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膵がん末期患者の下痢をコデインリン酸塩でコントロール【うまくいく!処方提案プラクティス】第34回

 今回は、末期がんの患者さんの下痢に対して、コデインリン酸塩錠で対処した症例を紹介します。代表的な副作用である便秘を活用することで、最終的には疼痛・排便の両方がコントロールできましたが、もっと早くから介入できていたら…という後悔が残った事例です。患者情報87歳、女性基礎疾患膵体部がん(c Stage4b、本人へは未告知)、左加齢性黄斑変性症既往歴子宮筋腫手術、腰椎圧迫骨折、左大腿部頸部骨折診察間隔毎週訪問処方内容1.トラセミド錠4mg 1錠 分1 朝食後2.スピロノラクトン錠25mg 1錠 分1 朝食後3.ナイキサン錠100mg 2錠 分2 朝食後・就寝前4.酪酸菌配合錠 4錠 分2 朝食後・就寝前5.パンクレリパーゼカプセル150mg 2カプセル 分2 朝食後・就寝前6.乾燥硫酸鉄徐放錠 2錠 分2 朝食後・就寝前7.ポラプレジンク錠75mg 2錠 分2 朝食後・就寝前8.ロペラミドカプセル1mg 2カプセル 分2 朝食後・就寝前9.スボレキサント錠15mg 1錠 分1 就寝前10.ロフラゼプ酸エチル錠1mg 1錠 分1 就寝前本症例のポイントこの患者さんは、膵体部がんの進行による疼痛と頻回の下痢で体力消耗が激しく、その便処理のために同居する長女の介護負担が非常に大きい状態でした。内服薬の管理も本人では難しく、出勤前と帰宅後に内服支援をする長女のために朝食後と就寝前で統一していました。下痢に関しては以前から悩みの種で、過去の治療において半夏瀉心湯やタンニン酸アルブミンで治療をするも抑えることはできず、現在の治療でも整腸薬のみではまったく効果はありませんでした。ロペラミドも追加しましたがコントロールには至らず、本人と長女の精神的・身体的な疲弊が限界に達していました。そのような中、医師より、どうにか今の服薬管理環境で下痢をコントロールできる内服薬はないかという電話相談がありました。この患者さんは、過去に子宮筋腫の手術歴があり、イレウスのリスクもあることから止瀉作用の過剰発現には注意を払う必要があります。しかし、今も疼痛があり、今後も病勢が進行する可能性から、オピオイド導入のタイミングと考えて、腸管内のオピオイド受容体を刺激して腸管蠕動を抑制するコデインリン酸塩錠の投与について検討しました。処方提案と経過医師に、疼痛と排便コントロールの両方を兼ねて、現行のロペラミドに加えて、弱オピオイドのコデインリン酸塩錠の追加を提案しました。用法については、長女より夜間から明け方の便失禁で困っているという話があったため、20mg錠を朝・夕食後(長女帰宅時に服用)・就寝前の分3で服用する方法を伝えました。医師からは、強オピオイドの導入も考えていたが段階を踏んで治療をしよう、と承認を得ることができ、早速当日の夜より服用開始となりました。投与開始3日目にフォローアップのため訪問したところ、夜間の便失禁が減り、本人と長女の心身の負担が軽減できていました。しかしその後、これまでの度重なる便失禁や病状悪化が影響してか、食事がほとんど摂れずに水分摂取がやっとの状態になっていきました。そして、病状悪化から内服も困難な状態となり、フェンタニルクエン酸塩貼付薬とモルヒネ塩酸塩水和物液での緩和医療へ切り替えることになりました。複数の止瀉薬を検討していた段階で提案することができず、医師から相談を受けるまでなかなか知恵を絞りきれなかったことを反省する事例となりました。

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国内初の1日2回投与型トラマドール製剤「ツートラム錠50mg/100mg/150mg」【下平博士のDIノート】第67回

国内初の1日2回投与型トラマドール製剤「ツートラム錠50mg/100mg/150mg」今回は、慢性疼痛治療薬「トラマドール塩酸塩徐放錠(商品名:ツートラム錠50mg/100mg/150mg、製造販売元:日本臓器製薬)」を紹介します。本剤は、1日2回(12時間間隔)の投与に最適化された徐放性製剤であり、非オピオイド鎮痛薬で十分な効果が得られない患者の疼痛緩和やアドヒアランス向上が期待されています。<効能・効果>本剤は、非オピオイド鎮痛薬で治療困難な慢性疼痛における鎮痛の適応で、2020年9月25日に承認され、2021年1月8日より発売されています。なお、2022年5月に「疼痛を伴う各種がん」の効能・効果が追加されました。<用法・用量>通常、成人にはトラマドール塩酸塩として1日100~300mgを2回(朝、夕が望ましい)に分けて経口投与します。症状に応じて1回200mg、1日400mgを超えない範囲で適宜増減できますが、1回50mg、1日100mgずつ行うことが推奨されています。なお、初回投与は1回50mgから開始することが望ましく、ほかのトラマドール塩酸塩経口薬から切り替える場合は、切り替え前の薬剤の1日投与量、鎮痛効果および副作用を考慮して本剤の初回投与量を設定します。<安全性>国内で日本人を対象に実施された第II、III相試験(慢性疼痛6試験併合)において、本剤との因果関係を否定できない有害事象は749例中597例(79.7%)で報告されています。主なものは、悪心329例(43.9%)、便秘308例(41.1%)、傾眠160例(21.4%)、嘔吐113例(15.1%)、浮動性めまい81例(10.8%)、口渇58例(7.7%)、食欲減退43例(5.7%)でした。なお、重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー、呼吸抑制、痙攣、依存性、意識消失(いずれも頻度不明)が注意喚起されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、脳内への痛みの伝達を抑え、一般的な鎮痛薬では治療困難な痛みを和らげます。2.眠気、めまい、意識消失が起こることがあるので、本剤を服用中は自動車の運転など危険を伴う機械の操作をしないでください。3.この薬はゆっくり効く部分を持っていますので、割ったり、粉砕したり、かみ砕いたりせずに、そのまま服用してください。4.悪心・嘔吐、便秘、めまい、口が乾く、食欲が低下するなどの症状が現れることがあります。症状が重く、持続する場合はすぐに受診してください。5.有効成分が出た後の錠剤が糞便中に排泄されることがありますが心配ありません。6.飲酒により薬の作用が強くなり、呼吸抑制が起こることがあります。服用中の飲酒は避けてください。<Shimo's eyes>本剤は、速やかに有効成分が放出される速放部と、徐々に有効成分が放出される徐放部の2層錠にすることで、安定した血中濃度推移が得られるように設計された国内初の1日2回投与のトラマドール製剤です。厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で検討され、製造販売会社に開発が要請されました。トラマドールを含有する既存の経口薬としては、1日4回服用の速放性製剤(商品名:トラマール)、1日1回服用の徐放性製剤(同:ワントラム)、アセトアミノフェン配合製剤(同:トラムセットなど)が販売されていています。なお、トラマドールはWHO三段階除痛ラダーで「ステップ2」に位置付けられる弱オピオイド鎮痛薬ですが、わが国では麻薬の指定は受けていません。適応症である「慢性疼痛」は、腰痛症、変形性膝関節症、関節リウマチ、脊柱管狭窄症、帯状疱疹後神経痛、有痛性糖尿病性神経障害、線維筋痛症、複合性局所疼痛症候群など幅広い原因によって引き起こされます。本剤は、慢性疼痛治療で汎用されているプレガバリンやセレコキシブなどと同じ1日2回投与ですので、併用薬や生活様式に合わせた薬剤を選択することでアドヒアランスが維持・向上できると期待されます。22年5月の改訂で、がん患者の疼痛管理にも本剤が使えるようになりました。本剤を定時服用していても疼痛が増強した場合や突出痛が発現した場合は、即放性のトラマドール製剤(商品名:トラマール錠など)をレスキュー薬として使用します。なお、レスキュー投与の1回投与量は、定時投与に用いている1日量の8~4分の1とし、総投与量は1日400mgを超えない範囲で調節します。鎮痛効果が不十分などを理由に本剤から強オピオイドへの変更を考慮する場合、オピオイドスイッチの換算比として本剤の5分の1量の経口モルヒネを初回投与量の目安として、投与量を計算することが望ましいとされています。禁忌となるのは、ほかのトラマドール製剤と同様に、12歳未満の小児、本剤に対する過敏症、アルコールや睡眠薬、鎮痛薬、オピオイド鎮痛薬または向精神薬による急性中毒、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬を投与中または投与中止後14日以内、ナルメフェン塩酸塩水和物を投与中または投与中止後1週間以内、てんかん患者などです。副作用としては、高頻度で悪心・嘔吐、便秘が報告されています。必要に応じて制吐薬や下剤の併用を提案するようにしましょう。※2022年6月、添付文書改訂の内容を基に、一部内容の修正を行いました。参考1)PMDA 添付文書 ツートラム錠50mg/ツートラム錠100mg/ツートラム錠150mg

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第24回 風邪薬1箱飲んだら、さぁ大変!【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)若年者の嘔気・嘔吐では必ず鑑別に!2)拮抗薬はきちんと頭に入れておこう!【症例】26歳女性。ご主人が帰宅すると、自宅で繰り返し嘔吐している患者さんを発見し、辛そうにしているため救急要請。救急隊からの情報では、リビングの机の上には市販薬の空箱が数箱あり、嘔吐物には薬塊も含まれていた様子。●受診時のバイタルサイン意識10/JCS血圧119/71mmHg脈拍98回/分(整)呼吸25回/分SpO299%(RA)体温36.2℃瞳孔3/3 +/+既往歴特記既往なし内服薬定期内服薬なし最終月経2週間前風邪薬の成分とはみなさん風邪薬を服用したことがあるでしょうか? 医療者はあまり使用することはないかもしれませんが、一般の方は風邪らしいなと思ったら薬局などで購入し、内服することは多いでしょう。救急外来や診療所に発熱や咳嗽を主訴に来院する患者さんの中には、市販薬が効かないから来院したという方が一定数いるものです。市販薬を指定されている量を内服している場合には、それが理由でとんでもない副作用がでることはまれですが、当然服用量が過剰になればいろいろと問題が生じます。風邪薬の成分は、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの解熱鎮痛薬、クロルフェ二ラミンマレイン酸塩などの抗ヒスタミン薬、ジヒドロコデインリン酸塩などの鎮咳薬、そして無水カフェインが含まれている商品が多いです。今回は救急外来で遭遇する頻度が比較的高い「アセトアミノフェン中毒」について重要な点をまとめておきます。その他、カフェイン、ブロン、ブロムなども市販薬の内服で起こり得る中毒のため、是非一度勉強しておくことをお勧めします。アセトアミノフェンの投与量以前、アセトアミノフェンは1日最大量1,500mg(1回最大量500mg)と少量の使用しか認められていませんでしたが、2011年1月から1日最大量4,000mg(1回最大量1,000mg)と使用可能な量が増えました。また、静注薬も発売され、みなさんも外来で痛みを訴える患者さんに対して使用していることと思います。高齢者に対しても、肝機能障害やアルコール中毒患者では2,000〜3,000mg/日を超えないことが推奨されていますが、そうでなければ1回の投与量は10〜15mg/kg程度(1,000mgを超えない)が妥当と考えられています。アセトアミノフェン中毒とはアセトアミノフェンは、急性薬物中毒の原因物質として頻度が高く、救急外来でもしばしば遭遇します。最も注意すべきは肝障害であり、アセトアミノフェン中毒で急性肝不全を呈した患者の3週間死亡率は27%と非常に高率です1)。そのため、十分量使用しながらも中毒にならないように管理する必要があります。アセトアミノフェンの大部分は肝臓で抱合され尿中に排泄されますが、一部は肝臓で分解され、N-アセチル-p-ベンゾキノンイミン(NAPQI)を生成し、これをグルタチオンが抱合することで尿中に排泄されます。NAPQIは毒性が高いのですが、アセトアミノフェンが適正の量であれば、グルタチオンによって解毒されます。しかし、過剰量の場合には、グルタチオンが枯渇し、正常の30%程度まで減少するとNAPQIが蓄積、肝細胞壊死へと進行してしまいます2)。そのため、アセトアミノフェンを過剰に摂取した場合には、グルタチオンを増やすことが必要になるわけです。NACとは中毒診療において重要なこととして、拮抗薬の存在が挙げられます。拮抗薬が存在する薬剤は限られるため頭に入れておきましょう(参考:第7回 意識障害その6 薬物中毒の具体的な対応は?)。アセトアミノフェンに対する拮抗薬はN-アセチルシステイン(NAC)です。NACは、グルタチオンの前駆体であり、中毒症例、特に肝細胞壊死へと至ってしまうような症例では必須となります。タイミングを逃さず、NACの投与が開始できれば肝不全は回避できます。ちなみにこのNAC、投与経路は経口です。静注ではありません。臭いをかいだことがある人は忘れない臭いですよね。腐った卵のあの臭い…。NACはいつ投与するかそれではいつNACを投与するべきでしょうか。アセトアミノフェンの血中濃度が迅速に判明する場合には、その数値を持って治療の介入の有無を判断することがある程度することが可能です。ちなみに、アセトアミノフェン摂取後の経過時間を考慮した血中濃度で判断する必要があり、内服直後の数値のみをもって判断してはいけません。一般的には4時間値が100μg/mLを超えているようであればNAC開始が望ましいとされます(以前は150μg/mLでしたが、肝障害発症の予防を強固に、そして医療費の削減のため基準値が下げられました)。“Rumack-Matthewのノモグラム”は有名ですね2)。そのため、摂取時間を意識した測定、経過観察が大切です。測定が困難な場合には、内服した量から推定するしかありません。アセトアミノフェンを150mg/kg以上(50kgであれば7,500mg)服薬していた場合にはNAC療法が推奨されます。この7,500mgという量をみてどのように思いますか? 前述した通り、アセトアミノフェンの1日の最大投与量として許容されている量は4,000mgです。中毒量が目の前に存在することがよくわかると思います。痛みに悩む患者さんは多く、処方されている薬を飲み過ぎてしまうと、簡単に中毒量に達してしまう可能性があるため注意が必要なのです。1箱飲んだら危険製品にもよりますが、アセトアミノフェンが含有される風邪薬や頭痛薬など鎮痛薬と称される市販薬は、1錠に含まれるアセトアミノフェンは80~200mg程度と少量の物が多いのですが、1箱80錠のものも存在します。また、インターネット上で購入しようと思えば500mg錠100錠など、中毒量を購入することは簡単にできてしまうのが現状です。初療時のポイントは、本症例のように嘔気・嘔吐を認める患者など過量内服患者を拾い上げること、そしてNACの適応となり得る量を内服していないかを血中濃度や推定内服量から見積もり判断することです。さいごにアセトアミノフェンは使用し易く、処方する機会は多いと思います。しかし、使用方法を間違ってしまうと肝不全へ陥ってしまう可能性のある恐い薬でもあります。安全な薬というイメージが強いかもしれませんが、いかなる薬もリスクであるため、処方する際には正しい内服方法を丁寧に患者さんに説明しましょう。また、過量内服患者ではNACの適応を理解し、肝障害を防ぎましょう。1)Ostapowicz G,et al. Ann Intern Med. 2002;137:947-954.2)Heard KJ. N Engl J Med. 2008;359:285-292.

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がん患者、抗凝固薬の中止時期を見極めるには/日本癌治療学会

 がん患者は合併症とどのように付き合い、そして医師はどこまで治療を行うべきか。治療上で起こりうる合併症治療とその中止タイミングは非常に難しく、とりわけ、がん関連血栓症の治療には多くの腫瘍専門医らは苦慮しているのではないだろうかー。 10月23日(金)~25日(日)にWeb開催された第58回日本癌治療学会学術集会において、会長企画シンポジウム「緩和医療のdecision making」が企画された。これには会長の弦間 昭彦氏の“decision makingは患者の治療選択時に使用される言葉であるが、医療者にとって治療などで困惑した際に立ち止まって考える機会”という思いが込められている。今回、医師のdecision makingに向けて発信した赤司 雅子氏(武蔵野赤十字病院緩和ケア内科)が「合併症治療『生きる』選択肢のdecision making-抗凝固薬と抗菌薬-」と題し、困惑しやすい治療の切り口について講演した。本稿では抗凝固療法との向き合い方にフォーカスを当てて紹介する。医師のバイアスがかからない意思決定を患者に与える がん治療を行いながら並行して緩和医療を考える昨今、その場に応じた1つ1つの細やかな意思決定の需要性が増している。臨床上のdecision makingは患者のリスクとベネフィットを考慮して合理的に形成されているものと考えられがちであるが、実際は「多数のバイアスが関係している」と赤司氏は指摘。たとえば、医師側の合理的バイアス1)として1)わかりやすい情報、2)経験上の利益より損失、3)ラストケース(最近経験した事柄)、4)インパクトの大きい事象、などに左右される傾向ある。これだけ多数のバイアスのかかった情報を患者に提供し、それを基にそれぞれが判断合意する意思決定は“果たして合理的なのかどうか”と疑問が残る。赤司氏は「患者にはがん治療に対する意思決定はもちろんのこと、合併症治療においても意思決定を重ねていく必要がある」と述べ、「とくに終末期医療において抗凝固薬や抗菌薬の選択は『生きる』という意味を含んだ選択肢である」と話した。意思決定が重要な治療―がん関連血栓症(CAT) 患者の生死に関わる血栓症治療だが、がん患者の血栓症リスクは非がん患者の5倍も高い。通常の血栓症の治療期間は血栓症の原因が可逆的であれば3ヵ月間と治療目安が明確である。一方、がん患者の場合は原因が解決するまでできるだけ長期に薬物治療するよう現時点では求められているが、血栓リスク・出血リスクの両方が高まるため薬剤コントロールに難渋する症例も多い。それでも近年ではワーファリンに代わり直接経口抗凝固薬(DOAC)が汎用されるようになったことで、相互作用を気にせずに食事を取ることができ、PT-INR確認のための来院が不要になるなど、患者側に良い影響を与えているように見える。 しかし、DOACのなかにはP糖タンパクやCYP3A4に影響する薬物もあることから、同氏は「終末期に服用機会が増える鎮痛剤や症状緩和の薬剤とDOACは薬物相互作用を起こす。たとえば、アビキサバンとデキサメタゾンの併用によるデキサメタゾンの血中濃度低下、フェンタニルやオキシコドン、メサペインとの相互作用が問題視されている。このほか、DOACの血中濃度が2~3倍上昇することによる腎機能障害や肝機能障害にも注意が必要」と実状を危惧した。DOACの調節・中止時の体重換算は今後の課題 また、検査値指標のないDOACは体重で用量を決定するわけだが、悪液質が見られる場合には筋肉量が低下しているにも関わらず、浮腫や胸水、腹水などの体液の貯留により体重が維持されているかのように見えるため、薬物投与に適した体重を見極めるのが難しい。これに対し、同氏は「自施設では終末期がん患者の抗凝固療法のデータをまとめているが、輸血を必要としない小出血については、悪液質を有する患者で頻度が高かった。投与開始時と同量の抗凝固薬を継続するのかどうか、検証するのが今後の課題」と話した。また、エドキサバンのある報告2)によると、エドキサバンの血中濃度が上昇しても大出血リスクが上昇するも脳梗塞/塞栓症のリスクは上昇しなかったことから、「DOACの少量投与で出血も塞栓症も回避することができるのでは」とコメント。「ただし、この報告は非がん患者のものなので、がん患者への落とし込みには今後の研究が待たれる」とも話した。 さらに、抗凝固薬の中止タイミングについて、緩和ケア医とその他の医師ではそのタイミングが異なる点3)、抗凝固薬を開始する医師と中止する医師が異なる点4)などを紹介した。 このような臨床上での問題を考慮し「半減期の短さ、体内での代謝などを加味すると、余命が短め週の単位の段階では、抗凝固療法をやめてもそれほど影響はなさそうだが、薬剤選択には個々の状況を反映する必要がある」と私見をまとめ、治療の目標は「『いつもの普段の自分でいられること』で、“decision making”は合理的な根拠を知りながら、その上で個別に考えていくことが必要」と締めくくった。

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第17回 治療編(1)薬物療法・その4【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第17回 治療編(1)薬物療法・その4前回侵害受容性疼痛に対し、わが国で非麻薬系オピオイドとして使用されているトラマドール製剤とブプレノルフィン貼付薬について解説しました。今回は、さらに痛みの程度が強い患者さんに使用する麻薬系オピオイドのコデインモルヒネ、フェンタニルについて説明したいと思います。(1)コデイン<作用機序>コデインは、投与量の5~15%が肝臓で代謝されることで、CYP2D6により産出されるモルヒネとなり、鎮痛効果が得られます。産出されたモルヒネがオピオイド受容体と結合することで、鎮痛効果を発揮します。<投与上の注意>モルヒネと同様に考えて使用します。コデインリン酸塩散には1%、10%、原末があります。また、コデインリン酸塩錠には5mg、20mgがあります。通常は、1回20mg錠を1日3回投与します。ただし、モルヒネ換算には幅があり、鎮痛作用を目的にする場合には、鎮咳目的の場合と異ってかなりの量が必要になります。1%散として使用する場合には、1回2g、1日3回6gの投与になりますので、漢方薬並みの用量となります。通常は麻薬扱いですが、 内容量が少ない1%散、5mg錠は、投与量と関係なく非麻薬扱いになります。副作用として、嘔気・嘔吐、食欲低下、便秘、口渇、ふらつき、傾眠、意識消失などがあります。(2)モルヒネ<作用機序>オピオイドの基本薬です。オピオイド受容体と結合して鎮痛効果を発揮します。<投与上の注意>次の項に示した合成麻薬フェンタニルの基本薬物になります。錠剤は10mgですが、いきなり10mg錠剤ではなく、末として3mg、5mg、8mgと段階的に体が慣れてくるたびに増量していきます。もちろん、途中で疼痛が緩和されれば、その投与量で維持していきます。また、1日の投与量が15mgに達すれば、フェンタニル貼付剤の適応(文末の表を参照)になります。(3)フェンタニル貼付剤<作用機序>モルヒネと同様、強オピオイドに分類されます。オピオイド受容体と結合して鎮痛効果を発揮します。<投与上の注意>フェンタニル貼付剤には、3日用の「デュロテップMTパッチ」、1日用の「フェントスパッチ」「ワンデュロパッチ」が適応されます。モルヒネ経口剤で30mgが「フェントスパッチ1mg」「デュロテップMTパッチ2.1mg」「ワンデュロパッチ0.84mg」に相当します。貼付剤なので、貼付する部位を毎回ずらしていきます。また、温度が高くなると、吸収が増えるので、入浴などの際には気を付けなければなりません。そのために、入浴が好きな患者さんでは、1日用のパッチを入浴前にいったん外し、入浴後に再度貼付される方もいます。なお、本剤の投与に際してはeラーニングの受講が必要です。モルヒネおよびフェンタニルは、医療用麻薬に分類される強オピオイドであり、乱用、依存、退薬症候、長期処方に伴う鎮痛耐性、鎮痛過敏、腸機能、性腺機能障害などに注意が必要です。貼付剤では掻痒、発赤などの皮膚症状が見られることがありますので、貼付部位をローテーションすることが重要です。以上、痛み治療の第3段階における薬物について、その作用機序、投与における注意点などを述べさせていただきました。難治性疼痛患者さんに接しておられる読者の皆様に少しでもお役に立てれば幸いです。次回は神経ブロックについて解説します。1)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S156-S157

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「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」6年ぶりの改訂

 『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版』が7月22日に発刊された。今回の改訂は2014年版が発刊されてから6年ぶりで、ヒドロモルフォン(商品名:ナルサスほか)、トラマドール塩酸塩の徐放性製剤(商品名:ワントラム)などの新規薬物の発売や新たなエビデンスの公表、ガイドライン(GL)の作成方法の変更などがきっかけとなった。本書の冒頭では日本緩和医療学会理事長の木澤 義之氏が、「分子標的薬ならびに免疫チェックポイント阻害薬をはじめとするがん薬物療法が目覚ましい発展を遂げていることなどを踏まえて改訂した」と述べている。 がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版の主な改訂点については、8月9日~10日にWeb開催された「緩和・支持・心のケア 合同学術大会」での教育講演「『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2020年版)』の概要」でも発表され、馬渡 弘典氏(横浜南共済病院 緩和支持療法科)が解説した。がん疼痛の薬物療法に関するガイドラインとして必要な情報に絞る まず、がん疼痛の薬物療法に関するガイドラインの改訂版は作成方法の変更により計325ページから185ページへと大幅にボリュームダウン。大幅に絞られた臨床疑問は65項目から28項目に絞られ、Appendixには委員会で討論したが根拠が乏しく解説文に記載しなかったこと、現場の臨床疑問・現在までの研究と今後の検討課題が記載された。以前まで取り上げられていた「麻薬に関する法的・制度的知識」「がん疼痛マネジメントを改善するための組織的な取り組み」「薬物療法以外の痛み治療法(放射線療法、神経ブロック、骨セメント)」はがん疼痛の薬物療法に関するガイドラインの枠組みでは扱いづらくなったとのことで2020年版では割愛されたが、「大切な事項なので書籍などで確認を」と述べた。2020年版では突出痛の定義が近年の考えを加味して変更された 馬渡氏はがん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版を作成する際に生じたエビデンスと推奨のギャップについて解説した上で、疼痛強度に応じた鎮痛薬の使用方法を説明した。まず、中等~高度のがん疼痛についてはCQ3~7*を示し、「中等~高度の疼痛がある患者に対して、強オピオイド間の優劣については今回のシステマティックレビューでは認められなかったため、本ガイドラインではどの薬剤を選択しても良いと結論付けられている」と説明。CQ6(がん疼痛のある患者に対して、フェンタニルの投与は推奨されるか?)については、今年6月末にフェンタニルの貼付剤(商品名:フェントステープ)がオピオイド鎮痛剤未使用のがん疼痛患者へ適応となったことにも触れた。また、それ以前に決定稿になったことを断ったうえで、フェンタニルによる初回投与は、『投与後に傾眠、呼吸抑制の重篤な有害作用の有無を継続して観察出来るとき』の条件付き推奨となったことを述べた。さらに、「添付文書にも 増量時の注意事項が書かれているので、注意して経過観察してほしい」と述べた。*CQ3~7は、「がん疼痛のある患者に対して、各薬剤(モルヒネ、ヒドロモルフォン、オキシコドン、フェンタニル、タペンタドール)の投与は推奨されるか?」について記載。 次に、2018年のWHOのガイドライン改訂で、3段階ラダーの表現が本文から付録に相当するANNEXに移ったが、がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版でも中等度のがん疼痛では「強い推奨が弱オピオイドから強オピオイドに変更された」点について説明。CQ8(がん疼痛のある患者に対して、コデインの投与は推奨されるか?)やCQ9(がん疼痛のある患者に対して、トラマドールの投与は推奨されるか?)、CQ23(がん疼痛のある患者に対して、初回投与のオピオイドは、強オピオイドと弱オピオイドのどちらが推奨されるか?)の内容に反映されている。 突出痛については、「突出痛の定義は国際的に決まったものはないが、『持続痛の有無や程度、鎮痛薬治療の有無にかかわらず発生する一過性の痛みの増強』から『定期的に投与されている鎮痛薬で持続痛が良好にコントロールされている場合に生じる、短時間で悪化し自然消失する一過性の痛み』へと、近年の考えを加味して変更された」と解説した。また、がん疼痛の薬物療法に関するガイドラインにおける突出痛に投与するオピオイドの薬剤の用語の統一についても触れ、総称区分を以下のように示した。●速放性製剤:経口モルヒネ、ヒドロモルフォン、オキシコドンなど●経粘膜性フェンタニル:フェンタニル口腔粘膜吸収製剤●レスキュー薬:突出痛に投与するオピオイドの経口薬、注射剤、坐剤すべてがん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版の変更点 このほか、がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版の変更点として、腎機能低下時の投与や便秘時について解説。CQ17(オピオイドが原因で、便秘のあるがん患者に対して、下剤、その他の便秘治療薬の投与は推奨されるか?)やCQ22(がん疼痛のある、高度の腎機能障害患者に対して、特定のオピオイドの投与は推奨されるか?)を示し、「高度の腎機能障害患者にフェンタニルやブプレノルフィンの“注射剤”を推奨していること。コデインモルヒネを投与する場合は短期間で少量から投与すること。軽度から中等度の腎障害では減量すればどのオピオイドも投与可能。ただし、ブプレノルフィンは高度の腎機能障害がある時や、ほかの強オピオイドが投与できない時に限定する」と述べた。<今回からがん疼痛の薬物療法に関するガイドラインに追加された主な新規薬剤>・ヒドロモルフォン(商品名:ナルサス、ナルラピド、ナルペイン)・オキシコドン塩酸塩水和物徐放錠(同:オキシコンチンTR錠)[オキシコンチン錠の販売中止に伴う]・トラマドール塩酸塩(同:トラマールOD錠、ワントラム)とアセトアミノフェン配合剤(同:トラムセット)[カプセル剤の販売中止に伴う]・ミロガバリン(同:タリージェ)・ナルデメジン(同:スインプロイク)とその他の便秘治療薬(ポリエチレングリコール製剤、リナクロチド[同:リンゼス]、エロピキシバット[同:グーフィス])<がん疼痛の薬物療法に関するガイドラインから削除された主な薬剤>・モルヒネ製剤の一部(同:カディアン、ピーガード)・エプタゾシン(同:セダペイン)、ジヒドロコデインリン酸塩(同:リン酸ジヒドロコデイン)、ペチジン塩酸塩(同:ペチジン塩酸塩「タケダ」) 今後の予定として、同氏は2020年版のガイドライン作成過程で用いた各種のテンプレートを掲載した詳細資料を作成し、『本ガイドライン作成の経過やより詳細な内容を知りたい読者がインターネット上で閲覧できるようにする』『CQ、ステートメントを英文化し、国際紙に掲載する』などを掲げた。また日本緩和医療学会より一般市民向けに2017年に出版されている「患者さんと家族のためのがんの痛み治療ガイド 増補版」も改訂が必要とされれば速やかに改訂を行うこととすると述べ、「教科書などとうまく使い分けて役立ててもらえれば」と締めくくった。

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10代の市販薬乱用問題で日薬が通知【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第37回

以前のコラムで、10代の薬物依存患者の4割が市販薬を乱用しているというセンセーショナルな調査結果をお伝えしました。これは市販の中枢性麻薬性鎮咳薬などを、本来の咳止め目的以外で乱用していることを明らかにしたもので、一般紙でも広く報じられました。乱用者は複数の薬局やドラッグストアを回って購入したり、インターネットサイトなどで購入したりしているのでしょうが、副作用や依存性が大変危惧されます。そこで、この調査結果を受け、日本薬剤師会が各都道府県薬剤師会に通知を発出しました。その中では、以下のような販売に関する対策が求められています。1.複数個購入の防止乱用のおそれのある医薬品は複数個販売しない。来局者の直接手の届かない位置に陳列する。または、陳列は空箱、商品カードで対応する。2.頻回購入の防止乱用のおそれのある医薬品を販売する場合は、要指導医薬品・第一類医薬品等の販売記録に記入するとともに、薬局および店舗内での情報連携・販売管理を徹底する。3.複数薬局および店舗での購入防止乱用のおそれのある医薬品の販売を行う際には、他薬局や他店舗での購入状況、保有状況を確認し、その内容を販売記録に記載する。購入状況に応じて、適切な指導等を行う。4.若年者への不適切な販売の防止乱用の事例が多いとされる若年者には、氏名・年齢を身分証明書で確認し、必要に応じて販売しない。その旨を薬局および店舗内に掲示する。「濫用等のおそれのある医薬品の取扱いについて(お願い)」(2019年11月20日付 日本薬剤師会発)より抜粋対応としては、「まさにそのとおり!」という感じではあるのですが、この通知には具体的な商品名の記載はありません。乱用のおそれのある成分としては、エフェドリン、コデイン(鎮咳去痰薬に限る)、ジヒドロコデイン(鎮咳去痰薬に限る)、ブロモバレリル尿素、プソイドエフェドリン、メチルエフェドリン(鎮咳去痰薬のうち内用液剤に限る)の6成分が挙げられています。皆さんの薬局で扱っている一般用医薬品にこれらの成分が含まれているものがあるかどうかは、各店舗で確認する必要があります。通知まで出したのに市販薬を用いた若年層の薬物依存患者がさらに増えたとなったら、それはもう薬局や薬剤師は何をしていたのかと責められても仕方ありません。この対策をどのように運用していくのか考え、薬事の門番として毅然とした態度で対応することが求められています。濫用等のおそれのある医薬品の取扱いについて(お願い)

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第12回 痛みの治療法【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第12回 痛みの治療法これまで11回にわたって、痛みの基本的概念から身体各部の痛みについて述べてまいりました。この<痛み>シリーズの最終回として、今回は痛みの治療法を概説いたします。痛み治療は末梢→中枢が原則、治療法は多岐に基本的な痛みの治療方針としては、神経の末梢部位から攻めていきます。たとえば神経ブロックにおきましても、罹患部分が末梢であれば痛みのトリガーポイントからブロックしていきます。効果が見られなければ、順次中枢部へと進んでいきます。末梢神経ブロックの次には、硬膜外ブロックが適応となります。その次には、脊髄や脳組織もターゲットとなります。電気神経刺激療法におきましても、体表の末梢神経から始めまして、脊髄電気刺激、脳電気刺激などへ移行し、鎮痛効果が見られなければ、神経ブロック同様に刺激部位を上位中枢へと移動していきます。大脳皮質を刺激する電気痙攣療法(ECT)は、うつ病に効果が認められておりますが、難治性慢性疼痛の治療にも応用されています。ECTによって嫌な記憶を忘れることも、疼痛の緩和をもたらすからです。低出力レーザー治療を含む光線療法も広く応用されてきております。レーザー治療は、神経ブロックの効果には多少及ばないものの、高齢患者を想定すると副作用が少ないために安全で有用性も高いと考えられております。患者参加型の疼痛治療法も試みられております。痛みは患者本人にしかわからないために、患者が痛みを感じた時に痛み治療薬を患者自身で投与する方法です。Patient Controlled Analgesia (PCA:自己調節鎮痛法)と呼ばれておりますが、ディスポーザブルセットからコンピュータ内蔵機器まで様々な装置が使用されております。主として鎮痛薬の静脈投与ですが筋肉投与も可能です。経口投与による頓服投与スタイルもPCAの一種ですが、あらかじめ基本となる鎮痛薬をベースとしまして、痛い時に使用する頓服用の鎮痛薬を、痛みが強くなるようであれば患者自身の判断で服用してもらいます。インターベンショナルな痛みの治療法も様々考案されております。そのうち、仙骨硬膜外腔癒着剥離術は腰痛治療にも応用されております。ビデオガイドカテーテルを仙骨裂孔から挿入し、ディスプレイ画面にて、癒着部を確認しながら、剥離を行っていきます。それと同時に生理食塩水で炎症部を洗浄し、発痛物質を洗い出すことによって、鎮痛を得る方法です。近年、分子生物学的手法の進展によって、痛みに関連する神経の受容体が次々と発見され、複雑な痛みの機序が徐々に解明されてきております。また、個々の患者さんによって、その疼痛機序は異なっておりますので、責任受容体や痛みの機序を容易に見つけ出すためのテストが必要になってきました。このためにドラッグチャレンジテスト(DCT)を活用することによって有効的な薬物を見出して、より効果的な薬物療法を施行していくことが大切です。使用される薬物としては、ケタミン、ATP(アデノシン3燐酸)、チオペンタール、ミダゾラム、モルヒネ、リドカイン、フェントラミンなどです。ケタミンはN-メチル‐D-アスパラギン酸(NMDA)受容体の拮抗薬であり、NMDA受容体の活性化が原因の痛みに効果的です。ATPは脊髄A1受容体を介する神経調節機構に働きます。チオペンタールは、抗痙攣作用や精神的原因などの中枢神経抑制作用によって、痛みを軽減する効果を持っています。ミダゾラムも、チオペンタールと同様の作用を持っておりますが、筋緊張の改善作用もありますので、疼痛も緩和されます。モルヒネは、脊髄オピオイド受容体に作用するとともに、下行性抑制系も賦活して、強い鎮痛効果を発揮します。リドカインは、痛み神経の異常興奮を抑制する作用を有しておりますので、神経が原因となる神経障害性疼痛に効果がみられます。フェントラミンは、痛みの機構に交感神経系の関与があるときに効果があります。このようにして、それぞれの患者の痛みの機構を解明することによって、関連する薬物の投与や、脊髄・脳電気刺激療法などの適応が考慮され、治療法が重点的に応用されるために患者の負担が少なくなる上、より良い効果が早く得られるため、有効率もそれだけ高くなります。難治性疼痛の患者さんには、認知行動療法、マインドフルネスなどの心理療法も活用されております。運動療法を含む理学療法にも効果が見られております。最近、痛み患者の遺伝子の解析も試みられております。痛みが残存する人、しない人などの遺伝子の違いが解明されれば、痛み治療対象者や治療対象薬の選定にも有用となります。人生100年時代への対策の一つとして、2,000万人と言われる慢性疼痛の患者さんが、痛みを軽減することによって、患者さん自身で完結できる人生を歩んでいただければ、この上ない喜びです。<CareNet.com編集部よりお知らせ>本連載は、今回でいったん完結となります。2020年1月より、花岡一雄先生執筆による新連載を開始予定です。痛みの治療法をより具体的に掘り下げ、密度の濃い内容でお届けいたします。ぜひ、ご期待ください!

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10代の薬物依存患者の4割が市販薬を乱用【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第34回

市販薬の中でも、風邪薬はよく売れる商品カテゴリーの1つではないでしょうか。それらの市販薬に関して、憂慮すべき事態が起こっています。2018年に薬物依存などで全国の精神科で治療を受けた10代患者の4割以上が、せき止め薬や風邪薬などの市販薬を乱用していたことが厚生労働省研究班の実態調査で分かった。(中略)「消えたい」「死にたい」などと考え、生きづらさを抱えた若者が、一時的に意欲を高めるために市販薬を乱用するケースが多いという。せき止め薬は安価で簡単に入手できる上、中枢神経興奮薬と抑制薬の両方の成分が含まれている。(2019年9月16日付 日本経済新聞)この報道は、厚生労働省の研究事業の一環である「全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査」という、精神科医を中心として行われた研究結果を基にしています。本研究は、全国の入院設備のある精神科1,566施設を対象に、2018年9月~10月に薬物関連の治療を受けた患者のうち、同意が得られた2,609例を分析対象として実施されました。「10代の薬物依存患者の4割が市販薬を乱用」というかなりショッキングな内容のため、テレビや一般紙などでもこの結果が取り上げられました。情報番組『めざましテレビ』の取材では、実際に市販薬を風邪や咳止めなどの本来の目的以外で使用した経験がある10代の若者たちに直接その現状や理由を聞いており、以下のような回答が紹介されました(一部改変)。「学校の周りとかで結構います。1回でやめるつもりだったみたいだけど、どんどんハマっちゃって、どんどん飲んじゃうみたい」(友人が市販薬を過剰摂取していた10代)「追い詰められたときに薬に頼った。クラクラが気持ちいい。現実から逃げられる」(以前、市販薬を過剰摂取していた10代)このテレビ番組の街頭アンケートによると、街にいた10代~20代の107人のうち14%で本人あるいは身近な人物が市販薬を過剰摂取していたそうです。市販薬は身近な場所でいつでも購入できるというメリットがありますが、一方で購入のハードルが低く、乱用によって健康被害や依存が容易に生じうる危険もあると改めて感じます。乱用されている薬剤の第1位はブロン錠・液実際にどのような市販薬が乱用されているのでしょうか。これらも冒頭の研究結果で明らかになっています。第1位がブロン錠/ブロン液で158件と圧倒的な多さでした。第2位はパブロン/パブロンゴールド(34件)、第3位以下はウット(32件)、ナロン/ナロンエース(16件)、と続きます。これは2年前の調査から変わっていません。ブロン錠、パブロンゴールドA錠の成分を見てみると、以下のようになっています。ブロン錠:ジヒドロコデインリン酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、無水カフェインパブロンゴールドA 錠:グアイフェネシン、ジヒドロコデインリン酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、アセトアミノフェン、クロルフェニラミンマレイン酸塩、無水カフェイン、リボフラビン咳止めを目的として配合されている「ジヒドロコデインリン酸塩」は、医療用医薬品としても使用される中枢性麻薬性鎮咳薬で、モルヒネと同様の基本構造を有します。用法用量を守って服用してもせん妄や呼吸抑制などが起こることがあり、依存性があることでも知られています。なお、コデイン類含有製剤は呼吸抑制の恐れがあることから、2019年以降は12歳未満の小児への使用が禁忌となりました。販売に関しても、「原則1回1包装単位」と決められています。セルフメディケーションが推進されている中、どうやって市販薬の乱用を止められるのか、と考えましたが、現実的にはなかなか難しいと言わざるを得ません。購入時に薬剤師から質問などがあるとは思いますが、風邪のときに使用すると言って複数の薬局やドラッグストアを回れば、誰だって大量購入ができてしまいます。また、これらの医薬品はインターネット購入も可能な商品であり、薬剤師と顔を合わせることなく購入することもできます。個々の薬剤師にできることは多くはないかもしれませんが、このような市販薬の乱用が社会問題になっていることを肝に銘じて、販売品目や方法を考える必要がありそうです。

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オピオイド誘発性便秘わが国の実態(OIC-J)/Cancer Medicine

 オピオイド誘発性便秘(OIC)は、オピオイド疼痛治療で頻繁にみられる副作用だが、その発生率は報告によりさまざまで、十分に確立されているとはいえない。この発生率のばらつきは、臨床試験および横断研究におけるOICの診断基準の複数があることも要因である。 近年、大腸疾患の基準であるRome IVがOICの基準に取り入れられた。そのような中、Rome IV基準を用いた日本人がん性疼痛患者におけるOICの発生率を検討した多施設共同前向き観察研究の結果がCancer Medicine誌8月号で発表された。 対象は、オピオイド疼痛治療を行っている安定した⽇本⼈がん患者(20歳以上、ECOG PS0〜2、便秘なし)。主要評価項目はROME IV診断基準によるOIC発症割合(14日間の患者の日記入力による)。副次評価項⽬は、Bowel Function Index(BFI、スコア28.8以上)、⾃発的排便回数([spontaneous bowel movement、以下SBM]、週3回以下)、医師診断によるOIC発症割合、および予防的便秘薬投与の有無によるOICの回数である。観察期間中の便秘治療は許容されていた。 主な結果は以下のとおり。・2017年1月5日~2018年1月31日に220例の患者が登録された。・平均モルヒネ相当量は22mg/日であった。・Rome IV基準によるOICの累積発生率は56%であった(95%CI:49.2〜62.9)。1週目の発生率は48%、2週目では37%であった。・予防的便秘薬を投与された患者のOICの累積発生率は48%(38.1〜57.5)で、投与されなかった患者65%(55.0〜74.2)に比べて低かった。・Rome IV以外の診断基準を用いた2週間累積OIC発症率は、BFIで59%(95%CI:51.9~66.0)、SBMで45%(95%CI:38.0~51.8)、医師診断61%(95%CI:54.3~68.1)であった。 オピオイド開始前の週あたりのBMの頻度は、OICの発生に最も影響力のある因子であった。便秘症に対する予防薬の利用は、OICの発生率の減少に対する中程度の効果と関連していた。報告されたOICの発生率は、関与する診断ツールに応じて変動した。

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ブレクスピプラゾールのリバウンド現象抑制作用

 統合失調症患者に対する抗精神病薬の長期治療は、ドパミンD2受容体感作により引き起こされると考えられる過感受性精神病や遅発性ジスキネジアを誘発する可能性がある。大塚製薬のNaoki Amada氏らは、ラットにおいて亜慢性期治療後のD2受容体感受性に対するブレクスピプラゾールの効果を検討した。また、他の非定型抗精神病薬を投与された亜慢性期ラットでのD2受容体に対する増強作用を、ブレクスピプラゾールが抑制できるかについて評価を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2019年9月5日号の報告。ブレクスピプラゾールは反復投与後のD2受容体感作のリスクが低い 最大D2受容体濃度(Bmax)およびアポモルヒネ(D2受容体アゴニスト)誘導性常同行動について、21日間のvehicle、ハロペリドール(1mg/kg)、ブレクスピプラゾール(Bmax:4または30mg/kg、常同行動:6または30mg/kg)のいずれかを投与したラットで測定した。次に、ミニポンプを介して21日間リスペリドン(1.5mg/kg/日)皮下投与を行ったラットにおいて、アポモルヒネ誘発運動亢進および(±)-2.5-ジメトキシ-4-ヨードアンフェタミン塩酸塩(DOI:5-HT2A受容体アゴニスト)誘発性頭部けいれん(head twitches)の増加に対する、ブレクスピプラゾール(3mg/kg)、アリピプラゾール(10mg/kg)、オランザピン(3mg/kg)経口投与の効果を評価した。 ブレクスピプラゾールの効果検討の主な結果は以下のとおり。・ハロペリドールおよびブレクスピプラゾール(30mg/kg[抗アポモルヒネ誘発性常同行動のED50の約10倍])は、Bmaxおよびアポモルヒネ誘発性常同行動の有意な増加が認められたが、ブレクスピプラゾール(4または6mg/kg)では認められなかった。・ブレクスピプラゾール(3mg/kg)とオランザピン(3mg/kg)では、リスペリドンで治療された亜慢性期ラットにおいて、アポモルヒネ誘発運動亢進およびDOI誘発性頭部けいれん(head twitches)の増加に対する有意な抑制効果が認められたが、アリピプラゾール(10mg/kg)では、アポモルヒネ誘発運動亢進のみの有意な抑制効果が認められた。 著者らは「ブレクスピプラゾールは、反復投与後のD2受容体感作のリスクが低く、リスペリドン反復投与後のD2および5-HT2A受容体に関連するリバウンド現象を抑制する」としている。

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がん慢性疼痛の薬物治療に有意な差/JCO

 がん慢性疼痛に処方するオピオイドの効果は、どれでも同じではないようだ。中国・雲南省第一人民病院のRongzhong Huang氏らは、Bayesianネットワークメタ解析にて、がん慢性疼痛治療について非オピオイド治療を含む有効性の比較を行った。その結果、現行のがん慢性疼痛治療の有効性には、有意な差があることが示されたという。また、特定の非オピオイド鎮痛薬と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)について、オピオイドと同程度の有効性を有する可能性が示唆されたことも報告した。がん慢性疼痛にはオピオイドが主要な選択肢となっている。一方で多くの非オピオイド鎮痛薬は現在、その有効性について公表されたエビデンスが少ないまま、がん慢性疼痛に処方されているという。Journal of Clinical Oncology誌2019年7月10日号掲載の報告。 検討は、がん慢性疼痛の治療において、あらゆる全身性薬剤による治療および/またはそれらの組み合わせを比較している無作為化対照試験(RCT)を、電子データベースを検索して行われた。 主要アウトカムは、オッズ比(OR)で報告されている全体的な有効性とし、副次アウトカムは、標準化平均差(SMD)で報告されている疼痛強度の変化とした。 主な結果は以下のとおり。・検索によりRCT81件、患者1万3例、11種の薬物治療のデータを、解析に包含した。・大部分のRCT(80%)は、バイアスリスクが低かった。・全体的な有効性が高い薬物クラスは上位から、非オピオイド鎮痛薬(ネットワークOR:0.30、95%確信区間[CrI]:0.13~0.67)、NSAIDs(0.44、0.22~0.90)、オピオイド(0.49、0.27~0.86)の順であった。・上位にランクされた薬物は、リドカイン(ネットワークOR:0.04、95%CrI:0.01~0.18、累積順位曲線下表面解析[SUCRA]スコア:98.1)、コデイン+アスピリン(0.22、0.08~0.63、81.1)、プレガバリン(0.29、0.08~0.92、73.8)であった。・疼痛強度の低減については、プラセボに対して優越性を示す薬物クラスを見いだせなかった。・一方で、プラセボに対して優越性を示す薬物で上位にランクされたのは、ziconotide(ネットワークSMD:-24.98、95%CrI:-32.62~-17.35、SUCRAスコア:99.8)、dezocine(-13.56、-23.37~-3.69、93.5)、ジクロフェナク(-11.22、-15.91~-5.80、92.9)であった。

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ナルデメジンのわが国におけるオピオイド誘発性便秘に対する効果と安全性/ASCO2019

 オピオイド誘発性便秘(OIC)はオピオイド治療において頻度の高い有害事象の1つであり、ナルデメジン(商品名:スインプロイク)はOIC治療に承認されている末梢性μオピオイド受容体拮抗薬である。わが国の実臨床におけるナルデメジンのOIC患者に対する安全性と有効性を調査したPhase-R OIC試験の結果が、国立がん研究センター中央病院 清水 正樹氏、ガラシア病院 前田 一石氏らにより米国臨床腫瘍学会年次総会ASCO2019で発表された。ナルデメジン初回投与後71.6%が24時間以内に自発的排便 Phase-R OIC試験は、わが国の14施設の緩和ケアチーム・病棟によるリアルワールドレジストリ研究。ナルデメジンを投与したOIC合併がん患者を観察した。主要評価項目はナルデメジン初回投与後24時間以内の自発的排便([spontaneous bowel movement、以下[SBM])。副次評価項目はナルデメジン初回投与7日間のSBM回数と有害事象である。 ナルデメジンを投与したOIC合併がん患者の主な観察結果は以下のとおり。・2018年4月~12月に204例の患者が研究に登録され、ナルデメジン0.2mg/日の投与を7日間受け、184例(90.2%)が7日間の治療を完遂した。・患者の平均年齢は63歳、50.5%が男性、主ながん原発部位は肺(23.5%)、消化管(13.7%)、泌尿器(9.3%)であった。・オピオイド投与量の中央値は経口モルヒネ換算で30mg/日であった。・患者の76.0%が緩下剤を日常的に併用しており、頻度の高いものは酸化マグネシウム(65.2%)、センナ(17.2%)であった。・ナルデメジン初回投与後24時間以内にSBMが観察された患者は71.6%(146例)で、であった・患者の62.8%(128例)が、ナルデメジン初回投与後1週間でSBM回数が増加した(1段階改善41.7%[85例]、2段階改善21.1%[43例])。・頻度の高いナルデメジンの有害事象は、下痢(Grade1〜2:35例、Grade3:1例)および腹痛(Grade1〜2:10例、Grade3:1例)であった。

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終末期がん患者、併発疾患への薬物療法の実態

 終末期緩和ケアを受けているがん患者において、併発している疾患への薬物療法はどうなっているのか。フランス・Lucien Neuwirth Cancer InstituteのAlexis Vallard氏らは、前向き観察コホート研究を行い、緩和ケア施設に入院した終末期がん患者に対する非抗がん剤治療が、一般的に行われていることを明らかにした。著者は「それらの治療の有益性については疑問である」とまとめている。Oncology誌オンライン版2019年6月20日号掲載の報告。 研究グループは、緩和ケア施設のがん患者に対する抗がん剤治療および非抗がん剤治療の実態と、非抗がん剤治療を中止するか否かの医療上の決定に至る要因を明らかにする目的で調査を行った。 2010~11年に緩和ケア施設に入院したがん患者1,091例のデータを前向きに収集し、解析した。 主な結果は以下のとおり。・緩和ケア施設入院後の全生存期間中央値は、15日であった。・緩和ケア施設入院後、4.5%の患者を除き、最初の24時間以内に特定の抗がん剤治療は中止されていた。・非抗がん剤治療については、患者が死亡するまで、強オピオイド(74%)、副腎皮質ステロイド(51%)、および抗うつ薬(21.8%)について十分に投与が続けられていた。・抗潰瘍薬(63.4%)、抗菌薬(25.7%)、血栓症予防療法(21.8%)、糖尿病治療薬(7.6%)、輸血(4%)もしばしば、継続して処方されていた。・多変量解析の結果、ECOG PS 4は、モルヒネについては継続の独立した予測因子であり、副腎皮質ステロイド、プロトンポンプ阻害薬、糖尿病治療薬、予防的抗凝固療法については中止の独立した予測因子であった。・感染症症状はパラセタモール継続の、麻痺および触知可能ながん腫瘤は副腎皮質ステロイド中止の、脳転移は抗潰瘍薬中止の、出血は予防的抗凝固療法中止の、それぞれ独立した予測因子であった。

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術後疼痛への長期使用リスク、トラマドールvs.他オピオイド/BMJ

 短時間作用型オピオイド系鎮痛薬トラマドールは、一般に他の同種のオピオイドに比べ安全性が高いと考えられているが、相対的にリスクが低いことを支持するデータはないという。米国・メイヨークリニックのCornelius A. Thielsらは、術後の急性疼痛の治療にトラマドール単剤を投与された患者では、退院後の長期オピオイド使用のリスクが、他の同種のオピオイドよりも、むしろわずかに高いことを示した。研究の成果はBMJ誌2019年5月14日号に掲載された。診療報酬データベースを用いて長期使用リスクを後ろ向きに評価 本研究は、米国の診療報酬データベースを用いた後ろ向き観察研究である(メイヨークリニック以外からの助成は受けていない)。 米国の民間保険およびMedicare Advantageの保険請求が登録されたOptumLabs Data Warehouseの、2009年1月1日~2018年6月30日のデータを用いた。対象は、待機的手術を受けたオピオイド投与歴のない患者であった。 術後にトラマドール単剤の投与を受けた患者と、他の短時間作用型オピオイドの投与を受けた患者で、退院後の長期的なオピオイド使用のリスクを比較した。「長期オピオイド使用」の定義は、文献上で一般的に使用されている次の3つを用いた。 (1)追加オピオイド使用(additional opioid use):術後90~180日における1回以上のオピオイドの調剤、(2)継続オピオイド使用(persistent opioid use):術後180日以内に開始され、90日以上持続する任意の期間のオピオイド使用、(3)CONSORT定義(CONSORT definition):術後180日以内に開始され、90日以上の期間に及ぶオピオイド使用のエピソードで、オピオイドの10回以上の調剤または120日分以上の補給のいずれか。他剤に比べ追加使用6%、継続使用47%、CONSORT 41%増加 適格基準を満たした44万4,764例のうち、35万7,884例が退院時に1剤以上のオピオイドを処方された。 術後に最も多く処方されたオピオイドはhydrocodone(1剤のオピオイドを調剤された患者の53.0%)であり、次いで短時間作用型オキシコドン(37.5%)、トラマドール(4.0%)、コデイン(3.1%)、ヒドロモルフォン(1.2%)、propoxyphene(1.2%)の順であった。 術後の長期オピオイド使用の未調整リスクは、追加オピオイド使用が7.1%(3万1,431例)、継続オピオイド使用が1.0%(4,457例)であり、CONSORT定義を満たしたのは0.5%(2,027例)だった。 トラマドール単剤の処方により、他の短時間作用型オピオイドの投与を受けた患者と比較して、追加オピオイド使用のリスクが6%有意に増加した(罹患率比の95%信頼区間[CI]:1.00~1.13、リスク差:0.5ポイント、p=0.049)。また、継続オピオイド使用の調整リスクは47%有意に増加し(1.25~1.69、0.5ポイント、p<0.001)、CONSORTの長期使用エピソードの調整リスクも41%有意に上昇した(1.08~1.75、0.2ポイント、p=0.013)。 術後にトラマドールと他の短時間作用型オピオイドが処方された場合は、CONSORT定義のリスクが40%有意に増加し(p=0.022)、長時間作用型オピオイドの処方では、継続オピオイド使用のリスクが18%(p=0.029)、CONSORT定義のリスクが69%(p<0.001)上昇した。 著者は、「連邦政府機関はトラマドールの再分類を考慮すべきである。急性疼痛にトラマドールを処方する際は、他の短時間作用型オピオイドと同様、十分に注意を払う必要がある」と指摘している。

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がんサバイバーのオピオイド使用、米国での実態/JCO

 オピオイド依存が深刻な米国では、疼痛マネジメントへの懸念も高いようだ。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのTalya Salz氏らは、「がんサバイバーは、オピオイド関連被害を受けるリスクが高い可能性がある」として、オピオイドの継続的使用と高用量使用について、大腸がん、肺がん、乳がんの高齢がんサバイバーと非がん対照集団の比較解析を行った。これまで、診断後のオピオイド使用の経時的傾向は知られていなかったという。解析の結果、がん種によって継続的使用の実態は異なること、診断後3~5年はサバイバーのほうが高用量の継続的使用が多い一方、診断後6年で継続的使用の差はみられないことなどが明らかになった。著者は「がん治療中および治療後の適切な疼痛マネジメント戦略では、オピオイドの高用量継続的使用のリスクを考慮しなければならない」と述べている。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年2月28日号掲載の報告。 研究グループは、米国のがん登録データベース「SEER」と高齢者向け公的医療保険「メディケア」のデータを用いて、オピオイドの継続的使用(90日以上連続)について、2008~13年に大腸がん、肺がん、乳がんと診断されたオピオイド未使用サバイバーと、マッチングされた非がん対照を比較するマルチレベルロジスティック回帰分析を行った。 サバイバーと対照の継続的使用における、高用量(モルヒネ換算1日平均90mg以上)オピオイド使用の割合を比較した。 主な結果は以下のとおり。・解析は、サバイバー4万6,789例、非がん対照13万8,136例で行われた。・3つ(大腸がん、肺がん、乳がん)の高齢がんサバイバーの大規模集団において、オピオイドの継続的使用傾向は、がん種により異なることが確認された。・診断日後の1年間において、大腸がんおよび肺がんサバイバーにおけるオピオイドの継続的使用は、対照のオピオイドのそれを上回っていた。大腸がんサバイバーのオッズ比(OR)は1.34(95%CI:1.22~1.47)、肺がんサバイバーのORは2.55(95%CI:2.34~2.77)であった。・上記の差は年々短縮した。・乳がん患者の継続的使用は対照の継続的使用と比べて、各年いずれも少なかった。・診断から3~5年の継続的使用において、サバイバーは対照よりも高用量使用が多い傾向がみられた。一方で、診断後6年におけるサバイバーの継続的使用者は対照よりも多い傾向はみられなかった。

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第17回 内科からのレボフロキサシンの処方(後編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

前編 Q1予想される原因菌は?Q2患者さんに確認することは?Q3 疑義照会する?しない・・・8人PRSPを想定? 荒川隆之さん(病院)しません。経口へのスイッチングの場合、わざわざブロードスペクトルであるレボフロキサシンにする必要性は低く、クラブラン酸/アモキシシリンなどでもよい気はするのですが、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)を想定されているのかもしれません。ガイドラインを参考に 奥村雪男さん(薬局)疑義照会しないと思います。JAID/JSC感染症治療ガイド2014でdefinitive therapyとして推奨される治療に、PSSP外来治療の第二選択と、PRSP外来治療の第一選択にレボフロキサシンが記載されています。投与期間については、「症状および検査所見の改善に応じて決定する。5~7日間が目安となる」とあるので、セフトリアキソン4日間+レボフロキサシン5日間で、不自然な日数ではないと思います。する・・・3人ガレノキサシンへの変更提案 清水直明さん(病院)発熱・呼吸器症状・食欲不振があるので、喘息発作ではなく呼吸器感染症と考えます。本来、肺炎球菌と確定しているのならば高用量ペニシリンを推奨すべきところですが、肺炎球菌の検査をしたかどうか、胸部レントゲンも撮ったかどうか不明確ですので、外来静注抗菌薬療法後のスイッチ療法としてはキノロン系抗菌薬もありだと思います。ただし、幾つかの成書から呼吸器感染症に対してはレボフロキサシンよりもガレノキサシンが有効性が高いと思いますし、特に、肺炎球菌に対してはレボフロキサシンとガレノキサシンのMICは結構異なっているので、「レボフロキサシン500mgでも特別問題ないかもしれませんが、より有効性を期待するという意味で、ジェニナック®錠 1回400mg 1日1回をお勧めします」と提案します。アモキシシリン高用量かアジスロマイシン単回投与に JITHURYOUさん(病院)疑義照会します。喘鳴がなく、熱があることを考えると、喘息発作ではなく呼吸器感染症でいいと思います。食欲がない、発熱からも肺炎の可能性があると考えます。その場合、呼吸器学会の鑑別基準でいくと、1~5の項目で3項目が該当するため非定型肺炎の可能性があると思われます。喘息があることや、非定型のカバーを考えるとレボフロキサシン経口内服指示は理解できます。しかし、セフトリアキソン点滴に効果があることから非定型肺炎はカバーしなくてよいと思います。PRSPである場合は、レボフロキサシン投与もうなずけます。しかし、結核のリスクがあること、喘息の管理としてステロイド吸入やマクロライド系抗菌薬を使用していないこと、飲酒習慣などもなく耐性菌リスクが少ないのではないかと考えられるため、今回のレボフロキサシンの処方は一考した方がいいのではないかと考えました。アモキシシリン高用量かアジスロマイシン単回投与(アドヒアランス考慮)を提案すると思います。細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別1.年齢60 歳未満2.基礎疾患がない、あるいは軽微3.頑固な咳嗽がある4.胸部聴診上所見が乏しい5.喀痰がない、あるいは迅速診断で原因菌らしきものがない6.末梢血白血球数が10,000/μL未満である1-6の6項目中4項目以上合致した場合、非定型肺炎の感度77.9%、特異度93.0%。1-5の5項目中3項目以上合致した場合、非定型肺炎の感度83.9%、特異度87.0%日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会.成人市中肺炎診療ガイドライン.東京、日本呼吸器学会、2007.Q4 抗菌薬について、患者さんに説明することは?再受診のタイミングや他院受診時の注意 ふな3さん(薬局)必ず指示された日(3日後)から服用を開始すること食欲がなくても、食事が取れなくても、毎日必ず1錠服用すること症状が改善しても5 日分服用を続けること服薬して3日以上(=治療開始から7日以上)経過しても症状が改善しない場合には、すぐに医療機関を再受診すること他院(喘息治療など)に通院の際は、必ずレボフロキサシンを服用中であることを伝えることしっかり飲みきることと副作用について JITHURYOUさん(病院)耐性菌が出現しないよう、しっかり飲み切ること。確率は低いですが、アキレス腱炎や痙攣、光線過敏症などに気を付けること。患者さんへの説明例 清水直明さん(病院)「薬のせいでお腹が緩くなることがあります。我慢できる程度の軽い症状ならば抗菌薬をやめれば戻るので問題ありませんが、ひどい場合には服用を中止してご連絡ください」「牛乳などの乳製品や一部の制酸薬や下剤、貧血の薬(鉄剤)と一緒に服用すると効果が弱くなる可能性があるので、抗菌薬服用の前後2時間はそれらの摂取を避けるようにしてください」併用薬はなしとのことですが、OTCやサプリメントを服用している可能性はあり、その中に相互作用を起こすアルミニウムやマグネシウムなどが入っていることがあるので、一応伝えておきます。結核検査をしていた場合 キャンプ人さん(病院)「4日間点滴後の内服薬なので、飲み始める日にちを間違えないようにしてください」と言います。結核の検査をしていたなら、病院から検査結果の連絡があれば必ず受診するなど、そのままほったらかしにしないよう説明します。車の運転について 柏木紀久さん(薬局)3日後からの服用を理解しているかの確認と、5日間きちんと服用してもらうこと。車や機械などの運転を極力控えること。Q5 その他、気付いたことは?肺炎球菌→レボフロキサシン? 中堅薬剤師さん(薬局)肺炎球菌にすぐレボフロキサシン、はオーバートリートメントかな、と個人的に思います。できれば、アモキシシリン5~7日の投与で十分とコメントしたいです。地域のアンチバイオグラムは? 荒川隆之さん(病院)原因菌も肺炎球菌とされているので、通常ならレボフロキサシンではなく、クラブラン酸/アモキシシリンなどの経口の方が適しているものと考えますが、原因菌がPRSPであった場合は、レボフロキサシンでもよいのかもしれません。PRSPかどうかは尿中抗原などでは診断が付かず、培養の結果を待たなければなりません。喀痰培養などで肺炎球菌は増殖しづらく、処方の時点でPRSPだと断定はできていないものと考えます。地域のアンチバイオグラムにおいてPRSPの頻度が高い地域なのでしょうか。処方タイミング ふな3さん(薬局)4日間の点滴での容体の変化を見て、その後の抗菌薬フォローアップを決めるのが一般的だと思うので、なぜこのタイミングで処方なのかは疑問です。GWや年末年始でクローズする調剤薬局が多いタイミングだったのでしょうか。治療後の残存症状として、喘息症状の遷延や悪化があった場合、喘息治療薬も必要になる可能性があるので、やはり点滴投与後の処方が望ましいと感じます。また、出勤などは控えるように伝えられているのではと思うので、その点も確認したいです。肺炎球菌の耐性度は、ほとんどが中等度まで 奥村雪男さん(薬局)薬剤耐性対策としては可能であれば、レボフロキサシンより高用量のアモキシシリンなどのペニシリンが好ましかったのではと思います。日常診療で遭遇するほとんどの肺炎球菌はせいぜい中等度耐性(MICが1~2μg/mL)であり、高用量のペニシリンで対応可能とされています1)。処方例としては、アモキシシリン500~1,000mgの1日3~4回経口が挙げられています。感受性の結果次第ではペニシリン系を提案 児玉暁人さん(病院)セフトリアキソンで効果があるようであれば、レボフロキサシンでなくてもよいかもしれません。喀痰培養で感受性結果が分かれば、自信を持ってペニシリン系を処方できると思います。判定が早いので迅速キットでの検査だったのかもしれません。検査室がありグラム染色ができれば、その日でも肺炎球菌を想定はできますが。初日に培養を出せば4日目の点滴時には感受性結果が出るはずですので、そこで抗菌薬を決めて処方箋を出すというのでもいいのでは。検査が外注だとそうはいかないのですが。喘息の定期受診と生活指導 JITHURYOUさん(病院)喘息で併用薬なしということですが、本当に定期的な受診をしているのかは不明です。日常生活の支障がないのでしょう。しかし、発作がなくてもステロイド吸入で気道リモデリングの予防と喘息死の予防をすることは欠かせないこと、感染症が発作の引き金になるので合わせて定期受診すべきであることを伝えたいです。男性一人暮らし、ハウスダストアレルギーなので定期的な部屋の掃除なども指導したいですね。また、患者の身長体重から、BMIは17.31となります。やせ型の若い男性で気胸のリスクがあるので、咳が続き胸痛や呼吸困難などの症状があれば受診するように指導します(登山や出張などで飛行機など乗ること、楽器演奏、激しい運動などは治療が終わるまでできれば避けること)。さらに可能であれば、運動を少しずつしていき筋肉や体力をつけていき、呼吸器感染症や喘息、気胸予防をしていくように指導したいです。後日談(担当した薬剤師から)翌週、無事に回復しましたと処方箋を持って来局。咳症状が少し残っていたのでしょう、デキストロメトルファン錠15mgとカルボシステイン錠250mgを1回2 錠 1日3回 毎食後7日分を受け取って帰られました。後日談について 中堅薬剤師さん(薬局)後日談の咳が残るという主訴(おそらく感染後咳嗽)に対して、デキストロメトルファンは微妙かなあと感じました。呼吸器門前で働いてきた経験から、むやみな鎮咳剤投与は無意味ではないか、と考えるようになったからです。本当につらい咳なら、コデイン投与で間欠的にするべきですし、そもそもの治療が奏功していない可能性もあります。そんなにひどくない咳であれば、麦門冬湯でもよいと思います。1)青木眞. レジデントのための感染症診療マニュアル. 第2 版. 東京、医学書院、2008.[PharmaTribune 2017年7月号掲載]

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第7回 意識障害 その6 薬物中毒の具体的な対応は?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)ABCの安定が最優先! 気管挿管の適応を正しく理解しよう!2)治療の選択は適切に! 胃洗浄、血液浄化の適応は限られる。3)検査の解釈は適切に! 病歴、バイタルサイン、身体所見を重視せよ!【症例】42歳女性の意識障害:これまたよく遭遇する症例42歳女性。自室のベッド上で倒れているところを、同居している母親が発見し、救急要請。ベッド脇には空のPTP(press through pack[薬のシート])が散在していた。救急隊接触時のバイタルサインは以下のとおり。どのようにアプローチするべきだろうか?●搬送時のバイタルサイン意識:200/JCS血圧:102/58mmHg 脈拍:118回/分(整) 呼吸:18回/分 SpO2:97%(RA)体温:36.9℃ 瞳孔:3/3mm +/+この症例、誰もが急性薬物中毒を考えると思います。患者の周りには薬のシートも落ちているし、おそらくは過量に内服したのだろうと考えたくなります。急性薬物中毒の多くは、経過観察で改善しますが、ピットフォールを理解し対応しなければ、痛い目に遭いかねません。「どうせoverdose(薬物過量内服)でしょ」と軽視せず、いちいち根拠をもって鑑別を進めていきましょう。重度の意識障害で意識することは?(表1)このコーナーの10's Ruleの「1)ABCの安定が最優先!」を覚えているでしょうか。重度の意識障害、ショックでは気管挿管を考慮する必要がありました。意識の程度が3桁(100~300/JCS)と重度の場合には、たとえ酸素化の低下や換気不良を認めない場合にも、確実な気道確保目的に気管挿管を考慮する必要があることを忘れてはいけません。薬物中毒に伴う重度の意識障害、出血性ショック(消化管出血、腹腔内出血など)症例が典型的です。考えずに管理をしていると、目を離した際に舌根沈下、誤嚥などを来し、状態の悪化を招いてしまうことが少なくありません。来院時の酸素化や換気が問題なくても、バイタルサインの推移は常に確認し、気管挿管の可能性を意識しておきましょう。●Rule1 ABCの安定が最優先!●Rule8 電解質異常、アルコール、肝性脳症、薬物、精神疾患による意識障害は除外診断!画像を拡大する薬物中毒のバイタルサイン内服した薬剤や飲酒の併用の有無によってバイタルサインは大きく異なります。覚醒剤やコカインなど興奮系の薬剤では、血圧や脈拍、体温は上昇します。それに対して、頻度の高いベンゾジアゼピン系薬に代表される鎮静薬ではすべて逆になります。飲酒もしている場合には、さらにその変化が顕著となります。瞳孔も重要です。興奮系では一般的に散瞳し、オピオイドでは縮瞳します。救急外来では明らかな縮瞳を認める場合には、脳幹病変以外にオピオイド、有機リン中毒を考えます。「目は口ほどにものを言う」ことがあります。自身で必ず瞳孔所見をとることを意識しましょう。薬物中毒の基本的な対応は?急性薬物中毒の場合には、意識障害が遷延することが少なくないため、内服内容、内服時間をきちんと確認しましょう。内服してすぐに来院した場合と、3時間経過してから来院した場合とでは対応が大きく異なります。薬物過量内服においても初療における基本的対応は常に一緒です。“Airway、Breathing、Circulation”のABCを徹底的に管理します。原因薬剤が判明している場合には、拮抗薬の有無、除染・排泄促進の適応を判断します。拮抗薬など特徴的な治療のある中毒は表2のとおりです。最低限これだけは覚えておきましょう。除染や排泄促進は、内服内容が不明なときにはルーチンに行うものではありません。ここでは胃洗浄の禁忌、血液透析の適応を押さえておきましょう。画像を拡大する胃洗浄の禁忌意識障害患者において、確実な気道確保を行うことなしに胃洗浄を行ってはいけません。誤嚥のリスクが非常に高いことは容易に想像がつくでしょう。また、酸やアルカリを内服した場合も腐食作用が強く、穿孔のリスクがあるため禁忌です。胃洗浄を行い、予後を悪くしてはいけません。意識状態が保たれ、内服内容が判明している場合に限って行うようにしましょう。もちろん薬物が吸収されてしまってからでは意味がないため、原則内服から1時間を経過している場合には適応はないと考えておいてよいでしょう。CTを撮影し薬塊などが胃内に貯留している場合には、胃洗浄が有効という報告もありますが、薬物中毒患者全例に胸腹部CTを撮影することは現実的ではありません1)。エコー検査で明らかに胃内に貯留物がある場合には、考慮してもよいかもしれません。活性炭の投与もルーチンに行う必要はありません。胃洗浄の適応症例には、洗浄後投与すると覚えておけばよいでしょう。血液透析の適応となる中毒体内に吸収されたものを、体外に除去する手段として血液透析が挙げられますが、これもまたルーチンに行うべきではありません。多くの薬物は血液透析では除去できません。判断する基準として、分布容積と蛋白結合率を意識しましょう。分布容積が小さく、蛋白結合率が低ければ透析で除去しえますが、そういったものは表3のような中毒に限られます。診療頻度の高いベンゾジアゼピン系薬や非ベンゾジアゼピン系薬(Z薬)、三環系抗うつ薬は適応になりません。ベンゾジアゼピン系薬、Z薬の過量内服は遭遇頻度が高いですが、それらのみの内服であれば過量に内服しても、きちんと気道を確保し管理すれば、一般的に予後は良好であり透析は不要なのです。画像を拡大する薬物中毒の検査は?1)心電図心電図は忘れずに行いましょう。QT延長症候群など、薬剤の影響による変化を確認することは重要です。内服時間や意識状態を加味し、経時的に心電図をフォローすることも忘れてはいけません。以前の心電図の記録が存在する場合には、必ず比較し新規の変化か否かを評価しましょう。2)血液ガス酸素化や換気の評価、電解質や血糖値の評価、そして中毒に伴う代謝性アシドーシスを認めるか否かを評価しましょう。3)尿中薬物検査キットトライエージDOAなどの尿中薬物検査キットが存在し、診療に役立ちますが、結果の解釈には注意しなければなりません。陽性だから中毒、陰性だから中毒ではないとはいえないことを覚えておきましょう。偽陽性、偽陰性が少なくないため、病歴と合わせ、根拠の1つとして施行し、結果の解釈を誤らないようにしましょう。薬物中毒疑い患者の実際の対応“10's Rule”にのっとり対応することに変わりはありません。Ruleの1~4)では、重度の意識障害であるため、気管挿管を意識しつつ、患者背景を意識した対応を取ります。薬物過量内服患者の多くは女性、とくに20~50代です。また、薬物過量内服は繰り返すことが多く、身体所見では利き手とは逆の手にリストカット痕を認めることがあります。意識しておくとよいでしょう。バイタルサインがおおむね安定していれば、低血糖を否定し、頭部CTを撮影します。この場合には、脳卒中の否定以上に外傷検索を行います。薬物中毒の患者は、アルコールとともに薬を内服していることもあり、転倒などに伴う外傷を併発する場合があるので注意しましょう。また、採血では圧挫に伴う横紋筋融解症*を認めることもあります。適切な輸液管理が必要となるため、CK値や電解質、腎機能は必ず確認しましょう。アルコールの関与を疑う場合には、浸透圧ギャップからアルコールの推定血中濃度を計算すると、診断の助けとなります。詳細は、次回以降に解説します。*急性中毒の3合併症:誤嚥性肺炎、異常体温、非外傷性圧挫症候群急性薬物中毒の多くは、特異的な治療をせずとも時間経過とともに改善します。また、繰り返すことが多く、再来した場合には軽視しがちです。そのため、確立したアプローチを持たなければ痛い目をみることが少なくないのです。外傷や痙攣、誤嚥性肺炎の合併を見逃す、アルコールとともに内服しており、症状が遷延するなどはよくあることです。根拠をもって確定、除外する意識を常に持ちながら対応しましょう。症例の経過本症例では空のPTPの存在や40代の女性という背景から、第一に薬物過量内服を疑いながら、Ruleにのっとり対応しました。母親から病歴を聴取すると、来院3時間前までは普段どおりであり、その後患者の携帯電話の記録を確認すると、付き合っている彼氏とのメールのやり取りから、来院2時間ほど前に衝動的に薬を飲んだことが判明しました。内服内容もベンゾジアゼピン系の薬を中心としたもので致死量には至らず、採血や頭部CTでも異常がないことが確認できたため、モニタリングをしながら、家族付き添いの下、入院管理としました。時間経過とともに症状は改善し、翌日には意識清明、独歩可能となり、かかりつけの精神科と連携を取り、退院となりました。本症例は典型的な薬物中毒症例であり、基本的なことを徹底すれば恐れることはありません。きちんと病歴や身体所見をとること、バイタルサインは興奮系か抑制系かを意識しながら解釈し、瞳孔径を忘れずに確認すればよいのです。次回は、アルコールによる意識障害のピットフォールを、典型的なケースから学びましょう。1)Benson BE, et al. ClinToxicol(Phila). 2013;51:140-146.

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不適切な一般薬の販売が増加傾向 スイッチOTC化の障害となる?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第8回

一般用医薬品の販売には一定のルールがあることはご存じだと思います。しかし、そのルールは順守されているのでしょうか? 一般用医薬品の販売実態に関して、厚生労働省が一般消費者の目線で調査した結果が公表されました。厚生労働省は8月27日、2017年度の「医薬品販売制度実態把握調査」結果を公表した。PPI製剤のスイッチOTC薬化の審議にあたり問題視された「乱用のおそれがあるOTC薬を複数購入しようとしたときの対応」が不適切な例が増加したことを示した。エフェドリンやコデイン(鎮咳去痰薬に限る)などを含むOTC薬を複数購入しようとしたところ、「質問などされずに購入できた」店舗が38.8%あり、前年度より2.2ポイント増加した。(2018年8月28日付 RISFAX)調査期間は2017年11~12月で、全国5,017軒の薬局・店舗販売業の許可を取得している店舗を一般消費者である調査員が訪問し、調査しました。いわゆる“覆面調査”というものです。一般用医薬品は、薬局だけでなく店舗販売業でも販売可能ですので、その両方が調査対象となっています。主な調査項目は、従業者の区別状況、陳列・販売方法、情報提供の有無やその方法などでした。ほとんどの項目で前年とほぼ同様の結果となっていますが、幾つか残念なポイントが見受けられます。乱用の恐れがある一般薬を「質問されずに複数購入できた」約40%たとえば、エフェドリン、コデインやジヒドロコデイン(鎮咳去痰薬に限る)などを含むいわゆる風邪薬を複数購入しようとした患者さんに対し、どのような対応を取ることが適切でしょうか。乱用の恐れがある一般用医薬品を必要以上に購入しようとする場合は、理由確認が必要ですが、まず1つだけ購入してもらいその後にまた症状が続いていたら相談してもらう、ひどいようなら受診勧告…など、さまざまな対応があり、答えは1つではありませんよね。この調査で不適切とされたのは「質問などをされずに複数購入できた」という場合であり、複数必要な理由を伝えたところ合理性があると判断されて購入できた、という場合も適切と判断されています。乱用の恐れがある一般用医薬品を複数購入希望の患者さんへの対応が不適切であった店舗の割合は、全体の38.8%(薬局30.4%、店舗販売業39.0%)もありました。2017年の同様の調査では36.6%でしたので、2.2%悪化しています。この数字に有意差があるかは別にして、「不適切な店舗が増加」という印象は強く、今後のスイッチOTC化の議論でまた障害になることが懸念されます。このほかにこの調査結果で私が気になったのは、「名札等により専門家の区別ができたか」という項目です。区別できた割合は、全体として79.7%(薬局73.9%、店舗販売業82.2%)で、これも前年度の83.2%から下がっていました。名札を着けるのは、医薬品販売だけでなく、患者さんとの関わりの中で基本中の基本だと思います。名札なんて着けなくても…と思っている店舗が2割程度あるようですが、このくらいのルールも守れないのか! 要指導・一般用医薬品の販売はやっぱり不安だな…、と思われても仕方ないと思います。これまでのスイッチOTC化の議論を見ていると、大きな法人か個店かどうかにかかわらず、一店舗一店舗の対応が薬局全体への信頼や今後の方向性に影響していることがわかります。まずはこのアンケートで調査された項目の見直しから始めてみてはいかがでしょうか。

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「パーキンソン病診療ガイドライン」7年ぶりに改訂

 2011年以来の改訂版となる「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」が5月15日に発行された。今回のガイドライン改訂では、パーキンソン病診療における最も重要な臨床課題として「早期パーキンソン病治療」と「運動合併症治療」を設定し、GRADEシステムに基づいてエビデンスレベルと推奨レベルの2軸による治療の推奨度が示された。「Minds診療ガイドライン作成の手引き(2014年版)」に準拠して作成され、治療だけでなく診断基準や病因、画像所見などについても幅広く解説されていることから、「治療ガイドライン」から「診療ガイドライン」に名称を変更している。 「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」は日本神経学会を中心に、日本神経治療学会、日本脳神経外科学会、日本定位・機能神経外科学会、日本リハビリテーション医学会の協力のもとで作成された。また、看護師や薬剤師、患者らが参加するパネル会議を開催し、多職種による議論を経たうえで、推奨文の内容が決定されている。パーキンソン病診療ガイドラインはGRADEシステムに基づく2つのCQと50のQ&Aで構成 「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」は、各抗パーキンソン病薬、手術療法やリハビリテーションについてそれぞれ有効性と安全性をまとめた第I編、早期および進行期の2つのCQについて推奨度、治療アルゴリズムを示した第II編、診断・治療における50の臨床課題についてQ&A方式でまとめた第III編で構成される。 第I編では、ドパミンアゴニスト徐放剤、アポモルヒネ皮下注射、イストラデフィリン、L-ドパ持続経腸療法など、前版「パーキンソン病治療ガイドライン2011」発行後の新しい治療法について情報が追加された。第II編では、「CQ1:早期パーキンソン病の治療はどのように行うべきか」、「CQ2:運動合併症に対する治療について」の2つのCQを設定。CQに対する推奨文には、1(強い:確実に行うことが強く推奨される場合)もしくは2(弱い:条件を選べば推奨できる場合)の推奨レベル、およびA~Dの4段階(最も高いものがA)のエビデンスレベルが明記されている。 第III編は、「パーキンソン病治療ガイドライン2011」における第II編の内容を改訂したもの。重要ではあるが、エビデンスが少ない臨床課題として、GRADEシステムに基づくCQとは区別する意味で、「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」ではQ&Aとしてまとめられている。パーキンソン病診療ガイドラインでは早期はL-ドパを中心にドパミンアゴニストもしくはMAOB阻害薬 以下、「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」での大きな改訂点である、第II編の2つのCQの概要を紹介する。■早期パーキンソン病は、診断後できるだけ早期に薬物療法を開始すべきか[CQ1-1] 推奨:特別の理由のない限りにおいて、診断後できるだけ早期に治療開始することを 提案する(2C:弱い推奨/エビデンスの質「低」) 付帯事項:早期介入による不利益に関する十分なエビデンスがないことから、治療を 開始する際は効果と副作用、コストなどのバランスを十分考慮する。■早期パーキンソン病の治療はL-ドパとL-ドパ以外の薬物療法(ドパミンアゴニストおよびMAOB阻害薬)のどちらで開始すべきか[CQ1-2] 推奨:運動障害により生活に支障をきたす場合、早期パーキンソン病の治療はL-ドパで 開始することを提案する(2C) 付帯事項:運動合併症リスクが高いと推定される場合はドパミンアゴニストもしくは MAOB阻害薬を考慮する。抗コリン薬やアマンタジンも選択肢となりえるが十分な根拠 がない。パーキンソン病診療ガイドラインでは進行期にどの治療法をアドオンするか推奨度を明示 「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」のCQ2では、ウェアリングオフ(L-ドパを1日3回投与しても、薬の内服時間に関連した効果減弱がある)を呈する進行期パーキンソン病患者に追加する治療法について、それぞれ推奨度が示された。各推奨度と、付帯事項の概要については以下の通り。■ドパミンアゴニスト[CQ2-1] 推奨度:2A 付帯事項:60代前半対象のエビデンスに基づくため、高齢者への使用には注意を要 する。L-ドパとの併用によるオフ時間の短縮効果、L-ドパ減量効果、UPDRS partIII スコアの改善効果があり、副作用の発現に注意しながら使用することを提案する。■ドパミン付随薬・COMT阻害薬[CQ2-2-1] 推奨度:2B 付帯事項:なし・MAOB阻害薬[CQ2-2-2] 推奨度:2C 付帯事項:セレギリンのRCTが少なく、ラサギリンについては現時点で本邦における エビデンスが公開されていない・イストラデフィリン[CQ2-2-3]、ゾニサミド[CQ2-2-4] 推奨度:2C 付帯事項:本邦のみでの承認薬剤のため、海外での評価が定まっていない点に注意が 必要■脳深部刺激療法 推奨度:2 C 付帯事項:オフ時の運動症状改善、L-ドパ換算用量の減量効果があるが、認知 機能への影響のほか、合併症も起こりうるため、慎重に適応を判断する なお、「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」のCQ1およびCQ2では、それぞれ章末に資料として、推奨度をもとにした治療アルゴリズムがフロー図の形で示されている。

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