な改善が得られる可能性の高い患者のサブセットを特定する、さらなる研究が必要である」と述べている。

580.

第125回 気疲れは脳のグルタミン酸蓄積の仕業?

プロのチェス選手でさえ試合で4~5時間も経つと間違えをするように1日中試験や発表(プレゼン)で過ごした後で頭が回らなくなるという経験は誰しも覚えがあるでしょう。そういう気疲れ(精神的疲労)に神経伝達物質・グルタミン酸の脳での蓄積が寄与しうることが新たな試験で示唆されました1)。運動している時の筋肉がそうであるように、より頭を使う難解な課題で気疲れするのは簡単な課題に比べてエネルギーがより消費されて枯渇するのが原因とするというこれまでの通説とは異なる結果であり、その試験結果はちょっとした物議を醸しています2)。Cellの姉妹誌Current Biologyに結果が発表された今回の新たな試験で研究者は集中の維持や予定を立てるときに働く脳領域・外側前頭前野のグルタミン酸濃度が気疲れした時によくある振る舞い・克己心の欠如などと関連するかどうかを調べました。被験者40人は2つに分けられ、一方は気疲れを誘う難解な課題に取り組み、もう一方はより簡単な課題をしました。それら課題をしている6時間半の間に気疲れのほどや外側前頭前野のグルタミン酸濃度が何度か調べられました。気疲れのほどは、後で手に入る大金のために目先の小銭を我慢する自制心を問う質問などで評価されました。その結果、より難解な課題の群は簡単な課題の群に比べて克己心を失った衝動的な選択が10%ほど多く、外側前頭前野のグルタミン酸濃度が8%ほど上昇していました2)。より簡単な課題の群ではそのようなグルタミン酸濃度上昇は認められませんでした。今回の試験結果はあくまでも関連を示しただけであり、知能の酷使が脳でのグルタミン酸の有害な蓄積を引き起こすと結論づけるものではありません。米国・ブラウン大学の神経科学者Sebastian Musslick氏はグルタミン酸の上昇は気疲れの主因ではなく何らかの役割を担っていると考えています2)。われわれの脳は臓器と絶えず通信し、いつ食べたり飲んだり寝たりすればいいかを知らせてくれます。それと似たような脳内の保守に前頭前野のグルタミン酸も携わっているのではないかと同氏は想定しています。また、プリンストン大学のJonathan Cohen氏もグルタミン酸のような余剰物を気疲れの主因とする考えを疑っています。脳はより手の込んだ処理で膨大な情報を捌いているに違いなく、余剰物の上げ下げといった単純な仕組みで事足りる筈がない(It just can‘t be that easy)と言っています。今後の課題として、代謝の残り滓を洗い流して脳を掃除する睡眠や休息でグルタミン酸濃度が落ち着くかどうかを調べる必要があります。先立つ研究によると睡眠中にグルタミン酸がシナプスから取り除かれることはかなり確かなようです3)。脳疾患の多くでグルタミン酸の異常な伝達が認められており、うつ病治療に使われるエスケタミンやアルツハイマー病症状を治療するメマンチンなどの神経のグルタミン酸受容体を狙う薬がすでに存在します。また、最近のアルツハイマー病や脊髄小脳失調症(SCA)の試験で残念ながら効果を示すことはできませんでしたが、グルタミン酸除去薬troriluzoleも臨床試験段階に進んでいます。外傷性脳損傷(TBI)、多発性硬化症、新型コロナウイルス感染(COVID-19)後にも生じうるらしい筋痛性脳脊髄炎(ME)/慢性疲労症候群(CFS)などの脳を酷使させる病気の研究に今回のような成果は重要な意義を持ち、その議論を前進させる筈とKessler Foundationの神経学者Glenn Wylie氏は言っています4)。参考1)Wiehler A, et al.Curr Biol. 2022 Aug 4:S0960-9822.01111-3.2)Mentally exhausted? Study blames buildup of key chemical in brain / Science3)Why thinking hard makes you tired / Eurekalert4)Neurotransmitter Buildup May Be Why Your Brain Feels Tired / TheScientist

検索結果 合計:2849件 表示位置:561 - 580