心不全への遠隔管理の併用で予後が改善/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2018/09/10

 

 明確に定義された心不全患者(心不全による最近の入院歴あり、大うつ病なし)では、通常治療に加えて構造化された遠隔患者管理による介入を行うと、予定外の心血管系の原因によって病院で過ごす時間が短縮し、全死因死亡も低減することが、ドイツ・ベルリン大学附属シャリテ病院のFriedrich Koehler氏らが行った「TIM-HF2試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2018年8月25日号に掲載された。心不全患者の遠隔患者管理は、心代償不全の早期の臨床所見の検出に役立ち、それゆえ代償不全に陥った心不全が完全に出現する前に、適切な治療や処置を迅速に開始することが可能になるという。

通常治療への追加による予後改善効果を評価
 TIM-HF2試験は、ドイツで実施された非盲検(割り付け方法は隠蔽)の多施設共同無作為化並行群間比較試験であり、データの収集にプラグマティックな要素が導入され、病院および心臓病診療施設で患者登録が行われた(ドイツ連邦教育・研究省[BMBF]の助成による)。

 対象は、NYHA心機能分類II/IIIの心不全で、無作為割り付け前の12ヵ月以内に心不全による入院歴があり、左室駆出率(LVEF)が45%以下(またはLVEF 45%以上で経口利尿薬が処方)の患者であった。大うつ病の患者は除外された。被験者は、遠隔患者管理+通常治療の群または通常治療のみを行う群に無作為に割り付けられ、最長393日のフォローアップが行われた。

 遠隔患者管理のシステムや介入には、(1)遠隔医療センターに体重、血圧、心拍数、心調律、末梢毛細血管の酸素飽和度(SpO2)、自己評価による健康状態(1~5点)のデータを毎日送信、(2)患者教育、(3)遠隔医療センターと、患者のかかりつけ医、心臓専門医との連携などが含まれた。

 主要評価項目は、予定外の心血管疾患による入院あるいは全死因死亡で喪失した日数の割合とし、解析は最大の解析対象集団(FAS)で行った。「予定外の心血管疾患による入院あるいは全死因死亡で喪失した日数の割合」とは、これらの理由で失われたフォローアップ期間の割合であり、喪失日数を目標フォローアップ期間で除した値とした。主な副次評価項目は、全死因死亡および心血管死であった。

喪失日数が約6日減少
 2013年8月13日~2017年5月12日の期間に1,571例が登録され、1,538例がFASに含まれた(遠隔患者管理群:765例、通常治療群:773例)。全体の平均年齢は70歳(SD 10)、70%を男性が占めた。

 予定外の心血管疾患による入院あるいは全死因死亡で喪失した日数の割合の加重平均値は、遠隔患者管理群が4.88%(95%信頼区間[CI]:4.55~5.23)と、通常治療群の6.64%(6.19~7.13)に比べ有意に優れた(加重平均値の比:0.80、95%CI:0.65~1.00、p=0.0460)。失われた日数の加重平均値は、遠隔患者管理群が17.8日/年(95%CI:16.6~19.1)と、通常治療群の24.2日/年(22.6~26.0)よりも約6日減少した。

 全死因死亡率は、100人年当たり、遠隔患者管理群は7.86(95%CI:6.14~10.10)であり、通常治療群の11.34(9.21~13.95)に比し、有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.70、0.50~0.96、p=0.0280)。心血管死亡率の差は、統計学的に有意ではなかった(0.67、0.45~1.01、p=0.0560)。

 12ヵ月時のミネソタ心不全質問表(MLHFQ)によるQOL評価では、ベースラインからの変化には両群間に差はなかった(平均差:-1.11、95%CI:-3.01~0.80、p=0.26)。

 著者は、「この総体的な治療コンセプトの主要な要素は、遠隔医療センターが、1日24時間、毎日、個々の患者のリスクプロファイルに従って迅速に対応可能な医師および心不全専門看護師を擁していることである」とし、「本試験では、参加施設の所在地の違いによる影響はなかったことから、遠隔患者管理により、適切な心不全治療へのアクセスの地域差が低減する可能性がある」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)