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ECTが適応となる統合失調症患者は?

 電気けいれん療法(ECT)は双極性障害や大うつ病などの気分障害の治療において有効な手段のひとつである。また、統合失調症の緊張型、重症なうつ病、躁病、その他の感情障害に対して有効な治療法でもある。イタリア、ラ・サピエンツァ大学のMaurizio Pompili氏らは統合失調症患者に対するECTの短期的および長期的な効果や薬物療法との比較を行い、ECT適応患者を明らかにしようと試みた。Schizophrenia research誌オンライン版2013年3月14日号の報告。 ECTが施行された統合失調症患者に関する文献より系統的レビューを行った。ピアレビュー誌より31報が同定され、最も関連性の高い報告が本レビューのために使用された。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者に対するECT使用の最も一般的な適応は、薬物療法の強化であった。また、適応患者の随伴症状は、緊張病症状、攻撃性、自殺企図の順で多かった。・緊張型の患者では、統合失調症の他のサブタイプをもつ患者と比較し、ECTへの反応が有意に優れていた。・薬物療法とECTの併用は、薬物療法耐性患者に対し有用である可能性がある。・従来の薬物療法耐性患者に対し、ECTとリスペリドン、またはECTとクロザピンの併用が最も効果的であった。・薬物療法耐性を示す緊張型、攻撃性、自殺企図を有する統合失調症患者に対し、急速な改善が必要な場合にECTと抗精神病薬との併用療法が推奨される。■関連記事難治性の強迫性障害治療「アリピプラゾール併用療法」難治性双極性障害患者への併用療法は?難治性うつ病に対するアプローチ「SSRI+非定型抗精神病薬」

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調査:統合失調症患者における抗精神病薬の服薬状況

 統合失調症患者において、アドヒアランスは患者の予後を決定する重要な要因のひとつである。スペイン領カナリア諸島保健サービスのFrancisco J. Acosta氏らは、統合失調症患者における抗精神病薬の服薬状況を調査した。その結果、1日の服薬回数や指示された服薬時間が遵守されていないなど、服薬アドヒアランスが不良である実態を報告した。Schizophrenia Research誌オンライン版2013年3月7日号の掲載報告。 本研究では、統合失調症の外来患者74例を対象に、治療薬の投与プロファイルに関する正確な情報を提供するMedication Event Monitoring System(MEMS®)を用いた3ヵ月間モニタリング調査を行った。抗精神病薬の投与プロファイル、治療スケジュールの影響、MEMS®使用によるホーソン効果を評価した。なお、治療スケジュールの影響については、関連する因子、治療に対するアドヒアランス(指示された時間枠内での服薬)を検討した。主な結果は以下のとおり。・モニタリング日数の18.7%に非服薬日が認められ、そのほぼすべてが週末であった。 ・処方された用量の約3分の1が、指示された時間外に服薬されていた。・抗精神病薬の服薬に当たり、1日の服薬回数、指示された服薬時間(朝食、夕食)のいずれも遵守されていなかった。・過量服薬は概してまれであった。・指示された時間枠外での服薬がしばしばみられた。・MEMS®使用によるホーソン効果はみられなかった。・アドヒアランスを“指示された時間枠内での服薬”を含めて定義した場合、服薬遵守率はわずか35%であった。・以上より、統合失調症患者における抗精神病薬の服薬はかなり不規則であることがわかった。非服薬日を減らし、指示された時間枠内での服薬を増やす戦略が必要だと思われた。経口抗精神病薬の正確な投与プロファイル、あるいは治療スケジュールの影響を把握することは、アドヒアランス向上に向けた戦略の考案に有用と思われた。関連医療ニュース ・アリピプラゾールで患者満足度向上?! ・長時間作用型注射製剤は、統合失調症患者の入院減少と入院期間短縮に寄与 ・持効性注射剤のメリットは?アドヒアランスだけではなかった

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抗てんかん薬の長期服用者、80%が骨ミネラル障害

 難治性てんかんで抗てんかん薬を長期服用する患者における、骨粗鬆症など骨ミネラル障害の有病率が報告された。オランダ・マーストリヒト大学医療センターのK. Beerhorst氏らが同患者を対象に行った断面調査の結果、80%が低骨塩量(BMD)症状を有していたという。またそのうち半数超が50歳未満であった。著者は「本研究は、慢性てんかん患者における骨ミネラル障害の問題が大きいことを実証している」と結論している。Acta Neurologica Scandinavica誌オンライン版2013年3月6日号の掲載報告。 抗てんかん薬の長期服用と、低BMD、骨折、骨代謝異常との関連は知られているが、研究グループは、同薬を服用する難治性てんかん患者における骨ミネラル障害の有病率を明らかにすることを目的に断面調査を行った。被験者は、重度てんかん医療センターの1病棟から集めた成人患者205例であった。骨ミネラル障害は、脊椎と大腿骨部の二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)スキャンによるスクリーニング(骨塩量と脊椎骨折の評価など)とラボ検査により解析した。被験者の人口統計学的情報やてんかん症状および医療情報などを記録し、DXA-Tスコアに基づき、骨ミネラル障害(骨減少症、骨粗鬆症)の割合を算出した。DXA-Tスコアと、てんかん尺度との相関性についても調べた。 主な結果は以下のとおり。・被験者205例のうち10例が途中脱落し、195例について解析した。・被験者のうち80%(156/195例)に低BMDが認められた。骨減少症を有していたのは48.2%、骨粗鬆症は31.8%に認められた。・低BMD患者のうち、51.9%(81/195例)は18~50歳であった。・大腿骨頚部のTスコアは、てんかん発作の総期間、薬物負荷の累積、骨折の病歴と有意な関連性がみられた。・線形回帰分析の結果、薬物負荷の累積だけが大腿骨頸部Tスコアの低値を有意に予測した(p=0.001)。関連医療ニュース ・てんかん患者の50%以上が不眠症を合併! ・統合失調症患者は“骨折”しやすいって本当? ・「頻発する腰痛」と「頭痛」の関係

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ベンゾジアゼピン系薬物による認知障害、α1GABAA受容体活性が関与の可能性

 ベンゾジアゼピン系薬物の認知障害は、同薬の作用によるα1GABAA受容体の活性が関与している可能性が示唆された。米国・ハーバードメディカルスクールのLeah Makaron氏らが、アカゲザルによる作業実験研究を行い明らかにした。Pharmacology Biochemistry and Behavior誌2013年3月号の掲載報告。 ベンゾジアゼピン系薬物(BZ)が実行機能の認知領域でパフォーマンスを変える作用について、α1とα5のサブユニットを含むGABA受容体(α1GABAとα5GABA受容体)の役割について評価した。まず、5匹のメスの成体アカゲザル(9~17歳)に、迂回作業を伴う対象想起(object retrieval with detours:ORD)作業の訓練を行った。ORD作業は、サルが透明の箱から食べ物を取り出すために、1回扉を開閉しなければならないというものだった(扉の開閉で箱が回転して食べ物が置かれる)。検討された薬物は、非選択的BZのトリアゾラム、α1GABA選択的アゴニストのゾルピデムとザレプロンであった。 主な結果は以下のとおり。 ・いずれの薬物投与においても、ORD作業の実行に障害が起きた。食べ物を手に入れようとする作業開始に遅延は生じなかったが、食べ物が獲得できなかった割合が増大した。・トリアゾラムとゾルピデムのORDへの影響は、α1GABA選択的拮抗薬βCCTによって阻害された。・トリアゾラムのORDへの影響は、α5GABA選択的拮抗薬XLi-093によっても阻害された。しかしゾルピデムのORDへの影響は同薬では阻害されなかった。・これらの知見は、α1GABAとα5GABA受容体メカニズムの役割を示唆する。すなわち、α1GABA受容体メカニズムが、BZ系薬物が引き起こす実行機能障害に関与している十分な可能性がある。関連医療ニュース ・統合失調症に対するベンゾジアゼピン、最新レビュー知見 ・ベンゾジアゼピン系薬剤の使用で抗精神病薬多剤併用率が上昇?! ・抗精神病薬と抗コリン薬の併用、心機能に及ぼす影響

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グルタミン酸トランスポーター遺伝子と統合失調症・双極性障害の関係

 米国・ニューヨーク州立大学SUNYアップステート医科大学のMarina Myles-Worsley氏らは、統合失調症と双極性障害の間に遺伝的な重複がみられることに着目し、グルタミン酸トランスポーター遺伝子であるSLC1A1遺伝子変異について検討を行った。その結果、SLC1A1遺伝子の欠失が認められ、家系内で共分離していることを報告した。American Journal of Medical Genetics Part B: Neuropsychiatric Genetics誌2013年3月号(オンライン版2013年1月22日号)の掲載報告。 統合失調症と双極性障害の間に遺伝的な重複がみられるというエビデンスが蓄積されており、疾患発症リスクに大きな影響を及ぼす原因変異は、従来から診断の境界とされる部分とクロスしている可能性が示唆される。研究グループは、多世代にわたり統合失調症と双極性障害の両方を有する家系は、背景にある遺伝子破壊の自然経過およびその表現型を明らかにできるため、疾患の発症に関連する共通の生物学的経路を明らかにするうえで有意義な対象であるとして、本検討を行った。5世代のパラオ人家系が保有する遺伝子コピー変異としてしばしば特定される、グルタミン酸トランスポーター遺伝子「SLC1A1遺伝子」の欠失について検討を行った。家系内の21人の検体を用いて定量PCR法を実施した。 主な結果は以下のとおり。・精神障害を有する7人全員で遺伝子欠失を確認した。内訳をみると、「両親が絶対保因者」が3人、「表現型を有さない兄弟姉妹」が1人、「両親が非保因者」が4人であった。・常染色体優性モデルを用いた連鎖解析により、LOD値3.64という結果が得られ、精神障害者においては遺伝子欠失が共分離していることが判明した。・遺伝子欠失の正確な局在を明らかにするため、1人の欠失保因者に対して次世代シーケンスデータ配列を用い、PCR産物であるアンプリコンすべての欠失遺伝子座を評価して正確な欠失エンドポイントを決定した。・その結果、欠失spanは84,298 bpであり、翻訳開始部位の全プロモーター領域が欠落していることが示唆された。その部位は、タンパク質を構成する59アミノ酸の先端であり、グルタミン酸輸送作用を示すドメインの1つである膜貫通Na2+/ジカルボキシル酸共輸送体ドメインを含んでいた。・機能的に関連するSLC1A1変異の発見と、多世代にわたり共分離がみられる家系の存在は、精神障害の病態生理においてグルタミン酸伝達が重要な役割を果たしていることをさらに支持する知見と言えた。関連医療ニュース ・グルタミン酸ドパミンD3受容体遮断による統合失調症の新たな創薬の可能性 ・統合失調症の遂行機能改善に有望!グルタミン酸を介した「L-カルノシン」 ・グルタミン酸作動性システムは大うつ病の効果的な治療ターゲット

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ブプロピオンで統合失調症患者の禁煙達成!?

 統合失調症患者では一般集団と比べて喫煙率が高く、喫煙関連の疾患の罹病率や死亡率が高い。一方で、喫煙率を低下させるために、どのような介入が効果的であるかは不明なままである。英国・Nottinghamshire Healthcare NHS TrustのDaniel T. Tsoi氏らによるシステマティックレビューの結果、ブプロピオンが精神状態への影響を及ぼすことなく禁煙達成率を高められることが示された。また、バレニクリンも禁煙達成率の改善が期待できるが、精神状態への有害な影響が除外できず、また、禁煙したら報酬を与えるといった強化随伴性(contingent reinforcement:CR)の介入は、短期的効果が期待できそうであった。その他にはエビデンスが確かな効果的な介入は見いだせなかったと報告している。Cochrane database of systematic reviewsオンライン版2013年2月28日掲載の報告。 MEDLINE、EMBASE、PsycINFO(いずれもサービス開始から2012年10月まで)とCochrane Tobacco Addiction Group Specialized Register(2012年11月)にて、禁煙または減煙に関する無作為化試験を検索した。統合失調症または統合失調感情障害を呈する成人患者について、あらゆる薬物・非薬物治療とプラセボまたはその他の治療を比較した試験を適格とし、2人の独立レビュワーが試験の適格性と質を評価してデータ抽出を行った。解析の評価項目は、禁煙達成(禁煙)、総喫煙量の減少(減煙)、あらゆる精神状態の変化とした。禁煙、減煙については、治療終了時と介入終了後6ヵ月時点のデータを抽出した。また同定義については最も厳格なものを用い、入手したデータは生化学的検証を行った。有害事象についてはあらゆる報告に注意を払い、また必要に応じてランダムエフェクトモデルも用いられた。 主な結果は以下のとおり。・レビューには、34試験(禁煙試験16件、減煙試験9件、再喫煙予防試験1件、喫煙についてのアウトカムが報告されていた他の目的での試験8件)が組み込まれた。・ブプロピオンとプラセボを比較した試験(7件)のメタ解析の結果、ブプロピオン治療後の禁煙率がプラセボより有意に高かった。 治療終了時の評価(7試験・340例) リスク比(RR):3.03、95%CI:1.69~5.42 6ヵ月後の評価(5試験・214例) RR:2.78、95%CI:1.02~7.58・また両群間に、陽性・陰性症状また抑うつ症状について有意差はみられなかった。・ブプロピオン群において、てんかん発作のような重大な副作用の報告はなかった。・バレニクリンもプラセボと比較して、治療後の喫煙率が有意に高かった。 治療終了時の評価(2試験・137例) RR:4.74、95%CI:1.34~16.71 6ヵ月後の評価(1試験のみで128例、CIもエビデンスに乏しい) RR:5.06、95%CI:0.67~38.24・精神症状に関してバレニクリン群とプラセボ群には、有意な差はみられなかったが、バレニクリン群の2人で希死念慮と自殺関連行動がみられた。・金銭(money)の強化随伴性(CR)を検討していた試験(2件)の解析の結果、禁煙率の上昇と喫煙量の低下の可能性があったが、これが長期に持続するかどうかは不明であった。・統合失調症患者に対する、その他の薬物治療(ニコチン補充療法など)や、禁煙・減煙支援のための心理社会的な介入の試験はほとんどなく、有用性についてのエビデンスは得られなかった。■「ブプロピオン」関連記事禁煙補助薬として抗うつ薬は有用なのか

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抗精神病薬と抗コリン薬の併用、心機能に及ぼす影響

 国立台湾大学病院のWei-Lieh Huang氏らは、抗精神病薬が心機能に及ぼす影響を、ムスカリン受容体に対する親和性および抗コリン薬併用の影響という観点から検討した。その結果、抗精神病薬のムスカリン受容体に対する親和性は、交感神経と副交感神経の両方の調節に影響し、抗精神病薬と抗コリン薬の併用は心拍変動に影響を及ぼすことが示唆された。これまで、抗精神病薬が心血管リスクと関連することは知られていたが、その抗コリン作用と心機能との関連は不明であった。Journal of clinical psychopharmacology誌オンライン版2013年2月14日号の掲載報告。 研究グループは、ムスカリン受容体に対する親和性の高い(HMA)抗精神病薬は副交感神経の調節を低下させ、その現象は心拍変動の測定により観察できると仮定した。また、統合失調症患者において、薬剤性パーキンソニズムの治療に広く用いられる抗コリン薬は、抗精神病薬と相互作用して心拍変動に影響を及ぼしている可能性もあると考えた。これらの仮説を基に検討を行った。研究には統合失調症患者55例が登録された。内訳は、HMA抗精神病薬を使用した例が28例、ムスカリン受容体に対する親和性が低い(LMA)抗精神病薬を使用した例が27例であった。HMA群とLMA群の心拍変動値を比較し、相関解析および回帰分析によりHMA、LMAと心拍変動との関連を評価した。さらに、抗コリン薬の影響も相関解析により検討した。 主な結果は以下のとおり。・HMA群はLMA群に比べ、低周波(LF)パワー、高周波(HF)パワー、総パワー(TP)、normalized LF(LF%)が有意に低かった。・回帰分析により、ムスカリン受容体に対する親和性がLF(β=-0.447、p<0.001)、HF(β=-0.390、p=0.002)およびTP(β=-0.399、p=0.001)に関連するという、仮説を支持する結果が示された。・LMA抗精神病薬と抗コリン薬の併用は、LF%に影響を及ぼした(β=0.326、p=0.006)。・LMA群において、抗コリン薬の使用とLF%およびLF/HFとの間に正の相関が認められた。・HMA群において、抗コリン薬使用例を除外した後、等価量の抗精神病薬とHFとの間に負の相関が認められた。・抗精神病薬のムスカリン受容体に対する親和性は、交感神経と副交感神経の両方の調節に影響し、抗精神病薬と抗コリン薬の相互作用が心拍変動に影響することが示唆された。関連医療ニュース抗精神病薬の高用量投与で心血管イベントリスク上昇:横浜市立大抗精神病薬多剤併用による代謝関連への影響は?【ポール・ヤンセン賞受賞】夜間における抗精神病薬関連のQT延長リスク

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5つの重大精神疾患に共通する遺伝的リスク因子を特定/Lancet

ゲノムワイド関連解析の結果、5つの重大な精神疾患自閉症スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害、双極性感情障害、大うつ病性障害、統合失調症]に共通する遺伝的なリスク因子を特定したことを、米国・マサチューセッツ総合病院のJordan W Smoller氏ら精神科ゲノム協会(Psychiatric Genomics Consortium:PGC)のCross-Disorder Groupが報告した。精神疾患の発症メカニズムは大部分が明らかになっておらず、そのため鑑別を困難なものとしている。一方で発症に関して遺伝的なリスク因子が重視され、遺伝的な重複の評価などが行われるようになり、家族研究や双子の先行研究において精神疾患間で共通する遺伝子の存在などが報告されていた。Lancet誌オンライン版2013年2月27日号掲載報告より。ヨーロッパ人3万3,332例のSNPデータをゲノムメタ解析 PGCは2007年に、19ヵ国の上記5つの疾患のデータを集約してゲノムメタ解析を行うことを目的に立ち上げられた。本検討では、これまでに統合失調症と双極性障害、双極性障害と大うつ病などの疾患間で報告されていた遺伝的な重複について、5つの疾患間でゲノムメタ解析を行った場合に、遺伝的に共通する特異的な異型が認められるかを目的とした。 解析は、ヨーロッパ人3万3,332例の5つの疾患に関するSNPデータと、対照群2万7,888例のデータについて行われた。カルシウムチャネル活性遺伝子の変異が多様性に影響か 主要解析の結果、5つの疾患間で重複するSNPの4つの領域が特定された(p

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(66)〕 脳と精神の世紀は始まったばかり

死後脳の大規模(33332 cases and 27888 controls)解析により、5つの精神疾患(自閉症スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害、双極性感情障害、大うつ病性障害、統合失調症)に共通の(cross-disorder)、いくつかの一塩基多型との関連が見いだされたという報告である。 著者らはサマリーでの「解釈」で「精神医学における記述的症候群を超えて、疾患の原因に基づく診断学というゴールに向けたエビデンスをもたらした」と高らかに宣言している。確かに、これにより精神医学は科学として確実に一歩前進した。しかし、著者らはゴールまでの気の遠くなるような距離を知っているに違いない。 医師の皆さんはご承知かと思うが、他職種の方や学生さんも読者におられると聞いているので背景を説明しよう。 精神疾患は現代においても検査値のような生物学的指標が存在しないため、古典的な記述診断学がいまだに重要である、というより生命線である。したがって極度の論理的厳密性が要求されるし、人間という存在を包括的に捉えることが求められるため関心領域が広く、診断学は小宇宙のごとき知の体系である。また解離性障害(米国で文化現象として解離性同一性障害―俗にいう多重人格―が激増したり、幼少期の性的虐待に関する偽記憶をめぐる論争が起こったりした)や昨今の成人発達障害などの例を紐解くまでもなく、現実の社会と大きく相互作用を持つため、静的ではなく動的な、あえて言えば生きている体系なのである。 だが、診断学は病因から説明するものではないため、精神疾患がなぜ発症するのかという疑問は残される。そこで昔から生物学的要因(遺伝子)か後天的要因(たとえばストレス)かという、俗にいう「氏か育ちか」という論点がある。 筆者の専門とする認知症領域は、比較的生物学的指標が明らかになってきた領域である。アルツハイマー型認知症の新しい診断基準では、研究的カテゴリーにおいてアミロイドβとタウ蛋白等が取り入れられているが、原文を読めばわかるが所詮は参考所見であり、「臨床診断に勝るものなし」というのが現状である。今回の一塩基多型も、おそらく診断や治療には直接結びつくものではないだろう。 つまり、脳と精神の世紀は始まったばかりなのである。おそらくこれから大航海時代が訪れ、想像もつかないようなイノベーションが起こるかもしれない。著者らの言うように、記述診断学の絶対性は少しは揺らぐだろうが消えることはないだろうし、今後は社会学や生物学と関連して、われわれ精神科医が知らなければならないことが激増しそうだ。なかでも近年発展の著しい遺伝学は、どこまで私たちの精神を解き明かすのだろうか・・・めまいを禁じ得ない。 最後にこのような巨大なコンソーシアムを作り上げるために大変なご苦労をされた著者らを心から賞賛したい。ここから先は内輪のことだが、それにしても、これら5つの疾患に共通の基盤を探すとは、いかなる仮説を立てているのだろうか?(とりあえずこの論文ではカルシウムチャネル云々と書いてはある)。この論文は実は面白い論文で、改めて素直に眺めると新しい局在論にも思えるし、単一精神病理論の回帰にも見えなくもない(通常は統合失調症と双極性感情障害までなのだが)。精神科医の同僚たちと医局でおしゃべりをするネタが増えたようだ。

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アリピプラゾール vs.その他の非定型抗精神病薬:システマティックレビュー

 英国・East Midlands Workforce DeaneryのPriya Khanna氏らは、統合失調症に対するアリピプラゾールの有効性および忍容性について、他の非定型抗精神病薬と比較した試験結果を評価するシステマティックレビューを行った。Cochrane Database of Systematic Reviewsオンライン版2013年2月28日号の掲載報告。 レビューは、Cochrane Schizophrenia Group Trials Registerによる文献検索(2011年11月時点)とともに、製薬会社や医薬品承認省庁、論文執筆者から追加の情報などを得て行われた。統合失調症または統合失調症様精神障害を有する患者を対象とした、アリピプラゾール(経口薬)とその他の抗精神病薬(経口・非経口含む:アミスルプリド、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、セルチンドール、ジプラシドン、ゾテピン)を比較したすべての無作為化試験(RCT)を適格試験とした。ランダムエフェクトモデルに基づきintention-to-treat分析法にてリスク比(RR)と95%信頼区間(CI)を算出し、可能な限り主要アウトカムの比較リスクを算出した。また平均差(MD)の算出や、バイアスリスクについての評価も行われた。 主な結果は以下のとおり。・レビューには、12試験、被験者6,389例のデータが組み込まれた。・アリピプラゾールとの比較試験は、オランザピン、リスペリドン、ジプラシドンについて行われており、すべての試験が利害関係のある製薬会社がスポンサーとなり行われていた。・全被験者のうち30~40%が試験を早期に中止しており、妥当性(群間差なし)は限定的なものであった。[対オランザピン試験]・全体的な状態(global state)には差がみられなかった(703例・1試験、短期RR:1.00、95%CI:0.81~1.22/317例・1試験、中期RR:1.08、95%CI:0.95~1.22)。・精神状態についてはオランザピンでやや良い傾向がみられた[1,360例・3試験、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)総合スコアのMD:4.68、95%CI:2.21~7.16]。・錐体外路症状には有意な差はみられなかったが(529例・2試験、RR:0.99、9%CI:0.62~1.59)、コレステロール値の上昇(223例・1試験、RR:0.32、95%CI:0.19~0.54)、全重量の7%以上の体重増加(1,095例・3試験、RR:0.39、95%CI:0.28~0.54)はアリピプラゾール群のほうが少なかった。[対リスペリドン試験]・全体的な状態(384例・2試験、重大改善なしに関するRR:1.14、95%CI:0.81~1.60)、精神状態(372例・2試験、PANSS総合スコアのMD:1.50、95%CI:-2.96~5.96)に関して、アリピプラゾールの優位性は示されなかった。[対ジプラシドン試験]・アリピプラゾールとの比較は1試験(247例)であり、全体的な状態[臨床全般印象・重症度尺度CGI-S)スコアのMDの平均変化:-0.03、95%CI:-0.28~0.22]、精神状態[PANSS総合スコアのMD:-3.00、95%CI:-7.29~1.29]の変化はともに同程度であった。・いずれか1つの非定型抗精神病薬と比較した際、アリピプラゾールは、活力(523例・1試験、RR:0.69、95%CI:0.56~0.84)、気分(523例・1試験、RR:0.77、95%CI:0.65~0.92)、陰性症状(523例・1試験、RR:0.82、95%CI:0.68~0.99)、傾眠(523例・1試験、RR:0.80、95%CI:0.69~0.93)、体重増加(523例・1試験、RR:0.84、95%CI:0.76~0.94)にて全体的な状態の改善を示した。・アリピプラゾール群の被験者では、嘔気(2,881例・3試験、RR:3.13、95%CI:2.12~4.61)の報告が有意に多かったが、体重増加(全重量の7%以上の増加)は有意に少なかった(330例・1試験、RR:0.35、95%CI:0.19~0.64)。・アリピプラゾールは、攻撃性への有望な作用がある見込みがあたが、データが限定的であった。これは別の機会のレビューの焦点となるであろう。・著者は「すべての比較に関する情報には限界があり、必ずしも臨床に適用するとは限らない」とした上で、「アリピプラゾールは明らかな副作用プロファイルのない抗精神病薬である」と結論した。また、長期データが十分でないことを考慮すべきであり、今後は中国で行われている複数の試験や、進行中の大規模な独立したプラグマティックな試験のデータなどを組み込み、レビューのアップデートを行うことで新たなデータが得られると述べている。関連医療ニュース ・10年後の予後を見据えた抗精神病薬選択のポイント ・バイポーラの躁症状に対するアリピプラゾールの位置付けは? ・統合失調症、双極性障害の急性期興奮状態に対する治療:   アリピプラゾール筋注に関するコンセンサス・ステートメント(英国)

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初期症状がより重症のうつ病患者のほうが、低レベル介入の効果は大きい?/BMJ

 うつ病患者に対する、パンフレットによる自助といった低レベルの介入は、初期症状がより重症であるほうが、より軽症である人に比べ、その効果は高いことが、メタ解析の結果、示された。英国・マンチェスター大学のPeter Bower氏らによる報告で、これまで、重症うつ病患者に対する低レベル介入効果の有無については不明であった。本結果を踏まえて著者は、「より重症のうつ病患者に対する低レベルの介入は、段階的ケアの一部として有用な可能性はある」と述べている。BMJ誌オンライン版2013年2月26日号掲載の報告より。16試験、2,470人のデータをメタ解析 研究グループは、うつ病患者に関する16試験、被験者総数2,470人のデータを組み込んだメタ解析を行い、うつ病の初期症状の程度と低レベルの介入による効果について、その関連性を分析した。 低レベルの介入としては、うつ病患者向けのパンフレットによる自助、限定的な専門家によるサポート、インターネットを活用した介入などだった。 うつ病症状の程度については、ベック抑うつ評価尺度(BDI)またはうつ病自己評価尺度(CES-D)により評価した。相互作用の程度は小さく、臨床的には有意ではない可能性も 被験者は低レベルの介入を提供されたが、実際にはその多くがベースライン時に中等症から重症のうつ状態だった。 解析の結果、ベースライン時にうつ状態がより重症の人では、より軽症の人に比べ、低レベル介入による治療効果が高いことが示された(回帰係数:-0.1、95%信頼区間:-0.19~-0.002)。 ただし、この相互作用の程度は小さく、臨床的には有意ではない可能性もあった。 研究グループは、初期症状がより重症のうつ病患者に対する低レベルの介入効果は、より軽症のうつ病患者に対する同介入効果と同等以上であることが示されたと結論。重症うつ病患者への低レベル介入は有用な可能性があるとした。

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仕事のストレスが大きいほど、うつ病発症リスクは高い:獨協医科大学

 日々の仕事で深刻な悩みやストレスを抱えている日本人就労者の割合は60%を超え、仕事への義務感による精神的重圧から、精神障害および自殺を起こす頻度が増加している。そこで獨協医科大学の和田佳子氏らは、職業性ストレス簡易調査票(BJSQ)で測定・評価したストレス反応から、うつ病のリスクを識別しうるか否かを明らかにすることを目的としたコホート研究を行った。PLoS One誌オンライン版2013年2月12日号の掲載報告。  対象は、2005年にBJSQを用いたストレス反応の評価を行った1,810例(20~70歳)で、2007年8月までの傷病手当の記録をもとに追跡した。うつ病の発症は、傷病休暇の理由として、医師の診断書に「うつ病」または「抑うつ症状」という記載がある場合とした。被験者を、ベースラインのBJSQ総スコアに基づいてQl、Q2、Q3、Q4の四分位に分け、さらに高スコア群(Q4)と低スコア群(Q1~Q3)に分けた。BJSQで評価されるストレス反応のうつ病発症に対するリスク比は、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・平均追跡期間1.8年の間に、1,810例中14 例がうつ病を発症した。・うつ病を理由とする傷病休暇について、高スコア群の低スコア群に対するリスク比は2.96(95%CI:1.04~8.42、 傾向p= 0.002)であった。 ・性別、年齢、結婚歴、子どもの有無で調整後のリスク比は、未調整の場合と同様であった。・以上の結果から、BJSQで評価されるストレス反応は、うつ病の発症リスクを証明することが示唆される。関連医療ニュース ・日本人のうつ病予防に期待?葉酸の摂取量を増やすべき ・抗うつ薬を使いこなす! 種類、性、年齢を考慮 ・うつ病治療に「チューインガム」が良い!?

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統合失調症の再燃や再入院を減少させるには:システマティックレビュ―

 統合失調症の再燃や再入院を減少させるには、早期警告症状への気づきを促す介入が重要であることが、英国・ノッティンガム大学のRichard Morriss氏らによるシステマティックレビューの結果、明らかとなった。Cochrane database of systematic reviewsオンライン版2013年2月28日掲載の報告。 本レビューでは早期警告症状気づきを促す介入による効果(再燃までの時間、入院、機能的側面、陰性・陽性症状)について、通常精神科治療に加えた場合と通常治療のみとを比較することを目的とした。Cochrane Schizophrenia Group Trials Register(2007年7月~2012年5月)において該当する無作為化試験による論文を検索し、データを抽出した。追跡不能な参加者が50%以上いた試験はあらかじめ除外した。 主な結果は以下のとおり。・無作為化試験32件、クラスター無作為化試験2件において無作為化された3,554例のデータが本レビューに組み込まれた。早期警告症状気づきへの介入単独でのアウトカムを検討した試験は1報のみであった。・早期警告症状気づきへの介入群は、通常治療群よりも再燃率が有意に低かった(23%対43%、RR:0.53、95%CI:0.36~0.79、15試験・1,502例;エビデンスレベルはとても低い)。・再燃までの時間は、両群間で有意な差はみられなかった(6試験・550例;エビデンスレベルはとても低い)。・再入院のリスクは、早期警告症状気づきへの介入群が通常治療群よりも有意に低かった(19%対39%、RR:0.48、95%CI:0.35~0.66、15試験・1,457例;エビデンスレベルはとても低い)。・再入院までの時間は、両群間で有意な差はみられなかった(6試験・1,149例;エビデンスレベルはとても低い)。・介入を受けた被験者の満足感やコストについては、確定的なエビデンスが不足していた。・著者らは、「一連の試験のエビデンスレベルは低く、また介入単体としての効果が不明である(検討が1試験のみであったため)」とした上で、「再燃や再入院の減少は費用対効果への波及も期待できることから、コストや各種の医療サービス活用について、重症患者・家族が期待する有効性のアウトカムを含めた系統的評価を行うべきである」とまとめている。関連医療ニュース ・10年先を見据えた抗精神病薬選択のポイント ・統合失調症患者の再発を予測することは可能か? ・長時間作用型注射製剤は、統合失調症患者の入院減少と入院期間短縮に寄与

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統合失調症患者の社会的認知機能改善に期待「オキシトシン」

 統合失調症患者は社会的認知機能(感情認識、他者への共感、パースペクティブテイキングメンタル[相手の立場で考える能力]を含む)が広い範囲で損なわれていることはこれまでの研究で明らかとなっている。最近の研究によると、統合失調症患者における社会的障害にオキシトシン作動性システムが関連しているともいわれている。イスラエル・ハイファ大学のM Fischer-Shofty氏らは、統合失調症患者に対するオキシトシン治療が社会的認知機能を改善するかを検討した。Schizophrenia research誌オンライン版2013年2月19日号の報告。 対象は統合失調症と診断された患者35例および精神的に問題のない健常者46例。すべての対象患者に、オキシトシン(24IU)またはプラセボの鼻腔内単回投与を1週間間隔で行った。対人的知覚課題(IPT)を用い、「親族関係」「親密さ」を健常者と比較し評価した。 主な結果は以下のとおり。・全体ではすべての参加者において、プラセボ投与時と比較し、オキシトシン投与後に「親密さ」、「親族関係」の判定がより正確であった。・健常者と比較し、患者群では「親族関係」の有意な改善が認められた。・本研究は、オキシトシン投与により統合失調症患者の社会的認知機能が改善すること、さらに健常者よりも高い治療効果が期待できることが示された最初の研究のひとつである。関連医療ニュース ・オキシトシン鼻腔内投与は、統合失調症患者の症状を改善 ・認知機能への影響は抗精神病薬間で差があるか? ・統合失調症患者の認知機能や副作用に影響を及ぼす?「遊離トリヨードサイロニン」

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テレヘルス(遠隔医療)、慢性疾患患者のQOLや不安・うつ病への効果は?/BMJ

 英国・シティ大学ロンドンのMartin Cartwright氏らは、テレヘルス(遠隔医療)による慢性疾患患者への介入について、QOLおよび精神的アウトカムへの効果について評価を行った。テレヘルスは、患者の自己モニタリング評価を遠隔的にできる簡便性から、医療コストを削減し健康関連QOLを改善するとして推進されてきたが、その有用性についてのエビデンスは相反する報告がされている。また不安症やうつ病への効果についてはほとんど評価が行われていなかったという。BMJ誌オンライン版2013年2月26日号掲載より。 英国内テレヘルス研究参加者のうち慢性疾患患者1,573例について解析 Cartwright氏らは、2008年5月~2009年12月に被験者を集めて行われたWhole Systems Demonstrator(WSD)テレヘルス研究(3,230例)で慢性疾患(COPD、糖尿病、心不全)を有していると質問票で回答していた1,573例について評価を行った。WSDテレヘルス研究は、英国内の異なる医療サービスシステムの4つのプライマリ・ケアトラストが管轄する3地域(コーンウォール、ケント、ニューハム)から被験者を募り、GP(一般開業医)単位で無作為化し、テレヘルスと通常治療の介入効果を比較した。評価は、ベースライン、4ヵ月時点(短期)、12ヵ月時点(長期)で行われた。 評価はまずintention to treat解析を行い、GP単位および共変量単位による多変量モデルにて、3回すべての評価を受けた759例(評価完遂コホート)と、ベースライン+どちらか1回(評価可能コホート)について解析した。次にper protocol解析による有効性の評価を、評価完遂コホート633例、評価可能コホート1,108例を対象として行った。 主要評価項目は、健康関連QOLの一般的尺度(SF-12、EQ-5Dで身体面・精神面を評価)、不安症(Brief State-Trait Anxiety Inventoryの6項目で評価)、うつ症状(Centre for Epidemiological Studies Depression Scale:CES-Dの10項目で評価)とした。 テレヘルス群と通常治療群の差は小さく、アウトカムについて有意差がない intention to treat解析の結果、テレヘルス群と通常治療群の差は小さく、すべてのアウトカムについて、評価完遂コホート(各アウトカムのp値範囲:0.480~0.904)、評価可能コホート(同:0.181~0.905)のいずれにおいても有意な差はみられなかった。また、事前に定義した、両群最小限の臨床的に意義のある差(MCID、標準差0.3とした)は、いずれのアウトカムも4ヵ月時点、12ヵ月時点ともに達成しなかった。 per protocol解析の結果でも、テレヘルス群と通常治療群は、あらゆるアウトカムについて有意差がないことが示された(評価完遂コホートの各アウトカムのp値範囲:0.273~0.761、評価可能コホートの同値:0.145~0.696)。 解析の結果を踏まえて著者は、「WSDテレヘルス研究参加者を対象とした評価において、テレヘルスは通常治療と比べて効果的ではなかった。テレヘルスの12ヵ月間の介入はCOPD、糖尿病、心不全患者のQOLや精神的アウトカムを改善しなかった」と結論。テレヘルスは、QOLや精神的アウトカム改善を目的とした導入はすべきではないだろうと警鐘を鳴らしている。

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境界性パーソナリティ障害患者の自殺行為を減少させるには

 英国・アバディーン大学のJohn Norrie氏らは、境界性パーソナリティ障害患者を対象とした認知行動療法(CBT)に関する無作為化対照試験「BOSCOT」において、治療時間とセラピストの能力が自殺行為の回数に及ぼす影響を検討した。その結果、有能なセラピストが適当な時間の認知行動療法を行うことで、境界性パーソナリティ障害患者の自殺行為が大幅に減少する可能性が示唆されたことを報告した。Psychology and Psychotherapy誌オンライン版2013年2月19日号の掲載報告。 BOSCOT試験は、市中のクリニックが参加し、英国国民保健サービス(UK National Health Service)によって実施された質の高い無作為化対照試験である。対象は、英国内の3地域(ロンドン、グラスゴー、エアシャイア/アラン)から登録された境界性パーソナリティ障害患者106例であった。被験者は、通常治療+パーソナリティ障害に対するCBT(CBTpd)を併用する群、または通常治療のみ群に1対1に無作為に割り付けられた。通常治療の内容は、地域や個人によりさまざまであったが、試験時の英国NHSが保障していたルーチンな治療が行われた。CBTpdは、12ヵ月間にわたり平均16のセッションが行われた。研究グループは、BOSCOT試験で報告された治療効果について、とくに治療時間とセラピストの能力が主要アウトカムである自殺行為の回数と精神科入院に及ぼす影響について、操作変数回帰モデル(instrumental variables regression modelling)を用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・無作為化後2年時点で、すべてのアウトカムデータが得られた患者は101例であった。・intention-to-treat(ITT)集団において、CBT群では2年の間に自殺行為が平均0.91(95%CI:0.15~1.67)に減少したことが報告された。・治療時間とセラピストの質の影響を加味すると、有能なセラピストが適当な時間のCBTを行うことで、効果は約2~3倍高くなると推察された。・以上の結果を踏まえて著者らは、「治療の量やセラピストの能力の影響の評価は複雑であるが、CBTpdにおいて研鑽を積んださらに有能なセラピストが関与することで、境界性パーソナリティ障害患者における自殺行為の回数が著しく減る可能性が示唆された」と結論した。・また、本検討のような試験について、「最適な療法の提供を目指した治療効果の評価では、治療時間とセラピストの能力の両方を、常に対照しながらデータ収集に努めるべきである」ともコメントしている。関連医療ニュース ・パニック障害 + 境界性パーソナリティ障害、自殺への影響は? ・境界性パーソナリティ障害患者の症状把握に期待!「BPDSI-IV」は有用か? ・性的強迫観念は、統合失調症患者で頻度が高く、自殺行動と独立して関連

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うつ病治療に「チューインガム」が良い!?

 これまでの研究によると、チューインガムはストレスや抑うつ症状を軽減する可能性が示唆されている。しかし、うつ病治療におけるチューインガムの臨床応用に関する研究はあまり報告されていない。トルコ・アタテュルク大学のFurkan Muhammed Erbay氏らは、うつ病患者に対するチューインガム使用の影響を検討した。Appetite誌オンライン版2013年2月12日号の報告。 対象は軽度~中等度のうつ病患者30例。薬物治療単独群とチューインガム併用群に割り付け、6週間治療を行った。うつ病のレベルを測定するためにハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)トルコ版を用いた。治療後の評価は、グループ割り付けを認識していない医師により実施した。主なHAM-Dスコアと各項目の変化量はそれぞれ独立したサンプルのt検定とカイ二乗検定により分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・チューインガム併用群は薬物治療単独群と比較し、治療によく反応した。・チューインガムの最も有益な効果は、食欲不振や鼓腸などの胃腸症状で認められた。・チューインガムは、抑うつ症状に直接的な効果を示すかは不明なものの、うつ病に起因する症状を軽減する可能性があると考えられる。関連医療ニュース ・SSRI+非定型抗精神病薬の併用、抗うつ作用増強の可能性が示唆 ・うつ病患者の食事療法、ポイントは「トリプトファン摂取」 ・抗うつ薬を使いこなす! 種類、性、年齢を考慮

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統合失調症の陰性症状有病率、脳波や睡眠状態が関連か

 統合失調症の研究では、臨床的な不均一性が混乱を招いていることを踏まえ、米国・ウェイン州立大学のNash N. Boutros氏らは、Deficit Syndrome(DS)を考慮した統合失調症の陰性症状集団の特定を試みた。統合失調症症候群に含まれる疾患として欠損型統合失調症(deficit schizophrenia)が提唱されており、欠損症候群診断基準(SDS;Scale for the Deficit Syndrome)の活用により持続的な陰性症状を特徴とするサブグループの特定が可能とされている。しかし長年にわたり、統合失調症の陰性症状集団の電気生理学的な相互作用を検討した研究は報告されているが、DSに焦点を当てた研究はごくわずかしかないのだという。Clinical Schizophrenia & Related Psychoses誌オンライン版2013年2月21日号の掲載報告。 研究グループは、PubMedおよびMedlineにて、「陰性症状」および「Deficit Syndrome」、電気生理学的評価ツール(「脳波検査(EEG)」「Evoked Potentials(EPs)」「睡眠ポリグラフ(PSG)」のうち1つ)が、インデックスとして付けられているすべての研究報告を検索した。 主な知見は以下のとおり。・この研究はまだ揺籃期にあるが、2つの有意な傾向が明らかになった。・第1に、EEGのスペクトル研究により、覚醒中の徐派(slow wave)活性の増大と陰性症状の有病率が結び付くこと。・第2に、睡眠研究が、徐波睡眠(slow-wave sleep)の減少と陰性症状の有病率との関連を示していることである。・また、数例の研究で陰性症状とα派活性の低下との関連も示されていた。・感覚情報のゲーティングやP300 attenuationなどその他の異常については、ほとんど報告がなかった。・DSの電気生理学的特性を対象としていた研究は2件であった。いずれの研究も、DSは統合失調症とは異なる疾患であり、単なる重症型ではない可能性を示唆するエビデンスが示されていた。関連医療ニュース ・抗精神病薬投与前に予後予測は可能か? ・長時間作用型注射製剤は、統合失調症患者の入院減少と入院期間短縮に寄与 ・統合失調症患者の再発を予測することは可能か?

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日本人のうつ病予防に期待?葉酸の摂取量を増やすべき

 日本人労働者を対象とした研究の結果、抑うつ度は、教育レベルならびに収入と有意な関連があり、栄養面では葉酸摂取と有意な関連があることが明らかにされた。国立国際医療研究センターの宮木幸一氏らが、本邦初の研究報告として発表したもので、「葉酸の摂取増を図る運動が、メンタルヘルスに関する社会的格差の問題解消に結びつく可能性がある」と報告した。Nutrients誌2013年2月18日号の掲載報告。 世界的に、社会経済状況(SES)と健康アウトカムとの関連は注目されており、これまで、低SES群は高SES群と比べて健康によいとされる栄養成分の摂取量が低いことなどが報告されていた。食事摂取量に関する先行研究では、葉酸と心血管疾患や大腸がん、うつ病、認知機能との関連を示す報告が複数ある。研究グループは、葉酸の摂取は収入による影響を受けることが考えられるとして、SESと葉酸摂取量および健康アウトカムとの関連を調べることを目的とした。なお先行研究では、収入などと葉酸摂取量を検討したものはあるが、教育との関連を検討したものはないという。本研究は、文部科学省助成研究であるJ-HOPE研究(Japanese study of Health, Occupation and Psychosocial factors related Equity:労働者コホート「仕事の健康に関する調査」)の参加者(13コホート、1万4,534人)のうち、製造業の大企業(京都に本社があり全国に21支社がある)の従業員約2,500人に本検討参加への同意を呼びかけ行われた。SESは自己記入式質問票を、葉酸摂取量はBDHQを用いて調査した。摂取量と交絡因子との関連性の評価にあたっては重回帰分析と層別解析を行い、摂取量が健康アウトカムに及ぼす影響を表すためにパス解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・研究対象の日本人労働者コホート(同意を得た)は、2,266人であった。平均年齢は43.4±9.8歳、平均BMI値は23.1±3.3、女性は241人(10.6%)であった。・教育レベルと世帯収入は、葉酸摂取量および抑うつ度(日本語版K6スケールで評価)と有意に関連していた(p<0.05)。・年齢、性、総エネルギー摂取量で補正後、教育年数は葉酸摂取量に有意な影響を及ぼしていることが認められた(β=0.117、p<0.001)。・構造方程式モデリング(SEM)解析の結果、葉酸摂取量は、教育レベルならびに抑うつ度について、統計的に有意で強い間接的な影響があることが示唆された(p<0.05、直接的影響は56%)。・被験者のうち、日本人に推奨される葉酸の1日の摂取量(RDA)240μg/日を摂取していた人は63.6%であった。関連医療ニュース ・うつ病患者の食事療法、ポイントは「トリプトファン摂取」 ・統合失調症患者の脳組織喪失に関わる脂肪酸、薬剤間でも違いが ・認知症の進行予防にビタミンEは有効か?

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てんかん患者の50%以上が不眠症を合併!

 てんかん患者では睡眠障害が頻繁にみられるものの、不眠症とてんかんとの関係はほとんど明らかとなっていない。ボストン大学のMartina Vendrame氏らは、てんかん患者における睡眠状態に関して調査した。Journal of clinical sleep medicine誌オンライン版2013年2月1日号の報告。 対象はてんかん患者152例(平均年齢:46歳)。目的は(1)てんかん患者における不眠症の有病率や程度を分析する(2)臨床的特徴と不眠症との相関を調査する(3)質の低い睡眠がQOLに及ぼす影響を検討する。調査項目は不眠重症度評定尺度、ピッツバーグ睡眠質問票、ベック抑うつ質問票、てんかん患者用QOL質問票(QOLIE-31)によるQOL評価とした。除外対象は閉塞性睡眠時無呼吸症候群など他の睡眠障害を有する患者。年齢、てんかんの罹病期間、抗てんかん薬の数、併存疾患、抑うつスコアで調整し、回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・てんかん患者の半数以上(55%)は不眠症であった。また、70%以上の患者は睡眠の質が低下していた。・不眠症や睡眠の質の低下は、抗てんかん薬の数や抑うつスコアと有意な相関が認められた。・不眠症や睡眠の質の低下は、QOL低下の有意な予測因子であった(共変量にて調整)。・これらの結果から、てんかん患者では、不眠症や睡眠の質の低下を有しており、QOLに悪影響を与えることが示唆された。・さらなる研究により、てんかん患者における睡眠の改善が発作のコントロールやQOL向上につながるかを検討する必要がある。関連医療ニュース ・検証!統合失調症患者の睡眠状態とは ・不眠症の人おすすめのリラクゼーション法とは ・睡眠薬、長期使用でも効果は持続

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