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統合失調症入院患者に対する長時間作用型注射剤や新規抗精神病薬治療が臨床アウトカムに及ぼす影響

 統合失調症治療に従事している医療関係者にとって、抗精神病薬のアドヒアランスや治療の中断は、依然として大きな課題となっている。米国・Johnson & Johnson Innovative MedicineのCharmi Patel氏らは、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬治療を開始、または入院後に新規経口抗精神病薬に切り替えた統合失調症患者を対象に、臨床的質の尺度を用いて評価を行った。Drugs - Real World Outcomes誌オンライン版2023年12月21日号の報告。 本研究は、PINC AITM Healthcare Databaseを用いたレトロスペクティブコホート研究であり、統合失調症患者を対象とした2つのコホートから、入院後の臨床的質と治療継続のエンドポイントの評価を行った。対象患者は、all-payer databaseを用いて、米国の病院を拠点とするリアルワールドデータベースより抽出した。2017年4月~2020年4月、初回入院時にLAI抗精神病薬を開始した統合失調症患者7,292例または新規経口抗精神病薬に切り替えた統合失調症患者3万1,956例を分析対象に含めた。傾向スコアの重みづけは、2つのコホート間の患者、病院、臨床的特性の違いにより対応した。 主な結果は以下のとおり。・LAI抗精神病薬による治療は、新規経口抗精神病薬への切り替えと比較し、以下の点で有意な差が認められた(いずれも、p<0.001)。 ●30日間の抗精神病薬治療継続期間の延長 ●30日間の外来フォローアップ治療率の増加 ●治療中止までの平均期間の延長 ●治療中止リスクの低下・30日間の抗精神病薬治療継続率は、患者、臨床、病院の特徴で調整した後でも、LAI抗精神病薬治療患者において、新規経口抗精神病薬治療患者よりも、有意に高かった(調整オッズ比:1.2、95%信頼区間:1.1~1.3、p<0.001)。 著者らは「入院中にLAI抗精神病薬による治療を開始した統合失調症患者は、新規経口抗精神病薬に切り替えた患者よりも、より良い臨床的質と治療継続が得られる可能性がある。本知見は、統合失調症患者の退院後の薬物治療マネジメントの質の向上を目指すうえで、解決策の特定に役立つであろう」とまとめている。

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疲労と日中の過度な眠気、どちらがよりうつ病と関連しているか

 一般集団における疲労と日中の過度な眠気のどちらが、うつ病とより密接に関連しているかを明らかにするため、韓国・蔚山大学校のSoo Hwan Yim氏らは、調査を行った。Sleep & Breathing誌オンライン版2023年12月14日号の報告。 韓国の15の地区で本調査を実施した。日中の過度な眠気、疲労、うつ病の評価には、それぞれエプワース眠気尺度(ESS)、疲労症状の評価尺度(FSS)、こころとからだの質問票(PHQ-9)を用いた。うつ病はPHQ-9スコア10以上と定義し、疲労ありはFSSスコア36以上、日中の過度な眠気ありはESSスコア11以上とした。日中の過度な眠気と疲労との組み合わせにより、4群に分類した。 主な結果は以下のとおり。・調査参加者は2,493人(女性の人数:1,257人)、平均年齢は47.9±0.3歳であった。・うつ病、疲労、日中の過度な眠気の割合は、それぞれ8.4%(210人)、30.8%(767人)、15.3%(382人)であった。・各群におけるうつ病の有病率は、対照群と比較し、以下のとおりであった。【疲労あり、日中の過度な眠気あり】67人、31.9% vs. 7.3%(p<0.001)【疲労あり、日中の過度な眠気なし】71人、33.8% vs. 20.3%(p<0.001)【疲労なし、日中の過度な眠気あり】16人、7.6% vs. 5.8%(p=0.294)【疲労なし、日中の過度な眠気なし】56人、26.7% vs. 66.6%(p<0.001)・共変量で調整した後、疲労なし、日中の過度な眠気なし群を参照としたうつ病のオッズ比は、それぞれ以下のとおりであった。【疲労あり、日中の過度な眠気あり】8.804(95%信頼区間[CI]:5.818~13.132)【疲労あり、日中の過度な眠気なし】3.942(95%CI:2.704~5.747)【疲労なし、日中の過度な眠気あり】2.812(95%CI:1.542~5.131)・2群におけるロジスティック回帰分析では、疲労なし、日中の過度な眠気あり群(参照)と疲労あり、日中の過度な眠気なし群との間におけるうつ病との関連に有意な差は認められなかった(OR:1.399、95%CI:0.760~2.575)。 著者らは「疲労と日中の過度な眠気は、どちらがよりうつ病と密接に関連しているかは不明であったものの、それぞれが独立してうつ病と関連していることが示唆された」としている。

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抑うつ症状と仮面高血圧に関連あり

 大規模な横断研究から、診察室の血圧は正常でも家庭で測定した血圧は高値を示す「仮面高血圧」と抑うつ症状には関連があることが分かったと、東北メディカル・メガバンク機構予防医学・疫学部門の寳澤篤氏らが「Hypertension Research」に10月31日発表した。抑うつ症状は仮面高血圧の危険因子の一つである可能性が示されたとしている。 高血圧の中でも仮面高血圧の患者は、正常血圧の人と比べて心血管疾患リスクが高く、仮面高血圧は心血管疾患の危険因子の一つだとされている。しかし、その診断には家庭血圧測定が必要なため、見過ごされやすく、適切な治療を受けていない可能性が高い。また、これまでの研究で、仮面高血圧のリスク因子として、男性、喫煙習慣、糖尿病、治療中の高血圧、診察室血圧で正常高値などが挙げられている。さらに、不安や抑うつ、ストレスなどの精神状態も血圧に影響を与える可能性が報告されている。そこで、寳澤氏らは今回、抑うつ症状と仮面高血圧の関連を評価する横断研究を実施した。 この研究は、東北メディカル・メガバンク計画地域住民コホート調査から2013~2016年に宮城県で実施したベースライン調査データを用い、研究センターで測定した血圧が正常血圧〔収縮期血圧(SBP)140mmHg未満かつ拡張期血圧(DBP)90mmHg未満〕だった成人男女6,705人(平均年齢55.7±13.7歳、女性74.9%)を対象に行われた。参加者には、自宅で1日2回(朝・晩)血圧と心拍数を2週間測定してもらった。抑うつ症状の評価には、うつ病自己評価尺度(Center for Epidemiologic Studies Depression Scale;CES-D)日本語版を用いた。仮面高血圧は、研究センターでは正常血圧かつ家庭高血圧の基準(SBP 135mmHg以上またはDBP 85mmHg以上)を満たす場合と定義した。 参加者のうち、男性では18.4%(1,685人中310人)、女性では27.7%(5,020人中1,384人)が抑うつ症状を有していた。男女別に、年齢を調整した上で抑うつ症状の有無と血圧の関連を解析したところ、抑うつ症状のあるグループでは、抑うつ症状のないグループに比べて朝および晩の家庭血圧が有意に高かった(男性:朝のSBP 129.0mmHg対127.0mmHg、晩のSBP 126.0mmHg対124.0mmHg、女性:同順に121.0mmHg対119.5mmHg、117.7mmHg対116.2mmHg)。研究センターで測定した血圧には、男女とも抑うつ症状の有無で差は見られなかった。 また、解析の結果、男女ともに、抑うつ症状のあるグループでは、抑うつ症状のないグループと比べて仮面高血圧の有病率が高いことが分かった。多変量解析によるオッズ比は、男性では1.72(95%信頼区間1.26~2.34)、女性では1.30(同1.06~1.59)と、その傾向は男性の方が強かった。 以上から、著者らは「抑うつ症状と仮面高血圧には関連があり、抑うつ症状は仮面高血圧の危険因子の一つである可能性がある。このことから、抑うつ症状がある人では、家庭血圧測定を行うことで仮面高血圧の早期発見、早期治療に有用な可能性が示唆された」と結論。ただ、今回は横断研究だったため、今後、さらなる研究で因果関係を検証していきたいと付言している。

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統合失調症の遺伝的リスクが摂食障害の臨床症状に及ぼす影響

 統合失調症と摂食障害との関連についての報告は増加しており、統合失調症の家族歴が神経性やせ症患者の臨床アウトカムに及ぼす影響が示唆されている。摂食障害患者における統合失調症の遺伝的要因の影響を調査するため、スウェーデン・カロリンスカ研究所のRuyue Zhang氏らは、統合失調症の多遺伝子リスクスコア(PRS)と摂食障害患者の臨床症状(全体的な健康状態および摂食障害関連症状を含む)との関連を評価した。Translational Psychiatry誌2023年11月29日号の報告。 研究には、スウェーデン国立患者レジストリに登録されている1973年以降に生まれた神経性やせ症(Anorexia Nervosa Genetics Initiative[ANGI])患者3,573例、および過食症(Binge Eating Genetics Initiative[BEGIN])患者696例を含む摂食障害の遺伝子関連研究2件のデータを用いた。統合失調症のPRSと摂食障害の臨床的特徴、精神医学的併存疾患、身体的および精神的健康への影響を検討した。 主な結果は以下のとおり。・ANGI患者では、複数の検査値で補正した後、統合失調症のPRSの高さとうつ病リスク(ハザード比[HR]:1.07、95%信頼区間[CI]:1.02~1.13)および物質使用障害リスク(HR:1.14、95%CI:1.03~1.25)の高さとの間に、統計学的に有意な関連が認められた。・また、統合失調症のPRSの高さは、臨床障害評価スコアの低下と関連が認められた(-0.56、95%CI:-1.04~-0.08、p<0.05)。・BEGIN患者では、統合失調症のPRSの高さは、初回摂食障害症状の発現年齢の低さ(-0.35歳、95%CI:-0.64~-0.06)、摂食障害症状スコアの高さ(0.16、95%CI:0.04~0.29)、うつ病リスクの高さ(HR:1.18、95%CI:1.04~1.34)、物質使用障害リスクの高さ(HR:1.36、95%CI:1.07~1.73)と有意な関連が認められた。・神経性やせ症のみおよび摂食障害患者のサブグループにおいて、弱い同様のパターンが認められた。 著者らは「本結果は、精神医学的併存疾患の観点から、神経性やせ症および摂食障害患者における統合失調症のPRSの影響は類似しており、摂食障害関連の臨床的特徴の観点では、異なることを示唆している」とし「統合失調症のPRSが神経性やせ症や摂食障害に及ぼす影響の違いについては、さらなる研究が必要である」とまとめている。

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小児双極性障害患者の診断ミスに関するシステマティックレビュー

 双極性障害は、複雑な症状を呈する精神疾患の1つである。カナダ・Brock UniversityのTabeer Afzal氏らは、DSM-IVおよびDSM-V基準を用いた小児双極性障害の診断ミスに関するエビデンスを要約し、未治療の双極性障害患者の生命アウトカムに及ぼす影響を検討した。さらに、小児双極性障害の診断精度向上につながる可能性のある推奨事項の概要および要約も試みた。Research on Child and Adolescent Psychopathology誌オンライン版2023年12月18日号の報告。 2023年3月21日までに公表された文献を、Scholars Portal Journal、PsychINFO、MEDLINEデータベースより検索した。レビュー対象基準に従い、18歳未満の小児サンプルを用い、1995~2022年に出版された文献に限定した。除外基準は、自己申告による診断を伴うサンプルを含む文献とした。 主な結果は以下のとおり。・本レビューには、15件の文献を含めた。・研究結果は、ナラティブサマリーを用いて合成した。・小児双極性障害は、注意欠如多動症(ADHD)、統合失調症うつ病と診断されることが最も多かった。・診断ミスは、不適切な治療計画や適切な治療の遅れにつながる可能性があり、社会的、職業的、経済的な課題により、小児双極性障害患者のQOLに悪影響を及ぼす可能性が示唆された。

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補聴器の常用で寿命が延びる?

 補聴器の第一目的が「聞こえ」を補うことなのは明らかだが、新たな研究によると、補聴器を常用することで寿命が延びる可能性もあるようだ。研究論文の筆頭著者である、米南カリフォルニア大学ケック医学校の耳鼻咽喉科医であるJanet Choi氏は、「補聴器を常用している成人の難聴者は、補聴器を使用していない成人の難聴者よりも死亡リスクが24%低いことが示された」と述べている。この研究の詳細は、「The Lancet Healthy Longevity」1月号に掲載された。 Choi氏らによると、過去の研究では、未治療の難聴は寿命の短縮や、社会的孤立、うつ病、認知症などの健康問題と関連することが示されているという。しかし、補聴器の使用が難聴に伴うそのような健康上のリスクを回避するのに役立つかどうかについては明らかになっていない。 今回の研究では、1999年から2012年の間に米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加し、聴覚と補聴器の使用に関する質問に回答した20歳以上の成人9,885人(平均年齢48.6歳、女性51.0%、1,863人が難聴)のデータを、死亡者データベースであるNational Death Indexにリンクさせて追跡調査を行った。 聴力検査で測定された難聴の重み付け後の有病率は14.7%であり、中央値10.4年の追跡期間での全死亡率は13.2%であった。難聴者の間では、12.7%の人が補聴器を常用していた。解析の結果、難聴は死亡率上昇の独立したリスク因子であることが示された(調整ハザード比1.40、95%信頼区間1.21〜1.62)。また、難聴者の間では、人口統計学的属性や聴力レベル、病歴を考慮しても、補聴器の常用者では補聴器の非使用者に比べて死亡リスクが低かった(同0.76、0.60〜0.95)。一方で、補聴器の非常用者と補聴器の非使用者の間では、死亡リスクに有意な差は認められなかった(同0.93、0.70〜1.24)。 Choi氏は、「これらの結果は、補聴器を常用することが人々の健康を守り、早期死亡を予防する可能性を示唆するもので、非常に興味深い」と大学のニュースリリースで述べている。同氏は、補聴器の常用による死亡リスクの低下は、聴力の向上がメンタルヘルスや脳の機能にもたらす利点と関連している可能性があると推測している。 さらにChoi氏は、補聴器の使用によりうつ病や認知症が緩和されることが他の研究で示されていることを挙げ、「補聴器はこのような問題を治療することで全体的な健康増進に貢献している可能性がある」と話している。 米国での難聴者の数は4000万人に上るが、補聴器を必要とする人のうち実際に使用している人は10人に1人にとどまるという。Choi氏は、「補聴器の使用には、経済的な問題や自分に適した補聴器を選択することの難しさ、補聴器の使用に付随するスティグマなどの障壁がつきものだ。今回の研究結果を受け、そのような障壁を乗り越えてでも補聴器を使おうとする人が増えることを期待している」と話す。 補聴器の常用と死亡リスクとの関連性についての理解を深めるには、より大規模な研究が必要である。Choi氏はさらに、患者ごとのニーズに合わせて補聴器の選択肢を調整するAI主導のデータベースの開発にも取り組んでいるという。

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うつ病や不安症などの診療におけるライブ双方向ビデオ治療~24週間のランダム化対照試験

 スマートフォンやその他のデバイスを用いて自宅から簡単にアクセス可能な双方向ライブビデオは、精神科治療における新たな医療アクセスになりつつある。しかし、実臨床現場では、その有効性を示すエビデンスが限られており、一部の国において保険診療による承認の妨げとなっている。慶應義塾大学の岸本 泰士郎氏らは、現在の主な通信手段となっているスマートフォンおよびその他のデバイスを用いた双方向ビデオのさまざまな精神疾患に対する長期治療の有効性を評価するため、実用的な大規模ランダム化比較試験を初めて実施した。その結果から、スマートフォンやその他のデバイスを用いた双方向ビデオによる治療は、実臨床における対面治療と比較し、劣っていないことが明らかとなった。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年12月15日号の報告。 亜急性期およびまたは維持期のうつ病、不安症、強迫症患者を対象に、双方向ビデを用いた治療と対面治療の有効性を比較するために24週間のランダム化対照試験を実施した。対象患者は、双方向ビデオ群(50%以上のビデオセッション)または対面群(100%対面セッション)にランダムに割り付けられ、公的医療保険が適用となる標準治療を実施した。主要アウトカムは、健康関連QOL尺度36-Item Short-Form Health Survey Mental Component Summa(SF-36 MCS)スコアとした。副次的アウトカムは、すべての原因による中止、作業同盟、有害事象、各疾患の重症度評価スケールを含めた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は199例。・双方向ビデオ群105例(うつ病:53例、不安症:34例、強迫症:18例)、対面群94例(うつ病:45例、不安症:32例、強迫症:17例)にランダムに割り付けられた。・24週間の治療後、双方向ビデオ群のSF-36 MCSスコアは、対面群と比較し、劣っていなかった(48.50 vs. 46.68、p<0.001)。・すべての原因による中止、治療効果、満足度など、ほとんどの副次的アウトカムにおいて、両群間に有意な差は認められなかった。 結果を踏まえ、著者らは「自宅から簡単にアクセス可能な最新の遠隔医療は、ヘルスケア診療の1つの手段として利用可能であろう」としている。

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早期アルツハイマー病における多剤併用と身体能力との関係

 トルコ・University of Health SciencesのAysegul Akkan Suzan氏らは、早期アルツハイマー病患者の歩行を評価するために用いられる特定の身体能力測定と、多剤併用との関連を評価する目的で本研究を実施した。Current Medical Research and Opinion誌オンライン版2023年12月11日号の報告。 3次医療センターの認知症外来クリニックで横断的研究を実施した。1日当たり5剤以上の薬物治療を多剤併用の定義とし、対象患者から中等度~重度の認知症患者は除外した。身体的パフォーマンスステータスの評価には、通常歩行速度(UGS)、Timed Up & Go(TUG)テスト、椅子立ち上がりテスト(CSST)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者134例(女性の割合:67.9%、平均年齢:80.2±7.9歳)のうち、75例(56%)が多剤併用患者であった。・多剤併用患者はそうでない患者と比較し、身体的パフォーマンスが不良であった(UGS:p=0.005、TUG:p<0.001、CSST:p<0.001)。・多剤併用患者では、次のパラメーターが有意に高かった。 BMI(p=0.026) 高血圧(p=0.013) 糖尿病(p=0.018) 虚血性心疾患(p<0.001) 心房細動(p=0.030) うつ病(p=0.012) 甲状腺機能低下症(p=0.007)・多変量解析では、多剤併用と独立して関連していた因子は次のとおりであった。 UGSの遅さ(オッズ比[OR]:1.248、95%信頼区間[CI]:1.145~1.523、p=0.007) TUGの長さ(OR:1.410、95%CI:1.146~1.736、p=0.001) CSSTの長さ(OR:1.892、95%CI:1.389~2.578、p<0.001) 著者らは、「早期アルツハイマー病患者において、多剤併用と身体的パフォーマンス低下との関連が示唆された。高齢のアルツハイマー病患者における多剤併用および薬剤サブグループと身体的パフォーマンスとの関係を調査する、長期プロスペクティブ研究の実施が望まれる」としている。

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初発統合失調症の臨床症状改善とBMIとの関連

 統合失調症患者は、一般集団と比較し、肥満の有病率が高いことが知られている。これまでの研究では、統合失調症患者における体重増加は、抗精神病薬に対する治療反応と関連していることが報告されている。しかし、統合失調症患者のBMIと治療効果との関連は依然としてよくわかっていない。中国・北京大学のXiaofang Chen氏らは、初回エピソードおよび抗精神病薬未治療の統合失調症患者におけるベースライン時のBMIと抗精神病薬治療による臨床症状改善効果との関連を調査するため、本研究を実施した。その結果、統合失調症患者のベースライン時のBMIは、その後の陰性症状改善と関連している可能性が示唆された。Frontiers in Pharmacology誌2023年11月9日号の報告。 対象は、初回エピソードおよび抗精神病薬未治療の統合失調症患者241例。12週間のリスペリドン治療を実施した。症状重症度の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いた。BMIは、ベースライン時および12週間のフォローアップ時に測定した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬治療により、初回エピソードおよび抗精神病薬未治療の統合失調症患者の体重は増加した。・12週間の抗精神病薬治療後、ベースライン時のBMIと陰性症状改善との間に負の相関が確認された(r=-0.14、p=0.03)。・線形回帰分析では、ベースライン時のBMIは、統合失調症の初期段階において抗精神病薬リスペリドンに対する治療反応の独立した予測因子であることが示唆された。

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周産期うつ病、家族要因を問わず死亡リスク増大/BMJ

 スウェーデン・カロリンスカ研究所のNaela Hagatulah氏らは、同国の全国規模の住民ベース適合コホート試験の結果、周産期うつ病と診断された女性では、家族的要因を考慮してもとくに診断直後の1年間の自殺による死亡リスクが増加していたことを報告した。周産期うつ病は、妊娠に伴い最もよくみられる合併症の1つで、出産前後の女性の罹患率は最大で20%と報告されている。産後精神障害(精神病性障害、感情障害、不安障害など)を有する女性は、それらの影響を受けなかった女性や一般の女性集団と比べて死亡リスクが高いことが報告されているが、産前を含む周産期うつ病との関連についてエビデンスは限定的であった。また、家族内で共有する要因が周産期うつ病や自殺による死亡リスクの増加に寄与する可能性も指摘されているが、検討された試験データはなかった。著者は今回の結果を踏まえて、「周産期うつの影響を受けた女性、その家族、医療従事者は、これら周産期うつ病後の重大な健康リスクを認識する必要がある」と提言している。BMJ誌2024年1月10日号掲載の報告。スウェーデンで行われた追跡期間18年間のコホート試験 研究グループは、周産期うつ病を発症した女性は、発症していない女性、および実の姉妹と比較して、死亡リスクの上昇が認められるかを調べるため、スウェーデンの全国規模の健康レジスターを活用して、国民ベースの適合コホート試験を行った。姉妹の比較のために共有する家族の交絡因子の調節も行った。 レジスターの対象期間は2001年1月1日~2018年12月31日。対象被験者は、出産時の年齢と暦年で適合し特定した初めて周産期うつ病と診断され、専門的ケアと抗うつ薬の投与を受けた女性8万6,551人と、周産期うつ病に罹患しなかった女性86万5,510人であった。家族の交絡因子を調節するため、対象期間中に1人以上の単児出産をした実の姉妹27万586人(周産期うつ病罹患女性2万4,473人、非罹患の実姉妹24万6,113人)との比較も行われた。 主要アウトカムは、あらゆる要因による死亡。副次アウトカムは、死因別の死亡(すなわち、不自然および自然な死因)とした。 多変量Cox回帰法を用いて、交絡因子を考慮し、周産期うつ病の罹患女性と非罹患女性および姉妹を比較した死亡ハザード比を推算。周産期うつ病の経時的パターン、周産期うつ病発症の産前と産後の違いも検討した。死亡リスクは2.11倍、産後うつ発症者でリスクが高い 最長18年間の追跡調査において、周産期うつ病と診断された女性522人の死亡(1,000人年当たり0.82人)が報告された(年齢中央値31.0歳[四分位範囲[IQR]:27.0~35.0])。 周産期うつ病を罹患した女性は、非罹患女性と比較して死亡リスクの増大と関連していた(補正後ハザード比[HR]:2.11(95%信頼区間[CI]:1.86~2.40)。同様の関連は、精神障害の既往ありの女性となしの女性の間でも報告された。また、死亡リスクは、うつ病発症が産後の場合のほうが、産前の場合よりも高かった(HR:2.71[95%CI:2.26~3.26] vs.1.62[1.34~1.94])。姉妹間の比較においても、周産期うつ病について同様の関連性が認められた(2.12[1.16~3.88])。 関連性は、周産期うつ病発症後1年以内に最も顕著であり、追跡調査開始後18年間にわたり継続していた。 周産期うつ病の女性において、死亡リスクの増加は、死因を問わず関連が認められ(不自然な死因のHR:4.28[95%CI:3.44~5.32] vs.自然な死因のHR:1.38[95%CI:1.16~1.64])、その中で自殺の件数は少なかったが(1,000人年当たり0.23)、関連性は最も強かった(6.34[4.62~8.71])。

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朝食摂取とうつ病との関係

 うつ病は、食生活、社会的因子、生活習慣といった多くの要因と関連しており、重大かつ患者数が多い、世界的な公衆衛生上の問題である。中国・吉林大学のFengdan Wang氏らは、朝食の摂取、食事性炎症指数(DII)とうつ病との関連を評価し、朝食の摂取がうつ病に及ぼす影響に対しDIIがどのように関与しているかを調査した。Journal of Affective Disorders誌2024年3月号の報告。 対象は、2007~18年の米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した2万1,865人。朝食の摂取、DII、うつ病との関連の分析には、二項ロジスティック回帰分析と媒介効果分析を用いた。食事による炎症は、DIIに従い炎症誘発性食と抗炎症性食に分類した。 主な結果は以下のとおり。・参加者の平均年齢は47.24±0.28歳であった。・2回の回想法で、2回とも朝食摂取を報告した参加者(A群)は77.6%、1回でのみ朝食摂取を報告した参加者(B群)は16.3%、朝食摂取を報告しなかった参加者(C群)は6.1%であった。・炎症誘発性食、朝食抜きは、うつ病のリスク因子であった。・共変量で調整した後、B群はA群と比較し、うつ病のオッズ比が高かった(オッズ比:1.54、95%信頼区間:1.20~1.98)。・心血管疾患(CVD)および糖尿病でない参加者を対象とした層別化および感度分析においても、これらの関連は強固であった。・DIIは朝食摂取とうつ病との関連を仲介しており、B群の26.15%、C群の26.67%において認められた。 著者らは、研究の限界として、因果関係を明らかにしているわけではなく、データが限られているため薬物使用に関する交絡因子を考慮していない点を挙げたうえで、「朝食を抜くとDIIが上昇し、うつ病リスクが高まる可能性がある」とし、「本結果は、うつ病リスクの軽減には定期的な朝食、抗炎症性食の摂取が重要であることを裏付けるものである」とまとめている。

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透析そう痒症を改善する初の静注薬「コルスバ静注透析用シリンジ」【最新!DI情報】第7回

透析そう痒症を改善する初の静注薬「コルスバ静注透析用シリンジ」今回は、静注透析そう痒症改善薬「ジフェリケファリン酢酸塩注射液(商品名:コルスバ静注透析用シリンジ17.5μg/25.0μg/35.0μg、製造販売元:丸石製薬)」を紹介します。本剤は、透析治療を受ける慢性腎不全患者に多く認められるかゆみを治療するわが国初の静注薬であり、患者QOLの向上が期待される新たな治療選択肢です。<効能・効果>血液透析患者におけるそう痒症の改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)の適応で、2023年9月25日に製造販売承認を取得し、同年12月13日に発売されています。<用法・用量>通常、成人にはジフェリケファリンとして、ドライウェイト時における下記用量を週3回、透析終了時の返血時に透析回路静脈側に注入します。45kg未満:17.5μg45kg以上65kg未満:25.0μg65kg以上85kg未満:35.0μg85kg以上:42.5μg<安全性>国内の血液透析患者を対象とした試験(MR13A9-3、MR13A9-4およびMR13A9-5試験)における本剤投与群の副作用の発現割合は19.7%(50/254例)で、2.0%以上に発現した主な副作用は、傾眠(2.8%)、浮動性めまい(2.4%)、便秘(2.0%)および血圧低下(低血圧との合算で2.0%)でした。自動車運転および機械操作に対する影響または精神機能の障害に対する試験は実施していませんが、主な副作用として傾眠と浮動性めまいが確認されたことから、自動車の運転など危険を伴う機械の操作には従事させないよう注意喚起が必要です。<患者さんへの指導例>1.この薬は、血液透析における既存治療で効果が不十分なかゆみの改善に用いられます。2.抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬などが効きにくいかゆみを抑えます。3.眠気、めまいなどが現れることがありますので、車の運転など危険を伴う機械の操作には従事しないでください。4.妊婦または妊娠している可能性のある人、授乳中の人は、医師または薬剤師に相談してください。<ここがポイント!>皮膚そう痒症は、血液透析治療を受ける慢性腎不全患者に多く認められる疾患で、かゆみの原因となる明らかな皮膚病変がないにもかかわらず、全身のあらゆる場所にかゆみが生じます。かゆみは断続的に生じてQOLを低下させるばかりでなく、睡眠障害やうつ病、死亡リスクの上昇などの悪影響を引き起こすこともあります。血液透析患者におけるそう痒症の緩和には、一般的に保湿剤やステロイド剤の外用治療、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬による外用または内服治療が行われます。これらの治療でも効果不十分の場合は、かゆみを抑制するκオピオイド受容体(KOR)の作動薬であるナルフラフィンが内服で用いられています。しかし、血液透析患者の約40%は、これらの治療を受けても中等度~重度のそう痒症が残存します。ジフェリケファリンは、ナルフラフィンに次ぐKOR作動薬であり、透析終了後の返血時に透析回路からボーラス投与するわが国初の静注のプレフィルドシリンジ製剤です。静注薬なので、透析患者の水分摂取制限や嚥下機能低下に影響されず、透析時に医師の管理のもとに投与されるため服薬アドヒアランスにも影響されません。既治療のそう痒症を有する血液透析患者178例を対象とした国内第III相臨床試験(MR13A9-5)の二重盲検期において、主要評価項目である「4週時の平均かゆみNRS(numerical rating scale)スコアのベースラインからの変化量」は、本剤投与群-2.06、プラセボ投与群-1.09、群間差-0.97(95%信頼区間:-1.52~-0.42)であり、プラセボ投与群に対して本剤投与群の優越性が示されました(p

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医療者の燃え尽き、カギはトレーニングよりも看護師人数

 新型コロナウイルス感染症流行下では、世界中で多くの医療者が燃え尽き症候群に直面し、多くの離職者が出た。そして、日本では2024年4月から医師の働き方改革がスタートし、時間外労働への規制が厳しくなる。この状況において、パンデミックの経験から学ぶべきことは何か。 米国ペンシルベニア大学のLinda H. Aiken氏らは、医師と看護師の健康状態と離職率を測定し、有害な転帰、患者の安全性、介入に対する好みと関連する実行可能な要因を特定することを目的とした調査を行った。具体的には、臨床医のメンタルヘルスを改善する介入を優先すべきか、ストレスや燃え尽き症候群の修正可能な原因に対処して病院の労働環境を変えるべきかについて比較検討した。JAMA Health Forum誌2023年7月7日号に掲載。 2021年に米国看護師資格認定センターの指定を受けた60施設の医師と正看護師、計2万1,050人から電子調査でデータを得た。回答者はメンタルヘルスと幸福感、職場環境因子と燃え尽き症候群(バーンアウト)、病院スタッフの離職率、患者の安全性についての質問に回答した。バーンアウトはMaslach Burnout Inventory(MBI)、不安は全般性不安障害スケール、うつ病はPatient Health Questionnaireスケールを用いて測定した。データは2022年2月21日~2023年3月28日に解析された。 主な結果は以下のとおり。・53病院の医師5,312人(平均[SD]年齢44.7[12.0]歳、男性2,362人[45%]、白人2,768人[52%])と、60病院の看護師1万5,738人(平均[SD]年齢38.4[11.7]歳、女性1万887人[69%]、白人8,404人[53%])が回答した。1病院当たりの医師数平均は100人、看護師数平均は262人、回答率は26%(医師22%、看護師27%)だった。・医師の約3人に1人、看護師の約半数が高いバーンアウト状態だったが、その割合は病院によって大きく異なり、医師では9~51%、看護師では28~66%だった。・医師の5人に1人以上(23%)が、「可能であれば1年以内に現在の病院を辞めたい」と回答した。病院間の差を考慮すると、いくつかの病院では3~4割の医師が可能であれば現在の病院を辞めたいと考えていることが示唆された。・「患者の安全性に関して、自院は好ましくない状況だ」と評価したのは医師12%、看護師26%だった。「看護師の数が少な過ぎる」は医師28%、看護師54%、「劣悪な職場環境である」は医師20%、看護師34%、「経営陣に対する信頼がない」は医師42%、看護師46%だった。「職場が楽しい」と回答者した医師は10%未満であった。・医師も看護師も、医師のメンタルヘルスを改善する介入よりも、病院の労働環境改善のほうがより重要である、と回答した。・介入策の中で、看護師の人員配置の改善が最も高く評価された(医師45%、看護師87%)。 研究者らは、「看護師の数が少な過ぎる、職場環境が好ましくないと医療者が考える施設は、医師の燃え尽き症候群と離職が多く、患者の安全性に関する評価が好ましくないと評価する割合が高かった。医療者は看護師の人員不足、医師の仕事量に対するコントロール不足、劣悪な職場環境への経営陣の対応を望んでおり、心身の健康に関するプログラムやトレーニングへの関心は低かった」とした。

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映画「かがみの孤城」(その2)【実は好きなことをさせるだけじゃだめだったの!?(不登校へのペアレントトレーニング)】Part 1

今回のキーワード社会的な自我(アイデンティティ)味方になる(自尊心)寄り添いワード大人扱いする(自信)お小遣い歩合制家庭のルールづくり夢を語り合う(自我)ユートピア型前回は、不登校の根っこの心理を掘り下げました。それは、自我の弱さでした。そして、不登校が増えている一番の原因を解き明かしました。それは、社会構造の変化でした。それでは、これらを踏まえて、自分の子供が学校に行けなくなったらどうすればいいのでしょうか?今回も、不登校をテーマに、アニメ映画「かがみの孤城」を取り上げます。この映画を通して、再び発達心理学の視点から、不登校への効果的な親の対応(ペアレントトレーニング)をご紹介します。好きなことをさせるだけじゃだめなの?主人公のこころは、不登校になってから、家でテレビを見るか横になっているだけでした。近くに住む萌ちゃんが毎回学校からの届け物を郵便ポストに入れていましたが、その時もこころは窓からこっそり見ているだけで、かかわりを持とうとしません。自分の子供が不登校になった時、親として無理やり学校に行かせることは本人を追い詰めるだけなので、確かに望ましくないです。かと言って、こころのようにただ家にいて、本人の好きにさせるだけでいいのでしょうか? 教育関係者の中には、そうするよう提唱する人もいます。はたして、どうなんでしょうか?このやり方は、前回説明した自我を育むという点においては、明らかに望ましくないです。確かに、家で好きなことをしているだけでは、単に今ここでどうしたいかという「個人的な自我」(自己愛)は育まれます。しかし、ただ家にいるだけでは、勉強(認知能力の学習)はなかなかする気になれず、クラスメートや先生とのかかわり(社会的コミュニケーション)の刺激もありません。すると、これから社会でどうなりたいか、つまり大人になってどう生きていきたいかという「社会的な自我」(アイデンティティ)はやはり育まれなくなります。これが理由です。もっと言えば、先進国で日本ほど不登校に寛容な国はありません。たとえば、米国で子供が不登校になると、ネグレクトとして親に罰金が課され、子供には心理カウンセリングが義務づけられます。そして、米国や欧州の多くの国々では、代わりに少なくともホームスクーリング(家庭学習)が義務づけられています。なお、ドイツにいたってはホームスクーリングさえ認められず、転校するなどして通学することが義務づけられています。世界的に見れば、それくらい子供に教育を受けさせることは親や国家の義務とされています。日本は、家族主義が根強いため、不登校への対応は主に家庭に任せ、国は法的な介入をしないというスタンスを取り続けています。しかし、さすがにこれだけ不登校が増え続けるなか、不登校の黙認は、日本国憲法に定められた三大義務の1つである「教育を受けさせる義務」を親も国家も果たしていないことになります。もはや、好きなことをさせるだけでは「教育ネグレクト」と言わざるを得ません。じゃあ親はどうしたらいいの?好きなことをさせるだけでは望ましくない理由は、「社会的な自我」(アイデンティティ)が育まれなくなるからであることがわかりました。これを踏まえて、それでは、親はどうしたらいいのでしょうか? こころと母親のやり取りから不登校を解決するために必要な親の対応を、ペアレントトレーニングとして、順番に大きく3つ挙げてみましょう。なお、ペアレントトレーニングとは、もともとADHD(注意欠如多動症)などの発達障害の子供への親の対応スキルを練習することですが、不登校にも広げることができます。(1)味方になる―自尊心こころの母親は、フリースクールの先生の助言もあって、こころにあまり口出しをせず、根気強く見守るようになります。普段から他愛のない雑談を心がけるようになります。こころがいじめを打ち明けた時は、「本当に気付いてあげられなくてごめん」と言い、やさしく抱きしめます。1つ目は、味方になることです。ここで、その方法を具体的に3つ挙げてみましょう。a.雑談1つ目は、雑談です。これは、ただ親が「宿題やった?」「どこ行ってたの?」などと見張るようセリフはNGです。雑談の内容は、親がただ知りたいことではなく、あくまで子供が話したいことに寄せるのがコツです。たとえば、一緒にテレビを見ながら「このお笑い芸人おもしろいね」「この俳優、私の最近の推しメンだわ」などと楽しく話すことです。雑談の目的は、情報ではなく情動、つまりまず信頼関係を築くことです。b.良いところ探し2つ目は、良いところ探しです。これは、まさに子供の良さや強みをどんどん指摘していくことです。ここで、良いところが見つからないと困っている人はいますでしょうか? そんなことはありません。たとえどんなネガティブなことでもポジティブに返すことができます。心理学では、リフレーミング(認知再構築)と呼ばれています。具体例は表1をご覧ください。良いところ探しの目的は、良さが本当にあるかどうかではなく、良さがあると思ってくれる味方がいることを子供に伝えることです。なお、これは、褒めるスキルにも通じます。詳細については関連記事1をご覧ください。c.寄り添いワード最後にして一番大事なのは、3つ目の寄り添いワードです。これは、欧米圏のようにことあるごとに「アイラブユー」と言い添えることです。ただし、日本人はストレートな表現に馴れていないです。いきなり言ってしまうと気持ち悪がられるおそれがありますので、言い換える必要があります。たとえば、普段から会話の中で「きみは大事だよ」「一緒にいて幸せだよ」と言うことです。また、いじめを打ち明けた時などは、子供の気持ちを受け止めることです。説教したり審判するのは逆効果です。助言については、「アドバイスほしい?」と確認するくらい慎重になる必要があります。具体例は、表2をご覧ください。なお、これは、うつ病など弱っている人へのかかわり方にも共通しています。この詳細については関連記事2をご覧ください。このようにして味方になることで、「自分は大丈夫」(OK)という安心感を育み、自尊心(自己肯定感)を高めることができます。これが、土台としてまず必要になります。次のページへ >>

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映画「かがみの孤城」(その2)【実は好きなことをさせるだけじゃだめだったの!?(不登校へのペアレントトレーニング)】Part 3

これからの家族のあり方とは?不登校へのペアレントトレーニングとして、味方になる、大人扱いをする、夢を語り合うことで、自尊心、自信、自我を順に育んで、学校に行くことは必要であると自覚させることであることがわかりました。つまり、学校は、行きたいか行きたくないかという好き嫌いの問題ではなく、行く必要があるという必要性の問題であると自分で思えるかどうかであるということです。言われてみれば、当たり前のことのように思えますが、この発想を促す自我がもともと弱かったり、育まれていなかったために、あっさり不登校になっていたのです。以上を踏まえて、これからの家族のあり方とはどういうものが望ましいでしょうか? ここから、家族を国家のタイプに例え、大きく4つに分けて、その答えを導いてみましょう。(1)独裁国家型1つ目は、独裁国家型です。これは、北朝鮮、ロシア、中国のように、逆らうとひどい目に遭う国です。これは、封建社会の価値観に通じます。家族に置き換えれば、前回すでに紹介した1980年代以前の日本の家族が当てはまります。親(国家)は、子供(国民)の味方になっているわけではなく、無理やり大人扱いして、一方的に責任を押し付ける特徴があります。結局、自尊心は育まれず、自信はありますが、自我は弱いです。そのため、「とにかくやらなきゃ」(should)という発想になりがちです。このタイプは、現代の価値観では時代遅れとなっており、家族のあり方としてはもちろん危ういです。(2)ユートピア型2つ目は、ユートピア型です。これは、中東のオイルマネーで豊かな国です。そこには、その名の通り、王子と呼ばれる働かない人が多くいます。家族に置き換えれば、ちょうどこころのように、1980年代以降の不登校を招きやすい日本の家族が当てはまります。親(国家)は、子供(国民)の味方にはなっていますが、大人扱いが不十分で、無責任にさせてしまう特徴があります。自尊心はある程度育まれるものの、自信がなく、結局自我は弱いままです。そのため、「誰かやって」(please)という発想になりがちです。このタイプは、不登校だけでなく、アルコール、ギャンブル、ひきこもりなど嗜癖の問題を招くリスクが最もある点で、やはり家族のあり方として危ういでしょう。(3)民主国家型3つ目は、民主国家型です。これは、欧米圏のように、積極的な話し合いと多数決によって成り立っている国です。家族に置き換えれば、おそらく萌ちゃんの家族が当てはまります。親(国家)は、子供(国民)の味方になり、大人扱いして、夢(より良い未来)を語り合う特徴です。自尊心も自信も育まれて、必然的に自我は強くなります。そのため、「やりたい」(want)、「なりたい」(want to be)という発想になります。このタイプこそが、不登校を防ぐ点でも、これからの家族のあり方として、望ましいわけです。(4)無法地帯型4つ目は、無法地帯型です。これは、ロシアとウクライナ、パレスチナとイスラエルのような戦争状態の国です。親(国家)は、子供(国民)の味方にはなれず、大人扱いどころではなく、いつ「殺される」(虐待される)かわからないという特徴があります。もちろん、自尊心も自信も育まれず、自我も芽生えないです。先のことは何もわからないため、「やらない」(no way)という発想に陥ります。このタイプは、もはや家族のていをなしていない点でも、家族のあり方として、決して望ましくないでしょう。ちなみに、日本は国としては民主国家の形になってはいるのですが、家族としてはまだ家族主義が根強いことから、ユートピア型になってしまっている家族が多いのが現状です。だから、不登校が多いのです。逆に言えば、家族も個人主義化して家族主義から抜け出して民主国家型になれば、不登校は海外と同じように目立たなくなることが予測できます。なお、この家族の国家タイプの詳細については、関連記事6をご覧ください。いじめにとらわれると不登校が解決しづらくなるこころが母親にいじめの件を打ち明けたことから、母親が担任の先生に迫るシーンがありました。親心として、いじめ加害者を断罪したいと思う気持ちはよくわかります。「その子のせいで不登校になった」「その子がいなければ不登校にはならなかった」というロジックです。しかし、前回説明したとおり、いじめは不登校のきっかけ(誘因)にすぎず、たとえいじめがなかったとしても、不登校の根本的な原因である自我の弱さは変わりません。城に来た他の6人と同じように、別のきっかけでこころは遅かれ早かれ不登校になる可能性が考えられます。不登校にならなかったとしたら、ただそれは誘発されずに運が良かっただけです。つまり、いじめを掘り下げても、不登校は解決しないです。むしろ、いじめられることは、子供の心理からしてみれば、恥です。学年が変わるタイミングで加害者たちを別のクラスにするなどの対策は必要ですが、親がいじめにとらわれて騒ぎ続けると、子供が前に進めなくなります。そもそもいじめの認定は、いじめられたと主張する本人の主観による要素が大きいです。これは、ちょっとでも何かされたり(いじりや陰口だけでも)、逆にちょっとでも相手にされない(無視)だけでも「いじめ」であると本人が認識する場合も含まれることを意味します。そのため、犯罪レベルを除くと、もはや不登校に「いじめ」があるかどうかを明確に区別することには限界があります。また、進化心理学的に考えれば、いじめは人類が心の進化の過程で社会を維持するために獲得した負の機能(社会脳)です。私たちが集団をつくる限り、いじめの心理をなくすことは難しいのが現実です。いじめを減らす取り組みはもちろん必要ですが、仮にいじめを完全になくすことができたからといって、自我の弱さは変わらないため、不登校が劇的に改善することはないでしょう。逆に、先ほどのストレス関連成長(SRG)の観点から、大人の社会でもいじめはあるのに、学校で小さな「いじめ」(対人ストレス)までも厳しく取り締まって「無菌状態」(ストレスフリー)をつくってしまったら、大人になった時に「免疫力」(ストレス耐性)が高まらず、結局小さな「いじめ」ですぐに参ってしまうでしょう(ストレス脆弱性)。たとえば、こころが自我の弱いまま大人になったら、今度は「新型うつ」(職場不適応)になる可能性が考えられます。なお、「新型うつ」の詳細については、関連記事7をご覧ください。つまり、不登校といじめ(犯罪レベルを除く)を積極的に結びつけることには大きな意味はなく、むしろいじめにとらわれてしまうと、不登校が解決しづらくなってしまうおそれがあります。なお、いじめの心理と対策の詳細については、関連記事8をご覧ください。ちなみに、こころの母親から「学校に行けないのはこころちゃんのせいじゃないって」というセリフがありました。あとからいじめ被害が判明したため、結果的には、自分を責めてしまいそうなこころに味方になるメッセージを伝えるという効果がありました。一方で、子供にはこれからどうするかについて責任を感じなくて良いという裏メッセージとして伝わる可能性もあり、実は危ういセリフであることもわかります。まさに、これはユートピア型ならではの声かけです。よって、安易に使わない方が良いでしょう。厳密に言うと、学校に行けなくなったことへの責任は確かにないですが、これからどうするかにはやはり責任があります。これは、アルコール依存症と同じで、なってしまったことへの責任は本人にないですが、治す責任は本人にあるということです。ちなみに、ひきこもりの人の多くが口を揃えて言うセリフがあります。それは「こうなったのは親のせいだ」です。このような責任逃れの心理(モラルハザード)に陥らないようにするためにも、やはり、「誰のせい」「誰のせいじゃない」などと学校に行けなくなった原因を掘り下げることは避けて、その他の寄り添いワード(1ページ目)を使いつつ、これからどうしたらいいかという解決にフォーカスすることが有効です。1)「子供におこづかいをあげよう!」P66:西村隆男、主婦の友社、2020<< 前のページへ■関連記事ダンボ【なぜ飛ぶの? 私たちが「飛ぶ」には?(褒めるスキル)】ツレがうつになりまして。【うつ病】逃げるは恥だが役に立つ【アサーション】ドラえもん【子供のメンタルヘルスに使えるひみつ道具は?】ちびまる子ちゃん(続編)【その教室は社会の縮図? エリート教育の危うさとは?(社会適応能力)】Part 1クレヨンしんちゃん【ユーモアのセンス】Part 1こうして私は追いつめられた【新型うつ病】告白【いじめ(同調)】Part 1

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統合失調症の神経認知プロファイルに対するアリピプラゾールとオランザピンの有効性比較

 統合失調症は、重篤な神経認知障害を引き起こす疾患である。統合失調症に対する抗精神病薬治療は、精神病理および神経認知機能の改善をもたらすことが期待される。インド・Government Medical College and HospitalのSanya Sharma氏らは、統合失調症患者の神経認知プロファイルに対するアリピプラゾールとオランザピンの有効性を比較するため、プロスペクティブ介入比較研究を行った。その結果、アリピプラゾールとオランザピンは、神経認知プロファイルの改善に有効であり、それぞれ特定の領域に対してより有効であることが示唆された。Indian Journal of Psychiatry誌オンライン版2023年10月号の報告。 精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-V)に従い、統合失調症患者をベースライン時の簡易精神症状評価尺度(BPRS)、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)および神経心理学的検査で評価した。対象患者は、コンピューターで生成したランダムナンバーに基づき、アリピプラゾール群(1日当たり10~30mgを経口投与)とオランザピン群(1日当たり5~20mgを経口投与)にランダムに割り付けられ、10週目に再評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者40例が、10週間の研究期間を終了した。・ベースライン時、大多数の患者において、1つ以上の神経認知領域の重大な欠損が認められた。・アリピプラゾール群、オランザピン群のいずれにおいても、精神症状および神経認知プロファイルの改善が認められた。・アリピプラゾール群では、オランザピン群と比較し、処理速度の有意な改善が認められた。・アリピプラゾールによるストループ効果(p=0.000)および視空間認識能力(p<0.001)の非常に有意な改善が認められた。・オランザピン群では、意味流暢性(p<0.01)、言語流暢性(p<0.01)において非常に有意な改善が認められた。

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初発統合失調症患者の社会的機能~10年間の軌跡

 統合失調症患者では、さまざまな機能的アウトカムを呈する可能性がある。しかし、初発統合失調症患者の長期的な機能的アウトカムの軌跡を調査した研究は、ほとんどない。中国・北京大学のZhang Cheng氏らは、抗精神病薬による治療を行っていない初発統合失調症患者を対象に、10年間のフォローアップ調査を行った。Asian Journal of Psychiatry誌2024年1月号の報告。 抗精神病薬治療を行っていない初発統合失調症患者を対象とした、10年間のプロスペクティブ研究である中国の初発統合失調症トライアルよりデータを抽出した。初発統合失調症患者の社会的機能に関する縦断的データにK平均クラスタリングモデルを適用し、経験的に導き出された軌跡と10年間のフォローアップ調査のベースラインにおける臨床特性との関連を調査した。 主な結果は以下のとおり。・次の3つの異なる機能的軌跡が特定された。改善が良好(39.3%)、不良(17.8%)、安定(42.9%)。・3つの軌跡のいずれにおいても、最初の6ヵ月間で個人および社会的パフォーマンス(PSP)スコアの向上が認められた。・改善が不良の場合には、最初の6ヵ月以降にPSPスコアの低下が認められ、他の2つの場合には、PSPスコアは安定していた。・改善が良好の患者は、他の2つの患者と比較し、ベースライン時のPSPスコアが高かった。 【良好vs.不良】オッズ比(OR):0.904、95%信頼区間(CI):0.852~0.961、p<0.05 【良好vs.安定】OR:0.870、95%CI:0.825~0.918、p<0.001・改善が良好の患者は、安定の患者と比較し、女性の割合が高かった(OR:2.699、95%CI:1.030~7.074、p<0.05)。 著者らは「初発統合失調症患者は、長期にわたりさまざまな機能回復プロファイルを示し、長期的な機能的アウトカムを改善するためには、最初の1年、とくに1年目の後半における社会的機能介入が重要である」と報告した。とくに「ベースライン時の機能が不十分な男性患者では、早期介入によるベネフィットが大きい可能性がある」としている。

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抗精神病薬治療が統合失調症患者のQOLに及ぼす影響

 統合失調症およびその他の精神病性スペクトラム障害の患者に対し、薬理学的な抗精神病薬による介入は基盤となる治療である。また、「最善」とされる治療法の選択は、いくつかの臨床領域に基づき行われるべきである。しかし、利用可能な治療法があるにもかかわらず、抗精神病薬を服用中の統合失調症患者から報告されるQOLは依然として非常に低く、抗精神病薬治療の有効性を評価した試験でこの結果が考慮されることはほとんどない。イタリア・カンパニア大学のGaia Sampogna氏らは、抗精神病薬治療が患者のQOLに及ぼす影響を評価するため、システマティックレビューを実施した。その結果、統合失調症患者にとって適切な治療法を選択するうえで、QOLが中心的な要素であることが確認された。Brain Sciences誌2023年11月10日号の報告。 抗精神病薬治療を行っている統合失調症患者のQOL改善の違いを特定するため、次の3点を評価した。(1)抗精神病薬製剤(経口剤、持効性剤、持効性注射剤)、(2)抗精神病薬カテゴリ(第1世代、第2世代、第3世代)、(3)患者の臨床的特徴。 主な結果は以下のとおり。・レビューには、111件の論文を含めた。・抗精神病薬の有効性を評価した試験において、生活の質はたいていの場合、副次的アウトカムとして評価されていた。・第2世代抗精神病薬はQOLに、より良い影響を与えていた。・長時間作用型注射剤抗精神病薬は、QOLのより安定した改善、良好な安全性および忍容性プロファイルと関連していた。 著者は、「より優れた忍容性プロファイル、患者の認知機能および社会的機能に対する有効性が証明されており、より安定した血中濃度を維持できるといった新規治療法が利用可能であれば、統合失調症患者のQOLを改善するための適切な治療戦略となる可能性がある」としている。

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統合失調症、ムスカリン受容体作動薬KarXTは有効か?/Lancet

 xanomeline-trospium(KarXT)は統合失調症の陽性症状および陰性症状の改善に有効であり、概して忍容性は良好であった。米国・Karuna TherapeuticsのInder Kaul氏らが、無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「EMERGENT-2試験」の結果を報告した。著者は、「今回の結果は、KarXTがD2ドパミン受容体遮断のメカニズムを有する現在のすべての抗精神病薬とは異なる、ムスカリン受容体の活性化に基づく有効かつ忍容性の高い、新たなクラスの抗精神病薬となる可能性を裏付けるものであった」とまとめている。KarXTは、現在承認されているすべての抗精神病薬とは異なり、D2ドパミン受容体を遮断しないムスカリンM1およびM4受容体選択的アゴニストであり、末梢性ムスカリン受容体に関連する有害事象を改善する目的で、xanomelineと末梢性ムスカリン性受容体拮抗薬であるtrospium chlorideを組み合わせたものである。統合失調症患者には新しいメカニズムを有する新たな治療法が緊急に必要とされていた。Lancet誌オンライン版2023年12月14日号掲載の報告。KarXTの有効性および安全性をプラセボと比較検証 研究グループは米国の22施設において、精神病が最近悪化して入院を必要としており、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)スコア80以上、臨床全般印象度の重症度(CGI-S)スコア4以上の18~65歳の統合失調症患者を、KarXTまたはプラセボを投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 KarXT群では、最初の2日間はxanomeline 50mgとtrospium 20mgを、3~7日目にはxanomeline 100mgとtrospium 20mgを1日2回投与し、8日目からは用量変更可としてxanomeline 125mgおよびtrospium 30mgを1日2回に増量、あるいは忍容性に応じてxanomeline 100mgとtrospium 20mgに戻すことも可能とした。 主要エンドポイントは、5週時のPANSS合計スコアのベースラインからの変化量とし、修正ITT集団(無作為化された患者のうち、少なくとも1回試験薬を服用し、ベースライン以外でPANSS評価を少なくとも1回受けた患者)を有効性解析対象集団とした。5週間でKarXTは陽性症状と陰性症状を有意に軽減 2020年12月16日~2022年4月13日に407例がスクリーニングを受け、適格基準を満たした252例がKarXT群(126例)またはプラセボ群(126例)に無作為化された。ベースラインのPANSS合計スコアは、それぞれ98.3、97.9であった。 PANSS合計スコアのベースラインから5週時の変化量の平均値は、KarXT群-21.2ポイント(SE 1.7)、プラセボ群-11.6ポイント(1.6)であった(最小二乗平均群間差:-9.6、95%信頼区間[CI]:-13.9~-5.2、p<0.0001、Cohen’s d効果量=0.61)。 副次エンドポイントもすべて、プラセボ群よりKarXT群で有意に良好であった(p<0.05)。 主な有害事象(KarXT群vs.プラセボ群)は、便秘(27例[21%]vs.13例[10%])、消化不良(24例[19%]vs.10例[8%])、頭痛(17例[14%]vs.15例[12%])、悪心(24例[19%]vs.7例[6%])、嘔吐(18例[14%]vs.1例[1%])、高血圧(12例[10%]vs.1例[1%])、浮動性めまい(11例[9%]vs.4例[3%])、胃食道逆流症(8例[6%]vs.0[0%])、下痢(7例[6%]vs.4例[3%])であった。 治療中に発現した有害事象は、錐体外路症状(KarXT群0[0%]vs.プラセボ群0[0%])、アカシジア(1例[1%]vs.1例[1%])、体重増加(0[0%]vs.1例[1%])、傾眠(6例[5%]vs.5例[4%])であり、投与中止に至った有害事象(9例[7%]vs.7例[6%])と同様に、KarXT群とプラセボ群で同程度であった。 なお、同一のEMERGENT-3試験、52週間の非盲検試験であるEMERGENT-4およびEMERGENT-5試験を含む追加の試験により、統合失調症患者におけるKarXTの有効性および安全性に関する追加情報が提供される予定だという。

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10代での妊娠とうつ病~JECS研究

 10代での妊娠は、さまざまな要因によりうつ病リスクを増加させる可能性がある。若年成人期の妊娠は、高齢期の妊娠と比較し、複数のうつ病リスク因子に影響を及ぼすと考えられる。しかし、若年成人期の妊娠におけるうつ病関連のデータは不足している。国立成育医療研究センターの石塚 一枝氏らは、10代および若年成人期の妊娠とうつ病との関連を調査した。その結果、10代および若年成人期の妊娠は、それ以降の妊娠と比較し、うつ病リスクが高いことが示唆された。Archives of Women's Mental Health誌オンライン版2023年11月22日号の報告。 全国的な出生コホート研究である「子どもの健康と環境に関する全国調査(JECS)」のデータを用いて、検討を行った。各年齢層(14~19歳、20~24歳、25~29歳、30~34歳、35歳以上)とうつ病との関連を調査するため、行動的特性および社会人口統計学的特性を調整した後、多変量ロジスティック回帰を実施した。うつ病の評価には、ケスラー心理的苦痛尺度(K6)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・妊娠アンケートに回答した人は、9万6,808人。・10代(14~19歳)および若年成人期(20~24歳)の妊娠は、高齢期(35歳以上)の妊娠と比較し、うつ病リスクの増加と関連していた。 【14~19歳】OR:4.28、95%信頼区間(CI):3.24~5.64 【20~24歳】OR:3.00、95%CI:2.64~3.41・共変量で調整したところ、うつ病リスクの軽減が認められたが、10代および若年成人期の妊娠は、それ以降の妊娠と比較し、うつ病リスクの増加は有意なままであった。 【14~19歳】OR:2.38、95%CI:1.77~3.21 【20~24歳】OR:2.14、95%CI:1.87~2.46 著者らは「これらの調査結果は、10代および若年期の妊婦には、うつ病関連の予防および介入を優先的に実施することを示唆している」としている。

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