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高齢者のベンゾジアゼピン中止、長期的な抑うつ症状改善に寄与

 カナダ・ケベック大学モントリオール校のArnaud Allary氏らは、ベンゾジアゼピン(BZD)の使用が、将来の抑うつ症状、不安、睡眠の質に及ぼす影響を調査した。Aging & Mental Health誌オンライン版2024年7月2日号の報告。 大規模ランダム化比較試験(RCT)であるPASSE-60+研究よりデータを抽出した。60歳以上の参加者73例を対象に、4ヵ月間の中止プログラムを実施し、16ヵ月で4回の評価を行った。BZD使用の変化は、2回の評価時における1日当たりの投与量の差と定義した。コントロール変数は、RCT中止群、プログラム開始前でのBZD使用および抑うつ症状、不安、睡眠の質のいずれかとした。データ分析には、階層的多重回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・短期的には、中止プログラム直後にBZDの使用量減量に伴い、睡眠の質の悪化がみられた。・この関連は、3ヵ月および12ヵ月のフォローアップ調査において有意差は消失した。・長期的には、BZD使用量減量に伴い、抑うつ症状の軽減が認められた。・すべての評価時点において、BZD使用量と不安の強さとの関連は認められなかった。 著者らは「BZD中止により、抑うつ症状が改善される可能性が示唆された。不安や睡眠の質との長期的関連が認められなかったことから、BZD使用の長期有効性についても疑問が残る結果となった」としている。

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1型糖尿病の子どもたちは「糖尿病の苦痛」にさらされている

 1型糖尿病の子どもは、いくつかのメンタルヘルス上の問題を抱えることが多いとする研究結果が報告された。英ケンブリッジ大学およびチェコ共和国国立精神保健研究所のTomas Formanek氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Mental Health」に7月17日掲載された。 報告された研究によると、1型糖尿病の子どもは糖尿病のない子どもに比べて、気分障害を発症する可能性が2倍以上高く、不安症に苦しむ可能性は50%高く、また摂食障害や睡眠障害などの行動上の問題が発生する可能性は4倍以上高いという。ただし、この研究結果は同時に、このようなメンタルヘルス疾患が、1型糖尿病という病態が原因で引き起こされるものではないことも示唆しており、「子どもたちが抱えるこのようなリスクは、むしろ慢性疾患を継続的に管理し続けることに伴う『糖尿病の苦痛』が原因のようだ」と、著者らは述べている。 1型糖尿病は、インスリンを生成している膵臓のβ細胞を免疫系が攻撃することで発症する。β細胞がダメージを受けると、インスリンを生成する能力が失われるため、生存のためにインスリン療法が必要となる。治療は生涯にわたり、日々、絶え間ない自己管理の負担に直面する。また、偏見や差別、自己効力感の低下、将来の合併症の不安、経済的な負担などによるストレスが生じやすく、これらを「糖尿病の苦痛(diabetes distress)」と呼ぶことがある。これまでにもこのような糖尿病の苦痛が、1型糖尿病の子どもたちのメンタルヘルス状態を悪化させたり、自己管理に悪影響を及ぼしたりする可能性が指摘されていた。 Formanek氏らの研究では、チェコ共和国の1型糖尿病の子どもたち4,500人以上の患者登録データが用いられた。データ解析の結果、1型糖尿病の子どもたちに見られるメンタルヘルス関連の問題は、この病気を発症後には常に食事の摂取量を判断したり、血糖値をチェックしたり、インスリンを注射したりしなければならないといった、生活に大きな変化を強いられることに起因するものである可能性が見いだされた。また、社交行事へ参加する機会が減ったり、ほかの子どもたちや教師、さらには家族からも孤立していると感じたりすることも少なくないという実態が明らかになった。 その影響もあって前述のように、1型糖尿病の子どもたちの間で、不安症や摂食障害、睡眠障害などが多く見られた。ただし、統合失調症などの精神疾患を発症するリスクは低く、同年代の子どもたちの約2分の1だった。 論文の上席著者であるケンブリッジ大学のBenjamin Perry氏は、「1型糖尿病患者は『糖尿病の苦痛』を経験しやすいことが知られている。その苦痛には、血糖値に対する極度のフラストレーションや孤立感なども含まれると考えられ、成人でも燃え尽き症候群や絶望感、あるいはコントロールの放棄につながる可能性がある。そのため、1型糖尿病の子どもたちが成人するまでの間に、メンタルヘルス上の問題が顕在化するリスクが高いとしても、不思議なことではない」と述べている。

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ゲーム療法は統合失調症患者の認知機能改善に有効か

 統合失調症患者における認知機能は、機能的アウトカムや日常生活機能の低下の主な原因であり、治療対象として有望である。近年、精神疾患の治療において、さまざまな認知機能領域をターゲットとしたデジタル介入(ゲームベースの介入など)の使用が増加しつつある。そして、統合失調症患者に対するゲームベースのデジタル介入は、治療価値があるとの見解が示唆されている。中国・首都師範大学のJunkai Wang氏らは、統合失調症患者の認知機能をターゲットとした新たなオンライントレーニングプログラム(Komori Life)の利用可能性と初期の有効性を評価した。Translational Psychiatry誌2024年7月16日号の報告。 統合失調症入院患者を対象に、ゲーム介入群(セッション完了:40例)または通常療法群(セッション完了:40例)のいずれかにランダムに割り付け、20回のセッションを実施した。すべての患者に対し、登録時および介入完了後に認知機能、臨床症状の評価を行った。また、健康対照群32例を含むすべての対象に対し、感情情報への注意バイアスを評価するためアイトラッキングを用いた。 主な結果は以下のとおり。・ゲーム介入群および通常療法群において、認知機能または臨床症状の評価で差は認められなかった。・ゲーム介入後も、認知機能または臨床症状のスコアに群×時間の相互関係は認められなかった。・アイトラッキングについては、ベースライン時の注意維持に関して、ゲーム介入群および通常療法群は、健康対照群と比較し、脅威刺激に対する注意力の増加が認められた。・ゲーム介入群は、通常療法群と比較し、介入後の脅威場面への注意バイアスが大幅に改善した(脅威刺激への総持続時間の割合、総注視の割合が減少)。・ゲーム介入の有効性が、認知機能改善と関連しており、脅威への注意維持の向上が認知パフォーマンスの低下と関連していることが部分的に示唆された。 著者らは「本研究は、統合失調症患者の認知機能改善に対する遠隔オンライン認知機能トレーニングプログラムの利用可能性および有効性に関する初めてのエビデンスである。本介入は、既存の精神科治療の補完療法として機能する可能性がある」としている。

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精神科「統合失調症」【臨床実習を味わうケアネット動画Café】第6回

動画解説臨床研修サポートプログラムの研修医のための精神科ベーシックより、内田直樹先生の「統合失調症」を鑑賞します。初期研修は、身体疾患とは見方の異なる精神科に触れられる貴重な機会。統合失調症の特徴を捉えたわかりやすいスライドは必見です!

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航空会社のシフト制労働者の不規則な食事リズムは抑うつや不安と関連

 遅い夕食や長い食事摂取の時間枠などの不規則な食事リズムが、抑うつや不安のリスクを高める可能性のあることが、航空会社のシフト制労働者を対象にした新たな研究で明らかになった。上海交通大学(中国)のMi Xiang氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に7月15日掲載された。 この研究では、中国の主要航空会社の従業員(パイロット、客室乗務員、航空保安検査員)を対象とした継続中の研究(Civil Aviation Health Cohort of China)への参加者2万2,617人(18〜60歳、年齢中央値29.1歳、男性60.6%)のデータが分析された。研究グループは、調査データをもとに、就業日と休日における朝食と夕食を摂取するタイミング、毎日の食事摂取の時間枠、およびイーティングジェットラグを割り出し、抑うつや不安との関連を検討した。 その結果、午前シフトの日における午後8時以降の夕食の摂取は、午後8時前の摂取と比べて、抑うつと不安のリスク増加と関連することが明らかになった(抑うつ:調整オッズ比2.01、95%信頼区間1.78〜2.27、不安:同1.78、1.53〜2.05)。同様の結果は、夜間シフトの日と休日でも認められた。一方、午前シフトの日に食事摂取の時間枠が12時間未満であることは、12時間以上の場合と比べて抑うつと不安のリスクが低かった(同順で、同0.81、0.75〜0.89、同0.84、0.75〜0.93)。この結果は、休日でも同様であった。 また、午前シフトの日における夕食の遅れと夜間シフトの日における夕食の遅れは、抑うつと不安のリスク増加に関連していた(午前シフト:同順で、調整オッズ比1.39、95%信頼区間1.22〜1.58、同1.32、1.13〜1.54、夜間シフト:同順で、同1.21、1.08〜1.36、同1.22、1.06〜1.39)。さらに、午前シフトの日における食事を摂取するタイミングの遅れは抑うつリスクの増加と関連していたのに対し(同1.35、1.13〜1.61)、タイミングの前倒し、つまり早めに食事を摂取することは不安リスクの低下と関連していた(同0.78、0.70〜0.87)。 こうした結果を受けて研究グループは、「航空会社の従業員の食事リズムは、フライトスケジュール(早朝か、夜遅くかなど)に左右されることが分かった。このような不規則な食事リズムは抑うつと不安のリスク上昇と関連していた」と述べている。また、このような結果が得られた理由として、研究グループは、食事時間の変動が、概日リズムとしても知られる体の睡眠・覚醒サイクルに影響を与え、最終的に気分に影響を与える代謝シフトを引き起こすのではないかと推測している。 研究グループはさらに、「航空会社の従業員は厳しい訓練の中で回復力を養っているため、平均的な労働者よりもストレスにうまく対処し、緊急事態を管理する能力が高いと考えられる。それゆえ、典型的なシフト制労働者において不規則な食事リズムが心理面に与える影響はより深刻な可能性がある」と述べている。

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うつ病発症リスクが高い夜型人間、再発リスクへの影響は

 夜型クロノタイプは、うつ病発症リスクが高いといわれている。この影響は、主にうつ病の初期と関連するのか、再発エピソードでも見られるのかはわかっていない。中国・上海交通大学のShuang Hu氏らは、うつ病患者におけるクロノタイプとうつ病重症度との関連が、初回エピソードと再発エピソードで同様であるかを調査した。Chronobiology International誌2024年7月号の報告。 対象は、うつ病患者386例(女性の割合:70.7%、年齢範囲:16〜64歳)。クロノタイプ、睡眠の質、疲労レベル、うつ病重症度の評価には、朝型夜型質問紙(MEQ)、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)、Multidimensional Fatigue Inventory(MFI20)、簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)をそれぞれ用いた。クロノタイプとうつ病重症度との関連を分析するため、多変量回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・クロノタイプ、睡眠の質、疲労レベルは、いずれもうつ病重症度と関連していることが示唆された。・夜型クロノタイプは、初回エピソードのみで、睡眠の質および疲労レベルとは独立してうつ病重症度の有意な増加を予測したが(−0.068、p=0.010)、再発エピソードでは認められなかった(0.013、p=0.594)。 著者らは「サーカディアンリズムに焦点を当てた治療は、初回エピソードのうつ病患者のみで検討することが妥当である」としている。

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メタボリックシンドロームとうつ病〜日本リアルワールドデータ横断的研究

 メタボリックシンドローム(MetS)とうつ病は、どちらも優先度の高い健康問題であり、とくに労働年齢層において問題となる。これまで、MetSとうつ病との関連についての研究は、数多く行われているが、そのすべてが一貫しているわけではない。帝京大学の杉本 九実氏らは、広範なリアルワールドデータを分析することにより、MetSとうつ病の関連性を判断するため、本研究を実施した。Environmental Health and Preventive Medicine誌2024年号の報告。 東京都を除くすべての都道府県の地方自治体職員の2019年度の保険請求および健康診断のデータを用いた。うつ病診断および抗うつ薬の処方月数に応じて、参加者を次の4群に分類した。確実にうつ病ではない(CN群)、うつ病でない可能性が高い(PN群)、うつ病の可能性あり(PD群)、うつ病である(CD群)。MetSおよびその構成要素である内臓肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病と各うつ病カテゴリとの関連性を分析するため、ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・参加対象者は13万59例(CN群:85.2%、PN群:6.9%、PD群:3.9%、CD群:4.1%)。・男性の場合、CN群を基準としたMetSの調整オッズ比(aOR)は、PN群0.94(95%信頼区間[CI]:0.86〜1.02)、PD群1.31(1.19〜1.43)、CD群1.63(1.50〜1.76)であった。・女性のaORは、PN群1.10(95%CI:0.91〜1.32)、PD群1.54(1.24〜1.91)、CD群2.24(1.81〜2.78)であった。・MetSの構成要素のうち内臓肥満、脂質異常症、糖尿病は、うつ病カテゴリと有意な関連が認められた。 著者らは「これまでの報告と同様に、MetSとうつ病との有意な関連が認められた。本調査結果は、MetSとうつ病の関連性についての確固たるエビデンスを提供するとともに、リアルワールドデータ分析が、具体的なエビデンスの提供に有用である可能性を示唆している」としている。

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米国成人の12%が慢性不眠症の診断を受けている

 入眠や睡眠維持に苦労している米国人は何百万人にも上るようだ。米国睡眠医学会(AASM)が米国の成人2,006人を対象に、2024年5月16日から24日にかけて実施した慢性不眠症に関するオンライン調査の結果が6月14日に報告された。この調査から、慢性不眠症の診断を受けた米国成人は12%に上ることが明らかになった。 慢性不眠症の診断を受けた成人の割合を性別ごとに見ると、男性の方が女性よりもわずかに高かった(13%対11%)。また、同割合を年齢層別に見て高い順に並べると、25〜34歳(16%)、35〜44歳(15%)、18〜24歳(14%)、45〜54歳および55〜64歳(いずれも12%)、65歳以上(5%)であった。世代別では、ミレニアル世代(27〜42歳)が15%で最も高く、地域別では、米国西部が最も高く(14%)、中西部が最も低かった(10%)。 慢性不眠症に関連する症状には、日中の倦怠感や眠気、睡眠への不満、集中力の低下、抑うつ、不安、イライラ感、意欲や気力の低下などがある。また、慢性不眠症は、身体的、精神的、感情的な健康を悪化させ、全体的なウェルネスや日常機能に悪影響をもたらす。このほか、うつ病や不安、物質使用、自動車事故、アルツハイマー病、2型糖尿病などのリスクが高まる可能性も指摘されている。 AASM会長のEric Olson氏は、「慢性不眠症は、夜間の睡眠だけでなく日中の気分や機能にも悪影響を及ぼす。ただ幸いなことに、慢性不眠症に対しては効果的な治療法があり、健康と生活の質(QOL)の両方を大幅に改善することができる」と述べている。 慢性不眠症に対する最も効果的な治療法は認知行動療法である。これは、例えば、「一貫性のある睡眠スケジュールを立てる」「眠れないときはベッドから出る」などの行動戦略と、「眠れないことに対する恐怖をより有益な期待に置き換える」などの思考戦略を組み合わせた治療法である。慢性不眠症に対する認知行動療法は6~8回のセッションで行われるのが一般的であるが、もっと早く改善する患者もいるという。 米行動睡眠医学協会(SBSM)会長のMichael Nadorff氏は、「認知行動療法では、慢性不眠症の患者が抱えている根本的な問題を特定し、健康的な睡眠を促進する長期的な解決策を提供するための、高度に個別化されたプランを提供する」と説明している。

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日本の大学院生の自殺に関する実態調査

 日本の大学院の自殺に関する20年間の調査データを分析した結果から、男子学生、工学専攻、留年歴があることなどの特徴が、自殺率の高さと関連していることが明らかとなった。また、自殺の動機として多かったのは就職活動の失敗だったという。お茶の水女子大学保健管理センターの丸谷俊之氏らによる研究であり、「Psychiatry and Clinical Neurosciences Reports」に3月8日掲載された。 大学院生の自殺既遂例に関する研究報告は少ないが、大学院生はさまざまなストレスにさらされており、メンタルヘルスに関する問題を抱えやすいといえる。海外での研究では、指導教員からのプレッシャーや抑うつ症状などが自殺の要因として指摘されている。 著者らは今回、全国の国立大学の大学院生を対象として国立大学保健管理施設協議会が実施している死因に関する調査データを用いて、2002年度から2021年度までの20年間における大学院生の自殺について分析した。学歴(修士・博士)、専攻(7種類)、休学歴、留年歴などと自殺リスクとの関連や、自殺に関連する情報を詳細に検討した。 20年間の累積学生数は238万3,858人(男子171万6,590人、女子66万7,268人)であり、そのうち347人(男子292人、女子55人)が自殺していた。自殺時の平均年齢は26.2±5.1歳、年齢中央値は24.0歳だった。 男子学生は女子学生と比べ、自殺率が高かった(学生10万人当たり17.0対8.2)。性別と修士・博士課程で比較すると、修士課程の男子学生の自殺率が最も高かった(調整済み残差:6.2)。専攻別では、工学、理学、人文科学を専攻する学生は自殺リスクが高く(調整済み残差:それぞれ3.9、2.6、2.1)、医歯薬看護・健康科学、教育学、農学、社会科学を専攻する学生はリスクが低かった(調整済み残差:それぞれ-4.1、-3.1、-1.5、-0.9)。また、留年歴のある学生は留年歴のない学生より自殺率が高かった。しかし、留年歴のない男子学生の自殺リスクは、留年歴のある女子学生よりも高かった(調整済み残差:それぞれ2.9、-0.1)。 精神医学的診断が報告されていた44人の診断名は、気分障害が27人で最も多かった(うつ病19人、双極性障害2人、下位分類不明6人)。また、自殺の推定動機が報告されていた36人のうち、最も多かったのは就職活動の失敗(13人)であり、次いで学業不振(9人)、恋愛関係の問題(5人)が続いた。2020年度には、1人の日本人学生が新型コロナウイルス感染症に関連した就職活動の問題を抱えており、留学生2人はパンデミックに伴う渡航制限が影響していた。 今回の研究で就職活動の失敗が自殺の動機として最も多かったことに関して、著者らは、修士課程・博士課程ともに定員数が大幅に増やされてきた一方で、学術的なポストの数は不足しており、就職活動が困難になっていることに言及している。また、研究結果から、「大学院生における自殺の高リスク群を認識することの重要性」を指摘している。

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うつ病診断歴が双極性障害のアウトカムに及ぼす影響

 双極性障害は、うつ病エピソードから発症することが多く、初期にはうつ病と診断されることが少なくない。杏林大学の櫻井 準氏らは、双極性障害患者における過去のうつ病診断歴が臨床アウトカムに及ぼす影響を調査するため、本研究を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2024年7月2日号の報告。 2005年1月〜2020年10月のJMDCの医療保険請求データを用いて、日本で双極性障害と新たに診断された18〜64歳の患者データを分析した。双極性障害と診断された月を、インデックス月と定義した。過去のうつ病診断歴およびその期間(1年以上、1年未満)により層別化し、精神科入院、すべての原因による入院、死亡率を評価した。ハザード比(HR)、p値の推定には、Cox比例ハザードモデルを用い、潜在的な交絡因子で調整し、ログランク検定によりサポートした。 主な結果は以下のとおり。・分析対象患者5,595例のうち、うつ病診断歴を有していた患者は2,460例、うつ病診断期間1年以上は1,049例、1年未満は1,411例であった。・うつ病歴があった患者となかった患者の比較における、各HRは次のとおりであった。【精神科入院】HR:0.92、95%信頼区間[CI]:0.78〜1.08、p=0.30【すべての原因による入院】HR:0.87、95%CI:0.78〜0.98、p=0.017【死亡率】HR:0.61、95%CI:0.33〜1.12、p=0.11・うつ病歴が1年以上と1年未満の比較における、各HRは次のとおりであった。【精神科入院】HR:0.89、95%CI:0.67〜1.19、p=0.43【すべての原因による入院】HR:0.85、95%CI:0.71〜1.00、p=0.052【死亡率】HR:0.25、95%CI:0.07〜0.89、p=0.03 著者らは「うつ病診断歴およびその期間は、双極性障害診断後の精神科入院リスクを高めることはなく、入院率や死亡率の低下と相関している可能性が示唆された」としている。

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統合失調症患者の代謝パラメータに対する非定型抗精神病薬の影響

 3種類の非定型抗精神病薬(オランザピン、リスペリドン、アリピプラゾール)のいずれかを服用している患者と健康対照者の空腹時血清アスプロシン濃度と代謝パラメータを比較するため、イラン・Hamadan University of Medical SciencesのKiumarth Amini氏らは、横断的研究を実施した。Human Psychopharmacology誌オンライン版2024年6月28日号の報告。 対象は、統合失調症成人外来患者62例および年齢、性別が一致した健康対照者22例。患者は、寛解状態にあり、オランザピン、リスペリドン、アリピプラゾールのいずれかの非定型抗精神病薬による単剤治療を6ヵ月以上実施していた。BMI、空腹時血清アスプロシン、グルコース、HbA1c、インスリン、脂質プロファイルを両群間で比較した。さらに、インスリン抵抗性の基準を満たした人(HOMA-IR:2.5超)およびBMIレベルが高い人(男性:27kg/m2超、女性:25kg/m2超)について両群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・オランザピン群またはリスペリドン群は、アリピプラゾール群および健康対照者と比較し、BMI、空腹時血清グルコース、HbA1c、インスリン、トリグリセライド(TG)、HDLコレステロール、アスプロシンに統計学的に有意な差が認められた。・アリピプラゾール群は、健康対照者と同等の値を示したが、リスペリドン群またはオランザピン群は有意に高い値を示し、オランザピン群では、最も高値であった。・インスリン抵抗性および高BMIの有病率は、オランザピン群またはリスペリドン群において、アリピプラゾール群および健康対照者と比較し、高かった。・血清アスプロシン値は、BMI、HbA1c、空腹時インスリン、HOMA-IR、TGなどいくつかの代謝パラメータと有意な正の相関が認められた。・総コレステロールおよびLDLコレステロールに関しては、有意な差が認められなかった。 著者らは「オランザピンおよびリスペリドンで治療された患者では、アスプロシン値の上昇、体重増加、代謝障害との関連が認められた。血清アスプロシンレベルは、これらの代謝障害と双方向性の関連が示唆されており、潜在的な原因経路を解明するためにもさらなる研究が求められる」としている。

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日本の精神科ガイドライン著者におけるCOI分析

 臨床診療ガイドライン(CPG)は、エビデンスに基づく標準的な患者ケアを提供するために、必要不可欠である。しかし、CPGの著者に対する金銭的な利益相反(COI)により、著者への信頼性が損なわれる可能性がある。東北大学の村山 安寿氏らは、日本の精神科CPGの著者におけるCOIの範囲および規模を調査するため、本研究を実施した。BMJ Open誌2024年6月21日号の報告。 製薬会社より開示された支払い金額を横断的に分析し、日本の双極性障害/うつ病のCPGの著者に対し2016〜20年に支払われた講演謝礼、コンサルティング料、執筆謝礼などを評価した。 主な結果は以下のとおり。・5年間に著者の93.3%に対し支払いが行われており、その総額は400万米ドル超であることが判明した。・著者1人当たりの支払額中央値は5万1,403米ドル(IQR:9,982〜11万1,567)であり、CPG委員長を含む少数の著者に集中していることが顕著であった。・CPGでCOIを開示した著者は、ごく一部に過ぎなかった。・多額の支払いは、CPGに掲載されている新規抗うつ薬や睡眠薬を製造販売している製薬会社でなされた。 著者らは「日本の双極性障害/うつ病CPGの著者のうち、93%以上が製薬会社からの支払いを受けていることが明らかとなった。国際的なCOIマネジメント基準から逸脱していると考えられ、日本の精神科CPGに対する厳格なCOIポリシーの必要性が示唆された」としている。

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統合失調症の肺炎リスクと抗精神病薬や抗コリン負荷との関連

 観察研究において、抗精神病薬は肺炎リスクと関連していることが示唆されているが、抗精神病薬の使用が肺炎リスクにどの程度影響を及ぼすのか、用量反応性、各薬剤と特異的に関連するかは不明である。オランダ・アムステルダム大学のJurjen J. Luykx氏らは、特定の抗精神病薬に関連する肺炎リスクを推定し、多剤併用療法、投与量、受容体結合特性が統合失調症患者の肺炎と関連しているかを調査した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2024年6月26日号の報告。 対象は、1972〜2014年のフィンランドレジストリデータより特定された、16歳以上の統合失調症または統合失調感情障害患者。診断、入院治療、専門外来治療に関するデータは退院レジストリ、外来での治療薬に関するデーは処方箋レジストリより収集した。フォローアップ期間は1996〜2017年、データ分析は2022年11月4日〜2023年12月5日に実施した。抗精神病薬の使用量は、用量別に低用量群(WHOが定義する1日用量[DDD]:0.6未満)、中用量群(DDD:0.6〜1.1)、高用量群(DDD:1.1以上)に分類した。特定の抗精神病薬単剤療法、多剤併用療法、抗コリン負荷に応じて、低、中、高に分類した。主要アウトカムは、肺炎発症による入院とした。肺炎リスクは、抗精神病薬未使用の場合を基準とし、調整済み個別(within-individual)Cox比例ハザード回帰モデルを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、統合失調症患者6万1,889例、平均年齢は46.2±16.0歳、男性の割合は50.3%(3万1,104例)であった。・22年間のフォローアップ期間中に、肺炎で1回以上入院した患者は8,917例(14,4%)、入院後30日以内に死亡した患者は1,137例(12.8%)であった。・全体では、抗精神病薬使用患者は、抗精神病薬未使用患者と比較し、肺炎リスクとの関連は認められなかった(調整ハザード比[aHR]:1.12、95%信頼区間[CI]:0.99〜1.26)。・抗精神病薬単剤療法では、抗精神病薬未使用患者と比較し、用量依存的に肺炎リスクの増加との関連が認められたが(aHR:1.15、95%CI:1.02〜1.30、p=0.03)、多剤併用療法では関連が認められなかった。・抗コリン負荷別に分類した場合、抗コリン負荷の高い抗精神病薬の使用と肺炎リスクとの関連が認められた(aHR:1.26、95%CI:1.10〜1.45、p<0.001)。・肺炎リスクの増加と関連していた抗精神病薬は次のとおりであった。【高用量クエチアピン】aHR:1.78(95%CI:1.22〜2.60)、p=0.003【高用量クロザピン】aHR:1.44(95%CI:1.22〜1.71)、p<0.001【中用量クロザピン】aHR:1.43(95%CI:1.18〜1.74)、p<0.001【高用量オランザピン】aHR:1.29(95%CI:1.05〜1.58)、p=0.02 著者らは「統合失調症患者の肺炎リスクと関連する抗精神病薬は、クロザピン(180mg/日以上)だけでなくクエチアピン(440mg/日以上)やオランザピン(11mg/日以上)も含まれることが示唆された。さらに、抗精神病薬単剤療法および抗コリン負荷の高い抗精神病薬の使用は、用量依存的に肺炎リスクを増加させる可能性がある。本知見は、肺炎リスクの高い抗精神病薬による治療を必要とする患者に対する予防戦略の必要性を示唆している」としている。

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体重増加のリスクは抗うつ薬の種類により異なる

 体重増加は抗うつ薬の一般的な副作用であるが、特定の抗うつ薬は他の抗うつ薬よりも体重を増加させやすいことが、新たな研究で明らかになった。この研究では、例えば、ノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬(NDRI)のブプロピオン使用者は、最も一般的な抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のセルトラリン使用者よりも体重増加のリスクが15%低いことが示されたという。米ハーバード・ピルグリム・ヘルスケア研究所のJason Block氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に7月2日掲載された。 本研究の背景情報によると、抗うつ薬は米国の成人に最もよく処方されている薬剤の一つで、約14%が抗うつ薬を使用しているという。抗うつ薬の使用により頻発する副作用は体重増加である。体重増加は、使用患者の代謝面の健康に長期にわたる影響を及ぼすのみならず、処方された抗うつ薬の使用中止の原因となり、それが不良な臨床アウトカムにもつながり得る。 今回の研究対象者は、米国の8件のヘルスシステムの電子健康記録(対象期間2010〜2019年)から抽出した、抗うつ薬による治療を開始した18歳から80歳までの患者18万3,118人である。抗うつ薬は、SSRIのセルトラリン、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、パロキセチン、NDRIのブプロピオン、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)のデュロキセチン、ベンラファキシンの8種類が対象とされた。抗うつ薬の使用開始から6カ月後の体重の変化が、セルトラリンとの比較で検討された。 その結果、エスシタロプラム、パロキセチン、デュロキセチン、ベンラファキシン、シタロプラム使用者ではセルトラリン使用者に比べて体重が有意に増加しており、セルトラリン使用者との平均差は同順で、0.41kg、0.37kg、0.34kg、0.17kg、0.12kgであった。フルオキセチン使用者とセルトラリン使用者の間に体重増加について有意差は認められず(平均差−0.07kg)、ブプロピオン使用者ではセルトラリン使用者に比べて体重が有意に減少していた(平均差−0.22kg)。また、ベースラインから5%以上の体重増加のリスクは、セルトラリン使用者に比べてエスシタロプラム、パロキセチン、デュロキセチンの使用者では10〜15%上昇していたのに対し、ブプロピオン使用者では15%低下していた。 Block氏は、「われわれの研究では、ブプロピオンのような一部の抗うつ薬は、他の抗うつ薬に比べて体重を増加させにくいことが明らかになった」と述べている。 さらにBlock氏は、「患者やその臨床医が特定の抗うつ薬を選択する理由はいくつかあるが、体重増加はしばしば患者が服薬を中止する原因となる重要な副作用だ。よって、患者と臨床医は、自分のニーズに最も合う抗うつ薬を選択する理由の一つとして、体重増加を考慮してもよいのではないか」と研究所のニュースリリースで述べている。

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産後うつ病リスクとビタミンDとの関連

 妊婦、産後女性、非産後女性、男性の抑うつ症状発現に対するビタミンDの影響を評価するため、米国・南イリノイ大学のVictoria Rose Barri Benters Hollinshead氏らは、血清ビタミンD濃度と抑うつ症状との関連を調査した。Nutrients誌2024年6月14日号の報告。 研究対象集団は、2007〜18年のNHANES公開データより抽出された20〜44歳の妊婦、産後女性、非産後女性(非妊婦/産後の女性)、男性。抑うつ症状、血清ビタミンD濃度、栄養摂取量、人工統計学的データなどの主観的な聴取データおよび客観的な臨床検査データを用いた。主成分分析を用いて2つの食事パターンを作成し、各サブグループのうつ病アウトカムを予測するため、ベイジアン多項モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・ビタミンDの対数傾斜パラメータの推定値は、すべてのコホートにおいてネガティブであり、ビタミンDが増加すると、うつ病割合の減少、非うつ病割合の増加が認められた。・妊婦コホートにおいて、ビタミンDの傾斜は最も急激であり、次いで産後女性、非産後女性、男性の順であった。・妊娠中および産後女性では、ビタミンD濃度が高いと、非産後女性および男性と比較し、うつ病リスクの減少に大きな影響が認められた。・産後女性において授乳中の女性は、授乳していない女性と比較し、ビタミンD濃度の高さとうつ病リスク減少により大きな影響が認められた。

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低脂肪食がうつ病リスクに及ぼす影響〜メタ解析

 低脂肪食がうつ病リスクに及ぼす影響を調査するため、イラン・Shahid Sadoughi University of Medical SciencesのSepideh Soltani氏らは、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Nutrition Reviews誌オンライン版2024年6月19日号の報告。 2023年6月7日までに公表されたRCTをPubMed、ISI Web of Science、Scopus、CENTRALデータベースより検索し、低脂肪食(脂肪摂取量がエネルギー摂取量の30%以下)がうつ病スコアに及ぼす影響を調査した試験を特定した。低脂肪食がうつ病リスクに及ぼす影響のプールされた効果(Hedges g)を推定するため、ランダム効果メタ解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・10件のRCT(5万846例)を分析に含めた。・低脂肪食と通常食との比較において、うつ病スコアに有意な違いは認められなかった(Hedges g=−0.11[95%信頼区間[CI]:−0.25〜0.03]、p=0.12、I2=70.7%[95%CI:44〜85])。・タンパク質含有量が摂取カロリーの15〜20%の場合、低脂肪食(5件、Hedges g=−0.21[95%CI:−0.24〜−0.01]、p=0.04、I2=0%)と通常食(3件、Hedges g=−0.28[95%CI:−0.51〜−0.05]、p=0.01、I2=0%)のいずれにおいても、有意な改善が認められた。・感度分析では、ベースラインでうつ病でない患者において、低脂肪食介入後にうつ病スコアの改善が認められた。 著者らは、「メンタルヘルスが良好な参加者を対象とした研究において、低脂肪食はうつ病スコアに対し、わずかに有益である可能性が示唆された。うつ病スコアの改善には、食事中の脂肪量を調整するよりも、タンパク質を十分に摂取したほうがよいと考えられるが、この効果が長期間持続するかは不明である」としている。

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未治療の急性期統合失調症患者におけるビリルビン値と代謝パラメータとの関連

 酸化システムは、統合失調症発症に重要な影響を及ぼす。統合失調症患者のさまざまなエピソードにおいて、高ビリルビン血症と精神病理や糖脂質代謝との間に、一貫性のない関連が認められている。中国・安徽医科大学のYinghan Tian氏らは、急性期エピソードおよび薬物治療未治療の統合失調症患者を対象に、これらの関連性を調査した。BMC Psychiatry誌2024年5月29日号の報告。 安徽医科大学附属巣湖病院の電子カルテシステムより抽出した5年間(2017年5月〜2022年5月)のデータを用いて、レトロスペクティブ研究を実施した。地元の医療スクリーニングセンターより同期間の健康対象者データを抽出した。対象者のビリルビン濃度(総ビリルビン[TB]、抱合ビリルビン[CB]、非抱合ビリルビン[UCB])、糖脂質代謝パラメータ、簡易精神症状評価尺度(BPRS)スコアを収集した。 主な結果は以下のとおり。・特定された1,468件の症例記録をスクリーニング後、急性期エピソードおよび薬物治療未治療の統合失調症患者(AEDF群)89例および対照群100例を対象に、分析を行った。・AEDF群は、対照群と比較し、CBレベルが高く、HDLコレステロール(HDL-C)を除く糖脂質代謝パラメータのレベルが低かった(各々、p<0.001)。・バイナリロジスティック回帰分析により、AEDF群のビリルビンレベルの高さと独立して関連が認められた因子は、次のとおりであった(各々、p<0.05)。●BPRS総スコア、抵抗サブスケールスコアの高さ●HDL-Cレベルの高さ●総コレステロール、トリグリセライドレベルの低さ 著者らは、「急性期エピソードおよび薬物治療未治療の統合失調症患者では、ビリルビンレベルが上昇しており、ビリルビンレベルが高いほど、精神病理がより重篤で、糖脂質代謝が比較的最適化されていることが示唆された。臨床現場では、この患者集団のビリルビン値を定期的にモニタリングすべきである」としている。

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抗精神病薬誘発性体重増加に対する薬理学的介入〜ネットワークメタ解析

 抗精神病薬誘発性体重増加は、第1世代および第2世代抗精神病薬による治療において重要な問題となるが、しばしば軽視されて、心血管疾患を引き起こす可能性につながる。インド・全インド医科大学のNaveen Chandrashekar Hegde氏らは、抗精神病薬誘発性体重増加に対する利用可能な治療オプションの有効性を評価および比較するため、ネットワークメタ解析を実施した。General Hospital Psychiatry誌オンライン版2024年6月11日号の報告。 MEDLINE/PubMed、Embase、Scopus、Cochraneデータベース、臨床試験レジストリより関連する臨床試験を抽出した。ベースラインからの体重変化に対する介入の全体的な効果をプールするため、ランダム効果ベイジアンネットワークメタ解析を実施した。ネットワークグラフ作成、一貫性モデルの実行、ノード分割分析の実施、SUCRAスコアに従った治療のランク付けを行った。治療期間、ベースライン時の体重、治療戦略を予測変数とし、メタ回帰を行った。エビデンスの確実性に基づき結果を分類した。 主な結果は以下のとおり。・関連する臨床試験は、68件抽出された。・有意な体重減少を示した薬剤および用量は、エフェクトサイズ順に次のとおりであった。●sibutramine 10mg:−8.0kg(−16.0〜−0.21)●メトホルミン 750mg+生活習慣の改善:−7.5kg(−12.0〜−2.8)●トピラマート 200mg:−7.0kg(−10.0〜−3.4)●メトホルミン 750mg:−5.7kg(−9.3〜−2.1)●トピラマート 100mg:−5.7kg(−8.8〜−2.5)●トピラマート 50mg:−5.2kg(−10.0〜−0.57)●リラグルチド 1.8mg:−5.2kg(−10.0〜−0.080)●sibutramine 15mg:−4.5kg(−8.9〜−0.59)●ニザチジン 300mg:−3.0kg(−5.9〜−0.23)●メトホルミン 1,000mg:−2.3kg(−4.6〜−0.0046)・抗精神病薬誘発性体重増加の体重減少に対し、治療期間、ベースライン時の体重、予防と治療戦略の影響は認められなかった。 著者らは、「抗精神病薬誘発性体重増加に対する治療法として、メトホルミン750mg+生活習慣の改善が最も効果的であり、トピラマート200mg、メトホルミン750mg、トピラマート100mgによる治療が中程度の確実性でこれに続くことが確認された」としている。

299.

精神病性双極性うつ病の治療における課題

 精神病性双極性うつ病は、患者数が多いものの十分に研究されていない精神疾患の1つであり、その治療に関連する特定のガイドラインやFDAで承認されている薬剤がいまだない。最近の研究では、一部の抗精神病薬や気分安定薬が双極性うつ病のマネジメントに有効である可能性が示唆されているが、精神病性双極性うつ病に対する有効性は、不明なままである。米国・マサチューセッツ大学チャン・メディカルスクールのMaite A. Cintron Pastrana氏らは、精神病性双極性うつ病のマネジメントには、より集中的な研究が求められることから、関連する既存の文献をレビューした。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2024年7・8月号の報告。 1960年代〜2023年に公表された文献をPubMed、MEDLINE、EMBASE、Googleより検索した。精神病性うつ病との関連性を検討した研究を選択した。 主な結果は以下のとおり。・精神病性双極性うつ病は、複雑な疾患であり、双極性障害患者の50〜75%に精神病性の特徴が認められた。・精神病性躁病の病歴を有する患者では、可能性が高くなった。・治療ガイドラインでは、気分安定薬、抗精神病薬、または電気けいれん療法の併用療法が推奨されるケースが多かったが、第1選択治療は明記されていなかった。・精神病性双極性うつ病の症状は、気分高揚やエネルギーフィーリングが混在する感情によってマスクされる可能性があり、診断や治療の遅延につながる一方で、自殺リスクの上昇が問題となる。・精神病性双極性うつ病に対するさまざまな治療法のアウトカムを評価した研究は限られており、良好な有効性を示すエビデンスがないものの、臨床診療では抗精神病薬が最も使用されている。・とくに、抗精神病薬と選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬または三環系抗うつ薬との併用療法は、効果的である可能性はあるが、気分安定薬は含める必要がある。 著者らは、「精神病性双極性うつ病は、重症度や最適な治療アプローチに関するコンセンサスが欠如しており、メンタルヘルスにおいて重要な課題である。急性の精神病性双極性うつ病に対する効果的な治療、理想的なフォローアップケア、さまざまな治療法に対する治療反応者の特性、その後の治療決定モデルに関する重要な疑問を明らかにするためにも、より専門的な臨床試験や研究が必要とされる」としている。

300.

中高年の果物や野菜の摂取とうつ病発症リスク

 新たな観察研究の報告により、うつ病発症予防に果物や野菜の摂取が重要な役割を果たすことが示唆されている。しかし、高齢者や低中所得国(LMIC)に関する研究は不足している。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のAnnabel P. Matison氏らは、果物や野菜の摂取とうつ病リスクとの関連を明らかにするため、LMICを含むさまざまなコホート研究を分析し、その結果のメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌2024年8月15日号の報告。 対象は、LMICでの4件のコホートを含む10件のコホートより抽出した非うつ病成人地域住民7,801例(平均年齢:68.6±8.0歳、女性の割合:55.8%)。果物と野菜の摂取量は、包括的な食品摂取頻度質問票、食品質問票短縮版、食事歴などにより自己申告で収集した。抑うつ症状の評価およびうつ病の定義には、検証済みの尺度およびカットオフ値を用いた。ベースライン時における果物や野菜の摂取量とフローアップ期間中(3〜9年)のうつ病発症との関連性を評価するため、Cox回帰を用いた。分析は、コホートごとに実施し、結果をメタ解析した。 主な結果は以下のとおり。・4万258人年のフォローアップ期間中、うつ病を発症した対象者は1,630例(21%)であった。・果物の摂取量が多いほど、うつ病発症リスクが低下した(ハザード比[HR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.77〜0.99、I2=4%)。・野菜の摂取量とうつ病発症との関連は認められなかった(HR:0.93、95%CI:0.84〜1.04、I2=0%)。このことは、各コホートで測定法が異なり、本研究のサンプルサイズがこれまでの研究と比較し小さかったため、野菜摂取との関連性が検出されなかった可能性がある。 著者らは、「うつ病予防に対し、果物摂取の有用性は裏付けられたが、野菜については有意な関連性が認められなかった。低中所得国の高齢者を対象とした大規模コホートにおいて、標準化された測定法を用い、さまざまな果物や野菜について調査する必要がある」としている。

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