サイト内検索|page:20

検索結果 合計:2849件 表示位置:381 - 400

381.

日本人成人強迫症患者におけるADHD併発の影響

 これまでの研究において、小児および青年における強迫症と注意欠如多動症(ADHD)との関連が報告されている。しかし、成人における強迫症とADHDとの生涯併発率との関連を調査した研究は、ほとんどなかった。兵庫医科大学の宮内 雅弘氏らは、日本人成人強迫症患者におけるADHDの併発に関連する臨床的および精神病理学的特徴を調査した。Comprehensive Psychiatry誌2023年8月号の報告。 日本人成人強迫症患者93例を対象に、ADHDの生涯併発率を評価した。ADHDの特徴および重症度の評価には、コナーズ成人ADHD 評価スケール(CAARS)日本語版を用いた。ADHDではないがADHD特性レベルが上昇した患者は、調査結果から除外した。ADHDを伴う強迫症患者(ADHD+群)とADHD特性が認められない強迫症患者(ADHD-群)における背景プロファイルおよび強迫症状や心理学的検査結果などの臨床的特徴を比較した。さらに、6ヵ月間の治療結果を、両群間でプロスペクティブに比較した。 主な結果は以下のとおり。・強迫症患者93例のADHD生涯併発率は、16.1%と推定された。・ADHD+群は、ADHD-群と比較し、以下の特徴が確認された。 ●強迫症の発症年齢が低い ●ためこみ症(hoarding symptom)の頻度が高い ●抑うつ症状や不安症状レベルが高い ●QOL低下 ●衝動性レベルが高い ●物質依存症や行動依存症の割合が高い ●うつ病の割合が高い・ADHD+群は、ADHD-群よりも、強迫症に対する標準的治療6ヵ月後の Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale(Y-BOCS)平均改善率が有意に低かった(16.1% vs. 44.6%)。 著者らはこの結果から、「ADHDの併発は、成人強迫症患者の臨床的特徴や治療アウトカムに重大な影響を及ぼす可能性が示唆された。強迫症患者の全体的な臨床症状の重症化や治療抵抗性を引き起こす因子として、ADHDの根底にある病理学的特徴が関与している可能性があることを考慮することが重要である。このような患者の治療戦略を検討するには、さらなる研究が必要である」と述べている。

382.

主要な精神疾患に伴う抑うつ症状に主観的な不眠が関与

 精神疾患の患者に高頻度で見られる抑うつ症状に、不眠が影響を及ぼしていることを表すデータが報告された。大うつ病性障害だけでなく、統合失調症や不安症などの主要な精神疾患の抑うつ症状が不眠と関連しており、そのことが疾患の重症度に影響を及ぼしている可能性も考えられるという。日本大学医学部精神医学系の中島英氏、金子宜之氏、鈴木正泰氏らの研究によるもので、「Frontiers in Psychiatry」に4月24日掲載された。 精神疾患で現れやすい抑うつ症状は、生活の質(QOL)や服薬アドヒアランスの低下、飲酒行動などにつながるだけでなく、自殺リスクの上昇との関連も示唆されている。一方、精神疾患に不眠が併存することが多く、大うつ病性障害(MDD)患者では不眠への介入によって抑うつ症状も改善することが報告されている。ただし、MDD以外の精神疾患での抑うつ症状と不眠の関連はよく分かっていない。MDDと同様にほかの精神疾患でも抑うつ症状と不眠が関連しているのであれば、不眠への介入によって抑うつ症状が改善し、予後に良好な影響が生じる可能性も考えられる。鈴木氏らはこの仮説に基づき、以下の検討を行った。 この研究は、うつ病の客観的評価法を確立するために行われた研究の患者データを用いて行われた。解析対象は、日本大学医学部附属板橋病院と滋賀医科大学医学部附属病院の2017年度の精神科外来・入院患者のうち、研究参加に同意し解析に必要なデータがそろっている144人。疾患の内訳は、MDDが71人、統合失調症25人、双極性障害22人、不安症26人。 不眠は、アテネ不眠尺度(AISスコア)を用いた主観的な評価(24点中6点以上を臨床的に有意な不眠と定義)、および睡眠脳波検査による客観的な評価によって判定した。抑うつ症状の評価には、ベック抑うつ質問票を用い、研究目的から睡眠に関する項目を除外したスコア(mBDIスコア)で評価した。mBDIスコアは高値であるほど抑うつ症状が強いと判定される。このほか、各疾患の症状評価に一般的に用いられているスケールによって重症度を評価した。 AISスコアで評価した臨床的に有意な主観的不眠は全体の66.4%であり、疾患別に見るとMDDでは77.1%、統合失調症で36.0%、双極性障害で63.6%、不安症で69.2%だった。不眠の有無でmBDIスコアを比較すると、以下のように4疾患のいずれも、不眠のある群の方が有意に高値だった。MDDでは25.6±10.7対12.1±6.9(P<0.001)、統合失調症では22.8±8.6対11.1±7.0(P=0.001)、双極性障害では28.6±9.5対14.5±7.4(P=0.009)、不安症では23.9±10.4対12.5±8.8(P=0.012)。 一方、睡眠脳波検査から客観的に不眠と判定された割合は78.0%だった。疾患別に客観的不眠の有無でmBDIスコアを比較した結果、統合失調症でのみ有意差が認められた(18.1±9.3対9.9±7.1、P=0.047)。 次に、抑うつ症状と各精神疾患の重症度の関連を検討した。すると、mBDIスコアと統合失調症の重症度(PANSSスコア)との間に、正の相関が認められた(r=0.52、P=0.011)。これは、抑うつ症状が重度であるほど、統合失調症の症状も重いことを意味する。同様に、mBDIスコアと不安症の状態不安(一過性の不安を評価するSTAI-Iスコア)との関係はr=0.63(P=0.001)、特性不安(不安を抱きやすい傾向を評価するSTAI-IIスコア)との関係はr=0.81(P=<0.001)であり、いずれも有意な正の相関が認められた。 著者らは以上の結果を、「MDDだけでなく主要な精神疾患の全てで、主観的な不眠と抑うつ症状との関連が認められた」とまとめるとともに、「不眠に焦点を当てた介入によって、精神疾患の予後を改善できる可能性があり、今後の研究が求められる。例えば、各精神疾患の治療において、鎮静作用を有する薬剤を選択することが予後改善につながるかもしれない」と述べている。 なお、不眠の客観的な評価よりも主観的な評価の方が、より多くの精神疾患の抑うつ症状に有意差が観察されたことに関連し、「病状に対する悲観的な認識が睡眠状態の過小評価につながった可能性が考えられるが、抑うつ症状に関連した睡眠障害を検出するという目的では、主観的評価の方が適しているのではないか」との考察を加えている。

383.

頻繁な入浴で長期的な抑うつリスク低減

 湯に浸かる入浴(浴槽入浴)の頻度と長期的な抑うつ発症との関連を調査した6年にわたるコホート研究の結果、冬に浴槽入浴を頻繁に行う高齢者では新たな抑うつの発症が有意に少ないことを、東京都市大学の早坂 信哉氏らの研究グループが明らかにした。日本温泉気候物理医学会雑誌2023年オンライン版7月24日号掲載の報告。 これまでの研究において、頻繁な浴槽入浴が高い自己評価と関連していることや、介護保険が必要になる可能性が低いことなどが報告されているが、生活習慣としての浴槽入浴が健康にどのような影響を及ぼすかについてはまだ十分に解明されていない。 そこで、研究グループは、日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study:JAGES)の2010年および2016年調査の対象となった65歳以上の1万1,882人のうち、夏の入浴頻度の記録がある6,452人と冬の入浴頻度の記録がある6,465人をそれぞれ解析した。すべての解析対象者は要介護認定を受けておらず、老年期うつ病評価尺度スコアが4点以下でうつ病ではなかった。 浴槽入浴が0~6回/週のグループと、7回以上/週のグループの6年後のGDSによる抑うつの発症割合を求めた。浴槽入浴と抑うつの関連をロジスティック回帰分析によって年齢、性別、治療中の病気の有無、飲酒の有無、喫煙の有無、婚姻状況、教育年数、所得を調整して多変量解析を行い、オッズ比(OR)を求めた。 主な結果は以下のとおり。・夏の浴槽入浴が0~6回/週のグループの抑うつ新規発症率は12.9%、7回以上/週のグループは11.2%であった(p=0.192)。・冬の浴槽入浴が0~6回/週のグループの抑うつ新規発症率は13.9%、7回以上/週のグループは10.6%で有意差が認められた(p=0.007)。・共変量で調整した多変量解析において、夏の浴槽入浴が0~6回/週のグループを基準とした場合、7回以上/週のグループの抑うつ新規発症のORは0.84(95%信頼区間[CI]:0.64~1.10)で、浴槽入浴の頻度が高いほど抑うつの新規発症が少ない傾向にあった(p=0.213)。・冬の浴槽入浴では、7回以上/週のグループの抑うつ新規発症のORは0.76(95%CI:0.59~0.98)で、統計学的に有意に少なかった(p=0.033)。 これらの結果より、研究グループは「習慣的な浴槽入浴の温熱作用を介した自律神経のバランス調整などによる抑うつ予防作用による結果の可能性があり、健康維持のため高齢者へ浴槽入浴が勧められることが示唆された」とまとめた。

384.

治療前の統合失調症患者におけるメタボリックシンドローム有病率

 メタボリックシンドローム(MetS)は、性別により臨床パターンの異なるさまざまな病理学的状態を伴う臨床症候群である。統合失調症患者では、MetS有病率が有意に高いことが知られている。中国・Wuhan Mental Health CenterのKuan Zeng氏らは、初回治療および未治療の統合失調症患者におけるMetS有病率とそれに関連する要因、重症度に影響を及ぼす要因についての性差を調査した。その結果、統合失調症患者のMetS有病率とその要因には、男女間で違いが認められた。女性のほうがMetS有病率は高く、影響を及ぼす要因もより広範であることを報告した。Annals of General Psychiatry誌2023年6月28日号の報告。 対象は、初回治療および未治療の統合失調症患者668例。社会人口統計学的情報および一般的な臨床情報を収集し、代謝パラメータおよび生化学的指標を測定・評価した。精神症状の重症度評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者のMetS有病率は、男性で6.56%(244例中16例)、女性で13.44%(424例中57例)であり、男性よりも女性において有意に高かった。・MetsSのリスク因子は、男性では腹囲、空腹時血糖、拡張期血圧、トリグリセライド、女性では、収縮期血圧、トリグリセライド、総コレステロール、LDLコレステロール、血小板数であった。・女性では、年齢、LDLコレステロール、PANSSスコア、血清クレアチニン値がMetSスコア上昇のリスク因子であり、発症年齢、ヘモグロビン値が防御因子であることが発見された。

385.

日本人の双極性障害および統合失調症に関連するミトコンドリアの遺伝的変異

 双極性障害や統合失調症は、複雑な精神疾患であり、環境的要因と遺伝的要因(母性遺伝を含む)の両方が影響している可能性がある。これまで、いくつかの研究において、ミトコンドリア染色体の遺伝子変異と双極性障害および統合失調症との関連が調査されているが、研究結果は同一ではなく、参加者は欧州の患者に限定されていた。岐阜大学のRyobu Tachi氏らは、日本人集団におけるミトコンドリア染色体のゲノムワイドな遺伝的変異と双極性障害、統合失調症、精神疾患との関連を調査した。International Journal of Bipolar Disorders誌2023年7月21日号の報告。 患者および遺伝子変異の品質管理を行ったうえで、日本人420例を対象にミトコンドリア遺伝子変異(マイナーアレル頻度[MAF]>0.01、変異例:45例)と双極性障害、統合失調症、精神疾患との関連を調査した。対象の内訳は、双極性障害(BD群)51例、統合失調症(SZ群)172例、健康対照者(HC群)197例。 主な結果は以下のとおり。・ミトコンドリアの遺伝的変異のうち、多重比較で補正した後、双極性障害では3つ(rs200478835、rs200044200、rs28359178 のNADHデヒドロゲナーゼ上または近位)、精神疾患では1つ(rs200478835)の遺伝子変異との有意な関連が認められた(PGC=0.045-4.9×10-3)。・とくに、ミスセンス変異体であるrs200044200のマイナーGアレル遺伝子を有する人は、BD群(MAF=0.059)のみでみられ、HC群(MAF=0)ではみられなかった(オッズ比:∞)。・3例の患者は、精神医学的疾患の家族歴を有していた。 著者らは「NADHデヒドロゲナーゼ関連遺伝子のミトコンドリア遺伝的変異が、エネルギー産生のメカニズムを介して日本人の双極性障害や精神疾患発症に関与している可能性が示唆された」とまとめている。

386.

若者のうつ病・不安症、未治療での1年後の回復率~メタ解析

 抑うつ症状や不安症状を有する若者に対し、特別なメンタルヘルス介入を行わなかった場合の1年後の回復率は、どの程度か。英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のAnna Roach氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施し、これを明らかにしようと試みた。その結果、不安や抑うつ症状を有する若者の約54%は、特別なメンタルヘルス介入を行わなくても回復することが示唆された。BMJ Open誌2023年7月21日号の報告。 1980年~2022年8月に公表された論文をMEDLINE、Embase、PsycINFO、Web of Science、Global Healthよりシステマティックに検索した。特別な介入を行わなかった10~24歳の若者を対象に、ベースラインおよびフォローアップ1年後の抑うつ症状および不安症状を評価した査読済みの英語論文を対象とした。3人のレビュアーにより関連データを抽出した。メタ解析を実施し、1年後の回復率を算出した。エビデンスの質は、Newcastle-Ottawa Scaleを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングされた参考論文1万7,250件のうち5件(1,011例)をメタ解析に含めた。・1年間の回復率は、47~64%の範囲であった。・メタ解析では、全体をプールした若者の回復率は0.54(0.45~0.63)であった。・今後の研究において、回復の予測因子や回復に寄与するリソース、活動を調査する必要がある。

387.

統合失調症に対する長時間作用型注射剤抗精神病薬の実際の有効性

 フランス・エクス=マルセイユ大学のLaurent Boyer氏らは、統合失調症に対する長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の実臨床における有効性を評価するため、ミラーイメージ研究を実施した。その結果、LAI抗精神病薬は、経口抗精神病薬よりも投与頻度が少ないため、コンプライアンス向上や再発リスク軽減が期待できるため、コンプライアンス不良患者では女性や35歳以上の患者であってもLAI抗精神病薬治療が推奨されることを報告した。また、アリピプラゾールLAIは、コンプライアンス良好患者にとって有用な薬剤である可能性があり、さらなる調査が求められるとしている。Molecular Psychiatry誌オンライン版2023年7月21日号の報告。 2015年1月~2016年12月にLAI抗精神病薬を開始した統合失調症患者を、フランス国民健康データシステム(SNDS)に登録した。LAI抗精神病薬開始1年前(経口抗精神病薬治療中)と開始1年後、精神科医療リソース利用指標について評価し、標準化平均差(SMD>0.1で臨床的有意とみなす)を算出した。LAI抗精神病薬の有効性は、全体および年齢、性別、経口抗精神病薬に対するコンプライアンス(年間80%以上の抗精神病薬服用を良好と定義)で層別化し、分析した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、1万2,373例。・LAI抗精神病薬の使用は、男性(58.1%)、若年(18~34歳:42.0%)、コンプライアンス不良(63.7%)患者でより多かった。・LAI抗精神病薬治療により、コンプライアンス不良患者の精神科入院の回数(SMD:-0.19)、期間(SMD:-0.26)、精神科救急受診(SMD:-0.12)の減少効果が確認されたが、コンプライアンス良好患者では、その効果は認められなかった。・第1世代LAI、パリペリドンLAI、アリピプラゾールLAIによる治療により、精神科入院(各々、SMD=-0.20、-0.24、-0.21)および精神科救急受診(各々、SMD=-0.15、-0.13、-0.15)を減少させました。・年齢、性別による有意な差は認められなかった。・コンプライアンス良好患者では、アリピプラゾールLAIのみが、精神科入院数の減少に寄与していた(SMD=-0.13)。・リスペリドンLAI(SMD=0.15)、パリペリドンLAI(SMD=0.18)では、入院期間の延長が認められた。

388.

鼻腔内インスリン投与で認知機能改善?

 鼻腔内へのインスリン投与が、アルツハイマー病(AD)や軽度認知障害(MCI)患者の認知機能に対して保護的に働くことが、メタ解析の結果として示された。一方、認知機能低下の見られない対象では、有意な影響は認められないという。トロント大学(カナダ)のSally Wu氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に6月28日掲載された。 鼻腔内へのインスリン投与(intranasal Insulin;INI)は、末梢でのインスリン作用発現に伴う副作用リスクを抑制しつつ、脳内のインスリンシグナル伝達を改善し、認知機能に対して保護的に働くと考えられている。これまでに、INIによる認知機能への影響を調べた研究結果が複数報告されてきている。ただしそれらの結果に一貫性が見られない。Wu氏らは、このトピックに関するシステマティックレビューとメタ解析により、この点を検討した。 MEDLINE、EMBASE、PsycINFO、およびCochrane CENTRALに2000年から2021年7月までに収載された論文を対象として、認知機能に対するINIの影響を研究した無作為化比較試験の報告を検索。2,654件の報告がヒットし、重複削除、タイトルと要約に基づくスクリーニングにより52件に絞り込み、これを全文精査の対象とした。最終的に32件が包括基準を満たした。 それら32件の研究は2004~2021年に発表されており、介入対象として研究ごとに、ADやMCIのほか、健康成人、大うつ病性障害、双極性障害、統合失調症、肥満、2型糖尿病などが設定されていた。INIの投与量は中央値40IU(範囲40~160)であり、研究参加者の平均年齢は53.4歳だった。10件の研究は単回投与による急性効果を検討し、他の研究は慢性効果を検討していた。慢性効果を検討していた研究の介入期間は中央値8週(範囲1~52)だった。 ADやMCIの患者を対象とした研究を統合した解析からは、INI介入による認知機能への有意な保護的作用が確認された〔標準化平均差(SMD)=0.22(95%信頼区間0.05~0.38)〕。一方、その他の集団を対象とした研究の解析からは、INI介入による認知機能への有意な影響は確認されなかった。例えば健康な集団ではSMD=0.02(同-0.05~0.09)、メンタルヘルス疾患患者ではSMD=0.07(-0.09~0.24)、代謝性疾患患者ではSMD=0.18(-0.11~0.48)であり、いずれも非有意だった。 著者らは、「このシステマティックレビューとメタ解析の結果は、認知機能が低下している対象ではINIによる介入が有効である可能性を示唆している。INIはまだ新しい研究分野であるため、対象者の生活全体の質を向上させるという最終的な目標に向けて、今後の研究ではさまざまな背景を持つ患者集団での有用性を探り、治療反応の不均一性を理解する必要がある」と述べている。 なお、数人の著者がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

389.

医療者のメンタルヘルス、1日20分の在宅運動で改善

 COVID-19のパンデミック中、医療従事者のメンタルヘルスは著しく低下したことが報告されている。医療従事者を対象に、アプリを使った在宅運動プログラムの介入を行い、メンタルヘルスが改善するかどうかを見た試験の結果が、JAMA Psychiatry誌オンライン版2023年8月9日号に掲載された。 ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)のVincent Gosselin Boucher氏らの研究チームは2022年4月6日~7月4日に同エリアの医療機関において参加者を募集した。参加者は指定のアプリを使い、自重インターバルトレーニング、ヨガ、バー運動など、在宅で行う20分/日、週4回の運動を、12週間継続するように求められた。運動に対するアドヒアランスはアプリ利用時間から測定した。 主要アウトカムは、抑うつ症状の群間差であり、10項目のCenter for Epidemiological Studies Depression Scale(CESD)を用いて測定された。副次的アウトカムは、燃え尽き症候群(シニシズム、疲労感、職業的効力のサブセットで測定)、欠勤率であった。2週間ごとにFeingold効果量(ES)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・登録された288例は平均年齢41.0(SD:10.8)歳、246例(85.4%)が女性で、運動群(n=142)と運動を行わない対照群(n=146)に割り付けられた。・抑うつ症状に対する運動効果は、4週目までは有意ではあったが非常に小さかった(ES:-0.19、95%信頼区間[CI]:-0.37~0.00)が、試験終了時の12週目には有意な小~中程度の治療効果(-0.41、95%CI:-0.69~-0.13)が示された。・燃え尽き症候群の2つのサブセットであるシニシズム(12週目ES:-0.33、95%CI:-0.53~-0.13)と疲労感(-0.39、95%CI:-0.64~-0.14)、欠勤率(r=0.15、95%CI:0.03~0.26)については、有意かつ一貫した効果が示された。・週80分の運動のアドヒアランスは、2週目の78例(54.9%)から12週目には33例(23.2%)まで減少した。 研究者らは「運動は医療従事者の抑うつ症状を軽減したが、試験終了まで継続できた人は少なかった。医療従事者のメンタルヘルス改善を維持するために、運動プログラム継続を最適化することは重要な課題である」としている。

390.

第160回 医療機関の倒産が急増、とくに診療所に深刻な影響

<先週の動き>1.医療機関の倒産が急増、とくに診療所に深刻な影響2.来年の診療報酬改定に向け、高齢者の救急搬送問題などの議論開始/厚労省3.厳しい経営環境の中、大学病院で求められる働き方改革/文科省4.神戸の医師自殺、労災認定。遺族と病院、労働時間を巡り対立/兵庫5.電子カルテ情報の全国共有化へ、令和7年に法案提出を計画/政府6.YouTube、新型コロナワクチンについて誤った医療情報のコンテンツを削除へ1.医療機関の倒産が急増、とくに診療所に深刻な影響新型コロナウイルス感染症禍以降、医療機関の倒産が増加の一途を辿っていることが今回明らかになった。とくに診療所は競争が激化しており、今年前半は過去10年間で最速のペースでの倒産があり、今年は10年間で最多の倒産件数となる見込みである。帝国データバンクの調査によれば、診療所の経営者の平均年齢は68歳前後で、1代限りで廃業を考える経営者も増えており、地域によっては社会問題へと発展する可能性もある。コロナ禍で、政府の各種の支援策や返済のリスケジュールなどにより、倒産は一時的に減少したものの、2022年には早くも増加の傾向に転じている。とくに2023年は、医療法人社団心和会の倒産が注目され、その負債総額は132億円と過去3番目の大きさとなった。一方、医療用医薬品の販売会社の支店長は、「医療の多角化についていけない診療所が増えている」と指摘。また、「ゼロゼロ融資の返済が始まる中、患者が来ない医療機関には注意が必要」との声も上がっており、債権管理が今後の重要な焦点となる。これらの動向を受け、医療機関、とくに診療所の経営環境は今後も厳しさを増していくことが予想されている。参考1)2022年度の「診療所」倒産、過去最多の22件「コロナ関連」は減少、後継者難や不正発覚が増加(東京商工リサーチ)2)医療機関の倒産が再び増加 診療所、高齢化で厳しさ増す(日経産業新聞)2.来年の診療報酬改定に向け、高齢者の救急搬送問題などの議論開始/厚労省厚生労働省は、8月10日に中央社会保険審議会の「入院・外来医療等の調査・評価分科会」を開催、急性期入院医療について具体的な検討を開始した。この中で、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度について、2022年度の診療報酬改定で「心電図モニタ管理」が削除されたため、多くの病院での看護必要度の低下に対して、「注射薬剤3種類」を増加させることで影響は相殺していた。厚労省はこのような病院側の対応について、看護必要度の適正化を求めている。また、高齢者の誤嚥性肺炎や尿路感染症の患者は、医療資源投入量が高くないにも関わらず、救急搬送後の入院後5日間は、看護必要度のA項目2点が追加されるため、入院単価の高い急性期一般1の病床へ高齢者の救急搬送を促進している可能性を指摘されるなど、今後、さらに議論を重ね、看護必要度について改善案についての検討が進むとみられる。参考1)令和5年度 第5回 入院・外来医療等の調査・評価分科会(厚労省)2)看護必要度が「高齢の誤嚥性肺炎等患者の急性期一般1への救急搬送」を促している可能性-入院・外来医療分科会(Gem Med)3)看護必要度また見直しへ、24年度に入院の機能分化促進(CB news)3.厳しい経営環境の中、大学病院で求められる働き方改革/文科省文部科学省は、8月16日に「今後の医学教育の在り方に関する検討会」を開催し、大学病院に対して、大学病院の運営や教育・研究・診療、財務などの面での改革プランの策定を促進するための「議論の整理」を提案した。背景には、大学病院が増収減益という厳しい経営状況に加え、医師の働き方改革を進めつつ、教育・研究機能の維持が必要とされており厳しい環境にあるため。この「議論の整理」には、大学病院の役割や機能、基本的な考え方、運営の方針などが含まれており、大学病院の指導教官らの教育・研究の時間が減少し、臨床に割かれる時間が増大している現状を反映している。これに対して、国は大学病院の改革を支援する方針を示しており、とくに経営状況の改善や教育・研究機能の強化を求めている。座長の永井 良三氏は、現行の大学設置基準が現代のニーズに合わせて更新されるべきであり、大学病院の臨床機能の強化と、そのための国の支援が必要だと指摘した。参考1)大学病院の9割「研究成果が減少」と危惧…「医師の働き方改革」で残業規制へ(読売新聞)2)研究時間確保へ、文科省が「大学病院改革」 働き方改革に向け(Medifax)3)大学病院改革、「診療規模」「運営」の再検討を 文科省検討(同)4.神戸の医師自殺、労災認定。遺族と病院、労働時間を巡り対立/兵庫神戸市東灘区の甲南医療センターに勤務していた26歳の男性医師が2022年6月に自殺した事件について、西宮労働基準監督署は、長時間労働によるうつ病が自殺の主な原因であると判断し、「労災」と認定した。医師の遺族は8月18日に記者会見を開き、この認定を明らかにした。遺族によると、この医師は亡くなる直前まで100日間連続で勤務しており、月の残業時間は200時間を超えていた。遺族は「病院側は具体的な再発防止策を取っておらず、人の命を軽視している」と病院の対応を批判しており、遺族は昨年12月に病院の運営法人を労働基準法違反の疑いで西宮労基署に刑事告訴している。今後は、損害賠償を求める訴訟を起こすことも検討している。病院側は、労働時間に関する主張を否定し、過重労働の認識はないとの立場を示している。遺族と病院側では、実際の労働時間に関して見解が異なっており、病院側が記者会見で述べた「知識や技能を習得する自己研鑽の時間が含まれており、すべてが労働時間ではない」とする主張に対して、批判が集まっている。参考1)神戸 勤務医自殺で労災認定 遺族会見“病院は労務管理せず”(NHK)2)神戸の26歳専攻医自殺、労災認定 残業月207時間(毎日新聞)3)甲南医療センター過労自殺 遺族が会見「医師を守れない病院に患者を守れるのか」(神戸新聞)5.電子カルテ情報の全国共有化へ、令和7年に法案提出を計画/政府政府は、全国の医療機関や薬局で電子カルテの情報を共有する仕組みを進める方針を強化しているが、今後の計画が明らかになってきた。6月に開催された「医療DX推進本部」において示された医療DXの推進に関する工程表に基づいて、岸田総理大臣は医療分野のデジタル化の取り組みを進行するよう関係閣僚に指示しており、マイナンバーカードと健康保険証の一体化を加速し、来年秋には現行の保険証を廃止、これを基盤として、電子カルテ情報の全国共有化を目指す方針が決定されている。政府は、令和7年の通常国会に関連する法案を提出する方針を固めており、「マイナ保険証」を通じて、患者の過去の診療記録を全国の病院や診療所で閲覧可能にし、データに基づく適切な医療提供を促進する狙いがある。電子カルテ共有のためのネットワークの構築は、厚生労働省所管の「社会保険診療報酬支払基金」が主導して進める方針となっており、今後もさらに国民に対してマイナンバーカードの普及を働きかけ、より効率的・効果的な医療サービスの提供を行っていくことを目指していく。参考1)医療DXの推進に関する工程表(内閣官房)2)電子カルテ活用へ、政府が令和7年に法案提出方針 マイナ保険証通じ全国共有(産経新聞)3)医療分野デジタル化 “電子カルテの共有 来年度中に”首相指示(NHK)6.YouTube、新型コロナワクチンについて誤った医療情報のコンテンツを削除へ/GoogleGoogleの動画配信サービスYouTubeが、誤った医療情報を含むコンテンツに対する新しい方針を発表した。これにより、「予防」、「治療」、「事実の否定」の3カテゴリーに分けてガイドラインが整理される。とくに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の存在を否定したり、確実な予防・治療法があるとの不正確な情報を含むコンテンツは許可されず、即時に削除される。また、がん治療に関する非科学的な主張、たとえば「ニンニクやビタミンCががんを治療する」といったコンテンツも削除対象となる。さらにYouTubeは、信頼性のある医療情報提供のため、メイヨー・クリニックとの協力を発表。高品質な医療情報を提供する映像コンテンツの共有が進められる。YouTubeは、医療誤報ポリシーの透明性を高め、コンテンツ制作者と視聴者の理解を深めることを目指しているとコメントしている。参考1)YouTube、「新型コロナは存在しない」など誤った医療情報を含むコンテンツを削除へ(ケータイ Watch)2)YouTubeが「有害あるいは効果がないと証明されたがん治療法」を宣伝するコンテンツを削除すると発表(GIGAZINE)

391.

8月21日 治療アプリの日【今日は何の日?】

【8月21日 治療アプリの日】〔由来〕株式会社CureAppが製造・販売する「CureApp SC ニコチン依存症治療アプリ」が厚生労働省から薬事承認を取得した2020年8月21日を記念して制定。治療アプリは、従来の医薬品やハードウェア医療機器では治療効果が不十分だった病気を治すためのもので、アプリを第3の治療法として多くに人に知ってもらい、活用してもらうことが目的。関連コンテンツ禁煙を助ける道具を上手に使おう【患者説明用スライド】ニコチン依存症治療用アプリが人間味を帯びたら医者いらず?【バズった金曜日】世界初「NASH治療用アプリ」の効果を臨床試験で確認/東大世界初の高血圧治療補助アプリが保険適用/CureAppうつ病治療アプリに対する医師や患者の期待

392.

うつ病に対する運動療法が有効な日本人の性格特性

 産業医科大学の池ノ内 篤子氏らは、健康な日本人労働者における抑うつ症状や社会適応への性格特性の影響、運動療法前後の抑うつ症状や社会適応の変化、うつ病予防を目的とした運動療法の完遂率に対する介入前の性格特性の影響を調査した。その結果、抑うつ症状と社会適応は、運動療法前後の性格特性や同療法の完遂率と関連していることが明らかとなった。また、男性において運動療法前の誠実性は、運動療法の完遂率の高さを予測する因子であることが報告された。Frontiers in Psychology誌2023年6月21日号の報告。 対象は健康な日本人労働者250人。運動療法として8週間のウォーキングプログラムを実施した。情報が不十分または不完全であった参加者35人を除く215人のデータを分析対象に含めた。運動療法前後の性格特性の評価には5因子(神経症傾向、外向性、開放性、調和性、誠実性)からなる人格検査NEO-FFI、抑うつ症状の評価にはうつ性自己評価尺度日本語版(SDS-J)、社会適応の評価には自記式社会適応度評価尺度日本語版(SASS-J)をそれぞれ用いた。 主な結果は以下のとおり。・SDS-Jスコアは、運動療法前の神経症傾向と相関がみられ、外向性、調和性、誠実性と負の相関が認められた。・SDS-Jスコアは、女性において開放性と負の相関が認められたが、男性では認められなかった。・SASS-Jスコアは、外向性、開放性、調和性、誠実性と関連しており、神経症傾向と負の相関が認められた。・運動療法前後で、うつ病レベルに有意な変化は認められなかったが、男性では社会適応の有意な上昇が認められた。・運動療法前のSDS-JおよびSASS-Jスコアと、運動療法の完遂率との間に関連は認められなかった。・女性では、運動療法の完遂率と運動療法後のSDS-JまたはSASS-Jスコアとの間に負の相関が認められた。・運動療法後のSDS-Jスコアは、男性において神経症傾向と相関し、女性では外向性と負の相関が認められた。・男性では、運動療法後のSASS-Jスコアと神経症傾向に負の相関がみられ、外向性、開放性との相関が認められた。・対照的に女性では、運動療法後のSASS-Jスコアは、開放性、調和性との相関が認められた。・男性では、運動療法の完遂率と誠実性との相関が認められたが、女性では運動療法の完遂率と関連する性格特性は見当たらなかった。

393.

統合失調症薬物治療ガイドラインの順守と治療成績との関係~EGUIDEプロジェクト

 臨床医が統合失調症薬物治療ガイドラインの推奨事項を順守することは、患者の良好なアウトカムにとって重要である。しかし、ガイドラインの順守が患者の治療アウトカムと関連しているかどうかは明らかではない。東京慈恵会医科大学の小高 文聰氏らは、統合失調症薬物療法ガイドラインへの適合度を可視化するツールindividual fitness score(IFS)計算式を開発し、統合失調症患者におけるIFS値と精神症状との関連を調査した。その結果、IFS計算式で評価した統合失調症薬物治療ガイドラインの推奨事項を順守する取り組みは、統合失調症患者の臨床アウトカム改善につながる可能性が示唆された。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2023年6月29日号の報告。 治療抵抗性統合失調症(TRS)患者47例と非TRS患者353例を対象に、IFS計算式を用いて、現在の処方がガイドラインの推奨事項に準拠しているかを評価した。IFS値と陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の合計スコアおよび5つの下位尺度のスコア(陽性症状、陰性症状、思考解体/認知、敵意/興奮、不安/抑うつ)との関連を調査した。さらに、一部の患者(77例)については、2年にわたる長期的なIFS値と精神症状それぞれの変化の関連も調査した。 主な結果は以下のとおり。・全体の統合失調症患者(400例)において、IFS値とPANSS合計スコアとの間に有意な負の相関が認められた(β=-0.18、p=0.000098)。・非TRS患者(Spearman's rho=-0.15、p=0.0044)およびTRS患者(rho=-0.37、p=0.011)のいずれにおいても、IFS値とPANSS合計スコアとの有意な負の相関が確認された。・また、非TRS患者およびTRS患者のいずれにおいても、IFS値と陰性症状、抑うつスコアなどのいくつかの因子との間に、負の相関が確認された(各々、p<0.05)。・IFS値の変化は、PANSS合計スコアおよび陽性症状、抑うつスコアの変化と負の相関が認められた(p<0.05)。

394.

双極I型障害のうつ再発予防の抗うつ薬、52週vs.8週/NEJM

 うつ病エピソードの寛解から間もない双極I型障害患者に、エスシタロプラムまたはbupropionの徐放性製剤(bupropion XL)による抗うつ薬の補助的投与を52週間継続しても、8週間の投与と比べて、あらゆる気分エピソードの再発予防について有意な有益性は得られなかった。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のLakshmi N. Yatham氏らが、多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。双極I型障害患者の急性うつ病の治療には抗うつ薬が用いられるが、寛解後の維持療法としての抗うつ薬の効果については十分に検討されていなかった。NEJM誌2023年8月3日号掲載の報告。エスシタロプラムまたはbupropion XLの補助的投与の継続戦略を評価 本試験では、カナダ、韓国、インドで、うつ病エピソードから寛解して間もない双極I型障害患者を対象に、気分安定薬または第2世代抗精神病薬(あるいは両薬)に加え、エスシタロプラムまたはbupropion XLを補助的に投与する継続戦略が評価された。 研究グループは被験者を、寛解後52週間抗うつ薬治療を継続する群(52週群)または寛解後抗うつ薬の使用を漸減して8週時点でプラセボに切り替える群(8週群)に、1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。 主要アウトカムはtime-to-event解析で評価したあらゆる気分エピソードで、軽躁(YMRSスコア16以上)、中等度うつ病(MADRSスコア20以上)、躁/うつ病(CGI-S-BDスコア4以上)、気分症状での入院、出現した気分症状に対する追加の薬物療法、MADRS自殺項目スコア4以上(スコア範囲:0~6、高スコアほど自殺リスクが高いことを示す)、自殺企図または自殺既遂で定義した。主要アウトカムイベントは、CGI-BD、YMRS、MADRSの各スコアと試験施設の研究者の評価に基づき、躁/軽躁、うつ病、混合型(躁/うつ)に分類された。 主な副次アウトカムは、躁/軽躁あるいはうつ病エピソードまでの期間などであった。 本試験は、2019年のCOVID-19パンデミックで被験者募集が低調となる中、研究費が使用期限を迎え、募集人員に達する前に打ち切りとなった。あらゆる気分エピソード、両群で有意差なし 2009~19年に計238例が適格性についての評価を受け、209例が非盲検治療フェーズに登録され、うつ病エピソードの治療としてエスシタロプラムまたはbupropion XLの補助的投与を受けた。このうちうつ病が寛解した150例と、追加で登録された27例の計177例が二重盲検フェーズに登録され、52週群に90例が、8週群に87例が割り付けられた。 52週時点で主要アウトカムイベントを有したのは、52週群28例(31%)、8週群40例(46%)で、52週群の8週群に対するあらゆる気分エピソードまでの期間に関するハザード比(HR)は0.68(95%信頼区間[CI]:0.43~1.10、log-rank検定のp=0.12)であった。 躁/軽躁のイベントは8週群の5例(6%)に対して52週群では11例(12%)が有し(HR:2.28、95%CI:0.86~6.08)、うつ病の再発は8週群35例(40%)に対して52週群は15例(17%)であった(0.43、0.25~0.75)。 有害事象の発現は、両群で同程度であった。 なお、著者は、被験者の募集が計画された規模となる前に終了したことや、被験者の大半がインドの施設で募集され、文化的・人種的および医療ケアシステムの違いから一般化可能性が低いことなどを挙げ、得られた所見は限定的だと述べている。

395.

統合失調症におけるブレクスピプラゾール切り替えが成功しやすい患者の特徴

 高用量の抗精神病薬で治療中の統合失調症患者に対するドパミンパーシャルアゴニスト作用を有するアリピプラゾールへの切り替えは、とくに急速な切り替えを行う場合、切り替え失敗や精神症状の悪化リスクが高まる可能性があると、いくつかの研究において報告されている。このような切り替え失敗には、ドパミン過感受性状態が関連していると推測される。アリピプラゾールと同様にドパミンパーシャルアゴニスト作用を有するブレクスピプラゾールへの切り替えのリスクについては、これまで報告されていない。 千葉大学の山崎 史暁氏らは、ブレクスピプラゾールへの切り替えの成功または失敗と関連する因子を特定するため、日本人統合失調症患者106例をレトロスペクティブに分析した。その結果、統合失調症患者における切り替えは、アリピプラゾールと比較し、ブレクスピプラゾールがより安全である可能性が示唆された。ただし、著者らは、治療抵抗性統合失調症患者では、失敗リスクが高まるため、難治性の患者にブレクスピプラゾール治療を開始する際には十分なモニタリングが必要である、としている。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2023年7月3日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・ドパミン過感受性の統合失調症患者44例とそうでない患者62例を比較したところ、6週間後の切り替え失敗に有意差は認められなかった。・切り替えが成功した患者80例と失敗した患者26例を比較したところ、治療抵抗性統合失調症患者では失敗する可能性が有意に高かった。・ロジスティック回帰分析では、過去にアリピプラゾールへの切り替えに失敗した患者では、ブレクスピプラゾールへの切り替えが成功する可能性が高かった。・ブレクスピプラゾールへの切り替えに成功した患者の2年間のフォローアップで、一時的ではあるが、機能の全体的評価尺度(GAF)および臨床全般印象度の重症度(CGI-S)スコアのいくつかの改善がみられた。

396.

日本人統合失調症患者の洞察力と臨床因子の長期的特徴

 統合失調症は、洞察力の欠如を来す精神疾患である。洞察力は、時間経過とともに変化するが、統合失調症患者の洞察力に関する長期的な研究はほとんどない。さらに、洞察力と知能との関係を調査したこれまでの研究の多くは、full-scale IQを測定しておらず、認知機能の詳細と洞察力との関係を調べることが難しかった。跡見学園女子大学の酒井 佳永氏らは、統合失調症患者の2つの時点での洞察力を評価し、認知機能との関連を調査した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年6月28日号の報告。 対象は、日本人統合失調症患者163例。2つの時点での洞察力を評価し、洞察力の変化パターンおよび洞察力と臨床変数との関連を調査した。さらに、認知機能と洞察力との関係を調査した。 主な結果は以下のとおり。・経時的な洞察力の変化に基づき対象患者を、不良群(洞察力が低レベルで安定)、良好群(洞察力が良好)、不安定群(洞察力が時間経過とともに変化)の3つに分類した。・不良群は、良好群および不安定群と比較し、general intelligenceスコアが低かった。・認知機能に関しては、言語理解は、ベースラインおよびフォローアップ時の洞察力レベルと関連が認められた。・精神症状に関しては、不良群は、良好群および不安定群と比較し、より重度であり、とくに陽性症状が顕著であった。 著者らは、この縦断的研究から「洞察力の変化に基づき患者を分類したところ、洞察力が低い患者では、認知機能、とくに言語理解が低下しており、陽性症状がより重度であることが明らかとなった」と述べている。

397.

うつ病と炎症性腸疾患との関連~メタ解析

 うつ病または抑うつ症状の既往歴のある患者は、炎症性腸疾患(IBD)リスクが高いといわれている。イタリア・Humanitas UniversityのDaniele Piovani氏らは、うつ病または抑うつ症状とその後の新規IBD(クローン病、潰瘍性大腸炎)発症との関連を調査するため、縦断的研究を実施した。その結果、うつ病歴を有する患者は、たとえ診断から数年たっていたとしても、軽度から中程度のIBDリスクが上昇する可能性が示唆された。Inflammatory Bowel Diseases誌オンライン版2023年6月10日号の報告。 うつ病または抑うつ症状とその後の新規IBD発症との関連を調査した研究を、MEDLINE/PubMed、Embase、Scopusよりシステマティックに検索した。検証されて評価尺度によりうつ病または抑うつ症状の確定診断に至った研究も対象に含めた。診断バイアスと逆因果関係に関する懸念を制御し、うつ病または抑うつ症状とアウトカムとの関係を評価するため、報告された最長タイムラグに対応した推定値を算出した。独立した2人の研究者が、データを抽出し、各研究のバイアスリスクを評価した。最大限に調整された相対リスク(RR)推定値は、ランダム効果モデルおよび固定効果モデルを用いて、算出した。 主な結果は以下のとおり。・5,307件の研究のうち、13件(900万例、コホート研究:8件、ネステッドケースコントロール研究:5件)が適格基準を満たした。・うつ病は、クローン病(RRランダム:1.17、95%信頼区間[CI]:1.02~1.34、7研究、1万7,676例)および潰瘍性大腸炎(RRランダム:1.21、95%CI:1.10~1.33、6研究、2万8,165例)との有意な関連が確認された。・プライマリ研究では、関連する交絡因子が考慮された。・うつ病または抑うつ症状からIBD発症までの期間は、平均すると数年を要した。・重要な異質性、出版バイアスは見当たらなかった。・サマリ推定値は、バイアスリスクが低く、結果は多重感度分析で確認した。・時間経過による関連性の低下については、明確な結論に至らなかった。・これらの因果関係を明らかにするためには、さらなる疫学やメカニズムの研究が求められる。

398.

映画「スプリット」(続編)【なんで記憶喪失になっても一般常識は忘れないの?なんで多重人格になっても人格が入り交じることはないの?(記憶機能)】Part3

なんで多重人格になっても人格が入り交じることはないの?映画の中では、ケビンの中にある複数の人格がお互いを認識し合ってケンカしているように描かれていました。さすがに、これはこの映画の演出であり、実際の臨床ではお目にかかりません。ちなみに、複数の人格が頭の中でケンカし合うような症状は、多重人格とはまったく別の病態になります。それは、統合失調症の二重心という病態です。多重人格(解離性同一症)では、人格が交代することはあっても、共存することはないです。その訳は、それぞれの人格がいるように見えるのはそれまでのエピソード記憶がバラバラのままであるだけでつながらない(連想できない)からと説明することができます。とくに幼少期の虐待などの重度のストレスによって、記憶喪失(解離性健忘)が繰り返されると、その複数のエピソード記憶が脳内のネットワークとして潜在(ローカルスリープ)することになります。この詳細については、関連記事3をご覧ください。そして、その眠っていたエピソード記憶はその後、関連する状況(刺激)によって蘇らず、ランダムに代わる代わるに蘇ってくるようになります。この点で、多重人格の表記は、厳密には「エピソード記憶交代再生」とした方が誤解を招かないでしょう。つまり、多重人格の本質は、実は「人格」そのものではなく、エピソード記憶が交代的に再生することです。逆に、エピソード記憶がつながってすべて再生できるようになれば、これは、1つのつながったエピソード記憶(人格)として自分を認識できるようになったと捉えることができます。この点で、それぞれの人格が共存するようになったとは捉えることができません。実は、私たちは、思い出せる限りの一つひとつのエピソード記憶をつなぎ合わせて人生と呼び、1つの人格として社会生活を送っています。これも、個人主義を重んじる近代(産業革命)以降の考え方です。それまでは多重人格が起こったとしても、先ほどの記憶喪失と同じように、その出てきた「人格」(エピソード記憶)で周りに合わせていただけでしょう。その時代や文化によっては、「シャーマン」や「憑き物」として社会に溶け込んでいたでしょう。つまり、多重人格も1つの適応戦略であったと考えることができます。そもそも、人格が1つであるというのは、その考え方が現代社会にフィットしているだけで、私たちの思い込みかもしれないです。そもそも、私たちの心(脳)が原始の時代に形作られたと考えると、人格は1つである必要がないからです。なお、エピソード記憶の起源が約20万年前であることから、エピソード記憶に関連した障害である記憶喪失や多重人格の起源も、同じく約20万年前であると推定することができます。<< 前のページへ■関連記事そして父になる(続編・その2)【子育ては厳しく? それとも自由に? その正解は?(科学的根拠に基づく教育(EBE))】Part 1パプリカ【夢と精神症状の違いは?】スプリット【なぜ記憶がないの?なぜ別人格がいるの?どうすれば良いの?(解離性障害)】

399.

日本における統合失調症うつ病患者に対する向精神薬処方実態

 日本の精神疾患の治療では、メインとなる治療薬(たとえば、統合失調症に対する抗精神病薬、うつ病に対する抗うつ薬)に加えて向精神薬の多剤併用が一般的に行われている。北海道大学の橋本 直樹氏らは、施設間での差異を減少させながら、日本における向精神薬の処方を国際基準と一致させることを目的に、精神疾患患者の入院時および退院時の処方実態の比較を行った。BMC Psychiatry誌2023年6月28日号の報告。 2016~20年の入院時および退院時における処方箋データを収集した。データに基づき患者を次の4群に分類した。A群(入院時および退院時:主薬単剤療法)、B群(入院時:主薬単剤療法、退院時:多剤併用療法)、C群(入院時および退院時:多剤併用療法)、D群(入院時:多剤併用療法、退院時:主薬単剤療法)。向精神薬の投与量および数を4群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症うつ病のいずれにおいても、入院時に主薬単剤療法を行っていた患者は、退院時に主薬単剤療法を行っている可能性が高く、その逆も同様であった。・統合失調症では、A群よりもB群において、多剤併用が行われることが多かった。・処方がまったく変更されなかった患者は、10%以上であった。 結果を踏まえて著者らは、「ガイドラインに準拠した治療を確実に行うためには、多剤併用療法を減らしていくことが重要となる」とし、日本全国の270以上の精神科医療施設が参加する「EGUIDEプロジェクト(精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究)」の講義後、主薬による単剤療法率が上昇することが期待される、とまとめている。

400.

日本におけるアルコール摂取、喫煙と認知症リスク~村上健康コホート研究

 飲酒や喫煙は、生活習慣病リスクに影響するが、認知症への影響については依然としてよくわかっていない。新潟大学のShugo Kawakami氏らは、日本人中高年におけるアルコール摂取や喫煙と認知症リスクとの長期的な関連性を調査するため本研究を実施した。その結果、中程度までのアルコール摂取は認知症リスクが低下し、喫煙は用量依存的に認知症リスク増加との関連が認められた。また、多量のアルコール摂取と喫煙との間に認知症リスクとの相互作用が確認された。Maturitas誌オンライン版2023年6月14日号の報告。 研究デザインは、8年間のフォローアップによるコホート研究。参加者は、40~74歳の地域在住の日本人1万3,802人。2011~13年に自己記入式アンケートを含むベースライン調査を実施した。アウトカムは、介護保険データベースから収集した認知症発症、予測因子は、アルコール摂取量および喫煙とした。共変量は、人口統計、ライフスタイル要因、BMI、一般的な健康状態、脳卒中歴、糖尿病歴、うつ病歴とした。 主な結果は以下のとおり。・参加者の平均年齢は、59.0歳。・1週間当たりのエタノール量が1~149g、150~299g、300~449gの群は、対照群と比較し、調整ハザード比(HR)が有意に低く、有意な線形関連性は認められなかった。・飲酒歴、健康状態が不良、病歴を有する人を除外した場合、HRは1に向かい増加が認められた(各々、HR:0.80、0.66、0.82)。・喫煙レベルが高いほど、用量依存的にHRが高く(調整p for trend=0.0105)、1日当たり20本以上の喫煙群では、調整HRが有意に高かった(HR:1.80)。・多量飲酒者(1週間当たりのエタノール量:449g以上)において、喫煙習慣のある人は認知症リスクが高かったが(p for interaction=0.0046)、喫煙習慣のない人では影響が認められなかった。

検索結果 合計:2849件 表示位置:381 - 400