サイト内検索|page:12

検索結果 合計:2893件 表示位置:221 - 240

221.

統合失調症患者の代謝パラメータに対する非定型抗精神病薬の影響

 3種類の非定型抗精神病薬(オランザピン、リスペリドン、アリピプラゾール)のいずれかを服用している患者と健康対照者の空腹時血清アスプロシン濃度と代謝パラメータを比較するため、イラン・Hamadan University of Medical SciencesのKiumarth Amini氏らは、横断的研究を実施した。Human Psychopharmacology誌オンライン版2024年6月28日号の報告。 対象は、統合失調症成人外来患者62例および年齢、性別が一致した健康対照者22例。患者は、寛解状態にあり、オランザピン、リスペリドン、アリピプラゾールのいずれかの非定型抗精神病薬による単剤治療を6ヵ月以上実施していた。BMI、空腹時血清アスプロシン、グルコース、HbA1c、インスリン、脂質プロファイルを両群間で比較した。さらに、インスリン抵抗性の基準を満たした人(HOMA-IR:2.5超)およびBMIレベルが高い人(男性:27kg/m2超、女性:25kg/m2超)について両群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・オランザピン群またはリスペリドン群は、アリピプラゾール群および健康対照者と比較し、BMI、空腹時血清グルコース、HbA1c、インスリン、トリグリセライド(TG)、HDLコレステロール、アスプロシンに統計学的に有意な差が認められた。・アリピプラゾール群は、健康対照者と同等の値を示したが、リスペリドン群またはオランザピン群は有意に高い値を示し、オランザピン群では、最も高値であった。・インスリン抵抗性および高BMIの有病率は、オランザピン群またはリスペリドン群において、アリピプラゾール群および健康対照者と比較し、高かった。・血清アスプロシン値は、BMI、HbA1c、空腹時インスリン、HOMA-IR、TGなどいくつかの代謝パラメータと有意な正の相関が認められた。・総コレステロールおよびLDLコレステロールに関しては、有意な差が認められなかった。 著者らは「オランザピンおよびリスペリドンで治療された患者では、アスプロシン値の上昇、体重増加、代謝障害との関連が認められた。血清アスプロシンレベルは、これらの代謝障害と双方向性の関連が示唆されており、潜在的な原因経路を解明するためにもさらなる研究が求められる」としている。

222.

日本の精神科ガイドライン著者におけるCOI分析

 臨床診療ガイドライン(CPG)は、エビデンスに基づく標準的な患者ケアを提供するために、必要不可欠である。しかし、CPGの著者に対する金銭的な利益相反(COI)により、著者への信頼性が損なわれる可能性がある。東北大学の村山 安寿氏らは、日本の精神科CPGの著者におけるCOIの範囲および規模を調査するため、本研究を実施した。BMJ Open誌2024年6月21日号の報告。 製薬会社より開示された支払い金額を横断的に分析し、日本の双極性障害/うつ病のCPGの著者に対し2016〜20年に支払われた講演謝礼、コンサルティング料、執筆謝礼などを評価した。 主な結果は以下のとおり。・5年間に著者の93.3%に対し支払いが行われており、その総額は400万米ドル超であることが判明した。・著者1人当たりの支払額中央値は5万1,403米ドル(IQR:9,982〜11万1,567)であり、CPG委員長を含む少数の著者に集中していることが顕著であった。・CPGでCOIを開示した著者は、ごく一部に過ぎなかった。・多額の支払いは、CPGに掲載されている新規抗うつ薬や睡眠薬を製造販売している製薬会社でなされた。 著者らは「日本の双極性障害/うつ病CPGの著者のうち、93%以上が製薬会社からの支払いを受けていることが明らかとなった。国際的なCOIマネジメント基準から逸脱していると考えられ、日本の精神科CPGに対する厳格なCOIポリシーの必要性が示唆された」としている。

223.

統合失調症の肺炎リスクと抗精神病薬や抗コリン負荷との関連

 観察研究において、抗精神病薬は肺炎リスクと関連していることが示唆されているが、抗精神病薬の使用が肺炎リスクにどの程度影響を及ぼすのか、用量反応性、各薬剤と特異的に関連するかは不明である。オランダ・アムステルダム大学のJurjen J. Luykx氏らは、特定の抗精神病薬に関連する肺炎リスクを推定し、多剤併用療法、投与量、受容体結合特性が統合失調症患者の肺炎と関連しているかを調査した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2024年6月26日号の報告。 対象は、1972〜2014年のフィンランドレジストリデータより特定された、16歳以上の統合失調症または統合失調感情障害患者。診断、入院治療、専門外来治療に関するデータは退院レジストリ、外来での治療薬に関するデーは処方箋レジストリより収集した。フォローアップ期間は1996〜2017年、データ分析は2022年11月4日〜2023年12月5日に実施した。抗精神病薬の使用量は、用量別に低用量群(WHOが定義する1日用量[DDD]:0.6未満)、中用量群(DDD:0.6〜1.1)、高用量群(DDD:1.1以上)に分類した。特定の抗精神病薬単剤療法、多剤併用療法、抗コリン負荷に応じて、低、中、高に分類した。主要アウトカムは、肺炎発症による入院とした。肺炎リスクは、抗精神病薬未使用の場合を基準とし、調整済み個別(within-individual)Cox比例ハザード回帰モデルを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、統合失調症患者6万1,889例、平均年齢は46.2±16.0歳、男性の割合は50.3%(3万1,104例)であった。・22年間のフォローアップ期間中に、肺炎で1回以上入院した患者は8,917例(14,4%)、入院後30日以内に死亡した患者は1,137例(12.8%)であった。・全体では、抗精神病薬使用患者は、抗精神病薬未使用患者と比較し、肺炎リスクとの関連は認められなかった(調整ハザード比[aHR]:1.12、95%信頼区間[CI]:0.99〜1.26)。・抗精神病薬単剤療法では、抗精神病薬未使用患者と比較し、用量依存的に肺炎リスクの増加との関連が認められたが(aHR:1.15、95%CI:1.02〜1.30、p=0.03)、多剤併用療法では関連が認められなかった。・抗コリン負荷別に分類した場合、抗コリン負荷の高い抗精神病薬の使用と肺炎リスクとの関連が認められた(aHR:1.26、95%CI:1.10〜1.45、p<0.001)。・肺炎リスクの増加と関連していた抗精神病薬は次のとおりであった。【高用量クエチアピン】aHR:1.78(95%CI:1.22〜2.60)、p=0.003【高用量クロザピン】aHR:1.44(95%CI:1.22〜1.71)、p<0.001【中用量クロザピン】aHR:1.43(95%CI:1.18〜1.74)、p<0.001【高用量オランザピン】aHR:1.29(95%CI:1.05〜1.58)、p=0.02 著者らは「統合失調症患者の肺炎リスクと関連する抗精神病薬は、クロザピン(180mg/日以上)だけでなくクエチアピン(440mg/日以上)やオランザピン(11mg/日以上)も含まれることが示唆された。さらに、抗精神病薬単剤療法および抗コリン負荷の高い抗精神病薬の使用は、用量依存的に肺炎リスクを増加させる可能性がある。本知見は、肺炎リスクの高い抗精神病薬による治療を必要とする患者に対する予防戦略の必要性を示唆している」としている。

224.

体重増加のリスクは抗うつ薬の種類により異なる

 体重増加は抗うつ薬の一般的な副作用であるが、特定の抗うつ薬は他の抗うつ薬よりも体重を増加させやすいことが、新たな研究で明らかになった。この研究では、例えば、ノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬(NDRI)のブプロピオン使用者は、最も一般的な抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のセルトラリン使用者よりも体重増加のリスクが15%低いことが示されたという。米ハーバード・ピルグリム・ヘルスケア研究所のJason Block氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に7月2日掲載された。 本研究の背景情報によると、抗うつ薬は米国の成人に最もよく処方されている薬剤の一つで、約14%が抗うつ薬を使用しているという。抗うつ薬の使用により頻発する副作用は体重増加である。体重増加は、使用患者の代謝面の健康に長期にわたる影響を及ぼすのみならず、処方された抗うつ薬の使用中止の原因となり、それが不良な臨床アウトカムにもつながり得る。 今回の研究対象者は、米国の8件のヘルスシステムの電子健康記録(対象期間2010〜2019年)から抽出した、抗うつ薬による治療を開始した18歳から80歳までの患者18万3,118人である。抗うつ薬は、SSRIのセルトラリン、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、パロキセチン、NDRIのブプロピオン、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)のデュロキセチン、ベンラファキシンの8種類が対象とされた。抗うつ薬の使用開始から6カ月後の体重の変化が、セルトラリンとの比較で検討された。 その結果、エスシタロプラム、パロキセチン、デュロキセチン、ベンラファキシン、シタロプラム使用者ではセルトラリン使用者に比べて体重が有意に増加しており、セルトラリン使用者との平均差は同順で、0.41kg、0.37kg、0.34kg、0.17kg、0.12kgであった。フルオキセチン使用者とセルトラリン使用者の間に体重増加について有意差は認められず(平均差−0.07kg)、ブプロピオン使用者ではセルトラリン使用者に比べて体重が有意に減少していた(平均差−0.22kg)。また、ベースラインから5%以上の体重増加のリスクは、セルトラリン使用者に比べてエスシタロプラム、パロキセチン、デュロキセチンの使用者では10〜15%上昇していたのに対し、ブプロピオン使用者では15%低下していた。 Block氏は、「われわれの研究では、ブプロピオンのような一部の抗うつ薬は、他の抗うつ薬に比べて体重を増加させにくいことが明らかになった」と述べている。 さらにBlock氏は、「患者やその臨床医が特定の抗うつ薬を選択する理由はいくつかあるが、体重増加はしばしば患者が服薬を中止する原因となる重要な副作用だ。よって、患者と臨床医は、自分のニーズに最も合う抗うつ薬を選択する理由の一つとして、体重増加を考慮してもよいのではないか」と研究所のニュースリリースで述べている。

225.

産後うつ病リスクとビタミンDとの関連

 妊婦、産後女性、非産後女性、男性の抑うつ症状発現に対するビタミンDの影響を評価するため、米国・南イリノイ大学のVictoria Rose Barri Benters Hollinshead氏らは、血清ビタミンD濃度と抑うつ症状との関連を調査した。Nutrients誌2024年6月14日号の報告。 研究対象集団は、2007〜18年のNHANES公開データより抽出された20〜44歳の妊婦、産後女性、非産後女性(非妊婦/産後の女性)、男性。抑うつ症状、血清ビタミンD濃度、栄養摂取量、人工統計学的データなどの主観的な聴取データおよび客観的な臨床検査データを用いた。主成分分析を用いて2つの食事パターンを作成し、各サブグループのうつ病アウトカムを予測するため、ベイジアン多項モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・ビタミンDの対数傾斜パラメータの推定値は、すべてのコホートにおいてネガティブであり、ビタミンDが増加すると、うつ病割合の減少、非うつ病割合の増加が認められた。・妊婦コホートにおいて、ビタミンDの傾斜は最も急激であり、次いで産後女性、非産後女性、男性の順であった。・妊娠中および産後女性では、ビタミンD濃度が高いと、非産後女性および男性と比較し、うつ病リスクの減少に大きな影響が認められた。・産後女性において授乳中の女性は、授乳していない女性と比較し、ビタミンD濃度の高さとうつ病リスク減少により大きな影響が認められた。

226.

低脂肪食がうつ病リスクに及ぼす影響〜メタ解析

 低脂肪食がうつ病リスクに及ぼす影響を調査するため、イラン・Shahid Sadoughi University of Medical SciencesのSepideh Soltani氏らは、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Nutrition Reviews誌オンライン版2024年6月19日号の報告。 2023年6月7日までに公表されたRCTをPubMed、ISI Web of Science、Scopus、CENTRALデータベースより検索し、低脂肪食(脂肪摂取量がエネルギー摂取量の30%以下)がうつ病スコアに及ぼす影響を調査した試験を特定した。低脂肪食がうつ病リスクに及ぼす影響のプールされた効果(Hedges g)を推定するため、ランダム効果メタ解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・10件のRCT(5万846例)を分析に含めた。・低脂肪食と通常食との比較において、うつ病スコアに有意な違いは認められなかった(Hedges g=−0.11[95%信頼区間[CI]:−0.25〜0.03]、p=0.12、I2=70.7%[95%CI:44〜85])。・タンパク質含有量が摂取カロリーの15〜20%の場合、低脂肪食(5件、Hedges g=−0.21[95%CI:−0.24〜−0.01]、p=0.04、I2=0%)と通常食(3件、Hedges g=−0.28[95%CI:−0.51〜−0.05]、p=0.01、I2=0%)のいずれにおいても、有意な改善が認められた。・感度分析では、ベースラインでうつ病でない患者において、低脂肪食介入後にうつ病スコアの改善が認められた。 著者らは、「メンタルヘルスが良好な参加者を対象とした研究において、低脂肪食はうつ病スコアに対し、わずかに有益である可能性が示唆された。うつ病スコアの改善には、食事中の脂肪量を調整するよりも、タンパク質を十分に摂取したほうがよいと考えられるが、この効果が長期間持続するかは不明である」としている。

227.

未治療の急性期統合失調症患者におけるビリルビン値と代謝パラメータとの関連

 酸化システムは、統合失調症発症に重要な影響を及ぼす。統合失調症患者のさまざまなエピソードにおいて、高ビリルビン血症と精神病理や糖脂質代謝との間に、一貫性のない関連が認められている。中国・安徽医科大学のYinghan Tian氏らは、急性期エピソードおよび薬物治療未治療の統合失調症患者を対象に、これらの関連性を調査した。BMC Psychiatry誌2024年5月29日号の報告。 安徽医科大学附属巣湖病院の電子カルテシステムより抽出した5年間(2017年5月〜2022年5月)のデータを用いて、レトロスペクティブ研究を実施した。地元の医療スクリーニングセンターより同期間の健康対象者データを抽出した。対象者のビリルビン濃度(総ビリルビン[TB]、抱合ビリルビン[CB]、非抱合ビリルビン[UCB])、糖脂質代謝パラメータ、簡易精神症状評価尺度(BPRS)スコアを収集した。 主な結果は以下のとおり。・特定された1,468件の症例記録をスクリーニング後、急性期エピソードおよび薬物治療未治療の統合失調症患者(AEDF群)89例および対照群100例を対象に、分析を行った。・AEDF群は、対照群と比較し、CBレベルが高く、HDLコレステロール(HDL-C)を除く糖脂質代謝パラメータのレベルが低かった(各々、p<0.001)。・バイナリロジスティック回帰分析により、AEDF群のビリルビンレベルの高さと独立して関連が認められた因子は、次のとおりであった(各々、p<0.05)。●BPRS総スコア、抵抗サブスケールスコアの高さ●HDL-Cレベルの高さ●総コレステロール、トリグリセライドレベルの低さ 著者らは、「急性期エピソードおよび薬物治療未治療の統合失調症患者では、ビリルビンレベルが上昇しており、ビリルビンレベルが高いほど、精神病理がより重篤で、糖脂質代謝が比較的最適化されていることが示唆された。臨床現場では、この患者集団のビリルビン値を定期的にモニタリングすべきである」としている。

228.

抗精神病薬誘発性体重増加に対する薬理学的介入〜ネットワークメタ解析

 抗精神病薬誘発性体重増加は、第1世代および第2世代抗精神病薬による治療において重要な問題となるが、しばしば軽視されて、心血管疾患を引き起こす可能性につながる。インド・全インド医科大学のNaveen Chandrashekar Hegde氏らは、抗精神病薬誘発性体重増加に対する利用可能な治療オプションの有効性を評価および比較するため、ネットワークメタ解析を実施した。General Hospital Psychiatry誌オンライン版2024年6月11日号の報告。 MEDLINE/PubMed、Embase、Scopus、Cochraneデータベース、臨床試験レジストリより関連する臨床試験を抽出した。ベースラインからの体重変化に対する介入の全体的な効果をプールするため、ランダム効果ベイジアンネットワークメタ解析を実施した。ネットワークグラフ作成、一貫性モデルの実行、ノード分割分析の実施、SUCRAスコアに従った治療のランク付けを行った。治療期間、ベースライン時の体重、治療戦略を予測変数とし、メタ回帰を行った。エビデンスの確実性に基づき結果を分類した。 主な結果は以下のとおり。・関連する臨床試験は、68件抽出された。・有意な体重減少を示した薬剤および用量は、エフェクトサイズ順に次のとおりであった。●sibutramine 10mg:−8.0kg(−16.0〜−0.21)●メトホルミン 750mg+生活習慣の改善:−7.5kg(−12.0〜−2.8)●トピラマート 200mg:−7.0kg(−10.0〜−3.4)●メトホルミン 750mg:−5.7kg(−9.3〜−2.1)●トピラマート 100mg:−5.7kg(−8.8〜−2.5)●トピラマート 50mg:−5.2kg(−10.0〜−0.57)●リラグルチド 1.8mg:−5.2kg(−10.0〜−0.080)●sibutramine 15mg:−4.5kg(−8.9〜−0.59)●ニザチジン 300mg:−3.0kg(−5.9〜−0.23)●メトホルミン 1,000mg:−2.3kg(−4.6〜−0.0046)・抗精神病薬誘発性体重増加の体重減少に対し、治療期間、ベースライン時の体重、予防と治療戦略の影響は認められなかった。 著者らは、「抗精神病薬誘発性体重増加に対する治療法として、メトホルミン750mg+生活習慣の改善が最も効果的であり、トピラマート200mg、メトホルミン750mg、トピラマート100mgによる治療が中程度の確実性でこれに続くことが確認された」としている。

229.

精神病性双極性うつ病の治療における課題

 精神病性双極性うつ病は、患者数が多いものの十分に研究されていない精神疾患の1つであり、その治療に関連する特定のガイドラインやFDAで承認されている薬剤がいまだない。最近の研究では、一部の抗精神病薬や気分安定薬が双極性うつ病のマネジメントに有効である可能性が示唆されているが、精神病性双極性うつ病に対する有効性は、不明なままである。米国・マサチューセッツ大学チャン・メディカルスクールのMaite A. Cintron Pastrana氏らは、精神病性双極性うつ病のマネジメントには、より集中的な研究が求められることから、関連する既存の文献をレビューした。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2024年7・8月号の報告。 1960年代〜2023年に公表された文献をPubMed、MEDLINE、EMBASE、Googleより検索した。精神病性うつ病との関連性を検討した研究を選択した。 主な結果は以下のとおり。・精神病性双極性うつ病は、複雑な疾患であり、双極性障害患者の50〜75%に精神病性の特徴が認められた。・精神病性躁病の病歴を有する患者では、可能性が高くなった。・治療ガイドラインでは、気分安定薬、抗精神病薬、または電気けいれん療法の併用療法が推奨されるケースが多かったが、第1選択治療は明記されていなかった。・精神病性双極性うつ病の症状は、気分高揚やエネルギーフィーリングが混在する感情によってマスクされる可能性があり、診断や治療の遅延につながる一方で、自殺リスクの上昇が問題となる。・精神病性双極性うつ病に対するさまざまな治療法のアウトカムを評価した研究は限られており、良好な有効性を示すエビデンスがないものの、臨床診療では抗精神病薬が最も使用されている。・とくに、抗精神病薬と選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬または三環系抗うつ薬との併用療法は、効果的である可能性はあるが、気分安定薬は含める必要がある。 著者らは、「精神病性双極性うつ病は、重症度や最適な治療アプローチに関するコンセンサスが欠如しており、メンタルヘルスにおいて重要な課題である。急性の精神病性双極性うつ病に対する効果的な治療、理想的なフォローアップケア、さまざまな治療法に対する治療反応者の特性、その後の治療決定モデルに関する重要な疑問を明らかにするためにも、より専門的な臨床試験や研究が必要とされる」としている。

230.

中高年の果物や野菜の摂取とうつ病発症リスク

 新たな観察研究の報告により、うつ病発症予防に果物や野菜の摂取が重要な役割を果たすことが示唆されている。しかし、高齢者や低中所得国(LMIC)に関する研究は不足している。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のAnnabel P. Matison氏らは、果物や野菜の摂取とうつ病リスクとの関連を明らかにするため、LMICを含むさまざまなコホート研究を分析し、その結果のメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌2024年8月15日号の報告。 対象は、LMICでの4件のコホートを含む10件のコホートより抽出した非うつ病成人地域住民7,801例(平均年齢:68.6±8.0歳、女性の割合:55.8%)。果物と野菜の摂取量は、包括的な食品摂取頻度質問票、食品質問票短縮版、食事歴などにより自己申告で収集した。抑うつ症状の評価およびうつ病の定義には、検証済みの尺度およびカットオフ値を用いた。ベースライン時における果物や野菜の摂取量とフローアップ期間中(3〜9年)のうつ病発症との関連性を評価するため、Cox回帰を用いた。分析は、コホートごとに実施し、結果をメタ解析した。 主な結果は以下のとおり。・4万258人年のフォローアップ期間中、うつ病を発症した対象者は1,630例(21%)であった。・果物の摂取量が多いほど、うつ病発症リスクが低下した(ハザード比[HR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.77〜0.99、I2=4%)。・野菜の摂取量とうつ病発症との関連は認められなかった(HR:0.93、95%CI:0.84〜1.04、I2=0%)。このことは、各コホートで測定法が異なり、本研究のサンプルサイズがこれまでの研究と比較し小さかったため、野菜摂取との関連性が検出されなかった可能性がある。 著者らは、「うつ病予防に対し、果物摂取の有用性は裏付けられたが、野菜については有意な関連性が認められなかった。低中所得国の高齢者を対象とした大規模コホートにおいて、標準化された測定法を用い、さまざまな果物や野菜について調査する必要がある」としている。

231.

未治療統合失調症患者におけるメタボリックシンドローム有病率と関連因子

 メタボリックシンドローム(MetS)は、心血管疾患特有のいくつかのリスク因子を含む疾患であり、統合失調症患者では頻繁に発症する。中国・Wuhan Mental Health CenterのSuoya Hu氏らは、抗精神病薬未使用の統合失調症患者におけるMetSの発症と重症度に影響を及ぼす因子を明らかにするため、本研究を実施した。Early Intervention in Psychiatry誌オンライン版2024年5月22日号の報告。 対象は、2017年2月〜2022年6月に中国中部最大の精神科専門施設に入院した抗精神病薬未使用の18〜49歳の統合失調症患者668例。対象患者の社会人口統計学的および一般臨床データを収集した。精神病理スコアおよび重症度の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)および臨床全般印象度の改善度(CGI-I)をそれぞれ用いた。MetSスコアは、重症度を判断するため算出した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬未使用の統合失調症入院患者のMetS有病率は10.93%であった。・二項ロジスティック回帰分析では、MetSのリスク因子として、発症年齢、女性、総コレステロール、赤血球数、白血球数が特定された。・MetSの保護因子には、遊離サイロキシン(FT4)、CGI-Iスコアが特定された。・多重線形回帰分析では、統合失調症の発症年齢の高さがMetSスコア上昇のリスク因子であることが示唆された。 著者らは、「本研究より、未治療統合失調症患者のMetS有病率およびMetSの発症や重症度に影響を及ぼす因子が特定された。これらの知見は、統合失調症の臨床診療におけるMetS関連の予防および治療戦略に活かされるであろう」としている。

232.

統合失調症の診断、治療、モニタリングおける酸化バイオマーカーの重要性

 統合失調症は、非常に複雑な疾患であり、その病因は多面的である。これまでに、統合失調症の病態生理学と酸化ストレスとの関連を示唆する報告がされている。ポーランド・Pomeranian Medical UniversityのElzbieta Cecerska-Heryc氏らは、統合失調症と酸化ストレスとの関連を明らかにするため、本研究を実施した。Schizophrenia Research誌オンライン版2024年6月7日号の報告。 対象は、慢性期統合失調症患者および発症しやすい状態(初回エピソード精神疾患、超高リスク)の患者150例。統合失調症を発症しやすい状態の患者は、4つのサブグループ(欠損型統合失調症、非欠損型統合失調症、初回エピソード精神疾患、超高リスク)に分類した。対照群は、健康ボランティア34例とした。酸化ストレスマーカーと脳由来神経栄養因子(BDNF)の測定には、分光光度法、ELISA法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・すべての患者は、対照群と比較し、抗酸化酵素の活性および還元型グルタチオン総抗酸化能の濃度が低かった(p<0.001)。・BDNF濃度は、超ハイリスク患者を除くすべての患者において、対照群よりも低かった(p=0.01)。・BDNF、グルタチオン還元酵素、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ活性と罹病期間との間に相関が認められた(p<0.02)。・酸化ストレスマーカーに対する喫煙のわずかな影響が確認された(rho<0.06、p<0.03)。 著者らは、「酸化ストレスは、統合失調症の臨床パターンが発現する前に、統合失調症の病態生理学に重要な役割を果たす可能性が示唆された。統合失調症患者は、重篤な酸化還元不均衡が出現し、精神疾患発症につながる状態であるため、自然な抗酸化システムで完全に補完することは困難である」とし、「酸化ストレスバイオマーカーは、統合失調症の診断をサポートし、進行予測に役立つ可能性がある」としている。

233.

小児期の睡眠障害、若年期の精神病リスクにつながる可能性

 短時間睡眠は、短期・中期・長期的に子どもの発達に有害な影響を及ぼす可能性があることがこれまでも報告されているが、新たな報告によると、小児期に持続的に睡眠時間が短いと、若年期の精神病発症リスクが上がる可能性があるという。英国・バーミンガム大のIsabel Morales-Munoz氏らによる本研究結果は、JAMA Psychiatry誌オンライン版2024年5月8日号に掲載された。 研究者らは小児期における持続的な夜間睡眠時間の短さと、24歳時点での精神病体験(PE)および/または精神病性障害(PD)との関連、および炎症マーカー(C反応性蛋白[CRP]およびインターロイキン6[IL-6])が関連するかを検討するコホート研究を実施した。 英国の出生コホート研究であるAvon Longitudinal Study of Parents and Childrenのデータを用い、6ヵ月、18ヵ月、30ヵ月、3.5歳、4~5歳、5~6歳、6~7歳の時点の夜間睡眠データを収集した。24歳時にPEとPDをPsychosis-like Symptoms Interview(PLIKSi)で評価した。RP値とIL-6値は9歳・15歳時に血液採取で測定した。夜間睡眠時間の軌跡を検出するために潜在クラス成長分析(LCGA)を適用し、24歳時点の精神病転帰との縦断的関連についてロジスティック回帰を、CRP値とIL-6値が潜在的な媒体因子であることを検証するためにパス解析を行った。データ解析は2023年1月30日~8月1日に実施した。 主な結果は以下のとおり。・小児1万2,394例(女児6,254例[50.5%])、ロジスティック回帰とパス分析では若年成人3,962例(女性2,429例[61.3%])のデータが得られた。・LCGAにより、小児期を通じて夜間の睡眠時間が4クラスに分けられた。持続的睡眠時間が最も短い群(301例[2.4%])は、24歳時のPD(オッズ比[OR]:2.50、95%信頼区間[CI]:1.51~4.15、p<0.001)およびPE(OR:3.64、95%CI:2.23~5.95、p<0.001)のリスクが有意に高かった。・9歳時のIL-6値の上昇は、持続的な睡眠時間の短さとPD(バイアス補正推定値=0.003、95%CI:0.002~0.005、p=0.007)およびPE(バイアス補正推定値=0.002、95%CI:0~0.003、p=0.03)との関連を部分的に媒介していた。9歳時または15歳時のCRP値にこうした関連は見られなかった。 研究者等は「乳児期から小児期までの睡眠時間が持続的に短い群は、24歳時の精神病の有病率が有意に高かった。さらに、9歳時のIL-6値の上昇がこれらの関連を部分的に媒介しており、IL-6値で測定される炎症が潜在的な機序経路の1つである可能性がある。この結果は小児期における短時間睡眠への対処の必要性を強調しており、睡眠と炎症反応の両方に対する、将来的な介入に関する予備的な証拠ともなる」とした。

234.

中等度~重度の外傷性脳損傷アウトカム、非制限輸血vs.制限輸血/NEJM

 貧血を伴う重度の外傷性脳損傷患者において、非制限輸血戦略は制限輸血戦略と比較して6ヵ月後の不良な神経学的アウトカムのリスクを改善することはなかった。カナダ・ラヴァル大学のAlexis F. Turgeonらが、無作為化比較試験「Hemoglobin Transfusion Threshold in Traumatic Brain Injury Optimization pragmatic trial(HEMOTION試験)」の結果を報告した。重度の外傷性脳損傷患者のアウトカムに対する制限的輸血戦略と非制限輸血戦略の有効性は不明であった。NEJM誌オンライン版、2024年6月13日号掲載の報告。6ヵ月後の神経学的アウトカム不良について比較検証 HEMOTION試験は、カナダ、イギリス、フランス、ブラジルの神経集中治療専門の外傷センター34施設で実施された、PROBE(Prospective Randomized Open Blinded End-Point)デザインの試験である。 研究グループは、中等度または重度の外傷性脳損傷(グラスゴー昏睡尺度[GCS、スコア範囲3~15で低スコアほど意識レベルが低いことを示す]スコア3~12)および貧血(ヘモグロビン値10g/dL以下)の18歳以上の患者を、非制限輸血戦略群(非制限群)と制限輸血戦略群(制限群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 非制限群では、ヘモグロビン値が10g/dL以下で、制限群ではヘモグロビン値が7g/dL以下で赤血球輸血を行った。 主要アウトカムは、拡張グラスゴー転帰尺度(Glasgow Outcome Scale-Extended[GOS-E]、スコア範囲:1[死亡]~8[上位の良好な回復])の評価に基づく6ヵ月後の不良なアウトカムであった。ベースライン時点で各患者の予後を3つのリスクレベル(最悪、中間、最良)に分類し、6ヵ月後のGOS-Eスコアがそれぞれ3、4、5以下であった場合に不良なアウトカムと定義した。 副次アウトカムは、6ヵ月以内の死亡、機能的自立度(Functional Independence Measure[FIM])、QOL(EQ-5D-5Lなど)、うつ病(Patient Health Questionnaire-9[PHQ-9])などであった。主要アウトカムに両群で有意差なし 2017年9月1日~2023年4月13日に、計742例が無作為化され(各群371例)、722例が主要アウトカムの解析対象集団となった。集中治療室(ICU)におけるヘモグロビン値(中央値)は、非制限群では10.8g/dL、制限群では8.8g/dLであった。 不良なアウトカムは、非制限群では364例中249例(68.4%)、制限群では358例中263例(73.5%)に認められた(制限群と非制限群の補正後絶対群間差:5.4%、95%信頼区間[CI]:-2.9~13.7)。 6ヵ月死亡率は非制限群26.8%、制限群26.3%(ハザード比:1.01、95%CI:0.76~1.35)であった。6ヵ月時の生存例において、非制限群は制限群と比較し機能的自立度やQOLの一部で良好なスコアが得られたが、輸血戦略と死亡率またはうつ病との間に関連性は認められなかった。 静脈血栓塞栓症の発現率は各群8.4%で、急性呼吸窮迫症候群は非制限群で3.3%、制限群で0.8%に発現した。 なお、著者は研究の限界として、貧血患者のみを募集し、より重度の外傷脳損傷患者を対象としたこと、ベースラインでいくつかの予後変数を含む両群間の不均衡が確認されたこと、治療の割り付けに関して診療チームに対する盲検化はできなかったことなどを挙げている。

235.

抗うつ薬中断後症状の発生率〜メタ解析

 抗うつ薬中断後症状は、実臨床においてさらに重要度が増しているが、その発生率は定量化されていない。抗うつ薬中断後症状の推定発生率を明らかにすることは、治療中断時に患者および臨床医、抗うつ薬治療研究者に対する有用な情報提供につながる。ドイツ・ケルン大学のJonathan Henssler氏らは、抗うつ薬とプラセボを中断した患者における抗うつ薬中断後症状の発生率を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The Lancet Psychiatry誌2024年7月号の報告。 2022年10月13日までに公表された、抗うつ薬中断後症状の発生率を評価したランダム化比較試験(RCT)、その他の比較試験、観察研究を、Medline、EMBASE、CENTRALよりシステマティックに検索した。対象研究は、精神疾患、行動障害、神経発達障害の患者を対象に、既存の抗うつ薬(抗精神病薬、リチウム、チロキシンを除く)またはプラセボの中断または漸減を調査した研究とした。新生児の研究および器質性疾患による疼痛候群などの身体症状に対して、抗うつ薬を使用した研究は除外した。研究の選択、サマリデータの抽出、バイアスリスク評価後のデータを用いて、ランダム効果メタ解析を行った。主要アウトカムは、抗うつ薬またはプラセボの中断後の症状の発生率とした。また、重度の中断後症状の発生率も分析した。方法論的変数のテストには、感度分析、メタ回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングされた論文6,095件から79件(RCT:44件、観察研究:35件)、2万1,002例(女性:72%、男性:28%、平均年齢:45歳、年齢範囲:19.6〜64.5)をメタ解析に含めた。・民族に関するデータは、一貫して報告されなかった。・1万6,532 例の患者が抗うつ薬を中止し、4,470 例の患者がプラセボを中止した。・1つ以上の抗うつ薬中断症状の発生率は、抗うつ薬中断群(研究グループ:62件)で0.31(95%信頼区間[CI]:0.27〜0.35)、プラセボ群(研究グループ:22件)で0.17(95%CI:0.14〜0.21)であった。・対象のRCTにおける抗うつ薬中断群とプラセボ群における中断後症状の発生率の差は、0.08(95%CI:0.04〜0.12)であった。・重度の抗うつ薬中断後症状の発生率は、抗うつ薬中断群で0.028(95%CI:0.014〜0.057)、プラセボ群で0.006(95%CI:0.002〜0.013)であった。・抗うつ薬中断後症状の発生率の高い薬剤は、desvenlafaxine、ベンラファキシン、イミプラミン、エスシタロプラムであり、重症度と関連していた薬剤は、イミプラミン、パロキセチン、desvenlafaxine、ベンラファキシンであった。・結果の異質性は、顕著であった。 著者らは、「プラセボ群における非特異的効果を考慮すると、抗うつ薬中断後症状の発生率は約15%であり、中断した患者の6〜7人に1人が影響を受けることが明らかとなった。サブグループおよび異質性の分析では、診断、投薬、試験関連特性では説明不能な因子を示唆しており、患者、臨床医、またはその両方の主観的因子が影響している可能性がある。結果を解釈するには、残存または再発の精神病理を考慮する必要があるが、本結果は、過度の不安を引き起こすことなく、抗うつ薬中断後症状の可能性に関する知見を患者、臨床医が得ることにつながるであろう」としている。

236.

高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024

高齢者に関わるすべての医療介護福祉専門職へ!超高齢社会を迎えたわが国では、CGAによる包括的・全人的な評価と、それに基づいた個別化された医療・ケアの提供が求められている。多職種協働により取り組む必要があり、CGAはその共通言語となる。本ガイドラインは、医師だけではなく高齢者に関わる医療介護福祉関係の多職種向けに作成した。診療やケアに幅広く活用いただきたい。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024定価1,980円(税込)判型B5判頁数102頁発行2024年6月編集長寿医療研究開発費「高齢者総合機能評価(CGA)ガイドラインの作成研究」研究班日本老年医学会国立長寿医療研究センターご購入はこちらご購入はこちら

237.

高齢者の重症低血糖には治療の脱厳格化も重要/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会の年次学術集会(会長:植木 浩二郎氏[国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センター長])が、5月17~19日の日程で、東京国際フォーラムをメイン会場として開催された。 糖尿病患者への薬物治療では、時に重症低血糖を来し、その結果、さまざまな合併症や死亡リスクを増加させる可能性がある。また、低血糖でも無自覚性のものは夜間に起こると死亡の原因となるなど注意が必要となる。 そこで本稿では、「シンポジウム29 糖尿病治療に伴う低血糖・ライフステージごとの特徴」で発表された「高齢者の糖尿病治療における低血糖」(演者:杉本 研氏[川崎医科大学総合老年医学 教授])の概要をお届けする。高齢者糖尿病は低血糖の自覚症状が乏しい 2023年に『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』が日本老年医学会と日本糖尿病学会の共同編集で発行され、杉本氏はこのガイドラインに沿って講演を行った。 同ガイドラインでは、QI-8「高齢者糖尿病の低血糖にはどのような特徴があるか?」で今回のテーマに関する事項が触れられている。低血糖の代表的な症状であるめまいや倦怠感については、高齢者では症状を自覚しにくいこと(無自覚性低血糖)、重症低血糖を起こしやすいこと、低血糖が認知症、転倒などのリスクとなり、大小血管障害の危険因子となることが記されている。とくに認知症と低血糖の関係については、認知症があると低血糖になるという側面と、低血糖があると認知症が進むという側面がある1)。そのため高齢者では血糖値は低すぎても、高すぎても問題となる。 低血糖とフレイルの関係については、低血糖が1回以上ある患者では、転倒は1.7倍、骨折は1.8倍にリスクが上がる2)こと、また低血糖はフレイル発症と関わるため、フレイル予防においても低血糖の防止が必要である。フレイルのある糖尿病患者に厳格な血糖マネジメントは必要かという点では、厳格な血糖マネジメントをしても合併症や死亡が抑制できず、重症低血糖がさらに増えることから、フレイルのある高齢者では厳格なマネジメントは必要ないとされている。そのため、高齢者糖尿病の血糖のマネジメント目標は、認知機能やADL、さらには多疾患併存状態がないかを評価したうえで設定することが推奨されている。 そのほか、重症低血糖を防ぐためには連続血糖測定(CGM)を用いた血糖マネジメントを提案すること、また血糖降下薬の選択では、SU薬、グリニド薬、超速効・速効型インスリンは重症低血糖を起こすリスクがあるため、これらの薬剤を選択する場合には低血糖に留意しながら慎重に使用する必要があることを指摘した。高齢者の重症低血糖の因子は、「70歳以上」「認知症」「CKD」など 多疾患併存疾患(multimorbidity)の患者の実態について、低血糖をターゲットに調べてみると、75歳以上で4つ以上の併存疾患がある患者で発生割合が非常に多かった一方で、重症低血糖は0.6%と多くはなかったという。 重症低血糖を起こす因子としては、「70歳以上」「認知症」「慢性腎不全(CKD)」「心不全」「悪性腫瘍」「骨折」などが挙げられている。薬剤としては「SU薬」「インスリン」「グリニド薬」「BOT療法」のほか、3剤以上の経口血糖降下薬の併用も危険因子とされている。さらに10剤以上処方されていると重症低血糖が起こるリスクも上がることからに、ポリファーマシーへの介入が低血糖の発生予防に寄与すると考えられる。 さらにアメリカ糖尿病協会(ADA)の指針についても触れ、血糖マネジメントが難しい患者、たとえば認知機能やADLの低下している患者や介護施設に入所している患者などに対しては、そもそもHbA1cの目標値を設定せず、低血糖や症候性高血糖を避けるよう求められていると説明するとともに、「治療の単純化、脱厳格化を考慮することが必要」と触れた。高齢糖尿病患者では治療の「単純化」と「脱厳格化」を考える 治療の単純化について、たとえばインスリンであれば持効型インスリンへの切り替えや注射のタイミングを睡眠前ではなく、朝に注射するように変更するなどの工夫が参考となる。 重症低血糖後の治療の脱厳格化についての研究では、5割近くのSU薬処方者が脱厳格化しているという報告があり、その実施数も増加してきている。脱厳格化する患者モデルとしては、ADLが低下している患者、CKD、うつ病、転倒の既往がある患者では実施率が高いとされ、以後の重症低血糖を減少させることにつながると考えられる。 さらに台湾の研究では、在宅サービスがあること、服薬アドヒアランスが良いと低血糖は起こりにくく、処方薬剤が5剤以上ある高齢者では在宅サービスにより介入することが低血糖発生回避につながるメリットとなることが報告されている。 最後に杉本氏は、「単に血糖値を下げるのではなく、低血糖を起こさない治療が高齢の糖尿病患者には重要であり、重症低血糖は認知症やフレイルと相互に関係している危険因子であるので、個々の患者評価が重要となる。高齢者ではHbA1cの目標値を設定する際には認知機能やADLの評価が不可欠であり、また低血糖の既往者などでは、CGMを使用してモニタリングし、TBR(Time below range:血糖が70mg/dL未満で推移する時間の割合)を減らすことが推奨される。重症低血糖の既往がある高齢患者では脱厳格化を行うことが重要な治療介入となり、ポリファーマシーに留意し、低血糖を生じやすい薬剤を中心に減薬を考慮することが必要」と述べ、講演を終えた。

238.

統合失調症に対する2種類の長時間作用型注射剤抗精神病薬の併用療法

 統合失調症患者のうち、複数の治療に対し抵抗性を示す患者の割合は、最大で34%といわれている。継続的かつ適切な治療が行われない場合、再発、再入院、抗精神病薬による薬物治療の効果低減、副作用リスクの上昇を来す可能性が高まる。統合失調症患者のコンプラインアンスを向上させ、臨床アウトカムやQOLの改善に対し、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の有用性が示唆されており、治療抵抗性統合失調症患者に対しては、2種類のLAI抗精神病薬を同時に投与することが推奨されている。イタリア・University of Campania Luigi VanvitelliのSalvatore Cipolla氏らは、統合失調症またはその他の精神病スペクトラム障害患者に対する2種類のLAI抗精神病薬併用に関する利用可能なエビデンスのレビューを行った。Brain Sciences誌2024年4月26日号の報告。 PRISMAステートメントに従い、2024年2月9日までに公表された2種類のLAI抗精神病薬のさまざまな組み合わせに関する研究を、PubMed、Scopus、APA PsycInfoより検索した。統合失調症および関連疾患の患者に対する2種類のLAI抗精神病薬の組み合わせとその臨床アウトカムを報告した研究を対象に含めた。 主な結果は以下のとおり。・最終分析には、ケースレポート9件、ケースシリーズ4件、観察的レトロスペクティブ研究2件を含めた。・LAI抗精神病薬の併用療法では、良好な治療反応が報告され、新規または予期せぬ副作用は報告されなかった。・さまざまな薬剤の組み合わせが使用されていた、アリピプラゾール水和物とパリペリドンパルミチン酸月1回(32回)の併用が最も多かった。 著者らは「2種類のLAI抗精神病薬による治療レジメンは、すでに多くの臨床現場で用いられており、統合失調症スペクトラム障害の治療に有用であり、効果的かつ比較的に安全な治療戦略であると認識されている」としている。

239.

初発統合失調症患者に対する長時間作用型注射剤と経口剤抗精神病薬の有用性〜メタ解析

 長時間作用型注射剤抗精神病薬(LAI)は、慢性期統合失調症患者の再発および入院の予防に対し、経口抗精神病薬(OAP)よりも優れていることが示唆されているが、初発や最近発症した統合失調症、つまり早期段階の統合失調症患者におけるエビデンスは、明確ではない。イタリア・ヴェローナ大学のGiovanni Vita氏らは、早期段階の統合失調症患者の維持療法におけるLAIとOAP治療による中長期の相対的な有効性および安全性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Therapeutic Advances in Psychopharmacology誌2024年6月2日号の報告。 早期段階の統合失調症の維持療法におけるLAIとOAP治療を比較した直接比較ランダム化比較試験(RCT)を、主要な電子データベースより検索し、ペアワイズランダム効果メタアナリシスを実施した。研究のエンドポイントで測定された再発/入院および忍容性(すべての原因による治療中止)を共通の主要アウトカムとし、リスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。サブグループ解析では、LAIとOAP治療間の有効性および忍容性の差を緩和する因子の特定を試みた。 主な結果は以下のとおり。・直接比較RCT 11件(2,374例、年齢中央値:25.2歳、男性の割合:68.4%、罹病期間中央値:45.8週間)が特定された。・13〜104週間(中央値:78週間)にわたり、LAIとOAP治療との間で、再発/入院予防(RR=0.79、95%CI:0.58〜1.06、p=0.13)、忍容性(RR=0.92、95%CI:0.80〜1.05、p=0.20)に有意な差は認められなかった。・対象試験の方法論および患者集団に関しては、非常に異質であった。・安定した患者(RR=0.65、95%CI:0.45〜0.92)、実用的な試験デザイン(RR=0.67、95%CI:0.54〜0.82)、厳格なITTアプローチ(RR=0.64、95%CI:0.52〜0.80)の研究において、LAIは再発/入院の予防に対しOAPよりも優れた結果が認められた。・LAIは、統合失調症患者のみを対象(RR=0.87、95%CI:0.79〜0.95)、罹病期間が長い(RR=0.88、95%CI:0.80〜0.97)、不安定な患者(RR=0.89、95%CI:0.81〜0.99)、LAIの補充療法としてのOAP使用可能(RR=0.90、95%CI:0.81〜0.99)とした研究において、忍容性の向上が認められた。 著者らは、「全体としてLAIとOAP治療は、初発統合失調症患者の再発/入院の予防や忍容性の関して有意な差が認められなかったが、サブグループ解析では、いくつかの場合において、LAIはOAPよりも優れていることが示されており、OAPがLAIよりも優れている点は見当たらなかった。初発統合失調症患者におけるLAIとOAPの違いをさらに明らかとするためにも、より質の高い実用的な研究が求められる」としている。

240.

統合失調症うつ病の治療ガイドライン普及が睡眠薬処方に及ぼす影響

 信州大学の中村 敏範氏らは、「精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)」が、日本における統合失調症およびうつ病に対する、精神科医による睡眠薬の処方や処方する睡眠薬の種類に及ぼす影響を調査した。これは、精神疾患の治療ガイドラインによる教育が、精神科医の睡眠薬処方に及ぼす影響を評価した、初めての研究である。BMC Psychiatry誌2024年5月29日号の報告。 EGUIDEプロジェクトは、日本における統合失調症うつ病のエビデンスに基づく臨床ガイドラインに関する、全国的なプロスペクティブ研究である。2016〜21年にEGUIDEプロジェクト参加施設から退院した患者を対象に、臨床データと処方データを用いて、睡眠薬の処方状況を調査した。EGUIDEプロジェクトに参加している精神科医から処方された患者と参加していない精神科医から処方された患者における、睡眠薬の処方率および各タイプの睡眠薬の処方率を比較した。睡眠薬のタイプは、ベンゾジアゼピン受容体作動薬、非ベンゾジアゼピン受容体作動薬、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬に分類した。EGUIDEプロジェクトが睡眠薬処方に及ぼす影響を評価するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象は、統合失調症患者1万2,161例、うつ病患者6,167例。・EGUIDEプロジェクトに参加した精神科医は、統合失調症患者およびうつ病患者に対し、睡眠薬、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の処方率が有意に低かった(各々、p<0.001)。 著者らは「EGUIDEプロジェクトは、睡眠薬の処方、とくにベンゾジアゼピン受容体作動薬の処方率削減に、重要な役割を果たしていると考えられる。本結果は、EGUIDEプロジェクトが治療行動の改善に寄与する可能性を示唆している」としている。

検索結果 合計:2893件 表示位置:221 - 240