CLEAR!ジャーナル四天王|page:56

ProACT試験-プロカルシトニン値を指標とした抗菌薬使用(解説:小金丸博氏)-877

抗菌薬の過剰な使用は、医療費の増加や薬剤耐性菌の出現に関連する公衆衛生上の問題である。プロカルシトニンは、ウイルス感染よりも細菌感染で上昇しやすいペプチドであり、上昇の程度は感染の重症度と相関し、感染の改善とともに経時的に低下する。いくつかの欧州の試験において、抗菌薬を投与するかどうかをプロカルシトニンの結果に基づいて決定することで抗菌薬の使用を抑制できることが示されており、2017年、米国食品医薬品局(FDA)は下気道感染症が疑われる場合に抗菌薬の開始または中止の指標としてプロカルシトニンを測定することを承認した。しかしながら、プロカルシトニン値を日常臨床へ適用できるかは明らかでなかった。

世界の健康・福祉はどこへ向かうのか?(解説:岡慎一氏)-875

健康や福祉を維持、向上させるためにはお金がかかる。当然経済の発展とともに、健康・福祉関連の予算も増え、世界の健康・福祉は改善されてきた。Sustainable Development Goal(SDG)とは、国連に加盟するすべての国が賛同し、2015年から2030年までに、貧困や飢餓、エネルギー、気候変動、平和的社会など、17項目の持続可能な開発の目指すべき達成目標を掲げたものである。その中で健康・福祉はSGD-3に掲げられている。

臨床試験も「中国の時代!」(解説:後藤信哉氏)-874

1990年代は日本の時代であった。経済は躍進し、医学研究も積極的であった。日本は長期の経済停滞の時代に入り医学者も内向きとなって論文数も減少した。筆者は国際雑誌CirculationのEditorをしているので、中国の臨床医学研究の量と質の改善に日々圧倒されている。かつて、日本が「世界の奇跡」とされ注目されたが、今は中国が「世界の中心」として注目されつつある。

ウエアラブル技術と遠隔コーチングを用いた家庭での運動療法は、末梢動脈疾患患者の6分間歩行距離を延ばさなかった(解説:佐田政隆氏)-872

現在、循環器疾患患者の生命予後、生活の質を改善するうえで、心臓リハビリテーションが非常に注目されている。末梢動脈疾患患者においても、監視下の運動療法が歩行距離を延ばすことが報告され、ガイドラインでも推奨されている。しかし、そのためには頻回に医療機関に通院しないといけないが、それは遠方在住者や末梢動脈疾患患者にとってはしばしば困難なことである。

発症時間不明の脳梗塞、MRIミスマッチを根拠とするrt-PA静注療法で転帰改善か(中川原譲二氏)-871

現行ガイドラインの下では、アルテプラーゼ静脈療法は、発症から4.5時間未満であることが確認された急性脳梗塞だけに施行されている。ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのGotz Thomalla氏らは、発症時間が不明だが、MRIによって発症が直近の脳梗塞と示唆された患者について、アルテプラーゼ静脈療法にベネフィットがあるかを検討した(多施設共同無作為化二重盲険プラセボ対照試験「WAKE-UP試験」)。その結果、発症時間不明の急性脳卒中患者において、脳虚血領域のMRIによる拡散強調画像(DWI)とFLAIR画像のミスマッチを根拠に行ったアルテプラーゼ静脈療法は、プラセボ投与と比べて、90日時点の機能的転帰は有意に良好であることが示された。ただし、頭蓋内出血は数的には多く認められた(NEJM誌オンライン版2018年5月16日号)。

大腸がんの術後再発リスクの予測を高精度とする免疫スコア(解説:上村直実氏)-869

大腸がんの術後再発リスクに関しては、TNM分類や腫瘍組織の分化度により再発リスクが異なることが知られている。一方、最近では、オプジーボ(一般名:ニボルマブ)などの免疫に関与する治療薬が、肺がんをはじめとする固形がんの治療に大きな役割を果たす時代となってきている。このような現状から、がんの再発予測因子に免疫能に関するパラメータが重要になることが予想されていた。

高度異型腺腫の有無で大腸がんリスクが有意に異なる(解説:上村直実氏)-868

日本で大腸がんは肺がんに次いで2番目に多い死亡原因であり、大腸がんによる死亡リスクを低下するために便潜血による大腸がん検診が施行されている。一方、欧米では、大腸内視鏡検査(CF)を行うことにより大腸がんによる死亡率およびその発症率が低下する研究成果が数多く報告され、最近では死亡リスク低下に必要なCFの間隔が話題になっている。米国のガイドラインでは、10年に1度のCFにより大腸がん死亡リスクが大幅に低下するとされており、大腸がんスクリーニングにCFを取り入れるべきで、ポリープ(腺腫)があれば5~10年後のCFが推奨されている。

新薬と旧薬の絶妙な組み合わせにより費用対効果を高める ~医療技術評価(HTA)の観点から(解説:中澤達氏)-866

股関節および膝関節の人工関節全置換術後にリバーロキサバンの術後5日投与を受けた患者では、その後アスピリンに切り替えても、リバーロキサバンを継続した場合と比較して、症候性静脈血栓塞栓症の予防効果に差はないことが明らかとなった。アスピリンは、安価で、副作用プロファイルが十分に確立されており、医療技術評価(health technology assessment:HTA)の点から大変興味深い結果だ。

これはいける!と思ったのに:ESUSの意外な失敗(解説:後藤信哉氏)-864

薬剤として経口抗Xa薬が開発された当時、標的疾患としては「脳梗塞2次予防がよい」と各社にアドバイスした。冠動脈疾患、心房細動より、脳梗塞中の再発リスクが高く、新規の抗血栓薬が必要と思ったからである。脳梗塞の病態は複雑である。微小血管病と想定されるラクナ梗塞、抗血小板薬が有効なアテローム血栓性閉塞では、抗凝固薬は役立たないのではないかとの意見もあった。心房細動の脳卒中予防試験も、予防対象は「脳卒中・全身塞栓症」で心原性塞栓ではなかった。

FAME2試験の5年追跡結果が発表、安定冠動脈疾患へのPCI施術の妥当性(中川義久 氏)-865

FAME2試験の5年追跡の結果がパリで開催されたPCR2018で発表され、NEJM誌に同時掲載された。FAME2試験は、PCI施行予定の安定冠動脈疾患において、FFR値0.8以下で定義される機能的虚血を有する場合に、PCI+至適薬物治療を行った場合と、至適薬物治療のみの場合をランダマイズし比較した研究である。

24時間自由行動下血圧は外来血圧よりも優れた予後予測指標である(解説:石川讓治氏)-863

24時間自由行動下血圧が、外来血圧や家庭血圧よりも優れた心血管イベントの予測因子であることが多くのコホート研究で報告されてきたが、本研究は、スペインの実地診療の中で測定された6万3,910名にも及ぶ多数の患者登録データを用いて、24時間自由行動下血圧が外来血圧よりも優れた総死亡や心血管死亡の予測因子であったことを追試した。

急性単純性膀胱炎に対するガイドライン推奨治療の比較試験(解説:小金丸博氏)-860

膀胱炎に代表される尿路感染症はとてもありふれた感染症であり、とくに女性では一生涯で半数以上が経験すると言われている。膀胱炎に対して世界中で多くの抗菌薬が処方されることが薬剤耐性菌出現の一因になっていると考えられており、2010年に米国感染症学会(IDSA)と欧州臨床微生物感染症学会(ESCMID)は「女性の急性単純性膀胱炎および腎盂腎炎の治療ガイドライン」を改訂した。このガイドラインでは、急性単純性膀胱炎に対する第1選択薬としてnitrofurantoin monohydrateやfosfomycin trometamolなどを推奨しており、これらの薬剤の使用量が増加してきているが、治療効果を比較したランダム化試験はほとんど存在しなかった。

認知症に対する運動介入の息の根が止められたのか?(解説:岡村毅氏)-859

非常に大規模に、そしてほかの要因が交絡しないように厳密に、運動介入が認知症の人の認知機能に及ぼす効果を調べたら、なんと効果がないどころか通常のケアに負けたという報告である。通常のケアより優位であったのは「一定時間内に歩く距離」というのも微妙だ。1年も激しく運動すれば足は鍛えられるだろう。

ドクターXを探せ?(解説:今中和人氏)-858

この論文はさまざまな科の20術式について、非待期的(入院後3日以内)に手術が行われた症例の手術死亡率(在院死亡+30日以内の死亡)と術者の年齢・性別との関連を検討している。対象は4年間の全米のMedicare受給者の89万例で、49%が整形外科手術、38%が一般外科手術、12%が心臓血管外科手術、1%がその他の手術だった。