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日本人高齢者におけるうつ病、認知症、死亡リスクの関係〜JAGES縦断的研究

 日本人高齢者を対象とした全国コホートに基づき、中国・広東薬科大学のShan Wu氏らは、うつ病、認知症、すべての原因による死亡率の関連および用量反応関係を調査した。The Journals of Gerontology. Series B, Psychological Sciences and Social Sciences誌オンライン版2024年5月23日号の報告。 2010〜19年に実施された日本老年学的評価研究(JAGES)の65歳以上の参加者4万4,546例を対象に縦断的研究を実施した。抑うつ症状は老年期うつ病評価尺度(GDS-15)、認知症は公的な長期介護保険(LTCI)を用いて評価した。うつ病の重症度が認知症の発症率およびすべての原因による死亡率に及ぼす影響を評価するため、Fine-gray modelおよびCox比例ハザードモデルをそれぞれ用いた。認知症を介したうつ病とすべての原因による死亡率との関連性の評価には、因果媒介分析(CMA)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・軽度および重度の抑うつ症状は、いずれも認知症累積発症率およびすべての原因による死亡率と関連しており、とくに重度の抑うつ症状で関連が認められた(p<0.001)。・認知症の多変量調整ハザード比(HR)は、非うつ病患者と比較し、軽度うつ病患者で1.25(95%信頼区間[CI]:1.19〜1.32)、重度うつ病患者で1.42(95%CI:1.30〜1.54)であった(p for trend<0.001)。・すべての原因による死亡率の多変量調整HRは、非うつ病患者と比較し、軽度うつ病患者で1.27(95%CI:1.21〜1.33)、重度うつ病患者で1.51(95%CI:1.41〜1.62)であった(p for trend<0.001)。・年齢が若いほど、うつ病は認知症およびすべての原因による死亡率に強い影響を及ぼした。・認知症は、うつ病とすべての原因による死亡率の関連性を有意に媒介していることが示唆された。 著者らは「認知症や早期死亡を予防するために、重度のうつ病を標的とした介入は効果的な戦略となる可能性が示唆された」としている。

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睡眠時無呼吸は将来の入院リスクと関連

 睡眠時無呼吸を有する50歳以上の人では症状がない人に比べて、将来、病気で入院するオッズが21%高いことが新たな研究で明らかになった。この研究を実施した米フロリダ大学医学部のChristopher Kaufmann氏は、「この結果は、過体重、健康不良、うつ病といった医療サービス利用の増加に寄与する可能性のある因子を考慮した後でも変わらなかった」と話している。この研究結果は、米国睡眠学会および睡眠研究学会の年次総会(SLEEP 2024、6月1〜5日、米ヒューストン)で発表され、要旨が「Sleep」5月増刊号1に掲載された。 睡眠時無呼吸は、睡眠中に呼吸停止が繰り返し起こることで眠りが妨げられる症状を指し、閉塞性睡眠時無呼吸と中枢性睡眠時無呼吸に大別される。症例が多いのは閉塞性睡眠時無呼吸であり、睡眠中に空気の通り道である上気道が閉塞して呼吸が停止することで発生する。睡眠時無呼吸を未治療でおくと、高血圧、冠動脈疾患、心房細動、脳卒中、2型糖尿病などの健康問題を招く恐れがあることが知られている。 Kaufmann氏らの研究では、加齢に伴い生じる健康問題に関する研究であるHealth and Retirement Studyの2016年と2018年の調査に参加した50歳以上の成人2万115人のデータが分析された。調査参加者は、2016年の調査で睡眠時無呼吸も含めた睡眠障害の有無について、2018年の調査では、その後の医療サービスの利用(入院、在宅医療、ナーシングホームの利用など)の有無について尋ねられていた。参加者の11.8%が睡眠時無呼吸を有していることを報告していた。 人口統計学的属性やBMI、健康状態、抑うつ症状の有無で調整して解析した結果、2016年の時点で睡眠時無呼吸を有していた人では有していなかった人に比べて、2018年に医療サービスの利用を報告するオッズが21%有意に高いことが明らかになった(調整オッズ比1.21、95%信頼区間1.02〜1.43)。医療サービスの中では、入院のオッズが有意に高かったが(同1.21、1.02〜1.44)、在宅医療の利用に有意差は認められなかった(同1.23、0.99〜1.54)。 Kaufmann氏は学会のニュースリリースの中で、「われわれの研究では、睡眠時無呼吸を有する50歳以上の人では有していない人に比べて、将来的に医療サービスを利用する可能性の高いことが示唆された」と述べた上で、「睡眠時無呼吸に対処することは、個人の健康状態を改善するだけでなく、医療資源への負担を軽減し、より効率的かつ効果的な医療提供につながる可能性がある」との考えを示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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米国てんかんセンター協会がガイドライン改訂

 米国てんかんセンター協会(National Association of Epilepsy Centers;NAEC)はこのほど、てんかんセンターが提供する医療に関するガイドラインを改訂。米ホフストラ大学ザッカー医学部のFred A. Lado氏らが作成したガイドラインの要約版が、「Neurology」に2月2日掲載された。 NAECは米国内の260以上のてんかんセンターが加盟している非営利団体で、1990年に初のガイドラインを発行。初版発行以降、約10年サイクルで改訂を重ねてきており、前回の改訂は2010年だった。今回の改訂に際してはPubMedとEmbaseを用いたシステマティックレビューが行われ、重複削除後の5,937報から197報を抽出。医師、患者、介護者、看護師、検査技師などさまざまなバックグランドを持つ41人から成る委員会が、それらの報告に基づき推奨の草案を作成。その後、修正デルファイ法によって最終的な合意を得るという手法により、信頼できるコンセンサスベースの推奨(trustworthy consensus-based statements;TCBS)として52項目がまとめられた。 52項目の推奨事項は、診断、外来、入院および脳波モニタリングユニット(epilepsy monitoring unit;EMU)、手術に大別され、外来については、診療、薬物管理、患者教育、食事療法、リハビリテーション、心理社会的支援などに細分化されている。推奨事項のいくつかを具体的に挙げると、例えば診断の項目では、全てのてんかんセンターは遺伝子検査が有用と思われる患者を選別するための確立されたプロトコールを持つべきであり、認定カウンセラーによる遺伝カウンセリングを提供する必要があるとしている。また外来での心理社会的支援としては、てんかん患者に生じ得る教育的、社会的、感情的、職業的な障害を把握し対処するために、全てのてんかんセンターには臨床ソーシャルワーカーを配置すべきとの項目が掲げられている。 今回のガイドライン改訂の背景について、筆頭著者であるLado氏は、「医学が進歩していることに加え、近年では発作の管理にとどまらず、患者の総合的な健康や幸福について介入が求められるように環境が変化してきた。不安症やうつ病などの併存疾患のケア、患者-ケアチーム間のコミュニケーションの強化なども、今では欠くことができない。てんかんセンターやその他の医療機関が、質の高い包括的ケアを提供する上で必要なリソースを確保するためにも、ガイドラインの拡充が切に必要とされていた」と語っている。 なお、2人の著者が製薬企業および医療テクノロジー関連企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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片頭痛予防の再定義、抗CGRPモノクローナル抗体による早期治療が治療反応を強化

 片頭痛予防に承認されている抗CGRPモノクローナル抗体による治療は、患者によって治療反応が異なり、多くの国では費用償還(reimbursement)ポリシーがあるため、治療が妨げられることもある。スペイン・Vall d'Hebron HospitalのEdoardo Caronna氏らEUREkA study groupは、6ヵ月間の抗CGRP抗体に対する良好/優良な治療反応およびそれに関連する臨床的因子を調査するため、本研究を実施した。Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry誌オンライン版2024年5月22日号の報告。 本研究は、2018年3月以降に抗CGRP抗体による治療を行った高頻度の反復性片頭痛または慢性片頭痛患者を対象とした欧州の多施設共同プロスペクティブリアルワールド研究である。良好/優良な治療反応の定義は、6ヵ月後の1ヵ月あたりの頭痛日数(MHD)の減少がそれぞれ50%以上、75%以上とした。治療反応と独立して関連する変数を特定するため、一般化混合効果回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は、5,818例(女性の割合:82.3%、年齢中央値:48.0歳[40.0〜55.0])であった。・ベースライン時のMHD中央値は20.0日/月(14.0〜28.0)、慢性片頭痛と診断された患者は72.2%であった。・6ヵ月後、良好な治療反応が認められた患者は56.5%(4,963例中2,804例)、優良な治療反応が認められた患者は26.7%(4,963例中1,324例)であった。・一般化混合効果回帰モデルでは、良好な治療反応を予測する因子として次の因子が検出された(AUC:0.648、95%信頼区間[CI]:0.616〜0.680)。●高齢(1.08、95%CI:1.02〜1.15、p=0.016)●片側痛(1.39、95%CI:1.21〜1.60、p<0.001)●うつ病あり(0.840、95%CI:0.731〜0.966、p=0.014)●1ヵ月あたりの片頭痛日数の減少(0.923、95%CI:0.862〜0.989、p=0.023)●ベースライン時のMigraine Disability Assessmentの低さ(0. 874 、95%CI:0.819 〜0.932、p<0.001)・上記の因子は、良好な治療反応の予測因子でもあった(AUC:0.691、95%CI:0.651〜0.731)。・一般化混合効果回帰モデルでは、性別は重要な因子ではなかった。 著者らは、「片頭痛の頻度が高く、ベースライン時の障害が大きい場合、抗CGRP抗体に対する治療反応が低下する可能性が、大規模リアルワールド研究において明らかとなった。治療を成功させる可能性を最大限にするためには、早期治療が必要であることが示唆された」としている。

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統合失調症に対する抗精神病薬の有効性および安全性の性差

 抗精神病薬は、精神疾患患者にとって中心的な治療薬であるが、有効性と安全性のバランスをとることが求められる。治療アウトカムを改善するためにも、抗精神病薬の有効性および安全性に影響を及ぼす個別の因子を理解することは重要である。オーストラリア・モナシュ大学のMegan Galbally氏らは、抗精神病薬に関連する有効性および忍容性における性差について、調査を行った。CNS Drugs誌オンライン版2024年5月7日号の報告。 大規模抗精神病薬比較試験であるClinical Antipsychotic Trials of Intervention Effectiveness(CATIE)の第IおよびIa相試験のデータを2次分析した。CATIE試験では、統合失調症患者を経口オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ziprasidone、ペルフェナジンによる治療にランダムに割り付け、二重盲検治療を行った。評価基準には、陽性陰性症状評価尺度(PANSS)、臨床全般印象度(CGI)、Calgary Depression Rating Scale、自己報告による副作用、服薬コンプライアンス、投与量、体重、さまざまな血液パラメータを含めた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は1,460例(女性:380例、男性:1,080例)であった。・治療反応、副作用、コンプライアンス、抗精神病薬の投与量は、男女間でほとんど差が認められなかった。・便秘(28% vs.16%)、口渇(50% vs.38%)、女性化乳房/乳汁漏出(11% vs.3%)、失禁/夜間頻尿(16% vs.8%)、自己報告による体重増加(37% vs.24%)は、女性において男性よりも有意に多く報告された(各々、p<0.001)。・リスペリドン治療群では、女性(61例)において男性(159例)よりもプロラクチンレベルの有意な上昇が認められた(p<0.001)。・臨床医の評価による測定値、体重増加、その他の臨床検査値は、全体として差が認められなかった。 著者らは「抗精神病薬の有効性および忍容性は、全体としての性差は限られていたが、リスペリドンについては、いくつかの特定の知見がみられた。抗精神病薬の試験において性差を評価することは、統合失調症患者に対する個別化治療だけでなく、有効性の向上や副作用の軽減にとっても重要である」としている。

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新剤形追加・添付文書改訂:クリームタイプのアレルギー性結膜炎治療薬/エンレストに粒状錠小児用規格追加【最新!DI情報】第17回

アレジオン眼瞼クリーム0.5%<対象薬剤>エピナスチン塩酸塩(商品名:アレジオン眼瞼クリーム0.5%、製造販売元:参天製薬)<発売年月>2024年5月<改訂項目>[承認]新剤形医薬品1日1回塗布のクリーム剤<ここがポイント!>既存のエピナスチン点眼液は1日4回、エピナスチンLX点眼液は1日2回の点眼が必要でしたが、エピナスチン眼瞼クリームは1日1回眼周囲(上下眼瞼)の塗布で、有効性が終日にわたり維持します。点眼が苦手な小児や高齢者に加え、日中の点眼でメイクが落ちるのが気になる人に対しても、就寝前や夜のスキンケア時の塗布で効果が期待できるため、利便性が高いと考えられます。クリームタイプのアレルギー性結膜炎治療薬は世界初であり、眼瞼皮膚を通過して眼球・眼瞼結膜に成分が分布します。第III相CAC試験(スギ花粉抗原を用いた結膜抗原誘発試験)において、アレルギー性結膜炎の眼そう痒感および結膜充血スコアをプラセボに比べて有意に抑制しました。また、第III相長期投与試験(環境試験)において、本剤の安全性および有効性が確認されています。エンレスト粒状錠小児用12.5mg/31.25mg<対象薬剤>サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物(商品名:エンレスト粒状錠小児用12.5mg/31.25mg、製造販売元:ノバルティス ファーマ)<発売年月>2024年5月<改訂項目>[追加]規格粒状錠小児用12.5mg/31.25mg<ここがポイント!>小児慢性心不全は、病状が進むと心肥大や心拡大などが進行し、不整脈や突然死を引き起こすことがあります。サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物錠50mg/100mg/200mgは2024年2月9日に1歳以上の小児慢性心不全の効能・効果で承認を取得しました。しかし、体重が50kg未満の場合、薬剤師が粉砕懸濁して用量の調整を行う必要がありました。粒状錠小児用12.5mg/31.25mgは、用量を組み合わせることでさまざまな体重に対応することができ、調剤の簡便化が可能になります。粒状錠は、小児でも飲みやすい小さな粒状の錠剤ですので、カプセル型容器から取り出した錠剤を食べ物に混ぜて服用できます。粒状錠小児用は、カプセル型容器に充填したあと、PTP包装しています。パルモディアXR錠0.2mg/0.4mg<対象薬剤>ペマフィブラート(商品名:パルモディアXR錠0.2mg/0.4mg、製造販売元:興和)<発売年月>2023年11月<改訂項目>[承認]新剤形医薬品1日1回投与の徐放性製剤<ここがポイント!>高脂血症治療薬のペマフィブラート錠0.1mgは1日2回投与の即放性製剤でしたが、新剤形として1日1回投与のマルチプルユニット型徐放性製剤が2023年11月に販売されました。服用回数の増加は服薬アドヒアランスの低下に関連することが報告されているため、徐放性製剤の発売でアドヒアランスの向上が期待できます。第III相検証試験(K-877-ER-02)において、徐放性製剤0.2mgおよび0.4mgは、既存の即放性製剤と比較し、空腹時血清TGのベースライン値からの変化率が非劣性であることが確認されています。販売名のXRは徐放性(Extended Release)製剤であることを示しています。レキサルティ錠1mg/2mg、OD錠0.5mg/1mg/2mg<対象薬剤>ブレクスピプラゾール(商品名:レキサルティ錠1mg/2mg、OD錠0.5mg/1mg/2mg、製造販売元:大塚製薬)<改訂年月>2023年12月<改訂項目>[追加]効能又は効果うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)[追加]用法及び用量通常、成人にはブレクスピプラゾールとして1日1回1mgを経口投与する。なお、忍容性に問題がなく、十分な効果が認められない場合に限り、1日量2mgに増量することができる。[追加]効能又は効果に関連する注意(一部抜粋)本剤の併用は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤等による適切な治療を複数回行っても、十分な効果が認められない場合に限り、本剤による副作用(アカシジア、遅発性ジスキネジア等の錐体外路症状)や他の治療も考慮した上で、その適否を慎重に判断すること。[追加]効能又は効果に関連する注意(一部抜粋)本剤は選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤又はミルタザピンと併用すること。(本剤単独投与での有効性は確認されていない)<ここがポイント!>本剤の適応症は統合失調症のみでしたが、2023年12月に「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)」が追加されました。成人では1日1回1mg投与しますが、忍容性に問題なく、十分な効果が認められない場合に限り、1日量2mgに増量できます。中等症および重症の大うつ病性障害には、SSRI、SNRI、ミルタザピンが第1選択として用いられますが、これらの薬剤による治療でも十分な効果を示さない症例も多く存在します。本剤は、アリピプラゾールに次ぐ抗うつ効果増強療法に用いる非定型抗精神病薬で、SSRI、SNRIまたはミルタザピンと併用して使用します。

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精神病性うつ病の維持療法に対する抗うつ薬や抗精神病薬治療の実際の有効性

 精神病性うつ病は、機能障害や自殺リスクの高さを特徴とする重度の精神疾患であるが、その維持療法に使用される薬物療法の有効性を比較した研究は、あまり多くない。フィンランド・東フィンランド大学のHeidi Taipale氏らは、日常診療下における精神病性うつ病患者の精神科入院リスクに対する特定の抗精神病薬と抗うつ薬、およびそれらの併用療法の有効性を比較するため、本研究を実施した。World Psychiatry誌2024年6月号の報告。 新たに精神病性うつ病と診断された16〜65歳の患者を、フィンランド(2000〜18年)およびスウェーデン(2006〜21年)の入院、専門外来、病気休暇、障害年金のレジストリより特定した。主要アウトカムは、重度の再発を表す精神科入院とした。特定の抗精神病薬および抗うつ薬による薬物療法の影響を比較した。薬剤の使用期間および非使用期間に関連する入院リスク(調整ハザード比[aHR])は、各個人を自身の対照とする個人内デザインにより評価し、層別Coxモデルで分析した。フィンランドとスウェーデンの2つのコホート研究をそれぞれ事前に分析し、次に固定効果メタ解析を用いて統合した。 主な結果は以下のとおり。・フィンランドのコホートには1万9,330人(平均年齢:39.8±14.7歳、女性の割合:57.9%)、スウェーデンのコホートには1万3,684人(平均年齢:41.3±14.0歳、女性の割合:53.5%)が含まれていた。・抗うつ薬未使用と比較し、再発リスク低下と関連する抗うつ薬は、bupropion(aHR:0.73、95%信頼区間[CI]:0.63〜0.85)、ボルチオキセチン(aHR:0.78、95%CI:0.63〜0.96)、ベンラファキシン(aHR:0.92、95%CI:0.86〜0.98)であった。・長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬(aHR:0.60、95%CI:0.45〜0.80)およびクロザピン(aHR:0.72、95%CI:0.57〜0.91)は、抗精神病薬未使用の場合と比較し、再発リスク低下と関連していた。・単剤療法のうち、ボルチオキセチン(aHR:0.67、95%CI:0.47〜0.95)とbupropion(aHR:0.71、95%CI:0.56〜0.89)のみが、抗うつ薬および抗精神病薬未使用の場合と比較し、再発リスクの有意な低下と関連していた。・探索的解析では、抗うつ薬と抗精神病薬の併用療法において、抗うつ薬および抗精神病薬未使用の場合と比較し、再発リスクの有意な低下が認められた組み合わせは、アミトリプチリン+オランザピン(aHR:0.45、95%CI:0.28〜0.71)、セルトラリン+クエチアピン(aHR:0.79、95%CI:0.67〜0.93)、ベンラファキシン+クエチアピン(aHR:0.82、95%CI:0.73〜0.91)であった。・ベンゾジアゼピンおよび関連薬(aHR:1.29、95%CI:1.24〜1.34)、ミルタザピン(aHR:1.17、95%CI:1.07〜1.29)は、再発リスク増加と関連が認められた。 著者らは、「精神病性うつ病の維持療法において再発リスク低下と関連している薬剤は、bupropion、ボルチオキセチン、ベンラファキシン、LAI抗精神病薬、クロザピンおよびごく少数の特定の抗うつ薬と抗精神病薬との併用療法であった。このことから、精神病性うつ病の標準治療として、抗精神病薬と抗うつ薬との併用療法を推奨している現在の治療ガイドライン(詳細は明記されていない)に対し異議を唱えるものである」としている。

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うつ病と心血管疾患発症の関連、女性でより顕著

 日本人400万人以上のデータを用いて、うつ病と心血管疾患(CVD)の関連を男女別に検討する研究が行われた。その結果、男女とも、うつ病の既往はCVD発症と有意に関連し、この関連は女性の方が強いことが明らかとなった。東京大学医学部附属病院循環器内科の金子英弘氏らによる研究であり、「JACC: Asia」2024年4月号に掲載された。 うつ病は、心筋梗塞、狭心症、脳卒中などのCVD発症リスク上昇と関連することが示されている。うつ病がCVD発症に及ぼす影響について、性別による違いを調べる研究はこれまでにも行われているものの、その明確なエビデンスは得られていない。 そこで著者らは、日本の外来・入院医療のレセプト情報データベース(JMDC Claims Database)より、2005年1月~2022年5月における健診データが利用でき、18~75歳の人のうちCVDや腎不全の既往のある人などを除いた412万5,720人(年齢中央値44歳、男性57%)を対象とする後方視的コホート研究を行った。初回健診以前にうつ病と診断されていた人を、うつ病の既往ありと定義した。CVDには心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、心房細動を含め、これらの複合を主要評価項目として男女別に解析した。 対象者のうち、うつ病の既往のあった人は男性が9万9,739人(4.2%)、女性が7万8,358人(4.5%)だった。平均追跡期間1,288±1,001日(最短1日~最長5,534日)において、CVDは男性で11万9,084件(1万人年当たり発症率140.1)、女性で6万1,797件(同111.0)発症した。 うつ病とCVD発症との関連について、年齢、BMI、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、飲酒、運動不足の影響を統計学的に調整して解析した結果、うつ病の既往のCVD発症に対するハザード比は、男性で1.39(95%信頼区間1.35~1.42)、女性では1.64(同1.59~1.70)であり、男女ともに有意な関連が認められた。この関連には性別の影響が認められ、女性の方が男性と比べて関連が強いことが明らかとなった(交互作用P<0.001)。また、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、心房細動のそれぞれとうつ病との関連、および性別の影響を解析した場合も、同様の結果が得られた(全て交互作用P<0.05)。 さらに、サブグループ解析として50歳以上と50歳未満に分けて検討した結果と、肥満の有無で分けて検討した結果のいずれにおいても、うつ病の既往とCVD発症との関連は、女性の方が強いことが明らかとなった。また、複数の感度分析を行った結果も一貫していた。 今回の研究により、うつ病とその後のCVD発症の関連は、女性の方がより顕著であることが示された。著者らは、考えられるメカニズムの一つとして、妊娠や閉経など、ホルモンが変化する重要な時期にうつ病を経験しやすいため、女性では心血管系への影響がより大きくなる可能性があると説明。一方で、男女差が生じるメカニズムの完全な解明には、さらなる研究が必要だとしている。著者らは、「うつ病とCVDの関連についての性差をよりよく理解し、うつ病の男性と女性のそれぞれに最適なケアを提供することで、心血管系の健康につながる可能性がある」と述べている。

249.

双極性障害とうつ病で異なる臨床的特徴

 中国・上海交通大学のZhiguo Wu氏らは、うつ病と診断された患者とうつ病と診断されたものの双極性障害(BP)I型およびII型であった患者における、現在のうつ病エピソードの人口統計学的および臨床学的特徴を調査した。BMC Psychiatry誌2024年5月10日号の報告。 うつ病およびうつ病と診断されたBP-I、BP-IIのDSM-IV診断を確定させるために精神疾患簡易構造化面接法(MINI)を実施した。中国の8ヵ所の精神科施設より抽出されたBP-I、BP-II、うつ病患者1,463例を対象に、人口動態、うつ症状、精神疾患の併存を比較した。診断の臨床的相関を評価するため、多項ロジスティック回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・最初にうつ病と診断された患者のうち14.5%は、最終的にBPと診断された。・BP-IおよびまたはBP-II患者は、うつ病患者と比較し、若年、再発率が高い、気分変調性の併発、自殺企図、興奮、精神病的特徴、不眠症を含む精神医学的併存疾患、体重減少、身体症状などの広範な特徴を有していた。・うつ病と比較すると、BP-IよりもBP-IIのほうが、より多くの違いが観察され、異なる症状プロファイルおよび併存疾患パターンが示された。 著者らは、「本結果は、BP-IおよびBP-IIとうつ病を臨床的に鑑別し、BPのより正確な診断を行うために、重要な意味を持つであろう」としている。

250.

東日本大震災による住宅被害や精神的ダメージと修正可能な認知症リスクとの関連

 東北大学の千葉 一平氏らは、地域住民の高齢者における、東日本大震災による住宅被害および精神的ダメージと認知症の修正可能なリスク因子との関連を評価する目的で横断的研究を実施した。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2024年5月3日号の報告。 対象は、地域住民の高齢者2万9,039人(平均年齢:69.1±2.9歳、女性の割合:55.5%)。東日本大震災後の災害関連被害(住宅全壊または半壊)および精神的ダメージ(心的外傷後ストレス反応[PTSR])を、自己申告式アンケートを用いて収集し評価した。修正可能なリスク因子には、うつ病、社会的孤立、身体不活動、喫煙、糖尿病を含んだ。災害関連被害と修正可能なリスク因子との関連を評価するため、社会人口統計学的変数と健康状態変数を調整した後、最小二乗法および修正ポアソン回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・震災による住宅の全壊は2,704人(10.0%)、PTSRは855人(3.2%)で認められた。・修正可能なリスク因子の数は、住宅全壊者(β=0.23、95%信頼区間[CI]:0.19~0.27)およびPTSR者(β=0.60、95%CI:0.53~0.67)で有意に多かった。・住宅全壊者は、修正可能なリスク因子のうち、うつ病と身体的不活動の割合が高かった。・PTSR者は、修正可能なリスク因子のすべての分野で割合が有意に高かった。 著者らは「東日本大震災による住宅被害および精神的ダメージは、認知症のリスク因子増加と関連していることが示唆された。認知症リスク軽減については、とくに災害で住宅被害や精神的ダメージを経験した高齢の被災者に対し、修正可能なリスク因子のさまざまな側面に応じた多元的な支援が求められる」としている。

251.

治療抵抗性統合失調症患者の再入院に対するLAI抗精神病薬併用の効果

 台湾・Taoyuan Psychiatric CenterのYun Tien氏らは、クロザピンで治療中の治療抵抗性統合失調症患者における長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の使用と精神科入院リスクの関連を評価した。The Journal of Clinical Psychiatry誌2024年5月1日号の報告。 本研究は、3次精神科センター単一施設レトロスペクティブコホート研究として実施された。DSM-IV-TRおよびDSM-5の診断基準による治療抵抗性統合失調症患者の再入院ハザード比(HR)を分析した。経口抗精神病薬またはLAI抗精神病薬の有無にかかわらず、クロザピンのさまざまな向精神薬レジメンを検討した。クロザピンの投与量と入院歴により層別化を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は719例。・分析は、3ヵ月、6ヵ月、1年にわたり、すべての患者で実施した。・クロザピンとLAI抗精神病薬で治療された患者は、過去の入院回数が有意に多かった(p=0.003)。クロザピンと経口抗精神病薬で治療された患者は、クロザピン単独療法およびクロザピンとLAI抗精神病薬で治療された患者よりも、クロザピンの1日投与量が多かった(p<0.001)。・LAI抗精神病薬で治療された患者は、3つの試験群間で1年以内の再入院のHRが有意に低かった。・LAI抗精神病薬の保護効果は、疾患の重症度を示すクロザピンの1日投与量および過去の入院回数によって層別化されたすべてのサブグループにおいて観察された。 著者らは「クロザピンとLAI抗精神病薬の併用は、クロザピンと経口抗精神病薬の併用やクロザピン単独療法と比較し、再入院リスクが有意に低かった。クロザピンで治療中の治療抵抗性統合失調症患者の再入院予防には、LAI抗精神病薬の使用を考慮する必要がある」としている。

252.

治療抵抗性うつ病に対するドパミンパーシャルアゴニストの用量別比較

 治療抵抗性うつ病に対するドパミンパーシャルアゴニスト(アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、cariprazine)による抗うつ効果増強療法は、これまでのネットワークメタ解析において比較されている。しかし、これら薬剤の用量反応の有効性比較は、十分に行われていなかった。iこころクリニック日本橋の寺尾 樹氏らは、用量反応関係を推定し、各ドパミンパーシャルアゴニストの効果を、用量別に比較した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2024年4月19日号の報告。 2023年1月1日までに公表された研究を、各種データベース(Cochrane Library、PubMed、CINHAL、ClinicalTrials.gov)より、システマティックにレビューした。対象には、治療抵抗性うつ病に対するアリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、cariprazineを評価した二重盲検ランダム化プラセボ対照試験を含めた。変量効果用量反応モデルに基づくネットワークメタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・各薬剤の最大有効用量は、アリピプラゾールで5.5mg、ブレクスピプラゾールで1.6mg、cariprazineで1.5mgであった。・3剤すべての用量において、プラセボと比較し、有意に有効であった。・アリピプラゾール5.5〜12.5mgは、ブレクスピプラゾール0.5mgおよびcariprazine 0.5〜1mgよりも有意に有効であった。・アリピプラゾール7.5〜12.5mgは、cariprazineのすべての用量よりも有意に有効であった。・ブレクスピプラゾール1〜3mgは、cariprazine 0.5mgよりも有意に有効であり、ブレクスピプラゾール1.6〜2.5mgは、cariprazine 1mgよりも有意に有効であった。・ブレクスピプラゾールは、アリピプラゾールより優れた用量はなく、cariprazineは、アリピプラゾールまたはブレクスピプラゾールよりも優れた用量はなかった。 著者らは「治療抵抗性うつ病に対するドパミンパーシャルアゴニストは、アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、cariprazineの順で有効であり、最大有効用量は、それぞれ5.5mg、1.6mg、1.5mgであった」としている。

253.

週末の短時間の「寝だめ」、うつ病改善に役立つ可能性

 週末にまとまった睡眠をとる、いわゆる「寝だめ」は疲労回復や心身の健康に役立つのか。賛否が分かれる議論であったが、寝だめがうつ病の改善に一定の効果があるとする研究結果が発表された。中国・中南大学湘雅医院のZhicheng Luo氏らによる本研究はJournal of Affective Disorders誌2024年6月1日号「Research paper」に掲載された。 研究者らは、米国成人における「週末の寝だめ」(Weekend Catch-up Sleep:WCS、週末の睡眠時間から平日の睡眠時間を引いた時間/1日当たり)が米国の成人のうつ症状に与える影響を調査した。2017~20年の国民健康栄養調査(NHANES)から7,719人の参加者を登録した。睡眠時間とうつ症状に関する情報は、自己申告による質問とPHQ-9スコアで評価し、回帰分析を使用してWCSと抑うつ症状の関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・WCSのうつ症状に対するオッズ比は0.746(95%信頼区間[CI]:0.462~1.204、p=0.218)、PHQ-9スコアの変化は-0.429(95%CI:-0.900~0.042、p=0.073)であり、有意な相関性は見出せなかった。・WCSとうつ病の相関は滑らかなL字型を示し、持続時間0~2時間のWCSのみ、うつ症状やPHQ-9スコアと統計的有意に関連していた。・サブグループ分析では、WCSとうつ症状は、男性、65歳未満、および平日の睡眠時間が短い人でマイナスの関連がより強かった(相互作用のp<0.05)。 研究者らは、「本研究は適度なWCSがうつ症状の発生率の低下と関連していることを示唆しているが、この研究は横断的デザインであるため因果関係を確定することはできない。将来的には縦断的研究を通じて、より詳細な因果関係を解明する必要がある」としている。

254.

うつ病リスクと関連する飲料は?~5年間コホート研究

 飲料摂取がうつ病に及ぼす影響について、アジア人ではエビデンスが限られている。具体的には、野菜や果物をそのまま摂取することはうつ病の予防につながると報告されているが、野菜や果物をジュースにした場合の情報はほとんどない。さらに、加糖コーヒーとブラックコーヒーの影響の差異を比較した研究も十分ではない。国立精神・神経医療研究センターの成田 瑞氏らは、一般集団における加糖飲料、炭酸飲料、野菜・フルーツジュース、加糖コーヒー・ブラックコーヒー、緑茶の摂取とその後のうつ病との関連を調査した。Clinical Nutrition誌オンライン版2024年4月17日号の報告。 2011~16年に、ベースラインでがん、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、うつ病の既往歴がない9万4,873例を対象に、5年間のフォローアップ調査を実施した。うつ病のリスク差(RD)の算出には、ポアソン回帰モデルおよびg-formulaを用いた。多重感度分析も実施した。欠損データの処理には、ランダムフォレストを用いた。相互作用による相対過剰リスクとリスク比を分析することで、性別、年齢、BMIに基づく効果の不均一性を調査した。 主な結果は以下のとおり。・5年間のフォローアップを完了した8万497例のうち、1万8,172例がうつ病を発症した。・高摂取群と非摂取群を比較した場合の完全調整後RDは、次のとおりであった。【加糖飲料】3.6%(95%信頼区間[CI]:2.8~4.3)【炭酸飲料】3.5%(95%CI:2.1~4.7)【野菜ジュース】2.3%(95%CI:1.3~3.4)【果汁100%フルーツジュース】2.4%(95%CI:1.1~3.6)【加糖コーヒー】2.6%(95%CI:1.9~3.5)【ブラックコーヒー】-1.7%(95%CI:-2.6~-0.7)・緑茶は、統計学的に有意な差が認められなかった。・多重感度分析では、結果は頑健であった。・性別、年齢、BMIに基づく実質的な効果の不均一性は認められなかった。 著者らは「加糖飲料、炭酸飲料、野菜・フルーツジュース、加糖コーヒーはうつ病リスクを上昇させる可能性がある一方、ブラックコーヒーは低下させる可能性が示唆された」としている。

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気候変動は脳の疾患の悪化と関連

 気候変動は、脳卒中、片頭痛、アルツハイマー病、てんかん、多発性硬化症などの脳の疾患を悪化させる可能性のあることが、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)クイーンスクエア神経学研究所教授のSanjay Sisodiya氏らによる研究で明らかになった。研究グループは、「気候変動は、さまざまな神経疾患にかなりの影響を与える可能性が高い」と危惧を示している。この研究の詳細は、「The Lancet Neurology」6月号に掲載された。 この研究では、1968年から2023年の間に発表された332件の研究データを分析し、気候変動が、2016年の世界疾病負荷研究(Global Burden of Disease Study 2016)で検討された、脳卒中、片頭痛、アルツハイマー病、髄膜炎、てんかん、多発性硬化症などの19種類の神経疾患、および不安や抑うつ、統合失調症などの精神疾患に与える影響を検討した。 その結果、気候がいくつかの脳の疾患に影響を与えることに対しては明確なエビデンスがあり、特に脳卒中と神経系の感染症に対する影響は大きいことが示された。また、気候変動の中でも、極端な気温(高い場合も低い場合も)と気温の日内変動の大きさは脳の疾患に影響を及ぼし、特に、それらが季節的に異常な場合には影響が大きくなることも判明した。Sisodiya氏は、「夜の気温はとりわけ重要と考えられる。夜間を通して高い気温は睡眠を妨げ、睡眠の質の低さは多くの脳の疾患を悪化させることが知られているからだ」と話す。 実際に、本研究では、高温の日や熱波が発生しているときには、脳卒中による入院や身体障害の発生、死亡数が増加することが示された。一方、認知症の人は、認知機能障害が妨げとなって環境の変化に合わせた行動を取るのが難しいため、極端な気温のときや洪水や山火事のような自然災害が発生したときに悪影響を受けやすい傾向が認められた。研究グループは、「認知症の人はリスクに対する意識が低下しているため、暑いときに助けを求める能力や、水分の摂取量を増やし、衣類を調節するなどして危害を軽減させる能力が低下している」と説明している。さらに、多くの精神疾患で、高温、気温の日内変動、極端に高い気温と低い気温は、精神疾患の発症、入院、死亡リスクと関連していることも示された。 こうした結果を踏まえて研究グループは、「悪天候に起因する出来事が深刻さを増し、地球の気温が上昇するにつれて、過去の研究では脳の疾患に影響を与えるほど深刻ではないと考えられた環境要因が悪化し、人々はその悪化した要因にさらされている」と指摘する。その上で、気候変動の現在の状態だけでなく、将来の状態も考慮した最新の研究を行うことの重要性を強調している。 Sisodiya氏は、「この研究は気候条件が悪化していく中で実施されたが、有用な情報を個人や組織に提供し続けるためには、敏捷かつ動的であり続ける必要がある」と話す。同氏はまた、「将来の気候シナリオが脳の疾患へ及ぼす影響を見積もる研究はほとんどないことが、将来の計画を立てることを難しくしている」と述べている。

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うつ病に対するアリピプラゾール補助療法の有用性~bupropionとの比較

 治療抵抗性うつ病またはうつ病患者におけるアリピプラゾールまたはbupropionの補助療法および切り替えの有効性および安全性を評価するため、中国・山東中医薬大学のMengjia Ji氏らは、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を初めて実施した。PLOS ONE誌2024年4月26日号の報告。 2023年4月までに公表された治療抵抗性うつ病、またはうつ病患者に対するアリピプラゾールまたはbupropionの補助療法、および切り替えの有効性および安全性を評価したRCTをPubMed、Embase、Web of Science、Cochraneよりシステマティックに検索した。アウトカムは、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)、治療反応率、寛解率、重篤な有害事象の変化とした。 主な結果は以下のとおり。・5件のRCTより4,480例をメタ解析に含めた。・2件のRCTの品質は、非盲検であるため、3つの側面(割り当て不明、参加者および研究員の盲検化、アウトカム評価の盲検化)より「高リスク」と評価され、残りの3件のRCTは「低リスク」であった。・アリピプラゾール補助療法は、bupropion補助療法と比較し、治療反応率が有意に高かった(RR:1.15、95%信頼区間[CI]:1.05〜1.25、p=0.0007、I2=23%)。・アリピプラゾール補助療法は、bupropion切り替え療法と比較し、寛解率が有意に高かった(RR:1.22、95%CI:1.00〜1.49、p=0.05、I2=59%)。・bupropion補助療法は、bupropion切り替え療法と比較し、寛解率が有意に高かった(RR:1.20、95%CI:1.06〜1.36、p=0.0004、I2=0%)。・アリピプラゾール補助療法とbupropion補助療法で、寛解率(RR:1.05、95%CI:0.94〜1.17、P=0.42、I2=33%)、MADRS改善率(WMD:-2.07、95%CI:-5.84〜1.70、P=0.28、I2=70%)は、有意差が認められなかった。・有害事象および重篤な有害事象は、3つの治療戦略で有意な差が認められなかった。 著者らは、「治療抵抗性うつ病またはうつ病患者に対するアリピプラゾール補助療法は、bupropionの補助療法および切り替え療法よりも有用な抗うつ治療戦略である可能性がある。アリピプラゾールまたはbupropionの補助療法および切り替えの有効性および安全性をさらに評価するためにも、より大規模な多施設共同二重盲検RCTが求められる」としている。

257.

単剤療法を開始する統合失調症患者のケアパターンと経口抗精神病薬切り替えコスト

 統合失調症において抗精神病薬は主要な治療法であるが、治療目標の達成や副作用を最小限にするため、疾患経過に伴って薬剤を変更する必要がある。実臨床における治療パターンや、切り替えを含む抗精神病薬の変更に関連する経済的な影響について、評価した研究は限られている。米国・OptumのRebecca Fee氏らは、経口抗精神病薬(OAM)の単剤療法を開始した統合失調症患者の治療パターンを調査し、抗精神病薬の切り替えに関連する医療資源利用およびコストを評価した。Journal of Managed Care & Specialty Pharmacy誌オンライン版2024年4月9日号の報告。 米国のメディケア・アドバンテージおよび民間医療保険に加入していて、2015~21年6月にOAMの単剤療法を開始(または6ヵ月以上経過した後に再開)した統合失調症患者(2件以上の請求データを有する成人患者)を対象とした。治療の時機および間隔を用いた請求データに基づくアルゴリズムにより、最長7年間にわたるOAM単剤療法開始患者の投与変更、とくに単剤療法の切り替えを特定した。最初のOAM単剤療法から次のOAM単剤療法へ切り替えた患者(切り替え群)を、臨床的および人口統計学的特徴に基づき、切り替えを行っていないOAM単剤療法開始患者(非切り替え群)とマッチさせた。切り替えに関連する医療資源利用および最初の切り替えの前後3ヵ月に発生したコストを、両群で比較した。 主な結果は以下のとおり。・OAM単剤療法を開始した患者6,425例中1,505例(23.4%)は、フォローアップ期間中に少なくとも1回、他のOAM単剤療法切り替えを経験していた。・最初の切り替えまでの平均時間は209±333日(中央値:67日)であり、フォローアップの人年当たりの切り替え率は0.65、最初の切り替えの56%はOAM開始から3ヵ月以内に行われていた。・OAM単剤療法を開始した患者のうち947例(14.7%)は、最初のOAM単剤療法切り替え患者あった。傾向スコアマッチング後、最初の切り替え群865例と非切り替え群865例がマッチされた。・非切り替え群と比較し、最初の切り替え群は、すべての原因による受診の平均回数、統合失調症関連の緊急受診および入院の平均回数が多く、1ヵ月当たりの入院日数は長かった。・統合失調症関連の平均コストは、患者1人当たり、切り替え群で1,252±2,602ドル、非切り替え群で402±2,027ドルであった(p<0.001)。 著者らは「OAM単剤療法を開始した統合失調症患者の約4分の1は最初のOAMの変更を行っており、その多くは最初のOAM切り替えから3ヵ月以内であった。また、切り替えを行った患者は、行わなかった患者と比較し、医療資源利用およびコストの増加が認められた」とまとめ、「本結果は、症状コントロールを効果的に維持し、忍容性のリスクを最小限にするOAM単剤療法を開始する重要性を強調するものであり、これによりOAM切り替えの必要性を最小限とし、過剰な医療資源の利用およびコストを削減することが可能である」としている。

258.

うつ病の症状とせん妄リスクとの関係~プロスペクティブコホート研究

 せん妄やうつ病は、加齢とともに増加する。両疾患には、アルツハイマー病、機能低下、死亡などの共通の症状や併存疾患の面で、臨床的に重複するものが多い。しかし、うつ病とせん妄の長期的な関連性は、よくわかっていない。米国・ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のArlen Gaba氏らは、高齢入院患者を対象に、抑うつ症状負担およびその経過とせん妄リスクとの関連を評価するため、12年間のプロスペクティブ研究を実施した。Innovation in Aging誌2024年3月13日号の報告。 2006〜10年、英国バイオバンク参加者31万9,141人(平均年齢:58±8歳、範囲:37〜74、女性の割合:54%)を対象に、初回評価来院前2週間に4つの抑うつ症状(気分、無関心、緊張、無気力)の頻度(0~3)を報告し、抑うつ症状負荷スコア(0〜12)を集計した。新規発症のせん妄は、フォローアップ期間中(中央値:12年)の入院記録より抽出した。4万451人(平均年齢:57±8歳、範囲:40〜74)は、初回来院から平均8年後に再評価を行った。抑うつ症状負荷および経過とせん妄予測の関連を評価するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中の新規せん妄発症患者数は、5,753人(1,000人当たり15人)であった。・抑うつ症状によりせん妄リスクの増加が認められたが、完全に調整されたモデルでは関連が認められなかった。【軽度(スコア:1〜2)】HR=1.16(95%信頼区間[CI]:1.08〜1.25、p<0.001)【中等度(スコア:3〜5)】HR=1.30(95%CI:1.19〜1.43、p<0.001)【重度(スコア:5以上)】HR=1.38(95%CI:1.24〜1.55、p<0.001)・これらの所見は、入院回数とは無関係であり、状況(外科的治療、内科的治療、救急治療)や専門分野(精神神経科、心臓呼吸器、その他)を問わず一貫していた。・抑うつ症状の悪化(1ポイント以上の増加)は、変化/スコア改善なしと比較し、せん妄リスクの39%増加(1.39[1.03〜1.88]、p=0.03)と関連しており、これはベースライン時の抑うつ症状負荷とは無関係であった。・この関連性は、ベースライン時65歳以上の高齢者で最も強かった(p for interaction<0.001)。 著者らは、「抑うつ症状の負荷および経過の悪化は、入院中のせん妄リスクの予測因子であることが示唆された。抑うつ症状に対する潜在的な認識が高まることで、せん妄予防に役立つ可能性がある」としている。

259.

日本における統合失調症に対する薬物療法の変化~クロザピン導入前後12年間の調査

 日本における統合失調症に対する精神科薬物療法は、多剤併用療法が行われてきた長い歴史がある。これは、世界的にまれではあるが、依然として重大な問題である。その理由の1つとして、日本では2009年までクロザピンが使用できなかったことが挙げられる。岡山県精神科医療センターの北川 航平氏らは、統合失調症に対する薬物療法がクロザピン導入により、どのように変化したのかを明らかにするため、クロザピン導入前後の12年間にわたる統合失調症に対する精神科薬物療法の変化を調査した。Asian Journal of Psychiatry誌2024年6月号の報告。 岡山県精神科医療センターで統合失調症と診断された入院患者のカルテからレトロスペクティブにデータを収集した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬の投与量は、クロルプロマジン換算で2009年の1276.6mg/日から2020年の613.9mg/日へ減少が認められた。・1日投与量/規定1日投与量(PDD/DDD)は、2009年の3.0から2020年の1.2へ減少していた。・単剤療法の割合は、2009年の24.4%から2020年の74.6%へ増加していた。・岡山精神科医療センターでは、2010年からクロザピンが導入されており、2020年までにクロザピン使用率は、37.3%まで増加が認められた。・4種類以上の抗精神病薬の使用率は、2009年の27.8%から2020年の0.8%へ減少していた。 著者らは、「クロザピン使用率の増加は、抗精神病薬単剤療法を増加させ、多剤併用の改善に寄与しており、統合失調症に対する薬物療法の最適化の促進につながっていた。治療抵抗性統合失調症に対する多剤併用療法をできるだけ少なくするために、日本におけるクロザピン処方をさらに推進すべきである」としている。

260.

医師の燃え尽き防止、同僚のコーチングは役立つか?

 4月から医師の働き方改革がスタートし、労働時間の制約が強まるなか、医師の仕事における過度なストレスや燃え尽き症候群(バーンアウト)への対策は依然として課題であり、よりエビデンスに基づいたアプローチが求められている。医師がコーチングの訓練を受け、同僚に働きかけることで燃え尽き症候群を予防できるのかを検証した、米国・マサチューセッツ総合病院のStephanie B. Kiser氏らによる研究結果が発表された。JAMA Network Open誌2024年4月12日号掲載の報告。 研究者らは、2021年8月5日~12月1日にMass General Physician Organization(マサチューセッツ総合内科医機構)に所属する医師のうち、希望者を対象とした単一施設無作為化臨床試験を行った。データ解析は2022年2~10月にかけて行われた。 138人の参加者は3ヵ月間にわたってピアコーチによる6回のコーチングセッションを受ける介入群と、心身の健康に関する標準的な組織資源を使う対照群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、Stanford Professional Fulfillment Indexで測定した燃え尽き症候群の発生数であった。副次評価項目は職業的充実感、仕事が個人的関係に及ぼす影響、QOL、仕事への関与度、自己評価などであった。 主な結果は以下のとおり。・登録された医師138人のうち、67人が介入群に、71人が対照群に割り付けられた。参加者の多くが31~60歳(128人[93.0%])、女性(109人[79.0%])、既婚(108人[78.3%])、キャリア初~中期(平均12.0[SD 9.7]年)であった。・介入群のうち、コーチとマッチングした52人が少なくとも1回のコーチングセッションを受けた。セッションの3ヵ月後には、介入群は対照群と比較して、燃え尽き症候群、対人関係の断絶、専門職としての充実感、仕事への関与度において統計的に有意な改善がみられた。・対人関係の断絶は、介入群で平均30.1%減少し、対照群で4.1%増加した(絶対差-0.94、95%信頼区間[CI]:-1.48~-0.41、p=0.001)。・燃え尽き症候群は、介入群で平均21.6%減少し、対照群で2.5%増加した(絶対差-0.79、95%CI:-1.27~-0.32、p=0.001)。・専門職としての充実感は、対照群では変化がなかったのに対し、介入群では10.7%増加した(絶対差0.59、95%CI:0.01~1.16、p=0.046)。・仕事への関与度は、介入群で6.3%増加し、対照群で2.2%減少した(絶対差0.33、95%CI:0.02~0.65、p=0.04)。・自己評価は両群で増加したが、有意差はなかった。 研究者らは、「専門的訓練を受けた仲間による個別コーチングが医師の燃え尽き症候群と対人離脱を減少させ、同時に専門家としての充実感と仕事への関与を向上させる効果的な戦略であることを示している」としている。

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