簡略化MRI、高濃度乳房で高い乳がん検出率/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2020/03/09

 

 高濃度乳房(dense breast)女性の乳がんスクリーニング検査では、簡略化乳房MRI(AB-MRI)はデジタル乳房トモシンセシス(DBT)に比べ、浸潤性乳がんの検出率が有意に高いことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのChristopher E. Comstock氏らECOG-ACRIN Cancer Research Groupが行ったEA1141試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年2月25日号に掲載された。高濃度乳房の女性は乳がんのリスクが高く、マンモグラフィでも早期診断が難しいため、スクリーニング検査法の改良が求められているという。

2つの検査を受けた女性を長期に追跡した横断研究

 本研究は、高濃度乳房女性の乳がんスクリーニングにおけるAB-MRIとDBTの診断能を比較する横断研究である(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。米国の47施設とドイツの1施設が参加し、2016年12月~2017年11月の期間に患者登録が行われ、2019年9月までフォローアップが実施された。

 対象は、年齢40~75歳、直近のマンモグラフィによるスクリーニング検査で高濃度乳房(米国放射線学会[ACR]の定義で、heterogeneously denseまたはextremely dense)とされ、DBTによる乳がんスクリーニング検査を受ける予定の臨床的に無症状の女性であった。

 被験者は、ベースラインと1年後に、AB-MRI(造影剤投与前後にT2強調とT1強調画像を10分以内に撮像)とDBTの両方を受けた(検査間隔は24時間以内)。2つの検査の施行順は、中央で無作為化された。読影バイアスを回避するために、2人の乳房放射線科医が独立に、互いの検査結果をブラインドした状態で読影した。

 DBTで陽性所見の女性は、追加画像検査を受けるよう勧められ(コールバック)、AB-MRIの施行前に最終診断が行われた。また、AB-MRIまたはDBTで「良性腫瘍が弱く疑われる(probably benign)」所見の女性は、6ヵ月後に「短期フォローアップ」として画像検査が推奨された。

 主要評価項目は、浸潤性乳がんの検出率とした。副次評価項目には、感度、特異度、追加画像検査推奨率(コールバック+短期フォローアップの推奨)、生検の陽性反応適中度(PPV)が含まれた。浸潤性乳がんまたは非浸潤性乳管がん(DCIS)、あるいは双方の発現を、これら評価項目の陽性参照基準と定義した。また、コア生検または外科的生検の病理所見を、がん検出率とPPVの参照基準とした。

追加画像検査推奨率やPPVに差はない

 1,516例の女性が登録され、1,444例(96%、年齢中央値54歳[範囲:40~75])が2つの検査の双方を受けた。高濃度乳房のACR分類の内訳は、heterogeneously denseが77%、extremely denseは15%だった。

 17例の女性(19病変)が、DCISの有無にかかわらず浸潤性乳がんが陽性で、6例はDCISが単独で陽性であった。フォローアップ期間中に、中間期がんは認められなかった。

 AB-MRIは、17例の浸潤性乳がんをすべて検出し、6例のDCISのうち5例を検出した。また、DBTは、浸潤性乳がん女性17例中7例を、DCIS女性6例中5例を検出した。浸潤性乳がん検出率は、AB-MRIは1,000例当たり11.8例(95%信頼区間[CI]:7.4~18.8)、DBTは1,000例当たり4.8例(2.4~10.0)であり、1,000例当たりの差は7例(2.2~11.6)と、AB-MRIで有意に良好であった(exact McNemar検定のp=0.002)。

 浸潤性乳がんおよびDCISの検出の感度は、AB-MRIが95.7%(95%CI:79.0~99.2)、DBTは39.1%(22.2~59.2)であり(p=0.001)、特異度はそれぞれ86.7%(84.8~88.4)および97.4%(96.5~98.1)であった(p<0.001)。また、追加画像検査推奨率は、AB-MRIが7.5%(6.2~9.0)、DBTは10.1%(8.7~11.8)であり、有意な差はなかった(Bonferroni補正後のp=0.02[p<0.01で有意差ありと定義])。また、生検のPPVは、AB-MRIが19.6%(13.2~28.2)、DBTは31.0%(17.0~49.7)だった(p=0.15)。

 1年以内に12例に13件の有害事象が認められた。8件(62%)はGrade1またはそれ以下であった。最も頻度の高い有害事象は、軽度アレルギー反応(3件)と不安(2件)だった。

 著者は、「スクリーニング検査法と臨床アウトカムの関連を、よりよく理解するためにさらなる研究を要する」としている。

(医学ライター 菅野 守)