救急科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:18

アスピリンは健康な高齢者ではむしろ副作用のリスク増

 低用量アスピリンは脳卒中の予防に広く用いられているが、高齢者においては脳卒中の有意な減少は認められず、むしろ頭蓋内出血が有意に増加したという結果が示された。オーストラリア・メルボルンのモナシュ大学のGeoffrey C. Cloud氏らによる本研究の結果は、JAMA Network Open誌2023年7月26日号に掲載された。  この報告は、高齢者における低用量アスピリンのリスクとベネフィットのバランスを検討した無作為化二重盲検プラセボ対照試験Aspirin in Reducing Events in the Elderly(ASPREE)の2次解析の結果である。参加者は米国とオーストラリア在住の心血管疾患の既往のない70歳以上の高齢者で、募集は2010~14年に行われた。追跡期間中央値は4.7(四分位範囲[IQR]:3.6~5.7)年で、本解析は2021年8月~2023年3月に行われた。

コロナ再感染、高齢者よりも若年層で増加

 新型コロナウイルス感染症の流行が長期にわたり、再感染者も増えている。再感染は基礎体力が劣り、基礎疾患を持つ人が多い高齢者に多いのではと考えられるが、実際には若年・中年層の増加率が高齢者よりも高いことが明らかになった。米国疾病管理予防センター(CDC)が実施した研究結果は、Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)誌2023年6月23日号に掲載された。  CDCは2021年9月5日~2022年12月31日に、米国の18の管轄区域から報告された18歳以上の成人のCOVID-19全症例、入院、死亡に占める再感染の割合を調査し、5つの期間(デルタおよびオミクロン[BA.1、BA.2、BA.4/BA.5、BQ.1/BQ.1.1]がそれぞれ優勢だった期間)と年齢層別に解析した。

脳への電気刺激が脳梗塞によるダメージを抑制か

 脳に電気ショックを与えることで、脳卒中による脳へのダメージを抑えることができるようだ。高精細(HD)陰極経頭蓋直流電気刺激(C-tDCS)と呼ばれる非侵襲的な治療法により、急性虚血性脳卒中(AIS、脳梗塞)の原因となった血栓周辺の血流が増加し、脳にそれ以上のダメージが及ぶのを防げる可能性のあることが明らかになった。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)David Geffen School of Medicine神経学分野のMersedeh Bahr-Hosseini氏らが実施したこのパイロット試験は、「JAMA Network Open」に6月21日掲載された。

脳出血患者の収縮期血圧を1時間以内に130~140mmHgにコントロールすると通常治療と比較して6ヵ月後の神経学的予後(modified Rankin Scale)が良い(解説:石川讓治氏)

脳出血患者の急性期の血圧をどのようにコントロールすればよいのかという問題は、徐々に変化してきた。『脳卒中治療ガイドライン』の2009年版においては、「脳出血急性期の血圧は、収縮期血圧が180mmHg未満または平均血圧が130mmHg未満を維持することを目標に管理する」ことが推奨されていたが、2015年版では、「できるだけ早期に収縮期血圧140mmHg未満に降下させ、7日間維持することを考慮しても良い」となり、2021年版では、「脳出血急性期における血圧高値をできるだけ早期に収縮期血圧140mmHg未満へ降圧し、7日間維持することは妥当であり、その下限を110mmHg超に維持することを考慮しても良い」となった。本研究において、低および中所得国(9ヵ国)で行われた多施設共同研究で、発症6時間以内の脳出血患者を対象に、(1)1時間以内の収縮期血圧(140mmHg未満を目標、130mmHgを下限)、(2)できるだけ早期の血糖(非糖尿病患者では6.1~7.8mmol/L、糖尿病患者では7.8~10.0mmol/L)、(3)1時間以内の体温(37.5度未満)、(4)ワルファリン内服患者においては1時間以内にINR1.5未満を目標に速やかにコントロールを行うことで、6ヵ月後に評価したmodified Rankin Scaleにおける神経学的予後が、通常治療よりも良好であったことが報告された。

保険加入状況によって、治療や退院計画は変わるか?/BMJ

 米国・イエール大学のDeepon Bhaumik氏らは、米国の65歳以上の高齢者において、治療や退院の決定が保険の適用範囲に基づいて画一化されているかどうかを調べる検討を行った。米国外科学会の全米外傷登録データバンク(NTDB)の約159万例の外傷患者を対象に調べた結果、そのようなエビデンスは認められなかったこと、類似の外傷患者であっても治療の差はみられ、その差は退院計画のプロセスの間に生じていたことが示唆されたという。BMJ誌2023年7月11日号掲載の報告。  研究グループは、2007~17年の米国外科学会NTDBを基に、全米900ヵ所以上のレベル1または2の外傷センターを訪れた50~79歳について調査を行った。65歳でのメディケアへの加入が、医療サービスの内容とアウトカムに与える影響について、回帰不連続アプローチ法を用いて検証した。

コロナ緊急事態宣言中、急性疾患の院内死亡率は1.7倍に

 新型コロナウイルス感染流行は、医療機関の救急外来受け入れや入院の制限など、他疾患の患者にも大きな影響を与えた。日本国内のこれまでの感染流行時において、その影響はどの程度であったのか。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院の阿部 計大氏らによる研究がJAMA Network Open誌2023年6月22日号に掲載された。  研究者らは、最初の緊急事態宣言期間(2020年4月7日~5月14日)の前後における「ACSC」(の患者の転帰を比較した。期間前は2015年1月1日~2019年12月31日、期間後は2020年1月1日~12月31日とし、日本全国242の急性期病院の退院サマリーデータを用いた。データ解析は2022年8月16日~12月7日に行われた。

軽症脳梗塞、4.5時間以内DAPT vs.アルテプラーゼ/JAMA

 日常生活や仕事上の障害につながらない(非障害性)軽症脳梗塞患者において、発症後4.5時間以内の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は90日後の機能的アウトカムに関して、アルテプラーゼ静注に対して非劣性であることが示された。中国・General Hospital of Northern Theatre CommandのHui-Sheng Chen氏らが、多施設共同無作為化非盲検評価者盲検非劣性試験「Antiplatelet vs R-tPA for Acute Mild Ischemic Stroke study:ARAMIS試験」の結果を報告した。軽症脳梗塞患者において、静脈内血栓溶解療法の使用が増加しているが、軽症非障害性脳梗塞患者における有用性は不明であった。JAMA誌2023年6月27日号掲載の報告。

暑くても脳卒中が増加?~メタ解析

 暑さと寒さの両方が脳卒中の罹患率および死亡率を増大させ、発展途上国よりも先進国のほうが暑さによるリスクが高いことが、中国・Tongji Medical CollegeのJing Wen氏らによって明らかになった。Brain and Behavior誌オンライン版2023年6月2日号掲載の報告。  これまでの研究で、気温は脳卒中の罹患率および死亡率と関連することが示唆されているが、そのエビデンスは十分ではない。そこで研究グループは、気温と脳卒中の罹患率および死亡率との関連を評価するためにメタ解析を行った。

院外心停止後のPaCO2目標値、軽度高値vs.正常/NEJM

 院外心停止後に蘇生された昏睡患者において、目標PaCO2値を軽度高値とする治療(targeted mild hypercapnia)が正常値とする治療(targeted normocapnia)と比較して、6ヵ月後の良好な神経学的アウトカムに結びつかなかったことが示された。オーストラリア・Austin HospitalのGlenn Eastwood氏らが、17ヵ国63施設のICUが参加した医師主導の評価者盲検無作為化非盲検試験「Targeted Therapeutic Mild Hypercapnia after Resuscitated Cardiac Arrest trial:TAME試験」の結果を報告した。ガイドラインでは、院外心停止後に蘇生した昏睡状態の成人患者に対して、正常PaCO2値を治療目標とすることが推奨されているが、軽度高値とするほうが脳血流を増加させ神経学的アウトカムを改善する可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2023年6月15日号掲載の報告。

慢性硬膜下血腫、デキサメタゾンvs.手術/NEJM

 慢性硬膜下血腫患者において、デキサメタゾンによる治療は穿頭ドレナージと比較し機能的アウトカムに関して非劣性は示されず、合併症の発現頻度や追加手術を要する患者の割合が高かった。オランダ・Amphia HospitalのIshita P. Miah氏らが、医師主導、評価者盲検の多施設共同無作為化非盲検非劣性試験の結果を報告した。慢性硬膜下血腫の治療において、外科的除去を伴わないグルココルチコイドの役割は不明であった。NEJM誌2023年6月15日号掲載の報告。