5つの重大精神疾患に共通する遺伝的リスク因子を特定/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2013/03/15

 

ゲノムワイド関連解析の結果、5つの重大な精神疾患自閉症スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害、双極性感情障害、大うつ病性障害、統合失調症]に共通する遺伝的なリスク因子を特定したことを、米国・マサチューセッツ総合病院のJordan W Smoller氏ら精神科ゲノム協会(Psychiatric Genomics Consortium:PGC)のCross-Disorder Groupが報告した。精神疾患の発症メカニズムは大部分が明らかになっておらず、そのため鑑別を困難なものとしている。一方で発症に関して遺伝的なリスク因子が重視され、遺伝的な重複の評価などが行われるようになり、家族研究や双子の先行研究において精神疾患間で共通する遺伝子の存在などが報告されていた。Lancet誌オンライン版2013年2月27日号掲載報告より。

ヨーロッパ人3万3,332例のSNPデータをゲノムメタ解析
 PGCは2007年に、19ヵ国の上記5つの疾患のデータを集約してゲノムメタ解析を行うことを目的に立ち上げられた。本検討では、これまでに統合失調症と双極性障害、双極性障害と大うつ病などの疾患間で報告されていた遺伝的な重複について、5つの疾患間でゲノムメタ解析を行った場合に、遺伝的に共通する特異的な異型が認められるかを目的とした。

 解析は、ヨーロッパ人3万3,332例の5つの疾患に関するSNPデータと、対照群2万7,888例のデータについて行われた。

カルシウムチャネル活性遺伝子の変異が多様性に影響か
 主要解析の結果、5つの疾患間で重複するSNPの4つの領域が特定された(p<5×10-8)。染色体3p21と10q24の領域、残る2つはL型電位作動型カルシウムチャネルのCACNA1CとCACNB2であった。

 これらの領域の疾患への影響は、モデル選択解析において支持され、先行研究で報告されていた統合失調症あるいは双極性障害の関連領域は、可変的な診断特異性を有することが示されたという。また、その影響を精査した多遺伝子性リスクスコア解析から、とくに成人期発症の疾患において影響があることが認められた。

 5つの疾患の遺伝的重複の基礎となる生物学的関連の確認するために行った経路解析からは、カルシウムチャネルのシグナル伝達の関与を支持する結果が得られた。また疾患間の重複のエビデンスを示すSNPはeQTLマーカーによって脳内に豊富に存在することが確認されたという。

 解析結果を踏まえて著者は、「特異的なSNPが幼児期発症から成人期発症までの精神疾患と関連していることが示された。特に、カルシウムチャネル活性遺伝子の変異が、精神病理学的な多様性に影響しているようである」とまとめた。その上で今回の知見は精神疾患の定義や鑑別にエビデンスを提供するものであるとまとめている。また、著者らはサマリーでの解釈で「精神医学における記述的症候群を超えて、疾患の原因に基づく診断学というゴールに向けたエビデンスをもたらした」と高らかに宣言している。

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コメンテーター : 岡村 毅( おかむら つよし ) 氏

東京都健康長寿医療センター

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J-CLEAR評議員