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アミロイド陽性アルツハイマー病患者の皮質萎縮に対する炭水化物制限の影響

 インスリンレベルを低下させる炭水化物制限は、アルツハイマー病(AD)発症を遅らせる可能性がある。炭水化物の摂取を制限するとインスリン抵抗性が低下し、グルコースの取り込みや神経学的健康が改善すると考えられる。ADの特徴は、広範な皮質の萎縮だが、アミロイドーシスが確認されたAD患者において、正味炭水化物摂取量の低下が皮質萎縮の軽減と関連しているかは、明らかとなっていない。米国・Pacific Neuroscience Institute and FoundationのJennifer E. Bramen氏らは、炭水化物制限を行っているアミロイド陽性アルツハイマー病患者を対象に、中程度~高度の炭水化物摂取の場合と比較し、皮質厚が厚いとの仮説を検証した。Journal of Alzheimer's Disease誌2023年10月号の報告。

既治療の転移TN乳がんへのペムブロリズマブ、健康関連QOLへの影響(KEYNOTE-119)

 既治療の転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対してペムブロリズマブを化学療法と比較したKEYNOTE-119試験では、主要評価項目である全生存期間がペムブロリズマブは化学療法と同等であったが、ペムブロリズマブの治療効果はPD-L1発現レベルが高いほど大きかったことが報告されている。今回、本試験における健康関連QOLを解析した結果、臨床アウトカムと一致しており、PD-L1陽性スコア(CPS)10以上の患者の結果に左右されるようであると英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University of LondonのPeter Schmid氏らが報告した。European Journal of Cancer誌2023年12月号に掲載。

税負担が重過ぎる!どんな節税対策している?/医師1,000人アンケート

 年末調整に確定申告…。年末から春にかけては税金を意識する機会が増える。さらに、最近では定額減税や新NISAスタートなど、税金に関する話題が増加している。ケアネットでは、会員の勤務医(勤務先病床数:20床以上)1,021人を対象に、「今年行った、来年やりたい節税対策」についてアンケートを実施した(調査日:10/6~8)。  「Q1.今年(2023年)の所得について、確定申告をする予定ですか?」という設問には、9割以上の医師が「はい」と答えた。確定申告の条件である「年収2,000万円超」「年間20万円以上の副収入」にほとんどの回答者が当てはまっているようだ。

セマグルチド製剤の最適使用推進ガイドラインを公表/厚労省

 社会的に痩身目的での糖尿病治療薬の使用が散見され、本来必要な患者に治療薬が届かないといった事態が起こっている。そのような中でセマグルチド製剤のウゴービ皮下注が肥満症治療薬として承認され、2023年11月22日に薬価収載された。これらの事態を懸念し、厚生労働省は医療機関および薬局に対する周知を目的として、本剤に関する「最適使用推進ガイドライン」を11月21日に公表した。  本ガイドラインには、ウゴービ皮下注を肥満症に対して使用する際の留意事項が記載されており、その使用に際し、ガイドライン内容に留意するよう促している。

DOAC・ワルファリン、重大な副作用に「急性腎障害」追加/厚労省

経口抗凝固薬の添付文書について、2023年11月21日に厚生労働省が改訂を指示。国内で販売されている直接経口抗凝固薬(DOAC)4剤(アピキサバン、エドキサバン、ダビガトラン、リバーロキサバン)とワルファリンカリウムの添付文書の「副作用」に重大な副作用として急性腎障害が追記された。  経口抗凝固薬の投与後に急性腎障害が現れることがある。本剤投与後の急性腎障害の中には、血尿や治療域を超えるINRを認めるもの、腎生検により尿細管内に赤血球円柱を多数認めるものが報告されている。

日本における慢性疼痛・片頭痛患者の医療アクセスへの障壁

 慢性疼痛および片頭痛は、患者のQOLや生産性の低下などの経済的な負担が大きいにもかかわらず、十分に治療されていないケースが少なくない。治療を受けない理由を明らかにすることは、介護を求める行動を改善するための介入を可能にするためにも重要である。しかし、日本において、疾患特有の治療を受けない理由に関する報告は限られている。順天堂大学の唐澤 佑輔氏らは、慢性疼痛および片頭痛を有する未治療の患者における医療アクセスへの障壁を明らかにするため、調査を行った。その結果から、痛みに伴うリスクとその原因、安価な治療選択肢の利用の可能性、適切な治療施設へのアクセスについて患者教育を行うことで、治療率が向上する可能性が示唆された。Frontiers in Pain Research(Lausanne, Switzerland)誌2023年10月3日号の報告。

乳がん死亡率とスタチン使用、コレステロール値の関係

 スタチン使用と乳がん死亡率との関連が報告されているが、コレステロール値が考慮されている研究はほとんどない。フィンランド・Tays Cancer CentreのMika O Murto氏らは、乳がん死亡率と血清コレステロール値およびスタチン使用との関連を調査するコホート研究を実施し、結果をJAMA Network Open誌2023年11月1日号に報告した。  本研究には、フィンランドで1995年1月1日~2013年12月31日に新たに浸潤性乳がんと診断され、ホルモン受容体についての情報と少なくとも1回のコレステロール測定値が記録されていた女性患者が含まれた。主要評価項目は、乳がん診断日から2015年12月31日までの乳がん死亡率と全死亡率であった。

温泉地での集中的健康管理で身体の諸指標と睡眠の質が改善

 最近、温泉は、リゾートとしてヨーロッパなどでは健康増進の目的で利用されている。そこで、中国・重慶医科大学公衆衛生学のYu Chen氏らの研究グループは、温泉地での慢性疾患ハイリスク者の身体検査指標と睡眠の質に対する集中的健康管理の効果を検証し、その結果を報告した。International Journal of Biometeorology誌2023年10月6日に掲載。  本研究では、慢性疾患のリスクが高いボランティア114例を介入群57例、対照群57例に分けて検証。介入群には4週間(28日間)、重慶の統景温泉で定期的な日課、バランスの取れた食事、適切な運動、的確な健康教育など、包括的な健康管理介入を行った。

回復期リハビリテーション病棟でのせん妄に対する向精神薬の減量

 川崎こころ病院の植松 拓也氏らは、同施設の回復期リハビリテーション病棟に転院してくる患者さんの多くが、急性期病棟入院時にせん妄に対する向精神薬処方が行われている現状を踏まえ、精神科医、薬剤師、リハビリテーション医が協力し、向精神薬減量への取り組みを行った。その結果から、急性期病棟で処方されている向精神薬の種類および用量を回復期リハビリテーション病棟で減量できる可能性があることを報告した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年10月26日号の報告。  対象は、2021年4月~2022年3月に川崎こころ病院の回復期リハビリテーション病棟を退院した患者88例。診療記録より基本的情報および向精神薬処方状況を抽出した。

肥満は胆道がんの発症・死亡に関連~アジア人90万人のプール解析

 肥満と胆道がんの関連について、愛知県がんセンターの尾瀬 功氏らがアジア人集団のコホート研究における約90万人のデータをプール解析した結果、BMIと胆道がん死亡率の関連が確認された。さらに肥満は胆石症を介して胆道がんリスクに影響を与え、胆石症がなくても胆道がんリスクを高める可能性があることが示唆された。International Journal of Cancer誌オンライン版2023年11月15日号に掲載。

認知症の進行抑制に難聴治療がカギとなる可能性/難聴対策推進議員連盟

 国会議員で組織する難聴対策推進議員連盟が、「難聴対策で認知症の進行抑制-補聴器を用いた聴覚介入の有用性を」テーマに、メディアセミナーを開催した。セミナーでは、難聴と認知症の関係や難聴と社会的孤立や受傷リスクの増大、難聴患者の声などが講演された。  はじめにフランク・リン氏(ジョンズ・ホプキンス大学教授)が「認知症の進行抑制における聴覚介入の有用性-ACHIEVE試験の結果より-」をテーマに研究内容と今後の展望について説明した。  全世界が高齢化による認知症の患者が増加している。そんな中、中年期および老年期の難聴は、認知症の深刻なリスク因子であることが明らかになっている。  難聴になると、認知的負荷、脳への刺激減少、社会的孤立が進み、認知機能の低下や認知症をもたらすとされている。そこで、リン氏らの研究グループは、高齢者の加齢と認知機能の健康評価について研究するACHIEVE試験を行った。

地域のソーシャルキャピタルと認知症発症との関連~日本老年学的評価研究データ分析

 近年、社会や地域における、人々の信頼関係・結びつきを意味するソーシャルキャピタルという概念が注目されている。個人レベルでのソーシャルキャピタルは、認知機能低下を予防するといわれている。また、コミュニティレベルでのソーシャルキャピタルが、認知症発症に及ぼす影響についても、いくつかの研究が行われている。国立長寿医療研究センターの藤原 聡子氏らは、日本人高齢者を対象とした縦断的研究データに基づき、コミュニティレベルのソーシャルキャピタルと認知症発症との関連を調査した。その結果から、市民参加や社会的一体感の高い地域で生活すると、高齢女性の認知症発症率が低下することが示唆された。Social Science & Medicine誌2023年12月号の報告。

統合失調症患者における抗精神病薬誘発性糖尿病性ケトアシドーシスのリスク評価~医薬品副作用データベース解析

 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)は、生命を脅かす重篤な状態であり、抗精神病薬により引き起こされる可能性がある。アジア人糖尿病患者は、白人と比較し、インスリン抵抗性が低いといわれている。これまでに報告されている抗精神病薬に関連したDKAの研究は、すべて欧米人を対象としているため、これらのデータが日本人でも同様なのかは、不明である。獨協医科大学の菅原 典夫氏らは、自発報告システムデータベースである日本の医薬品副作用データベースを用いて、抗精神病薬とDKAとの関連を分析した。その結果から、統合失調症患者のDKA発現にはオランザピン治療が関連していることが明らかとなった。とくに、男性患者において、DKAリスクが高いことも確認された。Journal of Psychosomatic Research誌オンライン版2023年10月19日号の報告。

ステロイド処方医は知っておきたい、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症のガイドライン改訂

 『グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2023』が8月に発刊。本書は、ステロイド薬処方医が服用患者の骨折前/骨密度低下前の管理を担う際に役立ててもらう目的で作成された。また、ステロイド性骨粗鬆症の表現にはエストロゲン由来の病態も含まれ、海外ではステロイド性骨粗鬆症と表現しなくなったこともあり、“合成グルココルチコイド(GC)服用による骨粗鬆症”を明確にするため、本改訂からグルココルチコイド誘発性骨粗鬆症(GIOP)と表記が変更されたのも重要なポイントだ。9年の時を経て治療薬に関する膨大なエビデンスが蓄積された今回、ガイドライン作成委員会の委員長を務めた田中 良哉氏(産業医科大学第一内科学講座 教授)に、GIOPにおける治療薬の処方タイミングや薬剤選択の方法などについて話を聞いた。

日本人統合失調症患者の院内死亡率と心血管治療との関連性

 統合失調症は、心血管疾患(CVD)リスクと関連しており、統合失調症患者では、CVDに対する次善治療が必要となるケースも少なくない。しかし、心不全(HF)により入院した統合失調症患者の院内予後およびケアの質に関する情報は限られている。京都府立医科大学の西 真宏氏らは、統合失調症患者の院内死亡率および心不全で入院した患者の心血管治療との関連を調査した。その結果から、統合失調症は心不全により入院した非高齢患者において院内死亡のリスク因子であり、統合失調症患者に対する心血管治療薬の処方率が低いことが明らかとなった。Epidemiology and Psychiatric Sciences誌2023年10月18日号の報告。

EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法は日本人でもPFS改善(FLAURA2)/日本肺癌学会

 EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬のオシメルチニブと化学療法の併用療法は、オシメルチニブ単剤と比べて無増悪生存期間(PFS)を改善することが、国際共同第III相無作為化比較試験FLAURA2試験で報告されている(治験担当医師評価に基づくPFS中央値は併用群25.5ヵ月、単独群16.7ヵ月、ハザード比[HR]:0.62、95%CI:0.49~0.79)。本試験の日本人集団の結果について、小林 国彦氏(埼玉医科大学国際医療センター)が第64回日本肺癌学会学術集会で発表した。

ファイザーのコロナワクチン、インフルワクチンと同時接種の有効性は?

 ファイザーの新型コロナワクチン(BA.4/5対応2価)と季節性インフルエンザワクチンを同時に接種した場合、別々に接種した場合と比べて有効性に差があるかを、米国の18歳以上の約344万人を対象に、米国・ファイザー社のLeah J. McGrath氏らの研究グループが調査した。その結果、コロナワクチンとインフルワクチンの同時接種は、それぞれ単独で接種した場合と比較して同等の有効性があることが示された。JAMA Network Open誌2023年11月8日号に掲載。  本研究では、2022年8月31日~2023年1月30日に、ファイザーの新型コロナワクチン(BA.4/5対応2価)のみ、インフルワクチンのみ、または両方を同日接種した、米国の民間医療保険に加入している18歳以上の344万2,996人を対象に、後ろ向き比較試験を実施した。1価ワクチンまたは他社の新型コロナワクチン接種者は除外した。65歳以上は、強化型インフルワクチン接種者のみを対象とした。主な転帰および評価基準は、COVID-19関連およびインフルエンザ関連の入院、救急(ED)や緊急診療(UC)の受診、および外来受診とした。ワクチン接種群間の残存バイアスを検出するため、尿路感染と不慮の傷害の2つのネガティブコントロールアウトカム(NCO)を評価した。

マクロ地中海食、乳がんの再発予防効果なし?

 いくつかの前向き研究で、食事の質の向上が乳がん患者の生存率改善と関連することが示唆されているが、乳がん特異的死亡率への影響については定まっていない。今回、イタリア・Fondazione Istituto Nazionale TumoriのFranco Berrino氏らがマクロ地中海食(地中海食に味噌や豆腐などの日本由来のマクロビオティックを取り入れた食事)による乳がん再発抑制効果を無作為化比較試験(DIANA-5試験)で検討したところ、再発抑制効果は示されなかった。しかしながら、推奨される食事の順守度による解析では、推奨された食事への変化率が上位3分位の女性では有意に予後が良好だったという。Clinical Cancer Research誌オンライン版2023年10月17日号に掲載。

妊婦禁忌のコロナ治療薬は慎重に処方・調剤を、5団体が合同声明文を発表

 妊婦にとって禁忌とされる新型コロナウイルス感染症の治療薬が処方・調剤され、その後に患者が妊娠していることが判明した事例が多数報告されていることから、11月14日付で、日本感染症学会、日本化学療法学会、日本産科婦人科学会、日本医師会、日本薬剤師会の5団体は、診療に携わる医療関係者および治療を受ける女性患者のそれぞれに向けて合同声明文を発表した。  現在承認されている経口コロナ治療薬は、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)、エンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)、ニルマトレビル・リトナビル(商品名:パキロビッドパック)である。そのうち、モルヌピラビルとエンシトレルビルは、動物実験で催奇形性や胚・胎児致死などが認められているため、妊婦または妊娠している可能性のある女性への投与が禁忌となっている。

EGFR陽性NSCLC、オシメルチニブ+化学療法で脳転移巣の病勢進行リスクを42%低下(FLAURA2)/AZ

 アストラゼネカは2023年11月1日付のプレスリリースにて、第III相FLAURA2試験の探索的解析において、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)と化学療法の併用療法はオシメルチニブ単剤療法と比較して、ベースライン時に脳転移を有していたEGFR遺伝子変異陽性の転移のある進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者(本臨床試験に参加した患者の40%)における中枢神経系(CNS)の無増悪生存期間(PFS)を42%改善したと発表した。本結果は、10月21日にスペイン・マドリードで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告された。